説明

蓋体開閉装置

【課題】FOUPの搬送領域のパーティクルが当該FOUPの蓋体を介して基板搬送領域に混入することを防ぐこと。
【解決手段】FOUPの蓋体の前面が開閉ドアにより開閉される搬送口に向くように当該FOUPを載置する載置台と、FOUPに対向する対向面部に設けられるガス吐出口と、前記載置台に載置されたFOUPを、前記対向面部に対して相対的に進退させる進退機構と、を備えるように蓋体開閉装置を構成し、ガス吐出口から前記FOUPの蓋体までの距離が5mm以下であるときに蓋体へパージガスを供給する。これによって蓋体と対向面部との間を流れるパージガスの流速が高くなり、蓋体のパーティクルが容易に除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FOUPの一部を構成する基板の取り出し口を塞ぐ蓋体を開閉する蓋体開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置の一つとして、例えば多数の半導体ウエハ(以下ウエハという)に対してバッチで熱処理を行う縦型熱処理装置がある。この縦型熱処理装置は大気雰囲気中に設けられており、ウエハを格納したFOUPと呼ばれるキャリアが搬送されるキャリア搬送領域と、前記ウエハを基板保持具であるウエハボートに移載して熱処理炉への搬送を行うウエハ搬送領域と、これらの領域間に設けられる隔壁と、を備えている。処理中にウエハにパーティクルが付着することを防ぐために、ウエハ搬送領域はキャリア搬送領域よりも高清浄度に保たれている。
【0003】
前記隔壁にはウエハの搬送口が形成され、この搬送口はFIMS(Front-opening Interface Mechanical Standard)規格に従った開閉ドアにより開閉される。前記開閉ドアは、キャリア前面に設けられる蓋体を取り外すための取り外し機構を備えている。つまり開閉ドアには、キャリア内とウエハ搬送領域との間でウエハを受け渡すために前記蓋体を開閉する役割と、ウエハ搬送領域をキャリア搬送領域から隔離する役割とが求められる。
【0004】
ところで半導体デバイスの高機能化及び小型化が漸次進められており、このため当該デバイスに用いられる配線幅、デザインルール等がより狭められ、従来であれば問題とならなかった大きさや量のパーティクルにも留意する必要が生じてきている。つまり、ウエハ搬送領域をより高清浄度に保つ要請がある。その一方で半導体デバイスの製造コストを抑える観点から、装置の設置環境即ち前記キャリア搬送領域は低清浄度にすることが有効である。しかし、キャリア搬送領域の清浄度が低いと、キャリアにパーティクルが付着しやすくなってしまう。そして、前記搬送口の開閉ドアは、キャリアの蓋体を保持した状態でウエハ搬送領域側に開くため、この蓋体に付着したパーティクルがウエハ搬送領域に持ち込まれてしまいウエハ搬送領域の清浄度が低下してしまうおそれがある。
【0005】
特許文献1には、前記隔壁においてキャリアの蓋体にガスを吐出するノズルを設けて蓋体に付着するパーティクルを除去する装置について示されているが、上記のような事情から、より確実にキャリアの蓋体に付着したパーティクルを除去する装置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−56296(段落0017、図1A)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、FOUPの搬送領域のパーティクルが当該FOUPの蓋体を介して基板搬送領域に混入することを防ぐことができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の蓋体開閉装置は、FOUPの搬送領域の雰囲気と基板搬送領域の雰囲気とを区画する隔壁に形成され、開閉ドアにより開閉される搬送口の口縁部に、FOUPの基板取り出し口の口縁部を密着させ、前記開閉ドアにおける前記FOUPに対向する対向面部に設けられた蓋体取り外し機構を、FOUPの蓋体の前面側の開口部を介して蓋体内に進入させて蓋体とFOUP本体との係合を解除し、当該蓋体を保持するように構成されたFOUPの開閉装置において、
前記蓋体の前面が前記搬送口に向くようにFOUPを載置する載置台と、
前記対向面部に設けられ、前記蓋体に付着したパーティクルを除去するためのパージガスを供給するためのガス吐出口と、
前記載置台に載置されたFOUPを、前記対向面部に対して相対的に進退させる進退機構と、
前記ガス吐出口から前記FOUPの蓋体までの距離が5mm以下である第1の位置まで当該FOUPが前記進退機構により前記対向面部に対して相対的に前進したときに、当該ガス吐出口から前記蓋体へパージガスを供給するように制御信号を出力する制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記の蓋体開閉装置は例えば具体的に下記のように構成される。
(a)前記制御部は、前記第1の位置まで第1の速度でFOUPを前進させた後、
パージガスの供給を続けたまま、当該FOUPを前記第1の位置で停止させるか、第1の速度よりも遅い第2の速度で、前記第1の位置よりも前記対向面部に近い第2の位置へ、前記進退機構により対向面部に対して相対的に前進させるように制御信号を出力する。
(b)前記進退機構は、前記載置台を前記隔壁の搬送口に対して進退させる機構である。
(c)前記対向面部には、前記ガス吐出口から当該ガス吐出口の外方へと伸びる旋回溝が設けられる。
(d)前記ガス吐出口から吐出されるパージガスをイオン化させるための第1のイオナイザを備える。
(e)前記載置台の上方に設けられると共にフィルタを備え、前記フィルタを通過して清浄化された大気を下方へ向けて供給して下降気流を形成するフィルタユニットと、
前記フィルタユニットから供給される大気をイオン化させる第2のイオナイザと、を備える。
【0010】
本発明の他の蓋体開閉装置は、FOUPの搬送領域の雰囲気と基板搬送領域の雰囲気とを区画する隔壁に形成され、開閉ドアにより開閉される搬送口の口縁部に、FOUPの基板取り出し口の口縁部を密着させ、前記開閉ドアにおける前記FOUPに対向する対向面部に設けられた蓋体取り外し機構を、FOUPの蓋体の前面側の開口部を介して蓋体内に進入させて蓋体とFOUP本体との係合を解除し、当該蓋体を保持するように構成されたFOUPの開閉装置において、
前記蓋体の前面が前記搬送口に向くようにFOUPを載置する載置台と、
前記対向面部に設けられ、前記蓋体に付着したパーティクルを除去するためのパージガスを供給するためのガス吐出口と、
前記載置台に載置されたFOUPを、前記対向面部に対して相対的に進退させる進退機構と、
前記ガス吐出口から吐出されるパージガスをイオン化させるための第1のイオナイザと、
を備えることを特徴とする。
【0011】
ところで、FOUPとはFront-Opening Unified Podの略であり、一般的にはその径が300mmであるウエハ用の搬送、保管を目的としたキャリアであるが、ここでいうFOUPの収納対象となる基板は、後述するようにウエハに限られるものではないし、その径が300mmに限られることもない。また、FOUP本体と蓋体とを係合する機構は、実施の形態で述べるような回動部の回動により直動部が昇降する構成であることに限られず、蓋体の内部に進入した蓋体取り外し機構により係合の解除がなされるものすべてが含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の蓋体開閉装置においては、隔壁の搬送口を開閉する開閉ドアのFOUPに対向する対向面部にガス吐出口を設け、前記対向面部とFOUPの蓋体との距離を5mm以下に制御して、前記ガス吐出口からパージガスの吐出を行っている。それによって、前記蓋体と前記対向面部との間に形成される気流の流速が大きくなり、蓋体に付着したパーティクルの除去率が高くなる。その結果として、基板の搬送領域の雰囲気へ当該パーティクルが混入することを抑えることができる。また、本発明の他の蓋体開閉装置においては、前記ガス吐出口からイオナイザによりイオン化されたパージガスを供給しているため、前記パーティクルが除去されやすくなる。結果として、基板の搬送領域の雰囲気へ当該パーティクルが混入することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の蓋体開閉装置が適用された縦型熱処理装置の縦断側面図である。
【図2】前記縦型熱処理装置の平面図である。
【図3】前記縦型熱処理装置に設けられるイオナイザの上面図である。
【図4】キャリア及び前記縦型熱処理装置に設けられる開閉ドアの縦断側面図である。
【図5】前記キャリア及び前記開閉ドアの横断平面図である。
【図6】前記キャリア及び前記開閉ドアが設けられる開口部の斜視図である。
【図7】前記開閉ドアに設けられるガス吐出口の平面図である。
【図8】前記蓋体が取り外される様子を示す工程図である。
【図9】前記蓋体が取り外される様子を示す工程図である。
【図10】前記蓋体が取り外される様子を示す工程図である。
【図11】前記蓋体が取り外される様子を示す工程図である。
【図12】前記蓋体が取り外される様子を示す工程図である。
【図13】他の蓋体の取り外し工程を示す説明図である。
【図14】評価試験の実験装置を示す斜視図である。
【図15】前記実験装置の横断平面図である。
【図16】前記評価試験の結果を示すグラフ図である。
【図17】前記評価試験の結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
本発明に係る蓋体開閉装置が組み込まれた縦型熱処理装置について説明する。図1は縦型熱処理装置1の縦断側面図、図2は縦型熱処理装置1の平面図である。図中11は縦型熱処理装置1の外装体を構成する筐体であり、この筐体11内には、被処理体であるウエハWを収納した容器であるキャリアCが装置に対して搬入、搬出されるためのキャリア搬送領域S1と、キャリアC内のウエハWを搬送して後述の熱処理炉内に搬入するための移載領域であるウエハ搬送領域S2とが形成されている。キャリアCは既述のFOUPである。
【0015】
キャリア搬送領域S1とウエハ搬送領域S2とは隔壁2により仕切られている。キャリア搬送領域S1は大気雰囲気である。一方、ウエハ搬送領域S2は搬入されたウエハWに酸化膜が形成されることを防ぐために、不活性ガス雰囲気例えば窒素(N2)ガス雰囲気とされており、キャリアS1よりも清浄度が高く且つ低酸素濃度に維持されている。以降の装置の説明では、キャリア搬送領域S1及びウエハ搬送領域S2の配列方向を縦型熱処理装置1の前後方向とする。
【0016】
キャリア搬送領域S1について説明する。キャリア搬送領域S1は、第1の搬送領域12と、第1の搬送領域12の後方側(ウエハ搬送領域S2側)に位置する第2の搬送領域13とからなる。第1の搬送領域12の左右方向には、キャリアCを各々載置する2つの第1の載置台14が設けられている。各第1の載置台14の載置面には、キャリアCを位置決めするピン15が例えば3個所に設けられている。
【0017】
第2の搬送領域13には、第1の載置台14に対して前後に並ぶように、左右に2つの第2の載置台16が配置されている。各第2の載置台16は進退機構17により前後に移動自在に構成されており、後述のキャリアCからウエハWをウエハ搬送領域S2に受け渡すための受け渡し位置と、後述のキャリア搬送機構21からキャリアCを受け取る受け取り位置との間で当該キャリアCを搬送する。第2の載置台16の載置面にも第1の載置台14と同様にキャリアCを位置決めするピン15が、3個所に設けられている。また、前記載置面にはキャリアCを固定するためのフック16aが設けられている。第2の搬送領域13の上部側にはキャリアCを保管するキャリア保管部18が設けられている。キャリア保管部18は2段の棚により構成されており、各棚は左右に2つのキャリアCを載置することができる。
【0018】
そして、第2の搬送領域13には、キャリアCを第1の載置台14と第2の載置台16とキャリア保管部18との間で搬送するキャリア搬送機構21が設けられている。このキャリア搬送機構21は左右に伸び、且つ昇降自在なガイド部21aと、このガイド部21aにガイドされながら左右に移動する移動部21bと、この移動部21bに設けられ、キャリアCを保持して水平方向に搬送する関節アーム21cと、を備えている。
【0019】
第2の搬送領域13の天井部にはHEPAフィルタまたはULPAフィルタを備えたフィルタユニット31が設けられており、上記のフィルタを通過することにより清浄化されたエアを下方に向けて供給する。フィルタユニット31の下方にはイオナイザ32が設けられ、前記フィルタユニット31から供給されたエアをイオン化する。イオン化されたエアは、第2の載置台16へ向けて供給される。
【0020】
図3はイオナイザ32の上面を示している。イオナイザ32は、例えばこのように横方向に複数配列された棒状の電極34により構成され、前記エアは電極34間を通過して下方へ供給される。電極34には電源35より交流電圧が印加される。交流電圧が印加された電極34の周囲に形成される電界にエアが接触することで、当該エアがイオン化され、プラスのエアのイオンとマイナスのエアのイオンとが発生する。このイオン化されたエアが帯電物に当たると同極性のイオンとは反発し、反対極性のイオンを吸引する結果、帯電物が除電されることになる。
【0021】
隔壁2には、キャリア搬送領域S1とウエハ搬送領域S2とを連通させるウエハWの搬送口20が設けられている。搬送口20には、当該搬送口20をウエハ搬送領域S2側から塞ぐ開閉ドア5が設けられている。開閉ドア5には駆動機構50が接続されており、駆動機構50により開閉ドア5は前後方向及び上下方向に移動自在に構成され、搬送口20が開閉される。この開閉ドア5及び搬送口20の周囲の構成については後に詳述する。
【0022】
ウエハ搬送領域S2には、下端が炉口として開口された縦型の熱処理炉22が設けられ、この熱処理炉22の下方側には、多数枚のウエハWを棚状に保持するウエハボート23が断熱部24を介してキャップ25の上に載置されている。キャップ25は昇降機構26の上に支持されており、この昇降機構26によりウエハボート23が熱処理炉22に対して搬入あるいは搬出される。
【0023】
またウエハボート23と隔壁2の搬送口20との間には、ウエハ搬送機構27が設けられている。このウエハ搬送機構27は、左右に伸びるガイド機構27aに沿って移動すると共に鉛直軸回りに回動する移動体27bに、5枚の進退自在なアーム27cを設けて構成され、ウエハボート23と第2の載置台16上のキャリアCとの間でウエハWを搬送する。
【0024】
図4、図5は夫々キャリアC、ウエハWの搬送口20及び開閉ドア5の縦断側面図、横断平面図であり、図6は搬送口20及びキャリアCの斜視図である。これら図4〜図6を用いてキャリアCについて説明すると、キャリアCは容器本体であるキャリア本体41と、蓋体42とからなる。キャリア本体41内の左右には、ウエハWの裏面側周縁部を支持する支持部41aが多段に設けられる。キャリア本体41の前面にはウエハWの取り出し口43が形成されている。図中44は前記取り出し口43の開口縁部であり、開口縁部44の内周側の左右の上下には各々係合溝44aが形成されている。
【0025】
キャリア本体41の上部には、既述のキャリア搬送機構21がキャリアCを搬送するために把持する把持部41bが設けられる。また、図4に示すようにキャリア本体41の下部には凹部45aと溝部45bとが設けられ、凹部45aは第1の載置台14及び第2の載置台16のピン15に嵌合する。溝部45bは、第2の載置台16のフック16aに係合し、この係合によってキャリア本体41が第2の載置台16に固定される。
【0026】
キャリアCの蓋体42について説明すると、蓋体42の内部には左右に回動部46が設けられている。回動部46の上下には垂直方向に伸びる直動部47が設けられる。この直動部47は、回動部46の回動に応じて昇降し、その先端が蓋体42の側面から突出した状態と、蓋体42内に引き込んだ状態とで切り替わるように構成されている。図6は前記直動部47の先端が突出した状態を示している。この先端は前記キャリア本体41の係合溝44aに係合し、それによって蓋体42がキャリア本体41に係合される。蓋体42の前面には後述のキー69を蓋体42の内部に差し込むための開口部48が設けられている。
【0027】
続いて、開閉ドア5及びウエハWの搬送口20の構成について説明する。搬送口20におけるキャリア搬送領域S1側の口縁部には、キャリア本体41の開口縁部44が当接する位置にシール部材51が設けられている。また、搬送口20における側縁部側には図5に示すようにN2ガス供給管52が垂直に設けられている。このN2ガス供給管52は上下にガス供給口53を備えている。このガス供給口53は、キャリアCがウエハ搬送領域S2との間でウエハWを受け渡すために、シール部材51に開口縁部44が密着する位置(受け渡し位置とする)に移動したときに、キャリアCと開閉ドア5とに囲まれて形成される閉塞空間にN2ガスを供給する。また搬送口20の下端部には、横長の排気口55が設けられている。図中55aは横方向における排気の偏りを抑えるために排気口55に設けられた多孔質体である。
【0028】
開閉ドア5は、その周縁部がキャリア搬送領域S1側へ向けて屈曲された箱体として形成されており、この箱体の開口縁にはシール部材56が設けられ、当該シール部材56を介して開閉ドア5は搬送口20の縁部に密着する。
【0029】
開閉ドア5のキャリア搬送領域S1側には、蓋体42の取り外し機構6が設けられている。この取り外し機構6は、対向板61と対向板61を前後方向に移動させる進退機構62とを備えている。対向板61は、第2の載置台16に載置された蓋体42の前面に対向する対向面部60を備えている。図6に示すように対向面部60には例えば横方向の中央の上下に夫々ガス吐出口63が開口している。ガス吐出口63には配管64の一端が接続され、配管64の他端はN2ガス供給機構65に接続されており、N2ガス供給機構65は下流側へパージガスであるN2ガスを圧送する。配管64にはイオナイザ66が介設されている。このイオナイザ66は既述のイオナイザ32と同様に電極を備え、当該電極の周囲に生じた電界に曝され、イオン化されたN2ガスが前記ガス吐出口63から吐出される。図4中dは、対向面部60と蓋体42の前面との距離である。後述のようにキャリアCが取り外し機構6に近づき、この距離dが5mm以下になるとガス吐出口63からN2ガスが吐出される。
【0030】
対向面部60には、ガス吐出口63から当該ガス吐出口63の外側へと旋回しながら伸びる旋回溝67が設けられている。例えば旋回溝67は、各ガス吐出口63の周方向に4本形成され、夫々左向きに旋回するように形成されている。図7はガス吐出口63及び旋回溝67の正面図である。キャリアCの蓋体42と対向面部60とが対向した状態でガス吐出口63からN2ガスを吐出するときに、図7に矢印で示すように、当該N2ガスが旋回溝67によりガイドされる。それによって、ガス吐出口63を中心とするN2ガスの旋回流が生じる。なお、ガス吐出口63の配置や個数はこの例に限られるものではなく、例えば対向面部60の中央に一つ設けてもよい。また、旋回溝67は右向きに旋回するように形成してもよい。
【0031】
図4〜図6に戻って、対向面部60からその厚さ方向に棒状の接続部68が伸びており、接続部68の先端には円い棒状のキー(ラッチピン)69が設けられている。接続部68はその軸回りに回動し、それによってキー69も回動する。キー69は上記の蓋体42の回動部46に係合し、当該回動部46を回動させることができるように形成されている。キー69の形状としてはこの係合が行えるものであればよいので図示した円柱形状には限られず、例えば角柱形状であったり、これら円柱または角柱の角部を丸く形成したものであってもよい。
【0032】
この縦型熱処理装置1には、例えばコンピュータからなる制御部1Aが設けられている。制御部1Aはプログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部などを備えており、前記プログラムには制御部1Aから縦型熱処理装置1の各部に制御信号を送り、後述の各処理工程を進行させるように命令(各ステップ)が組み込まれている。その制御信号によりキャリアCの搬送、第2の載置台16の進退、取り外し機構6の進退、ウエハWの搬送、蓋体42の開閉、開閉ドア5の開閉、蓋体42へのN2ガスの供給などの動作が制御され、後述のようにウエハWの搬送及び処理が行われる。このプログラムは、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)及びメモリーカードなどの記憶媒体に格納されて制御部1Aにインストールされる。
【0033】
次に上述の実施の形態の作用について説明する。フィルタユニット31から下方へ向けてエアが供給され、このエアがイオナイザ32によりイオン化されて、さらに下方へ供給され、第2の載置台16が設けられる第2の搬送領域13に下降気流が形成される。この下降気流により、前記第2の搬送領域13に存在するパーティクルは除電され、キャリアCへの付着力が弱まる。
【0034】
そして、クリーンルームの天井部に沿って移動する図示しない自動搬送ロボットにより、キャリアCが第1の載置台14に載置される。続いてキャリア搬送機構21により前記キャリアCが第2の載置台16に搬送され、フック16aにより第2の載置台16に固定される。
【0035】
進退機構17により、第2の載置台16は隔壁2の搬送口20へ向けて前進し、キャリアCは前記下降気流に曝されながら移動する。キャリアCに付着しているパーティクルPは、前記下降気流により除電され、当該パーティクルPのキャリアCに対する付着力が弱まり、当該気流に押し流されてキャリアCから除去される(図8)。対向面部60とキャリアCの蓋体42との距離dが5mmになると、第2の載置台16の移動速度が低下すると共に当該ガス吐出口63から蓋体42へイオナイザ65によりイオン化されたN2ガスが吐出される。ガス吐出口63から吐出されたN2ガスは、蓋体42の前面と取り外し機構6の対向面部60との隙間を流れ、蓋体42の前面に付着しているパーティクルPを除電し、このパーティクルPの蓋体42への付着力が弱まる。そして、付着力が弱まったパーティクルPはこのN2ガスにより蓋体42から押し流されて除去される(図9)。
【0036】
キャリアCの前進が続けられ、取り外し機構6のキー69が蓋体42の開口部48を介して蓋体42内に進入し、上記の距離dが所定の大きさになると、ガス吐出口63からN2ガスの吐出が停止する。さらにキャリアCが前進し、ウエハを受け渡すための受け渡し位置に移動し、隔壁2の搬送口20の周りのシール部材51にキャリアCの開口縁部44が当接して、キャリアCと開閉ドア5との間に閉塞空間54が形成されると共に、前記取り外し機構6のキー69が蓋体42内の回動部46に係合する(図10)。
【0037】
前記閉塞空間54の大気雰囲気が排気口55から排気されると共に、ガス供給口53からN2ガスが当該閉塞空間54に供給され、当該閉塞空間54にN2ガス雰囲気が形成される。キー69が90度回動し、蓋体42とキャリア本体41との係合が解除されると共にキー69に蓋体42が保持され、キー69が蓋体42を保持した状態で対向板61が開閉ドア5へ向けて後退して、キャリア本体41のウエハWの取り出し口43が開放される(図11)。
【0038】
開閉ドア5が後退した後、下降して搬送口20から退避し、キャリアC内がウエハ搬送領域S2に開放され(図12)、ウエハ搬送機構27によりキャリアC内のウエハWが順次取り出されてウエハボート23に移載される。キャリアC内のウエハWが空になると、上述と逆の動作でキャリアCの蓋体42が閉じられると共にキャリア本体41に固定される。然る後、第2の載置台16が後退してキャリアCが隔壁2から離れ、キャリア搬送機構21によりキャリア保管部18に搬送されて一時的に保管される。一方、ウエハWが搭載されたウエハボート23は熱処理炉22内に搬入されて、ウエハWに熱処理例えばCVD、アニール処理、酸化処理などが行われる。その後、処理を終えたウエハWをキャリアCに戻すときも、キャリアCからウエハWを払い出すときと同様の手順で蓋体42が開放される。
【0039】
この縦型熱処理装置1は、隔壁の搬送口20を開閉する開閉ドア5に設けられ、キャリアCの蓋体42の前面に対向する対向板61と、当該対向板61の対向面部60に設けられたガス吐出口63と、を備え、前記対向面部60と前記蓋体42との距離dを5mmにして、ガス吐出口63からN2ガスを吐出している。このように距離dを調整することで、後述の実験にも示すように前記N2ガスの流速を大きくし、蓋体42に付着したパーティクルを確実に除去することができる。従って、パーティクルが蓋体42を介してキャリア搬送領域S1からウエハ搬送領域S2に混入することを抑えることができる。後述の実験より前記距離dは5mmに限られず、5mm以下であればよい。
【0040】
前記N2ガスはイオナイザ65によりイオン化されているため、より確実に蓋体42のパーティクルを除去できる。また、前記対向面部60に設けられた旋回溝67により、対向板61の厚さ方向に見て、旋回するようにN2ガスの流れが形成される。このような流れを形成することでパーティクルに作用する風圧が大きくなるので、蓋体42のパーティクルの除去率を高くすることができる。さらに、イオン化されたN2ガスによる下降気流をキャリアCに供給しているため、キャリアCのパーティクルの付着を抑えると共にキャリアCからのパーティクルの除去率が高くなるため、より確実にウエハ搬送領域S2へのパーティクルの混入を抑えることができる。
【0041】
また、ガス吐出口63からN2ガスを吐出する位置に至るまでは第2の載置台16の移動速度を大きくし、前記位置からさらにキャリアCを前進させるときには、当該第2の載置台16の移動速度を低下させている。これによって十分な時間、蓋体42がN2ガスに曝されてパーティクルが蓋体に残留することを防ぎ、且つキャリアCが前記閉塞空間54を形成するウエハの受け渡し位置に移動するまでの時間を抑え、スループットの低下を抑えることができる。また、上記の実施形態では、ガス吐出口63からガスを吐出するときに第2の載置台16の速度が低下させているが、速度を低下させる代わりに一旦第2の載置台16の前進を停止させてもよい。つまり、第2の載置台16の前進を止めた状態で、前記N2ガスの供給を続け、N2ガスの供給停止後に再度第2の載置台16を前進させてもよい。
【0042】
上記の例ではキャリアCを前進させるときにガス吐出口63からN2ガスの吐出を行っているが、対向板61を前進させるときにN2ガスの吐出を行ってもよい。例えば図13に示すように、先ずキャリアCを前記受け渡し位置に移動させる。そして、対向板61をキャリアCに向けて前進させ、上記のように距離dが5mm以下になったときにN2ガスを吐出する。蓋体42から除去されたパーティクルPは、排気口55から排気されて除去される。この場合にも上記の例と同様にN2ガスの供給開始前は対向板61の前進速度を大きくし、N2ガスの供給開始後は対向板61の前進速度を小さくすることで、スループットの向上とパーティクルの除去率の上昇とを図ることができる。また、この場合にも前進速度を小さくする代わりに、一旦対向板61の前進を止めてガス供給を行ってもよい。
【0043】
被処理体が半導体ウエハである例について説明したが、被処理体はこれに限られずガラス基板やLCD基板であってもよい。また、開閉ドア5及び隔壁2は大気雰囲気と不活性ガス雰囲気とを区画することに限られず、例えば互いに湿度が異なるように制御された領域を区画する構成であってもよい。また、ガス吐出口63から吐出するパージガスはN2ガスに限られず、エアやArなど他の不活性ガスであってもよい。
【0044】
(評価試験1)
本発明に関連する評価試験1について説明する。図14、15に示すように2つの板81、82を対向させた。板82の中心にはN2ガスの吐出口83が形成され、ガス供給管84から供給されたN2ガスを板の厚さ方向に供給できるようになっている。図中Xは板81、82の隙間を示している。板81の表面に測定ポイントAを設定し、当該測定ポイントAの風速について、前記隙間Xの大きさ及び吐出口83からのN2ガス流量を夫々変更して測定した。図中rは、吐出口83の中心軸85から前記測定ポイントAの距離を示し、この評価試験1ではr=150mmに設定した。N2ガスの流量は、10slm(L/分)、50slm、100slmに夫々設定した。
【0045】
図16のグラフに実験結果を示している。グラフ中の縦軸は測定ポイントAの風速(単位:m/秒)を示し、横軸は前記隙間Xの大きさ(単位:mm)を示している。N2ガスの流量が10slm、50slm、100slmのいずれの場合であっても隙間Xが大きくなるにつれて風速が低下していき、Xが5mmでは0に近くなる。5mmを越えると風速は略0になると考えられ、上記の実施形態に適用した場合にパーティクルの除去能力が低くなってしまうと考えられることから、上記の実施形態で説明したように、蓋体42と対向面部60との距離を5mm以下に近接させることが必要であることが分かる。また、この評価試験1でN2ガスの流量がいずれの場合であっても、Xが1mm以下になると、風速の上昇率が高くなる。従って、上記の実施形態で、距離dが1mm以下であるときにガス吐出口63からN2ガスを吐出することが特に有効である。
【0046】
なお、クリーンルームに持ち込まれる資材などにエアを吐出し、パーティクルを除去するエアシャワーは、前記エアの風速が20〜30m/秒となるように設計されている。この実験で測定した範囲ではN2ガスの流量を100slmに設定し、前記Xが0mmに近づいたときに風速が20m/秒となっている。従って、このエアシャワーと同等の性能を得るためには、上記の実施形態でガス吐出口63から吐出するN2ガスを100slm以上の流量に設定することが有効である。
【0047】
(評価試験2)
評価試験1と同様の装置を用い、前記測定ポイントAの位置、つまり前記rの大きさを変えて風速の測定を行った。前記隙間Xの大きさは1mmに設定した。N2ガスの流量は、評価試験1と同様に10slm、50slm、100slmに夫々設定した。
【0048】
図17は、この実験の結果を示すグラフである。グラフ中の縦軸は測定ポイントAの風速(単位m/秒)を示し、横軸は前記rの大きさ(単位mm)を示している。グラフに示すようにrが小さいほど、各流量間で風速の差が大きい。そして、rが大きくなるほど各流量間で風速の差が小さくなり、次第に0に近づいていく。従って、対向板61において、確実にパーティクルを除去するために当該対向板61のガス吐出口63は複数設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0049】
C キャリア
W ウエハ
S1 キャリア搬送領域
S2 ウエハ搬送領域
1 縦型熱処理装置
1A 制御部
16 第2の載置台
17 進退機構
2 隔壁
20 搬送口
31 フィルタユニット
32 イオナイザ
5 開閉ドア
6 取り外し機構
61 対向板
60 対向面部
63 ガス吐出口
66 イオナイザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FOUPの搬送領域の雰囲気と基板搬送領域の雰囲気とを区画する隔壁に形成され、開閉ドアにより開閉される搬送口の口縁部に、FOUPの基板取り出し口の口縁部を密着させ、前記開閉ドアにおける前記FOUPに対向する対向面部に設けられた蓋体取り外し機構を、FOUPの蓋体の前面側の開口部を介して蓋体内に進入させて蓋体とFOUP本体との係合を解除し、当該蓋体を保持するように構成されたFOUPの開閉装置において、
前記蓋体の前面が前記搬送口に向くようにFOUPを載置する載置台と、
前記対向面部に設けられ、前記蓋体に付着したパーティクルを除去するためのパージガスを供給するためのガス吐出口と、
前記載置台に載置されたFOUPを、前記対向面部に対して相対的に進退させる進退機構と、
前記対向面部から前記FOUPの蓋体までの距離が5mm以下であり、且つ蓋体と対向面部とが離間しているガス供給有効位置にFOUPが置かれている状態で前記ガス吐出口から前記蓋体へパージガスを供給し、その後蓋体をFOUPから取り外すように制御信号を出力する制御部と、
を備えたことを特徴とする蓋体開閉装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ガス供給有効位置まで第1の速度でFOUPを前進させた後、
パージガスの供給を続けたまま、当該FOUPを前記ガス供給有効位置で停止させるか、あるいは第1の速度よりも遅い第2の速度で、前記ガス供給有効位置よりも前記対向面部に接近させるように制御信号を出力することを特徴とする請求項1記載の蓋体開閉装置。
【請求項3】
前記進退機構は、前記載置台を前記隔壁の搬送口に対して進退させる機構であることを特徴とする請求項1または2記載の蓋体開閉装置。
【請求項4】
前記対向面部には、前記ガス吐出口から当該ガス吐出口の外方へと伸びる旋回溝が設けられることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の蓋体開閉装置。
【請求項5】
前記ガス吐出口から吐出されるパージガスをイオン化させるための第1のイオナイザを備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の蓋体開閉装置。
【請求項6】
FOUPの搬送領域の雰囲気と基板搬送領域の雰囲気とを区画する隔壁に形成され、開閉ドアにより開閉される搬送口の口縁部に、FOUPの基板取り出し口の口縁部を密着させ、前記開閉ドアにおける前記FOUPに対向する対向面部に設けられた蓋体取り外し機構を、FOUPの蓋体の前面側の開口部を介して蓋体内に進入させて蓋体とFOUP本体との係合を解除し、当該蓋体を保持するように構成されたFOUPの開閉装置において、
前記蓋体の前面が前記搬送口に向くようにFOUPを載置する載置台と、
前記対向面部に設けられ、前記蓋体に付着したパーティクルを除去するためのパージガスを供給するためのガス吐出口と、
前記載置台に載置されたFOUPを、前記対向面部に対して相対的に進退させる進退機構と、
前記ガス吐出口から吐出されるパージガスをイオン化させるための第1のイオナイザと、
を備えることを特徴とする蓋体開閉装置。
【請求項7】
前記載置台の上方に設けられると共にフィルタを備え、前記フィルタを通過して清浄化された大気を下方へ向けて供給して下降気流を形成するフィルタユニットと、
前記フィルタユニットから供給される大気をイオン化させる第2のイオナイザと、を備えたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の蓋体開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−204645(P2012−204645A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68399(P2011−68399)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】