説明

蒸着システム

本発明に関わる蒸着システム(100)は、真空チャンバ(102)と、蒸着材料を装填するルツボ(104)と、基板(114)を装着する基板ホルダ(112)と、基板上に堆積させる蒸着材料を加熱するための電子ビーム源(116)とを具備し、前記真空チャンバ内側に、前記基板ホルダとルツボと供に、前記電子ビーム源が配置され、前記電子ビーム源は電界放射電子ビーム源であり、さらに、前記蒸着材料を蒸着させる加熱を行う、前記電界放射電子ビーム源により放射された電子の飛翔方向を制御する制御ユニットを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界放射電子ビーム源を構成される蒸着システムに関する。
【背景技術】
【0002】
堆積方法は、薄膜または被覆膜を形成するために、ソースから基板に堆積材料を移動するために用いられている。堆積方法の中で、最もよく知られた蒸着技術の1つは、ビーム蒸着の別名でも知られている。
【0003】
その蒸着材料は、多くは、金、銀、ニッケルクロム合金、または、酸化シリコンのような、金属、金属性または非金属性コンパウンドにより構成されている。一般的に、蒸着金属はルツボに収容され、被膜される基板は固定または可変された距離に置かれている。電子ビームは、ルツボ内の材料金属の向かい、ルツボ内の材料金属の蒸発を引き起こし、基板に付着させる。このプロセスは、真空チャンバ内で行われる。
【0004】
この電子ビームは、摂氏約2000度になる高融点金属のフィラメント加熱を通じて、 熱イオン放射の手段によって生じる。電子ビームは、電磁界によってソース材料に向かう。現実的な操作において、蒸着は、ヒータ源のオン/オフ切り換えによって制御される。それは、安定した電子放射までフィラメントを加熱して、数分により溶解し、蒸発する。放射及び蒸発は、ヒータ電源のスイッチがオフされた時でさえ、一定期間の間、維持される。
【0005】
従って、この操作は、スウィフトパルスモード(swiftly pulsed mode)では実現ができず、堆積の制御は、機械的シャッタの切り換えにより実現される。このように、蒸発は、堆積開始(基板上方からシャッターが外れた時)よりもずっと以前に開始される。継続した後、シャッタは、基板上方に戻される。このような長期な蒸着は、ソース材料の無駄を引き起こしている。
【0006】
通常、期待する結果を成し遂げるためには、被膜純度、及び堆積膜削除による膜厚を制御可能とすることが重要である。膜厚の正確さは、蒸着レートと、蒸着/堆積のオンオフ切り換え時間との間の関係が決定的に依存する。そして、プロセスの制御及びソース材料の消費を減じることを達成するために、蒸着と堆積との間の遅延時間を短くすることは、高い価値がある。
【0007】
さらに、多数の製造工程は、多数の材料の多層コート膜の堆積を伴っている。加えて、基板上に形成された多層コート層の恩恵の多数は、継続的な真空下でコーティング工程が実行されることで実現される。そして、コーティング技術の傾向は、純度、更なる均一性及び、複合材料のコーティング膜厚の制御を獲得する方に向かっている。
【0008】
このように、蒸着材料の多数の多層コーティング層の形成は、マルチポケット型ルツボのソースポケットの多くの中に装填し、且つ、異なるポケットは、固定された電子ビームの中に連続的に移動される。
【0009】
例えば、マルチポケット型ルツボのような構成の蒸着システムは、US6,902,625号に開示されている。即ち、使用されないポケットは、異なるポケットの間におけるクロスコンタミネーションを無くすために、蓋によってカバーされている。
【0010】
しかしながら、このようなマルチポット型ルツボの使用は、限定や複雑化され、且つ蒸着装置の能率を低下させる。
従って、異なる蒸着材料による蒸着の間に潜在する能率や制限が改善された必要に応じた蒸着システムを提供する、
【発明の概要】
【0011】
本発明の態様に従えば、蒸着システムによる上記目的は、真空チャンバ、蒸着材料が装填するためのルツボ、基板を装着するための基板ホルダ、及び基板に堆積させるための蒸着材料を加熱する電子ビーム源と、で構成され、前記ルツボ及び前記基板ホルダと供に、前記電子ビーム源は、真空チャンバ内に配置され、前記電子ビーム源は、電界放射電子ビーム源である。さらに、蒸着システムは、蒸着材料を加熱する放射電子のような電界放射電子ビーム源によって放出された電子の方向を制御するための制御ユニットを備えている。これらのより完全に制御された状態下で蒸着材料が蒸着される。
【0012】
本発明に従えば、電子は、冷陰極源のような電界放射電子ビーム源によって放射され、金属のような蒸着材料は、基板がコーティングされるように、基板に向かう方向に蒸発することとなる。
【0013】
従来の電子ビーム源(例えば「フィラメント」電子ビーム源)に代わって電界放射電子ビーム源を用いることにより、切り換え時間、電流、運動エネルギ及び蒸着材料を加熱する放出電子の方向の点から電界放射電子ビーム源によって放出された電子の多くの高温度制御における必要性として、蒸着システムの能率の向上が望まれる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態に従えば、蒸着装置は、さらに、異なる蒸着材料を含み収容する多数のルツボと、制御ユニットによって調整される電界放射電子ビーム源による放出された電子の方向及び勢いと、これらにより、変貌された代わりに、電子の方向として、ルツボの再配置無しで、多数のルツボ内に準備された異なる蒸着材料の連続加熱する効果がある。
【0015】
この構成は、電界放射電子ビーム源の高速切り換えの可能性に起因して、1つの負荷サイクルにおいて、基板の多層のコーティングの効果がある。多層膜堆積の例においては、1つのソース材料から他への高速切り換えは、従来技術の範囲以上である。このように、本発明は、高速切り換えの実現の結果、従来の蒸着装置に対して、優位性を提供する。
【0016】
電界放射電子ビーム源による電子の放射の制御に対して、蒸着システムは、制御電極と電界放射電子ビーム源との間で、電界(換言すれば、電子ビームの伝播)の分布を制御する制御ユニットと協調して制御電極とをさらに備えてもよい。
【0017】
従って、制御電極及び電界放射電子ビーム源は、放射された電子が異なるルツボのそれぞれを連続的に加熱する分配となるように協同して配置される。制御電極は、例えば、リング形電極、セグメント化されたリング形電極、または、多数の独立した電子抽出電極であってもよい。必要であれば、制御電極もまた、電子ビームの方向を指図するための電磁石を携えてもよい。
【0018】
好ましい実施形態において、蒸着装置は、制御ユニットによって駆動制御されるシャッタを具備する、つまり、基板とルツボの少なくともいずれか一方をカバーするために適正なシャッタである。このシャッタは、基板上に堆積された蒸着材料の膜厚を検出するためのセンサと協同して用いられる。
【0019】
所望の膜厚への到達(以上又は以下)が検出され次第、シャッタは、基板と蒸着材料の間で移動して、コーティング工程を終了する。それは、しかしながら、電界放射電子ビーム源の高度な制御の結果、所望する膜厚の達成へのセンサ検出で電界放射電子ビーム源を迅速にスイッチオフすることが可能である。
【0020】
このように、必要であったシャッタを削除することが可能である。従って、多層蒸着材料の能率的な自動コーティング処理を提供することができる。加えて、蒸着システムは、ルツボに対する冷却処理をさらに具備し、これらにより、ルツボの中に装填された蒸着材料の素早く冷却する効果がある。水は、好ましい冷却液であり、他の冷却方法に関しても、勿論可能であり、本発明の範囲内である。
【0021】
上述したように、蒸着装置は、真空チャンバを具備する。この真空チャンバは、好ましくは約10−10mPaの間の雰囲気圧力が提供される。しかし、好適な圧力範囲は、10−7−10−4mPaの間である。その他の好適な実施形態において、蒸着システムは、さらに、混合チャンバと、混合チャンバ内で蒸着材料と混合される酸化ガス導入するための手段とを具備する。
【0022】
しかし、この加えられる混合ガスは、ルツボ内のソース材料に干渉せずに、基板の近傍において蒸着材料と反応のみを行うことが望ましい。この効果は、基板近傍に混合ガスをノズル噴射するまたは、ルツボ容器と混合チャンバの異なる排気を通じて実現することができる。
【0023】
本発明の実施形態として、電界放射電子ビーム源は、導体製支持部材と、その支持部材の少なくとも一部をコーティングする炭化固体混合フォーム(a carbonized solid compound foam)とを具備する。炭化固体混合フォームは、フェノール樹脂と、塩化金属及び酸化金属のうちのいずれか1つとが液体混合物から形状変化されたものである。
【0024】
固体カーボンは、好ましくは連続多孔質構造(continuous cellular structure)を有し、さらに、炭化固体混合フォームの表面上には、多数の鋭い放射用エッジが設けられている。電界放出電極は、参照例として、例えば、ヨーロッパ特許(EP05106440)に開示されている。
【0025】
他の実施形態として、電界放射電子ビーム源は、第1端部と第2端部を有する多数(又は複数)のZnOナノ構造部位を備え、ZnOナノ構造部位が互いに電気的に絶縁するように配置されている。電気的絶縁部材は、ZnOナノ構造部位の選択の第2端部に接続され、支持構造部位は、電気的導体部材上に配置される。電界放射電子ビーム源の第1端部は、ZnOナノ構造部位が噴出規定表面から延び出る端部であり、且つ露呈されている。そのような電界放出電極は、参照例として、例えば、ヨーロッパ特許EP08150191 に開示されている。
【0026】
本発明の更なる態様に従えば、蒸着システムのための電子ビーム源が提供される。蒸着システムは、真空チャンバ、蒸着材料が装填されるためのルツボ、及び基板を装填するための基板ホルダを備えている。電子ビーム源は、基板上に堆積させるための蒸着材料を加熱するために提供される。
【0027】
ルツボ及び基板ホルダは、電子ビーム源と供に、真空チャンバ内に配置されている。電子ビーム源は、電界放射電子ビーム源である。蒸着システムは、さらに、切り換え時間、電流値、運動エネルギ及び、完全に制御された態様における蒸着の蒸着材料を加熱する放射された電子の方向に関して、電界放射電子ビーム源によって放射された電子の制御を行うための制御ユニットを備えている。
【0028】
本発明のこの態様は、電界放射電子ビーム源によって放射された電子をとても高度な角度制御が可能なものとして、蒸着システムの能率を増加可能とする実例を含み、前述した蒸着システムに従う同様な利益をもたらしている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明のこれら及び他の態様は、本発明の現在の好適な実施形態を示す参照図面を参照してこれよりさらに詳細に記述される。
【図1】図1は、本発明の蒸着システムの概念的な外観を示す図である。
【図2a】図2aは、図1に示した蒸着システムにおける配置例となる制御電極に連携する本発明に従う電界放射電子ビーム源の異なる概念を示す図である。
【図2b】図2bは、図1に示した蒸着システムにおける配置例となる制御電極に連携する本発明に従う電界放射電子ビーム源の異なる概念を示す図である。
【図3】図3は、本発明に従う蒸着システムのための適切なマルチポケット型ルツボを示す図である。
【図4】図4は、本発明に従う蒸着システムの変形例を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の好ましい実施形態を示す添付図面を参照して、詳細に説明する。
本発明は、本発明は、多くの異なる態様について具体的に表現しているが、これ以降に設定した実施形態に制限されて解釈されるものではない。むしろ、これらの実施形態は、徹底的且つ完全のために提供し、当業者に本発明の適用範囲を完全に伝達する。
【0031】
以下に、図面及び図1の特徴を参照する。本発明に従う蒸着システム100の大要が記述されている。この蒸着システム100は、真空チャンバ102と、複数の異なる蒸着材料106,108,110(例えば、金、銀、銅、ニッケル及び亜鉛を除く)を保持するためのマルチポケット型ルツボ104と、基板114を収容する基板ホルダ112と、基板114上に堆積する異なる蒸着材料106,108,110を連続的に加熱するための冷カソード電界放射電子ビーム源116とで構成される。
【0032】
電界放射電子ビーム源116と供にマルチポケット型ルツボ104と、基板114を収容する基板ホルダ112とが、好ましくは約10−17から10−4mPaの間の真空度提供する真空チャンバ102の中に配置されている。
【0033】
蒸着システム100は、さらに、異なる蒸着材料106,108,110を蒸発させるように連続的に加熱して、電子を放射する電界放射電子ビーム源116によって放射された電子の飛翔方向を制御するための制御ユニット118を備えている。
【0034】
しかしながら、加熱されるために必要な蒸着材料106,108,110の全てを意味するものではなく、すなわち、蒸着材料の1つのみまたは2つのみが一度に加熱されるであろう。
【0035】
そのシステム100は、さらに、基板114上に堆積される蒸着材料106,108,110の堆積速度及び/または膜厚をモニタするセンサ120を備えている。このセンサ120は、例えば、膜厚の増加として変動周波数の変化を検出する圧電センサが用いられる。好ましくは、センサ120は、ルツボ104から基板114までの距離または、少なくとも基板114の装着位置と一致する円弧の既知な距離を予め用意しておく。
【0036】
しかしながら、この円弧は、基板114に関連する円弧に対して平行である。或いは、堆積された材料の膜厚を決定するために、基板114の表面の特徴を示すために、RHEED(反射高速電子線回析)システムを用いることが可能である。
【0037】
説明される本実施形態において、マルチポケット型ルツボ104は、水冷処理部122の手段によって冷却される。これらにより、蒸着材料106,108,110の加熱制御を加えて提供する。この水冷処理部は、センサ120からの膜厚関連情報を受けた制御ユニット118の手段によって好ましい制御が行われる。 当業者は、液体窒素を用いた冷却方法をも含み、他の冷却処理部を理解している。
【0038】
蒸着システム100の操作期間中において、付加制御電極124または多数の制御電極は、陽極となるルツボ104に向かって電界放射電子ビーム源116から放射された電子ビームを偏向させるために、電磁石126と協同する。前述した協同の詳細な作用は、図2a,2bに関して以下に記述する。
【0039】
この制御作用、即ち、電子ビームの偏向は、連続的に加熱されたマルチポケット型ルツボ104の各々(または、1つ)に電子ビームの飛翔方向を切り換えるための制御プログラムを格納するメモリ(図示せず)をさらに備える制御ユニット118の手段によって制御される。基板114の改良された自動化された多層膜コーティングを製造で決め可能性がある。
【0040】
図1に示す本発明の実施形態において、蒸着システム100は、さらに、混合チャンバ128と、この混合チャンバ128の中にガスを導入するための手段とを備えている。ガスは、酸素、オゾンまたは、酸化窒素などの酸化ガスが好ましい。本発明の技術的特徴を伴えば、他のガスでも可能である。
【0041】
蒸着材料(即ち、混合チャンバ128内で)と供に酸化ガスとの混合が行われ、例えば、NO(例えば、蒸着される、酸素に酸化されたニッケル原子)のような酸化された蒸着材料を提供することができる。その酸化された蒸着材料106,108,110は、前述したように基板114にコートされる。混合チャンバ128は、好ましくは例えば、差圧排気を実行するための手段として提供され得る。
【0042】
これらによって、真空チャンバ102内の真空状態には影響を与えない。従って、酸化された蒸着材料の蒸発種は、真空チャンバ背102内でより自由な振る舞いを可能にする。好ましくは、混合チャンバ128の中の圧力P1は、真空チャンバ内の「残存」の範囲内で圧力P2よりも僅かに高い状態を維持する、すなわち、P2>P1である。
【0043】
同様の技術(すなわち、差圧排気)を用いるシステムの一例として、具体例としては、米国特許4,137,865号に開示されるMBEシステム(分子線エピタキシャル成長装置)がある。
【0044】
加えて、蒸着装置100は、制御ユニット118により制御されるシャッタ130を備えている。簡単に述べると、シャッタ130は、好ましくは、センサ120と協同して用いられる。すなわち、所望膜厚に達したことが検出されるやいなや、シャッタ130は、蒸着材料106,108,110と基板との間を移動し、蒸着プロセスを停止させる。
【0045】
図2aは、電界放射電子ビーム源116と協同する本発明の実施形態に係る制御電極124の一例の詳細なコンセプトを示している。図示する実施形態において、電界放射電子ビーム源116は、例えば、ヨーロッパ特許番号EP05106440号にすでに言及され開示されている電界放射電子ビーム源である。ヨーロッパ特許番号EP05106440号には、製造方法の手段が開示されている。それは、電界放射電子ビーム源のための低く働く作用を成し遂げること可能性があり、これらにより、蒸着システム100の改善された機能を提供する。
【0046】
この改善された機能は、電界放射電子ビーム源116の放射角度形状に基づき、電界放射電子ビーム源116を「出発する」まで緩和させた電子を増大する。つまり、電界放射電子ビーム源116の外側表面からの抽出電子のための必要な電圧界(necessary voltage field)を低下させる。
【0047】
図2aにおいて、リング電極124は、電界を生成するために用いられる。このように、電子は、電界放射電子ビーム源116から「抽出」され、リング電極124に指示される方向に加速される。しかしながら、ルツボ104の下方に配置される調整電磁石(図2aには図示せず)は、ルツボ104に装填された蒸着材料に向かう方向に電子を向ける。
【0048】
電子の曲がったビームは、電界放射電子ビーム源116から蒸着開始を蒸着材料(すなわち、電磁石の手段により導入された電界の手段による)まで移送される。
【0049】
前述したように、電界放射電子ビーム源116は、好ましくは、導電体支持部と、支持部の少なくとも一部的に覆う炭化固体混合フォーム(carbonized solid compound foam)とを備えている。炭化固体混合フォームは、フェノール樹脂と少なくとも1つの金属塩及び、金属酸化物により構成される混合液から変換される。
【0050】
炭化固体混合フォームは、また、好ましくは、連続的な多孔性構造(cellular structure)を有しており、さらに、多数の鋭利な放射エッジは、炭化固体混合フォームの表面に配置されている。図2bにあるように、本発明の他の実施形態に従い、異なる電界放射電子ビーム源116’における他の概念的な構成と、それと協同する多数の制御電極(図においては、例えば2つの例を示している)132,134を示している。
【0051】
提示される実施形態においては、電界放射電子ビーム源116’は、前に簡単に述べたヨーロッパ特許EP08150191に開示されている電界放射電子ビーム源である。同様に先に議論されていたように、ヨーロッパ特許EP05106440には、製造方法の手段が開示されている。それは、電界放射電子ビーム源116’の改善された作業機能を実現するために必要である。これらにより、蒸着装置100の改善された機能が提供される。
【0052】
図2bにおいて、電界放射電子ビーム源116’は、多数のZnOナノ構造部位を備えている。多数のZnOナノ構造部位もまた、多数の放射ポイント、すなわち、ナノ構造による成長を用いて構築される放出先端部を提供する。このナノ構造もまた、長寿命で且つ、各々のナノ構造からの等しい電子放出を実現するために必要なものとして、個別な位置合わせを与えるエネルギ能力が与えられる。しかしながら、基本的な機能、すなわち、制御電極の手段による電子の抽出は、図2bに示す関係において、同様な機能が開示されている。
【0053】
動作に関しては、図3には、本発明に従う蒸着システムのために適したマルチポケット型ルツボ104’の概念を示している。提示する実施形態において、マルチポケット型ルツボ104’は、5つの異なる蒸着材料を支持することができる。しかしながら、勿論、マルチポケット型ルツボ104’は、5つ以上または以下のツルボ数であってよい。
【0054】
その上、提示する実施形態において、ルツボの各々は、自身で例えば、水または液体窒素の手段により冷却する冷却処理部122’を保持している。この冷却処理部は、好ましくは、制御ユニット118により異なるルツボ間のコンタミネーションが最小となるように制御される。加えて、電界放射電子ビーム源116または116’は、マルチポケット型ルツボ104’の中央位置に合併するまたは嵌め込むことができる。それにより、異なるルツボのそれぞれと電界放射電子ビーム源116または116’の間で同じ距離を提供することができる。
【0055】
最後に、図4には、本発明に従う蒸着システムの異なる概念の配置を示している。本実施形態において、同様な(個々に)冷却処理部122”と(個々に)電磁石126’を有する2つの単一ルツボ104a,104bが提供される。加えて、個々の単一ルツボ104aと104bは、個別にシャッタが設けられている。図3に示した実施形態と同様な方式であり、電界放射電子ビーム源116(116’)は、ルツボ104aと104bとの間の中央に配置されている。このように、電界放射電子ビーム源116と各ルツボ104a,104bとの間を同じ距離となるように導く。
【0056】
さらに、本発明は、前述した好ましい実施形態に限定されるものではないことは当業者には理解されるものである。反対に、幾つかの変更及び変化は、付加された請求項の特徴に伴い必要である。例えば、4つ以上の蒸着材料のように、3つの蒸着材料よりも多くを保持できるマルチポケット型ルツボを配置してもよい。
【0057】
本蒸着システム100は、基板114の冷却または加熱を行うための付加的冷却及び/または加熱処理部をも備えることができる。加えて、酸化ガスに代わって、蒸着材料と供に混合させることにより、酸化蒸着材料を提供するために、混合チャンバ内に酸化物質を導入することができる。
【0058】
本発明の従う記述されていない処理は、MBEシステムのように、僅かに蒸発温度以下に単体またはマルチ源ルツボを「プリ加熱」する準備を行うことができる。それは、蒸着を行うための電界放射電子ビーム源によってルツボ(複数のツルボ)を加熱する。これらにより、電界放射分子線エピタキシャル成長装置(FEMBEシステム)を構成する。
【0059】
さらに、予備チャンバは、真空チャンバの中に基板を導入するために含まれている。予備チャンバは、エアロックバルブの手段によって真空チャンバに接続されている。この配置の説明は、先行例US49137,865によって提供される。
【符号の説明】
【0060】
100…蒸着システム、102…真空チャンバ、104…マルチポケット型ルツボ、106,108,110…蒸着材料、112…基板ホルダ、114…基板、116…冷カソード電界放射電子ビーム源、120…センサ、122…水冷処理部、124…付加制御電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバと、
蒸着材料を充填するためのルツボと、
基板を装着するための基板ホルダと、
前記基板上に堆積させる前記蒸着材料を加熱するための電子ビーム源と、
を具備し、
前記真空チャンバ内側に、前記基板ホルダとルツボと供に、前記電子ビーム源が配置され、前記電子ビーム源は電界放射電子ビーム源であり、
さらに、前記蒸着材料を蒸着させる加熱を行う、前記電界放射電子ビーム源により放射された電子の飛翔方向を制御する制御ユニットを備えることを特徴とする蒸着システム。
【請求項2】
前記蒸着システムにおいて、さらに、
異なる蒸着材料を装填するための複数のルツボを備え、
前記複数のルツボ内に、それぞれに配置された異なる蒸着材料を連続的に加熱するために、前記電界放射電子ビーム源により、放射された電子の飛翔方向が制御ユニットにより調整されることを特徴とする請求項1に記載の蒸着システム。
【請求項3】
前記蒸着システムにおいて、さらに、
制御アノード電極と前記電界放射電子ビーム源との間の電界の向きと電界強度を制御する前記制御ユニットと協同するための制御電極を備えることを特徴とする請求項1及び2のうちのいずれか1つに記載の蒸着システム。
【請求項4】
前記蒸着システムにおいて、さらに、
前記制御ユニットに制御されて、前記基板と前記電界放射電子ビーム源の少なくとも一方を覆うためのシャッタを備えることを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載の蒸着システム。
【請求項5】
前記蒸着システムにおいて、さらに、
前記基板上に堆積される蒸着材料の膜厚を検出するためのセンサを備えることを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか1つに記載の蒸着システム。
【請求項6】
前記蒸着システムにおいて、さらに、
前記ルツボは、冷却処理部を備えることを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか1つに記載の蒸着システム。
【請求項7】
前記蒸着システムにおいて、さらに、
前記真空チャンバは、10−7〜10−4mPaの範囲内の真空度あることを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれか1つに記載の蒸着システム。
【請求項8】
前記蒸着システムにおいて、さらに、
混合チャンバと、
前記混合チャンバ内の前記蒸着される蒸着部材に混入する酸化ガスを導入する手段と、を備えることを特徴とする請求項1乃至7のうちのいずれか1つに記載の蒸着システム。
【請求項9】
前記蒸着システムにおいて、さらに、
前記電界放射電子ビーム源は、導電体支持部材と、
前記支持部材の少なくとも一部を覆う炭化固体混合フォームと、
を備えることを特徴とする請求項1乃至8のうちのいずれか1つに記載の蒸着システム。
【請求項10】
前記蒸着システムにおいて、さらに、
前記炭化固体混合フォームは、連続的な多孔性構造を有していることを特徴とする請求項9に記載の蒸着システム。
【請求項11】
前記蒸着システムにおいて、さらに、
前記炭化固体混合フォームは、前記炭化固体混合フォームの表面に配置された複数の鋭利な放射エッジを備えていることを特徴とする請求項9または10に記載の蒸着システム。
【請求項12】
前記蒸着システムにおいて、
前記電界放射電子ビーム源は、第1端部と第2端部を有する複数のZnOナノ構造部位を備え、前記ZnOナノ構造部位が互いから電気的に絶縁するように配置され、ZnOナノ構造部位の選択された前記第2端部に電気的導体部材が接続され、
支持構造部位は電気的導体部材上に配置され、
前記電界放射電子ビーム源の前記第1端部が、ZnOナノ構造部位が噴出規定表面から延出を許可された端部であり、
前記電界放射電子ビーム源の前記第1端部が露呈することを特徴とする請求項1乃至8のうちのいずれか1つに記載の蒸着システム。
【請求項13】
前記蒸着システムにおいて、
前記ルツボは、複数の蒸着材料がそれぞれに装填されるためのマルチルツボ部材であることを特徴とする請求項1乃至12のうちのいずれか1つに記載の蒸着システム。
【請求項14】
前記蒸着システムにおいて、
前記蒸着システムは、電界放射分子線エピタキシャル成長装置であることを特徴とする請求項1乃至13のうちのいずれか1つに記載の蒸着システム。
【請求項15】
蒸着システムのための電子ビーム源であって、
前記蒸着システムは、
真空チャンバと、
蒸着材料を充填するためのルツボと、
基板を装着するための基板ホルダと、
を具備し、
前記基板上に堆積させる前記蒸着材料を加熱するために提供される電子ビーム源と、
前記真空チャンバ内側に配置された前記基板ホルダとルツボと供に、前記電子ビーム源が配置され、
前記電子ビーム源は電界放射電子ビーム源であり、
前記蒸着システムは、さらに、前記電界放射電子ビーム源により放射された、蒸着材料を加熱する電子の飛翔方向を制御するための制御ユニットを備えることを特徴とする蒸着システム。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−518954(P2011−518954A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506590(P2011−506590)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002755
【国際公開番号】WO2009/132769
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(510191872)ライトラブ・スウェーデン・エービー (2)
【氏名又は名称原語表記】LightLab Sweden AB
【住所又は居所原語表記】Vikingavagen 17E, SE−133 33 SALTSJOBADEN, Sweden
【Fターム(参考)】