説明

薬物乱用抵抗性製剤

高い機械的強度を有する医薬添加物を含んでなる固体の連続ネットワークを含有してなる徐放性医薬組成物であって、そのネットワークは細孔を含んでなり、その細孔内に有効成分と薄膜形成剤の混合物が散在しており、当該細孔が該組成物の製造の際に形成されるものであることを特徴とする組成物が提供される。本発明の組成物は、慢性疼痛の治療に使用され得るオピオイド鎮痛剤を含有してなる薬物乱用抵抗性製剤として取り分け有用であることが認められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オピオイド鎮痛剤などの有効成分を胃腸管にて制御放出し得る新規非乱用性医薬組成物に関する。本発明はまたかかる医薬組成物の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行して刊行されたことが明らかな文献について本明細書にて一覧掲載したり、あるいは考察することが、当該文献が当該技術分野の現状の一部であるとか、または共通の一般的知識であるということを認めたことであるとは必ずしも解釈すべきではない。
【0003】
オピオイド類は、鎮痛剤として医療において、例えば、激しい疼痛、慢性疼痛をもつ患者の処置に、または術後の管理に広く使用されている。実際に、より激しい疼痛の一時的緩和には、これ以上に有効な治療薬は存在しない、と現在理解されている。
【0004】
“オピオイド”という用語は、一般に、脳、脊髄および腸管に見出されるオピオイド受容体を活性化する薬物について記載するために使用する。以下の3種に分類されるオピオイドが存在する:
(a)天然産のアヘンアルカロイド。これらはモルヒネとコデインを包含する;
(b)化学構造が天然産のアヘンアルカロイドに類似する化合物。これらのいわゆる半合成物は後者の化学修飾により製造されるが、ジアモルフィン(ヘロイン)、オキシコドンおよびヒドロコドンなどを包含する;および
(c)フェンタニルおよびメタドンなどの純合成化合物。かかる化合物は天然産化合物とその化学構造が全く異なり得る。
【0005】
この3種の主要分類のオピオイド受容体(μ、κおよびδ)の内、オピオイドの鎮痛および沈静作用は、主としてμ受容体でのアゴニズムに由来する。
【0006】
オピオイド鎮痛剤は末期癌の激しい慢性の疼痛の治療に、非ステロイド抗炎症剤(NSAID)と組合わせて使用し、急性の疼痛(例えば、術後の回復期)についても同様である。さらに、それらの使用は慢性の非悪性疼痛の管理においても増加しつつある。
【0007】
慢性疼痛の最適な管理には、24時間体制の適用が必要である。これに関連して、オピオイドを必要とする癌患者は、通常、緩徐放出アヘン製剤(緩徐放出モルヒネ、オキシコドンもしくはケトベミドン、または経皮吸収フェンタニル)を投与される。有効成分の徐放性を提供し得る医薬製剤は、患者が1日当たりの最少投与回数で基本線となる鎮痛効果を得ることを可能とする。その結果は患者のコンプライアンスを改善し、個々人のライフスタイル、従って生活の質への妨害を最少とする。
【0008】
経皮吸収薬フェンタニルの送達システムは、その強力なオピオイド鎮痛剤を送達するために皮膚に貼付するパッチ(例えば、デュラゲシック(DURAGESIC; 登録商標))からなり、鎮痛剤は皮膚を経由して全身の循環系にゆっくりと吸収される。疼痛は単回のパッチ貼付で3日間緩和され得る。
【0009】
しかしながら、このようなパッチは貼付の全期間に渡って、血漿中のオピオイドレベルを一定に保つものではない。この欠陥は、フェンタニルの経皮投与が皮膚組織にフェンタニル堆積を形成するという事実の必然の結果である。血清中フェンタニル濃度は、最初のパッチ貼付の後に徐々に増大するが、一般には、飽和点に達するまでの12時間ないし24時間は平坦であり、その後、有効成分の吸収は比較的一定のままであり、残りの72時間の貼付期間は幾分の変動がある。
【0010】
さらに、先ず第一に、オピオイドなどの非常に強力な薬物による徐放性製剤の設計においては、深刻な、時には致死的な副作用のリスクの観点で、“薬用量急速移動”のリスクを除去しなければならない。第二に、フェンタニルなどの強力なオピオイド鎮痛剤のもつ長年の問題は、薬物耽溺者による薬物乱用の問題である。耽溺者は以下の一つ以上の過程で製剤を乱用する:
(a)当該製剤から酸および/またはアルコールにより大量の有効成分を抽出して溶液とし、それを静脈内に注射する。このことは、市販品として最も入手可能な製剤により、比較的容易に実施可能であり、それが彼らを危険にさらし、または“乱用可能”とする;
(b)加熱(次いで、喫煙);
(c)錠剤の破砕(次いで、鼻吸入);および/または
(d)パッチの場合にはお茶とする(次いで、飲用する)。
【0011】
従って、有効成分(例えば、オピオイド鎮痛剤)の徐放性放出を介して、例えば、激しい痛みを処置し得る一方で、同時に薬用量急速移動および/または耽溺者による乱用の可能性を最少とし得る有効な製剤について、明らかに満たされていない臨床上の必要性が存在する。
【0012】
これまでに示唆されているこの問題の解決法の一つは、活性物質をポリマーマトリックスに取り込むこと(参照例:米国特許出願US2003/0118641およびUS2005/0163856)であり、これによって活性物質の緩徐放出が可能となる。しかし、この解決法は、薬物乱用者がポリマーマトリックスから、溶媒と同時混合することにより(経口摂取する前に、または該溶媒をポリマーマトリックス/活性物質と共に同時に摂取してもよい)、またはポリマーマトリックスを破砕することにより、活性物質を放出させることができよう。
【0013】
セラミックはそれらが体液の侵食作用に耐えるに十分な耐久性と安定性を有するという事実に鑑みて、医薬業界では次第に有用となりつつある。
【0014】
例えば、外科医はヒトの臀部、膝、その他の身体部分の修復および置換にバイオセラミック物質を使用する。セラミックはまた罹患した心臓弁の取替えにも使用されつつある。人体においてインプラントとして、または金属置換体へのコーティングとして使用される場合、セラミック物質は骨の成長を刺激し、組織形成を促進し、また免疫からの防御を提供することができる。歯科の応用とは、歯の代替インプラントおよび装具のためのセラミックの使用を含む。
【0015】
セラミックは制御放出医薬製剤の充填剤または担体として潜在的な用途をもつことが知られている。参照例:EP947 489A;US5,318,779;WO2008/118096;Lasserre and Bajpai, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 15, 1(1998); Byme and Deasy, Journal of Microencapsulation, 22, 423 (2005) and Levis and Deasy, Int. J. Pharm., 253, 145 (2003)。
【0016】
取り分け、文献;Rimoli et al, J. Biomed. Mater. Res., 87A, 156 (2008); 米国特許出願US2006/0165787;および国際特許出願WO2006/096544、WO2006/017336およびWO2008/142572;はすべて有効成分の制御放出のための種々のセラミック物質について開示しており、後者2つの文献はその全部または一部がオピオイド鎮痛剤を目的としており、薬物乱用に対しての抵抗性がセラミック構造の機械的強度により付与されている。
【0017】
これらの文献で採用されている方法は、典型的には、予め形成された多孔性セラミック(例えば、多孔性ハロイサイト、カオリン、酸化チタニウム、酸化ジルコニウム、酸化スカンジウム、酸化セリウムおよび酸化イットリウムなどを含んでなる)中に有効成分を取り込ませることからなる。これに関連して、有効成分の負荷は、典型的には、ソーキング、押出し−球状化および/または低温ペレット化などからなる。薬物を予め形成された多孔性セラミック構造中に注入することは難しいことが知られている。事実、オピオイドの場合、かかる有効成分の取り込み方法論では、予め形成された細孔への有効成分の注入が実施困難であるなら、長時間に渡る有効な治療疼痛管理を行うための適切な投与量を提供するために、十分な有効成分を充填し得ないと考えられる。
【0018】
WO2008/142572では、化学結合したセラミック、例えば、アルミン酸カルシウムまたは珪酸カルシウムなどを用いるセラミック担体の形成に際して、薬物を取り込ませる。この方法は典型的な予め形成されたセラミック物質の場合よりも、より多くの薬物を取り込み得るが、WO2008/142572に記載されたセラミック構造の機械的強度と化学的安定性が、比較的に言えば、取り分け酸性条件下で限定される。
【0019】
さらに、上記の文献に記載されている製剤は、例えば、疎水性ポリマーをさらに含み得るが、採用される方法はセラミック構造体を有効成分と組合わせる前または後に(適切な仕方で)、かかる物質で多孔性セラミック物質を事前処理または事後処理することからなり、有効成分が該セラミックの多孔性マトリックスに含有される。
【発明の概要】
【0020】
本発明によると、固体の連続多孔性ネットワークを含んでなる徐放性医薬組成物が提供され、該ネットワークが、
(a)高い機械的強度をもつ(好適には無機の)添加物;および
(b)細孔、すなわちネットワーク中の当該添加剤領域間の空隙であって、その細孔に有効成分と薄膜形成剤の混合物を散在させたものであり、有効成分と薄膜形成剤の当該混合物を含有する当該細孔が該組成物の製造の際に形成されることを特徴とする細孔;
から構成される。かかる特徴を有してなる組成物は、以下、一括して“本発明組成物”という。
【0021】
用語“徐放性”とは、用語“制御放出”との同義語として本明細書では使用し、薬物の“持続性”、“延長性”および/または“延引性”放出を提供する、および/または適用しようとする組成物を含むと、当業者は理解しよう(その場合、薬物は十分な遅延速度で放出され、必要な時間全般で治療応答を生じる)。
【0022】
我々は、有益なこととして、本発明組成物が長時間に渡り実質的に均一であるか、および/または略一定である有効成分の放出を備えていることを見出した。一実施態様において、略一定速度の放出が約6時間ないし2日の投与間隔で変動し得る。一定の放出とは、さらに、組成物が体液中に、投与間隔間の平均値から約20%を超えて逸脱しない(例えば、約10%)定常状態の濃度を維持し得るものと定義し得る。放出速度は、本発明組成物の当初の経口投与と身体からの担体物質の排出との間(約5時間ないし約24時間(約15時間など)など)に必要な経過時間に略相当する長時間に渡って維持され得る。
【0023】
本発明組成物にて採用され得る有効成分は、好ましくは、種々の薬理学的分類の物質、例えば、抗菌剤、抗ヒスタミン剤と充血除去剤、抗炎症剤、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤、局所麻酔剤、抗かび剤、抗アメーバ剤または抗トリコモナス剤、鎮痛剤、抗不安剤、抗凝血剤、抗関節炎剤、喘息用剤、抗凝固剤、抗痙攣剤、抑うつ剤、糖尿病用剤、緑内障用剤、抗マラリア剤、抗微生物剤、抗腫瘍剤、抗肥満薬、抗精神病薬、降圧剤、自己免疫疾患用剤、勃起不全用薬、抗パーキンソン薬、抗アルツハイマー薬、解熱剤、抗コリン作用性薬、抗潰瘍剤、血糖低下剤、気管支拡張剤、中枢神経系用剤、心臓血管系用薬、認知増強剤、避妊薬、コレステロール低下剤、異常脂肪血症に作用する薬、細胞増殖抑制剤、利尿剤、殺菌剤、H2遮断薬、プロトンポンプ阻害薬、ホルモン剤、抗ホルモン剤、睡眠薬、変力薬、筋弛緩薬、筋収縮薬、精神賦活薬、鎮静薬、交感神経興奮薬、血管拡張剤、血管収縮剤、精神安定剤、電解質サプリメント、ビタミン類、尿酸尿症用剤、心臓グリコシド、膜流出阻害剤、膜輸送タンパク質阻害剤、去痰薬、下剤、造影剤、放射線医薬品、画像化剤、ペプチド類、酵素類、増殖因子、ワクチン、無機微量要素などを包含する。
【0024】
本発明組成物にて採用され得る有効成分は、好ましくは、潜在的に乱用される可能性のある、例えば、急性または慢性の疼痛、注意欠陥多動障害(ADHD)、不安および睡眠障害などの処置に有用な成分、並びに成長ホルモン(例えば、エリスロポイエチン)、蛋白同化ステロイドなどを包含する。潜在的に乱用され得る物質の完全リストは当業者が用意に見出し得る;例えば、以下のウエブリンクに掲載された有効成分を参照:www.deadiversion.usdoj.gov/schedules/alpha/alphabetical.htm。
【0025】
具体的に言及し得る非オピオイド薬物は精神刺激薬、例えば、モダフィニル、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、メタアンフェタミンおよびヒドロキシアンフェタミンであり、より好ましくは、メチルフェニデート;ベンゾジアゼピン類、例えば、ブロマゼパム、カマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロチアゼパム、クロキサゼパム、デロラゼパム、エスタゾラム、フルジアゼパム、フルラゼパム、ハラゼパム、ハロキサゼパム、ケタゾラム、ロルメタゼパム、メダゼパム、ニメタゼパム、ノルジアゼパム、オキサゾラム、ピナゼパム、プラゼパム、テマゼパム、テトラゼパム、およびより好ましくは、アルプラゾラム、クロナゼパム、ジアゼパム、フルニトラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパムおよびトリアゾラム;およびその他の非ベンゾジアゼピン鎮静剤(例:短時間作用催眠薬)、例えば、ザレプロン、ゾルピデム、ゾピクロンおよびエスゾピクロンを包含する。
【0026】
本発明組成物は、錠剤の破砕が患者を危険にさらすか、または副作用および/または不快な味の危険を増大し得る医薬品製剤としての用途も見出し得る。換言すると、これらの有効成分は以下の事項の一つ以上の回避が望ましい場合の成分である:
i)嚥下する前に噛み砕く錠剤;
ii)胃腸環を通過する際の予期しない崩壊;
iii)錠剤製剤の制御放出機能を破壊し得る、例えば、アルコール飲料の同時摂取の結果としての医薬内容物の放出;および/または
iv)エキソビボ改ざん、すなわち、引き続く薬物乱用のための破砕(下記参照)、または引き続く嚥下を容易にするための破砕、その結果として製剤化した薬物の機能の破壊に至り得る。
【0027】
このような薬物は当業者周知のものであるが、例えば、以下のウエブリンクで見出し得る:http://www.ismp.org/Tools/DoNotCrush.pdf。かかる薬物は緩徐放出製剤が有益である多様な障害の処置に使用される薬物であり、例えば、心臓血管系疾患(高血圧、心不全)、糖尿病、喘息、CNS障害および泌尿生殖器障害の処置に採用される薬物、並びに抗生物質である。
【0028】
しかし、本発明組成物に採用し得る好適な医薬としての有効成分は、オピオイド鎮痛剤である。用語“オピオイド鎮痛剤”とは、天然産であろうと、合成品であろうと、オピオイドまたはモルヒネ様の性質もつ物質、および/または少なくとも部分的アゴニスト活性を有するオピオイド受容体、特に、μ−オピオイド受容体に結合し、それによって鎮痛作用を生じ得る物質を包含するものと、当業者は理解しよう。薬物耽溺者による潜在的な製剤の改ざんと薬物抽出の問題は、特にオピオイドで突出している。
【0029】
言及し得るオピオイド鎮痛剤は、アヘン誘導体およびオピエートであり、アヘン中の天然産フェナントレン(モルヒネ、コデイン、テバインおよびそのディールス−アルダー付加物など)およびアヘン化合物の半合成誘導体(ジアモルフィン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、ヒドロコドン、オキシコドン、エトルフィン、ニコモルフィン、ヒドロコデイン、ジヒドロコデイン、メトポン、ノルモルフィンおよびN−(2−フェニルエチル)ノルモルフィンなど)を包含する。言及し得る他のオピオイド鎮痛剤は、オピオイドまたはモルヒネ様の性質を有する完全合成化合物であり、モルフィナン誘導体(ラセモルファン、レボルファノール、デキストロメトルファン、レバロルファン、シクロファン、ブトルファノールおよびナルブフィンなど);ベンゾモルファン誘導体(シクラゾシン、ペンタゾシンおよびフェナゾシンなど);フェニルピペリジン類(ペチジン(メペリジン)、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、ケトベミドン、カルフェンタニル、アニレリジン、ピミノジン、エトヘプタジン、アルファプロジン、ベタプロジン、1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)、ジフェノキシレートおよびロペラミドなど)、フェニルヘプタミン類または“開鎖”化合物(メタドン、イソメタドン、プロポキシフェンおよび酢酸レボメタジル塩酸塩(LAAM)など);ジフェニルプロピルアミン誘導体(デキストロモラミド、ピリトラミド、ベジトラミドおよびデキストロプロポキシフェンなど)、混合アゴニスト/アンタゴニスト(ブプレノルフィン、ナロルフィンおよびオキシロルファンなど)およびその他のオピオイド類(チリジン、トラマドールおよびデゾシンなど)を包含する。さらに、言及し得るオピオイド鎮痛剤は、アリルプロジン、ベンジルモルフィン、クロニタゼン、デソモルフィン、ジアンプロミド、ジヒドロモルフィン、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアンブテン、酪酸ジオキサフェニル、ジピパノン、エプタゾシン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルフィン、エトニタゼン、ヒドロキシペチジン、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、メプタジノール、メタゾシン、マイロフィン、ナルセイン、ノルピパノン、パプブレタム、フェナドキソン、フェノモルファン、フェノペリジンおよびプロピラムを包含する。
【0030】
より好適なオピオイド鎮痛剤は、ブプレノルフィン、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニルおよび、特にフェンタニルである。
上記掲載の有効成分は特定の組合せで本発明組成物に製剤化し得る。
【0031】
有効成分は塩の形状で、または他のいずれかの適当な形状、例えば、複合体、溶媒和物もしくはそのプロドラッグ、またはいずれかの物理的形状、例えば、無定形状態で、結晶性もしくは一部結晶性物質として、共結晶として、または多形体で、または適切な場合には、エナンチオマー、ジアステレオマーもしくはラセミ体を含む立体異性体の形状で、または上記のいずれかの組合せでさらに使用し得る。
【0032】
言及し得る有効成分の薬学的に許容される塩とは、酸付加塩および塩基付加塩である。かかる塩は常套手段により、例えば、有効成分の遊離酸もしくは遊離塩基の形状と、1当量以上の適切な酸もしくは塩基とを、選択肢として溶媒中、または該塩が不溶である媒体中で反応させ、次いで標準的な技法(例えば、減圧下、凍結乾燥により、もしくは濾過により)を用いて当該溶媒もしくは当該媒体を除去することにより形成し得る。塩はまた塩の形状の有効成分の対イオンを別の対イオンと、例えば、適当なイオン交換樹脂を使用して交換することによっても調製し得る。
【0033】
薬学的に許容される付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸などの鉱酸から誘導される塩;酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、アリールスルホン酸などの有機酸から誘導される塩;およびナトリウム、マグネシウムなどの金属、または好ましくはカリウムおよびカルシウムから誘導される塩である。
【0034】
(好適な無機)添加剤は以下の方法により不活性であるように設計し得る:
(a)経口投与後、胃を通過する際に添加剤が保持するために必要な属性である酸抵抗性。これに関連して、本明細書に記載する添加剤は、水性酸性環境(pH値、約0.1ないし約4.0)にて、室温を超える温度(例えば、約50℃まで)で、化学的劣化または分解が有意差のない程度(例えば、1%未満)を示す;
(b)通常の貯蔵条件下での一般的物理化学的安定性:約−80℃と約+50℃の間の温度(好ましくは、約0℃と約40℃の間の温度、より好ましくは、室温、例えば、約15℃ないし30℃);約0.1ないし約2バールの圧力(好ましくは、大気圧);約5%ないし約95%の相対湿度(好ましくは、約10%ないし約75%);および/または長期間(すなわち、6ヶ月間またはそれを超える期間)の約460ルックスのUV/可視光に露光。かかる条件下に本発明の添加剤は、上記のように、化学的劣化/分解が約5%未満、例えば、約1%未満であることを知り得る;
(c)取り分け重要なのは、採用される有効成分がオピオイド鎮痛剤である場合の、酸性、アルカリ性および/またはアルコール性(例えば、エタノール性)条件下、室温および/または上昇温度(例えば、約100℃までの温度)での一般的物理化学的安定性である;分解は約15%未満となり、薬物乱用を意図する薬物の意図的エクスビボ抽出の可能性は回避される(酸もしくはアルコール抽出し、次いで、注射するか、または本発明組成物を加熱し、次いで発生する蒸気もしくは煙をオピオイド耽溺者が吸入する);および
(d)再び、取り分け重要なのは、採用される有効成分がオピオイド鎮痛剤である場合の一般的物理的安定性であり、例えば、高い機械的衝撃強度を有し、従って、上記(c)で規定したような有効成分を抽出する目的で機械的に磨砕もしくは粉砕することの可能性、あるいはオピオイド耽溺者が得られる粉末を直接吸入することの可能性を低下させる。
【0035】
上記(d)に関しては、これに関連して該添加剤が、ミクロ−およびナノ−構造レベルで約10MPaを超える、例えば、50MPa(好ましくは、約100MPaを超え、例えば、約400MPa)を超える圧縮力を示すことが好ましく、この値はミクロ構造レベル、すなわち、約200μm未満で該物質の崩壊に耐えるに十分な高さである。
【0036】
これに関連して、“高い機械的強度”の(好ましくは、無機の)添加剤により、その添加剤の構造が、当業者既知の常套の機械強度試験法(例えば、いわゆる“圧縮試験”または“二分圧縮試験”;インストロン(Instron)が製造するような適当な装置(“インストロンテスト”:標品を圧縮し、様々な負荷での変形を記録し、圧縮ストレスとひずみを計算し、ストレス−ひずみ線図としてプロットし、それを弾性限度、比例限度、降伏点、降伏強度および(一部の物質についての)圧縮強度の決定に使用)を使用する試験)を用いて、約1kg−力/cmの力(9ニュートン/cm)、例えば、約5kg−力/cm(45ニュートン/cm)、例えば、約7.5kg−力/cm、例えば、約10.0kg−力/cm、好ましくは、約15kg−力/cm、より好ましくは約20kg−力/cm、例えば、約50kg−力/cm、取り分け約100kg−力/cmもしくはさらに約125kg−力/cm(1125ニュートン/cm)を加えて、その総合的基準(例えば、形状、サイズ、多孔性など)を維持することも我々は範疇に入れる。該添加剤の構造が微粒子からなる場合、該粒子(一次粒子または二次粒子を問わず)の少なくとも約40%(例えば、少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約75%、そしてより好ましくは約90%)はこれらの条件下でそれらの基準を維持する。
【0037】
機械的強度の高い添加剤は好ましくは無機物であるが、不活性のポリマー物質、ポリアクリル酸エステルまたはその共重合体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ポリビニル、ポリカーボネート、ポリスチレンなどを含んでいてもよい。
好ましくは、機械的強度の高い添加剤は1種以上のセラミック物質に基づく。
【0038】
用語“セラミック”とは、金属元素および非金属元素、時には、ある形状の硬化工程(しばしば加熱作用を含む)により形成されるか、および/または加工可能である酸化物、窒化物および炭化物との間に形成される化合物を包含すると理解されよう。この観点で、粘土物質、セメントおよびガラスがセラミックの定義に包含される(Callister, “Material Science and Engineering, An Introduction” John Wiley & Sons, 7th edition (2007))。
【0039】
採用されるセラミック物質はアルミン酸塩、例えば、アルミン酸カルシウム、またはより好ましくは珪酸塩、例えば、珪酸アルミニウム(アルミノシリケート)に基づくものであることが好ましい。しかし、それは元素である珪素、アルミニウム、炭素、ホウ素、チタン、ジルコニウム、タンタル、スカンジウム、セリウム、イットリウムまたはその組合せのいずれかの酸化物および/または複酸化物、および/または窒化物および/または炭化物であってもよい。
【0040】
好適な物質は珪酸アルミニウムおよび/または珪酸アルミニウム水和物(結晶性または無定形)である。限定するものではない例示としては、カオリン、ディッカイト、ハロイサイト、ナクライト、ゼオライト、イライトまたはその組合せ、好ましくはハロイサイトを包含する。セラミック物質(例えば、珪酸アルミニウム)の粒子径は、体積平均様式(例えば、マルバーン・マスタサイズ)によるレーザ回折により測定した場合、約500μm以下、好ましくは約100μm以下、取り分け約20μm以下である。該粒子は如何なる形状でもよい(例えば、球状、丸形、針状、板状など)。
【0041】
セラミックは化学的に結合したセラミックからなり得る(非水和、部分水和もしくは完全水和セラミック、またはその組合せ)。好適な化学的組成物は化学的に結合したセラミックに基づくものであり、水和に際して規定量の水を消費する。利用し得る好適なシステムはアルミン酸塩と珪酸塩に基づくものであり、その両方が大量の水を消費する。結晶状態または無定形状態におけるCA2、CA、CA3およびC12A7、およびC2SおよびC3Sなどの相(C=CaO、A=Al、S=SiO;一般的なセメント命名法に従う)を使用し得るが、これらは容易に入手し得る。アルミン酸カルシウムおよび/または珪酸カルシウム相は分離相として、または相混合物として使用し得る。上記の相はすべて非水和形であり、水和されたときに担体物質における結合相(セメント)として作用する。
【0042】
セラミック前駆体粉末粒子の粒径は、約100μm以下、好ましくは約1μmないし約20μmである。これは水和を増強するためである。かかる前駆体物質は水和に際して、ナノサイズの微小構造に変換され得る。この反応は前駆体物質を溶解させることと、水(溶液)中のナノサイズ水和物を残りの非水和前駆体物質上に、繰り返し続いて沈積させることからなる。この反応は、好ましくは、すべての前駆体物質が変換されるまで、および/または選択された時間と温度、並びに液体および/または湿気中のHOを用いる部分水和により決定される多孔度となるまで続く。
【0043】
別法として、機械的強度の高い無機添加剤は、1種以上のジオポリマー物質に基づき得る。
用語“ジオポリマー”とは、合成または天然のアルミノ珪酸塩物質の分類から選択される物質を含むか、または意味することを当業者は理解するであろう;この物質はアルミノ珪酸塩前駆体物質(好ましくは粉末の形状)と水性アルカリ性液体(例えば、溶液)とを、好ましくはシリカ源の存在下に反応させることにより形成し得る。
【0044】
用語“シリカ源”とは、珪酸塩を含むSiOなどの酸化ケイ素の形状を含むものと理解されよう。当業者はシリカが数種の形状で製造され得るものであり、ガラス、クリスタル、ゲル、エーロゲル、くん蒸シリカ(またはパイロジェンシリカ)およびコロイドシリカ(例えば、エーロジル)を包含するものと認識しよう。
【0045】
適当なアルミノ珪酸塩前駆体物質は、典型的には(必須ではない)自然界において結晶性であり、カオリン、ディッカイト、ハロイサイト、ナクライト、ゼオライト、イライト;好ましくはデヒドロキシル化ゼオライト、ハロイサイトまたはカオリン;より好ましくはメタカオリン(すなわち、デヒドロキシル化カオリン)を包含する。デヒドロキシル化(例えば、カオリンの)は、好ましくはヒドロキシル化されたアルミノ珪酸塩を400℃以上の温度で苛焼(すなわち加熱)することにより実施する。例えば、メタカオリンは文献(Stevenson and Sagoe-Crentsil, J. Mater. Sci., 40, 2023 (2005) および Zoulgami et al., Eur. Phys J. AP, 19, 173 (2002))記載どおりに、および/または後記の通りに調製し得る。デヒドロキシル化されたアルミノ珪酸塩はまた、シリカ起源と、アルミナ(例えば、Al)起源を含む蒸気との縮合により製造し得る。
【0046】
粉末の形状で提供される場合には、アルミノ珪酸塩前駆体粒子の粒径は、約500μm以下、好ましくは約100μm以下、より好ましくは約30μm以下である。
【0047】
ジオポリマー物質の形成において、かかる前駆体物質はアルカリ性水溶液、例えば、pH値が少なくとも約12、例えば、少なくとも約13のpH値をもつ水溶液中に溶解し得る。水酸化イオンの適当な起源は水酸化アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属(例えば、Ba、Mgもしくはより好ましくは、Ca、取り分け、NaもしくはK、またはその組合せ)などの強力な無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム)である。水に対する金属カチオンのモル比は、約1:100ないし約10:1の間、好ましくは約1:20ないし約1:2の間で変わり得る。
【0048】
シリカの起源(例えば、SiOなどの珪酸塩)は、好ましくは幾つかの手段により反応混合物に加える。例えば、水性アルカリ性液はSiOを含んでなり、しばしば水ガラスと言われるもの、すなわち、珪酸ナトリウム溶液を形成し得る。かかる例示において、液中の水に対するSiO量は、好ましくは約2:1まで、より好ましくは約1:1まで、最も好ましくは約1:2までである。該水性液は選択肢としてアルミン酸ナトリウムを含有し得る。
【0049】
珪酸塩(および/またはアルミナ)は、あるいは任意に粉末化したアルミノ珪酸塩前駆体物質、好ましくはくん蒸シリカ(マイクロシリカ;エーロジル(登録商標)シリカ)に添加してもよい。添加し得る量は、好ましくはアルミノ珪酸塩前駆体の約30重量%まで、より好ましくは約5重量%までである。
【0050】
中間のアルカリ性混合物中遊離水酸化イオンの存在は、溶解すべき起源物質からのアルミニウム原子と珪素原子をもたらす。ジオポリマー物質は次いで得られる混合物を固化(硬化または硬質化)させることにより形成させ得るが、この工程の際に、起源物質からのアルミニウム原子と珪素原子が再配向されて、高硬度の(そして少なくとも大部分が)無定形のジオポリマー物質を形成する。硬化は室温で、上昇温度で、または低下温度で、例えば、外気温度付近もしくはそれ以上(例えば、約40℃などの約20℃から約90℃の間の温度)で実施し得る。硬化反応はいずれもの大気圧、湿度または圧力下(例えば、真空その他)でも実施し得る。得られる無機ポリマーネットワークは一般に高度配位三次元アルミノ珪酸塩ゲルであり、四面体Al3+部位上に、アルカリ金属カチオンにより電荷均衡する負電荷をもつ。
【0051】
これに関連して、機械的強度の高いジオポリマーに基づく添加剤は、アルミノ珪酸塩前駆体を含んでなる粉末と、水、前記の水酸化イオン源およびシリカ源(例えば、珪酸塩)を含んでなる水性液体(例えば、溶液)とを混合して形成させ、ペーストを形成し得る。該液体と粉末の比は、好ましくは約0.2ないし約20(重量/重量)、より好ましくは約0.3ないし約10(重量/重量)である。珪酸カルシウムとアルミン酸カルシウムをアルミノ珪酸塩前駆体成分に加えてもよい。
【0052】
本発明によると、本発明組成物ネットワークの細孔は、その内部に有効成分と薄膜形成剤の混合物が分散されており、該組成物の製造に際して形成され、従って、本質的には“二次細孔”である。これに関連して、機械的強度の高い(好ましくは無機の)添加剤の一次粒子はそれ自体で多孔性であり得るが(従って、“一次”細孔を含んでなる)、そのネットワークは本質的にその添加剤からなるより大きな二次粒子の形成の間に形成される本質的に二次の細孔(または空隙)を含んでなる。
【0053】
かかる二次細孔は、例えば、セラミックなどの(好ましくは無機の)添加剤の一次粒子表面間の化学的相互作用(例えば、“結合”)により形成され得るものであり、例えば、それらの表面で物理的および/または化学的変換(部分的溶解など)を惹起する1種以上の化学試薬に接触させることで、またさらにそれらの表面が共に物理的および/または化学的に結合して(表面それ自体が、乾燥、硬化などのある種の他の物理化学的過程の結果として生じ得る)生じ、当該細孔/空隙を生成する。かかる化学的試薬は、本発明組成物の調製に際して、有効成分および/または薄膜形成剤と混合し得る。しかし、かかる二次的細孔は必ずしもこの方法で形成されるものではなく、添加剤の一次粒子同士の結合が物理的および/または機械的なものであり得るし、または本明細書に先に記載したように、有効成分と薄膜形成剤の存在下、三次元の化学的に結合したセラミックネットワークの製造に際して形成され得る。
【0054】
このように、提供される徐放性医薬組成物は、高い機械的強度をもつ(好ましくは無機の)添加剤の粒子(該粒子は互いに結合して二次細孔もしくは空隙を形成する)および有効成分と薄膜形成剤の、好ましくは予め形成された、好ましくは均一な(後で定義するように)混合物(該混合物は当該空隙内に散在する)を含んでなる固体の連続三次元ネットワークから構成される。
【0055】
有効成分と薄膜形成剤の混合物は、高い機械的強度をもつ(好ましくは無機の)添加剤粒子(どのようなサイズでもよい)間に散在し、従って、外部表面に、また多分、本質的ではないが、かかる粒子の内部に位置している。
【0056】
しかし、該添加剤の二次粒子はその添加剤から本質的に構成され得る。該添加剤から“本質的に構成される”とは、当該粒子が重量で当該添加剤の約55%などの少なくとも約40%、例えば、約75%、取り分け約95%含んでなることを我々は意味する。さらに我々は、有効成分と薄膜形成剤の混合物の重量で約55%などの少なくとも約40%が、例えば、約75%、取り分け約80%、例えば、少なくとも約95%(例えば、約98%)などの約90%が、該ネットワークの本質的な特徴である(二次)細孔内に位置している。
【0057】
我々は有利なこととして、請求項に記載した方法で本発明組成物を提供することが、本明細書にすでに記載した制御放出の性質を付与し得ることを見出した。薄膜形成剤の成分は、さらに有利なことに、本発明組成物の機械的強度をも上昇させ得る。これらの特徴の両方が、有効成分がオピオイド鎮痛剤を含んでいる場合に、用量ダンピングと有効成分のエクソビボ抽出による潜在的な薬物乱用の防止につながる利点を提供する。
【0058】
有効成分と薄膜形成剤の混合は、添加剤中に散在させる前に、またはその最中に、実施されるが、その際、それら成分の大部分(すなわち、約75%を超えるなど、約50%を超える)が本質的に同時に(別個にではなく)添加剤に加えられ、またその際に、上記定義の成分が実質的に均一の混和/相互混合があるようにする。最も好ましくは、薄膜形成剤全体に実質的に均一に(すなわち、±約40%、好ましくは±約30%、より好ましくは±約20%、特に±約10%などのせいぜい±約50%変動)有効成分が含有されるようにし、および/または実質的に高い濃度の有効成分が存在して均一な分布をもたらす場合、薄膜形成剤内の特定の位置に局在しないようにすることである。
【0059】
本明細書にて使用する場合、“薄膜形成剤”という用語は、別の物質(粒状体であってもよい)の上に(またはその内部に)薄膜を形成し得るか、または塗布し得る物質についていう。
【0060】
薄膜形成剤は、徐放性、緩徐放出または、好ましくは腸溶放出コーティング(すなわち、腸溶コーティング物質)を提供し得る物質である。腸溶コーティングを提供し得る物質は、従って、かかる製剤が小腸に到達するまで、有効成分の放出を防止または最少とするための障壁として経口医薬製剤にて使用し得る物質である。
【0061】
これに関連して、薄膜形成剤はポリマーであることが好ましい。薄膜形成剤として採用し得るポリマーの例は、限定されるものではないが、以下のとおりである:アルキルセルロースポリマー(例えば、エチルセルロースポリマー)、およびアクリル系ポリマー(例えば、アクリル酸およびメタアクリル酸共重合体、メタアクリル酸共重合体、メタアクリル酸メチル共重合体、メタアクリル酸エトキシエチル、メタアクリル酸シアノエチル、メタアクリル酸メチル、共重合体、メタアクリル酸共重合体、メタアクリル酸メチル共重合体、メタアクリル酸メチル共重合体、メタアクリル酸エステル共重合体、メタアクリル酸共重合体、メタアクリル酸アミノアルキル共重合体、メタアクリル酸共重合体、メタアクリル酸メチル共重合体、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタアクリル酸)、メタアクリル酸アルキルアミド共重合体、ポリ(メタアクリル酸メチル)、ポリ(メタアクリル酸)(無水物)、メタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エステル、メタアクリル酸メチル共重合体、ポリ(メタアクリル酸メチル)、ポリ(メタアクリル酸メチル)共重合体、ポリアクリルアミド、メタアクリル酸アミノアルキル共重合体、ポリ(メタアクリル酸無水物)、およびメタアクリル酸グリシジル共重合体)。該ポリマーはポリマーの混合物であってもよい。一般に、該ポリマーの分子量(重量平均および/または数平均)は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した場合、1,000ないし10,000,000、10,000ないし1,000,000、好ましくは50,000ないし500,000g/モルである。
【0062】
好適なポリマーは、上記のアルキルセルロースポリマーおよびアクリル系ポリマーである。
好ましくは、薄膜形成剤はアニオン特性を示すか、および/または弱酸性(例えば、pH7未満、好ましくは5未満を有する)であるポリマーを含んでなる。
【0063】
最も好適なポリマーは商品名コリコート(Kollicoat; 登録商標)として市販されているポリマーである。コリコート(Kollicoat; 登録商標)はメタアクリル酸とアクリル酸エチルから由来する共重合体を含んでなる。コリコート(Kollicoat; 登録商標)MAE30DP(BASF)はメタアクリル酸/アクリル酸エチル(1:1)の共重合体であり、水性分散液または粉末として入手し得る。言及し得るその他のポリマーは商品名オイドラギット(Eudragit; 登録商標)であり、このものは酸性基または塩基性基をもつ中性のメタアクリル酸ポリマーである。
【0064】
本発明組成物はまたペレット化補助物質を含み得る。ペレット化補助物質は、ペレット化に際し、湿潤粉末塊を介して造粒液の分布を制御し、混合物中のレオロジー性を修飾し得る物質と定義される。適当なペレット化補助物質は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)および好ましくは、微結晶セルロースである。ペレット化補助物質は、それが存在する場合、錠剤製剤の総重量に基づく重量で、0.5ないし50%の量で好ましくは採用される。好適な範囲は、重量で約2.0%ないし約12%(例えば、約10%)など、1%ないし20%である。
【0065】
本発明組成物は様々な常套の技法に従って、当業者既知の標準的装置を用いて調製し得るが、その技法は、有効成分、薄膜形成剤および高い機械強度の(好ましくは無機の)添加剤を共に混合することからなる。
【0066】
標準的混合装置は、本発明組成物の成分を共に混合するために使用し得る。混合時間は使用する装置により変わると思われ、当業者は通常の実験により、所定の成分の組合せについて適当な混合時間を決定するのは難しくないであろう。
【0067】
有効成分と薄膜形成剤(または薄膜形成剤を散在させた有効成分)は、様々な技法によって、例えば、溶液、スラリー、ペーストもしくはパテとして、ゾル−ゲル過程を経て導入するなど、添加剤(例えば、セラミック)と混合し得る。有効成分と薄膜形成剤とからなる混合物の添加剤への導入に続き、ある種の“硬化”に付して、本発明組成物の本質的な特徴である細孔を形成させ、そしてそこに有効成分と薄膜形成剤の混合物が存在する。この工程の間に、添加剤からなる多孔性ネットワークが形成され得る。
【0068】
本発明組成物形成のための好適な方法は、高い機械強度の無機添加剤(例えば、セラミック物質)と有効成分とを共に混合し、次いで、薄膜形成剤を水性溶媒(例えば、水)などの液体と共に、または液体中の薄膜形成剤として加え湿潤粒状物とすることからなる。
【0069】
湿潤造粒法は当業者周知であり、造粒液(水などの揮発性の不活性溶媒からなる液体)を用いて乾燥一次粉末粒子の混合物を、選択肢としてペレット化補助物質の存在下に、集結させることからなる方法を含む。
【0070】
上記方法により得られる生産物は、さらにすべての事例において常套の技法を用いて、以下により改造し得る:
(I)造粒物の押出し(造粒を実施する場合);
(II)球状化(湿潤塊をふるいに強制的に通してペレットとする);
(III)乾燥;および/または
(IV)(要すれば)加熱を経て固化。
【0071】
ジオポリマーを含んでなる本発明組成物の形成方法において、予め形成されたジオポリマーはさらにアルミノ珪酸塩前駆体および水性アルカリ性液(例えば、溶液)と、好ましくはシリカ源(本明細書にすでに記載)の存在下、また本明細書にすでに記載したように有効成分と薄膜形成剤(または薄膜形成剤を散在させた有効成分)の存在下に反応させ得る。ジオポリマーを含んでなる本発明組成物の場合、硬化は得られる混合物を所定の形状、例えば、ブロック、ペレット、顆粒または粉末に硬化させることにより実施し得る。これに関連して、該混合物は型に移し、ペレット/顆粒に設定するか、または別法として(例えば、好ましくは)ペレット/顆粒は適切な押出し−球状化技法により製造し得る。ここで、形成されたペースト(粉末と液体の混合物)は開口部を経て押出し得る。開口部のサイズは約10μmから約30mmまで、好ましくは約100μmから約1mmまでである。形成された押出し物は次いで球状化機(典型的には縦型中空シリンダーであり、内部に水平回転盤を備える)に容れる。盤を回転させると、押出し物は均一の長さに破断され、次第に球状のペレットが形成される;これを本明細書にすでに記載したように放置硬化させる。
【0072】
上記の方法において、薄膜形成剤は、好ましくは水性分散液として添加する。さらに、成分(例えば、オピオイド鎮痛剤)の一次粒子は顆粒化の前に、磨砕、乾燥製粉、湿潤製粉、沈降などの技法により処理加工し得る。
【0073】
すべての事例において、適当なペレット/顆粒のサイズは約0.05mmから約3.0mmの範囲(例えば、約1.7mmなど、約2.0mm)、好ましくは約1.0mmなど約0.1mm(例えば、約0.2mm)ないし約1.6mmである。
【0074】
本発明組成物は、さらに1種以上のさらなる一般的に使用される医薬添加剤を含有し得る。適当な添加剤は、典型的には、投薬に際しての有効成分の担体として使用される不活性物質である。適当な添加剤はまた、非常に効力の強い有効成分を使用する医薬組成物において、簡便かつ正確な投与を可能とするために嵩高くするための薬学技術分野で採用される添加剤である。あるいは、添加剤は、関係する有効成分を取り扱い易くするために本発明組成物の製造過程でも使用され得る。
【0075】
これに関連して、薬学的に許容される添加剤は増量剤粒子であり、それによって本発明組成物を形成する過程において化学的に関わりを持たない粒子を我々は選択する。かかる増量剤粒子はバラストとして加えてもよいし、および/または機能性をもつ組成物を提供してもよい。限定するものではないが、例としては放射線不透過性を上げるための二酸化ジルコニウムおよび硫酸バリウムであり、これらはより小さな粒子(例えば、粉砕した)として本発明組成物(有効成分を含む)に加えるとよい。充填剤粒子の添加量は高機械強度の(好ましくは無機の)添加剤の重量の約80%まで、好ましくは約40%までとするのがよい。
【0076】
本発明組成物はさらに以下の粒子を含み得る:
(i)不活性増量剤、例えば、本明細書にすでに記載したもの;
(ii)有効成分が予め負荷されている添加剤(多孔性セラミック物質またはジオポリマーなど)(例えば、徐放性用);および/または
(iii)関連する添加剤を含んでなるより大きなネットワークの一部として共に結合させた本発明組成物(すなわち、より小さな粒子)。
【0077】
本発明組成物は、別法として、微粉末に粉砕し、好ましくは粉末粒径を約100μm以下、より好ましくは約20μm以下とする。粉砕は、選択肢として、ボールミル、プラネタリーボールミル、ジェットミルまたはその組合せにより実施する。
【0078】
本発明組成物は、選択肢として、レオロジーと多孔性を制御するために、充填剤、ポロゲン(porogen)、分散剤またはゲル化剤を含んでいてもよい。かかる添加剤の総量は、本発明組成物の全重量の約20重量%までに限定される。かかる添加剤の例としては、限定するものではないが、ポリカルボン酸、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ポリアクリル酸、PEG、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、薬学的に許容される油(植物油(オリーブ油、トウキビ油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、ヒマワリ油、亜麻仁油、ヤシ油、ひまし油、大豆油など)、精油(例えば、マツヨイグサ油)、オメガ3油(例えば、魚油)、パラフィン油、動物組織由来の脂肪油、シリコーン油など)、およびその組合せである。
【0079】
さらなる薬学的に許容される添加剤は、炭水化物および無機塩、例えば、塩化ナトリウム、リン酸カルシウムおよび炭酸カルシウムである。
【0080】
本発明組成物は、好ましくは、胃腸管に経口投与し、胃および/または腸の系において有効成分が制御放出されるように提供される。
【0081】
これに関連して、本発明組成物は標準的な技法(参照例:Lachman et al, “The Theory and Practice of Industrial Pharmacy(工業薬剤学の理論と実践)”, Lea & Febiger, 3rd edition (1986) および “Remington: The Science and Practice of Phamacy(薬剤学の科学と実践)” Gennaro (ed.), Pheladelphia College of Pharmacy & Science, 19th edition (1995))に従って、経口投与を企図する様々な医薬製剤に取り込ませることができる。
【0082】
本発明組成物を含有してなる医薬製剤は、薬理学的に有効な量の有効成分を含有する。“薬理学的に有効な量”とは、処置する患者に所望の治療効果を与え得る有効成分の量をいい、単独投与であっても、別の有効成分との組合せ投与であってもよい。かかる有効性は客観的(すなわち、ある種のテストまたはマーカーによって測定可能)であっても、主観的(すなわち、被験対象者が効果の徴候を示すか、または感じる)であってもよい。
【0083】
より好適な本発明組成物は、投与間隔を超えて薬物の十分な用量を(単位時間当たりの投与回数に関係なく)提供し、所望の治療効果を生じるように改造してもよい(例えば、本明細書に記載したように)。
【0084】
本発明組成物において採用し得る有効成分の量は、従って、個々の患者にとって何が最も適当であるかと関連させて、医師または当業者が決定し得るものである。この用量は、投与経路、処置すべき症状のタイプと重篤度、並びに処置すべき特定患者の年令、体重、性別、腎機能、肝機能および応答により変わり得ると思われる。
1回の経口送達単位(例えば、錠剤1個)の有効成分の適当な用量は、1g以下、好ましくは、100mg以下、1μg以上である。
【0085】
本発明組成物がオピオイド鎮痛剤を含んでいる場合、かかるオピオイド鎮痛性化合物の適切な薬理学的有効量は、経口投与した場合に(例えば、持続性の)疼痛寛解を生じ得る量である。従って、本発明組成物にて採用され得るオピオイド鎮痛性有効成分の総量は、採用される関連の有効成分の性質に左右されるが、組成物総重量に基づき、重量で約0.1%(例えば、約2%など、約1%)など、約0.0005%から、約10%、例えば、約7%など約20%までの範囲でよい。この有効成分の量は単位投与形態中の量としても表し得る。かかる事例において、存在し得るオピオイド鎮痛性有効成分の量は、約1μg(例えば、約5μg)ないし約50mg(例えば、約10mgなど、約15mg)の範囲で、単位投与形状当たりの1回用量を提供するために十分である。
【0086】
上記の投与量は平均的事例の典型である;勿論、より高い用量範囲、またはより低い用量範囲が有益である場合の個々の例もあるが、それらも本発明の範囲内である。
【0087】
オピオイド鎮痛剤を含んでなる本発明組成物は、疼痛の処置、取り分け深刻な、および/または慢性疼痛の処置に有用である。本発明のさらなる側面によると、疼痛の処置方法であって、かかる症状に罹患もしくは罹患する可能性のあるヒトに本発明組成物を投与することからなる方法が提供される。
疑いを避けるために、ここで“処置”とは、治療処置、並びに症候処置、症状の予防または診断を含む。
【0088】
本発明組成物は、インビボ(すなわち、本発明組成物を患者に投与する場合)またはエクスビボ(すなわち、体外で別の媒体中に)で、有害な薬理学的作用(例えば、かかる放出が強制的な意味でインビボで起こる場合)などの不所望の結果、またはその有効成分の乱用の可能性(例えば、かかる放出が個々人によりエクスビボで故意に実施される場合)を招来すると思われる時間枠内で、本発明組成物内に当初存在する有効成分の用量の大部分(例えば、約60%など、約50%超え、例えば、約70%、取り分け約80%)の用量ダンピング(すなわち、強制的放出)または同様に重要なこととして意図的なエクスビボ抽出のリスクを回避および/または低減させる利点を有する。かかる用量ダンピング放出は、例えば、約2時間以内などの約3時間以内、例えば、1時間以内、取り分け約30分以内に、インビボまたはエクスビボのいずれかで起こり得る。
【0089】
本発明組成物は重篤な/致死的副作用のリスクを最少とした徐放の性質が改善されたという利点を有する(すなわち、採用される有効成分がオピオイド、ベンゾジアゼピンなどの薬物乱用に使用され得るものである場合、用量ダンピングおよび/または薬物乱用の可能性の低減)。本発明組成物は意図的な機械的崩壊、例えば、粉砕、乳棒と乳鉢、打砕などの伝統的方法による、またはマイクロレベル物質に高圧縮力を与えることによる崩壊に対する防御作用を提供する。この防御作用は本発明組成物それ自体により、特に、それらの組成物が高い機械的強度をも有する担体または充填剤と組合わせたときに提供される。
【0090】
本発明組成物は確立された医薬処理加工方法に従い調製可能であり、また食品もしくは医薬品での使用が承認されている物質または同様の規制状態の物質を使用し得るという有利な点をも有する。
【0091】
本発明組成物はまたそれらが疼痛の処置に、またはその他に使用するか否かに関わらず、先行技術における既知の医薬組成物よりもより有効性が高く、より毒性が低く、より長く作用し、より効力が高く、副作用の発生が少なく、より容易に吸収され、および/またはより良好な薬物動態プロフィールを有するという有利な点をも有する。
【0092】
単位次元(例えば、値、温度、圧力(加えた力)、相対湿度、大きさと重量、粒子径もしくは粒径、細孔サイズ、時間枠など)、量(例えば、粒子の相対量(数量またはパーセント)、組成物もしくは組成物の成分中の個々の構成分および絶対量、例えば、有効成分の用量、粒子数など)、偏差値(定数、分解度などからの)などの文脈において、“約”という単語は本明細書にて使用される場合、かかる変数が近似値であり、そのままで本明細書に特定した数値から±10%、例えば、±5%、好ましくは±2%(例えば、±1%)変動し得ることが理解されよう。
本発明は以下の実施例とその中の図面により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】粒状化液としてコリコートMAE30DPまたは水を用いて、珪酸アルミニウム(ハロサイト)から作製したセラミックペレットからの、リン酸バッファー(pH6.8)中のフェンタニル塩基の放出プロフィールを示す。
【図2】粒状化液としてコリコートMAE30DPまたは水を用いて、アルミン酸カルシウムから作製したセラミックペレットからの、エタノール(48%)中のフェンタニル塩基の放出プロフィールを示す。
【図3】粒状化液としてコリコートMAE30DPまたは水を用いて、珪酸アルミニウム(ハロサイト)から作製したセラミックペレットからの、0.1M−HCl(pH1)中のフェンタニル塩基の放出プロフィールを示す。
【図4】粒状化液としてコリコートMAE30DP、オイドラギットFS30Dまたは水を用いて、珪酸アルミニウム(ハロサイト)から作製したセラミックペレットからの、リン酸バッファー(pH6.8)中の酒石酸ゾルピデムの放出プロフィールを示す。
【図5】粒状化液としてコリコートMAE30DP、オイドラギットFS30Dまたは水を用いて、珪酸アルミニウム(ハロサイト)から作製したセラミックペレットからの、エタノール(48%)中の酒石酸ゾルピデムの放出プロフィールを示す。
【図6】粒状化液としてコリコートMAE30DPまたは水を用いて、珪酸アルミニウム(ハロサイト)から作製した粉砕セラミックペレットからの、リン酸バッファー(pH6.8)中のフェンタニル塩基の放出プロフィールを示す。
【図7】粒状化液としてコリコートMAE30DPを用いて、珪酸アルミニウム(ハロサイト)から作製したペレットからの、リン酸バッファー(pH6.8)中の酒石酸ゾルピデムの上昇温度での放出プロフィールを示す。
【図8】粒状化液として水を用いて、珪酸アルミニウム(ハロサイト)から作製したペレットからの、リン酸バッファー(pH6.8)中の酒石酸ゾルピデムの上昇温度での放出プロフィールを示す。
【図9】図7(下方プロフィール)および図8(上方プロフィール)からのそれぞれの平均値を示す。
【図10】粒状化液としてコリコートMAE30DP(下方プロフィール)または水(上方プロフィール)を用いて、珪酸アルミニウム(ハロサイト)から作製したペレットからの、リン酸バッファー(pH6.8)中の酒石酸ゾルピデムの37℃での放出プロフィールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0094】
[一般的方法論]
ペレットは押出しおよび球状化により製造した。
セラミック物質(珪酸アルミニウム(ハロサイト、プレミウム);チャイナクレー(陶土)、ニュージーランド)またはアルミン酸カルシウム(ドキサAB、スウェーデン))、ペレット化補助物質(微結晶セルロース;アビセル(Avicel;登録商標)PH101;FMC、米国)および有効成分(フェンタニル遊離塩基;ジョンソン・マッシィ、マックファリアン・スミス、英国)または酒石酸ゾルピデム(カムブレックス、米国)を含む乾燥添加剤を回転ミキサー中で30分間混和した。
【0095】
次いで、得られた乾燥混合物に、粒状化液としてコリコート(Kollicoat;登録商標)MAE30DP(BASF、ドイツ)、オイドラギットFS30D(エボニック・デガッサGmbH、ドイツ)、または水を、高速ミキサー中で連続混合しながら加えた。
【0096】
次いで、湿潤塊を一定速度で押出し、小さな長円形片(押出し物)とした。押出し物はさらに丸い球体が得られるまで球体形成機で球状化した。このペレットを65℃のオーブン中、1〜3時間乾燥した。
【0097】
放出プロフィールは米国薬局方<711>溶出パドル法に従って測定した。パドル回転速度は50rpmとし、種々の媒体(リン酸バッファーpH6.8;0.1M−HCl溶液;またはエタノール(48%))を容量200mLで使用した。サンプルは15、30、60、120、180、240および300分毎に採取し、有効成分の量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。
【実施例1】
【0098】
珪酸アルミニウム(ハロイサイト)47.2gを用い、有効成分としてフェンタニル塩基0.8g、ペレット化補助物質として微結晶セルロース12g、および粒状化液としてコリコートMAE30DP64gを用いて、ペレット60gのバッチを調製した(以下に記載するすべての実施例と同様に、上記の一般的方法論に従った)。
これらのペレットは、乳鉢と乳棒により、元のペレットよりも小さなサイズに手で粉砕した。
【実施例2】
【0099】
(比較例)
珪酸アルミニウム(ハロイサイト)47.2g、フェンタニル塩基0.8g、微結晶セルロース12g、および粒状化液として精製水33gを用いて、ペレット60gのバッチを調製した。
【実施例3】
【0100】
アルミン酸カルシウム47.2g、フェンタニル塩基0.8g、微結晶セルロース12g、およびコリコートMAE30DP34gを用いて、ペレット60gのバッチを調製した。
【実施例4】
【0101】
(比較例)
アルミン酸カルシウム38.2g、フェンタニル塩基0.8g、微結晶セルロース21g、および精製水33gを用いて、ペレット60gのバッチを調製した。
【実施例5】
【0102】
珪酸アルミニウム(ハロイサイト)47.2g、有効成分として酒石酸ゾルピデム0.8g、微結晶セルロース12g、およびコリコートMAE30DP84gを用いて、ペレット60gのバッチを調製した。
【実施例6】
【0103】
(比較例)
珪酸アルミニウム(ハロイサイト)47.2g、酒石酸ゾルピデム0.8g、微結晶セルロース12g、および精製水44gを用いて、ペレット60gのバッチを調製した。
【実施例7】
【0104】
珪酸アルミニウム(ハロイサイト)47.2g、酒石酸ゾルピデム0.8g、微結晶セルロース12g、およびオイドラギッドFS30D87gを用いて、ペレット60gのバッチを調製した。
【実施例8】
【0105】
(比較例)
珪酸アルミニウム(ハロイサイト)38.2g、フェンタニル塩基0.8g、微結晶セルロース21g、および精製水41gを用いて、ペレット60gのバッチを調製した。これらのペレットは、乳鉢と乳棒により元のペレットよりも小さなサイズに手で粉砕した。
【0106】
<実施例1ないし8の製剤の放出プロフィール>
図1は、実施例1および2にて調製したペレットからの有効成分の、リン酸バッファー(pH6.8)中での放出プロフィールを示す。粒状化液としてコリコートを用いたペレットからのフェンタニルの放出は、水を用いたものよりも緩徐であった。
【0107】
図2は、実施例3および4にて調製したペレットからの有効成分の、48%エタノール中での放出プロフィールを示す。エタノール中での薬物放出は、粒状化液として水を使用し調製したペレットの方が、コリコートで調製したペレットに比べてかなり速かった。
【0108】
図3は、実施例1、2、3および4にて調製したペレットからの有効成分の、0.1M−HCl(pH1)中での放出プロフィールを示す。0.1M−HCl中での薬物放出は、粒状化液として水を使用し調製したペレットの方が、コリコートで調製したペレットに比べてかなり速かった。
【0109】
図4および5は、実施例5、6および7にて調製したペレットからの有効成分の、リン酸バッファー(pH6.8)(図4)および48%エタノール(図5)中での放出プロフィールを示す。これらの図は、これらのペレットからの薬物放出が、粒状化液としてコリコートMAE30DPおよびオイドラギッドFS30Dの両方を用いた場合の2種の媒体において、水に比較して緩徐であったことを示す。
【0110】
図6は、実施例1および8にて調製した粉砕ペレットからの有効成分の、リン酸バッファー(pH6.8)および48%エタノール中での放出プロフィールを示す。これらの図は、これらのペレットからの薬物放出が、バッファーとエタノール両方において緩徐であったことを示す。
【実施例9】
【0111】
本実験の目的は、加温媒体、バッファーpH6.8中でのペレットからの放出を評価することであった。
ペレットの2種のバッチの内、一方は本発明によるもの(a:75g)、他方は本発明によらないもの(b:27.7g)であり、上記の一般的方法論の項の記載に従い、以下から調製した;
(a)珪酸アルミニウム(ハロイサイト)47.2g、有効成分としての酒石酸ゾルピデム0.8008g、微結晶セルロース12.0gおよびコリコートMAE30DP84.4g;および
(b)珪酸アルミニウム(ハロイサイト)38.2g、有効成分としての酒石酸ゾルピデム0.8002g、微結晶セルロース21.0gおよび水43.87g。
【0112】
予め加温した200mLのリン酸バッファーpH6.8を容れた250mL容ビーカーに、ペレットサンプル約150mgを入れた。ビーカーをホット攪拌プレート上に置き、本実験に際しては磁気攪拌機を使用した。
リン酸バッファーの温度は、0分、10分および30分目に測定し、サンプルはそれぞれ10分および30分目にビーカーから採取し、その後、HPLCによるクロマトグラフィーにより分析した。
測定温度を下記の表1に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
図7は、ペレット(a)(本発明に従って調製)のバッチ1ないし4から、リン酸バッファー(pH6.8)中、実施例9経由で調製したペレットからのゾルピデムの放出プロフィールを示す。
【0115】
図8は、ペレット(b)(本発明に従って調製せず)のバッチ1ないし4から、リン酸バッファー(pH6.8)中、実施例9経由で調製したペレットからのゾルピデムの放出プロフィールを示す。
図9は、図7(下方プロフィール)および8(上方プロフィール)それぞれからの平均値を示す。
【0116】
図10は、ペレット(a)(下方プロフィール)および(b)(上方プロフィール)それぞれから、約37℃でリン酸バッファー(pH6.8)中、実施例9経由で調製したペレットからのゾルピデムの放出プロフィールを示す。
まとめとして、これらの図は、本発明に従って調製したペレットからの薬物放出がすべての事例において、著しく緩徐であることを示す。
【0117】
上記の例は、粒状化液の一部として薄膜形成剤を使用することにより、バッファー、エタノール中、および低いpHで、活性物質の徐放性を得ることができることを示す。さらにその放出プロフィールは、粒状化液として水で調製したペレットに比べて、粉砕による影響を余り受けない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い機械的強度をもつ添加物を含んでなる固体の連続ネットワークを含んでなる徐放性医薬組成物であって、該ネットワークが細孔を含んでなり、その細孔内には有効成分と薄膜形成剤の混合物が散在してり、当該細孔が該組成物の製造に際して形成されるものであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
該添加剤が無機物である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
使用する有効成分がオピオイド鎮痛剤である請求項1または請求項2記載の組成物。
【請求項4】
該合成化合物が、モルフィナン誘導体、ベンゾモルファン誘導体、フェニルピペリジン、フェニルヘプタミン、開鎖化合物、ジフェニルプロピルアミン誘導体、混合アゴニスト/アンタゴニストまたは他の合成オピオイドである請求項3記載の組成物。
【請求項5】
該オピオイド鎮痛剤が、モルヒネ、コデイン、テバインもしくはそのディールス−アルダー付加物、ジアモルフィン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、ヒドロコドン、オキシコドン、エトルフィン、ニコモルフィン、ヒドロコデイン、ジヒドロコデイン、メトポン、ノルモルフィン、N−(2−フェニルエチル)ノルモルフィン、ラセモルファン、レボルファノール、デキストロメトルファン、レバロルファン、シクロファン、ブトルファノール、ナルブフィン、シクラゾシン、ペンタゾシン、フェナゾシン、ペチジン(メペリジン)、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、ケトベミドン、カルフェンタニル、アニレリジン、ピミノジン、エトヘプタジン、アルファプロジン、ベタプロジン、1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン、ジフェノキシレート、ロペラミド、メタドン、イソメタドン、プロポキシフェン、酢酸レボメタジル塩酸塩、デキストロモラミド、ピリトラミド、ベジトラミド、デキストロプロポキシフェン、ブプレノルフィン、ナロルフィン、オキシロルファン、チリジン、トラマドール、アリルプロジン、ベンジルモルフィン、クロニタゼン、デソモルフィン、ジアンプロミド、ジヒドロモルフィン、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアンブテン、酪酸ジオキサフェニル、ジピパノン、エプタゾシン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルフィン、エトニタゼン、ヒドロキシペチジン、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、メプタジノール、メタゾシン、マイロフィン、ナルセイン、ノルピパノン、パプブレタム、フェナドキソン、フェノモルファン、フェノペリジン、プロピラムおよびデゾシンから選択されるものである請求項3または請求項4記載の組成物。
【請求項6】
該オピオイド鎮痛剤が、ブプレノルフィン、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニルおよびフェンタニルから選択されるものである請求項5記載の組成物。
【請求項7】
該オピオイド鎮痛剤が、フェンタニルである請求項6記載の組成物。
【請求項8】
該添加剤が、1種以上のセラミック物質に基づくものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
該セラミック物質が、アルミン酸カルシウムまたは珪酸アルミニウムである請求項8記載の組成物。
【請求項10】
該セラミック物質が、ハロイサイトである請求項8記載の組成物。
【請求項11】
該添加剤が、1種以上のジオポリマー物質に基づくものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
該添加剤の粒径が、約20μm以下である請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
該膜形成剤が、腸溶性コーティング物質である請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
該膜形成剤が、メタアクリル酸およびアクリル酸エチルに由来する共重合体または中性メタアクリル系ポリマーである請求項13記載の組成物。
【請求項15】
さらにペレット化補助物質を含んでなる請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
該ペレット化補助物質が、微結晶セルロースである請求項15記載の組成物。
【請求項17】
高い機械強度の添加剤と有効成分とを共に混合し、次いで、薄膜形成剤を液体と共に、または液体中の薄膜形成剤として加え、湿潤粒状物とすることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物の製造法。
【請求項18】
さらに、
(i)該粒状物の押出し;
(ii)球状化;
(iii)乾燥;および/または
(iv)硬化;
を含んでなる請求項17記載の製造法。
【請求項19】
請求項17または請求項18に記載の製造法により得られる組成物。
【請求項20】
医薬として使用する請求項1〜16または19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
疼痛処置に使用する請求項3、または4〜16または19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
疼痛処置用医薬の製造のための請求項3、または4〜16または19のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項23】
疼痛症状に罹患しているか、または罹患する可能性のあるヒトに、請求項3、または4ないし16〜19のいずれか1項に記載の組成物を投与することを特徴とする疼痛の処置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−519675(P2012−519675A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552501(P2011−552501)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000374
【国際公開番号】WO2010/100414
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(505141945)オレクソ・アクチエボラゲット (11)
【Fターム(参考)】