説明

蒸気流量計

【課題】 プラント起動時に外部から水などの液体を供給して受圧ダイアフラム面を保護する必要がなく、異物が溜まりにくくかつ取り付け性に優れたインライン型の蒸気流量計を提供する。
【解決手段】 配管内を流れる蒸気の流量を検出する蒸気流量計1において、配管に取り付けられる絞り機構部110と、絞り機構部を流れる蒸気の差圧を検出するダイアフラム122を有し、蒸気流量計の配管への取り付け状態において当該絞り機構部110より上部に取り付けられた受圧部と、受圧部のダイアフラム面に被着され、当該ダイアフラム面と協働して内部に蒸気が液化したときの液体溜まり用空間を形成するフランジカバー121と、一端が絞り機構部110に接続されるとともに他端がフランジカバー121の上部に接続され、絞り機構部110からの蒸気を液体溜まり用空間の上部に導く導圧管130を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば石油化学や化学工業等の各種プラントの蒸気ラインに用いられるラインマウント型の蒸気流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から石油化学や化学工業等の各種プラントの蒸気ラインにラインマウント型の蒸気流量計が用いられている(例えば、特許文献1参照)。かかるラインマウント型の蒸気流量計は、オリフィス、楕円スロート、ベンチェリ管などの絞り機構部と差圧発信器を組み合わせて構成される。具体的には、図4及び図5に示すように、蒸気配管50の一部に取り付けられた絞り機構部51と、蒸気配管50の下方に配置された差圧発信器(差圧計)60から構成されている。そして、絞り機構部51は、配管内部に形成されたオリフィス等からなる絞り部(図示せず)と、絞り部に接続されかつ開閉バルブ53a,54aを備えた蒸気導圧部53,54を有している。また、蒸気導圧部53,54には水溜め用のコンデンサ55,56を介して導圧管57,58の一端が接続され、当該導圧管57,58の他端が蒸気配管下方に位置する差圧発信器60に接続されている。
【0003】
なお、差圧発信器60は、ここでは詳細には示さないがステンレスでできた円柱状のダイアフラムベースと、ダイアフラムベースの両側面に備わりステンレスでできた受圧ダイアフラムを有している。そして、導圧管57,58の他端から伝達された圧力が受圧ダイアフラムに印加され、ダイアフラムベース内に封入された圧力伝達油を介して差圧発信器60の圧力測定部に備わったシリコン圧力センサに伝達される。このシリコン圧力センサの起歪領域を差圧に応じて変形させることでこの変形量を抵抗値の変化量として検出し、差圧を測定することで蒸気流量を求めている。
【0004】
蒸気配管50の絞り機構部51と組み合わせて使用される差圧発信器60は、上述したように流体の圧力を金属製の受圧ダイアフラムが受圧し、その圧力を圧力伝達油がシリコン圧力センサに伝える構造を有している。従って、受圧ダイアフラムが高温の蒸気に直接さらされ、差圧発信器内部の圧力伝達油の温度が伝熱により高温となる。なお、圧力伝達油は高温で熱分解をするため、その熱分解温度よりも低い温度で使用する必要がある。そのため、上述したように差圧発信器60を絞り機構部51より下側に取り付け、導圧管57,58と差圧発信器60のダイアフラム面に水を溜め、圧力を測定すべき蒸気が受圧ダイアフラムに恒常的に接触しないように蒸気を水と置換する構成がとられている。
【特許文献1】特開平5−322607号公報(2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように導圧管57,58に水を溜めるためには特別に水溜め用のコンデンサ55,56が必要になる。そして、プラント稼動前には、例えば作業者がコンデンサ55,56にそれぞれ水を補給しなければならない。実際のプラントには多数の蒸気流量計が備わっており、作業者がプラント稼動前に全ての蒸気流量計に備わったコンデンサに水を供給しなければならない。
【0006】
また、上述のように受圧ダイアフラムが水に接するようにする必要上、蒸気の流量を計測する蒸気配管50の下方に蒸気流量計の受圧部を配置する必要がある。そのため、蒸気中の錆などの異物が受圧ダイアフラムに接する水溜まり部に堆積し易く、受圧ダイアフラムの動きを制限して正確な流量測定に支障をきたす恐れもある。
【0007】
一方、蒸気流量計に耐熱性の高い圧力伝達油を使用した高熱用のリモートシール型発信器を用いる方法もある。しかしながら、この場合でも高温の水蒸気が受圧ダイアフラムに長期間接していると受圧ダイアフラムにおいて水素透過現象が生じる恐れがある。なお、ここでいう水素透過現象とは、受圧ダイアフラムが長期間高温高圧の蒸気にさらされることで水素元素が受圧ダイアフラムの内部を熱拡散現象により移動し、発信器内部の圧力伝達油に水素が溶け込む現象である。このようにして水素が圧力伝達油に溶け込むと、圧力伝達油内で高圧によって圧縮されていた水素が例えばプラント停止時などにおいて受圧ダイアフラムへの圧力が印加されなくなると急に膨張し、受圧ダイアフラムを変形させて正確な流量測定に支障をきたす恐れがある。
【0008】
このように、標準の差圧発信器を用いる場合であっても、高温用のリモートシール型差圧発信器を用いる場合であっても、高温高圧の蒸気による影響から受圧ダイアフラムを保護する必要があるため、受圧ダイアフラム面が水に接して長期間直接蒸気に接しないようにする必要がある。すなわち、現状の蒸気流量計ではどのようなタイプの差圧発信器を用いても、プラント稼動前に差圧発信器の導圧管やコンデンサに水を供給する必要がある。
【0009】
特に化学プラントの蒸気ラインは、タンクや蒸留塔などの様々な場所に張り巡らされているため、プラント稼動前に作業者が蒸気ラインに点在して設けられた各差圧発信器に水を供給して回る必要があり、非常に手間がかかっていた。
【0010】
本発明の目的は、プラント稼動前に外部から水などの液体を供給して受圧ダイアフラム面を保護する必要がなく、異物が溜まりにくくかつ取り付け性に優れたインライン型の蒸気流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明にかかる蒸気流量計は、配管内を流れる蒸気の流量を検出する蒸気流量計であって、配管に取り付けられる絞り機構部と、前記絞り機構部内を流れる蒸気の差圧を検出するダイアフラムを有し、前記蒸気流量計の配管への取り付け状態において当該絞り機構部より上部に取り付けられた受圧部と、前記受圧部のダイアフラム面に被着され、当該ダイアフラム面と協働して内部に蒸気が液化してダイアフラム面よりも上まで液体が溜まる液体溜まり用空間を形成するフランジカバーと、一端が前記絞り機構部に接続されるとともに他端が前記フランジカバーの上部に接続され、前記絞り機構部からの蒸気を前記液体溜まり用空間の上部に導く導圧管を備えたことを特徴としている。
【0012】
蒸気流量計を構成する差圧発信器と絞り機構部をこのように配置することで、差圧発信器が絞り機構部より上部に配置されていても、フランジカバー上部よりフランジカバー内に入った蒸気はフランジカバー及びダイアフラムにより冷却され凝縮し、このフランジカバーとダイアフラムとが協働して形成する水溜まり用の空間内に水となって短時間で溜まる。
【0013】
このようにダイアフラムとフランジカバーに挟まれた空間に水が溜まることで、プラント稼動前に水を補給することなくダイアフラムを蒸気から保護することができる。
【0014】
また、受圧部及びフランジカバーが絞り機構配管部よりも上にあるため、蒸気中の異物やゴミなどが水溜まり用の空間に堆積するのを防ぐことができる。
【0015】
また、本発明の請求項2に記載の蒸気流量計は、配管内を流れる蒸気の流量を検出する蒸気流量計であって、配管に取り付けられる絞り機構部と、前記絞り機構部内を流れる蒸気の差圧を検出するダイアフラムを有し、前記蒸気流量計の配管への取り付け状態において当該絞り機構部より上部に取り付けられた受圧部と、前記受圧部のダイアフラム面に被着され、当該ダイアフラム面と協働して内部に蒸気が液化したときの液体溜まり用空間を形成するカバーフランジとを備え、前記カバーフランジ内に前記絞り機構部からの蒸気を前記液体溜まり用空間の上部に導く導圧路が形成されたことを特徴としている。
【0016】
導圧路の液体溜まり用空間内における開口部がダイアフラムより上部にあるため、導圧路を介して導かれた蒸気はフランジカバーと受圧ダイアフラムが協働して形成する空間において凝縮して短時間で水となってその空間に溜まり、水を補給することなくダイアフラムを蒸気から保護することができる。
【0017】
また、フランジカバー内に絞り機構部からの蒸気を導く導圧路が形成され、この導圧路によって絞り機構部からの蒸気を液体溜まり用空間の上部に導くので、絞り機構部からの導圧管をフランジカバーの上方に接続する必要がなく、蒸気流量計の配置がしやすくなる。
【0018】
また、受圧部及びフランジカバーが絞り機構部よりも上にあるため、蒸気中の異物やゴミなどが水溜まり用の空間に堆積するのを防ぐことができる。
【0019】
また、本発明の請求項3に記載の蒸気流量計は、請求項2に記載の蒸気流量計において、前記蒸気流量計にはダイアフラムからなる受圧部を有して前記差圧を測定する差圧発信器が備わり、当該差圧発信器の受圧部と前記フランジカバーで覆われた受圧部とが圧力伝達用のキャピラリチューブを介して自由に相対配置可能に接続されたことを特徴としている。
【0020】
差圧発信器の受圧部とフランジカバーで覆われた受圧部がキャピラリチューブを介して互いに自由に相対配置可能となっているので、差圧発信器を絞り機構部より下方に配置することができ、蒸気流量計のレイアウトの自由度を高める。
【0021】
また、本発明の請求項4に記載の蒸気流量計は、請求項2又は請求項3に記載の蒸気流量計において、前記絞り機構部には蒸気導圧部が備わり、前記フランジカバーがマニホールドを介して当該蒸気導圧部に着脱可能に接続されていることを特徴としている。
【0022】
例えば蒸気導圧部のピッチを一般的なマニホールドのピッチと同じとすることで、フランジカバーと絞り機構部の蒸気導圧部との間にマニホールドを介在させることが可能となり、マニホールドを閉じた状態でフランジカバーの備わった差圧発信器をユニットとして着脱することができ、保守メンテナンス性を向上させる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、プラント稼動前に外部から液体を供給して受圧部のダイアフラム面を保護する必要がなく、異物が溜まりにくく取り付け性に優れたインライン型の蒸気流量計を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の第1の実施形態にかかる蒸気流量計について図面に基づいて説明する。
【0025】
本発明の第1の実施形態にかかる蒸気流量計1は、図1に示すように、絞り機構部110と、絞り機構部110より水平方向に関して上部に配置された差圧発信器120を有し、絞り機構部110と差圧発信器120は導圧管130(131,132)によって圧力伝達可能に接続されている。そして、差圧発信器120は受圧ダイアフラム122を備えたダイアフラムベース123を有し、各受圧ダイアフラム122はフランジカバー121で覆われている。また、フランジカバー121には受圧ダイアフラム122より水平方向に関して上方に位置するように各導圧管130の一方の端部が接続されている。また、各導圧管130の他方の端部は絞り機構部110の後述する圧力導出孔111,112にそれぞれ接続されている。
【0026】
絞り機構部110は、一部にオリフィス等からなる絞り部113を備えた流路部114と、流路部114の絞り部113の上流側及び下流側から流路部上方に導出される2つの圧力導出孔111,112を備えている。
【0027】
なお、2つの圧力導出孔111,112は、流路部114に個別に導出管として備わっていても良く、流路部114の一部に突出部を例えば鋳物等で一体に形成し、この突出部の上述した2つの位置に圧力導出孔を穿設しても良い。
【0028】
なお、圧力導出孔111,112の上端部には図示しない締結具を介して導圧管130の一方の端部がそれぞれ気密を保って接続されている。
【0029】
導圧管130はそれぞれステンレスでできた細管からなる。そして、導圧管130の他方の端部は、上述したように絞り機構部110より水平方向に関して上方に配置した差圧発信器120のフランジカバー121に受圧ダイアフラム122より水平方向に関して上側に位置するように接続されている。
【0030】
フランジカバー121は、例えばステンレスなどの耐食性に優れた材質からなり、一側面に凹み部121aを有してダイアフラムベース123の受圧ダイアフラム122と協働して水溜用空間を形成するようになっている。なお、この水溜用空間は、導圧管130を介して導かれた蒸気が液化して水溜まり部となるとともに蒸気の圧力を伝達する役目を果たしている。
【0031】
また、差圧発信器のダイアフラムベース123はステンレスからなり薄い円柱状をなしており、ダイアフラムベース123の両端は上述の通り受圧ダイアフラム122が備わっている。そして、受圧ダイアフラム122とダイアフラムベース123との間には圧力伝達油の充填された空間が形成されるとともに、この空間の一部がダイアフラムベース123のネック部124まで細く延在して圧力伝達油用の流路125,126を形成し、その流路125,126の端部が測定計器部127のシリコン圧力センサ128につながっている。
【0032】
圧力伝達油は、例えばシリコンオイルなどの封入液からなり、ダイアフラムベース123の受圧ダイアフラム122に作用する蒸気の圧力をシリコン圧力センサ128に伝達するようになっている。
【0033】
以上の構成を有することにより、絞り機構部110において下流側の流速が早まることで、上流側(図1中右側)の圧力が高くなり下流側(図1中左側)の圧力が低くなる。この異なる蒸気の圧力がそれぞれ差圧発信器120のフランジカバー121と受圧ダイアフラム122で形成される水溜用空間に導かれる。水溜用空間内は後述するように蒸気が冷えて水が溜まっており、この水を介して受圧ダイアフラム122に蒸気の圧力が伝わり、受圧ダイアフラム122に印加された圧力が差圧発信器内の圧力伝達油を介してネック部側に備わったシリコン圧力センサ128の対向するダイアフラム面にそれぞれ印加される。シリコン圧力センサ128はこの差圧に応じて歪みを生じ、この歪みを抵抗変化として計測することで差圧を求め、蒸気流量に換算するようになっている。
【0034】
続いて、上述のように構成された蒸気流量計1の特有の配置方法と作用について説明する。まず、蒸気流量計1を構成する絞り機構部110と、差圧発信器120、フランジカバー121、及び導圧管130を準備し、上述のように各構成要素を適所に配置しながら組み合わせて第1の実施形態にかかる蒸気流量計1を組み付ける。
【0035】
この際、本発明の以下の作用を発揮させるために、配管100の絞り機構部110より水平方向で上方に差圧発信器120を配置するとともに、差圧発信器120にそれぞれ備わったフランジカバー121の上方に導圧管130の他端を接続することが重要である。このように構成された蒸気流量計1を配管100のフランジ101に接続してプラントの蒸気配管内に組み込むことで、以下のような特有の効果を発揮する。
【0036】
最初にプラントを起動し高温の蒸気を配管内に流すと、蒸気の流速が絞り機構部110においてその上流側と下流側で変化する。これに伴い、上流側から圧力の高い蒸気が圧力導出孔111及び導圧管131を介して差圧発信器120に備わった一方のフランジカバー内に当該フランジカバー121の上方から入り込む。
【0037】
また、絞り機構部110の下流側から圧力の低い蒸気が圧力導出孔112及び導圧管132を介して差圧発信器120に備わった他方のフランジカバー内に当該フランジカバー121の上方から入り込む。
【0038】
このように、差圧発信器120の受圧ダイアフラム122に対してフランジカバー121の上方から蒸気が受圧ダイアフラム122とフランジカバー121とで協働して形成される水溜用空間内に導かれることで、この水溜用空間に導かれた蒸気は短時間で凝縮して水となりこの空間内にすぐに溜まる。
【0039】
これによって、その後にフランジカバー121の上方から入り込んだ蒸気は差圧発信器120の受圧ダイアフラム122に直接接することなく、この空間に溜まった水を介して圧力を加えるようになる。そして、差圧発信器内の圧力伝達油を介してシリコン圧力センサ128にこの圧力を伝達する。
【0040】
このように、受圧ダイアフラム122が長期間高温高圧の蒸気にさらされることもなく、この空間内に溜まった水を介して蒸気の圧力を受圧部に伝えることができるようになる。その結果、受圧ダイアフラム122に高温高圧の蒸気が長期間接することによる受圧ダイアフラム122への水素透過現象が生じることはない。従って、水素透過現象に伴って生じる不都合、すなわちプラント停止時に圧力伝達油内に溶け込んだ水素が膨張することで出力特性がずれることもなく、差圧発信器120に悪影響を及ぼすこともない。
【0041】
また、差圧発信器120のフランジカバー121は絞り機構部110の水平方向に関して上方に配置されており、従来のように下方に配置されていないので、配管内の錆や異物が下方に移動して差圧発信器120の受圧ダイアフラム122とフランジカバー121で形成される水溜用空間に堆積する恐れもない。このようにして、長期間にわたって正確な蒸気流量の計測が可能となる。
【0042】
続いて、本発明の第2の実施形態にかかる蒸気流量計2について説明する。本発明の第2の実施形態にかかる蒸気流量計2は、図2に示すように、管路200の一部に絞り部(図示せず)を有しかつ絞り部の上流側と下流側に導圧孔(図示せず)を形成した絞り機構部210と、絞り機構部210の上部の取り付け部215に取り付けられた2つのフランジカバー221と、フランジカバー221に挟持された流路側ダイアフラムベース223と、フランジカバー221の上部に取り付けられ、流路側ダイアフラムベース223から延在するキャピラリチューブ230(231,232)の他端が接続した差圧発信器240とを備えている。
【0043】
絞り機構部210は、上述の通りオリフィス等の絞り部を有した管路200と、管路200の両端に形成されて隣接する管路(図示せず)と接続される2つのフランジ216と、管路200と一体で形成されかつ管路200の絞り部の上流側と下流側からそれぞれ図中上方に延在する導圧孔(図示せず)を備えている。また、絞り機構部210の取り付け部215の上端面は蒸気流量計取り付け状態において水平面をなしており、この上端面に2つのフランジカバー221がそれぞれ載置された状態で当該フランジカバー221と流路側ダイアフラムベース223とが取り付けられている。
【0044】
フランジカバー221の上部には差圧発信器240を支持する側面視で工の字型を有する2つの支持ステー250が当該フランジカバー221と交差するように載置され、この図においては詳細には示さない長さの長い締結具ボルトを介して支持ステー250とフランジカバー221が取り付け部215の上部に一体に締結されている。
【0045】
流路側ダイアフラムベース223は、第1の実施形態におけるダイアフラムベース123と同様に例えばステンレスでできた円柱形状を有し、図3に示すようにその両側面に厚さの薄いステンレスの薄膜からなる受圧ダイアフラム222が備わっている。また、流路側ダイアフラムベース223と各受圧ダイアフラム222との間には僅かな隙間が形成され、この隙間に例えばシリコンオイルなどからなる圧力伝達油が封入されている。また、この隙間の底部から流路側ダイアフラムベース223の周面にそれぞれ形成されたキャピラリチューブ接続部223a,223bまで細い封入液用流路が延在形成され(図3において一部図示)、この封入液用流路にも圧力伝達油が封入されている。そして、この圧力伝達油は、キャピラリチューブ接続部223a,223bに接続されたキャピラリチューブチューブ内を通って後述する差圧発信器240の計器側カバー241内に備わった差圧発信器側の受圧ダイアフラムに圧力を伝達するようになっている。
【0046】
一方、フランジカバー221は、例えばステンレスでできた側面視矩形状の厚さの厚いプレート体からなり、流路側ダイアフラムベース223の受圧ダイアフラム222と対向する側面に対応する凹み部221aを有している。そして、この凹み部221aと受圧ダイアフラム222とが協働して受圧ダイアフラム222に蒸気の圧力を伝えるとともに受圧ダイアフラム222を保護する水溜用空間を形成している。
【0047】
また、蒸気流量計取り付け状態においてフランジカバー221の底面には、図3に示すように、絞り機構部210の2つの導圧孔(図示せず)と一致するように蒸気導圧孔(蒸気導圧部)225の一端開口部225cが形成されている。そして、蒸気導圧孔225はフランジカバー221の上方に向かって延在し、その他端開口部225dが上述した凹み部221aの上方であって受圧ダイアフラム222の上部に位置するように形成されている。これによって絞り機構部210の各蒸気導圧部から導かれた蒸気は、フランジカバー221の各蒸気導圧孔225を通って凹み部221aの上部から水溜用空間内に入り込み、水溜用空間で凝縮して水となって受圧ダイアフラム面よりも上まで水が溜まり受圧ダイアフラム222を保護するようになっている。
【0048】
一方、支持ステー250に取り付けられた差圧発信器240(図2参照)は、ステンレスでできた計器側カバー241と、ステンレスでできた計器側ダイアフラムベース243と、計器側ダイアフラムベース243のネック部244に取り付けられ差圧測定用の電子部品を内蔵した測定計器部245から構成されている。そして、側面視で矩形形状を有する計器側カバー241の中央部には上述したキャピラリチューブ230の他端が接続され、圧力伝達油が計器側カバー内の凹み部に導入されて計器側ダイアフラムベース243の受圧ダイアフラム(図示せず)に圧力を印加するようになっている。そして、計器側ダイアフラムベース243の受圧ダイアフラムに印加された圧力は、ここでは詳細には示さないが、計器側ダイアフラムベース243の封入液用流路に封入された圧力伝達油を介してネック部244に備わったシリコン圧力センサ(図示せず)に伝わり、シリコン圧力センサの歪による抵抗値変化を測定計器部245で測定して蒸気の流量に換算するようになっている。
【0049】
この第2の実施形態にかかる蒸気流量計2は、フランジカバー内に蒸気導圧孔225が形成されているので、第1の実施形態にかかる蒸気流量計1のように蒸気流量計をプラントの蒸気配管内に設置する際に、フランジカバー221への蒸気流入部分が受圧ダイアフラム222の上部になるようにキャピラリチューブ230をフランジカバー221と意識的に接続する必要はない。そのため、フランジカバー221を絞り機構部210に取り付ける際の取り付け作業が簡単になる。
【0050】
続いて、上述のように構成された蒸気流量計2の組み付け方法と特有の作用について説明する。最初に、かかる蒸気流量計2を構成する絞り機構部210、差圧発信器240、フランジカバー221、流路側ダイアフラムベース223、及びキャピラリチューブ230を準備し、上述のように各構成要素を適所に配置しながら以下のように組み合わせて第2の実施形態にかかる蒸気流量計2を組み付ける。
【0051】
なお、蒸気流量計2の組付けに先立って、キャピラリチューブ230の一端は予め流路側ダイアフラムベース223のキャピラリチューブ接続部223a,223bに連結し、他端は差圧発信器240の計器側カバー241に連結して内部を圧力伝達油で満たしておく。また、フランジカバー締め付け用ボルトを介して2つのフランジカバー同士の間に流路側ダイアフラムベース223を挟み込んでおく。
【0052】
蒸気流量計2の組み付けに際しては、本発明の以下の作用を発揮させるために、配管の絞り機構部210の取り付け部215上にフランジカバー221と流路側ダイアフラムベース223を載置して取り付けることが重要であるが、後述するようにこれらフランジカバー221と流路側ダイアフラムベース223の上部に差圧発信器240を必ずしも配置する必要はない。
【0053】
絞り機構部210の取り付け部215上にフランジカバー221と流路側ダイアフラムベース223を載置した後、更にフランジカバー221上に支持ステー250を載置した状態で締め付けボルトによってこれらをまとめて絞り機構部210の取り付け部215上に固定する。次いで、支持ステー250の上部に差圧発信器240を載置して図示しない締め付けボルトで差圧発信器240を支持ステー250に固定する。
【0054】
このように組み付けた蒸気流量計2を蒸気配管のフランジに接続してプラントの蒸気配管内に組み込むことで、第1の実施形態にかかる蒸気流量計1と同様に以下のような特有の効果を発揮することができる。
【0055】
プラントを稼動して高温の蒸気を配管内に流すと、蒸気の流速が絞り機構部210においてその上流側と下流側で変化する。これに伴い、絞り機構部210の上流側から圧力の高い蒸気が蒸気導圧管を介して一方のフランジカバー内の蒸気導圧孔225に入り込む。この蒸気導圧孔225はフランジカバー221の上方に向かって延在し、その他端開口部225dが上述した凹み部221aの上方であって受圧ダイアフラム222の上部に位置するように形成されているので、蒸気は受圧ダイアフラム222とフランジカバー221とで協働して形成される一方の水溜用空間内の上方に導かれる。蒸気が当該水溜用空間内にこのように導かれることでこの水溜用空間に導かれた蒸気は凝縮して水となりこの一方の水溜用空間内に短時間に溜まる。
【0056】
同様に絞り機構部210の下流側から圧力の高い蒸気が蒸気導圧管を介して他方のフランジカバー内の蒸気導圧孔225に入り込む。この蒸気導圧孔225もフランジカバー221の上方に向かって延在し、その他端開口部225dが上述した凹み部221aの上方であって受圧ダイアフラム222の上部に位置するように形成されているので、蒸気は受圧ダイアフラム222とフランジカバー221とで協働して形成される他方の水溜用空間内の上方に導かれる。蒸気がこの他方の水溜用空間内にこのように導かれることでこの水溜用空間に導かれた蒸気は凝縮して水となりこの他方の水溜用空間内に短時間に溜まる。
【0057】
このように水が溜まった後は、フランジカバー221の上方から入り込んだ蒸気は差圧発信器240の受圧ダイアフラム222に直接接することなく、この水溜用空間に溜まった水を介して受圧ダイアフラム222に圧力を加える。そして、流路側ダイアフラムベース内の圧力伝達油は流路側ダイアフラムベース223と差圧発信器240とを接続するキャピラリチューブ230及び差圧発信器240の計器側カバー241と受圧ダイアフラムとで画成される空間に充填された圧力伝達油を介して差圧発信器240の受圧ダイアフラムに圧力を伝達し、差圧発信器内部の圧力伝達油を介して計器側ダイアフラムベース243のネック部244に備わったシリコン圧力センサに圧力を伝達する。
【0058】
このようにして、流路側ダイアフラムベース223の受圧ダイアフラム222が長期間高圧の蒸気にさらされることなく、この水溜用空間内に溜まった水を介して蒸気の圧力を受圧ダイアフラム222に伝えることができる。その結果、受圧ダイアフラム222に高圧の蒸気が印加することによる受圧ダイアフラム222への水素透過現象を生じることはない。従って、このような水素透過現象に伴う不都合、すなわちプラント停止時における圧力伝達油内の水素の膨張によって差圧発信器240の出力特性がずれることがなく、差圧発信器に悪影響を及ぼすこともない。
【0059】
また、差圧発信器240のフランジカバー221は絞り機構部210の水平方向に関して上方に配置されており、従来のように下方に配置されていないので、配管内の錆や異物が下方に移動して受圧ダイアフラム222とフランジカバー221で構成される水溜用空間に堆積する恐れもない。このようにして長期間にわたって正確な蒸気の流量を測定することが可能となる。
【0060】
なお、この第2の実施形態においては、絞り機構部210の導圧部の上部にダイアフラムベース223とフランジカバー221を直接取り付けたが、これらの間にマニホールド(図示せず)を介在させてこれらを互いに取り付けるようにしても良い。フランジカバー221がマニホールドを介して蒸気導圧部に着脱可能に接続できるようにする際、例えば蒸気導圧部のピッチを一般的なマニホールドのピッチと同じとするのが良い。これによって、フランジカバー221と絞り機構部210の蒸気導圧部との間にマニホールドを接続した後、必要に応じてマニホールドを閉じた状態でフランジカバー221の備わった差圧発信器240をユニットとして着脱することができ、保守メンテナンス性を向上させることができる。
【0061】
また、この第2の実施形態においてはフランジカバー221の上部に支持ステー250を介して差圧発信器240を取り付けたが、必ずしもこのように取り付ける必要はなく、差圧発信器240がキャピラリチューブ230を介してフランジカバー221やダイアフラムベース223よりも下方に配置されていても良く、更には絞り機構部210より下方に配置されていても良い。
【0062】
このように差圧発信器240の受圧部とフランジカバー221で覆われた受圧部とが圧力伝達用のキャピラリチューブを介して自由に相対配置可能に接続されていることで、差圧発信器240を絞り機構部210より下方に配置することができ、蒸気流量計2のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0063】
なお、絞り機構部210の絞り部213は、オリフィスに限らず楕円スロート、ベンチェリなどのその他の絞り機構を用いても良いことは言うまでもない。
【0064】
また、上述した第2の実施形態にかかる蒸気流量計2は、絞り機構部210の導圧部上に取り付けられたフランジカバー221及び流路側ダイアフラムベース223において蒸気を凝縮して水とし、この水を介して圧力を受圧ダイアフラム222に伝達する構成を有しているので、絞り機構部210からの導圧部の長さを最小限に抑えつつ熱が差圧発信器本体に直接伝わりにくくすることができる。これによって絞り機構部210からの差圧発信器240の上方への突出量を最小限にすることができるので、配管内の蒸気の脈動によって絞り機構部210の導圧部及び差圧発信器240が振動を受けにくくなる。
【0065】
また、上述の第1の実施形態の蒸気流量計1によると、キャピラリチューブ内には蒸気のみが通過し、従来の蒸気流量計のようにキャピラリチューブ内が水で満たされることはないので、例えば寒冷地においてプラント停止時に水溜用空間の水が凍ってもその膨張量を水溜用空間の上方で吸収することができるので、キャピラリチューブ内に溜まった水が凍ってキャピラリチューブ230が破損するようなことを防止できる。
【0066】
また、受圧ダイアフラムとフランジカバーとで形成される水溜用空間に導かれた蒸気は短時間で凝縮して水となってこの水溜用空間に溜まるので、長期間高温高圧の蒸気を受圧ダイアフラムに当てることによって初めて生じる水素透過の現象を確実に防止できる。
【0067】
なお、上述した実施形態における各構成要素の材質は、一例を示したものに過ぎず、必ずしもこれに限定されるものでないことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
上述した蒸気流量計は、いわゆる水蒸気の流量測定に規定されず、水以外の液体が蒸気となって配管内を流れる例えば熱媒などの流量を測定する場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる蒸気流量計を断面で示した説明図である。
【図2】本発明の第2の実施形態にかかる蒸気流量計を示した斜視図である。
【図3】図2における蒸気流量計のフランジカバーとダイアフラムベースを示した断面図である。
【図4】従来の蒸気流量計の構成を概略的に示した斜視図である。
【図5】図4とは異なる従来の蒸気流量計の構成を概略的に示した斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
1,2 蒸気流量計
50 蒸気配管
51 絞り機構部
53,54 蒸気導圧部
53a,54a 開閉バルブ
55,56 コンデンサ
57,58 導圧管
60 差圧発信器
100 配管
101 フランジ
110 絞り機構部
111,112 圧力導出孔
113 絞り部
114 流路部
120 差圧発信器
121 フランジカバー
121a 凹み部
122 受圧ダイアフラム
123 ダイアフラムベース
124 ネック部
125,126 流路
127 測定計器部
128 シリコン圧力センサ
130(131,132) 導圧管
200 管路
210 絞り機構部
213 絞り部
215 取り付け部
216 フランジ
221 フランジカバー
221a 凹み部
222 受圧ダイアフラム
223 流路側ダイアフラムベース
223a,223b キャピラリチューブ接続部
225 蒸気導圧孔
225c,225d 開口部
230(231,232) キャピラリチューブ
240 差圧発信器
241 計器側カバー
243 計器側ダイアフラムベース
244 ネック部
245 測定計器部
250 支持ステー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内を流れる蒸気の流量を検出する蒸気流量計において、
配管に取り付けられる絞り機構部と、
前記絞り機構部内を流れる蒸気の差圧を検出するダイアフラムを有し、前記蒸気流量計の配管への取り付け状態において当該絞り機構部より上部に取り付けられた受圧部と、
前記受圧部のダイアフラム面に被着され、当該ダイアフラム面と協働して内部に蒸気が液化したときの液体溜まり用空間を形成するフランジカバーと、
一端が前記絞り機構部に接続されるとともに他端が前記フランジカバーの上部に接続され、前記絞り機構部からの蒸気を前記液体溜まり用空間の上部に導く導圧管を備えたことを特徴とする蒸気流量計。
【請求項2】
配管内を流れる蒸気の流量を検出する蒸気流量計において、
配管に取り付けられる絞り機構部と、
前記絞り機構部内を流れる蒸気の差圧を検出するダイアフラムを有し、前記蒸気流量計の配管への取り付け状態において当該絞り機構部より上部に取り付けられた受圧部と、
前記受圧部のダイアフラム面に被着され、当該ダイアフラム面と協働して内部に蒸気が液化してダイアフラム面よりも上まで液体が溜まる液体溜まり用空間を形成するフランジカバーとを備え、
前記フランジカバー内に前記絞り機構部からの蒸気を前記液体溜まり用空間の上部に導く導圧路が形成されたことを特徴とする蒸気流量計。
【請求項3】
前記蒸気流量計にはダイアフラムからなる受圧部を有して前記差圧を測定する差圧発信器が備わり、当該差圧発信器の受圧部と前記フランジカバーで覆われた受圧部とが圧力伝達用のキャピラリチューブを介して自由に相対配置可能に接続されたことを特徴とする、請求項2に記載の蒸気流量計。
【請求項4】
前記絞り機構部には蒸気導圧部が備わり、前記フランジカバーがマニホールドを介して当該蒸気導圧部に着脱可能に接続されていることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の蒸気流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−78230(P2006−78230A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260143(P2004−260143)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】