説明

薬物送達のための、ひび割れた高分子放出領域を含む医療機器

(a)ひび割れ、あるいは患者に医療機器を移植もしくは挿入した際に加えられた応力(例えば、機械的、化学的、あるいは熱的なもの)の結果としてのひび割れに適した、少なくとも一ヶ所の高分子放出領域、ならびに(b)高分子放出領域の下方もしくは内部に配置する治療薬を含む医療機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に医療機器に関するものであり、より具体的には治療薬を放出するための高分子領域を含む、医療機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現代医学の実践において、患者の体内における生理活性物質の生体内輸送は一般的である。生理活性物質の生体内輸送は、しばしば、体内の標的部位に一時的もしくは永続的に挿入される可能性のある、医療機器を用いることにより実施される。これらの医療機器は、必要に応じて、それらの標的部位で短時間または長時間、生理活性物質の標的部位への輸送を持続することができる。
【0003】
例えば、治療薬を体内に送達するための高分子を基材とする、多くの医療機器が開発されている。例として、Boston Scientific社(TAXUS)、Johnson&Johnson社(CYPHER)、およびその他の会社から市販されている、薬剤溶出性冠状動脈ステントを含む。
【0004】
いくつかの一般的な輸送方法に従い、治療薬は医療機器に使用される生物学的に安定もしくは分解可能な高分子層の内部、または下方に供給する。いったん医療機器が患者の目的とする場所に挿入されると、例えば、治療薬の添加量および高分子層の性質に依存したプロファイルにより、治療薬が医療機器から放出される。
【0005】
多くの症例において、治療薬の放出速度および全体的な投与量の調節は、適切に治療するための重要なパラメーターである。高分子層の選択は、これらのパラメーターに大きな影響を与える。多くの製剤において、総投与量を調節するために層の厚さを変更することが可能である。にもかかわらず、多くの場合、治療薬は放出層中に閉じ込められ、放出されない。
【特許文献1】米国特許6,545,097号
【特許文献2】米国特願5,733,925号
【発明の開示】
【0006】
本発明によって取り組まれるこれらと他の挑戦は、一形態において、(a)ひび割れ、または患者に医療機器を移植もしくは挿入した際に加わる応力の結果としてのひび割れに適した、少なくとも一ヶ所の高分子放出領域、ならびに(b)高分子放出領域の下方もしくは内部に配置する治療薬を含む、医療機器を提供するものである。
【0007】
本発明の利点は、治療薬の放出速度を増加させる、医療機器を提供できることにある。
【0008】
本発明の別の利点は、閉じ込められる治療薬の量を減らす、医療機器を提供できることにある。
【0009】
これらと他の実施形態および本発明の利点は、後に続く詳細な説明および特許請求の範囲の検討により、当該技術分野における通常の技術を有する人に速やかに理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の詳細な理解は、下記の多くの局面における詳細な説明、および本発明の実施形態を参照することにより得られる。続く実施形態の詳細な説明は、説明を意図したものであって発明を限定するものではない。本発明の要旨は、添付の特許請求の範囲により定義される。
【0011】
前述のとおり一形態において、本発明は(a)ひび割れ、あるいは患者に医療機器を移植もしくは挿入した際に加えられた応力の結果としてのひび割れに適した、少なくとも一ヶ所の高分子放出領域、ならびに(b)高分子放出領域の下方もしくは内部に配置する治療薬を含む、医療機器を提供するものである。
【0012】
本発明が適用される医療機器の実施例には、例えば、カテーテル(例えば、バルーンカテーテルのような腎臓もしくは血管カテーテル)、ガイドワイヤー、バルーン、フィルター(例えば、大静脈フィルター)、ステント(例えば非拡張型、自己拡張型、または機械的拡張型の冠状動脈ステント、脳ステントのような抹消血管ステント、尿道ステント、尿管ステント、胆道ステント、気管ステント、消化管ステント、および食道ステントを含む)、移植ステント、脳動脈瘤フィルターコイル(Guglimi着脱可能コイルおよび金属コイルを含む)、代用血管、心筋プラグ、ペースメーカーリード、心臓弁、血管弁、軟骨の再生医療骨格、骨、皮膚、その他の生体内再生組織、縫合糸、縫合アンカー、吻合クリップおよびリング、組織ステープル、ならびに手術部位結紮クリップのような、移植可能かつ挿入可能な様々な医療機器に加え、体内への移植または挿入に適した、他の様々な医療機器が含まれる。
【0013】
本発明の医療機器は、全身的治療に使用される移植可能かつ挿入可能な医療機器、ならびにあらゆる哺乳類の組織および器官の局部的な治療に使用されるものを含む。限定されない実施例としては、腫瘍、心臓、冠状動脈、抹消血管系 (概して "血管系"と称される)、腎臓、膀胱、尿道、尿管、前立腺、膣、子宮、卵巣を含む泌尿生殖器系、目、肺、気管、食道、腸、胃、大脳、肝臓、膵臓、骨格筋、平滑筋、胸部、皮膚組織、軟骨、歯、および骨を含む器官。
【0014】
本明細書における"治療" は、疾病もしくは疾患の予防、または疾病もしくは疾患に関連した症状の減少もしくは消失、あるいは症状もしくは疾患の実質的もしくは完全な消失のこととする。好適な対象("患者"とも称される)は脊椎動物であり、より望ましい対象は哺乳類、さらに望ましい対象はヒトである。
【0015】
本発明と併せて用いる医療機器の具体的な実施例として、再狭窄の治療のための治療薬を血管系に届ける、冠状動脈ステントおよび脳ステントのような血管系ステントを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、本発明の高分子放出領域は医療機器全体に該当する。他の実施形態においては、高分子放出領域は医療機器の一部もしくはそれ以上の部分に該当する。例えば高分子放出領域は、医療機器に組み込まれる一つもしくはそれ以上の線維の形、基礎をなす医療機器基材の全体あるいは一部のみに形成される、一つまたはそれ以上の高分子層の形などになりうる。層は、基礎をなす基材上の様々な場所で様々な形で提供され、様々な高分子物質から形成される。基礎をなす医療機器基材に用いられる物質は、セラミック製、金属製、および高分子製の基材である。基材物質はまた、カーボンもしくはシリコン基材の物質を用いて形成することができる。本明細書におけるある物質の"層"は、その厚さが縦横と比較して小さい物質の領域のこととする。本明細書における層は平面である必要はなく、例えば基礎をなす基材の輪郭を呈する。層は不連続(例えば、パターン化)にもなりうる。"フィルム"、"層"、および"コーティング" のような表現は、本明細書で交互に用いることができる。
【0017】
本発明に従い、放出領域はキャリア領域およびバリア領域を含む。"キャリア領域" はさらに治療薬からなり、また治療薬が放出される放出領域を意味する。例えばいくつかの実施形態において、キャリア領域は医療機器全体を構成する(例えば、ステント本体の形で提供される)。他の実施形態においては、キャリア領域は機器の一部のみに該当する(例えば、ステント本体のような医療機器基材を覆うコーティング)。"バリア領域" は治療薬の供給源と所定の放出部位との間に配置され、治療薬が放出される速度を調節する領域を意味する。例えばいくつかの実施形態において、医療機器は治療薬の供給源を囲むバリア領域からなる。他の実施形態においては、バリア領域は治療薬の供給源上に配置され、順に、医療機器基材の全体もしくはその一部上に配置される。
【0018】
前記のとおり、本発明は高分子放出領域がひび割れる医療機器を対象とする。ひび割れは、ほとんどの不定形なガラス質プラスチック、さらにある半結晶性高分子を含む他の高分子においてもみられる現象である。
【0019】
ひび割れは微細な細長い空隙でできており、一見微細な亀裂のようである。しかしながら亀裂とは異なり、ひび割れは線維と呼ばれる細長い高分子領域によって架橋される。空隙が形成されるので、ひび割れは物質の体積増加を招く。これはすなわち、ひび割れた高分子はひび割れていない高分子と比べて、より密度が低いことを意味する。これはまた、ひび割れが一般的に、体積を増加させるような分力が、高分子放出領域全体あるいはその一部の領域で存在するような応力条件下で起こることを意味する(例えば、高分子の分子を互いに離すような引っ張り傾向のある引張応力の適用下)。空隙は応力方向に垂直な平面内で形成されることが知られており、線維は応力方向に平行で、空隙を安定化する。機械的応力に加えて、溶媒(例えば、水および有機溶媒)、可塑剤、相溶剤、あるいは高分子領域の体積を膨張させる他の媒体(例えば、高分子の膨潤による)もまた、ひび割れを引き起こす熱応力として知られている(例えば、急速な物質の加熱からの応力)。さらに、2つもしくはそれ以上の前記の(すなわち、機械的、化学的、熱的な)処理の組み合わせも同様に、明らかにひび割れを作るために用いられる。
【0020】
ひび割れは通常、望ましくないと見なされる。例えば、ひび割れは失敗の兆候ではないが多くの場合において、最終的に失敗となりうる亀裂成長の前駆体である。本発明においては、しかしながらひび割れは高分子からの薬剤送達を容易にするために用いられるので、望ましいものとされる。理論にとらわれることなく、それらの会合した空隙のおかげで、ひび割れは医療機器の高分子放出領域の内部をより体液に接近させることができると考えられている。さらにひび割れた生分解性の高分子において、そのひび割れはまた、高分子の分解速度を増加させるのに用いることができ、したがって治療薬の放出を増加させる (例えば、体液への接近増加による)。よってひび割れは、本発明の高分子放出領域から治療薬を放出する速度を増加させることが期待される。生物学的に安定な高分子放出領域においても同様に、ひび割れは放出する治療薬の総量を増加させることが期待される (したがって、最終的に機器内に残る薬剤の量を減らし、輸送効率を改善する)。これは例えば、ひび割れを形成せずに、一般に治療薬が閉じ込められて機器から溶出できないような、生物学的に安定な高分子放出領域とは対照的である。そのようなトラッピング問題は、ことさら多糖類、ポリペプチド(例えば、タンパク質)、もしくはポリヌクレオチド(例えば、プラスミドDNA)のような高分子量の治療薬なら深刻である。ゆえに、本発明は速度および放出される治療薬の累積量を増加させる手段を提供できるという利点がある。
【0021】
治療薬の放出プロファイルはまた、ひび割れ傾向以外の生物学的安定性/分解性、相対的親水性/疎水性などのような、高分子放出領域の特性によって変わりうる。
【0022】
放出プロファイルはまた、機器内の高分子放出領域のサイズ、数、もしくは位置を変更することにより修正することができる。例えば、高分子キャリアおよびバリア層の放出プロファイルは、提供している発明に基づいて、厚さや表面積を変えることにより修正することができる。さらに放出プロファイルを修正するために、多くの高分子放出領域を用いることができる。例えば、本発明の多くのキャリアもしくはバリア層は、同じかあるいは異なる含量(例えば、異なる高分子および治療薬含量)を持ち、互いの表面に積み重ね、互いに水平方向に配置することなどが可能である。
【0023】
一般的に、本発明における高分子放出領域内のひび割れは、生体外あるいは生体内で形成される。
【0024】
例えば、本発明のいくつかの側面において、患者には機械的な応力がかかる際のひび割れに適した、高分子放出領域を持つ医療機器が投与される。機械的な応力が生体内の高分子放出領域上にかかることにより、ひび割れを形成させる。機器の移植または挿入時に、ひび割れを誘導する力がかかる状況の一例として、高分子放出領域がバルーンまたはその一部(例えば、バルーンコーティング)に相当するような場合がある。他の実施例は、高分子放出領域がステントまたはその一部(例えば、ステントコーティング)に相当するような場合がある。高分子放出領域が金属製のステント本体上のコーティング層として提供される場合において、現在様々な機械的拡張型 (例えば、バルーン拡張型)および自己拡張型のニッケル-チタン合金、ステンレス・スティール、ならびにコバルト合金のような物質がステント内で使用されている。それらは拡張中に変形(伸張を含む)するため、上を覆うコーティングに応力 (引張応力を含む) がかかる。
【0025】
本発明の他の実施形態において、ひび割れた高分子放出領域は生体外で、例えばひび割れを誘導するための機械的な応力を受けるような方法、熱的に応力が形成される方法、および一種またはそれ以上の種類(例えば、溶媒、可塑剤、相溶剤など)が高分子放出領域を膨らませ、ひび割れを誘導するために利用される方法により形成される。溶媒膨張剤に関しては、用いられる溶媒は高分子放出領域の組成に依存して変化し、水性溶媒、有機溶媒(一種もしくはそれ以上の有機溶媒種を含む)、ならびに水性/有機溶媒(水、および一種もしくはそれ以上の有機溶媒種を含む)から選択される。
【0026】
生体外でひび割れが生じる場合において、高分子放出領域は最初に形成され、その次に別の医療機器の一部に取り付けられる。あるいは生体外での処理は、すでに医療機器と完全に結合した高分子放出領域上で行われる(例えば、高分子放出領域が医療機器全体に相当する、あるいは高分子放出領域が、例として基礎をなす基材上のコーティングのような医療機器の一部に相当するような場合) 。
【0027】
生体外でひび割れが生じるようなある実施形態において、治療薬はひび割れの後に高分子放出領域へ導入される(例えば、下記のような治療薬を含む溶液の溶射または吸収による)。
【0028】
他のある実施形態において、治療薬は生体外でのひび割れ処理中に存在する。溶媒膨張剤を利用する場合において、選択された溶媒は治療薬の貧溶媒であるかもしれない(例えば、治療薬の移行を最小限にするのに望ましい範囲内)。
【0029】
ひび割れを作る技術にもかかわらず、移植後、一般的に体液は時間とともにさらなるひび割れを形成させる。例えば、体液はある高分子放出領域を膨張させ、前記のひび割れを引き起こす。別の実施例のように、体液はまた高分子を化学的に攻撃し(例えば、加水分解もしくは酵素の攻撃)、高分子放出領域内のあるポイントの機械的応力を増大させ、さらなるひび割れを引き起こすかもしれない。この点に関して、化学的攻撃は明らかに生物学的に分解可能な物質に対して起こるが、生物学的に安定な物質に対してもある程度起こることが知られている。
【0030】
本明細書における"高分子放出領域" は、少なくとも50重量%の高分子、一般的には少なくとも75重量%の高分子、より一般的には少なくとも90重量%の高分子からなる領域のこととする。
【0031】
本明細書における"高分子"は、各々が一つもしくはそれ以上の構成単位の複数コピーからなる鎖を、一つまたはそれ以上含む分子のこととする。一般的な高分子鎖の実施例は、化1に示すポリスチレン

であり、nは一般的には10もしくはそれ以上の整数、より一般的には10、100、1000あるいはそれ以上の位数の化2に示すスチレンモノマー

を含む鎖である。(すなわち、鎖はスチレンモノマーの重合、この場合においてはスチレンモノマーの付加重合に由来または一見由来している)。
【0032】
本発明の高分子放出領域に用いる高分子は、ホモ重合体および共重合体を含む。本明細書における"ホモ重合体"は、鎖が全て単一の構成単位の複数コピーからなる高分子である。"共重合体"は、鎖が少なくとも二つの異なる構成単位の複数コピーからなる高分子である。実施例は、ランダム共重合体、統計的共重合体、傾斜共重合体、周期的共重合体(例えば、交互共重合体)、およびブロック共重合体を含む。
【0033】
本発明の高分子放出領域に用いる高分子は、環状、直鎖状、および分岐構造を含む様々な構造をもつことができる。分岐構造は特に、星形構造(例えば、単一の分岐点から三つあるいはそれ以上の鎖が生じる構造)、くし形構造(例えば、主鎖と複数の側鎖を持つ構造)、ならびに樹状構造 (例えば、樹木状および超分岐高分子)を含む。
【0034】
本発明の高分子放出領域に用いる高分子は、生物学的に安定および分解可能な高分子を含む。"生物学的に分解可能な高分子"は、医療機器が体内に残る、およそ月もしくは実に年にもおよぶ期間中に、分解、崩壊(すなわち、加水分解のような結合切断)、および他の崩壊プロセスを受ける高分子を意味する。"生物学的に安定な高分子"は、医療機器が体内に残る、およそ月もしくは実に年にもおよぶ期間中に、実質的に完全なままに残る高分子を意味する。
【0035】
いくつかの実施形態において、本発明の高分子放出領域は、単一タイプのホモ重合体もしくは単一タイプの共重合体を用いて形成される。いくつかの実施形態において、本発明の高分子放出領域は例えば、(a)二つもしくはそれ以上のホモ重合体、(b)二つもしくはそれ以上の共重合体、または(c)一つもしくはそれ以上のホモ重合体と一つもしくはそれ以上の共重合体との組み合わせのような、二つまたはそれ以上のタイプの高分子混合物を含む。
【0036】
前記のように、ひび割れはほとんどの不定形なガラス質プラスチック、および半結晶性高分子を含む他の高分子においても同様にみられる現象である。ひび割れは一般的に、例えば高分子の分子を互いに離すような引っ張り傾向のある機械的引張応力、もしくは溶媒の膨張により体積の増加を引き起こすような分力が、高分子放出領域全体あるいはその一部のみにおいて存在するような応力条件下で起こる。
【0037】
ひび割れはまた一般的に、(a)高分子放出領域のガラス転移温度以下の温度、もしくは(b)領域が一つ以上のガラス転移温度を持ち、高分子放出領域の少なくとも一つ、望ましくは全てのガラス転移温度以下の温度で起こる。ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)、動的機械分析(DMA)、あるいは誘電解析(DEA)を含むあらゆる技術によって測定することができる。
【0038】
これに関連して、本発明で用いる高分子は一般的に、少なくともある程度はTgに基づいて選択される。
【0039】
例えば、高分子放出領域のひび割れが、機器の移植もしくは挿入した際に作られるようないくつかの実施形態において、一般的には体温(37℃)以上(あるいは高分子放出領域が一つ以上のTgを持つ場合において、少なくとも一つのTg、望ましくは全てのTgが体温以上である)、より一般的には、体温より5〜80℃以上のTgを持つ高分子放出領域が選択される。しかしながら、必ずしもそうである必要はなく、例えば機器の移植もしくは挿入処理中に、高分子放出領域をある程度冷却することができる。
【0040】
同様に、高分子放出領域のひび割れが、生体外で生じるような実施形態において、一般的には処理温度以上(あるいは高分子放出領域が一つ以上のTgを持つ場合、少なくとも一つのTg、望ましくは全てのTgが処理温度以上である)、より一般的には、処理温度より5〜80℃以上のTgを持つ高分子放出領域が選択される。したがって、様々な実施形態において、周囲の温度以下で処理を行うことが望ましい場合がある。
【0041】
本発明の高分子領域では、前記の基準を用いることにより、様々な高分子を用いることができる。本発明の高分子放出領域を形成する高分子の実施例は、体温以上のTgを持つ一つもしくはそれ以上の鎖(ひび割れが生体内で生じる場合)あるいはひび割れ温度以上のTgを持つ一つもしくはそれ以上の鎖(ひび割れが生体外で生じる場合)で構成されるホモ重合体および共重合体を含む。高分子鎖の具体的な実施例は、下記のビニル芳香族単量体、他のビニル系単量体(ビニル芳香族単量体以外)、他の芳香族系単量体(ビニル芳香族単量体以外)、メタクリル系単量体、アクリル系単量体、およびアルケン系単量体、の一つもしくはそれ以上から形成される(一見形成されている)ホモ重合体ならびに重合体鎖を含む。
【0042】
ビニル芳香族単量体は芳香族およびビニル基部分を持ち、非置換単量体、ビニル置換単量体、ならびに環置換単量体を含む。具体的なビニル芳香族単量体は、下記(対応するホモ重合体の公表されたTgをカッコ内に示す)の、(a)アタクチックスチレン(Tg100℃)、イソアタクチックスチレン(Tg100℃)および2−ビニルナフタレン(Tg151℃)のような非置換ビニル芳香族、(b)α−メチルスチレンのようなビニル置換芳香族、(c)(i)3−メチルスチレン(Tg97℃)、4−メチルスチレン(Tg97℃)、2,4−ジメチルスチレン (Tg112℃)、2,5−ジメチルスチレン(Tg143℃)、3,5−ジメチルスチレン(Tg104℃)、2,4,6−トリメチルスチレン(Tg162℃)、および4−tert−ブチルスチレン(Tg127℃)のような環アルキル化ビニル芳香族、(ii)4−メトキシスチレン(Tg113℃)および4−エトキシスチレン(Tg86℃)のような、環アルコキシル化ビニル芳香族、(iii)2−クロロスチレン(Tg119℃)、3−クロロスチレン(Tg90℃)、4−クロロスチレン(Tg110℃)、2,6−ジクロロスチレン(Tg167℃)、4−ブロモスチレン(Tg118℃)、および4−フルオロスチレン(Tg95℃)のような環ハロゲン化ビニル芳香族、ならびに(iv)4−アセトキシスチレン(Tg116℃)のようなエステル置換ビニル芳香族を含む。
【0043】
他の具体的なビニル系単量体は、下記の(a)ビニルアルコール(Tg85℃)、(b)安息香酸ビニル(Tg71℃)、ビニル4−tert−安息香酸ブチル(Tg101℃)、シクロヘキサン酸ビニル(Tg76℃)、ピバリン酸ビニル(Tg86℃)、トリフルオロ酢酸ビニル(Tg46℃)、ビニルブチラール(Tg49℃)のようなビニルエステル、(c)2−ビニルピリジン(Tg104℃)、4−ビニルピリジン(Tg142℃)、およびビニルカルバゾール(Tg227℃)のようなビニルアミン、(d)塩化ビニル(Tg81℃)およびフッ化ビニル(Tg40℃)のようなハロゲン化ビニル、(e)メチルビニルエーテル(Tg−31℃)、プロピルビニルエーテル(Tg−49℃)、ブチルビニルエーテル(Tg−55℃)、イソブチルビニルエーテル(Tg−19℃)、tert−ブチルビニルエーテル(Tg88℃)、およびシクロヘキシルビニルエーテル(Tg81℃)のようなアルキルビニルエーテル、ならびに(f)1−ビニル−2−ピロリドン(Tg54℃)およびビニルフェロセン(Tg189℃)のような他のビニル化合物を含む。
【0044】
ビニル芳香族以外の他の具体的な芳香族系単量体は、アセナフタレン(Tg214℃)およびインデン(Tg85℃)を含む。
【0045】
具体的なメタクリル系単量体は、下記の(a)メタクリル酸(Tg228℃)、(b)メタクリル酸ナトリウム(Tg310℃)のようなメタクリル酸塩、(c)メタクリル酸無水物(Tg159℃)、(d)(i)アタクチックメタクリル酸メチル(Tg105−120℃)、シンジオタックメタクリル酸メチル(Tg115℃)、メタクリル酸エチル(Tg65℃)、メタクリル酸イソプロピル(Tg81℃)、メタクリル酸ブチル(Tg20℃)、メタクリル酸イソブチル(Tg53℃)、メタクリル酸t−ブチル(Tg118℃)、メタクリル酸t−ブチルヘキシル(Tg−5℃)、メタクリル酸シクロヘキシル(Tg92℃)、メタクリル酸2−エチルヘキシル(Tg−10℃)、メタクリル酸オクチル(Tg−20℃)、メタクリル酸ドデシル(Tg−65℃)、メタクリル酸ヘキサデシル(Tg15℃)、およびメタクリル酸オクタデシル(Tg−100℃)のようなメタクリル酸アルキル、(ii)メタクリル酸フェニル(Tg110℃)のようなメタクリル酸芳香族、ならびにメタクリル酸ベンジル(Tg54℃)のようなメタクリル酸芳香族アルキルを含み、(iii)メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(Tg57℃)およびメタクリル酸2−ヒドロキシプロピル(Tg76℃)のようなメタクリル酸ヒドロキシアルキル、(iv)メタクリル酸ジエチルアミノエチル(Tg20℃)およびメタクリル酸2−tert−ブチル-アミノエチル(Tg33℃)のようなメタクリル酸アミノアルキル、(v)メタクリル酸イソボルニル(Tg110℃)およびメタクリル酸トリメチルシリル(Tg68℃)を含む、メタクリル酸付加物、さらに(e)メタクリロニトリル(Tg120℃)を含む他のメタクリル酸誘導体を含有するメタクリル酸エステル(メタクリル樹脂)を含む。
【0046】
具体的なアクリル系単量体は、下記の(a)アクリル酸(Tg105℃)、アクリル酸カリウム(Tg194℃)、およびアクリル酸ナトリウム(Tg230℃)のようなアクリル酸無水物ならびに塩、(b)アクリル酸メチル(Tg10℃)、アクリル酸エチル(Tg−24℃)、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル(Tg−11℃)、アクリル酸ブチル(Tg−54℃)、アクリル酸sec−ブチル(Tg−26℃)、アクリル酸イソブチル(Tg−24℃)、アクリル酸tert−ブチル(Tg43−107℃)、アクリル酸ヘキシル(Tg57℃)、アクリル酸シクロヘキシル(Tg19℃)、アクリル酸2-エチルヘキシル(Tg−50℃)、アクリル酸ドデシル(Tg−3℃)、アクリル酸ヘキサデシル(Tg35℃)、アクリル酸ベンジル(Tg6℃)、2−アクリル酸エトキシエチル(Tg−50℃)、2−アクリル酸メトキシエチル(Tg−50℃)、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(Tg-10℃)、アクリル酸2−シアノエチル(Tg4℃)、アクリル酸イソボルニル(Tg94℃)のようなアクリル酸アルキル、アクリル酸アリルアルキル、アクリル酸アルコキシアルキル、アクリル酸ハロアルキル、およびアクリル酸シアノアルキルを含む、あるアクリル酸エステル、(c)アクリルアミド(Tg165℃)、N−イソプロピルアクリルアミド(Tg85−130℃)、およびN,Nジメチルアクリルアミド(Tg89℃)のようなアクリル酸アミド、ならびに(d)アクリロニトリル(Tg125℃)を含む、他のアクリル酸誘導体を含む。
【0047】
アルケンをベースとする具体的な単量体は下記の、エチレン(HDPE)(Tg−125℃)、イソタクチックプロピレン(Tg−8℃)、イソブチレン(Tg−73℃)、1−ブテン (Tg−24℃)、 trans−ブタジエン(Tg−58℃)、4−メチルペンテン(Tg29℃)、1−オクタデセン(Tg55℃)、1−オクテン(Tg−63℃)、および他のα−オレフィン、cis−イソプレン (Tg−63℃)およびtrans−イソプレン(Tg−66℃)、ならびに塩化ビニリデン(Tg−18℃)、フッ化ビニリデン(Tg−40℃)、cis−クロロブタジエン(Tg−20℃)、trans−クロロブタジエン(Tg−40℃)、およびテトラフルオロエチレン(Tg117℃)を含有する、ハロゲン化アルケン単量体を含む。
【0048】
さらに本発明の放出領域で使用される他の高分子は、下記の適当なメンバーから選ぶことができる。ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリビニルカルバゾール、ポリ酢酸ビニルのようなポリビニルエステル、ポリ塩化ビニルのようなポリハロゲン化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体 (EVA) 、塩化ポリビニリデン、ポリビニルメチルエーテルのようなポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体(例えば、Kraton(登録商標)Gシリーズ高分子として市販されている、ポリスチレン−ポリエチレン/ブチレン-ポリスチレン(SEBS)共重合体)、スチレン-イソプレン共重合体(例えば、ポリスチレン-ポリイソプレン−ポリスチレン)、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ならびにスチレン−イソブチレン共重合体(例えば、Pinchukに開示された米国特許6,545,097号(特許文献1参照)のような、ポリイソブチレン−ポリスチレンおよびポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体)を含む、芳香族ビニル−オレフィン共重合体のような芳香族ビニルからなる、ビニル系単量体の高分子および共重合体;シリコン高分子および共重合体;酸性基のいくつかは亜鉛またはナトリウムイオンで中和することができる(一般的にイオノマーとして知られる)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸およびその塩、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体を含む、ポリ(カルボン酸)高分子および共重合体;アクリル酸およびメタクリル酸高分子ならびに共重合体(例えば、メタクリル酸n−ブチル);アセタール高分子および共重合体;酢酸セルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸セルロース酪酸塩、セロファン、レーヨン、レーヨントリアセテート、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロースのようなセルロースエーテルを含む、セルロース高分子ならびに共重合体;ポリオキシエチレン高分子および共重合体;ポリエーテルブロックイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミドのようなポリイミド高分子および共重合体;ナイロン6,6、ナイロン12、ポリカプロラクタム、ポリアクリルアミド、ポリエーテルブロックアミドを含む、ポリアミド高分子および共重合体;ポリアリルスルフォンおよびポリエーテルスルフォンを含む、ポリスルフォン高分子ならびに共重合体;アルキド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アリル樹脂、およびエポキシド樹脂を含む樹脂;ポリカーボネート;ポリアクリロニトリル;ポリベンズイミダゾール;ポリエチレンテレフタレートおよび脂肪族ポリエステル高分子、ポリラクチド(d−,1−およびメソ形を含む)のようなα−ヒドロキシ酸の共重合体、ポリグリコリド、ならびにポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ε−カプロラクトン、ポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)、ポリヒドロキシブチラート、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリ(パラ−ジオキサノン)、トリメチレンカーボネート(およびそのアルキル化誘導体)の高分子、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オンを含む、ポリエステル;ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンのようなポリアリルエーテルを含むポリエーテル高分子および共重合体、ポリエチレンオキシド(PEO)およびポリプロピレンオキシドのようなポリアルキルオキシド;ポリフェニレン硫化物;ポリイソシアネート;ポリプロピレン、(低密度および高密度、低分子量ならびに高分子量)ポリエチレン、(ポリブタ−1−エンおよびポリイソブチレンのような)ポリブチレンのようなポリアルキレン、ポリオレフィンエラストマー(例えば、サントプレン)、エチレンプロピレンジエン単量体(EPDM)ゴム、ポリ−4−メチル−ペン−1−エン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む、ポリオレフィン高分子および共重合体;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(テトラフルオロエチレン−co− ヘキサフルオロプロペン)(FEP)、修飾エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)を含む、フッ素系高分子および共重合体;熱可塑性ポリウレタン(TPU);エラストマーポリウレタンおよび(ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、脂肪族、芳香族、ならびにそれらの混合物をベースとする、ブロックおよびランダム共重合体を含む、ポリウレタン共重合体のようなエラストマー; 市販のポリウレタン共重合体の例は、Bionate(登録商標)、Carbothane(登録商標)、Tecoflex(登録商標)、Tecothane(登録商標)、Tecophilic(登録商標)、Tecoplast(登録商標)、Pellethane(登録商標)、Chronothane(登録商標)、Chronoflex(登録商標)を含む);p−キシリレン系高分子;ポリイミノカルボネート;ポリエチレンオキシド−ポリ乳酸共重合体のようなコポリ(エーテル−エステル);ポリフォスファジン;ポリシュウ酸アルキレン;ポリオキサミドおよびポリオキサエステル(アミンおよびアミド基を含有するものを含む);ポリオルトエステル;パラフィンワックスのようなワックス;コラーゲン、デキストラノマーフィブリン、フィブリノーゲン、エラスチン、キトサン、ゼラチン、でんぷん、およびヒアルロン酸のようなグリコサミノグリカンを含む、ポリペプチド、タンパク質、多糖、脂肪酸(ならびにそのエステル)のようなバイオ高分子。
【0049】
とりわけ望ましい高分子は、ポリスチレン(および他の芳香族ビニル高分子)、ポリメタクリル酸、ポリカーボネート、さらに同じものを含む混合物および共重合体を含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、高分子はポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカーボネート、ポリ酸無水物(Polymerix社、米国、ニュージャージー州、ピスカタウェイ)、PEG−ポリブチルテレフタレート(SurModics社、米国、ミネソタ州、イーデンプレイリー、IsoTis Orthobiolics社、米国、カリフォルニア州、アーバイン)、チロシンをベースとする、ポリアクリル酸(TyRx Pharma社、米国、ニュージャージー州、ニューブランズウィックおよびReva Medical社、米国、カリフォルニア州、サンディエゴ)、ならびにポリアミド-エステル(MediVas有限会社、米国、カリフォルニア州)から選択された、一つもしくはそれ以上のポリエステル鎖のような、生物学的に分解可能な一つもしくはそれ以上の高分子鎖からなる。
【0051】
前記のとおり、本発明の医療機器は一つもしくはそれ以上の治療薬を含む。"薬剤"、"治療薬"、"薬剤としての活性物質"、"医薬的な活性剤"、および他の関連した表現は、本明細書で交互に用いることができる。このような表現は、遺伝子治療薬、非遺伝的治療薬、および細胞を含む。
【0052】
本発明と関連して用いる典型的な非遺伝的治療薬は、下記を含む(a)へパリン、へパリン誘導体、ウロキナーゼ、およびPPACK(D−フェニルアラニン−プロリン−アルギニン−クロロメチルケトン)のような抗血栓症剤、(b)デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、およびメサラミンのような抗炎症剤、(c)パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラスチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポシロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞の増殖をブロックしうるモノクローナル抗体、およびチミジンキナーゼ阻害薬のような抗腫瘍/抗増殖性/抗有糸分裂剤、(d)リドカイン、ブピバカイン、およびロピバカインのような麻酔剤、(e)D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGD含有ペプチド化合物、ヘパリン、ヒルジン、アンチトロンビン化合物、血小板レセプター拮抗薬、トロンビンに対する抗体、血小板レセプターに対する抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害薬、抗血小板薬、およびダニ抗血小板ペプチドのような抗凝固剤、(f)成長因子、転写活性化因子、および翻訳プロモーターのような血管内皮細胞成長プロモーター、(g)成長因子阻害薬、成長因子レセプター拮抗薬、転写リプレッサー、翻訳リプレッサー、複製阻害薬、阻害抗体、成長因子に対する抗体、成長因子と細胞毒素とで構成される二機能性分子、抗体と細胞毒素とで構成される二機能性分子のような血管内皮細胞成長阻害薬、(h)プロテインキナーゼおよびチロシンキナーゼ阻害薬(例えば、チルフォスチン、ゲニステイン、キノキサリン)、(i)プロスタサイクリンアナログ、(j)コレステロール降下剤、(k)アンジオポイエチン、(l)トリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド、およびニトロフラントインのような抗菌剤、(m)細胞毒性薬、細胞増殖抑制剤、および細胞増殖影響因子、(n)血管拡張剤、(o)内在性の血管作用機構を抑制する薬剤、(p)モノクローナル抗体のような白血球動員阻害薬、(q)サイトカイン、(r)ホルモン、(s)ゲルダナマイシンを含む、HSP90タンパク質(すなわち、分子シャペロンもしくはハウスキーピングタンパク質で、細胞の成長や生存に関与する他のクライアントタンパク質/シグナル伝達タンパク質の安定性、および機能に必要とされるヒートショックタンパク質)阻害薬、(t)ベータブロッカー、(u)bARKct阻害薬、(v)ホスホランバン阻害薬、ならびに(w)Serca2遺伝子/タンパク質。
【0053】
好適な非遺伝的治療薬は、パクリタキセル、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、EpoD、デキサメタゾン、エストラジオール、ハロフジノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、ABT−578(Abbott Laboratories社)、トラピジル、リプロスチン、アクチノマイシンD、レステン−NG、Ap−17、アブシキシマブ、クロピドグレル、リドグレル、ベータ−ブロッカー、bARKct阻害薬、ホスホランバン阻害薬、およびSerca2遺伝子/タンパク質を含む。
【0054】
本発明と関連して用いる典型的な遺伝子治療薬は、アンチセンスDNAおよびRNA、さらに様々なタンパク質をコードするDNA(同様にタンパク質自身)を含む、(a)アンチセンスRNA、(b)異常がある、もしくは欠損した内在性分子と入れ替えるためのtRNAもしくはrRNA、(c)酸性および塩基性の線維芽細胞成長因子、血管内皮成長因子、内皮分裂成長因子、表皮成長因子、形質転換成長因子αおよびβ、血小板由来内皮成長因子、血小板由来成長因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞成長因子、インスリン様成長因子のような成長因子を含む、血管由来ならびに他の因子、(d)CD阻害薬を含む、細胞周期阻害剤、さらに(e)チミジンキナーゼ("TK")、および細胞増殖を抑制するのに有効な他の薬剤。同様に興味があるのは、骨形態形成タンパク質("BMP")ファミリーをコードするDNAで、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(OP−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、およびBMP−16を含む。現在の好適なBMPは、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、およびBMP−7のいずれかである。このような二量体タンパク質は、ホモ二量体、ヘテロ二量体、もしくはそれらの組み合わせとして、単独または他の分子と合わせて提供することができる。あるいは追加投与で、BMPの上流もしくは下流への作用を誘導できるような分子を提供することができる。そのような分子は、 "ヘッジホッグ" タンパク質もしくはそれらをコードするDNAのいずれかを含む。
【0055】
遺伝子治療薬送達のためのベクターは、アデノウイルス、gutted型アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス(セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルスなど)、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、複製可能なウイルス(例えば、ONYX−015)のようなウイルスベクター、およびハイブリッドベクター、ならびに、人工染色体および小型染色体、プラスミドDNAベクター(例えば、pCOR)、カチオン高分子 (例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン(PEI))、グラフト共重合体(例えば、ポリエーテル−PEIおよびポリエチレンオキシド−PEI)、中性高分子PVP、SP1017(SUPRATEX)、陽イオン性脂質、リポソーム、リポプレックスのような脂質、タンパク質導入ドメイン(PTD)のようなターゲッティング配列を持つもしくは持たないナノ粒子、あるいはマイクロ粒子のような非ウイルス性のベクターを含む。
【0056】
本発明に関連して用いる細胞は、骨髄全体、骨髄由来単核細胞、前駆細胞(例えば、内皮前駆細胞)、(例えば、間葉系、造血、神経)幹細胞、多能性幹細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、衛星細胞、周皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、およびマクロファージを含むヒト由来(自系もしくは同種異系)の細胞、あるいは必要に応じて興味のあるタンパク質送達のための遺伝子操作が可能である動物、細菌、もしくは菌ソース(異種)由来の細胞を含む。
【0057】
必ずしも上記のものを除くとは限らない多くの治療薬は、血管治療投与計画の候補、例えば再狭窄を標的にした薬剤として認定されている。本発明の実践に有効な薬剤はまた、一つあるいはそれ以上の下記を含む(a)Ca-チャンネルブロッカー、ジルチアゼム、クレンチアゼムのようなベンゾジアゼピン、ニフェジピン、アムロジピン、ニカルジピンのようなジヒドロピリジン系、およびベルパミルのようなフェニルアルキルアミン、(b)ケタンセリンおよびナフチドロフリルのような5−HT拮抗薬、さらにフルオキセチンのような5−HT取り込み阻害薬を含む、セロトニン回路モジュレーター、(c)シロスタゾールおよびジピリダモールのようなホスホジエステラーゼ阻害薬、ホルスコリンのようなアデニル酸/グアニル酸シクラーゼ刺激剤、さらにアデノシンアナログを含む、環状ヌクレオチド経路薬、(d)プラゾシンおよびブナゾシンのようなα-拮抗薬、プロプラノロールのようなβ−拮抗薬、ならびにラベタロールおよびカルベジロールのようなα/β−拮抗薬を含む、カテコールアミンモジュレーター、(e)エンドセリンレセプター拮抗剤、(f)ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、亜硝酸アミルのような有機硝酸塩/亜硝酸塩、ニトロプルシドナトリウムのような無機ニトロソ化合物、モルシドミン、リンシドミンのようなシドノニミン、ジアゾニウムジオレートのようなNONOate、アルカンジアミンのNO付加体、低分子化合物 (例えば、カプトプリル、グルタチオン、N-アセチルペニシラミンのS−ニトロソ誘導体)および高分子化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、オリゴ糖、多糖、合成高分子/オリゴマー、天然高分子/オリゴマーのS-ニトロソ誘導体)を含む、S−ニトロソ化合物、さらにC−ニトロソ−化合物、O−ニトロソ-化合物、N−ニトロソ−化合物、L-アルギニンを含む、一酸化窒素供与/放出分子、(g)シラザプリル、フォシノプリル、およびエナラプリルのようなアンギオテンシン変換酵素、(ACE)阻害薬、(h)サララシンおよびロサルタンのようなATII−レセプター拮抗薬、(i)アルブミンおよびポリエチレンオキシドのような血小板粘着阻害薬、(j)シロスタゾール、アスピリン、およびチエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)のような血小板凝集阻害薬、ならびにアブシキシマブ、エプティフィバタイドおよびチロフィバンのようなGPIIb/IIIa 阻害薬、(k)へパリン、低分子へパリンのようなヘパリノイド、硫酸デキストランおよびβ-シクロデキストリンテトラデカサルフェート、ヒルジン、ヒルログ、PPACK(D−フェニルアラニン−L−プロピル−L−アルギニン−クロロメチルケトン)ならびにアルガトロバンのようなトロンビン阻害薬、アンチスタチンおよびTAP(ダニ抗凝固ペプチド)のようなFXa阻害薬、ワルファリンのようなビタミンK阻害薬、さらに活性化プロテインCを含む、凝固経路モジュレーター、(l)アスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、およびスルフィンピラゾンのようなシクロオキシゲナーゼ経路阻害薬、(m)デキサメタゾン、プレドニゾロン、塩酸プレドニゾロン、およびヒドロコルチゾンのような天然および合成コルチコステロイド、(n)ノルジヒドログアヤレト酸およびコーヒー酸のようなリポキシゲナーゼ経路阻害剤、(o)ロイコトリエンレセプター拮抗薬、(p)E−およびP−セレクチン拮抗薬、(q)VCAM−1、ICAM−1間相互作用阻害薬、(r)PGE1およびPGI2のようなプロスタグランジン、シプロステン、エポプレステノール、カルバシクリン、イロプロスト、ベラプロストのようなプロスタサイクリンアナログを含む、プロスタグランジンおよびそのアナログ、(s)ビフォスフォネートを含む、マクロファージ活性化防止薬、(t)ロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、およびセリバスタチンのようなHMG−CoAレダクターゼ阻害薬、(u)魚油およびオメガ−3−脂肪酸、(v)プロブコール、ビタミンC、ビタミンE、エブセレン、トランス-レチノイン酸、およびSOD模倣体のようなフリーラジカルスカベンジャー/酸化防止剤、(w)bFGF抗体およびキメラ融合タンパク質のようなFGF経路薬、トラピジルのようなPDGFレセプター拮抗薬、アンギオペプチン、オクトレオチドのようなソマトスタチンアナログを含む、IGF経路薬、ポリアニオン性薬(へパリン、フコイジン)、デコリン、TGF−β抗体のようなTGF−β経路薬、EGF抗体のようなEGF経路薬、レセプター拮抗薬およびキメラ融合タンパク質、サリドマイドおよびそのアナログのようなTNF−α経路薬、スロトロバン、バピプロスト、ダゾキシベン、およびリドグレルのようなトロンボキサンA2(TXA2)経路モジュレーター、チルフォスチン、ゲニステイン、およびキノキサリン誘導体のようなタンパク質チロシンキナーゼ阻害薬を含む、様々な成長因子に作用する薬剤、(x)マリマスタット、イロマスタット、およびメタスタットのようなMMP経路阻害薬、(y)サイトカラシンBのような細胞運動阻害薬、(z)プリンアナログ (例えば、6−メルカプトプリンもしくは塩素化プリンヌクレオチドアナログであるクラドリビン)、ピリミジンアナログ(例えば、シタラビンおよび5−フルオロウラシル)、メトトレキサートのような代謝拮抗薬、ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、エチレンイミン、抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン)、ニトロソ尿素、シスプラチン、微小管動態に作用する薬剤(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、EpoD、パクリタキセル、およびエポチロン)、カスパーゼ活性化剤、プロテアソーム阻害剤、血管形成阻害薬(例えば、エンドスタチン、アンギオスタチン、およびスクアラミン)、ラパマイシン、セリバスタチン、フラボピリドール、ならびにスラミン、(aa)ハロフギノンもしくは他のキナゾリノン誘導体、トラニラストのようなマトリックス付着/組織化阻害薬、(bb)VEGFおよびRGDペプチドのような内皮化ファシリテーター、ならびに(cc)ペントキシフィリンのような血液流動学モジュレーターを含む、抗増殖性/抗腫瘍性薬。
【0058】
本発明の実践に有効な多くの追加治療薬はまた、NeoRx社により米国特願5,733,925号(特許文献2参照)で開示され、その完全な開示は参照することにより本明細書に含まれる。
【0059】
一般的な治療薬の添加量は、本発明の医療機器に関連して、当該技術分野における通常の技術を有する人により容易に決定された治療上の有効量で用いることができ、最終的には例えば、治療すべき病気、年齢、性別、患者の健康状態、治療薬の性質、高分子放出領域(群)の性質、医療機器の性質などに依存する。
【0060】
前記のように、生体内もしくは生体外でひび割れる可能性のある高分子放出領域の形成には、本発明に基づいて多くの技術を用いることができる。
【0061】
例えば、一つまたはそれ以上の熱可塑性の性質を持つ高分子から高分子放出領域が形成される場合において、高分子放出領域を形成するための、圧縮形成、インジェクション形成、ブロー形成、スピニング、真空形成、カレンダリング、シート、繊維、ロッド、チューブ、および様々な長さの他の断面プロファイルへの押出を含む、様々な標準的な熱可塑性処理技術を用いることができる。このような、あるいは他の熱可塑性処理技術を用いることにより、機器全体またはその一部を作ることが可能である。
【0062】
溶媒型技術はまた、本発明の高分子放出領域を形成するのに用いることができる。このような技術を用いて最初に放出領域を形成する高分子(類)を含む溶液を提供することにより、高分子放出領域を形成することができる。最終的に選択される溶媒は、一般に高分子放出領域を形成する、高分子もしくは高分子類を溶解する能力、さらに乾燥速度、表面張力などを含む、他の因子に基づいて選択される一種またはそれ以上の溶媒の種類を含む。 一般的にいくつかの溶媒は、最も良い特性をもつ高分子放出領域をどの溶媒が提供するかを見るためにテストされる。好適な溶媒型技術は、これらに限定されないが、溶媒キャスティング技術、スピンコーティング技術、ウェブ被覆技術、溶媒溶射技術、ディッピング技術、エアサスペンション、インクジェット技術、静電技術を含む機械的な懸濁によるコーティング技術、およびこのような処理の組み合わせを含む。
【0063】
発明のいくつかの実施形態において、高分子融液(熱可塑性処理が行われる場合) もしくは高分子を含む溶液(溶媒型処理が行われる場合)は、高分子放出領域を形成するため基材に供給される。例えば基材は、高分子放出領域が供給される、移植可能もしくは挿入可能な医療機器の全体または一部に該当しうる。基材はまた、例えばモールドのような鋳型であり、固形化処理後にそこから高分子放出領域が取り出される。他の実施形態、例えば、押出および共押出技術においては、一つもしくはそれ以上の高分子放出領域が、基材を用いることなく形成される。
【0064】
より具体的な実施例において、ステント本体全体が押出される。別の形態においては、高分子放出層はステント本体に沿っておよびその下層に共押出される。別の形態においては、既存のステント本体上にコーティング層を押し出すことにより、高分子層はステップ本体の下層に供給される。さらに別のより具体的な実施例においては、ステントはモールド内で成型される。
【0065】
一つまたはそれ以上の治療薬、および他の任意の薬を高分子放出領域内に供給することが望ましい場合、このような薬剤は処理条件下で安定である限り、高分子融液もしくは高分子含有溶液内に供給され、高分子(類)と共に処理される。あるいは高分子放出領域の形成後に、治療薬および他の任意の薬剤を導入することができる。例えばいくつかの実施形態において、治療薬および他の任意の薬剤は、溶媒内に溶解もしくは分散され、結果として生じる溶液は、前もって(例えば、前記のディッピング、溶射などの一つもしくはそれ以上の応用技術を用いて)形成された高分子放出領域と接する。生体外でひび割れる場合において、ひび割れを作る前または後に溶液を供給することができる。
【0066】
前記のように、発明のいくつかの実施形態において、治療薬を含む領域上にバリア層が形成される。このような実施形態において、高分子バリア領域は例えば、前記の溶媒型もしくは熱可塑性技術の一つを用いることにより、治療薬含有領域上に形成することができる。 あるいは前もって形成された高分子放出領域は、治療薬含有領域上に供給することができる。
【0067】
当初は高分子放出領域を形成するために選択された技術にもかかわらず、発明の様々な実施形態において、高分子放出領域に多大な残留応力を与えるような条件(例えば高度の非平衡条件)下で高分子放出領域を形成することが望ましく、それは、そのような残留応力が順に、高分子放出領域のひび割れ傾向を増大させると考えられているからである。例えば高分子領域を形成するために熱可塑性技術を用いる場合において、この目的のために急冷(例えば、水のような冷却媒体中への投入による)を行うことができる。別の実施例においては、高分子領域を形成するために溶媒型処理技術を用いる場合において、この目的のために急速乾燥をもたらす溶媒が用いられる。
【0068】
本明細書において、様々な実施形態が具体的に例示および記載されているが、当然のことながら、本発明の修正および変更は前記内容の適用を受け、発明の精神と意図された範囲から逸脱することなく、特許請求の範囲の範囲内で行われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ひび割れを含む高分子放出領域、および(b)当該高分子放出領域の下方もしくは内部に配置される治療薬からなる、治療薬を放出するための移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項2】
当該医療機器がガイドワイヤー、バルーン、カテーテル、大静脈フィルター、ステント、移植ステント、代用血管、脳動脈瘤フィルターコイル、心筋プラグ、心臓弁、血管弁、および再生医療骨格から選択される、請求項1に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項3】
当該治療薬が当該放出領域の下方に配置される、請求項1に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項4】
当該治療薬が当該放出領域の内部に配置される、請求項1に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項5】
当該治療薬が当該高分子放出領域の内部に配置され、当該高分子放出領域は当該医療機器の大部分を構成する、請求項1に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項6】
当該高分子放出領域がステント本体である、請求項5に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項7】
当該高分子放出領域が高分子層状である、請求項1に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項8】
当該高分子層が基材上に配置される、請求項7に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項9】
当該高分子層が当該治療薬からなる領域上に配置される、請求項8に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項10】
当該治療薬が当該高分子層の内部に配置される、請求項8に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項11】
当該高分子放出領域が線維状である、請求項1に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項12】
当該治療薬が抗血栓薬、抗増殖剤、抗炎症薬、抗移動薬、細胞外マトリックスの生産および組織化に影響を及ぼす薬、抗腫瘍薬、抗有糸分裂薬、麻酔薬、抗凝固剤、血管細胞成長プロモーター、血管細胞成長阻害薬、コレステロール降下薬、血管拡張薬、ならびに内在性の血管作用機構を抑制する薬剤から選択される、請求項1に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項13】
当該医療機器が複数の異なる治療薬からなる、請求項1に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項14】
当該高分子放出領域が当該溶剤および溶解高分子からなる液体から、溶媒を蒸発させることにより形成される、請求項1に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項15】
当該高分子放出領域が高分子融液から形成される、請求項1に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項16】
当該高分子融液が急冷ステップからなる処理により冷却される、請求項15に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項17】
(a)患者に医療機器を移植もしくは挿入した際に加わる応力の結果としてのひび割れに適した高分子放出領域、および(b)当該高分子放出領域の下方もしくは内部に配置する治療薬からなる、治療薬を放出するための移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項18】
当該医療機器がバルーン、ステント、およびカテーテルから選択された、拡張可能な医療機器である、請求項17に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項19】
当該治療薬が当該放出領域の下方に配置される、請求項17に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項20】
当該治療薬が当該放出領域の内部に配置される、請求項17に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項21】
当該治療薬が当該高分子放出領域の内部に配置され、当該高分子放出領域は当該医療機器の大部分を構成する、請求項17に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項22】
当該高分子放出領域がステント本体である、請求項21に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項23】
当該高分子放出領域が高分子層状である、請求項17に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項24】
当該高分子層が基材上に配置される、請求項23に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項25】
当該高分子層が当該治療薬からなる領域上に配置される、請求項24に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項26】
当該治療薬が当該高分子層の内部に配置される、請求項24に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項27】
当該高分子放出領域が線維状である、請求項17に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項28】
当該治療薬が抗血栓薬、抗増殖剤、抗炎症薬、抗移動薬、細胞外マトリックスの生産および組織化に影響を及ぼす薬、抗腫瘍薬、抗有糸分裂薬、麻酔薬、抗凝固剤、血管細胞成長プロモーター、血管細胞成長阻害薬、コレステロール降下薬、血管拡張薬、ならびに内在性の血管作用機構を抑制する薬剤から選択される、請求項17に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項29】
当該医療機器が複数の異なる治療薬からなる、請求項17に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項30】
当該高分子放出領域が当該溶剤および溶解高分子からなる液体から、溶媒を蒸発させることにより形成される、請求項17に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項31】
当該高分子放出領域が高分子融液から形成される、請求項17に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。
【請求項32】
当該高分子融液が急冷ステップからなる処理により冷却される、請求項31に記載の移植可能もしくは挿入可能な医療機器。

【公表番号】特表2008−528120(P2008−528120A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552351(P2007−552351)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/002346
【国際公開番号】WO2006/081208
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(507017004)ボストン サイエンティフィック リミティッド (24)
【Fターム(参考)】