説明

蒸気タービンロータ

【課題】
本発明の課題は、300℃よりも低い蒸気温度での湿り蒸気環境において作動させるための最適化された蒸気タービンロータを提供することである。
【解決手段】
最終段の動翼(18b)の領域における蒸気タービンロータの降伏強さが、初期段の動翼(4b)の領域における蒸気タービンロータの降伏強さよりも大きいことにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、300℃よりも低い温度で作動する蒸気タービン用のロータ、特に湿り蒸気内で作動し、従って応力腐食割れ(SCC)に対して改善された抵抗力を必要とするロータに関する。
【背景技術】
【0002】
湿り蒸気内において低温で作動する蒸気タービンロータは、応力腐食割れ(SCC)の問題に苦慮している。この問題は特に焼き嵌めされた円盤を有するロータに関連しているがモノボリックでかつ溶接されたロータでも起こっている。SCCの開始と伝播に関する主たる影響は、(i)ロータ材料の(重大な塑性変形を生じることなく材料内で発達した最大応力の表示としてよく規定された)降伏強さ、(ii)ロータの作動応力、そして(iii)ロータの温度と作動環境である。所定の温度の場合、蒸気タービンロータ鋼内でSCC開始に必要とされる応力は、材料の降伏強さが減少するにつれて増大する。同様にして、所定の降伏強さの場合、SCC開始に必要とされる応力は温度が上昇するにつれて増大する。したがって材料の降伏強さと、部材応力と作動温度に相互関連する任意の特別な蒸気タービンロータのための一系列の敷居曲線を作ることができる。特別な降伏強さのロータが特別な敷居曲線を超える応力および/または温度で作動すると、SCCに対して脆弱であると考えられる。
【0003】
蒸気タービン業界における公知の手法は、モノボリックでかつ溶接されたロータが均一な降伏強さを全体にわたって有するように、湿り蒸気内において低温で使用するためにこのロータを熱処理することである。しかしながら大きな直径の最終タービン段の動翼を支持するために必要な強度は通常上流に配置された小さな直径の初期タービン段を支持するために必要な強度に比べて著しく大きい。このことは初期タービン段を支持するロータの部品がその降伏強さから見て“通常の尺度を超えている”ことを意味するだけでなく、これらの部品はSCCに対して脆弱であるケースでもある。というのもこれらの部品は高温でかつ苛酷な湿度環境で作動しているからである。結果として、初期タービン段の動翼を支持する従来のモノボリックでかつ溶接されたロータは、SCCの開始と伝播に対して特に脆弱である場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、300℃よりも低い蒸気温度での湿り蒸気環境において作動させるための最適化された蒸気タービンロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、300℃よりも低い蒸気温度での湿り蒸気環境において作動させるための最適化された蒸気タービンロータであって、ロータが最終行程の動翼と少なくとも一つの初期段の動翼を取付けるための各領域を有する蒸気タービンロータにおいて、最終行程の動翼の領域における蒸気タービンロータの降伏強さが、初期段の動翼の領域における蒸気タービンロータの降伏強さよりも大きいことを特徴とする蒸気タービンロータを提供することにより上記の課題を克服する。
【0006】
当業者には、蒸気通路の下流あるいは出口端に配置されたタービン段が、最終タービン段を指しており、最終段の上流、すなわち蒸気通路の入口端近くに配置されたタービン段
が初期タービン段を指していることがわかる。蒸気がタービンの入口で乾いているが、一つあるいはそれ以上の段を通って膨張する時点までに湿る場合、前述の段落で言及した動翼の初期タービン段は、湿り蒸気に遭遇する最初の段である。蒸気がタービンの入口で湿っている場合、前述の段落で言及した動翼の初期タービン段は、動翼の最初の段である。
【0007】
本発明により、生産コストを大幅に上げることなく、降伏強さが不均一な蒸気タービンロータの製造が可能になる。
【0008】
低温で使用される公知のモノボリックで溶接されたロータとは異なり、低圧蒸気タービン、すなわち本発明の上記タービンロータはその軸方向長さに沿って均一な降伏強さを有していない。その代わりに降伏強さは異なるタービン段に相応するロータの異なる領域で違っている。例えばロータが最終段の動翼と初期段の動翼の間に少なくとも一つの中間段の動翼を取付けるために構成されている場合、初期あるいは中間段に相応するロータの領域は互いに同じ降伏強さを有するが、最終段よりは小さい降伏強さを有するように設計されている。代替え案として、この領域は異なる降伏強さを有しており、領域の降伏強さは蒸気通路の過流方向に増大する。この場合中間段の動翼の領域内の蒸気タービンロータの降伏強さは、各々初期及び最終段の動翼の領域内の蒸気タービンロータの降伏強さの間の値を有する。三つのタービン段用に構成されたロータの場合、第一タービン段は湿り蒸気内で作動するように見込まれているが、第一タービン段の領域内の蒸気タービンロータの降伏強さは、第二タービン段の領域内の蒸気タービンロータの降伏強さよりも小さく、第二タービン段の領域内の蒸気タービンロータの降伏強さは、最終タービン段の領域内の蒸気タービンロータの降伏強さよりも小さい。
【0009】
本発明の好ましい実施形態において、蒸気タービンロータは軸方向に連続して一緒に溶接された鍛造された多数の円盤を備え、鍛造された円盤が各々少なくとも一つの段の動翼をそこに取付けるために構成されている。鍛造された円盤が全て同じ材料から成る場合、異なる段の領域内での蒸気タービンロータの異なる降伏強さは、相応する円盤が成形するために鍛造された後であるが一緒に溶接する前に、相応する円盤に様々な熱処理を施すことにより達せられる。
【0010】
異なる段の領域内における蒸気タービンロータの異なる降伏強さは異なる化学的性質を有する合金材料の相応する円盤を作ることにより達せられる。特に低強度材料は初期タービン段に関連して鍛造している円盤用に使用することができる。円盤は降伏強さを適切に調節するために鍛造後であるが溶接前に異なる熱処理を施される。
【0011】
別の実施形態において、蒸気タービンロータはモノボリック構造であり、このモノボリック構造においてロータは動翼を収容するために機械加工された単一の鍛造物でできている。この場合個々の領域の降伏強さの必要とされるバリエーションは、動翼が取付けられるべきロータの領域の局所的熱処理により(すなわち電磁誘導加熱あるいは抵抗加熱により)達せられる。言い換えれば異なる段の領域内での蒸気タービンロータの異なる降伏強さは前記領域に異なる熱処理を施すことにより達せられる。
【0012】
さらに本発明は、300℃よりも低い蒸気温度での湿り蒸気環境において作動させるための最適化された蒸気タービンロータを製造するための方法であって、ロータが最終行程の動翼と少なくとも一つの初期段の動翼を取付けるための各領域を有している方法において、この方法が以下の工程、すなわち第一降伏強さを達成するために、第一段の動翼の領域内において少なくとも一つの材料を選択しかつ熱処理する工程と、第二降伏強さを達成するために、初期段の動翼の領域内において少なくとも一つの材料を選択しかつ熱処理する工程を備え、第一降伏強さが第二降伏強さよりも大きいことを特徴とする方法を提供する。
【0013】
ロータが最終段の動翼の領域と初期段の動翼の領域の間で少なくとも一つの中間段の動翼をそこに取付けるための少なくとも一つの中間領域を有している場合、本方法はさらに第一及び第二降伏強さの間の降伏強さを達成するために、ロータの中間領域内で材料を選択および/または熱処理する工程を備えている。
【0014】
初期タービン段(言い換えれば高温湿度環境で作動する段)と関連した蒸気タービンロータの領域内の降伏強さが小さいことによりこれらの領域内で応力腐食割れ(SCC)の開始が生じる危険は減る。蒸気タービンロータの特別な領域を確実なものにすることによりSCCの影響は受けにくく、この領域のための降伏強さはこの領域のための部材の応力と作動温度の予想される範囲に基づいた敷居値を超えないように選択することができる。湿り蒸気通路内の任意の場所でのピーク応力レベルと、動翼取付け領域での予想される部材応力レベルには特別な注意を払うべきである。敷居曲線により設定された限界内の最適化された降伏強さは可能な限り小さいが、領域が関連したタービン段の動翼を支持できるには十分である。
【0015】
本発明の他の側面は以下の記載と従属請求項に目を通すことにより明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施例を添付の図に関連して説明する。
【実施例】
【0017】
図1において、反応型の低圧蒸気タービンは、多数の個別の鍛造された円盤から形成されたロータ2を備えている。この件では各々第一、第二及び第三の円盤10,16及び20が配置されている。適切な円盤材料の具体例は、2%のCrNiMo鋼、3%のNiCrMo鋼、3.5%のNiCrMoV鋼及び12%のCrNiMo鋼である。円盤は環状の接合線A及びBに沿って溶接されており、この接合線は各々、中間円盤の両側のフランジすなわちカラー16a,16bと、第一円盤の右側及び第三円盤の左側の対応するフランジすなわちカラー10a,20aとにより規定されている。
【0018】
蒸気はほとんどの場合迅速に“湿り蒸気”すなわち水蒸気と小さな水滴の混合物になるように、図示したように左から右へ蒸気タービンを通って膨張する。しかしながら、幾つかの環境において、例えば幾つかの核反応システム用の蒸気タービンにおいて、蒸気はタービンの入口において常に湿っている。蒸気から力を抽出するために、円盤10,16及び20は可動なタービンブレード4b,6b,14b及び18bの環状列を備えている。
可動なタービンブレードの各列の手前には固定のタービンブレード4a,6a,14a及び18aの環状列が設けられており、この環状列の目的は最適な空力学的及び熱力学的条件下で、後続の動翼列内への蒸気の膨張を保証する。動翼の各列を静止したブレードの先行する列と組合わせることによりタービン段が構成される。したがって全ロータは幾つかのタービンブレードの段、この例では四つの段を備えている。したがって比較的高圧の乾燥蒸気あるいは湿り蒸気は、固定されたブレード4aを経由して300℃未満でタービンに入り、かつタービン段4a/4b,6a/6b,14a/14b,18a/18bを通って急速に膨張し、それにより低温で低圧の湿り蒸気になる。各々の場合において、固定のブレード4a,6a,14a及び18aはケーシング8に固定されており、可動なタービンブレード4b,6b,14b及び18bは公知のタイプの根元固定機構を使用して円盤10,16,20の各々に固定されている。第二及び第三円盤は通常各々一列の動翼14b,18bしか支持しないが、第一円盤は一列より多くの動翼、この場合各々独自の根元固定機構を用いて二列4b,6bを支持する。
【0019】
先に論じたように、円盤10,16及び20は蒸気タービン内において様々な温度で作動し、したがって本発明によれば全ての湿り蒸気環境での作動に適した様々な降伏強さを有するように製造されている。例えば円盤10に関する第一及び第二タービン段は高温条件下で作動する。さらに蒸気が湿っている場合、第一円盤10が低い降伏強さを有していると有利である、なぜならこれにより応力腐食割れ(SCC)が始まりかつ伝播する危険が減るからである(以下参照)。円盤16に関する第三タービン段は第一及び第二タービン段に比べて低温湿度条件で作動する。したがって第二円盤16の降伏強さは第一円盤10よりも大きいが、それでもSCCの危険が低いことで得をしている。第一及び第二円盤10と16の降伏強さは、第一、第二及び第三タービン段の動翼が適切に支持できるように十分でなければならないのは当然である。
【0020】
第三円盤20は最終タービン段の大きな可動のブレード18bを支持しなければならず、したがって第三円盤は大きな降伏強さを有していなければならない。しかしながら、
最終タービン段は第一、第二及び第三タービン段に比べてさらに低温で作動する。これは降伏強さをSCCに対して必ずしも脆弱にすることなく、第三円盤20の降伏強さが高いことを意味する。一般的に見て円盤材料の降伏強さが小さい程、SCCの始まりに関わらず円盤にかかる応力は大きい。したがって本発明は高温湿り蒸気段での低強度円盤鍛造物と低温湿り蒸気段での高強度鍛造物を提案する。
【0021】
他のタイプの蒸気タービン設計(例えばモノボリックモーターと鍛造された円盤が中心軸上で焼き嵌めされる設計)と比較して、図1に示したタービン設計のタイプ−軸方向に連続した鍛造されかつ溶接された円盤を備え、円盤材料はブレードにより及ぼされる回転力によって比較的小さい応力をかけられる−は、降伏強さが小さい材料の使用を可能にする。一般的に、このような円盤の降伏強さは前述の鋼の場合550〜800MPaの範囲にあるが、本発明によれば鍛造された円盤10,16及び20の実際の許容降伏強さは敷居曲線を基準にして決定される。
【0022】
図2はSCCに対する脆弱性の下限を示す特別な円盤材料に関する一系列の敷居曲線を示す。敷居曲線は各々、既定の温度の場合の降伏強さに対する有効応力をグラフ化したものである。温度Tは温度Tよりも低く、さらに温度Tよりも低い。作動温度と有効応力レベルは円盤の各々の目的に合わせて一様ではない。図2から、第一円盤10が温度Tで作動する場合、もし降伏強さ−有効応力座標が下部敷居曲線の右側に(別の言葉で言えば上方に)位置していると第一円盤はSCCの開始と伝播に対して脆弱であることがわかる。しかしながら降伏強さ−有効応力座標が下部敷居曲線の左側に(すなわち下方に)位置していると、第一円盤10はSCCに対して脆弱ではない。したがって第一円盤10の降伏強さは、降伏強さ−有効応力座標が敷居曲線の適正な(左)側で余裕をもって位置しているように選択することができる。円盤20が低い温度Tで作動している場合、第三円盤はずっと大きな降伏強さを有しているが、一方で降伏強さ−有効応力座標が上部敷居曲線の左側に位置しているのが依然として保証されることが容易にわかる。
【0023】
SCCの開始と伝播に対する脆弱性から見て、降伏強さ−有効応力座標が適切な敷居曲線の左側のどこかに位置しているように選択できることが明らかであり、降伏強さは蒸気タービンの適切な段において動翼が適切に支持されるのに十分である。
【0024】
円盤10,16及び20は同じ材料から鍛造されているが、特別な作動環境のために適切な降伏強さを有するように様々な熱処理を施されていると都合がよい。しかしながら、円盤10,16及び20は様々な材料から鍛造され得ることも容易にわかる、例えば第一及び第二タービン段用の第一円盤10は、最終タービン段用の第三円盤と違い、異なる化学組成の合金でできていてもよい。次いで個々の円盤10,16及び20は互いに溶接されて、通常の方法でロータ2を形成する。
【0025】
前述の説明は互いに軸方向に連続して溶接された一つあるいはそれより多くの鍛造された円盤から製造されたタービンロータに焦点を当てたものである。しかしながら、本発明はさらに他のタイプの蒸気タービンロータ、特にモノボリックロータにも適用可能であり、ロータがただ一つの材料から成り立っていることを除いて、ほぼ同じ考慮すべき事項が当てはまる。
【0026】
図3はインパルスタイプの蒸気タービンで使用するための代表的なモノボリックロータ22を図式化したものである。ロータ22は中心軸24と二組の“リム”26,28を備え、各組は軸方向に連続して五つのリム“a”〜“e”を備えており、この五つのリムは軸と一体化して鍛造され、かつタービン内で(図示していない)様々な段の動翼を支持するようになっている。リムの数量は蒸気タービンが有する段数を規定しており、ロータ22の最終機械加工の後、環状列の動翼はリム26a〜e,28a〜eの各々に嵌合する。五段のタービンは可動な各列の手前で(図示していない)固定されたブレードの環状ダイヤフラムを挿入することにより形成されている。この場合、ロータ22はダブルフローのインパルスタイプの蒸気タービン用に設計されており、この蒸気タービンにおいて蒸気30は相対的に高温高圧でロータ22の軸方向長さに対して中央位置でタービンに入り、かつ矢印34により示したように両軸方向で同時にタービンの段を通って膨張する。
【0027】
本発明によれば、ロータ22は、選択された高温及び低温の湿り蒸気段に相応するロータの領域内で必要とされる引張り強度を達成するために鍛造された後熱処理される。
必要とされる局部的な熱処理がロータ22に加えられる工程の実例は、電磁誘導加熱と抵抗加熱である。
【0028】
蒸気がタービンに入る際常に湿っていると仮定すると、タービンの高温部分のリム26a,b及び28a,bはタービンの低温部分のリム26c〜e及び28c〜eよりも小さい降伏強さを有するようにリムは熱処理される。さらに(経済的に正当であれば)降伏強さの増大が三あるいはそれより多くの段階で段階分けされるように各リムを熱処理することも可能である。例えば最高圧力/高温湿り蒸気段を支持するリムリム26a,b及び28a,bは降伏強さが最も小さく、中間圧力/温度湿り蒸気段26c,d及び28c,dを支持するリムは降伏強さが中間であり、最低圧力/温度湿り蒸気段を支持するリム26e,28eは降伏強さが最も大きい。
【0029】
それに対して、蒸気がタービンに入る際湿っていないが、リム26c,28cに相応する段までに湿ると、タービンの高温湿り蒸気部分内のリム26c,d及び28c,dは
タービンの低温湿り蒸気部分内のリム26e及び28eよりも小さい降伏強さを有するようにリムは熱処理される。
【0030】
従って図1のロータ2と同様にして、
−ロータ22の個々の領域の降伏強さの必要とされるバリエーションは、動翼、すなわち高温湿り蒸気段のための低強度リムと低温湿り蒸気段のための高強度リムが取付けられるロータの場所の熱処理により達せられる。
−各領域内の降伏強さは図2により例示されたような特殊なロータ材料のための一系列の有効応力/降伏強さ敷居曲線を参照することにより最適化される。
【0031】
本発明は純粋に実例により前述のように説明してきた。変形は請求した発明の範囲内で作ることができる。さらに本発明はこの中に記載されているかあるいは必然的に含まれている、または図、あるいはいずれのこのような特徴いずれの組合わせ、あるいはこのような特徴あるいはそれについての同等物にも適用される組合わせのいずれの一般化したものにおいて示したかあるいは必然的に含まれているいずれの個々の特徴にある。したがって本発明の間口及び範囲は前述の代表的実施形態のいずれよっても限定されるべきではない。明細書に開示された特徴はいずれも請求項と図を含んでいるが、特に明確に述べられていない限り、同じか同等かあるいは類似の目的に役立つ代替え的特徴によって置き換えられてもよい。
【0032】
明細書を通して従来技術を論じても、どれもこのような従来技術が広く知られているかあるいはその分野において共通の一般認識を形成することが認められることにはならない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による溶接されたロータを有する蒸気タービンの一部の軸方向横断面図である。
【図2】図1の溶接されたロータを構成する個々の円盤鍛造物の降伏強さを決定するために、あるいは図3の一体鋳造のロータの個々の領域の降伏強さを決定するために使用される一系列の敷居曲線を示す図である。
【図3】本発明による蒸気タービンモノブロックロータの軸方向横断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
300℃よりも低い蒸気温度での湿り蒸気環境において作動させるための最適化された蒸気タービンロータ(2)であって、
ロータが最終段の動翼(18b)と少なくとも一つの初期段の動翼(4b)とを取付けるための各領域を有する蒸気タービンロータにおいて、
最終段の動翼(18b)の領域における蒸気タービンロータの降伏強さが、初期段の動翼(4b)の領域における蒸気タービンロータの降伏強さよりも大きいことを特徴とする蒸気タービンロータ。
【請求項2】
最終段の動翼(18b)と初期段の動翼(4b)との間において少なくとも一つの中間段の動翼(14b)をそこに取付けるための領域を備え、この場合中間段の動翼の領域内での蒸気タービンロータの降伏強さが、最終及び初期段の動翼の領域内での蒸気タービンロータの降伏強さの間の値を有していることを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンロータ。
【請求項3】
軸方向に連続して一緒に溶接された鍛造された多数の円盤(10,16,20)を備え、鍛造された円盤が各々少なくとも一つの段の動翼(4b,6b,14b,18b)をそこに取付けるために構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の蒸気タービンロータ。
【請求項4】
異なる降伏強さを有する領域内でロータを備えた鍛造された円盤が同じ材料から成ることを特徴とする請求項3記載の蒸気タービンロータ。
【請求項5】
異なる降伏強さを有する領域内でロータを備えた鍛造された円盤が互いに異なる材料から成ることを特徴とする請求項3記載の蒸気タービンロータ。
【請求項6】
モノボリック蒸気タービンロータを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の蒸気タービンロータ。
【請求項7】
異なる降伏強さを有する領域が様々に熱処理されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一つに記載の蒸気タービンロータ。
【請求項8】
タービンの初期段の動翼の領域が、タービンの第一段の動翼(4b)の領域であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の蒸気タービンロータ。
【請求項9】
300℃よりも低い蒸気温度での湿り蒸気環境において作動させるための最適化された蒸気タービンロータを製造するための方法であって、
ロータが最終行程の動翼と少なくとも一つの初期段の動翼を取付けるための各領域を有している方法において、
この方法が以下の工程、すなわち
第一降伏強さを達成するために、第一段の動翼の領域(20)内において材料を熱処理および/または選択する工程と、
第二降伏強さを達成するために、初期段の動翼の領域(10)内において材料を熱処理および/または選択する工程とを備え、
この場合第一降伏強さが第二降伏強さよりも大きいことを特徴とする方法。
【請求項10】
タービンの初期段の動翼の領域が、タービンの第一段の動翼の領域であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
ロータが最終段の動翼(20)の領域と初期段の動翼(10)の領域の間で少なくとも一つの中間段の動翼をそこに取付けるための少なくとも一つの中間領域(16)を有しており、本方法がさらに第一及び第二降伏強さを達成するためにローラーの中間領域内で材料を選択および/または熱処理する工程を備えていることを特徴とする請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
ロータ(2)内で全円盤(10,16,20)用の同じ材料を選択し、この材料が仕上られたロータの湿り蒸気環境において予め設定された範囲の降伏強さを有している工程と、
円盤を各々所望の形状に鍛造する工程と、
各円盤により構成されたロータの領域に応じた異なる降伏強さを達成するために鍛造された円盤を熱処理する工程と、
異なる降伏強さの領域を有する蒸気タービンロータを製造するために、円盤を軸方向で連続して一緒に溶接する工程とを備えていることを特徴とする請求項3の蒸気タービンロータを製造する方法。
【請求項13】
少なくとも第一及び第二の異なる円盤材料を選択し、この場合第一材料が仕上られたロータ(2)の湿り蒸気環境において第二材料よりも低い降伏強さを有している工程と、
最終段の動翼(18b)を取付けるために構成された円盤(20)内に前記第一円盤材料を鍛造する工程と、
少なくとも一つの初期段の動翼(4b)を取付けるために構成された少なくとも一つの円盤(10)内に前記第二円盤材料を鍛造する工程と、
異なる降伏強さの領域を作るために別々に鍛造された円盤を熱処理する工程と、
蒸気タービンロータを製造するために、円盤を軸方向で連続して一緒に溶接する工程とを備えていることを特徴とする請求項3に記載の蒸気タービンロータを製造する方法。
【請求項14】
ロータ用の材料を選択し、その後の成形及び熱処理後の材料が仕上られたロータの湿り蒸気環境において予め設定された範囲の降伏強さを有している工程と、
ロータを所望の形状に形成する工程と、
異なる降伏強さの領域を有する蒸気タービンロータを製造するために、ロータの領域を熱処理する工程とを備えていることを特徴とする請求項6記載の蒸気タービンロータを製造する方法。
【請求項15】
蒸気タービンロータの各領域に関する予想される範囲の応力と作動温度に基づいた敷居曲線を参照することにより、蒸気タービンロータの各領域の最適な降伏強さを決定する工程を備えていることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−307840(P2006−307840A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−79981(P2006−79981)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】