説明

薄板体収納容器

【課題】部品点数を削減することで小型化を図ることができるとともに、製造コストを低減すること。
【解決手段】内部に半導体ウエハWを複数枚収納するとともに、半導体ウエハWを出し入れするための開口部26を有する容器本体20と、開口部26を開閉自在に蓋する蓋体100と、蓋体100で開口部26を蓋したときに容器本体20を気密に密閉するシール材105と、側面部22,23の内面に形成され、半導体ウエハWを厚さ方向に離間し、かつ、平行に配列支持する薄板体支持部30とを具備し、容器本体20と半導体ウエハWを支持する薄板体支持部30とはポリブチレンテレフタレートで一体に成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ、記憶ディスク、液晶ガラス基板等の薄板体を収納、保管、輸送する薄板体収納容器に関し、製造コストが低減できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
薄板体収納容器は、塵埃等の発生を絶対的に抑制する必要のある半導体ウエハ、記憶ディスク(ハードディスク)の基体、液晶ガラス基板等を搬送用のキャリアとして、また、これらの製造工程での移送用のキャリアとして用いられている。このような薄板体収納容器としては、様々な形態のものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】実公平6−13114号公報
【特許文献2】特許3538204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した薄板体収納容器では、次のような問題があった。すなわち、容器本体は安価なポリカーボネート材、薄板体が載置されることで直接接触することになる載置部は摩擦係数が小さく非帯電性または導電性のポリブチレンテレフタレートが用いられていた。しかし、容器が異なる複数の材質によって形成されていると、部品点数が多くなることに伴う余分な部品空間が必要となり、容器全体が大型化する上、製造コストが大きくなるという問題があった。
【0004】
そこで本発明は、部品点数を削減することで小型化を図ることができるとともに、製造コストを低減できる薄板体収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決し目的を達成するために、本発明の薄板体収納容器は次のように構成されている。
【0006】
内部に薄板体を複数枚収納するとともに、上記薄板体を出し入れするための開口部を有する有底四角筒状の容器本体と、上記開口部を開閉自在に蓋する蓋体と、上記蓋体で上記開口部を蓋したときに上記容器本体を気密に密閉するシール材と、上記容器本体の相対向する一対の側面部の内面に形成され、上記複数の薄板体を厚さ方向に離間し、かつ、平行に配列支持する薄板体支持部とを具備し、上記薄板体支持部は、上記薄板体の面側を載置するとともに上記薄板体の積層方向に突出する凸部が設けられた板状の薄板体支持リブと、上記薄板体支持リブ部相互間に設けられ、上記薄板体の外周部と略定間隔に離間近接して形成された壁部とを備え、上記容器本体と上記薄板体支持部とは同一材料で一体に成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、部品点数を削減することで小型化を図ることができるとともに、製造コストを低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の薄板体収納容器を説明するために場合を例にとって説明する。薄板体としては半導体ウエハを用いた。図1は本発明の一実施の形態に係る薄板体収納容器10及び半導体ウエハWを示す斜視図である。薄板体収納容器10は、半導体ウエハWの他、記憶ディスク、液晶ガラス基板等の薄板体を収納、保管、輸送する容器に用いて好適な容器である。半導体ウエハWのサイズは、150mm以下のものから300mm以上のものまで取り扱われている。
【0009】
薄板体収納容器10は、内部に半導体ウエハWを複数枚収納する有底四角筒状の容器本体20と、容器本体20の開口部26を蓋する蓋体100とを備えている。また、容器本体20の内部には、この容器本体20内の対向する側壁23,24にそれぞれ設けられ、内部に収納された半導体ウエハWを両側から支持する一対の薄板体支持部30が設けられている。
【0010】
容器本体20は、図2に示すように、有底四角筒状に形成されている。構成材料としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、あるいはABS樹脂などの一般に射出成形で用いることが可能な熱可塑性高分子材料を使うことができる。
【0011】
容器本体20は、縦置き状態(開口部26が上向き)で、周囲の壁となる4枚の側壁部21〜24と底板部25及び開口部26とを備えている。各側壁部21,22,23,24には、補強用の補強リブ21a,22a,23a,24aが設けられている。また、底板部25には、半導体ウエハWを収納する枚数に対応して補強溝(底面リブ)25aが形成されている。この容器本体20は、半導体ウエハWの製造ライン等において機械処理装置(外部装置)のキネマチックピン(不図示)に取り付ける際に、横置き(開口部26が横向き)にされる。
【0012】
横置き状態で底部となる側壁部21の外側には、図3に示すように、薄板体収納容器10の位置決め機構40が設けられている。位置決め機構40は、3組の結合溝41によって構成されている。各結合溝41には、規格に合わせて精密な寸法精度で仕上げされている。また、その表面は潤滑性向上のために微細凹凸構造となっており、不規則な凹凸構造(シボ)や、微細なプリズム構造、あるいは微細な半球構造等が用いられている。この位置決め機構40の各結合溝41が載置台側の嵌合突起(不図示)に嵌合することによって、薄板体収納容器10が正確な位置に設置されて、ウエハ搬送用ロボットで半導体ウエハWが出し入れされるようになっている。
【0013】
また、結合溝41のうち底面側の結合溝41には、半導体ウエハWまたは薄板体収納容器10の履歴情報等をインフォパッド43の有り無しで表示するためのインフォパッド部42が一体に成形されている。インフォパッドの形成部も規格で決められている。図4に示すように、インフォパッド43は、インフォパッド部42に脱着可能に形成されている。なお、図5に示すように、インフォパッド部42と切断可能な複数の結合部44で囲んで形成された領域をインフォパッドとしてもよい。このとき、インフォパッド部42で挟持された場所に結合溝41が形成されることになる。
【0014】
図6は、側壁部22を示す側面図である。この側壁部22の中央部には、トップフランジ(不図示)を着脱自在に取り付けるためのフランジ取付板50が設けられ、トップフランジが挿入されて取り付けられるようになっている。トップフランジは、薄板体収納容器10を搬送装置で搬送する際に、この搬送装置の腕部で掴まれる部分である。
【0015】
図7は、側壁部23を示す側面図である。なお、側壁部23と側壁部24は対称であるため、側壁部24の説明は省略する。この側壁部23には、持ち運び用ハンドル(不図示)を着脱自在に取り付けるためのハンドル取付板60が設けられている。持ち運び用ハンドルは、作業者が薄板体収納容器10を手で持つときに掴むハンドルである。またハンドルを取り付けない場合も、把持用リブ61、62を手で掴んで容器を持ち運ぶことが可能である。そのため、リブ61は握力を調整できるようにリブ62との間隔を調整できるよう、テーパ及び段を有している。
【0016】
開口部26の内縁部には、簡易着脱機構103の蓋体係止爪103aが嵌合し蓋体100を容器本体20側に固定する被嵌合部26aが設けられている。
【0017】
図8は、容器本体20の開口部26から底面内側を見た平面図である。薄板体支持部30は、容器本体20に対して同一材料で一体に成形されている。この薄板体支持部30は、並列に一定間隔をおいて多数枚配設されて各半導体ウエハWを1枚ずつ隔てて支持する薄板体支持リブ部31と、各薄板体支持リブ部31に設けられ、半導体ウエハWの積層方向に突出する凸部32と、最奥側に設けられたV字型溝(凹部)33とを備えている。
【0018】
V字型溝33は、V字型の底部によって構成され、容器本体20を縦置きにしたときに半導体ウエハWを、V字型溝33の斜面33aで案内して溝底部33bに落ち込ませて、最奥部において各薄板体支持リブ部31相互の中央で支持するようになっている。これにより、隣り合う半導体ウエハW同士の干渉を防止している。なお、凸部32は、薄板体収納容器10を横置きにしたときに、半導体ウエハWを最小限の面積で接触するように形成されている。
【0019】
また、各薄板体支持リブ部31の表面(半導体ウエハW側の面)は、この円形状の半導体ウエハWの周縁に沿って円弧状に湾曲して形成されている。これにより、薄板体支持リブ部31は、半導体ウエハWの周縁に沿って僅かに重なり合った状態で支持し、半導体ウエハWの表面に対する悪影響を最小限に抑えている。さらにまた、薄板体支持リブ部31の間隔には薄板に近接して略定間隔を空けて形成された壁部34が形成され、加振等による薄板の脱落を防止している。
【0020】
なお、薄板体支持リブ部31は、半導体ウエハWの積層方向に直交する方向において成形型が抜ける形状に形成されている。すなわち、成形型が抜ける方向に凸部32が設けられていないように設定されている。
【0021】
容器本体20及び薄板体支持部30は、高い寸法精度に仕上げられる成形性に優れた合成樹脂、例えば、非帯電性ポリブチレンテレフタレートまたは導電性ポリブチレンテレフタレートによって構成されている。このポリブチレンテレフタレート(PBT)は、材料自体の摩擦係数が小さいため、半導体ウエハWに対する潤滑性を高めることができる。また非帯電性または導電性とするためにPBT中には、界面活性剤等の帯電防止剤や金属フィラーやカーボンファイバ等の導電性フィラーを混練している。
【0022】
蓋体100は、長方形状の板材101と、この板材101のその周縁部全域に立ち上げ壁102と、蓋体100を容器本体20に対して着脱自在に固定する簡易着脱機構103と、半導体ウエハWの周縁部を支持する薄板体支持部104と、立ち上げ壁102に設けられ、蓋体100が容器本体20を蓋した状態で気密を保つためのたシール材105とを備えている。シール材は、弾性高分子材料で形成されており、外気を遮蔽するためのリップ構造を少なくとも1つ以上有している。また、弾性高分子材料としては高分子エラストマ、例えばポリブチレンエラストマ、ポリエチレンエラストマ、ポリエステルエラストマ、ポリオレフィンエラストマなどで形成される。
【0023】
蓋体100は、半導体製造工程内で用いられている機械処理装置によって自動的に開閉することができるラッチ機構を有する構造の他、手動で開閉することができる構造としてもよい。
【0024】
この他、容器本体20には空輸中に外気呼吸を可能として、空輸中の容器破壊や容器内汚染を防止するために、呼吸弁(不図示)が設けられている。呼吸弁の内部には多孔質フッ素樹脂フィルムなどで粒子を濾過除去するメンブレンフィルタや、活性炭や多孔質セラミックスなどで気体中の有機ガスを吸着除去するケミカルフィルタなどが取り付けられている。
【0025】
このように構成された薄板体収納容器10は、次のようにして使用される。すなわち、半導体ウエハWを容器本体20内に収納するときは、容器本体20を横置きにして開口部26からウエハ搬送用ロボットで半導体ウエハWを挿入する。このとき、図11に示すように、半導体ウエハWは薄板体支持部30の各薄板体支持リブ部31の間に挿入されて、この薄板体支持リブ部31に載置される。
【0026】
半導体ウエハWを収納し終わって搬送する場合は、蓋体100を開口部26に取り付ける。このとき、図12に示すように、半導体ウエハWは容器本体20の奥側に押される。このとき、半導体ウエハWの周縁部(図12中右側)は、薄板体支持部104の斜面104aに案内されて溝底部104bに落ち込むとともに、反対側に位置する半導体ウエハWの周縁部(図12中左側)も同様に、V字型溝33の斜面33aに案内されて溝底部33bに落ち込む。これにより、半導体ウエハWは各薄板体支持リブ部31間の中央で支持固定される。これにより、半導体ウエハW同士の干渉が確実に防止される。
【0027】
次いで、簡易着脱機構103の蓋体係止爪103aが容器本体20の被嵌合部26aに嵌合し、蓋体100が容器本体20に固定される。この状態で、薄板体収納容器10が搬送される。なお、必要に応じてトップフランジと持ち運び用ハンドルを着脱する。
【0028】
以上のように、薄板体収納容器10は、容器本体20及び薄板体支持部30を同一材質で一体に形成することによって、部品点数を低減することが可能となる。このため、余分な部品空間を省略することができ、収納容器の小型化を図ることができる上に、製品の製造コストの低減を実現することができる。また、その材料として、ポリブチレンテレフタレートを用いることによって、収納容器の機械的強度、気密性、潤滑性及び成形性等の全てを満足した収納容器とすることができる。
【0029】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、半導体ウエハWを例に説明したが、記憶ディスク、液晶ガラス基板等の他の薄板を用いた場合も、上記実施形態同様の作用、効果を奏することができる。また、構成材料としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)の他、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、あるいはABS樹脂等の一般に射出成形で用いることが可能な熱可塑性高分子材料を用いてもよい。さらに、ポリブチレンテレフタレートとポリカーボネイトの微細混合領域を有する複合材料である非帯電性高分子材料又は導電性材料を用いてもよい。これによりPCとPBTの両方の特性を持つ容器とすることができる。すなわち、耐衝撃性、耐薬品性、透明性、加工性、耐熱性、低摩擦抵抗の特性を付与することが可能となる。
【0030】
また、薄板体収納容器は、半導体ウエハを収納して出荷する出荷容器の他、半導体ウエハWの製造ライン等で薬液処理や洗浄等に用いられるウエハキャリアに用いても同様の作用、効果を奏することができる。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態に係る薄板体収納容器及び半導体ウエハWを示す斜視図。
【図2】同薄板体収納容器を示す断面図。
【図3】同薄板体収納容器を示す側面図。
【図4】同薄板体収納容器に組み込まれたインフォパッド部を示す斜視図。
【図5】同インフォパッド部の変形例を示す正面図。
【図6】同薄板体収納容器を示す側面図。
【図7】同薄板体収納容器を示す側面図。
【図8】同薄板体収納容器の開口部を示す平面図。
【図9】同薄板体収納容器の薄板体支持部の要部を示す斜視図。
【図10】同薄板体収納容器に組み込まれた蓋体を示す斜視図。
【図11】同薄板体収納容器の蓋体が開いた状態における半導体ウエハとウエハ支持部との関係を示す説明図。
【図12】同薄板体収納容器の蓋体が閉じた状態における半導体ウエハとウエハ支持部との関係を示す説明図。
【符号の説明】
【0032】
10…薄板体収納容器、20…容器本体、30…薄板体支持部、40…位置決め機構、100…蓋体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に薄板体を複数枚収納するとともに、上記薄板体を出し入れするための開口部を有する有底四角筒状の容器本体と、
上記開口部を開閉自在に蓋する蓋体と、
上記蓋体で上記開口部を蓋したときに上記容器本体を気密に密閉するシール材と、
上記容器本体の相対向する一対の側面部の内面に形成され、上記複数の薄板体を厚さ方向に離間し、かつ、平行に配列支持する薄板体支持部とを具備し、
上記薄板体支持部は、上記薄板体の面側を載置するとともに上記薄板体の積層方向に突出する凸部が設けられた板状の薄板体支持リブと、上記薄板体支持リブ部相互間に設けられ、上記薄板体の外周部と略定間隔に離間近接して形成された壁部とを備え、
上記容器本体と上記薄板体支持部とは同一の材料で一体に成形されていることを特徴とする薄板体収納容器。
【請求項2】
上記壁部は、上記薄板体の外周端部と近接して円弧上に複数配されていることを特徴とする請求項1に記載の薄板体収納容器。
【請求項3】
上記容器本体の底面には、上記薄板体支持リブと同一ピッチで形成された複数の底面リブが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の薄板体収納容器。
【請求項4】
上記容器本体には、外部装置との結合に供される結合溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の薄板体収納容器。
【請求項5】
上記結合溝における上記外部装置との摺動部には、摩擦係数を低減するための微細な凹凸構造が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の薄板体収納容器。
【請求項6】
上記結合溝の少なくとも1つに、上記薄板体または上記収納容器の履歴情報を着脱可能なインフォパッドの有無で表示するためのインフォパッド部が一体に成形されていることを特徴とする請求項4に記載の薄板体収納容器。
【請求項7】
上記材料は、非帯電性または導電性ポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1に記載の薄板体収納容器。
【請求項8】
上記材料は、ポリエチレンテレフタレートとポリカーボネイトの微細混合領域を有する複合材料である非帯電性高分子材料又は導電性材料であることを特徴とする請求項1に記載の薄板体収納容器。
【請求項9】
上記薄板体支持リブは、上記積層方向に直交する所定方向において成形型が抜ける形状であることを特徴とする請求項1に記載の薄板体収納容器。
【請求項10】
上記壁部は、シボ加工されていることを特徴とする請求項1に記載の薄板体収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−142192(P2007−142192A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334470(P2005−334470)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000140890)ミライアル株式会社 (74)
【Fターム(参考)】