説明

薬剤を送給するための装置および方法

この開示は、ガス状の担体中におけるニコチンまたは他の薬剤の濃度を増強する方法に関係する。本方法は、様々な疾患における治療効果を得るためのニコチンまたは他の薬剤の送給に適用可能であり、特に、タバコ製品の使用の中止、代用および/または危害の低減を目的としたニコチンの送給に適用することができる。この開示は、更に、これらの方法を実践するための様々な装置および装置の設計原理にも関係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤を使用者に送給するための装置および方法に関係する。より詳細には、本発明はエアロゾルの形態の薬剤を使用者の肺へ送給するための装置および方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
種々の肺疾患薬送給システムが、数十年もの間、呼吸器障害を治療するための薬剤を送給するために使用されている。肺疾患薬送給の背後に存在する原理は、細気管支および肺胞へ送給することができるようにするための薬剤化合物のエアロゾル化である。粒径の最適化および劣化などの種々の課題に直面したにもかかわらず、数多くの企業が糖尿病、片頭痛、骨粗鬆症および癌に対する治療を施すための技術を開発した。
【0003】
利用可能な送給システムは、計量式吸入器(MDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)、およびネブライザを含む。米国内において、MDIがいち早く1950年代の中頃に導入された。HFAベース(加圧型)のMDIは1995年に米国内において導入された。DPIが1970年代に導入されたが、MDIが圧倒的に優性であったため、それらの使用は限られていた。ネブライザは一般的に病院の設定内において使用される。肺疾患薬送給技術市場内における技術的な進歩が、非CFCベースのMDI、DPI、および液体ベースの吸入器(LBI)で起こっている。
【0004】
多くの前臨床研究および臨床研究は、薬剤の肺への送給が呼吸器疾患と全身性疾患との両疾患の治療にとって効果的な方法であることを実証している。肺への送給の多くの利点が広く認識されており、そのような利点は、効果の速やかな発現、患者が自分で投与できること、副作用の低減、吸入による送給の容易さ、および針を使用しないで済むことを含む。
【0005】
それにもかかわらず、ほとんどの薬剤の投与方法は、従来の静脈内/筋肉内および経口経路による送給から、吸入による肺への送給を含める方向へ有意に抜け出せていない。これまで、肺への送給の使用は、主に、喘息を治療するための薬剤の投与に限られていた。
【0006】
粉末を下部呼吸器領域に直接的に送給するためには、粉末が総体的に5μm未満の粒径を有していなければならないと報じられている。更に、5−10μmの範囲の粉末は、同じようには深部に浸透せず、それどころか、上気道領域を刺激する傾向を有することが判明している。
【0007】
乾燥粉末吸入器(DPI)用の薬剤調合物を製造する場合、その薬剤は、まず、肺への送給用として受け入れ可能な粒径を得るべく製粉されなければならない。この微粉化ステップは製造中に種々の問題を引き起こし得る。例えば、製粉中に発生した熱が薬剤の劣化の原因となり得る。これに加え、金属が製粉機を幾分か擦り落として薬剤を汚染することも考えられる。その上、粒子のサイズが小さいため、乾燥粉末調合物は、特には湿気の存在下において、凝塊形成する傾向を有している。
【0008】
凝塊形成は粒子の流動性が低くなる状態をもたらし、これは乾燥粉末調合物の効能を低下させることとなる。結果として、これらの乾燥粉末エアロゾルが適切に送給されることを確実にするためには、製粉中、ブレンド中、粉体の流動中、充填中、更には投与中においてさえ、注意深い監督が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、薬剤送給用のエアロゾルを調製するための新たな方法に対するニーズが存在する。本開示は、一部においては、賦形剤または溶媒を含めた他の添加剤を必要とすることなく、肺へ送給するためのエアロゾルを発生させるべく、気体流中においてニコチンまたは他の薬剤を送給増強化合物と混ぜ合わせるための方法を開述する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の簡単な概要
幾つかの実施形態においては、本開示は、吸入によりニコチンを被検者に送給する方法に関係し、その方法は:
a)送給増強化合物を含んでいるガス状担体をニコチンを含んでいるニコチンソースと連通した状態にする第1のステップ;および
b)ニコチンを含んでいる上述のガス状担体を被検者に供給する第2のステップ;
を含む。
【0011】
幾つかの実施形態においては、本開示はパラグラフ[0010]の方法に関係し、その方法は、更に、上述のガス状担体を送給増強化合物を含む送給増強化合物のソースと連通した状態にするステップを含んでいる。
【0012】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0011]の方法に関係し、そこでは上述のガス状担体を送給増強化合物のソースと連通した状態にするステップが、上述の送給増強化合物を含むガス状担体をニコチンソースと連通した状態にするステップに先立って行われる。
【0013】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0010]、[0011]または[0012]の方法に関係し、そこでは上述の送給増強化合物のソースが2つまたはそれ以上の前駆化合物を含む複数のコンパートメントを含んでいる。
【0014】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0013]の方法に関係し、そこでは上述の送給増強化合物が塩化アンモニウムを含んでおり、また、上述の2つまたはそれ以上の前駆化合物がアンモニアおよび塩化水素を含んでいる。
【0015】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0010]−[0013]または[0014]の方法に関係し、そこでは上述のガス状担体中におけるニコチン濃度が送給増強化合物を伴わない場合のガス状担体中に含有されるものと考えられるニコチン濃度と比べて相対的に高められている。
【0016】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0010]−[0014]または[0015]の方法に関係し、そこでは上述の送給増強化合物が酸を含んでいる。
【0017】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0016]の方法に関係し、そこでは上述の酸が有機酸である。
【0018】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0017]の方法に関係し、そこでは上述の有機酸が、ある与えられた温度において、ニコチン塩基よりも大きな蒸気圧を有している。
【0019】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0018]の方法に関係し、そこでは上述の与えられた温度が摂氏25°、30°、40°、45°、70°または100°である。
【0020】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0016]−[0018]または[0019]の方法に関係し、そこでは上述の酸が3−メチル−2−オキソ吉草酸、ピルビン酸、2−オキソ吉草酸、4−メチル−2−オキソ吉草酸、3−メチル−2−オキソブタン酸、2−オキソオクタン酸およびそれらの酸の組み合わせからなる群から選択される。
【0021】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0010]−[0019]または[0020]の方法に関係し、そこでは上述の送給増強化合物がニコチンと相互作用して粒子を形成する。
【0022】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0021]の方法に関係し、そこでは上述の粒子は、空気動力学的中央粒子径(Mass Median Aerodynamic Diameter)が6ミクロン未満である。
【0023】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0021]の方法に関係し、そこでは上述の粒子は、空気動力学的中央粒子径が1ミクロン未満である。
【0024】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0021]の方法に関係し、そこでは上述の粒子のうちの少なくとも幾分かは、空気動力学的中央粒子径が0.5ミクロンから5ミクロンまでの間である。
【0025】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0010]−[0023]または[0024]の方法に関係し、その方法は、更に、上述の送給増強化合物、送給増強化合物のソース、ニコチン、ニコチンソースおよび/またはガス状担体の温度を高めるステップを含んでいる。
【0026】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0025]の方法に関係し、そこでは上述の温度は少なくとも30℃に高められる。
【0027】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0010]−[0025]または[0026]の方法に関係し、そこでは上述のガス状担体は、被検者に供給されるある体積のガス状担体中に少なくとも20マイクログラムのニコチンを含んでいる。
【0028】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0027]の方法に関係し、そこでは被検者に送給される上述の体積のガス状担体が単一の体積として供給される。
【0029】
幾つかの実施形態においては、本開示はタバコ製品の使用を中止する方法に関係し、その方法は、[0010]−[0027]または[0028]のうちの1つまたはそれ以上の方法を含み、更に、タバコ製品からもたらされるニコチンに少なくとも部分的に取って代わるべく、治療的に有効量のニコチンを被検者に送給することを含んでいる。
【0030】
幾つかの実施形態においては、本開示はニコチンが治療的に有益である疾患を治療する方法に関係し、その方法は[0010]−[0027]または[0028]のうちの1つまたはそれ以上の方法を含み、そこでは治療的に有効量のニコチンが被検者に供給される。
【0031】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0030]の方法に関係し、そこでは上述の疾患がニコチン中毒、肥満、アルツハイマー病、パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症およびそれらの疾患の組み合わせからなる群から選択される。
【0032】
幾つかの実施形態においては、本開示はタバコ製品の代用方法に関係し、その方法は、タバコ製品からもたらされるニコチンを代用すべく、[0010]−[0027]または[0028]の方法により被検者にニコチンを送給することを含む。
【0033】
幾つかの実施形態においては、本開示はタバコ製品の危害を低減する方法に関係し、その方法は、タバコ製品からもたらされるニコチンに取って代わるべく、[0010]−[0027]または[0028]の方法により被検者にニコチンを送給することを含む。
【0034】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0010]−[0032]または[0033]の方法を実施することができるように構成された装置に関係する。
【0035】
幾つかの実施形態においては、本開示は被検者にニコチンを送給するための装置に関係し、その装置はハウジングを含み、前述のハウジングは:
a)相互に連通した状態にあるインレットおよびアウトレットであって、ガス状担体がそのインレットを通じてハウジング内に入り、ハウジングを通った後、前述のアウトレットを通じてそのハウジングから出ることができるように構成されており、本装置がインレットからアウトレットまでを直列的に含んでいる、インレットおよびアウトレット;
b)上述のインレットと連通した状態にある第1内部領域であって、その第1内部領域が送給増強化合物のソースを含んでいる、第1内部領域;
c)上述の第1内部領域と連通した状態にある第2内部領域であって、その第2内部領域がニコチンソースを含んでいる、第2内部領域;および
d)場合によって、上述の第2内部領域およびアウトレットと連通した状態にある第3内部領域;
を含む。
【0036】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0035]の装置に関係し、そこではアウトレットにおける部分的真空が、インレット、第1コンパートメント、第2コンパートメント、存在する場合には第3コンパートメント、更にはアウトレットを通じてガス状担体を引き込むことができるように構成されている。
【0037】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0035]または[0036]の装置に関係し、そこでは上述の送給増強化合物のソースがそこに吸着されている送給増強化合物を伴った吸着エレメントを含んでおり、および/または上述のニコチンソースがそこに吸着されているニコチンを伴った吸着エレメントを含んでいる。
【0038】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0037]の装置に関係し、そこでは上述の1つまたは複数の吸着エレメントがガラス、アルミニウム、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFEまたはTEFLON(登録商標))、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)(ePTFEは例えば米国特許第4,830,643号に開述されている)およびBAREX(登録商標)のうちの少なくとも1つを含んでいる。
【0039】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0035]−[0037}または[0038]の装置に関係し、その装置は更に上述の第1内部領域と連通した状態にある第1レザバ(貯留部)を含んでおり、その第1レザバが送給増強化合物を含んでいる。
【0040】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0035]−[0038]または[0039]の装置に関係し、その装置は更に上述の第2内部領域と連通した状態にある第2レザバ(貯留部)を含んでおり、その第2レザバがニコチンを含んでいる。
【0041】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0035]−[0039]または[0040]の装置に関係し、その装置は上述の第3内部領域を含んでおり、その第3内部領域は第3内部領域エレメントを含んでいる。
【0042】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0041]の装置に関係し、そこでは上述の第3内部領域エレメントが浄化剤を含んでいる。
【0043】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0042]の装置に関係し、そこでは上述の浄化剤が活性炭を含んでいる。
【0044】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0041]、[0042]または[0043]の装置に関係し、そこでは上述の第3内部領域エレメントが香料添加剤を含んでいる。
【0045】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0041]−[0043]または[0044]の装置に関係し、そこでは上述の第3内部領域エレメントが薬剤を含んでいる。
【0046】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0045]の装置に関係し、そこでは上述の薬剤がニコチンを含んでいる。
【0047】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0035]−[0045]または[0046]の装置に関係し、そこでは上述のハウジングはタバコ喫煙製品をシミュレートする。
【0048】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0047]の装置に関係し、そこでは上述のタバコ喫煙製品はシガレットである。
【0049】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0035]−[0045]または[0046]の装置に関係し、そこでは上述のハウジングは調合薬吸入装置をシミュレートする。
【0050】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0049]の装置に関係し、そこでは上述のシミュレートされる調合薬吸入装置は計量式吸入器、加圧型計量式吸入器、乾燥粉末吸入器、ネブライザおよび液体ベースの吸入器からなる群から選択される。
【0051】
幾つかの実施形態においては、本開示は、ガス状担体中におけるニコチン濃度を高める方法に関係し、その方法は、送給増強化合物を含んでいる前述のガス状担体をニコチンを含んでいるニコチンソースと連通した状態にするステップを含む。
【0052】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0051]の方法に関係し、その方法は、更に、上述のガス状担体を送給増強化合物を含んでいる送給増強化合物のソースと連通した状態にするステップを含む。
【0053】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0052]の方法に関係し、そこでは上述のガス状担体を送給増強化合物のソースと連通した状態にするステップが、上述の送給増強化合物を含んでいるガス状担体をニコチンソースと連通した状態にするステップに先行して行われる。
【0054】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0051]、[0052]または[0053]の方法に関係し、そこでは上述の送給増強化合物のソースが2つまたはそれ以上の前駆化合物を含む複数のコンパートメントを含んでいる。
【0055】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0054]の方法に関係し、そこでは上述の送給増強化合物が塩化アンモニウムを含み、且つ、上述の2つまたはそれ以上の前駆化合物がアンモニアおよび塩化水素を含んでいる。
【0056】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0051]−[0054]または[0055]の方法に関係し、そこでは上述のガス状担体中におけるニコチン濃度が送給増強化合物を伴わない場合のガス状担体中に含有されるものと考えられるニコチン濃度と比べて相対的に高められている。
【0057】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0051]−[0055]または[0056]の方法に関係し、そこでは上述の送給増強化合物が酸を含む。
【0058】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0057]の方法に関係し、そこでは上述の酸が有機酸である。
【0059】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0058]の方法に関係し、そこでは上述の有機酸が、ある与えられた温度において、ニコチンよりも大きな蒸気圧を有している。
【0060】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0059]の方法に関係し、そこでは上述の与えられた温度が摂氏25°、30°、40°、45°、70°または100°である。
【0061】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0057]の方法に関係し、そこでは上述の酸は3−メチル−2−オキソ吉草酸、ピルビン酸、2−オキソ吉草酸、4−メチル−2−オキソ吉草酸、3−メチル−2−オキソブタン酸、2−オキソオクタン酸およびそれらの酸の組み合わせからなる群から選択される。
【0062】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0051]−[0060]または[0061]の方法に関係し、そこでは上述の送給増強化合物がニコチンと相互作用して粒子を形成する。
【0063】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0062]の方法に関係し、そこでは上述の粒子のうちの幾分かまたはすべての粒子は空気動力学的中央粒子径が6ミクロン未満である。
【0064】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0062]の方法に関係し、そこでは上述の粒子のうちの幾分かまたはすべての粒子は空気動力学的中央粒子径が1ミクロン未満である。
【0065】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0062]の方法に関係し、そこでは上述の粒子のうちの少なくとも幾分かは空気動力学的中央粒子径が0.5ミクロンから5ミクロンまでの間である。
【0066】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0051]−[0064]または[0065]の方法に関係し、その方法は、更に、送給増強化合物、送給増強化合物のソース、ニコチン、ニコチンソースおよび/またはガス状担体の温度を高めるステップを含んでいる。
【0067】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0066]の方法に関係し、そこでは上述の温度は少なくとも摂氏30°にまで高められる。
【0068】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0067]の方法に関係し、そこでは上述の温度は複数の加熱ステップにより高められる。
【0069】
幾つかの実施形態においては、本開示はタバコ製品の使用を中止するためのニコチンに関係し、そのニコチンは、送給増強化合物を含んでいるガス状担体をニコチンソースと連通した状態にするステップの後に更にそのガス状担体を被検者に供給するステップを含む[0051]−[0067]または[0068]の方法により送給される。
【0070】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0069]のニコチンに関係し、そこでは上述のガス状担体が被検者に供給されるある体積のガス状担体中に少なくとも20マイクログラムのニコチンを含んでいる。
【0071】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0070]のニコチンに関係し、そこでは被検者に送給される上述の体積のガス状担体が単一の体積として供給される。
【0072】
幾つかの実施形態においては、本開示はタバコ製品の危害を低減するためのニコチンに関係し、そのニコチンは、送給増強化合物を含んでいるガス状担体をニコチンソースと連通した状態にするステップの後に更にそのガス状担体を被検者に供給するステップを含む[0051]−[0067]または[0068]の方法により送給される。
【0073】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0072]のニコチンに関係し、そこでは上述のガス状担体が被検者に供給されるある体積のガス状担体中に少なくとも20マイクログラムのニコチンを含んでいる。
【0074】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0073]のニコチンに関係し、そこでは被検者に送給される上述の体積のガス状担体が単一の体積として供給される。
【0075】
幾つかの実施形態においては、本開示はタバコ製品を代用するためのニコチンに関係し、そのニコチンは、送給増強化合物を含んでいるガス状担体をニコチンソースと連通した状態にするステップの後に更にそのガス状担体を被検者に供給するステップを含む[0051]−[0067]または[0068]の方法により送給される。
【0076】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0075]のニコチンに関係し、そこでは上述のガス状担体が被検者に供給されるある体積のガス状担体中に少なくとも20マイクログラムのニコチンを含んでいる。
【0077】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0076]のニコチンに関係し、そこでは被検者に送給される上述の体積のガス状担体が単一の体積として供給される。
【0078】
幾つかの実施形態においては、本開示はニコチン中毒、肥満、アルツハイマー病、パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症およびそれらの疾患の組み合わせからなる群から選択される疾患を治療するためのニコチンに関係し、そのニコチンは、送給増強化合物を含んでいるガス状担体をニコチンソースと連通した状態にするステップの後に更にそのガス状担体を被検者に供給するステップを含む[0051]−[0067]または[0068]の方法により送給される。
【0079】
幾つかの実施形態においては、本開示は、a)[0051]−[0067]または[0068]の方法を実施することができるように構成され;および/またはb)[0069]−[0077]または[0078]のニコチンを送給することができるように構成された装置に関係する。
【0080】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0051]−[0067]または[0068]の方法によって送給されるべき薬剤を製造するためのニコチンの使用に関係する。
【0081】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0051]−[0067]または[0068]の方法によって送給されるべきタバコ製品の使用を中止するための薬剤を製造するためのニコチンの使用に関係する。
【0082】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0051]−[0067]または[0068]の方法によって送給されるべきタバコ製品の危害を低減するための薬剤を製造するためのニコチンの使用に関係する。
【0083】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0051]−[0067]または[0068]の方法によって送給されるべきタバコ製品を代用するための薬剤を製造するためのニコチンの使用に関係する。
【0084】
幾つかの実施形態においては、本開示はニコチン中毒、肥満、アルツハイマー病、パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症およびそれらの疾患の組み合わせからなる群から選択される疾患を治療するための薬剤を製造するためのニコチンの使用に関係し、そのニコチンは、送給増強化合物を含んでいるガス状担体をニコチンソースと連通した状態にするステップの後に更にそのガス状担体を被検者に供給するステップを含む[0051]−[0067]または[0068]の方法により送給される。
【0085】
幾つかの実施形態においては、本開示は薬剤を使用者に送給するための方法に関係し、その方法は:
第1物質上に気体流を通して第1蒸気含有気体流を創出するステップ;
第2物質上に上述の第1蒸気含有気体流を通してその気体流中に粒子を創出するステップ;および
上述の粒子を含有する気体流を使用者に送給するステップ;
を含む。
【0086】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0085]の方法に関係し、そこでは上述の第1蒸気含有気体流を創出するステップが、気体流中に上述の第1物質の蒸気を捕獲することを含む。
【0087】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0085]または[0086]の方法に関係し、そこでは上述の粒子を創出するステップが、上述の第2物質の蒸気を上述の第1蒸気含有気体流と接触させることを含む。
【0088】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0085]、[0086]または[0087]の方法に関係し、そこでは上述の粒子を創出するステップが上述の第1物質と上述の第2物質との間での相互作用を含む。
【0089】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0088]の方法に関係し、そこでは上述の相互作用が酸−塩基反応を含む。
【0090】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0085]−[0088]または[0089]の方法に関係し、そこでは上述の第1物質および第2物質が揮発性物質である。
【0091】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0090]の方法に関係し、そこでは上述の第1物質は、環境温度において、上述の第2物質よりも揮発性が高い。
【0092】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0085]−[0090]または[0091]の方法に関係し、そこでは上述の第1物質および/または上述の第2物質のうちの一方がニコチンを含んでいる。
【0093】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0092]の方法に関係し、そこでは上述のニコチンが遊離塩基ニコチンを含んでいる。
【0094】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0085]−[0092]または[0093]の方法に関係し、そこでは上述の粒子がニコチン含有粒子を含む。
【0095】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0085]−[0093]または[0094]の方法に関係し、そこでは使用者に送給される上述の気体流が20マイクログラム以上のニコチン含有粒子を含んでいる。
【0096】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0085]−[0094]または[0095]の方法に関係し、そこでは上述の粒子がニコチン塩粒子を含む。
【0097】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0085]−[0095]または[0096]の方法に関係し、そこでは上述の第1物質が酸を含む。
【0098】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0097]の方法に関係し、そこでは上述の酸がピルビン酸を含む。
【0099】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0085]−[0097]または[0098]の方法に関係し、そこでは上述の粒子がピルビン酸ニコチンを含む。
【0100】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0097]の方法に関係し、そこでは上述の酸が3−メチル−2−オキソブタン酸を含む。
【0101】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0085]−[0099]または[0100]の方法に関係し、そこでは上述の粒子がニコチン3−メチル−2−オキソブタノアートを含む。
【0102】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0085]−[0100]または[0101]の方法に関係し、そこでは上述の粒子のうちの少なくとも幾分かは可視粒子である。
【0103】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0085]−[0101]または[0102]の方法に関係し、そこでは上述の粒子のうちの少なくとも幾分かが使用者の肺へ送給される。
【0104】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0085]−[0102]または[0103]の方法に関係し、そこでは上述の粒子は直径が6ミクロン未満である。
【0105】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0085]−[0103]または[0104]の方法に関係し、そこでは上述の粒子のうちの少なくとも幾分かは直径が0.5ミクロンから5ミクロンまでの間である。
【0106】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0010]−[0027]もしくは[0028]の方法;または[0051]−[0067]もしくは[0068]の方法;または[0080]の使用に関係し、そこでは[0132]においてリストアップされている薬剤、例えば[0132]において番号1−66で特定されている化合物などが、[0010]−[0027]もしくは[0028];または[0051]−[0067]もしくは[0068];または[0080]において言及されているニコチンの代わりに使用され、またはそのようなニコチンに加えて使用される。
【0107】
幾つかの実施形態においては、本開示は[0035]−[0049]または[0050]の装置に関係し、そこではその装置は、ニコチンの代わりに、またはニコチンに加えて、[0132]でリストアップされている薬剤、例えば[0132]において番号1−66で特定されている化合物などを送給することができるように成されている。
【0108】
幾つかの実施形態においては、本開示は、その薬剤が治療的に有益である疾患を治療するために[0010]−[0027]もしくは[0028]の方法;または[0051]−[0067]もしくは[0068]の方法によって送給するための[0132]の薬剤の使用、例えば[0132]において番号1−66で特定されている化合物などの使用に関係している。
【0109】
先述の説明は、以下に続く本発明の詳細な説明を一層良好に理解することができるように、本発明の特徴および技術的利点をやや大雑把に概説してきた。以降では、本発明の特許請求項の主題を形成する本発明の更なる特徴および利点が開述される。当業者であれば、開示されている概念および具体的な実施形態は、本発明の同じ目的を果たすために他の様々な構造への変更または設計を行う上での基礎として容易に利用され得ることが認識されるに違いない。また、当業者であれば、そのような同等な構造物は、添付の特許請求項において示されている通りの本発明の精神および範囲から逸脱しないことも理解されよう。それの機構と操作の方法との両方に関して本発明の特性であると確信される種々の新規な特徴が、更なる目的および利点とともに、添付図面と結び付けて検討したときの以下の説明から一層良好に理解することができよう。しかし、それぞれの図面は例示および説明の目的でのみ提供されたものであり、本発明の限界を定めることを意図したものではないことをはっきりと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0110】
本発明についての一層完全な理解を得るため、次に、添付図面と結び付けて行われる以下の説明への参照がなされ、それらの添付図面中:
【0111】
図1は、シガレットをシミュレートする例証的送給装置の外部の透視図である。
【0112】
図2は、シガレットをシミュレートする例証的送給装置の内部の透視図である。
【0113】
図3は、図1および2からの例証的送給装置の使用に際しての透視図である。
【0114】
図4は、装置を使用するための種々のコンポーネントの組み立て段階および最終的配置構成を示す、例証的送給装置のサブコンポーネントの断面図である。
【0115】
図5は、ニコチンまたは他の薬剤および送給増強化合物を供給するための様々なソースエレメントの透視図である。
【0116】
図6は、再使用可能な部分および使い捨て部分を示す、例証的送給装置のサブコンポーネントの断面図である。
【0117】
図7は、本装置ならびにニコチンまたは他の薬剤および送給増強化合物を補給するための再充填ユニットを示す、再使用可能な例証的送給装置のサブコンポーネントの断面図である。
【0118】
図8は、本装置を示す再使用可能な例証的送給装置の断面図、ならびにニコチンまたは他の薬剤および送給増強化合物を補給するための再充填ユニットの透視図である。そして
【0119】
図9は、本装置および再充填ユニットを示す、再使用可能な例証的送給装置の断面図であって;9Aは再充填ユニットのみを示しており、9Bは再充填ユニット内に着座された送給装置を示しており、そして9Cは、ニコチンまたは他の薬剤および送給増強化合物を再供給するための再充填ユニットの定量ポンプの圧縮後における送給装置を示してある。
【0120】
図10Aは、別個のコンポーネントとして透視図で示されている加熱コンポーネントをその内部に伴った例証的送給装置の断面図であり;10Bは、本装置および/またはそれの構成要素を温度制御するために本送給装置がその内部に着座される外部加熱ユニットを備えた例証的送給装置を示してある。
【0121】
図11A−11Dは、吸入される薬剤の調合薬送給のために一般的に使用される計量式吸入器をシミュレートする例証的装置の断面図である。
【0122】
図12A−12Cは、吸入される薬剤の調合薬送給のために一般的に使用される計量式吸入器をシミュレートする例証的装置の断面図である。
【0123】
図13Aおよび13Bは、吸入される薬剤の調合薬送給のために一般的に使用される計量式吸入器をシミュレートする例証的装置の断面図である。
【0124】
図14Aおよび14Bは、吸入される薬剤の調合薬送給のために一般的に使用される計量式吸入器をシミュレートする例証的装置の断面図である。
【0125】
図15Aおよび15Bは、吸入される薬剤の調合薬送給のために一般的に使用される計量式吸入器をシミュレートする例証的装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0126】
本明細書で使用する場合、「粒子」という用語は、液滴、固体微粒子またはそれら両方の組み合わせ、例えば固体微粒子を核とした液滴などを表し得る。
【0127】
本明細書で使用する場合、「治療的に有効な量」という用語は、被検者、一般的にはヒト被検者において治療効果を達成するニコチンまたは他の薬剤のある濃度またはある量を表し得る。この被検者は、ある疾患または医学的に定められたある状態の改善を得る。その改善は、上述の疾患に関係した症状の何らかの改善または矯正である。また、その改善は観測可能または測定可能な改善である。従って、当業者は、疾患の完全な治癒ではないかもしれないが、治療が疾患状態を改善し得ることを認識する。幾つかの実施形態におけるこの治療効果は、ニコチン中毒にかかっている被検者またはニコチン使用離脱症状を被っている被検者におけるニコチン渇望の低減または除去を含み得る。
【0128】
本発明の概念を理解しやすくするため、ここでは、実施形態はニコチンを送給するための装置および方法に関して記述される。当業者であれば、[0132]においてリストアップされている薬剤が、本明細書中の教示に従って、ニコチンの代わりにまたはニコチンに加えて使用され得ることが認識されよう。
【0129】
本明細書中で記載されている方法は、ニコチン送給装置から得られるニコチンの用量についての驚くべき発見に関係している。本発明者らは、思いがけなく、吸入によって被検者へ送給されるニコチンの用量を増大させるための方法を特定した。この発見の重要性は、シガレットおよび同様なタバコ製品を喫煙している間に被検者が経験するニコチンの送給に取って代わる能力が改善されることにある。ニコチン送給プロフィールが改善されているため、本明細書中で記載されている方法を適用する被検者には、喫煙の中止、危害の低減および/または代用を試みる際に、優れたニコチン代用療法がもたらされよう。喫煙にかかわる健康上の問題が地球規模での継続的問題として存在しているため、本明細書中で記載されている方法は、喫煙者が禁煙するのを支援するための医学的取り組みにおける非常に重要なニーズに対応する。
【0130】
理論によって拘束されることを願うものではないが、ニコチンソース上に揮発性の第1物質(即ち、送給増強化合物)の蒸気を通すことは結果として液体状態または固体状態の粒子の形成をもたらし、これは、その後、より一層のニコチンが蒸発して前述の第1物質と化合することを可能にし、これにより更なる粒子の発生がもたらされるものと確信される。ある与えられた温度における粒子形成(生じる塊状物)の量は、ニコチンの蒸気が第2の揮発性物質上に通されたときに形成される量よりも多いであろう。同様に、ある与えられた温度における粒子形成の量は、これら2つの物質の蒸気が(先行技術において開示されている如き)平行混合装置で化合されるときに形成される量よりも、粒子形成の量が揮発性に劣る物質の揮発性によって制限されるため、更には、もう一方の物質を含有しているある体積のガスと混合することによる活性物質の希釈のため、多いであろう。また、一方の物質を第2の物質上に逐次的に通すことを可能にすることは、先行技術において開示されている如き平行混合よりも、これら2つの物質の一層効果的な化合を可能に成し得る。別の可能性は、第1物質と第2物質との間での相互作用が発熱プロセスであることである。言い換えれば、この発熱相互作用の結果として、熱の形態でエネルギーが放出される。理論に拘束されることを願うものではないが、この放出される熱によってニコチンの蒸発が増強され得るものと確信される。
【0131】
幾つかの実施形態においては、本方法は、ガス状担体をニコチンソースと連通した状態にするステップを含む。これらの実施形態におけるガス状担体は、送給増強化合物を欠いているガス状担体の場合におけるニコチンの量と比べて相対的に、ガス状担体中におけるニコチンの量を増大させることができる送給増強化合物を含んでいる。幾つかの実施形態においては、その送給増強化合物はニコチン塩基または他の薬剤と反応して塩を形成することができる。特定の実施形態においては、その送給増強化合物はニコチン塩基と反応して塩粒子を形成することができる。好適な実施形態においては、それらの粒子は空気動力学的中央粒子径が6マイクロメートル未満であり、より好適には1マイクロメートル未満である。(空気動力学的中央粒子径の決定に関しては、Katz IM、Schroeter JD、Martonen TBによる「エアロゾル化されたインスリンの沈着に影響を及ぼす要因(Factors affecting the deposition of aerosolized insulin)」(Diabetes technology & Therapeutics、vol.3(3)、2001、pp387−397)(この教示のため、参照により本明細書に組み入れられる)を参照のこと。)
【0132】
本明細書中で開示されている方法は、ニコチンと類似した生物物理学的特性および/または化学的特性を有する様々な他の薬剤とともに使用すべく適合させることができる。以下の化合物は、窒素原子がヘテロ環または非環状鎖に存在している(置換)、脂肪族または芳香族の飽和型または不飽和型の窒素含有塩基(窒素を含有しているアルカリ性化合物)である。加えて、これらの化合物は、揮発に有利に働くことが期待される融点(150℃未満)または沸点(300℃未満)に基づいて選択されている:
薬剤−ニコチン以外
1.7−ヒドロキシミトラジニン
2.アレコリン
3.アトロピン
4.ブプロピオン
5.カチン(D−ノルプソイドエフェドリン)
6.クロルフェネラミン
7.ジブカイン
8.ジメモルファン
9.ジメチルトリプタミン
10.ジフェンヒドラミン
11.エフェドリン
12.ホルデニン
13.ヒヨスチアミン
14.イソアレコリン
15.レボルファノール
16.ロベリン
17.メセムブリン
18.ミトラジニン
19.ムスカリン
20.プロカイン
21.プソイドエフェドリン
22.ピリラミン
23.ラクロプライド
24.リトドリン
25.スコポラミン
26.スパルテイン(ルピニジン)
27.チクロピジン
タバコの煙構成要素:
28.1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン
29.アナバシン
30.アナタビン
31.コチニン
32.ミオスミン
33.ニコトリン
34.ノルコチニン
35.ノルニコチン
抗喘息薬
36.オルシプレナリン
37.プロプラノロール
38.テルブタリン
抗狭心症薬
39.ニコランジル
40.オクスプレノロール
41.ベラパミル
抗不整脈薬
42.リドカイン
ニコチン性受容体物質
A.ニコチン作動薬
43.エピバチジン
44.5−(2R)−アゼチジニルメトキシ)−2−クロロピリジン(ABT−594)
45.(S)−3−メチル−5−(1−メチル−2−ピロリジニル)イソオキサゾール(ABT−418)
46.(±)−2−(3−ピリジニル)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン(RJR−2429)
B.ニコチン拮抗薬:
47.メチルリカコチニン
48.メカミラミン
C.アセチルコリンエステラーゼ阻害薬
49.ガランタミン
50.ピリドスチグミン
51.フィゾスチグミン
52.タクリン
MAO−阻害薬
53.5−メトキシ−N,N−ジメチルトリプタミン
54.5−メトキシ−α−メチルトリプタミン
55.アルファ−メチルトリプタミン
56.イプロクロジド
57.イプロニアジド
58.イソカルボキサジド
59.リネゾリド
60.メクロベミド
61.N,N−ジメチルトリプタミン
62.フェネルジン
63.フェニルエチルアミン
64.トロキサトン
65.トラニルシプロミン
66.トリプタミン
【0133】
ガス状担体およびガス状担体のソース
【0134】
本ガス状担体は、ニコチン塩基および送給増強化合物を含有することができるあらゆるガスであってよい。当業者であれば、意図されている用途、ニコチンの形態および1つまたは複数の具体的な送給増強化合物に基づいて、適切なガス状担体を容易に選択することができよう。好適な実施形態においては、本ガス状担体は、少なくとも被検者への送給が想定されている期間の間、そのニコチンの形態および/または担持される送給増強化合物に関して実質的に不活性である。幾つかの実施形態においては、そのガス状担体は周囲の空気である。別の実施形態においては、そのガス状担体は、実質的に純粋なガス、例えば二酸化炭素もしくは窒素ガスなど、またはそのようなガスの混合物である。そのような実施形態においては、そのガス状担体は、明細書中で記載されている方法を果たすことができるような仕方で本ガス状担体を保持し且つ送給できるように設計された容器から供給される。例えば、計量式吸入器装置を用いる実施形態においては、そのガス状担体は、推進剤としてのハイドロフルオロアルカン(HFA)を含めたハイドロフルオロカーボンを含んでいてよい。これらのうちの幾つかの実施形態においては、前述のHFAは、HFA 134aおよびHFA 227のうちの1つまたはそれ以上である。
【0135】
送給増強化合物
【0136】
送給増強化合物は、ガス状担体がニコチンソースと連通した状態に置かれたときに、ガス状担体中におけるニコチンの総濃度を増大させることができる化合物である。ニコチンは25℃において0.04mmHgの蒸気圧を有している。環境温度が用いられる場合には、ある与えられた温度においてニコチンより大きな蒸気圧を有している送給増強化合物が好適である。非限定的な例は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸または硫酸など、ならびに飽和型および不飽和型の脂肪族酸、飽和型および不飽和型の脂環式酸、芳香族酸(ヘテロ環式芳香族を含む)、ポリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸、ケト酸およびオキソ酸、チオ酸、アミノ酸を含めた有機酸を含み、場合によっては先述の各酸は、これに限定するものではないがハロゲンを含め、1つまたはそれ以上のヘテロ原子で置換されている。幾つかの実施形態においては、その送給増強化合物はカルボン酸である。これらのうちの幾つかの実施形態においては、そのカルボン酸は「2−オキソ酸」と称されるクラスに属している。また、これらのうちの幾つかの実施形態においては、そのカルボン酸は、「2−ケト酸」として知られているα−ケト酸のクラスに属している。これらのうちの幾つかの実施形態においては、その酸は、3−メチル−2−オキソ吉草酸、ピルビン酸、2−オキソ吉草酸、4−メチル−2−オキソ吉草酸、3−メチル−2−オキソブタン酸、2−オキソオクタン酸および前述の酸の組み合わせからなる群から選択される。幾つかの実施形態においては、その送給増強化合物は、固体粒子、例えば塩粒子を形成する。別の実施形態においては、その送給増強化合物は液滴エアロゾルを形成する。
【0137】
代替的に、本送給増強化合物は微粒子状のエアロゾルを形成し、それらの粒子が例えばニコチン塩基を吸着または吸収してもよい。特定の実施形態においては、その微粒子状エアロゾルは塩化アンモニウム塩粒子を含む。ニコチン粒子の形成または粒子上へのニコチンの吸着/吸収を含む実施形態においては、形成される粒子は、サイズが好適には6ミクロン未満であり、より好適には5ミクロン未満または1ミクロン未満である。
【0138】
ニコチン(または他の薬剤)ソース
【0139】
ニコチンソースの実施形態は、揮発性形態のニコチン、例えばニコチン塩基またはニコチン塩(例えばニコチン−HCl、−二酒石酸塩)などをもたらすことができる何らかの化学物質を含んでいる化合物を使用する。1つより多くの形態のニコチンを使用することができるが、遊離塩基ニコチンが好適である。このニコチンソースは、他の化合物、例えばニコチンを安定化させるための酸化防止剤(BHA、BHT、アスコルビン酸塩)などを含んでいてよい。幾つかの実施形態においては、ニコチンソースをもたらすべく、ニコチンがあるエレメント上に吸着される。この吸着されたニコチンは、比較的不活性な材料の表面上に保持される。吸着エレメント材料の非限定的な例は、ガラス、ステンレス鋼、アルミニウム、PET、PBT、PTFE、ePTFEおよびBAREX(登録商標)を含む。吸着は、気体、液体または固体の溶質が固体またはもっと稀には液体(吸着剤)の表面に堆積して分子膜または原子膜(吸着質)を形成するときに起こるプロセスである。物理吸着は、典型的には、吸着剤表面を構成する吸着質分子および原子間のファン・デル・ワールス力および静電気力の結果である。従って、吸着剤は、表面特性、例えば表面積および極性などによって特徴付けられる。
【0140】
大きな吸着容量をもたらすためには大きな比表面積が好適であり得るが、限られた体積内における大きな内部表面積の創出は、必然的に、吸着表面間に多数の小さなサイズの細孔を生じさせる。これらの微小孔のサイズが内部吸着表面への吸着質分子の接近可能性を決定し、従って、これらの微小孔の細孔径分布は、吸着剤の吸着力を特徴付ける上での別の重要な特性である。表面極性は、極性物質、例えば水またはアルコールなどとの親和性に対応する。従って、極性吸着剤は「親水性」と呼ばれ、アルミノケイ酸塩、例えばゼオライト、多孔質アルミナ、シリカゲルまたはシリカ−アルミナなどがこのタイプの吸着剤の例である。一方、非極性吸着剤は一般的に「疎水性」である。炭素質吸着剤、ポリマー吸着剤およびシリカライトは典型的な非極性吸着剤である。これらの吸着剤は水よりも油または炭化水素に対してもっと高い親和性を有している。幾つかの実施形態においては、吸着剤が液体の形態を成しているときには、吸着表面も毛管作用によりその吸着される材料をウィッキングする。ウィッキング(Wicking)は、液体と吸着表面との間での付着性分子間力がその液体の内部での凝集性分子間力よりも強いときに起こる。その効果が凹面メニスカスをもたらし、その物質が垂直方向の吸着面と触れる場所を形成する。吸着表面は、親水性または疎水性の液体をウィッキングすることができるように選択または設計されてよい。
【0141】
代替的な実施形態においては、そのニコチンソースエレメントは(多孔質、非多孔質を問わず)吸収性の材料を含むことができる。ニコチンソースエレメント材料の非限定的な例はポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)を含む。
【0142】
ニコチンソースは、幾つかの実施形態においては、ニコチンレザバ(貯留部)であってもよいし、またはニコチンレザバと連通していてもよい。幾つかの実施形態においては、そのレザバは、吸着性または吸収性のニコチンソースエレメントと連通した状態の液体レザバとともに液体の形態を成したある体積のニコチンを含有している。別の実施形態においては、そのニコチンレザバはニコチンソースエレメントであり、またはニコチンソースエレメントの一部を形成している。そのような組み合わせ型のソースおよびレザバの非限定的な例は、ニコチン溶液で飽和された材料(例えばPEまたはPP)であろう。特定の実施形態においては、そのレザバは、送給装置が望ましい期間にわたって治療的に有効な用量のニコチンを提供することを可能にするのに充分なニコチン溶液を供給する。非限定的な例は、望ましい日数(例えば1−7日間)にわたって、1日当たり望ましい回数(例えば200回)のパフで、体積35立方センチメートルの「パフ」のガス状担体当たり0−100マイクログラムのニコチンを送給することができる装置であろう。特定の実施形態においては、送給されるニコチンの量は、体積35立方センチメートルの「パフ」当たり10から110マイクログラムまでの間、20から100マイクログラムまでの間、50から100マイクログラムまでの間、または40から60マイクログラムまでの間のニコチンである。
【0143】
上の例示種としてのニコチン塩基に適用されているのと同じ原理を用いて、1つまたは複数の薬剤のソースを形成すべく、[0132]でリストアップされている他の薬剤をニコチンの代わりに、またはニコチンに加えて使用することができる。
【0144】
送給増強化合物のソース
【0145】
本方法の幾つかの実施形態においては、本ガス状担体は、送給増強化合物と予め混ぜ合わされて提供される。本明細書中で記載されている本方法の他の実施形態は、ニコチンソース上にガス状担体を通すのに先立ち、またはそれと同時に、ガス状担体に送給増強化合物をローディングするステップを含む。ガス状担体に送給増強化合物をローディングするステップを包含している実施形態においては、その送給増強化合物は一般的には送給増強化合物ソースの形態で供給される。これらの実施形態におけるガス状担体は、一般的に、送給増強化合物がその送給増強化合物のソースからガス状担体に入ることができるように、送給増強化合物のソースと直接的に連通した状態にもたらされる。幾つかの実施形態においては、送給増強化合物のソースは、送給増強化合物を吸着または吸収する材料を含有した送給増強化合物ソースエレメントを含んでいる。送給増強化合物ソースエレメント材料は、一般的に、その送給増強化合物に関して不活性であろう。幾つかの実施形態においては、送給増強化合物は上で述べられている如き酸である。そのような実施形態での吸着エレメント材料の非限定的な例は、ガラス、ステンレス鋼、アルミニウム、PET、PBT、PTFE、ePTFE、およびBAREX(登録商標)を含む。そのような実施形態での吸収エレメント材料の非限定的な例はPEおよびPPを含む。
【0146】
送給増強化合物のソースは、幾つかの実施形態においては、送給増強化合物のレザバであってよく、または送給増強化合物のレザバと連通していてよい。幾つかの実施形態においては、そのレザバは、吸着性または吸収性の送給増強化合物ソースエレメントと連通した状態の液体レザバとともに、液体の形態におけるある体積の送給増強化合物を含有している。別の実施形態においては、そのニコチンのレザバは送給増強化合物ソースエレメントであり、または送給増強化合物ソースエレメントの一部を形成している。そのような組み合わせ型のソースおよびレザバの非限定的な一例は、送給増強化合物溶液で飽和されたある材料(例えばPEまたはPP)であろう。特定の実施形態においては、そのレザバは、送給装置が望ましい期間にわたって治療的に有効な用量のニコチンを供給することを可能にするのに充分な送給増強化合物溶液を提供する。非限定的な例は、望ましい日数(例えば1−7日間)にわたって、1日当たり望ましい回数(例えば200回)のパフで、体積35立方センチメートルの「パフ」のガス状担体当たり0−100マイクログラムのニコチンを送給することを可能にするのに充分な送給増強化合物を送給することができる装置であろう。特定の実施形態においては、送給されるニコチンの量は、体積35立方センチメートルの「パフ」当たり10から110マイクログラムまでの間、20から100マイクログラムまでの間、50から100マイクログラムまでの間、または40から60マイクログラムまでの間のニコチンである。0マイクログラムのニコチンを送給する実施形態は、一般的に、段階的なニコチン摂取中止プログラムの終点であることが意図されている。
【0147】
温度
【0148】
本方法の幾つかの実施形態においては、その方法は、ガス状担体、ニコチンソースおよび/または増強剤のソース(存在している場合)のうちの1つまたはそれ以上の温度を高めるステップを含んでいる。そのような温度制御ステップは、一般的には、ニコチンの送給量を調節するため、またはニコチンの送給量を更に高めるために用いられる。幾つかの実施形態においては、この温度を高める操作は、送給されるニコチンレベルが、一般的にさもなければ求められる最小値以下に降下してしまうと予測される場合にのみ用いられる。幾つかの実施形態においては、この値は、体積35ccのパフ当たり20マイクログラムより多い量のニコチン、好適には30マイクログラムよりも多い量、より好適には40マイクログラムよりも多い量のニコチンであり得る。例えば、よく用いられる目標送給濃度は、ニコチン送給分野において広く知られている技術によって測定したときに、体積35立方センチメートルの「パフ」当たり40−50マイクログラムのニコチンである。「米国産シガレットのタール、ニコチンおよび一酸化炭素の収率を決定するためのFTCシガレット試験法(The FTC Cigarette Test Method for Determining Tar,Nicotine and Carbon Monoxide Yield of U.S.Cigarettes):Report of the NCI Ad Hoc Committee. Smoking and Tobacco Control Monograph #7.Dr.R.Shopland(Ed.).Darby,PA:Diane Publishing Co,1996」を参照のこと。幾つかの実施形態においては、一般的に、比較的低い温度が最初に使用され、その後、ニコチンソースからの望ましいニコチン送給濃度を持続すべく、時間をかけて温度が高められる。別の実施形態においては、使用中、一定の温度が維持される。幾つかの実施形態においては、温度は、最大で摂氏100°まで、もしくは最大で摂氏70°まで高められ、または温度は摂氏40±5°まで高められる。例えば、送給増強化合物としてのピルビン酸は、望ましいニコチン濃度範囲(例えば、パフ当たり20−50マイクログラム)における多数回のパフにわたる持続的ニコチン送給を促進するため、摂氏40°まで加熱されてよい。温度制御は、幾つかの実施形態においては、温度制御エレメントによって果たされてよい。そのようなエレメントは、ガス状担体、ニコチンおよび/または1つもしくは複数の送給増強化合物にとって望ましい目標温度を達成することができるあらゆる公知のメカニズムであってよい。温度制御エレメントの特定の例が、与えられている例証的装置において、以下で説明されている。
【0149】
装置
【0150】
本明細書中で記載されている方法は、一般的に、装置の操作過程において本明細書中で記載されている方法を実行することができるように構成されている特別に適合化された送給装置を用いて実施される。当業者であれば、先述の手引を利用して様々な送給装置を設計および製作することができるであろう。しかし、本発明者らは、ここで、具体的な実施例によって本明細書において開述されている方法およびそれらの実際の適用を更に例証すべく、数多くの送給装置の構成を提供する。装置の使用者に送給される本ガス状担体は、喫煙の中止、危害の低減および/または代用にとって治療的に有効な用量のニコチンを含むことができる。好適な送給装置の実施形態は肺への送給システムである。これらの肺への送給システムは、適切な粒径および低い粒径変動性をもって肺の深部へ一貫した用量を送給する能力を有している。経鼻的送給、経皮的送給、経口腔的送給および無針注射による送給を含め、利用可能な様々な非侵襲的薬剤送給技術のうちで、肺への送給は、新規な治療薬を送給し、また、現存する化合物の送給を改善するための正確な用量滴定、迅速な吸収、および高いバイオアベイラビリティーを可能にすることに対する独特な潜在的能力をもたらす。
[本発明の実施モード]
【0151】
ニコチンエアロゾル形成のための適切な実験設計のスクリーニング
【0152】
酸の蒸気が塩基の蒸気と即座に反応することを可能にすることによるエアロゾル粒子の発生を評価するため、以下で説明されている通りの幾つかの実験設計を試験した。
【0153】
実験#1:塩酸およびアンモニアを用いて「Y」字形チューブ内において蒸気の混合物を発生させ、その後、その混合蒸気をニコチン遊離塩基上に通した
【0154】
目的:
その目的は、ニコチン遊離塩基をエアロゾル化するのに充分な特性を有するエアロゾルを発生させるための化学的に頑強な酸/塩基システムの有効性を評価することであった。
【0155】
実験設計:
本実験設計は、「Y」字形チューブを通じて接続された2本の全く同じガラス製試験管(チューブAは5mlの塩酸(HCl)を含有し、チューブBは5mlのアンモニア(NHを含有した)を含んでおり、この「Y」字形チューブは、上述の2本の試験管からの蒸気を「Y」字形の管構造内において即座に混ぜ合わせ、その後、得られた混合蒸気を制御パフ体積装置(CPVA)(100回(100度のパフ)、2秒間の持続時間(3秒のインターバル)で40ccのエア)を用いてニコチン遊離塩基上に通すことを可能にするように設計されていた。HCl蒸気とNH蒸気との混ぜ合わせは、白色で濃密な可視雲をもたらした。
【0156】
結果:
【0157】
表1.HClおよびNHをニコチン上に通した後に得られたニコチンの量
【表1】

【0158】
検討:
【0159】
塩酸、アンモニアおよびニコチンの使用は、表1に示されているように、ニコチンのみの場合に比べて有意な量のニコチン送給をもたらした。しかし、この実験用に選ばれた酸および塩基の化学的反応性および腐食性のため、揮発性および低い揮発度の有機酸(例えば脂肪酸)を含めた非腐食性の酸という選択肢などの、ヒトに使用するのにもっと適した種々の代替的構成成分について評価した。
【0160】
実験#2:ニコチン塩基のエアロゾル送給用配列上への酸の展開において使用するための適切な酸候補物質のスクリーニング
【0161】
目的:
【0162】
この実験の目的は、一連の酸候補物質を、ニコチン遊離塩基と混ざり合って肺への送給に適したエアロゾルを形成することに関するそれらの候補物質の能力について評価することであった。μg/パフ単位で表された最も多い量のニコチン遊離塩基を含んでいるエアロゾルを創出した優れた候補物質が更なる評価用に選択された。揮発性カルボン酸が、それらが有する比較的高い揮発度のため、更には、それらがシガレットおよび人間が消費することを意図した他の商業用製品、例えば食品添加物、香味剤および甘味剤などの構成成分であるという事実のため、選りすぐりの有機酸として選択された。
【0163】
実験設計:
【0164】
寸法が4cm×2cm×1cmの2つの全く同じ矩形チャンバは、それぞれが、チャンバの中心から離れる方向に90°回転させる前にチャンバの上面を通じて外部に延びる2つのインレットポート/アウトレットポートを含んでいた。これらのポートは、相互に反対側のチャンバの縁付近に位置付けられた。内部的には、これらのポートは、チャンバの底部付近へ延びる中空のガラス製チューブから成っていた。これらのポートの目的は、ある体積のニコチン遊離塩基(チャンバ「B」)または候補酸(チャンバ「A」)を横断してエアが移動するための制御された経路を提供することであった。この実験では、チャンバBには200μLのニコチン遊離塩基が充填され、チャンバAには200μLのピルビン酸が充填された。前述の体積のニコチン遊離塩基およびピルビン酸はエッペンドルフピペットによって加えられた。手を加えていないそのままのニコチン遊離塩基およびそのままのピルビン酸は4℃および窒素ガス下において保存された。運用体積のニコチン遊離塩基およびピルビン酸は冷蔵条件下で貯蔵されたが、窒素下ではなかった。これらの運用体積は、チャンバへ移送される前に室温にもたらされた。これらの運用体積が室温に達していることを確かめるために温度プローブを使用した。充填用注入口をそれぞれのチャンバ内に高度な技術でうまく作り、上面中央パネルに位置付け、チャンバに適切な反応物質を充填するために使用した。個々のチャンバに適切な体積が加えられた後、その注入口はPARAFILM(登録商標)の栓を用いて密封され、更にその栓がTEFLON(登録商標)テープで覆われた。この後、それらのチャンバはTEFLON(登録商標)チューブを用いて逐次接続され、PARAFILM(登録商標)によって確保された。次いで、チャンバBからのアウトレットが、TYGON(登録商標)チューブにより、反応生成物を収集するために使用されたケンブリッジフィルタ(直径44mm)を収容しているフィルタホルダに接続された。Pillsbury HCによる「低着火ポテンシャルシガレットからの全微粒子状物質およびガスを収集するための喫煙マシンパラメータ(Smoking machine parameters for collection of total particulate matter and gases from low ignition−potential cigaretes)」(米国消費者製品安全委員会との契約下、#CPSC−S−92−5472 I i 1993年3月14日)を参照のこと。このフィルタハウジングの反対側はTYGON(登録商標)チューブにより100cc用の注射器に接続された。前述の注射器は、制御パフ体積装置(CPVA)を構成している自動化されたシステムに固定された。詳細な方法論については、Levin ED、Rose JEおよびBehm F.による「喫煙トポグラフィーを乱すことのないパフ体積の制御(Controlling puff volume without disrupting smoking topography)」(Behavior Research Methods Instruments & Computers、21:383−386、1989年:この文献の教示は参照により本明細書に組み入れられる)を参照のこと。第1のチャンバに充填してから第1のサンプリングインターバルを開始するまでのこのセットアップを準備するのに要する合計時間は約5分であった。このCPVAは、20回(20度のパフ)、2秒の持続時間(30秒のインターバル)で体積35ccのエアを引き込むようにプログラムされていた。これらの充填されたチャンバは、半分の高さまで水浴中に浸漬され、サンプリングする前に10分間、70℃で平衡化するように成された。
【0165】
種々の候補酸の評価をする前に対照実験を実施し、その対照実験では、ニコチン遊離塩基のみがチャンバ内に保持され、ケンブリッジフィルタを通じて20回(2秒の持続時間および30秒のパフインターバルにおいて、35ccのエアを20回パフ)、ニコチン蒸気が引き込まれた。NPD(窒素リン検出器)を用いるガスクロマトグラフィー(GC)によってすべてのサンプルが定量化された。
【0166】
結果:
【0167】
以下の表は、上述の酸スクリーニングならびに対照実験の結果を示している。結果は、各パフで測定されたニコチンの量によって表されている。
【0168】
表2.約70℃における塩基上の酸のニコチン送給
【表2】

【0169】
検討:
【0170】
上述の実験結果は、約70℃において、ニコチン上の3−メチル−2−オキソ吉草酸が最も多い量のニコチン(363.89μg/パフ)を送給し、続いてピルビン酸(362.28μg/パフ)、2−オキソ吉草酸(297.75μg/パフ)、4−メチル−2−オキソ吉草酸(281.39μg/パフ)、3−メチル−2−オキソブタン酸(213.99μg/パフ)および2−オキソオクタン酸90.48μg/パフであることを示している。これらの候補物質は、以下の実験の項で記載されている通りの環境条件下において評価された。3−メチル−2−オキソ吉草酸、ピルビン酸、2−オキソ吉草酸、4−メチル−2−オキソ吉草酸、3−メチル−2−オキソブタン酸および2−オキソオクタン酸は、「2−ケト酸」または「α−ケト酸」と称されるカルボン酸の一属を表している。
【0171】
実験#3:環境温度下における先導的酸候補物質の評価
【0172】
目的:
【0173】
この実験の目的は、上で説明されている実験から選択された先導的酸候補物質のうちのどの候補物質が環境条件下において最も多い量のニコチンを送給するのかを評価することであった。
【0174】
実験設計:
【0175】
この実験は、ガラス製のチャンバが加熱された水浴中に浸漬されず、環境温度においてサンプリングされた点を除き、先行する実験の項で説明されているようにして実施された。個々の実験は、先の選定された酸候補物質:3−メチル−2−オキソ吉草酸、ピルビン酸、2−オキソ吉草酸、4−メチル−2−オキソ吉草酸、3−メチル−2−オキソブタン酸および2−オキソオクタン酸;を用いて実施された。それぞれの実験では、チャンバBにニコチン遊離塩基を用いる先の実験と同様にして、チャンバAには種類の異なる酸が配置された。また、先の実験と同様にして、ニコチン遊離塩基対照実験も実施された。
【0176】
結果:
【0177】
以下の表は、環境条件下においてサンプリングされた先導的酸候補物質の評価の結果を示している。結果は、各パフ中において測定されたニコチンの量として表されている。
【0178】
表3.塩基上の選定された酸を用いるニコチン送給(環境温度)
【表3】

【0179】
検討:
【0180】
環境温度から得られたデータは、ピルビン酸が、44.68μg/パフの送給状態を有し、ニコチンエアロゾルを形成するための優れた候補物質であることを示している。
【0181】
実験#4:エアロゾルを発生させるための従来技術設計を用いた場合の先の70℃および環境温度での実験(それぞれ、実験2および実験3)からの先導的酸候補物質の評価
【0182】
目的:
【0183】
この実験の目的は、従来技術による構成と酸および塩基の逐次的配向とを比較し、どちらの方が高いニコチン送給をもたらすかを決定することであった。約70℃において類似のニコチン送給を発生させた2つの先導的酸候補物質および環境温度下において最も多い量のニコチンを送給した1つの酸候補物質(実験#2−3から)を、それぞれ、70℃および環境条件下で試験した。
【0184】
実験設計:
【0185】
この実験では、実験#2で使用したものと寸分違わぬ2つの全く同じ矩形のガラス製チャンバが使用された。チャンバAは200μLの先導的酸を含有し、チャンバBは200μLのニコチン遊離塩基を含有した。これら2つのチャンバが「Y」字形のガラス製コネクターにより接続され、次いで、そのコネクターが先に述べられているのと同じケンブリッジフィルタを含有するPTFEハウジングに接続された。これらのチューブからの蒸気は、制御パフ体積装置(CPVA)を用いて、20回(20度のパフ)、2秒の持続時間(30秒のインターバル)で体積35ccのエアを引き込むときに、「Y」字形ガラス製コネクター内で即座に混ぜ合わさることができるように構成された。高めた温度での実験では、その酸およびニコチンのチャンバは、水温が約70℃の水浴中に半分の高さまで浸漬された。それらのチャンバは、サンプリングする前に10分間、平衡化が可能に成された。室温による環境温度での実験では、両チャンバとも実験用作業台上に置かれた。窒素−リン検出器を備えたガスクロマトグラフィーを用いて、収集されたサンプルのニコチン分析を行った。
【0186】
結果:
【0187】
以下の表は、従来技術のシステムを用いた場合の、高められた温度(約70℃)および環境条件においてサンプリングされた先導的酸候補物質の評価の結果を示しており;また、比較のため、逐次的塩基上酸型設計を用いた場合(実験#2−3から)の結果も示されている。結果は各パフにおいて測定されたニコチンの質量として表されている。
【0188】
表4.「Y」字形設計(従来技術)を用いた場合のニコチン送給
【表4】

【0189】
検討:
【0190】
この得られたデータに基づいて判断すると、従来技術による設計でのニコチン送給能力は本逐次的設計よりも有意に低く、従って、本逐次的設計はニコチンエアロゾルを送給するのに優れた方法である。
【0191】
実験#5:充分な濃度のニコチンを伴ったエアロゾルプルームの展開において塩基環境上へ酸を供給するための酸のレザバおよび塩基のレザバの逐次的配列の効果
【0192】
目的:
【0193】
この実験の目的は、酸の蒸気がニコチン遊離塩基チャンバ内に入ってニコチン上に舞い上がり、充分な量のニコチン遊離塩基を伴ったプルーム雲を発生させることを可能にする酸および塩基レザバの逐次的配列の影響力を決定することであった。ピルビン酸がこの実験で使用すべく選択された。
【0194】
実験設計:
【0195】
この実験設計は実験#2と同じであった。この実験は、2つのパート、AおよびBに分けられた。第1のパート、Aは、3つのサンプル(1つのサンプル当たり20回のパフ)にわたって収集された別々のチャンバ内における各200μLのニコチン遊離塩基およびピルビン酸の使用の評価を要件として含んだ。この実験の第2のパート(パートB)は、環境条件下および40℃の条件下において試験された上述のシステムを比較し、穏やかな加熱がエアロゾルの形成およびニコチンの送給に及ぼす影響を評価することを要件として含んだ。
【0196】
結果(パートA):
【0197】
以下の表は、環境条件下におけるニコチン遊離塩基上のピルビン酸の実験(パートA)の結果を示している。結果は、ニコチンの全質量および各パフ中において測定されたニコチンの量によって表されている。
【0198】
表5.塩基上の酸のニコチン送給
【表5】

【0199】
検討(パートA):
【0200】
これらの結果は、最初のサンプルから最後のサンプルまでで約32%の全体的なニコチン収量の低下があることを示している。
【0201】
結果(パートB)
【0202】
以下の表は、40℃におけるニコチン遊離塩基上のピルビン酸の実験の結果を示している。結果は、ニコチンの全質量および各パフ中において測定されたニコチンの量によって表されている。
【0203】
表6.40℃における塩基上の酸のニコチン送給
【表6】

【0204】
検討(パートB):
【0205】
環境条件と比べたときに、加熱条件下では、ニコチンの質量/パフの3乃至4倍の増大が観測された。更に、変動係数が送給動力学の良好な制御を表す約5%にまで有意に改善された。その上、パフを渡るニコチン送給の有意な低下もなかった。
【0206】
実験#6:小型化された/シガレットサイズの装置(長さ8cm、ID8mm)におけるピルビン酸を伴った逐次的セットアップを用いることによるニコチンエアロゾルの形成および送給の調査
【0207】
材料および方法
【0208】
使用したマトリックス材料:
【0209】
PE繊維およびPP繊維のブレンド(Porex TechnologiesからX−40495繊維として販売されている)でできたエアフレッシュナウィックサンプルをマトリックスとして使用して、そこにピルビン酸をローディングし、また、不織PET膜支持体(W.L.Gore & Associates,Inc.からSMPL−MMT314として販売されている)を伴った発泡PTFE医療用膜からなるGORE(商標) Medical Membrane(細孔径、0.2ミクロン)がニコチン遊離塩基をローディングするためのマトリックスとして使用された。その膜シートが、1.5mmIDのおおよその寸法を有するポリエステル内壁およびTEFLON(登録商標)外壁をもたらすべくストローの形状に巻き上げられ、長さ4cmの小片に切断された。
【0210】
実験設計:
【0211】
エアフレッシュナウィックの小片に180μLのピルビン酸をローディングし(ピルビン酸ソースエレメント)、長さが4cmでIDが1.5mmの巻き上げられた医療用膜の3つの小片の内壁(ポリエステル側)に90μL(3×30μL)のニコチン遊離塩基をコーティングした。ローディングされたピルビン酸を伴うエアフレッシュナをIDが8mmで長さが9cmの透明なTEFLON(登録商標)チューブの遠位側端部に挿入し、ニコチン遊離塩基を伴う医療用膜の3つの小片を、3つの穴を有するTEFLON(登録商標)ワッシャ内にしっかりと挿入した(ニコチンソースエレメント)。そのニコチンソースエレメントを、ピルビン酸ソースエレメントとニコチンソースエレメントとの間に2cmのギャップを残して、長さが9cmで内径(ID)が8mmのピルビン酸ソースエレメントを伴うTEFLON(登録商標)チューブに挿入した。これらのソースエレメントの配列は、自動化されたシリンジポンプによって引き込まれた一定体積のエア(20回、2秒の持続時間および30秒のパフインターバルにおいて35cc)が最初にピルビン酸ソースエレメントを通り、その後、ニコチンソースエレメントを通ってエアロゾルを形成するような仕方で配列された。本装置の近位側端部は、(エアロゾル生成物を収集するための)ケンブリッジフィルタを含有している制御パフ体積装置(CPVA)に接続された。高められた温度(40℃)での実験では、長さが9cmの本装置(ピルビン酸ソースエレメントとニコチンソースエレメントとの両方を備えた)が、サンプリングする前に10分間、水浴中に完全に浸漬され、平衡化された。環境条件での実験は、それらのチャンバを実験用作業台上に置くことにより実施された。
【0212】
結果:
【0213】
これらのサンプルをニコチンの含有量について分析し、その結果が表7および表8に示されている。
【0214】
表7.約40°における小型装置を用いた実験でのニコチン送給
【表7】

【0215】
表8.環境温度における小型装置を用いた実験でのニコチン送給
【表8】

【0216】
検討:
【0217】
得られたデータは、酸および塩基の両方がマトリックス(このケースでは、酸に対してはエアフレッシュナウィック、ニコチン遊離塩基に対しては医療用膜)にローディングされたときには、実験5で使用した先の実験装置の場合と同程度のニコチン送給が得られたことを示している。これに加え、約40℃の条件は、環境条件と比較したときに、有意にもっと多い量(約3倍)のニコチン送給を示した。
【0218】
本明細書中で記載されている方法とともに使用することができるように適合化された例証装置
【0219】
幾つかの実施形態の送給装置は、タバコ喫煙品目をシミュレートするハウジングを含んでいる。そのハウジングは、タバコ品目を喫煙するために使用される何らかの物品のサイズ、形状および/または構成をシミュレートするものであってよい。本発明による喫煙品目の非限定的な例は、シガレット、シガー、シガリロおよびパイプを含む。
【0220】
幾つかの実施形態の送給装置は、調合薬吸入装置をシミュレートするハウジングを含んでいる。そのハウジングは、吸入に使用される何らかの調合薬装置のサイズ、形状および/または構成をシミュレートするものであってよい。本発明による調合薬吸入装置の非限定的な例は、計量式吸入器、加圧型計量式吸入器、乾燥粉末吸入器、ネブライザおよび液体ベースの吸入器を含む。
【0221】
例証装置1
【0222】
図1に注意を向けると、本発明の1つの実施形態によりニコチンエアロゾルを形成し、使用者に送給するための装置が示されている。具体的には、シガレットのサイズ、形状および外観を有するニコチン吸入器10が示されている。ニコチン吸入器10は、細長い円筒形を有し、且つ、中空のハウジング12から成っている。吸入器10を通じてガスが流れるのを可能にするため、ハウジング12は、対向する端部に、ガスインレット14およびガスアウトレット16を含んでいる。
【0223】
ガスインレット14とガスアウトレット16との間のハウジング12の中間部分は、第1、第2および/または第3の物質を保持することができる3つのコンパートメントに分かれている。当該第1、第2または第3の物質は、薬剤、例えばニコチンなどを形成する蒸気を含むことができる。
【0224】
図2に描かれているように、ニコチン吸入器10は、第1コンパートメント18、第2コンパートメント20、および第3コンパートメント22を含んでいる。ニコチン、好適には遊離塩基の形態のニコチンが、これら3つのコンパートメントのうちのいずれかに置かれてよい。例えば、ニコチンを第2コンパートメント20内に配置することができる。ある適切な送給増強化合物、例えば酸などが、第1コンパートメント18内に配置される。あらゆる適切な酸を使用することができる。例えば、ピルビン酸を第1コンパートメント18内に配置することができる。ピルビン酸は、室温において実質的な蒸気圧を有する揮発性物質である。そのようなものとして、第1コンパートメント18内のあらゆるフリースペースは、ある程度まで、ピルビン酸蒸気、即ち、気体のピルビン酸で満たされるであろう。ニコチンの蒸気圧はピルビン酸の蒸気圧よりも低いが、ニコチンも揮発性物質である。同じようにして、第2コンパートメント20内のあらゆるフリースペースはある程度までニコチン蒸気で満たされるであろう。
【0225】
ピルビン酸は送給増強化合物ソースエレメント(図示せず)上で第1コンパートメント18内に保持されており、ニコチンはニコチンソースエレメント(図示せず)上で第2コンパートメント20内に保持されていることを認識すべきである。また、第3の物質が第3コンパートメント22内において第3のソースエレメント(図示せず)上に保持されていてよい。更に、上述のソースエレメント(図示せず)上のうちの1つまたはそれ以上が、それぞれ、コンパートメント18、20および22と一体となっていてよく、またはそれらのコンパートメントの一部であってもよい。
【0226】
上述の送給増強化合物ソースエレメントは、気体の流れが酸の蒸気と接触し、且つ、第1コンパートメント18を通過することを可能にするあらゆるサイズおよび形状であってよい。また、上述のニコチンソースエレメントは、気体の流れがニコチンの蒸気と接触し、且つ、第2コンパートメント20を通過することを可能にするあらゆるサイズおよび形状であってよい。更に、上述の第3のソースエレメントは、気体の流れが第3の物質と接触し、且つ、第3コンパートメント22を通過することを可能にするあらゆるサイズおよび形状であってよい。
【0227】
上述の送給増強化合物ソースエレメントは、酸の蒸気が周囲の領域に浸透することを許容しながらそれの表面に上述の酸を保持することができるあらゆる適切な材料から成っていてよい。また、上述のニコチンソースエレメントは、ニコチン蒸気が周囲の領域に浸透することを許容しながらそれの表面にニコチンを保持することができるあらゆる適切な材料から成っていてよい。上述の第3のソースエレメントは、第3の物質を保持することができるあらゆる適切な材料から成っていてよい。特定の実施形態においては、その適切な材料は、第3の物質の蒸気が周囲の領域に浸透することを許容しながら、それの表面に第3の物質を保持する。
【0228】
好適には、適切なソースエレメント材料は、それの表面に配置される物質に対して不活性である。更に、適切な材料は、好適には、それの表面に配置されることとなる物質に関して吸着性であり、従って、その物質はその材料の表面に吸着される。吸収特性と吸着特性との両方を有している材料を使用することもできるが、吸着によって1つもしくは複数の送給増強化合物、ニコチンおよび/または第3の物質を保持することができる材料が好適である。非限定的な例は、ガラス、アルミニウム、PET、PBT、PTFE、ePTFE、およびBAREX(登録商標)を含む。
【0229】
この吸着性材料は、毛細管作用によってその吸着性材料の表面に上述の物質を連続的に与えるように機能するものであってよい。
【0230】
上述の第3コンパートメント22は浄化剤を含有することができる。例えば、結果として生じる第3コンパートメント22にガス浄化能力を与える何らかの方法を用いて、活性炭を第3コンパートメント22内に組み入れることができる。種々の適切な方法が当技術分野において広く知られている。例えば、木炭が木炭プラグまたは木炭フィルタとして第3コンパートメント22内に配置されてよい。
【0231】
使用する際、図3に示されているように、使用者はニコチン吸入器10のガスアウトレット16をふかす。ふかす動作によって作りだされる部分的な真空が、ガスインレット14を通じてガスの流れをハウジング12内に引き込む。このガスの流れは、第1コンパートメント18に入り、第1コンパートメント18内に保持されているピルビン酸ソースエレメント上を通ることにより、その酸の蒸気を捕獲する。第1コンパートメント18から出た後に第2コンパートメント20に入るガスの流れは酸含有ガス流である。この酸含有ガス流は、第2コンパートメント20内のニコチンソースエレメントによって保持されているニコチン上を通ることにより、ニコチン含有粒子の流れを発生させる。このニコチン含有粒子の流れは、第3コンパートメント22を通過し、ガスアウトレット16から出て、使用者の口内に入る。あらゆる未反応の酸は、第3コンパートメント22内の活性炭フィルタにより、ニコチン含有粒子の流れから取り除かれる。ピルビン酸が第1コンパートメント18内の第1エレメントに保持されていてよくおよび/またはニコチンが第2コンパートメント20内の第2エレメントに保持されていてよいことを認識すべきである。また、第3の物質、例えば浄化剤または香料添加剤などが、第3コンパートメント22内の第3エレメントに保持されていてよい。更に、前述の第1、第2および第3のエレメントは、それぞれ、コンパートメント18、20および22と一体となっていてもよいし、またはそれらのコンパートメントの一部であってもよい。
【0232】
例証装置2
【0233】
この例証装置は、図4−6を参照することにより例証され、且つ、説明される。図4には、本装置の種々のエレメントが組み立てフローチャートで示されている。送給増強化合物ソース30およびニコチンソース40は、場合によって、一般的にはそれらの端部にヒートシールされた破壊可能なバリヤエンドキャップ35および45を有する独立したコンポーネントとして製造および貯蔵される。これら2つのエレメント30および40は、第1ハウジング50内に挿入される。送給増強化合物ソース30およびニコチンソース40を含有している第1ハウジング50は、この後、第2ハウジング100内に挿入される。これらのハウジング50および100ならびにエレメント30および40は一般的には押し出し成形プラスチックチューブである。また、第2ハウジング100には加熱エレメント95も挿入される。この加熱エレメント95は、一般的には、ハウジング50を包み込み、且つ、所望の温度(例えば40℃)にまで送給増強化合物ソース30および/またはニコチンソース40を加熱することを可能にするのに充分な程度にハウジング50と接触するように構成されている薄い可撓性の加熱フォイルである。加熱エレメント95は、加熱フォイルエレメント95に電源を供給するためのバッテリ130とも接触するように成されている。
【0234】
フィルタエレメント80は、第2ハウジング100内に挿入し、スナップロックすることができるように構成されている。フィルタエレメント80は、フィルタ70を収容することができるように構成されたフィルタ用空洞75を含んでいる。フィルタ70は一般的には木炭フィルタであり、付加的な揮発性化合物、例えばシガレットで普通に使用されている香料添加剤なども含んでいてよい。フィルタエレメント80は、組み立てられた未使用の構成160を密封するためのフォイルシール150を有していてよい。
【0235】
フィルタエレメント80は、第2ハウジング100の開口110と整列する開口90を有している。組み立てられると、エアインレット140が形成される。フィルタエレメント80および第2ハウジング100は、所望のエアインレット140の開口寸法を選択するために回転させることができるように構成されている。エアインレット140は、フィルタエレメント80が、参照番号170によって示されているように、第2ハウジング100内に充分に挿入されたときに形成される。また、フィルタエレメント80の充分な挿入は、穿通エレメント60が破壊可能なバリヤ35および45を通り、エアインレット140から粒子送給開口180までの遮るもののないエアフロー経路を得るべくこれらのエレメントの密封状態を解く力を及ぼす。
【0236】
図5は、送給増強化合物ソース30およびニコチンソース40に対する様々な代替的構造を示している。この構成における送給増強化合物は一般的には揮発性の酸であり、その酸は、焼結プラグ310、PEウィック320、繊維束330、マルチルーメンチューブ340もしくは350、織った、もしくは不織のPET、PBTまたはPETG布材料360、PET静的ミキサー370、または不織材料にくるまれたらせん経路380への吸着により保持されてよい。
【0237】
図6は、本装置が再使用可能な部分210および使い捨て部分200を含んでいる、この装置の幾つかの実施形態を示している。図1を参照しながら説明すると、使い捨て部分200は、送給増強化合物ソース30およびニコチンソース40、第1ハウジング50、ならびにフィルタエレメント80を含む。再使用可能な部分210は、第2ハウジング100、加熱エレメント95およびバッテリ130を含む。
【0238】
例証装置3
【0239】
全体的に再使用可能な例証装置が図7に描かれている。2つの代替的な構成が描かれており、そこでは、部分410および420または430および440は可逆的に取り付けることができる。例えば、それらの部分は、スナップロックおよび取り外しを繰り返し行うことができるように適合化され、且つ、そのような寸法に成された押し出し成形プラスチックであってよい。取り外し可能な部分420または440は、送給増強化合物ソース445およびニコチンソース435と連通するための開口430および440を含んでいる。部分420または440は、開口460を通じて再充填エレメント450内に挿入する。エレメント470は、送給増強化合物ソース445およびニコチンソース435を再充填するときに、そのレザバを封鎖するための密封用Oリングである。ローディング用の開口480および490は、部分420が再充填エレメント450内に着座された後に、送給増強化合物ソース445およびニコチンソース435と連通することができるように構成されている。幾つかの実施形態においては、重力が、送給増強化合物レザバ500およびニコチンレザバ510から、それぞれ、送給増強化合物ソース445およびニコチンソース435への流れの機動力となる。幾つかの実施形態においては、それらのレザバからソースへの流れは、一部には、ソースエレメントによるレザバ液体のウィッキングによる。例えば、送給増強化合物ソース445およびニコチンソース435は、急速なウィッキングを創出し、これによりソース445および435の迅速な再ローディングをもたらすべく、PETを含有したソースエレメントを含んでいてよい。
【0240】
例証装置4
【0241】
別の例証装置が図8および9に描かれている。この例証装置は、再充填可能であり、典型的なシガレットパックをシミュレートすべく構成されている。図8を参照しながら説明すると、送給装置600は、保管用開口620および再充填用開口630を通じて再充填ユニット610内に挿入することができるように構成されている。再充填ユニット610内において再充填エレメント640上に完全に着座されると、装置600は、送給増強化合物および/またはニコチンが再充填される。
【0242】
図9は、上述の再充填エレメント640を詳しく示している。図9Aでは、ローディング用の開口660および670を有する注入エレメント650が、計量式アクチュエータポンプ680および690ならびにチューブ700および710を通じて、レザバ720および730と流れ学的に連通している。図9Bには、送給装置600が再充填ユニット640内に着座された状態で示されている。注入エレメント650は、本送給装置の基部に設けられた再充填用開口を通り、開口660および670がニコチンソースエレメント740および送給増強化合物ソースエレメント750と連通した状態となるようにしてその送給装置に入っている。図9Cでは、送給装置600は、計量された用量のニコチン770および計量された用量の送給増強化合物760をそれぞれ開口660および670を通り、更に、それぞれニコチンソースエレメント740および送給増強化合物ソースエレメント750内へ送給すべく、ポンプ680および690を作動させるため、再充填ユニット640内へ更に挿入されている。
【0243】
例証装置5
【0244】
この例証装置は図10によって図解されている。この装置構成は、送給装置800の外部に加熱ユニット850を有している。送給装置800を加熱ユニット850に挿入すると、電気接触子840がリード線825と接触し、これにより、バッテリ830は、送給増強化合物ソース870およびニコチンソース880の温度を例えば摂氏40±5°に制御すべく、フォイル加熱エレメント860を加熱することが可能になる。1つの代替的な構成によれば、図4に示されているように、加熱フォイル860が送給装置800内に配置される。
【0245】
例証装置6
【0246】
先述の様々な例証装置は一般的にシガレットおよびシガレットパックをシミュレートすべく構成されている。ここでの方法とともに使用するのに適した送給装置は容易に様々な仕方で構成することができる。1つの例が図11に描かれている。この例証装置は、吸入薬剤の調合薬送給で普通に使用されている計量式吸入器をシミュレートする。送給装置900は第1ハウジング910および第2ハウジング920を含んでいる。第2ハウジング920は取り外し可能(図11A)であり、また、再充填のためまたはバッテリ990の交換のために組み入れ可能(図11B)である。この組み入れた位置は、電気接触子1050および1060が連通した状態をもたらし、これにより、バッテリ990がフォイル加熱エレメント950を加熱し、延いては、送給増強化合物ソース960およびニコチンソース970の温度を制御することが可能になる。吸気用アクチュエータ930は、図11Aの位置から図11Bの位置までどこにでもスライド可能に構成されている。フォイルエレメント950を加熱するための電力は、場合によっては、吸気用アクチュエータ930または別のスイッチ手段(図示せず)を用いて電源のオンもしくはオフが為されてよい。このとき、ある選択された程度にまで吸気用開口940を開放することができ、これにより、1回の吸入当たりの空気の量、更にはその結果としてのニコチンの量を調節することができる。この特徴は、図1の調節可能な吸気用開口140と同様である。使用に際しては、エアが吸気用開口940を通じて引き込まれ、チャンバ1000へ下り、導管1010を通り、更に送給増強化合物ソース960を通り、そこでは、送給増強化合物がエアフロー中に捕獲される。例えば、ピルビン酸の蒸気が、そこに吸着された液体のピルビン酸を有するPETソースエレメントから発散していてよい。この蒸気は、導管1020を通るエアフローによってニコチンソース970内へ移動される。ここで、その送給増強化合物は、送給増強化合物が存在しない場合に同じ体積のエアフロー中に含有されるものと考えられるニコチン蒸気の量と比べて相対的に、エアフロー中のニコチン濃度を増大させる。ピルビン酸のケースにおいては、ピルビン酸ニコチン塩粒子が被検者へのニコチンの送給を高めるべく形成され得る。送給は、例えばピルビン酸およびニコチンの温度を、それらの化合物の蒸気圧を高めるための加熱エレメント950によって上昇させることにより、更に増強させることができる。ニコチンを含有したエアフローは、次に、導管1030を通って移動し、木炭フィルタ980を通り、吸入用開口1040から出る。
【0247】
図11CおよびDは、例証的吸入器装置900の1つの実施形態を描いており、そこでは、その装置の一部が送給増強化合物ソース960およびニコチンソース970を使い捨てハウジング1050内に有しており、その使い捨てハウジングは、装置900と機能的に同一の装置を形成すべく、再使用可能なハウジング1060にスライドさせて出し入れ可能に構成されている。バッテリハウジングエレメント1070は、使い捨てエレメント1050から取り外すことができ、従って、部分1060および取り換え用エレメント1050とともに再使用可能である。
【0248】
例証装置7
【0249】
図12のA−Cは、吸入装置の別の構成を描いている。この構成においては、送給増強化合物ソースおよびニコチンソースは分割内部チューブ1100の下方表面領域および上方表面領域である。使用形態12Aにおいては、不透過性カバー1110がニコチンレザバ1120および送給増強化合物レザバ1130上の位置にある。この不透過性カバー1110は、これらのレザバからの蒸発による損失を低減し、且つ、これらのレザバを分割内部チューブ1100から物理的に分けている。使用する際には、底部ハウジング1180が、第1キャッチスプリング1140が図12Bに示されている位置でロックされるまで、メインハウジング1190内に押し入れられる。これは、レザバ1120および1130を分割内部チューブ1100の近傍に平行に配置することとなる。図9Cに示されているように、底部ハウジング1180は、第2キャッチスプリング1150が図12Cに示されている位置でロックされるまで、メインハウジング1190内に更に挿入される。この第3の位置では、圧力エレメント1160が分割内部チューブ1100を圧迫して、壁1170がレザバ1120および1130と接触状態になるように力を及ぼす。この動作は、ニコチンおよび送給増強化合物(例えばピルビン酸)を壁1170の内面に押し付け、この表面をニコチンソースおよび送給増強化合物ソースとして再充填することとなる。
【0250】
例証装置8
【0251】
図13は、図12の装置の1つの変形態様を示している。この変形態様では、底部ハウジング1250が円錐形スプリング1230に対抗して押圧され、この動作はニコチンレザバ1210および送給増強化合物レザバ1220がレザバカバー1200を通って円錐形内部チューブ1240の内面と接触した状態になる力を及ぼし、これにより、その表面がニコチンおよび送給増強化合物でコーティングされることとなる(図13B)。
【0252】
例証装置9
【0253】
図14は、図12の装置の別の変形態様を示している。この変形態様では、外側ハウジング1300は、スイッチ1310および図示されている様々な内部エレメントである移動コンポーネントと隣接している。スイッチ1310は接続バー1320によってソース着座エレメント1330に接続されている。スイッチ1310が上方へ移動されると、剛性の着座エレメント1330はポール1360に沿って移動する。この充填位置において、レザバエレメント1340および1350は可撓性エレメント1370と接触した状態にもたらされ、また、この可撓性エレメントは剛性着座エレメント1330とも接触した状態にもたらされる。剛性着座エレメント1330は、可撓性エレメント1370を圧迫して、滑動運動の最終部分でレザバエレメント1340および1350と接触した状態にもたらすことができる寸法に成されている(図14B)。この動作は、可撓性エレメント1370の上部表面をレザバ1350からの例えばニコチン塩基溶液で覆い、また、可撓性エレメント1370の下部表面をレザバ1340からのピルビン酸で覆い、これにより、それぞれ、ニコチンソースおよび送給増強化合物ソースを創出することとなる。レザバ1350の上面は、作動位置(図14A)にあるときにそれらのレザバからの薬剤および送給増強化合物の蒸発量を制限するため、不透過性材料によって覆われていてよい。可撓性で不透過性の材料からなる円形フラップがエレメント1320または1330から延びて、レザバ1350の下側の体積を閉鎖し、更に蒸発を制限していてもよい。充填位置(図14B)では、上述のフラップは、可撓性エレメント1370によって、下向きに、レザバから離れる方向に力が加えられる。
【0254】
例証装置10
【0255】
図15は別の送給装置の構成を示している。図15Aは使用モードにおける装置1400を示している。エアは、取り入れ口1410から入り、送給増強化合物ソース1500およびニコチンソース1490を通過し、アウトレット1415を通じて出る。ニコチンおよび送給増強化合物は、それらの個々のソースの側壁にコーティングされている。これらのソースを再充填するために、送給増強化合物レザバ1430およびニコチンレザバ1420が設けられている。スイッチ1460がこれらのソースを再充填するために作動されてよい。スイッチ1460により起動すると、ベース1510は、誘導ロッド1470に沿って、送給増強化合物ソース1500およびニコチンソース1490へ向けて移動する。図15Bに示されているように、送給増強化合物ソース1500、ニコチンソース1490および上部ストップエレメント1480と接触すると、不透過性キャップ1440および1450がレザバを圧縮し、送給増強化合物およびニコチンをソース1490および1500の表面に出すように力を加える。この装置におけるこれらのレザバは、ニコチンまたは送給増強溶液を保持することができるあらゆる可撓性の吸着性または吸収性材料でできていてよい。これらのレザバは、一般的には、それらのソースを再充填した後に自動的に誘導ポール1470に沿って後退するように動機付けられ、これにより、本装置を便利に操作される「ワンクリック」装置に成すことができる。これらのレザバの動きはあらゆる便利な手段によって達成されてよい。例えば、駆動ワイヤ1520が誘導ポール1470の溝内に設けられていてよい。この駆動ワイヤ1520はベース1510に取り付けられていてよく、モータ回転エレメント(図示せず)によって誘導ポール1470を上下に移動することができる。この装置構成の幾つかの変形態様では、装置1400の上面外側部が、図4に示されているエレメント140と同様に、インレット1410のサイズを定めるべく回転されてよい。
【0256】
[産業上の利用可能性]
【0257】
ここで開示されている方法および装置は、喫煙の中止、危害の低減および/または代用を目的としたニコチンの治療的な送給に有用である。これに加え、ここで開示されている装置および方法は、タバコをベースとした製品の代わりの代替的な一般ニコチン送給システムとしても有用である。更に、ここで開示されている方法および装置は、本明細書で説明されている如き他の薬剤の送給にも有用である。
【0258】
本発明およびそれの利点を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定められる通りの本発明の精神および範囲から逸脱することなく、ここに様々な変更、置換および改変を成しえることを理解すべきである。更に、本出願の範囲は、この明細書に記述されているプロセス、マシン、製造、組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることを意図していない。当業者であれば本発明の開示から容易に認識されるように、本明細書中で記載されている対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たすものや、または実質的に同じ結果を達成するような、現に存在する、または後に開発されることとなる、プロセス、マシン、製造、組成物、手段、方法もしくはステップは、本発明に従って利用することができる。従って、添付の特許請求の範囲は、そのようなプロセス、マシン、製造、組成物、手段、方法またはステップをそれらの範囲内に含めるべく意図されている。
【0259】
ここで引用され、または別な仕方で特定されているすべての参考文献および他の情報は、参照により、恰もそれぞれが別々に組み入れられているかのようにして、それらの内容全体が本明細書に組み入れられる。また、優先権の基礎とされている、2007年3月30日に出願された米国仮特許出願第60/909,302号も、参照により、その内容全体が本明細書に組み入れられる。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9A】

【図9B】

【図9C】

【図10】

【図11A】

【図11B】

【図11C】

【図11D】

【図12A】

【図12B】

【図12C】

【図13A】

【図13B】

【図14A】

【図14B】

【図15A】

【図15B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状担体中におけるニコチン濃度を増大させる方法であって、送給増強化合物を含んでいる該ガス状担体を、ニコチンを含んでいるニコチンソースと連通した状態にするステップを含む方法。
【請求項2】
更に、上記ガス状担体を、上記送給増強化合物を含んでいる送給増強化合物ソースと連通した状態にするステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該ガス状担体を該送給増強化合物ソースと連通した状態にする上記ステップが、該送給増強化合物を含んでいる該ガス状担体を上記ニコチンソースと連通した状態にする前記ステップに先行する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
上記送給増強化合物ソースが2つまたはそれ以上の前駆化合物を含んでいる複数の内部領域を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
上記送給増強化合物が塩化アンモニウムを含み、上記2つまたはそれ以上の前駆化合物がアンモニアおよび塩化水素を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
該ガス状担体中における上記ニコチン濃度が、前記送給増強化合物を伴わない場合の該ガス状担体中に含有されるニコチン濃度に対して相対的に高められる、請求項1−5記載の方法。
【請求項7】
上記送給増強化合物が酸を含む、請求項1−5記載の方法。
【請求項8】
上記酸が有機酸である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
上記有機酸が、ある与えられた温度において、ニコチンよりも大きな蒸気圧を有している、請求項8記載の方法。
【請求項10】
上記温度が摂氏25度、30度、40度、45度、70度または100度である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
上記酸が3−メチル−2−オキソ吉草酸、ピルビン酸、2−オキソ吉草酸、4−メチル−2−オキソ吉草酸、3−メチル−2−オキソブタン酸、2−オキソオクタン酸および前記酸の組み合わせからなる群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項12】
上記送給増強化合物がニコチンと相互作用して粒子を形成する、請求項1−5記載の方法。
【請求項13】
上記粒子が、空気動力学的中央粒子径が6ミクロン未満の粒子を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
上記粒子が、空気動力学的中央粒子径が1ミクロン未満の粒子を含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
上記粒子のうちの少なくとも幾分かが、空気動力学的中央粒子径が0.5ミクロンから5ミクロンまでの間の粒子である、請求項12記載の方法。
【請求項16】
更に、送給増強化合物、送給増強化合物ソース、ニコチン、ニコチンソースおよび/またはガス状担体の温度を上昇させるステップを含む、請求項1−5記載の方法。
【請求項17】
上記温度が少なくとも摂氏30度に高められる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
上記温度が複数の加熱ステップにより高められる、請求項16記載の方法。
【請求項19】
タバコ製品の使用を中止するためのニコチンであって、該ニコチンが、更に、送給増強化合物を含んでいるガス状担体をニコチンソースと連通した状態にする上記ステップの後に該ガス状担体を被検者に供給するステップを含んでいる請求項1−5記載の方法によって送給される、ニコチンの送給方法。
【請求項20】
上記ガス状担体が、被検者に供給されるある体積のガス状担体中に少なくとも20マイクログラムのニコチンを含んでいる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
被検者に送給される上記体積のガス状担体が単一体積として供給される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
タバコ製品の危害を低減するためのニコチンであって、該ニコチンが、更に、送給増強化合物を含んでいるガス状担体をニコチンソースと連通した状態にする上記ステップの後に該ガス状担体を被検者に供給するステップを含んでいる請求項1−5記載の方法によって送給される、ニコチンの送給方法。
【請求項23】
上記ガス状担体が、被検者に供給されるある体積のガス状担体中に少なくとも20マイクログラムのニコチンを含んでいる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
被検者に送給される上記体積のガス状担体が単一体積として供給される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
タバコ製品の代用のためのニコチンであって、該ニコチンが、更に、送給増強化合物を含んでいるガス状担体をニコチンソースと連通した状態にする上記ステップの後に該ガス状担体を被検者に供給するステップを含んでいる請求項1−5記載の方法によって送給される、ニコチンの送給方法。
【請求項26】
上記ガス状担体が、被検者に供給されるある体積のガス状担体中に少なくとも20マイクログラムのニコチンを含んでいる、請求項25記載の方法。
【請求項27】
被検者に送給される上記体積のガス状担体が単一体積として供給される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
ニコチン中毒、肥満、アルツハイマー病、パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症および前記疾患の組み合わせからなる群から選択される疾患を治療するためのニコチンであって、該ニコチンが、更に、送給増強化合物を含んでいるガス状担体をニコチンソースと連通した状態にする上記ステップの後に該ガス状担体を被検者に供給するステップを含んでいる請求項1−5記載の方法によって送給される、ニコチンの送給方法。
【請求項29】
請求項1−5に記載の方法を実施することができるように構成された装置。
【請求項30】
請求項19記載のニコチンを送給することができるように構成された装置。
【請求項31】
請求項22記載のニコチンを送給することができるように構成された装置。
【請求項32】
請求項25記載のニコチンを送給することができるように構成された装置。
【請求項33】
請求項28記載のニコチンを送給することができるように構成された装置。
【請求項34】
被検者に薬剤を送給するための装置であって、当該装置がハウジングを含み、該ハウジングが:
相互に連通した状態にあるインレットおよびアウトレットであって、ガス状担体が前記インレットを通じて当該ハウジング内に入り、該ハウジングを通って、前記アウトレットを通じて該ハウジングから出ることができるように成されており、当該装置がインレットからアウトレットまでを直列に含んでいる、インレットおよびアウトレット;
上記インレットと連通した状態にある第1内部領域であって、該第1内部領域が送給増強化合物のソースを含んでいる、第1内部領域;
上記第1内部領域と連通した状態にある第2内部領域であって、該第2内部領域がニコチンまたは他の薬剤のソースを含んでいる、第2内部領域;および
場合によって、前記第2内部領域と連通した状態にある第3内部領域;
を含んでいる、薬剤送給用装置。
【請求項35】
上記アウトレットにおける部分的真空が、前記インレット、前記第1内部領域、前記第2内部領域、存在する場合には前記第3内部領域、更には該アウトレットを通じてガス状担体を引き込むことができる、請求項34記載の装置。
【請求項36】
上記増強剤のソースがそこに吸着されている送給増強化合物を伴った吸着エレメントを含んでおり、および/または上記ニコチンまたは他の薬剤のソースがそこに吸着されているニコチンを伴った吸着エレメントを含んでいる、請求項34記載の装置。
【請求項37】
上記1つまたは複数の吸着エレメントがガラス、アルミニウム、PET、PBT、PTFE、ePTFEおよびBAREXのうちの少なくとも1つを含んでいる、請求項36記載の装置。
【請求項38】
更に、上記第1内部領域と連通した状態にある第1レザバを含み、該第1レザバが上記送給増強化合物を含んでいる、請求項34−37記載の装置。
【請求項39】
更に、上記第2内部領域と連通した状態にある第2レザバを含み、該第2レザバがニコチンまたは他の薬剤を含んでいる、請求項34−37記載の装置。
【請求項40】
上記第3内部領域を含み、該第3内部領域が第3内部領域エレメントを含んでいる、請求項34−37記載の装置。
【請求項41】
上記第3内部領域エレメントが浄化剤を含んでいる、請求項40記載の装置。
【請求項42】
上記浄化剤が活性炭を含む、請求項41記載の装置。
【請求項43】
上記第3内部領域エレメントが香料添加剤を含んでいる、請求項42記載の装置。
【請求項44】
上記第3内部領域エレメントが薬剤を含んでいる、請求項43記載の装置。
【請求項45】
上記薬剤がニコチンを含む、請求項44記載の装置。
【請求項46】
上記ハウジングがタバコ喫煙製品をシミュレートする、請求項34−37記載の装置。
【請求項47】
上記タバコ喫煙製品がシガレットである、請求項46記載の装置。
【請求項48】
上記ハウジングが調合薬吸入装置をシミュレートする、請求項34−37記載の装置。
【請求項49】
上記調合薬吸入装置が計量式吸入器、加圧型計量式吸入器、乾燥粉末吸入器、ネブライザおよび液体ベースの吸入器からなる群から選択される、請求項48記載の装置。
【請求項50】
吸入により被検者に送給するための薬剤であって、該送給方法が:
a)送給増強化合物を含んでいるガス状担体を、該薬剤を含んでいる薬剤ソースと連通した状態にする、第1ステップ;および
b)該薬剤を含んでいる上記ガス状担体を被検者に供給する第2ステップ;
を含む、吸入により送給するための薬剤。
【請求項51】
上記薬剤が:
ニコチン、
7−ヒドロキシミトラジニン、
アレコリン、
アトロピン、
ブプロピオン、
カチン(D−ノルプソイドエフェドリン)、
クロルフェネラミン、
ジブカイン、
ジメモルファン、
ジメチルトリプタミン、
ジフェンヒドラミン、
エフェドリン、
ホルデニン、
ヒヨスチアミン、
イソアレコリン、
レボルファノール、
ロベリン、
メセムブリン、
ミトラジニン、
ムスカリン、
プロカイン、
プソイドエフェドリン、
ピリラミン、
ラクロプライド、
リトドリン、
スコポラミン、
スパルテイン(ルピニジン)、
チクロピジン、
1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、
アナバシン、
アナタビン、
コチニン、
ミオスミン、
ニコトリン、
ノルコチニン、
ノルニコチン、
オルシプレナリン、
プロプラノロール、
テルブタリン、
ニコランジル、
オクスプレノロール、
ベラパミル、
リドカイン、
エピバチジン、
5−(2R)−アゼチジニルメトキシ)−2−クロロピリジン(ABT−594)、
(S)−3−メチル−5−(1−メチル−2−ピロリジニル)イソオキサゾール(ABT418)、
(±)−2−(3−ピリジニル)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン(RJR−2429)、
メチルリカコチニン、
メカミラミン、
ガランタミン、
ピリドスチグミン、
フィゾスチグミン、
タクリン、
5−メトキシ−N,N−ジメチルトリプタミン、
5−メトキシ−α−メチルトリプタミン、
アルファ−メチルトリプタミン、
イプロクロジド、
イプロニアジド、
イソカルボキサジド、
リネゾリド、
メクロベミド、
N,N−ジメチルトリプタミン、
フェネルジン、
フェニルエチルアミン、
トロキサトン、
トラニルシプロミン、
トリプタミンおよび前記薬剤の組み合わせ
からなる群から選択される、請求項50記載の薬剤。
【請求項52】
上記薬剤が治療的に有益である疾患を治療するために該薬剤が治療的に有効な量で送給される、請求項50または51記載の薬剤。
【請求項53】
上記薬剤が、窒素原子がヘテロ環または非環状鎖に存在している脂肪族または芳香族の飽和型または非飽和型の窒素含有塩基である、請求項50−52記載の方法。
【請求項54】
上記薬剤が150℃未満の融点および/または300℃未満の沸点を有している、請求項53記載の薬剤。
【請求項55】
上記薬剤がタバコの煙の構成成分である、請求項50−54記載の方法。
【請求項56】
上記薬剤がニコチン性受容体物質である、請求項50−54記載の方法。
【請求項57】
上記ニコチン性受容体物質がニコチン作動薬である、請求項56記載の方法。
【請求項58】
上記ニコチン性受容体物質がニコチン拮抗薬である、請求項56記載の方法。
【請求項59】
上記ニコチン性受容体物質がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤である、請求項56記載の方法。
【請求項60】
上記薬剤がMAO阻害剤である、請求項50−54記載の方法。
【請求項61】
上記薬剤が抗喘息薬である、請求項50−54記載の方法。
【請求項62】
上記薬剤が抗狭心症薬である、請求項50−54記載の方法。
【請求項63】
上記薬剤が抗不整脈薬である、請求項50−54記載の方法。
【請求項64】
請求項50−63に記載の方法を実行することができるように構成されている装置。

【公表番号】特表2010−532672(P2010−532672A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501159(P2010−501159)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/058122
【国際公開番号】WO2008/121610
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(504314122)デューク ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】