説明

蒸気タービン発電プラント

【課題】負荷遮断が行われた場合にタービン回転数が上昇することを抑制して信頼性を向上させることができる蒸気タービン発電プラントを提供する。
【解決手段】本発明による蒸気タービン発電プラント1は、主蒸気2を発生させる過熱器5および再熱蒸気3を発生させる再熱器6を備えたボイラ4と、主蒸気2が供給される高圧タービン7と、再熱蒸気3が供給される第1中圧タービン部9と、第1中圧タービン部9に中圧部連絡管11を介して連結され、第1中圧タービン部9から排気された再熱蒸気3が供給される第2中圧タービン部10とを有する中圧タービン8と、第2中圧タービン部10から排気された再熱蒸気3が供給される低圧タービン22とを備えている。高圧タービン7、第1中圧タービン部9、第2中圧タービン部10、および低圧タービン22に発電機23が連結されている。また、この蒸気タービン発電プラント1は、中圧部連絡管11内における再熱蒸気3の通流を遮断可能な過速度防止弁19を更に備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラにおいて生成された蒸気が供給される高圧タービン、中圧タービン、および低圧タービンと、これら高圧タービン、中圧タービン、および低圧タービンに連結された発電機とを備えた蒸気タービン発電プラントに係り、とりわけ、負荷遮断が行われた場合にタービン回転数が上昇することを抑制して信頼性を向上させることができる蒸気タービン発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全を背景として、火力発電設備の高効率化が積極的に進められており、具体的には、600℃級程度の高温蒸気を利用した蒸気タービン発電プラントの運転が行われている。このような蒸気タービン発電プラントにおいては各部の温度が従来よりも高くなるため、一般的なフェライト系耐熱鋼を用いる場合、この温度上昇に対して各部の機械的強度を確保することが困難になる。このことに対処するために、高温特性に優れた耐熱合金または耐熱合金鋼が使用されることがある。
【0003】
特に、ボイラにおいて生成される再熱蒸気の温度を650℃以上とする場合、中圧タービンのロータおよびケーシングに、オーステナイト系耐熱合金または耐熱合金鋼が使用されることがある。このオーステナイト系耐熱合金または耐熱合金鋼は、優れた高温特性を有しているが、フェライト系耐熱鋼に比べて材料の製造性が劣る。このため、オーステナイト系耐熱合金または耐熱合金鋼を用いて任意の形状を形成すること、および形成後に本来の特性を発揮させることが困難となる場合がある。さらにこのオーステナイト系耐熱合金または耐熱合金鋼は高価であるという問題もある。
【0004】
また、このオーステナイト系材料はフェライト系材料に比べて熱伝導率が低い。ここで、プラント起動時またはプラント停止時などのように負荷が変化する際、一般的にタービンのロータに熱応力が過大に負荷されることがある。このことにより、オーステナイト系材料を用いる場合には、その熱伝導率が低いために、プラント起動時またはプラント停止時の負荷変化率を低く抑えて熱応力が過大に負荷されることを抑制する必要がある。このため、オーステナイト系材料を用いる場合には、一般的な蒸気タービン発電プラントに比べて運転効率が低下するという問題がある。
【0005】
このような問題を解決するために、優れた高温特性を有する高価な材料の使用量を低減して蒸気タービン発電プラントの設備コストが上昇することを抑制するとともに、ロータ数が増加することを抑制して振動に対する安定性を確保した蒸気タービン発電プラントが知られている(例えば、特許文献1参照)。この蒸気タービン発電プラントにおいては、中圧タービンが、オーステナイト系耐熱鋼により形成された高温高圧側の第1中圧タービン部とフェライト系耐熱鋼により形成された低温低圧側の第2中圧タービン部とに分離され、この第1中圧タービン部と第2中圧タービン部との間に、第1中圧タービン部から排気された蒸気を第2中圧タービン部に供給する中圧部連絡管が連結されている。
【0006】
この特許文献1に示す蒸気タービン発電プラントにおいて発電機の負荷遮断が行われた場合、まず、所定の整定速度調停率に基づいて、蒸気加減弁とインターセプト弁が急速に全閉する。このことにより、主蒸気の通流および再熱蒸気の通流が遮断されて蒸気タービンのタービン回転数が上昇することが抑制される。なお、このとき、残留していた主蒸気および再熱蒸気によりタービン回転数は一旦上昇するが、各蒸気の通流が遮断されたことによりその後下降する。次に、整定速度調停率に基づいて蒸気加減弁およびインターセプト弁が開弁し、タービン回転数が無負荷状態における整定回転数に達する。
【特許文献1】特許第4074208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したようにインターセプト弁が全閉した場合であっても、第1中圧タービン部と第2中圧タービン部との間に連結された中圧部連絡管内に再熱蒸気が残留しており、この残留蒸気が第2中圧タービン部および低圧タービンに流入し、第2中圧タービン部および低圧タービンにて膨張仕事を行う。このことにより、負荷遮断直後のタービン回転数は上昇し、場合によっては非常調速機が作動することもある。
【0008】
ここで、このようにタービン回転数を増大させる要因としては以下が挙げられる。
(a)蒸気加減弁とインターセプト弁の始動遅れによるもの
(b)蒸気加減弁とインターセプト弁の閉鎖時間によるもの
(c)負荷遮断時の各タービン内および各管内の残留蒸気によるもの
【0009】
このうち(a)と(b)については、蒸気加減弁とインターセプト弁の全閉動作を改善することによりタービン回転数の上昇を抑制することができる。一方特許文献1に示す蒸気タービン発電プラントにおいては、上述の(c)の要因による影響が大きい。すなわち、第1中圧タービン部と第2中圧タービン部との間に連結された中圧部連絡管内に残留している残留蒸気が第2中圧タービン部に流入して膨張仕事を行い、その結果タービン回転数が上昇していると考えられる。
【0010】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、負荷遮断が行われた場合にタービン回転数が上昇することを抑制して信頼性を向上させることができる蒸気タービン発電プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、主蒸気を発生させる過熱器および再熱蒸気を発生させる再熱器を備えたボイラと、前記主蒸気が供給される高圧タービンと、前記再熱蒸気が供給される第1中圧タービン部と、前記第1中圧タービン部に中圧部連絡管を介して連結され、当該第1中圧タービン部から排気された前記再熱蒸気が供給される第2中圧タービン部とを有する中圧タービンと、前記第2中圧タービン部から排気された前記再熱蒸気が供給される低圧タービンと、前記高圧タービン、前記第1中圧タービン部、前記第2中圧タービン部、および前記低圧タービンに連結された発電機と、前記中圧部連絡管内における前記再熱蒸気の通流を遮断可能な過速度防止弁と、を備えたことを特徴とする蒸気タービン発電プラントである。
【0012】
本発明は、主蒸気を発生させる過熱器および再熱蒸気を発生させる再熱器を備えたボイラと、前記主蒸気が供給される第1高圧タービン部と、前記第1高圧タービン部に高圧部連絡管を介して連結され、当該第1高圧タービン部から排気された前記主蒸気が供給される第2高圧タービン部とを有する高圧タービンと、前記再熱蒸気が供給される中圧タービンと、前記中圧タービンから排気された前記再熱蒸気が供給される低圧タービンと、前記第1高圧タービン部、前記第2高圧タービン部、前記中圧タービン、および前記低圧タービンに連結された発電機と、前記高圧部連絡管内における前記主蒸気の通流を遮断する過速度防止弁と、を備えたことを特徴とする蒸気タービン発電プラントである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、中圧タービンの第1中圧タービン部から排気された再熱蒸気が中圧部連絡管内において通流することを遮断可能な過速度防止弁が設けられている。このことにより、定格負荷運転を行っている間に発電機の負荷遮断が行われた場合、この過速度防止弁により中圧部連絡管内における再熱蒸気の通流を遮断することができる。このため、第2中圧タービン部および低圧タービンに流入される残留蒸気の量を低減してタービン回転数が上昇することを抑制し、信頼性を向上させることができる。
【0014】
本発明によれば、高圧タービンの第1高圧タービン部から排気された主蒸気が高圧部連絡管内において通流することを遮断可能な過速度防止弁が設けられている。このことにより、定格負荷運転を行っている間に発電機の負荷遮断が行われた場合、この過速度防止弁により高圧部連絡管内における主蒸気の通流を遮断することができる。このため、第2高圧タービン部に流入される残留蒸気の量を低減してタービン回転数が上昇することを抑制し、信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1の実施の形態
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1は、本発明の第1の実施の形態における蒸気タービン発電プラントを示す図である。
【0016】
図1に示す蒸気タービン発電プラント1は、主蒸気2および再熱蒸気3を発生させるボイラ4と、高圧ロータ7aを有し、主蒸気2が供給される高圧タービン7と、再熱蒸気3が供給される中圧タービン8とを備えている。このうち中圧タービン8は、第1中圧ロータ9aを含み、再熱蒸気3が供給される第1中圧タービン部9と、第2中圧ロータ10aを含み、第1中圧タービン部9に中圧部連絡管11を介して連結され、第1中圧タービン部9から排気された再熱蒸気3が供給される第2中圧タービン部10とを有している。ボイラ4は、後述するボイラ給水ポンプ26から供給される給水を過熱して主蒸気2を発生させる過熱器5と、高圧タービン7から排気された主蒸気2を再過熱して再熱蒸気3を発生させる再熱器6とを有している。
【0017】
ボイラ4の過熱器5と高圧タービン7との間に、過熱器5から高圧タービン7に主蒸気2を供給する主蒸気管12が連結されている。この主蒸気管12には主蒸気止め弁13が設けられ、この主蒸気止め弁13の下流側(高圧タービン7側)には蒸気加減弁14が設けられている。この蒸気加減弁14は、蒸気タービンの出力を調整するために主蒸気管12を通流する主蒸気2の流量を調整可能に構成されている。高圧タービン7と再熱器6との間に、高圧タービン7から排気された主蒸気2を再熱器6に供給する低温再熱管15が連結されている。
【0018】
ボイラ4の再熱器6と第1中圧タービン部9との間に、再熱器6から第1中圧タービン部9に再熱蒸気3を供給する高温再熱管16が連結されている。この高温再熱管16には再熱蒸気止め弁17が設けられ、この再熱蒸気止め弁17の下流側(第1中圧タービン部9側)にはインターセプト弁(中圧部蒸気弁)18が設けられている。このインターセプト弁18は再熱器6から第1中圧タービン部9に供給される再熱蒸気3の通流を遮断可能に構成されている。
【0019】
図1に示す中圧部連絡管11に、内部における再熱蒸気3の通流を遮断可能な過速度防止弁19が設けられている。ここで、この過速度防止弁19は、定格負荷運転が行われている場合、常時全開となっている。このため、この過速度防止弁19としては、中圧部連絡管11内を通流する再熱蒸気3の圧力損失が増大することを抑制可能な弁を用いることが好ましく、とりわけバタフライ型の弁を用いることが好適である。また、過速度防止弁19は、中圧部連絡管11のうち第2中圧タービン部10に近接した位置に配置することが好ましい。このことにより、過速度防止弁19を全閉した場合に、過速度防止弁19と第2中圧タービン部10との間に残留している残留蒸気の量をより一層低減させることができる。
【0020】
この過速度防止弁19に、過速度防止弁19を所望の整定速度調定率に基づいてインターセプト弁18と同期して開閉動作させる制御装置20が接続されている。この制御装置20は、蒸気加減弁14、インターセプト弁18にも接続され、発電機23の負荷遮断が行われた場合にタービン回転数信号に基づいてタービン回転数が上昇したか否かを判断し、上昇したと判断すると蒸気加減弁14、インターセプト弁18、および過速度防止弁19を全閉動作するように構成されている。さらにこの制御装置20は、蒸気加減弁14、インターセプト弁18、および過速度防止弁19を全閉動作させた後、タービン回転数が一旦上昇して最大回転数を経て下降を開始したと判断した場合に過速度防止弁19を全開させる。ここで、過速度防止弁19を全開させる際、急速に全開させる必要はなく、比較的低速(ランプ状動作)で全開させることが好ましい。あるいは、インターセプト弁18によるブローダウン動作に影響を与えることがない程度の速度で全開させることが好ましい。このことにより、タービン回転数が上述の最大回転数まで再び上昇することを防止することができる。なお、制御装置20が過速度防止弁19を全開させる条件としては、タービン回転数が一旦上昇して最大回転数を経て下降を開始したと判断した場合に限られることはなく、例えばタイマー(図示せず)を用いて所定の時間が経過したことを条件としてもよい。
【0021】
図1に示すように、第2中圧タービン部10にクロスオーバー管21を介して低圧タービン22が連結されており、この低圧タービン22は低圧ロータ22aを有し、第2中圧タービン部10から排気された再熱蒸気3が低圧タービン22に供給されるように構成されている。
【0022】
また、高圧タービン7、第1中圧タービン部9、第2中圧タービン部10、および低圧タービン22に、回転軸23aを有する発電機23が連結されている。すなわち、図1に示すように、高圧タービン7の高圧ロータ7aと第2中圧タービン部10の第2中圧ロータ10aとが一体化されて高圧・第2中圧一体ロータ24を構成し、第1中圧タービン部9の第1中圧ロータ9a、高圧・第2中圧一体ロータ24、低圧タービン22の低圧ロータ22a、および発電機23の回転軸23aが連結部29を介して同一軸線上で順次連結されている。
【0023】
ここで、第1中圧タービン部9の第1中圧ロータ9aに用いる材料としては、耐熱性の優れたオーステナイト系耐熱鋼を用いることが好ましい。このことにより、第1中圧タービン部9に供給される再熱蒸気3の温度が高温化された場合(例えば再熱蒸気3の温度が700℃級の場合)においても、高温時における機械的強度の信頼性を確保することができる。また、高圧タービン7の高圧ロータ7a、第2中圧タービン部10の第2中圧ロータ10a、低圧タービン22の低圧ロータ22aに用いる材料としては、フェライト系耐熱鋼を用いることが好ましい。このことにより、比較的高価なオーステナイト系耐熱鋼を用いる量を低減させることができ、設備コストが増大することを抑制することができる。
【0024】
さらに、低圧タービン22に、この低圧タービン22から排気される再熱蒸気3を冷却し凝縮させて復水とする復水器25が連結され、この復水器25に復水を昇圧してボイラ4の過熱器5に還流するボイラ給水ポンプ26が連結されている。
【0025】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0026】
図1に示すように、まず、ボイラ給水ポンプ26から還流された給水がボイラ4の過熱器5において過熱されて主蒸気2が生成される。次に、この主蒸気2が主蒸気管12へ導かれ、主蒸気止め弁13および蒸気加減弁14を通って高圧タービン7に供給される。このとき、主蒸気止め弁13は全開しているが、蒸気加減弁14は主蒸気2の流量を調整してタービンの出力を調整するために所望の開度に設定されている。高圧タービン7に供給された主蒸気2は膨張仕事を行い、その後高圧タービン7から排気されて低温再熱管15を通ってボイラ4の再熱器6に供給される。
【0027】
再熱器6に供給された主蒸気2は再過熱され、再熱蒸気3が生成されて高温再熱管16に導かれ、再熱蒸気止め弁17およびインターセプト弁18を通って中圧タービン8の第1中圧タービン部9に供給される。このとき、再熱蒸気止め弁17およびインターセプト弁18は全開になっている。第1中圧タービン部9に供給された再熱蒸気3は膨張仕事を行い、その後第1中圧タービン部9から排気されて中圧部連絡管11に導かれ、過速度防止弁19を通って第2中圧タービン部10に供給される。このとき、過速度防止弁19は全開になっている。第2中圧タービン部10に供給された再熱蒸気3は膨張仕事を行い、その後第2中圧タービン部10から排気されてクロスオーバー管21を通って低圧タービン22に供給される。
【0028】
低圧タービン22に供給された再熱蒸気3は膨張仕事を行い、その後低圧タービン22から排気されて復水器25に供給され復水となる。この復水は、ボイラ給水ポンプ26に送られて昇圧され、ボイラ4の過熱器5に還流される。その後、過熱器5において過熱されて主蒸気2が生成される。このようにして蒸気が循環する。
【0029】
この間、高圧タービン7において主蒸気2が膨張仕事を行うとともに、第2中圧タービン部10において再熱蒸気3が膨張仕事を行っているため、高圧タービン7の高圧ロータ7aと第2中圧タービン部10の第2中圧ロータ10aとにより構成される高圧・第2中圧一体ロータ24が回転駆動されている。また、第1中圧タービン部9および低圧タービン22において、再熱蒸気3がそれぞれ膨張仕事を行っているため、第1中圧タービン部9の第1中圧ロータ9a、および低圧タービン22の低圧ロータ22aが回転駆動されている。このことにより、第1中圧ロータ9a、高圧・第2中圧一体ロータ24、低圧ロータ22aに連結された発電機23の回転軸23aが回転し、発電機23が発電している。
【0030】
ここで、蒸気タービン発電プラント1が定格負荷運転を行っている間に発電機23の負荷遮断が行われた場合、まず、中圧部連絡管11に設けられた過速度防止弁19が所望の整定速度調定率に基づいてインターセプト弁18と同期して急速に全閉する。この場合制御装置20は、まず、タービン回転数信号に基づいてタービン回転数が上昇したと判断し、その後過速度防止弁19を全閉動作させる。このことにより中圧部連絡管11内における再熱蒸気3の通流を迅速に遮断して、第2中圧タービン部10および低圧タービン22に流入される残留蒸気の量を低減させることができる。
【0031】
このとき、制御装置20からの指令を受けて蒸気加減弁14も同様にして急速に全閉し、主蒸気管12内における主蒸気2の通流を迅速に遮断して高圧タービン7に流入される残留蒸気の量を低減させるとともに、インターセプト弁18も急速に全閉し、高温再熱管16内における再熱蒸気3の通流を迅速に遮断して第1中圧タービン部9に流入される残留蒸気の量を低減させている。このことによりタービン回転数が上昇することを抑制することができる。
【0032】
なお、蒸気加減弁14、インターセプト弁18、および過速度防止弁19が全閉した後、残留していた蒸気によりタービン回転数は一旦上昇して最大回転数に達するが、その後各蒸気の通流が遮断されたことによりタービン回転数は下降する。
【0033】
次に、制御装置20は、タービン回転数信号に基づいてタービン回転数が下降を開始したと判断し、蒸気加減弁14、インターセプト弁18、および過速度防止弁19を全開させる。この場合、蒸気加減弁14、インターセプト弁18、および過速度防止弁19の開度が上述の整定速度調定率に基づいて全開し、タービン回転数が無負荷状態における整定回転数に達する。この間、過速度防止弁19は比較的低速(ランプ状動作)で、あるいは、インターセプト弁18によるブローダウン動作に影響を与えることがない程度の速度で全開する。このことにより、タービン回転数が最大回転数まで再び上昇することを防止することができる。
【0034】
このように本実施の形態によれば、中圧タービン8の第1中圧タービン部9と第2中圧タービン部10との間に連結された中圧部連絡管11に、内部における再熱蒸気3の通流を遮断可能な過速度防止弁19が設けられ、この過速度防止弁19に所望の整定速度調定率に基づいて過速度防止弁19をインターセプト弁18と同期して開閉動作させる制御装置20が接続されている。このことにより、蒸気タービン発電プラント1が定格負荷運転を行っている間に発電機23の負荷遮断が行われた場合、インターセプト弁18と同期して過速度防止弁19を急速に全閉させて、中圧部連絡管11内における再熱蒸気3の通流を迅速に遮断することができる。このため、第2中圧タービン部10および低圧タービン22に流入される残留蒸気の量を低減してタービン回転数が上昇することを抑制し、信頼性を向上させることができる。
【0035】
また本実施の形態によれば、中圧タービン8が、オーステナイト系耐熱鋼により形成された第1中圧ロータ9aを含む第1中圧タービン部9とフェライト系耐熱鋼により形成された第2中圧ロータ10aを含む第2中圧タービン部10とを有している。このことにより、ボイラ4の再熱器6から第1中圧タービン部9に供給される再熱蒸気3の温度が高温化された場合においても、第1中圧タービン部9の高温時における機械的強度の信頼性を確保することができるとともに、比較的高価なオーステナイト系耐熱鋼を用いる量を低減させて設備コストが増大することを抑制することができる。
【0036】
また本実施の形態によれば、高圧タービン7の高圧ロータ7aと第2中圧タービン部10の第2中圧ロータ10aとが一体化されて高圧・第2中圧一体ロータ24が構成されている。このことにより、ロータ数が増加することを抑制して、振動に対する安定性を確保することができる。
【0037】
なお、本実施の形態においては、中圧部連絡管11に過速度防止弁19が設けられている例について述べたが、このことに限られることはなく、第2中圧タービン部10の内部、とりわけ中圧部連絡管11に近接した位置に設けても良い。このことにより、過速度防止弁19を全閉した場合に中圧部連絡管11内に残留している残留蒸気が第2中圧タービン部10に流入することを確実に防止して、タービン回転数が上昇することを確実に抑制することができる。
【0038】
本発明の変形例
次に、本発明による蒸気タービン発電プラントの変形例について説明する。本変形例は、制御装置が発電機の負荷遮断が行われた後に過速度防止弁をインターセプト弁に先行して開閉動作させるものであり、他の構成は図1に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0039】
本変形例においては、制御装置20は、発電機23の負荷遮断が行われた後に過速度防止弁19をインターセプト弁18に先行して開閉動作させる。すなわち、この制御装置20は、発電機23の電流信号と高圧タービン7における主蒸気2の圧力信号とに基づいて、発電機23の出力と高圧タービン7にかかる負荷との間の関係が、定格運転時における関係と異なっているか否かを判断し、異なっていると判断した場合に負荷遮断が行われたことを電気的に認識して、過速度防止弁19を全閉動作するように構成されている。
【0040】
このように本変形例によれば、蒸気タービン発電プラント1が定格負荷運転を行っている間に発電機23の負荷遮断が行われた場合、インターセプト弁18に先行して過速度防止弁19を急速に全閉させる。この場合制御装置20は、まず、発電機23の電流信号と高圧タービン7にける主蒸気2の圧力信号とに基づいて、発電機23の電流と高圧タービン7にかかる負荷との間の関係が定格運転時における関係と異なっていると判断し、その後、過速度防止弁19を全閉動作させる。このことにより、中圧部連絡管11内における再熱蒸気3の通流をより一層迅速に遮断することができる。このため、過速度防止弁19をより一層急速に全閉させ、第2中圧タービン部10および低圧タービン22に流入される残留蒸気の量を低減することができ、タービン回転数が上昇することを抑制して信頼性をより一層向上させることができる。
【0041】
第2の実施の形態
次に、図2により、本発明の第2の実施の形態における蒸気タービン発電プラントについて説明する。ここで図2は、本発明の第2の実施の形態における蒸気タービン発電プラントを示す図である。
【0042】
図2に示す第2の実施の形態において、蒸気タービン発電プラントは、高圧タービンの高圧ロータと第1中圧タービン部の第1中圧ロータとが一体化されて高圧・第1中圧一体ロータを構成し、高圧タービンと第1中圧タービン部との間に、高圧タービンから第1中圧タービン部に主蒸気を供給するクーリング蒸気管が連結されている点が異なり、他の構成は、図1に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図2において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
図2に示すように、高圧タービン7の高圧ロータ7aと第1中圧タービン部9の第1中圧ロータ9aとが一体化されて高圧・第1中圧一体ロータ27を構成し、高圧・第1中圧一体ロータ27、第2中圧タービン部10の第2中圧ロータ10a、低圧タービン22の低圧ロータ22a、および発電機23の回転軸23aが連結部29を介して同一軸線上で順次連結されている。
【0044】
高圧タービン7と第1中圧タービン部9との間に、この高圧タービン7から抽気された主蒸気2の一部を第1中圧タービン部9に供給するクーリング蒸気管28が連結されている。なお、本実施の形態においては、このように高圧タービン7から抽気された主蒸気2の一部が第1中圧タービン部9に供給されるように構成されているが、このことに限られることはなく、例えば高圧タービン7から排気される主蒸気2の一部が第1中圧タービン部9に供給されるように構成されていてもよい。
【0045】
図2に示す本実施の形態においては、高圧タービン7において主蒸気2が膨張仕事を行うとともに、第1中圧タービン部9において再熱蒸気3が膨張仕事を行っているため、高圧タービン7の高圧ロータ7aと第1中圧タービン部9の第1中圧ロータ9aとにより構成される高圧・第1中圧一体ロータ27が回転駆動されている。また、第2中圧タービン部10および低圧タービン22において再熱蒸気3がそれぞれ膨張仕事を行っているため、第2中圧タービン部10の第2中圧ロータ10aおよび低圧タービン22の低圧ロータ22aがそれぞれ回転駆動されている。このことにより、高圧・第1中圧一体ロータ27、第2中圧ロータ10a、低圧ロータ22aに連結された発電機23の回転軸23aが回転し、発電機23が発電している。
【0046】
また、高圧タービン7から抽気された主蒸気2の一部がクーリング蒸気管28に導かれて第1中圧タービン部9にクーリング蒸気として供給される。このことにより、第1中圧タービン部9の第1中圧ロータ9aおよびケーシング(図示せず)を冷却することができる。このため、第1中圧タービン部9の第1中圧ロータ9aに用いる材料として耐熱性の優れたオーステナイト系耐熱鋼を用いることなく、フェライト系耐熱鋼を用いることができ、設備コストが増大することを抑制することができる。
【0047】
このように本実施の形態によれば、中圧タービン8の第1中圧タービン部9と第2中圧タービン部10との間に連結された中圧部連絡管11に、内部における再熱蒸気3の通流を遮断可能な過速度防止弁19が設けられている。このことにより、蒸気タービン発電プラント1が定格負荷運転を行っている間に発電機23の負荷遮断が行われた場合、中圧部連絡管11内における再熱蒸気3の通流を迅速に遮断することができる。この場合、過速度防止弁19により、中圧部連絡管11内に残留している再熱蒸気3だけではなく、高圧タービン7から抽気されてクーリング蒸気管28内に残留している主蒸気2が第2中圧タービン部10および低圧タービン22に流入されることを防止することができる。このため、第2中圧タービン部10および低圧タービン22に流入される残留蒸気の量を低減してタービン回転数が上昇することを抑制し、信頼性を向上させることができる。
【0048】
また本実施の形態によれば、高圧タービン7の高圧ロータ7aと第1中圧タービン部9の第1中圧ロータ9aとが一体化されて高圧・第1中圧一体ロータ27が構成されている。このことにより、ロータ数が増加することを抑制して、振動に対する安定性を確保することができる。
【0049】
第3の実施の形態
次に、図3により、本発明の第3の実施の形態における蒸気タービン発電プラントについて説明する。ここで図3は、本発明の第3の実施の形態における蒸気タービン発電プラントを示す図である。
【0050】
図3に示す第3の実施の形態において、中圧タービンは、ボイラの第1再熱器から第1再熱蒸気が供給される第3中圧タービン部を更に有し、この第3中圧タービン部から排気された第1再熱蒸気がボイラの第2再熱器において再熱されて第2再熱蒸気として第1中圧タービン部に供給されている点が異なり、他の構成は、図1に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図3において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0051】
図3に示すように、中圧タービン8は、第3中圧ロータ30aを含み、ボイラ4から再熱蒸気3が供給される第3中圧タービン部30を更に有している。ボイラ4は、ボイラ給水ポンプ26から供給される給水を過熱して主蒸気2を発生させる過熱器5と、高圧タービン7から排気された主蒸気2を再熱して再熱蒸気3を発生させる再熱器とを有している。このうち再熱器は、主蒸気2を再熱して第1再熱蒸気3aを発生させる第1再熱器31と、第3中圧タービン部30から排気された第1再熱蒸気3aを再熱して第2再熱蒸気3bを発生させる第2再熱器32とを有しており、再熱蒸気3として第1再熱蒸気3aと第2再熱蒸気3bとをそれぞれ発生させるように構成されている。
【0052】
高圧タービン7と第1再熱器31との間に、高圧タービン7から排気された主蒸気2を第1再熱器31に供給する第1低温再熱管33が連結されている。
【0053】
また、第1再熱器31と第3中圧タービン部30との間に、第1再熱器31から第3中圧タービン部30に第1再熱蒸気3aを供給する第1高温再熱管34が連結されている。この第1高温再熱管34には第1再熱蒸気止め弁35が設けられ、この第1再熱蒸気止め弁35の下流側(第3中圧タービン部30側)には第1インターセプト弁36が設けられている。この第1インターセプト弁36は第1再熱器31から第3中圧タービン部30に供給される第1再熱蒸気3aの通流を遮断可能に構成されている。第3中圧タービン部30と第2再熱器32との間に、第3中圧タービン部30から排気された第1再熱蒸気3aを第2再熱器32に供給する第2低温再熱管37が連結されている。
【0054】
さらに、第2再熱器32と第1中圧タービン部9との間に、第2再熱器32から第1中圧タービン部9に第2再熱蒸気3bを供給する第2高温再熱管38が連結されている。この第2高温再熱管38には第2再熱蒸気止め弁39が設けられ、この第2再熱蒸気止め弁39の下流側(第1中圧タービン部9側)には第2インターセプト弁(中圧部蒸気弁)40が設けられている。この第2インターセプト弁40は第2再熱器32から第1中圧タービン部9に供給される第2再熱蒸気3bの通流を遮断可能に構成されている。
【0055】
このようにして、第3中圧タービン部30から排気された第1再熱蒸気3aがボイラ4の第2再熱器32において再熱されて第2再熱蒸気3bとして第1中圧タービン部9に供給されるように構成されている。
【0056】
また、高圧タービン7の高圧ロータ7aと第2中圧タービン部10の第2中圧ロータ10aとが一体化されて高圧・第2中圧一体ロータ41が構成されるとともに、第3中圧タービン部30の第3中圧ロータ30aと第1中圧タービン部9の第1中圧ロータ9aとが一体化されて第1中圧・第3中圧一体ロータ42が構成され、図3に示すように、第1中圧・第3中圧一体ロータ42、高圧・第2中圧一体ロータ41、低圧タービン22の低圧ロータ22aおよび発電機23の回転軸23aが連結部29を介して同一軸線上で順次連結されている。
【0057】
図3に示すように、過速度防止弁19に、過速度防止弁19を所望の整定速度調定率に基づいて第2インターセプト弁40と同期して開閉動作させる制御装置20が接続されている。この制御装置20は、蒸気加減弁14、第1インターセプト弁36、および第2インターセプト弁40にも接続され、発電機23の負荷遮断が行われた場合にタービン回転数信号に基づいてタービン回転数が上昇したか否かを判断し、上昇したと判断すると蒸気加減弁14、第1インターセプト弁36、第2インターセプト弁40、および過速度防止弁19を全閉動作するように構成されている。さらにこの制御装置20は、蒸気加減弁14、第1インターセプト弁36、第2インターセプト弁40、および過速度防止弁19を全閉動作させた後、タービン回転数が一旦上昇して最大回転数を経て下降を開始したと判断した場合に過速度防止弁19を全開させる。
【0058】
図3に示す本実施の形態において、高圧タービン7において膨張仕事を行った主蒸気2は、その後高圧タービン7から排気されて第1低温再熱管33を通ってボイラ4の第1再熱器31に供給される。
【0059】
第1再熱器31に供給された主蒸気2は再過熱され、第1再熱蒸気3aが生成される。この第1再熱蒸気3aは第1高温再熱管34に導かれ、第1再熱蒸気止め弁35および第1インターセプト弁36を通って中圧タービン8の第3中圧タービン部30に供給される。このとき、第1再熱蒸気止め弁35および第1インターセプト弁36は全開になっている。第3中圧タービン部30に供給された第1再熱蒸気3aは膨張仕事を行い、その後第3中圧タービン部30から排気されて第2低温再熱管37を通ってボイラ4の第2再熱器32に供給される。
【0060】
第2再熱器32に供給された第1再熱蒸気3aは再熱され、第2再熱蒸気3bが生成される。この第2再熱蒸気3bは第2高温再熱管38に導かれ、第2再熱蒸気止め弁39および第2インターセプト弁40を通って第1中圧タービン部9に供給される。このとき、第2再熱蒸気止め弁39および第2インターセプト弁40は全開になっている。第1中圧タービン部9に供給された第2再熱蒸気3bは膨張仕事を行い、その後第1中圧タービン部9から排気されて中圧部連絡管11に導かれ、過速度防止弁19を通って第2中圧タービン部10に供給される。このとき、過速度防止弁19は全開になっている。
【0061】
第2中圧タービン部10に供給された第2再熱蒸気3bは膨張仕事を行い、その後第2中圧タービン部10から排気されてクロスオーバー管21を通って低圧タービン22に供給される。この第2再熱蒸気3bは低圧タービン22において膨張仕事を行い、その後低圧タービン22から排気されて復水器25に供給されて復水となる。この復水は、ボイラ給水ポンプ26に送られて昇圧され、ボイラ4の過熱器5に還流される。その後、過熱器5において過熱されて主蒸気2が生成される。このようにして蒸気が循環する。
【0062】
この間、高圧タービン7において主蒸気2が膨張仕事を行うとともに、第2中圧タービン部10において第2再熱蒸気3bが膨張仕事を行っているため、高圧タービン7の高圧ロータ7aと第2中圧タービン部10の第2中圧ロータ10aとにより構成される高圧・第2中圧一体ロータ41が回転駆動されている。同様に、第3中圧タービン部30において第1再熱蒸気3aが膨張仕事を行うとともに、第1中圧タービン部9において第2再熱蒸気3bが膨張仕事を行っているため、第3中圧タービン部30の第3中圧ロータ30aと第1中圧タービン部9の第1中圧ロータ9aとにより構成される第1中圧・第3中圧一体ロータ42が回転駆動されている。さらに、低圧タービン22において第2再熱蒸気3bが膨張仕事を行っているため、低圧タービン22の低圧ロータ22aが回転駆動されている。このことにより、第1中圧・第3中圧一体ロータ42、高圧・第2中圧一体ロータ41、低圧ロータ22aに連結された発電機23の回転軸23aが回転し、発電機23が発電している。
【0063】
ここで、蒸気タービン発電プラント1が定格負荷運転を行っている間に発電機23の負荷遮断が行われた場合、まず、中圧部連絡管11に設けられた過速度防止弁19が所望の整定速度調定率に基づいて第2インターセプト弁40と同期して急速に全閉する。
【0064】
このとき、制御装置20からの指令を受けて蒸気加減弁14も同様にして急速に全閉し、主蒸気管12内における主蒸気2の通流を迅速に遮断して高圧タービン7に流入される残留蒸気の量を低減させる。同時に、第1インターセプト弁36および第2インターセプト弁40も急速に全閉し、第1高温再熱管34内および第2高温再熱管38内における再熱蒸気3(第1再熱蒸気3a、第2再熱蒸気3b)の通流を迅速に遮断して第3中圧タービン部30および第1中圧タービン部9に流入される残留蒸気の量をそれぞれ低減させている。このことによりタービン回転数が上昇することを抑制することができる。
【0065】
なお、蒸気加減弁14、第1インターセプト弁36、第2インターセプト弁40、および過速度防止弁19が全閉した後、残留していた蒸気によりタービン回転数は一旦上昇して最大回転数に達するが、その後各蒸気の通流が遮断されたことによりタービン回転数は下降する。
【0066】
次に、制御装置20は、タービン回転数信号に基づいてタービン回転数が下降を開始したと判断し、蒸気加減弁14、第1インターセプト弁36、第2インターセプト弁40、および過速度防止弁19を全開させる。この場合、蒸気加減弁14、第1インターセプト弁36、第2インターセプト弁40、および過速度防止弁19の開度が上述の整定速度調定率に基づいて全開し、タービン回転数が無負荷状態における整定回転数に達する。
【0067】
このように本実施の形態によれば、図3に示す2段再熱型の蒸気タービン発電プラント1においても、中圧タービン8の第1中圧タービン部9と第2中圧タービン部10との間に連結された中圧部連絡管11に、内部における第2再熱蒸気3bの通流を遮断可能な過速度防止弁19が設けられ、この過速度防止弁19に所望の整定速度調定率に基づいて過速度防止弁19を第2インターセプト弁40と同期して開閉動作させる制御装置20が接続されている。このことにより、蒸気タービン発電プラント1が定格負荷運転を行っている間に発電機23の負荷遮断が行われた場合、第2インターセプト弁40と同期して過速度防止弁19を急速に全閉させて、中圧部連絡管11内における第2再熱蒸気3bの通流を迅速に遮断することができる。このため、第2中圧タービン部10および低圧タービン22に流入される残留蒸気の量を低減してタービン回転数が上昇することを抑制し、信頼性を向上させることができる。
【0068】
また本実施の形態によれば、高圧タービン7の高圧ロータ7aと第2中圧タービン部10の第2中圧ロータ10aとが一体化されて高圧・第2中圧一体ロータ41が構成されるとともに、第3中圧タービン部30の第3中圧ロータ30aと第1中圧タービン部9の第1中圧ロータ9aとが一体化されて第1中圧・第3中圧一体ロータ42が構成されている。このことにより、ロータ数が増加することを抑制して、振動に対する安定性を確保することができる。
【0069】
第4の実施の形態
次に、図4により、本発明の第4の実施の形態における蒸気タービン発電プラントについて説明する。ここで図4は、本発明の第4の実施の形態における蒸気タービン発電プラントを示す図である。
【0070】
図4に示す第4の実施の形態において、高圧タービンは、主蒸気が供給される第1高圧タービン部と、第1高圧タービン部に高圧部連絡管を介して連結され、第1高圧タービン部から排気された主蒸気が供給される第2高圧タービン部とを有している点が異なり、他の構成は、図1に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図4において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0071】
図4に示す蒸気タービン発電プラント1は、主蒸気2および再熱蒸気3を発生させるボイラ4と、主蒸気2が供給される高圧タービン7と、中圧ロータ8aを有し、再熱蒸気3が供給される中圧タービン8とを備えている。このうち高圧タービン7は、第1高圧ロータ50aを含み、主蒸気2が供給される第1高圧タービン部50と、第2高圧ロータ51aを含み、第1高圧タービン部50に高圧部連絡管52を介して連結され、第1高圧タービン部50から排気された主蒸気2が供給される第2高圧タービン部51とを有している。
【0072】
ボイラ4の過熱器5と第1高圧タービン部50との間に、過熱器5から第1高圧タービン部50に主蒸気2を供給する主蒸気管12が連結されている。この主蒸気管12には主蒸気止め弁13が設けられ、この主蒸気止め弁13の下流側(第1高圧タービン部50側)には蒸気加減弁(高圧部蒸気弁)14が設けられている。この蒸気加減弁14は、蒸気タービンの出力を調整するために主蒸気管12を通流する主蒸気2の流量を調整可能に構成されている。
【0073】
図1に示す高圧部連絡管52に、内部における主蒸気2の通流を遮断可能な過速度防止弁19が設けられている。ここで、この過速度防止弁19は、定格負荷運転が行われている場合、常時全開となっている。このため、この過速度防止弁19としては、高圧部連絡管52内を通流する主蒸気2の圧力損失が増大することを抑制可能な弁を用いることが好ましく、とりわけバタフライ型の弁を用いることが好適である。また、過速度防止弁19は、高圧部連絡管52のうち第2高圧タービン部51に近接した位置に配置することが好ましい。このことにより、過速度防止弁19を全閉した場合に、過速度防止弁19と第2高圧タービン部51との間に残留している残留蒸気の量をより一層低減させることができる。
【0074】
また、第1高圧タービン部50、第2高圧タービン部51、中圧タービン8、および低圧タービン22に、回転軸23aを有する発電機23が連結されている。すなわち、図4に示すように、第2高圧タービン部51の第2高圧ロータ51aと中圧タービン8の中圧ロータ8aとが一体化されて第2高圧・中圧一体ロータ53を構成し、第1高圧タービン部50の第1高圧ロータ50a、第2高圧・中圧一体ロータ53、低圧タービン22の低圧ロータ22a、および発電機23の回転軸23aが連結部29を介して同一軸線上で順次連結されている。
【0075】
図4に示す蒸気タービン発電プラント1においては、ボイラ4の過熱器5において発生した主蒸気2が主蒸気管12を通って第1高圧タービン部50に供給される。第1高圧タービン部50に供給された主蒸気2は膨張仕事を行い、その後第1高圧タービン部50から排気されて高圧部連絡管に導かれ、過速度防止弁19を通って第2高圧タービン部51に供給される。このとき、過速度防止弁19は全開になっている。第2高圧タービン部51に供給された主蒸気2は膨張仕事を行い、その後第2高圧タービン部51から排気されて低温再熱管15を通ってボイラ4の再熱器6に供給される。
【0076】
再熱器6に供給された主蒸気2は再過熱され、再熱蒸気3が生成される。この再熱蒸気3は高温再熱管16に導かれ、再熱蒸気止め弁17およびインターセプト弁18を通って中圧タービン8に供給される。このとき、再熱蒸気止め弁17およびインターセプト弁18は全開になっている。中圧タービン8に供給された再熱蒸気3は膨張仕事を行い、その後中圧タービン8から排気されてクロスオーバー管21を通って低圧タービン22に供給される。
【0077】
この間、第2高圧タービン部51において主蒸気2が膨張仕事を行うとともに、中圧タービン8において再熱蒸気3が膨張仕事を行っているため、第2高圧タービン部51の第2高圧ロータ51aと中圧タービン8の中圧ロータ8aとにより構成される第2高圧・中圧一体ロータ53が回転駆動されている。また、第1高圧タービン部50および低圧タービン22において、主蒸気2および再熱蒸気3がそれぞれ膨張仕事を行っているため、第1高圧タービン部50の第1高圧ロータ50a、および低圧タービン22の低圧ロータ22aが回転駆動されている。このことにより、第1高圧ロータ50a、第2高圧・中圧一体ロータ53、低圧ロータ22aに連結された発電機23の回転軸23aが回転し、発電機23が発電している。
【0078】
ここで、蒸気タービン発電プラント1が定格負荷運転を行っている間に発電機23の負荷遮断が行われた場合、高圧部連絡管52に設けられた過速度防止弁19が急速に全閉する。このことにより高圧部連絡管52内における主蒸気2の通流を迅速に遮断して第2高圧タービン部51に流入される残留蒸気の量を低減させることができる。
【0079】
このように本実施の形態によれば、高圧タービンの第1高圧タービン部50と第2高圧タービン部51との間に連結された高圧部連絡管52に、内部における主蒸気2の通流を遮断可能な過速度防止弁19が設けられている。このことにより、蒸気タービン発電プラント1が定格負荷運転を行っている間に発電機23の負荷遮断が行われた場合、過速度防止弁19を急速に全閉させて、高圧部連絡管52内における主蒸気2の通流を迅速に遮断することができる。このため、第2高圧タービン部51に流入される残留蒸気の量を低減してタービン回転数が上昇することを抑制し、信頼性を向上させることができる。
【0080】
また本実施の形態によれば、第2高圧タービン部51の第2高圧ロータ51aと中圧タービン8の中圧ロータ8aとが一体化されて第2高圧・中圧一体ロータ53が構成されている。このことにより、ロータ数が増加することを抑制して、振動に対する安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態における蒸気タービン発電プラントを示す図。
【図2】図2は、本発明の第2の実施の形態における蒸気タービン発電プラントを示す図。
【図3】図3は、本発明の第3の実施の形態における蒸気タービン発電プラントを示す図。
【図4】図4は、本発明の第4の実施の形態における蒸気タービン発電プラントを示す図。
【符号の説明】
【0082】
1 蒸気タービン発電プラント
2 主蒸気
3 再熱蒸気
3a 第1再熱蒸気
3b 第2再熱蒸気
4 ボイラ
5 過熱器
6 再熱器
7 高圧タービン
7a 高圧ロータ
8 中圧タービン
8a 中圧ロータ
9 第1中圧タービン部
9a 第1中圧ロータ
10 第2中圧タービン部
10a 第2中圧ロータ
11 中圧部連絡管
12 主蒸気管
13 主蒸気止め弁
14 蒸気加減弁
15 低温再熱管
16 高温再熱管
17 再熱蒸気止め弁
18 インターセプト弁
19 過速度防止弁
20 制御装置
21 クロスオーバー管
22 低圧タービン
22a 低圧ロータ
23 発電機
23a 回転軸
24 高圧・第2中圧一体ロータ
25 復水器
26 ボイラ給水ポンプ
27 高圧・第1中圧一体ロータ
28 クーリング蒸気管
29 連結部
30 第3中圧タービン部
30a 第3中圧ロータ
31 第1再熱器
32 第2再熱器
33 第1低温再熱管
34 第1高温再熱管
35 第1再熱蒸気止め弁
36 第1インターセプト弁
37 第2低温再熱管
38 第2高温再熱管
39 第2再熱蒸気止め弁
40 第2インターセプト弁
41 高圧・第2中圧一体ロータ
42 第1中圧・第3中圧一体ロータ
50 第1高圧タービン部
50a 第1高圧ロータ
51 第2高圧タービン部
51a 第2高圧ロータ
52 高圧部連絡管
53 第2高圧・中圧一体ロータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主蒸気を発生させる過熱器および再熱蒸気を発生させる再熱器を備えたボイラと、
前記主蒸気が供給される高圧タービンと、
前記再熱蒸気が供給される第1中圧タービン部と、前記第1中圧タービン部に中圧部連絡管を介して連結され、当該第1中圧タービン部から排気された前記再熱蒸気が供給される第2中圧タービン部とを有する中圧タービンと、
前記第2中圧タービン部から排気された前記再熱蒸気が供給される低圧タービンと、
前記高圧タービン、前記第1中圧タービン部、前記第2中圧タービン部、および前記低圧タービンに連結された発電機と、
前記中圧部連絡管内における前記再熱蒸気の通流を遮断可能な過速度防止弁と、を備えたことを特徴とする蒸気タービン発電プラント。
【請求項2】
前記高圧タービンが高圧ロータを有し、
前記第2中圧タービン部が第2中圧ロータを有し、
前記高圧ロータと前記第2中圧ロータとが一体化されて高圧・第2中圧一体ロータを構成していることを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービン発電プラント。
【請求項3】
前記高圧タービンが高圧ロータを有し、
前記第1中圧タービン部が第1中圧ロータを有し、
前記高圧ロータと前記第1中圧ロータとが一体化されて高圧・第1中圧一体ロータを構成し、
前記高圧タービンと前記第1中圧タービン部との間に、当該高圧タービンから当該第1中圧タービン部に前記主蒸気を供給するクーリング蒸気管が連結されていることを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービン発電プラント。
【請求項4】
前記再熱器は第1再熱器および第2再熱器を備え、前記再熱蒸気として第1再熱蒸気と第2再熱蒸気をそれぞれ発生させるとともに、
前記中圧タービンは、前記第1再熱器から前記第1再熱蒸気が供給される第3中圧タービン部を更に有し、
前記第3中圧タービン部から排気された前記第1再熱蒸気が前記第2再熱器において再熱され前記第2再熱蒸気として前記第1中圧タービン部に供給されることを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービン発電プラント。
【請求項5】
前記高圧タービンが高圧ロータを有し、
前記第1中圧タービン部が第1中圧ロータを有し、
前記第2中圧タービン部が第2中圧ロータを有し、
前記第3中圧タービン部が第3中圧ロータを有し、
前記高圧ロータと前記第2中圧ロータとが一体化されて高圧・第2中圧一体ロータを構成するとともに、前記第3中圧ロータと前記第1中圧ロータとが一体化されて第1中圧・第3中圧一体ロータを構成することを特徴とする請求項4に記載の蒸気タービン発電プラント。
【請求項6】
前記ボイラの前記再熱器と前記第1中圧タービン部との間に設けられ、当該再熱器から当該第1中圧タービン部に供給される前記再熱蒸気の通流を遮断可能な中圧部蒸気弁と、
前記過速度防止弁に接続され、所望の整定速度調定率に基づいて当該過速度防止弁を前記中圧部蒸気弁と同期して開閉動作させる制御装置と、を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の蒸気タービン発電プラント。
【請求項7】
前記ボイラの前記再熱器と前記第1中圧タービン部との間に設けられ、当該再熱器から当該第1中圧タービン部に供給される前記再熱蒸気の通流を遮断可能な中圧部蒸気弁と、
前記過速度防止弁に接続され、前記発電機の負荷遮断が行われた後に、当該過速度防止弁を前記中圧部蒸気弁に先行して開閉動作させる制御装置と、を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の蒸気タービン発電プラント。
【請求項8】
主蒸気を発生させる過熱器および再熱蒸気を発生させる再熱器を備えたボイラと、
前記主蒸気が供給される第1高圧タービン部と、前記第1高圧タービン部に高圧部連絡管を介して連結され、当該第1高圧タービン部から排気された前記主蒸気が供給される第2高圧タービン部とを有する高圧タービンと、
前記再熱蒸気が供給される中圧タービンと、
前記中圧タービンから排気された前記再熱蒸気が供給される低圧タービンと、
前記第1高圧タービン部、前記第2高圧タービン部、前記中圧タービン、および前記低圧タービンに連結された発電機と、
前記高圧部連絡管内における前記主蒸気の通流を遮断する過速度防止弁と、を備えたことを特徴とする蒸気タービン発電プラント。
【請求項9】
前記第2高圧タービンが第2高圧ロータを有し、
前記中圧タービンが中圧ロータを有し、
前記第2高圧ロータと前記中圧ロータとが一体化されて第2高圧・中圧一体ロータを構成していることを特徴とする請求項8に記載の蒸気タービン発電プラント。
【請求項10】
前記ボイラの前記過熱器と前記第1高圧タービン部との間に設けられ、当該過熱器から当該第1高圧タービン部に供給される前記主蒸気の通流を遮断可能な高圧部蒸気弁と、
前記過速度防止弁に接続され、所望の整定速度調定率に基づいて当該過速度防止弁を前記高圧部蒸気弁と同期して開閉動作させる制御装置と、を更に備えたことを特徴とする請求項8または9に記載の蒸気タービン発電プラント。
【請求項11】
前記ボイラの前記過熱器と前記第1高圧タービン部との間に設けられ、当該過熱器から当該第1高圧タービン部に供給される前記主蒸気の通流を遮断可能な高圧部蒸気弁と、
前記過速度防止弁に接続され、前記発電機の負荷遮断が行われた後に、当該過速度防止弁を前記高圧部蒸気弁に先行して開閉動作させる制御装置と、を更に備えたことを特徴とする請求項8または9に記載の蒸気タービン発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−159702(P2010−159702A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2675(P2009−2675)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】