説明

蓄電デバイス

【課題】プレドープ時間を短縮できる蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】蓄電デバイスとしてのリチウムイオンキャパシタ10は、正極11と負極12とがセパレータ13を介して交互に積層される電極積層ユニットと、負極12にリチウムイオンをプレドープする金属リチウムを備えたリチウム極とから構成されている。正極集電体11bおよび負極集電体12bには、貫通孔11c、12cが形成されている。貫通孔11c、12cの平均孔径(a)は1〜1000μmであり、セパレータ13の厚さと正極11および負極12の厚さの1/2の値との合計により規定される電極の厚さLの平均値(b)との比b/aの値は0.08〜530の範囲内にある。このように、貫通孔の径を所定の範囲としつつ、孔径と電極の厚さとが所定の関係を満たすように構成したので、リチウムイオンの移動距離を短くすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電デバイスの技術に関し、特に電極にプレドープされるリチウムイオンを供給するリチウムイオン供給源を備えたものに適用して有効な技術である。
【背景技術】
【0002】
近年、車の排気ガス等に対する環境問題が、クローズアップされている。そのため、環境にやさしい電気自動車等の開発が行われている。電気自動車の開発にあたっては、特に電源となる蓄電デバイスの開発が盛んである。そのため、旧来の鉛蓄電池に代わり、種々の形式の蓄電デバイスが提案されている。
【0003】
この蓄電デバイスとしては、例えば、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタ等が挙げられる。特に、予め負極にリチウムイオンをドープ(プレドープ)したリチウムイオンキャパシタを含めたハイブリッドキャパシタが、現在、注目を集めている。プレドープ型のハイブリッドキャパシタは、一部では実際の車両にも搭載され、その実用化に向けての実施試験も行われている。
【0004】
このプレドープ型のハイブリッドキャパシタでは、電解液中のリチウムイオンが集電体を通過できるように、集電体の表裏面を貫通する貫通孔が形成された多孔性の集電体が使用される。多孔性の集電体の開口率は、リチウムイオンの通過を適切かつ容易に行う観点から、通常40〜60%程度とされている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0005】
また、プレドープ型の蓄電デバイス以外でも、集電体に貫通孔を形成することは種々提案されている。例えば、特許文献3では、セル特性や品質の均一性の向上を図ることを目的として、集電体の厚さを0.005〜0.05mmとし、集電体に径0.01〜1mmの貫通孔を形成した密閉型電池が提案されている。特許文献4では、可塑剤の抽出を容易にすること等を目的として、貫通孔の径とピッチとを所定の関係とし、好ましくは集電体の厚さと活物質層の厚さとを所定の関係とした二次電池等が提案されている。その他にも、貫通孔の大きさや電極の厚さを所定範囲とすることが種々提案されている(特許文献5〜7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−141897号公報
【特許文献2】特開2009−199963号公報
【特許文献3】特開平9−161805号公報
【特許文献4】特開2000−311693号公報
【特許文献5】特許第4352972号公報
【特許文献6】特開2008−269890号公報
【特許文献7】特開2005−294168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、プレドープ型の蓄電デバイスでは、貫通孔の孔径が大きくなる程、リチウムイオンの水平(径)方向への移動距離が増える。また、電極の厚さを厚くする程、リチウムイオンの垂直(厚さ)方向への移動距離が増える。そのため、いずれの場合もリチウムイオンの移動距離が長くなり、拡散に時間を要してプレドープ時間が長くなる。プレドープ時間が長くなれば、不安定な状態に長く置かれることになるため、ガス発生、不均一なプレドープ(電位のバラツキ)、リチウム析出によるマイクロショートなどの諸問題を引き起こしやすくなる。また、電解液の含浸にも長い時間がかかることになるため、SEI(Solid Electrolyte Interface)形成のバラツキ、不均一な電解液含浸といった問題も引き起こしやすくなる。したがって、プレドープ時間の短縮を図るために、貫通孔の孔径を所定の範囲としつつ、孔径と電極の厚さとを、リチウムイオンの移動距離が短くなるような所定の関係を満たすようにすることが望まれていた。
【0008】
ここで、特許文献3の提案は、電極の集電体の厚さを考慮しているにすぎず、電極全体の厚さではない。そのため、プレドープ型の蓄電デバイスで適用したとしても、電極間の移動距離に依存するプレドープ時間の短縮の指標とはならない。また、特許文献4〜7の提案は、いずれも貫通孔の大きさと電極の厚さを別々に考慮しているため、貫通孔の大きさと電極の厚さとの双方により決まる電極間の移動距離の長短を判断するための指標とはならない。
【0009】
本発明の目的は、プレドープ時間を短縮できる蓄電デバイスを提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
すなわち、本発明の蓄電デバイスは、セパレータと、このセパレータを介して積層または捲回されるとともに集電体に貫通孔が形成される正極および負極と、前記正極または前記負極に予めドープされるリチウムイオンを供給するリチウムイオン供給源とを備える蓄電デバイスであって、前記貫通孔の最長径または最長対角線距離の平均値(a)が1〜1000μmであり、前記セパレータの厚さと前記正極および前記負極の厚さの1/2の値との合計により規定される電極の厚さの平均値(b)との比b/aの値が0.08〜530の範囲内にあるようにする。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0014】
すなわち、集電体の貫通孔の最長径または最長対角線距離の平均値(a)を1〜1000μmとし、セパレータの厚さと正極および負極の厚さの1/2の値との合計により規定される電極の厚さの平均値(b)との比b/aの値を0.08〜530の範囲内としたので、リチウムイオンの移動距離を短くすることが可能となる。これにより、プレドープ時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の蓄電デバイスをリチウムイオンキャパシタに適用した場合の電極構成の概略を模式的に示した図である。
【図2】リチウムイオン拡散距離について説明する説明図である。
【図3】貫通孔の孔径とリチウムイオン拡散距離との関係を表わすグラフである。
【図4】(a)は貫通孔の孔径とプレドープ時間との関係を表わすグラフであり、(b)は貫通孔の孔径と電極の厚さとの比と、プレドープ時間との関係を表わすグラフである。
【図5】プレドープ時間の測定結果を示すグラフである。
【図6】(a)は実施例8〜11、(b)は実施例4〜7、12および13の引張強度試験結果を示すグラフである。
【図7】(a)は実施例8および9、(b)は実施例10および11の耐久試験結果を示すグラフである。
【図8】(a)は実施例4、5および12、(b)は実施例6、7および13の耐久試験結果を示すグラフである。
【図9】抵抗試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは原則として同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は可能な限り省略するようにしている。
【0017】
図1は本発明の蓄電デバイスをリチウムイオンキャパシタに適用した場合の電極構成の概略を模式的に示した図1、図2はリチウムイオン拡散距離について説明する説明図、図3は貫通孔の孔径とリチウムイオン拡散距離との関係を表わすグラフである。図4(a)は貫通孔の孔径とプレドープ時間との関係を表わすグラフ、図4(b)は貫通孔の孔径と電極の厚さとの比と、プレドープ時間との関係を表わすグラフである。なお、図3および4において、横軸は対数表示である。
【0018】
図1に示すように、リチウムイオンキャパシタ10は、複数の正極11および負極12がセパレータ13を介して交互に積層された電極積層ユニット14と、リチウム極15とを備えている。正極11および負極12は、セパレータ13を介して交互に積層されている。電極積層ユニット14の外側には、負極12が配置されている。この負極11と対向して、リチウムイオン供給源としてのリチウム極15が、セパレータ13を介して設けられている。このようにして、リチウムイオンキャパシタ10は、正極11、負極12およびリチウム極15から構成される三極積層ユニット構造となっている。この積層ユニットは、図示はしないが、電解液に浸されている。
【0019】
正極11は、正極活物質層11aが、正極集電体11bの両面に設けられている。負極12も、負極活物質層12aが、負極集電体12bの両面に設けられている。リチウム極15は、金属リチウム15aが、リチウム極集電体15b上に設けられている。正極集電体11bおよび負極集電体12bは、表裏に貫通する孔により多孔状に構成されている。つまり、正極集電体11bおよび負極集電体12bには、多数の貫通孔11c、12cが形成されている。また、正極11では、正極集電体11bから引き出されて正極端子16が設けられている。負極12では、負極集電体12bから引き出されて負極端子17が設けられている。
【0020】
このように構成されたリチウムイオンキャパシタ10は、例えば、ラミネートフィルム等によるパッケージ(外装材)に入れられて製品とされる。その製品とする前に、リチウムイオンが予めドープ(プレドープ)される。つまり、リチウムイオンキャパシタの組立工程内で、外装材を密封した状態で、プレドープを行う。このプレドープは、負極12とリチウム極15との間で行われ、負極12にリチウムイオンが予めドープされた状態で、製品として出荷される。リチウムイオンのプレドープにより、正極と負極とを短絡させた後の正極の電位は、例えば、2V以下にされていることが好ましい。
【0021】
正極集電体11bおよび負極集電体12bに形成される多数の貫通孔11c、12cの平均孔径(a)は、1〜1000μmであり、10〜1000μmが好ましい。また、図2に示す電極の厚さとしての、正極11の厚さの1/2の値とセパレータ13の厚さと負極12の厚さの1/2の値との合計値Lの平均値をbとした場合、孔径との比b/aは0.08〜530である。これらaとb/aの値とにより、電極の厚さLの平均値(b)は、80〜530μmが好適な範囲として算出される。つまり、セパレータ13の厚さを30μmと仮定すると、正極11および負極12の厚さは、50〜500μmが好ましい。また、電極の厚さLの平均値(b)は、130〜230μmがより好適な範囲である。したがって、b/aの値は、0.13〜23であることが好ましい。また、正極11および負極12の厚さは、100〜200μmがより好ましい。なお、図2においては便宜上、破断線を描いてないが、正極11の上方には図示されない負極が、負極12の下方には図示されない正極またはリチウム極が、セパレータを介して配置されていることは言うまでもない。
【0022】
貫通孔11c、12cの平均孔径(a)は、例えば、光学電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、貫通孔の孔径をランダムに5点測定し、その平均値を求めることにより、測定することができる。なお、貫通孔の孔径は、孔が楕円形である場合には長径の値を採用し、例えば、矩形、菱形、スリット形等の多角形である場合には最も長い対角線の距離の値を採用する。電極の厚さLの平均値(b)は、例えば、まず正極11および負極12のそれぞれにおいて、長方形(例えば20mm×40mm)にカットした電極の四隅と中央の合計5点をダイアルゲージで測定し、平均した値を求める。このようして求めた正極11および負極12それぞれの厚さの平均値を合計した値の1/2の値に、予め平均厚さの判明しているセパレータ13の厚さを加えることにより、得ることができる。
【0023】
このように、孔径、孔径と電極厚さとの比等の範囲を定められたのは、以下の知見が得られたからである。図2に示すように、リチウムイオンのプレドープ時の水平方向への拡散距離は、貫通孔11c、12cの孔径の1/2の値と孔間距離の1/2の値との合計Mに、ほぼ相当する。垂直方向への拡散距離は、正極11の厚さの1/2の値とセパレータ13の厚さと負極12の厚さの1/2の値との合計値(電極の厚さ)Lに、ほぼ相当する。つまり、リチウムイオン拡散距離Nは、三平方の定理L+M=Nにより求めることができる。そのため、Lの値を一定とした場合、図3に示すように、所定の貫通孔の孔径でリチウムイオン拡散距離をプロットして行くと、孔径が大きくなる程リチウムイオンの拡散距離が大きくなることがわかる。
【0024】
リチウムイオンの拡散速度が同じであれば、拡散距離が大きい程、拡散時間も長くなるため、リチウムイオンの拡散距離はプレドープ時間(拡散時間)に置き換えて考えることができる。つまり、図4(a)に示すように、貫通孔の孔径が大きい程、プレドープ時間(図中、PD時間と表示)が長くなる関係が成り立つ。他方で、図4(a)からもわかるように、孔径が極端に小さいと孔に活物質が埋まってしまい、却ってプレドープ時間が長くなることが経験的に明らかになっている。また、既に述べたように、リチウムイオンの拡散距離を求める際の独立変数には、リチウムイオンの垂直方向への拡散距離も含まれている。そこで、図4(b)に示すように、貫通孔の孔径Dと電極の厚さLとの比L/Dをプロットすることで、貫通孔の孔径Dと電極の厚さLとプレドープ時間との相関関係がわかる。
【0025】
ここで、プレドープ時間は、電位の安定性を早くするとともに、リチウム析出やガス発生の抑制等の安全性に寄与する観点から、約100時間以内が好適とされている。したがって、図4(a)にて、プレドープ時間が100時間時間以内にある孔径Dの範囲を観ると、1〜1000μmであることがわかる。また、図4(b)にて、プレドープ時間が100時間以内にあるL/Dの範囲(二点鎖線の範囲)を観ると、0.08〜530であることがわかる。
【0026】
また、貫通孔の平均孔径(a)と電極の厚さLの平均値(b)との比b/aの値が、0.13〜23であることが好ましいのは、以下の理由からである。電気自動車用の蓄電デバイスには、高いエネルギー密度が求められており、従来の民生用の電池よりも電極を厚くする必要性が高い。一般的なリチウムイオン二次電池等の電極の厚さは、正極および負極いずれも、高出力用で約80μm、高エネルギー用で約160μmである。出力とエネルギー密度はトレードオフの関係にあり、電極の厚さが厚すぎると出力が低下するとともに、金属リチウムが析出する等、蓄電デバイスとして成立しなくなる。ここで、本発明者が目的とする蓄電デバイスは、高エネルギー用の(電気自動車用)に使用することを想定しているため、セパレータの厚さを含めた電極の厚さLが130μmを下回ることは、実用上の観点から想定しにくい。同様に、出力特性と安全性を加味すると、230μmを上回ることは想定しにくい。
【0027】
他方で、リチウムイオン二次電池等には、一般的に粒径10〜20μmの活物質を使用する場合が多い。この活物質の粒径以下の孔径の貫通孔が形成された集電体を使用すると、孔の中に活物質が埋まってしまい、プレドープの際にリチウムイオン拡散の障害となってしまうことがある。そのため、孔を塞ぐことがないように、使用される活物質の粒径以上、つまり10μm以上の孔径の貫通孔を形成することが好ましい。また、集電体が塗工時の引張強度に耐え得る程度の孔径とする必要があるため、貫通孔の孔径の上限は1000μmとする必要がある。
【0028】
以上より、貫通孔の平均孔径(a)と電極の厚さLの平均値(b)との比b/aの値は、0.13〜23が好ましいのである。
【0029】
このように、リチウムイオンキャパシタ10では、プレドープ時間との関係で、貫通孔の孔径や孔間距離と電極の厚さとを互いに適切な範囲としたため、プレドープ時間を短くすることができる。つまり、各電極の電位が早く安定するため、均一にプレドープを行うことが可能となる。そのため、リチウムイオンの析出やガス発生を抑制でき、安全性の向上に寄与する。また、プレドープ時間が短ければ、電解液の含浸も早く行えるため、安定したSEI(Solid Electrolyte Interface)を形成でき、均一に電解液を含浸させることが可能となる。
【0030】
また、引張強度の観点からは、正極集電体11bあるいは負極集電体12bがアルミニウムからなる場合には、貫通孔11b、12bの孔径が800μm以下であることが好ましい。正極集電体11bあるいは負極集電体12bが銅からなる場合には、貫通孔の孔径は本発明の範囲内にある限り特に制限はない。集電体の開口率が同一で貫通孔の孔径のみが異なる場合、集電体の引張強度は孔径が小さい程、大きい。この引張強度の大きい集電体を使用すると、例えば、いわゆる縦型塗工では乾燥炉の距離を長く取れるため、より高速で塗工することが可能となる。
【0031】
集電体として貫通孔が形成された孔開き箔を使用した場合、貫通孔が形成されていないプレーン箔に比べて強度が弱く、塗工速度を抑える必要があった。特に、縦型塗工機を用いる場合、自重で集電体が切れるおそれがあるため、乾燥炉を短くする必要があり、高速での塗工が困難であった。また、工程中の箔切れにより歩留まりが低下しやすかった。しかし、集電体に形成される貫通孔の孔径を制御することによって、引張強度を向上させることができ、より高速での塗工が可能となるとともに、歩留まりの向上を図ることができるのである。
【0032】
また、蓄電デバイスの耐久性を向上させる観点から、貫通孔11b、12bの孔径は、500μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることが特に好ましい。貫通孔の孔径が500μm以下の集電体を使用した場合、これより大きい孔径の集電体を使用した場合に比して、集電体からの活物質の滑落が少なく、電極の耐久性が高い。集電体からの活物質の滑落はデバイス容量の低下や抵抗上昇の原因となるため、それを防ぐことでデバイスとしての耐久性向上にも寄与し得る。
【0033】
プレドープを行う場合には、集電体に孔開き箔を使用するが、集電体に保持されていない貫通孔近傍の活物質は強度的に脆く、振動などで滑落することにより、デバイス容量の低下、抵抗上昇の原因となっていた。また、滑落した活物質により、内部ショートの原因となっていた。しかし、集電体に形成される貫通孔の孔径を500μm以下、より好適には300μm以下とすることにより、外部から力が加わった際の応力を制御できるようになり、活物質の滑落を抑制することができる。これにより、デバイス容量の低下、抵抗上昇を抑えることが可能となり得る。特に、電気自動車用の蓄電デバイスでは、高い耐久性が求められるため、その効果は大きい。
【0034】
また、貫通孔11b、12bの孔径は、蓄電デバイスの抵抗を直接的に低下させる観点からも、500μm以下であることが好適であり、300μm以下であることがより好適である。集電体に貫通孔が形成された孔開き箔を使用した場合、活物質との接触面積が減少し、抵抗が大きくなる傾向があった。抵抗が大きいと、充電時の発熱、ガス発生、デバイス容量のバラツキ、安全性の低下等の問題点が生じることがあった。しかし、集電体に形成される貫通孔の孔径を500μm以下、より好適には300μm以下とすることにより、同じ開口率であっても蓄電デバイスの抵抗を低減することができるので、高出力時の発熱を抑制し、安全性を高めることが可能となる。
【0035】
なお、リチウムイオンキャパシタ10は、積層型のセル構成となっているが、本発明は、正極と負極とをセパレータを介して捲回した円筒型のセル構成に適用することもできる。また、本発明は、孔の開いた集電体を使用することが適切な蓄電デバイスであれば、例えば、リチウムイオン二次電池に適用してもよいし、他の構成のデバイスに適用してもよい。さらに、電極ユニットの最外層の電極を正極として、正極にリチウムイオンをプレドープするようにしてもよい。
【0036】
以下、本発明の蓄電デバイスの各要素に使用される材料や成分について説明する。正極集電体としては、例えば、アルミニウム、ステンレス等が挙げられる。負極集電体としては、例えば、ステンレス鋼、銅、ニッケル等が挙げられる。正極集電体および負極集電体は、既に述べたように、多数の貫通孔が形成され、導電性の多孔体に構成されている。また、正極集電体と負極集電体とでは、同じものを使用することができるし、リチウムイオン供給源と反応しなければ例示した以外の他の材質により構成してもよい。集電体に形成する貫通孔は、例えば、エキスパンドメタル等のメタルラス、ワイヤラス、パンチングメタル、エッチング箔、電解エッチング箔、三次元加工(3D)箔等により形成される。
【0037】
集電体における貫通孔の開口率は、正極集電体および負極集電体いずれの場合も、通常40〜60%である。ここで、開口率とは、集電体における開口面の面積割合と定義できる。つまり、厳密には、集電体の開口面の総面積の集電体金属部の面積に対する割合である。集電体は、集電体材料を切断して個片化することで製造される。この製造された集電体を検証することで開口率は測定できる。簡易には、集電体材料に設定した単位面積当りの開口面の総面積の割合で開口率を算出してもよい。
【0038】
正極活物質層および負極活物質層は、活物質、バインダ、必要に応じて導電助剤等の合材により構成されている。この合材はスラリー状に形成される。このスラリーを、集電体の両面または片面に塗布し、乾燥することで電極が作製される。
【0039】
正極活物質としては、蓄電デバイスがリチウムイオンキャパシタの場合には、リチウムイオンと、リチウムイオンとが対をなす、例えばBF4、PF6等のような、アニオンを可逆的にドープできる物質が使用される。例えば、活性炭、導電性高分子、ポリアセン系物質等が挙げられる。活性炭の場合には、例えば、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物塩などにより賦活処理がされているものを使用すれば、賦活処理がされていないものに比して比表面積が大きいので好ましい。これらの例示した活物質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合せて使用してもよい。
【0040】
正極活物質は、蓄電デバイスがリチウムイオン二次電池の場合には、例えば、周期律表第V族元素および第I族元素から選ばれる1種または2種以上の金属元素の酸化物を含む物質が挙げられる。このような金属酸化物としては、例えば、バナジウム酸化物(酸化バナジウム)、酸化ニオブ等が挙げられる。
【0041】
負極活物質としては、例えば、黒鉛、炭素系材料、ポリアセン系物質、リチウム系材料等が挙げられる。炭素系材料としては、例えば、難黒鉛化炭素材料等が挙げられる。ポリアセン系物質としては、例えば、ポリアセン系骨格を有する不溶不融性基体であるポリアセン系有機半導体(PAS)等が挙げられる。リチウム系材料としては、金属リチウム、例えばリチウム−アルミニウム合金のようなリチウム合金等のリチウム系金属材料が挙げられる。また、スズ、ケイ素等の金属と金属リチウムとの金属間化合物材料、窒化リチウム等のリチウム化合物も挙げられる。これらの負極活物質は、いずれもリチウムイオンを可逆的にドープ可能な物質である。
【0042】
本発明の蓄電デバイスでは、初期充電時にリチウムイオンを負極または正極にプレドープさせる。この際に使用するリチウムイオン供給源としては、金属リチウム、リチウム−アルミニウム合金等が挙げられる。つまり、リチウム元素を含有し、リチウムイオンを供給できる物質であれば使用可能である。なお、本明細書において、ドープとは、吸蔵、担持、吸着、挿入等を意味している。つまり、正極活物質や負極活物質に対してアニオンやリチウムイオン等が入る状態を意味している。また、脱ドープとは、放出、脱離等を意味している。つまり、正極活物質や負極活物質からアニオンやリチウムイオン等が出る状態を意味している。
【0043】
バインダとしては、例えば、ゴム系バインダ、結着樹脂が挙げられる。ゴム系バインダとしては、例えば、ジエン系重合体であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)等が挙げられる。結着樹脂としては、例えば、フッ素系樹脂、熱可塑性樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。フッ素系樹脂とは、例えば、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸・アクリロニトリル・エチレングリコールジメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0044】
導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、および、膨張黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ等の導電性炭素材料が挙げられる。また、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を使用することもできる。
【0045】
これらの活物質、バインダ、導電助剤、増粘剤等は、例えば、水またはN−メチル−2−ピロリドン等の溶媒を用いてスラリーに形成することができる。このスラリーにより形成される正極活物質層および負極活物質層は、貫通孔が形成された集電体面上に所定厚で設けておく。設けるに際しては、例えば、ダイコータ、コンマコータ等の塗工装置を用いて塗工処理を行う。所定厚で集電体上に塗工処理した活物質層は、バインダの耐熱性にもよるが、通常、真空中100〜200℃の温度で12時間程度乾燥させて電極が製造される。
【0046】
蓄電デバイスの積層ユニットを浸す電解液としては、蓄電デバイスがリチウムイオンキャパシタの場合には、非プロトン性有機溶媒を使用することができる。非プロトン性有機溶媒は、非プロトン性有機溶媒電解質溶液を形成する。非プロトン性有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合した混合液を使用してもよい。電解液に溶解される電解質としては、リチウムイオンを生成し得る電解質であれば特に制限はない。例えば、LiClO、LiAsF、LiBF、LiPF、LiN(CSO)、LiN(CFSO)等が挙げられる。
【0047】
蓄電デバイスがリチウムイオン二次電池の場合には、電解液としては、例えば、非水系溶媒が挙げられる。非水系溶媒としては、例えば、鎖状カーボネート、環状カーボネート、環状エステル、ニトリル化合物、酸無水物、アミド化合物、ホスフェート化合物、アミン化合物等が挙げられる。より具体的には、例えば、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、n−メチルピロリジノン、N,N’ −ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、あるいはプロピレンカーボネートとジメトキシエタンとの混合物、スルホランとテトラヒドロフランとの混合物等が挙げられる。電解質としては、CFSOLi、CSOLi、(CFSONLi、(CFSOCLi、LiBF、LiPF、LiClO等のリチウム塩が挙げられる。
【0048】
セパレータとしては、大きなイオン透過度(透気度)、所定の機械的強度、および電解液、正極活物質、負極活物質等に対する耐久性を有し、かつ連通気孔を有する電子伝導性のない多孔質体等が使用される。例えば、紙(セルロース)、レーヨン、ガラス繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオライド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン等からなる隙間を有する布、不織布または微多孔体が挙げられる。例示したセパレータは、目的に応じて単独で使用してもよいし、同一種のセパレータを重ねて使用してもよい。また、複数種のセパレータを重ねて使用してもよい。セパレータの厚さは、電解液の保持量やセパレータの強度等を勘案して適宜設定することができるが、蓄電デバイスの直流抵抗の低下や体積当たりのエネルギー密度の向上のためにセパレータの厚みはなるべく薄い方が好ましい。具体的には、15〜40μm程度が好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例によって、本発明をさらに説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されない。また、以下の実施例において電極の厚さの平均値(図2に示す正極11の厚さの1/2の値とセパレータ13の厚さと負極12の厚さの1/2の値との合計値Lの平均値)、各集電体の貫通孔の平均孔径は、それぞれ次のようにして測定している。
【0050】
〔貫通孔の平均孔径の測定方法〕走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、貫通孔の孔径をランダムに5点測定し、その平均値を求める。
【0051】
〔電極の厚さの平均値の測定方法〕正極および負極のそれぞれにおいて、長方形(例えば20mm×40mm)にカットした電極の四隅と中央の合計5点をダイアルゲージで測定し、平均した値を求める。このようして求めた正極および負極それぞれの厚さの平均値を合計した値の1/2の値に、予め平均厚さの判明しているセパレータの厚さを加える。
【0052】
(実施例1)
〔負極の作製〕フラン樹脂炭の原料であるフルフリルアルコールを60℃で24時間保持することにより樹脂を硬化させ、黒色樹脂を得た。得られた黒色樹脂を静置式電気炉内に入れ、窒素雰囲気下にて1200℃まで3時間で昇温した。その後、その到達温度にて2時間保持した。放冷冷却後、取り出した試料をボールミルで粉砕した。この粉砕により、D50%(50%体積累積径)=5.0μmの難黒鉛化性炭素粉末(水素原子/炭素原子=0.008)である試料を得た。
【0053】
次に、上記試料を100重量部と、ポリフッ化ビニリデン粉末10重量部をN−メチル−2−ピロリドン80重量部に溶解した溶液とを充分に混合して、負極スラリーを得た。この負極スラリーを、平均孔径100μm(0.1mm)であって、孔間距離が孔径の3倍となるように同一パターンで貫通孔が形成された厚さ26μm(開口率50%)の銅製エキスパンドメタルからなる負極集電体の両面に、ダイコータにて均等に塗工した。その後、乾燥し、プレス後、平均厚さ50μmの負極を得た。
【0054】
〔正極の作製〕比表面積2000m/gの市販活性炭粉末85重量部、アセチレンブラック粉体5重量部、アクリル系樹脂バインダ6重量部、カルボキシメチルセルロース4重量部および水200重量部からなる組成にて十分に混合することにより正極スラリーを得た。
【0055】
平均孔径100μmであって、孔間距離が孔径の3倍となるように同一パターンで貫通孔が形成された厚さ38μm(開口率50%)のアルミニウム製エキスパンドメタルの両面に、非水系のカーボン系導電塗料をスプレー方式にてコーティングした。その後、乾燥することにより導電層が形成された正極用集電体を得た。全体の厚さ(集電体厚さと導電層厚さとの合計)は50μmであった。
【0056】
正極スラリーをロールコーターにて、正極集電体の両面に均等に塗工した。その後、乾燥し、プレス後、平均厚さ110μm(0.1mm)の正極を得た。
【0057】
〔電極積層ユニットの作製〕負極を6.0×7.5cm(端子溶接部を除く)に11枚カットし、正極を5.8×7.3cm(端子溶接部を除く)に10枚カットした。セパレータとして、平均厚さ30μmの市販のセルロース/レーヨン混合不織布を用いた。
【0058】
つまり、実施例1では、図2に示す正極11の厚さの1/2の値とセパレータ13の厚さと負極12の厚さの1/2の値との合計値Lの平均値に相当する、電極の厚さの平均値は110μmであり、貫通孔の平均孔径(a)と電極の厚さの平均値(b)との平均値との比b/aは1.1である。
【0059】
セパレータを介して、正極集電体、負極集電体の端子溶接部が、それぞれ反対側になるよう配置し、正極と負極とを交互に積層した。積層に際しては、電極の最外部が負極となるようにした。併せて、最上部と最下部とにはセパレータを配置して、4辺をテープ留めした。また、正極集電体の端子溶接部(10枚)、負極集電体の端子溶接部(11枚)を、それぞれ幅50mm、長さ50mm、厚さ0.2mmのアルミニウム製正極端子および銅製負極端子に超音波溶接した。このようにして、電極積層ユニットを得た。
【0060】
〔リチウム極の作製〕リチウム極として、金属リチウム箔を厚さ80μmのステンレス網に圧着したものを用いた。このリチウム極を、最外部の負極と完全に対向するように配置した。つまり、電極積層ユニットの外側にリチウム極を1枚配置するとともに、このリチウム極とは反対の外側に電位モニター用のリチウム極を配置し、三極積層ユニットを得た。なお、リチウム極集電体の端子溶接部は、負極端子溶接部に抵抗溶接した。
【0061】
〔セルの作製および電解液の含浸〕電極積層ユニットの形状に合わせて深絞りした3.5mmのラミネートフィルムの内部に、三極積層ユニットを設置した。また、ラミネートフィルムの下辺部および側辺部の三辺を熱融着した。
【0062】
つづいて、熱融着を行っていない残りの一辺に漏斗を挿入し、スポイドにて電解液としてのプロピレンカーボネート溶液を15g注液した。このプロピレンカーボネート溶液は、プロピレンカーボネートに対して1モル/Lの濃度となるようにLiPFを溶解して調製した。その後に、残り一辺を減圧下にて融着させ、本発明の蓄電デバイスとしてのフィルム型セルを組み立てた。なお、セル内に配置された金属リチウムは、負極活物質重量当たり550mAh/g相当である。
【0063】
(実施例2)
正極および負極の集電体における貫通孔の平均孔径を、250μm(0.25mm)となるように形成したこと以外は実施例1と同様にして、フィルム型セルを組み立てた。ここで、実施例2では、貫通孔の平均孔径(a)と電極の厚さの平均値(b)との比b/aは0.44である。
【0064】
(実施例3)
正極および負極の集電体における貫通孔の平均孔径を、500μm(0.5mm)となるように形成したこと以外は実施例1と同様にして、フィルム型セルを組み立てた。ここで、実施例3では、貫通孔の平均孔径(a)と電極の厚さの平均値(b)との比b/aは0.22である。
【0065】
(比較例1)
正極および負極の集電体における貫通孔の平均孔径を、0.1μmとなるように形成したこと以外は実施例1と同様にして、フィルム型セルを組み立てた。ここで、比較例1では、貫通孔の平均孔径(a)と電極の厚さの平均値(b)との比b/aは1100である。
【0066】
(比較例2)
正極および負極の集電体における貫通孔の平均孔径を、2000μmとなるように形成したこと以外は実施例1と同様にして、フィルム型セルを組み立てた。ここで、比較例2では、貫通孔の平均孔径(a)と電極の厚さの平均値(b)との比b/aは0.055である。
【0067】
〔プレドープ時間の測定〕実施例1〜3で得られたフィルム型セルについて、電解液を含浸してから金属リチウムが完全に消失するまでの時間をプレドープ時間として測定した。結果を図5に示す。
【0068】
図5の結果より、実施例1〜3はいずれも、貫通孔の平均孔径および電極の厚さが本発明の好適な範囲にあるため、プレドープ時間を50時間以内と極めて短縮できることがわかった。また、実施例1〜3および比較例2より、貫通孔の孔径が大きくなる程、プレドープ時間(図中、PD時間と表示)が長くなることが裏付けられた。さらに、比較例1より、貫通孔の孔径が極端に小さいと却ってプレドープ時間が長くなることも裏付けられた。
【0069】
(実施例4)
実施例2において、負極集電体の厚さを10μmとした(負極の平均厚さとしては40μm、実施例5および12も同様)以外は同様にして、フィルム型セルを組み立てた。なお、厚さに関して、集電体としては異なっていても、電極全体としては同じ厚さとなる場合があるのは、活物質塗工時の条件を任意に異ならせているためである(以下の例でも同様)。
【0070】
(実施例5)
実施例3において、負極集電体の厚さを10μmとした以外は同様にして、フィルム型セルを組み立てた。
【0071】
(実施例6)
実施例2において、負極集電体の厚さを20μmとした(負極の平均厚さとしては50μm、実施例7および13も同様)以外は同様にして、フィルム型セルを組み立てた。
【0072】
(実施例7)
実施例3において、負極集電体の厚さを20μmとした以外は同様にして、フィルム型セルを組み立てた。
【0073】
(実施例8)
実施例1において、正極集電体に平均孔径300μm(0.3mm)の貫通孔を形成し、かつ厚さを15μmとした(正極の平均厚さとしては110μm、実施例9も同様)ものを用いた以外は同様にして、フィルム型セルを組み立てた。
【0074】
(実施例9)
実施例1において、正極集電体に平均孔径500μm(0.5mm)の貫通孔を形成し、かつ厚さを15μmとしたものを用いた以外は同様にして、フィルム型セルを組み立てた。
【0075】
(実施例10)
実施例1において、正極集電体に平均孔径300μm(0.3mm)の貫通孔を形成し、かつ厚さを30μm(正極の平均厚さとしては120μm、実施例11も同様)としたものを用いた以外は同様にして、フィルム型セルを組み立てた。
【0076】
(実施例11)
実施例1において、正極集電体に平均孔径500μm(0.5mm)の貫通孔を形成し、かつ厚さを30μmとしたものを用いた以外は同様にして、フィルム型セルを組み立てた。
【0077】
(実施例12)
実施例1において、負極集電体の厚さを10μmとした以外は同様にして、フィルム型セルを組み立てた。
【0078】
(実施例13)
実施例1において、負極集電体の厚さを20μmとした以外は同様にして、フィルム型セルを組み立てた。
【0079】
〔引張強度試験〕実施例4〜13のフィルム型セルについて、JIS Z2241に準じて、流れ(MD)方向と垂直(TD)方向への引張強度を調べた。結果を、実施例8〜11については図6(a)のグラフに、実施例4〜7、12および13については図6(b)のグラフに、それぞれ示す。
【0080】
図6(a)の結果より、集電体を塗工機にかけることが可能な最小の引張強度(MD方向2.7N/10mm、TD方向2.7N/10mm)よりも十分に高い強度を有していることがわかった。また、貫通孔の平均孔径を小さくする程、引張強度が向上し、かつ、その値がグラフ上において直線的な傾向を示すことがわかった。このことから、図6(a)、(b)の各グラフ中において、同じ集電体の厚さで行ったデータの傾きのうち、最も長いものを上述の最小の引張強度に達するまで延長させた場合に対応する平均孔径の値が、塗工機で製造可能な貫通孔の孔径の上限と推測される。具体的には、アルミニウムを使用している正極集電体では800μm以下が好適であり、銅を使用している負極集電体では1200μm以下、つまり本発明で規定された範囲(1〜1000μm)にあればよいことが推測された。
【0081】
〔耐久試験〕実施例4〜13のフィルム型セルについて、超音波洗浄機(東京超音波技研株式会社、超音波洗浄器UC−0310)を用いて加速度的に試験した。具体的には、超音波洗浄機を7.5分、加速度的にかけつづけ、2.5、5および7.5分後に、実施例8〜11については正極の、実施例4〜7、12および13については負極の、集電体に塗布された活物質の試験開始時に対する残存量(%)を、目視にて判断し、その値を耐久性の指標とした。結果を、実施例8〜11については図7(a)または(b)のグラフに、実施例4〜7、12および13については図8(a)または(b)のグラフに、それぞれ示す。
【0082】
図7および8の結果より、貫通孔の小さい集電体程、活物質残存量が多く、耐久性に優れることがわかった。また、正極では残存量90%以上、負極では残存量40%以上である場合を、耐久性が良好な範囲と捉えると、貫通孔の平均孔径は正極および負極のいずれにおいても、500μm(0.5mm)以下が好ましいことがわかった。さらに、貫通孔の平均孔径が300μm(0.3mm)以下であると、飛躍的に耐久性が向上するので、より好ましいことがわかった。
【0083】
〔抵抗試験〕実施例4〜7、12および13のフィルム型セルについて、直流内部抵抗(DC−IR)を測定した。結果を図9に示す。
【0084】
図9の結果より、貫通孔の小さいセル程、内部抵抗が低くなることがわかった。また、内部抵抗が0.18Ω以下である場合を、内部抵抗値の良好な範囲と捉えると、貫通孔の平均孔径は500μm(0.5mm)以下が好ましいことがわかった。さらに、貫通孔の平均孔径が300μm(0.3mm)以下であると、飛躍的に抵抗が低減されるので、より好ましいことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、蓄電デバイスの分野で有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
10 リチウムイオンキャパシタ
11 正極
11a 正極活物質
11b 正極集電体
11c 貫通孔
12 負極
12a 負極活物質
12b 負極集電体
12c 貫通孔
13 セパレータ
14 電極積層ユニット
15 リチウム極
15a 金属リチウム
15b リチウム極集電体
16 正極端子
17 負極端子
L 正極の厚さの1/2の値とセパレータの厚さと負極の厚さの1/2の値との合計値(電極の厚さ)
M 貫通孔の孔径の1/2の値と孔間距離の1/2の値との合計
N リチウムイオン拡散距離
D 孔径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータと、このセパレータを介して積層または捲回されるとともに集電体に貫通孔が形成される正極および負極と、前記正極または前記負極に予めドープされるリチウムイオンを供給するリチウムイオン供給源とを備える蓄電デバイスであって、
前記貫通孔の最長径または最長対角線距離の平均値(a)が1〜1000μmであり、前記セパレータの厚さと前記正極および前記負極の厚さの1/2の値との合計により規定される電極の厚さの平均値(b)との比b/aの値が0.08〜530の範囲内にあることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスにおいて、
b/aの値が0.13〜23の範囲内にあることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蓄電デバイスにおいて、
前記貫通孔の最長径または最長対角線距離の平均値(a)は、前記集電体が、アルミニウムを材質とする場合には800μm以下、銅を材質とする場合には1000μm以下であることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電デバイスにおいて、
前記貫通孔の最長径または最長対角線距離の平均値(a)は、500μm以下であることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイスにおいて、
前記貫通孔の開口率が40〜60%であることを特徴とする蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−210995(P2011−210995A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77954(P2010−77954)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】