説明

蒸気発生機能付き高周波加熱装置およびその制御方法

【課題】被加熱物の温度を正確に測定することで適正な加熱処理が行え、また、定格電力内で最大限の加熱効率を確保することができ、使い勝手の高められる蒸気発生機能付き高周波加熱装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】被加熱物を収容する加熱室に、高周波と蒸気とを供給して前記被加熱物を加熱処理する蒸気発生機能付き高周波加熱装置の制御方法であって、高周波により加熱処理する高周波加熱処理と、前記加熱室内に供給する蒸気により加熱処理する蒸気加熱処理とを、それぞれ順次個別に或いは同時に行って被加熱物を加熱処理するときに、前記加熱室内の空気を撹拌しつつ該加熱室内を循環させると共に、赤外線検知による温度センサにより前記被加熱部の温度を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波加熱と蒸気加熱とを組み合わせて被加熱物を加熱処理する蒸気発生機能付き高周波加熱装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高周波加熱装置は、加熱用の高周波発生装置を備えた電子レンジや、この電子レンジに熱風を発生させるコンベクションヒータを付加したコンピネーションレンジ等がある。また、蒸気を加熱室に導入して加熱するスチーマーや、スチーマーにコンベクションヒータを付加したスチームコンベクションオーブン等も加熱調理器として利用されている。
【0003】
上記の加熱調理器により食品等を加熱調理する際、食品の加熱仕上がり状態が最も良好な状態になるように加熱調理器を制御する。即ち、高周波加熱と熱風加熱とを組み合わせた調理はコンビネーションレンジ、蒸気加熱と熱風加熱とを組み合わせた調理はスチームコンベクションオーブンによりそれぞれ制御することができる。しかし、高周波加熱と蒸気加熱とを組み合わせた調理は、それぞれの加熱処理を別個の加熱調理器間で加熱食品を移し替えて行う等の手間が生じることになる。その不便を解消するために、高周波加熱と、蒸気加熱と、電熱加熱とを一台の加熱調理器で実現したものがある。この加熱調理器は、例えば、特開昭54−115448号公報に開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加熱調理器には被加熱物の温度を測定する赤外線センサ等の温度センサを設ける場合が多いが、蒸気が加熱室内に充満すると、赤外線センサは、被加熱物の温度ではなく、被加熱物との間に存在する蒸気の浮遊粒子の温度を測定するようになる。このため、被加熱物の温度を正確に計ることができなくなる。すると、赤外線センサの温度検出結果に基づいてなされる加熱制御が正常に動作しなくなり、例えば加熱不足、加熱過剰等の不具合が発生し、特にシーケンシャルな手順で自動調理を行う場合には、加熱不良のまま次のステップに進むことになり、単なる再加熱や放冷等により対処できず、調理が失敗に終わる可能性もある。
【0005】
また、蒸気加熱と高周波加熱を連携させて調理するための制御方法として、前記公報には、高周波加熱から蒸気加熱に切り替える点と、この切り替えの際の所定時間内だけ両方の加熱を同時に行う点とが記載されている。しかし、加熱対象の種類に応じて適切な加熱プログラムが自動的に選択されて実行されるというレベルにまでは至っておらず、従って、予め複数の加熱プログラムを用意していても、どの加熱プログラムで調理するかは、あくまでも操作者の判断に委ねられていた。
【0006】
また、蒸気加熱と高周波加熱を同時に行うときには、加熱のための電力量が増大するため、高周波加熱に定格電力の殆どが費やされ、本来必要とされる蒸気加熱のための電力量を賄うことができなくなる。従って、不十分な蒸気加熱しか行うことができず、調理に制約が生じることになる問題があった。そのため、図30に示すように、実際にはパルス制御により、それぞれの加熱に対して短時間でオン/オフを切り替えることで、瞬間の合計使用電力(蒸気加熱の電力量a+高周波加熱の電力量b)を抑えることで対処していることが多い。しかし、それぞれの加熱が断続的になるために加熱効率が低下して、本来の加熱能力を十分発揮することができないことになり、その結果、加熱時間が増大して、消費電力もトータルとして増大する傾向となってしまう。
【0007】
また、加熱室の扉の窓部から被加熱物を視認して加熱具合を確認することがあるが、特に蒸気加熱を行う場合には、窓部に水分が結露して加熱室内が覗けなくなることが多く、使い勝手が低下するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、被加熱物の温度を正確に測定することで適正な加熱処理が行え、また、被加熱物の種類に応じて自動的に最適な加熱プログラムを選定でき、さらに、定格電力内で最大限の加熱効率を確保することができ、使い勝手の高められる蒸気発生機能付き高周波加熱装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的達成のため、本発明の蒸気発生機能付き高周波加熱装置の制御方法は、被加熱物を収容する加熱室に、高周波と蒸気とを供給して前記被加熱物を加熱処理する蒸気発生機能付き高周波加熱装置の制御方法であって、高周波により加熱処理する高周波加熱処理と、前記加熱室内に供給する蒸気により加熱処理する蒸気加熱処理とを、それぞれ順次個別に或いは同時に行って被加熱物を加熱処理するときに、前記加熱室内の空気を撹拌しつつ該加熱室内を循環させると共に、赤外線検知による温度センサにより前記被加熱部の温度を検出することを特徴とする。
【0010】
この蒸気発生機能付き高周波加熱装置の制御方法では、加熱処理時に加熱室内の空気を撹拌しつつ循環させるので、蒸気を加熱室内の隅々にまでむらなく行き渡らせることができる。従って、加熱室内に蒸気が充満するものの、滞留することなく蒸気が加熱室内に行き渡ることになり、その結果、赤外線センサによる被加熱物の温度計測の精度も高めることができ、適正な加熱処理を高速に行えるようになる。
【0011】
また、本発明の蒸気発生機能付き高周波加熱装置の制御方法は、前記加熱処理時に、前記加熱室内で循環される空気を室内気加熱ヒータにより加熱することを特徴とする。
【0012】
この蒸気発生機能付き高周波加熱装置の制御方法では、加熱室内を循環する空気を室内気加熱ヒータで加熱するようにしているので、加熱室で発生させた蒸気の温度を自由に高めることができる。例えば、蒸気の温度を100℃以上に高めることができる。従って、過熱蒸気によって被加熱物を効率良く昇温させることができると共に、被加熱物に対し高温蒸気による焦げ目を付けることも可能である。また、被加熱物に対する加熱時間を短縮することができる。
【0013】
また、本発明の蒸気発生機能付き高周波加熱装置の制御方法は、前記高周波加熱処理がインバータ装置により加熱電力量を可変制御して加熱する処理であって、前記蒸気加熱処理及び前記室内気加熱ヒータによる加熱電力量と、前記高周波加熱処理による加熱電力量との和が所定の定格電力量以下になるように、前記蒸気加熱処理と前記高周波加熱処理とを同時に行うことを特徴とする。
【0014】
この蒸気発生機能付き高周波加熱装置の制御方法の制御方法では、蒸気加熱処理と高周波加熱処理とを同時に行う際に、インバータ制御により双方の加熱電力量を可変制御することによって、蒸気加熱に要する電力量と高周波加熱に要する電力量との和を所定の定格電力量以下に抑えるので、それぞれの加熱を連続的に行うことができ、それにより加熱効率の向上と加熱時間の短縮が図れ、結果的にトータルの消費電力の減少が図れる。
【0015】
また、本発明の蒸気発生機能付き高周波加熱装置は、被加熱物を収容する加熱室と、前記加熱室に供給する高周波により加熱処理する高周波加熱処理手段と、前記加熱室に供給する蒸気により加熱処理する蒸気加熱手段と、前記加熱室に収容された被加熱物の温度を赤外線検知による温度センサにより検出する温度検出手段と、高周波により加熱処理する高周波加熱処理と、前記加熱室内に供給する蒸気により加熱処理する蒸気加熱処理とを、それぞれ順次個別に或いは同時に行って被加熱物を加熱処理するときに、前記加熱室内の空気を撹拌しつつ該加熱室内を循環させると共に、赤外線検知による温度センサにより前記被加熱部の温度を検出する制御手段と、を備える。
【0016】
また、本発明の蒸気発生機能付き高周波加熱装置は、前記加熱室内の空気を加熱する室内気加熱ヒータを備え、前記制御手段は、前記加熱処理時に前記加熱室内で循環される空気を室内気加熱ヒータにより加熱する。
【0017】
また、本発明の蒸気発生機能付き高周波加熱装置は、前記高周波加熱処理がインバータ装置により加熱電力量を可変制御して加熱する処理であって、前記制御手段は、前記蒸気加熱処理及び前記室内気加熱ヒータによる加熱電力量と、前記高周波加熱処理による加熱電力量との和が所定の定格電力量以下になるように、前記蒸気加熱処理と前記高周波加熱処理とを同時に行う。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明に係る蒸気発生機能付き高周波加熱装置およびその制御方法によれば、加熱処理時に加熱室内の空気を撹拌しつつ循環させるようにしたので、蒸気を加熱室内の隅々にまでむらなく行き渡らせることができる。従って、加熱室内に蒸気が充満するものの、滞留することなく蒸気が加熱室内に行き渡ることになり、その結果、赤外線センサによる被加熱物の温度計測の精度を高めることができ、適正な加熱処理を行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の蒸気発生機能付き高周波加熱装置の制御方法の好適な実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。まず最初に、同装置の機械的な構成とその作用効果について述べ、その後に具体的な制御方法について述べる。
【0020】
図1は第1実施形態の蒸気発生機能付き高周波加熱装置の開閉扉を開けた状態を示す正面図、図2はこの装置に用いられる蒸気発生部の蒸発皿を示す斜視図、図3は蒸気発生部の蒸発皿加熱ヒータと反射板を示す斜視図、図4は蒸気発生部の断面図である。
【0021】
この蒸気発生機能付き高周波加熱装置100は、被加熱物を収容する加熱室11に、高周波(マイクロ波)と蒸気との少なくともいずれかを供給して被加熱物を加熱処理する加熱調理器であって、高周波を発生する高周波発生部としてのマグネトロン13と、加熱室11内で蒸気を発生する蒸気発生部15と、加熱室11内の空気を撹拌・循環させる循環ファン17と、加熱室11内を循環する空気を加熱する室内気加熱ヒータとしてのコンベクションヒータ19と、加熱室11の壁面に設けた検出用孔を通じて加熱室11内の温度を検出する赤外線センサ20とを備えている。
【0022】
加熱室11は、前面開放の箱形の本体ケース10内部に形成されており、本体ケース10の前面に、加熱室11の被加熱物取出口を開閉する透光窓21a付きの開閉扉21が設けられている。開閉扉21は、下端が本体ケース10の下縁にヒンジ結合されることで、上下方向に開閉可能となっている。加熱室11と本体ケース10との壁面間には所定の断熱空間が確保されており、必要に応じてその空間には断熱材が装填されている。特に加熱室11の背後の空間は、循環ファン17及びその駆動モータ23(図8参照)を収容した循環ファン室25となっており、加熱室11の後面の壁が、加熱室11と循環ファン室25とを画成する仕切板27となっている。仕切板27には、加熱室11側から循環ファン室25側への吸気を行う吸気用通風孔29と、循環ファン室25側から加熱室11側への送風を行う送風用通風孔31とが形成エリアを区別して設けられている。各通風孔29,31は、多数のパンチ孔として形成されている。
【0023】
循環ファン17は、矩形の仕切板27の中央部に回転中心を位置させて配置されており、循環ファン室25内には、この循環ファン17を取り囲むようにして矩形環状のコンベクションヒータ19が設けられている。そして、仕切板27に形成された吸気用通風孔29は循環ファン17の前面に配置され、送風用通風孔31は矩形環状のコンベクションヒータ19に沿って配置されている。循環ファン17を回すと、風は循環ファン17の前面側から駆動モータ23のある後面側に流れるように設定されているので、加熱室11内の空気が、吸気用通風孔29を通して循環ファン17の中心部に吸い込まれ、循環ファン室25内のコンベクションヒータ19を通過して、送風用通風孔31から加熱室11内に送り出される。従って、この流れにより、加熱室11内の空気が、撹拌されつつ循環ファン室25を経由して循環されるようになっている。
【0024】
マグネトロン13は、例えば加熱室11の下側の空間に配置されており、マグネトロンより発生した高周波を受ける位置にはスタラー羽根33が設けられている。そして、マグネトロン13からの高周波を、回転するスタラー羽根33に照射することにより、該スタラー羽根33によって高周波を加熱室11内に撹拌しながら供給するようになっている。なお、マグネトロン13やスタラー羽根33は、加熱室11の底部に限らず、加熱室11の上面や側面側に設けることもできる。
【0025】
蒸気発生部15は、図2に示すように加熱により蒸気を発生する水溜凹所35aを有した蒸発皿35と、蒸発皿35の下側に配設され、図3及び図4に示すように蒸発皿35を加熱する蒸発皿加熱ヒータ37と、該ヒータの輻射熱を蒸発皿35に向けて反射する断面略U字形の反射板39とから構成されている。蒸発皿35は、例えばステンレス製の細長板状のもので、加熱室11の被加熱物取出口とは反対側の奥側底面に長手方向を仕切板27に沿わせた向きで配設されている。なお、蒸発皿加熱ヒータ37としては、ガラス管ヒータ、シーズヒータ、プレートヒータ等が利用できる。
【0026】
図5は蒸気発生機能付き高周波加熱装置100を制御するための制御系のブロック図である。この制御系は、例えばマイクロプロセッサを備えてなる制御部501を中心に構成されている。制御部501は、主に、電源部503、記憶部505、入力操作部507、表示パネル509、加熱部511、冷却用ファン61等との間で信号の授受を行っている。
【0027】
入力操作部507には、加熱の開始を指示するスタートスイッチ519、高周波加熱や蒸気加熱等の加熱方法を切り替える切替スイッチ521、予め用意されているプログラムをスタートさせる自動調理スイッチ523等の種々の操作スイッチが接続されている。
加熱部511には、高周波発生部13、蒸気発生部15、循環ファン17、赤外線センサ20等が接続されている。また、高周波発生部13は、電波撹拌部(スタラー羽根の駆動部)33と協働して動作し、蒸気発生部15には、蒸発皿加熱ヒータ37、室内気加熱ヒータ19(コンベクションヒータ)等が接続されている。
【0028】
図6は、電源部503(図5参照)に用いられ、加熱部511(図5参照)による加熱電力を可変制御するインバータ装置の基本回路図である。このインバータ装置は、トランジスタ、インダクタ、トランス及びコンデンサ等により構成される。図において、入力側に電圧が印加されると、インダクタL1、抵抗R1を通じてトランジスタQ1、Q2に電流が供給され、トランジスタQ1、Q2がON/OFF動作を繰り返して発振する。この発振は、主として共振用コンデンサC1、トランスT1との共振で正弦波に近い発振波形となる。そして、トランスT1は、1次巻線側に供給された電圧を、加熱に必要とする電圧まで昇圧して2次巻線側から出力する。トランスT1で発生した高電圧は、バラストコンデンサC2を通じて出力側に出力される。この回路により加熱部511への供給電力量を適宜増減することができる。
【0029】
次に、上述した蒸気発生機能付き高周波加熱装置100の基本的な動作について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
操作の手順としては、まず、加熱しようとする食品を皿等に載せて加熱室11内に入れ、開閉扉21を閉める。そして、加熱方法、加熱温度又は時間を入力操作部507により設定して(ステップ10、以降はS10と略記する)、スタートスイッチをONにする(S11)。すると、制御部501の動作によって自動的に加熱処理が行われる(S12)。
【0030】
即ち、制御部501は、設定された加熱温度・時間を読み取り、それに基づいて最適な調理方法を選択・実行し、設定された加熱温度・時間に達したか否かを判断して(S13)、設定値に達したときに、各加熱源を停止して加熱処理を終了する(S14)。なお、S12では、蒸気発生、室内気加熱ヒータ、循環ファン回転、高周波加熱を、それぞれ個別或いは同時に行う。
【0031】
上記した動作の際に、例えば「蒸気発生+循環ファンON」のモードが選択・実行された場合の作用を説明する。このモードが選択されると、図8に本高周波加熱装置100の動作説明図を示すように、蒸発皿加熱ヒータ37がONされることで、蒸発皿35の水が加熱され蒸気Sが発生する。蒸発皿35から上昇する蒸気Sは、仕切板27の略中央部に設けた吸気用通風孔29から循環ファン17の中心部に吸引され、循環ファン室25を経由して、仕切板27の周部に設けた送風用通風孔31から、加熱室11内へ向けて吹き出される。吹き出された蒸気は、加熱室11内において撹拌されて、再度、仕切板27の略中央部の吸気用通風孔29から循環ファン室25側に吸引される。これにより加熱室11内と循環ファン室25に循環経路が形成される。なお、仕切板27の循環ファン17の配置位置下方には送風用通風孔31を設けずに、発生した蒸気を吸気用通風孔29に導かれるようにしている。そして、図中白抜き矢印で示すように、蒸気が加熱室11を循環することによって、被加熱物Mに蒸気が吹き付けられる。
【0032】
この際、室内気加熱ヒータ19をONにすることによって、加熱室11内の蒸気を加熱できるので、加熱室11内を循環する蒸気の温度を高温に設定することができる。従って、いわゆる過熱蒸気が得られて、被加熱物Mの表面に焦げ目を付けた加熱調理も可能となる。また、高周波加熱を行う場合は、マグネトロン13をONにし、スタラー羽根33を回転することで、高周波を加熱室11内に撹拌しながら供給して、ムラのない高周波加熱調理を行うことができる。
【0033】
このように、本実施形態の蒸気発生機能付き高周波加熱装置によれば、加熱室11の外部ではなく内部で蒸気を発生する構成にしているので、加熱室11内を清掃する場合と同様に、蒸気を発生する部分、つまり蒸発皿35の清掃を簡単に行うことができる。例えば、蒸気発生の過程では、水分中のカルシウムやマグネシウム、塩素化合物等が濃縮されて蒸発皿35の底部に沈殿固着することがあるが、蒸発皿35の表面に付着したものを布等で拭き取るだけできれいに払拭することができる。また、特に汚れが激しい場合は、図9に示すように、蒸発皿35を加熱室11外に取り出して洗浄することもでき、蒸発皿35の清掃を簡単にできる。また、場合によっては、新しい蒸発皿35と交換することも簡単に行える。従って、蒸発皿35を含めて、清掃しやすくなり、加熱室11の内部を常に衛生的な環境に保つことが容易となる。
【0034】
また、この高周波加熱装置では、蒸発皿35を、加熱室11の被加熱物取出口とは反対側の奥側底面に配設しているので、被加熱物の取り出しの邪魔にならず、蒸発皿35がたとえ高温になっていても、被加熱物を出し入れする際に蒸発皿35に手を触れるおそれもなく安全性に優れる。
【0035】
さらに、この高周波加熱装置では、蒸発皿加熱ヒータ37で蒸発皿35を加熱することにより蒸気を発生させているので、簡単な構造で効率良く蒸気を供給することができ、加熱によりある程度高い温度の蒸気が発生するので、単に加湿するだけの調理、あるいは高周波加熱と併用して乾燥を防止しつつ加熱する調理も可能である。
また、蒸発皿加熱ヒータ37の輻射熱は、反射板39で蒸発皿35に向けて反射させているので、蒸発皿加熱ヒータ37の発生する熱を無駄なく効率良く蒸気発生のために利用することができる。
【0036】
そして、この高周波加熱装置では、加熱室11内の空気を循環ファン17で循環・撹拌するようにしているので、蒸気加熱を行う際に、蒸気を加熱室11内の隅々にまでむらなく行き渡らせることができる。従って、加熱室11内に蒸気が充満するものの、滞留することはなく、蒸気が加熱室11内全体に行き渡ることになり、その結果として、赤外線センサ20による被加熱物の温度計測時に、赤外線センサが加熱室11内の蒸気粒子の温度を計測することなく、確実に被加熱物の温度が計測され、温度の測定精度を高めることができる。これにより、検出温度を参照してなされる加熱処理が、誤動作することなく適正に行われるようになる。
【0037】
また、加熱方法としては、高周波加熱と蒸気加熱の双方を同時に行ったり、いずれかを個別に行ったり、双方を所定の順番で行ったりすることが自由にできるため、食品の種類や冷凍品か冷蔵品かの区別等に応じて、適切な加熱方法を任意に選択することができる。特に、高周波加熱と蒸気加熱を併用した場合には、被加熱物の温度上昇速度を速めることができるので、効率の良い調理が可能となる。
【0038】
また、加熱室11内を循環する空気を、循環ファン室25に装備した室内気加熱ヒータ19で加熱できるようにしているので、加熱室11で発生させた蒸気の温度を自在に調整することができる。例えば、蒸気の温度を100℃以上の高温に設定することもできるため、過熱蒸気によって被加熱物を効率良く昇温させることができると共に、被加熱物表面を乾燥させて、場合によっては表面に焦げ目を付けることも可能となる。また、被加熱物が冷凍品の場合には、蒸気の熱容量が大きいために熱伝達が効率よく行われ、短時間で解凍することができる。
【0039】
さらに、この蒸気発生機能付き高周波加熱装置100では、循環ファン17を、加熱室11外に仕切板27を介して独立に設けた循環ファン室25に収容しているので、被加熱物の調理中に飛散する汁類が循環ファン17に付着することをなくすことができる。また同時に、通風を仕切板27に設けた通風孔29,31を通して行うので、通風孔29,31を設ける位置や通風孔29,31の開口面積等によって、加熱室11内に起こる蒸気の流れを自由に変更することができる。
【0040】
なお、図10(a)に示すように、蒸発皿35の上面を、一部に開口41aの設けられた蓋体41で覆うことにより、図10(b)に示すように、蒸気の出る位置を、開口41aのある部分に限定することができる。また、開口41aの開口面積に応じて蒸気の供給量を調整することができる。
【0041】
この開口41aは、図11に示すように、仕切板27中央の吸気用通風孔29の下方に配設してある。従って、発生した蒸気は、開口41aから上昇すると、すぐに吸気用通風孔29に吸い込まれることになり、蒸気が無駄に逃げることなく加熱室11内を循環する循環流となる。また、蓋体41を脱着自在に構成することで、開口の大きさを違えた蓋体と交換することも容易となり、加熱条件に応じた適切な蓋体を使用することができる。
【0042】
また、図11に示すように、吸気用通風孔29に吸引された蒸気の多くを、主に加熱室11の底面近傍から加熱室11内に吹き出すことができるように、仕切板27に設けた送風用通風孔31aを、仕切板27の下部に多く形成している。これは、蒸気自体が上昇するため、下側から多く吹き出した方が全体の流れの均一化が図れるからである。このようにすることで、加熱室11内における蒸気の流れは、最初底面付近を低く流れた後に、上方に向かう流れとなる。なお、送風用通風孔31bとして、仕切板27の略中間高さ部に設けているが、これは、加熱室11に図示しない被加熱物載置用の2段目のトレイがこの略中間高さ位置に装填されるために、このトレイの載置物に送風するために設けている。
この構成により、加熱が一層効果的となる循環流れが作り出され、加熱室11内の温度分布が小さく抑えられる。従って、加熱室11内に置かれた被加熱物を均一且つ高速に加熱することができる。
【0043】
次に上述した構成の蒸気発生機能付き高周波加熱装置の制御方法について詳しく説明する。
図12は、被加熱物の種類に応じて加熱プログラムを選定して加熱する手順を示すフローチャートである。本制御では、冷凍品と冷蔵品とで加熱方法を別にする。一般に、マグネトロンから出された高周波は、水の分子には吸収されるが、氷には浸透しにくい性質があり、一方、冷凍品には氷が含まれる割合が多く、少なくとも氷が溶けるまでの間は、高周波加熱よりも蒸気加熱による加熱の方が特に有効となる。また、蒸気加熱を行うことで、蒸気を被加熱物の表面に付着させて蒸気の熱量を被加熱物に伝達すると共に、被加熱物の表面上で蒸気が凝縮する際の潜熱により被加熱物の温度上昇速度を速くすることができる。
【0044】
本制御の手順としては、まず、赤外線センサ20により加熱室11に収容された被加熱物の温度を測定する(ステップ11、以降はS11と略記する)。測定した被加熱物の温度は、記憶部505(図5参照)に一旦記録する。記憶部505には、冷凍品か冷蔵品かを判別するための判別温度が予め記憶されており、この判別温度と、測定された被加熱物の温度とを比較して、被加熱物が冷凍品か冷蔵品のいずれかを制御部501が判定する(S12)。
【0045】
被加熱物が冷凍品であった場合には、蒸気加熱・高周波加熱の同時加熱プログラムを選定し(S13)、冷凍品でない場合には、蒸気加熱・高周波加熱の切り替え加熱プログラムを選定する(S14)。そして選定した加熱プログラムに基づいて被加熱物を加熱し(S15)、加熱プログラムの実行完了(S16)をもって加熱を終了(S17)する。なお、これらの各加熱プログラムは、記憶部505に予め用意されている。
【0046】
図13は、(a)同時加熱プログラムと(b)切り替え加熱プログラムの加熱タイミングチャートを示す。
(a)の冷凍品を加熱する場合の同時加熱プログラムでは、最初の所定期間は蒸気加熱と高周波加熱とを同時に行い、所定期間経過後は、高周波加熱を停止して、蒸気加熱で加熱する。
(b)の冷蔵品を加熱する切り替え加熱プログラムでは、最初の所定期間は蒸気加熱を行い、所定期間経過後は蒸気加熱を停止して高周波加熱に切り替え、高周波加熱を行う。切り替えを行う所定期間は、加熱時間で設定してもよく、加熱温度で設定してもよい。
【0047】
図14は、設定した目標加熱温度に達するまで被加熱物を加熱する場合の基本的な手順を示すフローチャートである。このフローでは、最初に加熱温度の設定値を読み込み(S21)、加熱を開始する(S22)。加熱中は赤外線センサ20により加熱室11に収容した被加熱物の温度を監視し、測定温度が設定温度に到達したら加熱を終了する(S23,S24)。
【0048】
図15は、設定した加熱時間に達するまで被加熱物を加熱する場合の基本的な手順を示すフローチャートである。このフローでは、最初に加熱時間の設定値を読み込み(S31)、タイマをスタートしてから加熱を開始する(S32,S33)。加熱中はタイマ計数値を監視し、設定時間が経過したら加熱を終了する(S34,35)。
【0049】
次に、蒸気発生、循環ファン、室内気加熱ヒータ、及び高周波加熱の制御による各加熱パターンについて説明する。ここで、「蒸気加熱」とは、蒸発皿加熱ヒータ37及び循環ファン17をオンにして〔場合によっては、室内気加熱ヒータ(コンベクションヒータ19)もオンにして〕加熱処理することを意味し、「高周波加熱」とは、高周波発生部(マグネトロン13)からの高周波照射によって加熱することを意味するものとする。
【0050】
図16及び図17は具体的な加熱パターンを示す図であって、蒸気発生と高周波加熱及び循環ファンと室内気加熱ヒータのオン/オフのタイミングチャートを示す図である。
【0051】
図16の(a)の加熱パターンでは、蒸気発生と循環ファンと室内気加熱ヒータとを加熱開始から加熱終了までそれぞれオンとし、高周波加熱を前半でオン、後半でオフにしている。これにより、加熱前半では、発生した蒸気が加熱されながら加熱室を循環すると同時に、高周波が供給されることで蒸気と高周波との相乗効果によって被加熱物が急速に加熱される。また、加熱後半では、加熱されて循環する蒸気によって被加熱物が加熱されることになる。この加熱パターンは、特に冷凍品の加熱に好適となる。また、例えば、この加熱パターンで中華まんを加熱した場合には、中華まんの内部はしっとりとした水分量を保持しながら、外側には焦げ目ができるといった加熱調理が行える。つまり、内部に水分を閉じ込めて、しかも表面部分だけを乾燥させることが可能となる。
【0052】
(b)の加熱パターンでは、前半に、蒸気発生と循環ファンと室内気加熱ヒータをそれぞれオン、高周波加熱をオフとし、後半に、蒸気発生と循環ファンと室内気加熱ヒータをオフ、高周波加熱をオンとしている。これにより、加熱前半では、発生した蒸気が加熱されながら加熱室を循環することで特に被加熱物の表面を加熱し、加熱後半では、高周波が供給されることで被加熱物を内部から加熱する。このパターンは、特に冷蔵品の加熱に好適となる。
【0053】
(c)の加熱パターンは、(a)の加熱パターンの室内気加熱ヒータをオフにしたパターンである。このパターンを実行すれば、発生した蒸気を室内気加熱ヒータで加熱しなくとも、被加熱物に十分な水分を含ませる加熱が可能である。
【0054】
(d)の加熱パターンは、前半及び後半を通して高周波加熱を行い、後半から蒸気を供給するパターンである。このパターンによれば、高周波加熱により失われがちになる水分を被加熱物に十分に含ませた状態での加熱が可能となる。
【0055】
図17の(e)の加熱パターンは、(d)の加熱パターンに、加熱後半で室内気加熱ヒータをオンにする点を加えたパターンである。このパターンによれば、加熱前半で被加熱物から失われる水分を加熱後半で補給しつつ被加熱物を加熱することができる。
【0056】
(f)の加熱パターンは、高周波加熱を行って被加熱物が所定温度以上に達したことを温度センサ(赤外線センサ)が検出したときに、室内気加熱ヒータをオンにしながらの蒸気加熱を行う加熱パターンである。このパターンによれば、加熱時間によらずに加熱状態に応じた適切なタイミングで蒸気加熱を開始することができる。
【0057】
(g)の加熱パターンは、蒸気加熱及び高周波加熱を行っている場合に、被加熱物が所定温度以上に達したことを温度センサが検出したときに、高周波加熱を停止して蒸気加熱のみ行う加熱パターンである。このパターンによれば、蒸気加熱と高周波加熱との相乗加熱効果により、被加熱物が過度に加熱されることを防止できる。
【0058】
(h)の加熱パターンは、蒸気加熱及び高周波加熱を行っているときに、被加熱物が所定温度以上に達したことを温度センサが検出したときに、蒸気加熱を停止して高周波加熱のみ続行する加熱パターンである。このパターンによれば、前記(g)の加熱パターンと同様に、被加熱物が過度に加熱されることを防止できる。
【0059】
(i)の加熱パターンは、蒸気加熱を行っているときに、被加熱物が所定温度以上に達したことを温度センサが検出した段階で、高周波加熱を追加して同時加熱する加熱パターンである。このパターンによれば、例えば、被加熱物の表面を乾燥させた後、水分の閉じこめられた内部を集中的に加熱することができる。
【0060】
上記においては、各加熱パターンについて説明したが、各パターンにおいて蒸気加熱と高周波加熱を同時に行うときには、主としてインバータ装置によるインバータ制御を組み合わせて実施する。図18は高周波加熱と蒸気加熱にそれぞれ要する加熱電力量の組み合わせの各タイプを示すタイミングチャートである。
【0061】
(a)のタイプでは、高周波加熱の電力量a1と蒸気加熱の電力量a2をそれぞれ一定値とし、且つ、双方の和(a1+a2)が定格電力より小さくなるように設定している。
【0062】
(b)のタイプでは、高周波加熱をインバータ装置を用いて制御し、蒸気加熱を前半で行い、蒸気加熱の終了を受けて高周波加熱を徐々に強くすることにしている。このタイプによれば、加熱後半が蒸気加熱から高周波加熱へ連続的に変化するようになる。
【0063】
(c)のタイプでは、高周波加熱に加えて蒸気加熱もインバータ装置を用いて制御し、蒸気加熱を主に前半で行い、高周波加熱を主に後半で行うことにしている。この場合は、蒸気加熱から高周波加熱への円滑な切り替わりが可能となり、加熱量が加熱途中で低下することを防止できる。
【0064】
(d)のタイプでは、蒸気加熱を行いながら、高周波加熱を微弱ながらも行うことにしている。このタイプによれば、蒸気加熱による被加熱物表面の加熱効果に加えて、被加熱物内部の加熱が行えるようになる。
【0065】
なお、(b)〜(d)のタイプにおいても、蒸気加熱に要する電力量と高周波加熱に要する電力量の和が定格電力量以下になるように、各電力量を制御する。
【0066】
次に、蒸気温度を、予め設定された一定温度に保つ方法について説明する。
図19は加熱室内の蒸気温度を一定に保つ方法の説明図で、(a)は蒸気を発生しながら、赤外線センサが所定温度以上を検出するまで室内気加熱ヒータ(コンベクションヒータ)19で加熱する方法である。また、(b)は、室内気加熱ヒータ19を温度センサによる出力結果に応じてオンオフ制御する方法である。また、図20に示すものは、蒸気を発生しながら、室内気加熱ヒータ19の電力量をインバータ装置により制御し、それにより加熱室内を常に一定温度となるように調節する方法である。いずれの方法で制御してもよい。
【0067】
なお、蒸気加熱を行う際に、実際に蒸気が発生するまでに所定時間を要する場合には、蒸気が発生するまでの間だけ加熱室内の空気を循環させないようにすることもできる。図21はその内容を示すタイムチャートである。加熱開始、即ち、蒸発皿加熱ヒータ37の加熱開始から蒸気を発生し始めるまでの期間をTLとした場合、その期間TLについては循環ファン17を停止させたままとする。こうすることで、蒸気発生を促進して、蒸発皿35が無駄に循環風で冷却されることを防止できる。なお、循環ファン17を完全に停止させずに、インバータ制御により所定期間TLだけ循環ファンの送風を弱く設定するようにしてもよい。
【0068】
次に加熱処理の終了間際に開閉扉に付着した曇りを取り除くための制御方法について説明する。
蒸気加熱を行う場合、開閉扉21の透光窓21aに蒸気が付着して曇ってしまい、加熱室11の内部が外から覗けなくなることがある。この場合には加熱室11内の加熱状態が確認できず、調理者に不安を抱かせて、安全上も好ましくない。そこで本制御方法により、加熱室内に外気を導入して発生した曇りを取り払うようにする。図22はこの制御を行うための機械的構成を示す平面図、図23は制御内容を示すタイムチャートである。
【0069】
外気の吹き付けには、図22に示すように、一例として本体ケース10底部に設けた高周波発生部13の冷却用のファン61からの送風を利用する。機械的構成としては、まず、加熱室11の開閉扉21近くの側壁面81aに、開閉扉21の透光窓21aの内面に対して外気を吹き付ける外気吹出口82を設けている。外気吹出口82は、本体ケース10と加熱室11の側壁面間に確保した側部通風路83に連通されており、その側部通風路83には、ダンパ84を介して後部通風路85が繋がっている。そして、装置底部に設けた冷却用ファン61からの風を、ダンパ84の切り替えにより、側部通風路83を介して外気吹出口82から加熱室11内に吹き出せるようになっている。なお、ダンパ84を他方に切り替えれば、冷却風は排気口88から外部に排気される。
【0070】
本制御方法では、蒸気加熱時や高周波加熱時において加熱室11内に蒸気が充満する場合に、図23に示すように、加熱終了前の所定期間tD、扉送風用ダンパ84の切り替えにより、冷却用ファン61による送風を外気吹出口82に導いて、開閉扉21の透光窓21aの内面に外気を吹き付け、それにより透光窓21aの曇りを取り除くことができる。
【0071】
このように透光窓21aの内面に向けて外気を吹き付けることにより、蒸気加熱時や高周波加熱時に透光窓21aが蒸気で曇らないようにすることができ、加熱室11内の被加熱物の加熱状態を外側から目視確認することができる。また、扉開放時に蒸気が手前側に立ちこめることを抑制できる。そして、外気を強制的に導入して透光窓21aに吹き付ける構成としているので、開閉扉21を開ける前の時点での蒸気の追い出し効果(冷却効果)が特に優れる。
【0072】
なお、上記実施形態では、蒸発皿35の水を加熱し蒸気を発生させるために蒸発皿加熱ヒータを使用した場合を説明したが、図24に示すように、蒸発皿35の水を高周波加熱により蒸発させるようにすることもできる。この場合、通常のスタラー羽根33による撹拌で、蒸発皿35内の水を高周波加熱してもよいが、望ましくは、スタラー羽根33による高周波の出射先を、蒸発皿35に向けることができるようにし、蒸発皿35を集中的に加熱できるようにする。このことは、スタラー羽根33は通常回転して加熱室11全体を均一に加熱するようにしているが、これを特定の位置で停止させることで実現できる。従って、所定時間集中して蒸発皿35内の水を加熱した後に、通常の庫内加熱に戻るという制御を実施すれば、蒸気発生と高周波加熱とを一緒に行うことができる。
【0073】
このように、蒸発皿加熱ヒータを省略して、高周波により蒸発皿35内の水を加熱・蒸発させるようにした場合、特に蒸気を発生するための専用のヒータが省略できる分、設備の簡易化とコストの低減が図れる。
【0074】
なお、以上の実施形態では、高周波を撹拌するためにスタラー羽根33を設けた例について説明したが、スタラー羽根を省略して被加熱物を載置して回転駆動されるターンテーブルを用いる構成においても同様に本発明を適用することができる。
【0075】
次に、蒸気発生部15の蒸気発生方式のバリエーションについて、図25を参照しながら説明する。同図において、11は加熱室、401はカートリッジ式の水タンク、402はポンプ、403は排水機構である。(a)は、上述した蒸発皿35と蒸発皿加熱ヒータ37を用いた最もシンプルなタイプである。蒸発皿加熱ヒータ37としてガラス管式の遠赤外線ヒータを用いた場合は、蒸気発生量が10g/分程度で、約40秒で蒸気発生が可能である。また、ハロゲンヒータを用いた場合には、上記と同程度の蒸気発生量であって、約25秒で蒸気発生が可能である。このタイプの構造は単純で安価であり、蒸気発生までの時間が短い利点がある。
【0076】
(b)は、インバータ電源405とIH(電磁誘導加熱)コイル406を用いて蒸発皿35内の水を加熱するタイプである。このタイプでは、蒸気発生量が15g/分程度で、約15秒で蒸気発生が可能であり、蒸気発生までの時間が早い利点がある。
【0077】
(c)は、滴下式IHスチーマ406を用いるタイプで、インバータ電源405とIH(電磁誘導加熱)コイルとを用いて加熱した部材に、水滴を滴下して蒸発させるものである。このタイプは、大型となるが、蒸気発生量が20g/分程度で、約5秒で蒸気発生が可能となる。
【0078】
(d)は、ボイラー407を使用して蒸気を発生させるタイプで、蒸気発生量12〜13g/分程度で約40秒で蒸気発生が可能である。これは排水機構403等が複雑となるが、安価に構成できる。
【0079】
(e)は、超音波式の蒸気発生器408を用いるタイプで、発生した蒸気をファンFで吸い出して、室内気加熱ヒータ19で加熱してから加熱室11に供給するようにしている。
【0080】
ここで、上記した本発明に係る上記発生機能付き高周波加熱装置により、各種の加熱処理を行った例を説明する。
図26は、被加熱物として肉まん1個を加熱した場合の重量変化の様子を示している。肉まんを蒸気で加熱した(蒸した)場合、最終的に良好な状態に加熱できたか否かは水分量の増加で判断できる。
【0081】
(a)は室内気加熱ヒータとしてのコンベクションヒータを570Wで加熱し、循環ファンを動作させないで蒸気加熱した場合を示す。(b)はコンベクションヒータを680Wで加熱し、循環ファンを動作させないで蒸気加熱した場合を示す。いずれの場合も、加熱時間に対する水分量の増加分が比較的少なく、単に加熱室11に蒸気を充満させてコンベクションヒータを加熱するだけでは、良好な蒸し上がり効果が得られなかったことが分かる。
【0082】
これに対し、(c)、(d)のように循環ファンを動作させた場合は、比較的高い水分量が得られ、良好な蒸し上がり効果が得られた。また、(c)のように循環ファンの回転数を落とした場合でも、時間が経過すると良好な蒸し上がり効果が得られることが分かった。つまり、循環ファンの動作により、蒸し上げ品の水分量を大きくすることができる。従って、蒸気加熱する場合には蒸気の循環が不可欠であると言える。
【0083】
図27は、循環ファンを動作させた場合とさせない場合の扉と加熱室内の結露量の違いを示す。結露は時間の経過につれて増加するが、循環ファンを動作させることにより、結露量を大きく減らせることが分かる。上記加熱開始から10分経過時において、循環ファン回転なしの場合で、扉7.6g、加熱室14.4gであったものが、循環ファン回転ありの場合で、扉3.1g、加熱室7.3gまで低下し、概ね半分程度にまで結露量を減らすことができる。
【0084】
図28は、蒸気加熱終了時点からの庫内及び扉における結露量の変化を、コンベンションヒータ加熱ありの場合、加熱なしの場合で調べた結果を示す。コンベンションヒータを動作させることにより、特に加熱室の結露量が加熱終了時点での7.3gから、3.0g(1分)、0.3g(2分)と大幅に低下する。また、扉に関しても、3.1gから、2.9g(1分),1.3g(2分)と低下の傾向が見られる。
【0085】
図29は、加熱室に蒸気を充満させたときに循環ファンを動作させた場合とさせない場合における赤外線センサの測定性能を調べた結果を示す。循環ファンを動作させない場合には、途中から赤外線センサの測定値に揺らぎが発生して測定精度が低下しているが、循環ファンを動作させた場合には、常に安定した測定が行えている。つまり、循環ファンを動作させることによって、赤外線センサの検出レベルが安定して、良好な温度測定が行えるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明を蒸気発生機能付き高周波加熱装置等に適用することで、赤外線センサによる被加熱物の温度計測の精度も高めることができ、適正な加熱処理を高速に行えるようになる点で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1実施形態の蒸気発生機能付き高周波加熱装置の扉を開けた状態を示す正面図である。
【図2】図1の蒸気発生機能付き高周波加熱装置に用いられる蒸気発生部の蒸発皿を示す斜視図である。
【図3】蒸気発生部の蒸発皿加熱ヒータと反射板を示す斜視図である。
【図4】同装置の蒸気発生部の断面図である。
【図5】蒸気発生機能付き高周波加熱装置を制御するための制御系のブロック図である。
【図6】同装置の電源部に使用されるインバータ装置の回路図である。
【図7】蒸気発生機能付き高周波加熱装置の基本的な動作を説明するフローチャートである。
【図8】蒸気発生機能付き高周波加熱装置の動作説明図である。
【図9】蒸発皿を加熱室外に取り出す様子を示す説明図である。
【図10】蒸気発生機能付き高周波加熱装置で使用する蒸発皿及び蓋体の斜視図で、(a)は蓋体を被せる前、(b)は蓋体を被せた状態を示す図である。
【図11】蒸気発生機能付き高周波加熱装置による蒸気の循環の様子を示す説明図である。
【図12】被加熱物の種類に応じて加熱プログラムを選定して加熱する手順を示すフローチャートである。
【図13】(a)同時加熱プログラムと(b)切り替え加熱プログラムの加熱タイミングチャートを示す図である。
【図14】設定した目標加熱温度に達するまで被加熱物を加熱する場合の基本的な手順を示すフローチャートである。
【図15】設定した加熱時間に達するまで被加熱物を加熱する場合の基本的な手順を示すフローチャートである。
【図16】具体的な加熱パターン(a)〜(d)を示す図である。
【図17】具体的な加熱パターン(e)〜(i)を示す図である。
【図18】高周波加熱と蒸気加熱にそれぞれ要する加熱電力量の組み合わせの各タイプを示すタイミングチャートである。
【図19】加熱室内の蒸気温度を一定に保つ方法の説明図である。
【図20】インバータ制御により加熱室内を常に一定温度となるように調節する方法のタイムチャートを示す図である。
【図21】蒸気が発生するまでの間だけ加熱室内の空気を循環させないようにする方法のタイムチャートを示す図である。
【図22】外気吹き付けの制御を行うための機械的構成を示す平面図である。
【図23】外気吹きつけの制御内容を示すタイムチャートである。
【図24】本発明の他の実施形態の蒸気発生機能付き高周波加熱装置の概略構成図である。
【図25】蒸気発生部の各種バリエーション(a)〜(e)を示す説明図である。
【図26】被加熱物として肉まん1個を加熱した場合の重量変化の様子を示す図である。
【図27】循環ファンを動作させた場合とさせない場合の扉と加熱室内の結露量の違いを示す図である。
【図28】蒸気加熱終了時点からの庫内及び扉における結露量の変化を、コンベンションヒータ加熱ありの場合、加熱なしの場合で調べた結果を示す図である。
【図29】加熱室に蒸気を充満させたときに循環ファンを動作させた場合とさせない場合における赤外線センサの測定性能を調べた結果を示す図である。
【図30】従来の制御内容のタイムチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0088】
11 加熱室
13 マグネトロン(高周波発生部)
15 蒸気発生部
17,18 循環ファン
19 コンベクションヒータ(室内気加熱ヒータ)
20 赤外線センサ
21 開閉扉
21a 透光窓
27 仕切板
29 吸気用通風孔
31,31A,31B 送風用通風孔
33 スタラー羽根(電波撹拌部)
35 蒸発皿
37 蒸発皿加熱ヒータ
39 反射板
41 蓋体
41a 開口100 蒸気発生機能付き高周波加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する加熱室に、高周波と蒸気とを供給して前記被加熱物を加熱処理する蒸気発生機能付き高周波加熱装置の制御方法であって、
高周波により加熱処理する高周波加熱処理と、前記加熱室内に供給する蒸気により加熱処理する蒸気加熱処理とを、それぞれ順次個別に或いは同時に行って被加熱物を加熱処理するときに、前記加熱室内の空気を撹拌しつつ該加熱室内を循環させると共に、赤外線検知による温度センサにより前記被加熱部の温度を検出することを特徴とする蒸気発生機能付き高周波加熱装置の制御方法。
【請求項2】
前記加熱処理時に、前記加熱室内で循環される空気を室内気加熱ヒータにより加熱することを特徴とする請求項1記載の蒸気発生機能付き高周波加熱装置の制御方法。
【請求項3】
前記高周波加熱処理がインバータ装置により加熱電力量を可変制御して加熱する処理であって、
前記蒸気加熱処理及び前記室内気加熱ヒータによる加熱電力量と、前記高周波加熱処理による加熱電力量との和が所定の定格電力量以下になるように、前記蒸気加熱処理と前記高周波加熱処理とを同時に行うことを特徴とする請求項2記載の蒸気発生機能付き高周波加熱装置の制御方法。
【請求項4】
被加熱物を収容する加熱室と、
前記加熱室に供給する高周波により加熱処理する高周波加熱処理手段と、
前記加熱室に供給する蒸気により加熱処理する蒸気加熱手段と、
前記加熱室に収容された被加熱物の温度を赤外線検知による温度センサにより検出する温度検出手段と、
高周波により加熱処理する高周波加熱処理と、前記加熱室内に供給する蒸気により加熱処理する蒸気加熱処理とを、それぞれ順次個別に或いは同時に行って被加熱物を加熱処理するときに、前記加熱室内の空気を撹拌しつつ該加熱室内を循環させると共に、赤外線検知による温度センサにより前記被加熱部の温度を検出する制御手段と、を備える蒸気発生機能付き高周波加熱装置。
【請求項5】
前記加熱室内の空気を加熱する室内気加熱ヒータを備え、
前記制御手段は、前記加熱処理時に前記加熱室内で循環される空気を室内気加熱ヒータにより加熱する請求項4に記載の蒸気発生機能付き高周波加熱装置。
【請求項6】
前記高周波加熱処理がインバータ装置により加熱電力量を可変制御して加熱する処理であって、
前記制御手段は、前記蒸気加熱処理及び前記室内気加熱ヒータによる加熱電力量と、前記高周波加熱処理による加熱電力量との和が所定の定格電力量以下になるように、前記蒸気加熱処理と前記高周波加熱処理とを同時に行う請求項4又は5に記載の蒸気発生機能付き高周波加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2006−105592(P2006−105592A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344261(P2005−344261)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【分割の表示】特願2002−67036(P2002−67036)の分割
【原出願日】平成14年3月12日(2002.3.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】