説明

薄板状材料搬送装置

【課題】ガラス基板等の薄板状材料をエアテーブルによって搬送する際に、一部のエアテーブルのエア供給能力が低下した場合でも、薄板状材料の先端が下がって他のエアテーブルに衝突しないようにした薄板状材料搬送装置を提供する。
【解決手段】薄板状材料搬送装置10は、第1〜第3のエアテーブルユニット列14、16、18を、そのパスラインP1、P2、P3がT字形状に交差するように配置してなり、各エアテーブルユニット列は、複数のL字形状エアテーブルユニット22を、同一方向に並べ、且つ、尾端に3角形状エアテーブルユニット20を配置して構成され、各L字形状エアテーブルユニット22は、平面視でL字形状であって、L字の一辺及び他辺が、直線状パスラインP1〜P3に対して各々45°の角度で、且つL字角部を同一方向に向けて並べて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶ディスプレイ(LCD)パネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)に用いる大型で薄いガラス基板のような薄板状材料を搬送する際に、搬送路を直角に変更できるようにした薄板状材料搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイのガラス基板は僅かな疵や埃でも品質に大きく影響するため、その搬送の際には、表面に疵が生じたり異物が付着しないようにガラス基板を平面に近い形状に保持しつつ所定の搬送面に沿って滑らかに搬送することが要求される。
【0003】
このような搬送手段の1つとして、ローラコンベアがあるが、搬送路が直角に曲げる場合、2つの直進ローラコンベアの間に直角方向に進むコンベアを配置し、ガラス基板を直角に方向転換する際には、コンベアを上昇させ、ガラス基板のパスラインを約20〜50mm上げて搬送していた。
【0004】
又、直交して配置された2つの直進ローラコンベアの交点位置にガラス基板を持ち上げて旋回させる機構を設けたり、直進ローラコンベア全体を旋回させる方法があるが、どちらも、近年のガラス基板の大型化に伴い、構造も大きくなり、運転のための動力や製造コストも大幅に増大し、又タクトタイムの短縮も困難であるという問題点があった。
【0005】
又、ローラコンベアに替えて、エアテーブルを用いてガラス基板を浮上させつつエアの圧力で駆動して非接触で搬送する搬送装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
上記のような搬送装置におけるエアテーブルは、平面視で長方形であって、これを、例えば直線状のパスラインの幅方向両側に1列ずつ、順次パスラインに沿って僅かな隙間を持って面状に配置している。
【0007】
このようにすると、配列された多数の長方形状のエアテーブルのうち、例えば1基のエアテーブルがブロワーの出力低下等によってガラス基板の浮上力が低下したとき、搬送されてきたガラス基板の先端がここで落ち込んで、次のエアテーブルの角部に衝突して破損したりすることがある。
【0008】
又、上記のようなエアテーブルの場合、ガラス基板を浮上させた状態でその搬送方向を変更したり、ガラス基板自身を旋回させることは、圧力エア上でのガラス基板の挙動を制御することが困難であり、浮上しているガラス基板の端縁をガイドローラによってガイドすることも考えられるが、ガラス基板は、例えば第8世代においては、W2200mm×L2500mmという大きさに比べて厚さが0.5〜0.7mm程度と非常に薄く、慣性でガラス基板端縁がガイドローラに衝突した場合に非常に割れ易いという問題点がある。したがって従来は、ガラス基板の高速搬送あるいは高速方向変換や高速旋回ができなかった。
【0009】
【特許文献1】特開平10−139160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、エアテーブルユニットを用いて薄板状材料を非接触で支持且つ搬送する際に、1個のエアテーブルユニットのエア供給力が低下しても、ガラス基板の先端が隣接するエアテーブルユニットに衝突したりすることなく搬送し、又、ガイドローラ等を用いることなく、薄板状材料の搬送方向の、高速転換あるいは高速旋回を可能とした薄板状材料搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下の各実施例により、上記課題を解決することができる。
【0012】
(1)薄板状材料の搬送のための直線状パスラインに沿って、複数台連続して配置されたL字形状エアテーブルユニット、及び、このL字形状エアテーブルユニットの溝を埋める大きさの3角形状エアテーブルユニットを有してなり、前記複数のL字形状エアテーブルユニットは、各々が、平坦な上面に複数の給気孔を備え、且つ、平面視でL字形状であって、L字の一辺及び他辺が、前記直線状パスラインに対して各々45°の角度で、且つL字角部を同一方向に向けて並べて配置されてエアテーブルユニット列を構成し、前記3角形状エアテーブルユニットは、平坦な上面に複数の給気孔を備え、且つ、前記エアテーブルユニット列における尾端位置のL字形状エアテーブルユニットの略3角形の空白部に入り込むように配置されたことを特徴とする薄板状材料搬送装置。
【0013】
(2)(1)記載のエアテーブルユニット列及び3角形状エアテーブルユニットの組合せを、2基、各々の直線状パスラインが直交するように配置してなり、前記2列のエアテーブルユニット列は、各々の、エアテーブルユニット列の先端のL字角部が前記2本の直線状パスラインの交点近傍位置となるように配置され、前記交点を中心として、半径が前記L字の一辺の長さの円形領域内における、前記2列のエアテーブルユニット列の外側部分を埋めるようにして、前記と同様のL字形状エアテーブルユニット及び3角形状エアテーブルユニットを配置したことを特徴とする薄板状材料搬送装置。
【0014】
(3)(1)記載のエアテーブルユニット列及び3角形状エアテーブルユニットの組合せを、3基、3本の直線状パスラインがT字形状に交差するように配置してなり、前記3列のエアテーブルユニット列は、各々の、エアテーブルユニット列の先端のL字角部が前記3本の直線状パスラインの交点近傍位置となるように配置され、前記交点を中心として、半径が前記L字の一辺の長さの円形領域内における、前記3列のエアテーブルユニット列の外側部分を埋めるようにして、前記と同様のL字形状エアテーブルユニット及び3角形状エアテーブルユニットを配置したことを特徴とする薄板状材料搬送装置。
【0015】
(4)(1)記載のエアテーブルユニット列及び3角形状エアテーブルユニットの組合せを、4基、4本の各々のパスラインが十字状に交差するように配置してなり、前記4基のエアテーブルユニット列は、各々の、エアテーブルユニット列の先端のL字角部が前記4本の直線状パスラインの交点近傍位置となるように配置されたことを特徴とする薄板状材料搬送装置。
【0016】
(5)前記複数のエアテーブルユニット列の、前記円形領域内の、前記交点から等距離の位置に、該交点を中心とする等角度間隔に配置された複数の薄板状材料搬送ユニットを有し、該薄板状材料搬送ユニットは、上端に開口を備えた筒状体からなる吸引用パイプと、この吸引用パイプの内側に、水平面内の回転軸廻りに回転自在に支持され、且つ、上端が前記吸引用パイプの上端の開口よりも僅かに突出可能とされた送りローラと、前記吸引パイプに負圧を印加する負圧源と、前記送りローラを、その回転軸が、前記水平面内で、該送りローラの頂点を通る鉛直軸線廻りに少なくとも90°の範囲で角度変位自在となるように支持する送り方向転換装置と、を有してなることを特徴とする(2)乃至(4)のいずれかに記載の薄板状材料搬送装置。
【0017】
(6)前記送りローラを、その上端が、前記薄板状材料のパスラインに到達する搬送位置及び前記パスラインよりも下がった待機位置との間で変位可能に支持する上下動装置と、前記負圧源から前記吸引用パイプに印加される負圧をオン・オフする負圧制御装置と、を設けたことを特徴とする(5)に記載の薄板状材料搬送装置。
【0018】
(7)前記負圧源は排気ブロワーとされ、この排気ブロワーの吸気口は、前記吸引用パイプの下端開口に接続され、前記吸引用パイプ内には、前記送りローラを駆動するためのモータを含む駆動装置、前記送りローラを、その上端が、前記薄板状材料のパスラインに到達する搬送位置及び前記パスラインよりも下がった待機位置との間で変位可能に支持する、及び、前記送りローラを、その回転軸が、前記水平面内で、該送りローラの頂点を通る鉛直軸線廻りに少なくとも90°の範囲で角度変位自在となるように支持する送り方向転換装置のうち、少なくともモータを配置したことを特徴とする(5)に記載の薄板状材料搬送装置。
【0019】
(8)前記L字形状エアテーブルユニットは、平面視で、長さの異なる2台の矩形の直線状エアテーブルを直角に接続して構成されたことを特徴とする(1)乃至(7)のいずれかに記載の薄板状材料搬送装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、搬送されるガラス基板の先端は、常時、複数のエアテーブルユニットによって浮上し搬送されるので、1つのエアテーブルユニットのエア供給力が低下しても先端が垂れ下がって、他のエアテーブルユニットに衝突するようなことはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明の好ましい実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1に示されるように、この実施形態に係る薄板状材料搬送装置10は、図1において、例えば大型のLCD用のガラス基板(薄板状材料)12を非接触で搬送する第1〜第3のエアテーブルユニット列14、16、18と、各エアテーブルユニット列14〜18の尾端に配置された三角形状エアテーブルユニット20とから構成されている。
【0023】
前記3列のエアテーブルユニット列14、16、18は、各々の直線状パスラインP1〜P3が、図においてT字形状に交差するように配置されている。
【0024】
各エアテーブルユニット列は、複数のL字形状エアテーブルユニット22を各直線状パスラインP1〜P3に沿って各々複数配置して構成されている。
【0025】
又、第1〜第3のエアテーブルユニット列14、16、18は、各々のエアテーブルユニット列の先端のL字角部が3本の直線状パスラインP1〜P3の交点Cの近傍位置となるように配置されている。ここでは交点C上に各エアテーブルユニット列の先端のL字角部が位置するようにされている。
【0026】
前記L字形状エアテーブルユニット22は、平面視で、長さの異なる2台の矩形の直線状エアテーブルユニット22A、22Bを直角に接続してL字の2辺が等しい長さとなるように構成されている。
【0027】
又、第1〜第3のエアテーブルユニット列14、16、18は、各々複数のL字形状エアテーブルユニット22を、L字の一辺及び他辺が、直線状パスラインP1〜P3に対して各々45°の角度をなし、且つL字角部を交点Cに向けて並べて配置されている。
【0028】
ガラス基板12は、交点Cを中心として回転されるか、又は交点Cから搬送方向を直角に変更されるが、回転される場合は、図1において二点鎖線で示される円形領域24内で回転されるようになっている。なお、円形領域24は、ガラス基板12の、交点Cを中心として回転されるときの外形の回転軌跡とほぼ同一である。
【0029】
この円形領域24内には、第1〜第3のエアテーブルユニット列14、16、18のいずれによっても埋められない空白となる直角三角形状又は中心角が90°の扇形の外側部分26が生じる。
【0030】
これに対しては、図1に示されるように、L字形状テーブルユニット22と同一形状のL字形状テーブルユニット26Aと、これよりもL字の各辺の長さが短い小型L字形状エアテーブルユニット26Bと、略三角形状の小型三角形状エアテーブルユニット26Cとが、外側部分26を埋めるようにして配置されている。
【0031】
図1において符号28は第1〜第3のエアテーブルユニット列14、16、18内で、直線的に搬送されるガラス基板の幅方向両端を接触支持して搬送させるための直進ローラユニット、30は円形領域24内に配置され、搬送されてきたガラス基板12を交点Cにおいてパスラインを直交方向に変更したり、あるいは交点Cを中心としてガラス基板12を回転させるための方向転換ローラユニットをそれぞれ示す。又、符号29は、ガラス基板12の搬送中に、その幅方向外側への移動を抑制するため、パスラインP1、P2、P3の幅方向両側に沿って配置されたアライメントローラ、及び、円形領域24の外側に配置されたアライメントローラを示す。
【0032】
L字形状エアテーブルユニット22は、上記のように直線状エアテーブル22A、22Bからなり、これらは、図2、図3に示されるように、ガラス基板12の下面に対して空気(気体)を供給してガラス基板12を非接触で支持するためのエアテーブル23と、エアテーブル23に正圧の空気を供給するための、例えばブロワーからなる正圧発生装置25と、を備えて構成されている。
【0033】
エアテーブル23は、上面部27が略平坦なほぼ直方体の箱状体であって、ガラス基板12の下面に対して空気を供給するための複数の給気孔27Aが上面部27に形成されている。
【0034】
次に、方向転換ユニット30の詳細な構成について説明する。
【0035】
円形領域24内における4基の方向転換ローラユニット30は、交点Cを中心点として、この交点Cから等距離、即ち、同一円周上にあるように配置されている。又、図4、図5に示されるように、方向転換ローラユニット30は、上端に開口33Aを備えた鉛直方向の吸引用パイプ32と、この吸引用パイプ32の内側に、水平面内の回転軸34Aにより回転自在に支持され、且つ、上端が吸引用パイプ32の上端の開口33Aよりも僅かに突出可能とされた送りローラ34と、吸引用パイプ32に負圧を印加する負圧源であるブロワー36とを備えて構成されている。
【0036】
吸引用パイプ32は、送りローラ34近傍を囲む小径部32Aと、この小径部32Aの下端に接続され、ここからブロワー36の上端面まで到達する大径部32Bとから構成されている。更に、吸引用パイプ32の大径部32Bの上部には、4本のブラケット32Cが一体的に形成されていて、このブラケット32Cの先端において、ガラス基板12のパスラインP1、P2、P3を含む搬送面よりも下方位置で固定されるようになっている(図示省略)。
【0037】
方向転換ローラユニット30は、送りローラ上下動装置38を備えている。この送りローラ上下動装置38は、送りローラ34を、その上端が前記パスラインP1、P2、P3に到達する搬送位置(図5、図6参照)及びこれよりも下がって、パスラインP1、P2、P3上のガラス基板12と非接触の待機位置(図4、図7参照)との間で変位可能に支持している。
【0038】
送りローラ上下動装置38は、吸引用パイプ32の大径部32B内に配置され、ブロワー36の上面に固定された基板40上に設けられたソレノイド装置から構成されている。
【0039】
この、ソレノイド装置である送りローラ上下動装置38の可動部38Aは基板40に対して一定範囲で上下動可能とされていて、この可動部38Aの上端には、支持板39が支持され、この支持板39の下側にはローラ上下動装置38に隣接して送りローラ姿勢制御装置42が支持されている。
【0040】
送りローラ姿勢制御装置42は、送りローラ34の頂点を通る鉛直方向の中心軸線32CL上の姿勢制御軸43を有し、例えばカム機構(図示省略)からなる装置を内蔵して、図4、図5において鉛直方向の姿勢制御軸43を、鉛直状態のまま、少なくとも90°の範囲で、中心軸線32CL廻りに揺動できるようにされている。
【0041】
姿勢制御軸43は、前記支持板39の中心を貫通して上方に突出し、その上端にローラ支持体44及び駆動モータ46を支持している。
【0042】
ローラ支持体44は、駆動モータ46よりも高い位置に設けられた円盤状の支持台45を備え、この支持台45上には、送りローラ34の回転軸34Aが水平に支持されている。
【0043】
送りローラ34は、マグネットローラであって、この送りローラ34の前面位置において支持台45に回転自在に支持された駆動マグネットローラ35によって、非接触状態で駆動されるようになっている。
【0044】
マグネットローラ35の回転軸35Aは、駆動モータ46の駆動軸46Aと直結されて、該駆動モータ46により回転駆動されるようになっている。
【0045】
この方向転換ローラユニット30は、送りローラ上下動装置38によって、送りローラ34が、吸引用パイプ32の上端面33Bから僅かに突出した搬送位置(図5、図6参照)と、図4、図7に示されるように、上端が上端面33Bよりも下方に引き込んだ待機位置との間で上下動され得るようになっている。
【0046】
又、送りローラ姿勢制御装置42によって、ガラス基板12を図7に示されるような、パスラインP1、P2と平行な面内で回転する姿勢、及び、図8に示されるような、パスラインP3と平行な面内で回転する姿勢となるように、中心軸線32CL周りに少なくとも90°の角度範囲で位置調整可能とされている。
【0047】
第1〜第3のエアテーブルユニット列14、16、18の幅方向両側に用いられている直進ローラユニット28は、図9に示されるように、それぞれのパスラインP1、P2、P3と平行な鉛直面内で回転可能な直進送りローラ28Aと、上端面が直進送りローラ28Aの上端よりも僅かに低く配置された鉛直方向の吸引用パイプ28Bと、この吸引用パイプ28Bの下端に給気孔が連結して配置されたブロワー28Cと、マグネットローラである直進送りローラ28Aを非接触で駆動するためのマグネット駆動ローラ28Dと、マグネット駆動ローラ28Dを駆動するためのモータ28Eとを備えて構成されている。
【0048】
次に、上記薄板状材料搬送装置10によってガラス基板12を、第1のエアテーブルユニット列14から方向転換ローラユニット30を経て、ここで旋回させることなく、第3のエアテーブルユニット列18に搬送する過程について説明する。
【0049】
まず、方向転換ローラユニット30を、予め、図1、図6に示されるように送りローラ34の回転面が第1のエアテーブルユニット列14のパスラインP1と平行となるようにしておく。第1のエアテーブルユニット列14上のガラス基板12を、エアテーブル23から噴出される正圧の空気によって浮上させ、且つ、このとき直進ローラユニット28におけるブロワー28Cを駆動させると、吸引用パイプ28Bからガラス基板12の下面に負圧が作用して、ガラス基板12を搬送位置にある直進送りローラ28Aの上端に接触するように吸引する。
【0050】
従って、直進送りローラ28Aをマグネット駆動ローラ28Dによって駆動すれば、ガラス基板12はエアテーブル23上に浮上した状態で図1において左側から右方向に、確実に、かつ、高速で搬送できる。
【0051】
このとき、第1のエアテーブルユニット列14を構成している(尾端部分を除く)L字形状エアテーブルユニットがそのL字の外側角部を先端にしてL字の2辺がパスラインP1と45°をなすように連続的に配置されているので、矩形のガラス基板12の先端は、常時複数のL字形状エアテーブルユニット22上を搬送されることになり、例えば、連続して配置されている複数のL字形状エアテーブルユニット22のうちの1つに出力低下を生じたとしても、この部分において、搬送されるガラス基板の先端が落ち込んで次のエアテーブルユニットに衝突したりすることがない。
【0052】
又、ガラス基板12の先端から尾端までの間の部分においても、エアテーブルから供給
されるエアの吹出し圧力が均一化されるので、ガラス基板12を安定して直進搬送させることができる。
【0053】
このように、パスラインP1に沿ってガラス基板12を安定して搬送し、ガラス基板12は、円形領域24に到達する。
【0054】
このとき、方向転換ローラユニット30における吸引用パイプ32にブロワー36から負圧を印加すると、駆動マグネットローラ35によって回転される送りローラ34に向けてガラス基板12が吸引されて、その接触圧によって円形領域24内でも確実に搬送される。
【0055】
なお、方向転換ローラユニット30では、予め送りローラ上下動装置38によって、送りローラ34を、その上端が吸引用パイプ32の上端面33Bから僅かに突出した搬送位置となるようにセットしておく。
【0056】
ガラス基板12が円形領域24内に完全に入ったとき、送りローラ34による搬送を停止し、次に、負圧印加を停止するとともに、送りローラ上下動装置38によって、送りローラ34を待機位置まで下降させる。
【0057】
この待機位置の状態で、方向転換ローラユニット30において、送りローラ姿勢制御装置42を作動させて、姿勢制御軸43を介して、送りローラ34の回転軸34Aを中心軸線32CL周りに90°回転させて、図10に示されるように、送りローラ34の回転面がパスラインP3と平行となるようにする。
【0058】
なお、このとき又は前後に、アライメントローラ19によって、ガラス基板12の中心と第1及び第3のエアテーブルユニット列14、18の幅方向中心(パスラインP1、P3)及び交点Cとを整合させる。
【0059】
次に、送りローラ上下動装置38によって送りローラ34を搬送位置にまで上昇させ、同時に、ブロワー36を起動して、ガラス基板12に負圧を印加して、該ガラス基板12を送りローラ34の上端に接触させる。この状態で、送りローラ34を、ガラス基板12が第3のエアテーブルユニット列18方向に移動するように駆動する。
【0060】
第3のエアテーブルユニット列18は、予め、直進送りローラ28Aを搬送位置として、且つ、送り方向に駆動すると共に、ブロワー28Cによって吸引用パイプ28Bに負圧を印加しておく。
【0061】
送りローラ34の駆動によって、ガラス基板12は、円形領域24内から第3のエアテーブルユニット列18上に移動し、更に、この第3のエアテーブルユニット列18によって、図1、図10において上方に、パスラインP3に沿って移動されて搬送を終了する。
【0062】
上記ガラス基板12の搬送過程は、ガラス基板12を旋回させることなく搬送方向を90°変換するものであるが、次に、ガラス基板12を方向転換エアコンベア16上において90°旋回させて搬送する過程について説明する。
【0063】
このガラス基板搬送過程は、図1に示される状態からガラス基板12の中心が交点Cの位置に搬送される状態までは前記と同一であるので、説明を省略する。
【0064】
ガラス基板12を方向転換エアコンベア16上で旋回させる場合は、ガラス基板12が、ガラス基板12の中心が交点Cの位置に搬送された状態から、図11に示されるように、方向転換エアコンベア16上の、パスラインP1、P2上の送りローラ34のみを送りローラ姿勢制御装置42によってその回転面を90°旋回させる。前記90°旋回される送りローラ34を待機位置とし、且つ、負圧の印加を停止することは前記と同様である。
【0065】
90°旋回後に、負圧の印加を開始し、且つ、送りローラ34を搬送位置として、この状態で、円形領域24内の4基の送りローラ34を、図11に矢印で示されるようにガラス基板12が反時計方向に回転されるように方向を揃えて駆動させる。すると、ガラス基板12は、交点Cを中心として回転され、90°反時計方向に回転されたときガラス基板12の旋回を停止させる。
【0066】
次に、円形領域24内のパスラインP3上の一対の送りローラ34を、各々の送りローラ姿勢制御装置42によって、回転面がパスラインP3と平行な鉛直面となるように回転させる。この際、送りローラ34を待機位置とし、且つ、負圧の印加を停止することは前記と同様である。
【0067】
90°旋回後に、負圧の印加を開始し、且つ、送りローラ34を搬送位置として、この状態で送りローラ34を回転させると、ガラス基板12は円形領域24内から第3のエアテーブルユニット列18上に移載され、そのまま搬送される。
【0068】
なお、図12に示されるように、円形領域24内の交点Cの位置に、転換中心ピン48を鉛直軸周りに回転自在に設け、且つ、この転換中心ピン48の上端に、ガラス基板12を載置可能な載置皿48Aを設けても良い。
【0069】
この場合、載置皿48Aは、複数の方向転換ローラユニット30における吸引用パイプ32に負圧が印加されて、ガラス基板12が吸引され、送りローラ34にその下面が接触した状態のとき、載置皿48Aがガラス基板12の下面に接触し、且つ、負圧が解放されたとき、ガラス基板12の下面と非接触となる高さに設定されている。
【0070】
このようにすれば、方向転換ローラユニット30によって、ガラス基板12は、交点Cを中心として旋回することになり、旋回後のアライメントが不要となる。
【0071】
又、上記のような転換中心ピン48を用いる場合は、方向転換ローラユニット30は、4基でなくとも、3基又は2基、更には1基であっても良い。
【0072】
上記実施形態において、方向転換ローラユニット30は、その送りローラ34が、吸引用パイプ32の上端面32Bに対して上下動するように構成されているが、本発明はこれに限定されるものでなく、送りローラ34を、吸引用パイプ32と共に上下動させるようにしても良い。
【0073】
同様に、送りローラ34の回転面を送りローラ姿勢制御装置42によって、中心軸線32CL周りに回転させるようにしているが、本発明はこれに限定されるものでなく、要すれば、送りローラ34を、その送り方向が90°転換されるように回転軸34Aを水平面内で回転できるものであれば良く、従って、送りローラ34及びその回転軸34Aを、吸引用パイプ32と共に回転するようにしても良い。
【0074】
また、送りローラ姿勢制御装置42における送りローラ上下動装置、送りローラ姿勢制御装置の構成は、実施形態の例に限定されず、他の構成であってもよい。例えばカム機構、ロータリーソレノイド、空気圧アクチェータ等を用いてもよい。
【0075】
更に、上記実施形態の例において、L字形状エアテーブルユニット22は、平面視で矩形のエアテーブル22Aと、これよりもやや短い矩形のエアテーブル22Bとを直角に、且つ、L字形状となるように連結したものであるが、本発明はこれに限定されるものでなく、L字形状の連続した1つのエアテーブルから構成しても良い。又、3以上の矩形あるいは正方形等のエアテーブルを接続して構成しても良い。
【0076】
更に、第1〜第3のエアテーブルユニット列14、16、18は、その先端のL字形状エアテーブルユニット22のL字角部が交点Cにおいて当接するように配置されているが、これは、各先端の間に隙間を設けて、即ち交点Cから若干離間した位置に、各エアテーブルユニット列の先端が位置するようにしても良い。特に、上記図12に示される転換中心ピン48を交点Cの位置に設ける場合は、各エアテーブルユニット列の先端は、相互に離間して配置する必要がある。
【0077】
又、前記円形領域24内において、各エアテーブルユニット列の先端のL字形状エアテーブルユニット22は、各々2基ずつ密着して配置されているが、これは、円形領域24内においてガラス基板12を方向転換あるいは回転させる際に、ガラス基板12を均一に浮上させることができるものであれば、密着させなくてもよい。
【0078】
更に又、方向転換ユニット30は、円形領域24内において、一対の隣接するL字形状エアテーブルユニット22間の隙間に配置されているが、これは、例えば、L字形状エアテーブルユニット22のL字角部を切り欠いてその位置に配置するようにしても良い。
【0079】
上記実施形態に係る薄板状材料搬送装置は、第1〜第3のエアテーブルユニット列14、16、18を、そのパスライン1P1、P2、P3がT字形状に交差するように配置したものであるが、本発明はこれに限定されるものでなく、図13に示される第2実施形態のようにL字形状にパスラインP1、P3を交差させ、又、図14に示される第3実施形態のように、4本のパスラインP1〜P4を十字形状に交差させ、更に又、図15に示さ
れる第4実施形態のように、1本の直線状のパスラインP5のみのようにしても良い。
【0080】
詳細には、図13の第2実施形態に係る薄板状材料搬送装置50は、第1実施形態における第1のエアテーブルユニット列14と第3のエアテーブルユニット列18とをこれらの直線状パスラインP1、P3が直交するように配置したものである。他の構成は、図1に示される第1実施形態と同一であるので、図1と同一部分には同一符号を付することによって説明を省略するものとする(第2〜第4実施形態においても同様とする)。
【0081】
この薄板状材料搬送装置50は、円形領域24内に、第1及び第3のエアテーブルユニット列14、18によって埋められない半円形の外側部分52が生じるので、一対のL字形状エアテーブルユニット52Aと、一対の3角形状エアテーブルユニット52Bとを配置して、外側部分52においても、ガラス基板12を浮上できるようにしている。
【0082】
なお、図13において、前記直進ローラユニット28及び方向転換ローラユニット30の図示は省略している(図13、図14においても同様に省略)。
【0083】
図14に示される本発明の第3実施形態に係る薄板状材料搬送装置60は、図1の薄板状材料搬送装置10に加えて、第4のエアテーブルユニット列62を加えて、4列のエアテーブルユニット列14、16、18、62の直線状パスラインP1〜P4が十字形状に交差するように配置したものである。
【0084】
又、図15に示される、第4実施形態に係る薄板状材料搬送装置70は、1本の直線状パスラインP5上に、1列にL字形状エアテーブルユニット22を配置して、エアテーブルユニット列72を構成したものである。
【0085】
ここで、エアテーブルユニット列72は、複数のL字形状エアテーブルユニット22を、前記第1〜第4のエアテーブルユニット列と同様に直線状パスラインP5に沿って配置したものであり、その尾端側には、3角形状エアテーブルユニット20が配置され、更に、先端側には、2基の3角形状エアテーブルユニット20が配置されて、先端がガラス基板12の先端と平行になるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施形態に係る薄板状材料搬送装置を示す略示平面図
【図2】同薄板状材料搬送装置におけるL字形状エアテーブルユニットを示す、図1のII−II線に沿う拡大断面図
【図3】同L字形状エアテーブルユニットを構成するエアテーブル及び正圧発生装置を拡大して示す断面図
【図4】同薄板状材料搬送装置の方向転換エアコンベアに用いる方向転換ローラユニットを示す一部断面とした斜視図
【図5】同方向転換ローラユニットを、吸引用パイプを取り除いた状態で示す斜視図
【図6】同方向転換ローラユニットにおいて送りローラがガラス基板と接触する搬送位置の状態を模式的に示す断面図
【図7】同送りローラの待機位置の状態を示す図6と同様の断面図
【図8】同方向転換ローラユニットの送りローラを90°姿勢を変えた状態を模式的に示す図6と同様の断面図
【図9】同実施形態における直進エアコンベアに用いられる直進ローラユニットを模式的に示す断面図
【図10】同薄板状材料搬送装置によりガラス基板の搬送方向を90°転換する過程を模式的に示す平面図
【図11】同薄板状材料搬送装置によりガラス基板を途中で90°旋回して搬送する過程を模式的に示す平面図
【図12】同薄板状材料搬送装置における方向転換手段の他の実施形態を示す斜視図
【図13】本発明の第2実施形態に係る薄板状材料搬送装置を示す図1と同様の略示平面図
【図14】同第3実施形態の薄板状材料搬送装置を示す略示平面図
【図15】同第4実施形態に係る薄板状材料搬送装置を示す略示平面図
【符号の説明】
【0087】
10、50、60、70…薄板状材料搬送装置
12…ガラス基板(薄板状材料)
14…第1のエアテーブルユニット列
16…第2のエアテーブルユニット列
18…第3のエアテーブルユニット列
20、52B…3角形状エアテーブルユニット
22、52A…L字形状エアテーブルユニット
22A、22B…直線状エアテーブル
24…円形領域
26、52…外側部分
26B…小型L字形状エアテーブルユニット
26C…小型三角形状エアテーブルユニット
28…直進ローラユニット
29…アライメントローラ
30…方向転換ローラユニット
32…エアテーブル
33…上面部
33A…給気孔
34…正圧発生装置
C…交点
P1、P2、P3、P4、P5…直線状パスライン
34A…回転軸
35…駆動マグネットローラ
36…ブロワー
38…送りローラ上下動装置
42…送りローラ姿勢制御装置
46…駆動モータ
48…転換中心ピン
48A…載置皿
62…第4のエアテーブルユニット列
72…エアテーブルユニット列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状材料の搬送のための直線状パスラインに沿って、複数台連続して配置されたL字形状エアテーブルユニット、及び、このL字形状エアテーブルユニットの溝を埋める大きさの3角形状エアテーブルユニットを有してなり、
前記複数のL字形状エアテーブルユニットは、各々が、平坦な上面に複数の給気孔を備え、且つ、平面視でL字形状であって、L字の一辺及び他辺が、前記直線状パスラインに対して各々45°の角度で、且つL字角部を同一方向に向けて並べて配置されてエアテーブルユニット列を構成し、
前記3角形状エアテーブルユニットは、平坦な上面に複数の給気孔を備え、且つ、前記エアテーブルユニット列における尾端位置のL字形状エアテーブルユニットの略3角形の空白部に入り込むように配置されたことを特徴とする薄板状材料搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載のエアテーブルユニット列及び3角形状エアテーブルユニットの組合せを、2基、各々の直線状パスラインが直交するように配置してなり、
前記2列のエアテーブルユニット列は、各々の、エアテーブルユニット列の先端のL字角部が前記2本の直線状パスラインの交点近傍位置となるように配置され、
前記交点を中心として、半径が前記L字の一辺の長さの円形領域内における、前記2列のエアテーブルユニット列の外側部分を埋めるようにして、前記と同様のL字形状エアテーブルユニット及び3角形状エアテーブルユニットを配置したことを特徴とする薄板状材料搬送装置。
【請求項3】
請求項1記載のエアテーブルユニット列及び3角形状エアテーブルユニットの組合せを、3基、3本の直線状パスラインがT字形状に交差するように配置してなり、
前記3列のエアテーブルユニット列は、各々の、エアテーブルユニット列の先端のL字角部が前記3本の直線状パスラインの交点近傍位置となるように配置され、
前記交点を中心として、半径が前記L字の一辺の長さの円形領域内における、前記3列のエアテーブルユニット列の外側部分を埋めるようにして、前記と同様のL字形状エアテーブルユニット及び3角形状エアテーブルユニットを配置したことを特徴とする薄板状材料搬送装置。
【請求項4】
請求項1記載のエアテーブルユニット列及び3角形状エアテーブルユニットの組合せを、4基、4本の直線状パスラインが十字状に交差するように配置してなり、
前記4基のエアテーブルユニット列は、各々の、エアテーブルユニット列の先端のL字角部が前記4本の直線状パスラインの交点近傍位置となるように配置されたことを特徴とする薄板状材料搬送装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかにおいて、
前記複数のエアテーブルユニット列の、前記円形領域内の、前記交点から等距離の位置に、該交点を中心とする等角度間隔に配置された複数の薄板状材料搬送ユニットを有し、
該薄板状材料搬送ユニットは、上端に開口を備えた筒状体からなる吸引用パイプと、
この吸引用パイプの内側に、水平面内の回転軸廻りに回転自在に支持され、且つ、上端が前記吸引用パイプの上端の開口よりも僅かに突出可能とされた送りローラと、
前記吸引パイプに負圧を印加する負圧源と、
前記送りローラを、その回転軸が、前記水平面内で、該送りローラの頂点を通る鉛直軸線廻りに少なくとも90°の範囲で角度変位自在となるように支持する送り方向転換装置と、
を有してなることを特徴とする薄板状材料搬送装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記送りローラを、その上端が、前記薄板状材料のパスラインに到達する搬送位置及び前記パスラインよりも下がった待機位置との間で変位可能に支持する上下動装置と、
前記負圧源から前記吸引用パイプに印加される負圧をオン・オフする負圧制御装置と、を設けたことを特徴とする薄板状材料搬送装置。
【請求項7】
請求項5において、
前記負圧源は排気ブロワーとされ、この排気ブロワーの吸気口は、前記吸引用パイプの下端開口に接続され、
前記吸引用パイプ内には、前記送りローラを駆動するためのモータを含む駆動装置、前記送りローラを、その上端が、前記薄板状材料のパスラインに到達する搬送位置及び前記パスラインよりも下がった待機位置との間で変位可能に支持する、及び、前記送りローラを、その回転軸が、前記水平面内で、該送りローラの頂点を通る鉛直軸線廻りに少なくとも90°の範囲で角度変位自在となるように支持する送り方向転換装置のうち、少なくともモータを配置したことを特徴とする薄板状材料搬送装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記L字形状エアテーブルユニットは、平面視で、長さの異なる2台の矩形の直線状エアテーブルを直角に接続して構成されたことを特徴とする薄板状材料搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−29591(P2009−29591A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196444(P2007−196444)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(592053778)株式会社日本設計工業 (18)
【Fターム(参考)】