説明

荷電粒子照射装置、これを用いた周波数調整装置及び荷電粒子制御方法

【課題】オフされているグリッドからのビームの漏洩を抑制し、更にニュートラライザが良好な中和効果を有する荷電粒子照射装置、これを用いた周波数調整装置及び荷電粒子制御方法を提供する。
【解決手段】イオンガン11は、ガス導入部114よりArガスを本体111内に導入し、フィラメント113とアノード112との間で直流熱陰極放電をおこし、Arのプラズマを生成する。次に、2つ分割された構成を有する、分割加速グリッド116a、116bに、イオンを射出する方向に電圧勾配を与えて、イオンを射出させる。イオンビームをオフする側の分割加速グリッドに正電圧を印加し、更に減速グリッド117に負電圧を印加する。これにより、停止している側のグリッドからのイオンビームの漏洩を抑制し、更にニュートラライザの中和効果を良好とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン等の荷電粒子を照射する荷電粒子照射装置、これを用いた周波数調整装置及び荷電粒子制御方法に関し、特に、複数の荷電粒子ビームを独立して制御可能な荷電粒子照射装置、これを用いた周波数調整装置及び荷電粒子制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な圧電素子である水晶振動子の共振周波数は、水晶片の厚みとその表面に形成された金属電極の膜厚によって決定される。従来においては、水晶振動子の所望の共振周波数を得るために、i)水晶片を規定の厚みで切り出し、ii)表面を研磨し、その表面にスパッタ蒸着等によってベースとなる金属膜電極を形成し、iii)共振周波数を測定しながら、金属電極膜の厚みを調整する、といった処理を行っている。金属電極膜の厚みを調整する方法として、イオンガンからイオンビームを照射して、金属電極膜をエッチングして薄くする方法が知られている。
【0003】
また、近年、装置の省スペース化、処理時間の短縮をねらいとして、例えば特許文献1に示すように1つのイオンガンから複数のイオンビームを複数の圧電素子に照射することにより、一度に複数の水晶振動子を処理することが行われている。
【0004】
周波数調整装置に用いられる荷電粒子照射装置は、ガス導入部から、放電用ガスとして例えばArガスを本体内に導入し、フィラメントを通電加熱し、フィラメントとアノードとの間の直流熱陰極放電によってArプラズマを生成し、高圧電源によって加速グリッドに高電圧を印加することによって、イオンを加速する向きに電位勾配を生成し、Arの正イオンを引き出しイオンビームとして出射し、載置台に載置された水晶振動子に照射する。
【0005】
なお、特許文献1に開示された荷電粒子照射装置では、複数のイオンビームを生成するため、複数のビーム孔群が形成された遮蔽グリッドと分割された加速グリッドと減速グリッドとが配置される。また、この荷電粒子照射装置では、減速グリッドをアースに接続し、更にオン側の分割加速グリッドをマイナスにし、オフ側の分割加速グリッドをフローティングとすることによって、イオンビームのオン・オフの制御を行っている。
【特許文献1】特開2007−250523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の荷電粒子照射装置では、被処理体への荷電のチャージを防止するためのニュートラライザが設けられている。このニュートラライザによって電子を供給することにより、イオンビームの中和を図ることが可能である。
【0007】
しかし、上述したように一方の分割加速グリッドをオフしフローティング状態とすると、ニュートラライザのエミッション電流値によっては、ニュートラライザから供給された電子が分割加速グリッドの電荷を中和してしまい、イオンビームの漏洩が生ずる場合があった。また、ニュートラライザによって供給される電子が分割加速グリッドに流れると、イオンビームの中和効果が低下する問題がある。
【0008】
なお、同様の問題は、水晶振動子の金属電極をイオンビームにより研磨する場合に限らず、複数の荷電粒子ビームを用いて、処理対象物を加工する場合に共通に発生する。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、複数の荷電粒子ビームを独立して制御する際に、オフされているグリッドからの漏洩を抑制することが可能な荷電粒子照射装置、これを用いた周波数調整装置及び荷電粒子制御方法を提供することを目的とする。
また、本発明はニュートラライザが良好な中和効果を有する荷電粒子照射装置、これを用いた周波数調整装置及び荷電粒子制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る荷電粒子照射装置は、
荷電粒子を照射する荷電粒子照射装置であって、
荷電粒子を生成する荷電粒子生成手段と、
前記荷電粒子生成手段で生成された荷電粒子を引き出して荷電粒子ビームを出力する複数に分割された分割グリッドを有する加速グリッドと、
前記複数に分割された該加速グリッドの電位を個々に制御する制御手段と、を備え、
前記荷電粒子ビームを遮断する際、前記荷電粒子ビームを遮断する前記分割グリッドは、前記荷電粒子照射装置が配置される真空槽の電位より高い第1の電位とされることを特徴とする。
【0011】
前記荷電粒子生成手段と前記加速グリッドとの間に遮蔽グリッドを備え、
前記第1の電位は、前記遮蔽グリッドの電位と同じ、又はこれより高くてもよい。
【0012】
前記第1の電位を付与する第1の電源を備えてもよい。
【0013】
前記加速グリッドの前記荷電粒子ビーム出力側に減速グリッドを備え、
前記減速グリッドは、前記真空槽の電位より低い第2の電位とされてもよい。
【0014】
前記加速グリッドの前記荷電粒子ビーム出力側に減速グリッドを備え、
前記減速グリッドの外側に設置されたリフレクタを備えてもよい。
【0015】
前記リフレクタは、前記真空槽の電位より低い第2の電位とされてもよい。
【0016】
前記荷電粒子ビームの電荷を中和するニュートラライザを更に備え、
前記第2の電位は、前記ニュートラライザの負極側と同じ、又はこれより低くてもよい。
【0017】
前記第2の電位を付与する第2の電源を備えてもよい。
【0018】
前記荷電粒子ビームの電荷を中和するニュートラライザを更に備えてもよい。
【0019】
前記制御手段は、各前記分割グリッドと前記第1の電源との間に個々に設置されたスイッチ回路と、前記スイッチ回路を個別にオン・オフする手段とを備えてもよい。
【0020】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る周波数調整装置は、
上記第1の観点に係る荷電粒子照射装置から構成されるイオンガンと、
圧電デバイスを複数個配置する配置手段と、
前記配置手段により配置された複数の圧電デバイスの共振周波数を判別する共振周波数判別手段と、
を備え、
前記共振周波数判別手段により、前記配置手段により配置された複数の該圧電デバイスの共振周波数をモニタしながら、並行して該複数の該圧電デバイスにイオンビームを照射して各圧電デバイスの少なくとも一部をエッチングすることにより複数の該圧電デバイスの共振周波数を調整する、ことを特徴とする。
【0021】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る荷電粒子制御方法は、
真空槽内部に配置された所定の容器に荷電粒子生成手段によって荷電粒子を生成し、
前記荷電粒子生成手段で生成された荷電粒子を引き出して荷電粒子ビームを出力する複数に分割された分割グリッドを有する加速グリッドを配置し、
各加速グリッドに、電圧を印加して荷電粒子を引き出す方向に電圧勾配を形成して、前記プラズマ中の荷電粒子を荷電粒子ビームとして射出させ、
前記複数に分割された該加速グリッドの電位を個々に制御し、
前記加速グリッドを前記真空槽の電位より高い第1の電位とすることによって、前記荷電粒子ビームの射出を遮蔽する、ことを特徴とする。
【0022】
前記荷電粒子生成手段と前記加速グリッドとの間に遮蔽グリッドを備え、
前記第1の電位は、前記遮蔽グリッドの電位と同じ、又はこれより高くしてもよい。
【0023】
前記加速グリッドの外側に減速グリッドを配置し、
前記減速グリッドを前記真空槽の電位より低い第2の電位としてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、分割された各加速グリッドの電位を制御することにより、照射を停止しているグリッドからの漏洩を抑制し、更にニュートラライザが良好な中和効果を有する荷電粒子照射装置、これを用いた周波数調整装置及び荷電粒子制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の各実施の形態に係る荷電粒子照射装置を、水晶振動子の金属電極をエッチングすることにより共振周波数を調整する周波数調整装置に適用した場合を例に説明する。
【0026】
(第1の実施の形態)
本実施の形態に係る周波数調整装置の構成例を図1に示す。また、図2に、図1に示す周波数調整装置の分解斜視図を示す。周波数調整装置は、イオンガン11と、加工対象の水晶振動子を載置する載置部12と、水晶振動子の共振周波数を検出する共振周波数測定部13と、制御部14と、シャッター15と、から構成される。
【0027】
イオンガン11は、2つのイオンビームIaとIbとを生成する装置であり、本体(チャンバ)111と、アノード(電極)112と、フィラメント113と、ガス導入部114と、遮蔽グリッド115と、加速グリッド116(分割加速グリッド116a,116b)と、減速グリッド117と、ニュートラライザ125と、フィラメント電源131と、放電電源132と、ビーム電源133と、加速電源134と、加速グリッド制御スイッチ141a,141bと、加速グリッドオフ用スイッチ142と、加速グリッドオン用スイッチ143と、減速グリッド制御スイッチ144と、ビーム電源スイッチ145と、を備える。
【0028】
図1に示す載置部12は、加工対象の2つの水晶振動子201aと201bとを一定距離離間して配置する。
共振周波数測定部13は、載置部12に載置された水晶振動子201aと201bに接続され、その共振周波数を測定する。
【0029】
制御部14は、マイクロプロセッサまたはシーケンサー等から構成され、各部の動作を制御する。特に本実施の形態においては、共振周波数測定部13からの検出結果に従って、加速グリッド制御スイッチ141aと141bを制御する。また、シャッター15を開閉制御する。制御部14を共振周波数測定部13に組み込む構成とすることも可能である。
【0030】
シャッター15は、水晶振動子201aの前に配置されたシャッター15aと、水晶振動子201bの前に配置されたシャッター15bとを備え、それぞれ、イオンビームIaとIbを遮蔽する。
【0031】
なお、図1及び図2に示す各部は、真空槽内に配置されている。
【0032】
本体111は、表面がコートされた円筒状の金属筐体などから構成され、処理空間を定義する。本体111はフィラメント電源131の負極と同電位に維持されている。
アノード112は、本体111の側壁に近接して円筒帯状に配置され、直流放電の陽極として機能する。
フィラメント113は、直流放電の熱陰極を構成する。
ガス導入部114は、Ar等の放電ガスを本体111内に導入する。
【0033】
フィラメント電源131は、直流電源から構成され、フィラメント113に通電してこれを加熱する。
放電電源132は、アノード112と、本体111及びフィラメント電源131との間に放電用の直流電圧を印加する。
【0034】
ビーム電源133は、イオンビーム照射時に、本体111内のプラズマの電圧を高める。また、ビーム電源133の正極側には、加速グリッドオフ用スイッチ142が接続されており、更に加速グリッド制御スイッチ141a,141bと、が接続される。この加速グリッドオフ用スイッチ142をオンし、更にイオンビームをオフするグリッドの、加速グリッド制御スイッチ141a又は/及び141bを加速グリッドオフ用スイッチ142に接続することによって、分割加速グリッド116a又は/及び116bに正電圧を印加する。
【0035】
加速電源134は、分割加速グリッド116a,116bと、減速グリッド117と、に負電圧を印加する。また、加速電源134の負極側は、加速グリッド制御スイッチ141a,141bに接続されており、この加速グリッド制御スイッチ141a,141bを適宜接続することにより、イオンビームをオンする側の分割加速グリッド116a,116bに負電圧を印加することができる。また、加速電源134の負極側は、減速グリッド制御スイッチ144に接続されており、このスイッチによって減速グリッド117に加速電源の負電圧が印加される。
【0036】
ニュートラライザ125は、イオンビームIaとIbに電子を供給しイオンの持つ電荷の中和を行い、圧電デバイスへの電荷のチャージを防ぐ。
【0037】
遮蔽グリッド115は、本体111のイオン射出面に配置され、ビーム孔(ビーム引き出し孔)部分を除いてイオンをチャンバ内に封じ込める。イオンガン11は、2ビームを出力するものであり、そのグリッドパターンは、図3(a)に示すような、2ビーム用の構成を有する。このグリッドパターンは、距離d2をおいて、ビーム孔群61が2つ形成された構成を有する。また、遮蔽グリッド115は本体111と同電位とされている。
【0038】
加速グリッド116は、本体111のイオン射出面に遮蔽グリッド115から所定距離離間してほぼ平行に配置されている。加速グリッド116は、図3(b)に示すように、円板が2分割された形状を有する。換言すれば、加速グリッド116は、半円板状の分割加速グリッド116a,116bが2枚組み合わされた構造を有する。加速グリッド116には、図3(b)に示すように、遮蔽グリッド115に形成されたビーム孔611と重なる位置にビーム孔612が形成されている。加速グリッド116のビーム孔612の面積は、遮蔽グリッド115のビーム孔611の面積より小さく、例えば0.2〜0.8倍に形成される。また、1つの分割加速グリッド116a、116bに1ビーム出力用のビーム孔群が配置される。本実施の形態では、加速グリッドに形成されたビーム孔の面積が、遮蔽グリッドに形成されたビーム孔よりも小さいものとするが、ビーム孔の大きさはこれに限らず、同面積としてもよい。或いは加速グリッドのビーム孔の少なくとも一つが対応する遮蔽グリッドのビーム孔より小さい構成としてもよい。
【0039】
分割加速グリッド116aは、イオンビームIaをオフする際には、加速グリッドオフ用スイッチ142と、加速グリッド制御スイッチ141aとによって、ビーム電源133の正極側に接続され、ビーム電源133の正電圧が印加される。また、分割加速グリッド116aは、イオンビームIaをオンする際には、加速グリッドオン用スイッチ143と、加速グリッド制御スイッチ141aとによって、加速電源134の負極側に接続され、加速電源134の負電圧が印加される。
【0040】
同様に、分割加速グリッド116bは、イオンビームIbをオフする際には、加速グリッドオフ用スイッチ142と、加速グリッド制御スイッチ141bとによって、ビーム電源133の正極側に接続され、ビーム電源133の正電圧が印加される。また、分割加速グリッド116bは、イオンビームIbをオンする際には、加速グリッドオン用スイッチ143と、加速グリッド制御スイッチ141bとによって、加速電源134の負極側に接続され、加速電源134の負電圧が印加される。
【0041】
本実施形態では特に、このようにイオンビームをオフする分割加速グリッド116a,116bを、正電位とすることによって、フローティング状態とした場合と比較し、より良好にイオンビームの漏れを抑制することができる。また、後述するように、本実施形態では減速グリッド117が負電位とされていることからニュートラライザから供給される電子がオフ側の分割加速グリッドに吸い寄せられることを抑制することができるため、オフ時には良好な遮蔽効果を得ることができる。なお、それぞれの加速グリッド制御スイッチ141a,141bは、制御部14からの制御信号により切り替えられる。
【0042】
減速グリッド117は、本体111のイオン射出面に加速グリッド116に近接してかつ離間してほぼ平行に配置されている。減速グリッド117は、図3(a)に示すように、遮蔽グリッド115と同一の構成を有する。本実施の形態では、減速グリッド117のビーム孔613の面積は、遮蔽グリッド115のビーム孔611の面積とほぼ同じに形成される。本実施形態で、減速グリッド117は、減速グリッド制御スイッチ144をオンすることにより、加速電源134の負電圧が印加される。このように減速グリッド117に負電圧を印加することにより、ニュートラライザ125から発せられる電子が減速グリッド117近傍に集まることを防ぐことができ、更には加速グリッド116に付着することを防ぐことができる。このような効果は、減速グリッド117の電位を、真空槽の電位よりも低い電位とすることで得られる。一般にニュートラライザにはそれを配置する真空槽よりも低い電圧が印加され、真空槽との電位差を利用して電子が放出される。本発明において、イオンビームを停止させる分割加速グリッドは正電位となるため、ニュートラライザから供給される電子を引き込み易い。分割加速グリッドが電子を吸引すると、ニュートラライザによるイオンビーム中和の効果が薄れるため、被照射物が帯電してしまう。図10にて後述するように、被照射物が帯電するとレートが低下してしまうという問題が生じる。これを回避するには、電子にグリッド方向でなく、被照射物方向の指向性を持たせればよい。本発明は、ニュートラライザと加速グリッドとの間に配置される電極(減速グリッド117)に、少なくとも周辺電位(真空槽)よりも低い電圧を印加することで、被照射物方向に向かう電子の量を増加させ、中和効果を得るものである。減速グリッド117をニュートラライザ125の負極側と同電位もしくは、これより低い電位とすれば、更に良好な効果が得られる。
【0043】
なお、本実施の形態では、遮蔽グリッド115と加速グリッド116と減速グリッド117とは、図4に示すように、ほぼ平行に配置されており、それぞれほぼ同じ距離だけ離間して配置されている。
【0044】
次に、上記構成の周波数調整装置の動作を説明する。
まず、載置部12に、加工対象の水晶振動子201a、201bを載置し、真空槽内を減圧する。
【0045】
ガス導入部114から、放電用ガスとして例えばArガスを本体111内に導入し、フィラメント電源131からフィラメント113に通電して加熱し、さらに、フィラメント113とアノード112との間に直流電圧を印加することにより、直流熱陰極放電をおこし、Arプラズマを生成する。
【0046】
続いて、ビーム電源スイッチ145をオンし、更に加速グリッドオン用スイッチ143をオンし、分割加速グリッド制御スイッチ141a,141bを加速グリッドオン用スイッチ143側に接続し、加速電源の負電圧と同電位とする。このように放電電源132によってアノード112と加速グリッド116間に高電圧を印加する。これにより、本体111内のプラズマにより生成されたイオンを加速する向きに電位勾配を生成し、Arの正イオンを引き出しビーム孔よりイオンビームIa、Ibとして出射する。なお、この際減速グリッド制御スイッチ144はオンされており、減速グリッド117も同様に加速電源の負電圧と同電位である。
【0047】
照射された2本のイオンビームIaとIbにより、載置部12に載置された第1の水晶振動子201a上に形成された金属電極と第2の水晶振動子201b上に形成された金属電極とをエッチングし、それぞれの共振周波数を調整する。
【0048】
この間、共振周波数測定回路13は、各第1の水晶振動子と第2の水晶振動子の共振周波数をそれぞれ測定し、測定結果を制御部14に出力する。
【0049】
制御部14は、加工処理開始後、図5に示す処理を繰り返す。なお、図5では、理解を容易にするため、第1の水晶振動子201aに関する制御と、第2の水晶振動子201bに関する制御を順番に実施しているが、両制御は並行して行うことが望ましい。
【0050】
まず、第1の水晶振動子201aに関する周波数調整が終了したか否かを判別する(ステップS11)。当初は、加速グリッドオフ用スイッチ142をオンした上で、分割加速グリッド制御スイッチ141aを加速グリッドオフ用スイッチ142側に接続し、イオンビームIaを停止し、更にシャッター15aを閉じておく。周波数調整が終了していなければ(ステップS11;NO)、分割加速グリッド制御スイッチ141aを加速グリッドオン用スイッチ143側に接続し(ステップS12)、シャッター15aを開いて(ステップS13)、水晶振動子201aの周波数調整を開始する。
【0051】
共振周波数測定部13が検出した第1の水晶振動子201aの共振周波数が目標周波数に一致したか否かを判別する(ステップS14)。
【0052】
目標周波数に一致していれば(ステップS14;Yes)、加速グリッドオフ用スイッチ142をオンした上で、分割加速グリッド制御スイッチ141aを加速グリッドオフ用スイッチ142に接続する(ステップS15)。加速グリッド制御スイッチ141aを加速グリッドオフ用スイッチ142側に接続することにより、分割加速グリッド116aをビーム電源133の正電位とすることができ、遮蔽グリッド115と同電位とすることができる。これにより、分割加速グリッド116bから照射されているイオンビームIbの強度に影響を殆ど与えることなく、分割加速グリッド116aから照射しているイオンビームIaを非常に弱くすることができる。
【0053】
更に、本実施形態では、減速グリッドをニュートラライザの負電圧と同電位としている。これにより、ニュートラライザから供給される電子が分割加速グリッドに供給されることを防ぐことができ、ニュートラライザの中和効果を減じさせないことが可能である。
【0054】
さらに、ソレノイドを駆動して、シャッター15aを閉じ、第1の水晶振動子201aへのイオンビームIaの照射を完全に遮断する(ステップS16)。
【0055】
一方、ステップS14で、共振周波数測定部13が検出した第1の水晶振動子201aの共振周波数が目標周波数に一致していないと判別されれば(ステップS14;No)、そのまま処理を継続して、加工を続ける。また、ステップS11で、第1の水晶振動子201aの周波数調整処理が終了していると判別されれば(ステップS11;Yes)、ステップS12〜S16をスキップする。
【0056】
次に、制御部14は、第2の水晶振動子201bに関する周波数調整が終了したか否かを判別する(ステップS17)。この際、加速グリッドオフ用スイッチ142をオンした上で、分割加速グリッド制御スイッチ141bを加速グリッドオフ用スイッチ側142に接続し、更にシャッター15bを閉じておく。周波数調整が終了していなければ(ステップS17;NO)、分割加速グリッド制御スイッチ141bを加速グリッドオン側スイッチ143側に接続し(ステップS18)、シャッター15bを開いて(ステップS19)、水晶振動子201bの周波数調整を開始する。共振周波数測定部13が検出した第2の水晶振動子201bの共振周波数が目標周波数に一致したか否かを判別する(ステップS20)。
【0057】
目標周波数に一致していれば(ステップS20;Yes)、加速グリッド制御スイッチ141bを加速グリッドオフ用スイッチ側142に接続する(ステップS21)。これにより、分割加速グリッド116bはビーム電源133の正電圧と同電位となり、遮蔽グリッド115と同電位となる。このようにして分割加速グリッド116bから照射しているイオンビームIbが非常に弱くなる。さらに、ソレノイドを駆動して、シャッター15bを閉じ、第2の水晶振動子201bへのイオンビームIbの照射を完全に遮断する(ステップS22)。
【0058】
一方、ステップS20で、共振周波数測定部13が検出した第2の水晶振動子201bの共振周波数が目標周波数に一致していないと判別されれば(ステップS20;No)、そのまま処理を継続して、加工を続ける。また、ステップS17で、第2の水晶振動子201bの周波数調整処理が終了していると判別されれば(ステップS17;Yes)、ステップS18〜S22をスキップする。
【0059】
最後に、第1の水晶振動子201aの加工と第2の水晶振動子201bの加工が共に終了したか否かを判別し(ステップS23)、終了していれば(ステップS23;Yes)、加工処理を終了して、搬出等の処理に移り、終了していなければ(ステップS23;No)、ステップS11に戻って金属電極のエッチング処理を継続する。
【0060】
このようにして、イオンガン11から照射されるイオンビームIaとIbの強度を、加速グリッド制御スイッチ141a,141bを適宜切り替えることにより、各水晶振動子の加工を適切なタイミングで終了することができる。
【0061】
本実施形態では、上述したように減速グリッドに負電圧を印加し、更にオフする分割加速グリッドに正電圧を印加することにより、オンされている側のイオンビームに影響を与えることなく、ビームの漏洩を抑制することが可能である。
【0062】
図6に示す構成の装置によって、コレクタ電流とコレクタ電圧との関係を測定した結果を図7に示す。図6に示す装置では、本実施形態のイオンガン及びニュートラライザを用い、マスクに対して絶縁体を介してコレクタ電極を設置し、所定のコレクタ電圧を印加した際のコレクタ電流の変化を測定した。コレクタ電極はイオンビームの照射対象位置(図1において水晶振動子201が配置される位置)に設置した。また、図7に示すように、減速グリッドに対して負のバイアス電圧を印加し、更に両ビームをオンした場合、片側のみをオンした場合、減速グリッドをグラウンドに接続し、両ビームをオンした場合、片側のみをオンした場合でコレクタ電流を測定した。片側のみをオンする場合、オフ側の分割加速グリッドには正のバイアス電圧を印加した。
【0063】
図7から明らかなように、減速グリッドにバイアス電圧を印加した場合は、イオンビームを両方ともオンした場合、片側をオフした場合ともに、コレクタ電圧0V近傍でコレクタ電流の正負が切り替わる。つまり、イオンコレクタに照射される荷電粒子と、ニュートラライザから供給される電子とで電荷が中和されていることがわかる。これに対し、減速グリッドをグラウンドに接続した場合、両側をオンしている場合は、減速グリッドにバイアス電圧を印加した場合とほぼ同じように変化する。しかし、片側のみをオンした場合、コレクタ電圧の正負にかかわらず正の電流が流れており、荷電粒子と、ニュートラライザから供給される電子とで電荷が中和されていないことが明らかである。このように本発明の荷電粒子照射装置によれば、一方のイオンビームをオフした場合でも、良好な中和効果を得られると言える。
【0064】
次に、図8を参照に、オフ側の分割加速グリッドをフローティング電位とした場合と、正電位とした場合とで、ビーム漏れを比較する。図8は、図1に示すイオンガン及びニュートラライザを用い、一方の分割加速グリッド116aを加速電位とした状態で、他方の分割加速グリッド116bをフローティング電位とした場合(スイッチ141bをいずれにも接続させず切り離した状態)、本体電位とした場合(スイッチ141bをスイッチ142側に接続した状態)、加速電位とした場合(スイッチ141bをスイッチ143側に接続した状態)における、水晶振動子201bの周波数変化ΔFを測定した結果である。測定にはATカット25MHz基本波、励振電極Agの水晶振動子を用い、ビーム電圧を1000V、放電電流を500mA、ニュートラライザエミッション電流を30mAとした。分割加速グリッド116bをフローティング電位とした場合、水晶振動子201bの周波数変化が目立ち、イオンビームの漏れが生じていることがわかる。これを、分割加速グリッド116bを加速電位とした場合(即ち両ビームをオンした場合)の周波数変化と比較すると、周波数変化ΔFは45%程度であり、漏れが大きいことがわかる。これに対して、分割加速グリッド116bを本体電位とした場合、周波数変化はほとんどない。両ビームをオンした場合の周波数変化と比較すると、周波数変化ΔFは5%程度であり、イオンビームが良好に遮断され、オフ側のイオンビーム漏れを抑制していることがわかる。
【0065】
ここで、図8に示した測定において分割加速グリッド116bをフローティング電位とした際、ニュートラライザエミッション電流値を変化させて、分割加速グリッド116bの電位を測定した結果を図9に示す。図より、ニュートラライザエミッション電流値がある値(図では20mA前後)よりも上がると、オフ側の分割加速グリッドの電位が真空槽の電位(グラウンド電位)まで急峻に降下することがわかる。即ち、ニュートラライザの電流値が小さい場合、フローティング電位とすることでイオンビームを良好に遮断することができるが、ニュートラライザの電流値が大きいとオフ側の分割加速グリッドの電位が真空槽の電位まで下がってしまい、ビームの漏れを抑えることができない。図8の測定では、ニュートラライザの電流値が大きく、オフ側の分割加速グリッドの電位が真空槽の電位となっていたため、ビーム漏れが生じていた。
【0066】
なお、必要なニュートラライザの電流値、即ちイオンビームの中和に必要な電子の供給量は種々である。例えば、イオンビーム電流密度が大きいほど中和に必要な電子量は多くなる。イオンビーム電流密度はグリッドに穿設される孔の数が多いほど大きい。
【0067】
また、例えば、イオンビームの照射対象である水晶振動子を図11(a)に示すように測定器に接続する場合と、図11(b)に示すように測定器に接続する場合とでは、図11(b)に示す場合の方が必要な中和電子量が多くなる。これは、負荷容量の存在により、照射対象面がフローティング状態となり帯電するためである。図11(a)に示す場合であっても抵抗値が大きければ照射対象面からグラウンドに流れる電荷が少なくなり、抵抗値が小さい場合よりも中和電子量が必要になる。或いは照射対象面がグラウンドに接続されていても、照射領域を画定するマスクが誘電体等である場合には、中和電子が必要になる。
【0068】
以上より、装置構成その他によって必要なニュートラライザの電流値が変わってくるが、オフ側の分割加速グリッドを真空槽の電位よりも高くすれば、ニュートラライザの電流値を大きくする必要がある場合であっても、フローティング電位とするより、ビーム漏れを抑制することができる。より好ましくは、オフ側の分割加速グリッドの電位を遮蔽グリッドの電位と同じか、それよりも高くすれば、ニュートラライザの電流値によらず、ビームの漏洩を抑えることができる。例えば、図9では、20mA前後でオフ側分割加速グリッドの電位が降下しているが、この値はイオンガンの形状や各種設定電圧等により異なるため、ニュートラライザの電流値によらずビームの漏洩を抑止できることは有効である。オフ側の分割加速グリッドの電位を、遮蔽グリッドの電位と同じか、それよりも高くすることにより、加速グリッドの本来の役割であるイオンビームの引出しに必要な電位勾配が生じず、漏洩を抑止する。
【0069】
本実施形態のイオンガン及びニュートラライザを用い、減速グリッドに負電圧を印加した上で、水晶振動子を加工対象として、その周波数変化ΔFを測定した結果を図10(a)に示す。同図には、イオンビームを2つオンした場合と、イオンビームの一方をオフした場合のオン側のイオンビーム(図1に示す装置でIa及びIbをオンした場合のIaと、Ibをオフした場合のIaに相当する)に対応する水晶振動子の周波数変化ΔFを示す。測定にはATカット25MHz基本波、励振電極Agの水晶振動子を用い、ビーム電圧を600V、放電電流を300mAとした。分割加速グリッドのオフ時、ビーム電源の正極側の電位を与えた。減速グリッドに負電圧を印加した上で、イオンビームの一方をオフした場合、イオンビームを2つオンした場合に比較して周波数変化ΔFが5%以内であった。
これに対し、本実施形態のイオンガン及びニュートラライザを用い、減速グリッドをグラウンドに接続した上で、水晶振動子を加工対象として、その周波数変化ΔFを測定した結果を図10(b)に示す。減速グリッドの電位の他測定条件は図10(a)に同じである。イオンビームを2つともオンした場合と、イオンビームの一方をオフした場合とでは、周波数変化ΔFに20%の差が生じた。この結果は、減速グリッドをグラウンドに接続した状態では、イオンビームの中和効果が薄れ、水晶振動子が帯電していることを意味する。ニュートラライザから供給された電子は、オフ側分割加速グリッドの正電位に引き寄せられ、水晶振動子位置における電子が不足し、水晶振動子がプラスに帯電したことに起因して、レートが低下している。これに対し、図10(a)では、ニュートラライザとオフ側分割加速グリッドとの間に配置される減速グリッドに負電圧を印加することにより、水晶振動子方向に向かう電子の量を増加させ、水晶振動子の帯電を防ぎ、レートを維持している。この点からも、本実施形態の荷電粒子照射装置では、オンしている側のイオンビームに与える影響が低いことがわかる。
【0070】
このように本実施の形態の荷電粒子照射装置では、減速グリッドをニュートラライザの負電圧と同じ電位とし、オフ側の分割加速グリッドを遮蔽グリッドの電位と同じ電位とすることにより、オン側のイオン電流密度の強度を損なうことなく、オフ側のイオンビームの漏れを抑制することができるため、イオンビームの良好なオン・オフ特性を得ることができる。更に、ニュートラライザによるイオンビームの中和効果を減じさせない。
【0071】
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更及び応用が可能である。例えば、上述した実施形態では減速グリッド117に負電圧を印加する構成であったが、これに限られず、図12及び図13に示すようにイオンガン51のイオン射出面近傍にリフレクタ151を設けることも可能である。この場合、リフレクタ151は、図13に示すようにイオンビームIa,Ibを遮らないように形成された孔151aを備える。このようなリフレクタ151を設置し、更にリフレクタ151を、減速グリッド117と同様にニュートラライザの負電圧と同じもしくはそれより低い電圧が印加する。これによりニュートラライザから供給される電子がイオンガン51側に引き寄せられることを防ぐことが可能である。
【0072】
また、図1では、ビーム電源の正電圧を分割加速グリッド116a,116bに印加する構成を例に挙げて説明したがこれに限られない。例えば、図14に示すように、ビーム電源の正極側に別電源を介して分割加速グリッド116a,116bを接続してもよい。また、図15に示すようにビーム電源の正極側に抵抗を介して分割加速グリッド116a,116bを接続してもよい。図14及び図15に示す構成により、分割加速グリッド116a,116bの電位は遮蔽グリッドの電位より高くなり、イオンビーム漏洩を抑止する効果が更に高まる。或いは、図16に示すように別電源を設けて分割加速グリッド116a,116bに電圧印加してもよい。更に、図1では、加速電源の負電圧を減速グリッド117に印加する場合を例に挙げて説明したが、図17に示すように、別途電源を設けて減速グリッド117に負電圧を印加する構成であっても良い。また、イオンビームを停止させる分割加速グリッドを放電電源の正極側に接続して、アノードと同電位とさせてもよい。
【0073】
また、図1、図14〜図16に、減速グリッド117に負電圧を、分割加速グリッド116a,116bに正電圧を印加する例を説明したが、電源の接続その他は図示の例に限られず、適宜選択すればよい。
【0074】
上記実施の形態では、2本のイオンビームIa,Ibを生成照射するイオンガン11とそれを用いた周波数調整装置について説明したが、イオンガンが照射するイオンビームの数は任意である。例えば、ビーム数を4とし、同時に加工する水晶振動子の数を4個としてもよい。
【0075】
この場合には、例えば、十分なイオンを生成するために、フィラメント数を図1の構成よりも増加し、加速グリッド116を、例えば、図17(a)〜(c)に例示するように、任意のパターンで4分割し、それぞれに、ビーム孔群を形成する。また、各分割加速グリッドそれぞれに、分割加速グリッド制御スイッチを接続させる。このような構成とすれば、4つのイオンビームを生成して、4つの水晶振動子を並行して加工し、さらに、加工が終了したイオンビームから順番に、その照射を停止することができる。
【0076】
上記実施の形態においては、水晶振動子の金属電極をエッチングすることにより、その共振周波数を調整(変更)する調整装置を例にこの発明を説明したが、エッチング及び調整の対象は任意である。例えば、水晶振動子以外の圧電デバイスの電極をエッチングする場合に適用可能である。また、エッチングの対象物やその材質は任意であり、例えば、金属、半導体、樹脂等をエッチングすることができる。
【0077】
また、上記実施の形態においては、スパッタ用のイオンとしてArイオンを使用したが、他のイオンを使用することも当然可能である。
【0078】
また、上述した各実施の形態では、各ビーム孔の群が多孔で構成される例のみを示したが、単孔でも実施可能である。また、各ビーム孔の平面形状は円径に限られず、楕円形、多角形であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る周波数調整装置の全体構成図である。
【図2】図1に示す周波数調整装置の分解斜視図である。
【図3】グリッドの構成を示す図である。
【図4】図3に示すグリッドのXX−XX線断面図である。
【図5】制御部の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】コレクタ電流の測定を行った装置の構成例を示す図である。
【図7】コレクタ電圧とコレクタ電流との関係を示す図である。
【図8】ニュートラライザの電流値が大きく、オフ側の分割加速グリッドの電位が真空槽の電位となっている場合のビーム漏れを測定した結果を示す図である。
【図9】オフ側の分割加速グリッドをフローティング電位とし、ニュートラライザエミッション電流値を変化させて、オフ側の分割加速グリッドの電位を測定した結果を示す図である。
【図10】(a)は、減速グリッドに負電圧を印加した上で両方のビームをオンした場合と、片方をオフした場合とで、水晶振動子の周波数変化ΔFを測定した結果を示す図であり、(b)は減速グリッドをグラウンドに接続した上で両方のビームをオンした場合と、片方をオフした場合とで、水晶振動子の周波数変化ΔFを測定した結果を示す図である。
【図11】(a)及び(b)は、イオンビームの照射対象である水晶振動子を測定器に接続する例を示す図である。
【図12】本発明の変形例を示す図である。
【図13】図12に示すリフレクタを示す図である。
【図14】本発明の変形例を示す図である。
【図15】本発明の変形例を示す図である。
【図16】本発明の変形例を示す図である。
【図17】加速グリッドのパターンの変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
11,51 イオンガン
12 載置部
13 共振周波数測定部
14 制御部
15 シャッター
15a、15b シャッター
21 ビーム孔群
111 本体(チャンバ)
112 アノード(電極)
113 フィラメント
114 ガス導入部
115 遮蔽グリッド
116 加速グリッド
116a〜116d 分割加速グリッド
117 減速グリッド
125 ニュートラライザ
131 フィラメント電源
132 放電電源
133 ビーム電源
134 加速電源
141a,141b 加速グリッド制御スイッチ
142 加速グリッドオフ用スイッチ
143 加速グリッドオン用スイッチ
144 減速グリッド制御スイッチ
145 ビーム電源スイッチ
201a〜201b 水晶振動子
611〜613 ビーム孔
Ia,Ib イオンビーム
151 リフレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子を照射する荷電粒子照射装置であって、
荷電粒子を生成する荷電粒子生成手段と、
前記荷電粒子生成手段で生成された荷電粒子を引き出して荷電粒子ビームを出力する複数に分割された分割グリッドを有する加速グリッドと、
前記複数に分割された該加速グリッドの電位を個々に制御する制御手段と、を備え、
前記荷電粒子ビームを遮断する際、前記荷電粒子ビームを遮断する前記分割グリッドは、前記荷電粒子照射装置が配置される真空槽の電位より高い第1の電位とされることを特徴とする荷電粒子照射装置。
【請求項2】
前記荷電粒子生成手段と前記加速グリッドとの間に遮蔽グリッドを備え、
前記第1の電位は、前記遮蔽グリッドの電位と同じ、又はこれより高いことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項3】
前記第1の電位を付与する第1の電源を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項4】
前記加速グリッドの前記荷電粒子ビーム出力側に減速グリッドを備え、
前記減速グリッドは、前記真空槽の電位より低い第2の電位とされることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項5】
前記加速グリッドの前記荷電粒子ビーム出力側に減速グリッドを備え、
前記減速グリッドの外側に設置されたリフレクタを備えることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項6】
前記リフレクタは、前記真空槽の電位より低い第2の電位とされることを特徴とする請求項5に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項7】
前記荷電粒子ビームの電荷を中和するニュートラライザを更に備え、
前記第2の電位は、前記ニュートラライザの負極側と同じ、又はこれより低いことを特徴とする請求項4又は6に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項8】
前記第2の電位を付与する第2の電源を備えることを特徴とする請求項4又は6に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項9】
前記荷電粒子ビームの電荷を中和するニュートラライザを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項10】
前記制御手段は、各前記分割グリッドと前記第1の電源との間に個々に設置されたスイッチ回路と、前記スイッチ回路を個別にオン・オフする手段とを備えることを特徴とする請求項3に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の荷電粒子照射装置から構成されるイオンガンと、
圧電デバイスを複数個配置する配置手段と、
前記配置手段により配置された複数の圧電デバイスの共振周波数を判別する共振周波数判別手段と、
を備え、
前記共振周波数判別手段により、前記配置手段により配置された複数の該圧電デバイスの共振周波数をモニタしながら、並行して該複数の該圧電デバイスにイオンビームを照射して各圧電デバイスの少なくとも一部をエッチングすることにより複数の該圧電デバイスの共振周波数を調整する、ことを特徴とする周波数調整装置。
【請求項12】
真空槽内部に配置された所定の容器に荷電粒子生成手段によって荷電粒子を生成し、
前記荷電粒子生成手段で生成された荷電粒子を引き出して荷電粒子ビームを出力する複数に分割された分割グリッドを有する加速グリッドを配置し、
各加速グリッドに、電圧を印加して荷電粒子を引き出す方向に電圧勾配を形成して、前記プラズマ中の荷電粒子を荷電粒子ビームとして射出させ、
前記複数に分割された該加速グリッドの電位を個々に制御し、
前記加速グリッドを前記真空槽の電位より高い第1の電位とすることによって、前記荷電粒子ビームの射出を遮蔽する、ことを特徴とする荷電粒子制御方法。
【請求項13】
前記荷電粒子生成手段と前記加速グリッドとの間に遮蔽グリッドを備え、
前記第1の電位は、前記遮蔽グリッドの電位と同じ、又はこれより高くすることを特徴とする請求項12に記載の荷電粒子制御方法。
【請求項14】
前記加速グリッドの外側に減速グリッドを配置し、
前記減速グリッドを前記真空槽の電位より低い第2の電位とすることを特徴とする請求項12又は13に記載の荷電粒子制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−211955(P2009−211955A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54137(P2008−54137)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000146009)株式会社昭和真空 (72)
【Fターム(参考)】