説明

薄膜形成用原料、薄膜の製造方法及び金属化合物

【課題】 パーティクル汚染を防止しながら、良好な成膜効率で薄膜を形成することができ、特に特にALD法を含むCVD法等の気化工程を有する薄膜製造方法に好適な薄膜形成用原料を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(I)で表される金属化合物を含有してなる薄膜形成用原料。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する金属化合物を含有してなる薄膜形成用原料、該薄膜形成用原料を用いた薄膜の製造方法、並びに該薄膜形成用原料に用いることができるジルコニウム化合物及びハフニウム化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを含有する薄膜は、高誘電体キャパシタ、強誘電体キャパシタ、ゲート絶縁膜、バリア膜等の電子部品の電子部材や、光導波路、光スイッチ、光増幅器等の光通信用デバイスの光学部材として用いられている。
【0003】
上記の薄膜の製造法としては、火焔堆積法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、塗布熱分解法やゾルゲル法等のMOD法、化学気相成長法等が挙げられるが、組成制御性及び段差被覆性に優れること、量産化に適すること、ハイブリッド集積が可能である等多くの長所を有しているので、ALD(Atomic Layer Deposition)法を含む化学気相成長(以下、単にCVDと記載することもある)法が最適な製造プロセスである。
【0004】
CVD法においては、薄膜にチタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを供給するプレカーサとして、有機配位子を用いた金属化合物が使用されている。例えば、アルコキシド化合物又はジアルキルアミド化合物を用いる方法が、特許文献1〜5に報告されている。また、非特許文献1〜2には、ビス(2−プロポキシ)ビス(ジメチルアミノ)チタニウム、ビス(2−プロポキシ)ビス(ジエチルアミノ)チタニウムが報告されているが、これらのチタニウム化合物を薄膜形成用原料に用いることについての報告はない。
【0005】
【特許文献1】特開平5−239650号公報
【特許文献2】特公平6−60406号公報
【特許文献3】特開2002−93803号公報
【特許文献4】特開2002−93804号公報
【特許文献5】大韓民国特許156980号公報
【非特許文献1】Chemische Berichte (1961), 94, 2263-7
【非特許文献2】Journal of Polymer Science, Polymer Chemistry Edition (1968), 6(1), 241-2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CVD用原料に用いる化合物(プレカーサ)に求められる性質は、薄膜堆積時においては、熱及び/又は酸化による分解が容易に進行することである。また、気化及び輸送時においては、融点が低く液体の状態で輸送が可能であること、蒸気圧が大きく気化させやすいこと、及び安定であることが求められる。
チタニウム化合物、ジルコニウム化合物及びハフニウム化合物に関しては、アルコキシド化合物は、熱及び/又は酸化による分解性が悪いために薄膜製造時に成膜の効率が悪くなり、工業化に適さないという問題点を有している。ジアルキルアミド化合物は、熱及び/又は酸化による分解性は充分であるが、蒸気圧が小さい。このことから、充分な成膜効率を得られる気化温度では、熱及び/又は酸化による分解がおこり、得られる薄膜がパーティクル汚染を被るという問題点を有している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、検討を重ねた結果、特定の構造を有する金属化合物が上記課題を解決し得ることを知見した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、下記一般式(I)で表される金属化合物を含有してなる薄膜形成用原料、及び該薄膜形成用原料を用いてする薄膜の製造方法を提供するものである。また、本発明は、下記一般式(I)において、Mがジルコニウム又はハフニウムである金属化合物を提供するものである。
【0009】
【化1】

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを含む金属化合物を含有し、特にALD法を含むCVD法等の気化工程を有する薄膜製造方法に好適な薄膜形成用原料を提供することができる。該薄膜形成用原料が含有する金属化合物は、薄膜堆積時において、熱及び/又は酸化による分解が容易に進行し、且つ、気化及び輸送時において、融点が低く液体の状態で輸送が可能であり、蒸気圧が大きく気化させやすいため、該薄膜形成用原料を用いることにより、パーティクル汚染を低減又は防止しながら、良好な成膜効率で薄膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の薄膜形成用原料に用いられる金属化合物は、上記一般式(I)で表されるものであり、ジアルキルアミド化合物と同等の熱分解性及び/又は酸化分解性を有し、ジアルキルアミド化合物より大きい蒸気圧を示す。従って、上記一般式(I)で表される金属化合物は、ALD法を含むCVD法等の気化工程を有する薄膜製造方法のプレカーサとして特に好適なものである。
【0012】
上記一般式(I)において、R1で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第2アミル、第3アミル、ヘキシル、シクロヘキシル等が挙げられ、R2及びR3で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチルが挙げられる。また、mが2又は3場合、1分子中に複数存在するR1は同一でも異なってもよく、(4−m)が2又は3の場合、1分子中に複数存在するR2及びR3それぞれは同一でもよく異なってもよい。
【0013】
上記の金属化合物は、立体異性体を有する場合があるが、これらの異性体により区別されるものではない。また、上記の金属化合物は、2分子以上の分子が会合した状態を示す場合があるが、会合状態の有無により区別されるものではない。
【0014】
本発明に係る上記一般式(I)で表される金属化合物の会合状態としては、例えば、2分子が会合した例として下記一般式(1)で表される構造が挙げられる。
【0015】
【化2】

【0016】
本発明に係る上記一般式(I)で表される金属化合物の具体例としては、下記化合物No.1〜No.108が挙げられる。
【0017】
【化3】

【0018】
【化4】

【0019】
【化5】

【0020】
【化6】

【0021】
【化7】

【0022】
【化8】

【0023】
【化9】

【0024】
【化10】

【0025】
【化11】

【0026】
本発明に係る上記一般式(I)で表される金属化合物は、その製造方法により特に制限されることはなく、周知の反応を応用して製造することができる。製造方法としては、例えば、テトラキス(ジアルキルアミノ)チタニウム、テトラキス(ジアルキルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(ジアルキルアミノ)ハフニウム等のテトラキスジアルキルアミド金属に、必要量のアルコール加え、必要に応じて加熱する方法、これらのテトラキス(ジアルキルアミノ)金属に、必要量のテトラキス(アルコキシ)金属を加え、必要に応じて加熱する方法が挙げられる。
【0027】
本発明の薄膜形成用原料は、前記一般式(I)で表される金属化合物を薄膜のプレカーサとして含有するものであり、その形態は、該薄膜形成用原料が適用される薄膜の製造方法(例えば、火焔堆積法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、塗布熱分解法やゾルゲル法等のMOD法、ALD法を含むCVD法)によって適宜選択される。本発明の薄膜形成用原料は、上記一般式(I)で表される金属化合物の物性から、CVD用原料として特に有用である。
【0028】
本発明の薄膜形成用原料が化学気相成長(CVD)用原料である場合、その形態は使用されるCVD法の輸送供給方法等の手法により適宜選択される。
【0029】
上記の輸送供給方法としては、CVD用原料を原料容器中で加熱及び/又は減圧することにより気化させ、必要に応じて用いられるアルゴン、窒素、ヘリウム等のキャリアガスと共に堆積反応部へと導入する気体輸送法、CVD用原料を液体又は溶液の状態で気化室まで輸送し、気化室で加熱及び/又は減圧することにより気化させて、堆積反応部へと導入する液体輸送法がある。気体輸送法の場合は、上記一般式(I)で表される金属化合物そのものがCVD用原料となり、液体輸送法の場合は、上記一般式(I)で表される金属化合物そのもの又は該金属化合物を有機溶剤に溶かした溶液がCVD用原料となる。
【0030】
また、多成分系薄膜を製造する場合に用いられる多成分系CVD法においては、CVD用原料を各成分独立で気化、供給する方法(以下、シングルソース法と記載することもある)と、多成分原料を予め所望の組成で混合した混合原料を気化、供給する方法(以下、カクテルソース法と記載することもある)がある。カクテルソース法の場合、上記一般式(I)で表される金属化合物のみによる混合物或いは該混合物に有機溶剤を加えた混合溶液、上記一般式(I)で表される金属化合物と他のプレカーサとの混合物或いは該混合物に有機溶剤を加えた混合溶液がCVD用原料である。
【0031】
上記のCVD用原料に使用する有機溶剤としては、特に制限を受けることはなく、周知一般の有機溶剤を用いることが出来る。該有機溶剤としては、例えば;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等の酢酸エステル類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;1−シアノプロパン、1−シアノブタン、1−シアノヘキサン、シアノシクロヘキサン、シアノベンゼン、1,3−ジシアノプロパン、1,4−ジシアノブタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,4−ジシアノシクロヘキサン、1,4−ジシアノベンゼン等のシアノ基を有する炭化水素類;ピリジン、ルチジンが挙げられ、これらは、溶質の溶解性、使用温度と沸点及び引火点との関係等により、単独で又は二種類以上の混合溶媒として用いられる。これらの有機溶剤を使用する場合、該有機溶剤中におけるプレカーサ成分の合計量は、0.01〜2.0モル/リットル、特に0.05〜1.0モル/リットルとなるようにするのが好ましい。
【0032】
また、シングルソース法又はカクテルソース法を用いた多成分系のCVD法において、本発明に係る前記一般式(I)で表される金属化合物と共に用いられる他のプレカーサとしては、特に制限を受けず、CVD用原料に用い得る周知一般のプレカーサを用いることができる。
【0033】
上記の他のプレカーサとしては、アルコール化合物、グリコール化合物、β−ジケトン化合物、シクロペンタジエン化合物及び有機アミン化合物等の有機配位子として用いられる化合物からなる群から選択される一種類又は二種類以上と、珪素や金属との化合物が挙げられる。また、プレカーサの金属種としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の1族元素、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の2族元素、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド元素(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム)、アクチノイド元素等の3族元素、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムの4族元素、バナジウム、ニオブ、タンタルの5族元素、クロム、モリブデン、タングステンの6族元素、マンガン、テクネチウム、レニウムの7族元素、鉄、ルテニウム、オスミウムの8族元素、コバルト、ロジウム、イリジウムの9族元素、ニッケル、パラジウム、白金の10族元素、銅、銀、金の11族元素、亜鉛、カドミウム、水銀の12族元素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムの13族元素、ゲルマニウム、錫、鉛の14族元素、砒素、アンチモン、ビスマスの15族元素、ポロニウムの16族元素が挙げられる。
【0034】
上記の有機配位子として用いられるアルコール化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、第3ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、第3アミルアルコール等のアルキルアルコール類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−メトキシ−1−メチルエタノール、2−メトキシ−1,1−ジメチルエタノール、2−エトキシ−1,1−ジメチルエタノール、2−イソプロポキシ−1,1−ジメチルエタノール、2−ブトキシ−1,1−ジメチルエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)−1,1−ジメチルエタノール、2−プロポキシ−1,1−ジエチルエタノール、2−第2ブトキシ−1,1−ジエチルエタノール、3−メトキシ−1,1−ジメチルプロパノール等のエーテルアルコール類;前記一般式(I)で表される金属化合物を与えるジアルキルアミノアルコール等が挙げられる。
【0035】
上記の有機配位子として用いられるグリコール化合物としては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,4−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール等が挙げられる。
【0036】
上記の有機配位子として用いられるβ−ジケトン化合物としては、アセチルアセトン、ヘキサン−2,4−ジオン、5−メチルヘキサン−2,4−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、2−メチルヘプタン−3,5−ジオン、5−メチルヘプタン−2,4−ジオン、6−メチルヘプタン−2,4−ジオン、2,2−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン、2,2,6−トリメチルヘプタン−3,5−ジオン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、オクタン−2,4−ジオン、2,2,6−トリメチルオクタン−3,5−ジオン、2,6−ジメチルオクタン−3,5−ジオン、2,9−ジメチルノナン−4,6−ジオン2−メチル−6−エチルデカン−3,5−ジオン、2,2−ジメチル−6−エチルデカン−3,5−ジオン等のアルキル置換β−ジケトン類;1,1,1−トリフルオロペンタン−2,4−ジオン、1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチルヘキサン−2,4−ジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタン−2,4−ジオン、1,3−ジパーフルオロヘキシルプロパン−1,3−ジオン等のフッ素置換アルキルβ−ジケトン類;1,1,5,5−テトラメチル−1−メトキシヘキサン−2,4−ジオン、2,2,6,6−テトラメチル−1−メトキシヘプタン−3,5−ジオン、2,2,6,6−テトラメチル−1−(2−メトキシエトキシ)ヘプタン−3,5−ジオン等のエーテル置換β−ジケトン類等が挙げられる。
【0037】
上記の有機配位子として用いられるシクロペンタジエン化合物としては、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、プロピルシクロペンタジエン、イソプロピルシクロペンタジエン、ブチルシクロペンタジエン、第2ブチルシクロペンタジエン、イソブチルシクロペンタジエン、第3ブチルシクロペンタジエン、ジメチルシクロペンタジエン、テトラメチルシクロペンタジエン等が挙げられる。
【0038】
上記の有機配位子として用いられる有機アミン化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、第2ブチルアミン、第3ブチルアミン、イソブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、プロピルメチルアミン、イソプロピルメチルアミン、ビス(トリメチルシリル)アミン等が挙げられる。
【0039】
上記の他のプレカーサは、シングルソース法の場合は、前記一般式(I)で表される金属化合物と、熱分解及び/又は酸化分解の挙動が類似している化合物が好ましく、カクテルソース法の場合は、熱分解及び/又は酸化分解の挙動が類似していることに加え、混合時に化学反応による変質を起こさないものが好ましい。
【0040】
チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを含有する他のプレカーサとしては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0041】
【化12】

【0042】
上記の[化12]の化学式において、Ra及びRbで表されるハロゲン原子で置換されてもよく、鎖中に酸素原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第2アミル、第3アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第3ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第3オクチル、2−エチルヘキシル、トリフルオロメチル、パーフルオロヘキシル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、2−ブトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル、1−メトキシ−1,1−ジメチルメチル、2−メトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−エトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−イソプロポキシ−1,1−ジメチルエチル、2−ブトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−(2−メトキシエトキシ)−1,1−ジメチルエチル等が挙げられる。また、Rcで表される炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第2アミル、第3アミル、ヘキシル、1−エチルペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第3ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第3オクチル、2−エチルヘキシル等が挙げられる。また、Rdで表される炭素数2〜18の分岐してもよいアルキレン基は、グリコールにより与えられる基であり、該グリコールとしては、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1−メチル−2,4−ペンタンジオール等が挙げられる。また、Re及びRfで表される炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、2−プロピルが挙げられ、Rgで表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチルが挙げられる。
【0043】
具体的には、チタニウムプレカーサとしては、テトラキス(ジメチルアミノ)チタニウム、テトラキス(ジエチルアミノ)チタニウム、テトラキス(エチルメチルアミノ)チタニウム、テトラキス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]チタニウム等のアミノチタニウム類;テトラキス(エトキシ)チタニウム、テトラキス(2−プロポキシ)チタニウム、テトラキス(ブトキシ)チタニウム、テトラキス(第2ブトキシ)チタニウム、テトラキス(イソブトキシ)チタニウム、テトラキス(第3ブトキシ)チタニウム、テトラキス(第3アミル)チタニウム、テトラキス(1−メトキシ−2−メチル−2−プロポキシ)チタニウム等のテトラキスアルコキシチタニウム類;テトラキス(ペンタン−2,4−ジオナト)チタニウム、(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム等のテトラキスβ−ジケトナトチタニウム類;ビス(メトキシ)ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)チタニウム、ビス(エトキシ)ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)チタニウム、ビス(第3ブトキシ)ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)チタニウム、ビス(メトキシ)ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(エトキシ)ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(2−プロポキシ)ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(第3ブトキシ)ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(第3アミロキシ)ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(メトキシ)ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(エトキシ)ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(2−プロポキシ)ビス(2,6,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(第3ブトキシ)ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(第3アミロキシ)ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム等のビス(アルコキシ)ビス(βジケトナト)チタニウム類;(2−メチルペンタンジオキシ)ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、(2−メチルペンタンジオキシ)ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム等のグリコキシビス(βジケトナト)チタニウム類等が挙げられる。ジルコニウムプレカーサ又はハフニウムプレカーサとしては、上記チタニウムプレカーサとして例示の化合物中のチタニウムをジルコニウム又はハフニウムに置き換えた化合物が挙げられる。
【0044】
アルミニウムプレカーサとしては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0045】
【化13】

【0046】
上記の[化13]の化学式におけるLで表される配位性複素環状化合物としては、18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、24−クラウン−8、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、ジベンゾ−24−クラウン−8等のクラウンエーテル類;サイクラム、サイクレン等の環状ポリアミン類;ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、オキサゾール、チアゾール、オキサチオラン等が挙げられる。Ra、Rc、Re、Rf及びRgとしては、前記のチタニウムプレカーサ、ジルコニウムプレカーサ又はハフニウムプレカーサで例示した基が挙げられる。Rhで表される炭素数1〜8のアルコキシ基としては、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第2ブチルオキシ、第3ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第2アミルオキシ、第3アミルオキシ、ヘキシルオキシ、1−エチルペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、1−メチルシクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第3ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第3オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ等が挙げられる。Riとしては、Rgとして例示した基が挙げられる。
【0047】
ビスマスプレカーサとしては、例えば、トリフェニルビスマス、トリ(o−メチルフェニル)ビスマス、トリ(m−メチルフェニル)ビスマス、トリ(p−メチルフェニル)ビスマス等のトリアリールビスマス化合物;トリメチルビスマス等のトリアルキルビスマス化合物;トリス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)ビスマス等のβ−ジケトン系錯体;トリス(シクロペンタジエニル)ビスマス、トリス(メチルシクロペンタジエニル)ビスマス等のシクロペンタジエニル錯体;トリス(第3ブトキシ)ビスマス、トリス(第3アミロキシ)ビスマス、トリス(エトキシ)ビスマス等の低分子アルコールとのアルコキシド化合物、下記一般式で表されるアルコキシド化合物等が挙げられる。
【0048】
【化14】

【0049】
上記の[化14]の化学式におけるRe、Rf及びRgとしては、前記の[化12]で示したチタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを含有する他のプレカーサで例示した基が挙げられる。
【0050】
希土類プレカーサとしては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0051】
【化15】

【0052】
上記の希土類プレカーサにおいて、M2で表される希土類原子としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムが挙げられ、Ra、Rb、Rc、Re、Rf及びRgで表される基としては、前記のチタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを含有する他のプレカーサで例示した基が挙げられ、Rjで表される炭素数1〜4のアルキル基としては、前記のRgとして例示したものが挙げられる。
【0053】
鉛プレカーサとしては、例えば、ビス(アセチルアセトナト)鉛、ビス(ヘキサン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(5−メチルヘキサン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(ヘプタン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(ヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2−メチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(5−メチルヘプタン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(6−メチルヘプタン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(2,2−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,2,6−トリメチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(オクタン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(2,2,6−トリメチルオクタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,6−ジメチルオクタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチルオクタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(3−メチルオクタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,7−ジメチルオクタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(5−エチルノナン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(2−メチル−6−エチルデカン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(6−エチル−2,2−ジメチルデカン−3,5−ジオナト)鉛等のアルキル置換β−ジケトネート類、ビス(1,1,1−トリフルオロペンタン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチルヘキサン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(1,3−ジパーフルオロヘキシルプロパン−1,3−ジオナト)鉛等のフッ素置換アルキルβ−ジケトネート類、ビス(1,1,5,5−テトラメチル−1−メトキシヘキサン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−メトキシヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(2−メトキシエトキシ)ヘプタン−3,5−ジオナト)鉛等のエーテル置換β−ジケトネート類、ビス(第3ブトキシ)鉛、ビス(第3アミロキシ)鉛、ビス(1,1−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロポキシ)鉛、ビス(1−メチルアミノ−2−メチル−2−プロポキシ)鉛等のアルコキシド類が挙げられる。
【0054】
また、本発明のCVD用原料には、必要に応じて、前記一般式(I)で表される金属化合物及び他のプレカーサに安定性を付与するため、求核性試薬を含有してもよい。該求核性試薬としては、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のエチレングリコールエーテル類、18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、24−クラウン−8、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、ジベンゾ−24−クラウン−8等のクラウンエーテル類、エチレンジアミン、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、トリエトキシトリエチレンアミン等のポリアミン類、サイクラム、サイクレン等の環状ポリアミン類、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、オキサゾール、チアゾール、オキサチオラン等の複素環化合物類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−2−メトキシエチル等のβ−ケトエステル類又はアセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、ジピバロイルメタン等のβ−ジケトン類が挙げられ、安定剤としてのこれらの求核性試薬の使用量は、プレカーサ1モルに対して、好ましくは0.1モル〜10モル、さらに好ましくは1〜4モルである。
【0055】
本発明の薄膜形成用原料においては、これを構成する成分以外の不純物金属元素分、不純物塩素等の不純物ハロゲン分、及び不純物有機分を極力含まないようにする。不純物金属元素分は、元素毎では100ppb以下が好ましく、10ppb以下がより好ましく、総量では1ppm以下が好ましく、100ppb以下がより好ましい。不純物ハロゲン分は、100ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、1ppm以下が更に好ましい。不純物有機分は、総量で500ppm以下が好ましく、50ppm以下がより好ましく、10ppm以下が更に好ましい。また、水分はCVD用原料中におけるパーティクル発生やCVD法によるパーティクル発生の原因となるので、金属化合物、有機溶剤及び求核性試薬について、それぞれの水分の低減のために、使用の際に予めできる限り水分を取り除いたほうがよい。金属化合物、有機溶剤及び求核性試薬それぞれにおいて、水分量は10ppm以下が好ましく、1ppm以下がより好ましい。
【0056】
また、本発明の薄膜形成用原料は、製造される薄膜のパーティクル汚染を低減又は防止するために、液相での光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定において、0.3μmより大きい粒子の数が液相1ml中に100個以下であることが好ましく、0.2μmより大きい粒子の数が液相1ml中に1000個以下であることがより好ましく、0.2μmより大きい粒子の数が液相1ml中に100個以下であることが更に好ましい。
【0057】
本発明の薄膜の製造方法は、本発明の薄膜形成用原料を用いるもので、本発明に係る前記一般式(I)で表される金属化合物及び必要に応じて用いられる他のプレカーサを気化させた蒸気、並びに必要に応じて用いられる反応性ガスを基板上に導入し、次いで、プレカーサを基板上で分解及び/又は化学反応させて薄膜を基板上に成長、堆積させるCVD法によるものである。原料の輸送供給方法、堆積方法、製造条件、製造装置等については、特に制限を受けるものではなく、周知一般の条件、方法等を用いることができる。
【0058】
上記の必要に応じて用いられる反応性ガスとしては、例えば、酸化性のものとしては酸素、オゾン、二酸化窒素、一酸化窒素、水蒸気、過酸化水素、ギ酸、酢酸、無水酢酸等が挙げられ、還元性のものとしては水素が挙げられ、また、窒化物を製造するものとしては、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルキレンジアミン等の有機アミン化合物、ヒドラジン、アンモニア、窒素等が挙げられる。
【0059】
また、上記の輸送供給方法としては、前記の気体輸送法、液体輸送法、シングルソース法、カクテルソース法等が挙げられる。
【0060】
また、上記の堆積方法としては、原料ガス、又は原料ガス及び反応性ガスを熱のみにより反応させ薄膜を堆積させる熱CVD、熱及びプラズマを使用するプラズマCVD、熱及び光を使用する光CVD、熱、光及びプラズマを使用する光プラズマCVD、CVDの堆積反応を素過程に分け、分子レベルで段階的に堆積を行うALD(Atomic Layer Deposition)が挙げられる。
【0061】
また、上記の製造条件としては、反応温度(基板温度)、反応圧力、堆積速度等が挙げられる。反応温度については、本発明に係る前記一般式(I)で表される金属化合物が充分に反応する温度である160℃以上が好ましく、250℃〜800℃がより好ましい。また、反応圧力は、熱CVD又は光CVDの場合、大気圧〜10Paが好ましく、プラズマを使用する場合は、10〜2000Paが好ましい。また、堆積速度は、原料の供給条件(気化温度、気化圧力)、反応温度、反応圧力によりコントロールすることが出来る。堆積速度は、大きいと得られる薄膜の特性が悪化する場合があり、小さいと生産性に問題を生じる場合があるので、0.5〜5000nm/分が好ましく、1〜1000nm/分がより好ましい。また、ALDの場合は、所望の膜厚が得られるようにサイクルの回数でコントロールされる。
【0062】
また、本発明の薄膜の製造方法においては、薄膜堆積の後に、より良好な電気特性を得るために、不活性雰囲気下、酸化性雰囲気下又は還元性雰囲気下でアニール処理を行ってもよく、段差埋め込みが必要な場合には、リフロー工程を設けてもよい。この場合の温度は、通常400〜1200℃であり、500〜800℃が好ましい。
【0063】
本発明の薄膜形成用原料を用いた本発明の薄膜の製造方法により製造される薄膜は、他の成分のプレカーサ、反応性ガス及び製造条件を適宜選択することにより、酸化物セラミックス、窒化物セラミックス、ガラス等の所望の種類の薄膜とすることができる。製造される薄膜の組成としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、ビスマス−チタニウム複合酸化物、ビスマス−希土類元素−チタニウム複合酸化物、珪素−チタニウム複合酸化物、珪素−ジルコニウム複合酸化物、珪素−ハフニウム複合酸化物、ハフニウム−アルミニウム複合酸化物、ハフニウム−希土類元素複合酸化物、珪素−ビスマス−チタニウム複合酸化物、珪素−ハフニウム−アルミニウム複合酸化物、珪素−ハフニウム−希土類元素複合酸化物、チタニウム−ジルコニウム−鉛複合酸化物、チタニウム−鉛複合酸化物、ストロンチウム−チタニウム複合酸化物、バリウム−チタニウム複合酸化物、バリウム−ストロンチウム−チタニウム複合酸化物、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウムが挙げられる。これらの薄膜の用途としては、高誘電キャパシタ膜、ゲート絶縁膜、ゲート膜、強誘電キャパシタ膜、コンデンサ膜、バリア膜等の電子部品部材、光ファイバ、光導波路、光増幅器、光スイッチ等の光学ガラス部材が挙げられる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例、比較例及び評価例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
【0065】
[実施例1]化合物No.19の製造
乾燥アルゴンガス雰囲気下で、反応フラスコにテトラキス(ジメチルアミノ)チタニウム及びテトラキス(イソプロポキシ)チタニウムを等モル量仕込み、100℃で2時間反応させた。反応液を0.2μmのフィルターでろ過した後、減圧留去により30〜40Pa、塔頂温度45〜50℃のフラクションから無色液体を収率87%で得た。これについて更に減圧蒸留により精製を行い、回収率94%で黄色透明液体を得た。得られた黄色透明液体は、分析の結果、目的物である化合物No.19であることが確認された。分析結果を以下に示す。
【0066】
(1)元素分析(金属分析:ICP−AES)
Ti;18.4質量%(理論値18.84%)
(2)1H−NMR(溶媒:重ベンゼン)
図1にチャートを示す。
(3)TG−DTA(Ar100ml/min、昇温速度;10℃/min、サンプル量;13.513mg)
50質量%減少温度;146℃
【0067】
[実施例2]化合物No.59の製造
乾燥アルゴンガス雰囲気下で、反応フラスコにテトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウムを1モル部仕込み、これに第3ブチルアルコール2モル部を室温で滴下し、滴下後、100℃でエチルメチルアミンを留去しながら反応させた。反応液を0.2μmのフィルターでろ過した後、減圧留去により30〜40Pa、塔頂温度61〜64℃のフラクションから無色液体を収率78%で得た。これについて更に減圧蒸留により精製を行い、回収率91%で無色透明液体を得た。得られた無色透明液体は、分析の結果、目的物である化合物No.59であることが確認された。分析結果を以下に示す。
【0068】
(1)元素分析(金属分析:ICP−AES)
Zr;25.2質量%(理論値25.79%)
(2)1H−NMR(溶媒:重ベンゼン)
図2にチャートを示す。
(3)TG−DTA(Ar100ml/min、昇温速度;10℃/min、サンプル量;20.441mg)
50質量%減少温度;167℃
【0069】
[実施例3]化合物No.83の製造
乾燥アルゴンガス雰囲気下で、反応フラスコにテトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム1モル部を仕込み、これに第3ブチルアルコール1モル部を室温で滴下し、滴下後、100℃でエチルメチルアミンを留去しながら反応させた。反応液を0.2μmのフィルターでろ過した後、減圧留去により30〜40Pa、塔頂温度65〜70℃のフラクションから無色液体を収率70%で得た。これについて更に減圧蒸留により精製を行い、回収率90%で無色透明液体を得た。得られた無色透明液体は、分析の結果、目的物である化合物No.83であることが確認された。分析結果を以下に示す。
【0070】
(1)元素分析(金属分析:ICP−AES)
Hf;41.1質量%(理論値41.91%)
(2)1H−NMR(溶媒:重ベンゼン)
図3にチャートを示す。
(3)TG−DTA(Ar100ml/min、昇温速度;10℃/min、サンプル量;9.605mg)
50質量%減少温度;159℃
【0071】
[実施例4]化合物No.95の製造
乾燥アルゴンガス雰囲気下で、反応フラスコにテトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム1モル部を仕込み、これに第3ブチルアルコール2モル部を室温で滴下し、滴下後、100℃でエチルメチルアミンを留去しながら反応させた。反応液を0.2μmのフィルターでろ過した後、減圧留去により30〜40Pa、塔頂温度59〜64℃のフラクションから無色液体を収率87%で得た。これについて更に減圧蒸留により精製を行い、回収率90%で無色透明液体を得た。得られた無色透明液体は、分析の結果、目的物である化合物No.95であることが確認された。分析結果を以下に示す。
【0072】
(1)元素分析(金属分析:ICP−AES)
Hf;40.0質量%(理論値40.48%)
(2)1H−NMR(溶媒:重ベンゼン)
図4にチャートを示す。
(3)TG−DTA(Ar100ml/min、昇温速度;10℃/min、サンプル量;16.815mg)
50質量%減少温度;158℃、融点(DTAピークトップ温度);51℃
【0073】
[評価例1]
上記実施例3及び4それぞれにより得られた化合物No.83及び95並びに表1に記載の類似金属化合物について、熱酸化分解性の評価を行った。熱酸化分解性の評価は、30℃から10℃/分の昇温速度、乾燥酸素気流(100ml/分)下の測定条件による示差熱分析(TG−DTA)を行い、300℃での残分を測定することによって行なった。結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
上記の熱酸化分解性評価より、本発明に係る前記一般式(I)で表される金属化合物である化合物No.83及び95は、これらが有するアミノ基を誘導するジアルキルアミンのみを配位子としたテトラキス(N−エチル−N−メチルアミノ)化合物と同様に、酸化分解性が良好であることが確認できた。これに対して、化合物No.83及び95が有するアルコキシ基を誘導するアルコールのみを配位子としたテトラキス(第3ブトキシ)化合物は、酸化分解性が悪い。
【0076】
[評価例2]
上記実施例1〜4においてそれぞれ得られた化合物No.19、59、83及び95並びに表3〜5に記載のテトラキス(N−エチル−N−メチルアミノ)金属化合物について、蒸気圧測定により揮発特性を評価した。蒸気圧測定は、系を一定の圧力に固定して液面付近の蒸気温度を測定する方法により行った。系の圧力を変えて蒸気温度を3〜4点測定し、クラジウス−クラペイロンプロットにより、蒸気圧の式を適用して、80℃及び120℃における蒸気圧を算出した。結果を表2〜4に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
上記の表2〜4より、本発明の薄膜形成用原料のプレカーサである各金属化合物は、これらが有するアミノ基を誘導するジアルキルアミンのみを配位子としたテトラキス(N−エチル−N−メチルアミノ)金属化合物よりも蒸気圧が大きいことが確認できた。
【0081】
[実施例5、6]
上記実施例3及び4で得た化合物No.83及びNo.95それぞれを用いて、図5に示すCVD装置により、以下の条件及び工程で、シリコンウエハ上に酸化ハフニウム薄膜を製造した。得られた薄膜について、蛍光X線による膜厚測定、及び暗視式ウエーハ異物検査装置による0.1〜0.3μmのパーティクル測定を行った。結果を表5に示す。
(条件)
反応温度(基板温度);200℃、反応性ガス;酸素/オゾン(モル)=1/1
(工程)
下記(1)〜(4)からなる一連の工程を1サイクルとして、80サイクル繰り返し、最後に500℃で3分間アニール処理を行った。
(1)気化室温度150℃、気化室圧力2000〜2200Paの条件で気化させたCVD用原料の蒸気を導入し、系圧2000 〜2200Paで2秒間堆積させる。
(2)3秒間のアルゴンパージにより、未反応原料を除去する。
(3)反応性ガスを導入し、系圧力1300Paで2秒間反応させる。
(4)2秒間のアルゴンパージにより、未反応原料を除去する。
【0082】
[比較例1]
テトラキス(第3ブチル)ハフニウムを用いて、上記実施例1と同様の条件及び工程で、シリコンウエハ上に酸化ハフニウム薄膜を製造した。得られた薄膜について、上記実施例1と同様の測定を行った。結果を表5に示す。
【0083】
[比較例2]
テトラキス(N−エチル−N−メチルアミノ)ハフニウムを用いて、上記実施例1と同様の条件及び工程で、シリコンウエハ上に酸化ハフニウム薄膜を製造した。得られた薄膜について、上記実施例1と同様の測定を行った。結果を表5に示す。
【0084】
【表5】

【0085】
上記表5より、本発明の薄膜形成用原料は、良好な成膜効率を示し、且つパーティクル汚染の発生が少ないことが確認できた。
【0086】
[実施例7]
上記実施例1及び2それぞれで得た化合物No.19及び化合物No.59、並びにビス[1,1−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロポキシ]鉛を用いて、図6に示すCVD装置により、以下の条件で、シリコンウエハ上にチタニウム−ジルコニウム−鉛複合酸化物薄膜を製造した。得られた薄膜について、蛍光X線により、膜厚測定と組成分析を行った。それらの結果を以下に示す。
(条件)
チタニウム原料:化合物No.19(原料温度;60℃、圧力;1300Pa)、ジルコニウム原料:化合物No.59(原料温度;80℃、圧力1300Pa)、鉛原料:ビス[2−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメトキシ]鉛(原料温度;150℃、圧力:1300Pa)、キャリアガス:Ar;200sccm、反応性ガス:酸素;300sccm、反応圧力:1300Pa、反応時間:10分、基板温度:450℃、堆積後のアニール条件:酸素流量100sccm中で500℃にて5分
(結果)
膜厚:82nm、組成比(モル):Pb/Ti/Zr=1.00/0.55/0.47
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、実施例1において得られた本発明の薄膜形成用原料(化合物No.19)の1H−NMRスペクトルである。
【図2】図2は、実施例2において得られた本発明の薄膜形成用原料(化合物No.59)の1H−NMRスペクトルである。
【図3】図3は、実施例3において得られた本発明の薄膜形成用原料(化合物No.83)の1H−NMRスペクトルである。
【図4】図1は、実施例4において得られた本発明の薄膜形成用原料(化合物No.95)の1H−NMRスペクトルである。
【図5】図5は、実施例5及び6において用いた、本発明の薄膜の製造方法に用いられるCVD装置の一例を示す概要図である。
【図6】図6は、実施例7において用いた、本発明の薄膜の製造方法に用いられるCVD装置の他の一例を示す概要図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される金属化合物を含有してなる薄膜形成用原料。
【化1】

【請求項2】
上記一般式(I)において、Mがチタニウムである請求項1に記載の薄膜形成用原料。
【請求項3】
上記一般式(I)において、Mがジルコニウムである請求項1に記載の薄膜形成用原料。
【請求項4】
上記一般式(I)において、Mがハフニウムである請求項1に記載の薄膜形成用原料。
【請求項5】
上記一般式(I)において、mが1である請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜形成用原料。
【請求項6】
上記一般式(I)において、mが2である請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜形成用原料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の薄膜形成用原料を気化させて得た上記一般式(I)で表される金属化合物を含有する蒸気を基体上に導入し、これを分解及び/又は化学反応させて基体上に薄膜を形成する薄膜の製造方法。
【請求項8】
上記一般式(I)において、Mがジルコニウムである金属化合物。
【請求項9】
上記一般式(I)において、Mがハフニウムである金属化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−45083(P2006−45083A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225712(P2004−225712)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000000387)旭電化工業株式会社 (987)
【Fターム(参考)】