説明

虫歯予防用タンパク質およびペプチドおよび糖類

本発明は、虫歯予防能力を有し、かつカルシウムイオンと錯体を形成する能力を有する1種類以上の成分:例えば、1種類以上のビスホスホニル−、ビスカルボキシ−、もしくは3−ヒドロキシ−フタレート−基とコンジュゲートさせた、またはカゼインホスホペプチド、ホスビチンと、もしくは部分加水分解ホスビチンとコンジュゲートさせたε−ポリリシン;例えば、1種類以上のビスホスホニル基、カゼインホスホペプチドと、もしくはホスビチンもしくは部分加水分解ホスビチンとコンジュゲートさせた部分加水分解キトサン;例えば、リシンからなるアミノ酸少なくとも40%を有し、2kDを超える分子量を有するビスホスホニル化およびビスカルボキシル化タンパク質および例えば、重合カゼインホスホペプチドおよび部分加水分解ホスビチンの存在を特徴とする新規なタンパク質およびペプチドおよび糖類を開示する。該生成物は、歯を保護するため、および口腔処置のための配合物に使用され得る。本発明は、有能なタンパク質およびペプチドおよび糖類構造、ならびに作製方法および適用条件を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
虫歯は、歯の表面を溶解する、酸を生成する口内細菌によって引き起こされる。本発明は、酸攻撃に対して歯を保護する能力を有するタンパク質、ペプチドおよび糖類に関する。本発明は、保護能力の生成に必要とされる適切な分子構造、前記保護剤の作製方法および歯の保護における使用のための最終配合物の開発を開示する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
虫歯が、口内細菌によって生成される酸によって引き起こされることは、よく知られている。糖類、例えば、グルコースは、該細菌の重要な食料源であり、その利用可能性は、酸の生成に必要とされる。Streptococcus mutans(S. mutans)は、虫歯の発生の最も重要な原因と考えられており、口腔内での生存が良好で、比較的大量の酸を生成する。S. mutansはまた、粘性のグルカンおよびフルクタンの生成を触媒するグルコシルトランスフェラーゼ酵素を生成し、これらは、細菌が、歯およびプラークへの付着を改善するのに使用される。唾液は、一部有効に歯を保護し得、これは、抗菌剤、緩衝性原料成分およびカルシウムならびに修復作業に使用され得るリン酸塩構成ブロックを含有する。それにもかかわらず、唾液の保護能力は充分でなく、歯表面は破壊され、常に酸が生成するため、徐々に脱ミネラル化される。経時的に、穴が現れこれは、最終的に、歯の損失をもたらし得る。
【0003】
虫歯の低減のためのフッ化物の使用が、ここ40年の間に非常に増えてきている。今日、フッ化物含有歯磨き粉は、世界中で使用されている。多くの科学的研究により、フッ化物は、(少なくとも一部)虫歯を抑制する能力; 脱ミネラルプロセスの低下および再ミネラル補給プロセスの再強化に基づく能力を有することが示された。(US 5089255;Dental Caries、O. Fejerskowら;Blackwell
Munksgaard, 2003、ISBN 1−4051−0718−9)。フッ化物の効果は、亜鉛成分などの共原料成分の使用により増強され得る(US4396599)。それにもかかわらず、フッ化物の保護および抑制効果は、フッ化物を利用しない場合に起こり得る虫歯のおよそ25%と限定的である。今日でも、世界中で虫歯にかかっている人の数は甚大である。また、フッ化物の毒物学的プロフィールが議論されている(特にその発癌性、炎症、肺への障害、免疫学的、フッ素中毒および骨変形の潜在性について)。いくつかの欧州の国では、フッ化物を添加したものが市場で禁止されており、米国食品医薬品局(FDA)は、家庭用歯磨き粉におけるその使用を最大1150ppmに制限している。
【0004】
つい最近、いくつかのストラテジー:1.細菌の破壊、2.酸の生成の低減、3.細菌の歯表面およびプラークへの付着の防止、4.歯表面のカルシウムおよびリン酸塩構成ブロックによる修復、ならびに5.歯表面における酸の吸収が、新規な保護剤の研究において検討された。
【0005】
1.細菌の破壊。口腔由来の細菌に対して抗菌活性を有する多くの薬剤が発見されている;これらとしては、細菌由来ランチビオティック(lantibiotic)ペプチド(US4209508;US 係属中20030118590)、streptococcus mutansの細胞壁を崩壊することができるバクテリオファージ由来溶解性酵素(US 6355012、US 6399098)、酵母細胞由来抽出物(US 4980151)または天然油、例えば、クベバ油またはジャバ(java)シトロネラ油由
来成分(US4590215:αカジノール)が挙げられる。また、Angelica Gigas、Akebia quinata、Camellia sinensis および Korean Ginseng Flower(J. Dent. Res. 2003; vol 82, spec. issue B, 1591および1670)などの植物由来抽出物も、抗生物質活性を示すようである。また、streptococcus mutansに対して作用する合成抗菌剤も開発されている(塩化N−アルキル−ピリジニウム、ビスビグアニド(クロロヘキシジン、US 6143281)、第4級アンモニウムガラクトマンナン(US 4282204)、ポリフェノール類(トリクロサン;US 6136298)および修飾ヒスタチン−ペプチド(US 5672351))。他のストラテジーは、S. Mutans 抗原I/IIの一部と比べて同一の構造を有するペプチド(細胞壁タンパク質;US 6024958 およびUS 6500433)、または別の細菌によって産生されたS. Mutans 抗原I/IIに対する抗体の使用(US 5612031)によるS. Mutansに対する免疫反応の刺激にある。いくつかは、S. Mutansに対する対処においてバクテリオファージの使用を示唆する(US 4957686 および US 4891210)。
【0006】
2.酸の生成は、エリスリトール(US 6238648、US 6177064、US 4346116)、キシリトール、トレハロース、パラチノース(US 5985622)などの糖類の使用によって制限され得る。食品におけるその大規模使用にもかかわらず、大量のグルコースを置き換える必要があり、高添加量での使用は、望ましくない緩下性の副作用をもたらし得る。
【0007】
3.S. Mutansの歯表面への付着は、おそらく、種々の方法で制限し得る: ピロリン酸塩およびZnOは、プラークの形成を制限し、付着可能性を低減する(US 5455024);グルカナーゼおよびデキストラナーゼは、細菌がプラークに付着するのに使用するグルカンを崩壊する(US 5468479)。グルコシルトランスフェラーゼ(この酵素は、グルカンの生成を触媒する(US 5686075))に対する免疫反応を刺激するペプチドワクチンの使用が可能であり得る; S. Mutans 抗原I/IIの一部と類似する構造を有するペプチドは、該抗原と、プラークへの付着に関して競合し得る(US 6500433)。
【0008】
4.修復作業。唾液は、歯表面の修復に寄与するカルシウムおよびリン酸塩イオンを含有する。これはまた、かかるイオンの沈降の抑制、修復作業への利用可能性の維持を補助する天然タンパク質(例えば、スタセリン)を含有する。カゼイン(US 5130123)および、特にまた非変性カゼイン(US 5427769)は、虫歯予防能力を有する。カゼインホスホペプチド(CPP)は、カゼインの加水分解により作製され、これらもまた虫歯予防能力を有する。CPPは、カルシウムおよびリン酸塩イオンと錯体を形成し、修復作業を刺激する。
【0009】
5.歯表面への接着および酸吸収
接着により、生成物が、必要とされる位置(歯表面)に蓄積される。カゼインホスホペプチドおよびホスビチンは、卵に見られるタンパク質であり、付着能力を有する。これらは、表面上に蓄積し、酸が歯を溶解するのを抑制するのに寄与する局所緩衝性能力を生じる(US 5.279.814 および B. Jiangら、Biosci.Biotechnol. Biochem., 65(5), 1187−1190, 2001
および B. Jiang ら、J. Agric. Food Chem., 48,990−994、2000 en A. Goulas ら、J. of Protein Chemistry, vol 15, no. 1−9,1996)。
【0010】
塩基性成分を有する生成物は緩衝性能力を有する。アルギニンおよび少なくとも1個の
アルギニンアミノ酸を含有する小ペプチド(2〜4)は、プラークのpHを上げるために使用されている(US 621851、US 4225579、US 5762911 および Kanapka Archs. oral. Biol. 28,1007−1015, 1983)。また、キトサン(塩)が、推奨されている(US 4512968);しかし、その潜在能力は、中性または塩基性pHでの溶解性の欠如により制限されている。別のポリアミン、ポリエチレンイミノフルオロリン酸塩が、歯に付着し、酸に対して保護するようである(US 4020019)。しかしながら、酵素分解に対するその抵抗性および細胞壁に対するその付着能力により、これらは刺激性で毒性となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
虫歯の発生は、多くの創造的な研究の鋭意検討が行われているにもかかわらず、なお広範囲で見られる;ドイツ人の99%およびイタリア人の94%(35〜44歳)ならびにベルギー人の小児の40%(5〜7歳)が、虫歯を患っている(数年前に欧州で行われた疫学的研究による)。したがって、歯の酸攻撃に対して強い保護能力を有する新規な製品が開発されることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明は、虫歯予防能力を有し、かつカルシウムイオンと錯体を形成する能力を有する1種類以上の成分:例えば、1種類以上のビスホスホニル−、ビスカルボキシ−、もしくは3−ヒドロキシ−フタレート−基とコンジュゲートさせた、またはカゼインホスホペプチド、ホスビチンと、もしくは部分加水分解ホスビチンとコンジュゲートさせたε−ポリリシン;例えば、1種類以上のビスホスホニル基、カゼインホスホペプチドと、もしくはホスビチンもしくは部分加水分解ホスビチンとコンジュゲートさせた部分加水分解キトサン;例えば、リシンからなるアミノ酸を少なくとも40%を有し、2kD(2000ダルトン)を超える分子量を有するビスホスホニル化およびビスカルボキシル化タンパク質および例えば、重合カゼインホスホペプチドおよび部分加水分解ホスビチン、の存在を特徴とする新規なタンパク質およびペプチドおよび糖類を開示する。
【0013】
特に、ビスホスホニル−基(ビスホスホニル化ε−ポリリシンなど)とコンジュゲートさせた塩基性ポリマーは、1分子中に強力なカルシウム−錯体形成成分および強力な酸緩衝性成分が同時に存在することにより強力な保護物質である。また、ポリリシン(ε−ポリリシンなど)は、多種多様な口腔細菌(酸生成細菌を含む)に対する抗菌活性が示された。特に、歯の保護のための、および一般的な口腔内細菌叢の制御のためのその関連性を示す。
【0014】
該生成物は、歯を保護するため、および口腔処置のために配合物(歯磨き粉、ゲル、口腔清浄液、人工唾液など)において、患者および健常消費者に使用され得る。これらは、フッ化物と比べ、魅力的な毒物学的プロフィールを有し、食品系にも使用され得る。これらは、フッ化物の作用に対して相加的な作用をする。フッ化物と組み合わせた使用により、優れたかつ増強された保護がフッ化物の最小添加量で提供される。
【0015】
本発明は、インビトロおよびインビボ実験に基づいた、有能なタンパク質およびペプチドおよび糖構造ならびに作製手順および適用条件を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
発明の説明
本発明者らは、驚くべきことに、カルシウムと錯体を形成し得る成分を塩基性タンパク
質、ペプチドまたは糖類に結合すると、歯を保護する能力を有する新規な分子がもたらされることを見出した。これらは、歯表面に蓄積して局所的に緩衝することができ、構成ブロック(例えば、カルシウムおよびリン酸塩イオン)に修復作業と行わせすると思われる(「発明の背景」の章パート4)および5)に概要を示した原理により)。この保護効果は、カルシウムと錯体を形成する能力を有する種々の異なる成分、例えば、ビスホスホニル−および3−ヒドロキシ−フタレート基、カゼインホスホペプチド(CPP)ならびに部分加水分解ホスビチン(Phos−h)で示されている。実際、かかるカルシウム錯体形成性成分とコンジュゲートさせたすべての塩基性タンパク質、ペプチドおよび糖類は、歯保護能力を示す。
【0017】
他のカルシウム錯体形成性成分(例えば、ビスカルボキシ基またはホスビチン)と塩基性タンパク質、ペプチドおよび糖類との結合は、保護能力を有するポリマーを等しくもたらす。多くの場合、カルシウムと錯体を形成する能力を有する成分が、リシンアミノ酸のみからなるε−ポリリシンとコンジュゲートされており、したがって、強力な緩衝性活性を提供する。しかしながら、種々のアミノ酸型を含有する他のタンパク質およびペプチドも、利用可能な充分な塩基性アミノ酸がある(>40%)ならば、使用され得る。リシンのみからなるタンパク質である必要はない。また、リシンアミノ酸の代わりに塩基性アミノ酸グアニジン(または両者の混合物)を含有するペプチドおよびタンパク質を使用することも可能である。あるいはまた、塩基性糖ポリマー、例えば、水溶性加水分解キトサンも使用され得る。これらの生成物のほとんどは文献記載されておらず、適切な生成手順は開示されていない。これらの後者の生成物としては、ビスホスホニル化ε−ポリリシン(Bispho x elys)、カゼインホスホペプチドε−ポリリシンコポリマー(CPP x elys)、3−ヒドロキシ−フタレート化ε−ポリリシン、加水分解ホスビチンε−ポリリシンコポリマー(Phos−h x elys)およびカゼインホスホペプチド加水分解キトサンコポリマー(CPP x hy−chit)が挙げられる。
【0018】
インビトロ実験では、既知の代替物質、例えば、カゼインホスホペプチドおよびホスビチンと比べ、かかる生成物が卓越した保護能力を有することが示されている。
【0019】
保護能力は、1分子において4つの性質を併用する、ポリマー内のいくつかの異なる成分の存在の結果であり(カルシウムイオンと強力な錯体を形成する成分)、歯表面上のポリマーの蓄積を刺激し、ポリマーが活性であるべき位置にあることを確実にする;同カルシウム錯体形成成分は、カルシウムおよびリン酸塩イオンの沈殿を抑制し、これらを修復作業に利用可能に維持する;塩基性ポリマー主鎖の存在は、緩衝性能力を増強し、残存する抗菌活性が細菌の成長を妨げる。該新規な生成物は、タンパク質、ペプチドおよび糖類のクラスに属する。このため、これらは、生分解性であり、炭素系の先行技術ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン)よりも良好な安全性プロフィールを有する。本発明の他の局面において、本発明者らは、CPPおよびホスビチンの保護能力が、分子の大きさを変えることにより改善され得ることを見出した。分子量を増加させると、熱力学的に溶解を妨げる。本発明者らは、CPP(分子量:およそ2000ダルトン)の重合が、保護能力を増加させることを見出した。このことは、大きさが小さいアミン(トリス(トリス−(ヒドロキシメチル)アミノエタン)など)が、より大きなε−ポリリシンよりも同一のアミン濃度で有効性が低いという知見を伴う。同様に、ホスビチン(Mw 35000)の3000ダルトンの分子量を有するペプチドへの加水分解は、保護能力の消失をもたらす。分子量の低下が中程度である場合、他の要因、例えば、タンパク質の3次元構造のリモデリングが、ある役割を果たし得る。本発明者らは、驚くべきことに、ホスビチンのトリプシンによる加水分解、それによるタンパク質末端の15%の効果的な除去により、保護能力が相当改善されることを見出した。
【0020】
本発明の別の局面において、本発明者らは、ポリカチオン性ペプチドであるε−ポリリシンは、それ自体、保護能力および口腔内に存在する多くの多様な細菌(例えば、streptococcus mutansなど)に対する相当な抗菌活性を提供することを示した。これは、そのまま、または他の保護性原料成分との組合せで、歯を保護するため、および口腔処置するための配合物において使用され得る。ε−ポリリシンは、ポリリシンに置き換えてもよい。
【0021】
虫歯に対して歯を保護する能力は、当該技術分野でよく知られた手法を用いて測定し得る(US 5279814)。酸による脱ミネラル化は、歯表面の硬度を減少させる。硬度は、該表面におけるニードルの押込み深さを測定することにより間接的に定量し得る(微小硬度の測定)。この手法、いわゆる「ヌープ」法により、ニードルを一定荷重圧下で表面内に押し込み、表面上に押込み深さの計算を可能にするマークを残す。歯がより脱ミネラル化しているほど、その表面はより軟質となり、押込み深さが大きくなる(Knoop F., Peters C. G., Emerson W. B., A Sensitive Pyramidal Diamond Tool for Identation Measurments, J. Res. Natn. Bur. Stand. 23,39−61(1939)。
【0022】
該手順は、ヌープ法を用いたヒト歯試料の硬度の測定を含む。続いて、歯を実験用保護性生成物で、口腔外で処理する。これを紙タオルでコート剤が見えなくなるまで穏やかに清浄にする。続いて、歯試料を、口腔内の条件をシミュレーションするため、ヒト唾液バッチ内に浸漬させる。唾液バッチから取り出した後(30分後)、これを、酸により、30分の一定時間の間、37℃で処理する。酸を洗い流し、歯を空気にて乾燥させ、硬度を再び測定する。硬度の変化(ΔP、単位μm)を、処理前の歯の硬度との比較により得る。この実験を他の歯試料についても繰り返す。非保護の歯についての酸の効果を、同じ手順を実験用保護性生成物の使用なしで行うことにより得る(ΔPa)。実験用保護性化合物の保護性能力(「PF」保護因子)は:
PF = 100−ΔP * 100/ΔPa
(生成物XのPF = 35: 生成物Xで保護した歯は、酸に供したとき、保護コート剤なしの歯と比べた場合、硬度の減少が35%少ないことを示す)。
と規定され得る。
【0023】
生成物: カルシウム錯体形成成分を有するホスホペプチド
本発明の一つの局面において、本発明者らは、カルボジイミドと重合させたカゼインホスホペプチド(CPP)が、非重合カゼインホスホペプチド(CPP)と比べ、より大きな保護を提供することを示す。
【0024】
分子量の増加および/または1分子あたりの利用可能なカルシウム錯体形成成分の数の増加は、歯表面への付着を改善する。
【0025】
これは、加水分解ホスビチン(PPP;Mw 1〜3kD)が、天然ホスビチン(Mw
>30kD)と比べて低い保護能力を提供するという知見により確認される。(CPP)は、歯の処置に使用される最終配合物中0.01%〜30%(好ましくは、1〜10%;重量基準)の濃度で、使用され得る。CPPは、水によく溶解し、溶解している限り、任意のCPP濃度で重合反応を行い得る(好ましくは、5%〜30%、より好ましくは、8%〜20%);好ましいCPP/カルボジイミド比は、1/1.5〜1/0.05(重量基準)であり、pHは5〜9である。水中の好ましいカルボジイミドは、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドである。カルボジイミドの好ましい添加量を選択する場合、過剰架橋(このとき、生成物は、一部不溶性となり得る)は避けるべきである。あるいはまた、有機溶媒(DMSOなど)に溶解性のカルボジイミド(
例えば、シクロヘキシルカルボジイミド)も使用され得る。原理的には、反応は、他の公知のカップリング剤(例えば、ジメチルスベルイミデート(suberimidate)、ジメチルピメルイミデート、ジエチルマロンイミデート、ジメチルアジポイミデート、ビスエポキシド、ビス−イソシアネート、グルタルアルデヒドなど)を用いて行い得る。反応の温度は、0℃〜60度(好ましくは、15℃〜30℃)である。
【0026】
本発明の別の局面において、本発明者らは、トリプシン酵素で部分加水分解したホスビチン(Phos−h;Mw 22〜30kD)が、天然ホスビチンと比べ、25%大きな保護能力を提供することを開示する。該酵素は該タンパク質の一端を切断し(アミン側のアミノ酸 1〜48)、比較的疎水性の小片の除去をもたらす。残りの部分(これは、なお比較的大きい(> 25kD))は、ほぼ親水性リン酸化セリンアミノ酸のみからなり、天然ホスビチンのものと異なる3次元コンホメーションをとり得る。これにより、歯表面へのその付着能力を改変し得る。
【0027】
部分加水分解ホスビチン(Phos−h)は、歯の処置に使用される最終配合物中0.01%〜30%(好ましくは、1〜10%)の濃度で、使用され得る。ホスビチンの加水分解は、水中で、5〜9(好ましくは、8)のpHで、0.1%〜50%(好ましくは、0.5%〜10%)のトリプシン/基質比で、0℃〜70℃(好ましくは、20℃〜40℃)の温度で行い得る。あるいはまた、キモトリプシンは、トリプシンの代用のために使用され得、pH 2〜7(好ましくは、2〜3)でのペプシンよるさらなる処理が行われ得る。(Phos−h)は、ホスビチンの28kDセグメント(Gln49−Arg212)を含有し得、これは、文献に記載されている(A. Goulasら、Journal of Protein Chemistry, vol 15, no 1, 1−9, 1996)。
【0028】
一般に、これらのデータは、拡張した大きさのホスホペプチドを使用する場合、および疎水性アミノ酸の存在が回避される場合、保護能力が改善されることを示す。このため、CPPを重合すること、およびホスビチンを部分加水分解することは妥当である。
【0029】
生成物:カルシウム錯体形成成分を有するアミノポリマー
これらの新規な化合物は、歯表面に対する強力な付着能力と強力な緩衝能力を併せ持つため、特異的である。
【0030】
これらは、高レベルの保護能力を示す。アミノ基とカルシウムと錯体を形成する成分との両方の存在は、必要とされる特性の組合せをもたらす。
【0031】
本発明の一つの局面において、カゼインホスホペプチドとε−ポリリシンのコポリマー(PF値7.8%(CPP x elys):94)は、重合カゼインホスホペプチドと比べ、より大きな保護を提供することが見出された(PF値7.2%(CPP): 58)。共重合は、カゼインホスホペプチドの重合と同様にして行うが、このとき、一部のCPP(1〜99%、好ましくは、10〜30%)をε−ポリリシンに置き換える。この(CPP x elys)は、水に溶解する任意の濃度で、または歯の処置に使用される最終配合物中0.01%〜30%(好ましくは、0.5%〜10%)の濃度で、使用され得る。これはまた、フッ化物との組合せで使用され得る。両生成物の保護効果は、相加的である。0.1% NaFおよび3.6%(CPP x elys)と0.1% NaFの混合物は、それぞれ、61および100のPF値を示す。任意の分子量のε−ポリリシンを使用することも可能である。また、中性および塩基性pHで水溶性であるキトサン加水分解産物(Mw<30000ダルトン;生成物13:PF値2.2%(CPP x hy−chit):63)を使用することも可能である。反応手順(温度、濃度、pH)は、CPP x ε−ポリリシンコポリマーのものと同様である。任意選択で、ポ
リアミンを添加する前に、CPPおよびカルボジイミドを反応させ得る(0.5分間から数時間)。反応の最終生成物を、そのまま、硬度値測定に使用でき、またはゲル透過クロマトグラフィー、限外濾過または他の精製方法で精製してもよい。また、プロタミン、塩基性ポリペプチド(80〜200kD)、プロタミン加水分解産物、合成ポリリシン(Mw 200〜>1,000,000)、またはアミノ酸含量が少なくとも40%リシンを含有するタンパク質も使用され得る。
【0032】
本発明の別の局面において、部分加水分解ホスビチン(Phos−h)を、ε−ポリリシンと(Phos−h x elys)にコンジュゲートした。コンジュゲーションは、グルタミン、カルボジイミドまたは両者を用いて行い得る。
【0033】
反応pHは、好ましくは、沈殿を抑制するため、8より大きい。(Phos−h x elys)は、最終配合物中0.01%〜30%の濃度で使用され得る。グルタミナーゼとの反応は、15〜80℃、好ましくは、40〜60℃の温度、0.1〜10%(タンパク質重量基準)の酵素濃度で行い得る。(Phos−h)は、コンジュゲーション反応において天然ホスビチンと置き換えてもよく、これは、本発明の範囲の一部とみなす。
【0034】
本発明の別の局面において、本発明者らは、ビスホスホニル化ε−ポリリシン(Bispho x elys)が、最高の保護能力を示すことを開示する(PF値1.5%(Bispho x elys):99)。複数のホスホネート基が、1つの同じ炭素に結合されており、カルシウムイオンとの強力な錯体の形成をもたらす。ビスホスホニル基のε−ポリリシンへの結合に好ましい反応を使用する場合、2個のホスホネート基間の炭素原子は、ヒドロキシル基をさらにを含有する。これは、カルシウムとの錯体形成に寄与する。(Bispho x elys)は、歯の処置に使用される最終配合物中任意の濃度で、または0.01%〜30%(好ましくは、0.5%〜10%)の濃度で、使用され得る。該生成物は、ε−ポリリシンおよびエポキシ−エタン−ジホスフェート(塩または酸の形態)から、水、アルコール、塩溶液または水とアルコール(もしくは他の水溶性有機溶媒(アセトン、ジオキサンなど))の混合物中で、20〜90℃(好ましくは、40〜60℃)の温度で、任意のリシン/エポキシモル比、好ましくは、0.5〜20で合成され得る。反応は、pH3〜9、好ましくはpH3〜5で行い得る。
【0035】
ルイス酸触媒、例えば、BF3を、エポキシドに対する比で0.005〜10%w/wで使用してもよい。本発明の別の局面において、変性ε−ポリリシンには、非変性ε−ポリリシンと比べ、多数のビスホスホニル基が結合し得るようである(生成物24:6.3
ビスホスホニル基/分子を参照)。変性ε−ポリリシンにへの結合は、最高PF値を有する生成物をもたらす(1.5%非変性ポリリシンを用いて合成した生成物no.22、および変性ポリリシンを用いて合成した生成物no.24のPF値は、それぞれ、70.4および88.9である)。変性プロセスに使用されるウレアは、有効である任意の濃度で使用され得るが、好ましくは、高添加量(好ましくは、8Mより高い)で使用され得る。
【0036】
エポキシドは、公知の方法に従って(US 3940436)、ビニリデンジホスフェートの塩(もしくは酸形態)および過酸化水素(もしくは別の酸化剤)からタングステン酸ナトリウムなどの触媒の存在下で合成され得る。原理的には、エポキシドの合成およびアミノポリマーへの結合を1つの反応で行うことが可能である(生成物17および18);あるいはまた、(生成物19〜23)エポキシドを、別途合成し、過剰の過酸化水素を、アミノポリマーの添加前に除去する。過剰の過酸化水素は、エポキシドの沈殿(例えば、アセトンを該水溶液へ添加する)により除去し得る。1工程反応および2工程反応はともに、ε−ポリリシンそれ自体と比べ、高いPF値を有する生成物をもたらす。2工程手順は、1工程手順に従って合成した生成物と比べ、高いPF値を有する生成物を提供する
:PF値3.6%ε−ポリリシン(生成物6):73;PF値3.5%ビスホスホニル化ε−ポリリシン(生成物17、1工程手順):82; PF値3.5%ビスホスホニル化ε−ポリリシン(生成物20;2工程手順):100)。
【0037】
ビスホスホニル化e−ポリリシン反応混合物の充分な限外濾過にもかかわらず、一部のホスホネート基が、なお、遊離形態(e−ポリリシンに未結合)で存在し得るが、かかる混合物は、本発明の範囲内であることと理解すべきである。
【0038】
ビスホスホネートのε−ポリリシンへの結合のための別の可能な手順では、ジアゾメチレン−ジホスフェートエステルを利用し得、これは、メチレンジホスフェートエステル、t−BuOKおよびトシルアジドを用いて合成される(US 4150223)。該ジアゾ化合物は、カルボニルジホスフェートエステルに変換し(US 6147245)、ε−ポリリシンおよび還元剤(例えば、ホウ素化水素ナトリウム)により還元的にアミン化し得る。
【0039】
本発明の別の局面において、本発明者らは、3−ヒドロキシ−フタレート化ε−ポリリシン(生成物27)が、良好な保護を示し(PF値3.6%(hphth x elys):90.7)、ε−ポリリシンのものより優れることを記載する;3−ヒドロキシ−フタレートは、カルシウムと錯体を形成することが知られている。(hphth x elys)は、DMSO、水または水/アルコール混合物中で合成され得る;3−ヒドロキシ−フタル酸無水物/ポリリシンの比は、好ましくは0.05〜1である;好ましくは、該無水物を反応物に0〜6℃で添加した後、反応を一晩20℃で継続する。3−ヒドロキシ−フタレート化ε−ポリリシンは、歯の処置に使用される最終配合物中0.01%〜30%(好ましくは、0.5%〜10%)の濃度で、使用され得る。これは、9より大きいpHの水に溶解性である。ε−ポリリシンは、使用され得る唯一のアミノポリマーではない。所見により、ポリリシン、およびそのアミノ酸成分がリシンのみからなるものでなく、かつそのアミノ酸成分が、リシンを少なくとも40%含むタンパク質もまた、歯を保護する能力を有する化合物を合成するためにカルシウムイオンと錯体を形成(例えば、ビスリン酸化など)する成分への結合に使用され得ることが示されている。好ましくは、新規な生成物は、先行技術において既存のもの(例えば、CPP、アルギニン、小さいアルギニン含有ペプチド(2〜4個のアミノ酸))よりも大きいのがよく、分子量は、好ましくは、2.5kDより大きいのがよい。アルギニンまたはオルニチンは、塩基性タンパク質においてリシンアミノ酸の代用として使用され得る。生成物13、14および15に関する結果から、ε−ポリリシンは、カルシウムイオンと錯体を形成する成分との化学反応において、部分加水分解キトサン(中性および塩基性pHで水溶性)と置き換え得ると結論づけ得る。加水分解キトサンの分子量は、好ましくは、30kD未満である。
【0040】
本発明の別の局面において、新規な保護物質はまた、粘性またはゲル化配合物において有効であることが示された。(実施例;C.結果;C1、インビトロ実験;実験4の章)。フッ化ナトリウムの存在下では、その保護能力は、フッ化物のものに対して相加的であり、ゲルの全体としての保護能力を増強する。ヒドロキシエチルセルロースを増粘剤として使用したが、市販のよく知られた別の増粘剤も使用され得る。また、従来の増粘剤(ヒドロキシエチルセルロースなど)をCPP−ε−ポリリシンコポリマーと置き換えることも可能である;これは、それ自体が、歯保護物質であると同時にクリーム状の増粘剤であるが、対照的に、ビスホスホネートe−ポリリシンは粘度を増加させない。
【0041】
7%ビスホスホネートε−ポリリシンおよび0.3%フッ化ナトリウムを含有するゲル化配合物は、93.2のPF値を有するのに比べ、0.3%フッ化ナトリウムのみを含むゲルは、68%のPFを有する。
【0042】
生成物: アミノポリマー
本発明の別の局面において、ε−ポリリシンは、それ自体が、保護能力を有することが示された(PF値3.6%ε−ポリリシン:70)。大きなサイズの生成物を使用することの重要性が確認される。トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン(PF値3.4%Tris:35)は、等しいアミノ含量で、ε−ポリリシンと比べ、低い保護能力を示す。ε−ポリリシンは、先行技術において知られたアミノ系生成物に比べ、アルギニンおよびアルギニン系ペプチド(わずか1〜4個のアミノ酸)よりも大きく、ポリエチレンイミン(PEI)と比べて安全であるという利点を提供する。ε−ポリリシンは、FDAからGRAS(Generally Recognized as Safe)ステータスを得ており、食品におけるその使用が認められているが、歯の保護剤としては知られていない。これは、任意の濃度で、好ましくは0.01%〜40%で使用され得る。これは、Streptomyces Albulusによる発酵によって生成され得る。あるいはまた、合成ポリリシン、またはプロタミンもしくは加水分解キトサン(中性および塩基性pHの水に溶解性である;分子量は30000ダルトン未満)もまた使用され得る。
【0043】
ε−ポリリシンおよび修飾e−ポリリシンの抗菌活性
図4〜8
本発明の別の局面において、本発明者らは、ε−ポリリシン、ビスホスホニル化ε−ポリリシン、3−ヒドロキシ−フタレート化ε−ポリリシンおよびカゼインホスホペプチドとε−ポリリシンのコポリマー(CPP x elys)が、口腔内に常在する細菌に対する抗菌活性を示すことを示した。100種を超える異なる嫌気性−、好気性−、微好気性細菌および菌類を、すべて口腔から採取し、試験した。
【0044】
ε−ポリリシンは、嫌気性菌に対して最高活性を示す。28種の嫌気性菌株のうち、24種の成長が、3.5〜0.2mg/mLの範囲の濃度で抑制された。グラム陰性細菌は、多くの場合、=<0.2mg/mLの低いmic値(最小阻害濃度)に対して感受性である(Prevotella nigrescens、Porphyromonas asaccharolytica、Porphyromonas gingivalis、Fusobacterium nucleatum種の菌株を含む)。これらの細菌は、多くの場合、歯周炎、歯髄の感染症および口腔内の他の感染症に関与している。また、グラム陽性嫌気性菌は、多くの場合、低mic値(=<0.2〜0.4mg/mL)のε−ポリリシンに対して感受性である。また、ビスホスホニル化e−ポリリシンも、嫌気性菌に対して良好な活性を示したが、カゼインホスホペプチドe−ポリリシンおよび3−ヒドロキシ−フタレート化e−ポリリシンはあまり有効でなかった。ビスホスホニル化−および3−ヒドロキシ−フタレート化e−ポリリシンおよび(CPP x elys)は好気性菌に対して活性でないが、e−ポリリシンは、21菌株のうち7菌株の成長を、1.7〜0.2mg/mLの範囲で抑制する。ビスホスホニル化e−ポリリシンは、9種のStreptococcus菌株のうち6種を1.7 mg/mLで抑制する。
【0045】
E−ポリリシンは、微好気性細菌に対して最強の活性を、31菌株のうち17菌株の場合において0.2mg/mLの阻害濃度で示す。ビスホスホニル化e−ポリリシンもまた、活性を示す(31菌株のうち12菌株で、0.2mg/mLのmic値)。
【0046】
この場合も、e−ポリリシンは、試験した菌類に対して、21の試験した菌株のすべての場合で0.2〜0.8mg/mLの阻害濃度で最も活性であった。
【0047】
e−ポリリシンの抗菌活性は、口腔内において、同時に多数の活性を示し、多数の必要性に対処する。これは、歯の保護に寄与するだけでなく、細菌叢を抑制下に維持し(ヒスタミン、唾液内の天然ペプチドと同様にして)、また、口の悪臭(口臭)を回避するのを補助する。実際、感染症(歯周炎など)を引き起こす嫌気性菌の多くが、硫黄含有化合物
を生成することにより口の悪臭にも寄与している。これが、最低濃度(0.2〜0.4mg/mL)で、口腔から採取した嫌気性菌の71%(24種のうち17種)に対して、および口腔から採取した好気性菌の12%(17種のうち2種)に対して抑制活性を示すことに注目することは特に重要である。歯保護における使用とは別に、e−ポリリシンの選択的抗菌活性により、これは、口臭(口の悪臭)に対する使用のためのツールとしても重要である。E−ポリリシンは、口臭の原因である生物を一部分選択的に攻撃することができる。
【0048】
強力な抗菌活性(特に菌類に対しても)により、これは、口腔乾燥症(ドライマウス)の患者用人工唾液における使用のための良好な候補物質である。これは、口腔癌、ホジキン病、シェーグレン症候群、HIVなどの患者を含む。彼らは、多くの場合、口腔内の菌類感染症に直面している。ε−ポリリシンは、その歯の保護に対する寄与に有益なだけでなく、一般に、口腔の保護にも有益である。
【0049】
インビボ実験
インビボ実験は、口腔内の天然条件下で評価するために行った。手順は、歯保護能力の評価の技術分野でよく知られている。
【0050】
口腔内に配置するための6個までの実験用歯試料を収容し得る、デバイスを構築する。このデバイスは、自己硬化性メタクリレート樹脂製で、志願者の下顎の石膏型をもとに作製し、その下顎に正確に適合する(P. Bottenbergら、Clin Oral
Invest(2000)4:153−156)。実験用歯試料の構築は、C.2.「結果;インビボ実験」の章に概要を示す。口腔内で、歯試料を、デバイス内に、エナメル質表面が舌と物理的に接触し、かつ唾液内に浸るように配置する。口腔内に数日間置いたきれいな歯の表面内のニードルの押込み深さ(μm)は、増加することが知られている(P. Bottenbergら、Clin; Oral. Invest(2000)4:153−156)。これは、局所微細物相(microflora)の効果によるものであり得る。口腔内に配置する前にフッ化物で歯の前処理をすると、かかる増加は制限される。本発明者らは、実験用タンパク質およびペプチドならびに糖類の保護能力を、口腔内に配置する前に歯をかかる生成物で処理し、5日間の滞留時間後の押込み深さを、ブランクおよび代わりにフッ化物で処理した歯試料のものと比較することにより、評価した。デバイスを口腔内に長時間(5日以上)置く実験では、細菌用の支持を提供するため、およびその成長経路を刺激するため、金属網目を、実験用歯の表面のすぐ上に配置する。また、選択した滞留時間後に歯試料を口腔から取り出し、これらを実験条件下にて酸で処理することにより、残留保護能力を測定することも可能である。唾液および舌との物理的接触により歯表面から保護剤が除去できない場合、残留保護能力はブランクと比べて測定する。
【0051】
頭部と頚部に放射線を受けた口腔癌の患者の歯に対する実験生成物の保護能力を評価するため、72個の放射線照射し滅菌した歯試料を、0.1%NaFの溶液または4.2%ビスホスホニル化e−ポリリシン、CaCl.2HOおよびKHPO混合物のいずれかで処理するか、またはブランクとした(3種類の溶液の各々について24試料;4
志願者;実施例 C.2.1の章を参照のこと)。デバイスを、口腔内の下顎の後ろに、5日間配置した。口腔から取り出した後、試料を洗浄し、硬度を測定した。ニードルの押込み深さ(ヌープ方式参照)は、ブランク、0.1%NaFまたは4.2%ビスホスホニル化ε−ポリリシンで処理した歯試料について、それぞれ、平均3.7μm、1.8μmおよび1.1μm増加した。インビボ保護能力は、統計学的Mann−Whithey検定によるp値によってさらに明確になり、ブランクに対し、0.1%NaFおよび4.2%ビスホスホニル化e−ポリリシンでは、それぞれ、0.001および0.000である。
【0052】
5日間(日夜)口腔内に放置した後の残留保護能力を評価するため、いくつかの試料を、さらに、1滴の酢酸で処理した(0.1N、30分間、37℃)。ニードルの押込み深さは、ブランク、0.1%NaFまたは4.2%ビスホスホニル化ε−ポリリシンで処理した歯について、それぞれ、10.1μm、6.5μmおよび3.9μm増加した。後者の保護能力は、ブランクに対するp値0.032(Mann−Whithey)でさらに確認される。
【0053】
別の実験では、126個の滅菌歯試料を、種々のペプチドで処理し、デバイスに固定し、5名の志願者の口腔内の下顎の後ろに配置した。デバイスを口腔内に12時間放置した後、歯を取り出し、洗浄し、1滴の酢酸に供した(0.1N、30分間、37℃)。続いて、酸を除去し、歯を洗浄し、硬度を測定した(ヌープ方式)。押込み深さは、ブランク、4.2%カゼインホスホペプチドε−ポリリシンコポリマー、7.5%ホスビチン、4.2%ビスホスホニル化ε−ポリリシンで処理した歯について、それぞれ、8.82μm、5.40μm、5.32μmおよび3.77μm増加した。p値は、カゼインホスホペプチドe−ポリリシンコポリマー、ビスホスホニル化e−ポリリシンおよびホスビチンで、それぞれ、0.000、0.000および0.004である。ビスホスホニル化e−ポリリシンが一番強力な保護物質である。ビスホスホニル化e−ポリリシンを歯表面に添加する前での唾液浴中への歯試料の浸漬によって、その保護能力は低下しない(「実施例C.2.2.の章を参照)。
【0054】
最終配合物中の他の原料成分
新規な歯保護性ポリマーは、他の公知の原料成分とともに、口腔における使用のための最終配合物に使用され得る(歯磨き粉、口腔清浄溶液、口腔洗浄液、マウススプレー、ゲル、チューインガム、キャンデーおよび他の食品系、人工唾液ならびに口腔癌、ホジキン病、シェーグレン症候群、口内乾燥症の患者の歯の処置用の医薬品)。かかる最終配合物の概説はUS 6238648に示されている。
【0055】
最終配合物は、虫歯に対する保護のための他の成分:フッ化物(US 2946725およびUS 3678154;例えば、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムおよびフッ化スズまたはカプセル化されたフッ化物原料成分(カルシウムまたはオルトリン酸塩などの失活成分に対する保護のため)を含有し得る。フッ化物は、0.1〜1%w/w、好ましくは、0.25〜0.5%(重量基準)の濃度で使用される。最終配合物はまた、「発明の分野」に記載のものなどの他の保護化合物を含有し得、抗菌活性を有する原料成分(パート1.天然殺菌剤、合成殺菌剤、植物抽出物、免疫学的活性を有するペプチド、S. Mutansに対する抗体、バクテリオファージ)、酸の生成を低減する糖類(パート2.キシリトール、エリスリトール)、酵素(パート3.例えば、グルカナーゼおよびデキストラナーゼ)ならびにグルコシルトランスフェラーゼに対するワクチンまたはS. Mutans 抗原I/IIに類似するペプチド、修復作業のための原料成分(パート4.カルシウム、リン酸塩、カゼイン、非変性カゼイン、カゼイン加水分解産物(CPP)、緩衝性成分、例えば、キトサン、ポリエチレンイミン、フルオロホスファート(fluorofosfaat)、アルギニンおよびアルギニン含有ペプチド(2〜4個のアミノ酸を有する)が挙げられる。
【0056】
カルシウム塩などの原料成分は、保存中のフッ化物による障害を回避するために、カプセル化され得る。カルシウム塩としては、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、ブチル酸カルシウム、乳酸カルシウム、サリチル酸カルシウムまたは別の非毒性の無機または有機カルシウム塩が挙げられ、0.1%〜5%w/wの濃度で含まれる。
【0057】
最終配合物は、US 3988433、US 4051234、US 3959458
に記載のような非イオン系−、アニオン系−、両性−、カチオン系−または両性イオン系洗浄剤を含有し得る。非イオン系洗浄剤は、親水性アルキレンオキシドグループと疎水性有機成分との縮合物である。例えば、ポロキサマー(Pluronicの商品名で販売)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween)、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、エチレンオキシドとプロピレンオキシドおよびエチレンジアミン由来反応生成物との縮合物、脂肪族アルコール、長鎖第3級アミンオキシド、長鎖第3級ホスフィンオキシド、長鎖ジアルキルスルホキシドに由来するエチレンオキシド縮合物ならびにこれらの混合物である。両性洗浄剤は、脂肪族第2級および第3級アミンで、脂肪族鎖を有し、アニオン性基の存在を伴う(例えば、カルボキシレート、スルホネート、スルフェート、ホスフェート、ホスホネート)。アニオン系洗浄剤は、8〜20炭素原子を有するアルキル硫酸の塩(例えば、アルキル硫酸ナトリウム)および8〜20炭素原子を有する脂肪酸由来のスルホン酸モノグリセリドである。例:ラウリル硫酸ナトリウムおよびナトリウムココナッツモノグリセリドスルホネート(coconut monoglyceride sulfonate)、サルコシン酸塩、例えば、サルコシン酸ラウロイルナトリウム、サルコシン酸ラウリルナトリウム、イセチオン酸ラウロイルナトリウム、カルボン酸ラウレス(laureth carboxylate)ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムまたは混合物である。多くの場合、アニオン性洗浄剤の添加量は、0.025%〜9%、好ましくは、0.1%〜5%w/wである。
【0058】
増粘剤もまた、望ましいレオロジープロフィールをもたらすために、最終配合物において使用され得る:グアガム、カルボキシビニルポリマー、カラジーナン、こんにゃく、スクレログルカン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールコポリマー、カラヤガム、アラビアガム、トラガカントガムおよびキサンタンを、0.1%〜15%の濃度で使用し得る。アクリル酸由来の架橋ポリマー、例えば、Carbopol(BF Goodrich製)は、当該技術分野で公知である。
【0059】
最終配合物は、加湿剤を含有し得る。ポリアルコールは、湿潤感をもたらし、空気との接触時に生成物が硬化するのを防ぐ。これらとしては、グリセリン、ソルビトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトールが挙げられる。
【0060】
最終配合物は、研磨剤:シリカ、例えば、非晶質含水シリカ、メタリン酸塩ナトリウム、メタリン酸塩カリウム、リン酸三カルシウム、リン酸カルシウム2水和物、リン酸カルシウム、ピロリン酸塩カルシウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カルシウム、水和アルミナを含有し得る。場合によっては、ポリマーが研磨剤として使用される(US 3070510:メラミン、ポリフェノール、ウレア、ウレア−ホルムアミドなど:シリカ系研磨剤は、US 3538230およびUS 3862307(参考文献を含む)に記載されている。「Syloid」(W. R. Grace & company製)および「Zeodent」(J. M. Huber corporation製)は、当該技術分野でよく知られている。多くの場合、歯磨き粉は、10%〜70%の研磨剤または研磨剤混合物を含有する。
【0061】
最終配合物は、歯石に対する生成物、例えば、ピロリン酸塩、例えば、Na、K、Na、NaおよびK7、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムおよび環状リン酸塩、例えば、トリメタリン酸ナトリウムを含有し得る。添加量は、約0.5%〜10%w/wである。アニオン系ポリカルボキシレートまたはカルボキシル化キトサンを、抗歯石硬化を増大させるために最終的に使用し得る。30,000〜1,000.000、好ましくは、30,000〜500,000の分子量を有する無水マレイン酸と、たとえばメチルビニルエーテルなどの他のエチレン系モノマーとのコポリマーは、Gantrezの商品名で知られ
ている(US 4627977)。最終配合物における濃度は、0.5%〜5%である。他の可能なものとしては、クエン酸亜鉛3水和物、ポリリン酸塩、ジホスフェート(EHDP)が挙げられる。
【0062】
最終配合物は、香料を含有し得、多くの場合、0.001%〜5%、好ましくは、0.5%〜1.5%w/wの濃度で含有され得る。具体例としては、スペアミント、ペパーミント、メントール、アネトール、サリチル酸メチル、カッシア、1−メンチルアセテート、ユージノール、パセリ油、オキサノン、α−イリソン、マジョラム、プロペニルゲトール(guaethol)、バニリン、チモール、リナロール、桂皮アルデヒドグリセロールアセタール、冬緑油、サフラス・クローブ(sassfras clove)、セージ、ユーカリ、マジョラム、シナモン、レモン、ライム、グレープフルーツ、オレンジである。
【0063】
最終配合物はまた、甘味料を含有し得る;公知の虫歯予防用甘味料の他、以下の生成物:スクロース、グルコース、サッカリン、デキストロース、果糖、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、フルクトース、マルトース、キシリトール、サッカリン塩、タウマチン、アスパルテーム、D−トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセルスファムおよびチクロ塩が利用可能である。
【0064】
最終配合物はまた、過敏症に対する原料成分(例えば、硝酸カリウムまたはクエン酸カリウム)、漂白剤(過酸化水素、過酸化カルシウム、過酸化ウレア)、保存剤、冷却剤(カルボキサミド、メントール、ケタール)、抗炎症性原料成分(アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンなど)を含有し得る。
【0065】
配合物は、1段階システムまたは2段階システムにて提供され得る。「2段階」配合物の原料成分は、2つの区画に別々に保存し、使用直前に混合する。
【0066】
最終配合物の組成物は、公知であるが、参考までに以下を付け加える。例えば、歯磨き粉についてはUS 3988433、口腔洗浄剤についてはUS 3988433、キャンデーについてはUS 4083955、チューインガムについてはUS 4083955および歯肉縁下処理についてはUS 5198220。
【0067】
歯磨き粉およびゲルは、多くの場合、研磨剤(10%〜50%)、洗浄剤(0.5%〜10%)、増粘剤(0.1%〜5%)、加湿剤(10%〜55%)、香料(0.04%〜2%)、甘味料(0.1%〜3%)、着色剤(0.01%〜0.5%)、水(2%〜45%)および最終的に虫歯予防用生成物(0.05%〜10%)または抗歯石剤生成物(0.1%〜13%)を含有する。
【0068】
口腔洗浄液およびスプレーは、多くの場合、水(45%〜95%)、エタノール(0%〜25%)、加湿剤(0%〜50%)、張力活性剤(tensio−active agent)(0.01%〜7%)、香料(0.04%〜2%)、甘味料(0.1%〜3%)、着色剤(0.001〜0.5%)および最終的に虫歯予防用生成物(フッ化物;0.05%〜0.3%)または抗歯石剤生成物(0.1%〜3%)を含有する。
【0069】
別の配合物は、非研磨ゲル(歯肉縁下ゲル)に関する。これらは、増粘剤(0.1%〜20%)、加湿剤(0.1%〜910%)、香料(0.04%〜2%)、甘味料(0.1%〜3%)着色剤(0.01%〜0.5%)、水(2%〜45%)および虫歯予防用または抗歯石剤生成物を含有する。チューインガム配合物は、多くの場合、ガム(50%〜99%)、香料(0.4%〜2%)、甘味料(0.01%〜20%)および任意選択で、虫歯予防用生成物を含有する。キャンデー、ミント、カプセル、錠剤および他の食品系は、
US 4642903、US 4946684、US 4305502、US 4371516、US 5188825、US 5215756、US 5298261、US 3882228、US 4687662、US 4642903に記載されている。
【0070】
実施例
A.方法 & 材料
生成物。カゼインホスホペプチド(CPP、Mw 1〜2kD、1000−2000ダルトン)、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノエタン(Trizma)、ビニリデンビスホスホネート、キトサン、加水分解キトサン(Mw:2000〜30000ダルトン)、3−ヒドロキシ−フタル酸無水物、1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、フッ化ナトリウム、ε−ポリリシン(Mw4100ダルトン)、カルボキシル化キトサン、ホスビチンおよびトリプシンは、市販のものである。
【0071】
1〜3kDの分子量を有するホスビチン加水分解産物(PPP)は、ホスビチンの部分アルカリ脱リン酸化の後、トリプシンでの酵素的加水分解によって得られ得る(B.Jiang ら, J. Agric. Food Chem 2000, 48, 990−994)。
【0072】
20kDを超える分子量を有し、インビボ実験C.2.2で使用した部分加水分解産物ホスビチンは、卵黄(egg−yellow)のタンパク質(ホスビチンを含有する)から作られたものである。該タンパク質は、工業規模で脂質を卵黄から抽出した後に得たものである。1.5Lのタンパク質溶液(10%)をpH 8で濾過し、3.75mgのトリプシン(Sigma;10100単位 BAEE/mg)を添加する;反応を、一晩(14h)、37℃で進行させる。pHを2.5に調整し、112.5mgのペプシン(Merck)を添加する;反応を、9時間,37℃で進行させる。pHを7.0に調整し、溶液を、10kDの排除分子量を有する膜を用いたダイアフィルトレーションにより脱塩する。溶液を、QAEセファロースカラムHPにて精製する。カラムにチャージした後、生成物を、塩勾配(50mM EDTA pH 7.0+7.5g/L NaClおよび50mM EDTA pH 7.0+58.44g/L NaCl)を用いて溶出する。加水分解ホスビチンを含むフラクションを、カラム(G25−Hiprep 26/10
脱塩用)にて脱塩する。
【0073】
PF値の測定
生成物が歯を保護する能力(PF値)を、ヌープ法により測定する。歯試料(サイズ3×3×3mm)をヒトの歯から切り出し、重合用レジン内に、レジンが固化した後、歯試料の表面が(レジン)キューブの表面上に見えるように包埋する。歯の表面を、回転している炭化ケイ素研磨紙(Struers P1200−P2400−P4000)を用いて機械的に研磨し、エナメル質の微小硬度を、ヌープディアマント(diamant)ニードルを用いて測定する(Leitz−Wetzlar; 微小光度計「Durimet」;重量50グラム;押込み時間:30秒間(Collysら, J. Dent. Res. 1990; 69: 458−462))。
押込みによって歯表面上にマークが残り、これは、押込みの深さ(μm)と関連し、顕微鏡下で解析し得る。健常な歯は、40〜42μmの押込み深さを示す。押込み深さの測定を、歯試料の各々において6回繰り返し、平均値を計算する。表面の硬度に対する酸の硬化を調べるため、Merck社の酢酸緩衝液(pH 5;0.1N)を利用する。1滴の酸をエナメル質上に配置して30分間37℃で置く。試料を、脱塩水で洗浄し、乾燥する。硬度を、再度、ヌープ法にしたがって測定する。この手順を4回繰り返す(これは、試料を、合計2時間の間、酸に供されることを意味する)。
【0074】
グラフ(Y: 押込み深さ;X: 5処理回(stage))を、5つの平均値(これ
らの各々は6回の測定を基準にする)(1つは、酸での処理前に得たもの、およびその他の4つは酸での4回の処理の各々の後に得たもの)をもとに合成し得る。対数回帰を計算する。健常な歯は、およそ95μmの押込み深さを、2時間の間の酸での処理後に、示す(図9および10)。
【0075】
インビトロ条件下での実験生成物の保護能力の評価を、以下のようにして行う。歯試料の表面を1滴の実験用コート剤で処理し(30分間、39℃);この処理を1回以上、繰り返した後、その滴を加圧下で空気により除去し、エナメル質を、穏やかに紙タオルでコート剤の可視的痕跡がなくなるまで洗浄する。続いて、口腔内の条件をシミュレーションするため、歯を天然唾液の浴中に30分の間浸漬する。歯をこの唾液中から回収し、乾燥させ、エナメル質を1滴の酸で処理する(39℃、30分間)。酸を洗い流し、歯を乾燥させ、硬度を6回測定する。手順(コート/コート/唾液バッチ/酸処理)を4回行うと、経時的に、エナメル質が徐々にやわらかくなる。グラフおよび対数回帰直線を、30個の硬度測定値のデータに関して合成する。開始時と酸による4回の処理の終了後の押込み深さの差を測定する(=ΔP(μm))。同様にして、事前に保護コート剤で保護されていない歯試料に対する酸での処理(4回;各30分間)から得られる押込み深さの差を測定する(=ΔP(μm))。
【0076】
実験生成物の歯を保護する能力を、PF値: 100−(ΔP)*100/(ΔPa)(「発明の説明」の章も参照のこと)により定量する。
【0077】
口腔から単離した微生物のε−ポリリシン、ビスホスホニル化e−ポリリシン、カゼインホスホペプチドe−ポリリシンコポリマーおよび3−ヒドロキシ−フタレート化ε−ポリリシンに対する感受性の測定
本調査には、口腔から単離した100を超える菌株:嫌気性菌、微好気性細菌、好気性菌、Streptococcus種および酵母などの菌類を含めた。微生物は、唾液、粘膜、歯肉ポケットおよび虫歯から単離した。細菌および酵母などの菌類の感受性(MIC)を、寒天中でのプレート希釈手法により測定した。
【0078】
調査する試料を、滅菌蒸留水(実験直前)に中に溶解し、以下の濃度:3.5、1.7、0.8、0.4および0.2mg/mLの濃度を得、適切な寒天中に添加した。プレートをSteersマルチポイントイノキュレータを用いて接種した。イノキュラムは、10CFU/スポットを含んだ。各連の実験において、調査対象の化合物を含まない培養培地上での菌株の成長を確認した。培地において微生物の巨視的成長が観察されなくなった濃度を、微生物の成長を阻害する最低濃度(MIC)とみなした。微生物の該ペプチドに対する感受性の検査を2回行った。
【0079】
嫌気性菌。細菌の感受性を、寒天希釈法により、Brucella寒天(5%脱フィブリン化ヒツジ血、メナジオンおよびヘミンを加えた)を用いて測定した。3.5〜0.2mg/mLの濃度の試料溶液を寒天中に添加した。調査対象の試料を含まない寒天プレートを細菌成長対照として含めた。10CFU/mLのイノキュラムを寒天プレートに、Steersレプリケーター(replicator)を用いて適用した。インキュベーションは、48時間、37℃(310°K)にて、10%CO、10%Hおよび80%Nの混合物の入った嫌気ジャー内で、パラジウム触媒および指示薬の存在下で行った。
【0080】
微好気性細菌。細菌の感受性を、寒天希釈法により、Brucella寒天(5%ヒツジ血を加えた)を用いて測定した。3.5〜0.2mg/mLの濃度の試料溶液を寒天中に添加した。調査対象の試料を含まない寒天プレートを細菌成長対照として含めた。10CFU/mLのイノキュラムを寒天プレートに、Steersレプリケーターを用いて
適用した。インキュベーションは、37℃にて、嫌気ジャー内で、Campy Pak(bio Merieux)により48時間行った。
【0081】
Streptococcus種。細菌の感受性を、寒天希釈法により、Mueller−Hinton寒天(5%ヒツジ血を加えた)を用いて測定した。3.5〜0.2mg/mLの濃度の試料溶液を寒天中に添加した。調査対象の試料を含まない寒天プレートを細菌成長対照として含めた。10CFU/mLのイノキュラムを寒天プレートに、Steersレプリケーターを用いて適用した。インキュベーションは、24時間、37℃(310°K)にて、10%COおよび90%Nの混合物の入った嫌気ジャー内で行った。
【0082】
好気性細菌。細菌の感受性を、プレート希釈法により、Mueller−Hinton寒天中で測定した。3.5〜0.2mg/mLの濃度の試料溶液を寒天中に添加した。調査対象の試料を含まない寒天プレートを細菌成長対照として含めた。10CFU/mLのイノキュラムを寒天プレートに、Steersレプリケーターを用いて適用した。インキュベーションは、24時間、37℃にて、好気性条件下で行った。
【0083】
酵母などの菌類。調査対象の試料に対する菌類の感受性を、プレート希釈手法により、Sabouraud寒天中で測定した。3.5〜0.2mg/mLの濃度の試料溶液を寒天中に添加した。調査対象の試料を含まない寒天プレートを菌類成長対照として含めた。10CFU/mLのイノキュラムを寒天プレートに、Steersレプリケーターを用いて適用した。インキュベーションは、24時間、37℃にて、好気性条件下で行った。
【0084】
化学分析& 精製方法
H−、13C−、31P−NMRスペクトルをBruker AC 250 NMRにおいて記録する。リン含量を、Thermofinnigan Element II(HR ICPMS)により測定する。ゲル透過クロマトグラフィーを、Sephadex G−25微細ゲルを用いて行う。限外濾過精製手順は、Millipore prep/scaleセルロースのカートリッジ(分子量排除:1kD)およびMillipore「Easy load masterflex」ぜん動ポンプを用いて行う。
【0085】
B.生成手順
重合カゼインホスホペプチド(CCP)、(生成物2)、(図1)
190mgのカゼインホスホペプチドを2.25グラムの脱イオン水に添加する。6℃で氷冷し、200mgの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDAC)を添加し、一晩20℃で反応させる。
【0086】
735mgのCaCl.2HOおよび408mgのKHPOを添加し、pHを7まで8N NaOHによって増加させる。PF値を測定する。
【0087】
部分加水分解ホスビチン(Mw:22〜30kD)、(Phos−h)、(生成物5)
200mgのホスビチンを6mLの水に溶解し、pHを8に0.1N NaOHによって調整する。トリプシン(タンパク質について0.5%w/w;>10000 BAEE単位;Sigma Chemicals Corp.)を添加し、5時間37℃でインキュベーションする。pHを5に調整し、反応を終結させる。溶液(排除分子量:10kD)を限外濾過する。Amberlite IRC−50カラム(酸形態)に通すことにより生成物を酸性化し、CaCl(0.5M)を1時間かけて添加する。排除分子量l0kDの膜により限外濾過し、生成物を凍結乾燥する。
(Phos−h)を水中に溶解し、CaCl.2HOおよびKHPOと混合し(添加量は、表中の「硬度の測定;実験2;生成物5」に記載)、PF値を測定する。
【0088】
カゼインホスホペプチドε−ポリリシンコポリマー(CPP x elys);(10)
10グラムのカゼインホスホペプチドを86mLの脱イオン水に溶解し、氷で6℃に冷却する。1.6グラムのEDACを添加する。4.1グラムのε−ポリリシンを15分後に添加する。pHを7.8に調整し、反応を一晩(20時間)20℃で継続させる(いくらかのさらなる水40mLを、粘度が上昇しすぎた場合に添加する)。
【0089】
続いて、300mLの脱イオン水を添加し、pHを9に調整する。Millipore
prep/scaleセルロースカートリッジ(排除分子量1000ダルトン)により限外濾過し、2リットルの濾液を得る;保持液(retentate)を凍結乾燥(または噴霧乾燥)する。
(CPP x elys)を水中に溶解し、CaCl.2HOおよびKHPOを添加し(添加量は、表中の「硬度の測定;実験3;生成物10」に記載)、PF値を測定する。
【0090】
カゼインホスホペプチド加水分解キトサンコポリマー。(CPP x hy−chit);(13)
155mgのカゼインホスホペプチドを2.25グラムの脱イオン水中に溶解する。100mgのEDACを添加し、1時間6℃で反応させる。35mgの加水分解キトサン(Mw 2000ダルトン)および100mgのEDACを添加し、一晩20℃で反応させる。表の「硬度の測定;実験3;生成物13」にしたがってCaCl.2HOおよびKHPOを添加する。PF値を測定する。
【0091】
加水分解ホスビチン x ε−ポリリシンコポリマー(Phos−h x elys);(16)
135mgのホスビチン加水分解産物(hydrolysaat)(Phos−h)を1.125グラムの脱イオン水に溶解する。55mgのε−ポリリシンを添加し、pHを8.2に調整する。16mgのグルタミナーゼを添加し、1時間60℃で反応させる。145mgのEDACを添加し、一晩20℃で反応させる。表の「硬度の測定;実験3;生成物16」にしたがってCaCl.2HOおよびKHPOを添加する。PF値を測定する。
【0092】
ビスホスホニル化ε−ポリリシン(Bispho x elys)(生成物18);
1、工程手順
165mgのビニリデンビスホスホネート(二ナトリウム塩;pH 6)を1mLの過酸化水素(30%)に溶解する;6mgのタングステン酸ナトリウムおよび68mgのトリフルオロ酢酸を添加する;1時間室温で反応させる。120mgのε−ポリリシンを添加し、5時間50〜55℃で反応させる。生成物が反応中に沈降する。溶媒をデカンテーションにより除去し、沈殿物を、NaOH 8Nを加えた水中に溶解する。Sephadex 25Gカラムにおいて0.01N NaOHを用いて精製する;生成物を凍結乾燥する。表の「硬度の測定;実験3;生成物18」にしたがってCaCl.2HOおよびKHPOを添加する。PF値を測定する。
【0093】
ビスホスホニル化ε−ポリリシン(Bispho x elys)(生成物22)(図2);
2、工程手順(ビスホスホネート成分を非変性e−ポリリシンに結合、イソプロパノール/水中、酸性pH)
工程1.
23グラムのビニリデンビスホスホネート(二ナトリウム塩、溶液pH 6)を85m
Lの過酸化水素(30%)に溶解し、77mgのタングステン酸ナトリウムを添加する。3時間60℃で反応させる。160mLのアセトンを添加し、底面の第2層を分離する;冷却し、溶媒をデカンテーションにより除去する。第2層をアセトンで洗浄し、このアセトンをデカンテーションにより除去し、乾燥する。
(注:反応はまた、ビニリデンビスホスホネート(四ナトリウム塩、溶液pHは塩基性)を用いても行い得る;アセトン/水の除去は、デカンテーション以外の別の公知の方法で行い得る)。
【0094】
工程2.
60mLの水を工程1の乾燥生成物に添加する。10グラムのε−ポリリシンおよび1.4mLのBF3(任意選択で)を添加する;pHを4に、HClを用いて調整し、67mLのイソプロパノールを添加する。反応を一晩50〜55℃で進行させ、その後、pHを6.9に、NaOH 8Nを用いて調整する。150mLのアセトンの添加に伴って第2層が現れる;冷却し、溶媒をデカンテーションによって分離する。第2層をアセトンによって洗浄する。溶媒をデカンテーションにより除去し、乾燥する。300mLの水を添加し、pHを9に、NaOH 8Nを用いて調整する。Millipore prepscaleカートリッジ(排除分子量 1000ダルトン)により、200mg/リットルのNaOH溶液を用いて限外濾過する。2リットルの濾液が得られ、保持液を(凍結)乾燥する。表の「硬度の測定;実験3;生成物22」にしたがってCaCl2HOおよびKHPOを添加する。PF値を測定する。
【0095】
H−NMR(DO):化学シフト(積分):1.35(2)、1.55(2)、1.75(2)en 3.2(2)ε−ポリリシンのCH基;3.65および2.6(1)ε−ポリリシンのCH成分(一部再配置);3.0(0.25):新たなシグナルは、ε−ポリリシンのスペクトル中に存在しない;カップリングしたビニリデン成分由来のCH
(化学シフトは、N−CHカップリングを示すが、O−CHカップリングは示さない;積分は、ε−ポリリシン1分子(+−4000 4100ダルトン)あたり4個のビスホスホニル基を示す)。
HRICPMSを用いたP−測定によるε−ポリリシン1分子あたりのビスホスホニル基の数:4.3。
【0096】
ビスホスホニル化ε−ポリリシン(Bispho x elys)(生成物23);
2、工程手順(ビスホスホネート成分を非変性e−ポリリシンに結合、水中、酸性pH)
工程1.
279mgのビニリデンビスホスホネート(二ナトリウム塩、溶液 pH 6)を1mLの過酸化水素(30%)に添加する;6mgのタングステン酸ナトリウムを添加し、反応を4時間70℃で進行させる。2mLのアセトンを添加し、溶媒を第2層からデカンテーションにより除去し、真空下で乾燥する。
【0097】
工程2.
120mgのε−ポリリシン、0.7mLの脱イオン水および(任意選択で)BFを、工程1の生成物を添加し、pHを4に調整する。反応を一晩50℃で進行させ、その後、pHを8.2に調整する。混合物をSephadex 25−Gカラムにて、NaOH水溶液(200mg/L)を用いて精製する。
HRICPMSによるε−ポリリシン1分子あたりのビスホスホニル基の数:3.9。
表の「硬度の測定;実験3;生成物23」にしたがってCaCl.2HOおよびKHPOを添加する。PF値を測定する。
【0098】
ビスホスホニル化ε−ポリリシン(Bispho x elys);
2、工程手順(ビスホスホネート成分を変性e−ポリリシンに結合、イソプロパノール/H2O中、酸性pH)
工程1.
279mgのビニリデンビスホスホネート(二ナトリウム塩、pH溶液6)を1mLの過酸化水素(30%)に添加する;6mgのタングステン酸ナトリウムを添加し、反応を4時間70℃で進行させる。2mLのアセトンを添加すると、第2層が現れる;溶媒をデカンテーションにより除去し、第2層をアセトンで洗浄し、このアセトンをデカンテーションにより除去し、生成物エポキシドを真空下で乾燥させる。
【0099】
工程2.
120mgのε−ポリリシンを0.7mLの水中にて、336mgのウレアの存在下、6時間わたって40℃で変性させる。
【0100】
変性させたε−ポリリシンを工程1の生成物エポキシドに添加する;1滴のBF3を任意選択で添加し、pHを4に調整する。0.8mLのイソプロパノールを添加し、反応を一晩50℃で進行させ、その後pHを6.5まで増加させる。アセトンを添加し、冷却すると、第2層が現れ、溶媒をデカンテーションにより除去し;第2層をアセトンで洗浄し、溶媒をデカンテーションにより除去する; 生成物を真空下で乾燥させる。
【0101】
1mLの生成物を水中に溶解し、Sephadex 25−GカラムにてpH 11(水中200mg/L NaOHを用いる)で精製し、その後、pHを6.5に調整し、生成物を凍結乾燥させる。再度、Sephadex G−25カラムにてpH 6.5で精製する。
ε−ポリリシン1分子あたりのビスホスホニル基の数(HRICPMS):11
ビスホスホニル化ε−ポリリシン(Bispho x elys)(生成物24);
2、工程手順(ビスホスホネート成分を変性e−ポリリシンに結合、イソプロパノール/H2O中、酸性pH)
工程1.
550mgのビニリデンビスホスホネート(二ナトリウム塩、溶液 pH 6)を2mLの過酸化水素に添加し、16mgのタングステン酸ナトリウムを添加する。反応を3時間および20分間65℃にてpH4.6で進行させる。その後、pHを6.6に調整し、アセトンを添加する。第2層が現れる。冷却し、溶媒をデカンテーションにより除去する;第2層をアセトンで洗浄し、このアセトンをデカンテーションにより除去し、生成物を乾燥させる。
【0102】
工程2.
240mgのε−ポリリシンを1.2mLの水中にて、675mgのウレアの存在下、7時間にわたって40℃で変性させる。変性させたε−ポリリシンを工程1の生成物エポキシドに添加し、2滴のBF3を任意選択で添加し、pHを4.0に調整する。1.35mLのイソプロパノールを添加し、反応を一晩56℃で進行させ、その後、pHを6.7に調整し、アセトンを添加する。冷却し、溶媒をデカンテーションにより除去する。残留する第2層をアセトンで洗浄し、溶媒をデカンテーションにより除去し、真空下で乾燥する。生成物を水中に溶解し、pHを8.1に調整し、限外濾過(排除分子量1kD;溶媒:20mg NaOH/リットルにより精製する;生成物を凍結乾燥する。
ε−ポリリシン1分子あたりのビスホスホニル基の数:6.3。
【0103】
ビスホスホニル化ε−ポリリシン(Bispho x elys)(生成物25)
2、工程手順(ビスホスホネート成分を変性e−ポリリシンに結合、水中、酸性pH)
工程1.
20.8グラムのビニリデンジホスフェート(二ナトリウム塩、溶液 pH 6)を42mLの過酸化水素(30%)および250mgのタングステン酸ナトリウムに添加し、pHを4.6に調整し、3時間69℃で反応させる;その後、pHを6.4に調整する。80mLのアセトンを添加する(第2層が現れる);冷却し、アセトン/水層をデカンテーションにより除去する;第2層を再びアセトンで洗浄し、このアセトンをデカンテーションにより除去する;第2層を任意選択で真空下で乾燥させる。
【0104】
工程2.
5グラムのεポリリシンを9mLの水中で、10.1グラムのウレアの存在下、変性させる(4時間、20℃)。変性させたe−ポリリシンを工程1の生成物(エポキシド)に添加し、任意選択で、0.68mLのBF3を添加する。pHを4に調整し、反応を一晩50℃で進行させる。その後、pHを7.0に調整し、NaOH 40mg/Lの水溶液で限外濾過する。2リットルの濾液が得られ、保持液を凍結乾燥する。
【0105】
3−ヒドロキシ−フタレート化ε−ポリリシン(生成物27)(図3)
5.4グラムのε−ポリリシンおよび3.2グラムの3−ヒドロキシフタル酸無水物を40mLの水無含有DMSOに6℃で添加し、一晩20℃の後、黄色油状物が現れる。アセトンで洗浄し、溶媒をデカンテーションにより除去し、真空下で乾燥する。生成物を300 mLの水中に溶解し、NaOHを、pHが11になるまで添加する。Millipore prep スケールセルロースカートリッジ(排除分子量 1000ダルトン)にて1.5バールの圧力で0.05N NaOHを用い、35℃にて限外濾過する。2リットルの濾液が得られ、保持液を凍結乾燥する。表の「硬度の測定;実験3;生成物27」にしたがってCaCl.2HOおよびKHPOを添加する。PF値を測定する。
【0106】
C.結果
C.1.インビトロ実験
生成物が歯を保護する能力の測定のための手順は、「実施例;方法&材料;PF値の測定」の章に概要を示す。滅菌した歯試料を、特定の添加量の調査対象の生成物を含有する溶液で、処理する。ΔPおよびPF因子を該手順にしたがって測定する。
【0107】
硬度の測定。実験1:一般的手順
コード:生成物番号(A)、実験生成物(B)、ΔPμm(C)、PF因子(D)、%実験生成物/水 w/w(E)、pH(硬度試験)(F)。
【0108】
【表1】

【0109】
注:
ΔP:4つの処理前後での歯表面におけるニードル押込み深さの差(μm);各処理は、3つの段階:表面の実験生成物による予備処理、唾液バッチ内への浸漬および酢酸での処理からなる。
【0110】
ΔPa:酢酸での4つの処理前後での歯表面におけるニードル押込み深さの差(実験生成物使用せず、唾液での処理なし)。
【0111】
PF因子:100−(ΔP)*100/(ΔPa);例:PF因子60の生成物「x」は、酸での処理によって引き起こされた歯表面の硬度の60%低下が、生成物「x」での歯表面の前処理によって回避され得ることを意味する。
【0112】
実験IIについて、実験生成物は使用しないが、酸での各処理前に歯試料を唾液バッチに供する(30分の間、III、IVおよびVの場合も同様)。PF因子が示すように、アルカリ性リン酸ナトリウム(III)は、保護しないが、フッ化ナトリウム(IV)は酸攻撃に対して保護する。
【0113】
硬度の測定。実験2:カルシウムキレート化成分を有するホスホペプチドと&アミノペプチド
コード: 生成物番号(A)、実験生成物(B)、ΔPμm(C)、PF因子(D)、%ペプチド/水 w/w(E)、%カルボジイミド/水(F)、%CaCl.2HO/水(G)、%KHPO/水(H)、pH(硬度試験)(I)。
【0114】
【表2】

【0115】
注: すべての添加量は重量基準である。
**:3つの測定値の平均; *:2つの測定値の平均。
「%カルボジイミド/水」は、重合反応で使用したl−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル−カルボジイミドの量。
【0116】
生成物4(PPP):ホスビチンは部分脱リン酸化し、続いて、トリプシンで処理した;Mw 1〜3kD。
【0117】
生成物5(Phos−h):ホスビチンは、トリプシンで部分加水分解し、排除分子量10kDの膜にて限界濾過した;(Phos−h)は、ホスビチンの成分gln49−arg212 (Mw>20kD)を含有し得る(A. Goulas, journal
of Protein Chemistry, vol 15, no.1, 1−9, 1996参照)。
【0118】
先行技術において、CPPは虫歯予防能力を有すること、および歯表面上に蓄積され得ることが知られている。しかしながら、重合CPP(いわゆる(CPP))は、より高いPF因子を有し、卓越した保護物質であるようである。ホスビチン(Mw>30kD)
は、CPP(Mw 1〜2kD)と比べて大きく、重合CPPに匹敵するPF因子を有する。ホスビチンの低い分子量ペプチド(PPP、1〜3kD)への加水分解は、PF値に大きく影響する。PF値に対する大きさの影響が、CPPおよびホスビチン(生成物1、2、3、4)の両方に関して示されている。
【0119】
ホスビチン由来の小片の除去(大きなもの(例えばgln49−arg212)は保持される)は、ホスホペプチドのクラスにおいて最良のPF因子を有する生成物をもたらす(生成物5、PF:85);これは、天然ホスビチンの保護能力よりも優れる。ε−ポリリシン(6)のPF値は、同様のモル濃度のアミノ官能基の場合で、トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン(V)より2倍高い。これも、高分子量の生成物を使用することの重要性を示す。
【0120】
硬度の測定。実験3:
カルシウムキレート化成分を有するアミノペプチド & 糖類
コード: 生成物番号(A)、実験生成物(B)、ΔPμm(C)、PF因子(D)、%(ペプチド+糖)/水 w/w(E)、ペプチド/アミノポリマー比(F)、%カルボジイミド/水(G)、%CaCl.2HO/水(H)、%KHPO/水(I)、pH(硬度試験)(J)。
【0121】
【表3】

【0122】
注:(**): 3つの測定値の平均; (*): 2つの測定値の平均。
カゼインホスホペプチドとε−ポリリシンとの共重合により、重合カゼインホスホペプチドと比べ、高PF値を有する生成物がもたらされる(生成物7、8、9対2)。大規模生産では、生成物(10)(限外濾液した)は、カルボジイミドの加水分解産物に由来する低分子生成物から精製された生成物をもたらす。(10)のPF値と生成物(7)、(
8)および(9)のものとの比較により、PF値に対する低分子量生成物の限定的な影響が示される。また、生成物(10)への、大きさの小さい塩基(Trizmaなど)の添加は、保護能力の改善をもたらさない。(CPP x elys)およびフッ化ナトリウムの効果は相加的である(生成物7および12)。
【0123】
かかる混合物の使用により、低ペプチド添加量レベル(3.6%)での歯表面の硬度に対する0.1N酢酸の効果を完全に中和する。原理的には、ε−ポリリシンを水溶性加水分解キトサン(Mw<30000ダルトン)と置き換えることは可能である(生成物13および14)。生成物13のカゼインホスホペプチド加水分解キトサンコポリマーは、生成物(15)と同じ原料成分を含有するが、これらは、(15の)カルボジイミドがホスホペプチドおよびキトサンが添加される前に水中で加水分解されている点で異なり、カップリング活性の欠如をもたらす。(13)と(15)のPF値の差は、カップリングの重要性を示す。
【0124】
コード: 生成物番号(A)、実験生成物(B)、ΔPμm(C)、PF因子(D)、%ペプチド+糖/水 w/w(E)、反応段階数(F)、%CaCl.2HO/水(G)、%KHPO/水(H)、pH(硬度試験)(I)。
【0125】
【表4】

【0126】
注: (**): 2つの測定値の平均.
ビスホスホニル化ε−ポリリシンである生成物17〜21および23は、GPC(Sephadex G−25)で精製した;生成物22、24および25は限外濾過した(Millipore セルロースカートリッジ排除分子量1000ダルトン)。ε−ポリリ
シンに対するビスホスホネート基の付加により、1段階手順と2段階手順のの両方においてPF値が増加する(生成物6、17〜25)。1段階手順は、過剰の過酸化水素を用いて行う。2段階手順は、1段階手順で作製した生成物よりも高いPF値を有する生成物を提供する。過剰の過酸化水素は、エポキシドをε−ポリリシンと反応させる前に除去することが推奨される(生成物17および18対19〜22)。ビスホスホニル化ε−ポリリシンは、精製手順とは無関係に、高いPF値を示す。(ゲル透過クロマトグラフィーまたは限外濾過;生成物22)。水または水/アルコール混合物中でのエポキシドのε−ポリリシンへの添加は、高いPF値をもたらす(生成物19〜23)。エポキシドとの反応において非変性ε−ポリリシンの代わりに変性ε−ポリリシンを用いると、より高いPF値を有する生成物がもたらされる(生成物25、24および22)。3−ヒドロキシフタレート基のε−ポリリシンへの付加は、PF値を増加させる(生成物6および27)。
【0127】
実験4:アミノペプチド(カルシウムキレート化成分を有する)およびフッ化物を含有するゲル化配合物
歯試料を、ヒドロキシエチルセルロースで粘性化(viscosfy)したゲルで処理した(手順は、「実施例;方法&材料;PF値の測定」の章に概要を示す)。これらは、フッ化ナトリウム、CaCl.2HOおよびKHPOならびに、任意選択でビスホスホニル化e−ポリリシンおよび/またはカゼインホスホペプチド−ε−ポリリシンコポリマーを含んだ。
【0128】
【表5】

【0129】
%:水に対する重量基準である
セルロース:ヒドロキシエチルセルロース;すべての溶液をゲル化
CPP−e−ポリリシン/Ca/PO4混合物は、そのままで粘性であり、ゲルを調製するための増粘剤はかならずしも必要でない;ビスホスホニル化e−ポリリシン/Ca/PO4混合物は、粘性でない
pH:ゲルさせた溶液のもの
3つの歯試料をゲルの各々で処理した(ヒドロキシエチルセルロースのみを含有するゲルを除く);硬度に関するデータは平均値である。
【0130】
C.2.インビボ結果
インビボ試験における使用のための歯試料の合成:
歯試料を、水平なカッター歯を有するLeitz 1600歯用カッターを用いて水平な薄片に切断した(厚さ:0.3〜1mm);薄片を手で(穴を有する)、元の歯表面の少量の一部分を含む小片歯試料にカットする。歯試料を小さいプラスチックの管(外径6mmの長いプラスチックの管から切断しておいたもの)内に配置する。管の長さは3〜6mmである。管の内部に、光の下で硬化させたポリマーを充填する(Photoclearfil Bright;Kuraray)。歯試料を管内部の軟質ポリマー内に、元の歯表面がちょうど管の上部の表面に出るように配置する。最後に、ポリマーを、光源で硬化させる。歯表面を、Struers炭化ケイ素紙(800−4000)で研磨し、硬度を、5回、試料の各々に関して、Letiz Wetzlar顕微鏡下で測定する(ニー
ドルのウェイト(weight):50p)。最大平均押込み深さが43μmの歯試料を、口腔内での使用のために保持する。歯試料を、「発明の説明(インビボ実験の章)」の章に記載したデバイスに固定し、該デバイスを下顎の後ろの口腔内に配置する。
【0131】
C.2.1.ビスホスホニル化e−ポリリシンまたはフッ化物による、口腔内に5日間置いた放射線照射した歯試料の保護
歯試料を、口腔癌の患者に与えられる量(20 Gray)に等しい線量の放射線に供し、滅菌した。続いて、試料を、0.1%NaFの溶液、または4.0%ビスホスホニル化ε−ポリリシン、3.1%CaCl.2HOおよび1.7%KHPOの水溶液のいずれかで処理した。1滴の溶液を歯表面上に配置し、30分の間、37℃で放置した;該手順を、該滴を加圧空気で除去した後、繰り返した。最後に、滴を除去し、歯を空気にて乾燥させ、デバイスに固定した。合計6個の歯試料をデバイスに固定し、下顎の後ろの口腔内に配置した。これを、口腔内に5日間保持した(日夜)。所要滞留時間の完了後、デバイスを口腔から取り出し、実験用歯をデバイスから分離し、洗浄した。硬度を、ヌープ法にしたがって、歯試料の各々について6回測定した。
【0132】
【表6】

【0133】
A: 使用した保護物質の型;4%ビスホスホニル化ε−ポリリシンを含む配合物は、CaClおよびKHPOもまた含んだ。
【0134】
B:ヌープ法により歯表面の硬度を測定した段階
(処理前;放射線照射後で保護物質配合物を該表面に添加前;歯の表面に保護物質を添加後、口腔内に5日間置いた後)。
【0135】
N:口腔内の歯試料の数(1人あたり6個;4人の志願者;1種類の溶液あたり24個の試料;72個の歯試料を使用し、同じ平均硬度値を有する12の群に無作為化した)。
【0136】
n:1群の歯試料あたりの硬度測定値の数(1つの歯あたり6つ)
Min:群内でみられた最小硬度(μm)
Max:群内でみられた最大硬度(μm)
平均:群内でみられた平均硬度
標準偏差:標準偏差
【0137】
【表7】

【0138】
B:ヌープ法により歯表面の硬度を測定した段階
(放射線照射後で歯の表面に配合物を添加前;該表面に配合を添加後、口腔内に5日間置いた後)。
【0139】
A:使用した保護物質の型;4%ビスホスホニル化ε−ポリリシンを含む配合物は、CaClおよびKHPOもまた含んだ。
【0140】
N:口腔内の歯試料の数(1人あたり6個)。
デルタ:放射線照射による、または放射線照射+5日間口腔内での保持による硬度の変化(μm)
【0141】
【表8】

【0142】
口腔内に5日間置いた後に回収した、放射線照射した歯試料のいくつかを、1滴の酢酸(0.1N;pH 5)によるさらなる処理に、30分間37℃で供した;酸を洗い流し、歯を乾燥させ、硬度を測定した。
【0143】
【表9】

【0144】
N:歯試料の数
A:放射線照射および5日口腔内で保持後の硬度(μm)
B:放射線照射および5日口腔内で保持および酢酸での処理後の硬度
C:B−A
【0145】
【表10】

【0146】
C.2.2.口腔内で12時間おいた歯試料の保護
e−ポリリシン、CPP、ビスホスホニル化e−ポリリシン、カゼインホスホペプチドε−ポリリシンコポリマーまたは部分加水分解ホスビチンのいずれかを含有する溶液の1滴を、歯試料の表面に30分間37℃で配置する;滴を除去し、該手順をもう1回繰り返した。すべての溶液は、3.1%CaCl.2HOおよび1.7%KHPOも含んだ(e−ポリリシンを含有するものを除く)。歯表面を柔らかい紙タオルで、目に見えてきれいになるまで洗浄した。4個の歯試料をデバイスに固定し、口腔内の下顎の後ろに配置した。これらを口腔内に12時間(食事の間だけ外した)放置した。続いて、これらを取り出し、洗浄し、歯表面を、1滴の酢酸で処理した(0.1N 30分間、37℃);酸を除去し、歯を脱イオン水で洗浄し、硬度を評価した。
【0147】
【表11】

【0148】
A: 溶液中のペプチド原料成分の型(水に対するw/w基準の%)
(*):歯を唾液バッチ内に浸漬し(30分)、その後、ビスホスホニル化e−ポリリシンを含有する溶液で処理する前に空気にて乾燥させた。
【0149】
B:歯表面の平均初期硬度;μm(標準偏差)
C:処理後、口腔内で保持後および酸での処理後の平均硬度
D:硬度の平均変化(C−B)
E:Mann−Whitney統計学的試験のp値(ブランクに対する)
F:特定の配合物で処理した歯試料の数;歯試料の各々の硬度は、5回測定し、平均値を計算した;最も多くの場合で1人あたり4個の歯試料;実験に参加した5人の志願者;132個の歯試料を、同じ平均硬度値を有する(4個の歯の)群に無作為化した。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】ペプチドまたはタンパク質とカルボジイミド(EDAC)との単独重合および共重合の概略図を提供する。
【図2】εポリリシンとビスホスホニル化エポキシドとのビスホスホニル化e−ポリリシンへの反応の概略図を提供する。エポキシドは、ビニリデンジホスフェートから合成されたものである
【図3】εポリリシンと3−ヒドロキシ−フタル酸無水物との3−ヒドロキシ−フタレート化ε−ポリリシンへの反応である。
【図4】口腔から単離した嫌気生物の、生成物(22;ビスホスホニル化ε−ポリリシン)、(6;ε−ポリリシン)、(10;カゼインホスホペプチドε−ポリリシンコポリマー)または(27;3−ヒドロキシ−フタレート化ε−ポリリシン)の存在下での感受性である。最小阻害濃度(MIC)は、mg/mLで示す(調査した範囲0.2から=>3.5mg/mL)。
【図5】口腔において単離した微好気性生物の、生成物(22)、(6)、(10)または(27)の存在下での感受性であり、MICで示す。
【図6】口腔において単離した菌類(酵母など)の、生成物(22)、(6)、(10)または(27)の存在下での感受性であり、MICで示す。
【図7】口腔において単離した好気性生物および標準的な菌株の、生成物(22)、(6)、(10)または(27)の存在下での感受性であり、MICで示す。
【図8】口腔において単離したStreptococcus種菌株および標準的な菌株の、生成物(22)、(6)、(10)または(27)の存在下での感受性であり、MICで示す。
【図9】ヌープ実験である。保護なし(添え字なし)、または0.1%NaF(IV)、7.1%天然ホスビチン(3)、7.3%部分加水分解ホスビチン(5)、3.6% 3−ヒドロキシ−フタレート化e−ポリリシン(27)または1.5%ビスホスホニル化ε−ポリリシン(25)で歯を保護した後、表面をまた、0.1N酢酸で処理した後の歯表面におけるニードルの押込み深さ(y軸=μm)。データから、回帰直線を計算する。保護手順および酸での処理は4回繰り返す。(手順:実施例、方法および材料、PF値の測定を参照)。ペプチド含有溶液の配合物は、「実施例 C.結果;インビトロ実験」に示す。X軸:1=未処理歯試料の表面における押込み;2、3、4、5= 保護物質配合物および酸での4回連続処理後の押込み。
【図10】ヌープ実験である。6.5%カゼインホスホペプチド(1)(CPP)、7.3%重合カゼインホスホペプチド(CPP)(2)、3.6%もしくは7.8%カゼインホスホペプチド x e−ポリリシンコポリマー(CPP x elys)(7)および(10)それぞれ、または3.6%(CPP x elys)+NaF混合物(12)で歯を保護した後、表面をまた、0.1N酢酸で処理した後の歯表面におけるニードルの押込み深さ(μm)。データから、回帰直線を計算する。保護手順および酸での処理は4回繰り返す。(手順:実施例、方法および材料、PF値の測定を参照)。ペプチド含有溶液の配合物は、「実施例 C.結果;インビトロ実験」に示す。X軸:1=未処理歯試料の表面における押込み;2、3、4、5=保護物質配合物および酸での4回連続処理後の押込み。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムと錯体を形成できホスホン酸基またはリン酸基を含有し、かつ酸攻撃に対して歯を保護できるペプチドであって、
− ビスホスホニル化−ε−ポリリシン(Bispho x elys)、
− カゼインホスホペプチドε−ポリリシンコポリマー(CPP x elys)
− ε−ポリリシンとコンジュゲートさせた加水分解ホスビチン(Phos−hx elys)
− カルボジイミドと重合させたカゼインホスホペプチド(CPP)、および
− トリプシン、ペプシンまたは両者の組合せにより加水分解させたホスビチン(Phos−h)
からなる群より選択される、ペプチド。
【請求項2】
カゼインホスホペプチド(CPP)とコンジュゲートさせて(CPP x hy−chit)にした、最大30kDの分子量を有するキトサン加水分解産物。
【請求項3】
酸攻撃に対して歯を保護するため、および/または口腔内の細菌叢を抑制するための、カルシウムイオンと錯体を形成できる1種類以上の成分を含有するアミノタンパク質、カルシウムイオンと錯体を形成できる1種類以上の成分を含有するホスホ−タンパク質、カルシウムイオンと錯体を形成できる1種類以上の成分を含有する加水分解キトサンおよび/もしくはアミノタンパク質、またはかかる生成物の混合物の使用であって、
ここで、
a) 前記カルシウムイオンと錯体を形成できる1種類以上の成分を含有するアミノタンパク質が、ビスホスホニル化ε−ポリリシン(Bispho x elys)、ビスカルボキシル化ε−ポリリシン、3−ヒドロキシル−フタレート化ε−ポリリシン、ビスホスホニル化またはビスカルボキシル化され、かつ少なくとも2kDの分子量を有し、少なくとも40%のアミノ酸リシンを含有するタンパク質からなる群より選択され、
b) 前記カルシウムと錯体を形成できる1種類以上の成分を含有するホスホ−タンパク質が、
重合カゼインホスホペプチド(CPP)、部分加水分解ホスビチン(Phos−h)、カゼインホスホペプチド−ε−ポリリシン−コポリマー(CPP x elys)、および加水分解ホスビチン(Phos−h)もしくはホスビチン(Phos)とε−ポリリシンとの、または加水分解キトサンとのコポリマー(それぞれ、Phos−h x elys)、Phos−h x hy−chit)、(Phos x elys)および(Phos x hy−chit)からなる群より選択され、
c) 前記カルシウムと錯体を形成できる1種類以上の成分を含有する加水分解キトサンが、ビスホスホニル化加水分解キトサン(Bispho x hy−chit)またはカゼインホスホペプチド−加水分解−キトサン−コポリマー(CPP x hy−chit)であり、および
d) 前記アミノタンパク質が、ε−ポリリシン(elys)またはポリリシンである、
使用。
【請求項4】
前記タンパク質がペプチドである、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
歯の保護のため、口腔内の細菌叢の制御のため、または口臭を処置するための、請求項3に記載のε−ポリリシンまたはポリリシンの使用。
【請求項6】
前記ホスビチン加水分解産物が、ホスビチンを1種類以上のプロテアーゼでホスビチンを処理することにより得られ得る、請求項3に記載のホスビチン加水分解産物の使用。
【請求項7】
前記ホスビチン加水分解産物が、ホスビチンを、トリプシン、キモトリプシン、ペプシンまたは前記酵素の組合せで加水分解することにより得られ得る、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記ビスホスホニル化ε−ポリリシンが、2−e−ポリリシン−1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホネートであり、このとき、ビスホスホニル基の数が、1と該ペプチド内に存在するアミノ基の量との間で変動する、請求項3に記載の使用。
【請求項9】
前記加水分解キトサンが、30kDより小さいか、またはこれに等しい分子量を有し、キトサンを酸または酵素で加水分解することによって得られ得る、請求項3に記載の使用。
【請求項10】
カゼインホスホペプチドを水溶性カルボジイミドと重合させることを特徴とする、水中での重合カゼインホスホペプチド(CPP)の製造方法。
【請求項11】
前記カルボジイミドが、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
カゼインホスホペプチドおよびε−ポリリシンを、水溶性カルボジイミドとコンジュゲートさせることを特徴とする、水中でのカゼインホスホペプチド x ε−ポリリシン−コポリマー(CPP x elys)の製造方法。
【請求項13】
前記カルボジイミドが、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
カゼインホスホペプチドおよび加水分解キトサン(30kDより小さいか、またはこれに等しい分子量を有する)を水溶性カルボジイミドとコンジュゲートさせることを特徴とする、水中でのカゼインホスホペプチド x 加水分解−キトサン−コポリマー(CPP
x hy−chit)の製造方法。
【請求項15】
前記カルボジイミドが、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ホスビチンが、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン(またはかかる酵素の組合せ)で加水分解されており、ε−ポリリシンに、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドなどの水溶性カルボジイミドおよび/またはグルタミナーゼとコンジュゲートされていることを特徴とする、加水分解ホスビチンおよびε−ポリリシンに由来するコポリマー(Phos−h x elys)の製造方法。
【請求項17】
過酸化水素、ε−ポリリシンおよびビニリデンジホスフェート(塩または酸の形態の)の混合物からのビスホスホニル化ε−ポリリシンの製造方法。
【請求項18】
ε−ポリリシンを、ビスホスホニル化エポキシドと3〜9のpHで反応させることを特徴とする、ビスホスホニル化ε−ポリリシンの製造方法。
【請求項19】
前記エポキシド上の一部の置換基が、水素またはアルキル基からなり、ホスホニル基が、エステル化されているか、または酸(H)もしくは塩(Na、K他)の形態または混合物で存在する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ビスホスホニル化エポキシドが、エポキシエタン−1,1−ジホスホネートである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
反応を、3〜6のpHで、BF触媒を用いて行う、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
反応を、水中で、または水とアルコールの混合物中で行う、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
用語アルコールが、メタノール、エタノール、イソプロパノールまたはブタノールを指す、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ウレアなどの変性剤で変性させたεポリリシンを、ビスホスホニル化エポキシドと3〜9のpHで反応させることを特徴とする、ビスホスホニル化ε−ポリリシンの製造方法。
【請求項25】
ε−ポリリシンおよび3−ヒドロキシフタル酸無水物からの3−ヒドロキシ−フタレート化ε−ポリリシンの製造方法。
【請求項26】
歯磨き粉、口内清浄溶液、口内用スプレーおよびゲル、チューインガム、キャンデーおよび他の食品系、人工唾液、口内乾燥症、口腔癌、ホジキン病、シェーグレン症候群、HIV、糖尿病の患者のための歯の処置の薬用口腔ケア製品などの口腔ケア用製品における、原料成分または原料成分の組合せとしての、請求項1〜9いずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項27】
フッ化物、虫歯予防用糖類、ミネラル補給用ペプチド、抗菌製品、ワクチン、抗体、酸吸収性原料成分、カプセル化された原料成分、増粘剤、アニオン性、非イオン性、カチオン性もしくは両性洗浄剤、加湿剤、研磨剤原料成分、抗歯石剤、香料、保存剤、冷却剤、抗過敏剤原料成分および/または甘味料などのさらなる原料成分と組み合わせた、請求項26に記載の請求項1〜9いずれか1項に記載の化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−523891(P2007−523891A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548133(P2006−548133)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013549
【国際公開番号】WO2005/068645
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(506243688)
【氏名又は名称原語表記】HUYBRECHTS, LUCAS
【Fターム(参考)】