色素増感型太陽電池用電極、その製造方法、および色素増感型太陽電池用電極を備える色素増感型太陽電池
【課題】高い導電性を維持できる色素増感型太陽電池用電極、その製造方法、および色素増感型太陽電池用電極を備える色素増感型太陽電池を提供すること。
【解決手段】
色素増感型太陽電池用電極10は、透明導電層2の上面に線状の補助電極3を備える。補助電極3は、透明導電層2の上面に形成された耐食性金属部4と、耐食性金属部4の上面に形成されたアルミニウム部5と、アルミニウム部5の上面に形成された上面保護部6と、アルミニウム部5の側面に形成された側面保護部7とを備えている。側面保護部7は、酸化アルミニウムからなる。電解液によって腐食されやすいアルミニウム部5が電解液に晒されることがないので、アルミニウム部5が、電解液によって腐食されることがない。
【解決手段】
色素増感型太陽電池用電極10は、透明導電層2の上面に線状の補助電極3を備える。補助電極3は、透明導電層2の上面に形成された耐食性金属部4と、耐食性金属部4の上面に形成されたアルミニウム部5と、アルミニウム部5の上面に形成された上面保護部6と、アルミニウム部5の側面に形成された側面保護部7とを備えている。側面保護部7は、酸化アルミニウムからなる。電解液によって腐食されやすいアルミニウム部5が電解液に晒されることがないので、アルミニウム部5が、電解液によって腐食されることがない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池用電極、その製造方法、および色素増感型太陽電池用電極を備える色素増感型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、増感色素を吸着させた酸化物半導体を電極に用いた色素増感型太陽電池が知られている。色素増感型太陽電池は、透明導電層上に分光増感色素を吸着させた金属酸化物半導体層が形成された色素増感型太陽電池用電極を備える。そして、色素増感型太陽電池用電極と間隙をおいて対向電極が配置されており、色素増感型太陽電池用電極と対向電極との間に電解液が封入されている。
【0003】
ところで、色素増感型太陽電池用電極では、透明導電層を厚くすれば、導電率を向上させることができるが、透過率が低下して光電変換効率が低下してしまうとともに、生産性の低下や製造コストの増大を招いてしまう。そこで、透明導電層の上面に、透明導電層よりも電気抵抗率が低く、かつ不動態膜を形成しやすい金属またはその合金からなるメッシュ状の導電体を補助電極として形成した色素増感型太陽電池用電極が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この色素増感型太陽電池用電極では、透明導電層の上面に補助電極を形成することにより、電極の低抵抗化を図ることができる。また、補助電極の表面に不動態膜を形成させることができるため、補助電極が電解液により腐食されることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−197176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の色素増感型太陽電池電極では、透明導電層の表面特性により、不動態膜を透明導電層の表面に密着させることができないため、不動態膜と透明導電層との間に、隙間が形成されてしまい、電解液がこの隙間に入り込んで、補助電極を腐食してしまうことになる。そのため、色素増感型太陽電池用電極の導電性が劣化してしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は上述の課題を解決するためになされたものであり、高い導電性を維持できる色素増感型太陽電池用電極、その製造方法、および色素増感型太陽電池用電極を備える色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第一の態様に係る色素増感型太陽電池用電極は、板状の透明基材と、前記透明基材の上面に設けられた透明導電層と、前記透明導電層の上面に線状に形成され、前記透明導電層よりも抵抗値の低い補助電極と、を備えた色素増感型太陽電池用電極であって、前記補助電極は、前記透明導電層の上面に形成され、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる耐食性金属部と、前記耐食性金属部の上面に形成されたアルミニウムからなるアルミニウム部と、前記アルミニウム部の側面を覆い、酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムからなる側面保護部と、前記アルミニウム部の上面を覆い、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムのいずれかからなる上面保護部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
本態様に係る色素増感型太陽電池用電極では、補助電極が、導電率の高いアルミニウムからなるアルミニウム部を備えているため、補助電極の導電率を高くすることができる。よって、色素増感型太陽電池用電極の低抵抗化を図ることができる。また、アルミニウム部の下面を耐食性金属部が覆い、アルミニウム部の上面を上面保護部が覆い、アルミニウム部の側面を側面保護部が覆うため、耐食性の低いアルミニウム部が外部に露出しない。色素増感型太陽電池用電極は、使用時には、ハロゲンを含んだ電解質溶液に晒された状態となるが、この場合にもアルミニウム部は、電解質に晒されることがないので、電解質によって腐食されることがない。また、耐食性金属部、側面保護部、上面保護部を構成するチタンおよび酸化アルミニウムは耐食性を備える。使用時に電解質に晒される耐食性金属部、側面保護部、上面保護部が電解質に腐食されることはないので、腐食によって生じる腐食孔から、電解質がアルミニウム部に到達することを防止できる。よって、アルミニウム部の腐食を防止して、補助電極の耐久性を高めることができる。よって、高い導電性を維持できる色素増感型太陽電池用電極を提供できる。
【0009】
また、側面保護部は酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムからなるので、アルミニウム部を酸化処理、あるいは水酸化処理することにより、側面保護部を形成できる。よって、簡単に側面保護部を形成できる。
【0010】
また、アルミニウム部の下側に耐食性金属部が形成されているので、アルミニウム部の側面を隙間なく覆うように側面保護部を形成することができる。アルミニウム部の下側が透明導電層である場合、透明導電層の表面特性から、酸化アルミニウムおよび水酸化アルミニウムからなる側面保護部は、透明導電層の上面に密着しにくい。そのため、側面保護部の下端と透明導電層の上面との間には、隙間が形成されてしまい、この隙間から侵入し、アルミニウム部に到達した電解質が、アルミニウム部を腐食してしまう。本実施の態様の色素増感型太陽電池用電極は、透明導電層とアルミニウム部との間には、金属からなる耐食性金属部が形成されている。側面保護部を、耐食性金属部の上面と密着して形成することができるので、側面保護部は、アルミニウム部の側面を隙間なく覆うことができる。よって、アルミニウム部の腐食を確実に防止して、補助電極の耐久性を高めることができる。
【0011】
また、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極において、前記補助電極は、前記耐食性金属部の側面を覆う第一の金属酸化膜をさらに備えていてもよい。第一の金属酸化膜を備えていれば、耐食性金属部の腐食を一層防止することができる。そのため、補助電極の耐久性を一層高めることができる。
【0012】
また、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極において、前記補助電極は、互いに接触しない複数のメッシュ状または櫛状のパターンに形成されていてもよい。この場合、複数のパターンのうちの1つにおいて、補助電極に腐食が生じてしまった場合にも、腐食が他のパターンに伝搬することがない。補助電極の腐食を一部にとどめることができるので、残りの補助電極の性能を維持し、色素増感型太陽電池用電極の性能を維持することができる。
【0013】
また、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極において、前記上面保護部は、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなるものであってもよい。この場合には、上面保護部の耐食性を高めることができるので、補助電極の耐久性を高めることができる。
【0014】
また、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極において、前記耐食性金属部および前記上面保護部は、それぞれ、チタン、白金、ロジウム、ルテニウム、タングステンの金属群から選択される一種の金属により形成されるか、またはこれらの金属群から選択される二種以上の金属からなる合金により形成されていてもよい。この場合には、耐食性金属部および上面保護部の耐食性を一層高めることができるので、補助電極の耐久性を高めることができる。
【0015】
また、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極において、前記補助電極は、前記上面保護部の側面および上面を覆う第二の金属酸化膜を備えていてもよい。第二の金属酸化膜を備えていれば、上面保護部の腐食を一層防止することができる。そのため、補助電極の耐久性を一層高めることができる。
【0016】
また、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極において、前記上面保護部は、酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムからなるものであってもよい。この場合には、アルミニウム部を酸化処理、あるいは水酸化処理することにより、側面保護部と上面保護部とを同一工程で形成することができる。そのため、少ない工程で製造することのできる色素増感型太陽電池用電極を提供できる。
【0017】
本発明の第二の態様に係る色素増感型太陽電池用電極の製造方法は、請求項1から6のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電極を製造する製造方法であって、板状の透明基材の上面に、前記透明導電層を形成する透明導電層形成工程と、前記透明導電層の上面に前記補助電極を形成する補助電極形成工程と、を備え、前記補助電極形成工程は、前記透明導電層の上面を覆うように、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる耐食性金属層を形成する耐食性金属層形成工程と、前記耐食性金属層の上面を覆うように、アルミニウム層を形成するアルミニウム層形成工程と、前記アルミニウム層の上面を覆うように、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる上面保護層を形成する上面保護層形成工程と、前記透明導電層をエッチングストップ層として、前記耐食性金属層と前記アルミニウム層と前記上面保護層とにエッチング処理を行うことにより、前記耐食性金属部と前記アルミニウム部と前記上面保護部とを形成するエッチング工程と、前記アルミニウム部の側面を酸化もしくは水酸化処理することにより、前記アルミニウム部の側面を覆う前記側面保護部を形成する側面保護部形成工程とを備えたことを特徴とする。
【0018】
本態様に係る色素増感型太陽電池用電極の製造方法では、透明導電層形成工程において、板状の透明基材の上面に透明導電層を形成することができ、耐食性金属層形成工程において、透明導電層の上面を覆うようにハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる耐食性金属層を形成することができる。アルミニウム層形成工程で耐食性金属層の上面を覆うようにアルミニウム層を形成することができ、上面保護層形成工程において、アルミニウム層の上面を覆うように、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる上面保護層を形成することができる。エッチング工程において、透明導電層をエッチングストップ層として、耐食性金属層とアルミニウム層と上面保護層とにエッチング処理を行い、耐食性金属部とアルミニウム部と上面保護部とを形成することができる。側面保護部形成工程において、アルミニウム部の側面を酸化もしくは水酸化処理して側面保護部を形成することができる。
【0019】
耐食性金属層とアルミニウム層と上面保護層とを形成した後で、エッチング処理を行い、耐食性金属部とアルミニウム部と上面保護部とを形成するので、下側から順に耐食性金属部とアルミニウム部と上面保護部とが積層した補助電極を簡単に形成できる。また、補助電極の配置精度を良好とすることができる。また、エッチング工程の後で、アルミニウム部の側面を酸化もしくは水酸化処理して、アルミニウム部の側面を覆う側面保護部を形成するので、簡単に側面保護部を形成できる。
【0020】
本発明の第三の態様に係る色素増感型太陽電池用電極の製造方法は、請求項1から3、または7に記載の色素増感型太陽電池用電極を製造する製造方法であって、板状の透明基材の上面に、前記透明導電層を形成する透明導電層形成工程と、前記透明導電層の上面に前記補助電極を形成する補助電極形成工程とを備え、前記補助電極形成工程は、前記透明導電層の上面に、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる耐食性金属層を形成する耐食性金属層形成工程と、前記耐食性金属層の上面を覆うように、アルミニウム層を形成するアルミニウム層形成工程と、前記透明導電層をエッチングストップ層として、前記耐食性金属層と前記アルミニウム層とにエッチング処理を行うことにより、前記耐食性金属部と前記アルミニウム部とを形成するエッチング工程と、前記アルミニウム部の側面および上面を、酸化もしくは水酸化処理することにより、前記側面保護部と前記上面保護部とを形成する保護部形成工程とを備えたことを特徴とする。
【0021】
耐食性金属層とアルミニウム層とを形成した後で、エッチング処理を行い、耐食性金属部とアルミニウム部とを形成するので、下側から順に耐食性金属部とアルミニウム部とが積層した補助電極を簡単に形成できる。また、補助電極の配置精度を良好とすることができる。また、エッチング工程の後で、アルミニウム部の側面および上面を酸化もしくは水酸化処理して、アルミニウム部の側面を覆う側面保護部と、アルミニウム部の上面を覆う上面保護部とを形成するので、簡単に側面保護部および上面保護部を形成できる。
【0022】
本発明の第四の態様に係る色素増感型太陽電池は、第一電極と、前記第一電極と間隙をおいて対向する第二電極と、前記第一電極の前記第二電極と対向する面を覆い、且つ色素を吸着させた酸化物半導体からなる酸化物半導体層と、前記第一電極と前記第二電極との間に封入される電解質とを備えた色素増感型太陽電池であって、前記第一電極または前記第二電極のうちの少なくともいずれかは、前記請求項1から7のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電極であることを特徴とする。本態様に係る色素増感型太陽電池は、低抵抗で耐食性に優れた、色素増感型太陽電池用電極を備えていることから、高い光電変換効率を長期にわたって維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】色素増感型太陽電池1の一部縦断面図である。
【図2】色素増感型太陽電池用電極10の斜視図である。
【図3】図2に示す色素増感型太陽電池用電極10の一点鎖線Iにおける矢視方向断面図である。
【図4】色素増感型太陽電池用電極10の製造工程を示すフローチャートである。
【図5】色素増感型太陽電池用電極10の製造工程を示す説明図である。
【図6】第一比較例の色素増感型太陽電池用電極、第二比較例の色素増感型太陽電池用電極、色素増感型太陽電池用電極10の電気抵抗値である。
【図7】電解液に接触させた状態で静置した後の、第一比較例の色素増感型太陽電池用電極、第二比較例の色素増感型太陽電池用電極、色素増感型太陽電池用電極10の電気抵抗値である。
【図8】色素増感型太陽電池用電極20の一部縦断面図である。
【図9】色素増感型太陽電池用電極20の製造工程を示すフローチャートである。
【図10】色素増感型太陽電池用電極20の製造工程を示す説明図である。
【図11】色素増感型太陽電池用電極35の一部縦断面図である。
【図12】色素増感型太陽電池用電極46の一部縦断面図である。
【図13】変形例の色素増感型太陽電池用電極55の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第一実施形態である色素増感型太陽電池1および色素増感型太陽電池用電極10について、図面を参照して説明する。はじめに、色素増感型太陽電池1の概略構成について、図1を参照して説明する。以下の説明では、図1の下側(色素増感型太陽電池用電極10側)を色素増感型太陽電池1の下側、図1の上側を色素増感型太陽電池1の上側として説明する。
【0025】
図1に示すように、色素増感型太陽電池1は、色素増感型太陽電池用電極10と、色素増感型太陽電池用電極10と間隙をおいて対向する板状の対向電極50とを備える。色素増感型太陽電池用電極10と対向電極50との間には、電解液30が封入されている。色素増感型太陽電池用電極10の上面を覆うように、酸化物半導体層40が形成されている。
【0026】
対向電極50は、対向基材51と、対向基材51の下面に形成された対向導電層52とを備える。対向基材51の材質は、特に制限されないが、フレキシブル性を有する樹脂フィルムが好適に用いられる。対向基材51に使用される樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等からなる厚さ50〜300μmの単層フィルム又は前記透明樹脂からなる複数層の複合フィルムが挙げられる。
【0027】
対向導電層52の材質には、耐食性を備える導電性の材質が適用可能である。具体的には、白金(Pt)などの金属、酸化インジウムスズ(ITO)などの導電性金属酸化物、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等の導電性ポリマーが適用可能である。
【0028】
電解液30の材質には、色素増感型太陽電池の電解液として用いられる公知の電解液が用いられる。具体的には、電解液30として、I−/I3−系や、Br−/Br3−系、キノン/ハイドロキノン系等のレドックス電解質を含む電解液を採用することができる。このような電解液は、エタノールやアセトニトリルなどの溶媒にヨウ化リチウムやヨウ素などを溶解させるなど、従来公知の方法によって得ることができる。
【0029】
酸化物半導体層40は、分光増感色素を吸着させた金属酸化物からなる多孔質の膜である。金属酸化物としては、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化マグネシウム(MgO)等の公知の1種以上の金属酸化物半導体を用いることができる。これら金属酸化物半導体のなかでも、安定性や安全性の点から、アナタース型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルソチタン酸等の各種の酸化チタン又は水酸化チタン、含水酸化チタンの微粒子からなるものが好ましい。
【0030】
分光増感色素は、酸化物半導体層40を構成する金属酸化物半導体の表面に、単分子膜として吸着されるものである。この分光増感色素は、可視光領域及び/又は赤外光領域に吸収を持つものであり、種々の金属錯体や有機色素を1種以上用いることができる。例えば、分光増感色素の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、スルホン基、カルボキシアルキル基の官能基を有するものが、金属酸化物半導体への吸着が速いため、好ましい。また、分光増感の効果や耐久性に優れている観点から、金属錯体が好ましい。この金属錯体としては、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン、クロロフィル、ヘミンや、公知のルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛等の錯体を用いることができる。また、有機色素としては、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン色素を用いることができる。
【0031】
次に、図2および図3を参照して、本実施形態における色素増感型太陽電池用電極10について説明する。まず、色素増感型太陽電池用電極10の構造について説明する。図2に示すように、色素増感型太陽電池用電極10は、透明な板状の基材21を備える。基材21の上面には、基材21を覆うように、透明導電層2が設けられている。透明導電層2の上面には、補助電極3が設けられている。
【0032】
図2に示すように、補助電極3は、互いに接触しない複数のメッシュ状の細線パターンに形成されている。細線パターンの寸法は、線幅20μm、間隔200μm、線厚0.8μmである。
【0033】
図3に示すように、補助電極3は、透明導電層2の上面に形成された厚さ200nmの耐食性金属部4と、耐食性金属部4の上面に形成された厚さ500nmのアルミニウム部5と、アルミニウム部5の上面に形成された厚さ100nmの上面保護部6とを備えている。アルミニウム部5の側面には、側面保護部7が形成されている。耐食性金属部4の側面には、耐食性金属部4が酸化されてなる第一金属酸化膜8が形成されている。上面保護部6の側面および上面には、上面保護部6が酸化されてなる第二金属酸化膜9が形成されている。
【0034】
以下、色素増感型太陽電池用電極10を構成する各要素の材質について説明する。まず、基材21について説明する。基材21は、表面が平坦である板状部材である。基材21は、可視領域で透明性を有する透明基材であり、一般に全光線透過率が90%以上のものが好ましい。中でも、フレキシブル性を有する樹脂フィルムが好適に用いられる。基材21に使用される透明樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等からなる厚さ50〜300μmの単層フィルム又は前記透明樹脂からなる複数層の複合フィルムが挙げられる。なお、必要に応じて、基材21の下面に、耐候性を付与するための樹脂をコートしてもよい。また、ソーダガラス、耐熱ガラス、石英ガラス等のガラスを基材21として用いてもよい。本実施形態においては、基材21の材質として、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。
【0035】
透明導電層2の材質には、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明な導電物質が用いられる。本実施形態においては、透明導電層2の材質として、酸化インジウムスズ(ITO)を用いた。
【0036】
耐食性金属部4の材質には、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対して耐食性を有する金属が用いられる。特に、耐食性金属部4の材質として、チタン(Ti)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)の金属群から選択される一種の金属、またはこれらの金属群から選択される二種以上の金属からなる合金が好適である。本実施形態においては、耐食性金属部4の材質として、チタン(Ti)を採用した。
【0037】
アルミニウム部5の材質には、アルミニウム(Al)が用いられる。
【0038】
上面保護部6の材質には、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対して耐食性を有する金属が用いられる。特に、上面保護部6の材質として、チタン(Ti)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)の金属群から選択される一種の金属、またはこれらの金属群から選択される二種以上の金属からなる合金が好適である。本実施形態においては、上面保護部6の材質として、チタン(Ti)を採用した。
【0039】
第一金属酸化膜8は、耐食性金属部4の側面が酸化されて形成され、本実施形態では、酸化チタン(TiO2)からなる。側面保護部7は、アルミニウム部5を酸化処理することにより形成された酸化アルミニウム(Al2O3)からなる。第二金属酸化膜9は、上面保護部6の側面および上面が酸化されて形成され、本実施形態では、酸化チタン(TiO2)からなる。
【0040】
次に、上記構造の色素増感型太陽電池用電極10の製造工程について、図4および図5を参照して説明する。色素増感型太陽電池用電極10の製造工程は、図4に示すように、透明導電層形成工程(S11)と、補助電極形成工程(S12)とを備えている。補助電極形成工程(S12)は、耐食性金属層形成工程(S121)と、アルミニウム層形成工程(S122)と、上面保護層形成工程(S123)と、エッチング工程(S124)と、酸化膜形成工程(S125)とを備える。以下、各工程について詳細に説明する。
【0041】
透明導電層形成工程(S11)について説明する。透明導電層形成工程(S11)では、図5に示すように、基材21の上面に透明導電層2を形成する。透明導電層2の形成方法は、周知の各種方法が適用可能であるが、スパッタ法を適用することが好ましく、特に酸素雰囲気ガスを用いた反応性スパッタ法で形成することが好ましい。こうして、基材21の上面に透明導電層2が積層した構造体11が形成される。
【0042】
補助電極形成工程(S12)について説明する。図4に示すように、補助電極形成工程(S12)では、はじめに、耐食性金属層形成工程(S121)が行われる。耐食性金属層形成工程(S121)では、図5に示すように、透明導電層2の上面に、厚さ200nmのチタンからなる耐食性金属層41を形成する。耐食性金属層41の形成方法は、チタン薄膜を形成する周知の各種方法が適用可能であるが、本実施形態においては、DCスパッタ法を採用する。なお、スパッタリングの過程で、チタンが酸化されてしまうことを防止するために、スパッタリングは窒素雰囲気化において行う。こうして、基材21の上面に透明導電層2が積層し、透明導電層2の上面に耐食性金属層41が積層した構造体12が形成される。
【0043】
図4に示すように、耐食性金属層形成工程(S121)が終了すると、アルミニウム層形成工程(S122)が行われる。アルミニウム層形成工程(S122)では、図5に示すように、耐食性金属層41の上面を覆うように、厚さ500nmのアルミニウムからなるアルミニウム層53を形成する。アルミニウム層53の形成方法は、アルミニウム膜を形成する周知の各種方法が適用可能であるが、本実施形態においては、DCスパッタ法を採用する。なお、スパッタリングの過程で、アルミニウムが酸化されてしまうことを防止するために、スパッタリングは窒素雰囲気化において行う。こうして、基材21の上面に、透明導電層2、耐食性金属層41、アルミニウム層53が積層した構造体13が形成される。
【0044】
図4に示すように、アルミニウム層形成工程(S122)が終了すると、上面保護層形成工程(S123)が行われる。上面保護層形成工程(S123)では、図5に示すように、アルミニウム層53の上面を覆うように、厚さ100nmのチタンからなる上面保護層61を形成する。上面保護層61の形成方法は、チタン薄膜を形成する周知の各種方法が適用可能であるが、本実施形態においては、DCスパッタ法を採用する。なお、スパッタリングの過程で、チタンが酸化されてしまうことを防止するために、スパッタリングは窒素雰囲気化において行う。こうして、基材21の上面に、透明導電層2、耐食性金属層41、アルミニウム層53、上面保護層61が積層した構造体14が形成される。
【0045】
図4に示すように、上面保護層形成工程(S123)が終了すると、エッチング工程(S124)が行われる。エッチング工程(S124)では、図5に示すように、透明導電層2をエッチングストップ層として、耐食性金属層41、アルミニウム層53、上面保護層61のエッチングを行う。
【0046】
具体的には、まず、上面保護層61の上面に、フォトレジストTFR−970(東京応化株式会社製)を塗布し、フォトリソ法で線幅20μm、間隔200μmの平面視メッシュ状のフォトレジストを形成する。次に、Ti/Al/Ti一括エッチャントを使用してエッチングを行い、その後、アセトンを使用してレジストを除去する。なお、エッチングの手法としては、エッチャントを使用するウェットエッチングのほか、気相中で行われるドライエッチングを採用することもできる。これにより、透明導電層2の上面に、耐食性金属部4、アルミニウム部5、上面保護部6が下側から積層し、かつ平面視メッシュ状の積層体15が形成される。こうして、基材21の上面に透明導電層2が積層し、透明導電層2の上面に積層体15が形成された構造体16が形成される。
【0047】
図4に示すように、エッチング工程(S124)が終了すると、酸化膜形成工程(S125)が行われる。酸化膜形成工程(S125)では、図5に示すように、積層体15の表面を覆う金属酸化膜(不動態膜)を形成する。具体的には、酸化膜形成工程(S125)では、耐食性金属部4の側面を覆う第一金属酸化膜8と、アルミニウム部5の側面を覆う側面保護部7と、上面保護部6の側面及び上面を覆う第二金属酸化膜9とを形成する。
【0048】
第一金属酸化膜8と、側面保護部7と、第二金属酸化膜9との形成は、積層体15の表面を陽極酸化処理することにより行われる。陽極酸化処理では、処理浴中で構造体16を陽極として電気分解し、積層体15の表面を電気化学的に酸化させる。本実施形態では、処理浴として1wt%の酒石酸アンモニウムを含有するエチレングリコール溶液を用いた。陽極酸化処理における電解槽電圧(陽極酸化処理浴中の陽極と陰極の間の電圧)は100Vとした。こうして、チタンからなる耐食性金属部4および上面保護部6の表面に、それぞれ、酸化チタンからなる第一金属酸化膜8および第二金属酸化膜9が形成される。また、アルミニウム部5の側面に、酸化アルミニウムからなる側面保護部7が形成される。以上の工程を経て、色素増感型太陽電池用電極10が製造される。
【0049】
上述の製造方法によって形成された色素増感型太陽電池用電極10の性能評価および耐食性評価を行った。性能評価および耐食性評価の方法および結果を説明する。
【0050】
この性能評価および耐食性評価では、第一比較例として補助電極3を備えない色素増感型太陽電池用電極、第二比較例として、側面保護部7、第一金属酸化膜8、第二金属酸化膜9を備えない色素増感型太陽電池用電極についても、性能評価を行った。
【0051】
第一比較例の色素増感型太陽電池用電極は、補助電極3を備えないこと以外は、色素増感型太陽電池用電極10と同様である。第二比較例の色素増感型太陽電池用電極の構造は、側面保護部7、第一金属酸化膜8、第二金属酸化膜9を備えていないこと以外は、色素増感型太陽電池用電極10と同様である。また、第一比較例の色素増感型太陽電池用電極は、補助電極形成工程(S12)(図4参照)を備えないこと以外は、色素増感型太陽電池用電極10の製造工程と同様である。第二比較例の色素増感型太陽電池用電極の製造工程は、酸化膜形成工程(S125)(図4参照)を備えていないこと以外は、色素増感型太陽電池用電極10の製造工程と同様である。
【0052】
はじめに、性能評価ついて説明する。性能評価は、第一実施形態の色素増感型太陽電池用電極10、第一比較例の色素増感型太陽電池用電極、第二比較例の色素増感型太陽電池用電極の電気抵抗値をそれぞれ測定し、比較することにより行った。
【0053】
性能評価の結果について説明する。図6に示すように、第一比較例の色素増感型太陽電池用電極の電気抵抗値は、20Ω/cm2であった。第二比較例の色素増感型太陽電池用電極の電気抵抗値は、1Ω/cm2であった。また、本実施形態の色素増感型太陽電池用電極10の電気抵抗値は1Ω/cm2であった。
【0054】
これにより、色素増感型太陽電池用電極10の電気抵抗値は、補助電極3を備えない第一比較例の色素増感型太陽電池用電極に比べて、低いことが示された。すなわち、補助電極3を形成したことにより、色素増感型太陽電池用電極10の電気抵抗値が下がることが示された。
【0055】
また、色素増感型太陽電池用電極10の電気抵抗値は、側面保護部7、第一金属酸化膜8、第二金属酸化膜9を備えない第二比較例の色素増感型太陽電池用電極と同等であることが示された。色素増感型太陽電池用電極10の側面保護部7、第一金属酸化膜8、第二金属酸化膜9は、アルミニウム部5、耐食性金属部4、上面保護部6の表面がそれぞれ酸化されて形成されたものである。これにより、アルミニウム部5、耐食性金属部4、上面保護部6の表面の酸化処理を行っても、低い電気抵抗値が維持できることが示された。
【0056】
次に、耐食性評価について説明する。耐食性評価は、以下の方法により行った。まず、ヨウ素をイオン液体に溶解した電解液を作成する。イオン液体は、EMI−TFSI(エチルメチルイミダゾリウム ビストリフルオロスルホニルイミド)を用いた。イオン液体中のヨウ素濃度は、0.1mol/lになるように調整してある。次に、得られた電解液を第一比較例の色素増感型太陽電池用電極、第二比較例の色素増感型太陽電池用電極、および第一実施形態の色素増感型太陽電池用電極10の上面に塗布する。そして、電解液を塗布した第一比較例の色素増感型太陽電池用電極、第二比較例の色素増感型太陽電池用電極、色素増感型太陽電池用電極10を、80℃に設定されたオーブンの内部に2週間静置する。静置後の第一比較例の色素増感型太陽電池用電極、第二比較例の色素増感型太陽電池用電極、第一実施形態の色素増感型太陽電池用電極10の電気抵抗値をそれぞれ測定することにより、耐食性評価を行った。
【0057】
耐食性評価の結果について説明する。図9に示すように、第一比較例の色素増感型太陽電池用電極の電気抵抗値は、20Ω/cm2であった。第二比較例の色素増感型太陽電池用電極の電気抵抗値は、20Ω/cm2であった。一方、本実施形態の色素増感型太陽電池用電極10の電気抵抗値は1Ω/cm2であった。
【0058】
これにより、第二比較例の色素増感型太陽電池用電極では、ヨウ素を含有する電解液に接触すると、電気抵抗値が、第一比較例の色素増感型太陽電池用電極と同等にまで上がってしまうことが示された。一方、第一実施形態の色素増感型太陽電池用電極10では、ヨウ素を含有する電解液に接触しても、低い電気抵抗値を維持できることが示された。
【0059】
この理由は以下のように考えられる。側面保護部7が形成されていない第二比較例の色素増感型太陽電池用電極では、アルミニウム部5の側面が電解液に晒されてしまう。そのため、アルミニウム部5は、電解液中のヨウ素によって側面から腐食されてしまう。アルミニウム部5が腐食されることにより、補助電極3の導電性が悪化し、電気抵抗値が上がったものと考えられる。一方、本実施形態の色素増感型太陽電池用電極10では、アルミニウム部5の側面が酸化アルミニウムからなる側面保護部7により覆われている。酸化アルミニウムは、電解液に対する耐食性を備えるため、アルミニウム部5の上面、下面だけでなく、側面も保護できる。よって、アルミニウム部5の腐食を防止することができ、補助電極3の導電性を維持できたものと考えられる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の色素増感型太陽電池用電極10によれば、補助電極3は、導電率の高いアルミニウム部5を備えているため、補助電極3の導電率を高くすることができる。よって、色素増感型太陽電池用電極10の低抵抗化を図ることができる。
【0061】
また、アルミニウム部5の下面を耐食性金属部4が覆い、アルミニウム部5の上面を上面保護部6が覆い、アルミニウム部5の側面を側面保護部7が覆うため、電解液30によって腐食されやすいアルミニウム部5が電解液30に晒されることがない。よって、アルミニウム部5が、電解液30によって腐食されることがない。
【0062】
また、耐食性金属部4、上面保護部6、側面保護部7を構成するチタンおよび酸化アルミニウムは、電解液30に対する耐食性を備える。そのため、耐食性金属部4、上面保護部6、側面保護部7が電解液30によって腐食されて、電解液30がアルミニウム部5に到達することを防止できる。さらに、耐食性金属部4の側面および上面保護部6の側面及び上面には、酸化チタンからなる第一金属酸化膜8、第二金属酸化膜9が形成されている。酸化チタンは、電解液30に対して高い耐食性を備えている。そのため、耐食性金属部4、上面保護部6の腐食を一層確実に防止できる。
【0063】
また、アルミニウム部5を酸化処理することにより、酸化アルミニウムからなる側面保護部7を形成できる。よって、簡単に側面保護部7を形成できる。
【0064】
また、アルミニウム部5の下側には、耐食性金属部4が形成されているので、アルミニウム部5の側面を隙間なく覆うように、側面保護部7を形成することができる。アルミニウム部5の下側が、金属酸化物からなる透明導電層2である場合、酸化膜形成工程(S7)において、アルミニウム部5を酸化処理して形成される側面保護部7は、透明導電層2の表面特性に阻害されて、透明導電層2の上面近傍において形成されにくい。そのため、側面保護部7の下端と透明導電層2の上面との間には、隙間が形成されてしまい、この隙間から侵入した電解液30が、アルミニウム部5を腐食してしまう。本実施形態の色素増感型太陽電池用電極10では、透明導電層2とアルミニウム部5との間に、金属からなる耐食性金属部4が形成され、側面保護部7は、耐食性金属部4の上面と密着して形成される。側面保護部7をアルミニウム部5の側面を隙間なく覆うように形成することができるので、アルミニウム部5の腐食を確実に防止して、補助電極3の耐久性を高めることができる。
【0065】
また、補助電極3は、互いに接触しない複数のメッシュ状のパターンに形成されている。そのため、複数のパターンのうちの1つにおいて、補助電極3に腐食が生じてしまった場合にも、腐食が他のパターンに伝搬することがないので、補助電極3の腐食の伝搬を途中で食い止めることができる。補助電極3の腐食を一部にとどめることができるので、残りの補助電極3の性能を維持し、色素増感型太陽電池用電極10の性能を維持することができる。
【0066】
また、上記構成の色素増感型太陽電池用電極10を備えた色素増感型太陽電池1は、色素増感型太陽電池用電極10が低抵抗で耐食性に優れていることから、高い光電変換効率を長期にわたって維持することができる。
【0067】
上記実施形態において、基材21が、本発明の「透明基材」に相当する。酸化膜形成工程(S125)が、本発明の「側面保護部形成工程」に相当する。
【0068】
次に、本発明の第二実施形態の色素増感型太陽電池用電極20について、図8から図10を参照して説明する。第二実施形態の色素増感型太陽電池用電極20では、補助電極23の構造が、第一実施形態とは異なる。以下では、第一実施形態とは異なる補助電極23の構造について重点的に説明し、第一実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、または簡略化するものとする。
【0069】
まず、色素増感型太陽電池用電極20の構造および材質について、図8を参照して説明する。色素増感型太陽電池用電極20は、透明な板状の基材21を備える。基材21の上面には、基材21を覆うように、透明導電層2が設けられている。基材21、透明導電層2の材質は、第一実施形態と同様である。
【0070】
透明導電層2の上面には、補助電極23が設けられている。補助電極23は、第一実施形態における補助電極3(図2参照)と同様に、互いに接触しない複数のメッシュ状のパターンに形成されている。補助電極23は、透明導電層2の上面に形成された厚さ200nmの耐食性金属部24を備える。耐食性金属部24の材質は、チタン(Ti)である。耐食性金属部24の上面には、厚さ800nmのアルミニウム部25が形成されている。アルミニウム部25の材質は、アルミニウムである。そして、アルミニウム部25の側面および上面を覆うように、酸化アルミニウムからなる保護部27が形成されている。保護部27は、アルミニウム部25の側面を覆う側面保護部38と、アルミニウム部25の上面を覆う上面保護部39とを備えている。耐食性金属部24の側面には、耐食性金属部24が酸化されてなる第一金属酸化膜28が形成されている。第一金属酸化膜28は、酸化チタン(TiO2)からなる。
【0071】
次に、色素増感型太陽電池用電極20の製造工程について、図9および図10を参照して説明する。色素増感型太陽電池用電極20の製造工程は、図9に示すように、透明導電層形成工程(S21)と、補助電極形成工程(S22)とを備えている。補助電極形成工程(S22)は、耐食性金属層形成工程(S221)と、アルミニウム層形成工程(S222)と、エッチング工程(S223)と、保護部形成工程(S224)とを備える。以下、各工程について説明する。
【0072】
透明導電層形成工程(S21)は、第一実施形態の透明導電層形成工程(S11)と同様の工程である。図10に示すように、透明導電層形成工程(S21)では、基材21の上面に透明導電層2が積層した構造体11が形成される。
【0073】
補助電極形成工程(S22)について説明する。図9に示すように、補助電極形成工程(S22)では、はじめに、耐食性金属層形成工程(S221)が行われる。耐食性金属層形成工程(S221)は、第一実施形態の耐食性金属層形成工程(S121)と同様の工程である。耐食性金属層形成工程(S221)では、図10に示すように、透明導電層2の上面に、チタンからなる厚さ200nmの耐食性金属層42を形成する。こうして、基材21の上面に透明導電層2が積層し、透明導電層2の上面に耐食性金属層42が積層した構造体17が形成される。
【0074】
図9に示すように、耐食性金属層形成工程(S221)が終了すると、アルミニウム層形成工程(S222)が行われる。アルミニウム層形成工程(S222)では、図10に示すように、耐食性金属層42の上面を覆うように、厚さ800nmのアルミニウム層54を形成する。アルミニウム層形成工程(S222)は、第一実施形態のアルミニウム層形成工程(S122)と同様の工程である。こうして、基材21の上面に透明導電層2が積層し、透明導電層2の上面に耐食性金属層42が積層し、耐食性金属層42の上面にアルミニウム層54が積層した構造体18が形成される。
【0075】
図9に示すように、アルミニウム層形成工程(S222)が終了すると、エッチング工程(S223)が行われる。エッチング工程(S223)では、図10に示すように、透明導電層2をエッチングストップ層として、耐食性金属層42とアルミニウム層54とのエッチングを行う。
【0076】
具体的には、まず、アルミニウム層54の上面に、フォトレジストTFR−970(東京応化株式会社製)を塗布し、フォトリソ法で線幅20μm、間隔200μmの平面視メッシュ状のフォトレジストを形成する。次に、Ti/Al一括エッチャントを使用してエッチングを行い、その後、アセトンを使用してレジストを除去する。なお、エッチングの手法としては、エッチャントを使用するウェットエッチングのほか、気相中で行われるドライエッチングを採用することもできる。これにより、下側から耐食性金属部24とアルミニウム部25とが積層し、かつ平面視メッシュ状の積層体29が、透明導電層2の上面に形成される。こうして、基材21の上面に透明導電層2が積層し、透明導電層2の上面に積層体29が形成された構造体19が形成される。
【0077】
図9に示すように、エッチング工程(S223)が終了すると、保護部形成工程(S224)が行われる。保護部形成工程(S224)では、図10に示すように、エッチング工程(S223)において露出したアルミニウム部25の側面および上面に、酸化アルミニウムからなる保護部27を形成する。また、チタンからなる耐食性金属部24の側面に、酸化チタンからなる第一金属酸化膜28が形成される。
【0078】
保護部27および第一金属酸化膜28の形成は、積層体29を陽極酸化処理することにより行われる。陽極酸化処理では、処理浴中で構造体19を陽極として電気分解し、積層体29の表面を電気化学的に酸化させる。本実施形態では、処理浴として1wt%の酒石酸アンモニウムを含有するエチレングリコール溶液を用いた。陽極酸化処理における電解槽電圧(陽極酸化処理浴中の陽極と陰極の間の電圧)は100Vとした。陽極酸化処理では、希硫酸やシュウ酸などを処理浴に用いて、構造体19を陽極として電気分解し、積層体29の表面を電気化学的に酸化させる。こうして、アルミニウム部25の上面および側面に、酸化アルミニウムからなる保護部27が形成される。以上の工程を経て、透明導電層2の上面に補助電極23が形成された色素増感型太陽電池用電極20が製造される。
【0079】
上述の製造方法によって形成された色素増感型太陽電池用電極20の性能評価および耐食性評価を行った。なお、この性能評価および耐食性評価では、第三比較例として保護部27を備えない色素増感型太陽電池用電極についても、性能評価を行った。第三比較例の色素増感型太陽電池用電極は、保護部27を備えないこと以外は、色素増感型太陽電池用電極20と同様である。また、第三比較例の色素増感型太陽電池用電極は、保護部形成工程(S224)を備えないこと以外は、色素増感型太陽電池用電極20の製造工程と同様である。また、色素増感型太陽電池用電極20の性能評価、耐食性評価は、第一実施形態の色素増感型太陽電池用電極10の性能評価、耐食性評価と同様の方法で行った。
【0080】
はじめに、性能評価について説明する。色素増感型太陽電池用電極20の性能評価は、第一実施形態の色素増感型太陽電池用電極10の性能評価と同様の方法で行った。色素増感型太陽電池用電極20の電気抵抗値を測定したところ、1Ω/cm2であった。第三比較例の色素増感型太陽電池用電極の電気抵抗値を測定したところ、1Ω/cm2であった。
【0081】
これにより、アルミニウム部25の表面に保護部27が形成されている色素増感型太陽電池用電極20、およびアルミニウム部25の表面に保護部27が形成されていない第三比較例の色素増感型太陽電池用電極の電気抵抗値は等しいことが示された。保護部27は、アルミニウム部25の表面が酸化されて形成されている。これにより、色素増感型太陽電池用電極において、アルミニウム部25の表面に酸化処理を行っても、色素増感型太陽電池用電極の電気抵抗値は悪化しないことが示された。
【0082】
次に、耐食性評価の結果について説明する。また、色素増感型太陽電池用電極20の性能評価、耐食性評価は、第一実施形態の色素増感型太陽電池用電極10の性能評価、耐食性評価と同様の方法で行った。表面にヨウ素を含有する電解液を塗布して、2週間、80℃で静置した後の色素増感型太陽電池用電極20の電気抵抗値は1Ω/cm2であった。一方、第三比較例の色素増感型太陽電池用電極の電気抵抗値は、20Ω/cm2であった。
【0083】
これにより、第三比較例の色素増感型太陽電池用電極では、ヨウ素を含有する電解液に接触すると、電気抵抗値が上がってしまうことが示された。一方、第二実施形態の色素増感型太陽電池用電極20では、ヨウ素を含有する電解液に接触しても、低い電気抵抗値を維持できることが示された。
【0084】
この理由は以下のように考えられる。保護部27が形成されていない第三比較例の色素増感型太陽電池用電極では、アルミニウム部25の上面及び側面が電解液に晒されてしまう。そのため、アルミニウム部25は、電解液中のヨウ素によって上面及び側面から腐食されてしまう。アルミニウム部25が腐食されることにより、補助電極23の導電性が悪化し、電気抵抗値が上がったものと考えられる。
【0085】
一方、本実施形態の色素増感型太陽電池用電極20では、アルミニウム部25の上面及び側面が、酸化アルミニウムからなる保護部27により覆われている。酸化アルミニウムは、ヨウ素を含有する電解液に対する耐食性を有するため、アルミニウム部25の下面だけでなく、上面及び側面も保護できる。よって、アルミニウム部25の腐食を防止して、補助電極23の導電性を維持できたものと考えられる。
【0086】
第二実施形態の色素増感型太陽電池用電極20によれば、アルミニウム部25の下面をチタンからなる耐食性金属部24が覆い、アルミニウム部25の上面および側面を酸化アルミニウムからなる保護部27が覆うため、電解液30によって腐食されやすいアルミニウム部25が電解液30に晒されることがない。耐食性金属部24を構成するチタン、保護部27を構成する酸化アルミニウムは、それぞれ電解液30に対する耐食性を備えるため、耐食性金属部24、保護部27が電解液30によって腐食されることがない。よって、補助電極23の電解液30による腐食を防止できる。
【0087】
また、保護部形成工程(S224)によって、アルミニウム部25の側面及び上面を覆う保護部27を形成できる。そのため、アルミニウム部25の側面及び上面を保護する保護部27を一工程で製造することができる。
【0088】
なお、本発明の色素増感型太陽電池用電極、色素増感型太陽電池用電極の製造方法、および色素増感型太陽電池は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、第一実施形態の色素増感型太陽電池用電極10においては、耐食性金属部4の側面に第一金属酸化膜8が形成され、上面保護部6の上面及び側面に、第二金属酸化膜9が形成されていたが、第一金属酸化膜8、第二金属酸化膜9が形成されているものに限定されない。図11に示すように、耐食性金属部43、上面保護部63の材質として、イオン化傾向の低い白金などを採用して、補助電極33を形成した場合、上述した陽極酸化処理を行っても、第一金属酸化膜、第二金属酸化膜は形成されないが、耐食性金属部43、上面保護部63の高い耐食性により、アルミニウム部5の上面及び下面を保護することができる。この場合にも、アルミニウム部5の腐食を防止することができるので、高い導電性を維持できる色素増感型太陽電池用電極35を提供できる。
【0089】
また、第二実施形態の色素増感型太陽電池用電極20では、耐食性金属部24の側面に第一金属酸化膜28が形成されているが、第一金属酸化膜28は形成されていなくてもよい。例えば、図12に示すように、耐食性金属部44の材質として、イオン化傾向の低い白金などを採用して、補助電極45を形成した場合、上述した陽極酸化処理を行っても、第一金属酸化膜は形成されないが、耐食性金属部44の高い耐食性により、アルミニウム部25の下面を保護することができる。この場合にも、第二実施形態と同様に、アルミニウム部25の腐食を防止することができるので、高い導電性を維持できる色素増感型太陽電池用電極46を提供できる。
【0090】
また、耐食性金属部4と上面保護部6とを異なる材質により形成してもよい。また、第一実施形態の酸化膜形成工程(S125)、第二実施形態の保護部形成工程(S224)では、積層体15、積層体29の表面を酸化する方法として、陽極酸化処理を採用したが、陽極酸化処理に限定されず、金属表面を酸化する周知の種々の方法が適用可能である。例えば、0.1wt%のアンモニア水溶液中で、積層体15、積層体29を水熱処理することにより、積層体15、積層体29の表面を酸化してもよい。
【0091】
また、補助電極3は、線状のパターンに形成されていればよく、互いに接触しない複数のメッシュ状のパターンに形成されたものに限定されない。例えば、図13に示すように、透明導電層2の上面に、補助電極3と同様の断面構造を有する補助電極31を切断部分のない一つのメッシュ状のパターンに形成した場合であっても、色素増感型太陽電池用電極55の電気抵抗値を下げることができ、耐食性を向上させることができる。また、補助電極3は櫛状に形成されても良い。
【0092】
また、第一実施形態における色素増感型太陽電池用電極10の側面保護部7、第二実施形態における色素増感型太陽電池用電極20の保護部27は、それぞれ酸化アルミニウムにより形成されていたが、側面保護部7および保護部27は水酸化アルミニウムにより形成されていてもよい。色素増感型太陽電池用電極10の側面保護部7を水酸化アルミニウムにより形成する場合には、上述した色素増感型太陽電池用電極10の製造工程において、エッチング工程(S124)(図4参照)の後、酸化膜形成工程(S125)を行う代わりに、アルミニウムを水酸化処理して水酸化アルミニウムを保護部27として形成する水酸化膜形成工程を行えばよい。また、色素増感型太陽電池用電極20の保護部27を水酸化アルミニウムにより形成する場合には、上述した色素増感型太陽電池用電極20の製造工程において、エッチング工程(S223)(図9参照)の後、保護部形成工程(S224)を行う代わりに、同様の水酸化膜形成工程を行えばよい。
【0093】
また、本実施形態の色素増感型太陽電池1では、酸化物半導体層40は、色素増感型太陽電池用電極10の透明導電層2および補助電極3を覆うように形成されていたが、対向電極50の対向導電層52を覆うように形成されていても良い。また、電解液30の代わりに、液体電解質又はこれを高分子物質中に含有させた固体高分子電解質を色素増感型太陽電池用電極10と対向電極50との間に封入してもよい。
【0094】
また、本実施形態の色素増感型太陽電池1は、色素増感型太陽電池用電極10と、色素増感型太陽電池用電極10に間隙をおいて対向する対向電極50を備えていたが、互いに間隙をおいて対向する二つの色素増感型太陽電池用電極10を備える色素増感型太陽電池1であっても、本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0095】
1 色素増感型太陽電池
2 透明導電層
3、23、33 補助電極
4、24 耐食性金属部
5、25 アルミニウム部
6 上面保護部
7 側面保護部
8 第一金属酸化膜
9 第二金属酸化膜
10、20、35 色素増感型太陽電池用電極
21 基材
27 保護部
30 電解質
40 酸化物半導体層
50 対向電極
41、42 耐食性金属層
53、54 アルミニウム層
61 上面保護層
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池用電極、その製造方法、および色素増感型太陽電池用電極を備える色素増感型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、増感色素を吸着させた酸化物半導体を電極に用いた色素増感型太陽電池が知られている。色素増感型太陽電池は、透明導電層上に分光増感色素を吸着させた金属酸化物半導体層が形成された色素増感型太陽電池用電極を備える。そして、色素増感型太陽電池用電極と間隙をおいて対向電極が配置されており、色素増感型太陽電池用電極と対向電極との間に電解液が封入されている。
【0003】
ところで、色素増感型太陽電池用電極では、透明導電層を厚くすれば、導電率を向上させることができるが、透過率が低下して光電変換効率が低下してしまうとともに、生産性の低下や製造コストの増大を招いてしまう。そこで、透明導電層の上面に、透明導電層よりも電気抵抗率が低く、かつ不動態膜を形成しやすい金属またはその合金からなるメッシュ状の導電体を補助電極として形成した色素増感型太陽電池用電極が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この色素増感型太陽電池用電極では、透明導電層の上面に補助電極を形成することにより、電極の低抵抗化を図ることができる。また、補助電極の表面に不動態膜を形成させることができるため、補助電極が電解液により腐食されることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−197176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の色素増感型太陽電池電極では、透明導電層の表面特性により、不動態膜を透明導電層の表面に密着させることができないため、不動態膜と透明導電層との間に、隙間が形成されてしまい、電解液がこの隙間に入り込んで、補助電極を腐食してしまうことになる。そのため、色素増感型太陽電池用電極の導電性が劣化してしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は上述の課題を解決するためになされたものであり、高い導電性を維持できる色素増感型太陽電池用電極、その製造方法、および色素増感型太陽電池用電極を備える色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第一の態様に係る色素増感型太陽電池用電極は、板状の透明基材と、前記透明基材の上面に設けられた透明導電層と、前記透明導電層の上面に線状に形成され、前記透明導電層よりも抵抗値の低い補助電極と、を備えた色素増感型太陽電池用電極であって、前記補助電極は、前記透明導電層の上面に形成され、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる耐食性金属部と、前記耐食性金属部の上面に形成されたアルミニウムからなるアルミニウム部と、前記アルミニウム部の側面を覆い、酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムからなる側面保護部と、前記アルミニウム部の上面を覆い、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムのいずれかからなる上面保護部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
本態様に係る色素増感型太陽電池用電極では、補助電極が、導電率の高いアルミニウムからなるアルミニウム部を備えているため、補助電極の導電率を高くすることができる。よって、色素増感型太陽電池用電極の低抵抗化を図ることができる。また、アルミニウム部の下面を耐食性金属部が覆い、アルミニウム部の上面を上面保護部が覆い、アルミニウム部の側面を側面保護部が覆うため、耐食性の低いアルミニウム部が外部に露出しない。色素増感型太陽電池用電極は、使用時には、ハロゲンを含んだ電解質溶液に晒された状態となるが、この場合にもアルミニウム部は、電解質に晒されることがないので、電解質によって腐食されることがない。また、耐食性金属部、側面保護部、上面保護部を構成するチタンおよび酸化アルミニウムは耐食性を備える。使用時に電解質に晒される耐食性金属部、側面保護部、上面保護部が電解質に腐食されることはないので、腐食によって生じる腐食孔から、電解質がアルミニウム部に到達することを防止できる。よって、アルミニウム部の腐食を防止して、補助電極の耐久性を高めることができる。よって、高い導電性を維持できる色素増感型太陽電池用電極を提供できる。
【0009】
また、側面保護部は酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムからなるので、アルミニウム部を酸化処理、あるいは水酸化処理することにより、側面保護部を形成できる。よって、簡単に側面保護部を形成できる。
【0010】
また、アルミニウム部の下側に耐食性金属部が形成されているので、アルミニウム部の側面を隙間なく覆うように側面保護部を形成することができる。アルミニウム部の下側が透明導電層である場合、透明導電層の表面特性から、酸化アルミニウムおよび水酸化アルミニウムからなる側面保護部は、透明導電層の上面に密着しにくい。そのため、側面保護部の下端と透明導電層の上面との間には、隙間が形成されてしまい、この隙間から侵入し、アルミニウム部に到達した電解質が、アルミニウム部を腐食してしまう。本実施の態様の色素増感型太陽電池用電極は、透明導電層とアルミニウム部との間には、金属からなる耐食性金属部が形成されている。側面保護部を、耐食性金属部の上面と密着して形成することができるので、側面保護部は、アルミニウム部の側面を隙間なく覆うことができる。よって、アルミニウム部の腐食を確実に防止して、補助電極の耐久性を高めることができる。
【0011】
また、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極において、前記補助電極は、前記耐食性金属部の側面を覆う第一の金属酸化膜をさらに備えていてもよい。第一の金属酸化膜を備えていれば、耐食性金属部の腐食を一層防止することができる。そのため、補助電極の耐久性を一層高めることができる。
【0012】
また、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極において、前記補助電極は、互いに接触しない複数のメッシュ状または櫛状のパターンに形成されていてもよい。この場合、複数のパターンのうちの1つにおいて、補助電極に腐食が生じてしまった場合にも、腐食が他のパターンに伝搬することがない。補助電極の腐食を一部にとどめることができるので、残りの補助電極の性能を維持し、色素増感型太陽電池用電極の性能を維持することができる。
【0013】
また、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極において、前記上面保護部は、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなるものであってもよい。この場合には、上面保護部の耐食性を高めることができるので、補助電極の耐久性を高めることができる。
【0014】
また、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極において、前記耐食性金属部および前記上面保護部は、それぞれ、チタン、白金、ロジウム、ルテニウム、タングステンの金属群から選択される一種の金属により形成されるか、またはこれらの金属群から選択される二種以上の金属からなる合金により形成されていてもよい。この場合には、耐食性金属部および上面保護部の耐食性を一層高めることができるので、補助電極の耐久性を高めることができる。
【0015】
また、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極において、前記補助電極は、前記上面保護部の側面および上面を覆う第二の金属酸化膜を備えていてもよい。第二の金属酸化膜を備えていれば、上面保護部の腐食を一層防止することができる。そのため、補助電極の耐久性を一層高めることができる。
【0016】
また、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極において、前記上面保護部は、酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムからなるものであってもよい。この場合には、アルミニウム部を酸化処理、あるいは水酸化処理することにより、側面保護部と上面保護部とを同一工程で形成することができる。そのため、少ない工程で製造することのできる色素増感型太陽電池用電極を提供できる。
【0017】
本発明の第二の態様に係る色素増感型太陽電池用電極の製造方法は、請求項1から6のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電極を製造する製造方法であって、板状の透明基材の上面に、前記透明導電層を形成する透明導電層形成工程と、前記透明導電層の上面に前記補助電極を形成する補助電極形成工程と、を備え、前記補助電極形成工程は、前記透明導電層の上面を覆うように、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる耐食性金属層を形成する耐食性金属層形成工程と、前記耐食性金属層の上面を覆うように、アルミニウム層を形成するアルミニウム層形成工程と、前記アルミニウム層の上面を覆うように、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる上面保護層を形成する上面保護層形成工程と、前記透明導電層をエッチングストップ層として、前記耐食性金属層と前記アルミニウム層と前記上面保護層とにエッチング処理を行うことにより、前記耐食性金属部と前記アルミニウム部と前記上面保護部とを形成するエッチング工程と、前記アルミニウム部の側面を酸化もしくは水酸化処理することにより、前記アルミニウム部の側面を覆う前記側面保護部を形成する側面保護部形成工程とを備えたことを特徴とする。
【0018】
本態様に係る色素増感型太陽電池用電極の製造方法では、透明導電層形成工程において、板状の透明基材の上面に透明導電層を形成することができ、耐食性金属層形成工程において、透明導電層の上面を覆うようにハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる耐食性金属層を形成することができる。アルミニウム層形成工程で耐食性金属層の上面を覆うようにアルミニウム層を形成することができ、上面保護層形成工程において、アルミニウム層の上面を覆うように、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる上面保護層を形成することができる。エッチング工程において、透明導電層をエッチングストップ層として、耐食性金属層とアルミニウム層と上面保護層とにエッチング処理を行い、耐食性金属部とアルミニウム部と上面保護部とを形成することができる。側面保護部形成工程において、アルミニウム部の側面を酸化もしくは水酸化処理して側面保護部を形成することができる。
【0019】
耐食性金属層とアルミニウム層と上面保護層とを形成した後で、エッチング処理を行い、耐食性金属部とアルミニウム部と上面保護部とを形成するので、下側から順に耐食性金属部とアルミニウム部と上面保護部とが積層した補助電極を簡単に形成できる。また、補助電極の配置精度を良好とすることができる。また、エッチング工程の後で、アルミニウム部の側面を酸化もしくは水酸化処理して、アルミニウム部の側面を覆う側面保護部を形成するので、簡単に側面保護部を形成できる。
【0020】
本発明の第三の態様に係る色素増感型太陽電池用電極の製造方法は、請求項1から3、または7に記載の色素増感型太陽電池用電極を製造する製造方法であって、板状の透明基材の上面に、前記透明導電層を形成する透明導電層形成工程と、前記透明導電層の上面に前記補助電極を形成する補助電極形成工程とを備え、前記補助電極形成工程は、前記透明導電層の上面に、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる耐食性金属層を形成する耐食性金属層形成工程と、前記耐食性金属層の上面を覆うように、アルミニウム層を形成するアルミニウム層形成工程と、前記透明導電層をエッチングストップ層として、前記耐食性金属層と前記アルミニウム層とにエッチング処理を行うことにより、前記耐食性金属部と前記アルミニウム部とを形成するエッチング工程と、前記アルミニウム部の側面および上面を、酸化もしくは水酸化処理することにより、前記側面保護部と前記上面保護部とを形成する保護部形成工程とを備えたことを特徴とする。
【0021】
耐食性金属層とアルミニウム層とを形成した後で、エッチング処理を行い、耐食性金属部とアルミニウム部とを形成するので、下側から順に耐食性金属部とアルミニウム部とが積層した補助電極を簡単に形成できる。また、補助電極の配置精度を良好とすることができる。また、エッチング工程の後で、アルミニウム部の側面および上面を酸化もしくは水酸化処理して、アルミニウム部の側面を覆う側面保護部と、アルミニウム部の上面を覆う上面保護部とを形成するので、簡単に側面保護部および上面保護部を形成できる。
【0022】
本発明の第四の態様に係る色素増感型太陽電池は、第一電極と、前記第一電極と間隙をおいて対向する第二電極と、前記第一電極の前記第二電極と対向する面を覆い、且つ色素を吸着させた酸化物半導体からなる酸化物半導体層と、前記第一電極と前記第二電極との間に封入される電解質とを備えた色素増感型太陽電池であって、前記第一電極または前記第二電極のうちの少なくともいずれかは、前記請求項1から7のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電極であることを特徴とする。本態様に係る色素増感型太陽電池は、低抵抗で耐食性に優れた、色素増感型太陽電池用電極を備えていることから、高い光電変換効率を長期にわたって維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】色素増感型太陽電池1の一部縦断面図である。
【図2】色素増感型太陽電池用電極10の斜視図である。
【図3】図2に示す色素増感型太陽電池用電極10の一点鎖線Iにおける矢視方向断面図である。
【図4】色素増感型太陽電池用電極10の製造工程を示すフローチャートである。
【図5】色素増感型太陽電池用電極10の製造工程を示す説明図である。
【図6】第一比較例の色素増感型太陽電池用電極、第二比較例の色素増感型太陽電池用電極、色素増感型太陽電池用電極10の電気抵抗値である。
【図7】電解液に接触させた状態で静置した後の、第一比較例の色素増感型太陽電池用電極、第二比較例の色素増感型太陽電池用電極、色素増感型太陽電池用電極10の電気抵抗値である。
【図8】色素増感型太陽電池用電極20の一部縦断面図である。
【図9】色素増感型太陽電池用電極20の製造工程を示すフローチャートである。
【図10】色素増感型太陽電池用電極20の製造工程を示す説明図である。
【図11】色素増感型太陽電池用電極35の一部縦断面図である。
【図12】色素増感型太陽電池用電極46の一部縦断面図である。
【図13】変形例の色素増感型太陽電池用電極55の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第一実施形態である色素増感型太陽電池1および色素増感型太陽電池用電極10について、図面を参照して説明する。はじめに、色素増感型太陽電池1の概略構成について、図1を参照して説明する。以下の説明では、図1の下側(色素増感型太陽電池用電極10側)を色素増感型太陽電池1の下側、図1の上側を色素増感型太陽電池1の上側として説明する。
【0025】
図1に示すように、色素増感型太陽電池1は、色素増感型太陽電池用電極10と、色素増感型太陽電池用電極10と間隙をおいて対向する板状の対向電極50とを備える。色素増感型太陽電池用電極10と対向電極50との間には、電解液30が封入されている。色素増感型太陽電池用電極10の上面を覆うように、酸化物半導体層40が形成されている。
【0026】
対向電極50は、対向基材51と、対向基材51の下面に形成された対向導電層52とを備える。対向基材51の材質は、特に制限されないが、フレキシブル性を有する樹脂フィルムが好適に用いられる。対向基材51に使用される樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等からなる厚さ50〜300μmの単層フィルム又は前記透明樹脂からなる複数層の複合フィルムが挙げられる。
【0027】
対向導電層52の材質には、耐食性を備える導電性の材質が適用可能である。具体的には、白金(Pt)などの金属、酸化インジウムスズ(ITO)などの導電性金属酸化物、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等の導電性ポリマーが適用可能である。
【0028】
電解液30の材質には、色素増感型太陽電池の電解液として用いられる公知の電解液が用いられる。具体的には、電解液30として、I−/I3−系や、Br−/Br3−系、キノン/ハイドロキノン系等のレドックス電解質を含む電解液を採用することができる。このような電解液は、エタノールやアセトニトリルなどの溶媒にヨウ化リチウムやヨウ素などを溶解させるなど、従来公知の方法によって得ることができる。
【0029】
酸化物半導体層40は、分光増感色素を吸着させた金属酸化物からなる多孔質の膜である。金属酸化物としては、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化マグネシウム(MgO)等の公知の1種以上の金属酸化物半導体を用いることができる。これら金属酸化物半導体のなかでも、安定性や安全性の点から、アナタース型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルソチタン酸等の各種の酸化チタン又は水酸化チタン、含水酸化チタンの微粒子からなるものが好ましい。
【0030】
分光増感色素は、酸化物半導体層40を構成する金属酸化物半導体の表面に、単分子膜として吸着されるものである。この分光増感色素は、可視光領域及び/又は赤外光領域に吸収を持つものであり、種々の金属錯体や有機色素を1種以上用いることができる。例えば、分光増感色素の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、スルホン基、カルボキシアルキル基の官能基を有するものが、金属酸化物半導体への吸着が速いため、好ましい。また、分光増感の効果や耐久性に優れている観点から、金属錯体が好ましい。この金属錯体としては、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン、クロロフィル、ヘミンや、公知のルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛等の錯体を用いることができる。また、有機色素としては、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン色素を用いることができる。
【0031】
次に、図2および図3を参照して、本実施形態における色素増感型太陽電池用電極10について説明する。まず、色素増感型太陽電池用電極10の構造について説明する。図2に示すように、色素増感型太陽電池用電極10は、透明な板状の基材21を備える。基材21の上面には、基材21を覆うように、透明導電層2が設けられている。透明導電層2の上面には、補助電極3が設けられている。
【0032】
図2に示すように、補助電極3は、互いに接触しない複数のメッシュ状の細線パターンに形成されている。細線パターンの寸法は、線幅20μm、間隔200μm、線厚0.8μmである。
【0033】
図3に示すように、補助電極3は、透明導電層2の上面に形成された厚さ200nmの耐食性金属部4と、耐食性金属部4の上面に形成された厚さ500nmのアルミニウム部5と、アルミニウム部5の上面に形成された厚さ100nmの上面保護部6とを備えている。アルミニウム部5の側面には、側面保護部7が形成されている。耐食性金属部4の側面には、耐食性金属部4が酸化されてなる第一金属酸化膜8が形成されている。上面保護部6の側面および上面には、上面保護部6が酸化されてなる第二金属酸化膜9が形成されている。
【0034】
以下、色素増感型太陽電池用電極10を構成する各要素の材質について説明する。まず、基材21について説明する。基材21は、表面が平坦である板状部材である。基材21は、可視領域で透明性を有する透明基材であり、一般に全光線透過率が90%以上のものが好ましい。中でも、フレキシブル性を有する樹脂フィルムが好適に用いられる。基材21に使用される透明樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等からなる厚さ50〜300μmの単層フィルム又は前記透明樹脂からなる複数層の複合フィルムが挙げられる。なお、必要に応じて、基材21の下面に、耐候性を付与するための樹脂をコートしてもよい。また、ソーダガラス、耐熱ガラス、石英ガラス等のガラスを基材21として用いてもよい。本実施形態においては、基材21の材質として、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。
【0035】
透明導電層2の材質には、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明な導電物質が用いられる。本実施形態においては、透明導電層2の材質として、酸化インジウムスズ(ITO)を用いた。
【0036】
耐食性金属部4の材質には、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対して耐食性を有する金属が用いられる。特に、耐食性金属部4の材質として、チタン(Ti)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)の金属群から選択される一種の金属、またはこれらの金属群から選択される二種以上の金属からなる合金が好適である。本実施形態においては、耐食性金属部4の材質として、チタン(Ti)を採用した。
【0037】
アルミニウム部5の材質には、アルミニウム(Al)が用いられる。
【0038】
上面保護部6の材質には、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対して耐食性を有する金属が用いられる。特に、上面保護部6の材質として、チタン(Ti)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)の金属群から選択される一種の金属、またはこれらの金属群から選択される二種以上の金属からなる合金が好適である。本実施形態においては、上面保護部6の材質として、チタン(Ti)を採用した。
【0039】
第一金属酸化膜8は、耐食性金属部4の側面が酸化されて形成され、本実施形態では、酸化チタン(TiO2)からなる。側面保護部7は、アルミニウム部5を酸化処理することにより形成された酸化アルミニウム(Al2O3)からなる。第二金属酸化膜9は、上面保護部6の側面および上面が酸化されて形成され、本実施形態では、酸化チタン(TiO2)からなる。
【0040】
次に、上記構造の色素増感型太陽電池用電極10の製造工程について、図4および図5を参照して説明する。色素増感型太陽電池用電極10の製造工程は、図4に示すように、透明導電層形成工程(S11)と、補助電極形成工程(S12)とを備えている。補助電極形成工程(S12)は、耐食性金属層形成工程(S121)と、アルミニウム層形成工程(S122)と、上面保護層形成工程(S123)と、エッチング工程(S124)と、酸化膜形成工程(S125)とを備える。以下、各工程について詳細に説明する。
【0041】
透明導電層形成工程(S11)について説明する。透明導電層形成工程(S11)では、図5に示すように、基材21の上面に透明導電層2を形成する。透明導電層2の形成方法は、周知の各種方法が適用可能であるが、スパッタ法を適用することが好ましく、特に酸素雰囲気ガスを用いた反応性スパッタ法で形成することが好ましい。こうして、基材21の上面に透明導電層2が積層した構造体11が形成される。
【0042】
補助電極形成工程(S12)について説明する。図4に示すように、補助電極形成工程(S12)では、はじめに、耐食性金属層形成工程(S121)が行われる。耐食性金属層形成工程(S121)では、図5に示すように、透明導電層2の上面に、厚さ200nmのチタンからなる耐食性金属層41を形成する。耐食性金属層41の形成方法は、チタン薄膜を形成する周知の各種方法が適用可能であるが、本実施形態においては、DCスパッタ法を採用する。なお、スパッタリングの過程で、チタンが酸化されてしまうことを防止するために、スパッタリングは窒素雰囲気化において行う。こうして、基材21の上面に透明導電層2が積層し、透明導電層2の上面に耐食性金属層41が積層した構造体12が形成される。
【0043】
図4に示すように、耐食性金属層形成工程(S121)が終了すると、アルミニウム層形成工程(S122)が行われる。アルミニウム層形成工程(S122)では、図5に示すように、耐食性金属層41の上面を覆うように、厚さ500nmのアルミニウムからなるアルミニウム層53を形成する。アルミニウム層53の形成方法は、アルミニウム膜を形成する周知の各種方法が適用可能であるが、本実施形態においては、DCスパッタ法を採用する。なお、スパッタリングの過程で、アルミニウムが酸化されてしまうことを防止するために、スパッタリングは窒素雰囲気化において行う。こうして、基材21の上面に、透明導電層2、耐食性金属層41、アルミニウム層53が積層した構造体13が形成される。
【0044】
図4に示すように、アルミニウム層形成工程(S122)が終了すると、上面保護層形成工程(S123)が行われる。上面保護層形成工程(S123)では、図5に示すように、アルミニウム層53の上面を覆うように、厚さ100nmのチタンからなる上面保護層61を形成する。上面保護層61の形成方法は、チタン薄膜を形成する周知の各種方法が適用可能であるが、本実施形態においては、DCスパッタ法を採用する。なお、スパッタリングの過程で、チタンが酸化されてしまうことを防止するために、スパッタリングは窒素雰囲気化において行う。こうして、基材21の上面に、透明導電層2、耐食性金属層41、アルミニウム層53、上面保護層61が積層した構造体14が形成される。
【0045】
図4に示すように、上面保護層形成工程(S123)が終了すると、エッチング工程(S124)が行われる。エッチング工程(S124)では、図5に示すように、透明導電層2をエッチングストップ層として、耐食性金属層41、アルミニウム層53、上面保護層61のエッチングを行う。
【0046】
具体的には、まず、上面保護層61の上面に、フォトレジストTFR−970(東京応化株式会社製)を塗布し、フォトリソ法で線幅20μm、間隔200μmの平面視メッシュ状のフォトレジストを形成する。次に、Ti/Al/Ti一括エッチャントを使用してエッチングを行い、その後、アセトンを使用してレジストを除去する。なお、エッチングの手法としては、エッチャントを使用するウェットエッチングのほか、気相中で行われるドライエッチングを採用することもできる。これにより、透明導電層2の上面に、耐食性金属部4、アルミニウム部5、上面保護部6が下側から積層し、かつ平面視メッシュ状の積層体15が形成される。こうして、基材21の上面に透明導電層2が積層し、透明導電層2の上面に積層体15が形成された構造体16が形成される。
【0047】
図4に示すように、エッチング工程(S124)が終了すると、酸化膜形成工程(S125)が行われる。酸化膜形成工程(S125)では、図5に示すように、積層体15の表面を覆う金属酸化膜(不動態膜)を形成する。具体的には、酸化膜形成工程(S125)では、耐食性金属部4の側面を覆う第一金属酸化膜8と、アルミニウム部5の側面を覆う側面保護部7と、上面保護部6の側面及び上面を覆う第二金属酸化膜9とを形成する。
【0048】
第一金属酸化膜8と、側面保護部7と、第二金属酸化膜9との形成は、積層体15の表面を陽極酸化処理することにより行われる。陽極酸化処理では、処理浴中で構造体16を陽極として電気分解し、積層体15の表面を電気化学的に酸化させる。本実施形態では、処理浴として1wt%の酒石酸アンモニウムを含有するエチレングリコール溶液を用いた。陽極酸化処理における電解槽電圧(陽極酸化処理浴中の陽極と陰極の間の電圧)は100Vとした。こうして、チタンからなる耐食性金属部4および上面保護部6の表面に、それぞれ、酸化チタンからなる第一金属酸化膜8および第二金属酸化膜9が形成される。また、アルミニウム部5の側面に、酸化アルミニウムからなる側面保護部7が形成される。以上の工程を経て、色素増感型太陽電池用電極10が製造される。
【0049】
上述の製造方法によって形成された色素増感型太陽電池用電極10の性能評価および耐食性評価を行った。性能評価および耐食性評価の方法および結果を説明する。
【0050】
この性能評価および耐食性評価では、第一比較例として補助電極3を備えない色素増感型太陽電池用電極、第二比較例として、側面保護部7、第一金属酸化膜8、第二金属酸化膜9を備えない色素増感型太陽電池用電極についても、性能評価を行った。
【0051】
第一比較例の色素増感型太陽電池用電極は、補助電極3を備えないこと以外は、色素増感型太陽電池用電極10と同様である。第二比較例の色素増感型太陽電池用電極の構造は、側面保護部7、第一金属酸化膜8、第二金属酸化膜9を備えていないこと以外は、色素増感型太陽電池用電極10と同様である。また、第一比較例の色素増感型太陽電池用電極は、補助電極形成工程(S12)(図4参照)を備えないこと以外は、色素増感型太陽電池用電極10の製造工程と同様である。第二比較例の色素増感型太陽電池用電極の製造工程は、酸化膜形成工程(S125)(図4参照)を備えていないこと以外は、色素増感型太陽電池用電極10の製造工程と同様である。
【0052】
はじめに、性能評価ついて説明する。性能評価は、第一実施形態の色素増感型太陽電池用電極10、第一比較例の色素増感型太陽電池用電極、第二比較例の色素増感型太陽電池用電極の電気抵抗値をそれぞれ測定し、比較することにより行った。
【0053】
性能評価の結果について説明する。図6に示すように、第一比較例の色素増感型太陽電池用電極の電気抵抗値は、20Ω/cm2であった。第二比較例の色素増感型太陽電池用電極の電気抵抗値は、1Ω/cm2であった。また、本実施形態の色素増感型太陽電池用電極10の電気抵抗値は1Ω/cm2であった。
【0054】
これにより、色素増感型太陽電池用電極10の電気抵抗値は、補助電極3を備えない第一比較例の色素増感型太陽電池用電極に比べて、低いことが示された。すなわち、補助電極3を形成したことにより、色素増感型太陽電池用電極10の電気抵抗値が下がることが示された。
【0055】
また、色素増感型太陽電池用電極10の電気抵抗値は、側面保護部7、第一金属酸化膜8、第二金属酸化膜9を備えない第二比較例の色素増感型太陽電池用電極と同等であることが示された。色素増感型太陽電池用電極10の側面保護部7、第一金属酸化膜8、第二金属酸化膜9は、アルミニウム部5、耐食性金属部4、上面保護部6の表面がそれぞれ酸化されて形成されたものである。これにより、アルミニウム部5、耐食性金属部4、上面保護部6の表面の酸化処理を行っても、低い電気抵抗値が維持できることが示された。
【0056】
次に、耐食性評価について説明する。耐食性評価は、以下の方法により行った。まず、ヨウ素をイオン液体に溶解した電解液を作成する。イオン液体は、EMI−TFSI(エチルメチルイミダゾリウム ビストリフルオロスルホニルイミド)を用いた。イオン液体中のヨウ素濃度は、0.1mol/lになるように調整してある。次に、得られた電解液を第一比較例の色素増感型太陽電池用電極、第二比較例の色素増感型太陽電池用電極、および第一実施形態の色素増感型太陽電池用電極10の上面に塗布する。そして、電解液を塗布した第一比較例の色素増感型太陽電池用電極、第二比較例の色素増感型太陽電池用電極、色素増感型太陽電池用電極10を、80℃に設定されたオーブンの内部に2週間静置する。静置後の第一比較例の色素増感型太陽電池用電極、第二比較例の色素増感型太陽電池用電極、第一実施形態の色素増感型太陽電池用電極10の電気抵抗値をそれぞれ測定することにより、耐食性評価を行った。
【0057】
耐食性評価の結果について説明する。図9に示すように、第一比較例の色素増感型太陽電池用電極の電気抵抗値は、20Ω/cm2であった。第二比較例の色素増感型太陽電池用電極の電気抵抗値は、20Ω/cm2であった。一方、本実施形態の色素増感型太陽電池用電極10の電気抵抗値は1Ω/cm2であった。
【0058】
これにより、第二比較例の色素増感型太陽電池用電極では、ヨウ素を含有する電解液に接触すると、電気抵抗値が、第一比較例の色素増感型太陽電池用電極と同等にまで上がってしまうことが示された。一方、第一実施形態の色素増感型太陽電池用電極10では、ヨウ素を含有する電解液に接触しても、低い電気抵抗値を維持できることが示された。
【0059】
この理由は以下のように考えられる。側面保護部7が形成されていない第二比較例の色素増感型太陽電池用電極では、アルミニウム部5の側面が電解液に晒されてしまう。そのため、アルミニウム部5は、電解液中のヨウ素によって側面から腐食されてしまう。アルミニウム部5が腐食されることにより、補助電極3の導電性が悪化し、電気抵抗値が上がったものと考えられる。一方、本実施形態の色素増感型太陽電池用電極10では、アルミニウム部5の側面が酸化アルミニウムからなる側面保護部7により覆われている。酸化アルミニウムは、電解液に対する耐食性を備えるため、アルミニウム部5の上面、下面だけでなく、側面も保護できる。よって、アルミニウム部5の腐食を防止することができ、補助電極3の導電性を維持できたものと考えられる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の色素増感型太陽電池用電極10によれば、補助電極3は、導電率の高いアルミニウム部5を備えているため、補助電極3の導電率を高くすることができる。よって、色素増感型太陽電池用電極10の低抵抗化を図ることができる。
【0061】
また、アルミニウム部5の下面を耐食性金属部4が覆い、アルミニウム部5の上面を上面保護部6が覆い、アルミニウム部5の側面を側面保護部7が覆うため、電解液30によって腐食されやすいアルミニウム部5が電解液30に晒されることがない。よって、アルミニウム部5が、電解液30によって腐食されることがない。
【0062】
また、耐食性金属部4、上面保護部6、側面保護部7を構成するチタンおよび酸化アルミニウムは、電解液30に対する耐食性を備える。そのため、耐食性金属部4、上面保護部6、側面保護部7が電解液30によって腐食されて、電解液30がアルミニウム部5に到達することを防止できる。さらに、耐食性金属部4の側面および上面保護部6の側面及び上面には、酸化チタンからなる第一金属酸化膜8、第二金属酸化膜9が形成されている。酸化チタンは、電解液30に対して高い耐食性を備えている。そのため、耐食性金属部4、上面保護部6の腐食を一層確実に防止できる。
【0063】
また、アルミニウム部5を酸化処理することにより、酸化アルミニウムからなる側面保護部7を形成できる。よって、簡単に側面保護部7を形成できる。
【0064】
また、アルミニウム部5の下側には、耐食性金属部4が形成されているので、アルミニウム部5の側面を隙間なく覆うように、側面保護部7を形成することができる。アルミニウム部5の下側が、金属酸化物からなる透明導電層2である場合、酸化膜形成工程(S7)において、アルミニウム部5を酸化処理して形成される側面保護部7は、透明導電層2の表面特性に阻害されて、透明導電層2の上面近傍において形成されにくい。そのため、側面保護部7の下端と透明導電層2の上面との間には、隙間が形成されてしまい、この隙間から侵入した電解液30が、アルミニウム部5を腐食してしまう。本実施形態の色素増感型太陽電池用電極10では、透明導電層2とアルミニウム部5との間に、金属からなる耐食性金属部4が形成され、側面保護部7は、耐食性金属部4の上面と密着して形成される。側面保護部7をアルミニウム部5の側面を隙間なく覆うように形成することができるので、アルミニウム部5の腐食を確実に防止して、補助電極3の耐久性を高めることができる。
【0065】
また、補助電極3は、互いに接触しない複数のメッシュ状のパターンに形成されている。そのため、複数のパターンのうちの1つにおいて、補助電極3に腐食が生じてしまった場合にも、腐食が他のパターンに伝搬することがないので、補助電極3の腐食の伝搬を途中で食い止めることができる。補助電極3の腐食を一部にとどめることができるので、残りの補助電極3の性能を維持し、色素増感型太陽電池用電極10の性能を維持することができる。
【0066】
また、上記構成の色素増感型太陽電池用電極10を備えた色素増感型太陽電池1は、色素増感型太陽電池用電極10が低抵抗で耐食性に優れていることから、高い光電変換効率を長期にわたって維持することができる。
【0067】
上記実施形態において、基材21が、本発明の「透明基材」に相当する。酸化膜形成工程(S125)が、本発明の「側面保護部形成工程」に相当する。
【0068】
次に、本発明の第二実施形態の色素増感型太陽電池用電極20について、図8から図10を参照して説明する。第二実施形態の色素増感型太陽電池用電極20では、補助電極23の構造が、第一実施形態とは異なる。以下では、第一実施形態とは異なる補助電極23の構造について重点的に説明し、第一実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、または簡略化するものとする。
【0069】
まず、色素増感型太陽電池用電極20の構造および材質について、図8を参照して説明する。色素増感型太陽電池用電極20は、透明な板状の基材21を備える。基材21の上面には、基材21を覆うように、透明導電層2が設けられている。基材21、透明導電層2の材質は、第一実施形態と同様である。
【0070】
透明導電層2の上面には、補助電極23が設けられている。補助電極23は、第一実施形態における補助電極3(図2参照)と同様に、互いに接触しない複数のメッシュ状のパターンに形成されている。補助電極23は、透明導電層2の上面に形成された厚さ200nmの耐食性金属部24を備える。耐食性金属部24の材質は、チタン(Ti)である。耐食性金属部24の上面には、厚さ800nmのアルミニウム部25が形成されている。アルミニウム部25の材質は、アルミニウムである。そして、アルミニウム部25の側面および上面を覆うように、酸化アルミニウムからなる保護部27が形成されている。保護部27は、アルミニウム部25の側面を覆う側面保護部38と、アルミニウム部25の上面を覆う上面保護部39とを備えている。耐食性金属部24の側面には、耐食性金属部24が酸化されてなる第一金属酸化膜28が形成されている。第一金属酸化膜28は、酸化チタン(TiO2)からなる。
【0071】
次に、色素増感型太陽電池用電極20の製造工程について、図9および図10を参照して説明する。色素増感型太陽電池用電極20の製造工程は、図9に示すように、透明導電層形成工程(S21)と、補助電極形成工程(S22)とを備えている。補助電極形成工程(S22)は、耐食性金属層形成工程(S221)と、アルミニウム層形成工程(S222)と、エッチング工程(S223)と、保護部形成工程(S224)とを備える。以下、各工程について説明する。
【0072】
透明導電層形成工程(S21)は、第一実施形態の透明導電層形成工程(S11)と同様の工程である。図10に示すように、透明導電層形成工程(S21)では、基材21の上面に透明導電層2が積層した構造体11が形成される。
【0073】
補助電極形成工程(S22)について説明する。図9に示すように、補助電極形成工程(S22)では、はじめに、耐食性金属層形成工程(S221)が行われる。耐食性金属層形成工程(S221)は、第一実施形態の耐食性金属層形成工程(S121)と同様の工程である。耐食性金属層形成工程(S221)では、図10に示すように、透明導電層2の上面に、チタンからなる厚さ200nmの耐食性金属層42を形成する。こうして、基材21の上面に透明導電層2が積層し、透明導電層2の上面に耐食性金属層42が積層した構造体17が形成される。
【0074】
図9に示すように、耐食性金属層形成工程(S221)が終了すると、アルミニウム層形成工程(S222)が行われる。アルミニウム層形成工程(S222)では、図10に示すように、耐食性金属層42の上面を覆うように、厚さ800nmのアルミニウム層54を形成する。アルミニウム層形成工程(S222)は、第一実施形態のアルミニウム層形成工程(S122)と同様の工程である。こうして、基材21の上面に透明導電層2が積層し、透明導電層2の上面に耐食性金属層42が積層し、耐食性金属層42の上面にアルミニウム層54が積層した構造体18が形成される。
【0075】
図9に示すように、アルミニウム層形成工程(S222)が終了すると、エッチング工程(S223)が行われる。エッチング工程(S223)では、図10に示すように、透明導電層2をエッチングストップ層として、耐食性金属層42とアルミニウム層54とのエッチングを行う。
【0076】
具体的には、まず、アルミニウム層54の上面に、フォトレジストTFR−970(東京応化株式会社製)を塗布し、フォトリソ法で線幅20μm、間隔200μmの平面視メッシュ状のフォトレジストを形成する。次に、Ti/Al一括エッチャントを使用してエッチングを行い、その後、アセトンを使用してレジストを除去する。なお、エッチングの手法としては、エッチャントを使用するウェットエッチングのほか、気相中で行われるドライエッチングを採用することもできる。これにより、下側から耐食性金属部24とアルミニウム部25とが積層し、かつ平面視メッシュ状の積層体29が、透明導電層2の上面に形成される。こうして、基材21の上面に透明導電層2が積層し、透明導電層2の上面に積層体29が形成された構造体19が形成される。
【0077】
図9に示すように、エッチング工程(S223)が終了すると、保護部形成工程(S224)が行われる。保護部形成工程(S224)では、図10に示すように、エッチング工程(S223)において露出したアルミニウム部25の側面および上面に、酸化アルミニウムからなる保護部27を形成する。また、チタンからなる耐食性金属部24の側面に、酸化チタンからなる第一金属酸化膜28が形成される。
【0078】
保護部27および第一金属酸化膜28の形成は、積層体29を陽極酸化処理することにより行われる。陽極酸化処理では、処理浴中で構造体19を陽極として電気分解し、積層体29の表面を電気化学的に酸化させる。本実施形態では、処理浴として1wt%の酒石酸アンモニウムを含有するエチレングリコール溶液を用いた。陽極酸化処理における電解槽電圧(陽極酸化処理浴中の陽極と陰極の間の電圧)は100Vとした。陽極酸化処理では、希硫酸やシュウ酸などを処理浴に用いて、構造体19を陽極として電気分解し、積層体29の表面を電気化学的に酸化させる。こうして、アルミニウム部25の上面および側面に、酸化アルミニウムからなる保護部27が形成される。以上の工程を経て、透明導電層2の上面に補助電極23が形成された色素増感型太陽電池用電極20が製造される。
【0079】
上述の製造方法によって形成された色素増感型太陽電池用電極20の性能評価および耐食性評価を行った。なお、この性能評価および耐食性評価では、第三比較例として保護部27を備えない色素増感型太陽電池用電極についても、性能評価を行った。第三比較例の色素増感型太陽電池用電極は、保護部27を備えないこと以外は、色素増感型太陽電池用電極20と同様である。また、第三比較例の色素増感型太陽電池用電極は、保護部形成工程(S224)を備えないこと以外は、色素増感型太陽電池用電極20の製造工程と同様である。また、色素増感型太陽電池用電極20の性能評価、耐食性評価は、第一実施形態の色素増感型太陽電池用電極10の性能評価、耐食性評価と同様の方法で行った。
【0080】
はじめに、性能評価について説明する。色素増感型太陽電池用電極20の性能評価は、第一実施形態の色素増感型太陽電池用電極10の性能評価と同様の方法で行った。色素増感型太陽電池用電極20の電気抵抗値を測定したところ、1Ω/cm2であった。第三比較例の色素増感型太陽電池用電極の電気抵抗値を測定したところ、1Ω/cm2であった。
【0081】
これにより、アルミニウム部25の表面に保護部27が形成されている色素増感型太陽電池用電極20、およびアルミニウム部25の表面に保護部27が形成されていない第三比較例の色素増感型太陽電池用電極の電気抵抗値は等しいことが示された。保護部27は、アルミニウム部25の表面が酸化されて形成されている。これにより、色素増感型太陽電池用電極において、アルミニウム部25の表面に酸化処理を行っても、色素増感型太陽電池用電極の電気抵抗値は悪化しないことが示された。
【0082】
次に、耐食性評価の結果について説明する。また、色素増感型太陽電池用電極20の性能評価、耐食性評価は、第一実施形態の色素増感型太陽電池用電極10の性能評価、耐食性評価と同様の方法で行った。表面にヨウ素を含有する電解液を塗布して、2週間、80℃で静置した後の色素増感型太陽電池用電極20の電気抵抗値は1Ω/cm2であった。一方、第三比較例の色素増感型太陽電池用電極の電気抵抗値は、20Ω/cm2であった。
【0083】
これにより、第三比較例の色素増感型太陽電池用電極では、ヨウ素を含有する電解液に接触すると、電気抵抗値が上がってしまうことが示された。一方、第二実施形態の色素増感型太陽電池用電極20では、ヨウ素を含有する電解液に接触しても、低い電気抵抗値を維持できることが示された。
【0084】
この理由は以下のように考えられる。保護部27が形成されていない第三比較例の色素増感型太陽電池用電極では、アルミニウム部25の上面及び側面が電解液に晒されてしまう。そのため、アルミニウム部25は、電解液中のヨウ素によって上面及び側面から腐食されてしまう。アルミニウム部25が腐食されることにより、補助電極23の導電性が悪化し、電気抵抗値が上がったものと考えられる。
【0085】
一方、本実施形態の色素増感型太陽電池用電極20では、アルミニウム部25の上面及び側面が、酸化アルミニウムからなる保護部27により覆われている。酸化アルミニウムは、ヨウ素を含有する電解液に対する耐食性を有するため、アルミニウム部25の下面だけでなく、上面及び側面も保護できる。よって、アルミニウム部25の腐食を防止して、補助電極23の導電性を維持できたものと考えられる。
【0086】
第二実施形態の色素増感型太陽電池用電極20によれば、アルミニウム部25の下面をチタンからなる耐食性金属部24が覆い、アルミニウム部25の上面および側面を酸化アルミニウムからなる保護部27が覆うため、電解液30によって腐食されやすいアルミニウム部25が電解液30に晒されることがない。耐食性金属部24を構成するチタン、保護部27を構成する酸化アルミニウムは、それぞれ電解液30に対する耐食性を備えるため、耐食性金属部24、保護部27が電解液30によって腐食されることがない。よって、補助電極23の電解液30による腐食を防止できる。
【0087】
また、保護部形成工程(S224)によって、アルミニウム部25の側面及び上面を覆う保護部27を形成できる。そのため、アルミニウム部25の側面及び上面を保護する保護部27を一工程で製造することができる。
【0088】
なお、本発明の色素増感型太陽電池用電極、色素増感型太陽電池用電極の製造方法、および色素増感型太陽電池は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、第一実施形態の色素増感型太陽電池用電極10においては、耐食性金属部4の側面に第一金属酸化膜8が形成され、上面保護部6の上面及び側面に、第二金属酸化膜9が形成されていたが、第一金属酸化膜8、第二金属酸化膜9が形成されているものに限定されない。図11に示すように、耐食性金属部43、上面保護部63の材質として、イオン化傾向の低い白金などを採用して、補助電極33を形成した場合、上述した陽極酸化処理を行っても、第一金属酸化膜、第二金属酸化膜は形成されないが、耐食性金属部43、上面保護部63の高い耐食性により、アルミニウム部5の上面及び下面を保護することができる。この場合にも、アルミニウム部5の腐食を防止することができるので、高い導電性を維持できる色素増感型太陽電池用電極35を提供できる。
【0089】
また、第二実施形態の色素増感型太陽電池用電極20では、耐食性金属部24の側面に第一金属酸化膜28が形成されているが、第一金属酸化膜28は形成されていなくてもよい。例えば、図12に示すように、耐食性金属部44の材質として、イオン化傾向の低い白金などを採用して、補助電極45を形成した場合、上述した陽極酸化処理を行っても、第一金属酸化膜は形成されないが、耐食性金属部44の高い耐食性により、アルミニウム部25の下面を保護することができる。この場合にも、第二実施形態と同様に、アルミニウム部25の腐食を防止することができるので、高い導電性を維持できる色素増感型太陽電池用電極46を提供できる。
【0090】
また、耐食性金属部4と上面保護部6とを異なる材質により形成してもよい。また、第一実施形態の酸化膜形成工程(S125)、第二実施形態の保護部形成工程(S224)では、積層体15、積層体29の表面を酸化する方法として、陽極酸化処理を採用したが、陽極酸化処理に限定されず、金属表面を酸化する周知の種々の方法が適用可能である。例えば、0.1wt%のアンモニア水溶液中で、積層体15、積層体29を水熱処理することにより、積層体15、積層体29の表面を酸化してもよい。
【0091】
また、補助電極3は、線状のパターンに形成されていればよく、互いに接触しない複数のメッシュ状のパターンに形成されたものに限定されない。例えば、図13に示すように、透明導電層2の上面に、補助電極3と同様の断面構造を有する補助電極31を切断部分のない一つのメッシュ状のパターンに形成した場合であっても、色素増感型太陽電池用電極55の電気抵抗値を下げることができ、耐食性を向上させることができる。また、補助電極3は櫛状に形成されても良い。
【0092】
また、第一実施形態における色素増感型太陽電池用電極10の側面保護部7、第二実施形態における色素増感型太陽電池用電極20の保護部27は、それぞれ酸化アルミニウムにより形成されていたが、側面保護部7および保護部27は水酸化アルミニウムにより形成されていてもよい。色素増感型太陽電池用電極10の側面保護部7を水酸化アルミニウムにより形成する場合には、上述した色素増感型太陽電池用電極10の製造工程において、エッチング工程(S124)(図4参照)の後、酸化膜形成工程(S125)を行う代わりに、アルミニウムを水酸化処理して水酸化アルミニウムを保護部27として形成する水酸化膜形成工程を行えばよい。また、色素増感型太陽電池用電極20の保護部27を水酸化アルミニウムにより形成する場合には、上述した色素増感型太陽電池用電極20の製造工程において、エッチング工程(S223)(図9参照)の後、保護部形成工程(S224)を行う代わりに、同様の水酸化膜形成工程を行えばよい。
【0093】
また、本実施形態の色素増感型太陽電池1では、酸化物半導体層40は、色素増感型太陽電池用電極10の透明導電層2および補助電極3を覆うように形成されていたが、対向電極50の対向導電層52を覆うように形成されていても良い。また、電解液30の代わりに、液体電解質又はこれを高分子物質中に含有させた固体高分子電解質を色素増感型太陽電池用電極10と対向電極50との間に封入してもよい。
【0094】
また、本実施形態の色素増感型太陽電池1は、色素増感型太陽電池用電極10と、色素増感型太陽電池用電極10に間隙をおいて対向する対向電極50を備えていたが、互いに間隙をおいて対向する二つの色素増感型太陽電池用電極10を備える色素増感型太陽電池1であっても、本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0095】
1 色素増感型太陽電池
2 透明導電層
3、23、33 補助電極
4、24 耐食性金属部
5、25 アルミニウム部
6 上面保護部
7 側面保護部
8 第一金属酸化膜
9 第二金属酸化膜
10、20、35 色素増感型太陽電池用電極
21 基材
27 保護部
30 電解質
40 酸化物半導体層
50 対向電極
41、42 耐食性金属層
53、54 アルミニウム層
61 上面保護層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の透明基材と、
前記透明基材の上面に設けられた透明導電層と、
前記透明導電層の上面に線状に形成され、前記透明導電層よりも抵抗値の低い補助電極と、
を備えた色素増感型太陽電池用電極であって、
前記補助電極は、
前記透明導電層の上面に形成され、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる耐食性金属部と、
前記耐食性金属部の上面に形成されたアルミニウムからなるアルミニウム部と、
前記アルミニウム部の側面を覆い、酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムからなる側面保護部と、
前記アルミニウム部の上面を覆い、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムのいずれかからなる上面保護部と
を備えていることを特徴とする色素増感型太陽電池用電極。
【請求項2】
前記補助電極は、
前記耐食性金属部の側面を覆う第一の金属酸化膜をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池用電極。
【請求項3】
前記補助電極は、互いに接触しない複数のメッシュ状または櫛状のパターンに形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の色素増感型太陽電池用電極。
【請求項4】
前記上面保護部は、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電極。
【請求項5】
前記耐食性金属部および前記上面保護部は、それぞれ、チタン、白金、ロジウム、ルテニウム、タングステンの金属群から選択される一種の金属により形成されるか、またはこれらの金属群から選択される二種以上の金属からなる合金により形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電極。
【請求項6】
前記補助電極は、
前記上面保護部の側面および上面を覆う第二の金属酸化膜を備えていることを特徴とする請求項4または5に記載の色素増感型太陽電池用電極。
【請求項7】
前記上面保護部は、酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムからなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電極。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電極を製造する製造方法であって、
板状の透明基材の上面に、前記透明導電層を形成する透明導電層形成工程と、
前記透明導電層の上面に前記補助電極を形成する補助電極形成工程と、
を備え、
前記補助電極形成工程は、
前記透明導電層の上面を覆うように、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる耐食性金属層を形成する耐食性金属層形成工程と、
前記耐食性金属層の上面を覆うように、アルミニウム層を形成するアルミニウム層形成工程と、
前記アルミニウム層の上面を覆うように、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる上面保護層を形成する上面保護層形成工程と、
前記透明導電層をエッチングストップ層として、前記耐食性金属層と前記アルミニウム層と前記上面保護層とにエッチング処理を行うことにより、前記耐食性金属部と前記アルミニウム部と前記上面保護部とを形成するエッチング工程と、
前記アルミニウム部の側面を酸化もしくは水酸化処理することにより、前記側面保護部を形成する側面保護部形成工程と
を備えたことを特徴とする色素増感型太陽電池用電極の製造方法。
【請求項9】
請求項1から3、または7に記載の色素増感型太陽電池用電極を製造する製造方法であって、
板状の透明基材の上面に、前記透明導電層を形成する透明導電層形成工程と、
前記透明導電層の上面に前記補助電極を形成する補助電極形成工程と、
を備え、
前記補助電極形成工程は、
前記透明導電層の上面に、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる耐食性金属層を形成する耐食性金属層形成工程と、
前記耐食性金属層の上面を覆うように、アルミニウム層を形成するアルミニウム層形成工程と、
前記透明導電層をエッチングストップ層として、前記耐食性金属層と前記アルミニウム層とにエッチング処理を行うことにより、前記耐食性金属部と前記アルミニウム部とを形成するエッチング工程と、
前記アルミニウム部の側面および上面を、酸化もしくは水酸化処理することにより、前記側面保護部と前記上面保護部とを形成する保護部形成工程と
を備えたことを特徴とする色素増感型太陽電池用電極の製造方法。
【請求項10】
第一電極と、
前記第一電極と間隙をおいて対向する第二電極と、
前記第一電極の前記第二電極と対向する面を覆い、且つ色素を吸着させた酸化物半導体からなる酸化物半導体層と、
前記第一電極と前記第二電極との間に封入される電解質と
を備えた色素増感型太陽電池であって、
前記第一電極または前記第二電極のうちの少なくともいずれかは、前記請求項1から7のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電極であることを特徴とする色素増感型太陽電池。
【請求項1】
板状の透明基材と、
前記透明基材の上面に設けられた透明導電層と、
前記透明導電層の上面に線状に形成され、前記透明導電層よりも抵抗値の低い補助電極と、
を備えた色素増感型太陽電池用電極であって、
前記補助電極は、
前記透明導電層の上面に形成され、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる耐食性金属部と、
前記耐食性金属部の上面に形成されたアルミニウムからなるアルミニウム部と、
前記アルミニウム部の側面を覆い、酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムからなる側面保護部と、
前記アルミニウム部の上面を覆い、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムのいずれかからなる上面保護部と
を備えていることを特徴とする色素増感型太陽電池用電極。
【請求項2】
前記補助電極は、
前記耐食性金属部の側面を覆う第一の金属酸化膜をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池用電極。
【請求項3】
前記補助電極は、互いに接触しない複数のメッシュ状または櫛状のパターンに形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の色素増感型太陽電池用電極。
【請求項4】
前記上面保護部は、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電極。
【請求項5】
前記耐食性金属部および前記上面保護部は、それぞれ、チタン、白金、ロジウム、ルテニウム、タングステンの金属群から選択される一種の金属により形成されるか、またはこれらの金属群から選択される二種以上の金属からなる合金により形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電極。
【請求項6】
前記補助電極は、
前記上面保護部の側面および上面を覆う第二の金属酸化膜を備えていることを特徴とする請求項4または5に記載の色素増感型太陽電池用電極。
【請求項7】
前記上面保護部は、酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムからなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電極。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電極を製造する製造方法であって、
板状の透明基材の上面に、前記透明導電層を形成する透明導電層形成工程と、
前記透明導電層の上面に前記補助電極を形成する補助電極形成工程と、
を備え、
前記補助電極形成工程は、
前記透明導電層の上面を覆うように、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる耐食性金属層を形成する耐食性金属層形成工程と、
前記耐食性金属層の上面を覆うように、アルミニウム層を形成するアルミニウム層形成工程と、
前記アルミニウム層の上面を覆うように、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる上面保護層を形成する上面保護層形成工程と、
前記透明導電層をエッチングストップ層として、前記耐食性金属層と前記アルミニウム層と前記上面保護層とにエッチング処理を行うことにより、前記耐食性金属部と前記アルミニウム部と前記上面保護部とを形成するエッチング工程と、
前記アルミニウム部の側面を酸化もしくは水酸化処理することにより、前記側面保護部を形成する側面保護部形成工程と
を備えたことを特徴とする色素増感型太陽電池用電極の製造方法。
【請求項9】
請求項1から3、または7に記載の色素増感型太陽電池用電極を製造する製造方法であって、
板状の透明基材の上面に、前記透明導電層を形成する透明導電層形成工程と、
前記透明導電層の上面に前記補助電極を形成する補助電極形成工程と、
を備え、
前記補助電極形成工程は、
前記透明導電層の上面に、ハロゲンを含んだ電解質溶液に対する耐食性を有する金属からなる耐食性金属層を形成する耐食性金属層形成工程と、
前記耐食性金属層の上面を覆うように、アルミニウム層を形成するアルミニウム層形成工程と、
前記透明導電層をエッチングストップ層として、前記耐食性金属層と前記アルミニウム層とにエッチング処理を行うことにより、前記耐食性金属部と前記アルミニウム部とを形成するエッチング工程と、
前記アルミニウム部の側面および上面を、酸化もしくは水酸化処理することにより、前記側面保護部と前記上面保護部とを形成する保護部形成工程と
を備えたことを特徴とする色素増感型太陽電池用電極の製造方法。
【請求項10】
第一電極と、
前記第一電極と間隙をおいて対向する第二電極と、
前記第一電極の前記第二電極と対向する面を覆い、且つ色素を吸着させた酸化物半導体からなる酸化物半導体層と、
前記第一電極と前記第二電極との間に封入される電解質と
を備えた色素増感型太陽電池であって、
前記第一電極または前記第二電極のうちの少なくともいずれかは、前記請求項1から7のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電極であることを特徴とする色素増感型太陽電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−70902(P2011−70902A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220656(P2009−220656)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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