説明

荷電粒子ビーム描画装置

【目的】オーバーレイエラーを低減させる描画方法および描画装置を提供することを目的とする。
【構成】本発明の一態様の描画方法は、隣り合うマスク基板10,20の対応する各位置が同一のストライプ30内に入るように、マスク基板10,20の領域を含む領域を短冊状の複数のストライプ30に仮想分割する工程と、ストライプ30毎に、マスク基板10に対し第1のパターンを、マスク基板20に対し第1のパターンを相補する第2のパターンを描画する工程と、を備えたことを特徴とする。本発明によれば、オーバーレイエラーを低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画方法及び荷電粒子ビーム描画装置に係り、特に、二重パターニング(ダブルパターニング:Double Patterning)或いは二重露光(ダブル露光:Double Exposure)に用いる相補パターンを描画する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。これらの半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、高精度の原画パターン(レチクル或いはマスクともいう。)が必要となる。
【0003】
ここで、回路線幅の微細化に伴って、より波長の短い露光光源が求められるが、露光光源となる例えばArFレーザーの延命手法として、近年、二重露光技術と二重パターニング技術が注目されている。二重露光は、レジストが塗布されたウェハに2枚のマスクを取り替えながら同一領域に続けて露光する手法である。そして、その後に現像、及びエッチング工程等を経て所望するパターンをウェハ上に形成する。他方、二重パターニングは、レジストが塗布されたウェハに第1のマスクで露光し、現像、及びエッチング工程等を経てから再度レジストを塗布して第2のマスクでウェハの同一領域に露光する手法である。これらの技術は、現在の技術の延長で行なうことができる点でメリットがある。そして、これらの技術では、ウェハ上で所望するパターンを得るために2枚のマスクが必要になる。
【0004】
図9は、従来の二重パターニング用マスクを説明するための概念図である。
図9に示すように、所望するパターン302をウェハへ露光するためには、フォトマスク300では、解像度が得られないために、2つのマスクに分ける必要があった。すなわち、フォトマスク310にパターン302の一部となるパターン312を形成し、フォトマスク320にパターン302の残りの一部となるパターン314を形成していた。そして、ステッパやスキャナ等の露光装置にこれら2つのフォトマスク310,320を順にセットして、それぞれ露光していた。
【0005】
また、これらのフォトマスクは、電子線(電子ビーム)描画装置によって製造される。電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、これらの高精度の原画パターンの生産に用いられる。
図10は、可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。
可変成形型電子線(EB:Electron beam)描画装置は、以下のように動作する。まず、第1のアパーチャ410には、電子線330を成形するための矩形例えば長方形の開口411が形成されている。また、第2のアパーチャ420には、開口411を通過した電子線330を所望の矩形形状に成形するための可変成形開口421が形成されている。荷電粒子ソース430から照射され、開口411を通過した電子線330は、偏向器により偏向される。そして、可変成形開口421の一部を通過して、ステージ上に搭載された試料に照射される。ステージは、描画中、所定の一方向(例えば、X方向とする)に連続的に移動している。このように、開口411と可変成形開口421との両方を通過できる矩形形状が、試料340の描画領域に描画される。開口411と可変成形開口421との両方を通過させ、任意形状を作成する方式を可変成形方式という。
【0006】
以上のように電子ビーム描画装置によって、二重露光用の複数のフォトマスクや二重パターニング露光用の複数のフォトマスクが製造される。ここで、電子ビーム描画装置で描画する場合、経時変化として電子ビームのビームドリフトが生じる。そのために、相補関係にあるマスクパターンの描画位置に誤差を生じさせてしまうといった問題があった。
【0007】
また、上述したように、二重露光や二重パターニング露光では、露光する際に2枚のマスクを交換する必要がある。そのために、露光装置にセットする際の位置合わせが重要となってくる。位置がずれるとパターンの重ね合わせ誤差(オーバーレイのエラー)を生じる。この誤差がパターンの線幅寸法(CD)に直接影響を与えてしまうといった問題があった。
【0008】
ここで、二重露光技術や二重パターニングと異なりパターンを重ね合わさないマルチ露光用に、x方向のパターンとy方向のパターンを1つのマスク上に形成するといった技術が文献に開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−72423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、電子ビームのビームドリフトのために、マスク製造段階で、相補関係にあるマスクパターンの描画位置に誤差を生じさせてしまうといった問題があった。そのために、そのマスクを使った露光の際にオーバーレイのエラーが生じ、CD誤差を生むといった問題があった。また、2枚のマスクを交換する際の位置合わせ誤差によってもオーバーレイのエラーが生じ、CD誤差を生むといった問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、かかる問題点を克服し、オーバーレイエラーを低減させる描画方法および描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、
第1と第2のマスク基板を並べて載置するステージと、
荷電粒子ビームを用いて、第1のマスク基板に対し第1のパターンを、第2のマスク基板に対し第1のパターンを相補する第2のパターンを描画する描画部と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
かかる構成により、まず、ステージ上に第1と第2のマスク基板を並べて載置する。そして、並べた状態で第1のマスク基板に対し第1のパターンを、第2のマスク基板に対し第1のパターンを相補する第2のパターンを描画する。第1と第2のマスク基板を並べて載置することで、上述したような各描画方法を適用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ビームドリフトの経時変化も少ない状態で双方を描画することができる。よって、オーバーレイエラーを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
【図2】実施の形態1における二重パターニング用フォトマスクの一例を説明するための概念図である。
【図3】実施の形態1における二重パターニング用フォトマスクの描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【図4】実施の形態1におけるステージ上に配置されたマスク基板の上方から見た状態を示す概念図である。
【図5】実施の形態2におけるステージ上に配置されたマスク基板の上方から見た状態を示す概念図である。
【図6】実施の形態3におけるステージ上に配置されたマスク基板の上方から見た状態を示す概念図である。
【図7】実施の形態4におけるステージ上に配置されたマスク基板の上方から見た状態を示す概念図である。
【図8】マスク基板を回転させて向きを変えてから描画する手法を説明するための概念図である。
【図9】従来の二重パターニング用マスクを説明するための概念図である。
【図10】従来の可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の他の荷電粒子を用いたビームでも構わない。
【0017】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、電子鏡筒102と描画室103と制御部160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例となる。そして、描画装置100は、2枚のマスク基板10,20或いは1枚のマスク基板12に所望する複数の相補パターンを描画する。制御部160は、制御回路110、データ処理回路120、及び磁気ディスク装置124,126を備えている。電子鏡筒102は、描画部の一例となる。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、及び偏向器208が配置されている。また、描画室103内には、移動可能に配置されたXYステージ105が配置されている。また、XYステージ105上には、2枚のマスク基板10,20或いは1枚のマスク基板12が配置されている。2枚のマスク基板10,20或いは1枚のマスク基板12として、二重露光や二重パターニング露光用のフォトマスク基板が含まれる。これらのマスク基板は、例えば、まだ何もパターンが形成されていないマスクブランクスが含まれる。ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成部分について記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれても構わないことは言うまでもない。
【0018】
磁気ディスク装置124には、描画データが格納されている。そして、データ処理回路120は、磁気ディスク装置124から描画データを読み出し、装置内部フォーマットのショットデータに変換処理を行なう。そして、ショットデータは、磁気ディスク装置126に格納される。そして、このショットデータに基づいて、制御回路110が電子鏡筒102内や描画室103内の各機器を制御する。以下、電子鏡筒102内や描画室103内の動作について説明する。
【0019】
照射部の一例となる電子銃201から出た電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形例えば長方形の穴を持つ第1のアパーチャ203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形例えば長方形に成形する。そして、第1のアパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2のアパーチャ206上に投影される。かかる第2のアパーチャ206上での第1のアパーチャ像の位置は、偏向器205によって偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させることができる。その結果、電子ビーム200は成形される。そして、第2のアパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、偏向器208により偏向される。その結果、XYステージ105上の2枚のマスク基板10,20の所望する位置或いは1枚のマスク基板12の所望する位置に照射される。XYステージ105の動作は、連続移動、或いはステップアンドリピート移動を行なう。すなわち、描画装置100は、XYステージ105が連続移動しながら描画する。或いは、描画装置100は、XYステージ105がステップアンドリピート移動しながら停止中に描画する。
【0020】
ここで、ウェハ等の基板には、二重露光や二重パターニング露光用のフォトマスクを用いた露光装置で相補パターンを露光(転写)することになる。また、露光装置としては、スキャナ装置であっても良いし、ステッパ装置であってもよい。そして、露光装置の露光エリアとして、スキャナ装置では例えば20mm×30mm角以上が規定されている。しかし、実際のデバイスでは、1つのチップがこの露光エリア全体を占めることは稀である。そのため、1つのマスクに複数個の同一チップを形成することができる。
【0021】
図2は、実施の形態1における二重パターニング用フォトマスクの一例を説明するための概念図である。
複数個の同一チップが形成されるとすると、図2に示すように、フォトマスク基板50には、チップAで示す所望する例えば4つのパターン52が形成されることになる。しかし、露光装置で使用するArFレーザー等の光を使用する場合、そのままでは解像度が限界を超えてしまう。そのため、マスクBとなるマスク基板10とマスクCとなるマスク基板20とに分けることになる。そして、マスク基板10には、チップBで示す所望する4つのパターン22が形成される。そして、マスク基板20には、4つのパターン22をそれぞれ相補するチップCで示す所望する4つのパターン24が形成される。このように複数のチップを1枚のマスクに持たせることで生産性を向上させることができる。二重露光用フォトマスクについても同様である。
【0022】
図3は、実施の形態1における二重パターニング用フォトマスクの描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
S(ステップ)102において、マスクセット工程として、描画対象となる複数のマスク基板10,20をXYステージ105上に配置する。
【0023】
図4は、実施の形態1におけるステージ上に配置されたマスク基板の上方から見た状態を示す概念図である。
図4では、XYステージ105上に2つのマスク基板10,20が並べて載置されている状態を示している。描画装置100の描画方向がx方向である場合には、各パターンの相補される部分のy方向の座標を合わせてx方向に並べて載置されると好適である。
【0024】
S104において、ストライプ分割工程として、データ処理回路120は、隣り合うマスク基板10,20の対応する各位置が同一のストライプ30(小領域)内に入るように、マスク基板10,20の描画領域を含む領域を短冊状の複数のストライプ30に仮想分割する。図4では、そのうちの1つのストライプ30について示している。ストライプ30は、偏向器208の偏向可能な幅で分割される。
【0025】
S106において、描画工程として、電子鏡筒102内の各機器が、ストライプ30毎に、電子ビーム200を用いて、マスク基板10に対しパターン22を、マスク基板20に対しパターン22を相補するパターン24を描画する。XYステージ105を−x方向に連続移動しながら偏向器208で電子ビーム200をストライプ30内の所望する位置に偏向していくことでパターンを描画する。XYステージ105が−x方向に連続移動することにより相対的にx方向に描画されることになる。従って、マスク基板10のストライプ30内のパターンが描画された後、続けてマスク基板20のストライプ30内のパターンが描画されることになる。よって、マスク基板10,20の対応する両位置が描画されるまでの時間の間隔が短くなる。すなわち、マスク基板10をすべて描画してからマスク基板20を描画する場合に比べて相補されるパターン同士の描画時刻が近くなる。そのため、ビームドリフトの経時変化が少ない状態で双方を描画することができる。よって、位置精度の高い相補する2つのフォトマスクを製造することができる。その結果、その相補する2つのフォトマスクを使って露光されたウェハ等ではオーバーレイエラーを低減することができる。言い換えれば、マスク基板10,20をXYステージ105上に並べて載置することで、上述したような描画方法を適用することができる。
【0026】
実施の形態2.
実施の形態1では、図4において2つのマスク基板10,20をXYステージ105上に並べる構成について説明したが、実施の形態2では、さらに、オーバーレイエラーを低減することができるフォトマスクの描画方法について説明する。上述したように、2つのマスク基板10,20に相補パターンを分けて描画すると、露光装置でマスク交換が必要となる。そのため、描画位置精度を高めたとしても、両マスクを交換する際の位置ずれを回避することは困難である点に変わりは無い。そのため、重ね合わせ誤差が残ってしまう。そこで、以下のように二重パターニング用フォトマスクを製造する。なお、装置構成については、図1と同様である。そして、描画方法の各要部工程については、図3と同様である。
【0027】
S102において、マスクセット工程として、描画対象となる1つのマスク基板12をXYステージ105上に配置する。
図5は、実施の形態2におけるステージ上に配置されたマスク基板の上方から見た状態を示す概念図である。
図5に示すように、1枚のマスク基板12上に、チップB,Cで示す相補する2つのパターン22,24の両方を形成する。1つのマスク基板12に相補する2つのパターン22,24の両方を形成することで、露光装置でのマスク交換による位置ずれを回避することができる。描画装置100の描画方向がx方向である場合には、2つのパターン22,24が各パターンの相補される部分のy方向の座標を合わせてx方向に並べて載置されると好適である。
【0028】
ここで、上述したように、1つのチップがこの露光エリア全体を占めることは稀である。そのため、図5に示すように、相補する2つのマスクパターン22,24を並べて配置することができると共に、例えば、複数個ずつ配置することができる。図5では、マスクパターン22,24を2つずつ配置した例を示している。このように複数のチップを1枚のマスクに持たせることで従来の位置ずれを回避しながらさらに生産性を向上させることができる。
【0029】
S104において、ストライプ分割工程として、データ処理回路120は、隣り合うチップB,Cのパターン22,24の対応する各位置が同一のストライプ32(小領域)内に入るように、パターン22,24を描画する領域を含む領域を短冊状の複数のストライプ32に仮想分割する。図5では、そのうちの1つのストライプ32について示している。ストライプ32は、偏向器208の偏向可能な幅で分割される。
【0030】
S106において、描画工程として、電子鏡筒102内の各機器が、ストライプ32毎に、電子ビーム200を用いて、マスク基板12に対しチップBの領域にパターン22を、チップCの領域に対しパターン22を相補するパターン24を描画する。XYステージ105を−x方向に連続移動しながら偏向器208で電子ビーム200をストライプ30内の所望する位置に偏向していくことでパターンを描画する。XYステージ105が−x方向に連続移動することにより相対的にx方向に描画されることになる。従って、チップBの領域のストライプ32内のパターンが描画された後、続けてチップCの領域のストライプ30内のパターンが描画されることになる。よって、チップB,Cの対応する両位置が描画されるまでの時間の間隔が短くなる。すなわち、チップBの領域をすべて描画してからチップCの領域を描画する場合に比べて相補されるパターン同士の描画時刻が近くなる。そのため、ビームドリフトの経時変化が少ない状態で双方を描画することができる。よって、位置精度の高い相補する2つのチップB,Cを製造することができる。その結果、その相補する2つのチップB,Cが形成された1つフォトマスクを使って露光されたウェハ等ではオーバーレイエラーを低減することができる。
【0031】
実施の形態3.
実施の形態1では、図4において説明したように、XYステージが連続移動する連続描画の場合について説明したが、実施の形態3では、ステップアンドリピート移動で描画する二重パターニング用フォトマスクの描画方法について説明する。なお、装置構成については、図1と同様である。そして、描画方法の各要部工程については、ストライプをフィールドと読み替える点以外は図3と同様である。
【0032】
S(ステップ)102において、マスクセット工程として、描画対象となる複数のマスク基板10,20をXYステージ105上に配置する。
【0033】
図6は、実施の形態3におけるステージ上に配置されたマスク基板の上方から見た状態を示す概念図である。
図6では、実施の形態1と同様、XYステージ105上に2つのマスク基板10,20が並べて載置されている状態を示している。描画装置100の描画方向がx方向である場合には、各パターンの相補される部分のy方向の座標を合わせてx方向に並べて載置されると好適である。
【0034】
S104において、フィールド分割工程として、データ処理回路120は、隣り合うマスク基板10,20の描画領域をそれぞれ複数のフィールド34(小領域)に仮想分割する。各フィールド34は、偏向器208の偏向可能な縦横幅で正方形或いは長方形に分割される。図6では、そのうちのy方向に移動させないで済ますことができる一連の複数のフィールド34について示している。
【0035】
S106において、描画工程として、電子鏡筒102内の各機器が、電子ビーム200を用いて、マスク基板10に対しパターン22を、マスク基板20に対しパターン22を相補するパターン24を、マスク基板10,20の描画領域の対応する2つのフィールド34が連続するように描画する。XYステージ105を±x方向にステップ移動させ、停止した位置で偏向器208により電子ビーム200をフィールド34内の所望する位置に偏向することでパターンを描画する。ここでは、まず、マスク基板10内の”1”で示すフィールド34を描画すると、次に、マスク基板20内の”2”で示す相補するフィールド34を描画する。そして、マスク基板10には戻らずに、隣のマスク基板20内の”3”で示すフィールド34を描画する。次に、マスク基板10に戻って、マスク基板10内の”4”で示す相補するフィールド34を描画する。そして、隣のマスク基板10内の”5”で示す相補するフィールド34を描画する。次に、マスク基板20内の”6”で示す相補するフィールド34を描画する。このように、相補関係になる対応する2つのフィールド34が続けて描画されるようにステップ位置を設定する。すなわち、マスク基板10内のフィールドをすべて描画してからマスク基板20内のフィールドを描画する場合に比べて対応する2つのフィールドの描画時刻が近くなる。そのため、ビームドリフトの経時変化も少ない状態で双方を描画することができる。よって、位置精度の高い相補する2つのフォトマスクを製造することができる。その結果、その相補する2つのフォトマスクを使って露光されたウェハ等ではオーバーレイエラーを低減することができる。言い換えれば、マスク基板10,20をXYステージ105上に並べて載置することで、上述したような描画方法を適用することができる。
【0036】
実施の形態4.
実施の形態2では、図5において説明したように、XYステージが連続移動する連続描画の場合について説明したが、実施の形態4では、実施の形態3と同様、ステップアンドリピート移動で描画する二重パターニング用フォトマスクの描画方法について説明する。なお、装置構成については、図1と同様である。そして、描画方法の各要部工程については、ストライプをフィールドと読み替える点以外は図3と同様である。
【0037】
S(ステップ)102において、マスクセット工程として、描画対象となる1つのマスク基板12をXYステージ105上に配置する。
【0038】
図7は、実施の形態4におけるステージ上に配置されたマスク基板の上方から見た状態を示す概念図である。
図7では、実施の形態2と同様、XYステージ105上に1つのマスク基板12を載置する。そして、この1枚のマスク基板12上に、チップB,Cで示す相補する2つのパターン22,24の両方を形成する。1つのマスク基板12に相補する2つのパターン22,24の両方を形成することで、露光装置でのマスク交換による位置ずれを回避することができる。描画装置100の描画方向がx方向である場合には、2つのパターン22,24が各パターンの相補される部分のy方向の座標を合わせてx方向に並べて載置されると好適である点は、実施の形態2と同様である。
【0039】
S104において、フィールド分割工程として、データ処理回路120は、隣り合うチップB,Cの描画領域をそれぞれ複数のフィールド34(小領域)に仮想分割する。各フィールド34は、偏向器208の偏向可能な縦横幅で正方形或いは長方形に分割される。図7では、そのうちのy方向に移動させないで済ますことができる一連の複数のフィールド34について示している。
【0040】
S106において、描画工程として、電子鏡筒102内の各機器が、電子ビーム200を用いて、チップBの領域に対しパターン22を、チップCの領域に対しパターン22を相補するパターン24を、チップB,Cの描画領域の対応する2つのフィールド34が連続するように描画する。XYステージ105を±x方向にステップ移動させ、停止した位置で偏向器208により電子ビーム200をフィールド34内の所望する位置に偏向することでパターンを描画する。ここでは、まず、チップBの領域内の”1”で示すフィールド34を描画すると、次に、チップCの領域内の”2”で示す相補するフィールド34を描画する。そして、チップBの領域には戻らずに、隣のチップCの領域内の”3”で示すフィールド34を描画する。次に、チップBの領域に戻って、チップBの領域内の”4”で示す相補するフィールド34を描画する。そして、隣のチップBの領域内の”5”で示す相補するフィールド34を描画する。次に、チップCの領域内の”6”で示す相補するフィールド34を描画する。このように、相補関係になる対応する2つのフィールド34が続けて描画されるようにステップ位置を設定する。すなわち、チップBの領域内のフィールドをすべて描画してからチップCの領域内のフィールドを描画する場合に比べて対応する2つのフィールドの描画時刻が近くなる。そのため、ビームドリフトの経時変化も少ない状態で双方を描画することができる。よって、位置精度の高い相補する2つのフォトマスクを製造することができる。その結果、その相補する2つのフォトマスクを使って露光されたウェハ等ではオーバーレイエラーを低減することができる。
【0041】
上述した実施の形態2,4について、描画装置100がx方向に描画するのに対し、スキャナ装置がy方向にスキャンする場合、以下のように描画すると好適である。
【0042】
図8は、マスク基板を回転させて向きを変えてから描画する手法を説明するための概念図である。
スキャナ装置で露光(転写)する場合には、相補する2つのパターン22,24がスキャナ装置のスキャン方向Sに沿って並んで形成されると好適である。例えば、図8(a)に示すように、y方向に向かってスキャンする場合には、パターン22,24をy方向に並べて形成する。そして、スキャン方向と直交するx方向の位置を合わせておく。このように配置することで、スキャン中にx方向の移動を回避することができる。しかし、このままの位置関係で描画したのでは、描画装置100内でパターン22,24を1つのストライプ或いは一連のフィールドに分割できない。そこで、図8(b)に示すように、マスク基板12を90°回転させることで、相補する2つのパターン22,24を描画するためのチップB,Cの領域を描画方向であるx方向に並べることができる。回転方向は、±90°どちらの方向でも構わない。
【0043】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。上述した各手法は、複数の相補パターンを重ねて露光する二重露光用フォトマスクについても同様に成り立つ。
【0044】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0045】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての露光方法及び露光用フォトマスクは、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0046】
10,12,20,50 マスク基板
22,24,52,302,312,314 パターン
30,32 ストライプ
34 フィールド
100 描画装置
340 試料
102 電子鏡筒
103 描画室
105 XYステージ
110 制御回路
120 データ処理回路
124,126 磁気ディスク装置
160 制御部
200 電子ビーム
201 電子銃
202 照明レンズ
203,410 第1のアパーチャ
206,420 第2のアパーチャ
204 投影レンズ
205,208 偏向器
207 対物レンズ
300,310,320 フォトマスク
330 電子線
411 開口
421 可変成形開口
430 荷電粒子ソース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1と第2のマスク基板を並べて載置するステージと、
荷電粒子ビームを用いて、前記第1のマスク基板に対し第1のパターンを、前記第2のマスク基板に対し前記第1のパターンを相補する第2のパターンを描画する描画部と、
を備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−147010(P2012−147010A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−74953(P2012−74953)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【分割の表示】特願2007−140404(P2007−140404)の分割
【原出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】