説明

薬物溶出のための方法、媒体、および装置

本発明は、化合物を含浸させたマトリックス、たとえば薬物をブレンドしたポリママトリックスのインビトロ検討に使用することが可能な、薬物溶出方法を提供する。そのような方法および物質は、たとえば、薬物溶出性の埋植可能な用具たとえば心臓用リード線の生産プロセスの変動性を評価し調節するために使用することができる。その溶出方法では、リン酸緩衝生理食塩液、リモネンおよびドデシル硫酸ナトリウムを含む溶液を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許出願第11/881,074号明細書(出願日:2007年7月25日)の優先権を主張する(その内容を参照として取り入れたものとする)。
【0002】
本発明は、薬物溶出の検討において使用する媒体、ならびにそれらの製造方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
患者の体内に医療用具を埋植すると、その身体に、感染症から血管中での閉栓または凝血までの範囲にわたる生理的に有害な作用を示す可能性がある。そのような作用に対処し、そのような医療用具の生体適合性を改良するための一つのアプローチ方法は、それらの用具の表面上に、生物活性剤または薬理作用物質たとえばステロイド、および/または抗生物質、および/または抗凝血剤を組み入れることである。埋植した後、それらの薬剤が次いで埋植された場所で、インビボ環境の中へと溶出し、生理的なレスポンスを改良することができる。
【0004】
医療用具の埋植を含む代表的な医療処置としては、心臓生理学的に調節するように設計されたものが挙げられる。たとえば、心リズム管理(CRM)システムのような電極を有する1本または複数のペーシングリード線を使用する各種のシステム、ならびにそれらのリード線システムをたとえば心臓のような接触体組織(contact body tissue)に埋植するための各種の技術が開発されてきた。この文脈においては、CRMの電気パルス発生器の安全性、有効性および長寿命性は、そのパルス発生器に接続して使用される関連の心臓用リード線の性能に依存する。たとえば、リード線および電極の各種の性質が、特性インピーダンスおよび刺激閾値を与えることになるであろう。刺激閾値は、心臓組織を脱分極させるかまたは「捕捉する(capture)」ための刺激パルスに必要とされるエネルギである。刺激パルスの送達において、パルス発生器のバッテリから誘導される電流を最小化させるためには、比較的高いインピーダンスと低い閾値が望ましい。他の例としては、医療用具を埋植したときに、その感染部位において感染症を起こす可能性が挙げられる。そのような感染症は、コーティングするか他の方法で埋植される用具に抗生物質を組み合わせることによって抑制することが可能である。
【0005】
特にリード線を埋植させた直後の数週間の間に、刺激閾値に影響を与えることが可能な一つの因子は、異物としてのリード線に対する身体の本来的な免疫応答である。リード線の存在が、マクロファージを活性化させて、それらがリード線および各種電極の表面に集まってきて、多核化巨細胞を形成する。それらの細胞が次いで、その異物を溶解させようとして、各種の物質、たとえば過酸化水素、さらには各種の酵素を分泌する。そのような物質は、一方ではその異物を溶解させようとはするが、他方では周辺組織に対して損傷も与える。その周辺組織が心筋である場合には、それらの物質によって壊死が起きる。それらの壊死した領域が次いで、電極と組織との界面の電気的特性が劣化する。その結果、ペーシング閾値が上がる。組織の微細領域が死んだ後でさえも、炎症反応が継続し、埋植してから約7日後には、その多核化巨細胞が、線維芽細胞を用いてコラーゲンの蓄積を開始させ、壊死心筋に置き換えはじめる。最終的には、埋植後3週間程度経過すると、リード線とその電極が線維組織の厚い層で被包されてしまう可能性がある。典型的には、その時点で炎症反応は終結する。しかしながら、リード線とその電極の線維被包は残る。線維組織は興奮性組織ではないので、電極と組織との界面の電気的な性質が劣化したために、刺激閾値は高くなったまま続く可能性がある。
【0006】
埋植された心リズム管理システムにおけるこの炎症反応を調節するための一つの手段は、上述の炎症性組織反応を緩和するための薬物を、その電気リード線の近くに与えることであった。具体的には、抗炎症剤たとえばグルココルチコイドステロイドを溶出させ、組織刺激反応を最小限に抑え、閾値の突っ立ち現象を抑制または排除し、さらには低急性で、慢性のペーシング閾値を維持するのに役立つように設計された用具が見出されてきた。ストークス(Stokes)の特許文献1、ならびに関連のメドトロニック(Medtronic)の特許文献2、および特許文献3のステロイド溶出性ペーシング電極の発明によって、低閾値電極技術の開発における大きなブレークスルーがもたらされた。ステロイドがマクロファージの活性化を阻害することによって、炎症反応を抑制すると考えられている。それらが多核化巨細胞を形成することがないために、異物を溶解させ、さらには周辺組織も破壊するような物質をその後で放出することが防止される。このようにして、炎症反応による各種の組織の壊死、さらには線維被包の形成が最小化される。そのような有害反応を最小化させることは、同時に起きる電極と組織との界面の電気的特性の劣化も最小化させるために、極めて望ましいことである。埋植部位で溶出するステロイドのような化合物を組み入れることによって、同様のサイズの固体電極を特徴とするリード線に比較して、実質的に低い電源インピーダンスを有するペーシングリード線が可能となる。その結果、ステロイドのような化合物を溶出させることが可能な電気リード線はさらに、同様のサイズの電極よりも顕著に低いピークおよび慢性ペーシング閾値を示し、そのために、広く各方面で患者の治療に適用されてきた。
【0007】
ステロイドを溶出する埋植可能な組成物としては、ポリマ物質とブレンドした薬物、たとえばシリコーンポリマの中に含浸させたデキサメタゾン、すなわちポリマから周辺組織の中にステロイドを徐々に溶出させるように設計されたブレンド組成物を挙げることができる。しかしながら、埋植させたときにそれが用具から溶出するように、用具の中にステロイドのような薬物を組み込もうとすると、ステロイドを溶出させない用具に比較して、その電気用具の製作が複雑となる。この文脈において、困難となる可能性がある一つの領域は、生産プロセスの変動可能性と、付随して起きる溶出キネティクスに対する影響の可能性である。この文脈においては、電気的用具およびその他の薬物溶出性医療用具の薬物溶出性を当業者が容易に試験することが可能となるような方法および物質が高度に望まれている。そのような方法および物質を使用して、たとえば、薬物溶出性埋植物の生産プロセスの変動性およびそれに関連するそのようなプロセスの品質管理を評価することが可能である。さらに、埋植に伴って観察される生理反応の修飾作用を総合的機構的に理解するためには、リアルタイムのインビボ溶出試験が必要となる可能性があるが、そのようなリアルタイムの溶出試験は、数週間または数ヶ月のオーダの時間がかかる可能性がある。従って、そのような試験と相関性がある加速インビトロ試験が、生産および品質管理プロセスにおいては重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,506,680号明細書
【特許文献2】米国特許第4,577,642号明細書
【特許文献3】米国特許第4,606,118号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この理由から、薬物溶出性の埋植可能な用具の生産プロセス変動性を評価し、調節するために使用することが可能な方法、および物質たとえば媒体および試験装置が高度に望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施態様は、薬物溶出の検討のために有用な試験装置および媒体、ならびにそれらを製造および使用するための方法を提供する。本明細書に開示された媒体および関連の方法は、ポリママトリックスの中に含浸された薬剤を溶出させるように設計されている。そのような方法および物質は、たとえば、薬物溶出性の埋植可能な用具たとえば心臓用リード線の生産プロセスの変動性を評価し調節するために使用することができる。
【0011】
本発明の一つの実施態様は、化合物を含浸させたマトリックス、たとえば薬物をブレンドしたポリママトリックスのインビトロ検討に使用することが可能な薬物溶出方法である。本発明の説明的な実施態様には、ブレンドポリマ、たとえば薬物を担持したペースメーカリード線と共に使用することが可能なマトリックスからの酢酸デキサメタゾン(dexamethasone acetate)の溶出を観察するためのユニークな溶解媒体を使用する方法が含まれる。この溶解媒体には、比較的短時間の間に効果的かつ効率的にマトリックスの内部から化合物を溶出させるように設計された成分の組合せを使用する。この溶解媒体、ならびにその結果としてそれを使用するための方法は、薬物でコーティングされた医療用具の製品開発および品質管理、特に製作をするためのインビトロな基盤(in−vitro platform)を提供する。
【0012】
本発明の説明的な実施態様は、マトリックスからの化合物の溶出を観察するための方法であって、その方法には、その化合物を含むマトリックスを、pH5〜pH7のpH範囲を有するリン酸緩衝生理食塩液と、1〜7%のリモネン(limonene)と、0.3〜5%のドデシル硫酸ナトリウムとを含む溶液に暴露させるステップ、ならびに次いで、(たとえば、HPLCのようなクロマトグラフ的分離法を介して)その化合物の存在についてその溶液を分析(assay)して、そのマトリックスからその溶液の中へその化合物の溶出を観察するステップ、が含まれる。典型的には、その溶液には、pH6のリン酸緩衝生理食塩液と、3%のリモネンと、1%のドデシル硫酸ナトリウムとが含まれる。
【0013】
本発明のまた別の説明的な実施態様は、ナノエマルション法の形態を使用して、マトリックスからの化合物の溶出を観察するための方法であって、その方法には、その化合物を含むマトリックスを、低級アルカノールを含む溶液、たとえばpH5〜pH7のpH範囲を有するリン酸緩衝生理食塩液と1〜9%のリモネンと0.3〜9%のドデシル硫酸ナトリウムと0.5〜15%の低級アルカノールとを含む溶液に暴露させるステップ、ならびに次いで、(たとえば、HPLCのようなクロマトグラフ的分離法を介して)その化合物の存在についてその溶液を分析して、そのマトリックスからその溶液の中へその化合物の溶出を観察するステップ、が含まれる。本発明のいくつかの実施態様においては、その低級アルカノールはエタノールまたはn−ブタノールである。ある種の実施態様においては、その溶液には、pH6のリン酸緩衝生理食塩液と、3〜5%のリモネンと、3〜5%のドデシル硫酸ナトリウムと、1〜3%のn−ブタノールとが含まれる。
【0014】
本発明の方法を使用して、広く各種のマトリックスからの広く各種の化合物の溶出についての検討が可能である。たとえば、この方法を使用して、その化合物を含浸、コーティング、または内部に包埋させた、プラスチックまたはその他のポリマ性マトリックスを検討することができる。一つの説明的な実施態様においては、そのマトリックスとしては、シリコーンポリマのようなポリマを挙げることができ、またその化合物としては、ステロイド、抗凝固剤、抗生物質、または抗炎症剤を挙げることができる。以下の実施例で示す説明的な実施態様においては、そのマトリックスが、酢酸デキサメタゾンを含浸させた生物医学的グレードのシリコーンポリマである。典型的には、そのマトリックスおよび化合物は、たとえばペースメーカの電気リード線の一部のような、インビボ埋植に適用される。
【0015】
本発明の典型的な実施態様においては、その方法は、埋植可能な薬物でコーティングされた医療用具の製品開発および品質管理のようなプロセスを容易とするのに適用される。そのような実施態様においては、その方法は、均質な生産プロセス、典型的にはその化合物を同じ速度で溶出する複数のマトリックスを製造するように設計されたプロセスに従って製造された複数のマトリックスで実施することができる。場合によっては、その方法には、2種またはそれ以上のマトリックスが、同一の溶出速度を有するかまたは異なった溶出速度を有するかを調べるために、その2種またはそれ以上の複数のマトリックスの溶出速度を比較するステップが含まれていてもよい。
【0016】
本発明に関連する一つの実施態様は、pH5〜pH7のpH範囲を有するリン酸緩衝生理食塩液と、1〜9%のリモネンと、0.3〜9%のドデシル硫酸ナトリウムと、0.5〜15%の低級アルカノールとの溶液を含む物質組成物(composition of matter)である。この組成物のある種の実施態様においては、その低級アルカノールがエタノールまたはn−ブタノールである。この組成物においては場合によっては、その溶液に、pH6のリン酸緩衝生理食塩液と、3〜5%のリモネンと、3〜5%のドデシル硫酸ナトリウムと、1〜3%のn−ブタノールとが含まれる。
【0017】
本発明のいくつかの実施態様においては、その物質組成物には、ステロイド、抗凝固剤、抗生物質、または抗炎症剤を含む溶出性薬剤を含浸させたマトリックスがさらに含まれる。場合によっては、たとえばそのマトリックスが、酢酸デキサメタゾンを含浸させたポリママトリックスである。本発明の一つの説明的な実施態様においては、その物質組成物には、心臓用リード線の一部として使用するために適用されたポリママトリックスがさらに含まれる。
【0018】
本発明に関連する一つの実施態様は、たとえば、その中で溶出を観察する容器(vessel)からの溶解媒体の蒸発を抑制することによって、上述の方法を容易に実施できるようにするために使用される試験装置である。具体的には、その試験装置には、容器を覆い、蒸発による溶解媒体のロスを抑制するように設計されたキャップが含まれる。典型的には、そのキャップにはサンプル口があるが、これは場合によっては、温度測定口として機能させることもできる。本発明の説明的な実施態様においては、この口を使用してサンプリングカニューレを導入して、容器中のサンプリング位置を容易に調節することを可能とする。本発明のその他の実施態様においては、その試験装置が、温度要素口として機能する別な口を有している。この蒸発ロスカバー試験装置によって、容易かつ正確にサンプリングし、温度測定し、そして蒸発によるロスを実質的に無くすことができる。本発明の説明的な実施態様においては、その試験装置では、1週間の試験期間で、蒸発を1%未満に劇的に抑制する。その試験装置の一つの実施態様においては、試験装置には容器に係合させるためのキャップが含まれ、それには第一の外側面と、その容器の中に含まれる流体に暴露されている第二の内側面とが含まれる。典型的には、その第二の側面には、円錐形の要素を含んでいて、それが、流体からの凝縮物が付着したものを流体の中へ容易に戻す。そのキャップには通常、キャップの第一の外側面と第二の内側面との間に配されたフランジと、さらにはテフロン(登録商標)物質でコーティングされ、回転可能なロッドを受けるために適用される中央の口が含まれる。そのキャップにはさらに、ユーザが容器の中から溶液のサンプルを得たり容器の中へ組成物を導入したりすることを可能とするために適用されるサンプル口、ならびにキャップの上に配されたシーリング要素(たとえば、Oリング)を含むが、そのシーリング要素は、流体を含む容器と密接して、キャップを容器と操作可能に係合させたときに、容器内部の物質が外部環境の中へ逃げ出すことを抑制するシールを容器との間に形成する。典型的には、容器の中で流体と接触するキャップの部分は、pH5〜pH7のpH範囲のリン酸緩衝生理食塩液と、1〜7%のリモネンと、0.3〜5%のドデシル硫酸ナトリウムとを含む溶液による分解に対して抵抗性のある物質からなっている。本発明のある種の実施態様においては、容器の中で流体と接触するキャップの部分は、pH5〜pH7のpH範囲を有するリン酸緩衝生理食塩液と、1〜9%のリモネンと、0.3〜9%のドデシル硫酸ナトリウムと、0.5〜15%の低級アルカノールとを含む溶液による分解に対して抵抗性のある物質からなっている。このキャップの実施態様において相互作用を有する構成分のすべてが、相互に密接するように構成されていて、それにより、容器内部の物質が外部環境の中へ逃げ出すことを抑制するシールを形成している。このようにして、その試験装置は、容器からの蒸発による流体のロスを抑制している。
【0019】
試験装置のいくつかの実施態様においては、中央の口が中央ワッシャの中に配され、それがさらに、キャップの上の中央ワッシャ口の中に配されている。同様にして、その試験装置のある種の実施態様においては、そのサンプル口が、サンプル口ワッシャの中に配され、それがさらに、キャップの上のサンプルワッシャ口の中に配されている。サンプル口ワッシャをキャップの上に配して、容器の内部で溶液と接触するカニューレを案内し、支持させるようにすることも可能である。典型的な実施態様においては、そのキャップには、ユーザが容器の内部の溶液の温度をモニタする温度要素を導入できるように適用される温度要素口が含まれる。
【0020】
本発明はさらに、溶出容器キャップ要素、溶出容器キャップセットおよびキットを含む、さらなる生産物品(articles of manufacture)を提供する。本発明の一つのそのような実施態様においては、上述のような溶出試験において有用な、キットおよび/または溶出容器キャップまたはセットが提供される。そのキットおよび/または溶出容器キャップセットは、典型的には、上述のような、コンテナ、ラベルおよび溶出容器キャップを含む。典型的な実施態様は、コンテナと、コンテナの中に、本明細書に開示されたような設計を有する試験装置と、試験装置を使用するための説明書とを含む、キットである。
【0021】
本発明のその他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から、当業者には明らかであろう。しかしながら、それらの詳細な説明および具体例は、本発明のいくつかの実施態様を示してはいるものの、説明の手段として提供されたものであって、限定を目的とはしていないことは理解されたい。本発明の精神から外れることなく、本発明の範囲内で多くの変更や修正を実施することが可能であり、そのような修正はすべて本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】放出制御用具(CRD)からの酢酸デキサメタゾンの溶出をプロットした典型的な図である。
【図1B】放出制御用具(CRD)からの酢酸デキサメタゾンの溶出をプロットした典型的な図である。
【図2】用具1における薬物溶出を対数プロットした図である。
【図3】3種の異なったロットのCRD1からのデキサメタゾン溶出データを示す図である(公称プロセス(nominal process))。
【図4】CRD1からの酢酸デキサメタゾンの溶出の識別試験(discriminatory study)を示す図である。
【図5】第二のCRDからの酢酸デキサメタゾンの溶出の識別試験を示す図である。
【図6】流体溶解試験容器からの蒸発による流体ロスを抑制するように設計された試験装置の実施態様を示す図である。この特定の実施態様である試験装置(10)には、容器(30)と係合させるためのキャップ(20)が含まれる。中央の図には、その試験装置の容器および各種の相互作用要素と操作可能に係合された一連の4個のキャップが示されている。右上の図には、その試験装置の容器および/または各種の相互作用要素と係合されていないキャップが示されている。この図に示された本発明の実施態様においては、そのキャップは、第一の外側面(40)と、その容器に含まれている流体に暴露されている第二の内側面(50)とを有している。その第二の側面(50)には、円錐形の要素(60)が含まれるが、それは、容器中の流体からキャップの第二の側面の上に凝縮した凝縮物をその流体の中に戻す方向に向かわせるように設計されている。そのキャップには、キャップの第一の外側面と第二の内側面との間に配されたフランジ(70)が含まれる。この実施態様には、キャップ中に配され、回転可能なロッド(90)を受けるために適用された中央口(80)が示されているが、ここで、その中央口の材料(典型的にはテフロン(登録商標))とその回転可能なロッドの材料とがシールを形成するように密接していて、それによって、容器内部に含まれる物質が外部環境に逃げ出すのを抑制している。この実施態様における回転可能なロッドは、そのロッドの末端に流体撹拌要素(170)を有していて、それが容器内部の流体を撹拌する。この実施態様においては、その中央口(80)が、中央ワッシャ(120)の中に配され、そのワッシャがさらに、キャップ上の中央ワッシャ口(130)の中に配されている。この実施態様は、キャップの中に配されたサンプル口(100)を示しているが、それによって、ユーザがカニューレ(図示せず)を介して容器から溶液のサンプルを抜き出す(または、容器の中へ組成物を導入する)ことが可能となる。この実施態様においては、そのサンプル口(100)が、サンプル口ワッシャ(110)の中に配され、そのワッシャがさらに、サンプルワッシャ口(160)に配されている。そのサンプル口ワッシャ(110)にはさらに、カニューレ固定口(140)が含まれていて、それが、サンプル口(100)に挿入されたカニューレを所望の位置に固定するために使用することが可能な締付けねじ要素(図示せず)を受けている。この実施態様には、温度要素口(150)がさらに示されているが、それを適用することによって、容器の内部の溶液に接触してその温度をモニタする温度要素を導入することが可能となる。温度要素口(150)は、温度口キャップ(210)を受けるように適用されているが、そのキャップは、温度口を覆って、容器内部の物質が外部環境へ逃げ出すのを抑制することができる。このキャップ(20)の実施態様において相互作用を有する構成成分のすべてが、相互に密接するように構成されていて、それにより、容器内部の物質が外部環境の中へ逃げ出すことを抑制するシールを形成している。さらに、流体を含む容器(30)に接触しているシーリング要素(図示せず)をキャップ(20)の上に配して、容器との間にシールを形成させ、キャップを容器と操作可能に係合させたときに、容器内部の物質が外部環境の中へ逃げ出すことを抑制するようにすることもできる。この図における試験装置の実施態様には、さらに、クランプねじ要素(190)を介してキャップを容器に固定するクランプ(180)、さらには複数の容器を保持するように構成されたラック(200)も示されている。
【図7A】pH6のPBS中に5%のR(+)リモネン、5%のSDS、および2%のn−ブタノールを含む本発明の媒体実施態様を使用して、約15日にわたる、薬物溶出性リード線成分からのステロイドの溶出プロファイルの比較を示すグラフである。このグラフから、公称プロセス、さらにはプロセス変動(Process Variation)1およびプロセス変動2によって製造された、薬物含浸マトリックスについての識別検討結果が得られる。
【図7B】pH6のPBS中に5%のR(+)リモネン、5%のSDS、および2%のn−ブタノールを含む本発明の媒体実施態様を使用して、約50日にわたる、薬物溶出性リード線からのステロイドの比較溶出プロファイルを示すグラフである。このグラフから、公称プロセス、さらにはプロセス変動1によって製造された、薬物含浸マトリックスについての識別検討結果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語、表示法、およびその他の科学的用語または専門用語は、本発明に関わる当業者により一般的に理解されている意味合いを有しているものとする。いくつかの場合においては、本明細書において、一般的に理解されている意味合いを有する用語を、明確にするためおよび/または容易に参照するために定義しているが、本明細書でそのような定義をしていることが必ずしも、当業界において一般的に理解されているものから実質的に異なることを表明しようとしていると受け取られるべきではない。本明細書において記述したり参照したりしている技術および手順の多くのものは、当業者により慣用される試験方法を使用して、十分に理解され、一般的に受け入れられているものである。必要に応じて、市販されているキットおよび反応剤を使用することを含む手順は、特に断らない限り、メーカによって決められたプロトコルおよび/またはパラメータに従って一般的に実施される。
【0024】
<A:マトリックスからの薬物溶出を観察するための方法および媒体>
本明細書に開示された本発明は、多くの実施態様を有する。本発明の一つの実施態様は、化合物を含浸させたマトリックス、たとえば薬物をブレンドしたポリママトリックスのインビトロ検討に使用することが可能な薬物溶出方法である。本発明の特定の実施態様には、薬物をブレンドしたポリママトリックス、たとえば薬物を担持したペースメーカリード線と共に使用されるマトリックスからの酢酸デキサメタゾンの溶出を観察するためのユニークな溶解媒体を使用する方法が含まれる。この溶解媒体では、比較的短時間の間に効果的かつ効率的にマトリックスの内部から化合物を溶出するように設計された成分の組合せを使用する。この溶解媒体、ならびにその結果としてそれを使用するための方法は、薬物でコーティングされた医療用具の製品開発および品質管理、特に製作をするためのインビトロな基盤を提供する。
【0025】
以下の実施例においては、その開示が、高分子量シリコーンマトリックスからのデキサメタゾンの溶出を調べる、本発明の方法の説明的な実施態様を提供する。この実施例は、特に、従来からの溶媒中ではシリコーンポリマ/薬物でコーティングされたペースメーカリード線からの酢酸デキサメタゾンの溶出が最低限であることが公知であるという観点から、本発明の方法の性能の高さを説明している。この文脈においては、その溶出媒体である溶解試験溶液にはリモネンを含んでいる。当業者には公知のように、リモネンは、たとえば、(R)−(+)−リモネンおよび(S)−(−)−リモネンのような異性体の形態をとる。場合によっては、本発明の実施態様において使用されるリモネンが、単一の異性体であるか、またはそれとは代わって、リモネン異性体の組合せである。本発明の典型的な実施態様においては、単一のリモネン異性体が使用され、それは(R)−(+)−リモネンである。リモネンを添加することによって、ユニークな溶解媒体添加物が得られるが、それは、マトリックスたとえば、薬物でコーティングされたペースメーカリード線からの酢酸デキサメタゾンの溶解を劇的に増大させる。特定の科学理論に拘束されるものではないが、リモネンがポリマを膨潤させ、薬物でコーティングされたペースメーカリード線のようなマトリックスからの酢酸デキサメタゾンのような薬物の溶出を加速させると考えられる。本開示の方法および物質を使用して、化合物を含むいかなるマトリックについても試験することができるので、本発明の方法は、マトリックスからの化合物の溶出を観察することが望ましい、広く各種のその他の状況にも適用することができる。
【0026】
本発明の実施態様には、低級アルカノールの形態の共溶媒を含む溶出媒体が含まれる。本明細書で使用するとき、「アルカノール」という用語は、ヒドロキシル基(−OH)残基を有するアルカン(直鎖または分岐鎖構造を有する飽和炭化水素、一般式CnH2n+2)を指している。本明細書で使用するとき、「低級アルカノール」という用語は、1〜8個の炭素原子を有するアルカノール、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールまたはそれらの混合物を指している。「低級アルカノール」という用語には、1〜8個の炭素原子を有する直鎖アルカノールたとえば1−プロパノール(当業界ではn−プロパノールとも呼ばれる)および1−ブタノール(当業界ではn−ブタノールとも呼ばれる)などと、さらには異性体のたとえばイソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールなどとの両方が含まれる。本発明の説明的な実施態様においては、その低級アルカノールはエタノールまたはn−ブタノールである。
【0027】
驚くべきことには、低級アルカノール共溶媒を添加することによって、思いがけないほど望ましい溶出性を有する溶出媒体が得られ、たとえばマトリックスの中でしっかりと錯体を形成しているような薬剤、たとえばポリママトリックス中で錯体形成している薬物を溶出させる性能が向上する。特定の科学理論に拘束されるものではないが、その低級アルカノール共溶媒が、溶出媒体の成分によって形成されるミセル構造を安定化させるか、および/またはより小さなミセル構造を形成させて、そのミセルがマトリックス構造の奥深くまで浸透して、その中に含浸されている薬剤を溶出させることを可能とする機能を発揮すると考えられる。それに加えて(およびおそらくはその結果として)、低級アルカノール共溶媒を含むことによって、その溶出媒体が、SDSおよびリモネンの両方をより高い濃度で含むことが可能となる。
【0028】
本発明の方法および組成物は、各種の状況で使用することが可能であり、たとえば、加工物質の一つのバッチの中、および/または加工物質の複数のバッチの間で起こりうる物質の変動を検討するのには特に適している。「バッチ」という用語は、当業界で認められている意味合いに従って使用され、(典型的には、同一の生産サイクルの中での単一の生産順(single manufacturing order)に従って)製造された薬物またはその他の物質の特定の量を指しており、特定の限度内で、均一な特性と品質を有するようになっている。以下の実施例でも示されるように、この溶解媒体は、生産プロセスにおけるプロセス変動を検出するための識別性を有していることが判った。
【0029】
本発明の方法は、広く各種のマトリックスからの広く各種の化合物の溶出を評価するために使用することができるが、本発明のこれらの方法は、薬物溶出性の埋植可能な医療用具の生産の分野では特に有用である。たとえば、薬物でコーティングされたペースメーカリード線の安全性および有効性は、本明細書に開示されたユニークな溶解試験法および物質を使用することにより、容易に評価される。それとは対照的に、従来からの溶解媒体、たとえば界面活性剤だけを使用している媒体の中では、製品が徐放性の特性を有していることおよびさらには酢酸デキサメタゾンの溶解度が低いために、薬物の溶出は最小限でしか観察されない。
【0030】
本発明の典型的な実施態様は、化合物を含むマトリックスから溶液の中へのその化合物の溶出を観察するための方法である。この方法の典型的な実施態様においては、その溶液には、pH5〜pH7のpH範囲を有するリン酸緩衝生理食塩液と、1〜7%のリモネンと、0.3〜5%のドデシル硫酸ナトリウムとを含む。この方法の一つの実施態様においては、その溶液には、6〜7のpHを有するリン酸緩衝生理食塩液と、3%のリモネンと、1%のドデシル硫酸ナトリウムとを含む。この溶液は、生産プロセスの評価たとえば、各種のバッチからのサンプルが一連の特性パラメータの中に入る溶出性を有していることを確認するためにその方法を使用することを可能とするような時間および条件下で、シリコーンポリマからデキサメタゾンが溶出していることを示すユニークな成分配列を含む(たとえば図1〜5を参照されたい。)。本発明のいくつかの実施態様には、当業者に公知で溶出試験に使用されているその他の成分、たとえばpH5〜pH7のpH範囲を有する酢酸塩緩衝剤、および/またはアニオン性(たとえば、ドデシル硫酸ナトリウム)、カチオン性(たとえば、臭化セチルトリメチルアンモニウム=CTAB)およびノニオン性(たとえば、ソルトール(Solutol)HS15=12−ヒドロキシステアリン酸のポリオキシエチレンエステル、ツイーン(Tween)80)界面活性剤を含む、1〜7%のリモネン溶液が含まれていてもよい。
【0031】
本発明のまた別な典型的な実施態様は、化合物を含むマトリックスから、低級アルカノールを含む溶液の中へその化合物の溶出を観察するための方法である。この方法の典型的な実施態様においては、その溶液に、pH5〜pH7のpH範囲を有するリン酸緩衝生理食塩液と、1〜9%のリモネンと、0.3〜9%のドデシル硫酸ナトリウムと、0.5〜15%の低級アルカノールとを含む。この方法の一つの例示的実施態様においては、その溶液に、6のpHを有するリン酸緩衝生理食塩液と、3〜6%のリモネンと、3〜6%のドデシル硫酸ナトリウムと、1〜3%の1−ブタノールとを含む。典型的には、その方法には、その化合物を含むマトリックスをその溶液と組み合わせ、次いで、時間の経過とともにそのマトリックスからその溶液の中へその化合物が溶出していくのを観察することが含まれる。
【0032】
本発明のそのような溶液および方法論的実施態様は、生産プロセスの評価、たとえば各種のバッチからのサンプルが一連の特性パラメータの範囲内の溶出性を有していることを確認するために使用することができる。本発明のいくつかの実施態様には、1〜9%のリモネン溶液と、0.5〜15%の低級アルカノールと、さらに当業者に公知で溶出試験に使用されているその他の成分、たとえばpH5〜pH7のpH範囲を有する酢酸塩緩衝剤、および/またはアニオン性(たとえば、ドデシル硫酸ナトリウム)、カチオン性(たとえば、臭化セチルトリメチルアンモニウム=CTAB)およびノニオン性(たとえば、ソルトール(Solutol)HS15=12−ヒドロキシステアリン酸のポリオキシエチレンエステル、ツイーン(Tween)80)界面活性剤とが含まれていてもよい。
【0033】
その方法の実施態様は、溶出を観察する条件を修正すること、たとえば、特定の溶液温度または温度範囲、たとえば25、30、37、40もしくは45℃、または25℃〜45℃の間の範囲で溶出を観察することにより、調節することが可能である。さらに、本発明の典型的な実施態様には、撹拌用具、シェーカを用いて溶液を撹拌するか、または米国薬局方の試験装置4のようなフロースルー用具を使用するステップが含まれる。典型的には、そのような方法において使用される溶液の容積は、50から150ミリリットルの間(たとえば、50、75、100、または125ミリリットル)である。本発明のいくつかの実施態様においては、その媒体の特定の配合は、特定の溶出特性、たとえば37℃、72時間で、高分子量シリコーンマトリックスの中に含浸された酢酸デキサメタゾンの少なくとも50%を溶出させうる性能が得られるように選択する。
【0034】
本発明の記述において、「マトリックス」という用語は、化合物が、その上にコーティングされるか、および/またはそれと組み合わされるか、および/またはその中に包埋されるか、および/またはその中に封入される、各種の物質を単に意味しているだけである。同様にして、「化合物を含むマトリックス」は、ステロイドおよび/または抗凝血剤および/または抗生物質などのような化合物を、担持するか、および/またはその上にコーティングするか、および/またはその中に包埋するか、および/またはその中に封入している物質である。化合物を溶液に暴露させ、次いで時間の経過とともにその溶液の中でのその化合物の存在を観察することによる、マトリックスからの化合物の溶出を観察するためのそのような方法は、広く各種のマトリックスおよび化合物を観察するために使用することができる。そのような分析は、各種の時間の間(たとえば、1分、1時間、1日、または1週間など)に、特定の条件下(たとえば、媒体の各種の成分の濃度、および/またはpH、および/または温度など)で、化合物の何パーセント(たとえば薬物を担持した化合物の0%から最高100%まで)が溶出するかを求めるために使用することができる。
【0035】
当業者には公知の、広く各種のマトリックスからの化合物の溶出を、本発明の方法において観察することが可能である。本発明の典型的な実施態様においては、そのマトリックスが、埋植可能なポリママトリックスである。典型的には、本発明の方法において観察されるポリママトリックスは、生体適合性があり、埋植部位における刺激反応が最小限となるように設計されている。本発明のある種の実施態様においては、そのポリマが、所望の放出速度または所望のポリマ安定度に応じて、生体安定性ポリマまたは生体吸収性ポリマのいずれかであってよい。本発明のある種の実施態様においては、たとえばポリウレタン類、シリコーン類、およびポリエステル類のような生体安定性ポリマが使用される。以下に示す実施例において、本発明の実施態様を実証するために使用される、説明用のマトリックスは、デキサメタゾンを含浸させた生物医学的シリコーンポリマである。本発明のある種の実施態様においてはその他のポリマを使用することも可能であるが、そのようなものとしてはたとえば以下のものが挙げられる:ポリオレフィン類、ポリイソブチレンおよびエチレン−アルファオレフィンコポリマ;アクリルポリマおよびコポリマ、ハロゲン化ビニルポリマおよびコポリマ、たとえばポリ塩化ビニル;ポリビニルエーテル類、たとえばポリビニルメチルエーテル;ポリハロゲン化ビニリデン類、たとえばポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデン;ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン類;ポリビニル芳香族化合物たとえばポリスチレン、ポリビニルエステル類たとえばポリ酢酸ビニル;ビニルモノマ相互およびオレフィンとのコポリマ、たとえばエチレン−メタクリル酸メチルコポリマ、アクリロニトリル−スチレンコポリマ、ABS樹脂、およびエチレン−酢酸ビニルコポリマ;ポリアミド類、たとえばナイロン(Nylon)66およびポリカプロラクタム;アルキド樹脂;ポリカーボネート類;ポリオキシメチレン類;ポリイミド類;ポリエーテル類;エポキシ樹脂、ポリウレタン類;レーヨン;レーヨントリアセテート;セルロース、セルロースアセテート、セルロースブチレート;セルロースアセテートブチレート;セロファン;セルロースナイトレート;セルロースプロピオネート;セルロースエーテル類;ならびにカルボキシメチルセルロースなどである。生体吸収性ポリマとしては以下のものが挙げられる:ポリ(L−乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−バレレート)、ポリジオキサノン、ポリオルソエステル、ポリ酸無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート類、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、コポリ(エーテル−エステル)(たとえば、PEO/PLA)、ポリアルキレンオキサレート類、ポリホスファゼン類、ならびに生体分子たとえば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲンおよびヒアルロン酸などである。本発明のその他の実施態様においては、そのマトリックスを、金属、たとえば生体組織に暴露される埋植可能な医療用具の一部に典型的に使用される金属の1種とすることもできる。
【0036】
広く各種の化合物を、マトリックスの上にコーティングするか、および/またはそれと組み合わせるか、および/またはその中に包埋するか、および/またはその中に封入して、その化合物を含むマトリックスを製造することが可能である。たとえば、本発明において使用される化合物は、埋植のための望ましい治療特性を有している化合物であれば、実質的にいかなるものであってもよい。いくつかの実施態様においては、その化合物が、グルココルチコイドたとえば、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、酢酸デキサメタゾンまたはその他のデキサメタゾン誘導体、さらにはベクロメタゾンもしくはベタメタゾンのような関連分子である。本発明の一つの説明的な実施態様においては、その化合物を含むマトリックスは、その中にブレンドされた化合物を有するマトリックス、たとえば酢酸デキサメタゾンのような化合物を含浸させた60〜80%シリコーンポリマ(たとえば、生物医学的グレードのシリコーンポリマ)である。
【0037】
先にも説明したように、当業界公知の広い範囲のマトリックスおよび化合物物質を、本発明の方法において検討することが可能であり、それらには金属、プラスチック、およびその他のポリママトリックス、さらにはたとえば以下のような化合物が含まれる:ステロイド、抗凝固剤、抗生物質、または抗炎症剤、たとえばヘパリンもしくはその他のトロンビン阻害剤、ヒルジン、ヒルログ、アルガトロバン、D−フェニルアラニル−L−ポリ−L−アルギニルクロロメチルケトン、またはその他の抗血栓性薬剤、またはそれらの混合物;ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノゲンアクチベータ、またはその他の血小板溶解剤、またはそれらの混合物;線維素溶解剤;血管攣縮阻害剤;カルシウムチャネル遮断剤、硝酸塩、酸化窒素、酸化窒素プロモータまたはその他の血管拡張剤;抗菌剤または抗生物質;アスピリン、チクロピジン、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤またはその他の表面糖タンパク質受容体の阻害剤、またはその他の血小板凝集阻害剤;コルヒチンもしくはその他の有糸分裂阻害剤、またはその他の微小管阻害剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)、レチノイドもしくはその他の抗分泌剤;サイトカラシンもしくはその他のアクチン阻害剤;またはリモデリング阻害剤;デオキシリボ核酸、アンチセンスヌクレオチドもしくはその他の分子遺伝操作のための薬剤;メトレキセートもしくはその他の代謝拮抗剤もしくは抗増殖剤;抗ガン化学療法剤;デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、酢酸デキサメタゾン、ベクロメタゾン(たとえば、ベクロメタゾンジプロピオネート)もしくはその他のデキサメタゾン類似体もしくは誘導体、またはその他の抗炎症性ステロイドもしくは非ステロイド系抗炎症薬;シクロスポリンもしくはその他の免疫抑制剤;トラピジル(PDGF拮抗物質)、アンジオペプチン(成長ホルモン拮抗物質)、抗増殖因子抗体、またはその他の増殖因子拮抗物質;ドーパミン、ブロモクリプチンメシレート、ペルゴリドメシレートもしくはその他のドーパミン作動性放射線治療薬剤;ヨウ素含有化合物、バリウム含有化合物、金、タンタル、白金、タングステン、もしくはその他の放射線不透物質として機能する重金属;ペプチド、タンパク質、酵素、細胞外マトリックス成分、細胞成分もしくはその他の生物学的薬剤;カプトプリル、エナラプリルもしくはその他のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;アスコルビン酸、アルファトコフェロール、スーパーオキシドジスムターゼ、デフェロキサミン、21−アミノステロイド(ラサロイド)もしくはその他のフリーラジカル捕捉剤、鉄キレート剤、もしくは前述の各種抗酸化剤;またはそれらの各種混合物などである。化合物のマトリックスに対する比率(たとえば、治療物質のたとえばデキサメタゾンのシリコーンポリマに対する比率)は、化合物とマトリックスをどのように使用するかによって違ってくるであろう。したがって、化合物のマトリックスに対する比率は広い範囲をとることができ、約(10:1)から約(1:100)までの範囲とすることができる。
【0038】
先に説明したように、本発明の方法は、インビボで使用したり埋植したりする化合物を含浸させるかおよび/またはそれでコーティングされた、たとえばペースメーカリード線(たとえば、環状またはチップ状リード線)、ステント、センサ、薬物送達ポンプ、カテーテル、バルーン、ワイヤガイド、カニューレなどのマトリックス、ならびにインビボおよびエキソビボ抗菌剤コーティングおよび同様のコーティングおよび被覆の研究をするために使用できる。さらに、本発明の方法および物質を使用して、埋植されていないマトリックスおよび化合物、たとえば、産業分野で使用される化合物を含むマトリックス、たとえば、発酵プロセスにおいて使用される化合物含浸マトリックスを分析することができる。本発明の実施態様を適用して、(たとえば、FDAガイドラインに従って調節された生産プロセスの一部として)一つまたは複数の注意深く調節された生産プロセスによるバッチで製造されたマトリックスを観察する。本発明の例示的な実施態様には、均一の生産プロセスに従って製造された複数のマトリックスに対して、その方法を実施することが含まれる。本発明に関連する一つの実施態様には、化合物を同じ速度で溶出させる複数のマトリックスを製造するように設計されたプロセスによって製造された複数のそのようなマトリックスに対して、その方法を実施することが含まれる。この方法のまた別の実施態様には、分析ステップがさらに含まれていて、たとえば、2種またはそれ以上の複数のマトリックスの溶出速度を比較して、その2種またはそれ以上のマトリックスの溶出速度が、同じであるか異なっているかを求める。
【0039】
当業界公知の広く各種の方法を使用して溶液中の化合物を観察することができるが、そのような方法としては、たとえばクロマトグラフ法たとえばHPLCなどや、さらにはイムノアッセイたとえば酵素結合免疫吸着剤アッセイなどが挙げられる。当業界の技術水準から言えば、検出技術および/または検出の後の各種の分離技術のいずれか一つまたは広く各種のものを使用することが可能である。そのような技術を説明する非限定な例としては、キャピラリ電気泳動、HPLC−UV;HPLC−MS(MS=質量スペクトル法);UPLC−UV(UPLC=超高性能LC)および、たとえばその薬物が揮発性である場合には、GC/FIDにおけるガスクロマトグラフィ−水素炎検出法(GC/FID)のような技術を使用するが、FIDすなわち水素炎イオン化検出器は、サンプル中の炭素原子の燃焼からの電子により発生する電流を測定することにより分析対象物を検出する。たとえば、アフジャ(Ahuja)およびラスムッセン(Rasmussen)編、『HPLC・メソッド・ディベロップメント・フォア・ファーマシューティカルズ(HPLC Method Development for Pharmaceuticals)第8巻(セパレーション・サイエンス・アンド・テクノロジ(Separation Science and Technology))』第1版、2007、アカデミック・プレス(Academic Press)、およびカッツ(Katz)ら編、『ハンドブック・オブ・HPLC(クロマトグラフィック・サイエンス)(Handbook of HPLC(Chromatographic Science)』第1版、1998、マーセル・デッカー(Marcel Dekker)を参照されたい。
【0040】
本発明の関連の実施態様には、(1)上述の方法のために製造されるか、または(2)上述の方法により製造された物質組成物、たとえば、pH5〜pH7のpH範囲を有するリン酸緩衝生理食塩液と、1〜9%のリモネンと、0.3〜9%のドデシル硫酸ナトリウムと、0.5〜15%の低級アルカノールとの溶液を含む物質組成物が含まれる。この物質組成物のある種の特定の実施態様には、ステロイドまたは抗凝固剤を含浸させたポリママトリックスがさらに含まれる。この文脈においては、当業者ならば何の苦もなく、そのような溶液を広く各種の組合せで容易に調製できることを理解するであろうが、たとえば5、6または7のpH範囲(さらには、これらの数値の半分または四分の一の値、たとえばpH5.5、5.25など)を有するリン酸緩衝生理食塩液と、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%または9%(さらには、これらの数値の半分または四分の一の値、たとえば1.5%、1.25%など)の濃度のリモネンとの組合せ、0.3%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%または9%(さらには、これらの数値の半分または四分の一の値、たとえば1.5%、1.25%など)の濃度のドデシル硫酸ナトリウムとの組合せ、場合によっては、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、または15%(さらには、これらの数値の半分または四分の一の値、たとえば1.5%、1.25%など)の濃度の低級アルカノールとの組合せなどが挙げられる。この物質組成物のある種の特定の実施態様には、試験装置のインビボ埋植を容易にするよう設計された薬剤、たとえばステロイドまたは抗凝固剤を含浸させたポリママトリックスをさらに含む。
【0041】
本発明の説明的な実施態様は、5〜7のpH範囲を有するリン酸緩衝生理食塩液と、3〜5%のリモネンと、3〜5%のドデシル硫酸ナトリウムと、3〜15%の低級アルカノールとを含む物質組成物である。この組成物のある種の実施態様においては、その低級アルカノールがエタノールまたはn−ブタノールである。この組成物においては場合によっては、その溶液に、pH6のリン酸緩衝生理食塩液と、3〜5%のリモネンと、3〜5%のドデシル硫酸ナトリウムと、1〜3%のn−ブタノールとが含まれる。
【0042】
本発明のいくつかの実施態様においては、その物質組成物には、ステロイド、抗凝固剤、抗生物質、または抗炎症剤を含む溶出性薬剤を含浸させたマトリックスがさらに含まれる。場合によっては、たとえばそのマトリックスが、酢酸デキサメタゾンを含浸させたポリママトリックスである。本発明の一つの説明的な実施態様においては、その物質組成物には、心臓用リード線の一部として使用するために適用されたポリママトリックスがさらに含まれる。
【0043】
本明細書および添付の特許請求項に引用されたすべての数字(たとえば、pH5〜pH7、1〜9%のリモネン、0.3〜9%のドデシル硫酸ナトリウム、および0.5〜15%の低級アルカノール)は、「約」という用語で修飾されているものと理解されたい。
【0044】
<B:容器からの蒸発を抑制するための試験装置>
本発明に関連する一つの実施態様は、たとえば、その中で溶出を観察する容器からの溶解媒体の蒸発を抑制することによって、上述の方法を容易に実施できるようにするために使用される試験装置である。具体的には、溶解/溶出試験におけるたとえばデキサメタゾンのような薬物の定量の確度は、その溶解媒体の容積の保持に大きく依存する。蒸発は、薬物でコーティングされた用具のために使用される溶解媒体の量が少ないために、大問題である。蒸発のためにその容積が低下したりすると、薬物含量を過大評価することになる。このことは、長時間かけて試験する徐放性製品においては、大問題である。
【0045】
典型的には、その試験装置には、容器を覆い、蒸発による溶解媒体のロスを抑制するように設計されたキャップが含まれる。この蒸発ロスキャップ試験装置によって、容易かつ正確にサンプリングし、温度測定し、そして蒸発によるロスを実質的に無くすことができる。本発明の実施態様は、たとえば、薬物溶出性製品の開発、製造、および放出(release)において有用である。たとえば、プロセス変動の可能性を検討するための適切な溶出方法が無いために製品が規制当局によって承認されないような場合には、その方法が容器のカバーの一体性に顕著に依存している可能性がある。以下の実施例において提供される本発明の説明的な実施態様においては、その試験装置が蒸発を1週間の間でも1%未満に抑制する。したがって、本発明のこの実施態様は、溶解試験容器からの媒体の蒸発を本発明がいかに抑制できるかを実証している。
【0046】
図6に、本発明の試験装置の典型的な実施態様を示しているが、これは、流体溶解試験容器からの蒸発によるロスを防止するために設計されたものである。この特定の実施態様である試験装置(10)には、容器(30)と係合させるためのキャップ(20)が含まれる。中央の図には、その試験装置の容器および各種の相互作用要素と操作可能に係合された一連の4個のキャップが示されている。右上の図には、その試験装置の容器および各種の相互作用要素と係合されていないキャップが示されている。この図に示された本発明の実施態様においては、そのキャップは、第一の外側面(40)と、その容器に含まれている流体に暴露されている第二の内側面(50)とを有している。その第二の側面(50)には、円錐形の要素(60)が含まれるが、これは、容器中の流体からそのキャップの第二の側面の上に凝縮した凝縮物(すなわち、蒸気またはガスの凝縮によって生成した液体)を流体の中に戻すように向かわせるように設計されている。そのキャップには、キャップの第一の外側面と第二の内側面との間に配されたフランジ(70)が含まれる。この実施態様には、キャップ中に配され、回転可能なロッド(90)を受けるために適用される中央口(80)が示されているが、ここで、その中央口の材料(典型的にはテフロン(登録商標))とその回転可能なロッドの材料とがシールを形成するように密接していて、それによって、容器内部に含まれる物質が外部環境に逃げ出すのを抑制している。
【0047】
図6に示された本発明の実施態様における回転可能なロッドには、そのロッドの末端に流体撹拌要素(170)を有していて、それが容器内部の流体を撹拌する。この実施態様においては、その中央口(80)が、中央ワッシャ(120)の中に配され、そのワッシャがさらに、キャップ上の中央ワッシャ口(130)の中に配されている。この実施態様は、キャップの中に配されたサンプル口(100)を示しているが、それによって、カニューレ(図示せず)を介して容器から溶液のサンプルを抜き出す(または、容器の中へ組成物を導入する)ことが可能となる。この実施態様においては、そのサンプル口(100)が、サンプル口ワッシャ(110)の中に配され、そのワッシャがさらに、サンプルワッシャ口(160)に配されている。そのサンプル口ワッシャ(110)にはさらに、カニューレ固定口(140)が含まれていて、それが、サンプル口(100)に挿入されたカニューレを所望の位置に固定するために使用することが可能な締付けねじ要素(図示せず)を受けている。この実施態様には、温度要素口(150)がさらに示されているが、それを適用することによって、容器の内部の溶液に接触してその温度をモニタする温度要素を導入することが可能となる。温度要素口(150)は、温度口キャップ(210)を受けるように適用されているが、そのキャップは、温度口を覆って、容器内部の物質が外部環境へ逃げ出すのを防止することができる。典型的には、流体を含む容器(30)に接触しているシーリング要素(図示せず)をキャップ(20)の上に配して、容器との間にシールを形成させ、キャップを容器と操作可能に係合させたときに、容器内部の物質が外部環境の中へ逃げ出すことを抑制するようにする。さらに、この実施態様における相互作用を有する構成成分は、相互にはまり込むように構成されていて、そのためにシールが形成され、容器内部の物質が外部環境の中に逃げ出すことを抑制し、その結果、その試験装置が、容器からの蒸発による流体ロスを抑制できるようになっている。この実施態様には、さらに、クランプねじ要素(190)を介してキャップを容器に固定するクランプ(180)、さらには複数の容器を保持するように構成されたラック(200)も示されている。
【0048】
本発明のいくつかの実施態様においては、その試験装置が、相互にはまり込むように構成された相互作用を有する構成成分を有し、そのためにシールが形成され、容器内部の物質が外部環境の中に逃げ出すことを抑制し、その結果、その試験装置が、容器からの蒸発による流体ロスを抑制できるように記載されている。「容器内部に含まれる物質が外部環境の中に逃げ出すことを防ぐ」という用具の記載においては、この開示は、容器の中の1分子(または少数の分子)の逃げ出しを許すシールであったとしてもなお、容器内部に含まれる物質の外部環境の中への逃げ出しを防止するか、または実質的に防止するということを理解している、当業熟練者に向けたものである。これに関連して、さらなるガイドラインも、当業熟練者に、容器内部に含まれる物質の関連する外部環境の中への逃げ出しを防止するか、または実質的に防止することを理解させるために提供されたものである。これらのガイドラインには、蒸発ロスを予防するカバー装置が含まれ、それによって、25℃、37℃または45℃で、3日、4日または5日(場合によっては7日)の期間の間に、その容器から、その流体容積の10%以下、好ましくは5%以下、4%以下、3%以下または2%以下、より好ましくは1%以下しか逃さない。
【0049】
先に説明したように、一つの典型的な実施態様は、流体を含む容器をカバーするための試験装置であって、その試験装置には、容器を係合させるためのキャップ(たとえば円状のキャップ)が含まれ、そのキャップは、第一の外側面とその容器の中に含まれる流体に暴露されている第二の内側面とを有しており、ここでその第二の側面がコーンの形状をしているか、および/または流体からの凝縮物が付着したものを流体の中へ容易に戻す円錐形の要素を含む。典型的には、そのキャップの第一の外側面と第二の内側面との間にフランジが配される。本発明のいくつかの実施態様においては、そのフランジが容器の縁に係合して、試験装置を操作可能な向きに容易に配置できるようになる。
【0050】
本発明のある種の実施態様においては、そのキャップには、容器の内部の溶液を撹拌するために使用する回転可能なロッドを受けるように適合させた中央の口をそのキャップの中に有している。場合によっては、その中央の口が中央ワッシャの中に配され、それがさらにキャップの上の中央ワッシャ口の中に配されている。典型的には、その中央の口には、回転可能なロッドと接触するその口の部分に配されたテフロン(登録商標)材料(すなわち、低摩擦性のポリテトラフルオロエチレンポリマ)が含まれていて、その回転可能なロッドと接触する中央の口の部分が回転可能なロッドと組み合わさってシールを形成し、それが、容器内部に含まれる物質が外部環境に逃げ出すことを抑制している。本発明のいくつかの実施態様には、本発明の方法を実施するためのさらなる要素、たとえばその中央口に配することが可能な回転可能なロッドを含む試験装置キットが含まれるが、ここでその回転可能なロッドは、中央の口を通過させて、流体に最も近い円錐形の要素に配することが可能であって、それによって流体を含む容器の部分に入って、その中央ロッドが、凝縮物をキャップの第二の側面から容器内部に含まれる流体の中に戻すための流体導管の役割を果たす。典型的には、その回転可能なロッドは、そのロッドの末端に流体撹拌要素を有していて、それが容器内部の流体を撹拌する。
【0051】
本発明の典型的な実施態様においては、その試験装置にはキャップの中に配されたサンプル口を有し、それを適用して、容器の中から溶液のサンプルを得たり、容器の中へ組成物を導入したりすることが可能となる。場合によっては、そのサンプル口はサンプル口ワッシャの中に配され、それがさらにキャップの上のサンプルワッシャ口の中に配される(たとえば、図6参照)。本発明の一つの実施態様においては、そのサンプル口ワッシャが、キャップの上に配されて、容器の内部の溶液に接触するカニューレを案内し、支持する。典型的には、カニューレに接触するサンプル口ワッシャの部分と、サンプルワッシャ口に接触するサンプル口ワッシャの部分とで、シールが形成され、それによって、容器内部に含まれる物質が外部環境の中に逃げ出すことを抑制する。
【0052】
本発明のいくつかの実施態様においては、そのサンプル口を適用することで、容器の内部の溶液に接触し、その温度をモニタする温度要素(たとえば、温度計、熱電対など)を導入することが可能となる。本発明のその他の実施態様においては、その試験装置にはさらに、キャップの中に別個の温度要素口を含んでいて、それを適用することで、容器の内部の溶液の温度をモニタする温度要素を導入することが可能となり、さらにそれを適用して温度要素口をカバーして容器内部の物質が外部環境の中へ逃げ出すのを抑制する温度要素口キャップを受ける。
【0053】
本発明の典型的な実施態様には、キャップの上に、流体を含む容器と接触して容器との間にシールを形成するためのシーリング要素が含まれ、それが、そのキャップを容器と操作可能に係合させたときに、容器内部の物質が外部環境の中へ逃げ出すことを抑制する。本発明のいくつかの実施態様においては、そのシーリング要素は、フランジに結合されているか、隣接されているか、またはフランジによって支持されている。当業界公知の各種のシーリング要素および機構を、シーリング要素として使用することができる。本発明のある種の実施態様においては、そのシーリング要素がOリングである。本発明のいくつかの実施態様においては、そのキャップに、シーリング要素を保持するための溝または窪みが含まれる。
【0054】
本発明のある種の実施態様においては、容器の中で流体(たとえば、流体凝縮物)と接触する試験装置の部分が、pH5〜pH7のpH範囲のリン酸緩衝生理食塩液と、1〜7%のリモネンと、0.3〜5%のドデシル硫酸ナトリウムとを含む溶液による分解に抵抗性を有する材料で構成される。本発明の他の実施態様においては、容器の中で流体(たとえば、流体凝縮物)と接触する試験装置の部分が、pH5〜pH7のpH範囲のリン酸緩衝生理食塩液と、1〜9%のリモネンと、0.3〜9%のドデシル硫酸ナトリウムと、0.5〜15%の低級アルカノールとを含む溶液による分解に抵抗性を有する材料で構成される。本発明のいくつかの実施態様においては、この部分がデルリン(Delrin)でできている。同様にして、本発明のいくつかの実施態様においては、そのOリングがバイトン(Viton)でできている。
【0055】
その試験装置に、組成物からの化合物の溶出の観察法を容易とするための各種のその他の要素を含むこともできる。たとえば、試験装置のある種の実施態様では、キャップを容器に固定するための1個または複数のクランプが含まれていてもよい。本発明のその他の実施態様では、容器の中から溶液のサンプルを得たり、容器の中にサンプルを導入したりすることを可能とするようなサンプリング要素が含まれるが、そのサンプリング要素には、容器中の同じ位置から複数の流体サンプルを得られるようにした角度付きのカニューレが含まれる。本発明のそのような実施態様においては、その使用される角度付きのカニューレの角度が、カニューレの動きに対する物理的なバリヤとして機能して、何度繰り返しても容器の中の同じ場所にカニューレを向かわせて、サンプル採取におけるバラツキの無さを維持する。さらに、本発明のいくつかの実施態様では、複数のキャップ付き容器を保持するためのラックが含まれる。
【0056】
典型的には、試験装置の構成成分(たとえば、ワッシャやワッシャ口)は、相互に密接するように設計されていて、容器内部の物質が外部環境の中に逃げ出すことを防止するためのシールを形成し、その試験装置における、蒸発が原因の容器からの流体ロスを抑制する。さらに、試験装置の、容器内部の流体に接触することが可能な部分(たとえば、中央口およびサンプル口)では、その口をカバーするキャップ要素が受けられるようにして、容器内部の物質が外部環境の中に逃げ出すことを抑制することもできる。さらに、本発明の典型的な実施態様においては、そのキャップが単一構造であるが、このことは、その物体が材料を1回鋳込むだけで製造されていて、流体ロスの原因となるようなシームやジョイントがまったくないということを意味している。本発明の一つの例示的な実施態様においては、その試験装置が、37℃、7日の間の蒸発による流体ロスを、その容器内に含まれる流体の5%、4%、3%、2%、または1%未満に抑制している。本発明のまた別な例示的な実施態様においては、その試験装置が、37℃、15日の間の蒸発による流体ロスを、その容器内に含まれる流体の5%、4%、3%、2%、または1%未満に抑制している。
【0057】
先に開示された試験装置は、広く各種の状況での使用に合わせるために変更を加えてもよい。本発明のいくつかの実施態様においては、そのサンプリング口を、温度測定のために容器の中に熱電対を導入できるようにすることにより、温度測定口として機能させることも可能である。その他の実施態様においては、温度口として機能する別途の口を有する。本発明のいくつかの実施態様においては、サンプリング口を使用してサンプリングカニューレを導入することにより、容器内部のサンプリング位置を容易に調節することができる。サンプル導入口は、溶解試験容器の中にサンプルを精度良くかつ容易に導入する方法を与え、またサンプリングの確度とさらにはサンプリングの精度を顕著に向上させる。さらに、この試験装置を使用して手動でサンプリングしたり、自動サンプラの使用に合わせたりすることもできる。本発明の多くのさらなる実施態様、たとえば本発明の試験装置を使用して実施する本発明の溶出方法、さらには当業界公知の技術によりその試験装置を製造する方法は、当業熟練者には容易に明らかであろう。
【0058】
本明細書に開示された方法および試験装置は、当業界公知の広く各種の手順において使用できるように適用することができる。たとえば以下に示すような全ての特許および文献資料は、引用することにより本明細書に取り入れたこととする:シャー(Shah)ら、インターナショナル・ジャーナル・オブ・ファーマシューティクス(International Journal of Pharmaceutics)、125(1995)99〜106;AAPS・ファームサイ(AAPS PharmSci)、2002;4(2)アーティクル7;AAPS・ファームサイ(AAPS PharmSci)、2004;6(1)アーティクル11;ガイダンス・フォア・インダストリー(Guidance for Industry)、『エクステンディド・リリース・オーラル・ドーセージ・フォームス:ディベロップメント・エバリュエーション・アンド・アプリケーション・オブ・インビトロ/インビボ・コリレーションズ(Extended Release Oral Dosage Forms:Debelopment,Evaluation,and Application of In Vitro/In Vivo Correlations)』、米国保健福祉省(U.S.Department of Health and Human Services)食品・医薬品庁(Food and Drug Administration)センター・フォア・ドラッグ・エバリュエーション・アンド・リサーチ(Center for Drug Evaluation and Research)(CDER)、1997年9月、BP2;パラマクラ(Palamakula)ら、「プレパレーション・アンド・インビトロ・キャラクタリゼーション・オブ・セルフ−ナノエマルジファイド・ドラッグ・デリバリー・システムズ・オブ・コエンザイム・Q10・ユージング・カイラル・エッセンシャル・オイル・コンポーネンツ(Preparation and In Vitro Characterization of Self−Nanoemulsified Drug Delivery Systems of Coenzyme Q10 Using Chiral Essential Oil Components)」、ファーマシューティカル・テクノロジー(Pharmaceutical Technology)、2004年10月;ローレンス(Lawrence)ら、アドバンスト・ドラッグ・デリバリー・レビューズ(Advanced Drug Delivery Reviews)、45(2000)89〜121、ならびに米国特許第6,063,314号明細書;米国特許第4,819,662号明細書;米国特許第5,464,650号明細書;米国特許第5,609,629号明細書;米国特許出願公開第2004/0037886号明細書;および米国特許出願公開第2003/0208236号明細書などである。
【0059】
本発明の実施態様には、第一のコンテナ、前記コンテナの上のラベル、および前記コンテナの中に含まれる組成物を含むキットが含まれる。そのようなキットには、ラベルを有する一つまたは複数のコンテナの中の溶出媒体成分が含まれ、前記コンテナ上のラベルまたは前記コンテナの中に入れられた添付文書には、その組成物が、マトリックスから組成物を溶出させるのに使用することができることが表示されている。場合によっては、そのキットには、予め混合してあって直ぐに使用可能な溶出媒体が含まれる。場合によっては、そのキットには、媒体を使用するための装置のようなさらなる要素が含まれるが、その実施態様は図6に示してある。本発明のその他の実施態様には、媒体を使用するための試験装置を含むキットが含まれるが、その実施態様は、溶出媒体成分を除いて、図6に示されている。
【実施例】
【0060】
<実施例I:酢酸デキサメタゾン含浸製品の溶出(インビトロ溶解)の測定>
[本発明を実施するために使用される典型的な方法および材料]
(典型的な化学物質)
*(R)−(+)−リモネン、97%(またはそれ以上)、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)カタログ#:183164500ML、または同等物
*一塩基性リン酸ナトリウム(NaHPO)、シグマ(Sigma)カタログ番号S8282、または同等物
*二塩基性リン酸ナトリウム(NaHPO)、シグマ(Sigma)カタログ番号S7907、または同等物
*塩化ナトリウム
*ドデシル硫酸ナトリウム(シグマ(Sigma)カタログ#L6026、または同等物)
*アセトニトリル、HPLCグレード
*1N水酸化ナトリウム溶液
*プロセスウォータ
*米国薬局方 酢酸デキサメタゾン標準物質
*ギ酸アンモニウム、フルカ(Fluka)カタログ#17843、または同等物
*ギ酸、フルカ(Fluka)カタログ#06450、または同等物
*水酸化ナトリウム、試薬グレード
*塩酸、試薬グレード
*塩化カリウム
*一塩基性リン酸カリウム
*1−ブタノール
【0061】
(0.5M一塩基性リン酸カリウム溶液の典型的調製法)
6.8グラムの一塩基性リン酸カリウムを100mLのメスフラスコに秤り込む。プロセスウォータを用いて定容まで希釈し、混合する。
【0062】
(pH6.0の緩衝剤溶液の典型的調製法)
3.0mLの1N水酸化ナトリウム溶液、138mLの0.5N塩化カリウム溶液、および50mLの0.5M一塩基性リン酸カリウム溶液を1Lのメスフラスコに加え、プロセスウォータを用いて定容まで希釈し、混合する。
【0063】
(標準希釈剤の典型的調製法)
500mLのアセトニトリルと、500mLのpH6.0緩衝剤溶液を混合(1:1)し、1Lの標準希釈剤を得る。
【0064】
(媒体の典型的調製法)
0.05Mリン酸緩衝生理食塩液(PBS)溶液、pH6.0の調製法:
この手順では、4Lの0.05Mリン酸緩衝生理食塩液(PBS)を調製するためのものである。その他の容積のPBS溶液は、材料の量を適宜スケールアップするかスケールダウンすることによって調製することができる。
*36±1.8グラムの塩化ナトリウムを精秤して、4リットルのメスシリンダの中へ入れる。
*そのシリンダに3Lのプロセスウォータを添加する。
*完全に溶解するまで撹拌する。
*22.8±1.1グラムの二塩基性リン酸ナトリウムを精秤して、その同じシリンダに加える。
*完全に溶解するまで撹拌する。
*4.4±0.2グラムの一塩基性リン酸ナトリウムを精秤して、その同じシリンダに加える。
*完全に溶解するまで撹拌する。
*1N塩酸を使用してpHを下げて、溶液のpHを6.0±0.1に調節する。必要があれば、pHを上げるために1N水酸化ナトリウムを使用する。
*pHを調節してから、容積4Lになるようにプロセスウォータを用いて希釈する。
*その溶液を適切なビンに移して、PBS媒体、pH6といるラベルを貼る。
【0065】
(5%のドデシル硫酸ナトリウムおよび2%の1−ブタノールを含む4リットルの5%(w/w)(R)−(+)−リモネン媒体(溶出媒体)の典型的調製法)
この手順は、4Lの媒体を調製するためのものである。その他の容積は、材料の量を適宜変更することによって調製することができる。
*200.0±2グラムのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を5Lのビーカの中に精秤する。
*200.0±6グラムの(R)−(+)−リモネンを精秤し、それを同じビーカの中に移す。
*混合する。
*80.0±2グラムの1−ブタノールを加えてから、混合する。
*3520g±192gのPBS媒体、pH6を精秤し、同じビーカに徐々に加える。
*ホットプレート撹拌機および撹拌バーを使用して、その内容物を完全に混合する。
*その溶液を5Lのガラスビンに移し替え、適切なラベルを貼る。
【0066】
(典型的な標準の調製法)
*100mgの酢酸デキサメタゾン標準物質を乾燥皿の中に秤量し、真空オーブン中真空下105℃で3時間かけて乾燥させる(乾燥粉末は、デシケータ中に保存し、7日以内に使用するべきである)。
*標準希釈剤中、100μg/mLの酢酸デキサメタゾンの標準溶液を調製する。
【0067】
「溶出手順」
(典型的な溶解試験系の準備)
*低蒸発ロス用カバーをミニパドルに取り付け、そのミニパドルを駆動ユニットに据え付ける。
*その低蒸発ロス用カバーにカニューレを取り付ける。
*パドルを保持している駆動ユニットを下げて、パドルの高さ、パドルのブレードと容器の内側の底部との間の距離を25mmにセットするが、それには、25mmのボールまたは各種適切なゲージを使用する。試験の間、この距離を保つ。
*それぞれのミニ容器に75mLの溶出媒体を加える。
*クランプを使用して、低蒸発ロス用カバーを所定の位置に固定する。
*カニューレの位置を調節して、カニューレが相互に接触したり、邪魔をしたりしないようにする。
*カニューレを上下させて調節して、カニューレの位置が、パドルの上側と、溶出媒体の表面とのほぼ中央に来るようにする。
*カニューレを納めたプローブの上にプラスチックのねじを使用して、カニューレを締め付け、その位置を保持させる。
*適切な栓または空の注射筒またはパラフィルムを使用して、カニューレの(ミニ容器の外側に位置する)外側端をシールする。この端部をシールしないと、蒸発による媒体のロスが起きることになるであろう。
*溶出媒体を45±0.5℃の平衡状態にする。
*すべての容器の中の媒体の温度を測定、記録する。
*表1Aに従って、溶出パラメータを設定する。
【0068】
【表1】

【0069】
*低蒸発ロス用カバーを固定していたクランプを外す。
*駆動ユニットを注意深く上げる。
*それぞれのサンプルを別々の個別の容器の中に注意深く入れる。サンプルが容器の底部に達していることを確認する。
*駆動ユニットを定位置に下げる。駆動ユニットを定位置に据える。
*低蒸発ロス用カバーがミニ容器を覆っていることを確認する。
*直ちに溶解試験容器のメニューに従ってパドルの回転を開始すると同時に、タイマもスタートさせる。
*クランプを使用して低蒸発ロス用カバーを固定する。
*サンプリングのタイムポイントでは、カニューレからシールを外す。
*1〜3mLの注射筒を使用して、1mLのサンプルを抜き出す。サンプルを、容量2mLのHPLCバイアルの中に移し替える。
*適切な蓋を用いてバイアルを密封する。それぞれの容器に、専用の注射筒およびカニューレを使用する。
*クリーンな新しい注射筒の中に1mLのフレッシュな溶出媒体を採取し、カニューレを使用してミニ容器の中に移し込む。
*適切な栓または空の注射筒またはパラフィルムを使用して、カニューレの(ミニ容器の外側に位置する)外側端をシールする。
*それぞれのサンプリングでそれらのステップを繰り返す。
*抜き出したサンプルについて、HPLCのようなクロマトグラフィ分析を用いて分析する。
【0070】
本発明の説明的な実施態様として、典型的なCRD製品からの酢酸デキサメタゾンの溶出のための薬物溶解試験法(インビトロ)を開発した(CRD=放出制御用具(Controlled Release Device))。各種のCRD製品が当業界公知であって、たとえば、電気リード線を含むチップ(tip)およびリング(ring)が挙げられる(たとえば、米国特許第5,987,746号明細書、米国特許第6,567,704号明細書、および米国特許第7,184,839号明細書、ならびに米国特許出願公開第2002/0138123号明細書を参照されたい。引用することにより、それらの内容を取り入れたものとする。)。その方法は、製品開発、製品の品質管理を支援し、規制要件を満たす必要がある(たとえば以下のものを参照されたい:FDA・ガイダンス・フォア・インダストリー(FDA Guidance for Industry)(CDRH)、「ガイダンス・フォア・ザ・サブミッション・オブ・リサーチ・アンド・マーケティング・アプリケーションズ・フォア・パーマネント・ペースメーカ・リーズ・アンド・フォア・ペースメーカ・リード・アダプター・510(k)・サブミッションズ(Guidance for the Submission of Research and Marketing Applications for Permanent Pacemaker Leads and for Pacemaker Lead Adaptor 510(k) Submissions)」、2000年11月;および、バージェス(Burgess)ら、「クリティカル・クオリティ・アンド・パフォーマンス・パラメータズ・フォア・モディファイド−リリース・パレンテラル・ドーセージ・フォームス(Critical Quality and Performance Parameters for Modified−Release Parenteral Dosage Forms)」、ファーマコペイアル・フォーラム(Pharmacopeial Forum)、2005、31(6)、p.1745)。
【0071】
(試験法の開発)
試験法開発におけるステップには、たとえば以下に記載の当業界公知の方法および材料が適用されている:米国薬局方、ジェネラル・チャプター(General Chapter)<1092>、イン−プロセス・リビジョン(In−Process Revision)、「ザ・ディッソリューション・プロシジャー:ディベロップメント・アンド・バリデーション(The Dissolution Procedure:Development and Validation)」、ファーマコペイアル・フォーラム(Pharmacopeial Forum))、2005、31(5)、p.1463;バージェス(Burgess)ら、「アシュアリング・クオリティ・アンド・パフォーマンス・オブ・サステインド・アンド・コントロールド・リリース・パレンテアルズ:ワークショップ・レポート(Assuring Quality and Performance of Sustained and Controlled Release Parenterals:Workshop Report)」、AAPS・ファームサイ(AAPS PharmSci)、2002、4(2)、アーティクル7;およびバージェス(Burgess)ら、「アシュアリング・クオリティ・アンド・パフォーマンス・オブ・サステインド・アンド・コントロールド・リリース・パレンテアルズ:EUFEPS・ワークショップ・レポート(Assuring Quality and Performance of Sustained and Controlled Release Parenterals:EUFEPS Workshop Report)」、AAPS・ファームサイ(AAPS PharmSci)、2004、6(1)、アーティクル11などである。試験方法の開発には以下のことを含む。
*溶出試験のための用具の準備
*溶出パラメータの選択−−薬物の溶解度に対するpHの効果、媒体および添加物の選択、媒体の容積
*シンク条件の評価
*パラメータに沿った試験装置の選択
*分析試験法の選択−−検出および定量、サンプリングポイント
*溶出識別性(elution discrimination)の検討
【0072】
第一のステップは、標準的な水性溶解媒体を使用して製品の溶解度を求めることであったが、そのような媒体のいくつかは以下の文献にリストアップされている:米国薬局方(たとえば、米国薬局方、ジェネラル・チャプター(General Chapteer)<724>、「ドラッグ・リリース(Drug Release)」を参照されたい。)、文献(たとえば、ヌーリー(Noory)ら、(食品・医薬品庁(Food and Drug Administration)−CDER)、「ステップス・フォア・ディベロップメント・オブ・ア・ディッソリューション・テスト・フォア・スペアリングリー・ウォータ−ソリュブル・ドラッグ・プロダクツ(Steps for Development of a Dissolution Test for Sparingly Water−soluble Drug Products)、ディッソリューション・テクノロジーズ(Dissolution Technologies)、2000、7(1)、アーティクル3を参照されたい。)、ならびに米国FDAのウェブサイト(たとえば、検索用語を使用する溶解媒体のためのFDAウェブサイトリンク、「accessdata.fda.gov/scripts/cder/dissolution/」を参照されたい。)などである。最初の試験で、製品に対するpHの影響の評価が可能となる。その製品の溶解性が低いことが判ったら、界面活性剤の必要性(エマルションを形成する臨界ミセル濃度未満)についての評価をすることができる。
【0073】
酢酸デキサメタゾンはステロイドであって、水にはやや溶解しにくい。酢酸デキサメタゾンは、ポリママトリックスの中に分散体として分配される。その薬物は通常、マトリックスから、そのリード線が置かれた流体系の中へと拡散する。本発明の典型的な実施態様においては、ポリマと良好な熱力学的適合性を示す溶解媒体を使用することが重要である(たとえば、ペパス(Peppas)ら、「モデリング・オブ・ドラッグ・ディフュージョン・スルー・スウェラブル・ポリメリック・システムズ(Modeling of Drug Diffusion through Swellable Polymeric Systems)」、ジャーナル・オブ・メンブレン・サイエンス(Journal of Membrane Science、1980、7、p.241〜253;およびポール・D.R.(Paul D.R.)、「コントロールド・リリース・ポリメリック・フォーミュレーションズ(Controlled Release Polymeric Formulations)」、ACS・シンポジウム・シリーズ(ACS Symposium Series)、第33巻、(ACS、ワシントン(Washington)、1976などを参照されたい。)。エマルション(マクロ、ミクロ、またはナノ)形成性の界面活性剤を含む溶解媒体であれば、ポリマとのそのような熱力学的安定性を与えるであろう。界面活性剤の使用は生理学的にも適切であり、溶解試験において首尾よく使用することができる。
【0074】
文献調査から、デキサメタゾン溶出性心臓ペーシング電極からのデキサメタゾンの溶出は、PBS(添加物無し)を使用した場合には、24日で19%未満であることが判った(たとえば、カサス−ベジャール(Casas−Bejar)ら、「メディカル・エレクトリカル・リーズ・アンド・イン−ドウェリング・カテーテルズ・ウィズ・エンハンスト・バイオコンパチビリティ・アンド・バイオスタビリティ(Medical Electrical Leads and in−dwelling Catheters with enhanced Biocompatibility and Biostability)」、米国特許出願公開第2002/0138123A1号明細書(出願番号第998536号、2002年9月26日出願)を参照されたい。)(PBS=リン酸緩衝生理食塩液)。ガイダント・コーポレーション(Guidant Corporation)によって実施された別の研究では、30日で約10%の溶出を示した(たとえば、ハイル・R(Heil,R)(ガイダント・コーポレーション(Guidant Corporation))、「インビボ・コンパリソン・オブ・デキサメタゾン−エリューティング・カーディアック・ペーシング・エレクトロード・テクノロジーズ・ウィズ・ディファレント・リリース・レーツ(In Vivo Comparison of Dexamethasone−eluting cardiac pacing electrode technologies with different release rates)」、プロシーディングズ・オブ・インターナショナル・シンポジウム・オン・コントロールド・リリース・オブ・バイオアクティブ・マテリアルズ(Proceed.Int’l.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.)、2000、27、p.471を参照されたい。)。添加物を含まないPBS(pH5)を使用した場合には、CRDリード線からの溶出パーセントは、10日で7%未満であった。その情報から、その薬物が緩衝化された媒体中では低濃度で可溶性であったとしても(以下のシンク条件評価を参照)、その薬物溶解性は、ポリマからの拡散によって調節できるであろうということが判る。
【0075】
(溶出試験のための用具の準備)
サンプルの薬物溶出部分を、用具から別途に切り出して、試験の目的に使用した。そのCRD切片は、その切片の長さが約1〜2cmとなるようにその用具から切り出した。
【0076】
(溶出パラメータの選択)
異なるpHを有する緩衝剤を評価する目的で、11ミリグラムの酢酸デキサメタゾンを500mLの媒体(pHを変えて調節した緩衝剤)の中に溶解させた。pHに関しての酢酸デキサメタゾンの安定性は次の通りであった:pH3>pH5≒酢酸塩pH5.7>水>pH7>pH9。この濃度は、約75mLの媒体の中に典型的な用具からの薬物が完全に溶出したとした場合に観察されるであろう濃度の約10倍の濃度であった。このことから、そのシンク条件は上述の緩衝剤の場合には適切であることが確認された。
【0077】
次のステップには、その媒体に対してマクロ−エマルションを形成することが可能な各種のタイプの添加物を加えることによって、溶出性を向上させる試みが含まれた。これは、難溶性の原薬の溶出を実施するための米国薬局方、米国FDA、および業界のガイドラインに準拠するものであった(たとえば、以下の文献をそれぞれ参照されたい:米国薬局方ジェネラル・チャプター(General Chapteer)<1092>、「ザ・ディッソリューション・プロシジャー:ディベロップメント・アンド・バリデーション(The Dissolution Procedure:Development and Validation)」、ファーマコペイアル・フォーラム(Pharmacopeial Forum))、2005、31(5)、p.1463;FDA・ガイダンス・フォア・インダストリー(FDA Guidance for Industry)(CDER)、「エクステンデッド・リリース・オーラル・ドーセージ・フォームス:ディベロップメント・エバリュエーション・アンド・アプリケーション・オブ・インビトロ/インビボ・コリレーションズ(Extended Release Oral Dosage Forms:Development,Evaluation and Application of In Vitro/In Vivo Correlations)」、1997年、9月;FDA・ガイダンス・フォア・インダストリー(FDA Guidance for Industry)(CDER)、「イミーディエイト・リリース・ソリッド・オーラル・ドーセージ・フォームス:スケールアップ・アンド・ポストアプルーバル・チェンジズ:ケミストリー・マニュファクチャリング・アンド・コントロールス、インビトロ・ディッソリューション・テスティング、アンド・インビボ・バイオイクイバレンス・ドキュメンテーション(Immediate Release Solid Oral Dosage Forms;Scale−up and Postapproval Changes:Chemistry,Manufacturing,and Controls,In Vitro Dissolution Testing,and In Vivo Bioequivalence Documentation)」、1995年11月;4.バージェス(Burgess)ら、「アシュアリング・クオリティ・アンド・パフォーマンス・オブ・サステインド・アンド・コントロールド・リリース・パレンテラルズ:ワークショップ・レポート(Assuring Quality and Performance of Sustained and Controlled Release Parenterals:Workshop Report)」、AAPS・ファームサイ(AAPS PharmSci)、2002、4(2)、アーティクル7;バージェス(Burgess)ら、「アシュアリング・クオリティ・アンド・パフォーマンス・オブ・サステインド・アンド・コントロールド・リリース・パレンテラルズ:EUFEPS・ワークショップ・レポート(Assuring Quality and Performance of Sustained and Controlled Release Parenterals:EUFEPS Workshop Report)」、AAPS・ファームサイ(AAPS PharmSci)、2004、6(1)、アーティクル11)。溶出媒体に対する添加物として、各種のタイプの界面活性剤、すなわち、アニオン性(たとえば、ドデシル硫酸ナトリウム)、カチオン性(たとえば、臭化セチルトリメチルアンモニウム=CTAB)、およびノニオン性(たとえば、ソルトール(Solutol)HS15=12−ヒドロキシステアリン酸のポリオキシエチレンエステル、ツイーン(Tween)80)の適用性を評価した。CRDからの酢酸デキサメタゾンの溶出には、顕著な上昇はなかった。得られた最大溶出量は、5%のソルトール(Solutol)を添加した媒体中26日で、約13%であった。
【0078】
酢酸デキサメタゾンの溶出を界面活性剤が顕著に上昇させることがないので、共界面活性剤を含む2段溶出方法を試みた。これは、ゼラチンカプセル剤において使用された方法(たとえば、検索用語を使用する溶解媒体についてのFDAのウェブサイトリンクを参照されたい:「accessdata.fda.gov/scripts/cder/dissolution/」)(デュタステライド・ソフト・ゼラチン・カプセル(Dutasteride Soft Gelatin Capsule)および米国薬局方溶出方法に類似のモデルに従った。しかしながら、媒体の二重特性のために、この媒体評価は中断した。
【0079】
ポリママトリックスに対する浸透性がより高く、(表面溶出ではなく)拡散を増大させるような加速溶出方法を開発する検討において、マイクロエマルションまたはナノエマルションを形成する添加物を含む媒体を評価した。その評価から、リモネンをドデシル硫酸ナトリウムと併用すると、熱力学的に安定であるエマルション媒体が得られるということが判った(たとえば、パラマクラ(Palamakula)ら、「プレパレーション・アンド・インビトロ・キャラクタリゼーション・オブ・セルフ−ナノエマルジファイド・ドラッグ・デリバリー・システムズ・オブ・コエンザイム・Q10・ユージング・カイラル・エッセンシャル・オイル・コンポーネンツ(Preparation and In−Vitro Characterization of Self−nanoemulsified Drug Delivery Systems of Coenzymer Q10 using Chiral Essential Oil Components)」、ファーマシューティカル・テクノロジー(Pharmaceutical Technology)、2004、28(10)、74〜88を参照されたい。)。
【0080】
マイクロエマルションは、薬物送達システムにおいて広く使用されている(たとえば、ローレンス・M.J.(Lawrence,M.J.)、リース・G.D.(Rees,G.D.)、「マイクロエマルション・ベースド・メディア・アズ・ノーベル・ドラッグ・デリバリー・システムズ(Micro−emulsion based Media as Novel Drug Delivery Systems)」、アドバンスト・ドラッグ・デリバリー・レビューズ(Advanced Drug Delivery Reviews)、45、2000、p.89〜121を参照されたい。)。マイクロエマルションに伴う利点としては、それらが熱力学的に安定であること、および調製が容易であることが挙げられる。同一の単一相溶液の中に極性が異なるミクロドメインが存在していることによって、水溶性物質と油溶性物質の両方を、所望によっては同時に、溶解させることが可能となる。可溶化物がマイクロエマルション液滴と連続相との間で分配されること、ならびに、マイクロエマルション液滴の内部に可溶化の好適なサイトが存在するかもしれないが、可溶化物は多くのサイトの内の一つに位置することができるということに注意されたい。たとえば、油/水マイクロエマルション中で親油性、水不溶性薬物を組み入れるのに好ましいと考えられるサイトは、分散油相および/または界面活性剤分子の疎水性の尾の部分であり、それに対して、水溶性物質は、油中水型液滴の分散した水相の中に最も組み込まれやすいであろう。マイクロエマルション系の魅力は、疎水性薬物を無極性の油相の中に取り込み、それによってそれらの溶解度を向上させることが可能であるところにある(たとえば、ポール、D.R.(Paul,D.R.)、「コントロールド・リリース・ポリメリック・フォーミュレーションズ(Controlled Release Polymeric Formulations)」、ACS・シンポジウム・シリーズ(ACS Symposium Series)、第33巻、ACS、ワシントン(Washington)、1976を参照されたい。)。
【0081】
異なった濃度のリモネンおよびドデシル硫酸ナトリウムを含む媒体の効果を検討した。pH6のPBS中3%のリモネンおよび1%のSDSを含む媒体が、典型的な用具での溶出には最適であることが見出された。その媒体によって、溶出速度を加速させることが可能であった。たとえば、CRD2からの酢酸デキサメタゾンの溶出は、8日で約100%であったが、それに対して、CRD1では15日で70%を超えた。その媒体はさらに、プロセス変動ロット(process variation lot)から公称ロット(nominal lot)を識別することが可能であった(後述の公称ロットおよびプロセス変動ロットの溶出データ、および識別性データの項を参照されたい。)。その溶出プロットは、非崩壊タイプの製品で観察されるものを代表していた(たとえば、ハンソン・R.(Hanson,R.)、グレイ・V.(Gray,V.)『ハンドブック・オブ・ディッソリューション・テスティング(Handbook of Dissolution Testing』、p.22、第3版、ディッソリューション・テクノロジーズ・インコーポレーテッド(Dissolution Technologies,Inc.)、独国・ホッケシン(Hockessin,DE)を参照されたい。)。より強い、すなわち架橋度がより高いマトリックス中での薬物溶出を促進させたり、溶出を加速させようとの検討から、より高い熱力学的安定性を与える成分を含む媒体(すなわち、ナノエマルションの形態)が開発された。一つの典型的な媒体は、pH6のPBS中、5%のR−(+)−リモネン、5%のSDS、および2%の1−ブタノールを含む。
【0082】
(シンク条件の評価)
その媒体(pH6のPBS中、5%のR−(+)−リモネン、5%のSDS、および2%の1−ブタノール)が、溶出試験法開発ガイドラインで概説されているようなシンク条件に適合していることが見出された。このシンク条件の検討から、典型的な用具中の薬物を75mLの媒体の中に完全に溶解させると、その薬物が完全に、予想されるサンプル濃度の10倍も溶解することが証明された。
【0083】
(試験装置の選択)
この方法のために選択された試験装置は、米国薬局方の試験装置2(パドル)であった。試験法開発の過程で、試験装置1(バスケット)よりも試験装置2における方が、溶出速度がやや高いことが見出された。用具の中の薬物含量が低いことから、ミニパドルを有するミニ容器がその方法のために選択された。その試験装置は、100rpmに設定した。媒体容積が75mLであるのが、分析試験法の検出能力に適切であり、シンク条件に適合していることが見出された。その媒体は、45℃±0.5℃に保持した。それぞれのタイムポイントにおけるサンプルの抜き出し容積は1mLであり、溶出用ガイドラインに従って補償用の媒体を用いた。
【0084】
(酢酸デキサメタゾンの定量のための分析試験法の選択)
最初に選択した分析試験法は、UV−Visであった。しかしながら、物質の中に存在している薬物の濃度が低いことから、UV検出を用いたHPLCが、選択した方法として見出された。
【0085】
移動相の調製法およびカラムの選択は、酢酸デキサメタゾン モノグラフ(米国薬局方29−NF24)の教示に従った。移動相Aは、pH4.1のギ酸塩緩衝剤およびアセトニトリル(3:2)を含み、移動相Bは、pH4.1のギ酸塩緩衝剤およびアセトニトリル(9:1)を含んでいた。使用したクロマトグラフィカラム(米国薬局方L11)は、アジレント・ゾルバックス・SB−フェニル(Agilent Zorbax SB−Phenyl)、4.6mm×250mm、5μmであった。1mL/分の流速でグラジエントを使用した。ランタイムは約70分であった。UV検出の波長は262nmであったが、その方法が、溶出媒体中の酢酸デキサメタゾンを定量するには特に有効であることが見出された。標準およびサンプルの注入容積は、100μLであった。その薬物は、その検討の時間の間ではその媒体中で安定であることが判った。
【0086】
(サンプリングのタイムポイントおよび溶出データ)
公称ロットのCRDからの酢酸デキサメタゾンの溶出を、図1Aおよび図1Bに示し、比較したが、それらは、CRDからの酢酸デキサメタゾンの溶出の典型的なプロットを表している。
【0087】
CRDについての溶出パターンは、非分解性製品(non−disintegrating product)のプロファイルに類似したものであった(たとえば、ハンソン・R.(Hanson,R.)、グレイ・V.(Gray,V.)『ハンドブック・オブ・ディッソリューション・テスティング(Handbook of Dissolution Testing』、p.22、第3版、ディッソリューション・テクノロジーズ・インコーポレーテッド(Dissolution Technologies,Inc.)、独国・ホッケシン(Hockessin,DE)を参照されたい。)。このプロファイルは、一般的に得られたものであって、その溶解速度は、拡散および溶解のプロセスによって求めたものである。
【0088】
時間に対して、酢酸デキサメタゾンの溶出を対数プロットすると、8日目には溶出速度が実質的に平坦域(漸近線)に達したことが判る(CRD1における薬物溶出の対数プロットを示す図2を参照されたい。)。最適なサンプリングのタイムポイントとしては、典型的なCRDの場合には、1日、3日、6日および8日を選択した。
【0089】
典型的なCRDの3種の公称ロットについて、提案されている推奨溶出方法を使用して分析した。その結果を図3に示す。その結果から、その用具の3種の公称ロットの間では、その溶出プロファイルが似ていることが判る。
【0090】
(溶出識別性の検討)
溶出方法の識別特性について、同一の用具の3種のロットを試験することにより検討した。公称プロセスを使用して一つのロットを生産し、異なったプロセス変動を用いて、その他の二つのロットそれぞれを生産した。溶出方法は、公称プロセスとプロセス変動ロットの間を識別することができた。
【0091】
それぞれのロットからの6種のサンプルを使用した、第一の検討においては、CRD1からの酢酸デキサメタゾンの溶出は、公称ロットでは15日で約77%であったが、それに対して、第一のプロセス変動のロットでは、その溶出が15日で約56%であった。CRD2では、酢酸デキサメタゾンの溶出は、公称ロットの場合では8日で約101%であったが、それに対して、プロセス変動ロットではその溶出が8日で約84%であった。それらの結果は、米国FDAガイドラインに規定された、類似性係数、F2の識別性の判定基準にも適合している。CRD1とCRD2の場合、そのF2値(下記の計算式参照)はそれぞれ、41と45であった。
【0092】
第二の検討においては、公称ロットからのCRD1サンプルについて得られた結果を、第二のプロセス変動ロットのそれと比較した。それぞれのロットからの6種のサンプルを使用した。CRD1からの酢酸デキサメタゾンの溶出は、公称ロットでは15日で77%であったが、それに対して、第二のプロセス変動ロットでは、その溶出が15日で約57%であった。それらの結果はさらに、下記の文書に規定されているような、類似性係数、F2の識別性に関する判定基準にも適合していた:米国FDAガイドライン(たとえば、FDA・ガイダンス・フォア・インダストリー(FDA Guidance for Industry)(CDER)、「エクステンデッド・リリース・オーラル・ドーセージ・フォームス:ディベロップメント・エバリュエーション・アンド・アプリケーション・オブ・インビトロ/インビボ・コリレーションズ(Extended Release Oral Dosage Forms:Development,Evaluation and Application of In Vitro/In Vivo Correlations)」、1997年、9月;およびFDA・ガイダンス・フォア・インダストリー(FDA Guidance for Industry)(CDER)、「イミーディエイト・リリース・ソリッド・オーラル・ドーセージ・フォームス:スケールアップ・アンド・ポストアプルーバル・チェンジズ:ケミストリー・マニュファクチャリング・アンド・コントロールス、インビトロ・ディッソリューション・テスティング、アンド・インビボ・バイオイクイバレンス・ドキュメンテーション(Immediate Release Solid Oral Dosage Forms;Scale−up and Postapproval Changes:Chemistry,Manufacturing,and Controls,In Vitro Dissolution Testing,and In Vivo Bioequivalence Documentation)」、1995年11月などである。計算されたF2値は45であった。識別性の検討の際に得られた溶出データを図4および図5に示す。
【0093】
表1Aに記載した媒体を使用した、第三の検討においては、CRD1を溶出試験にかけたが、そのF2値は、二つのプロセス変動でそれぞれ47および44であった。識別性の検討の際に得られた溶出データを図7Aに示す。
【0094】
表1Aに記載した媒体を使用した、第四の検討においては、CRD2を溶出試験にかけたが、そのF2値はプロセス変動の場合で46であった。識別性の検討の際に得られた溶出データを図7Bに示す。
【0095】
溶出ガイドラインにあるように、その方法に識別性があるとみなすには、そのF2係数が50未満であるべきである(たとえば、FDA・ガイダンス・フォア・インダストリー(FDA Guidance for Industry)(CDER)、「エクステンデッド・リリース・オーラル・ドーセージ・フォームス:ディベロップメント・エバリュエーション・アンド・アプリケーション・オブ・インビトロ/インビボ・コリレーションズ(Extended Release Oral Dosage Forms:Development,Evaluation and Application of In Vitro/In Vivo Correlations)」、1997年、9月;およびFDA・ガイダンス・フォア・インダストリー(FDA Guidance for Industry)(CDER)、「イミーディエイト・リリース・ソリッド・オーラル・ドーセージ・フォームス:スケールアップ・アンド・ポストアプルーバル・チェンジズ:ケミストリー・マニュファクチャリング・アンド・コントロールス、インビトロ・ディッソリューション・テスティング、アンド・インビボ・バイオイクイバレンス・ドキュメンテーション(Immediate Release Solid Oral Dosage Forms;Scale−up and Postapproval Changes:Chemistry,Manufacturing,and Controls,In Vitro Dissolution Testing,and In Vivo Bioequivalence Documentation)」、1995年11月を参照されたい。)。上述のように計算されたF2は、その方法が識別性があることを表している。
【0096】
F2の計算式:
F2=50LOG{[1+1/nΣt=1(R−T−0.5×100}
ここでRおよびTは、それぞれのタイムポイントで溶解されているパーセントである。
【0097】
(結論)
以下においてまとめたインビトロ溶解試験法は、リード線のようなステロイド溶出性製品についての薬物溶出性を試験するのには適していることが見出された。その溶出媒体は、公称サンプルとプロセス変動を伴って生産されたサンプルとを識別することが見出された。溶出方法の詳細を次の表1Bにまとめた。
【0098】
【表2】

【0099】
<実施例2:低級アルカノール共溶媒を含む媒体の実施態様>
本発明の実施態様には、低級アルカノールの形態の共溶媒を含む溶出媒体と、この媒体を使用するための方法とが含まれる。典型的な共溶媒を含む媒体の実施態様には、たとえば、pH6.0のPBSの中に、5%のR(+)リモネン、5%のドデシル硫酸ナトリウム、2%のn−ブタノールを含む。この媒体の実施態様は、図7Bおよび図7Cに示した検討において使用された。これが典型的な配合ではあるが、本発明の媒体の実施態様には、媒体組成物の中に各種の構成成分を広く各種の濃度範囲で含むことが可能であり、その例としては、たとえば次の表1Cに示したものが挙げられる。
【0100】
【表3】

【0101】
当業熟練者ならば、市販の試薬を使用して、そのような媒体組成物を容易に作ることができる。たとえば、PBS中に5%のR(+)リモネン、5%のドデシル硫酸ナトリウム、および5%のn−ブタノールを含む100mLの媒体組成物を含む一つの説明的な実施態様においては、5%という値は、全構成成分の値を反映している(たとえば、5グラムのアルコール+5グラムのリモネン+5グラムのSDS+85グラムのPBS溶液)。
【0102】
この共溶媒媒体を用いて使用することが可能な典型的な条件および/または方法論的ステップ(たとえば、温度、撹拌など)は、先の表1Aに含まれている。
【0103】
本発明の明細書に引用したすべての特許および文献資料は、引用することによりそれらのすべてを本明細書に取り入れたものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物を含むマトリックスから前記化合物の溶液の中への溶出を観察するための方法であって、前記方法が、
前記化合物を含むマトリックスを溶液に暴露させるステップであって、ここで前記溶液が、
pH5〜pH7のpH範囲を有するリン酸緩衝生理食塩液と、
1〜7%のリモネンと、
0.3〜5%のドデシル硫酸ナトリウムと、
を含むステップと、
前記化合物の存在について前記溶液を分析して、前記化合物の前記マトリックスから前記溶液の中への溶出を観察するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記溶液が、
0.5〜15%の低級アルカノールと、
1〜9%のリモネンと、
0.3〜9%のドデシル硫酸ナトリウムと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶液が、
pH6のリン酸緩衝生理食塩液と、
3〜5%のリモネンと、
3〜5%のドデシル硫酸ナトリウムと、
1〜3%のn−ブタノールと、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物を同じ速度で溶出させる複数のマトリックスを製造するように設計されたプロセスによって製作された複数のマトリックスについて前記方法を実施するステップと、
複数のマトリックスの二つまたは複数の溶出速度を比較して、前記二つまたは複数のマトリックスが同一の溶出速度を有するかまたは異なった溶出速度を有するかを決定するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を使用して前記化合物の存在について、前記溶液を分析する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物を含む前記マトリックスが、その中にブレンドされた前記化合物を有するポリママトリックスである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記マトリックスが、生物医学的グレードのシリコーンポリマを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が、ステロイド、抗凝固剤、抗生物質、または抗炎症剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物が、酢酸デキサメタゾンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物を含む前記マトリックスが、埋植可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
25〜45℃の間の溶液温度における溶出を観察することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
撹拌用具を用いて前記溶液を撹拌することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記溶液の容積が、50〜150ミリリットルの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記方法において、45℃で72時間の間に、高分子量シリコーンの中に含浸された酢酸デキサメタゾンの少なくとも50%を溶出させる性能を基準に選択された溶液を使用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
pH5〜pH7のpH範囲を有するリン酸緩衝生理食塩液と、
1〜9%のリモネンと、
0.3〜9%のドデシル硫酸ナトリウムと、
0.5〜15%の低級アルカノールと、
の溶液を含む物質組成物。
【請求項16】
前記低級アルカノールが、エタノールまたはn−ブタノールである、請求項15に記載の物質組成物。
【請求項17】
前記溶液が、
pH6のリン酸緩衝生理食塩液と、
3〜5%のリモネンと、
3〜5%のドデシル硫酸ナトリウムと、
1〜3%のn−ブタノールと、
を含む、請求項15に記載の物質組成物。
【請求項18】
ステロイド、抗凝固剤、抗生物質、または抗炎症剤を含む溶出性薬剤を含浸させたマトリックスをさらに含む、請求項15に記載の物質組成物。
【請求項19】
前記マトリックスが、心臓用リード線の一部として適用される、請求項18に記載の物質組成物。
【請求項20】
流体を含む容器を覆う装置であって、前記装置が、
前記容器と係合させるためのキャップを含み、
前記キャップには、
第一の外側面と、
前記容器の中に含まれる流体に暴露されている第二の内側面であって、前記第二の側面には、前記流体からの凝縮物が付着したものを前記流体の中へ容易に戻す円錐形の要素を含む第二の内側面と、
前記キャップの第一の外側面と第二の内側面との間に配されたフランジと、
回転可能なロッドを受けるために適用される、前記キャップの中に配された中央の口であって、前記中央の口には、前記回転可能なロッドと接触する口の部分に配されたテフロン(登録商標)材料が含まれ、前記回転可能なロッドと接触する前記中央の口の部分が、前記回転可能なロッドと共になってシールを形成して、容器内部に含まれる物質が外部環境へ逃げ出すのを抑制する中央の口と、
前記キャップの中に配されたサンプル口であって、前記サンプル口は、ユーザが前記容器の中から前記溶液のサンプルを得るか、または、前記容器の中へ組成物を導入することを可能とするために適用されるサンプル口と、
前記流体を含む前記容器と接触して前記容器との間にシールを形成して、前記キャップを前記容器と操作可能に係合させたときに、前記容器内部の物質が外部環境の中へ逃げ出すことを抑制する、前記キャップの上に配されたシーリング要素と、を含み、
前記容器の中で流体と接触する前記キャップの部分が、
pH5〜pH7のpH範囲のリン酸緩衝生理食塩液と、
1〜7%のリモネンと、
0.3〜5%のドデシル硫酸ナトリウムと、
を含む溶液による分解に対して抵抗性のある材料を含み、
前記装置が、前記容器からの蒸発による流体のロスを抑制している、
装置。
【請求項21】
前記容器の中で流体と接触するキャップの部分が、pH5〜pH7のpH範囲を有するリン酸緩衝生理食塩液と、1〜9%のリモネンと、0.3〜9%のドデシル硫酸ナトリウムと、0.5〜15%の低級アルカノールとを含む溶液による分解に対して抵抗性のある材料を含む、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記シーリング要素が、前記フランジに連結されたOリングである、請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記サンプル口が、サンプル口ワッシャの中に配され、前記サンプル口ワッシャがさらに前記キャップの上のサンプルワッシャ口の中に配されている、請求項20に記載の装置。
【請求項24】
前記サンプル口ワッシャが、前記容器の内部で前記溶液と接触するカニューレを案内し、支持するように前記キャップの上に配されている、請求項23に記載の試験装置。
【請求項25】
前記カニューレに接触する前記サンプル口ワッシャの部分と、前記サンプルワッシャ口に接触する前記サンプル口ワッシャの部分とが、前記容器の内部に含まれる物質が外部環境の中に逃げ出すことを抑制するシールを形成する、請求項23に記載の試験装置。
【請求項26】
前記試験装置が、前記キャップの中に温度要素口をさらに含み、
前記温度要素口が、ユーザが前記容器の内部の溶液の温度をモニタする温度要素の導入を可能とするように適用され、
前記温度要素口が、前記温度要素口を覆って、前記容器内部の物質が外部環境へ逃げ出すのを抑制する温度要素口キャップを受けるように適用される、
請求項20に記載の試験装置。
【請求項27】
前記中央の口が前記中央ワッシャの中に配され、前記中央ワッシャがさらに、前記キャップの上の中央ワッシャ口の中に配される、請求項20に記載の試験装置。
【請求項28】
前記中央口の中に配された回転可能なロッドをさらに含み、
前記回転可能なロッドが、前記流体に最も近い円錐形の要素の部分で前記中央の口を通して前記流体を含む容器の部分に入るように配され、前記中央ロッドが、前記キャップの第二の側面からの凝縮物を前記容器の内部に含まれる前記流体の中へ戻すための流体導管として機能し、
前記回転可能なロッドが、前記ロッドの末端に、前記容器内部の流体を撹拌する流体撹拌要素を有する、
請求項20に記載の試験装置。
【請求項29】
前記キャップが単一構造である、請求項20に記載の試験装置。
【請求項30】
前記キャップを前記容器に固定するクランプをさらに含む、請求項20に記載の試験装置。
【請求項31】
前記試験装置が、前記容器内部に含まれる前記流体の、37℃で15日の間における、蒸発による流体ロスを1%未満に抑制する、請求項20に記載の試験装置。
【請求項32】
前記サンプル口が、ユーザが前記容器の内部の溶液に接触してその温度をモニタする温度要素の導入を可能とするように適用される、請求項20に記載の試験装置。
【請求項33】
ユーザが前記容器の内部から前記溶液のサンプルを得るか、前記容器の中にサンプルを導入することを可能とするように適用されるサンプリング要素をさらに含み、前記サンプリング要素が、前記容器内部の同じ位置から複数の流体サンプルを得るのに適用される角度付きのカニューレを含む、請求項20に記載の試験装置。
【請求項34】
前記フランジが、前記試験装置を操作可能な方向に容易に位置させるように、前記容器の末端を係合させる、請求項20に記載の試験装置。
【請求項35】
キャップを付けた複数の容器を保持するためのラックをさらに含む、請求項20に記載の試験装置。

【図6】
image rotate

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate


【公表番号】特表2010−534339(P2010−534339A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518238(P2010−518238)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/009085
【国際公開番号】WO2009/014755
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(595038051)メドトロニック ミニメド インコーポレイテッド (71)
【Fターム(参考)】