説明

薄板状品載架用カセット

【課題】薄板状品と横桟との接触面積を減らして、横桟に載置した薄板状品への汚れの付着や傷発生のない薄板状品載架用カセットを提供する。
【解決手段】ほぼ直方体型フレーム10の左右両側面部間に、薄板状品載架用横桟A,B,Cを構成する複数本の金属製の線状体20を前後に間隔をもって横向きに張設した薄板状品載架用カセットで、線状体20に、協働して薄板状品載置面Fを構成する玉部30を設けた。薄板状品Wと各玉部30間の接触面積が小さく、薄板状品Wへの汚れの付着および傷の発生が少ないので、薄板状品Wの品質が保証される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ほぼ直方体型フレームの左右両側面部間に横桟を構成する複数本の金属製の線状体を前後方向所定間隔をもって横向きに張設した薄板状品載置用のカセットに係り、特に、液晶画面製造用極薄ガラスや一般の板ガラス、プラスチック板等の薄板状品の製造工程において当該薄板状品の受取や保管等に用いたり、薄板状品の多数枚をまとめて他の製造ラインや他の工場に移動したりするなどの場合に用いる薄板状品載架用カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の薄板状品載架用カセットとしては、下記特許文献1に示すように、ほぼ立方体型フレームの左右両側面部間に、薄板状品載架用横桟を構成する複数本の金属製の線状体を前後方向所定間隔をもって横向きに張設した構造が知られている。また、フレームの左右両側面部(を構成する左右の支柱)間には、線状体を挿通させた補強パイプを介装して、薄板状品の重量負荷によって線状体が下方に湾曲するのを抑制している。
【特許文献1】特開2003−300574号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記した特許文献1では、横桟に載置された薄板状品は、載置面を構成する各補強パイプとそれぞれ線状に接触し、薄板状品の横桟(補強パイプ)との接触面積がある程度の大きさとなるため、薄板状品を横桟に載置したことで薄板状品に汚れが付着したり、こすれて傷がついたり、薄板状品の品質を低下させるおそれがあるという問題があった。
【0004】
本発明は、前記した従来技術の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、薄板状品と横桟との接触面積を減らすことで、横桟に載置しても薄板状品に汚れが付着したり傷ついたりしない薄板状品載架用カセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る薄板状品載架用カセットにおいては、ほぼ立方体型フレームの左右両側面部間に、薄板状品載架用横桟を構成する複数本の金属製の線状体が前後方向所定間隔をもって横向きに張設された薄板状品載架用カセットにおいて、前記線状体に、協働して薄板状品載置面を構成する玉部を設けるように構成した。
【0006】
(作用)横桟(前後方向所定間隔をもって配置された複数本の金属製の線状体)に載置された薄板状品は、線状体に設けられている玉部(薄板状品載置面を構成する玉部)に担持された形態となるが、薄板状品と各玉部間の接触は、ほぼ点接触に近いので、薄板状品の横桟(を構成する線状体)との接触面積は小さく、薄板状品を横桟に載置したことによる薄板状品への汚れの付着および傷の発生が少ない。
【0007】
また、請求項2においては、請求項1に記載の薄板状品載架用カセットにおいて、前記玉部を、樹脂またはゴムで構成し、前記金属製の線状体に一体成形するように構成した。また、玉部の形状としては、球体(第1の実施例)、円盤型環状体(第2の実施例)、算盤玉型環状体(第3の実施例)が考えられる。
【0008】
(作用)薄板状品載置面を構成する玉部は、金属製線状体よりも硬度の低い樹脂またはゴムで構成されているので、それだけ薄板状品が傷つくおそれがない。
【0009】
また、薄板状品載置面を構成する各玉部は、インサート成形により線状体に一体化されているので、玉部が線状体と別体に構成されている場合に比べて、カセットの構成部品点数が少ない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る薄板状品のカセットによれば、薄板状品を横桟に載置したことによる薄板状品への汚れの付着および傷の発生が少ないので、それだけ薄板状品の品質が保証される。
【0011】
請求項2によれば、薄板状品を横桟に載置したことによる薄板状品への傷の発生がよりいっそう少ないので、薄板状品の品質がさらに保証される。
【0012】
また、カセットの構成部品点数が少ないので、カセットの構成が簡潔であるとともに、カセットの組み立て作業も簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0014】
図1〜4、8は、本発明を、液晶画面製造用極薄ガラスの製造工程において当該極薄ガラスの受取や保管等に用いたり、当該極薄ガラスの多数枚をまとめて他の製造ラインや他の工場に移動したりするなどの場合に用いる、極薄ガラス載架用カセットに適用した実施例を示し、図1は、本発明の第1実施例である薄板状品載架用カセットを示し、図1は同カセットの正面図、図2は同カセットの縦断面図(図1に示す線II−IIに沿う断面図)、図3は同カセットの水平断面図(図2に示す線III−IIIに沿う断面図)、図4は線状体の支柱との接続部および玉部位置における拡大断面図、図8は同カセットのフレーム全体の概略構造を示す斜視図である。
【0015】
これらの図において、符号10は、ほぼ直方体型を呈する金属製(例えば、アルミニウム製のカセットフレームで、コーナ部の4本の支柱12a〜12dに4本の上水平梁14a〜14dおよび下水平梁16a〜16dがそれぞれ接続されるとともに、前後方向(図2,3左右方向)2箇所に左右一対のサイド支柱12e,12fおよび上下一対の水平梁14e,16e;14f,16fが接続されて、フレーム10として一体化されている。
【0016】
フレーム10の左側面部は、フレーム前面側から後方に向かって立ち並ぶ4本の支柱12a,12e,12f,12dと上下一対の水平梁14d,16dで構成され、フレーム10の右側面部は、フレーム前面側から後方に向かって立ち並ぶ4本の支柱12b,12e,12f,12cと上下一対の水平梁14b,16bで構成されている。
【0017】
フレーム10の左右側面部(を構成する左右に対向する支柱)間には、それぞれ上下方向および前後方向所定間隔をもって金属製(例えば、直径約6mmのステンレス製)の線状体20が横方向に張設されて、ワークWであるパソコンの液晶画面の外表ガラス(極薄ガラス等薄板状品)を載置する上下方向3段の横桟A,B,Cが設けられている。
【0018】
即ち、左右に対向する支柱12a,12e,12f,12d;12b,12e,12f,12c間には、図3,4に示すように、それぞれ上下方向所定ピッチに3個所の貫通孔18が設けられて、前後方向に隣接する貫通孔18はその上下高さが互いに水平位置となっている。両端部に雄ねじ部22が設けられた線状体20は、雄ねじ部22が貫通孔18を貫通するとともに、貫通孔18からそれぞれ突出する両端雄ねじ部22にナット24,25が螺着されて、対向する支柱に挟まれた領域に張力が作用する形態に左右対向支柱間に固定保持されている。
【0019】
また、線状体20には、ワーク載置面Fa,Fb,Fc(図1,2参照)を協働して構成する玉部である球体30が長手方向所定ピッチで固着されている。球体30は、合成樹脂またはゴムで構成され、インサート成形により線状体20の外周面に固着一体化されている。球体30が固着されている線状体20の外周面には、図4符号21に示すように、例えばローレット加工が施されて、球体30との密着性が高められており、球体30が線状体20に対しずれるおそれは全くない。
【0020】
このように、横桟A,B,Cにおける各ワーク載置面Fa,Fb,Fcは、前後に所定間隔を持って配置された線状体20の多数の玉部である球体30によって構成されているため、各横桟A,B,Cに載置されたワークWは、ワーク載置面Fa,Fb,Fcを構成する玉部30に担持された形態となるが、ワークWと各玉部30間の接触は、ほぼ点接触に近い。このため、ワークWの横桟A,B,Cとの接触面積は小さく、ワークWを横桟A,B,Cに載置したことによるワークWへの汚れの付着および傷の発生が少ないので、それだけワークWについて一定の品質を保証できる。
【0021】
図5は、本発明の第2実施例である薄板状品載架用カセットの要部である線状体の支柱との接続部および玉部位置における拡大断面図である。
【0022】
前記した第1の実施例では、線状体20に固着された玉部が球体30で構成されていたが、この第2の実施例では、線状体20に固着された玉部が合成樹脂製またはゴム製の横断面円形外周面をもつ円盤型環状体32で構成されている。
【0023】
その他は前記した第1の実施例と同一であるので、同一の符号を付すことで、その重複した説明は省略する。
【0024】
図6は本発明の第3実施例である薄板状品載架用カセットの要部である線状体の支柱との接続部および玉部位置における拡大断面図である。
【0025】
この第3の実施例では、線状体20に固着された玉部が合成樹脂製またはゴム製の算盤玉型環状体34で構成されている。
【0026】
その他は前記した第1の実施例と同一であるので、同一の符号を付すことで、その重複した説明は省略する。
【0027】
図7は本発明の第4実施例である薄板状品載架用カセットの要部である線状体の玉部位置における拡大断面図である。
【0028】
前記した第1〜第3の実施例では、いずれも線状体20に樹脂製またはゴム製の玉部30,32,34がインサート成形によって固着一体化されていたが、この第4の実施例では、線状体20の長手方向所定位置に樹脂製またはゴム製の玉部(例えば球体30A)が嵌合されるとともに、隣接する玉部30A,30A間および支柱と玉部30A間に玉部の外径よりもその外径の小さい円筒形状のカラー70が介装されて、線状体20に玉部30Aが位置決め固定一体化されている。
【0029】
即ち、線状体20挿通用の孔31を形成した樹脂製またはゴム製の球体30Aを別途用意しておき、線状体20に玉部30Aとカラー70を順次配した線状体ユニットを所定個数つくり、例えば、この線状体ユニットを左右に対向する支柱間に全て配設した上で、フレーム10として組み立てることになる。
【0030】
また、前記した第1〜4の実施例では、線状体20に対し玉部が固定されていたが、第4の実施例のように、各玉部30Aの線状体長手方向の位置決めさえ確保できるのであれば、ワークWと玉部30Aとの前後方向の相対摺動による擦れを無くすために、線状体20に対し玉部30Aが回転可能に組み付けられた構造にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施例である薄板状品載架用カセットの正面図である。
【図2】同カセットの縦断面図(図1に示す線II−IIに沿う断面図)である。
【図3】同カセットの水平断面図(図2に示す線III−IIIに沿う断面図)である。
【図4】線状体の支柱との接続部および玉部位置における拡大断面図である。
【図5】本発明の第2実施例である薄板状品載架用カセットの要部である線状体の支柱との接続部および玉部位置における拡大断面図である。
【図6】本発明の第3実施例である薄板状品載架用カセットの要部である線状体の支柱との接続部および玉部位置における拡大断面図である。
【図7】本発明の第4実施例である薄板状品載架用カセットの要部である線状体の玉部位置における拡大断面図である。
【図8】本発明の第1の実施例である薄板状品載架用カセットのフレーム全体の概略構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
10 フレーム
A,B,C 横桟
FA.Fb,Fc ワーク載置面
20 金属製線状体
W ワークである薄板状品
30,30A 玉部である球体
32 玉部である円盤型環状体
34 玉部である算盤玉型環状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ直方体型フレームの左右両側面部間に、薄板状品載架用横桟を構成する複数本の金属製の線状体が前後方向所定間隔をもって横向きに張設された薄板状品載架用カセットにおいて、前記線状体には、協働して薄板状品載置面を構成する玉部が設けられたことを特徴とする薄板状品載架用カセット。
【請求項2】
前記玉部は、樹脂またはゴムで構成され、前記金属製の線状体に一体成形されたことを特徴とする請求項1に記載の薄板状品のカセット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−126529(P2009−126529A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300975(P2007−300975)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(597144923)株式会社協進設計 (2)
【Fターム(参考)】