説明

薄型ヒーターモジュール

【課題】薄型ヒーターモジュールを、極薄や大きさを問題となるほど増大させることなく、電源接続端子の設置が可能で、限られたスペースにも確実に取り付け得るようにする。
【解決手段】バッテリモジュールの加温面と対向するよう立てて間近に配置する薄型ヒーターモジュール22Lの絶縁ホルダー31が、加温面と対向するモジュール主面部と、バッテリモジュールの隅角部に沿って屈曲する屈曲端部31cとから成るL字状に構成し、この屈曲端部31cに薄型ヒーターモジュール22Lの電源接続端子35を設置する。この電源接続端子35を、薄型ヒーターモジュール22Lの反対側における電源ケーブルに接続するヒーターハーネス36は、屈曲端部31cから主面部に沿い配索してリード線37に結線し、該リード線37の先端コネクタ38を電源ケーブルに接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のバッテリシェルを積層して成るバッテリモジュールの温度調節などに有用な薄型ヒーターモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような用に供する薄型ヒーターモジュールとしては従来、例えば特許文献1に記載されているようなものが知られている。
【0003】
この提案技術になる薄型ヒーターモジュールは、多数のバッテリモジュールを収納して構成したバッテリパックのケース外側面にヒーター本体を密接させ、このヒーター本体をヒーターユニットケースによりバッテリパックのケースに取着し、
バッテリパックのケース外側面から遠いヒーター本体の面と、これに対向するヒーターユニットケースとの間に断熱シート体を介在させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−186621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1に所載の薄型ヒーターモジュールは、ヒーター本体により加温すべき被加温物体であるバッテリモジュールをヒーター本体で直接加温するものではなく、
バッテリモジュール(被加温物体)を収納したバッテリパックのケースを、その外側からヒーター本体で加温し、当該バッテリパックのケースからバッテリモジュール(被加温物体)への熱伝導により、バッテリモジュール(被加温物体)を間接的に加温するものであるため、バッテリモジュール(被加温物体)の加温効率が悪いという問題があった。
【0006】
この問題解決のためには当然、ヒーター本体をバッテリパックのケース内に設けて、バッテリモジュール(被加温物体)の間近に配置し、バッテリモジュール(被加温物体)をヒーター本体で直接加温することが考えられる。
【0007】
しかし、バッテリパックのケース内部は無駄なスペースを出来るだけ排除し、バッテリパックの可能な限りのコンパクト化が図られており、ヒーター本体およびこれを取り付けるためのホルダーの収納スペースを確保するのは容易でない。
【0008】
特にヒーター本体に電力を供給するヒーターハーネスと、ヒーター本体とを接続する電源接続端子は、薄型ヒーターモジュールが文字通り極薄であるため、この極薄を阻害しないよう、また薄型ヒーターモジュールの大きさを阻害しないよう配置するのに大いに苦慮していた。
【0009】
本発明は、薄型ヒーターモジュールの極薄や大きさを問題となるほど増大させることなく上記電源接続端子の設置が可能で、これにより、
薄型ヒーターモジュールを被加温物体の加温面に接近させて対向配置し、被加温物体をヒーター本体で直接加温することにより加温効率を高める場合のように、設置スペースを限られる場合においても、確実に取り付け得るようにした薄型ヒーターモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため本発明による薄型ヒーターモジュールは、これを以下のように構成する。
先ず本発明の前提となる薄型ヒーターモジュールを説明するに、これは、加温すべき被加温物体の加温面に沿うよう設置して用いるものである。
【0011】
本発明は、かかる薄型ヒーターモジュールを特に、上記被加温物体の加温面に対向する板状ヒーター本体が設けられているモジュール主面部と、該モジュール主面部に対し屈曲している屈曲腕部とから成るL字状に構成し、
上記板状ヒーター本体の電源接続端子を上記屈曲腕部に配置して設けた構成に特徴づけられる。
【発明の効果】
【0012】
かかる本発明の薄型ヒーターモジュールによれば、板状ヒーター本体の電源接続端子が屈曲腕部に配置されているため、この電源接続端子がモジュール主面部に存在せず、従って、薄型ヒーターモジュールが元々の薄さを阻害されることがない。
【0013】
また、薄型ヒーターモジュールに対する電源接続端子の配置箇所が屈曲腕部であるため、当該電源接続端子の配置箇所が薄型ヒーターモジュールの元々の大きさを阻害することもない。
【0014】
そして、薄型ヒーターモジュールを被加温物体の加温面に接近させて対向配置し、被加温物体をヒーター本体で直接加温することにより加温効率を高める場合のように、設置スペースを限られる場合においても、
本発明では、電源接続端子が配置されている屈曲腕部を僅かなスペースに収めることができ、薄型ヒーターモジュールを確実に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の薄型ヒーターモジュールを適用可能なバッテリパックを、車両フロアパネル直下のバッテリ収納空所内に取り付けた状態で示す、車両の側面図である。
【図2】本発明の一実施例になる薄型ヒーターモジュールを適用した図1のバッテリパックを、車両フロアパネル直下のバッテリ収納空所内に取り付けた状態で示す、車両の平面図である。
【図3】図2に示すバッテリパックを、車両フロアパネル直下のバッテリ収納空所内から取り出した状態で示す、バッテリパックの全体平面図である。
【図4】図2,3におけるバッテリパックに用いた、本発明の一実施例になる薄型ヒーターモジュールの全体斜視図である。
【図5】図4における薄型ヒーターモジュールの横断平面図である。
【図6】図4における薄型ヒーターモジュールの縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図示の実施例に基づき詳細に説明する。
<実施例の構成>
図1,2はそれぞれ、本発明の一実施例になる薄型ヒーターモジュールを適用したバッテリパックを、車両フロアパネル直下のバッテリ収納空所内に取り付けた状態で示す、車両の側面図および平面図で、
図3は、図1,2に示すバッテリパックを車両のバッテリ収納空所から取り外した状態で示す、バッテリパックの全体平面図である。
【0017】
先ず図1〜3に示す車両用バッテリパックを説明する。
図1,2において、1は車体、2は車室、3は走行用電動モータが搭載されたモータルーム、4は左右前輪、5は左右後輪、6は前席シート、7は後席シート、11は車両用バッテリパックである。
【0018】
バッテリパック11は、多数のバッテリシェル12を積層して成る複数個のバッテリモジュール13FL,13FR,13CL,13CR,13Rを、図3にも示すごとく共通なバッテリパックケース14内に収納して、1ユニットに構成する。
【0019】
更に詳述するとバッテリパック11は、図1,2に示すように左右前席シート6の下方フロアパネル部分の直下における前方左右のバッテリモジュール13FL,13FRと、左右後席7の下方フロアパネル部分の直下における後方のバッテリモジュール13Rと、左右前席シート6および左右後席7間に延在する後席足元フロアパネル部分の直下における中央左右のバッテリモジュール13CL,13CRとを、上記の共通なバッテリパックケース14内に収納し、1ユニットに構成する。
【0020】
前方左側のバッテリモジュール13FLは、図1〜3に示すように4個のバッテリシェル12を横置き状態で上下方向に積層したバッテリモジュールを、2個一組として車両前後方向に並置したものとし、
前方右側のバッテリモジュール13FRも同様に、4個のバッテリシェル12を横置き状態で上下方向に積層したバッテリモジュールを、2個一組として車両前後方向に並置したものとする。
【0021】
後方のバッテリモジュール13Rは、図1〜3に示すように多数のバッテリシェル12を縦置き状態で車幅方向に、後席シート7の全長と略同じ長さとなるよう積層したバッテリモジュールとする。
【0022】
中央左側のバッテリモジュール13CLは、図1〜3に示すように2個のバッテリシェル12を横置き状態で上下方向に積層したバッテリモジュールを、2個一組として車両前後方向に並置したものとし、
中央右側のバッテリモジュール13CRも同様に、2個のバッテリシェル12を横置き状態で上下方向に積層したバッテリモジュールを、2個一組として車両前後方向に並置したものとする。
【0023】
前方左右のバッテリモジュール13FL,13FRはそれぞれ、図3に明示するごとく、左側バッテリモジュール13FLを構成するバッテリシェル12の電極端子12aと、右側バッテリモジュール13FRを構成するバッテリシェル12の電極端子12aとが相互に向かい合わせになる向きに配置したものである。
【0024】
また後方のバッテリモジュール13Rは、図3に明示するごとく、これを構成するバッテリシェル12の電極端子12aが全て車両前方に指向するよう配置したものである。
【0025】
更に、中央左右のバッテリモジュール13CL,13CRはそれぞれ、図3に明示するごとく、左側のバッテリモジュール13CLを構成するバッテリシェル12の電極端子12aと、右側のバッテリモジュール13CRを構成するバッテリシェル12の電極端子12aとが相互に向かい合わせになる向きに配置したものである。
【0026】
そして、各バッテリモジュール13FL,13FR,13CL,13CR,13Rを構成するバッテリシェル12の電極端子12aはそれぞれ、図2,3に示すように、前方左右のバッテリモジュール13FL,13FR間における車幅方向中程スペース、および中央左右のバッテリモジュール13CL,13CR間における車幅方向中程スペースに配索した共通な電源ケーブルを介して、モータルーム3内における電動モータ(インバータ)からのモータ給電線15に接続する。
【0027】
<薄型ヒーターモジュール>
上記のバッテリパック11内におけるバッテリモジュール13FL,13FR,13CL,13CR,13Rを、不使用中における凍結防止用などのために加温する薄型ヒーターモジュールは、図2,3に基づき以下に説明するようなものとする。
なお図2,3では、明瞭のため便宜上、薄型ヒーターモジュールにハッチングを付して示した。
【0028】
前方左右のバッテリモジュール13FL,13FRが前記した通り、バッテリシェル12を4段重ねした大熱容量のものであるのに対し、中央左右のバッテリモジュール13CL,13CRが前記した通り、バッテリシェル12を2段重ねしたものであって、熱容量が小さく、温度が低下し易い。
【0029】
そこで本実施例においては図2,3に示すごとく、前方左右のバッテリモジュール13FL,13FRについては、その前方のみに薄型ヒーターモジュール21L,21Rを設け、
中央左右のバッテリモジュール13CL,13CRについては、その前方に薄型ヒーターモジュール22L,22Rを設けると共に、後方にも薄型ヒーターモジュール23L,23Rを設ける。
【0030】
ところで後方のバッテリモジュール13Rは、前方左右のバッテリモジュール13FL,13FRよりも更にバッテリシェル12の積層数が多く、熱容量が最も大きくて温度が更に低下し難い。
そのため後方のバッテリモジュール13Rについては、バッテリシェル12の積層方向両端上方のみに薄型ヒーターモジュール24L,24Rを設ける。
【0031】
薄型ヒーターモジュール21L,21Rはそれぞれ、前方左側バッテリモジュール13FLおよび前方右側バッテリモジュール13FRの前側に立てて間近に配置し、バッテリパックケース14のバッテリモジュール載置面14aに取着する。
【0032】
薄型ヒーターモジュール22L,22Rはそれぞれ、中央左側バッテリモジュール13CLおよび中央右側バッテリモジュール13CRの前側に立てて間近に配置し、バッテリパックケース14のバッテリモジュール載置面14aに取着し、
薄型ヒーターモジュール23L,23Rはそれぞれ、中央左側バッテリモジュール13CLおよび中央右側バッテリモジュール13CRの後側に立てて間近に配置し、バッテリパックケース14のバッテリモジュール載置面14aに取着する。
【0033】
薄型ヒーターモジュール24L,24Rはそれぞれ、後方バッテリモジュール13Rのバッテリシェル積層方向における両端の上方に接近させて位置し、バッテリパックケース14のバッテリモジュール載置面14aに取着する。
【0034】
ところで、バッテリ電源ケーブルが前記した通り前方左右のバッテリモジュール13FL,13FR間における車幅方向中程スペース、および中央左右のバッテリモジュール13CL,13CR間における車幅方向中程スペースに配索されていることから、
薄型ヒーターモジュール21L,21R,22L,22R,23L,23R,24L,24Rの電源接続端子はそれぞれ、前方左右のバッテリモジュール13FL,13FR間における車幅方向中程スペース、および中央左右のバッテリモジュール13CL,13CR間における車幅方向中程スペースに近い側に設置するのが良い。
【0035】
そのため、前方左側バッテリモジュール13FLおよび前方右側バッテリモジュール13FRの前側に立てて間近に配置する薄型ヒーターモジュール21L,21Rの電源接続端子はそれぞれ、これら薄型ヒーターモジュール21L,21Rの相互に近い端部に配置し、
また中央左側バッテリモジュール13CLおよび中央右側バッテリモジュール13CRの後側に立てて間近に配置する薄型ヒーターモジュール23L,23Rの電源接続端子もそれぞれ、これら薄型ヒーターモジュール23L,23Rの相互に近い端部に配置する。
【0036】
従って、薄型ヒーターモジュール21L,21Rおよび薄型ヒーターモジュール23L,23Rはそれぞれ、図2,3に示すように平板状に構成することができる。
【0037】
ここで、薄型ヒーターモジュール21L,21Rの電源接続端子を上記のように配置し得るのは、前方左側バッテリモジュール13FLおよび前方右側バッテリモジュール13FRの前方に、隣接するバッテリモジュールが存在しなくて、薄型ヒーターモジュール21L,21Rの相互に近い端部周辺に、電源接続端子を設置するスペースを確保し得るためである。
また薄型ヒーターモジュール23L,23Rの電源接続端子を上記のように配置し得るのは、中央左側バッテリモジュール13CLおよび中央右側バッテリモジュール13CRの後方に、隣接するバッテリモジュールが存在しなくて、薄型ヒーターモジュール23L,23Rの相互に近い端部周辺に、電源接続端子を設置するスペースを確保し得るためである。
【0038】
ところで、中央左側バッテリモジュール13CLおよび中央右側バッテリモジュール13CRの前方にはそれぞれ、前方左側バッテリモジュール13FLおよび前方右側バッテリモジュール13FRが隣接配置されており、
中央左側バッテリモジュール13CLおよび中央右側バッテリモジュール13CRの前側に立てて間近に配置する薄型ヒーターモジュール22L,22Rの相互に近い端部周辺に、これら薄型ヒーターモジュール22L,22Rの電源接続端子を設置するスペースを確保し得ない。
【0039】
そのためもあって本実施例においては、中央左側バッテリモジュール13CLおよび中央右側バッテリモジュール13CRの前側に立てて間近に配置する薄型ヒーターモジュール22L,22Rをそれぞれ、薄型ヒーターモジュール22Lに関した図4〜6に基づき以下に説明するような構成となす。
【0040】
図4は、薄型ヒーターモジュール22Lの全体斜視図、図5は、薄型ヒーターモジュール22Lの横断平面図、図6は、薄型ヒーターモジュール22Lの縦断側面図である。
これら図4〜6に示すように、薄型ヒーターモジュール22Lは樹脂などの絶縁材で造った絶縁ホルダー31と、板状発熱体32および均熱板33の貼り合わせに成る板状ヒーター本体34とで構成する。
【0041】
絶縁ホルダー31の一側面に沿うよう板状ヒーター本体34を設置し、この際、ヒーター本体34の板状発熱体32が絶縁ホルダー31に近い側に位置し、均熱板33が絶縁ホルダー31から遠い側に露出するよう配置する。
そして絶縁ホルダー31には、周縁部にスナップフィット型式を可とする複数個のヒーター本体係止部31aを設け、これら係止部31aにより板状ヒーター本体34を上記の配置で絶縁ホルダー31に係止し、この係止状態で、絶縁ホルダー31および板状発熱体32間に空気層が存在するようになす。
【0042】
上記の構成になる薄型ヒーターモジュール22Lは、絶縁ホルダー31に図4のごとくに設けた底辺突耳31bを介し、バッテリパックケース14のバッテリモジュール載置面14a(図2,3参照)上に立てて取着する。
このとき図5に示すごとく、板状ヒーター本体34の均熱板33が中央左側バッテリモジュール13CLの前側面13CLaに接近して対向するような向きにし、薄型ヒーターモジュール22Lの当該取着を行う。
【0043】
一方、前記のごとく絶縁ホルダー31に設ける複数個のヒーター本体係止部31aは、板状ヒーター本体34よりも、中央左側バッテリモジュール13CLの前側面13CLaに近くなるよう張り出させて、絶縁ホルダー31に一体成形する。
【0044】
ところで、中央左側バッテリモジュール13CLおよび中央右側バッテリモジュール13CRの前側に立てて間近に配置する薄型ヒーターモジュール22L,22Rの相互に近い端部周辺には、前記した通り直近に前方左側バッテリモジュール13FLおよび前方右側バッテリモジュール13FRが存在するため、薄型ヒーターモジュール22L,22Rの電源接続端子を設置するスペースを確保し得ない。
【0045】
そのためもあって本実施例においては、これら薄型ヒーターモジュール22L,22Rの絶縁ホルダー31をそれぞれ、薄型ヒーターモジュール22Lにつき図4,5に示すごとく、薄型ヒーターモジュール22L,22Rの相互に遠い側における端部31cにおいて、対応する中央左側バッテリモジュール13CLおよび中央右側バッテリモジュール13CRの隅角部に沿うよう、ヒーター本体取り付け主面部31mに対し屈曲させ、
絶縁ホルダー31を、板状ヒーター本体34が設置されている主面部31m(本発明におけるモジュール主面部に相当)と、これに対し屈曲している屈曲端部31c(本発明における屈曲腕部に相当)とから成るL字状に構成する。
【0046】
そして当該絶縁ホルダー31の屈曲端部31cを、バッテリパックケース14のバッテリモジュール載置面14a上ではあるが、対応する中央左側バッテリモジュール13CLおよび中央右側バッテリモジュール13CRの載置領域の外に位置させる。
これら中央左側バッテリモジュール13CLおよび中央右側バッテリモジュール13CRの載置領域の外には、車両の側面衝突時における安全対策のために余裕スペースを設定するのが普通であり、絶縁ホルダー屈曲端部31cの上記設置が可能である。
【0047】
薄型ヒーターモジュール22Lの電源接続端子、つまり板状ヒーター本体34(板状発熱体32)の電源接続端子35は、図4,5に示すごとく、上記した絶縁ホルダー屈曲端部31cの内側に配置し、当該絶縁ホルダー屈曲端部31cの内側に沿うよう延在する均熱板33のL字状端部に取着する。
そして、この電源接続端子35から延在するヒーターハーネス36は、図6に示すごとく絶縁ホルダー31の主面部に設けたハーネス配索溝31dに収納して、図4に示すごとく絶縁ホルダー31の反対端まで延在させ、この延在端部を、絶縁ホルダー31の当該端部におけるリード線37に接続する。
【0048】
リード線37は末端にコネクタ38を有し、このコネクタ38を、前方左右のバッテリモジュール13FL,13FR間における車幅方向中程スペース、および中央左右のバッテリモジュール13CL,13CR間における車幅方向中程スペース内に有るバッテリ電源ケーブルに接続することで、薄型ヒーターモジュール22L(ヒーター本体34の板状発熱体32)をバッテリ駆動可能にする。
【0049】
なお板状ヒーター本体34(板状発熱体32)の電源接続端子35を絶縁ホルダー31の長手方向中程に配して、絶縁ホルダー31と板状発熱体32との間に介在させることも考えられるが、
この場合、薄型ヒーターモジュール22Lが厚くなって、中央左側バッテリモジュール13CLと前方左側バッテリモジュール13FLとの間の限られたスペースに挿置し得なくなり、実現不可能である。
【0050】
<実施例の効果>
上記した本実施例の薄型ヒーターモジュールによれば、中央左側バッテリモジュール13CL用の薄型ヒーターモジュール22Lにつき上述した通り、
加温すべきバッテリモジュール13CLの加温面13CLaに対向する板状ヒーター本体34を具え、このバッテリモジュール加温面13CLaから遠い板状ヒーター本体34の側における絶縁ホルダー31で、板状ヒーター本体34をバッテリモジュール加温面13CLaと対向するよう取り付けるため、
バッテリモジュール加温面13CLaを板状ヒーター本体34で直接加温することとなり、またバッテリモジュール加温面13CLaと板状ヒーター本体34との間における空気層の存在、および板状ヒーター本体34の背面と絶縁ホルダー31との間における空気層の存在と相俟って、加温効率を高めることができる。
【0051】
さらに、板状ヒーター本体34を板状発熱体32および均熱板33の合体により構成し、均熱板33がバッテリモジュール加温面13CLaに対向するような配置であるため、
均熱板33によりバッテリモジュール加温面13CLaの加温が均等に行われ得て、バッテリモジュール加温面13CLaの温度分布が不均一になるのを防止することができる。
【0052】
しかも、絶縁ホルダー31に設けた、板状ヒーター本体34を係止するためのヒーター本体係止部31aが、板状ヒーター本体34よりもバッテリモジュール加温面13CLaに向け張り出しているため、
薄型ヒーターモジュール22Lが振動したり、傾斜したとき、ヒーター本体係止部31aがバッテリモジュール加温面13CLaに衝接することになり、ヒーター本体34がバッテリモジュール加温面13CLaに接触することはない。
【0053】
従って、ヒーター本体34がバッテリモジュール加温面13CLaに接触して損傷したり、漏電するような懸念を払拭することができる。
また、絶縁ホルダー31に設けたヒーター本体係止部31aの張り出し量を上記のように設定するだけで、上記した所期の作用効果を奏し得るため、かかる作用効果を安価、且つ簡易な構成で実現可能であり、コスト的にまた重量的に大いに有利である。
【0054】
また、前方左右のバッテリモジュール13FL,13FR間における車幅方向中程スペース、および中央左右のバッテリモジュール13CL,13CR間における車幅方向中程スペースから遠い絶縁ホルダー31の端部31cを、対応する中央左側バッテリモジュール13CLおよび中央右側バッテリモジュール13CRの隅角部に沿うよう屈曲させて、絶縁ホルダー31をL字状に構成し、この屈曲端部31cに板状ヒーター本体34の電源接続端子35を設置したため、
この電源接続端子35が薄型ヒーターモジュール22Lの主面部に存在せず、薄型ヒーターモジュール22Lが元々の薄さを阻害されることはない。
また絶縁ホルダー31の屈曲端部31cは、板状ヒーター本体34で加温された空気が車幅方向外側へ流れ出るのを妨げるよう機能し、この加温空気が、比較的外気との熱交換が行われ易い車幅方向外側へ向かうのを抑制して、中央左側バッテリモジュール13CLおよび中央右側バッテリモジュール13CRの加温効率を高めることができる。
【0055】
また、薄型ヒーターモジュール22Lに対する電源接続端子35の配置箇所が屈曲腕部31cであるため、当該電源接続端子35の配置箇所が薄型ヒーターモジュール22Lの元々の大きさを阻害することもない。
【0056】
従って図示例のごとく、薄型ヒーターモジュール22Lをバッテリモジュール13CLの加温面13CLaに接近させて対向配置し、バッテリモジュール13CLをヒーター本体34で直接加温することにより加温効率を高める場合のように、設置スペースを限られる場合においても、
本実施例の薄型ヒーターモジュール22Lは、電源接続端子35が配置されている屈曲腕部31cを側面衝突用の僅かなスペースに収めることができて、薄型ヒーターモジュール22Lを確実に取り付けることができる。
【0057】
また、均熱板33を屈曲腕部31cに沿って延在するようなL字状に構成したため、バッテリモジュール13CLの前面13CLaだけでなく、側面の一部をも加温することができ、加温効率が向上する。
【0058】
加えて絶縁ホルダー31の屈曲端部31cは、薄型ヒーターモジュール22Lの振動や傾斜に対する支持強度を増大させる用もなし、板状ヒーター本体34がバッテリモジュール加温面13CLaに接触して損傷したり、漏電する懸念を払拭するという前記の効果を更に顕著なものにし得る。
【0059】
そして当該絶縁ホルダー31の屈曲端部31cを、バッテリパックケース14のバッテリモジュール載置面14a上ではあるが、対応する中央左側バッテリモジュール13CLおよび中央右側バッテリモジュール13CRの載置領域の外に位置させるため、
車両の側面衝突時における安全対策のために設定してある余裕スペースを利用して上記絶縁ホルダー屈曲端部31cの設置が可能である。
【0060】
また絶縁ホルダー屈曲端部31cが上記の余裕スペース内に位置することから、この絶縁ホルダー屈曲端部31cに薄型ヒーターモジュール22L(板状ヒーター本体34)の電源接続端子35を難なく設置することができる。
【0061】
従って、前方左右のバッテリモジュール13FL,13FR間における車幅方向中程スペース、および中央左右のバッテリモジュール13CL,13CR間における車幅方向中程スペースに近い側における薄型ヒーターモジュール22Lの端部に電源接続端子35を設置するスペースを確保し得ない図示例のバッテリパック11においても、薄型ヒーターモジュール22Lの電源接続端子35を設置可能になる。
【0062】
更に本実施例においては、ヒーターハーネス36を、絶縁ホルダー31の屈曲端部31cから主面部に沿って配索し、左右バッテリモジュール13FL,13FR間、および13CL,13CR間の共通な電源ケーブルまで延在させたため、
上記の構成とした本実施例の薄型ヒーターモジュール22L,22Rは、左右バッテリモジュール13FL,13FR間、および13CL,13CR間の集中電源ケーブル配線の妨げになるのを回避することができる。
【0063】
また本実施例においては、薄型ヒーターモジュール22L,22Rを、車両前後方向に隣り合うバッテリモジュール13FL,13CL間、および13FR,13CR間に、ヒーター本体取り付け面(モジュール主面部)が位置し、上記共通な電源ケーブルから遠い側におけるバッテリモジュール13CL,13CRの側面に屈曲腕部31cが対向するよう配置したため、
車両前後方向に隣り合うバッテリモジュール13FL,13CL間、および13FR,13CR間に、薄型ヒーターモジュール22L,22Rの薄いヒーター本体取り付け面(モジュール主面部)が位置することとなって、車両前後方向に隣り合うバッテリモジュール13FL,13CLの配列長、および13FR,13CRの配列長を短縮することができ、同方向におけるバッテリパックの小型化を実現可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 車体
2 車室
3 モータルーム
4 左右前輪
5 左右後輪
6 前席シート
7 後席シート
11 バッテリパック
12 バッテリシェル
12a バッテリ電極端子
13FL 前方左側バッテリモジュール
13FR 前方右側バッテリモジュール
13CL 中央左側バッテリモジュール
13CLa バッテリモジュール加温
13CR 中央右側バッテリモジュール
13R 後方バッテリモジュール
14 バッテリパックケース
14a バッテリモジュール載置面
15 モータ給電線
22L,22R 薄型ヒーターモジュール
31 絶縁ホルダー
31a ヒーター本体係止部
31b 底辺突耳
31c、屈曲端部(屈曲腕部)
31d ハーネス配索溝
31m ヒーター本体取り付け主面部(モジュール主面部)
32 板状発熱体
33 均熱板
34 板状ヒーター本体
35 ヒーター電源接続端子
36 ヒーターハーネス
37 リード線
38 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加温すべき被加温物体の加温面に沿うよう設置して用いる薄型ヒーターモジュールにおいて、
前記薄型ヒーターモジュールを、前記被加温物体の加温面に対向する板状ヒーター本体が設けられているモジュール主面部と、該モジュール主面部に対し屈曲している屈曲腕部とから成るL字状に構成し、
前記板状ヒーター本体の電源接続端子を前記屈曲腕部に配置して設けたことを特徴とする薄型ヒーターモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の薄型ヒーターモジュールにおいて、
前記板状ヒーター本体は、発生熱を均一に前記被加温物体の加温面に伝熱するための均熱板を具え、
該均熱板を、前記屈曲腕部に沿って延在するようなL字状に構成したことを特徴とする薄型ヒーターモジュール。
【請求項3】
前記被加温物体の加温面が、平置きされたバッテリモジュールの一側面であり、複数個の該バッテリモジュールを並置して成るバッテリパックに用いる、請求項1または2に記載の薄型ヒーターモジュールにおいて、
薄型ヒーターモジュールの前記屈曲腕部が、前記バッテリパックのバッテリモジュール並置領域の外に位置するよう、該薄型ヒーターモジュールをバッテリパックのバッテリモジュール並置面に立てて取着したことを特徴とする薄型ヒーターモジュール。
【請求項4】
前記バッテリパックが、前記複数個のバッテリモジュールを、共通な電源ケーブルに接続し得るよう、該電源ケーブルの両側に向かい合わせて配置したものである、請求項3に記載の薄型ヒーターモジュールにおいて、
前記電源ケーブルに前記電源接続端子を接続するためのヒーターハーネスを、前記屈曲腕部から前記モジュール主面部に沿って配索し、前記共通な電源ケーブルまで延在させたことを特徴とする薄型ヒーターモジュール。
【請求項5】
前記バッテリパックが、前記複数個のバッテリモジュールを、前記共通な電源ケーブルの配索方向に並置したものである、請求項4に記載の薄型ヒーターモジュールにおいて、
薄型ヒーターモジュールを、前記共通な電源ケーブルの配索方向に隣り合うバッテリモジュール間に前記モジュール主面部が位置し、前記共通な電源ケーブルから遠い側におけるバッテリモジュールの側面に前記屈曲腕部が対向するよう配置したことを特徴とする薄型ヒーターモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−209250(P2012−209250A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−35738(P2012−35738)
【出願日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】