説明

蒸気調理ユニット

【課題】電子レンジの加熱室に設置して蒸し調理時の省電力化を図ることのできる蒸気調理ユニットを提供する。
【解決手段】電子レンジ1の加熱室2内に設置してマイクロ波による蒸し調理を行う蒸気調理ユニット10であって、前面を開口して調理物を収納する調理室12と、調理室12の壁面に開口した蒸気流入口12aを開閉する開閉弁16と、調理室12の周囲の密閉された空間に設けられる貯水室14と、貯水室14の上部と蒸気流入口12aとを連通させる蒸気流路20、21とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジの加熱室に設置してマイクロ波によって蒸し調理を行う蒸気調理ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはマイクロ波によって蒸し調理を行う電子レンジが開示されている。この電子レンジはマグネトロンにより発生したマイクロ波が供給される加熱室内に蒸し調理具が設置される。蒸し調理具は上面を開口したレンジ焼角皿内に食品載置台が配される。レンジ焼角皿の上面は蓋体により開閉される。
【0003】
レンジ焼角皿内には食品載置台の下方に蒸気発生用の水が注水され、食品載置台上に調理物が載置される。水及び調理物を入れた蒸し調理具を加熱室に設置して調理を開始すると、マグネトロンによってマイクロ波が加熱室に供給される。蒸し調理具の下部の水はマイクロ波加熱されて蒸発し、蒸し調理具内に蒸気が充満する。これにより、蒸気によって食品載置台上の調理物の蒸し調理が行われる。調理が終了すると加熱室から蒸し調理具が取り出され、蒸し調理具から調理物が取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−198013号公報(第4頁−第6頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の蒸し調理具によると、調理物を取り出すと蒸し調理具内の蒸気が流出する。このため、蒸し調理を連続して行う際にマイクロ波加熱によって新たに蒸気を発生させる必要がある。従って、蒸気を発生するための電力消費が大きくなる問題があった。
【0006】
本発明は、電子レンジの加熱室に設置して蒸し調理時の省電力化を図ることのできる蒸気調理ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、電子レンジの加熱室内に設置してマイクロ波による蒸し調理を行う蒸気調理ユニットであって、前面を開口して調理物を収納する調理室と、前記調理室の壁面に開口した蒸気流入口を開閉する開閉弁と、前記調理室の周囲の密閉領域に設けられる貯水室と、前記貯水室の上部と前記蒸気流入口とを連通させる蒸気流路とを備えたことを特徴としている。
【0008】
この構成によると、蒸気調理ユニットは電子レンジの加熱室内に設置される。貯水室に注水して調理室に調理物が収納されると、電子レンジによる調理が開始される。調理の開始によってマイクロ波が加熱室内に供給され、貯水室の水が蒸発して蒸気が発生する。貯水室で発生した蒸気は貯水室の上部から蒸気流路を介して蒸気流入口に導かれる。開閉弁が開かれると蒸気流入口を介して蒸気が調理室内に流入し、調理物の蒸し調理が行われる。調理が終了すると開閉弁が閉じられ、調理室から調理物が取り出される。
【0009】
また本発明は、上記構成の蒸気調理ユニットにおいて、前記開閉弁が圧力弁から成ることを特徴としている。この構成によると、蒸気流路内が所定の蒸気圧よりも高圧になると圧力弁が開いて調理室に蒸気が供給される。調理が終了して蒸気流路内が所定の蒸気圧よりも低圧になると圧力弁が閉じられ、蒸気流路内に蒸気が残留する。
【0010】
また本発明は、上記構成の蒸気調理ユニットにおいて、前記貯水室の貯水に浸漬されるとともにマイクロ波を吸収して蓄熱するマイクロ波吸収材を備えたことを特徴としている。この構成によると、貯水室に供給されたマイクロ波によって水及びマイクロ波吸収材が昇温される。昇温されたマイクロ波吸収材は蓄熱し、マイクロ波の減少時に放熱して貯水室の水を加熱する。
【0011】
また本発明は、上記構成の蒸気調理ユニットにおいて、前記調理室の前面を開閉する調理室扉を設けたことを特徴としている。この構成によると、調理室扉を閉じて蒸し調理が行われ、調理室から加熱室内への蒸気の流出が防止される。
【0012】
また本発明は、上記構成の蒸気調理ユニットにおいて、前記貯水室が前記調理室の下方を含む周囲に設けられることを特徴としている。この構成によると、加熱室の下方からマイクロ波が供給される際に、調理室の下方に配された貯水室内の水によりマイクロが吸収される。
【0013】
また本発明は、上記構成の蒸気調理ユニットにおいて、前記蒸気流路が前記貯水室の壁面と前記調理室の壁面との間に形成されるダクトにより形成されることを特徴としている。この構成によると、貯水室で発生した蒸気は貯水室の壁面と調理室の壁面との間のダクトを流通して蒸気流入口に導かれる。これにより、調理室の周面や背面の任意の位置に蒸気流入口を設けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、調理室の壁面に開口した蒸気流入口を開閉する開閉弁を設け、調理室の周囲の密閉領域に設けられる貯水室の上部と蒸気流入口とを蒸気流路により連通させたので、調理終了時に開閉弁を閉じて蒸気流路及び貯水室の蒸気の流出を防止できる。このため、蒸し調理を連続して行う際に前回発生した蒸気を利用することでき、蒸気を発生するための電力消費を小さくして省電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の蒸気調理ユニットを設置した電子レンジを示す斜視図
【図2】本発明の実施形態の蒸気調理ユニットを設置した電子レンジを示す正面断面図
【図3】本発明の実施形態の蒸気調理ユニットを示す斜視図
【図4】本発明の実施形態の蒸気調理ユニットを示す正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1、図2は一実施形態の蒸気調理ユニットを設置した電子レンジを示す斜視図及び正面断面図である。電子レンジ1は前面を開口して加熱室扉3により開閉される加熱室2を有し、加熱室2の側方の前面には調理操作を行う操作パネル4が配される。
【0017】
操作パネル4の後方にはマイクロ波を発生するマグネトロン5が配される。マグネトロン5は加熱室2の底面から導出される導波管6に連結される。マグネトロン5で発生したマイクロ波は導波管6を導波して加熱室2に供給される。導波管6にはアンテナモータ7aにより回転駆動されるアンテナ7が配される。アンテナ7によって加熱室2に供給されるマイクロ波が均一化される。
【0018】
蒸気調理ユニット10は加熱室2に出し入れして用いられる。図3、図4は蒸気調理ユニット10の斜視図及び正面断面図を示している。蒸気調理ユニット10は脚部11aで支持される本体筐体11内に前面を開口した調理室12が設けられる。本体筐体11の内部には調理室12の外側に密閉領域が形成される。後述するように、本体筐体11はマイクロ波が透過する。このため、本体筐体11の少なくとも一部には、マイクロ波を透過させる耐熱性のガラスやポリプロピレン等が用いられる。
【0019】
調理室12は前面を調理室扉13により開閉され、調理物Sが収納される。調理室12の側壁及び天井壁には複数の蒸気流入口12aが開口し、各蒸気流入口12aを開閉する開閉弁である圧力弁16が設けられる。調理室12の背面には加熱室2に連通した小孔から成る蒸気流出口12bが開口する。
【0020】
調理室12の側方及び下方には本体筐体11の壁面から延びて内部を仕切る正面視コ字状の仕切板18が配される。これにより、調理室12の壁面と仕切板18との間にダクト20が形成される。また、本体筐体11の天井壁と調理室12の天井壁との間にはダクト20に連通するダクト21が形成される。後述するように、ダクト20、21は蒸気が流通する蒸気流路を形成する。
【0021】
また、仕切板18と本体筐体11の内壁との間には蒸気発生用の水Wを貯水する貯水室14が形成される。貯水室14の壁面を形成する仕切板18と本体筐体11の天井壁との隙間によって貯水部14の上部には開口部14aが形成される。開口部14aを介して貯水室14とダクト20、21とが連通する。貯水室14の前面上部には貯水室14に注水する注水口19が設けられる。注水口19は蓋部(不図示)により開閉され、蓋部を閉じることによって貯水室14の密閉状態が保持される。
【0022】
貯水室14内には貯水に浸漬される複数の柱状のマイクロ波吸収材17が配される。マイクロ波吸収材17はアルミナ等により形成され、マイクロ波を吸収して蓄熱する。マイクロ波吸収材17をブロック状や平板状に形成してもよい。
【0023】
上記構成の蒸気調理ユニット10は電子レンジ1の加熱室2内に設置され、調理物Sが調理室12に収納されると調理室扉13及び加熱室扉3が閉じられる。電子レンジ1の操作パネル4の操作によって調理が開始されると、マグネトロン5で発生したマイクロ波が導波管6を介して下方から加熱室2に供給される。
【0024】
貯水室14内の水Wは本体筐体11を透過したマイクロ波によって加熱されて昇温する。この時、貯水室14の一部が調理室12の下方に設けられるため、水Wによりマイクロ波を吸収して調理物Sのマイクロ波による加熱が抑制される。
【0025】
また、マイクロ波吸収材17はマイクロ波により加熱されるとともに昇温された水Wにより加熱される。昇温されたマイクロ波吸収材17は蓄熱し、マイクロ波が減少した際に放熱して水Wを加熱する。従って、貯水室14の水Wが所定温度まで昇温されるとマグネトロン5の出力を下げて省電力化を図ることができる。
【0026】
貯水室14の水Wはマイクロ波加熱によって蒸発し、蒸気が発生する。貯水室14で発生した蒸気は矢印A1、A2に示すように調理室ダクト20、21を流通する。貯水室14は本体筐体11内の密閉領域に設けられるため、ダクト20、21内が昇圧される。ダクト20、21内が所定の蒸気圧よりも高圧になると圧力弁16によって蒸気流入口12aが開かれる。これにより、矢印A3、A4に示すように調理室12内に側壁及び天井壁から蒸気が流入し、蒸気によって調理物Sの蒸し調理が行われる。この時、調理室12内に充満する蒸気によってマイクロ波が吸収され、調理物Sのマイクロ波による加熱が抑制される。
【0027】
尚、調理室12内に蒸気が充満すると一部の蒸気は蒸気流出口12bを介して調理室12から流出し、調理室12内の昇圧が防止される。蒸気流出口12bに圧力弁を設けてもよい。
【0028】
所定の調理時間が経過するとマグネトロン5が停止される。マグネトロン5の停止によって蒸気の発生が停止され、ダクト20、21内が所定の蒸気圧よりも低圧になると圧力弁16によって蒸気流入口12aが閉じられる。これにより、蒸し調理が終了し、貯水室14及びダクト20、21内に蒸気が残留する。
【0029】
蒸し調理が終了すると調理物Sが加熱室扉3及び調理室扉13を開いて調理室12から取り出される。連続して蒸し調理を行う際には他の調理物Sが調理室12に収納され、操作パネル4の操作によって調理が開始される。この時、ダクト20、21内や貯水室14内に残留する前回の調理時の蒸気を利用できるため、マグネトロン5による加熱時間を短縮することができる。
【0030】
本実施形態によると、調理室12の壁面に開口した蒸気流入口12aを開閉する開閉弁である圧力弁7を設け、調理室12の周囲の密閉領域に設けられる貯水室14の上部と蒸気流入口12aとをダクト20、21(蒸気流路)により連通させたので、調理終了時に圧力弁7を閉じてダクト20、21及び貯水室14の蒸気の流出を防止できる。
【0031】
このため、蒸し調理を連続して行う際に前回発生した蒸気を利用することできる。従って、マグネトロン5による加熱時間を短縮して蒸気を発生するための電力消費を小さくし、蒸気調理ユニット10を用いた蒸し調理の省電力化を図ることができる。また、従来例に示すような蒸し調理具を調理毎に取り出す必要がなく、連続した蒸し調理時の利便性を向上することができる。
【0032】
尚、蒸気流入口12aの開閉弁を電磁弁により形成してもよい。電磁弁は電子レンジ1から制御信号及び電力が送られ、調理開始時に蒸気流入口12aを開いて調理終了時に蒸気流入口12a閉じる。これにより、調理終了時に貯水室14及びダクト20、21に蒸気を残留させることができる。
【0033】
しかし、本実施形態のように蒸気流入口12aの開閉弁を圧力弁16にすると、蒸気流入口12aを無給電で開閉することができるためより望ましい。これにより、蒸気調理ユニット10と電子レンジ1との電気的な接続を不要にできるとともに、電子レンジ1に対する機種依存性を排除することができる。
【0034】
また、貯水室14の貯水に浸漬されるとともにマイクロ波を吸収して蓄熱するマイクロ波吸収材17を備えたので、貯水室14の水Wが所定温度まで昇温されるとマグネトロン5の出力を下げてマイクロ波吸収材17の放熱により水Wを昇温することができる。従って、蒸気調理ユニット10による蒸し調理のより省電力化を図ることができる。
【0035】
また、貯水室14が調理室12の下方を含む周囲に設けられるので、一般に加熱室2の下方から供給されるマイクロ波を貯水室14の水Wにより吸収することができる。従って、調理室12に配される調理物Sのマイクロ波による加熱が抑制され、蒸し調理の良好な仕上り状態を得ることができる。
【0036】
尚、調理室12の壁面の材質としてマイクロ波の透過を制限するシールド材や高誘電材を使用するとより望ましい。これにより、調理物Sのマイクロ波による加熱をより抑制することができる。
【0037】
また、貯水室14の壁面と調理室12の壁面との間に形成されるダクト20によって蒸気が流通する蒸気流路を形成したので、調理室12の周壁の任意位置に蒸気流入口12aを設けることができる。従って、調理物Sに対して周囲全体から蒸気を吹き付けることができ、良好に蒸し調理を行うことができる。
【0038】
本実施形態において、調理室12の前面を開閉する調理室扉13を省いてもよい。この時、調理室12に供給される蒸気が加熱室2内に充満して蒸し調理が行われる。しかし、調理室扉13を設けると、調理室扉13を閉じて蒸し調理が行われるため調理室12から加熱室2内への蒸気の流出が防止される。従って、蒸気を効率よく利用することができ、蒸気調理ユニット10による蒸し調理のより省電力化を図ることができる。
【0039】
また、貯水室14の温度を検知する温度センサを設けてもよい。これにより、貯水室14の温度によって貯水室14やダクト20、21に残留する蒸気量を判別し、電子レンジ1によって蒸し調理の調理時間を可変することができる。この時、無給電で貯水室14の温度を感知して温度状態を表示する感温シート等の感温部材を本体筐体11の前面等に設けるとより望ましい。これにより、蒸気調理ユニット10と電子レンジ1との電気的な接続を不要にできるとともに、電子レンジ1に対する機種依存性を排除することができる。使用者は感温部材の表示に応じて調理時間を可変することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によると、電子レンジの加熱室に設置される蒸気調理ユニットに利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 電子レンジ
2 加熱室
3 加熱室扉
4 操作パネル
5 マグネトロン
6 導波管
7 アンテナ
7a アンテナモータ
10 蒸気調理ユニット
11 本体筐体
12 調理室
12a 蒸気流入口
12b 蒸気流出口
13 調理室扉
14 貯水室
15 ダクト部
16 圧力弁
17 マイクロ波吸収材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジの加熱室内に設置してマイクロ波による蒸し調理を行う蒸気調理ユニットであって、前面を開口して調理物を収納する調理室と、前記調理室の壁面に開口した蒸気流入口を開閉する開閉弁と、前記調理室の周囲の密閉領域に設けられる貯水室と、前記貯水室の上部と前記蒸気流入口とを連通させる蒸気流路とを備えたことを特徴とする蒸気調理ユニット。
【請求項2】
前記開閉弁が圧力弁から成ることを特徴とする請求項1に記載の蒸気調理ユニット。
【請求項3】
前記貯水室の貯水に浸漬されるとともにマイクロ波を吸収して蓄熱するマイクロ波吸収材を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸気調理ユニット。
【請求項4】
前記調理室の前面を開閉する調理室扉を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の蒸気調理ユニット。
【請求項5】
前記貯水室が前記調理室の下方を含む周囲に設けられることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の蒸気調理ユニット。
【請求項6】
前記蒸気流路が前記貯水室の壁面と前記調理室の壁面との間に形成されるダクトにより形成されることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の蒸気調理ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−32127(P2012−32127A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174151(P2010−174151)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】