説明

薄板製造装置および薄板製造方法

【課題】下地基板を確実に支持して、安定して複数の薄板を形成する。
【解決手段】下地基板が取り付けられる被取付部130を有し、下地基板を着脱可能にかつ主面が融液中を潜るように下地基板を支持する支持機構と、主面上に薄板が形成されていない処理前下地基板を支持機構に取り付け、かつ、主面上に薄板が形成された処理後下地基板100Bを支持機構から取り外す着脱機構120と、着脱機構120による処理後下地基板100Bの取り外しと処理前下地基板の取り付けとの間に被取付部130を清掃する清掃機構とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板製造装置および薄板製造方法に関し、特に、融液から薄板を形成する薄板製造装置および薄板製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下地基板の主面を半導体材料または金属材料の融液に浸けて、下地基板の主面に薄板を形成する薄板製造装置を開示した先行文献として、特開2009−298609号公報(特許文献1)がある。
【0003】
特開2009−298609号公報(特許文献1)に記載された薄板製造装置においては、下地基板の主面を融液に浸けて結晶を成長させた後、下地基板を融液から取り出すことにより、下地基板の主面上に薄板を形成している。
【0004】
下地基板を保持する下地基板保持装置の構成を開示した先行文献として、特開2010−116311号公報(特許文献2)がある。
【0005】
特開2010−116311号公報(特許文献2)に記載された下地基板保持装置は、案内溝部と下地基板の案内突部とを係合させつつ、支持部の支持面で下地基板を着脱可能に支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−298609号公報
【特許文献2】特開2010−116311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
下地基板保持装置において、下地基板が取付けられる被取付部に融液が付着して異物となった場合、下地基板を支持できなくなる可能性がある。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、下地基板を確実に支持して、安定して複数の薄板を形成することができる、薄板製造装置および薄板製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に基づく薄板製造装置は、複数の下地基板の主面を薄板の材料の融液に順次浸けることにより複数の薄板を形成する薄板製造装置である。薄板製造装置は、下地基板が取り付けられる被取付部を有し、下地基板を着脱可能にかつ主面が融液中を潜るように下地基板を支持する支持機構と、主面上に薄板が形成されていない処理前下地基板を支持機構に取り付け、かつ、主面上に薄板が形成された処理後下地基板を支持機構から取り外す着脱機構と、着脱機構による処理後下地基板の取り外しと処理前下地基板の取り付けとの間に被取付部を清掃する清掃機構とを備える。
【0010】
本発明の一形態においては、清掃機構が着脱機構の一部に設けられている。
好ましくは、処理後下地基板の着脱機構による取り外しに連動して、清掃機構により被取付部が清掃される。
【0011】
好ましくは、処理後下地基板の着脱機構による取り外しと、処理前下地基板の着脱機構による取り付けと、清掃機構による被取付部の清掃とが同期して行なわれる。
【0012】
本発明の一形態においては、着脱機構は、処理後下地基板の一側面を押して支持機構から処理後下地基板を取り外す押圧部を有する。
【0013】
本発明の一形態においては、清掃機構が前記押圧部に設けられている。
本発明の一形態においては、清掃機構が、被取付部と摺動して被取付部を清掃する摺動部を有する。
【0014】
本発明の一形態においては、摺動部がブラシまたはフェルトである。
本発明の一形態においては、清掃機構が、被取付部にガスを噴き付ける噴付部を有する。
【0015】
本発明の一形態においては、噴付部は、被取付部に噴き付けられたガスが融液の液面に向かわない方向にガスを噴き付ける。
【0016】
本発明の一形態においては、噴付部は、処理後下地基板を着脱機構が支持機構から取り外している間のみガスを噴き付ける。
【0017】
本発明の一形態においては、薄板製造装置は、支持機構と着脱機構と清掃機構とが内部に配置されるチャンバーを備える。噴付部は、ガスが供給される配管と接続されている。配管は、押圧部の内部または側部を通ってチャンバー外に引出されている。
【0018】
本発明の一形態においては、上記ガスが不活性ガスである。
本発明の一形態においては、上記ガスが、アルゴンおよび窒素のいずれかを主成分とする不活性ガスである。
【0019】
本発明の一形態においては、清掃機構が、複数の噴付部を有する。
本発明に基づく薄板製造方法は、複数の下地基板の主面を薄板の材料の融液に順次浸けることにより複数の薄板を形成する薄板製造方法である。薄板製造方法は、薄板が形成されていない処理前下地基板を支持機構の被取付部に取付けて支持させる取付工程と、支持機構により処理前下地基板の主面を融液中に潜らせて、主面上に薄板を形成する薄板形成工程と、薄板が形成された処理後下地基板を支持機構から取り外す取外し工程と、被取付部を清掃する清掃工程とを備える。取付工程と取外し工程と清掃工程とは、同期して行なわれる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、下地基板を確実に支持して、安定して複数の薄板を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1に係る薄板製造装置の構成を示す一部断面図である。
【図2】図1のII−II線矢印方向から見た一部断面図である。
【図3】支持機構の動作を示す一部断面図である。
【図4】着脱機構により下地基板を被取付部に取り付ける状態を示す一部断面図である。
【図5】下地基板が被取付部に取り付けられる状態を示す斜視図である。
【図6】被取付部に下地基板が取り付けられた状態を示す断面図である。
【図7】着脱機構の構成を示す斜視図である。
【図8】同実施形態に係る清掃機構の構成を示す一部側面図である。
【図9】本発明の実施形態2に係る薄板製造装置の構成を示す一部側面図である。
【図10】本発明の実施形態3に係る薄板製造装置の構成を示す一部側面図である。
【図11】本発明の実施形態4に係る薄板製造装置の構成を示す一部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態1に係る薄板製造装置および薄板製造方法について説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0023】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る薄板製造装置の構成を示す一部断面図である。図2は、図1のII−II線矢印方向から見た一部断面図である。
【0024】
図1,2に示すように、本発明の実施形態1に係る薄板製造装置1は、下地基板100が取り付けられる被取付部130を有し、下地基板100を着脱可能にかつ下地基板100の主面101が融液152中を潜るように下地基板100を支持する支持機構110を備える。
【0025】
また、薄板製造装置1は、主面101上に薄板が形成されていない処理前下地基板100Aを支持機構110に取り付け、かつ、主面101上に薄板が形成された処理後下地基板100Bを支持機構110から取り外す着脱機構120を備える。
【0026】
さらに、薄板製造装置1は、後述するように、着脱機構120による処理後下地基板100Bの取り外しと処理前下地基板100Aの取り付けとの間に被取付部130を清掃する清掃機構を備える。
【0027】
本実施形態においては、薄板製造装置1は、支持機構110と着脱機構120と清掃機構とが内部に配置されるチャンバー150を備える。ただし、チャンバー150は必ずしも設けられなくてもよい。チャンバー150の底部上に坩堝151が配置されている。坩堝151は、カーボン製またはシリカ製である。坩堝151には加熱源が付設されている。坩堝151は加熱源により、ヒーター加熱、ランプ加熱または誘導加熱される。
【0028】
坩堝151が加熱されることにより、坩堝151内に供給された薄板の材料が融液の状態で維持される。薄板の材料としては、シリコンまたはゲルマニウムなどが用いられる。
【0029】
たとえば、太陽電池用基板となる薄板を形成する場合、坩堝151内にシリコンの塊を投入して加熱する。シリコンの塊は、加熱されてシリコン融液となる。シリコン融液が不足した場合、図示しない原料供給装置により坩堝151内にシリコンの塊またはシリコン融液が供給される。
【0030】
チャンバー150は、互いに対向する側壁の一方に、処理前下地基板100Aをチャンバー150内に搬入するための搬入口155を有する。チャンバー150は、側壁の他方に、処理後下地基板100Bをチャンバー150外に搬出するための搬出口156を有する。
【0031】
カーボン製の坩堝およびシリコン融液は、酸素などの雰囲気ガスと触れると反応して化合物が生成することがある。酸化物などの化合物が生成すると、坩堝の消耗および融液の変質などの問題が発生することがある。よって、酸化物などの化合物の生成を抑制するために、チャンバー150内には不活性ガスが充填されることが好ましい。
【0032】
この場合、チャンバー150内に外気が浸入することを抑制するために、搬入口155および搬出口156の少なくとも一方に開閉扉を設けてもよい。搬入口155に設けられた開閉扉は、処理前下地基板100Aが搬入される間のみ開いて、その他のときは閉まっている。搬出口156に設けられた開閉扉は、処理後下地基板100Bが搬出される間のみ開いて、その他のときは閉まっている。
【0033】
また、搬入口155および搬出口156の少なくとも一方の外側に、副室を設けてもよい。副室内に不活性ガスを充填してガス置換を行なうことにより、チャンバー150内に外気が浸入することを抑制することができる。
【0034】
さらに、チャンバー150内に不活性ガスを充填してチャンバー150内を正圧に維持するようにしてもよい。この場合、搬入口155および搬出口156においては、チャンバー150内から外に向かう気流が発生するため、外気がチャンバー150内に浸入することを抑制することができる。
【0035】
支持機構110は、主回転軸113に接続されて主回転軸113を中心に旋回可能な互いに対向する2本の主アーム112と、主アーム112の一方の端部に回動可能に支持された副回転軸114に接続されて副回転軸114を中心に旋回可能な互いに対向する2本の副アーム115と、2本の副アーム115の先端に接続された被取付部130とを含む。
【0036】
主アーム112の他方の端部には、バランサー111が取付けられている。支持機構110がバランサー111を有することにより、主回転軸113を中心に旋回するために必要な駆動力が低減される。
【0037】
薄板形成前の処理前下地基板100Aは、チャンバー150の外から、図示しない基板搬入機構によって、第1載置台153上に載置される。第1載置台153上に載置された処理前下地基板100Aは、着脱機構120によって、被取付部130に取り付けられる。被取付部130、着脱機構120および清掃機構の詳細については後述する。
【0038】
図3は、支持機構の動作を示す一部断面図である。図3に示すように、支持機構110は、予め入力されたプログラミングにしたがって、主回転軸113を中心として主アーム112が旋回し、副回転軸114を中心として副アーム115が旋回する。その結果、被取付部130は、図中の矢印で示すように、下地基板100の着脱位置Aから、坩堝151内の融液152の液面上を通過して、再び着脱位置Aに戻るように移動する。
【0039】
この支持機構110の一連の動作により、被取付部130に取付けられた下地基板100の主面101が融液152中を潜り、下地基板100の主面101上に薄板材料が付着する。下地基板100の主面101上に付着した薄板材料の結晶が成長することにより、下地基板100の主面101上に薄板が形成される。
【0040】
主アーム112および副アーム115の旋回動作は、図示しない駆動装置により行なわれる。駆動装置としては、たとえば、サーボモータによるモーションコントロールを用いる。モーションコントローラに動作プログラムを予め転送しておくことで、動作開始指令にしたがって、主アーム112の旋回動作と副アーム115の旋回動作とが同期するようにサーボモータを動作させることができる。
【0041】
なお、支持機構110の構成は上記に限られず、下地基板100の主面を融液152に浸けて、下地基板100の主面に薄板を形成できる構成を有するものであればよい。
【0042】
図2に示すように、薄板が形成された処理後下地基板100Bは、着脱機構120により被取付部130から取り外されて第2載置台154上に載置される。その際、被取付部130に、第1載置台153上に載置されている処理前下地基板100Aが着脱機構120により取付けられることが好ましい。このように被取付部130への下地基板100の着脱を同期して行なうことにより、薄板の生産タクトの短縮を図ることができる。
【0043】
以下、本実施形態に係る下地基板100および被取付部130の構成について詳細に説明する。
【0044】
図4は、着脱機構により下地基板を被取付部に取り付ける状態を示す一部断面図である。図5は、下地基板が被取付部に取り付けられる状態を示す斜視図である。図6は、被取付部に下地基板が取り付けられた状態を示す断面図である。
【0045】
図4に示すように、着脱機構120は、第1載置台153上に載置された下地基板100の一側面を押して下地基板100を被取付部130に取り付ける第1押圧部121を有する。第1押圧部121は、駆動軸123の先端に接続されている。
【0046】
図5,6に示すように、下地基板100は、薄板が形成される主面101とは反対側に、被取付部130と当接する当接面102を有する。下地基板100は、当接面102の一部から突出した係止部103を有する。係止部103は、下地基板100の互いに対向する側面に直交する方向に延在している。
【0047】
被取付部130は、副アーム115と接続されている側とは反対側に、下地基板100と当接する当接面131を有する。被取付部130は、当接面131と繋がった溝状の被係止部132を有する。被係止部132は、被取付部130の互いに対向する側面に直交する方向に延在している。
【0048】
下地基板100の当接面102と被取付部130の当接面131とが当接した状態で下地基板100の係止部103と被取付部130の被係止部132とが係合することにより、下地基板100が被取付部130に取り付けられる。このように、下地基板100が被取付部130に取り付けられることにより、上述の支持機構110の一連の動作中に下地基板100が被取付部130から脱落することを防止できる。
【0049】
図6に示すように、下地基板100の係止部103の大きさは、被取付部130の被係止部132の大きさより僅かに小さい。この大きさの違いにより、下地基板100と被取付部130との間に遊びが設けられる。
【0050】
遊びが設けられることにより、下地基板100を被取付部130に取り付ける際の下地基板100と被取付部130との相対的な位置精度を緩和することができる。遊びの大きさは、小さすぎると下地基板100と被取付部130との取り付けが困難になり、大きすぎると被取付部130への下地基板100の取り付けが緩くなり被取付部130から下地基板100が脱落する可能性があるため、適宜設定される。
【0051】
なお、下地基板100の被取付部130への取付形態は、上記に限られず、たとえば、下地基板100の当接面102を被取付部130の当接面131に設けられた吸着部により吸着することにより、下地基板100を被取付部130に取り付けるようにしてもよい。このようにした場合にも、着脱機構120の第1押圧部121が、処理後下地基板100Bの一側面を押して支持機構110から処理後下地基板100Bを取り外すことができる。
【0052】
以下、着脱機構120の構成について詳細に説明する。
図7は、着脱機構の構成を示す斜視図である。図7に示すように、着脱機構120は、伸縮および回転可能な駆動軸123を有している。駆動軸123の一方の端部には、駆動軸123を駆動する駆動源が接続されている。
【0053】
駆動軸123の他方の端部には、駆動軸123に直交する方向に延在する第1偏芯軸124が接続されている。第1偏芯軸124の先端に第1押圧部121が接続されている。また、駆動軸123には、第1偏芯軸124と所定の間隔をおいて第2偏芯軸125が接続されている。第2偏芯軸125は、第1偏芯軸124と対向するように設けられている。第2偏芯軸125の先端に第2押圧部122が接続されている。第2押圧部122は、第1偏芯軸124を間に挟んで第1押圧部121と対向するように設けられている。
【0054】
駆動軸123は、矢印160で示す軸方向に伸縮可能である。また、駆動軸123は、駆動軸123中心に回動可能である。駆動軸123の矢印160で示す方向の伸縮に伴って、第1押圧部121および第2押圧部122が矢印160で示す方向に移動する。また、駆動軸123の回動に伴って、第1押圧部121および第2押圧部122が矢印161で示す方向に旋回する。
【0055】
第1押圧部121は、薄板が形成された処理後下地基板100Bを被取付部130から取り外す際に、処理後下地基板100Bの一側面を押圧する。第2押圧部122は、薄板が形成されていない処理前下地基板100Aを被取付部130に取り付ける際に、処理前下地基板100Aの一側面を押圧する。
【0056】
具体的には、まず、着脱機構120においては、図7の実線で示すように、駆動軸123が縮んだ状態で第1押圧部121および第2押圧部122が下降している。この状態から、駆動軸123が伸びることにより、第1押圧部121は処理後下地基板100Bの一側面を押圧し、第2押圧部122は処理前下地基板100Aの一側面を押圧する。このように、処理後下地基板100Bの取り外しと、処理前下地基板100Aの取り付けとが同期して行なわれる。なお、図7においては、簡単のため、処理前下地基板100Aを図示していない。
【0057】
次に、駆動軸123が回動して第1押圧部121および第2押圧部122を上昇させる。その後、駆動軸123が元の長さまで縮むことにより着脱機構120は図7の二点鎖線で示す状態になる。このように、第1押圧部121が処理前下地基板100Aより上方まで上昇した後に元の位置まで戻ることにより、第1押圧部121と処理前下地基板100Aとが干渉することを防止できる。
【0058】
または、第1押圧部121と処理前下地基板100Aとが干渉しない範囲で駆動軸123が縮んだ後、駆動軸123が回動して第1押圧部121および第2押圧部122を上昇させて、さらにその後、駆動軸123が元の長さまで縮むようにしてもよい。
【0059】
この場合、第1押圧部121と処理後下地基板100B、および、第2押圧部122と処理前下地基板100Aがそれぞれ接した状態のまま、第1押圧部121および第2押圧部122が旋回して摺動することを防止できる。その結果、第1押圧部121、第2押圧部122および下地基板100が摩耗すること、または、処理後下地基板100Bに形成された薄板にキズが付くことなどを抑制することができる。
【0060】
その後、駆動軸123が回動して第1押圧部121および第2押圧部122を下降させることにより、第1押圧部121および第2押圧部122は元の状態に戻る。この一連の動作を繰り返すことにより、複数の下地基板100を支持機構110に順次支持させることができる。
【0061】
第2載置台154上に載置された処理後下地基板100Bは、図示しない基板搬出機構によりチャンバー150外に搬出される。チャンバー150外に搬出された処理後下地基板100Bの主面101から薄板が取り外される。得られた薄板は、必要に応じて検査および切断された後、半導体などが形成される基板として使用される。薄板が取り外された下地基板100は、クリーニングされた後、検査されて、良品のみ再使用される。
【0062】
以下、本実施形態に係る清掃機構について詳細に説明する。
図8は、本実施形態に係る清掃機構の構成を示す一部側面図である。上述の通り、被取付部130には下地基板100が繰り返し取り付けられる。被取付部130の当接面131上に融液が固まった固着片または薄板の破片などの異物片が付着している場合、その異物片が着脱機構120による下地基板100の着脱の障害となることがある。
【0063】
そのため、本実施形態に係る薄板製造装置1は、着脱機構120による処理後下地基板100Bの取り外しと処理前下地基板100Aの取り付けとの間に被取付部130を清掃する清掃機構を備えている。具体的には、清掃機構は、被取付部130の当接面131を清掃する。なお、図1〜4,7においては、清掃機構は図示していない。
【0064】
図8に示すように、本実施形態においては、清掃機構は、着脱機構120の一部である第1押圧部121に設けられている。また、清掃機構は、被取付部130の当接面131と摺動して被取付部130を清掃する摺動部126を有する。具体的には、摺動部126は、ブラシまたはフェルトである。摺動部126は、当接面131上の全面と摺動可能な大きさであることが好ましい。
【0065】
このように、第1押圧部121に摺動部126を設けることにより、処理後下地基板100Bの着脱機構120による取り外しに連動して、清掃機構により被取付部130を清掃することができる。
【0066】
また、本実施形態の着脱機構120では第1押圧部121と第2押圧部122とが同時に動作するため、処理後下地基板100Bの着脱機構120による取り外しと、処理前下地基板100Aの着脱機構120による取り付けと、清掃機構による被取付部130の清掃とを同期して行なうことができる。
【0067】
その結果、被取付部130から処理後下地基板100Bを取り外しつつ、ブラシまたはフェルトで当接面131を擦って当接面131から異物片を除去し、さらに当接面131が清掃された直後の被取付部130に処理前下地基板100Aを取り付けることができる。
【0068】
このようにすることにより、清掃機構を設けることによって薄板の製造タクトが長くなることを抑制することができる。また、清掃機構により清掃された当接面131に再び異物片が付着する前に処理前下地基板100Aを被取付部130に取り付けることが容易になる。さらに、清掃機構を動作させるための駆動装置を着脱機構と兼用できるため、薄板製造装置1の構成を簡便にして装置コストの低減を図ることができる。
【0069】
ただし、清掃機構は必ずしも着脱機構120の一部に設けられる必要はなく、独立した別の機構であってもよい。たとえば、独立して設けられた清掃機構と着脱機構120を同期して作動させる制御部が設けられていてもよい。
【0070】
また、摺動部126はブラシまたはフェルトに限られず、被取付部130の当接面131と摺動することにより当接面131から異物片を除去可能であり、かつ、当接面131と摺動することにより当接面131を摩耗させないものであることが好ましい。
【0071】
上記の構成により、下地基板100を確実に支持して、安定して複数の薄板を形成することができる。
【0072】
以下、本発明の実施形態2に係る薄板製造装置および薄板製造方法について説明する。なお、本実施形態に係る薄板製造装置は、清掃機構の構成のみ実施形態1に係る薄板製造装置1と異なるため、清掃機構以外の構成については説明を繰り返さない。
【0073】
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2に係る薄板製造装置の構成を示す一部側面図である。図9に示すように、本発明の実施形態2に係る薄板製造装置の清掃機構は被取付部130にガスを噴き付ける噴付部227を有する。噴付部227は、本実施形態に係る着脱機構220の第1押圧部221に設けられている。
【0074】
具体的には、噴付部227としてガスを噴出するノズルが第1押圧部221に形成されている。噴付部227は、ガスが供給される配管228と接続されている。配管228は、第1押圧部221の側部を通ってチャンバー150の外に引出されている。配管228は、フレキシブル配管であり、着脱機構220の駆動軸123に沿って配置され、着脱機構220の動作に追従できるように接続されている。
【0075】
チャンバー150の外部に配置されている図示しないガス供給源から供給されたガスは、配管228内を通過して噴付部227から矢印226で示す方向に噴き出して、被取付部130の当接面131上に噴き付けられる。噴付部227は、当接面131上の全面にガスを噴き付け可能な大きさであることが好ましい。
【0076】
被取付部130の当接面131上にガスが噴き付けられることにより、当接面131から異物片を除去することができる。融液が固まった固着片または薄板の破片などの異物片は、重量が軽いためガスを噴き付けることにより当接面131上から容易に除去することができる。
【0077】
本実施形態においては、噴付部227から噴き付けられるガスは不活性ガスである。上述のように、チャンバー150内にはアルゴンなどを主成分とする不活性ガスが充填されていることが好ましい。
【0078】
よって、噴付部227から噴き付けられるガスも不活性ガスであることが好ましい。より好ましくは、チャンバー150内に充填されている不活性ガスと同一の成分の不活性ガスを噴付部227から噴き付ける。なお、不活性ガスとして、アルゴンより低価格で融液との反応性が低い窒素ガスを用いていもよい。
【0079】
本実施形態においては、噴付部227は、処理後下地基板100Bを着脱機構220が支持機構110の被取付部130から取り外している間のみガスを噴き付ける。その他のときは、噴付部227からのガスの噴き付けが停止している。具体的には、第1押圧部221が処理後下地基板100Bの一側面を押圧している間のみ噴付部227からガスが噴き付けられている。
【0080】
このようにすることにより、清掃機構により消費されるガス量を低減して薄板の製造コストを低減することができる。また、チャンバー150内のガス成分と噴付部227から噴き付けられるガスの成分とが異なる場合、チャンバー150内のガス成分が変化して製造される薄板の品質がばらつくことを抑制できる。
【0081】
本実施形態に係る薄板製造装置においても、下地基板100を確実に支持して、安定して複数の薄板を形成することができる。
【0082】
以下、本発明の実施形態3に係る薄板製造装置および薄板製造方法について説明する。なお、本実施形態に係る薄板製造装置は、配管の構成のみ実施形態2に係る薄板製造装置と異なるため、配管以外の構成については説明を繰り返さない。
【0083】
(実施形態3)
図10は、本発明の実施形態3に係る薄板製造装置の構成を示す一部側面図である。図10に示すように、本発明の実施形態3に係る薄板製造装置の清掃機構は被取付部130にガスを噴き付ける噴付部327を有する。噴付部327は、本実施形態に係る着脱機構320の第1押圧部321に設けられている。
【0084】
具体的には、噴付部327としてガスを噴出するノズルが第1押圧部321に形成されている。噴付部327は、ガスが供給される配管328と接続されている。配管328は、第1押圧部321の内部を通ってチャンバー150の外に引出されている。配管328は、着脱機構320の駆動軸123の内部に配置され、着脱機構320の動作に追従できるように接続されている。
【0085】
チャンバー150の外部に配置されている図示しないガス供給源から供給されたガスは、配管328内を通過して噴付部327から矢印326で示す方向に噴き出して、被取付部130の当接面131上に噴き付けられる。噴付部327は、当接面131上の全面にガスを噴き付け可能な大きさであることが好ましい。
【0086】
本実施形態においては、実施形態2の配管228のようにフレキシブル配管を用いる必要性がない。チャンバー150内は高温雰囲気であるため、高温雰囲気下に配管228が長期間曝された場合、配管228が劣化する可能性がある。また、配管228を着脱機構220の動作に追従させることにより、配管228が繰り返し曲げられて劣化する可能性がある。
【0087】
本実施形態の配管328においては、駆動軸123内に配置されているため熱の影響を受けにくく、着脱機構320の動作によって繰り返し曲げられることがないため、経年的な劣化を抑制することができる。
【0088】
ただし、配管328は全体が駆動軸123内に配置されている場合に限られず、配管328の少なくとも一部が駆動軸123内に配置されていればよい。この場合、配管328において駆動軸123の外側に配置されている部分は、駆動軸123に沿うように配置されている。
【0089】
本実施形態に係る薄板製造装置においても、下地基板100を確実に支持して、安定して複数の薄板を形成することができる。
【0090】
以下、本発明の実施形態4に係る薄板製造装置および薄板製造方法について説明する。なお、本実施形態に係る薄板製造装置は、噴付部の構成のみ実施形態2,3に係る薄板製造装置と異なるため、噴付部以外の構成については説明を繰り返さない。
【0091】
(実施形態4)
図11は、本発明の実施形態4に係る薄板製造装置の構成を示す一部側面図である。図11に示すように、本発明の実施形態4に係る薄板製造装置の清掃機構は被取付部130にガスを噴き付ける噴付部427を有する。噴付部427は、本実施形態に係る着脱機構420の第1押圧部421に設けられている。
【0092】
本実施形態に係る清掃機構は複数の噴付部427を有する。具体的には、第1押圧部421には同じ大きさの複数のノズルが形成されている。複数のノズルは、ガス供給源と繋がっている図示しない1つの配管に接続されている。噴付部427は、当接面131上の全面にガスを噴き付け可能な大きさであることが好ましい。
【0093】
清掃機構が複数の噴付部427を有することにより、効率的かつ均一に当接面131上にガスを噴き付けることができる。被取付部130の当接面131上にガスが噴き付けられることにより、当接面131から異物片を除去される。
【0094】
噴付部427は、被取付部130に噴き付けられたガスが坩堝151内の融液152の液面に向かわない方向にガスを噴き付ける。図11においては、矢印426で示す方向にガスを噴き付ける。図11において、右下側に坩堝151が配置されている。
【0095】
このようにすることにより、被取付部130から除去された異物片は坩堝151から遠ざかる方向に吹き飛ばされるため、異物片が坩堝151内に落下することを抑制できる。よって、異物片が融液152に混入して、下地基板100の主面101上に形成される薄板の品質が劣化することを抑制できる。
【0096】
本実施形態に係る薄板製造装置においても、下地基板100を確実に支持して、安定して複数の薄板を形成することができる。
【0097】
なお、上記の実施形態において組合せ可能な構成については適宜組合わせることが当然に想定されている。また、噴付部の代わりに吸引部により異物片を除去するようにしてもよい。
【0098】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0099】
1 薄板製造装置、100 下地基板、100A 処理前下地基板、100B 処理後下地基板、101 主面、102,131 当接面、103 係止部、110 支持機構、111 バランサー、112 主アーム、113 主回転軸、114 副回転軸、115 副アーム、120,220,320,420 着脱機構、121,221,321,421 第1押圧部、122 第2押圧部、123 駆動軸、124 第1偏芯軸、125 第2偏芯軸、126 摺動部、130 被取付部、132 被係止部、150 チャンバー、151 坩堝、152 融液、153 第1載置台,154 第2載置台、155 搬入口、156 搬出口、227,327,427 噴付部、228,328 配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の下地基板の主面を薄板の材料の融液に順次浸けることにより複数の薄板を形成する薄板製造装置であって、
前記下地基板が取り付けられる被取付部を有し、前記下地基板を着脱可能にかつ前記主面が前記融液中を潜るように前記下地基板を支持する支持機構と、
前記主面上に薄板が形成されていない処理前下地基板を前記支持機構に取り付け、かつ、前記主面上に薄板が形成された処理後下地基板を前記支持機構から取り外す着脱機構と、
前記着脱機構による前記処理後下地基板の取り外しと前記処理前下地基板の取り付けとの間に前記被取付部を清掃する清掃機構と
を備える、薄板製造装置。
【請求項2】
前記清掃機構が前記着脱機構の一部に設けられている、請求項1に記載の薄板製造装置。
【請求項3】
前記処理後下地基板の前記着脱機構による取り外しに連動して、前記清掃機構により前記被取付部が清掃される、請求項1または2に記載の薄板製造装置。
【請求項4】
前記処理後下地基板の前記着脱機構による取り外しと、前記処理前下地基板の前記着脱機構による取り付けと、前記清掃機構による前記被取付部の清掃とが同期して行なわれる、請求項1から3のいずれかに記載の薄板製造装置。
【請求項5】
前記着脱機構は、前記処理後下地基板の一側面を押して前記支持機構から前記処理後下地基板を取り外す押圧部を有する、請求項1から4のいずれかに記載の薄板製造装置。
【請求項6】
前記清掃機構が前記押圧部に設けられている、請求項5に記載の薄板製造装置。
【請求項7】
前記清掃機構が、前記被取付部と摺動して前記被取付部を清掃する摺動部を有する、請求項1から6のいずれかに記載の薄板製造装置。
【請求項8】
前記摺動部がブラシまたはフェルトである、請求項7に記載の薄板製造装置。
【請求項9】
前記清掃機構が、前記被取付部にガスを噴き付ける噴付部を有する、請求項5または6に記載の薄板製造装置。
【請求項10】
前記噴付部は、前記被取付部に噴き付けられたガスが前記融液の液面に向かわない方向に前記ガスを噴き付ける、請求項9に記載の薄板製造装置。
【請求項11】
前記噴付部は、前記処理後下地基板を前記着脱機構が前記支持機構から取り外している間のみ前記ガスを噴き付ける、請求項9または10に記載の薄板製造装置。
【請求項12】
前記支持機構と前記着脱機構と前記清掃機構とが内部に配置されるチャンバーを備え、
前記噴付部は、前記ガスが供給される配管と接続され、
前記配管は、前記押圧部の内部または側部を通って前記チャンバー外に引出されている、請求項9から11のいずれかに記載の薄板製造装置。
【請求項13】
前記ガスが不活性ガスである、請求項9から12のいずれかに記載の薄板製造装置。
【請求項14】
前記ガスが、アルゴンおよび窒素のいずれかを主成分とする不活性ガスである、請求項13に記載の薄板製造装置。
【請求項15】
前記清掃機構が、複数の噴付部を有する、請求項9から14のいずれかに記載の薄板製造装置。
【請求項16】
複数の下地基板の主面を薄板の材料の融液に順次浸けることにより複数の薄板を形成する薄板製造方法であって、
薄板が形成されていない処理前下地基板を支持機構の被取付部に取付けて支持させる取付工程と、
前記支持機構により前記処理前下地基板の前記主面を前記融液中に潜らせて、前記主面上に薄板を形成する薄板形成工程と、
薄板が形成された処理後下地基板を前記支持機構から取り外す取外し工程と、
前記被取付部を清掃する清掃工程と
を備え、
前記取付工程と前記取外し工程と前記清掃工程とが同期して行なわれる、薄板製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−240896(P2012−240896A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114655(P2011−114655)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】