説明

蓄光標識ライン及びその製造方法

【課題】電線の敷設や、メンテナンスが不要で、成形が容易で、層間剥離を惹起することの無い蓄光標識ライン及びその製造方法を提供する。
【解決手段】蓄光標識ライン1の表面(上層)側から順に、熱硬化性樹脂11中に蓄光剤2が密に存在する蓄光層21と、熱硬化性樹脂11中に蓄光剤2が前記蓄光層21に比べ少なく存在する中間層31と、熱硬化性樹脂11中に蓄光剤2が殆ど存在せずに殆どの白色顔料4が存在する白色反射層41とを、積層一体的に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の縁や歩道と車道の境界、道路の車線の境界などに沿って敷設されるロードマーカー、道路分離帯のライン、舗道用カラータイル等に使用される蓄光標識ライン及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の歩道と車道の境界、車道と中央分離帯との境界、車道の車線相互の境界、庭園の遊歩道と芝生や植え込みなどとの境界に沿って、当該境界を明示するために、当該境界に沿って設けられたコンクリートブロックが敷設されている。
しかし、この状態では、夜間において歩行者や自転車がコンクリートブロックによる境界を認識することが出来ず、事故を招来する危険性が有った。
【0003】
そこで、図9に示す様な、路面5に敷設したコンクリートブロックに、照明器具110をコンクリートブロックに取付けた発光式標識ライン100が提案された。(特許文献1)
しかし、照明器具110を発光させる為の電線の敷設や、メンテナンスに費用が嵩むばかりでなく、電力の供給が難しい山間部においては使用が困難であった。
【0004】
そこで、蓄光石をアスファルト表面に散在定着させる方式が提案されたが、夜間十分な発光を期待できないものであった。(特許文献2)
この発光機能を改善した標識ラインとして、蓄光剤及び白色反射層を備えたものが提案されたが、成形工程が複雑で、層間剥離を惹起する等の問題が懸念されるものであった。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−144332号公報
【特許文献2】特開2009−127412号公報
【特許文献3】特許第4166264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、電線の敷設や、メンテナンスが不要で、成形が容易で、層間剥離を惹起することの無い蓄光標識ライン及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明に係る蓄光標識ラインにあっては、蓄光標識ラインであって、前記蓄光標識ラインの表面側には、熱硬化性樹脂中に蓄光剤が密に存在する蓄光層と、前記熱硬化性樹脂中に前記蓄光剤が前記蓄光層に比べ少なく存在する中間層と、前記熱硬化性樹脂中に前記蓄光剤が殆ど存在せず、殆どの白色顔料が存在する白色反射層が順次一体的に設けられていることを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係る蓄光標識ラインの製造方法にあっては、成形金型内に、熱硬化性樹脂中に、蓄光剤、透明ガラスビーズ及び白色顔料を均一に分散した材料を流し込む第1工程と、
ついで、前記成形金型の型温度を80〜160℃に加熱する第2工程と、
ついで、前記材料が硬化後取り出した成形品を熱処理する第3工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以下に記載される効果を奏する。
請求項1記載の発明の蓄光標識ラインによれば、昼夜の視認性が良く、電線の敷設や、メンテナンスが不要で、蓄光層、中間層、及び白色反射層の各層間の剥離を惹起することが無い。
請求項2記載の発明の蓄光標識ラインによれば、夜間の間、十分な発光輝度を維持出来る。
【0010】
請求項3記載の発明の蓄光標識ラインによれば、歩行者や自転車にダメージを与える可能性を少なく出来る。
請求項4記載の発明の蓄光標識ラインによれば、接着剤により簡単に敷設出来るため、メンテナンスが容易である。
【0011】
請求項5記載の発明の蓄光標識ラインによれば、蓄光標識ラインを強固に路面側に固定出来る。
請求項6記載の発明の蓄光標識ラインの製造方法によれば、製造コストを低く抑えることが出来る。
【0012】
請求項7記載の発明の蓄光標識ラインの製造方法によれば、埋設用脚部を容易かつ確実に蓄光標識ラインに一体化出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係る蓄光標識ラインの敷設状態を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の他の態様を図2と同様に示した図である。
【図4】本発明に使用する成形金型の断面図である。
【図5】図4の金型に材料を流し込み、層分離をした状態を示す断面図である。
【図6】本発明の他の態様を成形するための上型の断面図である。
【図7】図5に図6の上型を組み込んだ断面図である。
【図8】図7から取り出した製品の断面図である。
【図9】従来技術に係る蓄光標識ラインの敷設状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、図1及び図2に基づき本発明の第1の態様を説明する。
本発明に係る蓄光標識ライン1は、その表面側には、透明無黄変熱硬化ウレタン材である熱硬化性樹脂11中に蓄光剤2が密に存在する蓄光層21と、この熱硬化性樹脂11中に蓄光剤2が蓄光層21に比べ少なく存在する中間層31と、熱硬化性樹脂11中に蓄光剤2が殆ど存在せず、殆どの白色顔料4が存在する白色反射層41が順次一体的に設けられている。
【0015】
本発明で使用される熱硬化性樹脂11としては、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が使用可能であるが、ポリウレタン樹脂が好ましい。
本実施例で使用するウレタン材は、注型ウレタン材であり、プレポリマーと言われる反応基(−NCO)を持つ主材と硬化剤(アミン系)とが反応してポリウレタンになるものである。この中でも、特に、透明無黄変熱硬化ウレタン材が好ましい。
また、蓄光剤2としては、例えば、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化希土類等を使用することができるが、粒径100〜800μmのアルミン酸系蓄光剤であることが好ましい。
【0016】
また、白色顔料4としては、酸化チタン系白色顔料が使用される。
蓄光標識ライン1の表面側の断面形状は、図1及び図2に示す様に、カマボコ形状を呈しており、断面略円形であり、蓄光標識ライン1全体の高さは5〜20mm、幅は20〜100mmであり、カマボコ形状部分は、高さ3〜5mmであり、幅は15〜80mmである。
このことにより、例え、歩行者や自転車が蓄光標識ライン1に衝突したとしても、歩行者や自転車にダメージを与える可能性が少ない。
この蓄光標識ライン1は、接着剤により路面5上に簡単に敷設できる。
このことにより、本発明に係る蓄光標識ライン1の施工及びメンテナンスが安価に行える。
尚、本実施例では、蓄光標識ライン1の形状をカマボコ形状としたが、矩形形状や多角形状であっても良い。
【0017】
ついで、本発明に係る第2の態様を図3に基づき説明する。
第1の態様と相違する点は、埋設用脚部12が設けられている点である。
この埋設用脚部12の約半分は、蓄光標識ライン1内に一体的に埋設され、残りの部分が路面5内に埋設保持される態様となっている。このため、蓄光標識ライン1は、強固に路面5側に固定される。
【0018】
ついで、本発明の蓄光標識ライン1の製造方法を、図4乃至図8に基づき説明する。
図4に示す成形金型6内に、透明無黄変熱硬化ウレタン100部、粒径100〜800μmのアルミン酸系蓄光剤100〜200部、粒径20〜300μmの透明ガラスビーズ20〜50部、白色顔料0.1〜1部、アミン系硬化剤30部、反応促進剤0.01〜0.1部、を20〜70℃(好ましくは50〜60℃)で均一に攪拌した材料8を流し込む。
ついで、この成形金型6を80〜160℃(好ましくは90〜110℃)に加温する。
この結果、その表面側(図上下方)には、透明無黄変熱硬化ウレタン中に蓄光剤が密に存在する蓄光層21と、この透明無黄変熱硬化ウレタン中に蓄光剤が、蓄光層21に比べ少なく存在する中間層31と、透明無黄変熱硬化ウレタン中に蓄光剤が殆ど存在せず、殆どの白色顔料が存在する白色反射層41とに層分離する。
これは、この流し込まれた透明無黄変熱硬化ウレタンは、80〜160℃に加熱された成形金型6により、5〜100mPa・Sの粘度となる。
この結果、比重3.5〜3.7の蓄光材は、比重1.1〜1.2の透明無黄変熱硬化ウレタン材中で、重力により成形金型6の底面側(図上下側)に沈降して蓄光層21を形成し、蓄光剤が存在しなくなった反対側は、中間層31及び白色反射層41を形成する。
【0019】
ついで、図6に示す様に、埋設用脚部12を保持した上型61を、図5の成形金型6に組み込むことにより、図7の状態を作り上げる。
ついで、材料8が硬化後、成形金型6より製品を取り出すことにより、図8に示す製品が得られる。
【0020】
ついで、この製品を100℃で10時間熱処理をすることにより、製品が完成する。
尚、本製造方法により得られる製品は、本発明の第2の態様に相当する製品である。
また、使用したアルミン酸系蓄光剤の比重は3.5〜3.7であり、透明ガラスビーズの比重は2.1〜2.5のものを使用した。
【産業上の利用可能性】
【0021】
上述の発明は、道路の歩道と車道の境界、車道と中央分離帯との境界、車道の車線相互の境界、庭園の遊歩道と芝生や植え込みなどとの境界等に利用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 標識ライン
2 蓄光剤
4 白色顔料
5 路面
6 成形金型
11 熱硬化性樹脂
21 蓄光剤
31 中間層
41 白色反射層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄光標識ライン(1)であって、前記蓄光標識ライン(1)の表面側には、熱硬化性樹脂(11)中に蓄光剤(2)が密に存在する蓄光層(21)と、前記熱硬化性樹脂(11)中に前記蓄光剤(2)が前記蓄光層(21)に比べ少なく存在する中間層(31)と、前記熱硬化性樹脂(11)中に前記蓄光剤(2)が殆ど存在せず、殆どの白色顔料(4)が存在する白色反射層(41)が順次一体的に設けられていることを特徴とする蓄光標識ライン。
【請求項2】
前記蓄光剤(2)が粒径100〜800μmのアルミン酸系蓄光剤であることを特徴とする請求項1記載の蓄光標識ライン。
【請求項3】
前記蓄光標識ライン(1)の表面側の断面形状が略円形であることを特徴とする請求項1または2記載の蓄光標識ライン。
【請求項4】
前記蓄光標識ライン(1)が、接着剤により路面(5)上に保持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄光標識ライン。
【請求項5】
前記蓄光標識ライン(1)が、埋設用脚部(12)を一体成形しており、前記埋設用脚部(12)の一部を路面(5)側に埋設することにより、路面(5)上に保持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄光標識ライン。
【請求項6】
成形金型(6)内に、熱硬化性樹脂(11)中に、蓄光剤(2)、透明ガラスビーズ(7)及び白色顔料(4)を均一に分散した材料(8)を流し込む第1工程と、
ついで、前記成形金型(6)の型温度を80〜160℃に加熱する第2工程と、
ついで、前記材料(8)が硬化後取り出した成形品を熱処理する第3工程とを含む蓄光標識ラインの製造方法。
【請求項7】
前記成形金型(6)を閉じる際、上型(61)に埋設用脚部(12)を保持して、前記埋設用脚部(12)を蓄光標識ライン(1)に一体成形することを特徴とする請求項6に記載の蓄光標識ラインの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−94371(P2011−94371A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248779(P2009−248779)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】