説明

薬液用プラスチック容器及びその製造方法

【課題】 一端に筒状口部を有していてその筒状口部にゴム栓を直に圧入して密封する簡素な構成であるにもかかわらず、筒状口部にゴム栓が確実に抜け止め及び落ち込み止め保持される構成の薬液用プラスチック容器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 薬液用プラスチック容器1は、一端に筒状口部2を有し、この筒状口部2にゴム栓6を圧入して密封する構成のものである。筒状口部2の内面には、環状の突起5が形成されている。ゴム栓6はその外径が筒状口部2の内径よりやや大きく大きく構成されている。筒状口部2に圧入したゴム栓6は突起5に当たる部分の圧縮変形により突起5に噛み合って、筒状口部2にゴム栓6が抜け止め及び落ち込み止め保持される構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖質輸液剤、電解質輸液剤、血漿増量剤、浸透圧利尿剤、アミノ酸輸液剤、脂肪乳剤、高カロリー輸液剤等の静脈注射用輸液や、結腸栄養剤、高蛋白栄養剤、成分栄養剤、流動食等の結腸的高カロリー栄養剤等の薬液用プラスチック容器及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一端に筒状口部を有していてその筒状口部にゴム栓を直に圧入して密封する薬液用プラスチック容器は、特公昭57−53184号公報に記載されているように広く知られている。なお、薬液用プラスチック容器において、口部に溶着する栓体にゴム栓を内包した構成のものとしては、特許第2934777号公報、特許第3182618号公報、及び特開平5−76580号公報に開示されており、ブロー成形金型の筒状口部を成形する部分に筒状口部の内径を規制する打ち込みピンを打ち込み、その打ち込みピンを介してパリソン内に圧力流体を吹き込んで容器を成形するブロー成形方法は、特公平8−13503号公報に記載されている。
【特許文献1】特公昭57−53184号公報
【特許文献2】特許第2934777号公報
【特許文献3】特許第3182618号公報
【特許文献4】特開平5−76580号公報
【特許文献5】特公平8−13503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の薬液用プラスチック容器は、輸液時にゴム栓に輸液管を装着した注射針を射し込むので、筒状口部を密封するゴム栓が注射針の射し込みと抜き取りがし易い柔軟なものであっても、ゴム栓が注射針の射し込み時に落ち込まないことと、注射針の抜き取り時に抜け落ちが生じないことが肝要であるうえ、衛生上の面及び使用後の廃棄物処理上の面から、ゴム栓およびその装着のための栓構造もできるだけ簡素なものであることが近時ことに要求されている。
【0004】
そこで本発明は、一端に筒状口部を有していてその筒状口部にゴム栓を直に圧入して密封する簡素な構成であるにもかかわらず、筒状口部の内面には環状の突起を形成して筒状口部に圧入したゴム栓は上記突起に当たる部分の圧縮変形により突起に噛み合うようにしたことにより、筒状口部にゴム栓が確実に抜け止め及び落ち込み止め保持される構成の薬液用プラスチック容器及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の請求項1に係る薬液用プラスチック容器は、一端に筒状口部を有し、この筒状口部にゴム栓を圧入して密封する薬液用プラスチック容器であって、筒状口部の内面には環状の突起が形成されており、ゴム栓はその外径が筒状口部の内径よりやや大であり、筒状口部に圧入したゴム栓は上記突起に当たる部分の圧縮変形により突起に噛み合って、筒状口部にゴム栓が抜け止め及び落ち込み止め保持される構成であることを特徴とするものである。
【0006】
本発明の請求項2に係る薬液用プラスチック容器は、請求項1記載の構成において、薬液用プラスチック容器ゴム栓はその筒状口部に圧入する部分が凹状に形成されており、かつ天面を凹部にして薄肉状に形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の請求項3に係る薬液用プラスチック容器の製造方法は、一端に筒状口部を有し、この筒状口部にゴム栓を圧入して密封する薬液用プラスチック容器をブロー成形する方法であって、分割金型の筒状口部を成形する部分には、分割金型を閉じた状態で環状をなす突起が形成されており、分割金型間にパリソンを配置してパリソン内に圧力流体を吹き込み、前記環状をなす突起により筒状口部の内面に環状の突起を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一端に筒状口部を有していてその筒状口部にゴム栓を直に圧入して密封する簡素な構成であるにもかかわらず、筒状口部の内面には環状の突起を形成して筒状口部に圧入したゴム栓は上記突起に当たる部分の圧縮変形により突起に噛み合うようにしたことにより、筒状口部にゴム栓が確実に抜け止め及び落ち込み止め保持される構成の薬液用プラスチック容器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明の一実施の形態に係る薬液用プラスチック容器の一部を示す断面図、図2は同上全体の正面図、図3は本発明の一実施の形態に係る薬液用プラスチック容器のブロー成形態様を示す一部の断面図である。
【0010】
図1及び図2において、1は薬液用プラスチック容器であって、その一端には筒状口部2を有しており、3は胴部、4は底部である。底部4には容器を倒立姿勢に吊り下げるための吊り具を備えている(図示せず)。薬液用プラスチック容器1は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アイオノマー樹脂、各種熱可塑性エラストマー及びこれらの2種以上の混合物などの軟質樹脂により形成される。
【0011】
薬液用プラスチック容器1において、筒状口部2の内面には環状の突起5が形成されている。この突起5は筒状口部2の内面全周にわたって環状に形成されており、突起5は内方に向けてなだらかな曲面の膨出状を呈している。6はゴム栓である。このゴム栓6は、その外径が筒状口部2の内径よりやや大きく形成されており、筒状口部2に圧入したゴム栓6は上記突起5に当たる部分の圧縮変形により突起5に噛み合って、ゴム栓6は筒状口部2に抜け止め及び落ち込み止め保持される。ゴム栓6はその筒状口部2に圧入する部分が凹状部7をなすように凹状に形成されており、かつ天面も凹状にして薄肉部8が形成されている。ゴム栓6は天面の薄肉状にした薄肉部8に輸液管を装着した注射針を射し込むが、ゴム栓6の注射針を射し込む部分が薄肉状であるから、注射針の射し込み及び抜き取りが容易である。ゴム栓6は筒状口部2に圧入し易いように柔軟なものであることが好ましい。なお、図示の実施の形態おいては、筒状口部2の開口端にフランジ部9を形成してあり、ゴム栓6もフランジ部9に対応する形状に形成されているが、これらは本発明において必須の構成ではない。
【0012】
本発明に係る薬液用プラスチック容器1は、図3に示すようにブロー成形される。図3において、10、10は分割金型であって、分割金型10、10の筒状口部2を成形する口部成形キャビティ11には、分割金型10、10を閉じた状態で環状をなす突起部12が形成されている。この突起部12は薄板状に突出する形態のものであって、口部成形キャビティ11の長手方向のやや開口端寄りに設けられている。筒状口部2の内面に形成される環状をなす突起5は、後述するように薬液用プラスチック容器1のブロー成形とともに形成されるので、筒状口部2には突起5に対応して細溝状の凹状リブ13が形成される。このため筒状口部2は特にその突起5の部分で剛性が向上し、筒状口部2にゴム栓6を圧入する際にも筒状口部2に撓みや変形歪みが生じないので、筒状口部6にゴム栓6を容易に圧入することができる。
【0013】
図3に示すように、分割金型10、10間にパリソン14を配置し、次いで分割金型10、10を閉じてパリソン14内に圧力流体を吹き込み、薬液用プラスチック容器1のブロー成形とともに環状をなす突起部12により筒状口部2の内面に環状の突起5を成形する。ブロー成形された薬液用プラスチック容器1は、筒状口部2が頭部15により封止されたおり、筒状口部2と頭部15との境には頭部15を切除するための切除線(環状の窪み)16が形成されている。ブロー成形された薬液用プラスチック容器1は、筒状口部2が頭部で封止されていので衛生的に保たれる。薬液用プラスチック容器1に薬液を充填する際には頭部2を切除線17から切断して筒状口部2を開口し、薬液を充填した後は筒状口部2にゴム栓6を圧入して図1に示すように封止する。
【0014】
図3に示すように、金型10、10の突起部12は、その厚み幅に対して起立高さが大であって、ブロー成形時に突起6が薄幅状であっても比較的起立高さが大きく形成されるので、筒状口部2に圧入したゴム栓6が突起5により確実に噛み込んだ状態となって、筒状口部2に対してゴム栓6を確実に抜け止め及び落ち込み止め保持することができる。
【0015】
本発明において、筒状口部2の内面に形成する環状をなす突起5は、それが必ずしも全周にわたるものでなくてもよく、2以上の複数の円弧状に形成された突起とすることができる。また、環状をなす突起5は、必ずしも1条でなく2条以上の複数条にしてゴム栓6に対する噛み合い状態を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る薬液用プラスチック容器の一部を示す断面図である。
【図2】同上全体の正面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る薬液用プラスチック容器のブロー成形態様を示す一部の断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 薬液用プラスチック容器
2 筒状口部
3 胴部
4 底面
5 環状の突起
6 ゴム栓
7 凹状部
8 薄肉部
9 フランジ部
10、10 分割金型
11 口部成形キャビティ
12 突起部
13 凹状リブ
14 パリソン
15 頭部
16 切除線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に筒状口部を有し、この筒状口部にゴム栓を圧入して密封する薬液用プラスチック容器であって、
筒状口部の内面には環状の突起が形成されており、
ゴム栓はその外径が筒状口部の内径よりやや大であり、
筒状口部に圧入したゴム栓は上記突起に当たる部分の圧縮変形により突起に噛み合って、筒状口部にゴム栓が抜け止め及び落ち込み止め保持される構成である
ことを特徴とする薬液用プラスチック容器。
【請求項2】
ゴム栓はその筒状口部に圧入する部分が凹状に形成されており、かつ天面を凹部にして薄肉状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の薬液用プラスチック容器。
【請求項3】
一端に筒状口部を有し、この筒状口部にゴム栓を圧入して密封する薬液用プラスチック容器をブロー成形する方法であって、
分割金型の筒状口部を成形する部分には、分割金型を閉じた状態で環状をなす突起が形成されており、
分割金型間にパリソンを配置してパリソン内に圧力流体を吹き込み、
前記環状をなす突起により筒状口部の内面に環状の突起を形成する
ことを特徴とする薬液用プラスチック容器の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−229184(P2007−229184A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54176(P2006−54176)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】