薄膜型太陽電池モジュール及び薄膜型太陽電池モジュールの製造方法
【課題】外部から薄膜型太陽電池モジュール内への湿分、水分の浸入を防止して、耐湿性を向上させ薄膜型太陽電池モジュールの性能劣化を防止、かつ電気絶縁性も確保し薄膜型太陽電池モジュールの耐用年数を向上させる。
【解決手段】裏面支持材202に設けた貫通孔に、水蒸気透過率が0.2g/(m2・Day)以下、かつ、電気抵抗値が1×1010Ω・cm以上の特性を備え、厚さ1mm以上の充填材を配置する。
【解決手段】裏面支持材202に設けた貫通孔に、水蒸気透過率が0.2g/(m2・Day)以下、かつ、電気抵抗値が1×1010Ω・cm以上の特性を備え、厚さ1mm以上の充填材を配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁透光性基板に電極層と発電層とを積層して得られる薄膜型太陽電池モジュール及び薄膜型太陽電池モジュールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無尽蔵に降り注ぐ太陽エネルギーを利用して発電することができ、且つ排気ガスを排出することなくクリーンであり、さらに放射能を放出するといった危険もなく安全であることから、太陽電池が注目を集めている。
【0003】
特に絶縁透光性基板に透明な第一電極と光電変換層と第二電極を積層して得られる薄膜型太陽電池は、使用している材料が少なく、資源枯渇の問題が少ないために注目されている。
【0004】
図1は、薄膜型太陽電池の層構成を簡単に説明する概念図の一例である。薄膜型太陽電池105の層構成は、絶縁透光性基板101に第一電極層102と光電変換層103(具体的にはp層、i層、n層を持つ)及び第二電極層104が順次積層されたものであるが、各層に溝110、111、113が形成されている。
【0005】
すなわち第一電極層102に第一溝110が形成され、第一電極層102が複数に分割されている。また光電変換層103には第二溝111が形成され、光電変換層103が複数に分割され、さらに当該第二溝111の中に第二電極層104の一部が進入して溝底部で第一電極層102と接している。
【0006】
さらに第二電極層104と光電変換層103を切除して第一電極層102の表面に至る第三溝113が設けられている。
【0007】
また薄膜型太陽電池105の端部近傍には、第二電極層104と光電変換層103を切除して第一電極層102に至る3列の電極接続溝116が設けられている。電極接続溝116には半田117が流し込まれ、積層体の上部に配されたリード118が接続されている。リード118は半田117を介して第一電極層102と連通している。図示していないが、第二電極層104も別のリード118と半田117を介して電気的に連通している。
【0008】
また電極接続溝116の外側には、分離溝119が形成されている。
【0009】
さらに絶縁透光性基板101の最も外側の部位は、積層体が除去された裸地部120となっている。
【0010】
また薄膜型太陽電池105の表面は絶縁性封止材と裏面支持材が覆い外部環境から温度や水分の浸入、応力から太陽電池セルを保護している。
【0011】
薄膜型太陽電池105は、第一電極層102に設けられた第一溝110と、光電変換層103及び第二電極層104に設けられた第三溝113によって各薄膜が区画され、独立したセルが形成されている。そして前記した様に、第二溝111の中に第二電極層104の一部が進入し、第二電極層104の一部が第一電極層102と接しており、一つのセルは隣接するセルと電気的に直列に接続されている。
【0012】
すなわち光電変換層103で発生した電流は、第一電極層102側から第二電極層104側に向かって流れるが、第二電極層104の一部が第二溝111を介して第一電極層102と接しており、最初のセルで発生した電流が隣のセルの第一電極層102に流れる。そのため電圧が順次加算されていく。
【0013】
そして電力は、端部に設けられたリード118によって外部に取り出される。
【0014】
このような構成に、適宜枠等の構造材料や端子ボックス、ケーブルを付加して薄膜型太陽電池モジュールを完成させる。
【0015】
太陽電池モジュールは、多くの場合、屋外に置かれる。従って太陽電池モジュールは過酷な環境にさらされることとなる。また太陽電池モジュールは、10年以上の長期にわたって使用させるべきものであり、耐候性、特に湿気に対しての構造が屋外使用における劣化に影響を及ぼす。シリコン系、CIS系、CIGS系薄膜型太陽電池モジュールは、結晶系に比べ水分、湿気に弱く、耐湿性に対して対策した構造が求められている。
【0016】
これに対し、たとえば水蒸気透過性の低い物質を太陽電池セルの周縁部の吸着材として用いることが特許文献1、2に述べられている。また、特に分子量や添加材料を規定したポリイソブチレンを適用することが特許文献3に述べられている。さらに、特許文献4には、貫通孔の断面に絶縁性封止材と同じ材質の、別体の絶縁性封止材を介在させてラミネート成形させ太陽電池モジュールを完成させる製造方法について述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特願平11−380138号公報
【特許文献2】特開2008−47614号公報
【特許文献3】特開2006−117758号公報
【特許文献4】特許第4314872
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、前記の先行技術の例を適用しても耐湿性の向上効果が期待したほどでないという課題が生じている。
【0019】
本発明は、外部から薄膜型太陽電池モジュール内への湿分、水分の浸入を防止して耐湿性を向上させ、薄膜型太陽電池モジュールの性能劣化を防止、かつ電気絶縁性も確保し薄膜型太陽電池モジュールの耐用年数を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決する本発明の第1は、
「光透過側から順に、少なくとも、0.5m2以上の絶縁透光性基板と、第一電極層と、1以上の光電変換ユニットを含む半導体層と、第二電極層と、絶縁性封止材と、裏面支持材とを備える薄膜型太陽電池モジュールであって、
前記絶縁透光性基板の一主面上に少なくとも前記第一電極層と前記1以上の光電変換ユニットと前記第二電極層とを含む積層体を備え、
前記積層体は、複数の光電変換セルを形成するように直線状で互いに平行な複数本の第一電極層分離溝、半導体層分離溝、および裏面電極層分離溝によってそれぞれ分割され、かつ、それら複数の光電変換セルが前記半導体層分離溝を介して互いに電気的に直列接続されてなる集積型薄膜太陽電池として機能する積層体であって、
前記絶縁透光性基板の前記一主面の周縁部には前記積層体が存在しない裸地部を備え、
前記絶縁性封止材は前記裸地部の一部又は全部と前記積層体とを被覆するものであり、
前記裏面支持材は貫通孔を備え、
前記貫通孔は前記光電変換セルからの電気出力を外部に取り出すための電気出力配線を通過させるための貫通孔であり、
前記貫通孔は少なくとも前記電気出力配線と充填材とによって充填されており、
前記充填材は水蒸気透過率が0.2g/(m2・Day)以下、かつ電気抵抗値が1×1010Ω・cm以上の特性を備え、厚さ1mm以上であることを特徴とする、薄膜型太陽電池モジュール」である。
【0021】
従来技術では太陽電池セルの周端部に水蒸気透過率が低く、吸湿機能やガス吸収機能を有する吸着材を用いることが述べられているが、裏面支持材に設けられた貫通孔の湿分、水分の浸入に対しての構造については述べられていない。裏面支持材に備えられた貫通孔に対しては、太陽電池モジュールの外観不良発生の防止や製造工程の簡素化を目的として、絶縁性封止材を介在させることが述べられているが、耐湿性向上を目的とした構造については述べられていない。従来は、端部からの水分、湿分の浸入を主たる課題と捉えて、対策することで改善されてきた。相対的に、貫通孔からの水分、湿分の浸入については課題と捉えず考えられていなかった。電気出力配線を通過させるための貫通孔には、電気出力配線を通過させるため、電気出力配線と、裏面支持材との隙間を埋めるために、主にシリコーンが用いられてきた。シリコーンは、取扱性の容易さと、電気出力配線の腐食防止という点で好ましい。しかし、シリコーンの水蒸気透過率は、20〜100g/(m2・Day)程度と高く、水分、湿分を透過させてしまう。従来技術に対し、本発明では裏面支持材に設けた貫通孔に水蒸気透過率が0.2g/(m2・Day)以下と低い充填材を充填することを特徴としている。貫通孔からの湿分、水分による太陽電池セルへのダメージは、太陽電池セルの中央付近にダメージを与えることとなり、複数の光電変換セルが半導体層分離溝を介して互いに電気的に直列接続されている集積型薄膜太陽電池にとって、隣接するセルに電流が流れることを妨げる結果となる。そのため薄膜型太陽電池セルの性能を大きく劣化させる。裏面支持材に設けた貫通孔に充填材を充填することで、湿分、水分が薄膜型太陽電池セルに浸入し、セルにダメージを与え、薄膜型太陽電池モジュールの性能を劣化させることを防止する。また、貫通孔には電気出力配線も備えられていることから、充填材は電気抵抗値1×1010Ω・cm以上と高抵抗値である必要がある。
【0022】
また、本発明の第2は、
「前記充填材は、ポリイソブチレン系樹脂、ウレタン系イソブチレン樹脂、およびシリコーン系イソブチレン系樹脂からなる群から選択される1以上である、前記の薄膜型太陽電池モジュール」である。
【0023】
また、本発明の第3は、
「前記充填材は、ポリイソブチレン100重量部に対して、吸湿性をもつ無機充填材が75から100重量部添加された材料である、前記の薄膜型太陽電池モジュール」である。
【0024】
本発明の充填材は、無機充填材に吸湿性を持つ材料を選び、かつポリイソブチレン100重量部に対して、無機充填材を75〜100重量部添加した材料である。無機充填材を75〜100重量部添加することで、硬度が高くなり作業性が低下するが、水蒸気透過率を低くできることと電気抵抗値を高く設計することができ、電気出力配線が備わった貫通孔からの湿分、水分の浸入という課題を克服できる。
【0025】
また、本発明の第4は、
「前記無機充填材は、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト及びタルクからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、前記の薄膜型太陽電池モジュール」である。
【0026】
また、本発明の第5は、
「前記裸地部の一部又は全部と前記積層体とを被覆する前記絶縁性封止材の、前記絶縁透光性基板の前記一主面の平面方向の周縁部には、
前記貫通孔を充填する充填材と同じ材質の材料が、
前記絶縁透光性基板の裸地部と、前記裏面支持材の周縁部と、それぞれに接するように配置されていることを特徴とする、前記の薄膜型太陽電池モジュール」である。
【0027】
太陽電池モジュールの湿分、水分の浸入箇所は、裏面支持材に備えられた貫通孔の他に、先行文献1、2、3で挙げたように周部も考えられる。貫通孔と同じ材質の材料を絶縁透光性基板の周部にも配置することで、薄膜型太陽電池モジュールの周部からの湿分、水分浸入を防ぐことができ、性能劣化の課題を克服する。よって、耐用年数をより一層向上させることができる。
【0028】
また、本発明の第6は、
「前記絶縁透光性基板がガラス板であり、かつ、前記裏面支持材がガラス板である、前記に記載の、薄膜型太陽電池モジュール」である。
【0029】
また、本発明の第7は、
「前記に記載の薄膜型太陽電池モジュールの製造方法であって、前記裏面支持材に設けられた前記貫通孔を、前記電気出力配線と前記充填材とを配置し、ラミネート成型する工程を備えることを特徴とする、薄膜型太陽電池モジュールの製造方法」である。
【0030】
本発明は貫通孔に電気出力配線と充填材を充填させラミネート成型することであり、ラミネートの際の熱により作業性のよくない充填材は一旦やわらかくなり貫通孔に隙間なく埋め尽くされ、その後80℃以下になると充填材は固形化する。よって、貫通孔からの湿分の浸入を完全に防ぐことが出来、薄膜型太陽電池モジュールの耐用年数を向上させることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、裏面支持材に設けた貫通孔に水蒸気透過率が0.2g/(m2・Day)以下、かつ、電気抵抗値が1×1010Ω・cm以上の特性を備え、厚さ1mm以上であることを特徴とする充填材を充填した。これにより、薄膜型太陽電池モジュールの耐湿性が改善され、耐用年数が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】薄膜太陽電池の層構成を簡単に説明する太陽電池の概念図である。
【図2】本発明の実施形態の薄膜太陽電池の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態の薄膜太陽電池の平面図である。
【図4】(a)〜(e)は、本発明による薄膜型太陽電池モジュールの構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】(a)〜(f)は、太陽電池モジュールの製造の各工程を示す基板の断面図である。
【図6】(a)〜(c)は、本実施形態の太陽電池モジュールの製造方法の各工程を示す基板の断面図であって図5に示した工程に続く工程を示すものである。
【図7】(a)は、絶縁透光性基板に光ファイバでレーザ光を導く例を示す概念図である。(b)は、絶縁透光性基板に光学系によってレーザ光を導く例を示す概念図である。
【図8】レーザ光が絶縁透光性基板の周部(裸地部)に照射されている状態を示す側面図である。
【図9】(a)〜(e)本実施形態の太陽電池モジュールの製造方法の各工程を示す基板の断面図
【図10】(a)は、真空ラミネータ内に絶縁透光性基板を配置した状態を示す断面図である。(b)は、絶縁透光性基板を加熱圧着する直前の状態を示す断面図である。(c)は、絶縁透光性基板を加熱圧着している状態を示す断面図である。
【図11】実施例及び比較例の薄膜型太陽電池モジュールの性能を示すグラフ。
【図12】(a)は、本実施形態の製造方法で成膜される太陽電池の層構成を示す概念図である。(b)は、光電変換層が二つ設けられた例の太陽電池の層構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
【0034】
図2は、本発明の実施形態の薄膜型太陽電池モジュールの斜視図である。
【0035】
本実施形態の薄膜太陽電池セル(以下、単に太陽電池と呼ぶ)10は、図1で説明したように絶縁透光性基板に第一電極層と光電変換層と、第二電極層を積層したものである。
【0036】
絶縁透光性基板として、ガラス基板(青板ガラス基板や、白板ガラス基板)、ポリフッ化ビニルフィルム(例えば、テドラーフィルム(登録商標))等のフッ素樹脂フィルムやポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような有機フィルム、アルミニウム等からなる金属箔を、単層構造または複層構造で積層した構造を有する積層フィルムが例示されるが、強度、光線透過率(短波長側・長波長側の光など光線透過率の波長依存性を含む)、工業的に得られる他の素材との比較において価格の点で、白板ガラス基板が好ましい。
【0037】
また太陽電池10は、図2(a)のように複数の光電変換セル4に分割されている。そして太陽電池10を図2のように平面的に観察した時、対向する辺部にリード取付け部50、51が設けられ、当該リード取付け部50、51に各々帯状のリード52が取り付けられている。それぞれの帯状のリード52に半田で熱融着固定された別の帯状のリード(詳しくは後述する電気出力配線203)を中央に向かって伸ばし、裏面支持材の貫通孔から外部に取り出す。このとき、絶縁シート205を帯状リードの下に置く。またリード取付け部50の外側には、分離溝37が形成されている。尚、図2(b)のように、リード52が端部で折り曲げられ、中央まで伸び(詳しくは後述する電気出力配線203)、裏面支持材の貫通孔から外部に取出されていてもよい。
【0038】
さらに絶縁透光性基板1の最も外側の部位は、積層体(詳しくは後述する第一電極層2と光電変換層5と、第二電極層7)が完全に除去された裸地部30となっている。
【0039】
図3のように、絶縁透光性基板1上の裸地部30に充填材と同じ材質の材料の端部封止材60を配置し、絶縁性封止材201を端部封止材60と重ならないように配置した後、端部封止材60と絶縁性封止材201の全面を裏面支持材202で被覆する。尚、絶縁透光性基板1上の積層体及び裸地部30の一部または全部を絶縁性封止材201と裏面支持材202からなる封止層206で被覆しても、信頼性について問題ない。
【0040】
この図において、薄膜型太陽電池モジュール200は、絶縁透光性基板1、太陽電池10、絶縁性封止材201及び裏面支持材202が積層配置される。さらに、電気出力配線203が太陽電池10から外部に導くように配置され、電気出力配線203が取り出される位置は、充填材204により充填されている。また、電気出力配線203と太陽電池10の間には絶縁シート205が配置されており、電気出力配線203と太陽電池10との電気的な導通を防いでいる。
【0041】
薄膜型太陽電池モジュール200の電気出力取り出しは、太陽電池10の電気出力配線203を裏面支持材202に設けた貫通孔を通して裏面支持材202の背面側に取り出すようにしている。尚、裏面支持材202に設けた貫通孔に配置した充填材204の厚みは、1mm以上とする。1mmより薄くすると湿分、水分の浸入を防ぐ効果が十分でなく、1mm以上の場合、効果を十分発揮する。これは、塩化コバルト紙を用いた簡易試験により確認することができる。塩化コバルト紙は、青色の紙で、湿分、水分に触れると赤色に変わるため、水分の検出に用いられる。0.8mmの場合、充填材204が無いのと比較すると大きな差は見られず500時間で塩化コバルト紙の色が赤色に変色した。対して、1mm以上の場合、500時間経過後も塩化コバルト紙の色は赤には変色せず、青色のままであった。
【0042】
よって、(b)のように、裏面支持材202に設けた貫通孔に配置した充填材204の厚みを裏面支持材202の厚みより厚くしてもよい。
【0043】
(c)のように、裏面支持材202と絶縁性封止材201の間に充填材204と同じ材料で貫通孔より大きい封止シート207を配置し、貫通孔にも厚さ1mm以上の充填材204を充填してもよい。
【0044】
また、(d)や(e)にように、裏面支持材202と絶縁シート205の間に充填材204と同じ材料で貫通孔より大きい封止シート207を配置し、貫通孔にも厚さ1mm以上の充填材204を充填してもよい。
【0045】
図4(a)〜(e)の構造で、生産性、コスト、信頼性を満たす最適な構造は(a)であるが、(b)〜(e)の構造でも信頼性については問題ない。
【0046】
加熱により軟化・溶融を経て硬化し得る絶縁性封止材201としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル/トリアリルイソシアヌレート(EVAT)、ポリビニルブチラート(PVB)、ポリイソブチレン(PIB)等の熱可塑樹脂に、パーオキサイド化合物等の架橋剤を添加したものがある。
【0047】
裏面支持材202としては、絶縁透光性基板(例えば、ガラス基板、青板ガラス基板、白板ガラス基板)や、積層フィルム(ポリフッ化ビニルフィルム(例えば、テドラーフィルム(登録商標))等のフッ素樹脂フィルムやポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような有機フィルム、アルミニウム等からなる金属箔を、単層構造または複層構造で積層した構造)が挙げられる。裏面支持材が積層フィルムである場合は、層間剥離により防湿効果が低減する場合が有るため、裏面支持材は絶縁透光性基板と同じ材料すなわちガラス板であることが好ましい。例えば裏面支持材が青板ガラス基板や、白板ガラス基板であるとき、好ましい。裏面支持材として使われるガラスは光線透過率(短波長側・長波長側の光など光線透過率の波長依存性を含む)を気にする必要が無いため、白板ガラスよりも価格の点で安い青板ガラスであることが最も好ましい。
【0048】
充填材204については、水蒸気透過率は、0.2g/(m2・Day)以下が好ましい。この値より高い水蒸気透過率では、IEC61730−2 MST53と同等の手法を用いた時に、良好な結果が得ることができない。なお、水蒸気透過率はJISZ0208により測定した。
【0049】
充填材204の電気抵抗値は1×1010Ω・cm以上が好ましい。この値より低い場合、IEC61730−2 MST17と同等の手法を用いた時に、良好な結果を得ることができない。つまり、1×1010Ω・cm以上より小さければ、IEC61730−2 MST17の規格を満たさない。
【0050】
充填材204の主材料としては、ポリイソブチレン系樹脂、ウレタン系イソブチレン樹脂、およびシリコーン系イソブチレン系樹脂からなる群から選択される1以上を用いることができるが、好ましくは、水蒸気透過率が0.2g/(m2・Day)と最も低いポリイソブチレン系樹脂を用いることが望ましい。
【0051】
また、充填材204には、無機充填材が配合されて・含まれていることが好ましい。無機充填材を配合し・含ませることにより、水分、湿分が無機充填材に吸着し、充填材204全体としての水蒸気透過率を、低くすることできる。無機充填材は、例えば、カーボンブラック、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、タルク、合成ゼオライト、シリカゲル、アルミナなどが使用できる。特にタルクは上記透過性と電気絶縁性の両方を満たす材料として好ましい。これらの無機充填材は、単独だけでなく、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0052】
無機充填材は、ポリイソブチレン100重量部に対して、75重量部から100重量部が望ましい。無機充填材が75重量部よりも低くなると電気絶縁性、水蒸気透過性がともに悪化する。100重量部を超えると、加工性が著しく低下し、塗布することが難しくなる。
【0053】
本発明では、前記充填材は、(1)水蒸気透過率が0.2g/(m2・Day)以下であること、(2)電気抵抗値が1×1010Ω・cm以上の特性を備えること、(3)厚さ1mm以上であること、この3つが組み合わさって初めて、従来技術にはない顕著な効果を発現するものである。例え、(1)、(2)、(3)がそれぞれ単独の形で開示されている先行技術が有ったとしても、その先行技術文献は、本願発明の前記(1)、(2)、(3)の3つが組合わさって初めて発現する・従来技術にはない顕著な効果を記載や示唆するものではないと考える。
【0054】
さらに本発明では、その効果を阻害しない範囲で、通常のゴム配合物に使用される可塑剤や軟化剤、老化防止剤、加工助剤、滑剤、粘着付与剤などを使用できる。
【0055】
成形性を調整するのに利用される軟化剤や可塑剤として、例えば、パラフィン系や、ナフテン系などのプロセスオイルの他、流動パラフィン、シリコンオイル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、リン酸エステル、ステアリン酸エステル、アルキルスルホン酸エステルなどが挙げられる。
【0056】
粘着性を向上させる粘着付与剤には、テルペン系樹脂、あるいは石油系炭化水素樹脂が用いられることが多い。
【0057】
前者の例として、例えばテルペン・フェノール樹脂、ポリテルペン樹脂などが挙げられる。後者のとして、例えば合成ポリテルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族・循環族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂、水添変成循環族系炭化水素樹脂、ポリブテンなどが挙げられる。
【0058】
絶縁シート205としては、ポリフッ化ビニルフィルム(例えば、テドラーフィルム(登録商標))やポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムがある。
【0059】
裏面支持材202に設けられる貫通孔の形状としては、円、楕円、長方形、正方形、多角形が挙げられる。生産性やコストを考慮すると、貫通孔の形状としては、特に円が好ましい。また、貫通孔の大きさについては、好ましくはφ6(直径6mm)〜φ100(直径100mm)、より好ましくはφ10(直径10mm)〜φ70(直径70mm)、最も好ましくはφ15(直径15mm)〜φ25(直径25mm)である。
【0060】
次に本実施形態の太陽電池モジュールの製造方法について説明する。図5は、本実施形態の一つのシリコン系薄膜型太陽電池モジュールの製造方法の各工程を示す基板の断面図である。図6は、本実施形態のシリコン系薄膜型太陽電池モジュールの製造方法の各工程を示す基板の断面図であって図5に示した工程に続く工程を示すものである。
【0061】
本発明の実施形態の薄膜型太陽電池モジュールの製造方法では、最初の工程として図5(a)のように絶縁透光性基板1の上に第一電極層として透明導電膜2を成膜する。絶縁透光性基板1としては、例えば、ガラス板や透明樹脂フィルムなどが用いられる。絶縁透光性基板1の面積は、好ましくは、910mm×455mm以上、より好ましくは、0.5m2以上、さらに好ましくは、1m角(1000mm×1000mm)以上、1.2m角(1200mm×1200mm)以上、1000mm×1400mm以上、最も好ましくは1420mm×1100mm以上の面積である。絶縁透光性基板1の厚さは、3mm、3.2mm、5mmなど、工業的に利用可能な厚さであることが好ましい。ガラス板としては、大面積な板が安価に入手可能で、透明性が高く、絶縁性が高い、二酸化珪素(SiO2)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化カルシウム(CaO)を主成分とする両主面が平滑なフロート板ガラスを用いることができる。
【0062】
透明導電膜2は、ITO膜、酸化錫(SnO2)膜、或いは酸化亜鉛(ZnO)膜のような透明導電性酸化物層等で構成することができる。透明導電膜2は、蒸着法、CVD法、或いはスパッタリング法等それ自体既知の気相堆積法を用いて形成することができる。
【0063】
そして続いて、透明導電膜2に対してレーザスクライブによって第一溝3を形成する。例えばYAG基本波レーザ光を照射して透明導電膜2を短冊状に分割する第一溝3を形成する。
【0064】
レーザスクライブを行うレーザ加工機は、図7(a)に示すファイバーレーザが推奨される。図7(a)に示すように、ファイバーレーザではレーザ発生装置11からレーザ光29の照射対象物の近傍に至るまで光ファイバ28が配置され、レーザ光29が絶縁透光性基板1の太陽電池が形成されない面側から透明導電膜2に照射される。光ファイバ28の先端には照射ノズル(図示せず)が設けてある。また、レーザ発生装置11は、図7(b)に示すようなレーザ発生装置11と光学系34によって構成されたものであってもよい。
【0065】
光学系34は、凹レンズ55、凸レンズ56、反射ミラー57、マスク部材58、及び凸レンズ59が順次配置されたものである。
【0066】
すなわちレーザ発生装置11から発せられたレーザ光は、凹レンズ55によって拡大され、凸レンズ56に入射される。そしてレーザ光29は、当該凸レンズ56で平行ビームに変更される。
【0067】
平行ビームは、反射ミラー57で方向転換され、絶縁透光性基板1に向かい、凸レンズ(対物レンズ)59で集光されて絶縁透光性基板1の太陽電池が形成されない面側から照射されるが、反射ミラー57と凸レンズ(対物レンズ)59の間にマスク部材58が挿入されている。なおマスク部材58の位置は凸レンズ56と反射ミラー57の間でもよい。また、レーザ発生装置11と凹レンズ55の間に光ファイバを配置し、光ファイバでレーザ光を伝送すると、更に装置の安定性が向上し、なお良い。
【0068】
レーザ発生装置11は、前記したYAGの他、公知のYVO4 (ワイ・ブイ・オーフォワー)、YLF等を発生させるレーザ発生装置を使用可能である。本実施形態では、前記した様にYAG基本波レーザ光を使用するが、これらの第二高調波を利用してもよい。
【0069】
レーザ発生装置11は、レーザ光を間欠的に発生させるものであり、パルス光が絶縁透光性基板1の太陽電池が形成されない面側から照射される。
【0070】
続いて透明導電膜2の上に、光電変換機能を備えた半導体からなる光電変換層5を設ける。
【0071】
即ち第一溝3が形成された透明導電膜2全体に渡って、光電変換層5としてアモルファスシリコン及び/又は多結晶シリコンの半導体を、プラズマCVD法等でp型、i型、n型の順に1回以上積層する。
【0072】
このように光電変換層5はアモルファスシリコン及び/又は多結晶シリコン系半導体光電変換層を備えており、例えば、透明導電膜2側からp型シリコン系半導体層、i型シリコン系半導体層、及びn型シリコン系半導体層を順次積層した構造を有する。
【0073】
また、光電変換層5は、これらpin構造を2段積層したタンデム構造、3段積層したトリプル構造等の構造であってもよい。
【0074】
光電変換層5を構成するp型半導体層は、例えば、シリコンまたはシリコンカーバイドやシリコンゲルマニウム等のシリコン合金に、ボロンやアルミニウム等のp導電型決定不純物原子をドープすることにより形成することができる。また、i型半導体層は、非晶質シリコン系半導体材料及び結晶質シリコン系半導体材料でそれぞれ形成することができ、そのような材料としては、真性半導体のシリコン(水素化シリコン等)やシリコンカーバイド及びシリコンゲルマニウム等のシリコン合金等を拳げることができる。また、光電変換機能を十分に備えていれば、微量の導電型決定不純物を含む弱p型もしくは弱n型のシリコン系半導体材料も用いられ得る。さらに、n型半導体層は、シリコンまたはシリコンカーバイドやシリコンゲルマニウム等のシリコン合金に、燐や窒素等のn導電型決定不純物原子をドープすることにより形成することができる。
【0075】
本実施形態では、p型の水素化非晶質炭化シリコン(以下p型のa−SiC:Hと記す)、i型の水素化非晶質炭化シリコン(以下i型のa−Si:Hと記す)、n型の水素化非晶質炭化シリコン(以下n型のa−Si:Hと記す)の3層を順次堆積し、図5(c)のように光電変換層5を形成する。
【0076】
その後、レーザ光を用いたスクライブによって光電変換層5の一部を除去して図5(d)のように第二溝6を設け光電変換層5を短冊状に分割する。第二溝6を設ける際のレーザ光は任意であるが、YAG、YVO4 (ワイ・ブイ・オーフォワー)、YLFやファイバーレーザの採用が推奨される。
【0077】
続いて、図5(e)のように光電変換層5の上に、アルミニウム(Al)や銀(Ag)などの金属材料からなる裏面側電極層7を形成する。
【0078】
裏面側電極層7は電極としての機能を有するだけでなく、絶縁透光性基板1の太陽電池が形成されない面側から光電変換層5に入射し裏面側電極層7に到着した光を反射して光電変換層5に再入射させる反射層としての機能も有している。
【0079】
また裏面側電極層7は、光電変換セル4同士を電気的に接続する機能も果たす。即ち裏面側電極層7の一部は、第二溝6の中にも形成され、第二溝6の中で透明導電膜2と接する。従って裏面側電極層7は、第二溝6の中に導入された裏面側電極層7の一部によって隣接する光電変換セル4の透明導電膜2と電気的に接続される。
【0080】
裏面側電極層7は、銀やアルミニウム等を用いて、蒸着法やスパッタ法等により、例えば200nm〜400nm程度の厚さに形成することができる。
【0081】
なお、裏面側電極層7と光電変換層5との間には、例えば両者の間の接着性を向上させるために、酸化亜鉛(ZnO)のような非金属材料からなる透明電導性薄膜(図示せず)を設けることができる。
【0082】
さらに、図5(f)に示すように、レーザ光を用いたスクライブによって裏面側電極層7と光電変換層5の双方に第三溝35を形成する。第三溝35を設ける際のレーザ光についてもYAG、YVO4 (ワイ・ブイ・オーフォワー)、YLFやファイバーレーザの採用が推奨される。
【0083】
さらに図6(a)に示すように、レーザ光を用いたスクライブによって裏面側電極層7と光電変換層5を切除し、透明導電膜2に至る3列の電極接続用溝36を設ける。
【0084】
また太陽電池積層体の4辺と平行に分離溝37を設ける。分離溝37の形成についてもレーザ光を用いたスクライブによる。分離溝37を設ける際のレーザ光についてもYAG、YVO4 (ワイ・ブイ・オーフォワー)、YLFやファイバーレーザが採用可能である。
【0085】
続いて絶縁透光性基板1の周部(絶縁領域)にレーザ光を用いたスクライブによる裸地部30を形成する。裸地部30を設ける際のレーザ光についてもYAG、YVO4 (ワイ・ブイ・オーフォワー)、YLFやファイバーレーザが採用可能である。
【0086】
裸地部30を形成する際には、図7のようにX−Yテーブル38に絶縁透光性基板を乗せ、絶縁透光性基板の太陽電池積層体が形成されない面側を上にし、絶縁透光性基板の太陽電池が形成される面側を下に向けた姿勢でX−Yテーブル38上に絶縁透光性基板を乗せ、上方からレーザ光を照射する。
【0087】
図8は、レーザ光29が絶縁透光性基板1の周部16(裸地部30)に照射されている状態を示す側面図である。ただし、図8では、X−Yテーブル38と光電変換膜層5及び裏面側電極層7の描写を省略してある。
【0088】
図8に示すように、レーザ光29は絶縁透光性基板1の太陽電池が形成されない面側から照射(入射)される。レーザ光29は、絶縁透光性基板1を素通りするので絶縁透光性基板1を変質させたり変形させることはない。そしてレーザ光29は、絶縁透光性基板1を通過して透明導電膜2に照射され、透明導電膜2を瞬間的に蒸発させる。その時の圧力上昇によって透明導電膜2と共に光電変換層5と裏面側電極層7が剥離する。剥離した膜は、X−Yテーブル38上に落下する。
【0089】
なお、裸地部30にレーザ29を照射する代わりに、粒径(平均)が10μm以下の研磨材を吹き付けて裸地部30を研磨してもよい。
【0090】
続いて、X−Yテーブル38上の太陽電池10を太陽電池が形成されない面側が下に、太陽電池が形成される面側が上となるようにひっくり返し、先の工程で形成した電極接続溝36に半田39を流し込み、積層体の上部にリード52を接続する。
【0091】
続いて図9(a)〜(e)のような工程を経て、充填材204を裏面支持材202の貫通孔に充填する。図9(a)のように、太陽電池10が形成される面側に絶縁シート205を置く。次に、図9(b)のように、両端のリード52から中央に向かって絶縁シート205上に電気出力配線203を配置する。その後、図9(c)のように、絶縁性封止材201を絶縁透光性基板1上の積層体及び裸地部30の一部または全部を覆うように置き、絶縁性封止材201にあらかじめ入れておいたスリットもしくは正方形または長方形または円の切抜いた穴から電気出力配線203を取り出す。さらに、図9(d)のように、裏面支持材202を配置する。その際、裏面支持材202の貫通孔からは電気出力配線203を取り出しておく。続いて、図9(e)のように、貫通孔に充填材204を充填する。最後に、図9(f)のように、離型シート207を貫通孔全体を覆うように配置する。封止する。裏面支持材202が、加熱により軟化・溶融を経て硬化し得る絶縁性封止材201を介して太陽電池10に強固に接着される。貫通孔に充填した充填材204も貫通孔に隙間なく充填される。このとき、絶縁透光性基板1と裏面支持材202との間に充填材206と同じ材料のシーリング材(図示していない)を配置しても良い。
【0092】
封止層206は、図8(a)〜(c)に示すような上チャンバー41と下チャンバー42を備えた真空ラミネータ40と、キュアオーブン(図示せず)を使用して絶縁透光性基板に取り付けられる。
【0093】
図8(a)は、真空ラミネータ40内に絶縁透光性基板を配置した状態を示す断面図であり、図8(b)は、絶縁透光性基板を加熱圧着する直前の状態を示す断面図であり、図8(c)は、絶縁透光性基板を加熱圧着している状態を示す断面図である。
【0094】
真空ラミネータ40の、上チャンバー41は、ダイアフラム44を有し、空隙内の圧力によってダイアフラム44を膨張・収縮させることができる。下チャンバー42は、真空引き用の小孔(図示せず)を有する。
【0095】
また下チャンバー42は加熱機能(ヒータ43)を備えている。
【0096】
本実施形態では、下チャンバー42に絶縁透光性基板を設置し、絶縁透光性基板の太陽電池が形成される面側の上に封止層206を被せ、下チャンバー42を真空引きして絶縁透光性基板1と封止層206の間の空気を抜く。そして上チャンバー41を被せてダイアフラム44を膨張させ、ダイアフラム44で封止層206を絶縁透光性基板1側に押圧しつつ、下チャンバー42を昇温する。その結果、絶縁透光性基板1表面に封止層206が接合される。尚、温度は130℃〜180℃、好ましくは140℃〜160℃である。
【0097】
本実施形態の製造方法で作られた太陽電池10は、裏面支持材202に設けられた貫通孔から太陽電池10に湿分、水分が浸入することはなく、そのため過酷な環境下で使用しても薄膜型太陽電池モジュールの性能劣化を防止し、耐用年数を向上させることができる。
【0098】
なお、前記においてはシリコン系薄膜太陽電池を主に説明した。しかしながら本発明は、いわゆる化合物半導体を用いる薄膜太陽電池においても、本発明の請求項に対応する技術範囲の薄膜太陽電池である限りにおいては、適用可能である。
【0099】
例えば、代表的には2枚のガラス板に光起電力セルを含む形態として知られているCdTe−CdS系太陽電池(CdS/CdTe薄膜太陽電池などとも表現される)などに対しても、ある態様においては、本発明は有効である。CdS/CdTe薄膜太陽電池は、例えば有機金属化合気相成長法、真空蒸着法、電着法、近接昇華法、スクリーン印刷法、スプレー法、などの種々の方法で作製される。その一態様は、例えば硫化カドミウム(CdS)をn型半導体としている太陽電池である。
【0100】
また、例えば、基板を選ばないことが特徴の一つであるCIS系・CIGS系・カルコパイライト系の薄膜多結晶太陽電池などについても、本発明は有効である。カルコパイライト(黄銅鉱)系の薄膜太陽電池では、シリコンの代わりに、銅(Cu)・インジウム(In)・ガリウム(Ga)・セレン(Se)の化合物等が、材料として用いられる。
【0101】
以上のとおり、本発明は、外部から薄膜型太陽電池モジュール内への湿分、水分の浸入を防止して、耐湿性を向上させ薄膜型太陽電池モジュールの性能劣化を防止、かつ電気絶縁性も確保し薄膜型太陽電池モジュールの耐用年数を向上させることを課題とする。裏面支持材に設けた貫通孔に、水蒸気透過率が0.2g/(m2・Day)以下、かつ、電気抵抗値が1×1010Ω・cm以上の特性を備え、厚さ1mm以上の充填材を配置することを特徴とする。これにより、薄膜型太陽電池モジュールの耐湿性が改善され、耐用年数が向上する。
【実施例】
【0102】
次に本発明の具体的な構成と効果を確認するために行った実験について実施例で説明する。
【0103】
本発明の実施例として上記した製造方法にそってアモルファスシリコン太陽電池10を製造した。
【0104】
(実施例)
まず、980mm×950mmの面積と5mmの厚さを有する絶縁透光性基板1上に、透明導電膜2として、熱CVD法による厚さ約700nmの二酸化錫(SnO2)膜を成膜した。この透明導電膜2に対して、YAG基本波レーザ光ビームを照射することにより、第一溝3をパターンニング加工形成した。
【0105】
次に、加工により生じた微粉などを洗浄除去した後、絶縁透光性基板1をプラズマCVD成膜装置に搬入し、厚さ約300nmのアモルファスシリコンからなる光電変換層5を成膜した。CVD装置から絶縁透光性基板1を搬出した後、光電変換層5に絶縁透光性基板1側からYAG第二高調波レーザ光を照射して電極接続用溝として第二溝6を形成した。
【0106】
次に裏面側電極層7として、厚さ約80nmの酸化亜鉛(ZnO)膜と厚さ約200nmの銀(Ag)膜をこの順でスパッタ法で光電変換層5上に成膜した。さらに、裏面側電極層7に絶縁透光性基板1側からYAG第二高調波レーザ光を照射して短冊上に分割し第三溝35を形成した。
【0107】
セル領域と接続領域とを絶縁透光性基板1周囲から絶縁するために、絶縁透光性基板1の周辺に沿ってYAGレーザ光を照射して、透明導電膜(SnO2膜)2、アモルファスシリコン光電変換層5、及び裏面側電極層7を除去し、分離溝37を形成し太陽電池積層体を完成させた。
【0108】
続いて絶縁透光性基板1の辺部に絶縁透光性基板の太陽電池積層体が形成されない面側からYAGレーザ光を照射して、透明導電膜(SnO2膜)2、アモルファスシリコン光電変換層5、及び裏面側電極層7を除去し、裸地部30を形成した。
【0109】
さらに続いて絶縁性封止材201と裏面支持材202からなる封止層206を設けた。絶縁性封止材として厚さ0.6mmのEVA、裏面支持材として厚さ3mmのガラス基板を使用する。ガラス基板に設ける貫通孔はφ20の大きさとした。その貫通孔は、光電変換セルからの電気出力を外部に取り出すための電気出力配線を通過させるための貫通孔として用いられ、電気出力配線203が通され、重量1.3gの前述した充填材204が配置され、次の工程に供された。
【0110】
なお、充填材204は、ポリイソブチレンに無機充填材としてタルクを添加し、ポリイソブチレン100重量部に対して無機充填材は83重量部であり、密度が1.35g/cm3の材料である。
【0111】
封止層206は、図8(a)〜(c)に示すような上チャンバー41と下チャンバー42を備えた真空ラミネータ40と、キュアオーブン(図示せず)を使用して絶縁透光性基板に取り付けられる。下チャンバー42に絶縁透光性基板を設置し、絶縁透光性基板の太陽電池が形成される面側の上に封止層206を被せ、下チャンバー42を真空引きして絶縁透光性基板1と封止層206の間の空気を抜く。そして上チャンバー41を被せてダイアフラム44を膨張させ、ダイアフラム44で封止層206を絶縁透光性基板1側に押圧しつつ、下チャンバー42を昇温する。その結果、絶縁透光性基板1表面に封止層206が接合される。尚、温度は150℃である。
【0112】
以上のようにして、ラミネータで封止すると、充填材204は、厚さ3mmで貫通孔に隙間なく充填され、面積がほぼ82.67cm2の光電変換セル4が108個直列接続した太陽電池10を得た。
【0113】
すなわち、本実施例においては、前記充填材は水蒸気透過率が0.2g/(m2・Day)以下、かつ電気抵抗値が1×1010Ω・cm以上の特性を備え、厚さ1mm以上であった。
【0114】
(比較例1)
一方、比較例1として貫通孔に充填材204はなく、電気出力配線203のみで充填された太陽電池を製造した。
【0115】
実施例及び比較例の薄膜型太陽電池モジュールをそれぞれ2個製造し、これらをIEC61646−10.13に記載されているDamp heat testを行った。つまり、実施例及び比較例の薄膜型太陽電池モジュールを温度85℃、湿度85%RHの雰囲気中に暴露し、時間の経過と出力の低下の度合いを調査した。
【0116】
結果は、図9の通りである。初期の出力に対し95%以上の出力を維持することができた時間は、比較例の薄膜型太陽電池モジュールを1とすると、実施例の薄膜型太陽電池モジュールは、1.6倍以上であった。薄膜型太陽モジュールの性能劣化を防ぐことができ、耐湿性を大幅に向上させることができた。
【0117】
以上、説明した構成は、図10(a)、(b)のいずれの形態の太陽電池10、12においても実施することができる。
【0118】
図10(a)は、本実施形態の製造方法で成膜される太陽電池10の層構成を示す概念図である。図10(a)に示した光電変換層5は、透明導電膜2に近い側から順にp型シリコン系半導体層、i型シリコン系半導体層、SiO層34(反射層)、及びn型シリコン系半導体層の四層構造となっている。光電変換層5の全体の厚みは、例えば0.1〜3.0μmである。これに対して、SiO等の反射層34の厚みは、例えば50〜800オングストロームである。
【0119】
反射層34は、Cap層とも称されるものであり、シリコンオキサイドが代表的に用いられる。反射層34には、結晶質シリコン成分が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0120】
また、反射層34としては、シリコンオキサイドの代わりに、シリコンナイトライド、シリコンカーバイド、シリコンオキシナイトライド、シリコンオキシカーバイド等、シリコンに窒素、炭素、酸素のいずれか一つ以上の元素が含まれる層であってもよい。
【0121】
次に本発明の第二の実施形態について説明する。
【0122】
上記した実施形態は、p型シリコン系半導体層、i型シリコン系半導体層、及びn型シリコン系半導体層が一組となって構成される光電変換層5を一層だけ設けた例であったが、これを複数設ける太陽電池に本発明を適用することもできる。
【0123】
即ち前記したpin構造を2段積層したタンデム構造、3段積層したトリプル構造等の構造に本発明を適用してもよい。またハイブリッド構造と称される様な構成の太陽電池モジュールに本発明を適用することもできる。
【0124】
図10(b)は、光電変換層が二つ設けられた例の太陽電池12の層構成を示す概念図である。
【0125】
本実施形態の太陽電池12では、p型シリコン系半導体層、i型シリコン系半導体層、及びn型シリコン系半導体層が一組となって構成される第一光電変換層45と、同じくp型シリコン系半導体層、i型シリコン系半導体層、及びn型シリコン系半導体層が一組となって構成される第二光電変換層46とが積層されたものである。
【0126】
また第一光電変換層45と第二光電変換層46との間に中間層18(反射層)が設けられている。
【0127】
より詳細に説明すると、第一光電変換層45は、a−Si(アモルファスシリコン)によって構成された光電変換層である。一方、第二光電変換層46は、p−Si(ポリシリコン)によって構成された光電変換層である。第二光電変換層46は、四層構造であり、透明導電膜2に近い側から順にp型シリコン系半導体層層、i型シリコン系半導体層、SiO層19(反射層)、及びn型シリコン系半導体層の四層構造となっている。第二光電変換膜46の全体の厚みは、例えば0.1〜3.0μmである。これに対して、SiO等の反射層19の厚みは、例えば50〜800オングストロームである。
【0128】
中間層18は、反射層として機能するものであり、シリコンオキサイド(SiO)が代表的に用いられる。反射層18には、結晶質シリコン成分が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0129】
また、反射層18としては、シリコンオキサイドの代わりに、シリコンナイトライド、シリコンカーバイド、シリコンオキシナイトライド、シリコンオキシカーバイド等、シリコンに窒素、炭素、酸素のいずれか一つ以上の元素が含まれる層であってもよい。
【0130】
本実施形態の製造方法で製造する太陽電池12は、貫通孔からの湿分、水分の浸入を防ぐことで耐湿性が向上すると共に、絶縁透光性基板1側から浸入した光が、中間層18と反射層19(Cap層)で主に反射され、a−Siのi層とp−Siのi層の中を光が往復する。これにより発電効率が向上する。
【0131】
(比較例2)
比較例2として、貫通孔に電気出力配線203と、0.8mm厚みの充填材204が充填された太陽電池を製造した。その場合、比較例1と同じく相対比1〜1.2の間で初期の出力に対し95%以下となった。
【符号の説明】
【0132】
1 絶縁透光性基板
2 透明導電膜(第一電極層)
5 光電変換層
6 第二溝(電極接続用溝)
7 裏面側電極層(第二電極層)
10 薄膜太陽電池
11 レーザ発生装置
16 周辺領域(絶縁領域)
200 薄膜型太陽電池モジュール
201 絶縁性封止材
202 裏面支持材
203 電気出力配線
204 充填材
205 絶縁シート
206 封止層
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁透光性基板に電極層と発電層とを積層して得られる薄膜型太陽電池モジュール及び薄膜型太陽電池モジュールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無尽蔵に降り注ぐ太陽エネルギーを利用して発電することができ、且つ排気ガスを排出することなくクリーンであり、さらに放射能を放出するといった危険もなく安全であることから、太陽電池が注目を集めている。
【0003】
特に絶縁透光性基板に透明な第一電極と光電変換層と第二電極を積層して得られる薄膜型太陽電池は、使用している材料が少なく、資源枯渇の問題が少ないために注目されている。
【0004】
図1は、薄膜型太陽電池の層構成を簡単に説明する概念図の一例である。薄膜型太陽電池105の層構成は、絶縁透光性基板101に第一電極層102と光電変換層103(具体的にはp層、i層、n層を持つ)及び第二電極層104が順次積層されたものであるが、各層に溝110、111、113が形成されている。
【0005】
すなわち第一電極層102に第一溝110が形成され、第一電極層102が複数に分割されている。また光電変換層103には第二溝111が形成され、光電変換層103が複数に分割され、さらに当該第二溝111の中に第二電極層104の一部が進入して溝底部で第一電極層102と接している。
【0006】
さらに第二電極層104と光電変換層103を切除して第一電極層102の表面に至る第三溝113が設けられている。
【0007】
また薄膜型太陽電池105の端部近傍には、第二電極層104と光電変換層103を切除して第一電極層102に至る3列の電極接続溝116が設けられている。電極接続溝116には半田117が流し込まれ、積層体の上部に配されたリード118が接続されている。リード118は半田117を介して第一電極層102と連通している。図示していないが、第二電極層104も別のリード118と半田117を介して電気的に連通している。
【0008】
また電極接続溝116の外側には、分離溝119が形成されている。
【0009】
さらに絶縁透光性基板101の最も外側の部位は、積層体が除去された裸地部120となっている。
【0010】
また薄膜型太陽電池105の表面は絶縁性封止材と裏面支持材が覆い外部環境から温度や水分の浸入、応力から太陽電池セルを保護している。
【0011】
薄膜型太陽電池105は、第一電極層102に設けられた第一溝110と、光電変換層103及び第二電極層104に設けられた第三溝113によって各薄膜が区画され、独立したセルが形成されている。そして前記した様に、第二溝111の中に第二電極層104の一部が進入し、第二電極層104の一部が第一電極層102と接しており、一つのセルは隣接するセルと電気的に直列に接続されている。
【0012】
すなわち光電変換層103で発生した電流は、第一電極層102側から第二電極層104側に向かって流れるが、第二電極層104の一部が第二溝111を介して第一電極層102と接しており、最初のセルで発生した電流が隣のセルの第一電極層102に流れる。そのため電圧が順次加算されていく。
【0013】
そして電力は、端部に設けられたリード118によって外部に取り出される。
【0014】
このような構成に、適宜枠等の構造材料や端子ボックス、ケーブルを付加して薄膜型太陽電池モジュールを完成させる。
【0015】
太陽電池モジュールは、多くの場合、屋外に置かれる。従って太陽電池モジュールは過酷な環境にさらされることとなる。また太陽電池モジュールは、10年以上の長期にわたって使用させるべきものであり、耐候性、特に湿気に対しての構造が屋外使用における劣化に影響を及ぼす。シリコン系、CIS系、CIGS系薄膜型太陽電池モジュールは、結晶系に比べ水分、湿気に弱く、耐湿性に対して対策した構造が求められている。
【0016】
これに対し、たとえば水蒸気透過性の低い物質を太陽電池セルの周縁部の吸着材として用いることが特許文献1、2に述べられている。また、特に分子量や添加材料を規定したポリイソブチレンを適用することが特許文献3に述べられている。さらに、特許文献4には、貫通孔の断面に絶縁性封止材と同じ材質の、別体の絶縁性封止材を介在させてラミネート成形させ太陽電池モジュールを完成させる製造方法について述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特願平11−380138号公報
【特許文献2】特開2008−47614号公報
【特許文献3】特開2006−117758号公報
【特許文献4】特許第4314872
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、前記の先行技術の例を適用しても耐湿性の向上効果が期待したほどでないという課題が生じている。
【0019】
本発明は、外部から薄膜型太陽電池モジュール内への湿分、水分の浸入を防止して耐湿性を向上させ、薄膜型太陽電池モジュールの性能劣化を防止、かつ電気絶縁性も確保し薄膜型太陽電池モジュールの耐用年数を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決する本発明の第1は、
「光透過側から順に、少なくとも、0.5m2以上の絶縁透光性基板と、第一電極層と、1以上の光電変換ユニットを含む半導体層と、第二電極層と、絶縁性封止材と、裏面支持材とを備える薄膜型太陽電池モジュールであって、
前記絶縁透光性基板の一主面上に少なくとも前記第一電極層と前記1以上の光電変換ユニットと前記第二電極層とを含む積層体を備え、
前記積層体は、複数の光電変換セルを形成するように直線状で互いに平行な複数本の第一電極層分離溝、半導体層分離溝、および裏面電極層分離溝によってそれぞれ分割され、かつ、それら複数の光電変換セルが前記半導体層分離溝を介して互いに電気的に直列接続されてなる集積型薄膜太陽電池として機能する積層体であって、
前記絶縁透光性基板の前記一主面の周縁部には前記積層体が存在しない裸地部を備え、
前記絶縁性封止材は前記裸地部の一部又は全部と前記積層体とを被覆するものであり、
前記裏面支持材は貫通孔を備え、
前記貫通孔は前記光電変換セルからの電気出力を外部に取り出すための電気出力配線を通過させるための貫通孔であり、
前記貫通孔は少なくとも前記電気出力配線と充填材とによって充填されており、
前記充填材は水蒸気透過率が0.2g/(m2・Day)以下、かつ電気抵抗値が1×1010Ω・cm以上の特性を備え、厚さ1mm以上であることを特徴とする、薄膜型太陽電池モジュール」である。
【0021】
従来技術では太陽電池セルの周端部に水蒸気透過率が低く、吸湿機能やガス吸収機能を有する吸着材を用いることが述べられているが、裏面支持材に設けられた貫通孔の湿分、水分の浸入に対しての構造については述べられていない。裏面支持材に備えられた貫通孔に対しては、太陽電池モジュールの外観不良発生の防止や製造工程の簡素化を目的として、絶縁性封止材を介在させることが述べられているが、耐湿性向上を目的とした構造については述べられていない。従来は、端部からの水分、湿分の浸入を主たる課題と捉えて、対策することで改善されてきた。相対的に、貫通孔からの水分、湿分の浸入については課題と捉えず考えられていなかった。電気出力配線を通過させるための貫通孔には、電気出力配線を通過させるため、電気出力配線と、裏面支持材との隙間を埋めるために、主にシリコーンが用いられてきた。シリコーンは、取扱性の容易さと、電気出力配線の腐食防止という点で好ましい。しかし、シリコーンの水蒸気透過率は、20〜100g/(m2・Day)程度と高く、水分、湿分を透過させてしまう。従来技術に対し、本発明では裏面支持材に設けた貫通孔に水蒸気透過率が0.2g/(m2・Day)以下と低い充填材を充填することを特徴としている。貫通孔からの湿分、水分による太陽電池セルへのダメージは、太陽電池セルの中央付近にダメージを与えることとなり、複数の光電変換セルが半導体層分離溝を介して互いに電気的に直列接続されている集積型薄膜太陽電池にとって、隣接するセルに電流が流れることを妨げる結果となる。そのため薄膜型太陽電池セルの性能を大きく劣化させる。裏面支持材に設けた貫通孔に充填材を充填することで、湿分、水分が薄膜型太陽電池セルに浸入し、セルにダメージを与え、薄膜型太陽電池モジュールの性能を劣化させることを防止する。また、貫通孔には電気出力配線も備えられていることから、充填材は電気抵抗値1×1010Ω・cm以上と高抵抗値である必要がある。
【0022】
また、本発明の第2は、
「前記充填材は、ポリイソブチレン系樹脂、ウレタン系イソブチレン樹脂、およびシリコーン系イソブチレン系樹脂からなる群から選択される1以上である、前記の薄膜型太陽電池モジュール」である。
【0023】
また、本発明の第3は、
「前記充填材は、ポリイソブチレン100重量部に対して、吸湿性をもつ無機充填材が75から100重量部添加された材料である、前記の薄膜型太陽電池モジュール」である。
【0024】
本発明の充填材は、無機充填材に吸湿性を持つ材料を選び、かつポリイソブチレン100重量部に対して、無機充填材を75〜100重量部添加した材料である。無機充填材を75〜100重量部添加することで、硬度が高くなり作業性が低下するが、水蒸気透過率を低くできることと電気抵抗値を高く設計することができ、電気出力配線が備わった貫通孔からの湿分、水分の浸入という課題を克服できる。
【0025】
また、本発明の第4は、
「前記無機充填材は、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト及びタルクからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、前記の薄膜型太陽電池モジュール」である。
【0026】
また、本発明の第5は、
「前記裸地部の一部又は全部と前記積層体とを被覆する前記絶縁性封止材の、前記絶縁透光性基板の前記一主面の平面方向の周縁部には、
前記貫通孔を充填する充填材と同じ材質の材料が、
前記絶縁透光性基板の裸地部と、前記裏面支持材の周縁部と、それぞれに接するように配置されていることを特徴とする、前記の薄膜型太陽電池モジュール」である。
【0027】
太陽電池モジュールの湿分、水分の浸入箇所は、裏面支持材に備えられた貫通孔の他に、先行文献1、2、3で挙げたように周部も考えられる。貫通孔と同じ材質の材料を絶縁透光性基板の周部にも配置することで、薄膜型太陽電池モジュールの周部からの湿分、水分浸入を防ぐことができ、性能劣化の課題を克服する。よって、耐用年数をより一層向上させることができる。
【0028】
また、本発明の第6は、
「前記絶縁透光性基板がガラス板であり、かつ、前記裏面支持材がガラス板である、前記に記載の、薄膜型太陽電池モジュール」である。
【0029】
また、本発明の第7は、
「前記に記載の薄膜型太陽電池モジュールの製造方法であって、前記裏面支持材に設けられた前記貫通孔を、前記電気出力配線と前記充填材とを配置し、ラミネート成型する工程を備えることを特徴とする、薄膜型太陽電池モジュールの製造方法」である。
【0030】
本発明は貫通孔に電気出力配線と充填材を充填させラミネート成型することであり、ラミネートの際の熱により作業性のよくない充填材は一旦やわらかくなり貫通孔に隙間なく埋め尽くされ、その後80℃以下になると充填材は固形化する。よって、貫通孔からの湿分の浸入を完全に防ぐことが出来、薄膜型太陽電池モジュールの耐用年数を向上させることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、裏面支持材に設けた貫通孔に水蒸気透過率が0.2g/(m2・Day)以下、かつ、電気抵抗値が1×1010Ω・cm以上の特性を備え、厚さ1mm以上であることを特徴とする充填材を充填した。これにより、薄膜型太陽電池モジュールの耐湿性が改善され、耐用年数が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】薄膜太陽電池の層構成を簡単に説明する太陽電池の概念図である。
【図2】本発明の実施形態の薄膜太陽電池の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態の薄膜太陽電池の平面図である。
【図4】(a)〜(e)は、本発明による薄膜型太陽電池モジュールの構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】(a)〜(f)は、太陽電池モジュールの製造の各工程を示す基板の断面図である。
【図6】(a)〜(c)は、本実施形態の太陽電池モジュールの製造方法の各工程を示す基板の断面図であって図5に示した工程に続く工程を示すものである。
【図7】(a)は、絶縁透光性基板に光ファイバでレーザ光を導く例を示す概念図である。(b)は、絶縁透光性基板に光学系によってレーザ光を導く例を示す概念図である。
【図8】レーザ光が絶縁透光性基板の周部(裸地部)に照射されている状態を示す側面図である。
【図9】(a)〜(e)本実施形態の太陽電池モジュールの製造方法の各工程を示す基板の断面図
【図10】(a)は、真空ラミネータ内に絶縁透光性基板を配置した状態を示す断面図である。(b)は、絶縁透光性基板を加熱圧着する直前の状態を示す断面図である。(c)は、絶縁透光性基板を加熱圧着している状態を示す断面図である。
【図11】実施例及び比較例の薄膜型太陽電池モジュールの性能を示すグラフ。
【図12】(a)は、本実施形態の製造方法で成膜される太陽電池の層構成を示す概念図である。(b)は、光電変換層が二つ設けられた例の太陽電池の層構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
【0034】
図2は、本発明の実施形態の薄膜型太陽電池モジュールの斜視図である。
【0035】
本実施形態の薄膜太陽電池セル(以下、単に太陽電池と呼ぶ)10は、図1で説明したように絶縁透光性基板に第一電極層と光電変換層と、第二電極層を積層したものである。
【0036】
絶縁透光性基板として、ガラス基板(青板ガラス基板や、白板ガラス基板)、ポリフッ化ビニルフィルム(例えば、テドラーフィルム(登録商標))等のフッ素樹脂フィルムやポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような有機フィルム、アルミニウム等からなる金属箔を、単層構造または複層構造で積層した構造を有する積層フィルムが例示されるが、強度、光線透過率(短波長側・長波長側の光など光線透過率の波長依存性を含む)、工業的に得られる他の素材との比較において価格の点で、白板ガラス基板が好ましい。
【0037】
また太陽電池10は、図2(a)のように複数の光電変換セル4に分割されている。そして太陽電池10を図2のように平面的に観察した時、対向する辺部にリード取付け部50、51が設けられ、当該リード取付け部50、51に各々帯状のリード52が取り付けられている。それぞれの帯状のリード52に半田で熱融着固定された別の帯状のリード(詳しくは後述する電気出力配線203)を中央に向かって伸ばし、裏面支持材の貫通孔から外部に取り出す。このとき、絶縁シート205を帯状リードの下に置く。またリード取付け部50の外側には、分離溝37が形成されている。尚、図2(b)のように、リード52が端部で折り曲げられ、中央まで伸び(詳しくは後述する電気出力配線203)、裏面支持材の貫通孔から外部に取出されていてもよい。
【0038】
さらに絶縁透光性基板1の最も外側の部位は、積層体(詳しくは後述する第一電極層2と光電変換層5と、第二電極層7)が完全に除去された裸地部30となっている。
【0039】
図3のように、絶縁透光性基板1上の裸地部30に充填材と同じ材質の材料の端部封止材60を配置し、絶縁性封止材201を端部封止材60と重ならないように配置した後、端部封止材60と絶縁性封止材201の全面を裏面支持材202で被覆する。尚、絶縁透光性基板1上の積層体及び裸地部30の一部または全部を絶縁性封止材201と裏面支持材202からなる封止層206で被覆しても、信頼性について問題ない。
【0040】
この図において、薄膜型太陽電池モジュール200は、絶縁透光性基板1、太陽電池10、絶縁性封止材201及び裏面支持材202が積層配置される。さらに、電気出力配線203が太陽電池10から外部に導くように配置され、電気出力配線203が取り出される位置は、充填材204により充填されている。また、電気出力配線203と太陽電池10の間には絶縁シート205が配置されており、電気出力配線203と太陽電池10との電気的な導通を防いでいる。
【0041】
薄膜型太陽電池モジュール200の電気出力取り出しは、太陽電池10の電気出力配線203を裏面支持材202に設けた貫通孔を通して裏面支持材202の背面側に取り出すようにしている。尚、裏面支持材202に設けた貫通孔に配置した充填材204の厚みは、1mm以上とする。1mmより薄くすると湿分、水分の浸入を防ぐ効果が十分でなく、1mm以上の場合、効果を十分発揮する。これは、塩化コバルト紙を用いた簡易試験により確認することができる。塩化コバルト紙は、青色の紙で、湿分、水分に触れると赤色に変わるため、水分の検出に用いられる。0.8mmの場合、充填材204が無いのと比較すると大きな差は見られず500時間で塩化コバルト紙の色が赤色に変色した。対して、1mm以上の場合、500時間経過後も塩化コバルト紙の色は赤には変色せず、青色のままであった。
【0042】
よって、(b)のように、裏面支持材202に設けた貫通孔に配置した充填材204の厚みを裏面支持材202の厚みより厚くしてもよい。
【0043】
(c)のように、裏面支持材202と絶縁性封止材201の間に充填材204と同じ材料で貫通孔より大きい封止シート207を配置し、貫通孔にも厚さ1mm以上の充填材204を充填してもよい。
【0044】
また、(d)や(e)にように、裏面支持材202と絶縁シート205の間に充填材204と同じ材料で貫通孔より大きい封止シート207を配置し、貫通孔にも厚さ1mm以上の充填材204を充填してもよい。
【0045】
図4(a)〜(e)の構造で、生産性、コスト、信頼性を満たす最適な構造は(a)であるが、(b)〜(e)の構造でも信頼性については問題ない。
【0046】
加熱により軟化・溶融を経て硬化し得る絶縁性封止材201としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル/トリアリルイソシアヌレート(EVAT)、ポリビニルブチラート(PVB)、ポリイソブチレン(PIB)等の熱可塑樹脂に、パーオキサイド化合物等の架橋剤を添加したものがある。
【0047】
裏面支持材202としては、絶縁透光性基板(例えば、ガラス基板、青板ガラス基板、白板ガラス基板)や、積層フィルム(ポリフッ化ビニルフィルム(例えば、テドラーフィルム(登録商標))等のフッ素樹脂フィルムやポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような有機フィルム、アルミニウム等からなる金属箔を、単層構造または複層構造で積層した構造)が挙げられる。裏面支持材が積層フィルムである場合は、層間剥離により防湿効果が低減する場合が有るため、裏面支持材は絶縁透光性基板と同じ材料すなわちガラス板であることが好ましい。例えば裏面支持材が青板ガラス基板や、白板ガラス基板であるとき、好ましい。裏面支持材として使われるガラスは光線透過率(短波長側・長波長側の光など光線透過率の波長依存性を含む)を気にする必要が無いため、白板ガラスよりも価格の点で安い青板ガラスであることが最も好ましい。
【0048】
充填材204については、水蒸気透過率は、0.2g/(m2・Day)以下が好ましい。この値より高い水蒸気透過率では、IEC61730−2 MST53と同等の手法を用いた時に、良好な結果が得ることができない。なお、水蒸気透過率はJISZ0208により測定した。
【0049】
充填材204の電気抵抗値は1×1010Ω・cm以上が好ましい。この値より低い場合、IEC61730−2 MST17と同等の手法を用いた時に、良好な結果を得ることができない。つまり、1×1010Ω・cm以上より小さければ、IEC61730−2 MST17の規格を満たさない。
【0050】
充填材204の主材料としては、ポリイソブチレン系樹脂、ウレタン系イソブチレン樹脂、およびシリコーン系イソブチレン系樹脂からなる群から選択される1以上を用いることができるが、好ましくは、水蒸気透過率が0.2g/(m2・Day)と最も低いポリイソブチレン系樹脂を用いることが望ましい。
【0051】
また、充填材204には、無機充填材が配合されて・含まれていることが好ましい。無機充填材を配合し・含ませることにより、水分、湿分が無機充填材に吸着し、充填材204全体としての水蒸気透過率を、低くすることできる。無機充填材は、例えば、カーボンブラック、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、タルク、合成ゼオライト、シリカゲル、アルミナなどが使用できる。特にタルクは上記透過性と電気絶縁性の両方を満たす材料として好ましい。これらの無機充填材は、単独だけでなく、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0052】
無機充填材は、ポリイソブチレン100重量部に対して、75重量部から100重量部が望ましい。無機充填材が75重量部よりも低くなると電気絶縁性、水蒸気透過性がともに悪化する。100重量部を超えると、加工性が著しく低下し、塗布することが難しくなる。
【0053】
本発明では、前記充填材は、(1)水蒸気透過率が0.2g/(m2・Day)以下であること、(2)電気抵抗値が1×1010Ω・cm以上の特性を備えること、(3)厚さ1mm以上であること、この3つが組み合わさって初めて、従来技術にはない顕著な効果を発現するものである。例え、(1)、(2)、(3)がそれぞれ単独の形で開示されている先行技術が有ったとしても、その先行技術文献は、本願発明の前記(1)、(2)、(3)の3つが組合わさって初めて発現する・従来技術にはない顕著な効果を記載や示唆するものではないと考える。
【0054】
さらに本発明では、その効果を阻害しない範囲で、通常のゴム配合物に使用される可塑剤や軟化剤、老化防止剤、加工助剤、滑剤、粘着付与剤などを使用できる。
【0055】
成形性を調整するのに利用される軟化剤や可塑剤として、例えば、パラフィン系や、ナフテン系などのプロセスオイルの他、流動パラフィン、シリコンオイル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、リン酸エステル、ステアリン酸エステル、アルキルスルホン酸エステルなどが挙げられる。
【0056】
粘着性を向上させる粘着付与剤には、テルペン系樹脂、あるいは石油系炭化水素樹脂が用いられることが多い。
【0057】
前者の例として、例えばテルペン・フェノール樹脂、ポリテルペン樹脂などが挙げられる。後者のとして、例えば合成ポリテルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族・循環族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂、水添変成循環族系炭化水素樹脂、ポリブテンなどが挙げられる。
【0058】
絶縁シート205としては、ポリフッ化ビニルフィルム(例えば、テドラーフィルム(登録商標))やポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムがある。
【0059】
裏面支持材202に設けられる貫通孔の形状としては、円、楕円、長方形、正方形、多角形が挙げられる。生産性やコストを考慮すると、貫通孔の形状としては、特に円が好ましい。また、貫通孔の大きさについては、好ましくはφ6(直径6mm)〜φ100(直径100mm)、より好ましくはφ10(直径10mm)〜φ70(直径70mm)、最も好ましくはφ15(直径15mm)〜φ25(直径25mm)である。
【0060】
次に本実施形態の太陽電池モジュールの製造方法について説明する。図5は、本実施形態の一つのシリコン系薄膜型太陽電池モジュールの製造方法の各工程を示す基板の断面図である。図6は、本実施形態のシリコン系薄膜型太陽電池モジュールの製造方法の各工程を示す基板の断面図であって図5に示した工程に続く工程を示すものである。
【0061】
本発明の実施形態の薄膜型太陽電池モジュールの製造方法では、最初の工程として図5(a)のように絶縁透光性基板1の上に第一電極層として透明導電膜2を成膜する。絶縁透光性基板1としては、例えば、ガラス板や透明樹脂フィルムなどが用いられる。絶縁透光性基板1の面積は、好ましくは、910mm×455mm以上、より好ましくは、0.5m2以上、さらに好ましくは、1m角(1000mm×1000mm)以上、1.2m角(1200mm×1200mm)以上、1000mm×1400mm以上、最も好ましくは1420mm×1100mm以上の面積である。絶縁透光性基板1の厚さは、3mm、3.2mm、5mmなど、工業的に利用可能な厚さであることが好ましい。ガラス板としては、大面積な板が安価に入手可能で、透明性が高く、絶縁性が高い、二酸化珪素(SiO2)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化カルシウム(CaO)を主成分とする両主面が平滑なフロート板ガラスを用いることができる。
【0062】
透明導電膜2は、ITO膜、酸化錫(SnO2)膜、或いは酸化亜鉛(ZnO)膜のような透明導電性酸化物層等で構成することができる。透明導電膜2は、蒸着法、CVD法、或いはスパッタリング法等それ自体既知の気相堆積法を用いて形成することができる。
【0063】
そして続いて、透明導電膜2に対してレーザスクライブによって第一溝3を形成する。例えばYAG基本波レーザ光を照射して透明導電膜2を短冊状に分割する第一溝3を形成する。
【0064】
レーザスクライブを行うレーザ加工機は、図7(a)に示すファイバーレーザが推奨される。図7(a)に示すように、ファイバーレーザではレーザ発生装置11からレーザ光29の照射対象物の近傍に至るまで光ファイバ28が配置され、レーザ光29が絶縁透光性基板1の太陽電池が形成されない面側から透明導電膜2に照射される。光ファイバ28の先端には照射ノズル(図示せず)が設けてある。また、レーザ発生装置11は、図7(b)に示すようなレーザ発生装置11と光学系34によって構成されたものであってもよい。
【0065】
光学系34は、凹レンズ55、凸レンズ56、反射ミラー57、マスク部材58、及び凸レンズ59が順次配置されたものである。
【0066】
すなわちレーザ発生装置11から発せられたレーザ光は、凹レンズ55によって拡大され、凸レンズ56に入射される。そしてレーザ光29は、当該凸レンズ56で平行ビームに変更される。
【0067】
平行ビームは、反射ミラー57で方向転換され、絶縁透光性基板1に向かい、凸レンズ(対物レンズ)59で集光されて絶縁透光性基板1の太陽電池が形成されない面側から照射されるが、反射ミラー57と凸レンズ(対物レンズ)59の間にマスク部材58が挿入されている。なおマスク部材58の位置は凸レンズ56と反射ミラー57の間でもよい。また、レーザ発生装置11と凹レンズ55の間に光ファイバを配置し、光ファイバでレーザ光を伝送すると、更に装置の安定性が向上し、なお良い。
【0068】
レーザ発生装置11は、前記したYAGの他、公知のYVO4 (ワイ・ブイ・オーフォワー)、YLF等を発生させるレーザ発生装置を使用可能である。本実施形態では、前記した様にYAG基本波レーザ光を使用するが、これらの第二高調波を利用してもよい。
【0069】
レーザ発生装置11は、レーザ光を間欠的に発生させるものであり、パルス光が絶縁透光性基板1の太陽電池が形成されない面側から照射される。
【0070】
続いて透明導電膜2の上に、光電変換機能を備えた半導体からなる光電変換層5を設ける。
【0071】
即ち第一溝3が形成された透明導電膜2全体に渡って、光電変換層5としてアモルファスシリコン及び/又は多結晶シリコンの半導体を、プラズマCVD法等でp型、i型、n型の順に1回以上積層する。
【0072】
このように光電変換層5はアモルファスシリコン及び/又は多結晶シリコン系半導体光電変換層を備えており、例えば、透明導電膜2側からp型シリコン系半導体層、i型シリコン系半導体層、及びn型シリコン系半導体層を順次積層した構造を有する。
【0073】
また、光電変換層5は、これらpin構造を2段積層したタンデム構造、3段積層したトリプル構造等の構造であってもよい。
【0074】
光電変換層5を構成するp型半導体層は、例えば、シリコンまたはシリコンカーバイドやシリコンゲルマニウム等のシリコン合金に、ボロンやアルミニウム等のp導電型決定不純物原子をドープすることにより形成することができる。また、i型半導体層は、非晶質シリコン系半導体材料及び結晶質シリコン系半導体材料でそれぞれ形成することができ、そのような材料としては、真性半導体のシリコン(水素化シリコン等)やシリコンカーバイド及びシリコンゲルマニウム等のシリコン合金等を拳げることができる。また、光電変換機能を十分に備えていれば、微量の導電型決定不純物を含む弱p型もしくは弱n型のシリコン系半導体材料も用いられ得る。さらに、n型半導体層は、シリコンまたはシリコンカーバイドやシリコンゲルマニウム等のシリコン合金に、燐や窒素等のn導電型決定不純物原子をドープすることにより形成することができる。
【0075】
本実施形態では、p型の水素化非晶質炭化シリコン(以下p型のa−SiC:Hと記す)、i型の水素化非晶質炭化シリコン(以下i型のa−Si:Hと記す)、n型の水素化非晶質炭化シリコン(以下n型のa−Si:Hと記す)の3層を順次堆積し、図5(c)のように光電変換層5を形成する。
【0076】
その後、レーザ光を用いたスクライブによって光電変換層5の一部を除去して図5(d)のように第二溝6を設け光電変換層5を短冊状に分割する。第二溝6を設ける際のレーザ光は任意であるが、YAG、YVO4 (ワイ・ブイ・オーフォワー)、YLFやファイバーレーザの採用が推奨される。
【0077】
続いて、図5(e)のように光電変換層5の上に、アルミニウム(Al)や銀(Ag)などの金属材料からなる裏面側電極層7を形成する。
【0078】
裏面側電極層7は電極としての機能を有するだけでなく、絶縁透光性基板1の太陽電池が形成されない面側から光電変換層5に入射し裏面側電極層7に到着した光を反射して光電変換層5に再入射させる反射層としての機能も有している。
【0079】
また裏面側電極層7は、光電変換セル4同士を電気的に接続する機能も果たす。即ち裏面側電極層7の一部は、第二溝6の中にも形成され、第二溝6の中で透明導電膜2と接する。従って裏面側電極層7は、第二溝6の中に導入された裏面側電極層7の一部によって隣接する光電変換セル4の透明導電膜2と電気的に接続される。
【0080】
裏面側電極層7は、銀やアルミニウム等を用いて、蒸着法やスパッタ法等により、例えば200nm〜400nm程度の厚さに形成することができる。
【0081】
なお、裏面側電極層7と光電変換層5との間には、例えば両者の間の接着性を向上させるために、酸化亜鉛(ZnO)のような非金属材料からなる透明電導性薄膜(図示せず)を設けることができる。
【0082】
さらに、図5(f)に示すように、レーザ光を用いたスクライブによって裏面側電極層7と光電変換層5の双方に第三溝35を形成する。第三溝35を設ける際のレーザ光についてもYAG、YVO4 (ワイ・ブイ・オーフォワー)、YLFやファイバーレーザの採用が推奨される。
【0083】
さらに図6(a)に示すように、レーザ光を用いたスクライブによって裏面側電極層7と光電変換層5を切除し、透明導電膜2に至る3列の電極接続用溝36を設ける。
【0084】
また太陽電池積層体の4辺と平行に分離溝37を設ける。分離溝37の形成についてもレーザ光を用いたスクライブによる。分離溝37を設ける際のレーザ光についてもYAG、YVO4 (ワイ・ブイ・オーフォワー)、YLFやファイバーレーザが採用可能である。
【0085】
続いて絶縁透光性基板1の周部(絶縁領域)にレーザ光を用いたスクライブによる裸地部30を形成する。裸地部30を設ける際のレーザ光についてもYAG、YVO4 (ワイ・ブイ・オーフォワー)、YLFやファイバーレーザが採用可能である。
【0086】
裸地部30を形成する際には、図7のようにX−Yテーブル38に絶縁透光性基板を乗せ、絶縁透光性基板の太陽電池積層体が形成されない面側を上にし、絶縁透光性基板の太陽電池が形成される面側を下に向けた姿勢でX−Yテーブル38上に絶縁透光性基板を乗せ、上方からレーザ光を照射する。
【0087】
図8は、レーザ光29が絶縁透光性基板1の周部16(裸地部30)に照射されている状態を示す側面図である。ただし、図8では、X−Yテーブル38と光電変換膜層5及び裏面側電極層7の描写を省略してある。
【0088】
図8に示すように、レーザ光29は絶縁透光性基板1の太陽電池が形成されない面側から照射(入射)される。レーザ光29は、絶縁透光性基板1を素通りするので絶縁透光性基板1を変質させたり変形させることはない。そしてレーザ光29は、絶縁透光性基板1を通過して透明導電膜2に照射され、透明導電膜2を瞬間的に蒸発させる。その時の圧力上昇によって透明導電膜2と共に光電変換層5と裏面側電極層7が剥離する。剥離した膜は、X−Yテーブル38上に落下する。
【0089】
なお、裸地部30にレーザ29を照射する代わりに、粒径(平均)が10μm以下の研磨材を吹き付けて裸地部30を研磨してもよい。
【0090】
続いて、X−Yテーブル38上の太陽電池10を太陽電池が形成されない面側が下に、太陽電池が形成される面側が上となるようにひっくり返し、先の工程で形成した電極接続溝36に半田39を流し込み、積層体の上部にリード52を接続する。
【0091】
続いて図9(a)〜(e)のような工程を経て、充填材204を裏面支持材202の貫通孔に充填する。図9(a)のように、太陽電池10が形成される面側に絶縁シート205を置く。次に、図9(b)のように、両端のリード52から中央に向かって絶縁シート205上に電気出力配線203を配置する。その後、図9(c)のように、絶縁性封止材201を絶縁透光性基板1上の積層体及び裸地部30の一部または全部を覆うように置き、絶縁性封止材201にあらかじめ入れておいたスリットもしくは正方形または長方形または円の切抜いた穴から電気出力配線203を取り出す。さらに、図9(d)のように、裏面支持材202を配置する。その際、裏面支持材202の貫通孔からは電気出力配線203を取り出しておく。続いて、図9(e)のように、貫通孔に充填材204を充填する。最後に、図9(f)のように、離型シート207を貫通孔全体を覆うように配置する。封止する。裏面支持材202が、加熱により軟化・溶融を経て硬化し得る絶縁性封止材201を介して太陽電池10に強固に接着される。貫通孔に充填した充填材204も貫通孔に隙間なく充填される。このとき、絶縁透光性基板1と裏面支持材202との間に充填材206と同じ材料のシーリング材(図示していない)を配置しても良い。
【0092】
封止層206は、図8(a)〜(c)に示すような上チャンバー41と下チャンバー42を備えた真空ラミネータ40と、キュアオーブン(図示せず)を使用して絶縁透光性基板に取り付けられる。
【0093】
図8(a)は、真空ラミネータ40内に絶縁透光性基板を配置した状態を示す断面図であり、図8(b)は、絶縁透光性基板を加熱圧着する直前の状態を示す断面図であり、図8(c)は、絶縁透光性基板を加熱圧着している状態を示す断面図である。
【0094】
真空ラミネータ40の、上チャンバー41は、ダイアフラム44を有し、空隙内の圧力によってダイアフラム44を膨張・収縮させることができる。下チャンバー42は、真空引き用の小孔(図示せず)を有する。
【0095】
また下チャンバー42は加熱機能(ヒータ43)を備えている。
【0096】
本実施形態では、下チャンバー42に絶縁透光性基板を設置し、絶縁透光性基板の太陽電池が形成される面側の上に封止層206を被せ、下チャンバー42を真空引きして絶縁透光性基板1と封止層206の間の空気を抜く。そして上チャンバー41を被せてダイアフラム44を膨張させ、ダイアフラム44で封止層206を絶縁透光性基板1側に押圧しつつ、下チャンバー42を昇温する。その結果、絶縁透光性基板1表面に封止層206が接合される。尚、温度は130℃〜180℃、好ましくは140℃〜160℃である。
【0097】
本実施形態の製造方法で作られた太陽電池10は、裏面支持材202に設けられた貫通孔から太陽電池10に湿分、水分が浸入することはなく、そのため過酷な環境下で使用しても薄膜型太陽電池モジュールの性能劣化を防止し、耐用年数を向上させることができる。
【0098】
なお、前記においてはシリコン系薄膜太陽電池を主に説明した。しかしながら本発明は、いわゆる化合物半導体を用いる薄膜太陽電池においても、本発明の請求項に対応する技術範囲の薄膜太陽電池である限りにおいては、適用可能である。
【0099】
例えば、代表的には2枚のガラス板に光起電力セルを含む形態として知られているCdTe−CdS系太陽電池(CdS/CdTe薄膜太陽電池などとも表現される)などに対しても、ある態様においては、本発明は有効である。CdS/CdTe薄膜太陽電池は、例えば有機金属化合気相成長法、真空蒸着法、電着法、近接昇華法、スクリーン印刷法、スプレー法、などの種々の方法で作製される。その一態様は、例えば硫化カドミウム(CdS)をn型半導体としている太陽電池である。
【0100】
また、例えば、基板を選ばないことが特徴の一つであるCIS系・CIGS系・カルコパイライト系の薄膜多結晶太陽電池などについても、本発明は有効である。カルコパイライト(黄銅鉱)系の薄膜太陽電池では、シリコンの代わりに、銅(Cu)・インジウム(In)・ガリウム(Ga)・セレン(Se)の化合物等が、材料として用いられる。
【0101】
以上のとおり、本発明は、外部から薄膜型太陽電池モジュール内への湿分、水分の浸入を防止して、耐湿性を向上させ薄膜型太陽電池モジュールの性能劣化を防止、かつ電気絶縁性も確保し薄膜型太陽電池モジュールの耐用年数を向上させることを課題とする。裏面支持材に設けた貫通孔に、水蒸気透過率が0.2g/(m2・Day)以下、かつ、電気抵抗値が1×1010Ω・cm以上の特性を備え、厚さ1mm以上の充填材を配置することを特徴とする。これにより、薄膜型太陽電池モジュールの耐湿性が改善され、耐用年数が向上する。
【実施例】
【0102】
次に本発明の具体的な構成と効果を確認するために行った実験について実施例で説明する。
【0103】
本発明の実施例として上記した製造方法にそってアモルファスシリコン太陽電池10を製造した。
【0104】
(実施例)
まず、980mm×950mmの面積と5mmの厚さを有する絶縁透光性基板1上に、透明導電膜2として、熱CVD法による厚さ約700nmの二酸化錫(SnO2)膜を成膜した。この透明導電膜2に対して、YAG基本波レーザ光ビームを照射することにより、第一溝3をパターンニング加工形成した。
【0105】
次に、加工により生じた微粉などを洗浄除去した後、絶縁透光性基板1をプラズマCVD成膜装置に搬入し、厚さ約300nmのアモルファスシリコンからなる光電変換層5を成膜した。CVD装置から絶縁透光性基板1を搬出した後、光電変換層5に絶縁透光性基板1側からYAG第二高調波レーザ光を照射して電極接続用溝として第二溝6を形成した。
【0106】
次に裏面側電極層7として、厚さ約80nmの酸化亜鉛(ZnO)膜と厚さ約200nmの銀(Ag)膜をこの順でスパッタ法で光電変換層5上に成膜した。さらに、裏面側電極層7に絶縁透光性基板1側からYAG第二高調波レーザ光を照射して短冊上に分割し第三溝35を形成した。
【0107】
セル領域と接続領域とを絶縁透光性基板1周囲から絶縁するために、絶縁透光性基板1の周辺に沿ってYAGレーザ光を照射して、透明導電膜(SnO2膜)2、アモルファスシリコン光電変換層5、及び裏面側電極層7を除去し、分離溝37を形成し太陽電池積層体を完成させた。
【0108】
続いて絶縁透光性基板1の辺部に絶縁透光性基板の太陽電池積層体が形成されない面側からYAGレーザ光を照射して、透明導電膜(SnO2膜)2、アモルファスシリコン光電変換層5、及び裏面側電極層7を除去し、裸地部30を形成した。
【0109】
さらに続いて絶縁性封止材201と裏面支持材202からなる封止層206を設けた。絶縁性封止材として厚さ0.6mmのEVA、裏面支持材として厚さ3mmのガラス基板を使用する。ガラス基板に設ける貫通孔はφ20の大きさとした。その貫通孔は、光電変換セルからの電気出力を外部に取り出すための電気出力配線を通過させるための貫通孔として用いられ、電気出力配線203が通され、重量1.3gの前述した充填材204が配置され、次の工程に供された。
【0110】
なお、充填材204は、ポリイソブチレンに無機充填材としてタルクを添加し、ポリイソブチレン100重量部に対して無機充填材は83重量部であり、密度が1.35g/cm3の材料である。
【0111】
封止層206は、図8(a)〜(c)に示すような上チャンバー41と下チャンバー42を備えた真空ラミネータ40と、キュアオーブン(図示せず)を使用して絶縁透光性基板に取り付けられる。下チャンバー42に絶縁透光性基板を設置し、絶縁透光性基板の太陽電池が形成される面側の上に封止層206を被せ、下チャンバー42を真空引きして絶縁透光性基板1と封止層206の間の空気を抜く。そして上チャンバー41を被せてダイアフラム44を膨張させ、ダイアフラム44で封止層206を絶縁透光性基板1側に押圧しつつ、下チャンバー42を昇温する。その結果、絶縁透光性基板1表面に封止層206が接合される。尚、温度は150℃である。
【0112】
以上のようにして、ラミネータで封止すると、充填材204は、厚さ3mmで貫通孔に隙間なく充填され、面積がほぼ82.67cm2の光電変換セル4が108個直列接続した太陽電池10を得た。
【0113】
すなわち、本実施例においては、前記充填材は水蒸気透過率が0.2g/(m2・Day)以下、かつ電気抵抗値が1×1010Ω・cm以上の特性を備え、厚さ1mm以上であった。
【0114】
(比較例1)
一方、比較例1として貫通孔に充填材204はなく、電気出力配線203のみで充填された太陽電池を製造した。
【0115】
実施例及び比較例の薄膜型太陽電池モジュールをそれぞれ2個製造し、これらをIEC61646−10.13に記載されているDamp heat testを行った。つまり、実施例及び比較例の薄膜型太陽電池モジュールを温度85℃、湿度85%RHの雰囲気中に暴露し、時間の経過と出力の低下の度合いを調査した。
【0116】
結果は、図9の通りである。初期の出力に対し95%以上の出力を維持することができた時間は、比較例の薄膜型太陽電池モジュールを1とすると、実施例の薄膜型太陽電池モジュールは、1.6倍以上であった。薄膜型太陽モジュールの性能劣化を防ぐことができ、耐湿性を大幅に向上させることができた。
【0117】
以上、説明した構成は、図10(a)、(b)のいずれの形態の太陽電池10、12においても実施することができる。
【0118】
図10(a)は、本実施形態の製造方法で成膜される太陽電池10の層構成を示す概念図である。図10(a)に示した光電変換層5は、透明導電膜2に近い側から順にp型シリコン系半導体層、i型シリコン系半導体層、SiO層34(反射層)、及びn型シリコン系半導体層の四層構造となっている。光電変換層5の全体の厚みは、例えば0.1〜3.0μmである。これに対して、SiO等の反射層34の厚みは、例えば50〜800オングストロームである。
【0119】
反射層34は、Cap層とも称されるものであり、シリコンオキサイドが代表的に用いられる。反射層34には、結晶質シリコン成分が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0120】
また、反射層34としては、シリコンオキサイドの代わりに、シリコンナイトライド、シリコンカーバイド、シリコンオキシナイトライド、シリコンオキシカーバイド等、シリコンに窒素、炭素、酸素のいずれか一つ以上の元素が含まれる層であってもよい。
【0121】
次に本発明の第二の実施形態について説明する。
【0122】
上記した実施形態は、p型シリコン系半導体層、i型シリコン系半導体層、及びn型シリコン系半導体層が一組となって構成される光電変換層5を一層だけ設けた例であったが、これを複数設ける太陽電池に本発明を適用することもできる。
【0123】
即ち前記したpin構造を2段積層したタンデム構造、3段積層したトリプル構造等の構造に本発明を適用してもよい。またハイブリッド構造と称される様な構成の太陽電池モジュールに本発明を適用することもできる。
【0124】
図10(b)は、光電変換層が二つ設けられた例の太陽電池12の層構成を示す概念図である。
【0125】
本実施形態の太陽電池12では、p型シリコン系半導体層、i型シリコン系半導体層、及びn型シリコン系半導体層が一組となって構成される第一光電変換層45と、同じくp型シリコン系半導体層、i型シリコン系半導体層、及びn型シリコン系半導体層が一組となって構成される第二光電変換層46とが積層されたものである。
【0126】
また第一光電変換層45と第二光電変換層46との間に中間層18(反射層)が設けられている。
【0127】
より詳細に説明すると、第一光電変換層45は、a−Si(アモルファスシリコン)によって構成された光電変換層である。一方、第二光電変換層46は、p−Si(ポリシリコン)によって構成された光電変換層である。第二光電変換層46は、四層構造であり、透明導電膜2に近い側から順にp型シリコン系半導体層層、i型シリコン系半導体層、SiO層19(反射層)、及びn型シリコン系半導体層の四層構造となっている。第二光電変換膜46の全体の厚みは、例えば0.1〜3.0μmである。これに対して、SiO等の反射層19の厚みは、例えば50〜800オングストロームである。
【0128】
中間層18は、反射層として機能するものであり、シリコンオキサイド(SiO)が代表的に用いられる。反射層18には、結晶質シリコン成分が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0129】
また、反射層18としては、シリコンオキサイドの代わりに、シリコンナイトライド、シリコンカーバイド、シリコンオキシナイトライド、シリコンオキシカーバイド等、シリコンに窒素、炭素、酸素のいずれか一つ以上の元素が含まれる層であってもよい。
【0130】
本実施形態の製造方法で製造する太陽電池12は、貫通孔からの湿分、水分の浸入を防ぐことで耐湿性が向上すると共に、絶縁透光性基板1側から浸入した光が、中間層18と反射層19(Cap層)で主に反射され、a−Siのi層とp−Siのi層の中を光が往復する。これにより発電効率が向上する。
【0131】
(比較例2)
比較例2として、貫通孔に電気出力配線203と、0.8mm厚みの充填材204が充填された太陽電池を製造した。その場合、比較例1と同じく相対比1〜1.2の間で初期の出力に対し95%以下となった。
【符号の説明】
【0132】
1 絶縁透光性基板
2 透明導電膜(第一電極層)
5 光電変換層
6 第二溝(電極接続用溝)
7 裏面側電極層(第二電極層)
10 薄膜太陽電池
11 レーザ発生装置
16 周辺領域(絶縁領域)
200 薄膜型太陽電池モジュール
201 絶縁性封止材
202 裏面支持材
203 電気出力配線
204 充填材
205 絶縁シート
206 封止層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過側から順に、少なくとも、0.5m2以上の絶縁透光性基板と、第一電極層と、1以上の光電変換ユニットを含む半導体層と、第二電極層と、絶縁性封止材と、裏面支持材とを備える薄膜型太陽電池モジュールであって、
前記絶縁透光性基板の一主面上に少なくとも前記第一電極層と前記1以上の光電変換ユニットと前記第二電極層とを含む積層体を備え、
前記積層体は、複数の光電変換セルを形成するように直線状で互いに平行な複数本の第一電極層分離溝、半導体層分離溝、および裏面電極層分離溝によってそれぞれ分割され、かつ、それら複数の光電変換セルが前記半導体層分離溝を介して互いに電気的に直列接続されてなる集積型薄膜太陽電池として機能する積層体であって、
前記絶縁透光性基板の前記一主面の周縁部には前記積層体が存在しない裸地部を備え、
前記絶縁性封止材は前記裸地部の一部又は全部と前記積層体とを被覆するものであり、
前記裏面支持材は貫通孔を備え、
前記貫通孔は前記光電変換セルからの電気出力を外部に取り出すための電気出力配線を通過させるための貫通孔であり、
前記貫通孔は少なくとも前記電気出力配線と充填材とによって充填されており、
前記充填材は水蒸気透過率が0.2g/(m2・Day)以下、かつ電気抵抗値が1×1010Ω・cm以上の特性を備え、厚さ1mm以上であることを特徴とする、薄膜型太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記充填材は、ポリイソブチレン系樹脂、ウレタン系イソブチレン樹脂、およびシリコーン系イソブチレン系樹脂からなる群から選択される1以上である、請求項1記載の薄膜型太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記充填材は、ポリイソブチレン100重量部に対して、吸湿性をもつ無機充填材が75から100重量部添加された材料である、請求項1記載の薄膜型太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記無機充填材は、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト及びタルクからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3に記載の薄膜型太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記裸地部の一部又は全部と前記積層体とを被覆する前記絶縁性封止材の、前記絶縁透光性基板の前記一主面の平面方向の周縁部には、
前記貫通孔を充填する充填材と同じ材質の材料が、
前記絶縁透光性基板の裸地部と、前記裏面支持材の周縁部と、それぞれに接するように配置されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜型太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記絶縁透光性基板がガラス板であり、かつ、前記裏面支持材がガラス板である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の、薄膜型太陽電池モジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の薄膜型太陽電池モジュールの製造方法であって、前記裏面支持材に設けられた前記貫通孔を、前記電気出力配線と前記充填材とを配置し、ラミネート成型する工程を備えることを特徴とする、薄膜型太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項1】
光透過側から順に、少なくとも、0.5m2以上の絶縁透光性基板と、第一電極層と、1以上の光電変換ユニットを含む半導体層と、第二電極層と、絶縁性封止材と、裏面支持材とを備える薄膜型太陽電池モジュールであって、
前記絶縁透光性基板の一主面上に少なくとも前記第一電極層と前記1以上の光電変換ユニットと前記第二電極層とを含む積層体を備え、
前記積層体は、複数の光電変換セルを形成するように直線状で互いに平行な複数本の第一電極層分離溝、半導体層分離溝、および裏面電極層分離溝によってそれぞれ分割され、かつ、それら複数の光電変換セルが前記半導体層分離溝を介して互いに電気的に直列接続されてなる集積型薄膜太陽電池として機能する積層体であって、
前記絶縁透光性基板の前記一主面の周縁部には前記積層体が存在しない裸地部を備え、
前記絶縁性封止材は前記裸地部の一部又は全部と前記積層体とを被覆するものであり、
前記裏面支持材は貫通孔を備え、
前記貫通孔は前記光電変換セルからの電気出力を外部に取り出すための電気出力配線を通過させるための貫通孔であり、
前記貫通孔は少なくとも前記電気出力配線と充填材とによって充填されており、
前記充填材は水蒸気透過率が0.2g/(m2・Day)以下、かつ電気抵抗値が1×1010Ω・cm以上の特性を備え、厚さ1mm以上であることを特徴とする、薄膜型太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記充填材は、ポリイソブチレン系樹脂、ウレタン系イソブチレン樹脂、およびシリコーン系イソブチレン系樹脂からなる群から選択される1以上である、請求項1記載の薄膜型太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記充填材は、ポリイソブチレン100重量部に対して、吸湿性をもつ無機充填材が75から100重量部添加された材料である、請求項1記載の薄膜型太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記無機充填材は、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト及びタルクからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3に記載の薄膜型太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記裸地部の一部又は全部と前記積層体とを被覆する前記絶縁性封止材の、前記絶縁透光性基板の前記一主面の平面方向の周縁部には、
前記貫通孔を充填する充填材と同じ材質の材料が、
前記絶縁透光性基板の裸地部と、前記裏面支持材の周縁部と、それぞれに接するように配置されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜型太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記絶縁透光性基板がガラス板であり、かつ、前記裏面支持材がガラス板である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の、薄膜型太陽電池モジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の薄膜型太陽電池モジュールの製造方法であって、前記裏面支持材に設けられた前記貫通孔を、前記電気出力配線と前記充填材とを配置し、ラミネート成型する工程を備えることを特徴とする、薄膜型太陽電池モジュールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図3】
【図10】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図3】
【図10】
【公開番号】特開2011−124435(P2011−124435A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281873(P2009−281873)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
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