説明

芳香族ポリマーとカーボンナノチューブとの共重合及びコポリマー並びにこれから製造された製品

【課題】用途の範囲を拡張できるCNTsが組み込まれた新たなポリマー系の提供。
【解決手段】官能基化された短い単層カーボンナノチューブを含む第1のブロック材料を提供する工程と、末端表面にアミド形成部分を含む芳香族ポリアミドポリマーを含む第2のブロック材料を提供する工程と、第1及び第2のブロック材料を共重合してブロックコポリマー材料を形成する工程から成る。
【効果】ナノチューブブロックコポリマーから製造された繊維及び他の成形物品が提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、2003年10月24日に出願された米国仮特許出願第60/514,186号に対する優先権利益をそれ自体請求する2004年10月25日に出願された米国特許出願第10/972,560号の一部継続である。本出願が関連する前記出願の両方を、本明細書と矛盾しない限りは本明細書において参考のためにその全体を引用する。
【0002】
本発明は一般に、カーボンナノチューブ材料に関する。特に、本発明は、芳香族ポリマーブロック及び短いカーボンナノチューブのブロックを含むブロックコポリマーに関する。
【背景技術】
【0003】
多数の同軸殻を含み、多層カーボンナノチューブ(MWNTs)と呼ばれるカーボンナノチューブ(CNTs)は、Iijimaによって1991年に発見された[Iijima, Nature 1991, 354, 56-58]。この発見に続いて、それ自体の上に巻き上がり、ナノスケール直径を有する円柱形のチューブを形成する単一のグラフェン(graphene)シートを含む単層カーボンナノチューブ(SWNTs)は、遷移金属をドープした炭素電極を使用してアーク放電方法において合成された[Iijima et al., Nature 1993, 363, 603-605; and Bethune et al., Nature 1993, 363, 605-607]。こうしたカーボンナノチューブ(特にSWNTs)は、類のない機械的、電気的、熱的及び光学的性質を有し、このような性質は、広く様々な用途にとってこれを魅力的にする。Baughman et al., Science, 2002, 297, 787-792を参照されたい。
【0004】
CNTsは、類のない性質を複合体またはブレンドされた材料に与えることができるので、CNTsをポリマーマトリックス中に取り入れることは、現在、かなりの関心の対象となっている領域である。例えば、Mitchell et al., Macromolecules, 2002, 35, 8825-8830; and Zhu et al., Nano. Lett., 2003, 3, 1107-1113を参照されたい。場合によっては、CNTsはこのようなポリマーホスト中に共有結合で組み込まれた。
【0005】
関心の対象となっている別の領域はCNT含有繊維である。幾つかの報告においては、このような繊維はポリマーマトリックスを含むが、他の場合には、これは主としてCNTsである。このようなより後の場合には、CNT繊維は、ポリ(ビニルアルコール)[Vigolo et al., Science, 2000, 290, 1331-1334]及び挿入酸(intercalating acid)[Zhou et al., J. Appl. Phys., 2004, 95, 649-655; and Ericson et al., Science, 2004, 305, 1447-1450]中のCNT懸濁液から紡糸された。
【0006】
カーボンナノチューブの科学における上記に説明した進歩を考慮して、CNTsが組み込まれた新たなポリマー系は、これが関連できる用途の範囲を拡張し続けよう。
【発明の開示】
【0007】
本発明は一般に、芳香族ポリマーとカーボンナノチューブ(CNTs)とのブロック共重合に関する。CNTブロック成分及び芳香族ポリマーブロック成分を有するこのようなブロックコポリマーを、本明細書において“ナノチューブブロックコポリマー”と呼ぶ。本発明はまた、本発明のこうしたナノチューブブロックコポリマーから製造された繊維及び他の成形物品に関する。
【0008】
幾つかの具体例においては、CNTブロック成分は単層カーボンナノチューブ(SWNT)である。典型的に、このようなSWNTsを、まず切断プロセスを用いて切断して短いSWNTsを提供し、次に(または同時に)、芳香族ポリマーブロック成分に結合できる部分を用いて末端官能基化する。しかしながら、適切に短いSWNTsを直接に合成でき、適切に末端官能基化できる限りにおいては、このような切断は必要ない。
【0009】
幾つかの具体例においては、芳香族ポリマー(ブロック)は、ポリベンザゾール(PBZ)である。SWNTs及びPBZ成分を含む本発明のブロックコポリマーを、本明細書において“SWNT/PBZブロックコポリマー”と呼ぶ。幾つかのこのような具体例においては、PBZブロックはポリベンゾキサゾール(PBO)であり、“SWNT/PBOブロックコポリマー”を生じる。
【0010】
幾つかの具体例においては、芳香族ポリマーは、芳香族ポリアミドである。幾つかの具体例においては、芳香族ポリアミドポリマーは、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(PPTA)である。SWNTs及びPPTA成分を含む本発明のブロックコポリマーを、本明細書において“SWNT/PPTAブロックコポリマー”と呼ぶ。
【0011】
このような上記に説明した芳香族ポリマーブロックは、典型的に(しかし必ずしもでない)うねのあるロッドポリマーである。他の適切な芳香族ポリマーブロックは、芳香族ポリイミド、芳香族ポリエステル、及び芳香族複素環ポリマーを含む。
【0012】
幾つかの具体例においては、SWNTsの切断(短縮されたSWNTsを製造するための)及び芳香族ポリアミドへの短縮されたSWNTsの結合の両方は、非プロトン性溶媒、強酸溶媒、及び他の溶媒中のSWNTsの溶解度及び処理性を向上する。加えて、このようなブロックコポリマーにおける芳香族ポリマー、及び特に芳香族ポリアミドの使用は、経済的であり、SWNTsに固有の機械的性質を維持するという点で有利である。
【0013】
上文は、下記の本発明の詳細な説明がより良く理解されるために、本発明の特徴をかなり広く略述した。本発明の請求の範囲の主題を形成する本発明のさらなる特徴及び利点を下文で説明する。
【0014】
本発明及びその利点のより完全な理解のために、ここから添付図面と共に以下の説明を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下の説明において、本発明の具体例の十分な理解を提供するように、特定の詳細の例えば特定の量、サイズ等を述べる。しかしながら、本発明を、このような特定の詳細無しで実施してよいことは当業者には明白であろう。多くの場合、このような考慮の対象及びその他同様なものに関する詳細は、このような詳細が本発明の完全な理解を得るために必要でなく、当業者の熟練の範囲内にある限りは省略した。
【0016】
本発明は一般に、芳香族ポリマーとカーボンナノチューブ(CNTs)とのブロック共重合に関する。CNTブロック成分及び芳香族ポリマーブロック成分を有するこのようなブロックコポリマーを、本明細書において“ナノチューブブロックコポリマー”と呼ぶ。本発明はまた、本発明のこうしたナノチューブブロックコポリマーから製造された繊維及び他の成形物品に関する。
【0017】
ブロックコポリマーは、1つ以上の他のタイプのポリマーのポリマーまたはオリゴマー鎖と連結した1つのタイプのポリマーのポリマーまたはオリゴマー鎖を含むポリマーである。このような重合は、以下のジブロックコポリマー:
【化1】

【0018】
またはトリブロックコポリマー:
【化2】

【0019】
[式中、“A”は、第1のポリマーブロックのための繰り返し単位(すなわち、“マー”)であり、“B”は、第2のポリマーブロックのための繰り返し単位である。]
のもののような構造を有するポリマー鎖を生じる。一般的なブロックコポリマーの例は、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、またはSBSである。
【0020】
本発明のナノチューブブロックコポリマーの場合には、ポリマーブロックのうちの少なくとも1つはカーボンナノチューブ(それ自体全炭素剛性ポリマー)であり、ブロックのうちの少なくとも1つは、有機ベース芳香族ポリマーまたはオリゴマーである。この検討のために、オリゴマーは単に短いポリマー鎖であり、下文でポリマーとしてのポリマーブロック成分への言及はオリゴマーを含むことは理解されよう。本明細書においてナノチューブブロックコポリマーと呼ぶ本発明のブロックコポリマーは、一般に、少なくとも1つのCNTブロック及び少なくとも1つの芳香族ポリマーブロックを含むが、これは、他のタイプのブロックも含んでよい。
【0021】
幾つかの具体例においては、CNTsの側壁及び/またはCNT末端表面の多数の結合(すなわち、付着)部位の可能性が理由となって、CNTsの片方または両方の末端は多数の芳香族ポリマーブロックに結合できる。
【0022】
CNTsは、本発明によれば、単層カーボンナノチューブ(SWNTs)、多層カーボンナノチューブ(MWNTs)、二層カーボンナノチューブ(DWNTs)、小直径(<3nm)カーボンナノチューブ(SDCNTs)、バッキーチューブ、フラーレンチューブ、管状フラーレン、グラファイトフィブリル、及びこれらの組合せを含むがこれらに限定されるものではない。このようなカーボンナノチューブは、最初に、様々な及びある範囲の長さ、直径、チューブ壁の数、キラリティー(ヘリシティー)等を有し得、一般に任意の周知の技術によって製造できる。“カーボンナノチューブ”及び“ナノチューブ”という用語は、本明細書において互換性がある。このようなCNTは、しばしば1つ以上の精製工程を施される[例えば、Chiang et al., J. Phys. Chem. B, 2001, 105, 1157-1161; Chiang et al., J. Phys. Chem. B 2001, 105, 8297-8301を参照されたい]。幾つかの具体例においては、CNTsは、1つ以上の切断技術によって切断される[例えば、Liu et al., Science, 1998, 280, 1253-1256; and Gu et al., Nano Lett., 2002, 2, 1009-1013を参照されたい]。
【0023】
幾つかの具体例においては、芳香族ポリマーブロックは、ポリベンザゾール(PBZ)または他の芳香族ポリマーである。PBZは、以下の一般式を有する:
【化3】

【0024】
他の適切なこのようなポリマーブロックは、シス−及びトランス−ポリベンゾキサゾール(PBO)であり:
【化4】

シス−及びトランス−ポリ−p−フェニレンビスベンズチオゾール(PBT)であり:
【化5】

【化6】

ポリ−2,5−(ベンゾキサゾール)(ABPBO)である:
【化7】

【0025】
幾つかの具体例においては、SWNTブロックは、縮合反応によって芳香族ポリマーブロックに結合して“SWNTブロックコポリマー”を形成する。幾つかの具体例においては、芳香族ポリマー(ブロック)は、ポリベンザゾール(PBZ)である。SWNTs及びPBZ成分を含む本発明のブロックコポリマーを、本明細書において“SWNT/PBZブロックコポリマー”と呼ぶ。幾つかのこのような具体例においては、PBZブロックはポリベンゾキサゾール(PBO)であり、“SWNT/PBOブロックコポリマー”を生じる。
【0026】
幾つかの具体例においては、芳香族ポリマーブロックは芳香族ポリアミドまたは他の芳香族ポリマーである。このような芳香族ポリアミドは、以下の一般式を有する:
【化8】

[式中、“n”は、それぞれの繰り返し単位の数を示す整数である。]
【0027】
上記の芳香族ポリアミドポリマーの場合、適切な芳香族単位、−Ar−、としては、1,4−フェニレン;4,4’−ビフェニリ(biphenyly);2,6−ナフチレン;1,5−ナフチレン;N,N’−ピペラジン、1,3,4−オキサジアゾール;フェニルベンズイミド;1,4−キシリレン;2,5−ピリジレン、及びこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されるものではない。芳香族単位は、ペンダント基、例えば、限定するものではなく、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、シアノ、アセチル、ニトロ、及びその他同様なものを含んでよい。芳香族ポリアミドはまた、芳香族単位の間に橋かけ単位を含んでよい。適切なこのような橋かけ単位としては、エーテル、スルフィド、スルホン、ケトン、アミン、エチレン、アゾ、エステル、ジアゾ及び他の同様な結合が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0028】
他の適切な芳香族ポリマーポリマーブロックは、芳香族ポリイミド、芳香族ポリエステル、及び芳香族複素環ポリマーを含む。
【0029】
上記に言及したように、幾つかの具体例においては、SWNTブロックは、縮合反応によって芳香族ポリマーブロックに結合して“SWNTブロックコポリマー”を形成する。幾つかのこのような具体例においては、こうした芳香族ポリマーブロックは、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(PPTA)である。SWNTs及びPPTA成分を含む本発明のブロックコポリマーを、本明細書において“SWNT/PPTAブロックコポリマー”と呼ぶ。
【0030】
幾つかの具体例においては、短いSWNTsは、PPTA、他の芳香族ポリアミド、または有限の長さの他の芳香族ポリマーに共有結合して、非プロトン性溶媒、鉱酸、または他の溶媒中のSWNTsの溶解度を改良し、SWNTsの凝集体(ロープ)の形成を防ぐ。
【0031】
幾つかの具体例においては、上述のSWNT/PBZコポリマー及び/またはSWNT/PPTAコポリマーの紡糸またはキャスティングを、前に可能だったよりも高い濃度で液晶溶液から実行することができる。これはより有効な凝固プロセス及び紡糸またはキャスティングプロセスの最中のナノチューブブロックコポリマーの容易な整列を与える。
【0032】
幾つかの具体例においては、短いSWNTsへの芳香族ポリマー(例えば、PBZまたはPPTA)の結合は、ニートSWNT溶液のものに勝るポリマー分子間のより強い相互作用が理由となって、紡糸またはキャスティング溶液の強度(“足(leg)”)を改良する。これは成形プロセスを改良し、SWNTsによって与えられる超高性能特性を有する成形物品を生じることができる。
【0033】
幾つかの具体例においては、本発明は、短いSWNTs及び芳香族ポリアミドブロック及び/または他の芳香族ポリマーブロックを含むブロックコポリマーの合成(すなわち、製造方法);こうしたブロックコポリマーを含む繊維及び他の組成物;芳香族ポリマーブロック及びSWNTブロックを含むこうしたブロックコポリマーから成形物品を製造する方法;並びにこうした方法によって製造された成形物品に関する。
【0034】
幾つかの具体例においては、本発明は、上記に説明したナノチューブブロックコポリマーのいずれかとその対応するホモポリマーとの物理的ブレンド;こうしたブレンドを含む繊維及び他の組成物;SWNT及び芳香族ポリマーのブロックポリマー並びに対応する芳香族ポリアミドを含むこうしたブレンドから成形物品を製造する方法;並びにこうした方法によって製造された成形物品に関する。
【0035】
幾つかの具体例においては、ナノチューブブロックコポリマーを製造する方法は、SWNTsの切断及び末端官能基化、続いて適切に官能基化された芳香族ポリマーブロックとの反応を含む。
【0036】
本発明の幾つかの具体例によれば、官能基化された短いSWNTsの合成を下記のスキーム1に示す:
【化9】

【0037】
スキーム1を参照すると、SWNTs(1)をまず酸化的酸(oxidative acid)(例えは、HNO)または酸混合物(例えば、ピラニア(piranha))中で切断して、開放された末端表面に及び/または側壁表面にカルボキシル種(例えば、−COOH基)を有する短いSWNTs(2)を与える。このようなカルボキシル種は、塩化チオニル(SOCl)との反応によって塩化アシル種(−COCl)に転換されて、(3)を与えることができる。このような上記に説明した化学は当分野において周知である。例えば、Liu et al., Science, 1998, 280, 1253-1256; and Chen et al., Science, 1998, 282, 95-98を参照されたい。
【0038】
本発明の幾つかの具体例においては、短いSWNTsを使用して、非プロトン性溶媒の例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMSO)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びその他同様なもの中の、または、強酸、例えば、限定するものではなく、硫酸、発煙硫酸(微量の水を除去するためにSOを溶解させたHSOである発煙硫酸)、メタンスルホン酸(MSA)、及びその他同様なもの中のSWNTブロックの溶解度を向上する。同様に、短い官能基化SWNT−COOH及びSWNT−COClは、上述の非プロトン性溶媒または強酸中の改良された溶解度を有しよう。短いSWNTs及びその官能基化対応物の向上した溶解度は、より高いSWNT濃度で非プロトン性溶媒または強酸中で処理されるSWNTs(紡糸される繊維またはキャスティングされるフィルム)の利点を与える。成形物品、繊維またはフィルムは一般に、こうしたより高濃縮の溶液中の凝固のより有効なプロセス及びSWNTsの向上した配向性が理由となって、より大きな全機械的強度を有しよう。
【0039】
上記に言及したように、本発明の幾つかの具体例においては、一般に長さ約1000nm未満、典型的に100nm未満、及びより典型的に5〜50nmを有する短いSWNTsを使用する。典型的に、このような個別のSWNTsは、直径約1nmを有する。従って、本発明の幾つかの具体例は、アスペクト比(直径で割った長さと定義される)約1000未満;典型的に100未満;及びより典型的に5〜50を有するSWNTsを使用する。同様に、官能基化SWNTsは、一般に約1000未満、典型的に100未満、及びより典型的に5と50との間のアスペクト比を有する。
【0040】
幾つかの具体例においては、スキーム1に−COOHまたは−COClとして示すSWNT末端表面の官能基化基(すなわち、化学的部分)は、電子不足炭素基であるが、一般に、非プロトン性溶媒または鉱酸中で単数または複数の芳香族ポリマーの末端でアミン部分と反応して、SWNTと芳香族ポリマーブロックとの間にアミド結合を形成することができる炭素原子を含む任意の基とすることができる。適切な電子不足基としては、カルボン酸、酸ハロゲン化物、金属カルボン酸塩(metal carboxylate salt)、シアノ基及びトリハロメチル基が挙げられるがこれらに限定されるものではない。このような電子不足炭素基におけるハロゲンは、典型的にフッ素、塩素、または臭素、及びより典型的に塩素である。
【0041】
アミン末端芳香族ポリマーブロック(amine-terminated aromatic polymer block)の例えばPPTAの合成を下記のスキーム2に示し、ここで、本発明の幾つかの具体例に従い、アミド形成部分(4)は、電子不足炭素部分(5)を含む種と反応して、アミン末端芳香族ポリアミド(6)を与える。
【化10】

【0042】
スキーム2を参照すると、適切な芳香族単位、−Ar−、としては、1,4−フェニレン;4,4’−ビフェニル;2,6−ナフチレン;1,5−ナフチレン;N,N’−ピペラジン、1,3,4−オキサジアゾール;フェニルベンズイミド;1,4−キシリレン;2,5−ピリジレン、及びその他同様なものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。このような芳香族単位は、ペンダント基、例えば、限定するものではなく、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、シアノ、アセチル、ニトロ、及びその他同様なものを含んでよい。芳香族ポリアミドはまた、芳香族単位の間に橋かけ単位を含んでよい。適切なこのような橋かけ単位としては、エーテル、スルフィド、スルホン、ケトン、アミン、エチレン、アゾ及び他の同様な結合が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0043】
再度スキーム2を参照すると、nは一般に2の低さ及び実際的に実行可能な高さ(例えば、2000)とすることができる。典型的に、nは約5〜100、及びより典型的に5と50との間である。上記のスキーム2において、アミド形成部分(4)は、芳香族基に結合した第一級アミン基を含む芳香族基に結合したp−アミノ塩基性部分である。上記の反応における他の反応物(5)は、電子不足炭素基を含む。上記に言及したように、この炭素基は、非プロトン性溶媒または鉱酸中でアミノ塩基性部分と反応して、アミドを形成することができる炭素原子を含む任意の基とすることができる。適切な電子不足炭素基としては、カルボン酸、酸ハロゲン化物、金属カルボン酸塩、シアノ基及びトリハロメチル基が挙げられるがこれらに限定されるものではない。電子不足炭素基におけるハロゲンは、典型的にフッ素、塩素、または臭素、及びより典型的に塩素である。
【0044】
上記の反応において使用する溶媒は、重合反応物及び芳香族ポリアミドポリマーを溶解させることができる任意の非プロトン性溶媒または鉱酸またはこれらの混合物とすることができる。上記の酸及び混合物はまたPを含んでよい。
【0045】
本発明の重要な態様は、非プロトン性溶媒の例えばNMP、DMAc等中、または、いかなる有害な反応も反応物の劣化も無しに両方の反応物を溶解させることができる強い鉱酸中の、短い、官能基化SWNTs(スキーム1に示すように)とアミン末端芳香族ポリマーブロック(スキーム2に示すように)とのブロック共重合である。模範的な共重合反応を下記のスキーム3に示し、ここで、短縮された官能基化SWNTs(3)は、アミン末端芳香族ポリアミド(6)と反応してSWNT/芳香族ポリアミドブロックコポリマー(7)を与える。
【化11】

【0046】
幾つかのこのような上記に説明した具体例においては、反応を、CaCl、及び所望により縮合物剤(condensate agent)と共に非プロトン性溶媒の例えばNMP中で実行する。加えて、反応を所望により、短い官能基化SWNTに対して過剰のアミン末端芳香族ポリアミドを用いて実行してよい。
【0047】
非プロトン性溶媒中のSWNT/芳香族ポリアミドブロックコポリマーの形成に関する上記の具体例において、溶媒中の2つの反応物(すなわち、短い官能基化SWNTs及び芳香族ポリアミドブロック)の総濃度は、ブロック成分の両方の長さに依存する。一般に、例えば繊維紡糸またはフィルムキャスティングにおいて、溶液が、最大濃度及び、処理の容易さのために最小の体積粘性率を有するように、濃度を制御し、最適化するべきである。濃度に依存して、結果として生じたコポリマー溶液は光学的に等方性または光学的に異方性となり得、この後者は形態が液晶となり得、恐らくネマチックである。スキーム3における(3)と(6)との間の反応は、芳香族ポリアミド−SWNT−芳香族ポリアミドトリブロックコポリマー(7、ここで、SWNTsはそれ自体ブロックである)の形成を示すが、SWNT表面の−COOH、または−COCl基のレベル及び配置に依存して、すなわち、どのくらい多くの−COOH部分が各SWNTに結合するかに、及びどの末端かまたは両方の末端かに、または−COOH部分が結合するSWNTsの側壁表面にさえも、及び芳香族ポリアミド反応物の末端での官能性に依存して、反応は、SWNTと芳香族ポリアミドとのジブロックまたはランダムブロックコポリマーを形成することに適応させることができる。
【0048】
上記に説明した本発明のSWNT/芳香族ポリアミドブロックコポリマーの場合、生成物の組成は典型的に、約5/95SWNT/芳香族ポリアミド(wt/wt%)〜95/5SWNT/芳香族ポリアミド(wt/wt%)の間の範囲にわたる。幾つかの具体例においては、できる限り高いSWNTの含量を有することが望ましい。
【0049】
芳香族ポリマーとSWNTsとのブロック共重合の利点は、得られた材料の最終性能における最小の妥協、並びに芳香族ポリマー系の経済性及び現在の理解、すなわち、これは比較的に廉価であり、市販されており、PBZ及びPPTAのような芳香族ポリマー系の繊維紡糸は周知であるということを含む。加えて、これらは酸溶媒中に可溶である。
【0050】
本発明の他の態様は、上記の溶液/組成物(すなわち、スキーム3)を有用な物品の例えば繊維またはフィルムに成形する方法である。幾つかの具体例においては、本発明のナノチューブブロックコポリマー組成物によって製造された繊維は、優れた機械的性質;優れた化学的、熱的、熱酸化的、及び寸法安定性;超軽量;並びに航空宇宙及び宇宙用乗り物用の高度な複合体の繊維成分としての構造用途に適した類のない電気的/電磁的性質を有する。他の有用性は、電子的及び電気的用途において見い出すことができ、また、保護用身体(個人、車両、構造)装甲における重要な有用性が存在する。上述の性質は、該当技術の状態の有機繊維の例えばザイロン(ZYLON)(ザイロン(登録商標)(Zylon(登録商標))は、トーヨーボーCo.、Ltd.、大阪、日本(Toyobo Co., Ltd., Osaka, Japan)の登録商標である)、ケブラー(KEVLAR)(ケブラー(登録商標)(Kevlar(登録商標))は、E.I.デュポン・ド・ヌムール・アンド・Co.、ウィルミントン、DE(E. I. du Pont de Nemours and Co., Wilmington, DE)の登録商標である)、及びトワロン(TWARON)(トワロン(登録商標)(Twaron(登録商標))は、テイジン・トワロンB.V.Ltd.、アルンヘム、オランダ(Teijin Twaron B.V. Ltd., Arnhem, Netherlands)の登録商標である)、または上述の用途において現在使用されている他の高度な炭素繊維のものより勝ることができる。
【0051】
ニートSWNTsの繊維(無差別の長さを有する)の紡糸またはニートSWNTフィルムのキャスティングの現在の技術は、SWNTsの可能性を十分に実現することに関して限定された成功を有した[Ericson et al., Science, 2004, 304, 1447-1450]。これは部分的には、一般的な有機または鉱酸溶媒中のSWNTsの低い溶解度、及び溶解プロセスの最中または前に容易に形成されるSWNTロープ、すなわち、個別のSWNTの凝集体の扱いにくさが理由となっている。また、複合体SWNT繊維を、無差別の長さのSWNTs(本発明の幾つかの具体例において使用する切断され、短縮されたSWNTsではなく)とPBO及びPPTAを含む他のポリマーとの物理的混合物の溶液から紡糸する現在の技術は、こうしたポリマー中のSWNTsの比較的に低いレベルの分散性が理由となって、限定された成功を有した。
【0052】
本発明は、部分的には、短い(例えば、短縮された)SWNTsと有限の長さの芳香族ポリマーとの共有結合を教示する。より短い長さは、非プロトン性溶媒、鉱酸、及び他の溶媒中のSWNTsの溶解度を改良し、SWNTの凝集体(ロープ)の形成を最小にする。その上、PBZ及びPPTAのような芳香族ポリマーは、このような上記に説明した非プロトン性溶媒及び酸中に容易に可溶であり、ブロックコポリマーの形態で短いSWNTsに共有結合で付着した場合、増大した溶解度(及び処理性)を有する短いSWNTsを与えることができる。従って、より有効な凝固プロセス及び紡糸プロセスの最中の例えばSWNT/芳香族ポリアミドコポリマーの容易な整列を与えるより高い濃度で液晶溶液を用いて、SWNTベースナノチューブブロックコポリマーの紡糸またはキャスティングを実行することができる。また、幾つかの具体例においては、SWNTと共に芳香族ポリアミドを取り入れることは、分子間のより強い相互作用が理由となって、紡糸またはキャスティング溶液の強度(“足”)を改良することができる。これは一般に成形プロセスを改良し、SWNTによって与えられる超高性能特性を有する成形物品を一般に生じることができる。
【0053】
以下の実施例を、本発明の具体例の幾つかをより十分に示すために提供する。下記の実施例において開示する技術は、本発明の実施において十分に機能すると本願発明者らによって発見され、従ってその実施のための模範的な態様を構成するとみなすことができる技術を表すことは、当業者であれば了解されるはずである。しかしながら、当業者であれば、本開示を考慮して、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示され依然として同様なまたは類似の結果を得る具体例に多くの変更を行い得ることは了解されよう。
【実施例】
【0054】
実施例1
理論によって束縛されることを意図するものではないが、この実施例は、ハルピン−ツァイ方程式(Halpin-Tsai equation)に基づいて、補強効率、従って、短いSWNTsを芳香族ポリマーブロックコポリマー材料中に取り入れることの利益を示すのに役立つ。
【数1】

【0055】
式中:
【0056】
=複合体繊維のヤング率
【0057】
=マトリックス(例えば、PPTA)のヤング率
【0058】
=SWNTのヤング率
【0059】
l=SWNTの長さ、d=SWNTの直径
【0060】
α=2*(SWNTのアスペクト比)
【0061】
ν=SWNTの容積分率
【0062】
ν=PPTAの容積分率。
【0063】
SWNTの補強効率は、RE=E/(Eν+Eν)と定義され、(Eν+Eν)は、一軸配向複合体の最終線形複合則モジュラス(ultimate linear rule-of-mixture modulus)を表す。従って、50/50v/v%SWNT/PPTA複合体繊維の場合、アスペクト比32及びE/Eとして10を有するSWNTsの場合、上記の式を使用して、計算されたREは1(または100%の補強効率)である。一方、より柔らかいマトリックス、例えば、E/E=50、を使用する場合、95%の補強効率を実現するために、SWNTsのアスペクト比が少なくとも200であることを必要とすると思われる。これは単に、剛性マトリックスの例えばPPTAを用いて、非常に短いSWNTsは、補強効率のいかなる低下も無しに補強として利用できることを意味する。
実施例2
【0064】
この実施例は、本発明の幾つかの具体例に従う、p−フェニレンベンゾビスオキサゾール15マーの製造を示すのに役立つ。
【0065】
スキーム4(図3)を参照すると、4.4765g(21.01mmol)のジアミノレゾルシノールジヒドロクロライド及び4.0g(19.70mmol)のテレフタロイルクロライドを、33.1529gのポリリン酸(Pとして84.5%)及び0.4331gのP(混合物中の総P含量=84.7重量%)の溶媒混合物に加えて、反応混合物を与えた。反応混合物は脱塩化水素工程を45℃で16時間受け、一方、オリゴマー化工程は95℃で8時間、150℃で16時間、及び190℃で24時間実行された。これは、固有粘度1.96dL/gを有するp−フェニレンベンゾビスオキサゾールオリゴマーを与えた。
実施例3
【0066】
この実施例は、本発明の幾つかの具体例に従う、p−フェニレンベンゾビスオキサゾール45マーの製造を示すのに役立つ。
【0067】
スキーム5(図4)を参照すると、6.5g(30.51mmol)のジアミノレゾルシノールジヒドロクロライド及び6.0593g(29.85mmol)のテレフタロイルクロライドを、48.9945gのポリリン酸(Pとして84.5%)及び0.64gのP(混合物中の総P含量=84.7重量%)の溶媒混合物に加えて、反応混合物を与えた。反応混合物は脱塩化水素工程を45℃で16時間受け、一方、オリゴマー化工程は95℃で8時間、150℃で16時間、及び190℃で24時間実行された。これは、固有粘度7.06dL/gを有するp−フェニレンベンゾビスオキサゾールオリゴマー(45マー)を与えた。
実施例4
【0068】
この実施例は、本発明の幾つかの具体例に従う、発煙硫酸中のスルファニル酸を用いた短いSWNTsの側壁官能基化を示すのに役立つ。このような官能基化は一般に、2005年3月24日に出願された以下の共通に譲渡された国際特許出願:Tour et al., "Functionalization of Carbon Nanotubes in Acidic Media"、出願第PCT/US05/09677号(公開第WO2005113434号)において説明されている。
【0069】
スキーム6(図5)を参照すると、250mg(20.81mmol)の短い(約60nm)SWNTsを、100mLのHSO(発煙、20%遊離SO)、5.7436g(20.81×4mmol)の亜硝酸ナトリウム、及び683mg(20.81×0.2mmol)の2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を含む反応混合物中、14.4163g(20.81×4mmol)のスルファニル酸と反応させた。これは、スキーム6に示すように、水溶性で側壁官能基化された短いSWNTsを与えた。
【0070】
側壁官能基化された短いSWNTsを、UV−vis分光法によってファン・ホーベ特異点が無いと特徴付けた。図6A及び6Bは、上記に説明した官能基化の前(図6A)及び後(図6B)の短いSWNTsの原子間力顕微鏡法(AFM)像である。AFM像は、短いSWNTsは、側壁官能基化によってエクソフォリエート(exofoliate)して、個別のもの及び小さな束になったことを示す。
実施例5
【0071】
この実施例は、本発明の幾つかの具体例に従う、短いSWNTs及びPBO15マーの共重合を示すのに役立つ。
【0072】
スキーム7(図7)を参照すると、p−フェニレンベンゾビスオキサゾール15マーの0.2gのポリリン酸(PPA)溶液(25mgのPBO15マーを含む溶液)を、50mgの短い(約60nm)SWNTs、10gのMSA、10gのPPA(Pとして84.5%)及び0.15gのPを含む懸濁液と合わせた。これを100℃で3日間反応させて、スキーム7に表すようにSWNT/PBO15マーブロックコポリマーを与えた。
実施例6
【0073】
この実施例は、本発明の幾つかの具体例に従う、短い側壁官能基化SWNTs及びPBO15マーの共重合を示すのに役立つ。
【0074】
スキーム8(図8)を参照すると、p−フェニレンベンゾビスオキサゾール15マーの0.4gのPPA溶液(50mgのPBO15マーを含む)を、10gのMSA、10gのPPA及び1.0gのPをさらに含む反応混合物中、36mgの短い(約60nm)ベンゼンスルホン酸官能基化SWNTsと合わせた(例えば、実施例4を参照されたい)。反応混合物を次に100℃で3日間加熱して、スキーム8に表すように短い側壁官能基化SWNT/PBO15マーブロックコポリマーを与えた。
実施例7
【0075】
この実施例は、様々な条件下で製造された一連のSWNT/PBO15マーブロックコポリマーのラマン及び赤外(IR)分光分析並びにAFM分析を示すのに役立つ。
【0076】
表1は、PPA/MSAとPとの混合溶媒中、3日間実行した短いSWNTs及びPBO15マーの共重合によって製造した様々なSWNT/PBO15マーブロックコポリマーを詳述する。
【表1】

a:ベンゼンスルホン酸短いSWNTsの場合のSWNTs重量に基づいて計算した。b:ベンゼンスルホン酸官能基化された短いSWNTsを使用した。
【0077】
図9は、希薄な濃度で合成されたSWNT/PBOコポリマーフィルムのラマンスペクトル(633nm励起)を表し、ここでトレース(a)は、重量比67/33(0.36重量%濃度)での短いSWNTs及びPBO15マーから製造された共重合生成物No.1(表1を参照されたい)を表し;トレース(b)はPBO15マーを表す。これは、SWNTsはSWNT/PBOコポリマー内部に確かに取り入れられることを確認し、というのは、PBOはスペクトルのこの領域において単独で特徴的なラマンバンドを示さないからである。
【0078】
図10は、より高い濃度で製造されたSWNT/PBOコポリマーフィルムのラマンスペクトル(633nm励起)を表し、ここでトレース(a)は、共重合生成物No.4(表1を参照されたい)を表し;トレース(b)は、ベンゼンスルホン酸官能基化された短いSWNTs/PBO15マー(共重合生成物No.5、表1)を表す。共重合された官能基化SWNT/PBOは特徴的な官能基化SWNTラマンバンドを確かに示し、官能基化SWNTsはコポリマー中に取り入れられる、すなわち、これは単にPBO単独ではないことを確認する。
【0079】
図11は、ベンゼンスルホン酸官能基化された短いSWNTs(トレースa)、PBO15マー(トレースb)、及び濃度3.3重量%でのベンゼンスルホン酸官能基化された短いSWNT/PBO15マーの共重合生成物(No.5、表1)の減衰全反射赤外(ATR−IR)スペクトル(attenuated total reflectance-infrared (ATR-IR) spectra)を表す。SWNT/PBOコポリマースペクトルは、独立したSWNT及び独立したPBOスペクトルの合成(ほぼ加算)スペクトルであり、従ってコポリマー中の両方の成分の存在を確認する。
【0080】
図12A〜12Dに示すのは、シリコンウェーハの上にスピン塗布し、100℃で一晩真空乾燥した2mg試料/10ccMSA溶液のAFM像である。図12A(高さ)及び12B(振幅)は、それぞれ高さ及び振幅走査として、重量比49/51での官能基化された短いSWNTs及びPBO15マーの物理的混合物を表す。図12C(高さ)及び12D(振幅)は、それぞれ高さ及び振幅走査として、重量比49/51での官能基化された短いSWNTs及びPBO15マーからの共重合生成物(No.5、表1)を表す。物理的混合物は、ナノスケールレベルで、共重合生成物と明らかに異なる。後者(図12C及び12D)は、共有結合で付けられたオリゴマーが理由となってより厚い外観を有し、これは、SWNTs部分を主に個別のものとしてさらに維持する、すなわち、これは束になってより長い構造になる傾向がない。
実施例8
【0081】
この実施例は、本発明の幾つかの具体例に従う、短いSWNTs及びPBO45マーの共重合を示すのに役立つ。
【0082】
スキーム9(図13)を参照すると、p−フェニレンベンゾビスオキサゾール45マーを合成し、次に短い(約60nm)SWNTsを用いてブロック共重合し、短いSWNTsは、末端表面にカルボン酸(−COOH)基を含んだ。共重合を、250mgの短いSWNTs、PBO45マーの2.0gのPPA溶液(250mgのPBO45マーを含む)、15gのメタンスルホン酸、及び1.5gのPを含む反応混合物中で実行した。共重合を温度150℃で3日間進行させて、スキーム9に表すようにSWNT/PBO45マーブロックコポリマーを与えた。
実施例9
【0083】
この実施例は、本発明の幾つかの具体例に従う、短い側壁官能基化SWNTs及びPBO45マーの共重合を示すのに役立つ。
【0084】
スキーム10(図14)を参照すると、p−フェニレンベンゾビスオキサゾール45マーを合成し、次に短い(約60nm)ベンゼンスルホン酸官能基化SWNTsを用いてブロック共重合し、短いSWNTsは、末端表面にカルボン酸(−COOH)基及び側壁表面にベンゼンスルホン酸基を含んだ。共重合を、356mgの短いベンゼンスルホン酸官能基化SWNTs、PBO45マーの2.0gのPPA溶液(250mgのPBO45マーを含む)、15gのMSA、及び1.5gのPを含む反応混合物中で実行した。共重合を温度150℃で3日間進行させて、スキーム10に表すように側壁官能基化SWNT/PBO45マーブロックコポリマーを与えた。
実施例10
【0085】
この実施例は、様々な条件下で製造された一連のSWNT/PBO45マーブロックコポリマーの場合の、様々な励起波長でのララマン分光分析を示すのに役立つ。
【0086】
表2は、PPA/MSAとPとの混合溶媒中、3日間実行した短いSWNTs及びPBO45マーの共重合によって製造した様々なSWNT/PBO45マーブロックコポリマーを詳述する。
【表2】

a:ベンゼンスルホン酸短いSWNTsの場合のSWNTs重量に基づいて計算した。b:ベンゼンスルホン酸官能基化された短いSWNTsを使用した。
【0087】
コポリマーフィルムの様々な領域を、514nm、633nm及び780nm励起を用いて調べた。図15は、SWNT/PBO45マーコポリマーフィルムのラマン分光分析(633nm励起)を表し、ここでトレース(a)は、PBO45マー及びベンゼンスルホン酸官能基化された短いSWNTsからの共重合生成物(No.7、表2)を表し;トレース(b)は、PBO45マー及び短いSWNTsからの共重合生成物(No.6、表2)を表す。図16は、SWNT/PBO45マーコポリマーフィルムのラマン分光分析(780nm励起)を表し、ここでトレース(a)は、PBO45マー及びベンゼンスルホン酸官能基化された短いSWNTsからの共重合生成物(No.7、表2)を表し;トレース(b)は、PBO45マー及び短いSWNTsからの共重合生成物(No.6、表2)を表す。図17は、SWNT/PBO45マーコポリマーフィルムのラマン分光分析(514nm励起)を表し、ここでトレース(a)は、PBO45マー及びベンゼンスルホン酸官能基化された短いSWNTsからの共重合生成物(No.7、表2)を表し;トレース(b)は、PBO45マー及び短いSWNTsからの共重合生成物(No.6、表2)を表す。
【0088】
図16に関して、トレース(a)及び(b)の両方は、コポリマーは、SWNTsの予想された存在を確かに示すことを示す。しかしながら、トレース(a)は、アリールスルホン酸側壁官能基化が理由となって、予想された、トレース(b)よりも大きなD−バンド対G−バンド比を示し、側壁官能基化は共重合条件を生き残ることをさらに確認する。
【0089】
図17に関して、トレース(a)及びトレース(b)の両方は、コポリマーは、SWNTsの予想された存在を確かに示すことを示す。再度、しかしながら、トレース(a)は、アリールスルホン酸側壁官能基化が理由となって、予想された、トレース(b)よりも大きなD−バンド対G−バンド比を示し、側壁官能基化は共重合条件を生き残ることをさらに確認する。トレース(a)の強度は、官能基化SWNTsにおいて見られる共鳴ラマン強化(resonant raman enhancement)の欠如が理由となって、またこれは、より長いPBO(45マー)セグメントが存在することと比較してさらに希薄なので、低下することに注意されたい。
実施例11
【0090】
この実施例は、本発明の幾つかの具体例に従う、ナノチューブブロックコポリマーの繊維を紡糸するために有用な従来のドライジェット湿式紡糸プロセスを示すのに役立つ。
【0091】
図18を参照すると、このような紡糸プロセスは典型的に、以下の工程と結合した紡糸装置1800を含む:(a)ナノチューブブロックコポリマー溶液を脱気する工程;(b)脱気したコポリマー溶液を、紡糸口金1840を通して押出して、繊維を形成する工程;(c)凝固浴1801中での繊維の凝固工程(アイドルロール1803によって指向される);巻き取りドラム1802による繊維の巻き取り工程;(d)紡糸された繊維を洗浄する工程;(e)紡糸された繊維を乾燥する工程;及び(f)様々な任意の後処理工程。
【0092】
図19A及び19Bは、PBO45マー繊維(図19A)と重量比90/10でのPBO45マー及びベンゼンスルホン酸官能基化された短いSWNTsのコポリマー(No.8、表2)(図19B)とを対比させる走査型電子顕微鏡法像である。
【0093】
上記のまたは他の具体例においては、製造される繊維の性質を向上するかまたは調節するために、図20に表すように、ナノチューブブロックコポリマーをPBOホモポリマー(または他の芳香族ポリマー)とブレンドすることができる。
実施例12
【0094】
この実施例は、短いSWNTs及びポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(PPTA)の共重合を示すのに役立つ。
【0095】
まず、スキーム11(図21)に示すように、両方の末端にアミン基を含むPPTAを合成する。次に、スキーム12(図22)に表すように、このPPTAを次に、NMP、CaCl、及びリン酸トリフェニル/ピリジン(縮合物試薬)を含む反応混合物中で、短いSWNTsと共に共重合する。
【0096】
本明細書において参照する全ての特許及び刊行物を、本明細書と矛盾しない限りは本明細書によって参考文献によって取り入れる。上記に説明した具体例の上記に説明した構造、機能、及び作動の幾つかは本発明を実施する必要は無く、単に模範的な具体例または具体例の完成のために説明に含ませていることは理解されよう。加えて、上記に説明し、参照した特許及び刊行物において述べる特定の構造、機能、及び作動を本発明と共に実施することができるが、これらはその実施に不可欠では無いことは理解されよう。従って、添付の請求の範囲によって定義する本発明の精神及び範囲から実際に逸脱することなく、本発明を特に説明したものとは異なって実施してよいことは理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の幾つかの具体例に従う、単層カーボンナノチューブ(SWNT)/ポリベンゾキサゾール(PBO)コポリマーを表す。
【図2】本発明の幾つかの具体例に従う、SWNT/ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(PPTA)コポリマーを表す。
【図3】スキーム4は、本発明の具体例に従う、p−フェニレンベンゾビスオキサゾール15マー(15マーPBO)の製造を概略で表す。
【図4】スキーム5は、本発明の幾つかの具体例に従う、p−フェニレンベンゾビスオキサゾール45マー(45マーPBO)の製造を概略で表す。
【図5】スキーム6は、本発明の幾つかの具体例に従う、発煙硫酸中のスルファニル酸を用いた短いSWNTsの側壁官能基化を表す。
【図6】図6Aは、スキーム6に表す官能基化を受ける前のSWNTsの原子間力顕微鏡法(AFM)像である。 図6Bは、スキーム6に表す官能基化を受けた後のSWNTsの原子間力顕微鏡法(AFM)像である。
【図7】スキーム7は、本発明の幾つかの具体例に従う、短いSWNTs及びPBO15マーの共重合を概略で表す。
【図8】スキーム8は、本発明の幾つかの具体例に従う、短い官能基化SWNTs及びPBO15マーの共重合を概略で表す。
【図9】希薄な濃度で合成されたSWNT/PBOコポリマーフィルムのラマンスペクトル(633nm励起)を表し、ここでトレース(a)は、重量比67/33(0.36重量%濃度)での短いSWNTs及びPBO15マーからの共重合生成物(No.1、表1)を表し;トレース(b)はPBO15マーを表す。
【図10】より高い濃度で製造されたSWNT/PBOコポリマーフィルムのラマンスペクトル(633nm励起)を表し、ここでトレース(a)は、短いSWNTs/PBO15マーからの共重合生成物(No.4、表1)を表し;トレース(b)は、濃度3.3重量%でのベンゼンスルホン酸官能基化された短いSWNTs/PBO15マー(No.5、表1)を表す。
【図11】様々に製造されたポリマーフィルムの赤外(ATR−IR)スペクトルを表し;ここでトレース(a)はベンゼンスルホン酸官能基化された短いSWNTsを表し;トレース(b)はPBO15マーを表し;トレース(c)は濃度3.3重量%でのベンゼンスルホン酸官能基化された短いSWNTs/PBO15マーの共重合生成物(No.5、表1)を表す。
【図12】シリコンディスクの上にスピン塗布し、100℃で一晩真空乾燥した2mg試料/10ccメタンスルホン酸(MSA)溶液のAFM像である。 図12A(高さ)は、高さ像であり、重量比49/51での官能基化された短いSWNTs及びPBO15マーの物理的混合物を表す。 図12B(振幅)は、振幅像であり、重量比49/51での官能基化された短いSWNTs及びPBO15マーの物理的混合物表す。 図12C(高さ)は、高さ像であり、重量比49/51での官能基化された短いSWNTs及びPBO15マーからの共重合生成物(No.5、表1)を表す。 図12D(振幅)は、振幅像であり、重量比49/51での官能基化された短いSWNTs及びPBO15マーからの共重合生成物(No.5、表1)を表す。
【図13】スキーム9は、本発明の幾つかの具体例に従う、短いSWNTs及びPBO45マーの共重合を概略で表す。
【図14】スキーム10は、本発明の幾つかの具体例に従う、短い、側壁官能基化SWNTs及びPBO45マーの共重合を概略で表す。
【図15】SWNTs/PBOコポリマーフィルムのラマンスペクトル(633nm励起)を表し;ここでトレース(a)は、PBO45マー及びベンゼンスルホン酸官能基化された短いSWNTsからの共重合生成物(No.7、表2)を表し;トレース(b)は、PBO45マー及び短いSWNTsからの共重合生成物(No.6、表2)を表す。
【図16】SWNTs/PBOコポリマーフィルムのラマンスペクトル(780nm励起)を表し;ここでトレース(a)は、PBO45マー及びベンゼンスルホン酸官能基化された短いSWNTsからの共重合生成物(No.7、表2)を表し;トレース(b)は、PBO45マー及び短いSWNTsからの共重合生成物(No.6、表2)を表す。
【図17】SWNTs/PBOコポリマーフィルムのラマンスペクトル(514nm励起)を表し;ここでトレース(a)は、PBO45マー及びベンゼンスルホン酸官能基化された短いSWNTsからの共重合生成物(No.7、表2)を表し;トレース(b)は、PBO45マー及び短いSWNTsからの共重合生成物(No.6、表2)を表す。
【図18】本発明の幾つかの具体例に従う、従来のドライジェット湿式紡糸プロセスを表す。
【図19】図19Aは、PBO45マー繊維の走査型電子顕微鏡法(SEM)像である。 図19Bは、重量比90/10でのPBO45マー及びベンゼンスルホン酸官能基化された短いSWNTsのコポリマー(No.8、表2)繊維の走査型電子顕微鏡法(SEM)像である。
【図20】本発明の幾つかの具体例に従う、SWNTs/PBO繊維の繊維紡糸において有用な高分子量PBO並びに短いSWNTs及びPBOのコポリマーのブレンディングを表す。
【図21】スキーム11は、本発明の幾つかの具体例に従う、両方の末端にアミン基を有するPPTAの合成を概略で表す。
【図22】スキーム12は、本発明の幾つかの具体例に従う、短いSWNTs及びPPTAの共重合を概略で表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)短い単層カーボンナノチューブ(SWNTs)を含む第1のブロック材料と;
b)芳香族ポリアミドポリマーを含む第2のブロック材料と;
を含むブロックコポリマー。
【請求項2】
前記ブロックコポリマーは、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、ランダムブロックコポリマー、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項3】
前記短い単層カーボンナノチューブは、約5nm〜約100nmの範囲にわたる長さを有する、請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項4】
前記短い単層カーボンナノチューブは、約5〜約100の範囲にわたるアスペクト比を有する、請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項5】
前記芳香族ポリアミドポリマーはポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(PPTA)である、請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項6】
前記芳香族ポリアミドポリマーは、約2〜約2000の範囲にわたる多数の繰り返し単位を含む、請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項7】
前記芳香族ポリアミドポリマーは、約5〜約50の範囲にわたる多数の繰り返し単位を含む、請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項8】
前記芳香族ポリアミドポリマーは、約5〜約30の範囲にわたる多数の繰り返し単位を含む、請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項9】
前記ブロックコポリマーは、約1/99SWNT/芳香族ポリアミド(wt/wt%)〜約99/1SWNT/芳香族ポリアミド(wt/wt%)の範囲にわたるSWNT/芳香族ポリアミド組成を有する、請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項10】
a)官能基化された短い単層カーボンナノチューブを含む第1のブロック材料を提供する工程と;
b)末端表面にアミド形成部分を含む芳香族ポリアミドポリマーを含む第2のブロック材料を提供する工程と;
c)前記第1のブロック材料と前記第2のブロック材料とを共重合して、ブロックコポリマー材料を形成する工程と;
を含む方法。
【請求項11】
前記官能基化された短い単層カーボンナノチューブは、カルボン酸基、塩化アシル基、及びこれらの組合せからなる群から選択される化学的部分を用いて官能基化され;該化学的部分は、末端付着、側壁付着、及びこれらの組合せからなる群から選択される仕方で、前記官能基化された短い単層カーボンナノチューブに付着される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
共重合する工程は、反応物のいずれの劣化も無しに両方の前記反応物を溶解させることができる非プロトン性溶媒中で実行される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記短い単層カーボンナノチューブは、約5nm〜約100nmの範囲にわたる長さを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記短い単層カーボンナノチューブは、約5〜約100の範囲にわたるアスペクト比を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
芳香族ポリアミドポリマーを含む前記第2のブロック材料は、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(PPTA)を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
芳香族ポリアミドポリマーを含む前記第2のブロック材料の前記末端表面の前記アミド形成部分は、アミン部分を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のブロック材料と前記第2のブロック材料とが中で共重合される前記非プロトン性溶媒は、NMP、DMAc、DMF、DMSO、DMI、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記ブロックコポリマー材料を紡糸して繊維にする工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記ブロックコポリマー材料をキャスティングしてフィルムにする工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記ブロックコポリマー材料を成形して特定の形状にする工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
請求項1に記載のブロックコポリマーを含む繊維。
【請求項22】
請求項1に記載のブロックコポリマーを含むフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図6】
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【図12】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−217669(P2007−217669A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−5135(P2007−5135)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(501105635)ウィリアム・マーシュ・ライス・ユニバーシティ (26)
【Fターム(参考)】