説明

蒸気システム

【課題】 スチームモータへの給蒸が行われていない状態では、スチームモータの軸封部からの蒸気漏れを防止する。
【解決手段】 ボイラ2からの蒸気を用いて動力を起こすスチームモータ3により、圧縮機4が駆動される。スチームモータ3に対しては、給蒸路14を介して蒸気が供給され、排蒸路17を介して蒸気が排出される。給蒸路14には給蒸弁16が設けられ、排蒸路17には逆流防止弁19が設けられる。給蒸路14の内、給蒸弁16よりも上流部と、排蒸路17の内、逆流防止弁19よりも下流部とは、バイパス路20で接続される。バイパス路20には、バイパス弁21として、自力式の減圧弁が設けられる。逆流防止弁19により、給蒸弁16が閉じられた状態で、排蒸路17を蒸気が逆流してスチームモータ3の軸封部から漏れるのが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸気を用いて圧縮機などを駆動する蒸気システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、スクリュ型膨張機(1)により空気圧縮機(2)を駆動し、空気圧縮機(2)の負荷変動に際してはスクリュ型膨張機(1)に流入する蒸気を加減弁(10)により制御して対応すると共に、スクリュ型膨張機(1)の蒸気流入側と蒸気流出側との間に設けたバイパス弁(9)を制御することにより、前記負荷変動に拘らず蒸気流出側における蒸気の背圧を一定に保持する方法が開示されている。ここで、バイパス弁(9)の制御は、スクリュ型膨張機(1)からの蒸気出口管(5)の背圧を検出器(20)により検出してなされる。また、加減弁(10)の制御は、スクリュ型膨張機(1)の駆動軸の回転数を検出器(23)により検出してなされる。
【特許文献1】特開昭63−45403号公報 (特許請求の範囲、図面、公報第2頁右上欄第15行−左下欄第5行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
スクリュ型膨張機は、一般に、互いにかみ合うスクリュロータが、中空ケーシング内に回転自在に保持されて構成される。そして、ケーシング内へ導入される蒸気により、スクリュロータが回転され、回転動力を出力する。スクリュロータ同士は、タイミングギアを介して連動回転するが、そのタイミングギアの潤滑油が蒸気と混合しないように、ロータ本体部とタイミングギアとの間で、蒸気を最小限の量だがケーシング外へ漏らしながら、軸封が保たれる。そのために、軸封部には、ラビリンスシールやビスコシールなどの非接触シールが用いられる。
【0004】
従って、前記特許文献1に開示されるように、背圧を一定に保持するようバイパス弁を制御する構成では、加減弁が閉じられた状態でも、スクリュ型膨張機の軸封部からの蒸気漏れに起因して、バイパス管および蒸気出口管を介してスクリュ型膨張機へ蒸気が供給され、軸封部から漏れ続けてしまう不都合がある。
【0005】
ところで、出願人は、先に、スチームモータの軸封部からの漏れ蒸気の熱を回収する蒸気システムについて提案し、既に特許出願を済ませている(特願2008−147545)。この先の出願の発明によれば、スチームモータの軸封部から漏れる蒸気および/またはそのドレンは、漏れ熱回収路を介して、ボイラの給水タンクへ供給される。これにより、スチームモータからの漏れ蒸気を、給水タンクの貯留水の加温に利用することができる。
【0006】
また、この先の出願の発明では、背圧を一定に保持するバイパス弁として、典型的には自力式の減圧弁が用いられる。そして、スチームモータからの蒸気とバイパス路からの蒸気とが供給される箇所の蒸気負荷と、スチームモータで駆動される被動機により流体が吐出または吸入される空間内の流体負荷とに基づき、スチームモータへの給蒸が給蒸弁で制御される。
【0007】
具体的には、次のように制御される。流体負荷および蒸気負荷がある場合には、給蒸弁が開かれる。また、流体負荷および蒸気負荷がない場合には、給蒸弁が閉じられる。また、流体負荷はないが蒸気負荷がある場合には、給蒸弁が閉じられた状態で、バイパス路を介して蒸気が供給される。さらに、流体負荷はあるが蒸気負荷がない場合には、給蒸弁が閉じられた状態で、電動機にて被動機が駆動される。但し、この場合には、給蒸弁を開いてスチームモータへの給蒸を行うことで、被動機を駆動してもよい。
【0008】
このような構成の場合、給蒸弁を閉じた状態でも、蒸気負荷があればバイパス路経由で、スチームモータの二次側へ蒸気が供給される。従って、その蒸気がスチームモータへ逆流して供給され、軸封部から漏れることになる。また、蒸気負荷がなくても軸封部からの蒸気漏れに起因して、バイパス路経由でスチームモータへ蒸気が逆流して供給され、軸封部から蒸気が漏れることになる。
【0009】
このように、この先の出願の発明でも、前記特許文献1に開示される発明と同様、給蒸弁が閉じられた状態においても、スチームモータの軸封部からの蒸気漏れに起因して、軸封部から蒸気が漏れることは避けられない。従って、漏れ蒸気を給水の加温に使うとしても、軸封部から蒸気を漏らすこと自体が無駄である。また、給蒸弁が閉じられた状態では、ボイラも待機状態である可能性が高く、その状態で漏れ蒸気が給水タンクへ供給され続けると、給水タンク内の貯留水が必要以上に加温され、ボイラへの給水として不適切な温度まで上昇するおそれがあった。
【0010】
この発明が解決しようとする課題は、給蒸弁が閉じられた状態で、バイパス路経由でスチームモータへ蒸気が逆流して、スチームモータの軸封部から漏れるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、蒸気を用いて動力を起こすスチームモータと、このスチームモータへの給蒸路に設けられる給蒸弁と、前記スチームモータにて使用後の蒸気が供給される箇所へ、前記スチームモータを介することなく蒸気を供給するバイパス路と、このバイパス路に設けられ、背圧を一定に保持するバイパス弁と、前記スチームモータからの排蒸路に設けられ、前記給蒸弁が閉じられた状態で前記スチームモータへ蒸気が逆流するのを防止する逆流防止弁とを備えることを特徴とする蒸気システムである。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、給蒸弁が閉じられた状態では、排蒸路に設けられる逆流防止弁により、スチームモータへの蒸気の逆流を防止できる。これにより、スチームモータの軸封部からの蒸気漏れを防止できる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記逆流防止弁は、逆止弁とされるか、または前記給蒸弁が全閉された際に閉じられる電磁弁とされることを特徴とする請求項1に記載の蒸気システムである。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、給蒸弁が全閉された際に、バイパス路経由でのスチームモータへの蒸気の逆流を簡易な構成で防止できる。これにより、給蒸弁が閉じられた状態において、スチームモータの軸封部からの蒸気漏れを防止できる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記バイパス弁は、自力式の減圧弁とされることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸気システムである。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、自力式の減圧弁を用いることで、バイパス路を介した蒸気供給が自力でなされる。従って、蒸気システム全体の構成および制御を簡易なものとすることができる。このような構成であっても、排蒸路に逆流防止弁が設けられることで、給蒸弁が閉じられた状態では、バイパス路経由でのスチームモータへの蒸気供給はなされず、スチームモータの軸封部からの蒸気漏れを防止できる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、前記スチームモータへは、ボイラからの蒸気が前記給蒸路を介して供給され、前記スチームモータの軸封部から漏れる蒸気および/またはそのドレンにより、前記ボイラへの給水を加熱することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸気システムである。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、給蒸弁が開かれた状態では、スチームモータの軸封部から漏れる蒸気および/またはそのドレンにより、ボイラへの給水が加熱される。たとえば、軸封部からの漏れ蒸気は、ボイラへの給水タンクへ直接に吹き込まれて、ボイラへの給水を加熱する。あるいは、軸封部からの漏れ蒸気は、給水タンクへの給水、または給水タンクからボイラへの給水と、熱交換器において間接熱交換されて、ボイラへの給水を加熱する。このようにして、漏れ蒸気からの熱回収を図ることができる。
【0019】
さらに、請求項5に記載の発明は、前記スチームモータの軸封部から漏れる蒸気および/またはそのドレンは、漏れ熱回収路を介して前記ボイラの給水タンクへ供給され、前記逆流防止弁は、前記給蒸弁が閉じられた際、前記バイパス路からの蒸気が前記排蒸路を介して前記スチームモータへ逆流するのを防止するよう閉じられることを特徴とする請求項4に記載の蒸気システムである。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、給蒸弁が開かれた状態では、スチームモータの軸封部から漏れる蒸気および/またはそのドレンは、漏れ熱回収路を介して給水タンクへ供給される。これにより、給水タンク内の貯留水が温められる。一方、給蒸弁が閉じられた状態では、逆流防止弁により、バイパス路からの蒸気が排蒸路を介してスチームモータへ逆流するのを防止できる。これにより、スチームモータの軸封部からの蒸気漏れを防止して、省エネルギーを図ることができる。また、給蒸弁が閉じられた状態では、給水タンクへは蒸気が供給されないので、給水タンク内の貯留水が必要以上に加温されるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明の蒸気システムによれば、給蒸弁が閉じられた状態で、バイパス路経由でスチームモータへ蒸気が逆流して、スチームモータの軸封部から漏れるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の蒸気システムの一実施例を示す概略図である。本実施例の蒸気システム1は、ボイラ2からの蒸気を用いて動力を起こす原動機(スチームモータ3)と、これにより駆動される被動機(圧縮機4)とを備える。
【0023】
ボイラ2は、周知のとおり、給水タンク5から供給される水を加熱して蒸気化する。給水タンク5の水は、給水ポンプ6を介してボイラ2へ供給され、ボイラ2において蒸気化される。
【0024】
原動機として、ボイラ2からの蒸気を受けて動力を起こすスチームモータ3を備える。本実施例では、原動機として、スクリュ式スチームモータ3を備える。図2は、スクリュ式スチームモータ3の軸封部を示す概略図であり、一部を断面にして示している。スクリュ式スチームモータ3は、中空のケーシング7内に、互いにかみ合うようスクリュロータ8,8が設けられて構成される。スクリュロータ8,8間には蒸気が導入され、スクリュロータ8の回転が図られる。そして、このスクリュロータ8の回転により、回転動力が出力される。この間、蒸気は、スチームモータ3を通過することで、膨張して減圧される。
【0025】
スクリュロータ8,8同士は、タイミングギア(図示省略)を介して連動回転する。このタイミングギアの潤滑油が蒸気と混合しないように、通常は、ロータ本体部8Aとタイミングギアとの間に排蒸口9が設けられ、この排蒸口9から蒸気を最小限の量だがケーシング7外へ漏らしながらスチームモータ3は運転される。そのために、スクリュロータ8の軸封部には、ラビリンスシールやビスコシールなどの非接触シール10が用いられる。
【0026】
スクリュ式スチームモータ3の他に、さらに電動機11を備えてもよい。図1では、電動機11として両軸モータが用いられ、電動機11を貫通するよう設けられる回転軸は、一端部にスチームモータ3の出力軸12が接続され、他端部に被動機の入力軸13が接続される。これにより、被動機は、スチームモータ3により駆動可能とされると共に、それに代えてまたはそれに加えて、電動機11により駆動可能とされる。
【0027】
被動機は、原動機により駆動される回転機械であり、典型的には流体を吐出または吸入する装置である。具体的には、被動機は、ポンプ、送風機、圧縮機または真空ポンプである。本実施例の被動機は、スクリュ式の空気圧縮機4である。スクリュ式圧縮機4は、互いにかみ合って回転するスクリュロータ間に気体を吸入して、スクリュロータの回転により圧縮して吐出する装置である。
【0028】
スチームモータ3には、ボイラ2からの蒸気が、給蒸路14を介して供給される。本実施例では、ボイラ2からの蒸気は、第一蒸気ヘッダ15に供給され、この第一蒸気ヘッダ15の蒸気が、給蒸路14を介してスチームモータ3に供給される。第一蒸気ヘッダ15からスチームモータ3への給蒸路14には、給蒸弁16が設けられる。この給蒸弁16の開閉または開度を調整して、スチームモータ3の作動の有無または出力が調整される。
【0029】
スチームモータ3は、供給される蒸気により回転駆動力を得る装置であるが、スチームモータ3において蒸気は膨張して減圧される。従って、スチームモータ3は、圧縮機4の駆動源としてだけでなく、減圧弁としても機能する。これにより、スチームモータ3にて使用後の蒸気は、減圧弁通過後の蒸気として、各種の蒸気利用機器(図示省略)において、そのまま利用することもできる。そのために、スチームモータ3にて使用後の蒸気は、排蒸路17を介して第二蒸気ヘッダ18へ供給され、この第二蒸気ヘッダ18の蒸気が、一または複数の各種の蒸気利用機器へ供給される。
【0030】
スチームモータ3から第二蒸気ヘッダ18への排蒸路17には、スチームモータ3への蒸気の逆流を防止する逆流防止弁19が設けられる。本実施例の逆流防止弁19は、スチームモータ3から第二蒸気ヘッダ18への蒸気の流れは許容するが、その逆方向の蒸気の流れは遮断する逆止弁である。
【0031】
第一蒸気ヘッダ15と第二蒸気ヘッダ18とは、バイパス路20を介しても接続される。図示例では、第一蒸気ヘッダ15からスチームモータ3への給蒸路14の内、給蒸弁16よりも上流部と、スチームモータ3から第二蒸気ヘッダ18への排蒸路17の内、逆流防止弁19よりも下流部とが、バイパス路20で接続される。そして、このバイパス路20には、バイパス弁21が設けられる。このバイパス弁21は、背圧を所定に保持するよう機能し、典型的には自力式の減圧弁とされる。この場合、バイパス弁21は、第二蒸気ヘッダ18内の蒸気圧を所定に維持するように、機械的に自力で開度調整する。
【0032】
第二蒸気ヘッダ18には、その蒸気の使用負荷を把握するために、第一圧力センサ22が設けられる。この第一圧力センサ22により、第二蒸気ヘッダ18内の蒸気圧が監視される。従って、その蒸気圧が所定値未満であるか否かにより、蒸気負荷があるか否かを検知できる。すなわち、蒸気が使用される場合には、第二蒸気ヘッダ18内の蒸気圧が下がるので、それが所定値未満であるか否かにより、蒸気の使用負荷を検知できる。
【0033】
圧縮機4からの圧縮空気は、圧縮空気路23を介して一または複数の圧縮空気利用機器(図示省略)へ供給可能とされる。圧縮空気路23には、圧縮空気の使用負荷を把握するために、第二圧力センサ24が設けられる。この第二圧力センサ24により、圧縮空気路23内の空気圧が監視される。従って、その空気圧が設定値未満であるか否かにより、空気負荷があるか否かを検知できる。すなわち、圧縮空気が使用される場合には、圧縮空気路23内の空気圧が下がるので、それが設定値未満であるか否かにより、圧縮空気の使用負荷を検知できる。但し、圧縮空気路23の中途に中空のエアタンク(図示省略)を設け、このエアタンクに第二圧力センサ24を設けて、圧縮空気の使用負荷を検知してもよい。
【0034】
本実施例の蒸気システム1では、制御器25は、第一圧力センサ22と第二圧力センサ24との検出圧力を監視し、これに基づき後述のとおり給蒸弁16の開閉または開度を制御する。
【0035】
制御器25は、第二圧力センサ24の空気圧が設定値未満であることにより空気負荷があると検知し、且つ第一圧力センサ22の蒸気圧が所定値未満であることにより蒸気負荷があると検知する場合には、給蒸弁16を開いてスチームモータ3を運転する。これにより、圧縮機4は、スチームモータ3により駆動されるが、所望により電動機11により補助駆動されてもよい。
【0036】
また、制御器25は、第二圧力センサ24の空気圧が設定値以上であることにより空気負荷がないと検知し、且つ第一圧力センサ22の蒸気圧が所定値以上であることにより蒸気負荷がないと検知する場合には、給蒸弁16を閉じてスチームモータ3を停止する。
【0037】
また、制御器25は、第二圧力センサ24の空気圧が設定値以上であることにより空気負荷がないと検知し、且つ第一圧力センサ22の蒸気圧が所定値未満であることにより蒸気負荷があると検知する場合には、給蒸弁16を閉じてスチームモータ3を停止する。この場合、第二蒸気ヘッダ18ひいては蒸気利用機器には、バイパス路20を介して蒸気が供給される。
【0038】
さらに、制御器25は、第二圧力センサ24の空気圧が設定値未満であることにより空気負荷があると検知し、且つ第一圧力センサ22の蒸気圧が所定値以上であることにより蒸気負荷がないと検知する場合には、電動機11により圧縮機4を駆動する。本実施例では、前述したように、スチームモータ3と電動機11とは共通の圧縮機4に接続されるので、電動機11は前記圧縮機(スチームモータ3でも駆動可能な圧縮機)4を駆動する。但し、場合により、電動機11は、前記圧縮機4とは異なる圧縮機を駆動してもよい。この場合、スチームモータ3により駆動される第一の圧縮機4からの圧縮空気と、電動機により駆動される第二の圧縮機からの圧縮空気とは、共通の圧縮空気路23またはエアタンクを介して、圧縮空気利用機器へ供給される。そして、第二の圧縮機を駆動させる電動機は、第二圧力センサ24にて検出される空気圧に基づき制御される。
【0039】
但し、制御器25は、第二圧力センサ24の空気圧が設定値未満であることにより空気負荷があると検知し、且つ第一圧力センサ22の蒸気圧が所定値以上であることにより蒸気負荷がないと検知する場合にも、電動機11に代えてまたは電動機11に加えて、給蒸弁16を開いてスチームモータ3を運転してもよい。ここで、電動機11に代えてスチームモータ3を運転する場合、電動機11は必ずしも必要でないことになる。
【0040】
このようにして制御される場合、排蒸路17に設けられる逆流防止弁19により、排蒸路17を介したスチームモータ3への蒸気の逆流が防止される。たとえば、空気負荷がなく蒸気負荷がある場合、給蒸弁16が閉じられた状態で、バイパス路20経由で第二蒸気ヘッダ18へ蒸気が供給されるが、この際、蒸気が排蒸路17を逆流してスチームモータ3の軸封部から漏れるのを防止できる。また、蒸気負荷がない場合、仮に逆流防止弁19がなければ、スチームモータ3の軸封部からの蒸気漏れに起因して、自力式の減圧弁から構成されるバイパス弁21の作用により、蒸気が排蒸路17を逆流してスチームモータ3の軸封部から漏れてしまうが、逆流防止弁19を設置することでそのような不都合が回避される。
【0041】
このような構成でも、給蒸弁16を開いてスチームモータ3を運転する際、スチームモータ3の軸封部からは蒸気が漏れることになる。この漏れ蒸気は、前述したように、タイミングギアの潤滑油と蒸気との混合を防止する上で必要であるが、漏れ分だけ熱効率が劣ることになる。そこで、本実施例では、スチームモータ3の軸封部から漏れる蒸気および/またはそのドレンにより、ボイラ2への給水の加熱に利用される。
【0042】
たとえば、軸封部からの漏れ蒸気は、ボイラ2への給水タンク5へ直接に吹き込まれて、ボイラ2への給水を加熱する。あるいは、軸封部からの漏れ蒸気は、給水タンク5への給水、または給水タンク5からボイラ2への給水と、熱交換器において間接熱交換されて、ボイラ2への給水を加熱する。このようにして、漏れ蒸気からの熱回収を図ることができる。
【0043】
図1では、スチームモータ3の排蒸口9(図2)は、漏れ熱回収路26を介して、給水タンク5へ配管される。これにより、スチームモータ3の軸封部から漏れる蒸気やそのドレンは、給水タンク5に回収され、給水タンク5の水の加温に用いられる。この場合でも、逆流防止弁19の作用により、給蒸弁16が閉じられた状態では、スチームモータ3への蒸気の逆流が防止され、給水タンク5へは漏れ蒸気および/またはそのドレンが供給されない。これにより、給水タンク5内の貯留水が必要以上に加温されるのが防止される。
【0044】
また、スチームモータ3の軸封部から漏れる蒸気および/またはそのドレンと、給水タンク5への給水とを熱交換させて、給水タンク5への給水を温める構成としてもよい。具体的には、図3に示すように、漏れ熱回収路26の中途と、給水タンク5への給水路27の中途とに、熱交換器28を設置すればよい。図3において、スチームモータ3の軸封部から漏れる蒸気および/またはそのドレンは、熱交換後に給水タンク5へ供給されてもよい。
【0045】
ところで、図1の蒸気システム1では、給水タンク5には、各種の蒸気利用機器からのドレンも回収される。たとえば、スチームモータ3で発生するドレンは、スチームトラップ29を介して、ドレン回収路30により給水タンク5に回収される。これにより、給水タンク5内の貯留水を、ドレンで温めることができる。
【0046】
さらに、図1の蒸気システム1では、給水タンク5への給水路27は、圧縮機4を介して、給水タンク5と接続される。これにより、給水タンク5への給水を用いて圧縮機4を冷却すると共に、給水タンク5への給水を圧縮機4の熱で温めることができる。この際、圧縮機4は、油などの媒体を介して冷却を図られ、この油が給水タンク5への給水にて冷却されてもよい。
【0047】
本発明の蒸気システムは、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、スチームモータ3への給蒸弁16が閉じられた状態で、蒸気が排蒸路17を逆流してスチームモータ3の軸封部から漏れるのを防止するために、排蒸路17に逆流防止弁19を設ける構成であれば、構成および制御は適宜に変更される。
【0048】
たとえば、前記実施例では、逆流防止弁19は、逆止弁から構成したが、電磁弁により構成してもよい。その場合、その電磁弁は、給蒸弁16が開かれた際には開かれ、給蒸弁16が閉じられた際には閉じられるように、給蒸弁16と連動して制御される。
【0049】
また、前記実施例では、被動機は圧縮機4としたが、圧縮機4に代えてポンプまたは送風機を設置してもよい。その場合も、前記実施例と同様に制御することができる。さらに、圧縮機4に代えて、真空ポンプを設置してもよい。その場合、スチームモータ3や電動機11により駆動される真空ポンプが吸引する空間内の圧力に基づき、スチームモータ3または電動機11を制御すればよい。また、被動機は、場合により発電機としてもよい。
【0050】
また、前記実施例において、給蒸弁16の開閉のハンチングを防止するために、「設定値」および/または「所定値」は、それぞれ動作隙間(ディファレンシャル)を設定してもよいのはもちろんである。たとえば、圧縮空気の使用に伴い、設定下限圧力になると、給蒸弁16を開ける一方、設定上限圧力になると、給蒸弁16を閉じればよい。さらに、制御器25は、第二圧力センサ24の検出圧力に基づき、空気圧を設定圧力域に維持するように、給蒸弁16の開度を制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の蒸気システムの一実施例を示す概略図である。
【図2】図1で用いられるスクリュ式スチームモータの軸封部を示す概略図であり、一部を断面にして示している。
【図3】本発明の蒸気システムの変形例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0052】
1 蒸気システム
2 ボイラ
3 スチームモータ(原動機)
4 圧縮機(被動機)
5 給水タンク
14 給蒸路
16 給蒸弁
17 排蒸路
18 第二蒸気ヘッダ
19 逆流防止弁
20 バイパス路
21 バイパス弁
26 漏れ熱回収路
28 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を用いて動力を起こすスチームモータと、
このスチームモータへの給蒸路に設けられる給蒸弁と、
前記スチームモータにて使用後の蒸気が供給される箇所へ、前記スチームモータを介することなく蒸気を供給するバイパス路と、
このバイパス路に設けられ、背圧を一定に保持するバイパス弁と、
前記スチームモータからの排蒸路に設けられ、前記給蒸弁が閉じられた状態で前記スチームモータへ蒸気が逆流するのを防止する逆流防止弁と
を備えることを特徴とする蒸気システム。
【請求項2】
前記逆流防止弁は、逆止弁とされるか、または前記給蒸弁が全閉された際に閉じられる電磁弁とされる
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸気システム。
【請求項3】
前記バイパス弁は、自力式の減圧弁とされる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸気システム。
【請求項4】
前記スチームモータへは、ボイラからの蒸気が前記給蒸路を介して供給され、
前記スチームモータの軸封部から漏れる蒸気および/またはそのドレンにより、前記ボイラへの給水を加熱する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸気システム。
【請求項5】
前記スチームモータの軸封部から漏れる蒸気および/またはそのドレンは、漏れ熱回収路を介して前記ボイラの給水タンクへ供給され、
前記逆流防止弁は、前記給蒸弁が閉じられた際、前記バイパス路からの蒸気が前記排蒸路を介して前記スチームモータへ逆流するのを防止するよう閉じられる
ことを特徴とする請求項4に記載の蒸気システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−38128(P2010−38128A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205020(P2008−205020)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【特許番号】特許第4353311号(P4353311)
【特許公報発行日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】