色材を充填または被覆した改質有機系中空短繊維及び化粧料
【課題】短繊維を着色素材として用いようとすると、着色力が不足する問題があり、着色力を優先すると繊維の特性が劣化する問題があった。また、実用に耐える隠蔽素材として短繊維が検討された例は知られていなかった。
【解決手段】有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆することで、より鮮やかな発色を有し、透明感と隠蔽性を両立させた改質有機系中空短繊維と、その改質有機系中空短繊維を配合することで、肌の質感や発色性を向上させた化粧料。
【解決手段】有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆することで、より鮮やかな発色を有し、透明感と隠蔽性を両立させた改質有機系中空短繊維と、その改質有機系中空短繊維を配合することで、肌の質感や発色性を向上させた化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆した改質有機系中空短繊維及び同改質有機系中空短繊維を配合した化粧料に関する。
さらに詳しくは、有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆することで、より鮮やかな発色を有し、透明感と隠蔽性を両立させた改質有機系中空短繊維と、その改質有機系中空短繊維を配合することで、肌の質感や発色性を向上させた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、本発明の技術的背景について説明する。中空短繊維は有機系、無機系共に公知であり、各種のものが知られている。例えば、特許文献1には睫毛用化粧料として異形断面空中繊維を用いることが記載されており、特許文献2、3には繊維状中空無機化合物を化粧料に配合することが記載されている。一方、特許文献1には中空短繊維が任意に染色されていても良いとの記載がある。元々合成樹脂系の中空を含む短繊維は、樹脂の段階で染色や着色させることが良く行われている。例えば特許文献4は黒色に着色させた短繊維についての技術が開示されており、着色した繊維の製造方法として、周知の溶融紡糸法あるいは溶液紡糸法を用い、原料として合成または天然樹脂に該カーボンブラックをあらかじめ配合混合しておき繊維化する方法が述べられている。この際、「黒酸化鉄、低次酸化チタンを用いた場合では発色力が弱いためより多くの着色剤を入れる必要が発生し、それに伴って繊維の柔軟性や折損強度などが影響を受ける」ことも記載されており、繊維に色材を高濃度で配合して着色力を高めようとすると、繊維自体の特性が劣化することが判る。そのため、従来は特許文献5〜7のように繊維自体を染色した中空短繊維自体は知られている(但し、特許文献7には中空の記載はない)ものの、色材の配合量に限定があるため、その着色力は比較的弱めであった。
【0003】
一方、酸化チタンに代表される隠蔽素材は光学的に隠蔽力が最大となる粒子径が存在している。例えばルチル型の酸化チタンの場合では一次粒子径が0.2〜0.3μmの範囲が該当し、白色塗料などに用いられる顔料級酸化チタンはこの粒子径範囲付近に粒子径が設定されている。そして、この粒子径を外れると隠蔽力は低下するため、特許文献7にあるように化粧料などでは透明感と隠蔽力を両立させるために粒子径をずらした素材を用いることが行われている。ここで、これらの隠蔽素材は粒子径以外にも塗膜中での立体的な配置によっても隠蔽性は変化する。例えば、雲母チタンのように平板状の形態を持つ雲母上に酸化チタンの被覆層がある顔料は被覆された膜厚が0.2〜0.3μmの範囲にあるものでも隠蔽力は小さく、隠蔽素材のみからなる薄膜も隠蔽力が小さい。隠蔽力を得るためにはある程度の厚さの塗膜中に隠蔽素材が分散していることが必要であり、塗料などでは目的に応じて隠蔽性が確保できる膜厚を設定して塗工が行われる。しかしながら、隠蔽素材を分散して均一配合する技術はあるものの、隠蔽素材を塗膜中で立体的に制御して配置する技術は、半導体などに用いられる積層技術などを用いる必要があり、高価であり、量産性に問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2006−273864号公報
【特許文献2】特開2005−280932号公報
【特許文献3】特開2007−45772号公報
【特許文献4】特開2007−39861号公報
【特許文献5】特開2007−210894号公報
【特許文献6】特開2006−52203号公報
【特許文献7】特開2006−347890号公報
【特許文献8】特開平10−45631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
短繊維を着色素材として用いようとすると、着色力が不足する問題があり、着色力を優先すると繊維の特性が劣化する問題があった。また、実用に耐える隠蔽素材として短繊維が検討された例は知られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明人は鋭意検討した結果、短繊維として有機系中空短繊維を用い、その中空部に色材を充填または被覆することで、繊維の特性を劣化させることなく、より鮮やかな発色を有し、透明感と隠蔽性を両立させた改質有機系中空短繊維が得られることを見出した。さらに、中空部に色材を充填または被覆する際に、親水性色材と揮発性撥水性溶剤を含む溶液を有機系中空短繊維に充填した後、揮発性撥水性溶剤を除去し、有機系中空短繊維の内面に親水性色材の濃淡分布を形成させることで、親水性色材を空間的に立体的に配置することが可能となり、例えば酸化チタンの場合では、隠蔽性と透明感を高い次元で両立させることが可能となった。そして、この改質有機系中空短繊維を化粧料に配合することで、肌の質感や発色性を向上させた化粧料が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆した改質有機系中空短繊維にある。
【0008】
第2の本発明は、親水性色材と揮発性撥水性溶剤を含む溶液を有機系中空短繊維に充填した後、揮発性撥水性溶剤を除去することで、有機系中空短繊維の内面に親水性色材の濃淡分布を形成させることを特徴とする上記の改質有機系中空短繊維にある。
【0009】
第3の本発明は、上記の改質有機系中空短繊維を配合した化粧料にある。
【発明の効果】
【0010】
以上説明するように、本発明は、短繊維として有機系中空短繊維を用い、その中空部に色材を充填または被覆することで、繊維の特性を劣化させることなく、より鮮やかな発色を有し、透明感と隠蔽性を両立させた改質有機系中空短繊維が得られること、そして、この改質有機系中空短繊維を化粧料に配合することで、肌の質感や発色性を向上させた化粧料が得られることは明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、上記本発明を詳細に説明する。
本発明は、有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆した改質有機系中空短繊維を用いる。本発明で用いる有機系中空短繊維の材質としては、有機系化合物から構成される素材が挙げられる。有機系の方が素材の透明性に優れ、発色が良くなるのに対して無機系だと発色が上がりにくく、光学特性が向上しにくい問題がある。有機系中空短繊維の素材の例としては、天然物としてはカボック綿、パンヤ綿等の木綿が挙げられ、合成物としてはナイロン、アクリル、ウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、セルロース、セルローストリアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリイミド等が挙げられるが従来公知の樹脂であれば特に限定されない。この内、特にカボック綿、パンヤ綿等の木綿は粉体としての感触に優れる傾向があり、発色にも優れ、また漂泊操作等によって有機系中空短繊維の撥水性、親水性が調整しやすいため好ましい。本発明で言う短繊維としては、繊維長が1μm〜10mmの範囲にあるものを指すが、粉体化粧料等には1〜200μmの範囲の繊維長を持ったものがよれが生じにくいことから好ましく、睫毛用化粧料等繊維の長さが必要な場合では0.1〜10mmの範囲の繊維長を持つものが好ましい。本発明で用いる中空部の大きさは特に限定されないが、充分な発色が欲しい場合では穴の最大径が1μm以上の中空部を有するものを用いることが好ましい。中空部の形状は円形、不定形、三角形、楕円、星形など特に限定されない。また、中空繊維の太さに対する中空部の大きさも特に限定されない。本発明で用いる有機系中空短繊維の太さとしては、断面の最大径を基準として、0.1μm〜500μmの範囲であれば特に限定されない。また、本発明で用いる中空繊維の内、合成物を用いる場合では、樹脂中に初めから色材が含まれているものを用いても構わない。また、事前に染色操作が行われていてもいなくても構わない。本発明で用いる有機系中空短繊維は中空長繊維をカッターで切断したり、粉砕操作により切断することにより短繊維化して得る方法が一般的である。繊維長の分布は狭くても広くても構わないが、なるべく狭いものを用いた方が製品の品質管理が容易になるメリットがあり、色材によっては発色性やや異なってくる。
【0012】
本発明では、有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆するが、色材は中空部のみには存在せず、外周部にも被覆され得る。特に星形や井形など複雑な外形の断面を持つ繊維の場合では、外周部にもかなりの量の色材が被覆される。この場合、色材の被覆量が多いと繊維の特性に影響を与える場合がある。このため、外周部は円形や楕円形などあまり凹凸を有しない方が繊維の各種特性に色材が与える影響を少なくできる。本発明で言う中空部とは、中空の周囲が繊維の材質で覆われている部位を指し、必ずしも繊維断面の中央部に存在していなくても構わない。また中空部の数は繊維断面あたり1以上の数を有していても構わない。
【0013】
本発明で言う、有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆する際の「充填」とは、色材が中空部全体に存在している状態を指し、「被覆」とは、中空部の内壁を均一または不均一に色材が覆っている状態を指す。
【0014】
本発明で用いる有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆する方法としては、有機系中空短繊維が溶液を吸い込みやすい特性を利用し、有機系中空短繊維と色材を分散させた溶液を混合した後、揮発性成分を除去する方法が挙げられる。この際、有機系中空短繊維100質量部あたりの、色材を分散させた溶液の吸収量を調べておき、なるべく余分な溶液を投入しないことが好ましい。有機系中空短繊維が保持できる以上の溶液を供給すると、その分は繊維間に保持されることになり、結果として有機系中空短繊維の中空部だけでなく、外周部に色材が被覆される割合が増えてしまうことになり、感触や光学特性が変化するだけでなく、量産時の品質特性がばらつく原因になる。逆に適切な量の溶液を供給すれば溶液は主に有機系中空短繊維の内部に保持されるので、中空短繊維の外部にはあまり存在しなくすることができる。量産時の品質を安定させたい場合では、一度中空部の充填または被覆を終わらせてから、外周部の処理をすることも好ましい。また、色材を分散させた溶液の粘度は、中空部に吸い込まれ易くするために動粘度は500mm2/s以下が好ましく、さらに好ましくは100mm2/s以下が挙げられる。粘度が高くなると、溶媒の種類や分散剤の種類、量などに影響されるものの、溶液が有機系中空短繊維の入り口付近で詰まってしまい、内部にまで充分浸透できなくなる傾向が強い。尚、後述するように中空部の入口を閉鎖するためにわざと高粘度の溶液を用いることもあるが、これは目的が異なる。色材を分散させた溶液は、色材と水、油剤、揮発性溶媒から選ばれる液状成分からなり、場合によって樹脂成分や界面活性剤(分散剤)等の補助成分を含む。揮発性成分の除去方法としては、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥やそれらの組み合わせなどの方法が挙げられる。加熱乾燥する場合は、短繊維や色材の耐熱温度に注意しながら実施することが必要である。一般的には加熱温度は60〜140℃程度の温度範囲が好ましい。
【0015】
ここで言う油剤、揮発性溶媒の例としては、例えば低級アルコール、揮発性炭化水素油、揮発性シリコーン類、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、アセトン、酢酸エチル、石油エーテル、テレピン油、オレンジオイル、テトラクロロエチレン、フルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロポリエーテル、水などの揮発性溶媒、流動パラフィン、スクワラン、α−オレフィンオリゴマー等の炭化水素油、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール、オクタン酸セチル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、トリイソステアリン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、リシノール酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、トリイソステアリン酸グリセリル等のエステル油、オリーブ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油等の植物油、液状ラノリン等の動物油、シリコーンオイル、アマニ油などの乾性油等が挙げられる。尚、揮発性溶媒の特殊な例としてアクリルモノマーなど樹脂のモノマーを用いることもできる。
【0016】
ここで言う色材としては、工業用に用いられる色材であれば特に問題ないが、化粧料に用いる場合は人体への安全性が確保された色材を用いる必要がある。本発明で用いる色材の例としては、例えば無機粉体、有機粉体、界面活性剤金属塩粉体、有色顔料、パール顔料、金属粉末顔料、タール色素、天然色素等があげられ、具体的には、無機粉体としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン、シリカ等;有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロースパウダー、シルクパウダー、12ナイロンや6ナイロン等のナイロンパウダー、ポリアクリルパウダー、ポリアクリルエラストマー、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、微結晶繊維粉体、デンプン末、ラウロイルリジン等;界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム等;有色顔料としては、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、Yー酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄鉛、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料、スピネルフェライト、六方晶フェライト、ガーネットフェライト等のフェライト系顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した合成樹脂粉体等;パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母、酸化チタン・酸化鉄被覆マイカ等;金属粉末顔料としては、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー、ステンレスパウダー、金、銀等;コロイドとしては金コロイド、銀コロイド、白金コロイド等;タール色素としては、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等;天然色素としては、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等、蛍光材料から選ばれる顔料が挙げられる。また、この顔料は撥水化や親水化などの表面処理がなされていても構わない。
【0017】
これらの色材の粒度は有機系中空短繊維の中空部に侵入できる大きさである必要があり、侵入ができない大きさの場合は、有機系中空短繊維の外周を被覆する後処理の用途として用いる以外は使用できない。色材が有機系中空短繊維の中空部に侵入できるか否かは、有機系中空短繊維と色材を分散させた溶液を混合し、揮発性成分を除去した後に、実態顕微鏡、光学顕微鏡または電子顕微鏡などを用いて実際に色材が中空部に侵入できているか否かを確認することで判断できる。一次粒子径が中空部の大きさより充分に小さくても凝集などにより大きな二次粒子が生成して実質的に侵入できない場合もあるので、侵入の有無をきちんと評価することは重要である。また、改質有機系中空短繊維の品質を安定させるためにも、色材は何らかの分散処理が施されていることが好ましい。分散処理の例としては、超音波による分散、ビーズミルやディスパー、アトライターなどの分散機を用いた分散、ジェットミルなどの粉砕機を用いた分散などが挙げられる。上記の条件に従った上での一般論としては、本発明で用いる色材の一次粒子径としては例えば1nm〜50μmの大きさの範囲にあるものが好ましく、さらに好ましくは10nm〜1μmの大きさの範囲にあるものが挙げられる。
【0018】
本発明で用いる有機系中空短繊維の質量に対する色材の充填または被覆割合は、有機系中空短繊維の比重と色材の比重によって大きく変化するため一概に規定しにくいが、例えば有機系中空短繊維100質量部に対して、色材が1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは1〜100質量部の範囲を挙げることができる。色材の量を多くしたい場合には、天然物の木綿系の有機系中空短繊維を用いると良い。これは有機系中空短繊維の吸油量が大きいことから、導入できる色材の量が増やせるためである。
【0019】
本発明では、改質有機系中空短繊維を得る方法として有機系中空短繊維と色材を分散させた溶液を混合した後、揮発性成分を除去する方法が挙げられるが、通常この方法を用いると中空部は色材によってほぼ均一に充填または被覆される。しかしながら、特定の組み合わせを用いた場合では、中空部の内壁に色材に網目状または水玉状のパターンを形成させることが可能であり、このようなパターンを形成させた改質有機系中空短繊維は、色材によっては高い隠蔽力と透明性を両立しているなど、独特の光学特性を持つ場合が多い。このようなパターンを形成させるためには、まず親水性色材と揮発性撥水性溶剤を含む溶液を有機系中空短繊維に充填した後、揮発性撥水性溶剤を除々に除去することで、中空部の内壁表面で親水性色材と揮発性撥水性溶剤の相分離を生じさせ、有機系中空短繊維の内面に親水性色材の濃淡分布を形成させる方法が挙げられる。揮発性撥水性溶剤の揮発性が高すぎると相分離が悪くなるので、例えばデカメチルシクロペンタシロキサンやメチルトリメチコン等の揮発性シリコーンを用いて60℃〜80℃位に加温し、適度に減圧条件を定めると相分離構造が形成されやすい。また、中空部の内壁が親水性を有していた方が相分離構造はできやすく、例えば有機系の有機系中空短繊維を漂白処理したり、シランカップリング剤などで事前処理するなどの操作をしておくことが好ましい。また、さらにシリコーン系樹脂、オクチルトリエトキシシラン等のシリコーン系化合物を併用するとより明確なパターンが得られやすい。この相分離を用いた方法によって中空短繊維の中空径にもよるが、サブミクロンから数百ミクロンの範囲の周期を有するパターンが形成可能である。電磁波の波長の1/2の大きさが最大に散乱されると仮定した場合、サブミクロン〜1mm位の範囲の波長を持つ電磁波が多重的に散乱される材料が得られることになる。この範囲は紫外光〜可視光〜赤外光〜マイクロ波の一部が該当する。
【0020】
本発明の有機系中空短繊維は、有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆した後、さらに各種の表面処理をすることが可能である。撥水化表面処理の例としては、例えばメチルハイドロジェンポリシロキサン処理、シリコーンレジン処理、シリコーンガム処理、アクリルシリコーン処理、フッ素化シリコーン処理などのオルガノシロキサン処理、ステアリン酸亜鉛処理などの金属石鹸処理、シランカップリング剤処理、アルキルシラン処理などのシラン処理、有機チタネート処理。有機アルミネート処理、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩、パーフルオロポリエーテル処理などのフッ素化合物処理、N−ラウロイル−L−リジン処理などのアミノ酸処理、スクワラン処理などの油剤処理、アクリル酸アルキル処理などのアクリル処理などが挙げられ、これらの1種以上を組み合わせて使用することが可能である。また、親水化表面処理の例としては、寒天処理、デオキシリボ核酸処理、レシチン処理、ポリアクリル酸処理、シリカ処理、アルミナ処理、ジルコニア処理などが挙げられる。これらの処理は塗料、インキにおける塗膜中への配合特性や強度改善、化粧料における感触特性、配合特性、化粧持ちなどを改善するのに有効である。
【0021】
本発明で用いる色材を分散させた溶液は、色材と水、油剤、揮発性溶媒から選ばれる液状成分からなり、場合によって樹脂成分や界面活性剤(分散剤)等の補助成分を含む。これら補助成分としては例えば、紫外線吸収剤、蛍光剤、界面活性剤、フッ素化合物、樹脂、粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、塩類、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、生理活性成分等が挙げられる。樹脂成分、界面活性剤の例としては、例えばシリコーン樹脂、シリコーンエラストマー、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂などの樹脂成分、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリル変性シリコーン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のノニオン系の界面活性剤が好ましいものとして挙げられる。樹脂は反応性であっても非反応性であっても構わない。
【0022】
また、紫外線吸収剤としては例えばサリチル酸ホモメンチル、サリチル酸オクチル、サリチル酸トリエタノールアミン等のサリチル酸系;パラアミノ安息香酸、エチルジヒドロキシプロピルパラアミノ安息香酸、グリセリルパラアミノ安息香酸、オクチルジメチルパラアミノ安息香酸、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等のPABA系;4−(2−β−グルコピラノシロキシ)プロポキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸及びその三水塩、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2、2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−N−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、2,5−ジイソプロピルケイ皮酸メチル、2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]−1,3,5−トリアジン、ビスエチルヘキシロキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、メチレンビスベンゾトリアゾルイルテトラメチルブチルフェノール、トリメトキシケイ皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、p−メトキシハイドロケイ皮酸ジエタノールアミン塩等のケイ皮酸系;2−フェニル−ベンズイミダゾール−5−硫酸、4−イソプロピルジベンゾイルメタン等のベンゾイルメタン系;2−シアノ−3,3−ジフェニルプロパ−2−エン酸2−エチルヘキシルエステル(別名;オクトクリレン)、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,4−ジメチル−1,3−ペンタンジオン、シノキサート、メチル−O−アミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、3−(4−メチルベンジリデン)カンフル、オクチルトリアゾン、4−(3,4−ジメトキシフェニルメチレン)−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、メチレンビスベンゾトリアゾルイルテトラメチレンブチルフェノール(別名ビスオクトリゾール)、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンこれらの高分子誘導体、及びシラン誘導体等が例示される。
【0023】
本発明の改質有機系中空短繊維は、その処理時または後処理にて中空部を閉鎖することも好ましい。これは中空部が開口していると、後で利用する際にそこから他の油剤などが侵入し、屈折率が変化してしまうことがあり、特に酸化鉄など着色系の色材を用いた場合では明度、彩度が下がる原因となる。中空部の閉鎖方法としては、色材の充填後に反応性の樹脂形成化合物を投入する方法や、一度中空短繊維の中空部を色材で処理し、さらに溶媒を除去した後に、樹脂や粒子径の大きな色材や高粘度の不揮発性溶液を利用して開口部を閉鎖してしまう方法などが挙げられるが、前者は開口部の閉鎖が不十分になる場合があり、きちんと封鎖したい場合ではコストはかかるものの後者の方法の方が好ましい。後者の方法としては、また揮発性の溶媒に樹脂やワックス等を溶解させ、これを有機系中空短繊維中に充填した後、揮発性溶媒の沸点に近い温度をかけるか、減圧して溶媒を飛びやすくすると、開口部付近に樹脂やワックスが局在するような構造が形成しやすい。また、これらの開口部封鎖処理と表面処理を組み合わせて実施することも可能である。内部が空洞なっている場合では、屈折率差が稼げることから色材の彩度や明度が向上し、濡れなどによる色変化を少なくすることが可能であるが、塗料などの用途では閉鎖部が塗料中の成分によって溶解したり、塗料製造時に物理的に破壊されたりする場合がある。このように開口部の閉鎖だけでは不十分な場合では、明度や彩度は低下するが、改質有機系中空繊維を後処理により中空部内を樹脂や油剤、ワックス等で充填してしまうことも有効である。
【0024】
本発明の改質有機系中空短繊維は化粧料、塗料、樹脂、インク、紙、電磁波遮蔽材、電磁波散乱制御材、光学素子などに用いることが可能である。この中で特に化粧料が好ましい。
【0025】
本発明の化粧料では、改質有機系中空短繊維以外に化粧料で使用される各種の素材、例えば顔料、紫外線吸収剤、油剤、界面活性剤、フッ素化合物、樹脂、粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、生理活性成分等の成分を使用することができる。また、本発明の化粧料としては、マスカラ、ファンデーション、フェイスパウダー、チーク、ネイルカラー、アイシャドウ、ヘアカラー等が好適である。
【0026】
本発明の化粧料に改質有機系中空短繊維を配合する場合では、製剤の質量に対して改質有機系中空短繊維の質量が1〜90質量%の範囲にあることが好ましく、特に好ましくは3〜50質量%の範囲が挙げられる。また、化粧料に本改質有機系中空短繊維を配合する場合においては、中空部分にさらに各種のエキスや保湿剤、紫外線吸収剤などの皮膚有用性成分を保持させることも好ましい。
【0027】
また、本発明の改質有機系中空短繊維は塗工する際に塗工器具の進行方向に並行に繊維の長径方向が配列するという特性も持つ。一方、浸漬による塗工を行えば繊維は配列せずにランダムな配列を取りやすい。この配列の仕方の違いを用いることにより、光学特性や電磁波の特性を制御することが可能である。化粧料の場合も化粧料の塗布方向に並行に改質有機系中空短繊維の長径方向が配列しやすく、この配列現象を利用するとツヤ感を高くできるなどのメリットがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に実施例を挙げ本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
有機系中空短繊維の作成(1)
木綿系天然中空繊維の1種であるカボック繊維を粗粉砕したものの光学顕微鏡写真を図1に示す(中央部の十字軸はスケールで、写真の横幅が1mmとなるように撮影)。この繊維はほとんどストロー状の形態を有していることが判る。このカボック繊維を漂白処理し、微粉砕したものを図1と同条件で光学顕微鏡撮影した写真を図2に示す。図2を画像的に粒度分布を測定したところ、繊維長が50μm未満が31%、50〜100μmが34%、100〜150μmが16%、150〜200μmが11%、200μm以上が8%の分布を有していた。
【0030】
この微粉砕カボック繊維を分級し、肌に塗布した際によれるかどうかを確認したところ、200μm以上の繊維が含まれると肌への密着性が悪化する傾向があることが判った。このことから粉体化粧料用途には200μm以下の繊維長を持つものが好ましいことが判る。
【0031】
有機系中空短繊維の作成(2)
中空ポリエステル長繊維であるセベリス(東レ社製)をファイバースコープを用いて撮影した写真の例を図3に示す(写真の横幅が約1.3mmに相当)。図3を見るとこの繊維がチューブ状の形態を有していることが良く判る。この中空ポリエステル長繊維をカッターミルを用いて粉砕し短繊維化した写真の例を図4に示す(撮影条件は図3と同条件)。
【0032】
有機系中空短繊維の作成(3)
中空ナイロン長繊維を長さ2mmにカッターを用いて切断し、有機系中空短繊維を得た。
【0033】
有機系中空短繊維の作成(4)
木綿(天然系中空長繊維)を漂白し乾燥した後、約100μmの長さにカッターを用いて切断し、有機系中空短繊維を得た。
【0034】
以下では上記の有機系中空短繊維を用いて改質有機系中空短繊維を製造する方法を実施例にて説明する。
【0035】
〔実施例1〕
平均一次粒子径10nmのカーボンブラック8質量部を1600質量部のデカメチルシクロペンタシロキサン(揮発性シリコーン)に超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は500mm2/s以下であった。有機系中空短繊維の作成(1)に記載のカボック繊維を粗粉砕したもの40質量部を混合し、良く攪拌した。得られた混合物を80℃の送風型乾燥機に投入し、揮発性シリコーンを除去した。
得られたカーボンブラック処理有機系中空短繊維をファイバースコープを用いて撮影した写真の例を図5に示す(写真の横幅が約1.3mmに相当)。図5を見ると、有機系中空短繊維中にカーボンブラックが良く充填されていることが判る。本改質有機系中空繊維は強い黒色を示しており、また、樹脂に練りこみで充填できる量をはるかに超えているにも拘わらず、短繊維自体の柔軟性は維持されたままであった。
【0036】
〔実施例2〕
平均一次粒子径0.3μmの黄色酸化鉄20質量部を300質量部のメチルトリメチコン(揮発性シリコーン)と67質量部のトリメチルシロキシケイ酸デカメチルシクロペンタシロキサン溶解液(シリコーン樹脂の1種、固形分30質量%、以下の実施例で使用する場合も同等の組成)との混合溶液に超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は500mm2/s以下であった。ここに有機系中空短繊維の作成(1)に記載のカボック繊維を漂白後微粉砕したもの55質量部を投入し、良く混合した。得られた混合物を60℃の送風型乾燥機に投入し、12時間かけて揮発性シリコーンを除去した。
得られた黄色酸化鉄処理有機系中空短繊維の光学顕微鏡写真を図6に示す(中央部の十字軸はスケールで、写真の横幅が約230μmとなるように撮影)。図6を見ると、中空部の内壁部分の色が濃くなっていることが判る。このことから、本実施例の場合は、黄色酸化鉄は充填ではなく被覆されている状態にあると思われる。また、被覆は均一に行われていることが判る。本改質有機系中空繊維は透明感を有する黄色を示していた。また、本実施例を流動パラフィンと混合したところ、明度の低下が観察された。このことから中空部内部に流動パラフィンが流入することで屈折率が変化したことが予想された。
【0037】
〔実施例3〕
平均一次粒子径0.2μmの真球状酸化チタン20質量部を280質量部のデカメチルシクロペンタシロキサンと67質量部のトリメチルシロキシケイ酸デカメチルシクロペンタシロキサン溶解液との混合溶液に超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は100mm2/s以下であった。ここに有機系中空短繊維の作成(2)で作成した中空ポリエステル短繊維97質量部を投入し、良く混合した。得られた混合物を60℃に加温しながら減圧ポンプを用いて弱く減圧し、揮発性シリコーンを除去した。
得られた真球状酸化チタン処理有機系中空短繊維の光学顕微鏡写真を図7に示す(中央部の十字軸はスケールで、写真の横幅が約390μmとなるように撮影)。図7を見ると、中空部に酸化チタンが充填されている様子が判る。尚、その充填状態と充填密度は図7からも分かるように不均一であるが、特定のパターンを有するものではない。
【0038】
〔実施例4〕
平均一次粒子径0.23μmの顔料級酸化チタン20質量部を250質量部のデカメチルシクロペンタシロキサンと67質量部のトリメチルシロキシケイ酸デカメチルシクロペンタシロキサン溶解液との混合溶液に超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は100mm2/s以下であった。ここに有機系中空短繊維の作成(1)に記載のカボック繊維を漂白後微粉砕したもの55質量部を投入し、良く混合した。送風型乾燥機を用い、60℃で1時間30分乾燥した後、80℃に昇温して12時間乾燥を行い、揮発性シリコーンを除去した。
得られた顔料級酸化チタン処理有機系中空短繊維の光学顕微鏡写真を図8に示す(中央部の十字軸はスケールで、写真の横幅が約49μmとなるように撮影)。図8を見ると、中空部の内壁表面に酸化チタンが粗密状態で分布していることが判る。図8の中央の目盛は1目盛が1.25μmであるので、酸化チタンが数μm程度の大きさで凝集して存在し、その隙間がサブミクロンから1μm程度の大きさであることが判る。
この顔料級酸化チタン処理有機系中空短繊維は透明感を有しながら、高い隠蔽力も有していた。
【0039】
〔実施例5〕
平均一次粒子径0.2μmの真球状酸化チタン40質量部を350質量部のデカメチルシクロペンタシロキサンとオクチルトリエトキシシラン40質量部の混合溶液に超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は100mm2/s以下であった。ここに有機系中空短繊維の作成(1)に記載のカボック繊維を漂白後微粉砕したもの55質量部を投入し、良く混合した。得られた送風型乾燥機を用いて60℃で12時間乾燥し、揮発性シリコーンを除去した。
得られた真球状酸化チタン処理有機系中空短繊維の光学顕微鏡写真を図9に示す(中央部の十字軸はスケールで、写真の横幅が約123μmとなるように撮影)。図9の中央の目盛は1目盛が2.5μmであるので、このことから酸化チタンとオクチルトリエトキシシランからなる網目状構造は数ミクロン程度の大きさの単位で構成されているように見える。
この顔料級酸化チタン処理有機系中空短繊維は透明感を有しながら、高い隠蔽力も有していた。
【0040】
〔実施例6〕
平均一次粒子径1.0μmの大粒子径酸化チタン20質量部を250質量部のデカメチルシクロペンタシロキサンと67質量部のトリメチルシロキシケイ酸デカメチルシクロペンタシロキサン溶解液との混合溶液に超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は100mm2/s以下であった。ここに有機系中空短繊維の作成(1)に記載のカボック繊維を漂白後微粉砕したもの55質量部を投入し、良く混合した。送風型乾燥機を用い、60℃で1時間30分乾燥した後、80℃に昇温して12時間乾燥を行い、揮発性シリコーンを除去した。
得られた顔料級酸化チタン処理有機系中空短繊維の光学顕微鏡写真を図10に示す(中央部の十字軸はスケールで、写真の横幅が約63μmとなるように撮影)。図10を見ると、酸化チタンが水玉状に分布して存在していることが判る。
【0041】
〔実施例7〕
平均一次粒子径35nmのシリカアルミナ処理微粒子酸化チタン20質量部を250質量部のデカメチルシクロペンタシロキサンと67質量部のトリメチルシロキシケイ酸デカメチルシクロペンタシロキサン溶解液との混合溶液に超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は500mm2/s以下であった。ここに有機系中空短繊維の作成(1)に記載のカボック繊維を漂白後微粉砕したもの55質量部を投入し、良く混合した。送風型乾燥機を用い、60℃で1時間30分乾燥した後、80℃に昇温して12時間乾燥を行い、揮発性シリコーンを除去した。
得られたシリカアルミナ処理微粒子酸化チタン処理有機系中空短繊維の光学顕微鏡写真を図11に示す(中央部の十字軸はスケールで、写真の横幅が約250μmとなるように撮影)。図11を見ると、微粒子酸化チタンが細かい不特定パターンを示しながら中空部の内壁を被覆していることが判る。
このシリカアルミナ処理微粒子酸化チタン処理有機系中空短繊維は大変透明性に優れていた。
【0042】
〔実施例8〕
平均一次粒子径0.2μmのシリカ処理酸化チタン20質量部と黄色酸化鉄6質量部とベンガラ0.6質量部と黒酸化鉄0.1質量部と微粒子酸化チタン2質量部の混合、粉砕物を250質量部のデカメチルシクロペンタシロキサンと67質量部のトリメチルシロキシケイ酸デカメチルシクロペンタシロキサン溶解液との混合溶液に超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は500mm2/s以下であった。ここに有機系中空短繊維の作成(4)に記載の木綿繊維を漂白後100μmにカットしたもの55質量部を投入し、良く混合した。送風型乾燥機を用い、60℃で1時間30分乾燥した後、80℃に昇温して12時間乾燥を行い、揮発性シリコーンを除去した。得られた改質有機系中空短繊維は透明感のある肌色を呈しており、光沢に優れており、かつ隠蔽力にも優れていた。
【0043】
〔実施例9〕
平均一次粒子径10nmのカーボンブラック8質量部を1200質量部のイソプロピルアルコールに超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は500mm2/s以下であった。ここに有機系中空短繊維の作成(3)で作成した中空ナイロン短繊維92質量部を投入し、良く混合した。得られた混合物を送風型乾燥機に入れ60℃にて6時間乾燥した。得られた改質有機系中空短繊維は深い黒色と光沢感を示しており、かつ繊維の柔軟性も失っていなかった。
【0044】
〔実施例10〕
平均一次粒子径0.2μmの真球状酸化チタン20質量部を1液型シリコーンRTVゴムのデカメチルシクロペンタシロキサン溶液(尚、シリコーンRTVゴム由来のC8−10イソアルカンとイソプロピルアルコールを含む)360質量部に超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は100mm2/s以下であった。但し、酸化チタンの分散安定性は良くなかった。ここに有機系中空短繊維の作成(1)に記載のカボック繊維を漂白後微粉砕したもの55質量部を投入し、良く混合した。得られた送風型乾燥機を用いて60℃で12時間乾燥し、揮発性シリコーンを除去した。
得られた改質有機系中空短繊維の光学顕微鏡写真を図12に示す(中央部の十字軸はスケールで、写真の横幅が約250μmとなるように撮影)。図12を見ると、開口部付近の酸化チタン濃度が高いこと、中空部内部は不均一に酸化チタンに覆われており、被覆されていない部分あることが判る。このように顔料が均一に分散していないものを用いた場合、中空部内部は均一に充填または被覆されない場合があることが判る。
【0045】
〔実施例11〕
実施例7で作成したシリカアルミナ処理微粒子酸化チタン処理有機系中空短繊維100質量部に1液型シリコーンRTVゴムのデカメチルシクロペンタシロキサン溶液(固形分15質量%、溶液の動粘度は500mm2/s以下)160質量部を加えてよく混合した後、送風乾燥機を用いて70℃で5時間乾燥した。得られた改質有機系中空短繊維は開口部がシリコーンゴムにて良く封鎖されていた。
【0046】
〔実施例12〕
実施例2で作成した黄色酸化鉄処理有機系中空短繊維100質量部に1液型シリコーンRTVゴムのメチルトリメチコン溶液(固形分5質量%、溶液の動粘度は500mm2/s以下)140質量部を加えてよく混合した後、送風乾燥機を用いて90℃で5時間乾燥した。得られた改質有機系中空短繊維は開口部がシリコーンゴムにて良く閉鎖されていた。また、本品を流動パラフィンと混合したところ、明度の低下が実施例2と比較して抑制されていた。
【0047】
〔実施例13〕
実施例7で作成したシリカアルミナ処理微粒子酸化チタン処理改質有機系中空短繊維100質量部にさらに有機系紫外線吸収剤(BASF社製ユビナールAplusB、動粘度160mm2/s)を25質量部吸収させた。本複合処理改質有機系中空短繊維は紫外線防御効果を有していた。
【0048】
〔実施例14〕
実施例9のカーボンブラックで改質した有機系中空短繊維を用い、表1の処方と製造方法に従い化粧料(マスカラ)を得た。尚、表中の単位は質量%である。
【0049】
【表1】
【0050】
製造方法
成分Bを80℃で均一に溶解した成分Aに加えた。次いで成分Cも80℃で均一に混合し、成分Aに除々に加えてよく混合した。攪拌下に徐冷して液温が30℃になったところで成分Dを加え、最後に成分Eを加えてよく混合した後、プラシつき密閉容器に充填して製品を得た。
【0051】
〔比較例1〕
実施例14で用いた有機系中空短繊維の代わりに黒色に染色したナイロン繊維(繊維長2mm)を用いた他は全て実施例14と同様にして製品を得た。
【0052】
以下実施例14および比較例1で作成した化粧料の評価を表2に示す。
女性パネラー10名を用いて、試験品を使用してもらい、使用感をアンケート形式で回答してもらい、評価が悪い場合を0点、評価が良い場合を5点とし、パネラーの平均点数を以って評価結果とした。従って、点数が高い程評価に優れていることを示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2の試験結果から、本発明の実施例は比較例と比べて使用感で同等かやや良い評価であるにもかかわらず、睫毛が長く、より色が濃く見えることが判る。
【0055】
〔実施例15〕
実施例8の改質有機系中空短繊維を用いて、表3の処方と製造方法に基づいてファンデーションを作成した。尚、表中の単位は質量%である。
【0056】
【表3】
【0057】
成分Aをよく混合した後、均一に溶解した成分Bをゆっくりと添加し、さらによく混合、粉砕した後、メッシュを通した。そして、金型を用いて容器に打型して製品を得た。
【0058】
〔比較例2〕
実施例15の改質有機系中空短繊維の代わりに、無機顔料はそのまま、中空有機短繊維はタルクに置き換えた表4の顔料を用いた他は全て実施例15と同様にしてファンデーションを作成した。尚、表中の単位は質量%である。
【0059】
【表4】
【0060】
以下実施例および比較例で作成した化粧料の評価を表5に示す。
女性パネラー10名を用いて、試験品を使用してもらい、使用感をアンケート形式で回答してもらい、評価が悪い場合を0点、評価が良い場合を5点とし、パネラーの平均点数を以って評価結果とした。従って、点数が高い程評価に優れていることを示す。
【0061】
【表5】
【0062】
表5の試験結果から、本発明の実施例は比較例と比べて透明感とカバー力を高い次元で両立しており、ツヤもあるなど質感に優れていること、色くすみがしにくいこと、そして肌が暖かく感じるという新しい機能が発現していることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】 中空繊維の1種であるカボック繊維の光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約1mmに相当)
【図2】 漂白したカボック繊維を微粉砕した場合の光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約1mmに相当)
【図3】 ポリエステル製中空繊維の1種であるセベリス(登録商標)のファイバースコープ像の例(写真の横幅が約1.3mmに相当)
【図4】 ポリエステル製中空繊維の1種であるセベリス(登録商標)を微粉砕したもののファイバースコープ像の例(写真の横幅が約1.3mmに相当)
【図5】 カーボンブラックを充填したカボック繊維粗粉砕物のファイバースコープ像の例(写真の横幅が約1.3mmに相当)
【図6】 黄色酸化鉄を被覆したカボック繊維微粉砕物の光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約230μmに相当)
【図7】 真球状酸化チタンを充填したポリエステル製中空短繊維の光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約390μmに相当)
【図8】 顔料級酸化チタンをパターン化して中空部の内壁に被覆したカボック繊維微粉砕物の光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約49μmに相当)
【図9】 真球状酸化チタンをパターン化して中空部の内壁に被覆したカボック繊維微粉砕物の光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約123μmに相当)
【図10】 大粒子径酸化チタンを水玉状のパターン化して中空部の内壁に被覆したカボック繊維微粉砕物の光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約63μmに相当)
【図11】 シリカアルミナ処理微粒子酸化チタンを不特定パターン化して中空部の内壁に被覆したカボック繊維微粉砕物の光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約250μmに相当)
【図12】 真球状酸化チタンが中空短繊維の開口部付近に多く堆積した場合の光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約250μmに相当)
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆した改質有機系中空短繊維及び同改質有機系中空短繊維を配合した化粧料に関する。
さらに詳しくは、有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆することで、より鮮やかな発色を有し、透明感と隠蔽性を両立させた改質有機系中空短繊維と、その改質有機系中空短繊維を配合することで、肌の質感や発色性を向上させた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、本発明の技術的背景について説明する。中空短繊維は有機系、無機系共に公知であり、各種のものが知られている。例えば、特許文献1には睫毛用化粧料として異形断面空中繊維を用いることが記載されており、特許文献2、3には繊維状中空無機化合物を化粧料に配合することが記載されている。一方、特許文献1には中空短繊維が任意に染色されていても良いとの記載がある。元々合成樹脂系の中空を含む短繊維は、樹脂の段階で染色や着色させることが良く行われている。例えば特許文献4は黒色に着色させた短繊維についての技術が開示されており、着色した繊維の製造方法として、周知の溶融紡糸法あるいは溶液紡糸法を用い、原料として合成または天然樹脂に該カーボンブラックをあらかじめ配合混合しておき繊維化する方法が述べられている。この際、「黒酸化鉄、低次酸化チタンを用いた場合では発色力が弱いためより多くの着色剤を入れる必要が発生し、それに伴って繊維の柔軟性や折損強度などが影響を受ける」ことも記載されており、繊維に色材を高濃度で配合して着色力を高めようとすると、繊維自体の特性が劣化することが判る。そのため、従来は特許文献5〜7のように繊維自体を染色した中空短繊維自体は知られている(但し、特許文献7には中空の記載はない)ものの、色材の配合量に限定があるため、その着色力は比較的弱めであった。
【0003】
一方、酸化チタンに代表される隠蔽素材は光学的に隠蔽力が最大となる粒子径が存在している。例えばルチル型の酸化チタンの場合では一次粒子径が0.2〜0.3μmの範囲が該当し、白色塗料などに用いられる顔料級酸化チタンはこの粒子径範囲付近に粒子径が設定されている。そして、この粒子径を外れると隠蔽力は低下するため、特許文献7にあるように化粧料などでは透明感と隠蔽力を両立させるために粒子径をずらした素材を用いることが行われている。ここで、これらの隠蔽素材は粒子径以外にも塗膜中での立体的な配置によっても隠蔽性は変化する。例えば、雲母チタンのように平板状の形態を持つ雲母上に酸化チタンの被覆層がある顔料は被覆された膜厚が0.2〜0.3μmの範囲にあるものでも隠蔽力は小さく、隠蔽素材のみからなる薄膜も隠蔽力が小さい。隠蔽力を得るためにはある程度の厚さの塗膜中に隠蔽素材が分散していることが必要であり、塗料などでは目的に応じて隠蔽性が確保できる膜厚を設定して塗工が行われる。しかしながら、隠蔽素材を分散して均一配合する技術はあるものの、隠蔽素材を塗膜中で立体的に制御して配置する技術は、半導体などに用いられる積層技術などを用いる必要があり、高価であり、量産性に問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2006−273864号公報
【特許文献2】特開2005−280932号公報
【特許文献3】特開2007−45772号公報
【特許文献4】特開2007−39861号公報
【特許文献5】特開2007−210894号公報
【特許文献6】特開2006−52203号公報
【特許文献7】特開2006−347890号公報
【特許文献8】特開平10−45631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
短繊維を着色素材として用いようとすると、着色力が不足する問題があり、着色力を優先すると繊維の特性が劣化する問題があった。また、実用に耐える隠蔽素材として短繊維が検討された例は知られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明人は鋭意検討した結果、短繊維として有機系中空短繊維を用い、その中空部に色材を充填または被覆することで、繊維の特性を劣化させることなく、より鮮やかな発色を有し、透明感と隠蔽性を両立させた改質有機系中空短繊維が得られることを見出した。さらに、中空部に色材を充填または被覆する際に、親水性色材と揮発性撥水性溶剤を含む溶液を有機系中空短繊維に充填した後、揮発性撥水性溶剤を除去し、有機系中空短繊維の内面に親水性色材の濃淡分布を形成させることで、親水性色材を空間的に立体的に配置することが可能となり、例えば酸化チタンの場合では、隠蔽性と透明感を高い次元で両立させることが可能となった。そして、この改質有機系中空短繊維を化粧料に配合することで、肌の質感や発色性を向上させた化粧料が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆した改質有機系中空短繊維にある。
【0008】
第2の本発明は、親水性色材と揮発性撥水性溶剤を含む溶液を有機系中空短繊維に充填した後、揮発性撥水性溶剤を除去することで、有機系中空短繊維の内面に親水性色材の濃淡分布を形成させることを特徴とする上記の改質有機系中空短繊維にある。
【0009】
第3の本発明は、上記の改質有機系中空短繊維を配合した化粧料にある。
【発明の効果】
【0010】
以上説明するように、本発明は、短繊維として有機系中空短繊維を用い、その中空部に色材を充填または被覆することで、繊維の特性を劣化させることなく、より鮮やかな発色を有し、透明感と隠蔽性を両立させた改質有機系中空短繊維が得られること、そして、この改質有機系中空短繊維を化粧料に配合することで、肌の質感や発色性を向上させた化粧料が得られることは明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、上記本発明を詳細に説明する。
本発明は、有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆した改質有機系中空短繊維を用いる。本発明で用いる有機系中空短繊維の材質としては、有機系化合物から構成される素材が挙げられる。有機系の方が素材の透明性に優れ、発色が良くなるのに対して無機系だと発色が上がりにくく、光学特性が向上しにくい問題がある。有機系中空短繊維の素材の例としては、天然物としてはカボック綿、パンヤ綿等の木綿が挙げられ、合成物としてはナイロン、アクリル、ウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、セルロース、セルローストリアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリイミド等が挙げられるが従来公知の樹脂であれば特に限定されない。この内、特にカボック綿、パンヤ綿等の木綿は粉体としての感触に優れる傾向があり、発色にも優れ、また漂泊操作等によって有機系中空短繊維の撥水性、親水性が調整しやすいため好ましい。本発明で言う短繊維としては、繊維長が1μm〜10mmの範囲にあるものを指すが、粉体化粧料等には1〜200μmの範囲の繊維長を持ったものがよれが生じにくいことから好ましく、睫毛用化粧料等繊維の長さが必要な場合では0.1〜10mmの範囲の繊維長を持つものが好ましい。本発明で用いる中空部の大きさは特に限定されないが、充分な発色が欲しい場合では穴の最大径が1μm以上の中空部を有するものを用いることが好ましい。中空部の形状は円形、不定形、三角形、楕円、星形など特に限定されない。また、中空繊維の太さに対する中空部の大きさも特に限定されない。本発明で用いる有機系中空短繊維の太さとしては、断面の最大径を基準として、0.1μm〜500μmの範囲であれば特に限定されない。また、本発明で用いる中空繊維の内、合成物を用いる場合では、樹脂中に初めから色材が含まれているものを用いても構わない。また、事前に染色操作が行われていてもいなくても構わない。本発明で用いる有機系中空短繊維は中空長繊維をカッターで切断したり、粉砕操作により切断することにより短繊維化して得る方法が一般的である。繊維長の分布は狭くても広くても構わないが、なるべく狭いものを用いた方が製品の品質管理が容易になるメリットがあり、色材によっては発色性やや異なってくる。
【0012】
本発明では、有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆するが、色材は中空部のみには存在せず、外周部にも被覆され得る。特に星形や井形など複雑な外形の断面を持つ繊維の場合では、外周部にもかなりの量の色材が被覆される。この場合、色材の被覆量が多いと繊維の特性に影響を与える場合がある。このため、外周部は円形や楕円形などあまり凹凸を有しない方が繊維の各種特性に色材が与える影響を少なくできる。本発明で言う中空部とは、中空の周囲が繊維の材質で覆われている部位を指し、必ずしも繊維断面の中央部に存在していなくても構わない。また中空部の数は繊維断面あたり1以上の数を有していても構わない。
【0013】
本発明で言う、有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆する際の「充填」とは、色材が中空部全体に存在している状態を指し、「被覆」とは、中空部の内壁を均一または不均一に色材が覆っている状態を指す。
【0014】
本発明で用いる有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆する方法としては、有機系中空短繊維が溶液を吸い込みやすい特性を利用し、有機系中空短繊維と色材を分散させた溶液を混合した後、揮発性成分を除去する方法が挙げられる。この際、有機系中空短繊維100質量部あたりの、色材を分散させた溶液の吸収量を調べておき、なるべく余分な溶液を投入しないことが好ましい。有機系中空短繊維が保持できる以上の溶液を供給すると、その分は繊維間に保持されることになり、結果として有機系中空短繊維の中空部だけでなく、外周部に色材が被覆される割合が増えてしまうことになり、感触や光学特性が変化するだけでなく、量産時の品質特性がばらつく原因になる。逆に適切な量の溶液を供給すれば溶液は主に有機系中空短繊維の内部に保持されるので、中空短繊維の外部にはあまり存在しなくすることができる。量産時の品質を安定させたい場合では、一度中空部の充填または被覆を終わらせてから、外周部の処理をすることも好ましい。また、色材を分散させた溶液の粘度は、中空部に吸い込まれ易くするために動粘度は500mm2/s以下が好ましく、さらに好ましくは100mm2/s以下が挙げられる。粘度が高くなると、溶媒の種類や分散剤の種類、量などに影響されるものの、溶液が有機系中空短繊維の入り口付近で詰まってしまい、内部にまで充分浸透できなくなる傾向が強い。尚、後述するように中空部の入口を閉鎖するためにわざと高粘度の溶液を用いることもあるが、これは目的が異なる。色材を分散させた溶液は、色材と水、油剤、揮発性溶媒から選ばれる液状成分からなり、場合によって樹脂成分や界面活性剤(分散剤)等の補助成分を含む。揮発性成分の除去方法としては、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥やそれらの組み合わせなどの方法が挙げられる。加熱乾燥する場合は、短繊維や色材の耐熱温度に注意しながら実施することが必要である。一般的には加熱温度は60〜140℃程度の温度範囲が好ましい。
【0015】
ここで言う油剤、揮発性溶媒の例としては、例えば低級アルコール、揮発性炭化水素油、揮発性シリコーン類、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、アセトン、酢酸エチル、石油エーテル、テレピン油、オレンジオイル、テトラクロロエチレン、フルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロポリエーテル、水などの揮発性溶媒、流動パラフィン、スクワラン、α−オレフィンオリゴマー等の炭化水素油、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール、オクタン酸セチル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、トリイソステアリン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、リシノール酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、トリイソステアリン酸グリセリル等のエステル油、オリーブ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油等の植物油、液状ラノリン等の動物油、シリコーンオイル、アマニ油などの乾性油等が挙げられる。尚、揮発性溶媒の特殊な例としてアクリルモノマーなど樹脂のモノマーを用いることもできる。
【0016】
ここで言う色材としては、工業用に用いられる色材であれば特に問題ないが、化粧料に用いる場合は人体への安全性が確保された色材を用いる必要がある。本発明で用いる色材の例としては、例えば無機粉体、有機粉体、界面活性剤金属塩粉体、有色顔料、パール顔料、金属粉末顔料、タール色素、天然色素等があげられ、具体的には、無機粉体としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン、シリカ等;有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロースパウダー、シルクパウダー、12ナイロンや6ナイロン等のナイロンパウダー、ポリアクリルパウダー、ポリアクリルエラストマー、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、微結晶繊維粉体、デンプン末、ラウロイルリジン等;界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム等;有色顔料としては、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、Yー酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄鉛、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料、スピネルフェライト、六方晶フェライト、ガーネットフェライト等のフェライト系顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した合成樹脂粉体等;パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母、酸化チタン・酸化鉄被覆マイカ等;金属粉末顔料としては、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー、ステンレスパウダー、金、銀等;コロイドとしては金コロイド、銀コロイド、白金コロイド等;タール色素としては、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等;天然色素としては、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等、蛍光材料から選ばれる顔料が挙げられる。また、この顔料は撥水化や親水化などの表面処理がなされていても構わない。
【0017】
これらの色材の粒度は有機系中空短繊維の中空部に侵入できる大きさである必要があり、侵入ができない大きさの場合は、有機系中空短繊維の外周を被覆する後処理の用途として用いる以外は使用できない。色材が有機系中空短繊維の中空部に侵入できるか否かは、有機系中空短繊維と色材を分散させた溶液を混合し、揮発性成分を除去した後に、実態顕微鏡、光学顕微鏡または電子顕微鏡などを用いて実際に色材が中空部に侵入できているか否かを確認することで判断できる。一次粒子径が中空部の大きさより充分に小さくても凝集などにより大きな二次粒子が生成して実質的に侵入できない場合もあるので、侵入の有無をきちんと評価することは重要である。また、改質有機系中空短繊維の品質を安定させるためにも、色材は何らかの分散処理が施されていることが好ましい。分散処理の例としては、超音波による分散、ビーズミルやディスパー、アトライターなどの分散機を用いた分散、ジェットミルなどの粉砕機を用いた分散などが挙げられる。上記の条件に従った上での一般論としては、本発明で用いる色材の一次粒子径としては例えば1nm〜50μmの大きさの範囲にあるものが好ましく、さらに好ましくは10nm〜1μmの大きさの範囲にあるものが挙げられる。
【0018】
本発明で用いる有機系中空短繊維の質量に対する色材の充填または被覆割合は、有機系中空短繊維の比重と色材の比重によって大きく変化するため一概に規定しにくいが、例えば有機系中空短繊維100質量部に対して、色材が1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは1〜100質量部の範囲を挙げることができる。色材の量を多くしたい場合には、天然物の木綿系の有機系中空短繊維を用いると良い。これは有機系中空短繊維の吸油量が大きいことから、導入できる色材の量が増やせるためである。
【0019】
本発明では、改質有機系中空短繊維を得る方法として有機系中空短繊維と色材を分散させた溶液を混合した後、揮発性成分を除去する方法が挙げられるが、通常この方法を用いると中空部は色材によってほぼ均一に充填または被覆される。しかしながら、特定の組み合わせを用いた場合では、中空部の内壁に色材に網目状または水玉状のパターンを形成させることが可能であり、このようなパターンを形成させた改質有機系中空短繊維は、色材によっては高い隠蔽力と透明性を両立しているなど、独特の光学特性を持つ場合が多い。このようなパターンを形成させるためには、まず親水性色材と揮発性撥水性溶剤を含む溶液を有機系中空短繊維に充填した後、揮発性撥水性溶剤を除々に除去することで、中空部の内壁表面で親水性色材と揮発性撥水性溶剤の相分離を生じさせ、有機系中空短繊維の内面に親水性色材の濃淡分布を形成させる方法が挙げられる。揮発性撥水性溶剤の揮発性が高すぎると相分離が悪くなるので、例えばデカメチルシクロペンタシロキサンやメチルトリメチコン等の揮発性シリコーンを用いて60℃〜80℃位に加温し、適度に減圧条件を定めると相分離構造が形成されやすい。また、中空部の内壁が親水性を有していた方が相分離構造はできやすく、例えば有機系の有機系中空短繊維を漂白処理したり、シランカップリング剤などで事前処理するなどの操作をしておくことが好ましい。また、さらにシリコーン系樹脂、オクチルトリエトキシシラン等のシリコーン系化合物を併用するとより明確なパターンが得られやすい。この相分離を用いた方法によって中空短繊維の中空径にもよるが、サブミクロンから数百ミクロンの範囲の周期を有するパターンが形成可能である。電磁波の波長の1/2の大きさが最大に散乱されると仮定した場合、サブミクロン〜1mm位の範囲の波長を持つ電磁波が多重的に散乱される材料が得られることになる。この範囲は紫外光〜可視光〜赤外光〜マイクロ波の一部が該当する。
【0020】
本発明の有機系中空短繊維は、有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆した後、さらに各種の表面処理をすることが可能である。撥水化表面処理の例としては、例えばメチルハイドロジェンポリシロキサン処理、シリコーンレジン処理、シリコーンガム処理、アクリルシリコーン処理、フッ素化シリコーン処理などのオルガノシロキサン処理、ステアリン酸亜鉛処理などの金属石鹸処理、シランカップリング剤処理、アルキルシラン処理などのシラン処理、有機チタネート処理。有機アルミネート処理、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩、パーフルオロポリエーテル処理などのフッ素化合物処理、N−ラウロイル−L−リジン処理などのアミノ酸処理、スクワラン処理などの油剤処理、アクリル酸アルキル処理などのアクリル処理などが挙げられ、これらの1種以上を組み合わせて使用することが可能である。また、親水化表面処理の例としては、寒天処理、デオキシリボ核酸処理、レシチン処理、ポリアクリル酸処理、シリカ処理、アルミナ処理、ジルコニア処理などが挙げられる。これらの処理は塗料、インキにおける塗膜中への配合特性や強度改善、化粧料における感触特性、配合特性、化粧持ちなどを改善するのに有効である。
【0021】
本発明で用いる色材を分散させた溶液は、色材と水、油剤、揮発性溶媒から選ばれる液状成分からなり、場合によって樹脂成分や界面活性剤(分散剤)等の補助成分を含む。これら補助成分としては例えば、紫外線吸収剤、蛍光剤、界面活性剤、フッ素化合物、樹脂、粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、塩類、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、生理活性成分等が挙げられる。樹脂成分、界面活性剤の例としては、例えばシリコーン樹脂、シリコーンエラストマー、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂などの樹脂成分、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリル変性シリコーン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のノニオン系の界面活性剤が好ましいものとして挙げられる。樹脂は反応性であっても非反応性であっても構わない。
【0022】
また、紫外線吸収剤としては例えばサリチル酸ホモメンチル、サリチル酸オクチル、サリチル酸トリエタノールアミン等のサリチル酸系;パラアミノ安息香酸、エチルジヒドロキシプロピルパラアミノ安息香酸、グリセリルパラアミノ安息香酸、オクチルジメチルパラアミノ安息香酸、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等のPABA系;4−(2−β−グルコピラノシロキシ)プロポキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸及びその三水塩、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2、2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−N−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、2,5−ジイソプロピルケイ皮酸メチル、2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]−1,3,5−トリアジン、ビスエチルヘキシロキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、メチレンビスベンゾトリアゾルイルテトラメチルブチルフェノール、トリメトキシケイ皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、p−メトキシハイドロケイ皮酸ジエタノールアミン塩等のケイ皮酸系;2−フェニル−ベンズイミダゾール−5−硫酸、4−イソプロピルジベンゾイルメタン等のベンゾイルメタン系;2−シアノ−3,3−ジフェニルプロパ−2−エン酸2−エチルヘキシルエステル(別名;オクトクリレン)、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,4−ジメチル−1,3−ペンタンジオン、シノキサート、メチル−O−アミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、3−(4−メチルベンジリデン)カンフル、オクチルトリアゾン、4−(3,4−ジメトキシフェニルメチレン)−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、メチレンビスベンゾトリアゾルイルテトラメチレンブチルフェノール(別名ビスオクトリゾール)、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンこれらの高分子誘導体、及びシラン誘導体等が例示される。
【0023】
本発明の改質有機系中空短繊維は、その処理時または後処理にて中空部を閉鎖することも好ましい。これは中空部が開口していると、後で利用する際にそこから他の油剤などが侵入し、屈折率が変化してしまうことがあり、特に酸化鉄など着色系の色材を用いた場合では明度、彩度が下がる原因となる。中空部の閉鎖方法としては、色材の充填後に反応性の樹脂形成化合物を投入する方法や、一度中空短繊維の中空部を色材で処理し、さらに溶媒を除去した後に、樹脂や粒子径の大きな色材や高粘度の不揮発性溶液を利用して開口部を閉鎖してしまう方法などが挙げられるが、前者は開口部の閉鎖が不十分になる場合があり、きちんと封鎖したい場合ではコストはかかるものの後者の方法の方が好ましい。後者の方法としては、また揮発性の溶媒に樹脂やワックス等を溶解させ、これを有機系中空短繊維中に充填した後、揮発性溶媒の沸点に近い温度をかけるか、減圧して溶媒を飛びやすくすると、開口部付近に樹脂やワックスが局在するような構造が形成しやすい。また、これらの開口部封鎖処理と表面処理を組み合わせて実施することも可能である。内部が空洞なっている場合では、屈折率差が稼げることから色材の彩度や明度が向上し、濡れなどによる色変化を少なくすることが可能であるが、塗料などの用途では閉鎖部が塗料中の成分によって溶解したり、塗料製造時に物理的に破壊されたりする場合がある。このように開口部の閉鎖だけでは不十分な場合では、明度や彩度は低下するが、改質有機系中空繊維を後処理により中空部内を樹脂や油剤、ワックス等で充填してしまうことも有効である。
【0024】
本発明の改質有機系中空短繊維は化粧料、塗料、樹脂、インク、紙、電磁波遮蔽材、電磁波散乱制御材、光学素子などに用いることが可能である。この中で特に化粧料が好ましい。
【0025】
本発明の化粧料では、改質有機系中空短繊維以外に化粧料で使用される各種の素材、例えば顔料、紫外線吸収剤、油剤、界面活性剤、フッ素化合物、樹脂、粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、生理活性成分等の成分を使用することができる。また、本発明の化粧料としては、マスカラ、ファンデーション、フェイスパウダー、チーク、ネイルカラー、アイシャドウ、ヘアカラー等が好適である。
【0026】
本発明の化粧料に改質有機系中空短繊維を配合する場合では、製剤の質量に対して改質有機系中空短繊維の質量が1〜90質量%の範囲にあることが好ましく、特に好ましくは3〜50質量%の範囲が挙げられる。また、化粧料に本改質有機系中空短繊維を配合する場合においては、中空部分にさらに各種のエキスや保湿剤、紫外線吸収剤などの皮膚有用性成分を保持させることも好ましい。
【0027】
また、本発明の改質有機系中空短繊維は塗工する際に塗工器具の進行方向に並行に繊維の長径方向が配列するという特性も持つ。一方、浸漬による塗工を行えば繊維は配列せずにランダムな配列を取りやすい。この配列の仕方の違いを用いることにより、光学特性や電磁波の特性を制御することが可能である。化粧料の場合も化粧料の塗布方向に並行に改質有機系中空短繊維の長径方向が配列しやすく、この配列現象を利用するとツヤ感を高くできるなどのメリットがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に実施例を挙げ本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
有機系中空短繊維の作成(1)
木綿系天然中空繊維の1種であるカボック繊維を粗粉砕したものの光学顕微鏡写真を図1に示す(中央部の十字軸はスケールで、写真の横幅が1mmとなるように撮影)。この繊維はほとんどストロー状の形態を有していることが判る。このカボック繊維を漂白処理し、微粉砕したものを図1と同条件で光学顕微鏡撮影した写真を図2に示す。図2を画像的に粒度分布を測定したところ、繊維長が50μm未満が31%、50〜100μmが34%、100〜150μmが16%、150〜200μmが11%、200μm以上が8%の分布を有していた。
【0030】
この微粉砕カボック繊維を分級し、肌に塗布した際によれるかどうかを確認したところ、200μm以上の繊維が含まれると肌への密着性が悪化する傾向があることが判った。このことから粉体化粧料用途には200μm以下の繊維長を持つものが好ましいことが判る。
【0031】
有機系中空短繊維の作成(2)
中空ポリエステル長繊維であるセベリス(東レ社製)をファイバースコープを用いて撮影した写真の例を図3に示す(写真の横幅が約1.3mmに相当)。図3を見るとこの繊維がチューブ状の形態を有していることが良く判る。この中空ポリエステル長繊維をカッターミルを用いて粉砕し短繊維化した写真の例を図4に示す(撮影条件は図3と同条件)。
【0032】
有機系中空短繊維の作成(3)
中空ナイロン長繊維を長さ2mmにカッターを用いて切断し、有機系中空短繊維を得た。
【0033】
有機系中空短繊維の作成(4)
木綿(天然系中空長繊維)を漂白し乾燥した後、約100μmの長さにカッターを用いて切断し、有機系中空短繊維を得た。
【0034】
以下では上記の有機系中空短繊維を用いて改質有機系中空短繊維を製造する方法を実施例にて説明する。
【0035】
〔実施例1〕
平均一次粒子径10nmのカーボンブラック8質量部を1600質量部のデカメチルシクロペンタシロキサン(揮発性シリコーン)に超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は500mm2/s以下であった。有機系中空短繊維の作成(1)に記載のカボック繊維を粗粉砕したもの40質量部を混合し、良く攪拌した。得られた混合物を80℃の送風型乾燥機に投入し、揮発性シリコーンを除去した。
得られたカーボンブラック処理有機系中空短繊維をファイバースコープを用いて撮影した写真の例を図5に示す(写真の横幅が約1.3mmに相当)。図5を見ると、有機系中空短繊維中にカーボンブラックが良く充填されていることが判る。本改質有機系中空繊維は強い黒色を示しており、また、樹脂に練りこみで充填できる量をはるかに超えているにも拘わらず、短繊維自体の柔軟性は維持されたままであった。
【0036】
〔実施例2〕
平均一次粒子径0.3μmの黄色酸化鉄20質量部を300質量部のメチルトリメチコン(揮発性シリコーン)と67質量部のトリメチルシロキシケイ酸デカメチルシクロペンタシロキサン溶解液(シリコーン樹脂の1種、固形分30質量%、以下の実施例で使用する場合も同等の組成)との混合溶液に超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は500mm2/s以下であった。ここに有機系中空短繊維の作成(1)に記載のカボック繊維を漂白後微粉砕したもの55質量部を投入し、良く混合した。得られた混合物を60℃の送風型乾燥機に投入し、12時間かけて揮発性シリコーンを除去した。
得られた黄色酸化鉄処理有機系中空短繊維の光学顕微鏡写真を図6に示す(中央部の十字軸はスケールで、写真の横幅が約230μmとなるように撮影)。図6を見ると、中空部の内壁部分の色が濃くなっていることが判る。このことから、本実施例の場合は、黄色酸化鉄は充填ではなく被覆されている状態にあると思われる。また、被覆は均一に行われていることが判る。本改質有機系中空繊維は透明感を有する黄色を示していた。また、本実施例を流動パラフィンと混合したところ、明度の低下が観察された。このことから中空部内部に流動パラフィンが流入することで屈折率が変化したことが予想された。
【0037】
〔実施例3〕
平均一次粒子径0.2μmの真球状酸化チタン20質量部を280質量部のデカメチルシクロペンタシロキサンと67質量部のトリメチルシロキシケイ酸デカメチルシクロペンタシロキサン溶解液との混合溶液に超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は100mm2/s以下であった。ここに有機系中空短繊維の作成(2)で作成した中空ポリエステル短繊維97質量部を投入し、良く混合した。得られた混合物を60℃に加温しながら減圧ポンプを用いて弱く減圧し、揮発性シリコーンを除去した。
得られた真球状酸化チタン処理有機系中空短繊維の光学顕微鏡写真を図7に示す(中央部の十字軸はスケールで、写真の横幅が約390μmとなるように撮影)。図7を見ると、中空部に酸化チタンが充填されている様子が判る。尚、その充填状態と充填密度は図7からも分かるように不均一であるが、特定のパターンを有するものではない。
【0038】
〔実施例4〕
平均一次粒子径0.23μmの顔料級酸化チタン20質量部を250質量部のデカメチルシクロペンタシロキサンと67質量部のトリメチルシロキシケイ酸デカメチルシクロペンタシロキサン溶解液との混合溶液に超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は100mm2/s以下であった。ここに有機系中空短繊維の作成(1)に記載のカボック繊維を漂白後微粉砕したもの55質量部を投入し、良く混合した。送風型乾燥機を用い、60℃で1時間30分乾燥した後、80℃に昇温して12時間乾燥を行い、揮発性シリコーンを除去した。
得られた顔料級酸化チタン処理有機系中空短繊維の光学顕微鏡写真を図8に示す(中央部の十字軸はスケールで、写真の横幅が約49μmとなるように撮影)。図8を見ると、中空部の内壁表面に酸化チタンが粗密状態で分布していることが判る。図8の中央の目盛は1目盛が1.25μmであるので、酸化チタンが数μm程度の大きさで凝集して存在し、その隙間がサブミクロンから1μm程度の大きさであることが判る。
この顔料級酸化チタン処理有機系中空短繊維は透明感を有しながら、高い隠蔽力も有していた。
【0039】
〔実施例5〕
平均一次粒子径0.2μmの真球状酸化チタン40質量部を350質量部のデカメチルシクロペンタシロキサンとオクチルトリエトキシシラン40質量部の混合溶液に超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は100mm2/s以下であった。ここに有機系中空短繊維の作成(1)に記載のカボック繊維を漂白後微粉砕したもの55質量部を投入し、良く混合した。得られた送風型乾燥機を用いて60℃で12時間乾燥し、揮発性シリコーンを除去した。
得られた真球状酸化チタン処理有機系中空短繊維の光学顕微鏡写真を図9に示す(中央部の十字軸はスケールで、写真の横幅が約123μmとなるように撮影)。図9の中央の目盛は1目盛が2.5μmであるので、このことから酸化チタンとオクチルトリエトキシシランからなる網目状構造は数ミクロン程度の大きさの単位で構成されているように見える。
この顔料級酸化チタン処理有機系中空短繊維は透明感を有しながら、高い隠蔽力も有していた。
【0040】
〔実施例6〕
平均一次粒子径1.0μmの大粒子径酸化チタン20質量部を250質量部のデカメチルシクロペンタシロキサンと67質量部のトリメチルシロキシケイ酸デカメチルシクロペンタシロキサン溶解液との混合溶液に超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は100mm2/s以下であった。ここに有機系中空短繊維の作成(1)に記載のカボック繊維を漂白後微粉砕したもの55質量部を投入し、良く混合した。送風型乾燥機を用い、60℃で1時間30分乾燥した後、80℃に昇温して12時間乾燥を行い、揮発性シリコーンを除去した。
得られた顔料級酸化チタン処理有機系中空短繊維の光学顕微鏡写真を図10に示す(中央部の十字軸はスケールで、写真の横幅が約63μmとなるように撮影)。図10を見ると、酸化チタンが水玉状に分布して存在していることが判る。
【0041】
〔実施例7〕
平均一次粒子径35nmのシリカアルミナ処理微粒子酸化チタン20質量部を250質量部のデカメチルシクロペンタシロキサンと67質量部のトリメチルシロキシケイ酸デカメチルシクロペンタシロキサン溶解液との混合溶液に超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は500mm2/s以下であった。ここに有機系中空短繊維の作成(1)に記載のカボック繊維を漂白後微粉砕したもの55質量部を投入し、良く混合した。送風型乾燥機を用い、60℃で1時間30分乾燥した後、80℃に昇温して12時間乾燥を行い、揮発性シリコーンを除去した。
得られたシリカアルミナ処理微粒子酸化チタン処理有機系中空短繊維の光学顕微鏡写真を図11に示す(中央部の十字軸はスケールで、写真の横幅が約250μmとなるように撮影)。図11を見ると、微粒子酸化チタンが細かい不特定パターンを示しながら中空部の内壁を被覆していることが判る。
このシリカアルミナ処理微粒子酸化チタン処理有機系中空短繊維は大変透明性に優れていた。
【0042】
〔実施例8〕
平均一次粒子径0.2μmのシリカ処理酸化チタン20質量部と黄色酸化鉄6質量部とベンガラ0.6質量部と黒酸化鉄0.1質量部と微粒子酸化チタン2質量部の混合、粉砕物を250質量部のデカメチルシクロペンタシロキサンと67質量部のトリメチルシロキシケイ酸デカメチルシクロペンタシロキサン溶解液との混合溶液に超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は500mm2/s以下であった。ここに有機系中空短繊維の作成(4)に記載の木綿繊維を漂白後100μmにカットしたもの55質量部を投入し、良く混合した。送風型乾燥機を用い、60℃で1時間30分乾燥した後、80℃に昇温して12時間乾燥を行い、揮発性シリコーンを除去した。得られた改質有機系中空短繊維は透明感のある肌色を呈しており、光沢に優れており、かつ隠蔽力にも優れていた。
【0043】
〔実施例9〕
平均一次粒子径10nmのカーボンブラック8質量部を1200質量部のイソプロピルアルコールに超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は500mm2/s以下であった。ここに有機系中空短繊維の作成(3)で作成した中空ナイロン短繊維92質量部を投入し、良く混合した。得られた混合物を送風型乾燥機に入れ60℃にて6時間乾燥した。得られた改質有機系中空短繊維は深い黒色と光沢感を示しており、かつ繊維の柔軟性も失っていなかった。
【0044】
〔実施例10〕
平均一次粒子径0.2μmの真球状酸化チタン20質量部を1液型シリコーンRTVゴムのデカメチルシクロペンタシロキサン溶液(尚、シリコーンRTVゴム由来のC8−10イソアルカンとイソプロピルアルコールを含む)360質量部に超音波を用いて分散させた。溶液の動粘度は100mm2/s以下であった。但し、酸化チタンの分散安定性は良くなかった。ここに有機系中空短繊維の作成(1)に記載のカボック繊維を漂白後微粉砕したもの55質量部を投入し、良く混合した。得られた送風型乾燥機を用いて60℃で12時間乾燥し、揮発性シリコーンを除去した。
得られた改質有機系中空短繊維の光学顕微鏡写真を図12に示す(中央部の十字軸はスケールで、写真の横幅が約250μmとなるように撮影)。図12を見ると、開口部付近の酸化チタン濃度が高いこと、中空部内部は不均一に酸化チタンに覆われており、被覆されていない部分あることが判る。このように顔料が均一に分散していないものを用いた場合、中空部内部は均一に充填または被覆されない場合があることが判る。
【0045】
〔実施例11〕
実施例7で作成したシリカアルミナ処理微粒子酸化チタン処理有機系中空短繊維100質量部に1液型シリコーンRTVゴムのデカメチルシクロペンタシロキサン溶液(固形分15質量%、溶液の動粘度は500mm2/s以下)160質量部を加えてよく混合した後、送風乾燥機を用いて70℃で5時間乾燥した。得られた改質有機系中空短繊維は開口部がシリコーンゴムにて良く封鎖されていた。
【0046】
〔実施例12〕
実施例2で作成した黄色酸化鉄処理有機系中空短繊維100質量部に1液型シリコーンRTVゴムのメチルトリメチコン溶液(固形分5質量%、溶液の動粘度は500mm2/s以下)140質量部を加えてよく混合した後、送風乾燥機を用いて90℃で5時間乾燥した。得られた改質有機系中空短繊維は開口部がシリコーンゴムにて良く閉鎖されていた。また、本品を流動パラフィンと混合したところ、明度の低下が実施例2と比較して抑制されていた。
【0047】
〔実施例13〕
実施例7で作成したシリカアルミナ処理微粒子酸化チタン処理改質有機系中空短繊維100質量部にさらに有機系紫外線吸収剤(BASF社製ユビナールAplusB、動粘度160mm2/s)を25質量部吸収させた。本複合処理改質有機系中空短繊維は紫外線防御効果を有していた。
【0048】
〔実施例14〕
実施例9のカーボンブラックで改質した有機系中空短繊維を用い、表1の処方と製造方法に従い化粧料(マスカラ)を得た。尚、表中の単位は質量%である。
【0049】
【表1】
【0050】
製造方法
成分Bを80℃で均一に溶解した成分Aに加えた。次いで成分Cも80℃で均一に混合し、成分Aに除々に加えてよく混合した。攪拌下に徐冷して液温が30℃になったところで成分Dを加え、最後に成分Eを加えてよく混合した後、プラシつき密閉容器に充填して製品を得た。
【0051】
〔比較例1〕
実施例14で用いた有機系中空短繊維の代わりに黒色に染色したナイロン繊維(繊維長2mm)を用いた他は全て実施例14と同様にして製品を得た。
【0052】
以下実施例14および比較例1で作成した化粧料の評価を表2に示す。
女性パネラー10名を用いて、試験品を使用してもらい、使用感をアンケート形式で回答してもらい、評価が悪い場合を0点、評価が良い場合を5点とし、パネラーの平均点数を以って評価結果とした。従って、点数が高い程評価に優れていることを示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2の試験結果から、本発明の実施例は比較例と比べて使用感で同等かやや良い評価であるにもかかわらず、睫毛が長く、より色が濃く見えることが判る。
【0055】
〔実施例15〕
実施例8の改質有機系中空短繊維を用いて、表3の処方と製造方法に基づいてファンデーションを作成した。尚、表中の単位は質量%である。
【0056】
【表3】
【0057】
成分Aをよく混合した後、均一に溶解した成分Bをゆっくりと添加し、さらによく混合、粉砕した後、メッシュを通した。そして、金型を用いて容器に打型して製品を得た。
【0058】
〔比較例2〕
実施例15の改質有機系中空短繊維の代わりに、無機顔料はそのまま、中空有機短繊維はタルクに置き換えた表4の顔料を用いた他は全て実施例15と同様にしてファンデーションを作成した。尚、表中の単位は質量%である。
【0059】
【表4】
【0060】
以下実施例および比較例で作成した化粧料の評価を表5に示す。
女性パネラー10名を用いて、試験品を使用してもらい、使用感をアンケート形式で回答してもらい、評価が悪い場合を0点、評価が良い場合を5点とし、パネラーの平均点数を以って評価結果とした。従って、点数が高い程評価に優れていることを示す。
【0061】
【表5】
【0062】
表5の試験結果から、本発明の実施例は比較例と比べて透明感とカバー力を高い次元で両立しており、ツヤもあるなど質感に優れていること、色くすみがしにくいこと、そして肌が暖かく感じるという新しい機能が発現していることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】 中空繊維の1種であるカボック繊維の光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約1mmに相当)
【図2】 漂白したカボック繊維を微粉砕した場合の光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約1mmに相当)
【図3】 ポリエステル製中空繊維の1種であるセベリス(登録商標)のファイバースコープ像の例(写真の横幅が約1.3mmに相当)
【図4】 ポリエステル製中空繊維の1種であるセベリス(登録商標)を微粉砕したもののファイバースコープ像の例(写真の横幅が約1.3mmに相当)
【図5】 カーボンブラックを充填したカボック繊維粗粉砕物のファイバースコープ像の例(写真の横幅が約1.3mmに相当)
【図6】 黄色酸化鉄を被覆したカボック繊維微粉砕物の光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約230μmに相当)
【図7】 真球状酸化チタンを充填したポリエステル製中空短繊維の光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約390μmに相当)
【図8】 顔料級酸化チタンをパターン化して中空部の内壁に被覆したカボック繊維微粉砕物の光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約49μmに相当)
【図9】 真球状酸化チタンをパターン化して中空部の内壁に被覆したカボック繊維微粉砕物の光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約123μmに相当)
【図10】 大粒子径酸化チタンを水玉状のパターン化して中空部の内壁に被覆したカボック繊維微粉砕物の光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約63μmに相当)
【図11】 シリカアルミナ処理微粒子酸化チタンを不特定パターン化して中空部の内壁に被覆したカボック繊維微粉砕物の光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約250μmに相当)
【図12】 真球状酸化チタンが中空短繊維の開口部付近に多く堆積した場合の光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約250μmに相当)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆した改質有機系中空短繊維。
【請求項2】
親水性色材と揮発性撥水性溶剤を含む溶液を有機系中空短繊維に充填した後、揮発性撥水性溶剤を除去することで、有機系中空短繊維の内面に親水性色材の濃淡分布を形成させることを特徴とする請求項1に記載の改質有機系中空短繊維。
【請求項3】
請求項1に記載の改質有機系中空短繊維を配合した化粧料。
【請求項1】
有機系中空短繊維の中空部に色材を充填または被覆した改質有機系中空短繊維。
【請求項2】
親水性色材と揮発性撥水性溶剤を含む溶液を有機系中空短繊維に充填した後、揮発性撥水性溶剤を除去することで、有機系中空短繊維の内面に親水性色材の濃淡分布を形成させることを特徴とする請求項1に記載の改質有機系中空短繊維。
【請求項3】
請求項1に記載の改質有機系中空短繊維を配合した化粧料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−185012(P2009−185012A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51224(P2008−51224)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(500034941)株式会社コスメテクノ (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(500034941)株式会社コスメテクノ (16)
【Fターム(参考)】
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