説明

色素増感型光電変換素子

【課題】 集電メッシュを有する色素増感型光電変換素子において、効率よい発電特性を有する光電変換素子を提供し、保存経時による光電変換素子の発電特製の劣化を改善するとともに、沃素イオンの少ない電解液でも優れた色素増感型光電変換素子を提供することである。
【解決手段】 色素増感された半導体粒子からなる光電極層、電解液層、および対向電極層をこの順序で有する色素増感型光電変換素子において、該光電極層が基板、導電性層、保護層付き集電用メッシュおよび色素増感された半導体粒子層が順次積層された電極層であることを特徴とする色素増感型光電変換素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、色素増感型光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽エネルギーを電力に変換する光電変換素子として、固体のpn接合型太陽電池が活発に研究されている。固体接合型太陽電池は、シリコン結晶やアモルファスシリコン薄膜、非シリコン系の化合物半導体の多層薄膜を用いる。しかし固体接合型太陽電池は、高温もしくは真空下で製造する必要がある。そのため、固体接合型太陽電池の製造には、プラントのコストが高くなり、投資額に対するエネルギー回収率が低いとの欠点がある。
【0003】
次世代の太陽光源下で発電する太陽電池として、低温でより低コストで製造が可能な有機系太陽電池の開発が期待されており、大気中で低コストの量産が可能な色素増感型太陽電池が特に注目されている。特許文献1は、この色素増感型太陽電池について、色素増感された多孔質半導体膜を用いる高効率の光電変換方法を提案している。色素増感型太陽電池は、固体接合型太陽電池における固体(半導体)−固体(半導体)接合の代りに、固体(半導体)−液体(電解液)接合を採用する湿式太陽電池である。
【0004】
そして色素増感型太陽電池は、エネルギー変換効率が11%という高効率まで達しており、電気エネルギーの供給源として有望となっている。特に色素増感型太陽電池は、低い光量でも発電能力を有する特徴を示すものであり、従来の屋外(大光量の太陽光源下)でのみ発電する所謂シリコン系太陽電池とは異なる特性である。したがって本発明では、太陽光源だけでなく屋内の弱い光源(例えば、蛍光灯、白熱光源、LED光源など)でも発電できる発電素子に関する点から、色素増感型光電変換素子として記述する。
【0005】
一般的な色素増感型光電変換素子は、光電極層(透明基板、透明導電層と色素増感された多孔質半導体膜からなる)、電解液層および対向電極層(透明導電層と透明基板からなる)を、この順序で有する積層構造からなるものである。光電極層および対極層に敷設されている導電層は一般に透明であり、金属や導電性金属酸化物などから形成され、特にインジウム−スズ酸化物が優れている。光電極層の透明導電層には、集電のための補助リードを配置させることが知られている。補助リードは、例えば、パターニングにより配置できる。補助リードは、低抵抗の金属材料(例えば銅、銀、アルミニウム、白金、金、チタン、ニッケル)より形成されることが有用であり、ネットワーク状の集電メッシュが好ましいことが知られている。
【0006】
一方、色素増感型光電変換素子に用いる電解液は、一般に有機溶媒中にレドックス対と電解質が溶解している溶液である。有機溶媒としては、一般に非プロトン極性物質(例、カーボネート、エーテル、ラクトン、ニトリル、スルホキシド)が用いられている(特許文献1)。レドックス対としては、ヨウ素とヨウ化物、臭素と臭化物、フェロシアン酸塩とフェリシアン酸塩、フェロセンとフェリシニウムイオンが提案されている。一般に、色素増感型光電変換素子の電解液として、原理的にレドックス対であるヨウ素とヨウ化物との組み合わせ(特許文献2)で使用する場合に、前述の金属を主体とした集電メッシュの耐久性が悪化することが問題になっている。
【0007】
しかし、ヨウ素とヨウ化物との組み合わせ以外のレドックス対を使用する方法では、充分なエネルギー変換効率を得ることは困難である。特許文献2は、ヨウ素の添加量を、0〜0.2Mまで変化させた実験例を報告している(段落番号0034の表1)が、ヨウ素を全く添加しないと太陽電池としては機能しないとの記載がされている。そして、ヨウ素の添加量は0.04M〜0.2Mが必要であるとされており、このような多量な沃素を含有した電解液は、発電中に揮発したりして、電気出力を低下させるとの問題を抱えるものであった。
【0008】
これらの改良として、特許文献2には金属集電メッシュが内層と外層の2層以上からなる構成が開示されており、外層が自己組織化膜で形成されることを特徴としている。特に自己組織化膜は、内層との結合部位をなす末端の官能基に硫黄を含むものである。確かにこの方法によると、経時による金属集電メッシュの劣化は改良されるものの、長期間の経時により電解液による自己組織化膜への浸透と、その成分相互の反応が起こり、耐久性が不十分となるものであった。特に、高温での耐久性の改良には不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許4927721号明細書
【特許文献2】公開特許公報2004−327226号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように色素増感型光電変換素子において、充分に高いエネルギー変換効率を得ようとすると、電解液にヨウ素とヨウ化物との組み合わせからなるレドックス対を使用する必要がある。しかし、ヨウ素を使用すると、電解液が三ヨウ化物イオンの形成により着色され、光が吸収されてエネルギー変換効率が低下する。また、ヨウ素の酸化腐食反応によって、集電メッシュを使用する際に、そのメッシュの劣化が進むことが問題となる。したがって、本願発明の第一の目的は、集電メッシュを有する色素増感型光電変換素子において、効率よい発電特性を有する光電変換素子を提供することである。さらに第2の目的は、保存経時による光電変換素子の発電特製の劣化を改善することである。第3の目的は、沃素イオンの少ない電解液でも優れた色素増感型光電変換素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、色素増感された半導体粒子からなる光電極層、電解液層、および対向電極層をこの順序で有する色素増感型光電変換素子において、該光電極層が基板、導電性層、保護層付き集電用メッシュ、色素増感された半導体粒子層が順次積層されたことを特徴とする色素増感型光電変換素子、によって達成された。
【0012】
本発明の好ましい態様は以下の通りである。
(態様1) 色素増感された半導体粒子からなる光電極層、電解液層、および対向電極層をこの順序で有する色素増感型光電変換素子において、該光電極層が基板、導電性層、保護層付き集電用メッシュおよび色素増感された半導体粒子層が順次積層された電極層であることを特徴とする色素増感型光電変換素子。
【0013】
(態様2) 保護層付き集電用メッシュの保護層が、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂あるいは(メタ)アクリレート樹脂から選ばれた少なくとも一種の樹脂と架橋剤からなる架橋された樹脂組成物であ樹脂組成物であることを特徴とする態様1に記載の色素増感型光電変換素子。
(態様3) 保護層付き集電用メッシュの集電用メッシュおよび/またはその保護層がスクリーン印刷で形成されたことを特徴とする態様1、2に記載の色素増感型光電変換素子。
【0014】
(態様4) 保護層付き集電用メッシュの保護層は鉛筆硬度が2H以上であり、その絶縁抵抗値が1012Ω/□以上(25℃、60%RH)である樹脂組成物であることを特徴とする態様1〜3に記載の色素増感型光電変換素子。
(態様5) 電解液層が、非プロトン系溶媒中に、総炭素原子数が4乃至80である脂肪族第四級アンモニウムイオンが0.05乃至5M、総炭素原子数が4乃至43であるイミダゾリウムイオンが0.05乃至5M、そしてヨウ化物イオンが0.1乃至10M溶解している電解液からなることを特徴とする態様1〜4に記載の色素増感型光電変換素子。
【0015】
(態様6) 電解液中のヨウ化物イオンに対する三ヨウ化物イオンの割合が1モル%未満である態様1〜5に記載の色素増感型光電変換素子。
(態様7) 電解液の溶媒中に、さらに総炭素原子数が7乃至47であるベンゾイミダゾール化合物が0.01乃至1M溶解しており、チオシアン酸イオンまたはイソチオシアン酸イオンが0.01乃至1M溶解しており、さらに総炭素原子数が1乃至61であるグアニジウムイオンが0.01乃至1M溶解している態様1〜6に記載の色素増感型光電変換素子。
(態様8) 該色素増感型光電変換素子が、ガスバリア性のある基板であることを特徴とする態様1〜7に記載の色素増感型光電変換素子。
(態様9) 該色素増感型光電変換素子が、透明なプラスチックフィルム基材からなる保護用の包装用袋に収納されたことを特徴とする態様1〜7に記載の色素増感型光電変換素子。
以下に、本発明について記載する。
【0016】
(集電用メッシュ)
本発明における集電用メッシュの特性を十分に発現するために、必須となる保護層を付与した集電用メッシュについて、以下にまず記述する。本発明では、色素増感された半導体粒子からなる多孔性の光電極層で発生した電子は、均一な透明全面導電層に移動し、その電子を集めるために保護層付き集電用メッシュを用いることを特徴とする。その際に、特には保護層付き集電用メッシュの保護層が架橋された樹脂組成物からなることを特徴とするものである。外層として配した該集電用メッシュの保護層は、透明導電層と電解質層または電荷移送層との間の電子移動を阻害することがなく、集電用メッシュの保護層が酸化物半導体多孔膜から透明導電層への電子移動を阻害するおそれが低減される。
【0017】
本発明の集電用メッシュは、低抵抗の金属材料あるいは金属酸化物、有機導電性材料から形成され、例えば銅、銀、アルミニウム、白金、金、チタン、ニッケル、カーボンナノファイバー、ポリチオフェンなどより形成されることが好ましく、より好ましくは金属材料であり、例えば銀、白金、銅、ニッケルなどである。これらの導電性材料は、導電性を大きく損なわない限り添加剤(例えば、バインダーとしての樹脂、分散剤としての界面活性剤や高分子材料、イオン性添加剤など)を含有していてもよい。たとえば、藤倉化成工業株式会社製のドータイトD−362,D−500,D−550,D−753,D−723S,XC−12,FN−101,FE−107,XA−9015,XA−824,D−362などを挙げることができる。また、タツタ電線株式会社製の銅ペーストであるDDペーストTH9910,DDペーストNF2000など、東洋紡績株式会社製のDW−250H−5、DW−250H−7、DW−260H、DW−351H−30、DW−104H、DW−545、DW−114L−1、DWP−025、DX−152H−1、DX−153H−87、DX−116L−1、DX−150H−40、DX−280H−3、DY−200L−2、DYP−020、DWP−025, DWP−026, DYP−020など、Gwent Electronic Materials社製のC2050926D2、C2050303D1、C2010829D2、C70709D18、C10515D1、C2021031D3、C60903D5、C2031105D2など、ハリマ化成株式会社製のSP,SD,ST,SF,SL,SI、CPなど、ライオンペーストW−310A、ライオンペーストW−311N,ライオンペーストW−356A、W−376R,ライオンペーストW−370Cなど、東洋インキ株式会社製のREXALPHAシリーズのRA,FS,FD,FL,GRなど、株式会社アサヒ化学研究所製のLS−506J,ACP−051,TU−20S,TU−10Sなどを挙げることができる。また集電用メッシュは、厚さが25μm以下、好ましくは15μm以下であって、より好ましくは7μm以下である。また線幅が60μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下であり、特に好ましくは20μm以下である。
【0018】
透明導電膜上の開口部は、四角形、六角形等の多角形、円、楕円等の円状、菱形、平行四辺形等、どのような形状であってもよく特に限定されるものではない。また開口部は、各々同じ形状で形成されるのが一般的であるが、形状が個々に異なったり、面積が異なっていてもよい。そのなかでも、金属膜を格子状又はストライプ状に形成するのが、全光線透過率を向上させる観点から好ましい。さらに、開口部の端部は、金属膜が連続していても、不連続であってもよい。この開口部の寸法は、20μm〜2.5mmであるのが好ましい。
【0019】
集電用メッシュは、例えばエッチング法、スクリーン印刷、インクジェット法、銀錯塩拡散転写法(DTR)等の現像法により形成することができる。また必要に応じて、無電解鍍金法、電解鍍金法を併用することもできる。これらの中でも、特にスクリーン印刷が好ましい。
【0020】
(集電用メッシュの保護層)
次に、本発明の集電用メッシュの保護膜である樹脂組成物層について、以下に記述する。本発明の保護層用樹脂組成物は、樹脂であれば特に限定されないが、好ましくは樹脂が何らかの方法で架橋されていれば特に好ましい。樹脂組成物としてはそれらの中でも、好ましくはエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂あるいはメタアクリレート樹脂、エステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル−オレフィン共重合体キシレン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂及びフェノール樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1つの樹脂組成物などを挙げることが出来る。またエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂あるいはメタアクリレート樹脂、エステル樹脂、が好ましい。更にそれらの中でも架橋されており、特には架橋エポキシ樹脂、架橋ウレタン樹脂が好ましく、さらには架橋エポキシ樹脂が好ましい。これらの素材は、例えば特開2008−201894号に記載されている。以下に好ましい樹脂組成物について記載する。
【0021】
(エポキシ樹脂)
前記エポキシ樹脂としては、分子中に少なくとも1個のエポキシ基を含有する化合物としては、例えば
(1)ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、アリールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等の炭素数2〜20のアルコールのグリシジルエーテル類;
【0022】
(2)ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリオールのポリグリシジルエーテル類;
【0023】
(3)2,6−ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル、2,6,2’,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素添加型ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水素添加型ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水素添加型ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ化合物;
【0024】
(4)アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシアジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド等の環式脂肪族エポキシ化合物;
(5)グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロキシフタル酸ジグリシジルエステル、ソルビン酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノレイン酸グリシジルエステル等の不飽和酸グリシジルエステル類;ブチルグリシジルエステル、オクチルグリシジルエステルヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のアルキルカルボン酸グリシジルエステル類;
【0025】
(6)安息香酸グリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルp−オキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステル等の芳香族カルボン酸グリシジルエステル類;
(7)テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、ジグリシジルトリブロムアニリン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ化合物;
【0026】
(8)ジグリシジルヒダントイン、グリシジルグリシドオキシアルキルヒダントイン、トリグリシジジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ化合物等が挙げられる。
これらの中でも、ポリオールのポリグリシジルエーテル類、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アルキルカルボン酸グリシジルエステル類が特に好ましい。前記エポキシ樹脂としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、東都化成製エポトートYD128、YD8125、大日本インキ化学工業社製エピクロン840S、850S、1050、830、株式会社 アサヒ化学研究所製Coating Paste CR−20Tが含まれる。
【0027】
(硬化剤)
本発明の樹脂組成物は、それ自身が反応中に架橋されている場合もあるが、さらに架橋剤を添加することで有効な架橋された樹脂組成物とすることが出来る。たとえば、エポキシ樹脂と反応する硬化剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基と反応する官能基を有する化合物(本発明では硬化剤と称する。)を用いる。このような硬化剤における官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、チオール基などの官能基が挙げられる。
【0028】
硬化剤の具体例としては、テレフタル酸などの多官能カルボン酸化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシノール誘導体、カテコール誘導体等の二官能フェノール化合物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂、アミノ樹脂、1,3,5−トリアミノトリアジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホンなどの多官能アミノ化合物を挙げることができる。中でも、エポキシ基と反応する官能基として、水酸基及びアミノ基の少なくともいずれか一方を有する化合物を硬化剤として用いることが好ましい。
【0029】
硬化剤の添加量としては、上記エポキシ樹脂中のエポキシ基に対して、硬化剤の官能基の割合(硬化剤の固形分量(g)/硬化剤当量)÷(エポキシ樹脂の固形分量(g)/エポキシ当量)が0.1〜5.0であることが好ましく、0.3〜2.0であることがより好ましい。上記定義式において、当量とは、1分子あたりの官能基の数のことを示し、硬化剤としてはエポキシ基と反応する官能基の数、エポキシ樹脂としてはエポキシ基の数のことを示す。
【0030】
また、前記架橋剤としては、オキサゾリン系架橋剤も好適に用いられる。該オキサゾリン系架橋剤としては、例えば、日本触媒社製のエポクロスシリーズK−1000、K−2000、WS−500、WS−700などが挙げられる。
【0031】
(ウレタン樹脂)
次に本発明で好ましい集電用メッシュの保護層であるウレタン樹脂について記す。該ウレタン樹脂は、主に有機ポリイソシアネートとポリオールとを反応させることにより、又は末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとポリアミン系硬化剤とを反応させることにより、製造することができる。
【0032】
本発明で使用する有機ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びこれらポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得られる末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーが挙げられる。これらのうち、物性、反応性、保存安定性の点で末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーが好ましい。
【0033】
末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの原料として使用するポリオールとしては、高分子量ポリオール単独又は高分子量ポリオールと低分子量ポリオールとの組み合わせが好ましい。末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの原料として使用する高分子量ポリオールとしては、例えばポリ(オキシアルキレン)グリコール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリブタジエンポリオール等の高分子量ポリオールが挙げられる。
【0034】
末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの原料として使用する低分子量ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール,ネオペンチルグリコール、2,−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等が挙げられる。
【0035】
有機ポリイソシアネートとの反応に使用するポリオールとしては、例えば1,2−プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の少なくとも2個以上の水酸基を有する出発原料にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合して得られるポリ(オキシアルキレン)グリコール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール等のポリエーテルポリオール;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸等の多価カルボン酸とエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オタンジオール,ネオペンチルグリコール、2,−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等の多価アルコールを重縮合して得られるポリエステルポリオール;さらに、ポリラクトンポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリブタジエンポリオール等が挙げられる。これらの中でもポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールが好ましい。これらポリオールの数平均分子量は、好ましくは500〜10000、より好ましくは1000〜5000である。
【0036】
ここで、本発明の集電用メッシュ用保護膜のウレタン化触媒としては、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジラウレートのような有機酸金属塩;トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、N−エチルモルフォリン、ジメチルエタノールアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、パルミチルジメチルアミン等のアミン類が挙げられる。
【0037】
ポリアミン系硬化剤としては、例えば、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジクロロジフェニルメタン(MBOCAと言う)、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、メチレンビス(2,3−ジクロロアニリン)等ポリアミノクロロフェニルメタン化合物、トルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0038】
(エステル樹脂)
エステル樹脂として、下記の多塩基酸成分とジオール成分から得られるポリエステルを用いることができる。すなわち、多価塩基成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を例示することができる。高分子バインダーを構成するポリエステル樹脂としては、2種以上のジカルボン酸成分を用いた共重合ポリエステルを用いることが好ましい。ポリエステル樹脂には、若干量であればマレイン酸、イタコン酸等の不飽和多塩基酸成分が、或いはp−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸成分が含まれていてもよい。
【0039】
エステル樹脂のジオール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン等や、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを例示することができる。
【0040】
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂としては、以下に例示されるモノマーを共重合することで得られる。即ち、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等のカルボキシ基またはその塩を有するモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)、
【0041】
N−アルコキシアクリルアミド、N−アルコキシメタクリルアミド、N,N−ジアルコキシアクリルアミド、N,N−ジアルコキシメタクリルアミド(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等)、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド等のアミド基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物のモノマー;2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有モノマー;メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アルキルイタコン酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエンである。
【0042】
これらの樹脂は集電用メッシュの保護層として利用されるが、その場合は集電用メッシュの導電性メッシュの上に、本発明の好ましい樹脂を溶媒などで溶解した溶液を付与し、乾燥することで保護層付き集電用メッシュを有する光電極用の基板を作製するものである。付与方法としては、スクリーン印刷が特に好ましい。さらに以下に光電極層用基板、光電極層用導電性層および色色素増感された半導体粒子層、電解液層、そして対向電極層、対向電極層用透明基板の順序で説明する。 更に好ましくは、保護膜を作製したあと高温度で架橋を完結させることが好ましい。その場合の後処理温度としては、好ましくは50℃以上200℃以下で、さらに好ましくは80℃以上160℃であり、特には100℃以上150℃以下である。加熱時間は特に限定されないが、好ましくは0.5分以上60分以下であり、より好ましくは1分以上30分以下であり、特には2分以上20分以下である。なお、光電極層を形成する各層の間には、その他の表面処理の実施や機能層を挿入することは特に限定されず、例えば後述する基板の表面処理、下塗り層などが挙げられたり、中間層を新たに設けることも好ましい。
【0043】
(光電極層用基板)
本発明の光電極層用基板は、透明なガラス板またはポリマーフィルムが好ましい。ガラス板よりも、屈曲性があるポリマーフィルムの方が好ましい。ポリマーの例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)およびポリイミド(PI)を含む。ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)が最も好ましい。その厚さは特に限定されないが、10μm〜2mmが好ましく、さらには20μm〜500μmが好ましく、50μm〜300μmが好ましく、特には70μm〜300μmが好ましい。これらの透明基板は、市販品として容易に購入できる。
【0044】
さらに、これらの基板はその上に積層される導電層との接着を強固にするために、各種の表面処理や下塗り層を付与してもよい。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。グロー放電処理とは、10−3〜20Torrの低圧ガス下でおこる、いわゆる低温プラズマのことも示すが、大気圧下でのグロー放電処理でもよい。まず、低圧下でのグロー放電処理は、米国特許第3,462,335号、同3,761,299号、同4,072,769号および英国特許第891,469号各明細書に記載されている。また不活性ガス、酸化窒素類、有機化合物ガス等の特定のガス等を導入することも行われる。フィルムの表面をグロー放電処理する際には大気圧でもよいし減圧下で実施されてもよい。グロー放電処理の雰囲気に酸素、窒素、ヘリウムあるいはアルゴンのような種々のガスや水を導入しながら実施してもよい。
【0045】
次に紫外線照射法も本発明では好ましく用いられる。使用される水銀灯は石英管からなる高圧水銀灯で、紫外線の波長が180〜380nmの間であるものが好ましい。また、表面処理としてコロナ放電処理も好ましく、コロナ放電処理装置は、Pillar社製ソリッドステートコロナ処理機、LEPEL型表面処理機、VETAPHON型処理機等を用いることができる。次に火炎処理について記述すると、用いるガスは天然ガス、液化プロパンガス、都市ガスのいずれでもかまわないが、空気との混合比が重要である。
【0046】
本発明の基材と導電層を接着するために、前述の表面活性化処理をしたのち、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に導電層を塗布する方法とがある。下塗層の構成としても種々の工夫が行われており、第1層として支持体によく隣接する層(以下、下塗第1層と略す)を設け、その上に第2層として機能層とよく接着する下塗り第2層を塗布する所謂重層法がある。
【0047】
単層法においては、下塗ポリマーとしては水溶性ポリマー、ラテックスポリマー、水溶性ポリエステルなどが例示される。重層法における下塗第1層では、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、メタクリル水溶性ポリマーとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、アルギン酸ナトリウム、でんぷん、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体などである。ラテックスポリマーとしては塩化ビニル含有共重合体、塩化ビニリデン含有共重合体、アクリル酸エステル含有共重合体、酢酸ビニル含有共重合体、ブタジエン含有共重合体などである。酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの中から選ばれた単量体を出発原料とする共重合体を始めとして、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、グラフト化ゼラチン、ニトロセルロース、等のオリゴマーもしくはポリマーなどがある。
【0048】
本発明の基材には場合により施される下塗り層には、機能層の透明性などを実質的に損なわない程度に無機または、有機の微粒子を含有させることができる。無機の微粒子のマット剤としてはシリカ(SiO),二酸化チタン(TiO),炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどを使用することができる。下塗液は、一般に良く知られた塗布方法、例えばディップコ−ト法、エア−ナイフコ−ト法、カ−テンコ−ト法、ロ−ラ−コ−ト法、ワイヤ−バ−コ−ト法、グラビアコ−ト法、スライドコート法、或いは、米国特許第2,681,294号明細書に記載のホッパ−を使用するエクストル−ジョンコ−ト法により塗布することができる。
【0049】
(光電極層用導電層)
光電極層の導電性層は透明であることが好ましく、金属(例、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、チタン)、炭素、導電性金属酸化物(例、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛)または複合金属酸化物(例、インジウム−スズ酸化物、インジウム−亜鉛酸化物)から形成できる。その表面抵抗値は35Ω/□以下が好ましく、20Ω/□以下がより好ましく、10Ω/□以下がさらに好ましく、3Ω/□以下がさらにまた好ましく、1Ω/□以下が特に好ましい。透明基板上に透明導電層を設けた光電極基板の光透過率(測定波長:500nm)は、60%以上が好ましく、75%以上がさらに好まししく、80%以上が最も好ましい。
【0050】
(色素増感された半導体粒子層)
色素増感された半導体粒子層は、ナノサイズの細孔が内部に網目状に形成された、いわゆるメソポーラスな半導体膜からなっている。多半導体材料として金属酸化物および金属カルコゲニドを使用することが好ましく、さらにn型の無機半導体が好ましく、TiO、TiSrO、ZnO、Nb、SnO、WO、Si、CdS、CdSe、V、ZnS、ZnSe、SnSe、KTaO、FeSおよびPbSを含む。TiO、ZnO、SnO、WOおよびNbが好ましく、チタン酸化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物およびこれらの複合体がさらに好ましく、二酸化チタンが最も好ましい。半導体の一次粒子は、平均粒径が2nm以上、80nm以下であることが好ましく、10nm以上、60nm以下であることがさらに好ましい。
【0051】
(増感色素)
色素増感半導体粒子の増感に用いる増感色素は、各種の有機系、金属錯体系の増感材料と同様の色素を用いることができる。増感色素は、有機色素(例、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、キサンテン色素、スクワリリウム色素、ポリメチン色素、クマリン色素、リボフラビン色素、ペリレン色素)および金属錯体色素(例、フタロシアニン錯体、ポルフィリン錯体)を含む。金属錯体色素を構成する金属の例は、ルテニウムおよびマグネシウムを含む。クマリン色素のような有機色素は、「機能材料」,2003年,6月号,P5−18、および「ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(J.Phys.Chem.)」,2003年,B第107巻,P597に記載がある。特には、グレッチェル等によるN−719、産業総合研究所によるMK−2、あるいは三菱樹脂株式会社によるD−205など増感色素が有名である。
【0052】
(電解液層)
電解液層は、溶媒として5員環環状カーボネート、γ−ラクトン、脂肪族ニトリル、脂肪族鎖状エーテル脂肪族環状エーテルから選ばれる少なくとも1種類の溶媒中に、脂肪族第四級アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、そしてヨウ化物イオンが溶解している電解液からなる色素増感型光電変換素子が好ましい。また、電解液の溶媒中にさらにベンゾイミダゾール化合物やチオシアン酸イオン(S−C≡N)またはイソチオシアン酸イオン(N=C=S)、グアニジウムイオンが溶解していることも好ましい。
【0053】
(対向電極層)
対向電極層の詳細は、光電極層の導電性層と同様である。
(対向電極層用透明基板)
対向電極層用透明基板は、光電極層用基板と同様である。
【0054】
更に本発明では、その基板が水蒸気やガスに対してその透過性を低減するように設計されているが、過酷な環境条件により出力の劣化が見られる可能性があり、特に高温度で高湿度での環境条件で耐久性付与が重要である。これらの改良方法としては、基板にガスや水蒸気に対するバリアー特性を有する基板にするか、あるいはバリアー性のある包装体で、本発明の色素増感型光電変換素子を包み込むことで達成できる。以下に、本発明で好ましく用いられるバリアフィルム、特に水蒸気バリアー性について以下に記述する。
【0055】
前述したように、発明の色素増感型光電変換素子は、基板の外部にガスや水蒸気に対するバリアー性を有する層を有することも好ましい。さらに、水蒸気バリア性のある包装材料で包装あるいは包み込まれていても好ましい。その際に、本発明の色素増感型光電変換素子とハイバリア包装材料に間に空間があってもよく、また接着剤で色素増感型光電変換素子を接着させてもよい。更には、水蒸気やガスを通しにくい液体や固体(例えば、液状またはゲル状のパラフィン、シリコン、リン酸エステル、脂肪族エステルなど)を用いて、色素増感型光電変換素子を包装材料に包装してもよい。
【0056】
本発明で好ましく用いられるバリアー性のある基板あるいは包装材料の好ましい水蒸気透過度は、40℃、相対湿度90%(90%RH)の環境下で0.1g/m/日低下であり、より好ましくは0.01g/m/日以下であり、更に好ましくは0.0005g/m/日以下であり、特に好ましくは0.00001g/m/日以下である。また、環境温度が60℃、90%RHでのより過酷な場合でも、バリアー性のある基板あるいは包装材料の水蒸気透過度は、より好ましくは0.01g/m/日以下であり、更に好ましくは0.0005g/m/日以下であり、特に好ましくは0.00001g/m/日以下である。またバリアー性のある基板あるいは包装材料の酸素透過率は25℃、0%RHの環境下において、好ましくは約0.001g/m/日以下であり、より好ましくは0.00001g/m/日が好ましい。
【0057】
これらの本発明の色素増感型太陽電池用バリアー性のある基板あるいは包装材料に、水蒸気やガスに対するバイア性付与は、特に限定されないが、太陽電池に必要な光量を妨げないことが必要であるために透過性のあるバリアー性のある基板あるいは包装材料であり、その透過率は好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上であり、更に好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。上記の特性を有するバリアー性のある基板あるいは包装材料は、その構成や材料において特に限定されることはなく、該特性を有するものであれば特に限定されない。
【0058】
本発明の好ましいバリアフィルムのある基板あるいは包装材料は、プラスチック支持体上に水蒸気やガスの透過性が低いバリアー層を設置したフィルムであることが好ましい。ガスバリアフィルムの例としては、酸化ケイ素や酸化アルミニウムを蒸着したもの(特公昭53−12953、特開昭58−217344)、有機無機ハイブリッドコーティング層を有するもの(特開2000−323273、特開2004−25732)、無機層状化合物を有するもの(特開2001−205743)、無機材料を積層したもの(特開2003−206361、特開2006−263989)、有機層と無機層を交互に積層したもの(特開2007−30387、米国特許6413645、Affinitoら著 Thin Solid Films 1996年 290−291頁)、有機層と無機層を連続的に積層したもの(米国特許2004−46497)などが挙げられる。
【0059】
プラスチックフィルム上に無機層と有機層を含むバリアー層を有するバリアー性フィルム基板を製造する際に、スルフィニル基またはスルホニル基を有するビニルモノマーを含むモノマー混合物を重合させることによって有機層を形成する方法(特開2009−28949)、樹脂基板の片面または両面に珪素原子と窒素原子とを含む薄膜を有する透明ガスバリアフィルムであって、前記薄膜に含まれる珪素原子と窒素原子との割合がSiNx(ただし、0.5≦x≦1.4)であり、かつ、前記薄膜2の膜厚が20〜50nmである透明ガスバリアフィルム(特開2008−240131)、基材フィルム上に、少なくとも1層の無機層と少なくとも1層の有機層とを有するガスバリア性積層フィルムにおいて、前記有機層に少なくとも1種類のリン酸エステル基を有するポリマーを含有させる方法(特開2007−290369)、基板フィルム上に少なくとも1層の無機層と、少なくとも1層のアモルファスカーボンを主成分とするアモルファスカーボン層とを有し、少なくとも1層の前記アモルファスカーボン層の表面における(酸素原子数/炭素原子数)の比が0.01以上であることを特徴とするガスバリア性積層フィルム(特開2007−136800)、熱可塑性樹脂フィルムよりなる基材層の少なくとも一方の表面に、アンカーコート層を介して、ポリビニルアルコール系樹脂、珪素アルコキシドの加水分解物及び層状珪酸塩からなるバリアー層(A層)と、ポリビニルアルコール系樹脂及び層状珪酸塩からなるバリアー層(B層)とが基材層側からA層/B層の順に積層されてなるバリアフィルム(特開2005−225117)、などのバリアフィルムを利用できる。
【0060】
これらは、透明基板に水蒸気や各種ガスの基材透過を抑制する層(バリア膜)を設けることであり、例えば酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、炭化ケイ素膜、酸化アルミニウム膜、酸窒化アルミニウム膜、酸化チタン膜、酸化ジルコニウム膜、ダイヤモンドライクカーボン膜などの無機薄膜等や、これらのガスバリア性の高い無機薄膜と柔軟な有機薄膜を積層するガスバリア膜なども用いるものである。
本発明の色素増感型太陽電池は、バリアフィルムで包装した色素増感型太陽電池から、電気を取り出せるリード線を付与して、バリアー性の高いEVA樹脂などの充填樹脂で固定して外部の各種電力器具につなぐことが好ましい。
【0061】
さらに、本発明においては光電極層と対向電極層の基板の外部が、前述したバリアー性の層を有することも好ましく、これにより高温高湿での保存性が改良できる。その場合、バリアー層を付与した基板の取り扱いは傷などを付けないように、十分に注意することが重要である。本発明で好ましく用いられる外バリアー付き基板の好ましい水蒸気透過度は、40℃、相対湿度90%(90%RH)の環境下で0.1g/m/日低下であり、より好ましくは0.01g/m/日以下であり、更に好ましくは0.0005g/m/日以下であり、特に好ましくは0.00001g/m/日以下である。特には、環境温度が60℃、90%RHでのより過酷な場合でも、基板の水蒸気透過度はより好ましくは0.01g/m/日以下であり、更に好ましくは0.0005g/m/日以下であり、特に好ましくは0.00001g/m/日以下である。またその酸素透過率は25℃、90%RHの環境下において、好ましくは約0.001cc/m/日以下であり、より好ましくは0.00001cc/m/日が好ましい。
【0062】
本発明は、作製された太陽電池はその用途は特に限定されない。好ましくは、家庭用電源の電力源、乾電池同等の電力源、ボタン電池同等の動力源として利用できる。例えば、無人設備用として海上交通関係(灯台、灯浮標)、陸上交通関係(道路標識、鉄道信号、交差点信号、緊急電話)、航空交通関係(障害物表示灯、着陸誘導灯)、通信(無線中継局、気象観測テレメータ、ダム監視用テレメータ)、電蝕防止(石油、ガスなどのタンクやパイプ、波止場、鉄橋)など、屋外機器(時計、街路灯、バス停・電話ボックス・掲示板照明、避難場所標示灯)、宇宙用(人工衛星)、などを挙げることが出来る。
【0063】
農林水産用として、灌漑用ポンプ、温室用ファン、液肥循環ポンプ、穀物乾燥ファン、牧場用電気柵、牧場用飲料水汲み上げポンプ、養殖用攪拌装置、貯蔵庫、集魚灯、海洋牧場、などを挙げることが出来る。また、日常生活用医療用やレジャー用として、薬品用冷蔵庫、診療所照明、モーターボート用バッテリ充電、キャンプ照明、ポータブルテレ-フ゜レコーダー、テレビ、各種AV機器(CD、DVD、ブルーレイ、音楽。携帯用途も含める)、携帯電話、なども挙げられる。さらに、代替ネルギー源として、太陽光発電装置(住宅用、工場用、電力会社設備用)、太陽光発電衛星、ソーラーカーも挙げられ、室内光利用として電卓、電気製品用リモコン、ゲーム機などにも応用できる。
【発明の効果】
【0064】
本発明により、効率よい発電特性を有する光電変換素子を提供することができ、更に保存経時による光電変換素子の発電特製の劣化を改善することが可能になった。また、沃素イオンの少ない電解液でも優れた色素増感型光電変換素子を提供することが可能となった。
【実施例】
【0065】
以下に、本発明の具体例を挙げるがこれに限定されるものではない。
[実施例1](本発明)
(1−1)電解液層の液調製
N−メチルベンズイミダゾール 0.66g、ヨウ化テトラブチルアンモニウム 7.38g、1,3−ブチルメチルイミダゾリウムヨウ化物 5.32g、グアニジンチオシアネート 0.58gを、5mLのメスフラスコに入れ、プロピレンカーボネートを全量で50mLになるように加えた。超音波洗浄機による振動により1時間撹拌したのち、24時間以上暗所に静置して、ヨウ素を含まない電解液を調製(電解液試料−11)した。
【0066】
光路長1mmで、ヨウ素を含まない電解液とヨウ素含有電解液との吸収スペクトルを測定した。ヨウ素を含まない本発明の好ましい電解液(−)は、可視領域における吸収が少なく、ほとんど透明であることを確認した。
【0067】
(1−2)色素溶液の調製
ルテニウム錯体色素(N719、ソラロニクス社製)7.2mgを20mLのメスフラスコに入れた。tert−ブタノール10mLを混合し、撹拌した。その後、アセトニトリル8mLを加え、メスフラスコに栓をしたのち、超音波洗浄器による振動により、60分間撹拌した。溶液を常温に保ちながら、アセトニトリルを加え、全量を20mLとした。得られた試料溶液(試料溶液−12)とした。
【0068】
(1−3)光電極層の作製
1−3−1)光電極層の基板および導電性層の作製
基板としてポリエチレンナフタレートフィルムを用いた。さらにその片面に、酸化インジウムスズ(ITO)をコートし、ポリエチレンナフタレートフィルム(ITO−PENフィルム、厚み200μm、シート抵抗10Ω/□)を得た(試料フィルム−131)。
【0069】
1−3−2)保護層付き集電用メッシュの作製
1−3−1)で作製した試料フィルム−131の上に、スクリーン印刷方法を用いて、保護層を有する集電用メッシュを下記の如くに実施した。
【0070】
(1−3−2−1)集電用メッシュ作製
32cm x 32cmのアルミフレームに取り付けたスクリーン(アサダメッシュ製3Dメッシュ,#200,乳剤厚み15μm)の中央に、幅150μm、長さ10 cmのラインを5 mm間隔で10本のパターンを製版した。このスクリーン版をスクリーン印刷機(MITANI, MEC−2400)にセットした。3−1)で作製した試料フィルム−131をスクリーンに固定し、スクリーンとのクリアランスは1mmに設定した。銀ペースト(藤倉化成、ドータイトD−550、銀フィラー)を試料フィルム−131上に塗布した。スクリーンを外した後に得られた銀ペーストを塗布した試料を、ガラス板に端部を貼り付け室温で20分乾燥後、150℃で30分間乾燥を実施し、銀メッシュを施した試料(試料フィルム−1321)を得た。試料フィルム−1321の銀メッシュ部の厚さは、6μmであった。
【0071】
(1−3−2−2)集電用メッシュの保護膜の作製
32cm x 32cmのアルミフレームに取り付けたスクリーン(アサダメッシュ製3Dメッシュ,#200,乳剤厚み15μm)の中央に、幅300μm、長さ10 cmのラインを5 mm間隔で10本のパターンを製版した。このスクリーン版をスクリーン印刷機(MITANI, MEC−2400)にセットした。(1−3−2−1)で作製した試料フィルム−1321を前述のスクリーンに固定した。この時、スクリーンのパターンは銀メッシュの位置に合致することを確認した。試料フィルム−1321とスクリーンのクリアランスを1mmに設定した。このスクリーンに、絶縁コーティング用ペースト(アサヒ化学研究所、CR-20T、10質量%)を付与し、銀配線上にスクリーン印刷した。スクリーンから試料フィルムを外し、ガラス板に端部を貼り付けて、室温で10分乾燥後し、続いて150℃で10分間乾燥させて、保護層を有する集電用メッシュを作製した(試料フィルム−1322)。この時、銀メッシュ上の保護層の厚さは、15μmであり、幅は平均で30μmであった。ここで、使用した絶縁コーティング用ペースト(アサヒ化学研究所、CR-20T、10質量%)の特性は、PEN上に塗布して、室温で10分乾燥後し、続いて150℃で10分間乾燥させて、保護層と同様な厚さ15μmの樹脂層を作製したところ、鉛筆硬度が2Hであり絶縁抵抗値が1015Ω以上(25℃、60%RH)であることを確認した。
【0072】
1−3−3)色素増感された半導体粒子からなる多孔性の光電極層の作製
平均粒径20nmの酸化チタンをブタノール溶液に分散したチタンペースト(10質量%)を、ベーカー式アプリケータを用いて、(3)で作製した試料フィルム−1322の上に塗布厚みが150μmとなるように塗布した。得られたチタンペースト塗布したフィルムを、ガラス板に端部を貼り付け、常温で10分間乾燥させた後、150℃の乾燥機中でさらに20分間加熱乾燥して、色素増感用の多孔質半導体粒子層を有する試料フィルム−133Pを作製した。
【0073】
試料フィルム−133Pを、6×11.5cmのサイズにカットした。さらに、カットした試料フィルム−133の短辺(6cm)の外側から5mmのふちをけずり、さらに、長辺のふちの一方を5mm、もう一方のふちの10mmを削り整形した。整形後の試料フィルム−133Pのサイズは、4.5cm×10cmとなった。この試料フィルム−133Pを、再度110℃にて10分間加熱乾燥した。
その後、整形後の試料フィルム−133Pを、予め(1−2)で調製した試料−12のN719色素溶液に浸した。色素溶液を40℃に保ちながら、軽く攪拌しながら色素を吸着させた。2時間後、シャーレから色素吸着済み酸化チタン膜を取り出し、アセトニトリルにて3回洗浄して乾燥させて、色素増感された半導体粒子からなる多孔性の光電極層を有する試料フィルム(試料フィルム−133)を作製した。
【0074】
(1−4)対向電極層の作製
酸化インジウムスズ(ITO)をコートしたポリエチレンナフタレートフィルム(ITO−PENフィルム、厚み200μm、シート抵抗10Ω/□)を、20cm×100cmにカットした。エタノールで50%を希釈したPEDOT−PSS水分散液(ポリサイエンス社製、1.2wt%)をバーコーターによって塗布した。室温で乾燥後、150℃で10分乾燥させて光透過率が70%の対向電極フィルムを作製した。その後、4.5cm×10cmのサイズにカットした。フィルムの短辺から1cmの部分に、直径1mmの電解液注液用の穴を一箇所あけた(対向電極用の試料フィルム−14)。
【0075】
(1−5)色素増感型光電変換素子の作製
サーリンフィルム(厚さ25μm、デュポン社製)を、5.5cmx11cmのサイズに切り取り、さらに、中心部を4.5×10cmにくり抜き、スペーサーフィルム(試料フィルム−F)を作製した。色素吸着させた酸化チタン電極フィルム(試料フィルム−133)と、対向電極フィルム(試料フィルム−14)を、スペーサーフィルム試料フィルム−F)をはさんで、試料フィルム−133および試料フィルム−14の導電層面が内側になるように対向させて貼り合せ、110℃のオーブン中で20分間乾燥した。
【0076】
そして電解液注液用の一方の穴から、電解液である試料溶液−2を注液した。その後、電解液注液用の穴にサーリンフィルムを設置し、5mm四方のカバーガラスでさらに覆い、カバーガラスの上から110℃に加温した半田ごてにより熱を加えて、カバーガラスを接着して穴を封じた。作製した色素増感太陽電池の電極の端子には、集電効率を高めるために、導電アルミテープ(No.5805、スリオンテック社製)を、貼った。このとき、太陽電池の両面から電極を取り出せるように、アルミテープを巻き込むようにはり、本発明の色素増感光電変換素子(色素増感型光電変換素子試料−15)を作製した。
【0077】
(1−6)色素増感型光電変換素子の評価
1−6−1)初期出力特性
光源として、150Wキセノンランプ光源装置にAM1.5Gフィルタを装着した擬似太陽光源(PEC−L11型、ペクセル・テクノロジーズ(株)製)を用い、光量は1sun(AM1.5G、100mWcm−2(JIS−C−8912のクラスA))に調整した。作製した色素増感型光電変換素子である試料−15をソースメータ(2400型ソースメータ、Keithley社製)に接続した。電流電圧特性は、該擬似太陽光源からの1sunの光照射下、バイアス電圧を0Vから0.8Vまで、0.01V単位で変化させながら出力電流を測定した。
【0078】
出力電流の測定は、各電圧ステップにおいて、電圧を変化後、0.05秒後から0.15秒後の値を積算することで行った。バイアス電圧を、逆方向に0.8Vから0Vまでステップさせる測定も行い、順方向と逆方向の測定の平均値を、光電流データとした。その結果、短絡電流値200mA、開放電圧値0.69V、曲線因子0.42の電流−電圧特性曲線が得られた。なお、1−3−2)保護層付き集電用メッシュの作製
を実施しない以外は全く同様にして作製した比較用試料は、短絡電流値は最大で10mAであり、本発明の集電メッシュに対して著しく劣るものであった。
【0079】
1−6−2)耐久性評価
1−6−1)初期出力特性で用いた色素増感型太陽電池素子−15を、さらに60℃で500時間放置した後にその出力特性を調べたところ、初期出力特性に対してほぼ同等な特性を示すことを確認した。以上から本発明の色素増感型太陽電池素子−15は優れた耐久性を有することが確認された。
【0080】
[実施例2](比較)
実施例1において、(3−2−2)集電用メッシュの保護膜の作製を除く以外は、実施例1と全く同様にして保護層のない集電用メッシュからなる比較用の色素増感太陽電池素子−25を作製した。得られた色素増感太陽電池素子−25を実施例1の1−6−1)初期出力特性、および1−6−2)耐久性評価に従って、その特性を評価した。
【0081】
2−6−1)初期出力特性
実施例1と同様に、優れた初期出力特性を得た。
2−6−2)耐久性評価その特性を評価した。
色素増感型太陽電池素子−25を60℃で500時間放置した後、その出力特性を調べたところ、まったく出力が得られず、色素増感太陽電池素子としての役割を示さないものであった。以上から、本発明の保護層を付与した集電用メッシュは、その耐久性において非常にすぐれたものであることを確認した。
【0082】
[実施例3](本発明)
実施例1において、(1−3−2−2)集電用メッシュの保護膜の作製を、下記に変更する以外は実施例1と全く同様にして、本発明の色素増感太陽電池素子−35を作製した。
【0083】
(3−3−2−2)集電用メッシュの保護膜の作製
32cm x 32cmのアルミフレームに取り付けたスクリーン(アサダメッシュ製3Dメッシュ,#200,乳剤厚み15μm)の中央に、幅300μm、長さ10 cmのラインを5 mm間隔で10本のパターンを製版した。このスクリーン版をスクリーン印刷機(MITANI, MEC−2400)にセットした。(1−1)で作製した試料フィルム−131Gを前述のスクリーンに固定した。この時、スクリーンのパターンは銀メッシュの位置に合致することを確認した。試料フィルム−131Gとスクリーンのクリアランスを1mmに設定した。
【0084】
スクリーンに、絶縁コーティング用ペースト(ポリウレタン樹脂バインダー(三井化学(株)製、オレスターUD350、固形分20質量%に希釈)を付与し、銀配線上にスクリーン印刷した。スクリーンから試料フィルムを外し、ガラス板に端部を貼り付けて、室温で10分乾燥後し、続いて150℃で10分間乾燥させて、保護層を有する集電用メッシュを作製した(試料フィルム−331GH)。この時、銀メッシュ上の保護層の厚さは、15μmであり、幅は平均で25μmであった。
【0085】
3−6−2)耐久性評価
3−6−1)初期出力特性で用いた色素増感太陽電池素子−35を、さらに60℃で500時間放置した後にその出力特性を調べたところ、初期出力特性に対してほぼ同等な特性を示すことを確認した。以上から本発明の色素増感太陽電池素子−35は優れた耐久性を有することが確認された。
【0086】
[実施例4](本発明)
実施例1において、(1−2)色素溶液の調製を、下記に変更する以外は実施例1と全く同様にして、本発明の色素増感太陽電池素子−45を作製した。
【0087】
(4−2)色素溶液の調製
N−メチルベンズイミダゾール(IV−1)0.066g、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(II−4)0.738g、1,3−ブチルメチルイミダゾリウムヨウ化物(III−1)0.532g、グアニジンチオシアネート0.058gを、5mLのメスフラスコに入れ、γ−ブチロラクトンを全量で5mLになるように加えた。超音波洗浄機による振動により1時間撹拌したのち、24時間以上暗所に静置して、ヨウ素を含まない電解液を調製した。
【0088】
4−6−2)耐久性評価
4−6−1)初期出力特性で用いた色素増感太陽電池素子−45を、さらに60℃で500時間放置した後にその出力特性を調べたところ、初期出力特性に対してほぼ同等な特性を示すことを確認した。以上から本発明の色素増感太陽電池素子−45は優れた耐久性を有することが確認された。
【0089】
[実施例5](本発明)
実施例1において作製した色素増感太陽電池素子−15を、下記の透湿度が10−4g/日・cmのバリアー包装体に封じ込めて、包装材封入した色素増感太陽電池素子−55を作製した。
(包装材の作製)
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材の一方の面に厚さ30nmの酸化珪素の蒸着薄膜層を積層し、その蒸着薄膜層の上に塗布量3g/m(乾燥状態)のポリウレタン系接着剤を介して厚15μmの二軸延伸ナイロンフィルムを積層し、さらにその二軸延伸ナイロンフィルム面に塗布量3g/m(乾燥状態)のポリウレタン系接着剤を介して厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを積層し、他方の面にC−(OC24−O−(CF−C−O−CHSi(OCHからなるパーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤をパーフルオロヘキサンで0.5wt%に希釈した塗布液を塗布、乾燥して膜厚3μmの防汚層を積層した積層材料を得た。
【0090】
(包装材封入した色素増感太陽電池素子−55を作製)
前記積層材料を所定寸法にスリットした二枚の積層材料の無延伸ポリプロピレンフィルム面同士を重ね合わせ、三辺をヒートシールし、一辺を開口部とした三方シール袋(包装袋)を作成し、その三方シール袋の開口部からケーブル付きの色素増感型光電変換素子−15を挿入し、ケーブルの一端を袋外に出し、袋内の空気を真空にて吸引後に、加熱密封シールして本発明の包装済み色素増感型光電変換素子−55を得た。
【0091】
5−6−2)耐久性評価
本発明の包装済み色素増感型光電変換素子−55を、40℃、相対湿度90%で3000時間放置した後にその出力特性を調べたところ、初期出力特性に対してほぼ同等な特性を示すことを確認した。以上から本発明の色本発明の包装済み色素増感型光電変換素子−55は優れた耐久性を有することが確認された。
【0092】
[実施例6]
実施例1において作製した色素増感太陽電池素子−15を、下記の透湿度が下記の透湿度が10−6g/日・cm以下のハイバリア包装体に封じ込めて、包装材封入した色素増感太陽電池素子−65を作製した。
【0093】
(包装材の作製)
(6H−1)包装材料の基材
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートの片面に、下記のアンカーコート層、無機薄膜層(MH層)、ポリビニルアルコール/エチレン・不飽和カルボン酸共重合体/無機粒子/架橋剤(5/80/30/5 重量比)からなる有機層(YA層)、MH層、YA層、MH層、YA層、MH層、YA層、をこの順に積層して、バリアー層を有する包装材料を作製した。
【0094】
(6H−2)各液の調製方法
6H−2−1)アンカーコート
イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業製「コロネートL」)と飽和ポリエステル(東洋紡績製「バイロン300」)とを1:1重量比で配合して用いた。
【0095】
6H−2−2)ポリビニルアルコール(PVA)水性液の調製
ポリビニルアルコール(PVA、日本合成化学工業(株)製「ゴーセノールNM−14」、ケン化度99モル%以上、重合度1400)をイオン交換水に攪拌しながら入れ、95℃で60分間溶解し、固形分濃度10%のPVA水性液(a−1)を得た。
【0096】
6H−2−3)エチレン・不飽和カルボン酸共重合体水性液の調製
エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)(アクリル酸20重量%、MFR:300g/10分)、アンモニア及びイオン交換水を95℃2時間攪拌混合して、中和度50%、固形分20%水性液(b−1)を調製した。
【0097】
6H−2−4)無機粒子水性液の調製
珪酸水溶液から情報に従い、コロイダルシリカゾルを作製し、水素型カチオン交換樹脂カラム、水酸基型アニオン交換樹脂カラム、再度水素型カチオン交換樹脂カラムと順に通し、アンモニア水によりpH9、平均粒子径4nm、各種金属酸化物濃度が500ppm未満の水性シリカゾルを作製した。
【0098】
6H−2−5)架橋剤液の調製
ヘキサメチレンジイソシアネート130質量部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量400)170質量部と、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート20質量部と3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド3質量部を加え、窒素気流下185℃で反応させカルボジイミド基含有架橋剤性液を作製した。
【0099】
(6H−3)バリアー層付与した包装材料フィルムの作製
前述の二軸延伸PETフィルム(以下、OPETという)の片側表面に、アンカーコート液を塗布乾燥して厚さ0.1μmのアンカーコート層を形成した。次いで、真空蒸着装置を使用して1×10−5Torrの真空下でSiOを高周波加熱方式で蒸発させ、アンカーコート層上に薄膜厚さ約20nmの無機薄膜層を形成した。更にその上に前記有機層液を、無機薄膜層面上に、グラビアロールコーティング方式でウエット厚2.9g/m、フィルム走行速度200m/分で塗布、90℃の熱風で5秒間乾燥し、厚さ0.4μmのコーティング層(有機層)を作製した。さらに無機層と有機層を順番に各2層ずつ積層し、優れた水蒸気やガスに対するバリアー特性を有するバリアフィルム(バリアフィルム−6H3)を得た。
【0100】
(包装材封入した色素増感太陽電池素子−65を作製)
前記積層材料(バリアフィルム−6H3)を、所定寸法にスリットした二枚の積層材料の無延伸ポリプロピレンフィルム面同士を重ね合わせ、三辺をヒートシールし、一辺を開口部とした三方シール袋(包装袋)を作成し、その三方シール袋の開口部からケーブル付きの色素増感型光電変換素子−15を挿入し、ケーブルの一端を袋外に出し、袋内の空気を真空にて吸引後に、加熱密封シールして本発明の包装済み色素増感型光電変換素子−65を得た。
【0101】
6−6−2)耐久性評価
本発明の包装済み色素増感型光電変換素子−65を、60℃、相対湿度90%で1000時間放置した後にその出力特性を調べたところ、初期出力特性に対してほぼ同等な特性を示すことを確認した。以上から本発明の色本発明の包装済み色素増感型光電変換素子−65は優れた耐久性を有することが確認された。
【0102】
[実施例7]
実施例1において、光電極層用および対向電極層の基板および導電性層を、下記に変更する以外は、実施例1と全く同様にして、本発明の色素増感光電変換素子(色素増感型光電変換素子試料−75)を作製した。
7−3−1)光電極層の基板および導電性層の作製
基板として片面にバリアー層を有する前述のバリアフィルム−6H3を用い、その反対面に導電膜として、酸化インジウムスズ(ITO)をコートしポリエチレンテレナフタレートフィルム(ITO−PETフィルム、厚み200μm、シート抵抗15Ω/□)を用い、ITO導電層を有するPETフィルムを得た。
(7−4)対向電極層の作製
7−3−1)光電極層の基板および導電性層の作製と同様にして、本発明の対抗電極層を作製した。
【0103】
7−6−2)耐久性評価
本発明のガスバリア性層を付与した基板からなる色素増感型光電変換素子−75を、60℃、相対湿度90%で3000時間放置した後にその出力特性を調べたところ、初期出力特性に対してほぼ同等な特性を示すことを確認した。以上から本発明の色本発明の包装済み色素増感型光電変換素子−75は優れた耐久性を有することが確認された。
【0104】
[実施例8](本発明)
実施例1の(1−3−2−1)集電用メッシュ作製において、銀ペースト(藤倉化成、ドータイトD−550、銀フィラー)をニッケルペースト(藤倉化成、ドータイトFN−101、ニッケルフィラー)のペーストに変更する以外は、実施例1と全く同様にして、本発明の色素増感型光電変換素子−85を作製した。出力電流の測定の結果は、実施例1と同様な優れた特性を示すものであった。また、60℃で500時間放置した後にその出力特性を調べたところ、初期出力特性に対してほぼ同等な特性を示すことを確認した。以上から本発明の色素増感型太陽電池素子−85は優れた耐久性を有することが確認された。
【0105】
[実施例9](本発明)
実施例1の(1−3−2−1)集電用メッシュ作製において、銀ペースト(藤倉化成、ドータイトD−550、銀フィラー)を銀/銅ペースト(藤倉化成、ドータイトFE−107、銀/銅フィラー)のペーストに変更する以外は、実施例1と全く同様にして、本発明の色素増感型光電変換素子−95を作製した。出力電流の測定の結果は、実施例1と同様な優れた特性を示すものであった。また、60℃で500時間放置した後にその出力特性を調べたところ、初期出力特性に対してほぼ同等な特性を示すことを確認した。以上から本発明の色素増感型太陽電池素子−95は優れた耐久性を有することが確認された。
【0106】
[実施例10](本発明)
実施例1の(1−3−2−1)集電用メッシュ作製において、銀ペースト(藤倉化成、ドータイトD−550、銀フィラー)をカーボンペースト(藤倉化成、ドータイトXC−12、カーボンフィラー)のペーストに変更する以外は、実施例1と全く同様にして、本発明の色素増感型光電変換素子−105を作製した。出力電流の測定の結果は、実施例1と同様な優れた特性を示すものであった。また、60℃で500時間放置した後にその出力特性を調べたところ、初期出力特性に対してほぼ同等な特性を示すことを確認した。以上から本発明の色素増感型太陽電池素子−105は優れた耐久性を有することが確認された。
【0107】
[実施例11](本発明)
実施例1の(1−3−2−1)集電用メッシュ作製において、銀ペースト(藤倉化成、ドータイトD−550、銀フィラー)をカーボンペースト(藤倉化成、ドータイトFA−401C、銀フィラー)のペーストに変更する以外は、実施例1と全く同様にして、本発明の色素増感型光電変換素子−115を作製した。出力電流の測定の結果は、実施例1と同様な優れた特性を示すものであった。また、60℃で500時間放置した後にその出力特性を調べたところ、初期出力特性に対してほぼ同等な特性を示すことを確認した。以上から本発明の色素増感型太陽電池素子−115は優れた耐久性を有することが確認された。
【0108】
[実施例12](本発明)
実施例1の(1−2)色素溶液の調製のおいて、ルテニウム錯体色素(N719、ソラロニクス社製)
をルテニウム錯体色素を 2-シアノ-3-[5’’’-(9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)-3’,3’’,3’’’,4-テトラ-n-ヘキシル-[2,2’,5’,2’’,5’’,2’’’]-クオーター チオフェニル-5-イル]アクリル酸に変更する以外は、実施例1と全く同様にして、本発明の色素増感型光電変換素子−125を作製した。出力電流の測定の結果は、実施例1と同様な優れた特性を示すものであった。また、60℃で500時間放置した後にその出力特性を調べたところ、初期出力特性に対してほぼ同等な特性を示すことを確認した。以上から本発明の色素増感型太陽電池素子−125は優れた耐久性を有することが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素増感された半導体粒子からなる光電極層、電解液層、および対向電極層をこの順序で有する色素増感型光電変換素子において、該光電極層が基板、導電性層、保護層付き集電用メッシュおよび色素増感された半導体粒子層が順次積層された電極層であることを特徴とする色素増感型光電変換素子。
【請求項2】
保護層付き集電用メッシュの保護層が、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂あるいはメタアクリレート樹脂、エステル樹脂から選ばれた少なくとも一種の樹脂と架橋剤からなる架橋された樹脂組成物であることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型光電変換素子。
【請求項3】
保護層付き集電用メッシュの集電用メッシュおよび/またはその保護層がスクリーン印刷で形成されたことを特徴とする請求項1、2に記載の色素増感型光電変換素子。
【請求項4】
保護層付き集電用メッシュの保護層は鉛筆硬度が2H以上であり、その抵抗値が1012Ω/□以上(25℃、60%RH)の樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜3に記載の色素増感型光電変換素子。
【請求項5】
電解液層が、非プロトン系溶媒中に、総炭素原子数が4乃至80である脂肪族第四級アンモニウムイオンが0.05乃至5M、総炭素原子数が4乃至43であるイミダゾリウムイオンが0.05乃至5M、そしてヨウ化物イオンが0.1乃至10M溶解している電解液からなることを特徴とする請求項1〜4に記載の色素増感型光電変換素子。
【請求項6】
電解液中のヨウ化物イオンに対する三ヨウ化物イオンの割合が1モル%未満である請求項1〜5に記載の色素増感型光電変換素子。
【請求項7】
電解液の溶媒中に、さらに総炭素原子数が7乃至47であるベンゾイミダゾール化合物が0.01乃至1M溶解しており、チオシアン酸イオンまたはイソチオシアン酸イオンが0.01乃至1M溶解しており、さらに総炭素原子数が1乃至61であるグアニジウムイオンが0.01乃至1M溶解している請求項1〜6に記載の色素増感型光電変換素子。
【請求項8】
該色素増感型光電変換素子が、ガスバリア性のある基板であることを特徴とする請求項1〜7に記載の色素増感型光電変換素子。
【請求項9】
該色素増感型光電変換素子が、透明なプラスチックフィルム基材からなるガスバリア性包装用袋に収納されたことを特徴とする請求項1〜8に記載の色素増感型光電変換素子。

【公開番号】特開2010−267557(P2010−267557A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119425(P2009−119425)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(504345953)ペクセル・テクノロジーズ株式会社 (30)
【Fターム(参考)】