説明

薄板状部品ハンドリング装置

【課題】 薄板状部品を一枚ずつ取り出すことができるとともに、二層重なって吸着された場合でも、二層目の部品を確実に分離できる薄板状部品ハンドリング装置を提供する。
【解決手段】 薄板状部品ハンドリング装置1は、薄板状部品を複数枚積層して保持するホルダー10と、薄板状部品の最上部のものに当てられる真空チャック40と、真空チャックを進退させるチャック駆動機構と、チャック40に吸着された薄板状部品に気流を当てるノズル70と、を備える。真空チャック40は、薄板状部品の表面に分散して当てられる3本以上の細径パイプ41からなり、細径パイプ41内を選択的に真空及び正圧とに切り替えることができる。チャック40の進退方向は、重力方向に対して80°〜10°傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板状部品を確実に一枚ずつ取り出す装置に関する。さらには、その装置を使用した、薄板状部品を一枚ずつ並べる整列装置及び薄板状部品を一枚ずつ検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より提案されている薄板状部品を1枚ずつハンドリングする装置としては、多数の薄板状部品を積み重ねて保持しておき、真空チャックで最上層の部品を吸着して一枚ずつ取り出す装置がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に記載されている装置の真空チャックは、丸棒状のチャック部材先端の平坦な吸引面に複数の吸引孔が形成されたものである。また、同装置には、最上層部の部品のみでなくその下層の部品まで誤って吸着された場合に、二層目の部品を分離するエアノズルを備える。
特許文献2に記載されている装置の真空チャックは、弾性体で形成されており、吸引面は凹凸の形状を有する。部品吸着時には、真空チャックが部品に押圧され、この押さえ力によって凹凸面が平坦となって部品を吸着し、部品解放時には、弾性部材の弾性力によって吸引面が凹凸形状に戻り部品が吸着面から離れる。部品が二層吸着された場合も、この吸引面の形状の変化によって二層目の部品が分離しやすくなる。さらに、部品吸着後にチャックを後退させる際に、部品が部品ホルダーに形成された抵抗部分に接して部品の重なりを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−11388
【特許文献2】特開昭60−67342
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、薄板状部品を一枚ずつ取り出すことができるとともに、二層重なって吸着された場合でも、二層目の部品を確実に分離できる薄板状部品ハンドリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の薄板状部品ハンドリング装置は、 複数枚積層された薄板状部品を一枚ずつハンドリングする装置であって、 前記薄板状部品を複数枚積層された状態で保持するホルダーと、 該ホルダーに保持され、複数枚積層された薄板状部品の最上部のものに当てられる、真空チャックと、 該真空チャックを進退させるチャック駆動機構と、 該チャックに吸着された前記薄板状部品に気流を当てるノズルと、 を備え、 前記真空チャックが、 前記薄板状部品の表面に分散して当てられる3本以上の細径パイプと、 該細径パイプ内を選択的に真空及び正圧とする気圧切替手段と、 を具備することを特徴とする。
【0007】
本発明においては、チャックが分散して配置された複数の細径パイプからなるので、各パイプの先端面(チャック面)を部品の表面に当てやすくなる。チャック面がある程度の広さの面である場合、部品の表面に多少の凹凸や反りがあると、吸着面が部品の全表面に当接しないことも起こりうる。しかし、吸着面を小寸法の面として分散配置させると、様々な形状・寸法の部品、反りのある部品あるいは表面に凹凸のある部品をハンドリングできる。
【0008】
細径パイプの本数は特に3本が好ましい。3本とすれば、部品の表面が多少反っていても全てのパイプの先端を部品に当てることができる。なお、いずれの本数の場合も、各パイプを均等に分散して配置することが好ましい。
【0009】
また、ノズルから吹き出された気流が、細径パイプ間を通って部品の表面に当たりやすくなり、薄板状部品が2層重なって吸着された場合に、2層目の部品を分離しやすくなる。さらに、気流を部品の表面に対して斜め方向から吹き付けることによって、2層の部品の間に気流が入り込みやすくなり、2層目を有効に吹き落とすことができる。なお、ノズルからの吹き付け角度は、細径パイプの軸方向に対して、45°以下、より好ましくは30°以下であることが、2層目の部品の分離容易性の点で好ましい。
【0010】
なお、本発明にいう薄板状部品とは、厚さは0.2mmあるいは0.1mm以下、典型的には0.05mm以下の、平板状あるいはディスク状の部品である。
さらに、真空とは、大気圧未満で、チャックに部品が吸着するのに十分なほど減圧されていると言う意味であり、正圧とは、大気圧程度あるいは大気圧よりやや大で、チャックから部品が離れる(吸着解除される)のに適当な圧力という意味である。
【0011】
本発明においては、 前記ホルダーが、前記細径パイプによって押されて移動し、 該ホルダーの移動を検出して該細径パイプを後退させることが好ましい。
【0012】
本発明においては、ホルダーがある距離後退するまで細径パイプの先端で部品を押すので、細径パイプの先端面を部品の表面に当てる力が強くなり、吸着力が向上する。また、ホルダーが後退するので細径パイプの先端と部品との衝突力が緩衝され、部品の損傷を防止できる。
【0013】
本発明においては、 前記ホルダーに保持されている前記薄板状部品の量が少なくなったときに、該ホルダーを、間欠的に所定寸法、前記細径パイプに寄せるように移動させることが好ましい。
【0014】
本発明によれば、部品の積層高さが大きく変わっても、細径パイプで押すホルダーの移動量を確保できるので、ホルダーの後退を確実に検知できる。
なお、間欠的に所定寸法移動とは、一枚の薄板状部品を取り出すごとに、あるいは連続して動かすのではない。
【0015】
さらに、本発明においては、 前記チャックの進退方向が、重力方向に対して80°〜10°傾斜していることが好ましい。
【0016】
チャックを斜め方向に進退させることによって、吸着された部品を取り出しやすくなる。これらが垂直に配置されていると、部品をチャックから離す際に、部品を吸着したチャックが後退した後に横移動させる必要がある。こうしないと、吸着解除された部品がホルダーへ戻ってしまうためである。本発明では、部品ホルダーとチャックとを斜めに配置したので、チャックが部品ホルダーから離れた時点で吸着解除すると、部品はホルダーに戻らずに落下する。すなわち、別のチャック横移動機構が不要となる。
【0017】
本発明の薄板状部品整列装置は、 薄板状部品を一枚ずつ整列させる薄板状部品整列装置であって、前記に記載の薄板状部品ハンドリング装置と、 該装置から放出された薄板状部品を一枚ずつ並べる手段と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の薄板状部品検査装置は、 薄板状部品の表裏面の検査を行う薄板状部品検査装置であって、前記に記載の前記薄板状部品整列装置と、 整列された前記薄板状部品を検査する検査する検査装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、チャックが分散して配置された複数の細径パイプで構成したので、各パイプの先端面(チャック面)を部品の表面に当てやすくなる。したがって、様々な形状・寸法の部品、反りのある部品あるいは表面に凹凸のある部品をハンドリングしやすくなる。さらに、チャックの進退方向を重力方向に対して傾斜するように配置すれば、吸着された部品を取り出しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る薄板状部品ハンドリング装置の側面図である。
【図2】図1の薄板状部品ハンドリング装置の平面図である。
【図3】図1の薄板状部品ハンドリング装置のチャックを示す斜視図である。
【図4】図1の薄板状部品ハンドリング装置において薄板状部品がチャックされる様子を説明する図である。
【図5】図1の薄板状部品ハンドリング装置におけるチャックタイミングを説明する平面図であり、図5(A)はチャック前進開始時、図5(B)はチャック後退開始時を示す。
【図6】図1の薄板状部品ハンドリング装置の部品残量が少なくなった場合の動作を説明する平面図であり、図6(A)は正常状態、図6(B)は残量が少なくなった状態、図6(C)は部品ホルダーを前進させた状態を示す。
【図7】図1の薄板状部品ハンドリング装置の部品ホルダーの変形例を示す図であり、図7(A)は側面図、図7(B)、図7(C)は正面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る薄板状部品検査装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1、図2を参照して、本発明の実施の形態に係る薄板状部品ハンドリング装置を説明する。
薄板状部品ハンドリング装置1は、薄板状部品を複数枚積層された状態で保持する部品ホルダー10と、部品ホルダー10に保持された薄板状部品の最上層の部品に当てられる真空チャック40と、真空チャック40を進退させるチャック駆動機構と、チャック40に吸着された部品に気流を当てるノズル70と、を備える。図1に示すように、これらは傾斜した架台3上に設置されている。
この例では、薄板状部品として、直径が3mm、厚さが0.02mmの円形の平面形状で、中心に径が1mmの円形の開口が形成されているディスク状の部品とする。
【0022】
架台3は、図1に示すように、右斜め上方向に傾斜するように設置されている。水平面に対する架台3の傾斜角度θは、10°〜80°が好ましい。以降の説明において、傾斜方向における上方を上方といい、同方向における下方を下方という。
【0023】
まず、部品ホルダー10と同ホルダーの支持機構20を説明する。
部品ホルダー10及びホルダー支持機構は、架台3の傾斜方向の下方に配置される。
この例の薄板状部品のように、中央に円形の開口が形成されたディスク状の部品の場合、部品ホルダー10を軸状の部材とすることができる。部品の中央開口に軸状部材を挿通することによって、複数枚の薄板状部品を積層して保持することができる。
【0024】
ホルダー支持機構20は、部品ホルダー10を架台3の傾斜方向に進退可能に支持する。同機構20は、同傾斜方向に沿って配置されたリニアガイド21と、同ガイド21にスライド可能に噛み合い、部品ホルダー10の基端が固定されるスライダ22と、を有する。部品ホルダー10は、先端が傾斜方向の上方を向いて、同方向に平行に延びるようにスライダ22に脱着可能に固定されている。リニアガイド21の下方側端部はステージ25に固定されている。同ステージ25は、架台3の傾斜面内において傾斜方向に直交する方向、及び、架台に対して垂直方向に移動可能なものであり、調整ノブによって、部品ホルダー10の傾斜方向に直交する方向及び垂直方向位置を調整できる。
【0025】
さらに、スライダ22とステージ25との間には、コイルばね27が介されている。このばね27は、スライダ22をリニアガイド21に沿って傾斜方向の上方向に付勢している。ばね27に自然の荷重(スライダ22及びスライダ22に取り付けられている各部品の荷重)がかかっている姿勢におけるスライダ22の位置を初期位置という。図2に示すように、スライダ22にはさらに遮光板29が取り付けられている。そして、架台3上には、遮光板29を検知するセンサ31が取り付けられている。スライダ22が初期位置から所定の距離だけ後退すると、センサ31の検知部が遮光板29を検知し、スライダ22が所定距離だけ後退したことが検知される。
【0026】
次に、真空チャック40とチャック支持機構50を、図3も参照して説明する。
真空チャック40及びチャック支持機構50は、架台3の傾斜方向の上方に配置される。
真空チャック40は、薄板状部品の表面に分散して当てられる3本以上(この例では3本)の細径パイプ41と、各細径パイプ41を保持するパイプホルダー43と、細径パイプ41内を選択的に真空及び正圧とする気圧切替手段と、を備える。
【0027】
図3に示すように、3本の細径パイプ41は、パイプホルダー43の下方側端面のチャック中心位置から等間隔かつ等しい中心角度となる位置(正三角形の頂点の位置)に配置されて、互いに平行となるように支持部材45によってホルダー43に支持されている。細径パイプ41の長さは同じであり、各先端面は、架台3の傾斜面に垂直な同一面に開口している。この例では、細径パイプ41の外径は0.5mm、孔径は0.3mmである。図1、図2に示すように、ホルダー43の内部には、チャンバ44が形成されている。各細径パイプ41の基端は、ホルダー43の端面を貫通してこのチャンバ44内に開口している。チャンバ44は、空気源(図示されず)とチューブ46で接続されている。チューブ46の途中には制御弁(図示されず)が設けられており、空気源からチャンバ44への空気の供給を制御し、チャンバ44内を減圧または正圧とする。
【0028】
チャック支持機構50は、パイプホルダー43を架台3の傾斜方向に進退可能に支持する。同機構50は、同傾斜方向に沿って配置されたリニアガイド51と、同ガイド51にスライド可能に噛み合い、パイプホルダー43が固定されるスライダ52と、を有する。パイプホルダー43は、細径パイプ41の先端が傾斜方向の下方を向いて、同方向に平行となるようにスライダ52に固定されている。さらに、パイプホルダー43は、チャック中心位置が、部品ホルダー10と同軸上となるように位置決めされている。
【0029】
図1、図2に示すように、リニアガイド52の両端にはタイミングプーリ54、55が取り付けられている。両タイミングプーリ54、55間にはタイミングベルト56が巻き回されている。上方側のタイミングプーリ54の回転軸は、モータ58の回転軸に連結されており、モータ58の回転によってタイミングベルト56が正逆両方向に循環走行する。スライダ52は、前述のようにリニアガイド51にスライド可能に支持されているとともに、このタイミングベルト56の下段軌道に固定部材57で固定されている。タイミングベルト56の正逆方向の走行によって、スライダ52はリニアガイド51に沿って前進位置と後退位置との間の一定の距離間を往復運動する。前進位置においては、スライダ52に支持されている各細径パイプ41の先端は、部品ホルダー10の先端を超えて延びている。後退位置では、各細径パイプ41の先端と部品ホルダー10の先端との間には所定の間隔が開いている(図1、図2に示す位置)。
【0030】
スライダ52の前進位置における各細径パイプ41の先端の、重力方向下方には、ホッパー61が取り付けられている。細径パイプ41で吸着された部品は、吸着解除後にこのホッパー61に受け入れられる。
【0031】
また、架台3上には、3本の細径パイプ41の途中の部分をガイドするガイドブロック63が取り付けられている(図3も参照)。ガイドブロック63には、各細径パイプ41が挿通されるガイド孔が形成されており、スライダ52(パイプホルダー43)が進退運動する際に、各細径パイプ41は各ガイド孔内で平行かつ等間隔に保持されて往復運動する。一例として、ガイド孔の径は0.7mmである。
【0032】
図1に示すように、ノズル70は、ホッパー61の重力方向上方に配置されている。ノズル70は空気源(図示されず)と接続されており、先端から気流が吹き出される。ノズルは、図1に示すように、後退位置にある細径パイプ41の先端と部品ホルダー10の先端との間に向かって後方斜め上方向、つまり、部品Mの移動方向の反対方向 から気流を当てるように配置されている。ノズル70からの気流の吹き出し角度は、細径パイプ41の軸方向に対して45°以下、好ましくは30°以下であることが好ましい。
【0033】
次に、図4、図5、図6を参照して、この薄板状部品ハンドリング装置1の動作について説明する。
予め、部品ホルダー支持機構20のステージ25の位置・高さを調整して、部品ホルダー10の軸中心位置が、パイプホルダー43のチャック中心位置と一致するように位置決めしておく。まず、部品ホルダー10に、複数枚の薄板状部品Mを積層して保持する。そして、この部品ホルダー10をホルダー支持機構20のスライダ22にセットする。この状態を図4(A)に示す。この際、ばね27には、スライダ22(部品ホルダー10、部品M、遮光板29を含む)の荷重がかかり、ばね27の自然状態からやや収縮している。ただし、図5(A)に示すように、スライダ22の遮光板29はセンサ31の検知部に達していない。この位置を初期位置とする。
一方、図5(A)に示すように、パイプホルダー43は後退位置に待機して、チャック40の各細径パイプ41の先端と部品ホルダー10の先端との間には、図4(A)にも示すように、所定の間隔が開いている。ホルダー43内のチャンバ44は正圧に維持されている。
【0034】
次に、モータ58を駆動してパイプホルダー43を前進駆動する。各細径パイプ41は前進し、図4(B)に示すように、各先端面は部品ホルダー10の先端を超えて、部品ホルダー10に保持されている最上層の部品M1に当接するとともに、部品ホルダー10を下方に向けて押す。この前進駆動と同時に、パイプホルダー43のチャンバ44を減圧する。チャンバ44を減圧することにより、各細径パイプ41内も減圧されるので、各細径パイプ41の先端面が部品Mに当接すると、部品Mは各細径パイプ41の方向に引かれて先端面に吸着する。この際、部品ホルダー10を奥方向に押すことによって、各細径パイプ41の先端面を確実に部品Mの表面に当てることができるとともに、同先端面を部品の表面に当てる力が強くなり、吸着力が高まる。吸着面(チャック面)がある程度の広さの面である場合、部品の表面に多少の凹凸や反りがあると、吸着面が部品の全表面に当接しないことも起こりうる。しかし、吸着面を小寸法の面として分散配置させることにより、全ての吸着面に部品の表面を当てることができる。
さらに、部品ホルダー10が後退することによって、細径パイプ41の先端と部品Mとの衝突力が緩衝されるので、部品の損傷などを防止できる。
【0035】
部品ホルダー10が下方に押されると、部品ホルダー10が支持されているスライダ22がリニアガイド21に沿って後退し、図5(B)に示すように、やがて遮光板29がセンサ31の検知部で検知される。スライダ22の後退が検知されると、図4(C)に示すように、パイプホルダー43が後退駆動される。すると、各細径パイプ41が先端面に部品M1を吸着したまま後退する。
【0036】
図4(D)に示すように、パイプホルダー43が後退位置まで後退すると、同ホルダー43のチャンバ44の減圧が解除されて正圧に戻り、パイプ41内も正圧に戻る。すると、部品Mを細径パイプ41の先端面に吸着していた力が解除され、部品Mが細径パイプ41の先端面から外れ、重力によってホッパー61に落下する。なお、後退位置では、各細径パイプ41の先端面は部品ホルダー10の先端からやや離れているので、部品Mが落下する際に、部品ホルダー10が干渉することはない。
【0037】
以上のチャック動作中、ノズル70から気流が各細径パイプ41の先端に向かって吹き付けられている。この間、部品Mは各細径パイプ41の先端面に吸着されているとともに、部品Mは軸ホルダー10に挿通されたままである。気流は隣り合う細径パイプ41間の空間を通って最上層の部品M1の表面に、同表面に対して斜め方向から当てられる。部品の表面状態や細径パイプの押圧力によっては、最上層の部品のみでなくその下層の部品も一緒に吸着される場合がある。ノズル70から気流を吹き付けると、最上層の部品Mは細径パイプ41との吸着力が比較的強いので細径パイプに吸着したままであるが、二層目の部品の細径パイプ41との吸着力は比較的弱いので、二層目の部品は最上層の部品から分離する。さらに、気流が斜め方向から当てられるので、最上層の部品とその下層の部品との間にも空気が入りやすくなり、下層の部品が分離しやすくなる。分離した部品は自身の重力によって部品ホルダー10に沿って下方に移動するので、誤ってホッパー61に落下することはない。
【0038】
以上説明したように、本発明の薄板状部品ハンドリング装置は以下の利点を有する。
(1)チャック40を3本の細径パイプ41で構成したので、全ての細径パイプ41の先端面を部品の表面に当てやすくなる。したがって、部品に多少の凹凸や反りのある場合にも十分な力で吸着できる。なお、細径パイプ41の本数は3本以上とすることもできる。この場合も、全てのパイプ41をチャック中心位置から等間隔かつ等しい中心角度で配置することが好ましい。
(2)チャック40が細径パイプ41からなるので、ノズル70から吹き出された気流は細径パイプ41間の空間を通って、部品に吹き付けやすくなる。さらに、気流は部品の斜め上方向から吹き付けられる。これにより、薄板状部品が2層重なって吸着されても、2層目の部品を確実に吹き落とすことができる。
【0039】
(3)部品ホルダー10及びチャック40を斜めに配置して、これらを斜め方向に進退させることによって、吸着された部品を取り出しやすくなる。これらが垂直に配置されていると、部品をチャックから離す際に、部品を吸着したチャックが後退した後に横移動させる必要がある。こうしないと、吸着解除された部品がホルダーへ戻ってしまうためである。本発明では、部品ホルダー10とチャック40とを斜めに配置したので、チャック40が部品ホルダー10から離れた時点で吸着解除すると、部品はホルダー10に戻らずに落下する。
【0040】
前述のように、パイプホルダー43の往復移動距離は一定である。部品ホルダー10に保持されている薄板状部品Mの量が多い場合は、図6(A)に示すように、パイプホルダー43が前進位置まで進んだときに、各細径パイプ41の先端で部品Mを押圧して、遮光板29がセンサ31の検知部で検知されるまで部品ホルダー10を後退させることができる。しかし、部品ホルダー10に保持されている薄板状部品Mの量が少なくなると、図6(B)に示すように、パイプホルダー43を前進させたときに、各細径パイプ41の先端が部品ホルダー10に保持されている部品Mに当接しなくなる。あるいは、パイプホルダー43の前進位置において、最上層の部品Mの表面を後方に押圧した際に、部品ホルダー10が十分な距離だけ後方に移動しなくなる。つまり、スライダ22の遮光板29がセンサ31の検知部に到達しなくなり、スライダ31の後方への移動を検知できなくなる。
【0041】
このような場合、図6(C)に示すように、部品ホルダー支持機構20が支持されているステージ25及びセンサ31(図6(C)の一点鎖線で囲まれている部分)を、架台3の傾斜面に沿って上方(チャック側)に一定の距離だけ移動させる。これにより、パイプホルダー43の前進位置において、細径パイプ41の先端を最上層の部品に当接させるとともに後方に押圧できるようになる。
【0042】
なお、部品Mは部品ホルダー10の全長に渡って挿通する必要はなく、部品ホルダー10の基端側に、最下層の部品を底上げするようなダミーの部材を挿通させておいてもよい。
【0043】
以上の説明では、薄板状部品Mとして、中心に開口の形成されたディスク状の部品について説明したが、薄板状部品Mが、中心に開口のない平面形状が方形あるいは円形の部品の場合について説明する。このような部品の場合、部品ホルダーの形状が異なる。
【0044】
図7に示すように、部品ホルダー110は、ホルダー110の長さ方向に延びる収容空間Sが形成されている本体部111と軸部115とを有する。軸部111はスライダ22に脱着可能に支持される。本体部111は、長さ方向に長い収容部112と補助部113とを有する。収容部112には、長さ方向に沿って溝112aが形成されている。この例では、図7(B)、(C)に示すように、溝112aの平面形状はコの字型である。補助部113は、平面形状が正方形であり、一面が溝112aの底面に対向するように配置されている。溝112aと補助部113との間には、積層した部品を収容する空間Sが形成される。この例では、空間Sの断面形状は正方形である。空間Sの断面の中心は、チャック40の中心と一致するように位置決めされる。
【0045】
部品Mの平面形状が正方形の場合は、図7(B)に示すように、部品Mは収容部112の溝112aの両側面及び底面と、補助部113の一面に接した状態で空間に保持される。部品Mの平面形状が円形の場合は、図7(C)に示すように、部品Mは、収容部112の溝112aの両側面及び底面と、補助部113の一面とに、各々点接触した状態で保持される。
いずれの場合も、チャック40を構成する各細径パイプ41の先端面は、部品Mの表面に均等に分散して当接する。
【0046】
次に、図8を参照して、前述の薄板状部品ハンドリング装置を使用した、薄板状部品を一枚ずつ並べて、整列された薄板状部品を検査する検査する薄板状部品検査装置200について説明する。
この薄板状部品検査装置200は、図1、図2等に示す薄板状部品ハンドリング装置1と、薄板状部品を一枚ずつ並べるターンテーブル210と、ターンテーブル210に整列した薄板状部品の表面及び裏面を撮影するカメラ220と、撮影された画像から薄板状部品の不具合を判定する判定部と、を備える。
【0047】
ターンテーブル210には、複数(この例では10個)の部品載置部211が円周上の等間隔の位置に形成されている。部品載置台211は、透明ガラスなどの透明な材料で作製されており、同台211に載置された部品Mの表面(上面)及び裏面(下面)を観察できるようになっている。ターンテーブル210は、1個の部品載置台211が、ハンドリング装置1のホッパー61の真下で一定時間停止した後、次の部品載置台211がホッパー61の真下に位置するまで進行するサイクルで間欠運転される。
【0048】
ターンテーブル210の間欠運転は、部品ハンドリング装置1において、パイプホルダー43が後退位置まで後退してチャック40の吸着が解除されるタイミングで、ターンテーブル210の部品載置台211がホッパー61の真下で停止するように制御される。これにより、チャック40から解放された部品がホッパー61を通って、次々に回転してくる部品載置台211に落下する。こうして、部品を一枚ずつ取り出して整列させることができる。
【0049】
さらに、ターンテーブル210の部品載置台211が、ホッパー61の真下から所定のサイクルだけ進行した位置の上方には、同台211上に載置されている部品の表面(上面)を撮影するカメラ220Aが取り付けられている。さらに、同位置から1サイクル下流の位置の下方には、同台211上に載置されている部品の裏面(下面)を撮影するカメラ220Bが取り付けられている。これらのカメラ220A、220Bで撮影された画像はコンピュータなどの制御装置に送られる。制御装置では、これらの画像に二値化処理などの画像処理を施し、部品Mの表面及び裏面の不具合(形状の欠けや塗装不備など)を検出する。
【0050】
下側カメラ220Bから1サイクル下流の位置には、排出装置231が備えられている。この排出装置231によって、制御装置で不具合と判定された部品が排出される。
【0051】
この排出装置231から1サイクル下流の位置の上方には、さらにカメラ220Cが備えられている。このカメラは、上流側の排出装置231で不具合部品が排出されたかどうかを確認するためのものである。不具合部品が残っていた場合は、図示せぬ排出機構によって部品載置台211から排出される。
【0052】
カメラ220Cの1サイクル下流の位置には、排出装置232が備えられている。この排出装置232は、前述の判定によって不具合がないと判定された、部品載置台211上の部品をシュート233に排出する。
【符号の説明】
【0053】
1 薄板状部品ハンドリング装置 3 架台
10 部品ホルダー
20 部品ホルダー支持機構 21 リニアガイド
22 スライダ 25 ステージ
27 コイルばね 29 遮光板
31 センサ
40 真空チャック 41 細径パイプ
43 パイプホルダー 44 チャンバ
45 支持部材 46 チューブ
50 チャック支持機構 51 リニアガイド
52 スライダ 54、55 タイミングプーリ
56 タイミングベルト 57 固定部材
58 モータ 61 ホッパー
63 ガイドブロック
70 ノズル
110 部品ホルダー 111 本体部
112 収容部 113 補助部
115 軸部
200 薄板状部品検査装置 210 ターンテーブル
211 部品載置台 220 カメラ
231、232 排出装置 233 シュート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚積層された薄板状部品を一枚ずつハンドリングする装置であって、
前記薄板状部品を複数枚積層された状態で保持するホルダーと、
該ホルダーに保持され、複数枚積層された薄板状部品の最上部のものに当てられる、真空チャックと、
該真空チャックを進退させるチャック駆動機構と、
該チャックに吸着された前記薄板状部品に気流を当てるノズルと、
を備え、
前記真空チャックが、
前記薄板状部品の表面に分散して当てられる3本以上の細径パイプと、
該細径パイプ内を選択的に真空及び正圧とする気圧切替手段と、
を具備することを特徴とする薄板状部品ハンドリング装置
【請求項2】
前記ホルダーが、前記細径パイプによって押されて移動し、
該ホルダーの移動を検出して該細径パイプを後退させることを特徴とする請求項1に記載の薄板状部品ハンドリング装置。
【請求項3】
前記ホルダーに保持されている前記薄板状部品の量が少なくなったときに、該ホルダーを、間欠的に所定寸法、前記細径パイプに寄せるように移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄板状部品ハンドリング装置。
【請求項4】
前記チャックの進退方向が、重力方向に対して80°〜10°傾斜していることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の薄板状部品ハンドリング装置。
【請求項5】
薄板状部品を一枚ずつ整列させる薄板状部品整列装置であって、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄板状部品ハンドリング装置と、
該装置から放出された薄板状部品を一枚ずつ並べる手段と、
を備えることを特徴とする薄板状部品整列装置。
【請求項6】
薄板状部品の表裏面の検査を行う薄板状部品検査装置であって、
請求項5に記載の前記薄板状部品整列装置と、
整列された前記薄板状部品を検査する検査する検査装置と、
を備えることを特徴とする薄板状部品検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−178556(P2011−178556A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47521(P2010−47521)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(510061531)ユーケーテック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】