説明

芝刈り状況監視機能を有する自動芝刈り機

【課題】走行中の芝刈り状況を監視することが可能な芝刈り状況監視機能を有する自動芝刈り機を提供する。
【解決手段】少なくとも位置検出手段を含む各種センサを有する自律走行型の自動芝刈り機であって、走行車両の駆動系(アクセル)、制動系(ブレーキ)、及び操舵系(ステアリング)のうちの少なくとも一つを自動操作するためのアクチュエータと、アクチュエータにより走行車両を目標地点に移動させるための走行制御ユニットと、走行路面に沿って芝刈りを行うカッティング部と、芝刈り状況を判断するための画像処理ユニットと、センサの情報を基に各ユニットを制御するための各種演算及び演算に対応する処理を行う演算ユニットと、無線通信により演算ユニット及び走行制御ユニットを介して走行車両を遠隔操作するための無線通信手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝刈り状況監視機能を有する自動芝刈り機に関し、より詳細には、位置情報を正確に把握して障害物にも対応する無人作業が可能な自律走行型の芝刈り状況監視機能を有する自動芝刈り機に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ場、公園、サッカー場等において、芝生の状態を維持するためには、定期的な芝刈りを必要とし、特にゴルフ場のような広い場所では、大きな労力や費用が掛かり、このような背景から、例えば特許文献1のような手動運転と自動運転とを選択することが可能な芝刈り機や特許文献2のような自律航法装置を有する無人芝刈り機が開示されている。
【0003】
しかし、従来の自動運転を行う無人芝刈り機には、いくつかの不具合が散見され、例えば、走行路面に穴や窪地等のような段差がある場合、予め想定できる場合は、その地点を避けるプログラムとする等の方法により対処していたが、直前にできた穴等の場合は対応できず、また自動運転では芝刈りが正常に行われないこともある等の問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−128044号公報
【特許文献2】特開平9−37610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、予め設定されたプログラムや学習機能により走行経路に柔軟に対応した自律走行を可能にすると共に、走行中の芝刈り状況を監視することが可能な芝刈り状況監視機能を有する自動芝刈り機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本発明の芝刈り状況監視機能を有する自動芝刈り機は、少なくとも位置検出手段を含む各種センサを有する自律走行型の自動芝刈り機であって、走行車両の駆動系(アクセル)、制動系(ブレーキ)、及び操舵系(ステアリング)のうちの少なくとも一つを自動操作するためのアクチュエータと、前記アクチュエータにより走行車両を目標地点に移動させるための走行制御ユニットと、走行路面に沿って芝刈りを行うカッティング部と、芝刈り状況を判断するための画像処理ユニットと、前記センサの情報を基に各ユニットを制御するための各種演算及び該演算に対応する処理を行う演算ユニットと、無線通信により前記演算ユニット及び走行制御ユニットを介して走行車両を遠隔操作するための無線通信手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の芝刈り状況監視機能を有する自動芝刈り機において、前記センサの情報を基に異常と判断した場合、前記制御ユニットを介さずに直接前記走行制御ユニットを制御して緊急停止させるインターロック部を更に備える。
前記制御ユニットは、前記位置検出手段による位置情報及び車両のエンコーダ情報を基に走行車両の移動経路を記憶し、該記憶した位置情報及び走行情報を基に自律走行するための学習手段を有する。
前記画像処理ユニットは、カメラで撮像した芝の画像を取り込み、該取り込んだ画像を3色分解して所定の色成分を抽出した後、エッジ処理により芝の切り口を強調して該芝の切り口情報を基にパターンマッチングにより正常に刈り取られたか否かを判断する。その際、前記画像処理ユニットは、取り込んだ画像を3色分解して所定の色成分を抽出した後、輝度補正及び陰影を付加したシェーディング処理を行い、高域周波数成分の除去及びモフォロジー処理による画素間演算を行った後にエッジ処理しても良い。
また、前記制御ユニットは、前記画像処理ユニットを介して芝が正常に刈られていないと判断した場合に走行車両の運転を停止し、予め登録されたメールアドレス宛てに前記無線通信手段を介して電子メールで通知するようにしても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明の芝刈り状況監視機能を有する自動芝刈り機によれば、走行パターンを学習させることで移動経路に対応した自律走行を可能にして無人の自動運転を可能にすると共に、走行中の芝刈り状況を監視して正常に刈られていない場合に刃の交換が必要なことを通知するので、芝刈りに要する労力や経費を節減することができ、かつ自動運転による芝刈りを正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による自動芝刈り機の外観図である。
【図2】本発明の一実施形態による自動芝刈り機の概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態による自動芝刈り機の移動パターンを説明するための図面である。
【図4】図3に示す移動パターンの動作説明図である。
【図5】本発明の一実施形態による自動芝刈り機の移動パターンを処理するための説明図である。
【図6】図5に示す移動パターンを処理する演算ユニットの処理の説明図である。
【図7】図6に示す移動コマンドによる車体の動きを説明するための図面である。
【図8】図6に示す移動コマンドによるアクチュエータの動きを説明するための図面である。
【図9】本発明の一実施形態による自動芝刈り機の障害物センサの動作説明図である。
【図10】本発明の一実施形態による自動芝刈り機の動作概要を示すフロー図である。
【図11】図10に示す画像処理の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の芝刈り状況監視機能を有する自動芝刈り機を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態による自動芝刈り機の外観図であり、図2は、本発明の一実施形態による自動芝刈り機の概略構成図である。
【0012】
図1を参照すると、本実施形態の自動芝刈り機1は、芝を刈るためのカッティング部2、基地局と通信してRTK−GPS基準局からのデータの取得、遠隔操作や情報の授受等を行うための小エリア無線機11、位置情報を取得するためのGPS受信機12、表示画面を備えた操作・設定用のタッチパネル13、障害物センサとして用いるレーザーセンサ14及び超音波センサ15、角度情報を基に車体の向きや傾斜を感知し位置補正に使用する3Dジャイロセンサ17、各種センサ情報を入力して演算処理し、各種制御を担うCPUを有する演算ユニット21、刈り取った芝面を撮影して芝刈り状況を監視するためのカメラ23、カメラ23で撮影した撮像画像を基に芝が正常に刈られたことを判断するための画像処理を行う画像処理部24、車両を目標地点に移動させる走行制御ユニット31(電気モータ使用の場合は走行制御ユニット41)、車輪の回転を検出して走行状態をモニタするためのエンコーダ32を備える。
【0013】
自動芝刈り機1は、この他にも、図2に示すように、立ち入り禁止区域や位置補正値取得のためのRFIDリーダ16、バンパーセンサ18、非常停止ボタン19、及び画像処理部24からの異常信号を検知すると演算ユニット21を介さずに直接走行制御ユニット31を制御して緊急停止させるインターロック部25、エンジン回転数、舵角、エンコーダ32による車速等の走行情報、GPS受信機12からの位置情報、3Dジャイロセンサ17からの補正情報等が入力されて演算された演算ユニット21からの情報に基づき、走行制御ユニット31により制御されて自動運転するための操舵系(ステアリング)、駆動系(スロットル:アクセル)、及び制動系(ブレーキ)用の各アクチュエータ33、34、35、電気系統に電源を供給するバッテリ27及び各種電源電圧を生成するDC/DCコンバータ28等を備える。更に、自動芝刈り機1は、各ユニットの電圧をモニタする電圧検出部や各ユニットの異常温度を検出して電源供給を停止するサーマルプロテクタ、メモリカード、USB、RS232C等の各種入出力インタフェースを備えても良い。また、図示していないが、カッティング部2は、刃の回転を駆動する機構部を含み、演算ユニット21或いは走行制御ユニット31により制御される。
【0014】
図2を参照すると、演算ユニット21には、小エリア無線機11、GPS受信機12、タッチパネル13、レーザーセンサ14、超音波センサ15、RFIDリーダ16、3Dジャイロセンサ17、及びカメラ23からの撮像データを処理する画像処理部24の他、各種設定のための応答、警告、注意喚起等に用いるモニタランプやアラームが接続され(図示せず)、インターロック部25には、3Dジャイロセンサ17、バンパーセンサ18、非常停止ボタン19、及び画像処理部24が接続される。また走行制御ユニット31、41は、演算ユニット21及びインターロック部25と接続される。
【0015】
演算ユニット21は、処理全体に亘る制御を司るCPU、デジタル信号処理のためのDSP(Digital Signal Prosessor)、各種入出力(I/O)インタフェース等の各種機能を含む周辺回路を集積したデジタル及びアナログASIC(Application Specific Integrated Circuit)、制御プログラムや各種データを記憶する不揮発性Flashメモリを含むROM、演算時の作業領域等の一時記憶として用いるRAM等を有するが、本発明の要旨ではないこれらの説明及びその構成図面については省略する。
【0016】
小エリア無線機11は、例えばゴルフ場のクラブハウス等に備えられた基地局(図示せず)を介して自動芝刈り機1を遠隔操作する際や、自動芝刈り機で学習した情報等を基地局又は基地局を介して通信ネットワークに接続されたPC(パーソナルコンピュータ)等の通信端末との間で通信して情報を送受信するために用いられる。
【0017】
GPS受信機12には、搬送波の数及び位相より基準局(RTK−GPS基準局)で誤差を求め移動局に通知することによりcmレベルの精密測位が可能なRTK(realtime kinematic)方式のRTK−GPS受信機を用いる。
【0018】
本実施形態では、基地局(又はGPS基準局)と移動局(自動芝刈り機1)との通信方式に小エリア無線を使用して1km程度の広域エリアをカバーする。RTK−GPSの場合、通常160バイト/秒の補正データがGPS基準局から送出され、補正データをそのまま送出した場合、伝送速度が低いとデータを送りきることができない場合が生じるが、本実施形態では、RTK−GPS専用の通信回線と他のデータ用通信回線とを分けずに、WGS−84世界測地系座標を2km×2kmのエリアに分割し、左下を原点とするオフセット座標に変換してバイト数を4バイトから2バイトに削減してデータ圧縮を行うことで160バイトの補正データを50バイト程度まで削減する。この処理により通信時間を短くでき、自動芝刈り機1と基地局との運行状況データの送受信を可能としている。
【0019】
タッチパネル13は、自動芝刈り機1に走行経路等を学習させ自律走行を可能とするための各種情報の入出力操作を行うタッチスイッチと、その情報を表示するモニタ画面が一体になったものであり、屋外使用を考慮すると雨除けカバー等の防水・防滴構造が望ましい。
【0020】
レーザーセンサ14は赤外線レーザー等を用い、超音波センサ15は超音波を用いてその反射波を観測し、人、物、木、段差等を検出する障害物センサに用いる。障害物センサは、レーザーセンサ14及び超音波センサ15のいずれか又は両方の情報を基に障害物と判断し、その位置や距離・方向を判断する。
【0021】
RFIDリーダ16は、微弱無線を使用し、ロープ等にRFIDタグを内蔵して立ち入り禁止区域を設定してこれを検知したり、予め固定地点に緯度経度情報を埋め込んだRFIDタグを設置してその位置情報の補正値を取得したりするために用いる。
【0022】
3D(三次元)ジャイロセンサ17は、X(水平横)、Y(水平縦)、Z(垂直)軸の角速度(ロール、ピッチ、ヨー)を検出する。3Dジャイロセンサ17には、機械式(レート)ジャイロ或いはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)シリコン振動子リングを用いた振動式ジャイロ等の小型の高精度角速度検出が可能なものを使用し、角度情報を基に車体の向きや傾きを感知し位置補正に使用する。角速度を積分することでその角度を算出することができる。3Dジャイロセンサ17は、後述するように衝撃感知センサとして用いることもできる。3Dジャイロセンサ17の機能を補間するために、ホール素子等を用いた多軸の地磁気センサ(電子コンパス)、MEMS等を用いた半導体式の多軸加速度センサ等を併用するようにしても良い。
【0023】
画像処理部24は、CCD又はCMOS型のカメラ23により芝刈り状況を撮影し、後述するように、芝刈りが正常に行われたかどうかを刈り取った芝面の撮像画像を基に判別する。また、走行中の芝刈り状況の監視画像或いは撮像された芝面の処理結果を演算ユニット21に送信してタッチパネル13に表示し、また小エリア無線機11を介して基地局接続された通信端末に送信する。
【0024】
インターロック部25は、走行時の車体の規定以上の傾き、転倒、衝突を検知した場合等の異常時に、演算ユニット21を介さずに直接走行制御ユニット31、41を制御して即時に停止させる緊急停止機能を有し、異常事態を検知するための3Dジャイロセンサ17、バンパーセンサ18、非常停止ボタン19、及び画像処理部24が接続される。インターロック部25の機能として、カッティング部2に異物が挟まったことを検知して緊急停止するようにしても良い。
【0025】
バンパーセンサ18は、車体の前後部等に取り付けられて車体が何らかの物体に接触したことを感知する際に用いられ、非常停止ボタンは、手動操作の時の緊急停止の際に用いられる。車体の障害物等への異常接近は、レーザーセンサ14や超音波センサ15を用いて検知することもでき、この場合は障害物に接触する前に予め検知できるため演算ユニット21で処理しても十分間に合う。また自動芝刈り機の動作状況を基地局に常時送信し、異常を検知した場合に基地局から遠隔操作で自動芝刈り機1の走行を停止するようにしても良い。
【0026】
画像処理部24は、刈り取られた芝面の撮像画像に基づき芝刈りが正常に行われなかったと判断した場合にインターロック部25を介して緊急停止させ、同時に演算ユニット21を介してタッチパネル13や警告アラームにより通知し、基地局に接続された通信端末にカッティング部2の刃の摩耗や破損等があることを通知して刃の交換を促す。その際、予め登録されたメールアドレスに異常情報を送信するようにしても良い。
【0027】
走行制御ユニット31は、ガソリンエンジンタイプの市販の乗用型の芝刈り機を改造して自律走行により車両を目標地点に移動させるための走行系を制御するためのユニットであり、エンジン回転数、車速、舵角、及び車輪の回転を検出するエンコーダ32の信号等の走行情報を入力して演算ユニット21に提供し、これらの走行情報を基に補正された演算ユニット21からの情報に基づき車両の操舵系(ステアリング又はハンドル)を自動操作するためのステアリングアクチュエータ33、駆動系(アクセル又はスロットル)を自動操作するためのスロットルアクチュエータ34、及び制動系(ブレーキ)を自動操作するためのブレーキアクチュエータ35を制御し、速度や方向角を調整して車両を走行させる。
【0028】
走行制御ユニット(モータコントローラドライバ)41は、電気モータタイプの芝刈り機に対応する場合であり、左右の駆動モータ42、43、ステアリングモータ44の従来のモータ駆動部を置き換えたものであり、演算ユニット21と通信し、左右の車輪及びステアリングに備えられたエンコーダからの回転信号を演算ユニット21にフィードバックし、演算ユニット21で演算された結果を基に、左右の駆動モータ42、43、及びステアリングモータ44を制御して駆動する。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態による自動芝刈り機の移動パターンを説明するための図面であり、図4は、図3に示す移動パターンの動作説明図である。
【0030】
図3を参照すると、自動芝刈り機1の移動パターンは、学習機能により、先ず移動経路をトレースして緯度・経度の位置情報や、方向、速度、角度等の走行情報を記憶し、次回の自律走行時に、記憶させたこれらの位置情報や走行情報の学習データに基づき自動で芝刈り機1を作動させる。移動ルートはGPS受信機12等により取得した地図座標に基づき記憶させる。地図からその外周を指定することでその内側の最適ルートを自動計算させて取得するようにしても良い。
【0031】
図4を参照すると、自動芝刈り機1は起動時にGPS受信機12からのRTK−GPS受信データより現在地を取得する。GPS受信が不可能な場合は、予め基地局に接続された通信端末により位置、進行方向等の情報を編集して自動芝刈り機1に地図データとして転送し記憶させるか、或いはメモリカード等を用いて直接記憶させる。自動芝刈り機1は地図上の通過ポイント(目標地点)の座標データを記憶した移動パターンを利用して移動ルートをトレースする。
【0032】
RTK−GPSの場合、起動時に測位まで5〜10分程度の時間を要することから、何らかの理由によりGPSデータが途絶えた場合、自動芝刈り機1の動作停止状態が続いてしまうことになるため、GPS信号が途絶えた場合でも緯度経度のデータを取得できるように3Dジャイロセンサ17により方位角を取得し、エンコーダ32等から取得した回転数及び回転差を利用して方位及び移動距離データを作成する。これにより無人作業も可能になり、防水構造を採用した場合は雨天の利用も可能になる。
【0033】
移動時は、3Dジャイロセンサ17からのデータを積分して連続記憶させ、自動芝刈り機1の現在位置を求めて記憶された座標とのずれを補正するように自動芝刈り機1を移動させる。このとき、エンコーダ32等からのパルスをカウントすることで移動距離を求めて移動データの精度を高める。自動芝刈り機1のタッチパネル13のモニタ画面、或いは小エリア無線機11を介して基地局に接続された通信端末に表示される地図画面には、地図データと共に補正されたその走行軌跡が表示される。図4に示したように地磁気センサを用いてそのずれを補正しても良い。
【0034】
図5は、本発明の一実施形態による自動芝刈り機の移動パターンを処理するための説明図であり、図6は、図5に示す移動パターンを処理する演算ユニットの処理の概略構成図である。図7は、図6に示す移動コマンドによる車体の動きを説明するための図面であり、図8は、図6に示す移動コマンドによるアクチュエータの動きを説明するための図面である。
【0035】
図5を参照すると、先ず、予めPC等により地図データを基に位置、進行方向等の情報を編集して通過ポイントの座標データを記憶した移動パターンを作成し、複数の移動目標地点を設定する。その際、地図からその外周を指定することでその内側の最適ルートを自動計算させるようにしても良い。自動ルートの作成の際は、予め障害物の位置座標とその範囲を設定し、障害物を避けて移動ルートを設定する。なお、最適化モデルについての説明は省略する。作成された移動パターンは小エリア無線機11を介して基地局に接続されたPC等の通信端末から自動芝刈り機1に転送し記憶させるか、或いはメモリカード等を用いて直接記憶させる。自動芝刈り機1は、現在の移動目標地点と次の移動目標地点との間を移動する動作を繰り返すことで移動経路をトレースする。
【0036】
図6を参照すると、演算ユニット21は、次の移動目標地点を設定し、GPS受信機12、3Dジャイロセンサ17、及びエンコーダ32等の各種センサからの現在地情報を基に駆動軸移動コマンドを補正し、移動目標位置に向けて駆動系を制御するための移動コマンドとして走行制御ユニット31に伝達する。
【0037】
より詳細に説明すると、演算ユニット21は、GPS受信機12から緯度経度データ、3Dジャイロセンサ17から方位データ及びX、Y、Z角度データをそれぞれ入力し、エンジン回転数、車速信号、舵角、及びエンコーダ32からの走行情報を基に補正して自動芝刈り機1の現在位置及び移動方向を取得し、設定された移動目標地点のデータと取得した現在のデータ値を比較演算して制御コマンドを生成し、進行方向の水平成分(X軸方向)と垂直成分(Z軸方向)を、進行方向と直交するY軸のピッチ角でサンプリングして傾斜成分による距離誤差を補正し、積分器により一旦距離又は速度成分に変換した後にエンコーダ32等の走行情報を基に更に補正し、再度サンプリングして走行制御ユニット31に伝達する。移動位置に誤差が生じている場合は移動目標値に近づくようにステアリングアクチュエータ33を制御して移動方向を修正する。相対方位は左右の駆動軸の回転数をエンコーダ32から取得して求めると共に、エンジン回転数、車速信号、舵角、及びエンコーダ32から取得したデータを補正値として使用する。
【0038】
図7を参照すると、走行制御ユニット31は、移動コマンドを受信してステアリングアクチュエータ33を制御して進行方向を定め、スロットルアクチュエータ34又はブレーキアクチュエータを制御して車体を移動させる。図7ではステアリングアクチュエータ33の制御により駆動輪である後輪タイヤの向きを変える例を示しているが、前輪タイヤの向きを変えて方向を定めても良いし、駆動輪は前輪であっても良い。
【0039】
図8を参照すると、走行制御ユニット31は、受信した移動コマンドに応じ、スロットルアクチュエータの制御によりアクセルを操作して車体を進め、ブレーキアクチュエータの制御によりブレーキを操作して車体を停止させ、ステアリングアクチュエータ33の制御によりハンドルを操作して進行方向を定め、移動目標地点に向けて車体を進める。
【0040】
図9は、本発明の一実施形態による自動芝刈り機の障害物センサの動作説明図である。
【0041】
図9を参照すると、自動芝刈り機1は、移動目標経路に存在する人、物、木等の障害物をレーザーセンサ14や超音波センサ15を用いた障害物センサにより検知して障害物が取り除かれるまで所定時間待機し、予め経路データとして記憶されている場合又は所定時間経過後に、衝突を避けるために迂回する。障害物センサは、その反射光又は反射波を計測することで障害物を検知して障害物までの距離を測定する。走行経路の路面の段差は、所定の角度(θ1、θ2)で照射したレーザー光又は超音波の反射よりその距離を測定し、平担時との反射距離差を計測することで判断する。
【0042】
障害物との違いを認識するため或いは要所に設けられた固定ポイントの微弱無線信号のICタグ情報をRFIDリーダ16で検知した場合は、立ち入り禁止区域と判断して迂回すると共に、ポイント通過時に緯度経度データを取得して自位置の補正を行う。立ち入り禁止区域には専用ロープ等を使用し、ロープ内部に例えば50cm間隔でICタグを埋め込み、自動芝刈り機1に取り付けたRFIDアンテナでICタグの情報を読み取る。
【0043】
図10は、本発明の一実施形態による自動芝刈り機の動作概要を示すフロー図であり、図11は、図10に示す画像処理の処理フロー図である。
【0044】
図10を参照すると、予め手動運転等により移動経路をトレースしてそのルートを学習させるか或いは走行経路の地図データを記憶させて自律走行が可能となった自動芝刈り機1のエンジンを基地局等の指令により始動させる。このとき、自律走行による自動運転でない場合即ち手動運転の場合は芝刈り状況を監視するための画像処理を行わない(ステップS101、S102)。
【0045】
自動運転の場合、自律走行による自動芝刈りを開始し(ステップS103)、学習させた走行経路に基づき次の移動目標地点に向けて車両を進め芝刈りの自動運転を行う(ステップS104)。移動目標地点に到達すると最終移動目標地点に到達したか否かを判断し、自動運転終了の場合は芝刈りの自動運転を終了する。このとき、その場でエンジンを停止させても良いし、カッティング部を操作して芝刈りをしない状態で所定の場所まで車体を移動させても良い。
【0046】
自動運転の場合、走行中に移動目標地点やその中間地点等の所定の場所を指定した点検ポイントに到達したか否かを判断し(ステップS106)、点検ポイントに到達すると自動運転を一時停止し(ステップS107)、そうでない場合は芝刈りの自動運転を継続する。
【0047】
点検ポイントに到達した自動芝刈り機1は、走行した後の芝面を車体後方に取り付けられたカメラ23で撮影し、撮像された芝面を画像処理部24により画像処理して(ステップS108)芝が正常に刈り取られているか否かを判断する(ステップS109)。画像処理部24により正常と判断された情報は演算ユニット21に通知され、演算ユニット21は走行制御ユニット31を制御して次の移動目標地点に向けて車体を移動させて自動芝刈りを再開する。なお、画像処理に時間を要さずに芝刈りが正常に行われたか否かの判断が即時に行われる場合は、ステップS107の一時停止は不要である。
【0048】
画像処理の結果、正常でないと判断した場合に、画像処理部24は、インターロック部を介して走行制御ユニット31を直接制御し、自動芝刈り機1を緊急停止モードにして演算ユニット21からの走行制御をブロックすると共に演算ユニット21にも通知する。芝刈りが正常に行われなかった場合、演算ユニット21は小エリア無線機11を介して基地局へその旨を通知し(ステップS110)、カッティング部2の刃が摩耗又は損傷しているものとして刃の交換を促す。芝が正常に刈られていないとの通知を受けた基地局は予め登録しているメールアドレスに宛てて電子メールを送信して警告するようにしても良い。
【0049】
最後に、図11を参照してステップS108の画像処理の内容を詳しく説明する。
【0050】
図11を参照すると、画像処理では、先ず、レンズによって結像された画像の色づき、ボケ、歪み等のレンズ収差を補正し(ステップS201)、刈り取られた芝面の画像を3チャネル(R、G、Bの3色等)に分解して判断に必要な色成分のみを抽出する(ステップS202)。
【0051】
次に、抽出された色成分を有する芝面の画像に対し、芝刈り中の日時等を基に光源(太陽)の位置を求め、シェーディング処理により予め撮像された基準となる画像との陰影の差を補正又は付加した後(ステップS203)、画像を2次元フーリエ変換により周波数解析し、スムージング(平滑化)処理等により不連続成分等のノイズ除去を行う(ステップS204)。
【0052】
次に、画像内の図形に対し、隣接する画素間でOR演算して1画素分膨らませる「膨張」処理と、隣接する画素間でAND演算して1画素分縮める「収縮(又は侵食)」処理を数回組み合わせ、画像を平滑化して孤立点を除去するモフォロジー処理による画素間演算を行う(ステップS205)。モフォロジー処理には、収縮処理を数回行った後に膨張処理を数回行うことで図形の周りにある小さい画素を除去するオープニング処理と、膨張処理を数回行った後に収縮処理を数回行うことで図形の画素の欠落部分の穴埋めや不連続部分の画素を補間するクロージング処理があり、これらを適宜選択又は組み合わせて使用する。
【0053】
最後に、芝の切り口を強調させるためにエッジ処理を行って(ステップS206)、予め登録された基準となる芝の切り口の画像と、取り込んだ切り口の処理画像とを比較するパターンマッチングを行い(ステップS207)、一致する場合に正常と判定し、それ以外は正常に刈り取られていないエラーと判定する(ステップS208)。
【0054】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 自動芝刈り機
2 カッティング部
11 小エリア無線機
12 GPS受信機
13 タッチパネル
14 レーザーセンサ
15 超音波センサ
16 RFIDリーダ
17 3Dジャイロセンサ
18 バンパーセンサ
19 非常停止ボタン
21 演算ユニット
23 カメラ
24 画像処理部
25 インターロック部
27 バッテリ
28 DC/DCコンバータ
31、41 走行制御ユニット
32 エンコーダ
33、34、35 アクチュエータ
42、43 駆動モータ
44 ステアリングモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも位置検出手段を含む各種センサを有する自律走行型の自動芝刈り機であって、
走行車両の駆動系(アクセル)、制動系(ブレーキ)、及び操舵系(ステアリング)のうちの少なくとも一つを自動操作するためのアクチュエータと、
前記アクチュエータにより走行車両を目標地点に移動させるための走行制御ユニットと、
走行路面に沿って芝刈りを行うカッティング部と、
芝刈り状況を判断するための画像処理ユニットと、
前記センサの情報を基に各ユニットを制御するための各種演算及び該演算に対応する処理を行う演算ユニットと、
無線通信により前記演算ユニット及び走行制御ユニットを介して走行車両を遠隔操作するための無線通信手段と、を備えることを特徴とする芝刈り状況監視機能を有する自動芝刈り機。
【請求項2】
前記センサの情報を基に異常と判断した場合、前記制御ユニットを介さずに直接前記走行制御ユニットを制御して緊急停止させるインターロック部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の芝刈り状況監視機能を有する自動芝刈り機。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記位置検出手段による位置情報及び車両のエンコーダ情報を基に走行車両の移動経路を記憶し、該記憶した位置情報及び走行情報を基に自律走行するための学習手段を有することを特徴とする請求項1に記載の芝刈り状況監視機能を有する自動芝刈り機。
【請求項4】
前記画像処理ユニットは、カメラで撮像した芝の画像を取り込み、該取り込んだ画像を3色分解して所定の色成分を抽出した後、エッジ処理により芝の切り口を強調して該芝の切り口情報を基にパターンマッチングにより正常に刈り取られたか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の芝刈り状況監視機能を有する自動芝刈り機。
【請求項5】
前記画像処理ユニットは、取り込んだ画像を3色分解して所定の色成分を抽出した後、輝度補正及び陰影を付加したシェーディング処理を行い、高域周波数成分の除去及びモフォロジー処理による画素間演算を行った後にエッジ処理することを特徴とする請求項4に記載の芝刈り状況監視機能を有する自動芝刈り機。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記画像処理ユニットを介して芝が正常に刈られていないと判断した場合に走行車両の運転を停止し、予め登録されたメールアドレス宛てに前記無線通信手段を介して電子メールで通知することを特徴とする請求項4に記載の芝刈り状況監視機能を有する自動芝刈り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−235712(P2012−235712A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105328(P2011−105328)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(503320968)株式会社オリジナルソフト (4)
【Fターム(参考)】