説明

蒸発装置

【課題】従来から用いられている蒸発ガスを発生させる蒸発装置では、キャリアガスおよび液体が蒸発した蒸発気体が流通する容器内部にセラミックビーズが充填されているため、キャリアガス及び蒸発気体の流通が妨げられてしまう。このため、圧力損失が大きいという問題があった。
【解決手段】そこで、本件発明では、本体容器と、本体容器内部に立設された円筒形発熱体と、前記円筒形発熱体の頂部を被覆する液体拡散層と、前記円筒型発熱体の側面の全部または一部を被覆する液体蒸発層と、本体容器内部へキャリアガスを導入するガス供給管と、本体容器上部から液体拡散層へ液体を供給する液体供給管と、液体が蒸発した蒸発物とキャリアガスの混合気体を本体容器外部へ排出させる混合気体排出口と、からなる蒸発装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、蒸発ガスを発生させる装置であって、特に燃料電池などに用いられる加湿装置の水蒸気発生装置として使用される蒸発装置である。
【背景技術】
【0002】
近年、盛んに開発が行われている燃料電池は、燃料電池の種類によって燃料となるガスの改質が必要となる。一般的に燃料となるガスの主成分はメタンなどを含む都市ガスである。この燃料となるガスに水蒸気を反応させることで水素を生成させることで改質し、燃料電池の燃料としている。
【0003】
燃料となるガスの改質の他にも、燃料電池の高分子電解膜のイオン電導性を確保するために、燃料となるガスに水蒸気を含ませるために、燃料ガス中に水蒸気を含ませる場合がある。燃料となるガスの水素は、燃料電池中の水素極にて水素イオンとなった後、酸素極に移動する際に水分子を伴って膜中を移動する。このため、水素極は乾燥しやすくなり、内部抵抗が大きくなってしまう。このため、燃料となるガスに水蒸気を含ませる必要がある。
【0004】
このように、燃料となるガス中に水分を含ませるのに必要なのが、水蒸気を発生させるための蒸発装置である。この蒸発装置としては、特許文献1に示すような蒸発ガスの発生装置が提案されている。この特許文献1に示された蒸発ガスの発生装置では、伝熱部材であるセラミックビーズが充填された容器内に、蒸発させる水などの液体と、キャリアガスを供給し、容器外部から加熱手段に加熱する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許出願公開 特開2007−165239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示した蒸発ガスの発生装置では、キャリアガスおよび蒸発気体が流通する容器内部にセラミックビーズが充填されているため、キャリアガス及び蒸発気体の流通が妨げられてしまう。このため、特許文献1に示した蒸発ガスの発生装置では、圧力損失が大きく安定な蒸発が出来ないという問題がある。
【0007】
さらに、特許文献1に示した蒸発ガスの発生装置では、液体を蒸発させるために加熱を行う加熱手段が、容器の外部に設けられ、さらにセラミックビーズが充填されているため、加熱に時間がかかるなど、蒸発ガスを発生させるために必要以上の熱量を必要としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本件発明では、上記課題に鑑み、以下の蒸発装置を提供する。第一の発明としては、本体容器と、本体容器内部に立設された円筒形発熱体と、前記円筒形発熱体の頂部を被覆する液体拡散層と、前記円筒型発熱体の側面の全部または一部を被覆する液体蒸発層と、本体容器内部へキャリアガスを導入するガス供給管と、本体容器上部から液体拡散層へ液体を供給する液体供給管と、液体が蒸発した蒸発物とキャリアガスの混合気体を本体容器外部へ排出する混合気体排出口と、からなる蒸発装置を提供する。
【0009】
第二の発明としては、前記ガス供給管と前記液体供給管は、ガス供給管内部に液体供給管が配置された二重管構造からなる流体供給管である第一の発明に記載の蒸発装置を提供する。
【0010】
第三の発明としては、前記流体供給管のガス供給管の先端は、液体供給管の先端に比べ本体容器内部の上方に配されている第二の発明に記載の蒸発装置を提供する。
【0011】
第四の発明としては、一の液体供給管が一の円筒型発熱体に対応するよう構成されている、第一の発明から第三の発明のいずれか一に記載の蒸発装置を提供する。
【0012】
第五の発明としては、前記液体拡散層および前記液体蒸発層は、金属繊維からなる第一の発明から第4の発明のいずれか一に記載の蒸発装置を提供する。
【0013】
第六の発明としては、前記液体蒸発層は、前記円筒形発熱体中心から外周方向へプリーツ構造を有する第一の発明から第五の発明のいずれか一に記載の蒸発装置を提供する。
【0014】
第七の発明としては、前記本体容器外面には、本体容器内面の結露を防止するための保温構造を有する第一の発明から第六の発明のいずれか一に記載の蒸発装置を提供する。
【0015】
第八の発明としては、前記液体供給管から供給される液体は水または水溶液である第一の発明から第七の発明のいずれか一に記載の蒸発装置を提供する。
【0016】
第九の発明としては、複数の流体供給管と、前記複数の流体供給管に対応する液体拡散層および液体蒸発層に被覆された複数の円筒型発熱体と、を本体容器内部に有する第一の発明から第八の発明のいずれか一に記載の蒸発装置を提供する。
【0017】
第十の発明としては、第一の発明から第九の発明に記載の蒸発装置を有する加湿器を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本件発明の蒸発装置のように本体容器内部に発熱体を配置し、発熱体を覆う液体蒸発層から液体を蒸発させることで、効率よく液体を気体中に蒸発させることが可能となる。また、気体と液体を本体容器内部に供給する管を二重管構造にすることで、液体供給管の外周に蒸発物が凝縮することで液化し付着するのを防ぐことが可能となる。さらに、液体蒸発層にプリーツ構造を設けることで、液体蒸発層の表面が大きくなり、これにより液体が蒸発する面積が広くなり、効率よく液体の蒸発を行うことが可能となる。また、本体容器内に複数の円筒形発熱体を配置することが可能であって、大量の液体を蒸発させることが可能となる。また、本実施形態の蒸発装置のように、発熱体制御部や液体供給部、気体供給部、温度調整部を蒸発装置に加えることで、加湿装置として使用することが可能となり。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1の蒸発器を説明するための概念図
【図2】実施形態1の蒸発器を説明するための概念図
【図3】実施形態1の蒸発器を説明するための概念図
【図4】実施形態1の蒸発器を説明するための概念図
【図5】実施形態1の蒸発器を説明するための概念図
【図6】実施形態2の蒸発器を説明するための概念図
【図7】実施形態3の蒸発器を説明するための概念図
【図8】実施形態4の蒸発器を説明するための概念図
【図9】実施形態4の蒸発器を説明するための概念図
【図10】実施形態5の加湿器を説明するための概念図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本件発明の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。なお、本件発明は、これら実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【0021】
実施形態1は、主に請求項1、請求項4、請求項5、請求項7、請求項8などに関する。実施形態2は、主に請求項2および請求項3などに関する。実施形態3は、主に請求項5および請求項6などに関する。実施形態4は、請求項4および請求項9などに関する。実施形態5は主に請求項5などに関する。
<<実施形態1>>
<実施形態1 概要>
【0022】
本実施形態の蒸発装置は、本体容器内部に発熱体を有することを特徴とした蒸発装置である。具体的には、発熱体の周囲に設けられた液体を拡散および蒸発させる層に、蒸発させる液体を滴下し、蒸発させている。このときの発熱体の温度および液体の滴下量をコントロールすることで、混合気体に含まれる液体が蒸発した蒸発物の量をコントロールすることが可能である。
<実施形態1 構成>
【0023】
図1に本実施形態の蒸発装置を説明するための斜視透視概念図を示した。本実施形態の蒸発装置は、本体容器(0100)と、本体容器内部に立設された円筒形発熱体(0200)と、前記円筒形発熱体の頂部を被覆する液体拡散層(0300)と、前記円筒型発熱体の側面の全部または一部を被覆する液体蒸発層(0400)と、本体容器内部へキャリアガスを導入するガス供給管(0500)と、本体容器上部から液体拡散層へ液体を供給する液体供給管(0600)と、液体が蒸発した蒸発物とキャリアガスの混合気体を本体容器外部へ排出させる混合気体排出口(0700)と、からなる。
【0024】
「本体容器」は、内部に円筒形発熱体を有している。図2に本実施形態の蒸発装置の断面概念図を示した。本実施形態の蒸発装置では、本体容器内部に液体拡散層と液体蒸発層に被覆された円筒形発熱体を有している。そして液体供給管から供給された液体を、ガス供給管から供給されたキャリアガスとともに、本体容器外部へ混合気体排出口から排出する。特許文献1に示した蒸発ガスの発生装置では、容器本体の外部に電気ヒータを設置し、内部で液体が蒸発する容器本体全体を電気ヒータによって昇温させているのに対して、本実施形態の蒸発装置では、本体容器内部に発熱体を配置している。このため、放熱によるロスが少なく、効率よく液体を蒸発させることが可能である。また、本実施形態の蒸発装置において、本体容器内壁にて液体が蒸発した蒸発物が冷やされて液化してしまう可能性がある。この場合には、図2に示したように、本体容器外周に断熱材(0101)を設置したり、リボンヒーターなどの発熱体(0102)を巻くなどの保温構造を設けると良い。
【0025】
「円筒形発熱体」は、本体容器内部に立設されている。この円筒形発熱体は、頂面に後述する液体拡散層を、側面は液体蒸発層におおわれている。この円筒形発熱体から発せられる熱により、液体蒸発層が加熱されて液体が蒸気となる。円筒形発熱体は、内部に電気ヒータを内蔵し、表面をステンレスなどで覆われた発熱体である。また発熱体には発熱体に電力を供給するためのリード線が取り付けられている。このリード線は、図示していないが、供給する電力をコントロールする制御装置に接続されていてもよい。
【0026】
「液体拡散層」は、円筒形発熱体の頂部に配置され、本体容器上部から供給される蒸発される液体を円筒形発熱体表面の液体蒸発層へ拡散させる。図3に液体拡散層を説明するための概念図を示した。図3の(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。図3のように、液体拡散層は円筒形発熱体の頂部に配置されている。そして、円筒形発熱体の側面および円筒形発熱体の周囲は、後述する液体蒸発層によって取り囲まれている。図3の(a)のように、容器本体上部から液体拡散層に滴下された液体は、(b)のように、液体拡散層上を拡散し、液体を液体蒸発層に供給する。液体蒸発層に供給された液体は、円筒形発熱体の熱によって蒸発し気体となる。この際、液体蒸発層とともに液体拡散層も円筒形発熱体に接触しているため、液体蒸発層にて蒸発することもある。また、図3を見ても明らかなように、液体蒸発層は液体拡散層を取り囲んで、液体拡散層の円周上に壁を形成してもよい。これは、仮に液体蒸発層に供給される液体の量が多くなった際に、液体拡散層の液体の吸収と拡散のスピードが追いつかない場合に、液体を円筒形発熱体の頂部に滞留させるための壁面となる。またこのような場合に、液体蒸発層が直接液体を吸収することが可能である。
【0027】
「液体蒸発層」は、円筒形発熱体の側面の全部または一部を被覆し、液体拡散層から供給を受けた液体を円筒形発熱体から発せられる熱によって蒸発する。液体拡散層から供給を受けた液体は、液体蒸発層の上部から下部方向へ重力によって拡散する。拡散の途中で、液体は円筒形発熱体の熱によって蒸発する。つまり、供給される液体の量が少ない場合には、液体蒸発層に近い、円筒形発熱体の上部付近だけで液体が蒸発する。逆に液体の供給量が多い場合には、上部だけではなく、下部方向へ液体が流れてから蒸発する。
【0028】
ここで、液体拡散層および液体蒸発装置を構成する材料について説明する。液体拡散層および液体蒸発層は、液体を吸収し、熱に強く熱伝導性の良い材料が望ましい。例えば、極細の金属繊維によって形成されたメタルファイバーや、耐熱性を有するアラミド繊維、ガラスウールなどである。特にメタルファイバーは保水性がよく、その保水率は、略30%から略60%程度である。
【0029】
「ガス供給管」は、本体容器内部へキャリアガスとなる気体を供給する。ガス供給管は、図1、図2、図3においては本体容器の上部から気体を供給するように図示されているが、ガス供給管の取り付け位置は、後述する混合気体排出口の位置との関係などを考慮して決定する。仮に、混合気体排出口が本体容器の下部に配置され、ガス供給管も本体容器の下部に配置された場合、本体容器内にて蒸発した液体が滞留してしまう恐れもある。従って、ガス供給管の取り付け位置は、混合気体排出口の位置などとの関係に基づいて決定される設計事項である。
【0030】
「液体供給管」は、本体容器上部から液体拡散層へ滴下することで蒸発させる液体を供給する。この液体供給管から供給される液体の量と前述した円筒形発熱体の発熱量をコントロールすることで、蒸発する液体の量をコントロールすることが可能である。また、液体供給管から供給される液体の量は、円筒形発熱体を被覆する液体拡散層および液体蒸発層から蒸発可能な液体の量を超えてはならない。仮に、蒸発可能な液体の量を超えてしまうと、本体容器内部に液体が滞留してゆくこととなる。従って、液体供給管から供給される液体の量は、円筒形発熱体の発熱量との関係を考慮して適宜決定する。
【0031】
また、液体供給管から液体拡散層への液体の滴下は、理想的には液体拡散層の中心に滴下し、円筒形発熱体側面の液体蒸発層に均一に拡散されるのが理想である。このため、一つの円筒形発熱体に対して一つの液体供給管を対応させることが望ましい。仮に一つの円筒形発熱体に対して複数の液体供給管を対応させた場合、液体を均一に液体蒸発層に供給するのが困難だからである。
【0032】
「混合気体排出口」は、キャリアガスである気体と、円筒形発熱体から発せられる熱によって液体蒸発層で蒸発した蒸発物が混合された混合気体を、本体容器内部から外部へ排出する口である。本体容器における混合気体排出口の配置位置は、先に述べたようにガス供給管の取り付け位置との関係によって決定されるものである。
【0033】
また、本実施形態の蒸発装置において、円筒形発熱体に温度測定を行う温度センサを設けてもよい。例えば、図4に示したように、円筒形発熱体に温度センサ(0201、0202)を設ける。この際、温度センサは、円筒形発熱体の上部、つまり液体拡散層よりと、円筒形発熱体の下部など数か所に設けるとよい。このように、円筒形発熱体の上下方向に複数の温度センサを設けると、円筒形発熱体の上部は、常に液体供給管から供給された液体が蒸発しているため、温度が低くなる。一方で、円筒形発熱体の下部では、液体の供給量が少ない場合、蒸発する液体が存在しないため、上部に比べて温度が高くなる。このように本実施形態の蒸発装置では、円筒形発熱体に温度分布が生じる。これを複数の温度センサで温度を測定することで、液体の供給量を増やしたり、円筒形発熱体に供給する電力を調整したりするなどの指標とすることが可能となる。
【0034】
尚、実施形態の蒸発装置において、本体内部に供給される液体および気体は、特に限定していない。例えば、供給される気体が空気で、液体を水としてもよいし、液体をメタノールなどのアルコール類や炭化水素類などとしてもよい。供給される気体が空気で液体が水の場合は、いわゆる加湿器として機能する。
<実施形態1 効果>
【0035】
本実施形態の蒸発装置のように、本体容器内部に発熱体を配置し、発熱体を覆う液体蒸発層から液体を蒸発させることで、効率よく液体を気体中に蒸発させることが可能となる。また、供給する液体の量および気体の流量をコントロールすることで容易に湿度などを調整することが可能となる。
<<実施形態2>>
<実施形態2 概要>
【0036】
本実施形態の蒸発装置は、気体と液体を供給する管が二重管構造であることを特徴とする蒸発装置である。気体を供給するガス供給管の内部に、液体を供給する液体供給管を配置することで、液体供給管の外周に蒸発物が液化して付着するのを防ぐことが可能となる。
<実施形態2 構成>
【0037】
図5に本実施形態の蒸発装置を説明するための断面概念図を示した。本実施形態の蒸発装置は、ガス供給管と液体供給管が、ガス供給管内部に液体供給管が配置された二重管構造からなる流体供給管(0800)である。図5のようにガス供給管内部に液体供給管が配置し、二重管構造からなる流体供給管とすると、流体供給管は、蒸発される液体を円筒形発熱体の頂部を被覆する液体拡散層に滴下するために、円筒形発熱体の真上にくるように配置される。
【0038】
図6に流体供給管を説明するための拡大概念図を示した。(a)は液体供給管とガス供給管がそれぞれ別々に構成されている例である。この(a)のように、液体供給管とガス供給管が別々に構成されている場合、液体供給管の管外周に液化した液体が付着する可能性がある。例えば、液体供給管から供給される液体が水で、ガス供給管から供給される気体が空気であった場合、本実施形態の蒸発装置の本体内部は、水が蒸発し高温で高湿な状態となる。この中で、水が供給される液体供給管は、高温の本体容器内部の中で、供給される水によって冷却される。このため、液体供給管の外周が冷やされ、一旦蒸発した水が結露してしまう。
【0039】
そこで(b)では、ガス供給管内部に液体供給管が配置された二重管構造としている。このように、本体容器内で温度が低く、結露する可能性の高い液体供給管の周囲にガス供給管を配置することで、液体供給管の周囲は常に空気の流れが生じる。このようにすることで、液体供給管の周囲に結露が起こるのを防いでいる。
【0040】
また、(b)は、ガス供給管の先端と液体供給管の先端位置が揃っている。このようにガス供給管と液体供給管の先端位置を揃った状態では、液体が液体供給管の先端から滴下される際に、周囲のガス供給管から排出される気体によって液体拡散層への落下が乱されてしまう。落下が乱されることで、液体拡散層へ液体を供給できなくなるなどの影響が発生する恐れがある。
【0041】
そこで、(c)のように、ガス供給管内部に液体供給管が配置された二重管構造である流体供給管は、ガス供給管の先端を、液体供給管の先端に比べ本体容器内部の上方に配するようにすればよい。このように構成することで、ガス供給管から容器本体へ放出された気体の一部が液体供給管の外周を流れ、液体供給管の外周に結露が起こるのを防ぎ、さらに液体が滴下される際に落下を乱すことなく液体拡散層へ液体を供給することが可能となる。
【0042】
尚、図5から図6では、ガス供給管は液体供給管を内部に有する二重管構造のみを示しているが、場合によっては、二重管構造の流体供給管の他に、ガス供給管のみ設けるように構成してもよい。
<実施形態2 効果>
【0043】
本実施形態の蒸発装置のように、気体と液体を本体容器内部に供給する管を二重管構造にすることで、液体供給管の外周に蒸発物が凝固することで液化し付着するのを防ぐことが可能となる。
<<実施形態3>>
<実施形態3 概要>
【0044】
本実施形態の蒸発装置は、液体の蒸発を効率よく行うために、液体蒸発層にプリーツ構造を設けている。このようにプリーツ構造を設けることで液体蒸発層の表面積を大きくすることが可能となる。これにより、液体が蒸発する面積が広くなり効率よく液体の蒸発を行うことが可能となる。
<実施形態3 構成>
【0045】
図7に本実施形態の液体蒸発層を説明するための概念図を示した。図7は、本実施形態の蒸発装置の液体蒸発層のみを図示したものであり、その他の構成については記載を省略している。本実施形態の蒸発装置は、液体蒸発層が円筒形発熱体中心から外周方向へプリーツ構造を有している。
【0046】
図7にプリーツ構造を有する液体蒸発層の概念図を示した。(a)は円筒形発熱体の側面を覆う円筒形の液体蒸発層に、円筒形中心から外周方向に向けて羽根状のプリーツ(0401)を取り付けた例である。一方、(b)に示した例では、1枚の液体蒸発層に折り目を形成させることで、円筒形発熱体の側面を覆う円筒形の液体蒸発層と、円筒形の部分から外周方向甲へ山型の折(0402)をつけることでプリーツ形状と、を形成している。
【0047】
このように、液体蒸発層にプリーツ構造を形成することで、液体蒸発層の表面積が大きくなり、液体蒸発層から蒸発する液体の量を増やすことが可能となる。また、本実施形態の液体蒸発層のように、プリーツ構造を形成し表面積を増やすことで、コンパクトな蒸発装置でも効率よく液体を蒸発することが可能となる。
<実施形態3 効果>
【0048】
本実施形態の蒸発装置のように、液体蒸発層にプリーツ構造を設けることで、液体蒸発層の表面が大きくなり、これにより液体が蒸発する面積が広くなり、効率よく液体の蒸発を行うことが可能となる。
<<実施形態4>>
<実施形態4 概要>
【0049】
本実施形態は、本体容器内に複数の円筒形発熱体が配置された大型の蒸発装置である。本体容器内に複数の円筒形発熱体を配置することで、大量の液体を蒸発させることが可能となる。
<実施形態4 構成>
【0050】
本実施形態の蒸発装置は、複数の流体供給管と、前記複数の流体供給管に対応する液体拡散層および液体蒸発層に被覆された複数の円筒型発熱体と、を本体容器内部に有する。
【0051】
図8に本実施形態の蒸発装置を説明するための断面概念図を示した。本実施形態の蒸発装置は、本体容器に複数の流体供給管とそれに対応する複数の円筒型発熱体が配置されている。円筒型発熱体は、液体拡散層および液体蒸発層に被覆されている。図8のように3本の円筒形発熱体が配置されている場合、円筒形発熱体が1本の場合に比べて、略3倍の液体を蒸発させる能力を有する。本実施形態の蒸発装置によれば、簡単に円筒形発熱体の数を増やすことで、蒸発性能の高い蒸発装置を得ることが可能である。
【0052】
図9には、図8の蒸発装置の別の形態の一例を示した。特に図9に示した蒸発装置は、気体の流量が大流量の場合に適した構成である。図9に示した蒸発装置では、ガス供給管の内部に液体供給管が配置された流体供給管は用いずに、液体供給管(0600)とガス供給管(0500)を別々に設けている。液体供給管は、一つの円筒型発熱体(0200)に一つの液体供給管が対応するように配置されるのに対して、ガス供給管は、十分に気体を供給可能なだけの内径を有するガス供給管を本体容器(0100)上部に一つ設けている。また、一つのガス供給管から供給されるガスが、本体容器内部に均一にいきわたるよう、円筒形発熱体に設けられた液体拡散層(0300)より上の本体容器内部にアルミナなどのセラミックスからなる多孔質球(0302)を充填している。多孔質球を本体容器内部上部のみに配置するために、間仕切りとして液体蒸発層(0400)並びに液体拡散層(0300)と同様の材料からなるメタルファイバースクリーン(0301)が配置されている。このメタルファイバースクリーンは、円筒形発熱体に配置された液体拡散層の直上には配置されておらず。液体拡散層の直上となる部分には、液体拡散層と同等またはそれ以上の大きさを有する穴が設けられている。また、先に説明した多孔質球も、液体供給管から液体拡散層への水の滴下を妨げないために、液体拡散層の直上から液体供給管の先端までは、充填されていない。
<実施形態4 効果>
【0053】
本実施形態の蒸発装置は、本体容器内に複数の円筒形発熱体を配置することが可能である。円筒形発熱体を複数配置することで、大量の液体を蒸発させることが可能となる。
<<実施形態5>>
<実施形態5 概要>
【0054】
本実施形態は、実施形態1から実施形態4に述べた蒸発装置を有する加湿装置である。この加湿装置をさらに燃料電池の試験装置など、様々な装置に組み込んで使用することが可能である。
<実施形態5 構成>
【0055】
本実施形態は、実施形態1から実施形態4に述べた蒸発装置を有する加湿装置である。図10に本実施形態の加湿装置(0900)を説明するための概念図を示した。本実施形態の加湿装置は、液体供給管への液体供給を制御する液体供給部(0901)と、ガス供給管にキャリアガスなどの気体を供給する気体供給部(0902)と、円筒形発熱体の発熱量などを制御する発熱体制御部(0903)と、混合気体排出口から排出され、液体が蒸発した蒸発物を含む混合気体の湿度を調整する湿度検出部(0904)とから構成されている。さらに、湿度検出部から燃料電池(1000)などに湿度が調整された混合気体を供給することで、燃料電池試験装置に用いることも可能である。
【0056】
このように、本実施形態の蒸発装置を有する加湿装置は、幅広く湿度をコントロールすることが可能であるため、様々な試験装置などに応用することが可能である。
<実施形態5 効果>
【0057】
本実施形態の蒸発装置のように、発熱体制御部や液体供給部、気体供給部、温度調整部を蒸発装置に加えることで、加湿装置として使用することが可能となる、
【符号の説明】
【0058】
0100 本体容器
0101 断熱材
0102 発熱体
0200 円筒形発熱体
0201 温度センサ
0202 温度センサ
0300 液体拡散層
0301 メタルファイバースクリーン
0302 多孔質球
0400 液体蒸発層
0401 羽根状のプリーツ
0402 山型の折
0500 ガス供給管
0600 液体供給管
0700 混合気体排出口
0800 流体供給管
0900 加湿装置
0901 液体供給部
0902 気体供給部
0903 発熱体制御部
0904 湿度検出部
1000 燃料電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体容器と、
本体容器内部に立設された円筒形発熱体と、
前記円筒形発熱体の頂部を被覆する液体拡散層と、
前記円筒型発熱体の側面の全部または一部を被覆する液体蒸発層と、
本体容器内部へキャリアガスを導入するガス供給管と、
本体容器上部から液体拡散層へ液体を供給する液体供給管と、
液体が蒸発した蒸発物とキャリアガスの混合気体を本体容器外部へ排出する混合気体排出口と、
からなる蒸発装置。
【請求項2】
前記ガス供給管と前記液体供給管は、
ガス供給管内部に液体供給管が配置された二重管構造からなる流体供給管である請求項1に記載の蒸発装置。
【請求項3】
前記流体供給管のガス供給管の先端は、液体供給管の先端に比べ本体容器内部の上方に配されている請求項2に記載の蒸発装置。
【請求項4】
一の液体供給管が一の円筒型発熱体に対応するよう構成されている、請求項1から3のいずれか一に記載の蒸発装置。
【請求項5】
前記液体拡散層および前記液体蒸発層は、金属繊維からなる請求項1から4のいずれか一に記載の蒸発装置。
【請求項6】
前記液体蒸発層は、
前記円筒形発熱体中心から外周方向へプリーツ構造を有する請求項1から5のいずれか一に記載の蒸発装置。
【請求項7】
前記本体容器外面には、本体容器内面の結露を防止するための保温構造を有する請求項1から6のいずれか一に記載の蒸発装置。
【請求項8】
前記液体供給管から供給される液体は水または水溶液である請求項1から7のいずれか一に記載の蒸発装置。
【請求項9】
複数の流体供給管と、
前記複数の流体供給管に対応する液体拡散層および液体蒸発層に被覆された複数の円筒型発熱体と、
を本体容器内部に有する請求項2から8のいずれか一に記載の蒸発装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一に記載の蒸発装置を有する加湿器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−72894(P2011−72894A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226237(P2009−226237)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000133526)株式会社チノー (113)
【Fターム(参考)】