説明

色情報処理方法および色情報処理装置ならびにそのプログラム

【課題】 高い精度で任意の掛け合わせの分光反射率を推定する方法を提供する。
【解決手段】 デバイス制御値と実効面積率の関係から、各一次色の分割設定値における推定分光反射率を計算し、一次色の任意の設定値に対する中間調の分光反射率を、対象となる任意の設定値に隣接する各一次色の分割設定値に対して推定分光反射率の線形和として表現し、該線形和の二つの項に対する係数が波長の関数であるとして、この分光重み付け係数を求め、任意の設定値の掛け合わせに対する分光反射率を、分光重み付け係数を求めるべき任意の設定値の掛け合わせに隣接する分割設定値の全掛け合わせを原色として持つ分光ノイゲバウアー方程式に代入することにより求め、観察光源、等色関数を用いて、前段のステップで求めた分光反射率から再現色の測色値を計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は面積変調により色を再現する印刷物において再現される色すなわち再現色を予測する色情報処理方法および色情報処理装置ならびにそのプログラムに関するものである。また、その方法を用いて、所望色を再現するためのデバイス制御値を計算する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物の再現色予測の方法として、一次色(例えばC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック))のデバイス制御値と実際にその掛け合わせを出力したものを測色した測色値との関係からルックアップテーブル(LUT)を作成する方法が用いられている。この方法においては、例えば各一次色のデバイス制御値を適当な間隔で区切ったすべての掛け合わせを出力し、その結果を測色することで図7に示すようなLUTを作成する。図7において各格子点は適当な間隔に区切った入力値に対応し、格子点上には実際に出力して測定した測色値が格納されている。格子点が存在しない掛け合わせ、すなわち実際に測定を行っていない掛け合わせに対しては、周辺の格子点が持つ値から、補間などの手法を用いて、任意の掛け合わせに対する再現色の測色値を求めることができる。
【0003】
他の方法として、ノイゲバウアー方程式を利用する方法が知られている。この方法では、各一次色のベタおよびベタ同士のすべての掛け合わせと用紙の測色値をあらかじめ測定し、以下の式(4)で再現色を予測する。
【0004】
【数1】

【0005】
また、この(4)式において各一次色のベタおよびベタ同士のすべての掛け合わせと用紙の測色値の代わりに分光反射率ベクトルをもちいて再現色の分光反射率を推定し、観察光源の分光分布と等色関数を用いた計算により、再現色の測色値を求める方法をとることもある。このとき (4)式は以下に示す(5)式となり、ノイゲバウアー方程式を分光領域に拡張した式として分光ノイゲバウアー方程式と呼ばれる。分光反射率と測色値の関係は(6)式で与えられる。
【0006】
【数2】

【0007】
【数3】

【0008】
そしてノイゲバウアー方程式を用いて測色値を予測する手法として特許文献1が、またルックアップテーブルを用いた再現色予測方法として非特許文献1が公開されている。
【特許文献1】特開平5−11500号公報
【非特許文献1】大田登、「色再現工学の基礎」、株式会社コロナ社、1997年9月10日、P.182
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上述したLUTを用いる方法によれば、測定するサンプルの数を増加させることにより、補間による誤差が減少し、比較的高い精度での予測が可能となる反面、測定数の増加による作業時間、手間の増大が問題となる。また、数多くの掛け合わせを出力するには非常に大きな面積が必要となり、印刷物面内のばらつきが大きい印刷機においては、その面内ばらつきの誤差がLUTに含まれてしまうという問題があった。
【0010】
また、上述したノイゲバウアー方程式を用いる方法によれば、測色が必要な掛け合わせは各色ベタとベタ同士の掛け合わせとなるため非常に少なくなるものの、実際の印刷ではこの方程式が成立することはほとんどなく、再現色予測の精度に問題があった。さらにノイゲバウアー方程式を用いる方法では、各一次色のベタおよびベタの掛け合わせのみを用いているため、中間調に対する予測精度が低くなるという問題があった。
【0011】
そこでこの発明は、上述の従来の技術の問題点を解決すべくなされたものであって、印刷の面内ばらつきの影響を受けない比較的狭い面積に印刷可能な少数の掛け合わせの分光反射率の測定値から、高い精度で任意の掛け合わせの分光反射率を推定する色情報処理方法および色情報処理装置ならびにそのプログラムを提供することを目的としている。また、この方法を用いることで、所望の測色値や所望の分光反射率が与えられた際に、それらを再現するために必要な設定値を算出する色情報処理方法および色情報処理装置ならびにそのプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述の課題を解決すべくなされたもので、面積変調で色を再現する印刷物の任意の掛け合わせに対する分光反射率を推定し、用紙に印刷される色の測色値を予測する色情報処理方法であって、前記用紙の分光反射率と、複数の各一次色のベタの分光反射率と、前記各一次色ベタ同士の全ての掛け合わせの分光反射率と、の入力を受け付ける第1分光反射率受付ステップと、各一次色が複数の任意のデバイス制御値で印刷された箇所の各分光反射率を前記各一次色ごとに受け付ける第2分光反射率受付ステップと、各一次色を任意の間隔で分割する設定値を各一次色ごとに決定し、これら設定値および0%、100%の全組み合わせからなる掛け合わせについて分光反射率を受け付ける第3分光反射率受付ステップと、ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する推定の分光反射率を、前記ある一次色ベタの分光反射率と、前記ある一次色の前記用紙における未知の実効面積率aと、光学的ドットゲインにより現れる二次的原色の実効面積率aと、前記用紙の分光反射率と、によって表現した分光反射率算出表現式に基づいて、前記ある一次色の任意のデバイス制御値について前記第2分光反射率受付ステップで受け付けた値と、前記ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する前記推定の分光反射率との誤差が、最小となる前記未知の実効面積率aおよびaを、前記一次色の複数の任意のデバイス制御値ごとに算出する実効面積率算出ステップと、前記任意の複数のデバイス制御値と、前記実効面積率算出ステップで求められた実効面積率aおよびaの関係から、任意のデバイス制御値に対する実効面積率を算出する実効面積率算出関数を、前記一次色ごとに生成する実効面積率算出関数生成ステップと、前段のステップで求めたデバイス制御値に対する実効面積率を算出する実効面積率算出関数から、各一次色の分割設定値における推定分光反射率を計算するステップと、一次色の任意の設定値に対する分光反射率を、対象となる任意の設定値に隣接する各一次色の分割設定値に対して前段のステップで求めた推定分光反射率の線形和として表現し、上記線形和の二つの項に対する係数が波長の関数であるとして、この係数を分光重み付け係数と定義し、この分光重み付け係数を求めるステップと、任意の設定値の掛け合わせに対する分光反射率を、上記の分光重み付け係数を、求めるべき任意の設定値の掛け合わせに隣接する分割設定値の全掛け合わせに対する前記第3分光反射率受付ステップで受け付けた値を原色として持つ分光ノイゲバウアー方程式に代入することにより求めるステップと、観察光源、等色関数を用いて、前段のステップで求めた分光反射率から再現色の測色値を計算するステップと、を有することを特徴とする色情報処理方法である。
【0013】
また本発明は、上述の色情報処理方法において、一次色の任意の設定値に対する分光反射率を、用紙の分光反射率、ベタの分光反射率、ドットゲインを考慮した仮想的原色の分光反射率の3つの分光反射率をそれぞれの実効面積率で重み付けした和として表現するための式として式(1)を用い、分光重み付け係数として式(2)を用い、分光ノイゲバウアー方程式として式(3)を用いることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、上述の色情報処理方法の、測色値を算出するステップにおいて算出した測色値と当該測色値を算出した際のデバイス制御値との関係に基づいて、入力された所望の測色値に対応するデバイス制御値を逐次近似により算出することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、上述の色情報処理方法の、分光反射率を求めるステップにおいて算出した分光反射率と当該分光反射率を算出した際のデバイス制御値との関係に基づいて、入力された所望の分光反射率に対応するデバイス制御値を逐次近似により算出することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、面積変調で色を再現する印刷物の任意の掛け合わせに対する分光反射率を推定し、用紙に印刷される色の測色値を予測する色情報処理装置であって、前記用紙の分光反射率と、複数の各一次色のベタの分光反射率と、前記各一次色ベタ同士の全ての掛け合わせの分光反射率と、の入力を受け付ける第1分光反射率受付手段と、各一次色が複数の任意のデバイス制御値で印刷された箇所の各分光反射率を前記各一次色ごとに受け付ける第2分光反射率受付手段と、各一次色を任意の間隔で分割する設定値を各一次色ごとに決定し、これら設定値および0%、100%の全組み合わせからなる掛け合わせについて分光反射率を受け付ける第3分光反射率受付手段と、ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する推定の分光反射率を、前記ある一次色ベタの分光反射率と、前記ある一次色の前記用紙における未知の実効面積率aと、光学的ドットゲインにより現れる二次的原色の実効面積率aと、前記用紙の分光反射率と、によって表現した分光反射率算出表現式に基づいて、前記ある一次色の任意のデバイス制御値について前記第2分光反射率受付処理部で受け付けた値と、前記ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する前記推定の分光反射率との誤差が、最小となる前記未知の実効面積率aおよびaを、前記一次色の複数の任意のデバイス制御値ごとに算出する実効面積率算出手段と、前記任意の複数のデバイス制御値と、前記実効面積率算出処理部で求められた実効面積率aおよびaの関係から、任意のデバイス制御値に対する実効面積率を算出する実効面積率算出関数を、前記一次色ごとに生成する実効面積率算出関数生成手段と、実効面積率算出関数生成手段で得られた実効面積率算出関数を用いて、各一次色の分割設定値に対応する推定分光反射率を算出する一次色分割設定値推定分光反射率算出手段と、一次色の任意の設定値に対する分光反射率を、対象となる任意の設定値に隣接する各一次色の分割設定値に対して一次色分割設定値推定分光反射率算出手段で求めた推定分光反射率の線形和として表現し、上記線形和の二つの項に対する係数が波長の関数であるとして、この係数を分光重み付け係数と定義し、この分光重み付け係数を算出する分光重み付け係数算出手段と、任意の設定値の掛け合わせに対する分光反射率を、上記の分光重み付け係数を、求めるべき任意の設定値の掛け合わせに隣接する分割設定値の全掛け合わせに対する前記第3分光反射率受付手段で受け付けた値を原色として持つ分光ノイゲバウアー方程式に代入することにより算出する分光反射率算出手段と、観察光源、等色関数を用いて、分光反射率算出手段で求めた分光反射率から再現色の測色値を算出する測色値算出手段と、を有することを特徴とする色情報処理装置である。
【0017】
また本発明は、面積変調で色を再現する印刷物の任意の掛け合わせに対する分光反射率を推定し、用紙に印刷される色の測色値を予測する色情報処理装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、前記用紙の分光反射率と、複数の各一次色のベタの分光反射率と、前記各一次色ベタ同士の全ての掛け合わせの分光反射率と、の入力を受け付ける第1分光反射率受付処理と、各一次色が複数の任意のデバイス制御値で印刷された箇所の各分光反射率を前記各一次色ごとに受け付ける第2分光反射率受付処理と、各一次色を任意の間隔で分割する設定値を各一次色ごとに決定し、これら設定値および0%、100%の全組み合わせからなる掛け合わせについて測定した分光反射率の入力を受け付ける第3分光反射率受付処理と、ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する推定の分光反射率を、前記ある一次色ベタの分光反射率と、前記ある一次色の前記用紙における未知の実効面積率aと、光学的ドットゲインにより現れる二次的原色の実効面積率aと、前記用紙の分光反射率と、によって表現した分光反射率算出表現式に基づいて、前記ある一次色の任意のデバイス制御値について前記第2分光反射率受付処理で受け付けた値と、前記ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する前記推定の分光反射率との誤差が、最小となる前記未知の実効面積率aおよびaを、前記一次色の複数の任意のデバイス制御値ごとに算出する実効面積率算出処理と、前記任意の複数のデバイス制御値と、前記実効面積率算出処理で求められた実効面積率aおよびaの関係から、任意のデバイス制御値に対する実効面積率を算出する実効面積率算出関数を、前記一次色ごとに生成する実効面積率算出関数生成処理と、実効面積率算出関数生成処理で得られた実効面積率算出関数を用いて、各一次色の分割設定値に対応する推定分光反射率を算出する一次色分割設定値推定分光反射率算出処理と、一次色の任意の設定値に対する分光反射率を、対象となる任意の設定値に隣接する各一次色の分割設定値に対して一次色分割設定値推定分光反射率算出処理で求めた推定分光反射率の線形和として表現し、上記線形和の二つの項に対する係数が波長の関数であるとして、この係数を分光重み付け係数と定義し、この分光重み付け係数を算出する分光重み付け係数算出処理と、任意の設定値の掛け合わせに対する分光反射率を、上記の分光重み付け係数を、求めるべき任意の設定値の掛け合わせに隣接する分割設定値の全掛け合わせに対する前記第3分光反射率受付処理で受け付けた値を原色として持つ分光ノイゲバウアー方程式に代入することにより算出する分光反射率算出処理と、観察光源、等色関数を用いて、分光反射率算出処理で求めた分光反射率から再現色の測色値を算出する測色値算出処理と、を実行させるプログラムである。
【0018】
また本発明は、面積変調で色を再現する印刷物の任意の掛け合わせに対する分光反射率を推定し、用紙に印刷される色の測色値を予測する色情報処理装置であって、前記用紙の分光反射率と、複数の各一次色のベタの分光反射率と、前記各一次色ベタ同士の全ての掛け合わせの分光反射率と、各一次色が複数の任意のデバイス制御値で印刷された箇所の各分光反射率と、各一次色を任意の間隔で分割する設定値を各一次色ごとに決定し、これら設定値および0%、100%の全組み合わせからなる掛け合わせにおける分光反射率と、ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する推定の分光反射率を、前記ある一次色ベタの分光反射率と、前記ある一次色の前記用紙における未知の実効面積率aと、光学的ドットゲインにより現れる二次的原色の実効面積率aと、前記用紙の分光反射率と、によって表現した分光反射率算出表現式に基づいて、前記ある一次色の任意のデバイス制御値について、前記各一次色が複数の任意のデバイス制御値で印刷された箇所の各分光反射率の値と、前記ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する前記推定の分光反射率との誤差が、最小となるように求められた前記未知の実効面積率aおよびaとデバイス制御値との関係から算出された実効面積率算出関数と、前記実効面積率算出関数を用いて算出された、各一次色の分割設定値に対応する推定分光反射率と、を計算パラメータとして受け付ける計算パラメータ受付手段と、一次色の任意の設定値に対する分光反射率を、対象となる任意の設定値に隣接する各一次色の分割設定値に対して計算パラメータとして受け付けた推定分光反射率の線形和として表現し、上記線形和の二つの項に対する係数が波長の関数であるとして、この係数を分光重み付け係数と定義し、この分光重み付け係数を算出する分光重み付け係数算出手段と、任意の設定値の掛け合わせに対する分光反射率を、上記の分光重み付け係数を、求めるべき任意の設定値の掛け合わせに隣接する分割設定値の全掛け合わせを原色として持つ分光ノイゲバウアー方程式に代入することにより算出する分光反射率算出手段と、観察光源、等色関数を用いて、分光反射率算出手段で求めた分光反射率から再現色の測色値を算出する測色値算出手段と、を有することを特徴とする色情報処理装置である。
【0019】
また本発明は、面積変調で色を再現する印刷物の任意の掛け合わせに対する分光反射率を推定し、用紙に印刷される色の測色値を予測する色情報処理装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、前記用紙の分光反射率と、複数の各一次色のベタの分光反射率と、前記各一次色ベタ同士の全ての掛け合わせの分光反射率と、各一次色が複数の任意のデバイス制御値で印刷された箇所の各分光反射率と、各一次色を任意の間隔で分割する設定値を各一次色ごとに決定し、これら設定値および0%、100%の全組み合わせからなる掛け合わせにおける分光反射率と、ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する推定の分光反射率を、前記ある一次色ベタの分光反射率と、前記ある一次色の前記用紙における未知の実効面積率aと、光学的ドットゲインにより現れる二次的原色の実効面積率aと、前記用紙の分光反射率と、によって表現した分光反射率算出表現式に基づいて、前記ある一次色の任意のデバイス制御値について、前記各一次色が複数の任意のデバイス制御値で印刷された箇所の各分光反射率の値と、前記ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する前記推定の分光反射率との誤差が、最小となるように求められた前記未知の実効面積率aおよびaとデバイス制御値との関係から算出された実効面積率算出関数と、前記実効面積率算出関数を用いて算出された、各一次色の分割設定値に対応する推定分光反射率と、を計算パラメータとして受け付ける計算パラメータ受付処理と、一次色の任意の設定値に対する分光反射率を、対象となる任意の設定値に隣接する各一次色の分割設定値に対して計算パラメータとして受け付けた推定分光反射率の線形和として表現し、上記線形和の二つの項に対する係数が波長の関数であるとして、この係数を分光重み付け係数と定義し、この分光重み付け係数を算出する分光重み付け係数算出処理と、任意の設定値の掛け合わせに対する分光反射率を、上記の分光重み付け係数を、求めるべき任意の設定値の掛け合わせに隣接する分割設定値の全掛け合わせを原色として持つ分光ノイゲバウアー方程式に代入することにより算出する分光反射率算出処理と、観察光源、等色関数を用いて、分光反射率算出処理で求めた分光反射率から再現色の測色値を算出する測色値算出処理と、を実行させるプログラム。
【発明の効果】
【0020】
本発明に記載の色情報処理方法、装置およびプログラムによれば、少数の一次色ステップとベタの掛け合わせ、用紙、および各一次色を任意に分割した分割設定値の全組み合わせの測定値から任意の掛け合わせのデバイス制御値に対する分光反射率を精度良く推定することができ、従って任意の掛け合わせのデバイス制御値に対する印刷物の再現色を容易に推定することが可能となる。また、必要とする測定が少ないことから、少ない面積で測定のためのパッチを出力することができ、印刷の面内ばらつき等の影響を受けないという特徴もある。また、分割設定値の測定値を用いて予測を行うことにより、中間調においても実際の測定値を反映することが可能となるため、中間調における予測精度が向上するという特徴もある。
また、本発明に記載の設定値算出方法によれば、上記色情報処理方法を使用することで、印刷の面内ばらつきによる影響を受けにくいといった特徴を引き継ぎつつ、任意の所望色の測色値、もしくは分光反射率を再現するためのデバイス制御値を容易に算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態による色情報処理方法を、図面を参照して説明する。
図1は本実施形態による色情報処理装置の構成を示すブロック図である。この図において符号1は色情報処理装置である。そして、色情報処理装置1は、測定分光反射率受付部(第一、第二および第三分光反射率受付手段)11、記憶部12、数式記憶部13、実効面積率算出部(実効面積率算出手段)14、実効面積率算出関数生成部(実効面積率算出関数生成手段)15、一次色分割設定値推定分光反射率算出部(一次色分割設定値分光反射率算出手段)16、分光重み付け係数算出部(分光重み付け係数算出手段)17、分光反射率算出部(分光反射率算出手段)18、測色値算出部(測色値算出手段)19、算出結果表示部(算出結果表示手段)20、設定値入力部(設定値入力手段)21を備えている。
【0022】
そして、色情報処理装置1は任意の設定値の掛け合わせに対応する分光反射率および測色値を予測する後述の処理を行う。
【0023】
図2は本発明の一実施形態による色情報処理方法の処理の流れを表すフローチャートである。このフローチャートにそって各ステップでの処理の詳細を説明する。なお、この実施例ではCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の4原色の面積変調により色を再現する印刷を対象とする。
【0024】
(1)用紙、一次色ベタ、一次色ベタの掛け合わせの測定(ステップS101)
用紙、一次色ベタ(C,M,Y,K)、一次色ベタの掛け合わせ(CM, MY, CY, CK, MK, YK, CMY, CMK, MYK, CYK, CMYK)の計16色について、分光反射率を測定する。測定された分光反射率は測定分光反射率受付部11を通して装置に読み込まれ、記憶部12に保持される。なお上記一次色ベタとはC,M,Y,Kの何れかの一次色が面積率100%で印刷されている状態であり、またベタ掛け合わせとは複数の一次色が全て面積率100%で印刷されている状態のことである。
【0025】
(2)一次色ステップ測定(ステップS102)
CMYKの各一次色のデバイス制御値(0〜100%)を任意のステップで変化させたパッチの分光反射率を測定する。本実施例では各一次色のステップは10%刻みとする。また、面積率の小さい用紙付近の色については、後述するように他の部分と特性が異なるため、その特性をより正確に把握するために、10%まで2%刻みの一次色を同様に測定する。
このステップにおける測定値もステップS101と同様に測定分光反射率受付部11を通して装置に読み込まれ、記憶部12に保持される。
【0026】
(3)各一次色に対する分割設定値の決定と分割設定値の掛け合わせの測定(ステップS103)
各一次色に対して任意の分割設定値を決定する。ここで分割設定値は一次色を表す各デバイス制御値(0〜100%)の各値による多次元(一次色がC,M,Y,Kの場合は4次元)の論理空間を複数に分割する際の分割点に相当する設定値であり、C,M,Y,K各方向、任意の間隔、任意の個数の分割設定値を定めることができる。具体的には、例えばCyanの方向を3分割する際は、例えば30%と80%に分割設定値をおき、デバイス制御値のCyan方向を(0〜30)(30〜80)(80〜100)に3分割するということになる。(この場合Cyan方向の分割設定値は、両端の値も含めた0%、30%、80%、100%の4点になる。)この例に示した通り、分割設定値は均等間隔でなくてもよく、また、すべての一次色について共通の分割設定値とする必要はない。また、分割を行わない場合、その一次色に対する分割設定値は0%と100%であると考えることができる。
【0027】
本実施例では、各一次色の設定値50%を分割設定値とする例を説明する。(すなわち各一次色に対する分割設定値は0%、50%、100%の3点となる)50%を分割設定値とする場合、測定が必要な掛け合わせは、CMYKの各原色に対して0%、50%、100%を組み合わせた全81通りの掛け合わせとなる。このステップでは、これらのうち、ステップS101で測定した掛け合わせ(16色)を除いた65の掛け合わせについて分光反射率を測定する。
このステップにおける測定値もステップS101と同様に測定分光反射率受付部11を通して装置に読み込まれ、記憶部12に保持される。
【0028】
(4)設定値と実効面積率の関係を求める(ステップS104)
ステップS101、ステップS102の各ステップで得られた分光反射率データから、任意の一次色のデバイス制御値に対する分光反射率を求めるため、任意のデバイス制御値sに対応する分光反射率を次式(7)のように表現する。
【0029】
【数4】

【0030】
上記式(7)のR(λ)について説明する。このパラメータは、面積変調により色を再現する印刷で発生する光学的ドットゲインと呼ばれる現象を考慮するために加えられている。
【0031】
図3は光学的ドットゲインが発生する原理を示す図である。
図3に示したように、通常インクが乗った部分では、インク部分から入射した光が再びインク部分から射出してくるが(図中C)、インク部と用紙部の境界部分では、インク部から入射した光が用紙部から射出したり(図中B)、用紙部から入射した光がインク部から射出する(図中A)ことにより、観測されるインクの面積率は実際のインク面積率と異なることとなる。
図4はドットゲインの近似方法を説明する図である。
本実施例では図4に示すように光学的ドットゲインによる発色をベタ部とは異なる分光反射率を持った仮想的な原色が存在するものと想定し、その分光反射率をR(λ)としている。
【0032】
次にR(λ)を既知のデータで表現するために以下の式を考える。
【0033】
【数5】

【0034】
この式で表されるK(λ)はインクの吸光率と考えることができる。先に示した仮想的な原色についても同様な式が定義できる。
【0035】
【数6】

【0036】
光学的ドットゲインにより発生する仮想的な原色について、ベタ部ではインク層を2回通過するのに対し、光学的ドットゲインが発生する部分ではインク層を1回のみ通過することから、上記吸光率が半分になるとすると、
【0037】
【数7】

【0038】
とすることができる。なお、二次的原色の分光反射率R(λ)を求める際、光の吸収率が1/2になると仮定して式(4)の右辺の係数を決定したが、光の吸収率がm倍(0<m<1)になるとして式(11)のように表し、その後の面積率の最適化計算による式(7)のrms値の原色ごとの合計が、それぞれ最小となるように、mの値を決定しても良い。
【0039】
【数8】

【0040】
そして、式(10)に式(8)、式(9)を代入することによりR(λ)は既知のデータから次の式で表される。
【0041】
【数9】

【0042】
この式を式(7)に代入することにより、任意のデバイス制御値に対する分光反射率の推定値は次式で表される。
【0043】
【数10】

【0044】
ここで、ステップS102で実際に測定した一次色ステップの実測値R(s,λ)と推定値
【0045】
【数11】

【0046】
の誤差が最小となるように下記の式(14)のrmsが最小となるようなa,aを最適化手法を用いて計算することにより、実測値の存在するデバイス制御値に対する実効面積率a,aが求められ、図5に示すような傾向を示す。
【0047】
【数12】

【0048】
,aをそれぞれデバイス制御値sの関数として近似することにより、任意のデバイス制御値sに対する実効網点面積率を計算することができるようになり、式(13)から任意のデバイス制御値に対する一次色の分光反射率を推定することができるようになる。なお、本実施例ではa,aともにsの2次関数で近似するものとする。ただし、図5に示すように、デバイス制御値の小さい部分において、aは0となる傾向がある。これは図6に示すように、デバイス制御値の小さい部分では描画される網点の大きさが小さく、インク層を2回通過する光が非常に少ないためであると考えられる。この特性を把握し、近似式に反映することが肝要であるため、本実施例ではステップS102の一次色ステップ測定のステップにおいて、10%までの2%刻みのステップを測定した。これにより、aの近似式は以下の式(15)に示すような条件付きの2次式となる。
【0049】
【数13】

【0050】
また、aは以下のような二次式で近似することができる。
【0051】
【数14】

【0052】
これらの計算を各一次色について実行することにより、それぞれの一次色でのデバイス制御値と実効面積率の関係を表す関数a1j(s),a2j(s)<j=C,M,Y,K>を求めることが可能となり、これらを用いて各一次色の任意のデバイス制御値に対する分光反射率を推定することができる。
このステップで用いる各種の計算式は、数式記憶部13にあらかじめ保持されており、実効面積率算出部14、ならびに実効面積率算出関数生成部15が必要に応じてこれらを読み出して使用する。実効面積率算出部14は記憶部12に保持された一次色の測定結果を読み出し、実効面積率を計算する。実効面積率算出関数生成部15は、実効面積率算出部14から算出された実効面積率をもとに、実効面積率算出関数を生成し、必要な結果を記憶部に保持する。
【0053】
(5)一次色分割設定値に対する推定分光反射率を計算(ステップS105)
各一次色の分割設定値に対して、式(13)および式(15)並びに式(16)を用いて推定分光反射率を算出する。算出した推定分光反射率は記憶部12に保持される。
【0054】
(6)分光重み付け係数の計算(ステップS106)
先に示した光学的ドットゲインによる影響を、ここでは任意の設定値に対する一次色の分光反射率が、その設定値に隣接する分割設定値から推定される分光反射率の線形和で表されるとし、その線形和の二つの項の重み付け係数が波長の関数として変化するとして以下の式で表すこととする。
【0055】
【数15】

【0056】
式(17)においてsは求める任意の設定値より小さくその設定値に隣接する分割設定値(ただし求める任意の設定値が0の場合にはs=0)、sは求める任意の設定値以上でその設定値に隣接する分割設定値であり、本実施例のように50%に分割設定値を置いた場合には、求める任意の設定値が50%以下の場合には0%と50%、求める任意の設定値が50%を超える場合には50%と100%がそれぞれs,sに対応する。
【0057】
この式においてb(s,λ)は、隣接する分割点の分光反射率から任意の設定値に対する分光反射率を線形和で求める際の分光重み付け係数と考えることができる。この式をb(s,λ)について解くと次式を得る。
【0058】
【数16】

【0059】
ステップS104で、
【0060】
【数17】

【0061】
は任意のデバイス制御値sに対して求めることができることから、式(18)を用いて任意のデバイス制御値sに対する分光重み付け係数を計算することができる。
このステップにおける計算は、ユーザが設定値入力部21を通して色予測を行う任意の設定値を指定したときに行われる。また、このステップで使用する数式は数式記憶部13に保持されており、分光重み付け係数算出部17が必要に応じて読み出して使用する。
【0062】
(7)ノイゲバウアー方程式による分光反射率の推定(ステップS107)
各一次色の分光重み付け係数を計算するのに使用した分割設定値の掛け合わせを原色として持つ分光ノイゲバウアー方程式に、ステップS106で求めた分光重み付け係数を代入することにより、下記の式(19)を得る。
【0063】
【数18】

【0064】
式(19)におけるRc,m,y,k(λ)におけるc,m,y,kの添字u,lはそれぞれ、求める対象となる設定値sより小さく設定値sに最も近い分割設定値、求める対象となる設定値s以上で該設定値sに最も近い分割設定値に対応している。たとえば、本実施例のように各一次色の分割設定値を50%と設定し、求める対象となる設定値が(C,M,Y,K)=(10,75,25,30)であった場合には、cはシアン50%、cはシアン0%を表し、mはマゼンタ100%、mはマゼンタ50%を表す。よって例えば
【0065】
【数19】

【0066】
は、(C,M,Y,K)=(0,100,50,0)の掛け合わせに対応する分光反射率を表す。
この式を用いることにより、任意のデバイス制御値の掛け合わせに対する分光反射率を推定することができる。
このステップで用いる数式は数式記憶部に保持されており、分光反射率算出部18が必要に応じて読み出して使用する。分光反射率算出部18は、分光重み付け係数算出部17からの計算結果と、記憶部12に保持された分割設定値に対応する分光反射率を用いて式(19)の計算を行い、任意の設定値に対する分光反射率を算出する。
【0067】
(8)測色値の計算(ステップS108)
前段のステップで求めた分光反射率から、観察光源の分光分布と、等色関数を用いて式(20)により測色値X,Y,Zを求めることができる。
【0068】
【数20】

【0069】
このステップで用いる数式は数式記憶部13に保持されており、測色値算出部19が必要に応じて読み出して使用する。測色値算出部19は分光反射率算出部20により算出された分光反射率と(20)式を用いて、任意の設定値に対する測色値を計算する。
以上のステップで計算された測色値、分光反射率は、算出結果表示部に表示され、また、必要に応じて記憶部に記憶しても良い。
【0070】
以上のステップを通して、任意の設定値の掛け合わせに対する分光反射率ならびに測色値を算出することができる。なお、同一の出力機における複数の掛け合わせについて再現色を求める場合には、上記ステップS101からステップS105の各ステップは一度行えばよく、上記ステップS106以降を繰り返し行うことで、複数の掛け合わせについての再現色を予測することができる。また、ステップS101からステップS103の分光反射率を受け付けるステップは、必ずしもステップS101からステップS103の順に行う必要はなく、異なる順序で行ってもよい。
【0071】
また、ステップS106以降の計算に必要なパラメータを記憶媒体に記録、読み出しする手段を備えている場合には、ステップS101からステップS105の各ステップで得られた計算に必要なパラメータを記憶媒体に書き出しておき、ステップS101からステップS105のステップに替えて計算パラメータ受付手段によりパラメータを読み込むことにより、その後の計算を行うようにしても良い。
【0072】
なお、上述の印刷色再現予測装置は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0073】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0074】
以上、本発明の再現色予測方法の一実施例について説明したが、以下のような変形例も考えることができる。
【0075】
本実施例では、ベタ、ベタの掛け合わせ、用紙の測定および、分割設定値に対応する掛け合わせの測定を実際に行っているが、これらがデータとして取得可能な場合には、測定を行わずこれらのデータを使用しても良い。
また本実施例ではデバイス制御値と実効網点面積率の関係を、デバイス制御値の二次関数で近似しているが、より次数の高い多項式や、その他の関数で近似してもよい。
【0076】
また本実施例では、網点面積率の小さい部分での特性を把握するために0%から10%のデバイス制御値に対して2%刻みの一次色を測定しているが、この範囲をより広く(例えば0%から20%)とったり、測定の間隔を小さく(例えば1%間隔)するなどしても良い。
【0077】
また、測色値としてXYZ値を計算しているが、さらにそれらの値から、CIELABやCIELUVなどの異なる測色値を計算するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の色再現予測装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の色再現予測方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】ドットゲインの発生原理を説明する図である。
【図4】本発明におけるドットゲインの近似方法を説明する図である。
【図5】設定値と実効面積率の関係の例を示す図である。
【図6】網点面積率が小さい部分での光の振る舞いを説明する図である。
【図7】ルックアップテーブルを用いた色再現予測方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0079】
1・・・色情報処理装置
11・・・測定分光反射率受付部
12・・・記憶部
13・・・数式記憶部
14・・・実効面積率算出部
15・・・実効面積率算出関数生成部
16・・・一次色分割設定値推定分光反射率算出部
17・・・分光重み付け係数算出部
18・・・分光反射率算出部
19・・・測色値算出部
20・・・算出結果表示部
21・・・設定値入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面積変調で色を再現する印刷物の任意の掛け合わせに対する分光反射率を推定し、用紙に印刷される色の測色値を予測する色情報処理方法であって、
前記用紙の分光反射率と、複数の各一次色のベタの分光反射率と、前記各一次色ベタ同士の全ての掛け合わせの分光反射率と、の入力を受け付ける第1分光反射率受付ステップと、
各一次色が複数の任意のデバイス制御値で印刷された箇所の各分光反射率を前記各一次色ごとに受け付ける第2分光反射率受付ステップと、
各一次色を任意の間隔で分割する設定値を各一次色ごとに決定し、これら設定値および0%、100%の全組み合わせからなる掛け合わせについて分光反射率を受け付ける第3分光反射率受付ステップと、
ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する推定の分光反射率を、前記ある一次色ベタの分光反射率と、前記ある一次色の前記用紙における未知の実効面積率aと、光学的ドットゲインにより現れる二次的原色の実効面積率aと、前記用紙の分光反射率と、によって表現した分光反射率算出表現式に基づいて、前記ある一次色の任意のデバイス制御値について前記第2分光反射率受付ステップで受け付けた値と、前記ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する前記推定の分光反射率との誤差が、最小となる前記未知の実効面積率aおよびaを、前記一次色の複数の任意のデバイス制御値ごとに算出する実効面積率算出ステップと、
前記任意の複数のデバイス制御値と、前記実効面積率算出ステップで求められた実効面積率aおよびaの関係から、任意のデバイス制御値に対する実効面積率を算出する実効面積率算出関数を、前記一次色ごとに生成する実効面積率算出関数生成ステップと、
前段のステップで求めたデバイス制御値に対する実効面積率を算出する実効面積率算出関数から、各一次色の分割設定値における推定分光反射率を計算するステップと、
一次色の任意の設定値に対する分光反射率を、
対象となる任意の設定値に隣接する各一次色の分割設定値に対して前段のステップで求めた推定分光反射率の線形和として表現し、
上記線形和の二つの項に対する係数が波長の関数であるとして、この係数を分光重み付け係数と定義し、この分光重み付け係数を求めるステップと、
任意の設定値の掛け合わせに対する分光反射率を、
上記の分光重み付け係数を、求めるべき任意の設定値の掛け合わせに隣接する分割設定値の全掛け合わせに対する前記第3分光反射率受付ステップで受け付けた値を原色として持つ分光ノイゲバウアー方程式に代入することにより求めるステップと、
観察光源、等色関数を用いて、前段のステップで求めた分光反射率から再現色の測色値を計算するステップと、
を有することを特徴とする色情報処理方法。
【請求項2】
一次色の任意の設定値に対する分光反射率を、用紙の分光反射率、ベタの分光反射率、ドットゲインを考慮した仮想的原色の分光反射率の3つの分光反射率をそれぞれの実効面積率で重み付けした和として表現するための式として式(1)を用い、
分光重み付け係数として式(2)を用い、
分光ノイゲバウアー方程式として式(3)を用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の色情報処理方法。
【数1】

【数2】

【数3】

【請求項3】
請求項1記載の測色値を算出するステップにおいて算出した測色値と当該測色値を算出した際のデバイス制御値との関係に基づいて、入力された所望の測色値に対応するデバイス制御値を逐次近似により算出することを特徴とする色情報処理方法。
【請求項4】
請求項1記載の分光反射率を求めるステップにおいて算出した分光反射率と当該分光反射率を算出した際のデバイス制御値との関係に基づいて、入力された所望の分光反射率に対応するデバイス制御値を逐次近似により算出することを特徴とする色情報処理方法。
【請求項5】
面積変調で色を再現する印刷物の任意の掛け合わせに対する分光反射率を推定し、用紙に印刷される色の測色値を予測する色情報処理装置であって、
前記用紙の分光反射率と、複数の各一次色のベタの分光反射率と、前記各一次色ベタ同士の全ての掛け合わせの分光反射率と、の入力を受け付ける第1分光反射率受付手段と、
各一次色が複数の任意のデバイス制御値で印刷された箇所の各分光反射率を前記各一次色ごとに受け付ける第2分光反射率受付手段と、
各一次色を任意の間隔で分割する設定値を各一次色ごとに決定し、これら設定値および0%、100%の全組み合わせからなる掛け合わせについて分光反射率を受け付ける第3分光反射率受付手段と、
ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する推定の分光反射率を、前記ある一次色ベタの分光反射率と、前記ある一次色の前記用紙における未知の実効面積率aと、光学的ドットゲインにより現れる二次的原色の実効面積率aと、前記用紙の分光反射率と、によって表現した分光反射率算出表現式に基づいて、前記ある一次色の任意のデバイス制御値について前記第2分光反射率受付処理部で受け付けた値と、前記ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する前記推定の分光反射率との誤差が、最小となる前記未知の実効面積率aおよびaを、前記一次色の複数の任意のデバイス制御値ごとに算出する実効面積率算出手段と、
前記任意の複数のデバイス制御値と、前記実効面積率算出処理部で求められた実効面積率aおよびaの関係から、任意のデバイス制御値に対する実効面積率を算出する実効面積率算出関数を、前記一次色ごとに生成する実効面積率算出関数生成手段と、
実効面積率算出関数生成手段で得られた実効面積率算出関数を用いて、各一次色の分割設定値に対応する推定分光反射率を算出する一次色分割設定値推定分光反射率算出手段と、
一次色の任意の設定値に対する分光反射率を、
対象となる任意の設定値に隣接する各一次色の分割設定値に対して一次色分割設定値推定分光反射率算出手段で求めた推定分光反射率の線形和として表現し、
上記線形和の二つの項に対する係数が波長の関数であるとして、この係数を分光重み付け係数と定義し、この分光重み付け係数を算出する分光重み付け係数算出手段と、
任意の設定値の掛け合わせに対する分光反射率を、
上記の分光重み付け係数を、求めるべき任意の設定値の掛け合わせに隣接する分割設定値の全掛け合わせに対する前記第3分光反射率受付手段で受け付けた値を原色として持つ分光ノイゲバウアー方程式に代入することにより算出する分光反射率算出手段と、
観察光源、等色関数を用いて、分光反射率算出手段で求めた分光反射率から再現色の測色値を算出する測色値算出手段と、
を有することを特徴とする色情報処理装置。
【請求項6】
面積変調で色を再現する印刷物の任意の掛け合わせに対する分光反射率を推定し、用紙に印刷される色の測色値を予測する色情報処理装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記用紙の分光反射率と、複数の各一次色のベタの分光反射率と、前記各一次色ベタ同士の全ての掛け合わせの分光反射率と、の入力を受け付ける第1分光反射率受付処理と、
各一次色が複数の任意のデバイス制御値で印刷された箇所の各分光反射率を前記各一次色ごとに受け付ける第2分光反射率受付処理と、
各一次色を任意の間隔で分割する設定値を各一次色ごとに決定し、これら設定値および0%、100%の全組み合わせからなる掛け合わせについて測定した分光反射率の入力を受け付ける第3分光反射率受付処理と、
ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する推定の分光反射率を、前記ある一次色ベタの分光反射率と、前記ある一次色の前記用紙における未知の実効面積率aと、光学的ドットゲインにより現れる二次的原色の実効面積率aと、前記用紙の分光反射率と、によって表現した分光反射率算出表現式に基づいて、前記ある一次色の任意のデバイス制御値について前記第2分光反射率受付処理で受け付けた値と、前記ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する前記推定の分光反射率との誤差が、最小となる前記未知の実効面積率aおよびaを、前記一次色の複数の任意のデバイス制御値ごとに算出する実効面積率算出処理と、
前記任意の複数のデバイス制御値と、前記実効面積率算出処理で求められた実効面積率aおよびaの関係から、任意のデバイス制御値に対する実効面積率を算出する実効面積率算出関数を、前記一次色ごとに生成する実効面積率算出関数生成処理と、
実効面積率算出関数生成処理で得られた実効面積率算出関数を用いて、各一次色の分割設定値に対応する推定分光反射率を算出する一次色分割設定値推定分光反射率算出処理と、
一次色の任意の設定値に対する分光反射率を、
対象となる任意の設定値に隣接する各一次色の分割設定値に対して一次色分割設定値推定分光反射率算出処理で求めた推定分光反射率の線形和として表現し、
上記線形和の二つの項に対する係数が波長の関数であるとして、この係数を分光重み付け係数と定義し、この分光重み付け係数を算出する分光重み付け係数算出処理と、
任意の設定値の掛け合わせに対する分光反射率を、
上記の分光重み付け係数を、求めるべき任意の設定値の掛け合わせに隣接する分割設定値の全掛け合わせに対する前記第3分光反射率受付処理で受け付けた値を原色として持つ分光ノイゲバウアー方程式に代入することにより算出する分光反射率算出処理と、
観察光源、等色関数を用いて、分光反射率算出処理で求めた分光反射率から再現色の測色値を算出する測色値算出処理と、
を実行させるプログラム。
【請求項7】
面積変調で色を再現する印刷物の任意の掛け合わせに対する分光反射率を推定し、用紙に印刷される色の測色値を予測する色情報処理装置であって、
前記用紙の分光反射率と、複数の各一次色のベタの分光反射率と、前記各一次色ベタ同士の全ての掛け合わせの分光反射率と、
各一次色が複数の任意のデバイス制御値で印刷された箇所の各分光反射率と、
各一次色を任意の間隔で分割する設定値を各一次色ごとに決定し、これら設定値および0%、100%の全組み合わせからなる掛け合わせにおける分光反射率と、
ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する推定の分光反射率を、前記ある一次色ベタの分光反射率と、前記ある一次色の前記用紙における未知の実効面積率aと、光学的ドットゲインにより現れる二次的原色の実効面積率aと、前記用紙の分光反射率と、によって表現した分光反射率算出表現式に基づいて、前記ある一次色の任意のデバイス制御値について、前記各一次色が複数の任意のデバイス制御値で印刷された箇所の各分光反射率の値と、前記ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する前記推定の分光反射率との誤差が、最小となるように求められた前記未知の実効面積率aおよびaとデバイス制御値との関係から算出された実効面積率算出関数と、
前記実効面積率算出関数を用いて算出された、各一次色の分割設定値に対応する推定分光反射率と、
を計算パラメータとして受け付ける計算パラメータ受付手段と、
一次色の任意の設定値に対する分光反射率を、
対象となる任意の設定値に隣接する各一次色の分割設定値に対して計算パラメータとして受け付けた推定分光反射率の線形和として表現し、
上記線形和の二つの項に対する係数が波長の関数であるとして、この係数を分光重み付け係数と定義し、この分光重み付け係数を算出する分光重み付け係数算出手段と、
任意の設定値の掛け合わせに対する分光反射率を、
上記の分光重み付け係数を、求めるべき任意の設定値の掛け合わせに隣接する分割設定値の全掛け合わせを原色として持つ分光ノイゲバウアー方程式に代入することにより算出する分光反射率算出手段と、
観察光源、等色関数を用いて、分光反射率算出手段で求めた分光反射率から再現色の測色値を算出する測色値算出手段と、
を有することを特徴とする色情報処理装置。
【請求項8】
面積変調で色を再現する印刷物の任意の掛け合わせに対する分光反射率を推定し、用紙に印刷される色の測色値を予測する色情報処理装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記用紙の分光反射率と、複数の各一次色のベタの分光反射率と、前記各一次色ベタ同士の全ての掛け合わせの分光反射率と、
各一次色が複数の任意のデバイス制御値で印刷された箇所の各分光反射率と、
各一次色を任意の間隔で分割する設定値を各一次色ごとに決定し、これら設定値および0%、100%の全組み合わせからなる掛け合わせにおける分光反射率と、
ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する推定の分光反射率を、前記ある一次色ベタの分光反射率と、前記ある一次色の前記用紙における未知の実効面積率aと、光学的ドットゲインにより現れる二次的原色の実効面積率aと、前記用紙の分光反射率と、によって表現した分光反射率算出表現式に基づいて、前記ある一次色の任意のデバイス制御値について、前記各一次色が複数の任意のデバイス制御値で印刷された箇所の各分光反射率の値と、前記ある一次色の任意のデバイス制御値に対応する前記推定の分光反射率との誤差が、最小となるように求められた前記未知の実効面積率aおよびaとデバイス制御値との関係から算出された実効面積率算出関数と、
前記実効面積率算出関数を用いて算出された、各一次色の分割設定値に対応する推定分光反射率と、
を計算パラメータとして受け付ける計算パラメータ受付処理と、
一次色の任意の設定値に対する分光反射率を、
対象となる任意の設定値に隣接する各一次色の分割設定値に対して計算パラメータとして受け付けた推定分光反射率の線形和として表現し、
上記線形和の二つの項に対する係数が波長の関数であるとして、この係数を分光重み付け係数と定義し、この分光重み付け係数を算出する分光重み付け係数算出処理と、
任意の設定値の掛け合わせに対する分光反射率を、
上記の分光重み付け係数を、求めるべき任意の設定値の掛け合わせに隣接する分割設定値の全掛け合わせを原色として持つ分光ノイゲバウアー方程式に代入することにより算出する分光反射率算出処理と、
観察光源、等色関数を用いて、分光反射率算出処理で求めた分光反射率から再現色の測色値を算出する測色値算出処理と、
を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−43286(P2007−43286A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222742(P2005−222742)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】