説明

蒸着フィルム用コート剤組成物

【課題】透明蒸着フィルムの蒸着面にコート剤を塗工することにより、蒸着層面を保護し、かつ、コート剤にもガスバリヤー性をもたせることにより更にガスバリヤー性を向上させるコート剤組成物を提供すること。
【解決手段】主剤が、ニトリル基含有アクリル樹脂(A)とシランカップリング剤(B)とを主たる構成成分とし、硬化剤が、イソシアネート化合物(C)を主たる構成成分とすることを特徴とする蒸着フィルム用コート剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着フィルム用コート剤組成物に関し、詳細にはコート剤がガスバリヤー性をもつことにより、蒸着フィルムの蒸着層を保護するだけでなく、さらに良好なガスバリヤー性フィルム用コート剤に使用する蒸着フィルム用コート剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
透明蒸着フィルムは、シリカやアルミナの蒸気を付着させたもので、酸素ガス遮断性に優れ、防湿性、耐熱性も良くレトルトにも対応し、電子レンジにも使用できる資材である。しかしながら、歪みや屈曲により蒸着被膜にひび割れを起こしやすくバリヤー性が低下しやすい。フィルム加工中、過度のテンションをかけたり、印刷時の白インキ中の酸化チタンなどとの擦れによってバリヤー劣化を引き起こす。そのため、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−ビニルアルコール樹脂などのバリヤー性のある樹脂やポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩ビ・酢ビ共重合体、アクリル樹脂などを蒸着層の上に塗工し、蒸着層を印刷時やラミネート時などのフィルム加工時のフィルムの歪みや圧力などから保護する手法が用いられている。
【0003】
ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール樹脂などのポリアルコール樹脂系などのバリヤー性樹脂は保護機能とともにさらなるバリヤー性向上効果を得ることができる。しかし、水溶性であり、乾燥性に難があり、塗工適性が良くない。また、耐水性に乏しく、耐ボイル性や耐レトルト性に難がある。
【0004】
一方、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩ビ・酢ビ共重合体、アクリル樹脂などの油性樹脂は乾燥性に優位性があり、塗工は比較的容易である。さらには蒸着膜の上に塗工することにより、蒸着層を保護する機能を付与することができる。しかし、これらの樹脂はバリヤー性に乏しく、保護膜として使用した場合、ガスバリヤー性向上効果はない。
例えば、特許文献1には、ポリウレタン系樹脂とポリエステル系樹脂と接着強化剤とを有機溶媒中に含有するコーティング液が、特許文献2には、特定のポリエステル樹脂を含有するコーティング液が開示されている。これらの方法により、蒸着層面を保護しガスバリヤー性を維持することが可能となっている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−272611号公報
【特許文献2】特開2006−199878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、透明蒸着フィルムの蒸着面にコート剤を塗工することにより、蒸着層面を保護し、かつ、コート剤にもガスバリヤー性をもたせることにより更にガスバリヤー性を向上させ、耐水性にも優れたコート剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成する本発明に係わる蒸着フィルム用コート剤組成物は、
(1)蒸着フィルムのガスバリヤー性を保護し向上させるための主剤と硬化剤とからなる2液混合型コート剤であって、
主剤は、ニトリル基含有アクリル樹脂(A)とシランカップリング剤(B)とを主たる構成成分としてなり、
前記ニトリル基含有アクリル樹脂(A)が、(A)を構成するモノマーとして、ニトリル基含有アクリルモノマーと水酸基含有アクリルモノマーとを必須とし、該ニトリル基含有アクリルモノマーは(A)中に3〜70質量%で構成され、(A)の水酸基価は20〜200mgKOH/gであり、
硬化剤が、イソシアネート化合物(C)を主たる構成成分とする
ことを特徴とする蒸着フィルム用コート剤組成物、
(2)さらに、ニトリル基含有アクリル樹脂(A)の重量平均分子量が10,000〜100,000であることを特徴とする上記(1)記載の蒸着フィルム用コート剤組成物、
(3)ニトリル基含有アクリル樹脂(A)のガラス転移点(Tg)が50〜200℃であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の蒸着フィルム用コート剤組成物、
(4)主剤中ニトリル基含有アクリル樹脂(A)のOH基と硬化剤中のNCO基の比率が[NCO]/[OH]=0.3〜3.0であることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れかに記載の蒸着フィルム用コート剤組成物、
(5)シランカップリング剤(B)が、イソシアネート基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基から選ばれる有機官能基を少なくとも1種を含有していることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れかに記載の蒸着フィルム用コート剤組成物、
(6)ニトリル基含有アクリル樹脂(A)のガラス転移点(Tg)が50〜200℃であることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れかに記載の蒸着フィルム用コート剤組成物、
(7)主剤中のニトリル基含有アクリル樹脂(A)とシランカップリング剤(B)との質量比が、(A)/(B)=100/3〜100/80であることを特徴とする上記(1)〜(6)の何れかに記載の蒸着フィルム用コート剤組成物、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記のコート剤組成物を透明蒸着フィルムの蒸着面にコートすることにより、その透明性を損なうことなく、蒸着層を保護してガスバリヤー性の劣化を防止し、コート層のガスバリヤー性により更にガスバリヤー性が向上した積層フィルムを得ることができるコート剤組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
【0010】
本発明で使用するニトリル基含有アクリル樹脂を構成するニトリル基含有モノマーとして、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。また、当該ニトリル基含有アクリル樹脂を構成する他のモノマーとしては必須成分である水酸基含有モノマーの他、中性モノマー、カルボキシル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、および含窒素モノマー等が挙げられる。本発明で使用するニトリル基含有アクリル樹脂はこれらから選択されたモノマーの組み合わせで合成される。水酸基含有モノマーとしては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。中性モノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニルなどが挙げられる。カルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などが挙げられる。エポキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。含窒素モノマーとしては、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどが挙げられる。
【0011】
アクリル樹脂中の官能基としてはカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基等が挙げられ、硬化剤中のイソシアネート化合物と反応せしめることにより、レトルト殺菌等に耐えうる耐熱性、耐油性に優れる皮膜を形成させる。中でも反応速度のコントロールの容易さから水酸基が好適に用いられる。
【0012】
本発明のニトリル基含有アクリル樹脂の合成は公知のラジカル重合開始剤を用いた溶液法で製造することができる。ラジカル開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ系開始剤、クメンヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル等の過酸化物系開始剤、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸系開始剤などが好適に用いられ、特に限定されるものではない。
【0013】
ニトリル基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は10,000以下では塗工した後にブロッキングしやすくなる。100,000以上では硬化剤との相溶性が不良となる。そのため、10,000〜100,000が好ましく、特に20,000〜70,000が好ましい。
【0014】
ニトリル基含有アクリル樹脂のガラス転移点(Tg)は50℃以下であると、ブロッキングしやすくなり、200℃以上ではニトリル基含有アクリル樹脂の分子運動が少なく、アクリルの官能基とイソシアネート化合物との反応速度が遅くなり、硬化不良となりやすい。そのため、50〜200℃の範囲が好ましく、特に70〜150℃の範囲が好適に用いられる。
【0015】
ニトリル基含有アクリル樹脂は、原料としてニトリル基含有モノマーを合成時の配合組成中3質量%以下ではガスバリヤー性向上効果が発現せず、また、70質量%以上では樹脂の凝集力が強くなり、合成および溶液化が困難となる。そのため、ニトリル基含有アクリル樹脂は、原料としてニトリル基含有モノマーを合成時の配合組成中に3〜70質量%の範囲が好ましく、特に5〜60質量%の範囲が好適に用いられる。
【0016】
ニトリル基含有アクリル樹脂の水酸基価は20mgKOH/g以下であると、イソシアネート化合物との反応性に乏しく、レトルトに耐えうるコート層を得ることができない。200mgKOH/g以上であると、対応する硬化剤量も増加し、ブロッキングの問題及びコストの問題があり、好ましくない。そのため、水酸基価は20〜200mgKOH/gの範囲が好ましく、特に30〜150mgKOH/gの範囲が好適に用いられる。
【0017】
本発明で使用するシランカップリング剤は、無機物と反応する加水分解基と有機物と相溶し易くする官能基を一分子中にもつ有機ケイ素化合物である。加水分解基はメトキシ基、エトキシ基、などが挙げられる。また、有機物と相溶し易くする官能基はビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリロキシ基、メルカプト基、イソシアネート基などが挙げられる。また、これらと官能基をもたないメチル基、フェニル基、さらには全て加水分解基であるアルコキシシランを混合しても問題はない。また、これらの官能基含有カップリング剤は1種類または2種類以上の混合物であっても良い。
【0018】
また、シランカップリング剤は有機官能基がアクリルポリオールもしくはイソシアネート化合物と反応または相溶し、加水分解基がシラノール基を形成し、シリカもしくはアルミナと強固な密着性を示し、その結果フィルムとシリカもしくはアルミナの密着性が向上する。有機官能基を有するカップリング剤として、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有カップリング剤、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ基含有カップリング剤、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基含有カップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート基含有カップリング剤等が挙げられる。
【0019】
主剤中のシランカップリング剤は有機官能基としてイソシアネート基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基を少なくとも1個含有することが好ましく、この有機官能基がアクリル樹脂やイソシアネート化合物と反応、相溶作用を示す。また、加水分解成分は蒸着フィルムの蒸着層との密着性向上に寄与する
【0020】
アクリル樹脂に対するシランカップリング剤添加量は質量比において、100/3よりシランカップリング剤が少ないと、蒸着層の保持力が十分でない。100/80より多いと、ブロッキングの問題が発現し、コスト的にも不利となる。そのため、100/3〜100/80が好ましく、特に100/5〜100/50の範囲が好ましい
【0021】
本発明では硬化剤として、イソシアネート化合物を使用する。本発明に使用するイソシアネート化合物は、トリレンジイソシアネート、44’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネートモノマー、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネートモノマー、イソホロンジイソシアネート等の脂環族系ジイソシアネートモノマーもしくはこれらの重合体、誘導体またはこれらの混合物が挙げられる。硬化剤には、イソシアネート化合物を流動性・貯蔵安定性の観点で取扱い易くするため、溶剤を添加することができる。主剤の各成分と相溶性良い溶剤が選択できる。
【0022】
本発明の蒸着フィルム用コート剤組成物は、有機溶剤に均一に溶解分散した溶液として使用することができる。
【0023】
主剤中の溶剤組成はコート剤の塗工時の流動性を保ち、コート層の平滑性を得るよう決定される。主剤中に使用される溶剤はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ノルマルブチルアルコールなどのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アノンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、ブチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶剤、トルエン、キシレン、ノルマルヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤、などが好適に用いられる。
【0024】
主剤と硬化剤との混合割合は、主剤中ニトリル基含有アクリル樹脂のOH基と硬化剤中イソシアネートのNCO基との比率により決められる。ニトリル基含有アクリル樹脂のOH基とイソシアネートのNCO基の比率は[NCO]/[OH]=0.3〜3.0とすることが好ましく、特に0.5〜2.5であることが好適である。0.3より低いと、アクリル樹脂中の水酸基と反応するイソシアネートが不足し、硬化不良となり、レトルト時にラミネート不良(浮き)が発生する。また、2.5より高いとブロッキングの問題が発生する。
【0025】
本発明に使用される透明蒸着フィルムは、ガスバリヤー層を形成する蒸着膜が無機酸化物であり、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化スズあるいはこれらの混合物であり、透明性、酸素や水蒸気などのガスバリヤー性を有するものであれば良い。なかでも、コスト的にも耐性においても酸化アルミニウムや酸化ケイ素もしくはこれらの混合物が好ましい。また、蒸着層の厚みは10〜300nmの範囲が好ましい。
【0026】
塗工方法は公知の方法で良いが、グラビア塗工が膜厚の調整などが容易で好適である。コート層の厚みは特に限定されないが、0.05μm(乾燥厚さ)より薄いと均一な塗膜が得られにくく、コート層が均一な厚さになり難く、バリヤー性が低下する場合があり、好ましくない。また、2μmより厚いとコスト的な問題及びブロッキングを起こしやすくなる問題がある。乾燥状態で、厚さ0.05〜2μmの範囲が好ましく、特に0.1〜1μの範囲が好ましい。
【0027】
コート剤塗工後、加熱エージングすることにより、コート層を安定かつ短時間で硬化皮膜とすることができる。30℃より低いとアクリル樹脂中の水酸基と硬化剤中のイソシアネート基の反応が不安定で、硬化不良となることがある。100℃以上でエージングするとブロッキングを起こしやすくなる問題がある。エージング条件はアクリル樹脂のTgにもよるが、30〜100℃が好ましい。特に、40〜70℃の範囲が好ましい。また、エージングの時間は少なくとも12時間以上行うことが好ましく、特に24時間以上が好適である。
【0028】
上記のコート剤が塗工された蒸着フィルムのコート層面に、公知の方法により包装材料に適したドライラミネート用接着剤を塗布し他のプラスチックフィルムをラミネート加工する、または、オレフィン系ポリマーを押出加工して積層フィルムとすることができる。
【0029】
上記の積層フィルムは、ガスバリヤー性に優れたフィルム資材として使用でき、特にレトルト用包装資材に好適である。
【実施例】
【0030】
次に、本発明の蒸着フィルム用コート剤組成物について、具体的に述べる。なお、文中の「部」および「%」とあるのは質量基準である。本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0031】
(ニトリル基含有アクリル樹脂の調製)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた反応容器に酢酸エチル150部、MEK100部を仕込み90℃となるまで加温して保持する。メタクリル酸メチル195部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル60部、アクリロニトリル45部の混合溶液中に、重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイドを4.5部入れ撹拌し、この混合液を先の酢酸エチルとMEK混合溶媒へ90℃にて均一に2時間掛けて撹拌しながら滴下し、さらに1時間保持する。
【0032】
(主剤の調製)
その後、前記ニトリル基含有アクリル樹脂溶液にベンゾイルパーオキサイド1.5部を酢酸エチル120部に溶解した開始剤溶液を90℃にて3時間掛けて均一に滴下した後、さらに2時間保持後70℃まで冷却し、酢酸n−プロピル、トルエン、イソプロピルアルコール、MEKをそれぞれ900部、900部、200部、300部、次いで15部の3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、15部のN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシランを添加して均一となるように撹拌して、本発明のコート剤の主剤を調製した。
【0033】
得られた主剤は固形分10%、重量平均分子量35,000(昭和電工社製SHODEX KF−80MによりGPC法で測定)、水酸基価86mgKOH/g(JIS K0070)、Tg94℃(JIS K7121)、ニトリル含有量15%(計算値)であった。
【0034】
(コート剤組成物の作製)
硬化剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート3量体の固形分75%酢酸エチル溶液(日本ポリウレタン工業社製:商品名コロネートHL)を用い、前記主剤100部に対して硬化剤3.3部を添加混合して本発明のコート剤1を作製した。
【0035】
(実施例1)
アルミナ蒸着PETであるTL−PET H(東セロ社製)に本発明のコート剤1を厚さ0.3μmとなるようにグラビア塗工し、50℃にて24時間エージングして、蒸着膜を保護したフィルムを得た。これにレトルト用接着剤タケラック(商標)A−525/タケネート(商標)A−52(三井化学ポリウレタン社製)で両面処理ナイロンフィルムをドライラミネート法により、貼り合わせ、さらにレトルト用未延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネート法により張り合わせ、レトルト用ラミネート物を得た。また、このラミネート物を用い、熱溶融により製袋し、レトルト用包材を作製した。
【0036】
(実施例2)
アルミナ蒸着PETであるファインバリヤー(商標)A(麗光社製)に本発明のコート剤1を厚さ0.3μmとなるようにグラビア塗工し、50℃にて24時間エージングして、蒸着膜を保護したフィルムを得た。これにノンボイル用接着剤タケラックA−969V/タケネートA−5(三井化学ポリウレタン社製)で未延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネート法により、貼り合わせ、ノンボイル用ラミネート物を得た。また、このラミネート物を用い、熱溶融により製袋し、ノンボイル用包材を作製した。
【0037】
(比較例1)
本発明のコート剤を塗工しない以外は実施例1と同様に、レトルト用包材を作製した。
【0038】
(比較例2)
本発明のコート剤を塗工しない以外は実施例2と同様に、ノンボイル用包材を作製した。
【0039】
(比較例3)
完全けん化ポリビニルアルコール樹脂(けん化度99%以上)を水に溶解させた後、これをコート剤として、実施例1と同様にグラビア塗工したが、乾燥不良によりブロッキングしたので、塗工速度を落としてレトルト用包材を作製した。
【0040】
(比較例4)
完全けん化ポリビニルアルコール樹脂(けん化度99%以上)を水に溶解させた後、これをコート剤として、実施例2と同様にグラビア塗工したが、乾燥不良によりブロッキングしたので、塗工速度を落としてノンボイル用包材を作製した。
【0041】
(比較例5)
(過少ニトリル基含有アクリル樹脂の調製)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた反応容器に酢酸エチル150g、MEK100gを仕込み90℃となるまで加温して保持する。メタクリル酸メチル234部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル60部、アクリロニトリル6部の混合溶液中に、重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイドを4.5部入れ撹拌し、この混合液を先の酢酸エチルとMEK混合溶媒へ90℃にて均一に2時間掛けて撹拌しながら滴下し、さらに1時間保持する。
【0042】
(比較例5、主剤の調製)
その後、前記ニトリル基含有アクリル樹脂溶液にベンゾイルパーオキサイド1.5部を酢酸エチル120部に溶解した開始剤溶液を90℃にて3時間掛けて均一に滴下した後、さらに2時間保持後70℃まで冷却し、酢酸n−プロピル、トルエン、イソプロピルアルコール、MEKをそれぞれ900部、900部、200部、300部、次いで15部の3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、15部のN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシランを添加して均一となるように撹拌して、コート剤の主剤(比較例5)を調製した。
【0043】
得られた主剤(比較例5)は固形分10%、重量平均分子量38,000(昭和電工社製SHODEX KF−80MによりGPC法で測定)、水酸基価86mgKOH/g(JIS
K0070)、Tg95℃(JIS K7121)、ニトリル含有量2%(計算値)であった。
さらに、硬化剤として、実施例1で用いたヘキサメチレンジイソシアネート3量体の固形分75%酢酸エチル溶液を用い、上記主剤(比較例5)100部に対して硬化剤3.3部を添加混合して、コート剤2(比較例5)を作製した。
コート剤2(比較例5)を用いて実施例1と同様に、レトルト用包材を作製した。
【0044】
(比較例6)
(ポリエステル樹脂系コート剤)
数平均分子量17,000、Tg67℃、固形分中の水酸基価6mgKOH/gであるポリエステル樹脂、バイロン(商標)20SS(東洋紡績社製、固形分30%)1000部をトルエン/MEK=8/2の混合溶剤1970部で希釈してから、15部の3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、15部のN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシランを添加して均一となるように撹拌して、コート剤主剤(比較例6)を作製後、硬化剤として、実施例1で用いたヘキサメチレンジイソシアネート3量体の固形分75%酢酸エチル溶液を用い、上記主剤(比較例6)100部に対して硬化剤0.5部を添加混合して、コート剤3(比較例6)を作製した。
コート剤3(比較例6)を用いて実施例1と同様に、レトルト用包材を作製した。
【0045】
<評価方法>
上記、実施例、比較例についてそれぞれ下記要領で評価を行い、性能評価した。
【0046】
<ガスバリヤー性>
作製した包材(10×15cm)に酸素バリヤー性を検査するLG−OX検査液(東京インキ社製)を投入後、熱溶融により密封する。30℃、90%RH条件で1週間保存し、検査液の色により評価する。なお、LG−OX検査液は、検査開始時に脱酸素処理した時点で白色を呈しているが、酸素バリヤー性が不良であると検査液が青く変色し、良好であると白色のまま変色しない。
1週間保存後白色のまま…○
1週間保存後青色に着色…×
【0047】
<レトルト適性>
レトルト殺菌(121℃×30分)を施した後の包材の状態を観察した。
サンプル数:各3
試料:包材(10×15cm)、充填物(ケチャップ/食酢/サラダ油=1/1/1)
観察結果:浮きなし…○、浮きあり…×
【0048】
<塗工適性(乾燥性)>
コート剤を厚さ0.3μmとなるように、150m/minの塗工速度でグラビア塗工したときの、塗工状態を観察した。
コート面は乾燥していて問題なく塗工できる…○
乾燥不良でブロッキングを発生し塗工できない…×
【0049】
評価結果を表1に示した。表中、−は評価実施していないことを表している。実施例においては、いずれもガスバリヤー性、レトルト適性、塗工適性に優れている。
本発明では、コート剤としてニトリル基含有アクリル樹脂を使用することにより、課題を解決した。本発明のコート剤は油性タイプであるため、乾燥性などの塗工適性は良好であり、蒸着フィルムの保護膜として使用した場合、蒸着膜保護機能と同時にバリヤー性向上効果を付与できた。また、レトルト適性にも対応していることを確認できた。
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のコート剤組成物は、透明蒸着フィルムの蒸着面に塗工することにより、蒸着フィルムのガスバリヤー性を保護・向上する目的で使用でき、ガスバリヤー性を向上した複合フィルムに好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着フィルムのガスバリヤー性を保護し向上させるための主剤と硬化剤とからなる2液混合型コート剤であって、
主剤は、ニトリル基含有アクリル樹脂(A)とシランカップリング剤(B)とを主たる構成成分としてなり、
前記ニトリル基含有アクリル樹脂(A)が、(A)を構成するモノマーとして、ニトリル基含有アクリルモノマーと水酸基含有アクリルモノマーとを必須とし、該ニトリル基含有アクリルモノマーは(A)中に3〜70質量%で構成され、(A)の水酸基価は20〜200mgKOH/gであり、
硬化剤が、イソシアネート化合物(C)を主たる構成成分とする
ことを特徴とする蒸着フィルム用コート剤組成物。
【請求項2】
ニトリル基含有アクリル樹脂(A)の重量平均分子量が10,000〜100,000であることを特徴とする請求項1に記載の蒸着フィルム用コート剤組成物。
【請求項3】
ニトリル基含有アクリル樹脂(A)のガラス転移点(Tg)が50〜200℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の蒸着フィルム用コート剤組成物。
【請求項4】
主剤中ニトリル基含有アクリル樹脂(A)のOH基と硬化剤中のNCO基の比率が[NCO]/[OH]=0.3〜3.0であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の蒸着フィルム用コート剤組成物。
【請求項5】
シランカップリング剤(B)が、イソシアネート基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基から選ばれる有機官能基を少なくとも1種を含有していることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の蒸着フィルム用コート剤組成物。
【請求項6】
主剤中のニトリル基含有アクリル樹脂(A)とシランカップリング剤(B)との質量比が、(A)/(B)=100/3〜100/80であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の蒸着フィルム用コート剤組成物。

【公開番号】特開2008−56835(P2008−56835A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237296(P2006−237296)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000219912)東京インキ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】