説明

薬物のナノ分散体およびその調製のための方法

本発明は、水混和性溶媒および水を含むビヒクル中に分散された、300nm未満の平均径を有するナノ粒子を含むナノ分散体を提供し、このナノ粒子は、1つ以上の薬物、ポリマーおよびサーファクタントを含み、このサーファクタントは、脂肪酸またはその塩と、ステロールあるいはその誘導体またはその塩との混合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物の「ナノ分散体」およびその調製のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶液中で溶解性が劣るかまたは不溶性である多数の医薬品が存在する。このような薬物は、経口のバイオアベイラビリティが劣ることに関して、または特に静脈内経路を通じた薬物送達のためにそれらを処方することに関して課題をもたらす。薬物が静脈内に投与される場合、粒子は、塞栓を生じることなく毛細血管を安全に通過するのに十分小さくなければならない。静脈内投与のためには、溶液、エマルジョン、リポソーム、ナノ分散体などの形態で薬物を投与することが安全と考えられる。特に疎水性薬物のための薬物送達系を構築しながら、満たされるべき別の要件とは、その処方物が、所望の期間にわたる室温で貯蔵の際に、薬物の実質的な凝集も結晶化もなく、またはその処方物の外観における変化もなく、物理的に安定でなければならないということである。
【0003】
特定の薬物は、水中でおよび最も医薬上許容される溶媒中で、極めて劣った溶解度を呈し、従って、その患者に対する投与は制限される。例えば、市販の製品はTorisel(登録商標)注射液であり、これはテムシロリムスおよび無水アルコール(39.5%(w/v))、dl−α−トコフェロール(0.075%(w/v))、プロピレングリコール(50.3%(w/v))、および無水クエン酸(0.0025%(w/v))、ポリソルベート80(40.0%(w/v))を含む。TORISEL(テムシロリムス)注射液バイアルを希釈剤で希釈した後、この溶液は35.2%のアルコールを含む。大量のサーファクタントを含むさらに別の市販の注射剤は、Sandimmune(登録商標)Injection(シクロスポリン注射液、USP)であって静脈投与用の5mLの無菌アンプルとして利用可能である。1mLあたり以下を含む:シクロスポリン、USP50mg;*Cremophor(登録商標)EL(ポリオキシエチル化キャスターオイル)650mg;アルコール,Ph.Helv32.9(容量)%(これは、さらに、0.9%の塩化ナトリウム注射液または5%のブドウ糖(デキストロース)注射液(Dextrose Injection)を用いて使用前に希釈されなければならない)。Cremophor EL、ポリオキシエチル化キャスターオイルビヒクル、および無水エタノールUSP(1:1,v/v)が用いられる。これらの溶媒系は、生物学的にかつ薬理学的に許容されるが、それらは、急性の過敏症反応および末梢神経障害を含む副作用を有することが公知である。大量のCremophor(商標)ELのような可溶化剤の使用は種々の副作用、例えば、重篤もしくは致死性の過敏反応および高血圧反応、徐脈性不整脈、貧血、好中球減少ならびに/または末梢神経障害をもたらすことが注目され得る。
【0004】
WO2008127358(A2)(本明細書では以降は、‘358号特許公開と呼ぶ)は、水不溶性薬物に対する水溶液を、脂質複合体中に含まれるリン脂質の使用とともに開示している。少なくとも1つのリン脂質の割合は、最終脂質複合体(例えば、市販されている形態)の約5重量%〜約98重量%である。一般には、少なくとも1つのリン脂質の量は、脂質複合体の10重量%〜90重量%である。対照的に、本発明の組成物は、リン脂質を必要に応じてごく少量利用する。驚くべきことに、水不溶性の薬物、例えば、ポリエン抗生物質類、タクロリムス、シロリムスを含む組成物は、‘358号特許公開によって教示されるような、大量のリン脂質を用いることなく効率的に可溶化され得る。
【0005】
別の先行技術、すなわち、PCT公報WO2008144355号(A2)は、安定な経口液体フェノフィブラート処方物を開示しており、これはフェノフィブラート成分およびフェノフィブラートを可溶化するために十分な量で存在し、かつ親油性成分、サーファクタント成分、少なくとも1つの一価アルコール、ならびに必要に応じていくつかの実施形態では、水性の成分を含み、ここでこの処方物は実質的に油相を含まない、医薬上許容される液体の担体を含む。また、安定な液体のフェノフィブラート処方物も含まれ、この処方物は、予防的にまたは治療的に有効な量のフェノフィブラートおよび室温でフェノフィブラートの溶解を維持するのに十分である5ml未満存在する液体担体を含む。明細書中に開示される処方物は、油相を含まないが、この公報は、この処方物が、C〜C10を含む1つ以上の分画された植物脂肪酸の少なくとも1つのトリグリセリドを含んでいる親油性成分およびサーファクタント成分(ここでこのサーファクタントは、30パーセント〜約70パーセント程度、好ましくは約42.5パーセント〜約65パーセントおよび/または約46パーセントから約57.5パーセントの量で、10を超えるHLB値を有する)を含んでもよいことを教示していることに注意することが重要であり得る。このような大量のサーファクタントの存在は、考察した上記の理由のために所望されない場合がある。
【0006】
米国特許出願第20040005339号(特許出願‘339)は、2−ピロリドンのN−アルキル誘導体、エチレングリコールモノエーテル、ポリエチレングリコールのC8-12脂肪酸エステル、脂肪酸類ならびにそれらの組み合わせから選択される水混和性のフィブラート可溶化剤中に溶解された、フェノフィブラート、フェノフィブラートの誘導体、またはそれらの混合物から選択されるフィブラートを含む、経口のバイオアベイラビリティが改善されたフィブラートの医薬製剤を特許請求する;ここでフィブラート対可溶化剤の重量比は、約1:1〜約1:100である。本発明者らは、フェノフィブラートの量より少ないサーファクタントの量でフェノフィブラートを可溶化する処方物を見出した。
【0007】
極めて大量のサーファクタントまたは大量のリン脂質を有する市販の処方物に関連するこれらの問題を考慮して、本発明者らは、極めて超少量のサーファクタントを用いる組成物を開発した。本発明者らは、水混和性溶媒および水を含むビヒクル中に分散された300nm未満の平均径を有するナノ粒子を含んでいるナノ分散体を開発し、このナノ粒子は、薬物、ポリマーおよび極めて少量のサーファクタントを含んでおり、さらに実質的にリン脂質を含まない。また本発明者らは、溶解の多くの問題があり、従ってバイオアベイラビリティが劣るフェノフィブラートのような分子は、フェノフィブラートのような薬物が本発明のナノ分散体ビヒクル中に組み込まれた場合、所望の溶解を達成するように首尾よく製剤化されるということも見出した。この結果は、予想されなかった。なぜなら、フェノフィブラートのような薬物の溶解挙動は、全く予測できないからである。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的
本発明の目的は、非経口または経口の経路による投与の前、および間に所望の期間にわたって安定である薬物のナノ分散体を提供することである。
【0009】
本発明の目的は、非経口経路による投与の前、および間に所望の期間にわたって物理的に安定である薬物のナノ分散体を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、室温で3時間より長い貯蔵の際、凝集も外観の変化の徴候も示さないナノ分散体を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、室温で少なくとも3カ月間の貯蔵の際、化学的に安定であり、かつ凝集も外観の変化の徴候も示さず、水性の液体ビヒクルでの希釈の際に安定なナノ分散体を生じる、薬物誘導体の予備濃縮物を提供することである。
【0012】
発明の要旨
A.水混和性溶媒および水を含むビヒクル中に分散された、300nm未満の平均径を有するナノ粒子を含むナノ分散体であって、このナノ粒子は、1つ以上の薬物、ポリマーおよびサーファクタントを含み、このサーファクタントは、脂肪酸類またはその塩と、ステロールあるいはその誘導体またはその塩との混合物を含む。
【0013】
B.上記のAに記載されるようなナノ分散体であって、ここで上記薬物が、テムシロリムス、タクロリムス、シロリムス、シクロスポリン、フェノフィブラートまたはその医薬上許容される塩から選択される、ナノ分散体。
【0014】
C.上記のAに記載されるようなナノ分散体であって、上記のサーファクタント対薬物の比が約1:5〜1:10であり、ここでこのナノ分散体が少なくとも4時間安定である、ナノ分散体。
【0015】
D.上記のAに記載されるようなナノ分散体であって、上記のサーファクタント対薬物の比が、約1:5〜約1:10であり、かつここで、このナノ分散体が少なくとも24時間安定である、ナノ分散体。
【0016】
E.上記のAに記載されるようなナノ分散体であって、上記のサーファクタント対薬物の比が約1:10であり、かつここでこのナノ分散体が少なくとも8時間安定である、ナノ分散体。
【0017】
F.上記のAに記載されるようなナノ分散体であって、ここで上記ナノ粒子の平均径が約10nm〜約200nmの範囲である、ナノ分散体。
【0018】
G.上記のAに記載されるようなナノ分散体であって、ここで上記水混和性溶媒が、アルコール、グリコールおよびその誘導体、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、グリセロール、グリコフロールならびにそれらの組み合わせから選択される、ナノ分散体。
【0019】
H.上記のAに記載されるようなナノ分散体であって、ここで上記水混和性溶媒が、アルコールおよびポリエチレングリコール(PEG)からなる群より選択される、ナノ分散体。
【0020】
I.上記のAに記載されるようなナノ分散体であって、ここで上記ポリマーが、水溶性のポリマーである、ナノ分散体。
【0021】
J.上記のAに記載されるようなナノ分散体であって、ここで上記水溶性のポリマーが、ポリビニルピロリドンおよびポリエチレングリコールからなる群より選択される、ナノ分散体。
【0022】
K.上記のAに記載されるようなナノ分散体であって、ここで用いられるポリビニルピロリドンが、1000〜約50,000という範囲の分子量を有し、かつ0.001%(w/v)〜10%(w/v)の範囲の量で用いられる、ナノ分散体。
【0023】
L.上記のAに記載されるようなナノ分散体であって、ここで上記脂肪酸またはその塩が、カプリル酸、オレイン酸、ステアリン酸およびそれらの混合物からなる群より選択される、ナノ分散体。
【0024】
M.上記のAに記載されるようなナノ分散体であって、ここで上記ステロールあるいはその誘導体またはその塩が、コレステロール、極性の酸類のコレステリルエステル類、植物ステロール類、胆汁酸類、それらの誘導体、それらの塩および混合物からなる群より選択される、ナノ粒子。
【0025】
N.上記のAに記載されるようなナノ粒子であって、ここで上記極性の酸が、コハク酸、ヘミコハク酸、硫酸、リン酸、グルタミン酸およびアスパラギン酸、ホウ酸からなる群より選択される、ナノ粒子。
【0026】
O.上記のAに記載されるようなナノ分散体であって、ここで上記サーファクタントが、約0.001%(w/v)〜約5.0%(w/v)の範囲の量で用いられる、ナノ分散体。
【0027】
P.水混和性溶媒中に1つ以上の薬物、ポリマーおよびサーファクタントを含み、このサーファクタントが、脂肪酸類またはその塩とステロールあるいはその誘導体またはその塩との混合物を含む溶液であって、水性液体ビヒクルでの希釈の際にナノ分散体を生じる、溶液。
【0028】
Q.1つ以上の薬物、サーファクタント(脂肪酸またはその塩とステロールあるいはその誘導体またはその塩との混合物を含む)、およびポリマーを含む、300nm未満の平均径を有する、ナノ粒子。
【0029】
本発明は、水混和性溶媒および水を含むビヒクル中に分散された、300nm未満の平均径を有するナノ粒子を含むナノ分散体であって、このナノ粒子が、1つ以上の薬物、ポリマーおよびサーファクタントを含み、このサーファクタントが、脂肪酸類またはその塩と、ステロールあるいはその誘導体またはその塩との混合物を含むナノ分散体を提供する。
【0030】
本発明はまた、水混和性溶媒中に1つ以上の薬物、ポリマーおよびサーファクタントを含む溶液であって、このサーファクタントは、脂肪酸類またはその塩と、ステロールあるいはその誘導体またはその塩との混合物を含み、水性液体ビヒクルでの希釈の際にナノ分散体を生じる、溶液を提供する。
【0031】
本発明はまた、1つ以上の薬物、サーファクタント(ステロールあるいはその誘導体またはその塩と、脂肪酸またはその塩との混合物を含む)およびポリマーを含む、300nm未満の平均径を有する、ナノ粒子を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
本発明は、水混和性溶媒および水を含む水性のビヒクル中に分散された、300nm未満の平均径を有するナノ粒子を含むナノ分散体であって、このナノ粒子が、薬物、ポリマーおよびサーファクタントを含み、このサーファクタントが、脂肪酸類またはその塩と、ステロールあるいはその誘導体またはその塩との混合物を含むナノ分散体を提供する。
【0033】
本発明はまた、水混和性の溶媒中に、薬物、ポリマーおよびサーファクタントを含む溶液であって、このサーファクタントは、脂肪酸類またはその塩と、ステロールあるいはその誘導体またはその塩との混合物を含み、水性ビヒクルでの希釈の際にナノ分散体を生じる溶液を提供する。
【0034】
本発明はまた、300nm未満の平均粒子径を有するナノ粒子であって、薬物、サーファクタント(ステロールあるいはその誘導体またはその塩と、脂肪酸またはその塩との混合物を含む)、およびポリマーを含む、ナノ粒子に関する。本発明のナノ分散体は、Cremophorのような毒性の賦形剤を欠き、薬物の安定なナノ分散体を製剤化するために必要なかなり少量の添加物(例としては、サーファクタント類およびリン脂質類)の使用を含み、それによって、関連する毒性の反応を最小化する。
【0035】
本明細書において用いられるようなナノ粒子という用語は、ナノメートルのオーダーという調節された寸法を有する任意の粒子を意味する。本発明において特許請求されるようなナノ粒子は、ポリマーのナノ粒子(薬物を捕捉しているポリマーのマトリクス)および/またはポリマーのナノ小胞(薬物を封入している、ポリマーの安定化されたナノサイズの小胞)および/またはポリマーのナノカプセル(コア中に薬物を囲んでいるポリマーの膜)および/またはサーファクタントによって安定化された薬物のナノサイズの粒子など(300nm未満の平均径を有する)であってもよい。ナノ粒子の粒子径は、粒子径を測定および表現する従来の方法、例としては、Malvern粒子径分析、ふるいわけ(sieving)、光散乱光学顕微鏡、画像分析、沈殿および当業者に公知のそのような他の方法を用いて決定される。粒子径分布情報は、Malvern粒子径測定から得ることができるD10、D50およびD90という値から得ることができる。例えば、いかなる理論によって束縛されることも望まないが、本出願人らは、300nm未満の平均径を有するナノ粒子を含んでいるナノ分散体を通じた薬物の送達は、標的の腫瘍組織および細胞における薬物の内部移行および蓄積の増強をもたらすと考える。このような内部移行レベルの増大によって、癌に関連する腫瘍を治癒するための強力な治療のストラテジーが得られる。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、ナノ粒子の粒子径は、10nm〜275nmの範囲である。本発明の好ましい実施形態では、粒子径は、200nm未満である。本発明の最も好ましい実施形態では、粒子径は、10nm〜200nmの範囲である。
【0037】
本発明は、水混和性溶媒および水を含むビヒクル中に分散された、300nm未満の平均径を有するナノ粒子を含むナノ分散体であって、このナノ粒子が、1つ以上の活性剤、ポリマーおよびサーファクタントを含み、このサーファクタントが、脂肪酸類またはその塩と、ステロールあるいはその誘導体またはその塩との混合物を含むナノ分散体を提供する。
【0038】
本発明はまた、水混和性の溶媒中に、1つ以上の薬物、ポリマーおよびサーファクタントを含む溶液であって、このサーファクタントが、脂肪酸類またはその塩と、ステロールあるいはその誘導体またはその塩との混合物を含み、水性の液体ビヒクルでの希釈の際にナノ分散体を生じる溶液を提供する。
【0039】
本発明のナノ粒子は、300nm未満の平均粒子径を有し、ここでこの粒子は、1つ以上の薬物、サーファクタント(ステロールあるいはその誘導体またはその塩および脂肪酸またはその塩の混合物を含む)およびポリマーを含む。
【0040】
本発明の実施形態で言及されるような薬物誘導体は、好ましくは、水溶性の乏しい薬物である薬物、例えば、シロリムス、タクロリムス、シクロスポリン、フェノフィブラートである。好ましくは、これらの薬物は、水溶性が乏しく、かつ経口的にまたは非経口的に投与された場合、不適切なバイオアベイラビリティをもたらす結晶化または凝集のいずれかの問題に起因して、物理的に不安定であるという問題を有する。
【0041】
本発明のナノ粒子は、1つ以上のポリマーを含む。本発明のナノ粒子に適切なポリマーは好ましくは、水溶性である。水溶性ポリマーの1つであるポリビニルピロリドンは、本明細書において以降ではPVPと命名し、ポビドンとしても公知である、1−ビニル−2−ピロリドンの直鎖状に配列されたモノマー単位を有する第三級のアミドポリマーである。これは、約10,000〜約700,000におよぶ平均分子量を有する一連の製品として市販されている。K値と指定される平均分子量に従って、様々な製品が市販されている;例えば、GAF Corporationは、以下のK値を有するPVPを販売する:
K−値 平均分子量
15 約10,000
30 約40,000
60 約160,000
90 約360,000
【0042】
別の業者であるBASFは、例えば、2000〜3000(Kollidon 12PF)、7000〜11,000(Kollidon 17PF)、28,000〜34,000(Kollidon25)、1,000,000〜1,5000,000(Kollidon 90F)という分子量を有する等級のKollidonとして、種々の水溶性の等級のポリビニルピロリドンを供給する。この実施形態では、ポリビニルピロリドンは、水溶性のポリマーとして用いられる。本発明に適切なポリビニルピロリドンの等級としては、約1,000〜約45,000、好ましくは約4,000〜約30,000の範囲の分子量を有する等級が挙げられる。本発明の一実施形態によれば、ナノ分散体で用いられるポリマーの量は、約0.001%(w/v)〜約20%(w/v)におよぶ。ポリマーは好ましくは、約0.01%(w/v)〜約5.0%(w/v)の範囲の量で用いられる。最も好ましくは、これは、約0.01%(w/v)〜約1.0%(w/v)におよぶ量で用いられる。
【0043】
本発明のナノ分散体は、1つ以上のサーファクタントを含む。サーファクタント(surfactant)という用語は、「surface active agent」の混成語である。サーファクタントは、水溶性(親水性)および脂質可溶性(親油性)部分を含む分子である。本発明のナノ分散体で用いられるサーファクタントは、脂肪酸またはその塩とステロールあるいはその誘導体またはその塩との混合物を含む。
【0044】
脂肪酸類という用語は、動物または植物の脂肪、油またはろう状物質に由来するか、またはエステル化型に含まれる、脂肪族(飽和または不飽和)モノカルボン酸類を包含する。本発明の組成物中で用いられ得る脂肪酸類またはその塩の例としては限定するものではないが、「n」個の炭素原子を有する、脂肪酸またはその塩が挙げられ、ここで「n」は、約4〜約28の範囲である。脂肪酸は、飽和脂肪酸であっても、または不飽和脂肪酸であっても、ならびにそれらの塩およびそれらの組み合わせであってもよい。飽和脂肪酸およびその塩は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、カプリル酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウムなどおよび/またはそれらの混合物から選択されてもよい。不飽和脂肪酸およびその塩は、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、αリノール酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸、オレイン酸ナトリウム、アラキドン酸ナトリウムなどおよび/またはそれらの混合物から選択されてもよい。
【0045】
本発明のナノ分散体またはナノ粒子中で用いられ得る、ステロールあるいはその誘導体またはその塩の例は、ステロールの酸エステル類であってもよい。本発明によって適切であり得るステロールとしては限定するものではないが、コレステロール、植物ステロール類、エルゴステロール、胆汁酸塩類およびそれらの混合物が挙げられる。用いられ得るコレステロールの酸塩としては限定するものではないが、硫酸コレステリル、酢酸コレステロール、クロロ酢酸コレステロール、安息香酸コレステロール、ミリスチン酸コレステロール、ヘミコハク酸コレステロール、リン酸コレステロール、リン酸コレステロール、ホスホン酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩、ケイ皮酸コレステロール、クロトン酸コレステロール、酪酸コレステロール、ヘプタン酸コレステロール、ヘキサン酸コレステロール、オクタン酸コレステロール、ノナン酸コレステロール、デカン酸コレステロール、オレイン酸コレステロール、プロピオン酸コレステロール、吉草酸コレステロール、炭酸ジコレステリルなど、およびそれらの混合物が挙げられる。本発明の組成物に用いられ得る植物ステロール類としては、シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、およびその誘導体、塩、ならびにそれらの混合物が挙げられる。例えば、Sigma U.S.A.により市販されているPhytosterols*は、βシトステロール、カンペステロール、およびジヒドロブラシカステロールを含む。胆汁酸類としては、コール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、ウルソデオキシコール酸、およびその誘導体、塩、ならびにそれらの混合物が挙げられる。ステロール類はまた、ヘミコハク酸コレステロールを含むコレステロールのエステルでも、硫酸水素コレステロールおよび硫酸コレステロールを含むコレステロールの塩でも、エルゴステロールでも、ヘミコハク酸エルゴステロールを含むエルゴステロールのエステルでも、硫酸水素エルゴステロールおよび硫酸エルゴステロールを含むエルゴステロールの塩でも、ラノステロールでも、ヘミコハク酸ラノステロールを含むラノステロールのエステルでも、硫酸水素ラノステロールおよび硫酸ラノステロールを含むラノステロールの塩でもよい。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、ナノ粒子は、ステロールあるいはその誘導体またはその塩と脂肪酸類またはその塩との混合物であるサーファクタントを含む。別の好ましい実施形態では、ナノ粒子は、極性の酸のコレステロールエステルを含む。1つの好ましい実施形態では、ナノ分散体に用いられるサーファクタントは、カプリル酸と硫酸コレステリルとの混合物である。カプリル酸はまた、オクタン酸としても知られ、約0.001(w/v)%〜約5.0(w/v)%、より好ましくは約0.01(w/v)%〜約1.0(w/v)%、最も好ましくは約0.01(w/v)%〜約0.5(w/v)%という範囲の量で、この実施形態中で用いられ得る。硫酸コレステリルは、本発明の実施形態において、約0.001(w/v)%〜約5.0(w/v)%、より好ましくは約0.01(w/v)%〜約1.0(w/v)%、最も好ましくは約0.01(w/v)%〜約0.5(w/v)%におよぶ量で用いられる。
【0047】
別の好ましい実施形態によれば、用いられるサーファクタントは、オレイン酸および硫酸コレステリルならびに/またはそれらの混合物から選択される。
【0048】
本発明の別の実施形態によれば、用いられるサーファクタントは、飽和脂肪酸および胆汁酸または胆汁酸塩および/またはそれらの混合物から選択される。好ましい実施形態によれば、用いられるサーファクタントは、カプリル酸およびグリココール酸ナトリウムもしくはウルソデオキシコール酸および/またはそれらの混合物からなる群より選択される。
【0049】
胆汁酸塩類が用いられる場合、約0.001(w/v)%〜約5.0(w/v)%、より好ましくは約0.01(w/v)%〜約1.0(w/v)%、最も好ましくは約0.01(w/v)%〜約0.75(w/v)%の範囲の量で使用される。
【0050】
本発明の組成物は、ごく少量のレシチン類/リン脂質類および/またはそれらの誘導体をさらに含んでもよい。本明細書で用いる場合「少量」という用語は、リン脂質類対薬物の比が、約1:4〜約1:10であり、リン脂質類が用いられる場合でさえも、それらはごく少量で用いられ、すなわち薬物の量に比べ、リン脂質類の量はごく少ないことを意味する。一般的に、従来技術のリポソームである組成物は、薬物の量に比べて多量のリン脂質類を必要とする。
【0051】
リン脂質類が少量用いられるいくつかの実施形態では、そのようなリン脂質類の例としては、限定するものではないが、天然のレシチン、部分的に水素化されているレシチンか、もしくは水素化されているレシチンまたはスフィンゴリピド類が挙げられる。天然レシチンは、異なるリン脂質類の混合物である。本発明の組成物に用いられ得るリン脂質類は、ホスファチジルコリン(ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアリロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジラウリロイルホスファチジルコリン、1−パルミトイル−ホスファチジルコリン、1−ミリストイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン、1−パルミトイル−2−ミリストイルホスファチジルコリン、1−ステアロイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン);ホスファチジルエタノールアミン(ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、リゾファチジルエタノールアミン);スフィンゴミエリン(脳スフィンゴミエリン、ジパルミトイルスフィンゴミエリン);リゾレシチン;セレブロシドなど、およびそれらの混合物から選択される。さらに、例えば、ポリエチレングリコール−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG−DSPE)、メトキシポリエチレングリコール−ジステアロイルホスファチジルコリン m−PEG−DSPCなど、およびそれらの混合物のような、脂質類のポリエチレングリコール誘導体も、本発明の組成物に用いてもよい。好ましくは、本発明の組成物に用いられ得るブチレンシド(butylenesid)類は、m−PEG−DSPE(メトキシポリエチレングリコール−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン)である。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、用いられるリン脂質は、mPEG−DSPEである。それは、約0.001(w/v)%〜約10.0(w/v)%、より好ましくは約0.01(w/v)%〜約5.0(w/v)%、最も好ましくは約0.03(w/v)%〜約0.5(w/v)%におよぶ量で用いられる。
【0053】
本発明の組成物に用いられる非水性溶媒は、薬物が比較的可溶性である溶媒である。非水性溶媒は、水または水性溶媒と混和性である。本発明に用いられるそのような水混和性溶媒の例としては、限定するものではないが、例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールのようなアルコール類;例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、およびその誘導体のようなグリコール類;PEG400またはPEG3350などのポリエチレングリコール類;例えばPPG−10ブタンジオール、PPG−10メチルグルコースエーテル、PPG−20メチルグルコースエーテル、PPG−15ステアリルエーテルのようなプロピレングリコールおよびその誘導体;グリセロール;グリコフロールなど、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、非水性溶媒は、アルコール類、ポリエチレングリコール類、および/またはそれらの混合物からなる群より選択されてもよい。本発明の好ましい実施形態によれば、エタノールとPEG(ポリエチレングリコール)との混合物が水混和性溶媒として用いられる。エタノールは、約0.001(w/v)%〜約5(w/v)%、より好ましくは約0.05(w/v)%〜約0.5(w/v)%、最も好ましくは約0.1(w/v)%〜約0.25(w/v)%の範囲の量で本発明のナノ分散体組成物中に用いられる。好適には、用いられるポリエチレングリコール類としては、PEG−400およびPEG−3350が挙げられる。PEG−400は、本発明の実施形態に、約0.01(w/v)%〜約20.0(w/v)%、より好ましくは約0.05(w/v)%〜約5.0(w/v)%、最も好ましくは約1.0(w/v)%〜約2.5(w/v)%におよぶ量で用いられる。PEG−3350は、本発明の実施形態に、約0.001(w/v)%〜約10.0(w/v)%、より好ましくは約0.05(w/v)%〜約5.0(w/v)%、最も好ましくは約0.1(w/v)%〜約3(w/v)%におよぶ量で用いられる。
【0055】
一般的に、薬物の予備濃縮物、すなわち、溶液が、水性ビヒクルによる希釈の際に、少なくとも約4時間安定なままでいるナノ分散体が得られることが望ましい。この時間は、ナノ分散体が、点滴の形態で患者に投与され得る時間である。従って、本発明のナノ分散体の最低で4時間の安定性を得ることが常に望ましい。ビヒクルは、注射用水に含有される約5%〜約10.0(w/v)%のデキストロース溶液または他の任意の医薬上許容できる静脈用水性液体ビヒクルおよびそれらの混合物をさらに含んでもよい。薬物が例えば、テムシロリムス、シロリムスである疎水性の薬物である、本発明の一実施形態では、水性ビヒクルはさらに、この安定性を向上させるために5%デキストロース溶液を含むが、追加の安定剤が水相に存在してもよい。このような安定剤の例は、ヘタスターチ、デキストラン、ヒアルロン酸ナトリウム、グルタチオン、オルニチン−L−アスパラギン酸などおよびそれらの混合物である。
【0056】
一実施形態では、特許請求される本発明の溶液は、経口投与用に設計されてもよい。この溶液はまた、予備濃縮とも呼ばれ、これは、硬ゼラチンカプセルまたは軟ゼラチンカプセル中に充填されてもよい。経口投与の際、溶液は、水性媒体中に分散され、従って、フェノフィブラートなどの薬物が、十分な溶解を得るべく、ナノメートルの範囲の粒子径を有するナノ粒子の形態で分散される。ナノ分散体ビヒクルによって、薬物粒子は、ナノ分散体が経口的に投与される場合、薬物が身体に吸収されるのに十分である所望の期間、例えば1〜3時間にわたって分散状態であり、物理的に安定化される。
【0057】
別の実施形態では、この溶液を、ナノ粒子を形成するために乾燥してもよい。ナノ粒子は、錠剤、顆粒、ペレットのような、固体剤形を形成するための医薬上許容される賦形剤とともに製剤化されてもよい。
【0058】
本発明の薬物のナノ分散体は、典型的には、以下に列挙された方法のいずれか1つにより調製され得る:
1)治療上活性な成分(および/または他の薬剤)、ポリマー、ならびに脂肪酸類またはその塩、ステロールあるいはその誘導体またはその塩およびそれらの混合物から選択されるサーファクタントを、エタノールおよび/またはPEGなどの水混和性溶媒中に、攪拌および加熱しながら溶解させ、薬物の濃縮溶液を得る。このように得られた溶液を、メンブランフィルターで濾過する。この溶液に、水性液体ビヒクル(5%デキストロース溶液)をゆっくりと加え、混合物を振盪/攪拌し、これによって本発明のナノ分散体の形成をもたらす。このように形成されたナノ分散体を、必要に応じて均質化および/または超音波処理し、濾過または凍結乾燥する。薬品の凍結乾燥された粉末を、水性媒体により再構成して、患者へ投与する前に本発明のナノ分散体を再形成してもよい。
【0059】
2)薬物、ポリマー、ならびに脂肪酸類またはその塩、ステロールあるいはその誘導体またはその塩およびそれらの混合物から選択されるサーファクタントを、エタノールおよび/またはPEGなどの水混和性溶媒中に、攪拌および加熱しながら溶解させ、薬物の濃縮溶液を得る。このように得られた溶液を、メンブランフィルターで濾過し、水性媒体(5%デキストロース溶液)に加え、混合物を振盪/攪拌し、これによって本発明のナノ分散体を形成させる。このように形成されたナノ分散体を、必要に応じて均質化および/または超音波処理し、濾過または凍結乾燥する。薬物の凍結乾燥された粉末は、水性媒体により再構成して、患者へ投与する前に本発明のナノ分散体を再形成してもよい。
【0060】
3)薬物、ならびに脂肪酸類またはその塩とステロールあるいはその誘導体またはその塩との混合物を含むサーファクタントを、丸底フラスコ中で、40℃で軽く温めることによってエタノールおよび/またはPEGなどの水混和性溶媒に溶解させ、溶媒を蒸発させ、薬物の薄膜を形成させる。ポリマーを、必要な量の水性媒体に溶解させ、この溶液を、3〜4時間穏やかに攪拌および振盪しながらこの膜に加え、これによって本発明のナノ分散体を形成させる。このように形成されたナノ分散体を、必要に応じて均質化および/または超音波処理し、濾過または凍結乾燥する。薬物の凍結乾燥された粉末は、水性媒体により再構成して、患者へ投与する前に本発明のナノ分散体を再形成してもよい。
【0061】
本発明のナノ分散体は、300nm未満の平均径を有するナノ粒子を含む薬物のコロイド状ナノ分散体であるので、物理的および化学的安定性について分析した。粒子が、室温で約8時間〜約24時間保存した時凝集せず、ナノ分散体が外観の変化の兆候を全く示さないことが観察され、これによって、ナノ分散体が、投与の前およびその間の所望の期間、安定であると推測される。
【0062】
また、水混和性溶媒中の薬物および/または他の薬剤の溶液を試験した場合、経口的にまたは非経口的に、組成物の投与に少なくとも必要な期間にわたってこの溶液が物理的および化学的に安定のままであり、薬物のアッセイ中に有意な変化がなく、実質的な凝集も製剤の外観の変化も全くないことが観察された。この観察を、次の実施例に示す。
【0063】
本発明のナノ分散体は、2つ以上の容器、例えば2つの容器を有するキットであって、第1容器が、水混和性溶媒中の薬物、ポリマー、および、脂肪酸類またはその塩とステロールあるいはその誘導体またはその塩との混合物を含むサーファクタントの溶液を含み、第2容器が水性液体ビヒクルを含んでおり、穏やかに攪拌もしくは振盪しながら、第2容器の内容物を第1容器の内容物に加えるか、またはその逆に加えることによって、本発明のナノ分散体の製剤が形成されるような、静脈内投与に好適であるキットとしても提供できる。追加の容器は、薬物のナノ分散体の形成の前、またはこのような薬物のナノ分散体が形成された後に混合するための第3成分を含んでよい。
【0064】
本発明は、2つの容器を有するキットであって、第1容器が凍結乾燥された形態のナノ分散体を含んでおり、第2容器が水性液体ビヒクルを含んでおり、患者への投与前に、穏やかに攪拌もしくは振盪しながら、第2容器の内容物を第1容器の内容物に加えるか、またはその逆に加えることによって、本発明のナノ分散体が形成されるキットも提供する。
【0065】
本発明のナノ分散体の、その必要のある患者への投与によって、当該分野で公知の様々な種類の癌の治療の効果的な方法が提供される。
【0066】
本発明は、上記で全般的に開示されたが、以下の実施例に関連して追加の実施形態がさらに考察および説明される。しかし、この実施例は、本発明を説明するためだけに示されるものであり、そこに本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【0067】
【表1】

【0068】
薬物、硫酸コレステリル、カプリル酸、およびPVP K−12をガラスバイアル中に正確に秤量した。内容物を、攪拌しながら、必要な量の無水エタノールおよびPEG−400に溶解させて濃縮された薬物溶液を得た。その溶液を、0.2μのPVDFメンブランフィルターを通して濾過した。必要量の予備濃縮物を、穏やかに振盪しながら、デキストロース溶液(5%w/v)(50ml)中に分散させ、希釈0.1mg/mlの薬物の透明から半透明なナノ分散体を得た。ナノ分散体を、以下の試験について分析した:外観、pH(Mettler Toledo−seven easy、pH計)および粒径(Nano−ZS、Malvern粒径分析器)(下記)。そのようにして調製した予備濃縮物は、透明な無色のわずかに粘性の溶液であることが見出された。これを、デキストロース溶液のような水相と混合して、ナノ分散体を得た。分散した粒子の粒子径に関するナノ分散体の安定性を最初、および2〜3時間の貯蔵の際に測定した。
【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
薬物、硫酸コレステリル、カプリル酸、およびPVP K−17をガラスバイアル中に正確に秤量した。内容物を、攪拌しながら、必要な量の無水エタノールおよびPEG−400に溶解させて、濃縮された薬物溶液を得た。その溶液を、0.2μのPVDFメンブランフィルターを通して濾過した。必要量の予備濃縮物を、穏やかに振盪しながら、デキストロース溶液(5%w/v)(50ml)中に分散させ、希釈0.5mg/mlの薬物の透明から半透明なナノ分散体を得た。ナノ分散体を、以下の試験について分析した:外観、pH(Mettler Toledo−seven easy、pH計)および粒径(Nano−ZS、Malvern粒径分析器)(下記)。
【0072】
そのようにして調製した予備濃縮物は、透明な無色のわずかに粘性の溶液であることが見出されている。これを、デキストロース溶液のような水相と混合して、ナノ分散体を得た。分散した粒子の粒子径に関するナノ分散体の安定性を最初、および2〜3時間の貯蔵の際に測定した。
【0073】
【表4】

【0074】
【表5】

【0075】
全ての成分を、必要に応じて加熱しながらエタノール中に溶解した。エタノールを蒸発させた。次いで、乾燥混合物を融解して、水をシルバーソン・ホモジナーザー(silverson homoginizer)を用いて60℃で添加した。平均粒子径が1000nm未満のナノ分散体(約300〜1000nm)が形成される。ナノ分散体を噴霧乾燥した。噴霧乾燥した粉末を、水中に再構成して、平均粒子径が900nm〜1700nmというナノ分散を得た。50mgのフェノフィブラートに相等する噴霧乾燥粉末の溶解は、15分内で80%を超え、かつ30分内で90%を超えた。
【0076】
【表6】

【0077】
薬物、硫酸コレステリルナトリウム、カプリル酸、およびポビドン(K−12)をガラスバイアル中に正確に秤量した。内容物を、攪拌しながら、必要な量の無水エタノールおよびPEG−400に溶解させて、透明な濃縮された薬物溶液を得た。その溶液を、0.2μのPVDFメンブランフィルターを通して濾過した。そのようにして調製した予備濃縮物は、透明な無色のわずかに粘性の溶液であることが見出された。必要量の予備濃縮物を、穏やかに振盪しながら、デキストロース溶液(5%w/v)中に分散して、希釈5.0mg/mlの薬物の白色の半透明なナノ分散体を得た。ナノ分散体を、以下の試験について分析した:外観、pH(Mettler Toledo−seven easy、pH計)および粒径(Nano−ZS、Malvern粒径分析器)(下記)。分散された粒子の粒子径に関して、ナノ分散体の安定性を最初、および貯蔵の際、すなわち1時間後に測定した。
【0078】
【表7】

【0079】
【表8】

【0080】
薬物、硫酸コレステリルナトリウム、カプリル酸、およびポビドン(K−17)をガラスバイアル中に正確に秤量した。内容物を、攪拌しながら、必要な量の無水エタノールおよびPEG−400に溶解させて、透明な濃縮された薬物溶液を得た。その溶液を、0.2μのPVDFメンブランフィルターを通して濾過した。そのようにして調製した予備濃縮物は、透明な無色のわずかに粘性の溶液であることが見出された。必要量の予備濃縮物を、穏やかに振盪しながら、デキストロース溶液(5%w/v)中に分散して、希釈0.1mg/mlの薬物の白色半透明のナノ分散体を得た。ナノ分散体を、以下の試験について分析した:外観、pH(Mettler Toledo−セブン・イージー(seven easy)、pH計)および粒径(Nano−ZS、Malvern粒径分析器)(下記)。
【0081】
分散された粒子の粒子径に関して、ナノ分散体の安定性を最初、および貯蔵の際、すなわち24時間後に測定した。
【0082】
【表9】

【0083】
【表10】

【0084】
薬物、硫酸コレステリルナトリウム、カプリル酸、およびポビドン(K−17)をガラスバイアル中に正確に秤量した。内容物を、攪拌しながら、必要な量の無水エタノールおよびPEG−400に溶解させて、60℃で加熱することによって、透明な濃縮された薬物溶液を得た。その溶液を、0.2μのPVDFメンブランフィルターを通して濾過した。そのようにして調製した予備濃縮物は、透明な無色から淡黄色のわずかに粘性の溶液であることが見出された。必要量の予備濃縮物を、穏やかに振盪しながら、0.25%のヒプロメロース(Hypromellose)(HPMC)溶液中に分散させ、希釈1.0mg/mlの薬物のナノ分散体を得た。ナノ分散体を、以下の試験について分析した:外観、pH(Mettler Toledo−セブン・イージー(seven easy)、pH計)および粒径(Nano−ZS、Malvern粒径分析器)(下記)。ナノ分散体の粒子径を最初、および貯蔵の際2時間まで、測定した。
【0085】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水混和性溶媒および水を含むビヒクル中に分散された、300nm未満の平均径を有するナノ粒子を含む安定なナノ分散体であって、該ナノ粒子は、1つ以上の薬物を含み、該薬物はポリマーおよびサーファクタントを有し、該サーファクタントは、脂肪酸類またはその塩と、ステロールあるいはその誘導体またはその塩との混合物を含む、ナノ分散体。
【請求項2】
前記薬物が、テムシロリムス、タクロリムス、シロリムス、フェノフィブラート、シクロスポリン、タクロリムス、ブリンゾラミドまたはその医薬上許容される塩からなる群より選択される、請求項1に記載のナノ分散体。
【請求項3】
前記サーファクタント対薬物の比が、約1:5〜1:10であり、かつ該ナノ分散体が少なくとも4時間安定である、請求項2に記載のナノ分散体。
【請求項4】
前記サーファクタント対薬物の比が、約1:5〜約1:10であり、かつ該ナノ分散体が24時間安定である、請求項3に記載のナノ分散体。
【請求項5】
前記サーファクタント対薬物の比が、約1:10であり、かつ該ナノ分散体が8時間安定である、請求項4に記載のナノ分散体。
【請求項6】
前記ナノ粒子の平均径が約10nm〜約200nmの範囲である、請求項5に記載のナノ分散体。
【請求項7】
前記水混和性溶媒が、アルコール、グリコールおよびその誘導体、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、グリセロール、グリコフロールならびにそれらの組み合わせから選択される、請求項6に記載のナノ分散体。
【請求項8】
前記水混和性溶媒が、アルコールおよびポリエチレングリコール(PEG)からなる群より選択される、請求項7に記載のナノ分散体。
【請求項9】
前記ポリマーが水溶性のポリマーである、請求項8に記載のナノ分散体。
【請求項10】
前記水溶性のポリマーが、ポリビニルピロリドンおよびポリエチレングリコールからなる群より選択される、請求項9に記載のナノ分散体。
【請求項11】
用いられるポリビニルピロリドンが、1000〜約50,000という範囲の分子量を有し、かつ0.001%(w/v)〜10%(w/v)の範囲の量で用いられる、請求項9に記載のナノ分散体。
【請求項12】
前記脂肪酸類またはその塩が、カプリル酸、オレイン酸、ステアリン酸およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項11に記載のナノ分散体。
【請求項13】
前記ステロールあるいはその誘導体またはその塩が、コレステロール、極性の酸のコレステリルエステル、植物ステロール、胆汁酸、それらの誘導体、それらの塩および混合物からなる群より選択される、請求項12に記載のナノ分散体。
【請求項14】
前記極性の酸が、コハク酸、ヘミコハク酸、硫酸、リン酸、グルタミン酸およびアスパラギン酸、ホウ酸からなる群より選択される、請求項13に記載のナノ粒子。
【請求項15】
前記サーファクタントが、約0.001%(w/v)〜約5.0%(w/v)の範囲の量で用いられる、請求項14に記載のナノ分散体。
【請求項16】
水混和性溶媒中に1つ以上の薬物、ポリマーおよびサーファクタントを含み、該サーファクタントが、脂肪酸類またはその塩とステロールあるいはその誘導体またはそれらの塩との混合物を含む溶液であって、水性液体ビヒクルでの希釈の際にナノ分散体を生じる、溶液。
【請求項17】
300nm未満の平均粒子径を有するナノ粒子であって、1つ以上の薬物、サーファクタントおよびポリマーを含み、該サーファクタントが、脂肪酸またはその塩とステロールあるいはその誘導体またはその塩との混合物を含む、ナノ粒子。

【公表番号】特表2012−530694(P2012−530694A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515633(P2012−515633)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/IN2010/000423
【国際公開番号】WO2010/146606
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(507310592)サン・ファーマ・アドバンスド・リサーチ・カンパニー・リミテッド (10)
【Fターム(参考)】