説明

蛍光体の流動特性の制御方法、蛍光体及び蛍光体ペースト

【課題】蛍光体の密度減少によって高分子封止材内での沈降速度が減少し、疎水性の増加によって微小乱流の発生を防止できる蛍光体の流動特性の制御方法を提供する。
また、前記流動特性制御方法によって得られる流動特性が向上した蛍光体を提供する。
さらに、前記高分子がコーティングされた蛍光体と高分子封止材とが混合された蛍光体ペースト、及びこれによって製造される発光ダイオードを提供する。
【解決手段】二重結合を含むシラン化合物で蛍光体の表面を表面処理する段階と、前段階で表面処理された蛍光体、モノマー及び重合開始剤を混合した後、前記蛍光体の表面から前記モノマーを重合させて前記蛍光体の表面に高分子膜を形成する段階とを含んで蛍光体の流動特性の制御方法を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体の流動特性の制御方法、蛍光体及び蛍光体ペースト組成物に関するもので、より詳細には、二重結合を含むシラン化合物で蛍光体の表面を表面処理する段階と、前記蛍光体の表面からモノマーを重合させて高分子膜を形成する段階とを含むことを特徴とする蛍光体の流動特性の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、レーザーダイオードや発光ダイオード(LED)などの発光素子は、その放出波長が一定の領域帯に限定されており、多様な波長の光を放出するのに限界がある。したがって、多様な波長の光源が必要であるときは、発光ダイオードチップ上に蛍光体を塗布して所望の波長の光を得ている。例えば、白色発光素子を得るために、青色光を放出する発光ダイオードチップに黄色励起発光特性を有する蛍光体を塗布し、青色光及び黄色光の混合光によって白色光を具現したりする。
【0003】
白色発光ダイオードは、ペーパー・シン光源(paper―thin light source)、液晶ディスプレイのバックライト、ノートブックコンピュータのディスプレイ部、自動車のドームライト、及び照明用光源のための低価の代案として考えられている。
【0004】
発光ダイオードの製造時に、蛍光体は、発光ダイオードチップを封止するエポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、アクリル樹脂などの高分子封止材(encapsulant)と混合した後、チップ上に塗布して硬化させる。すなわち、図1に示すように、LED製造工程では、蛍光体とPDMSなどの高分子封止材とを混合した後、これをチップ上に注射器を用いて分配する。このとき、チップ上に同一量の蛍光体がローディングされることが重要である。図2は、蛍光体と高分子封止材とが混合されたペーストを、図1の装置を用いて分配したときに得られる散布度を示す。従来は、図2に示すように、蛍光体がE領域のみならず、E領域の周囲、B領域またはF領域に広く散布され、時間による蛍光体の塗布量が変わるので、製造されたLEDごとにそれぞれ異なる色座標を有するようになった。この場合、蛍光体と高分子封止材との密度差によって蛍光体の沈殿現象が発生しうるが、時間の経過によっても高分子封止材内で蛍光体の沈殿が発生してはならなく、蛍光体が均一に分散されるべきである。
【0005】
特許文献1では、シラン化合物を用いて親水性基を除去して疎水性を増加させる方法を提案しているが、マトリックス内での分散性を向上させる構造及び方法は提案していない。
【0006】
また、特許文献2では、シラン化合物を蛍光体にコーティングしてマトリックス内での分散性を向上させる方法を提案しているが、この方法は、シラン化合物に反応性のある作用基がマトリックス内の有機物質と反応して粘度を急激に増加させるので、工程に応用されにくいという短所を有する。
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第2004―0042241号
【特許文献2】特開2003―37295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最近では、発光ダイオードの高分子封止材内での蛍光体の沈降を防止し、蛍光体を均一に混合して分散性が高められるように、蛍光体の流動特性を制御する方法の開発が切実に求められている。
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、蛍光体の密度減少によって高分子封止材内での沈降速度が減少し、疎水性の増加によって微小乱流の発生を防止できる蛍光体の流動特性の制御方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、前記流動特性の制御方法によって得られる流動特性が向上した蛍光体を提供することにある。
【0010】
本発明の更に他の目的は、前記高分子がコーティングされた蛍光体と高分子封止材とが混合された蛍光体ペースト、及びこれによって製造される発光ダイオードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するための本発明の一つの様相は、二重結合を含むシラン化合物で 蛍光体の表面を表面処理する段階と、前段階で表面処理された蛍光体、モノマー及び重合開始剤を混合した後、前記蛍光体の表面から前記モノマーを重合させて前記蛍光体の表面に高分子膜を形成する段階とを含むことを特徴とする蛍光体の流動特性の制御方法に関係する。
【0012】
本発明の他の様相は、高分子封止材内で減少した沈殿速度を有し、微小乱流の発生を抑制させる流動特性が向上した蛍光体に関係する。
【0013】
本発明の更に他の様相は、前記流動特性が向上した蛍光体と高分子封止材とが混合された蛍光体ペースト、及びこれによって製造される発光ダイオードに関係する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法によって蛍光体の表面を高分子でコーティングする場合、蛍光体の密度減少によって高分子封止材内での沈降速度が減少し、疎水性の増加によって微小乱流の発生を防止することができる。
【0015】
本発明の方法によって得られる流動特性が向上した蛍光体は、高分子封止材内で安定化した流動特性を有し、これを用いて発光ダイオードなどを製造する場合、同一量の蛍光体が均一にローディングされて色座標の移動などの不良が防止されることで、LED製造工程における収率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を添付の図面に基づいて一層詳細に説明する。
【0017】
本発明による蛍光体の流動特性の制御方法は、二重結合を含むシラン化合物で蛍光体の表面を表面処理する段階と、前段階で表面処理された蛍光体、モノマー及び重合開始剤を混合した後、前記蛍光体の表面から前記モノマーを重合させて前記蛍光体の表面に高分子膜を形成する段階とを含むことを特徴とする。
【0018】
図3は、本発明の一具現例の蛍光体の流動特性の制御方法を説明するための模式図で、図4は、本発明の一実施例の方法によって蛍光体の表面をシラン化合物で処理した後、スチレンモノマーを加えて重合させる各段階の化学反応を示す図で、図5は、図4の反応によって得られた、高分子がコーティングされた蛍光体の化学構造を示す。以下、本発明の各段階について詳細に説明する。
【0019】
(1)表面処理段階
本発明の方法では、まず、蛍光体をシラン化合物で表面処理する段階を含むが、図3及び図4に示すように、酸化物形態の蛍光体が空気中の水分子と接触すると、蛍光体の表面はヒドロキシ基によって親水性を示す。その後、シラン化合物を用いて蛍光体を表面処理すると、前記シラン化合物のアルコキシ基がヒドロキシ基と結合して離脱し、蛍光体の表面にシラン化合物が結合する。シラン化合物は、蛍光体の表面に結合して疎水性になるだけでなく、結合したシラン化合物は二重結合を有する作用基(アルケニル基)を有するので、高分子重合を誘導する。
【0020】
本発明で使用可能なシラン化合物は、一つ以上のアルコキシ基と一つ以上のアリル基またはビニル基などのアルケニル基を含む。このようなシラン化合物の好ましい例は、下記の式1で示される。
【0021】
【化1】

【0022】
ただし、式中、Rは、炭素数1〜6のアルコキシ基で、
、R及びRは、それぞれ独立に水素、炭素数1〜20の線状、分枝状または環状アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜20のアルケニル基であり、R、R及びRのうち少なくとも一つは、炭素数2〜20のアルケニル基である。
【0023】
前記式1のシラン化合物の具体的な例としては、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリプロポキシシラン、アリルトリブトキシシラン、アリルトリペンチルオキシシラン、アリルトリヘキシルオキシシラン、アリルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、1―ブテニルトリメトキシシラン及びスチリルトリメトキシシランなどが挙げられるが、必ずしもこれらに制限されることはない。
【0024】
本発明の蛍光体は、有機または無機蛍光体であり、従来の酸化物形態の蛍光体であれば全て使用可能であり、使用される蛍光体の種類や組成に制限はない。本発明の蛍光体としては、青色蛍光体、緑色蛍光体、赤色蛍光体などが全て使用可能である。
【0025】
本発明で使用可能な赤色蛍光体の例としては、YAl12、(Y,Gd)BO:Eu、Y(V,P)O:Eu、(Y,Gd)O:Eu、LaS:Eu3+などが挙げられるが、特に、輝度特性に優れたYAl12または(Y,Gd)BO:Euを使用することが好ましい。
【0026】
前記緑色蛍光体としては、BaMgAl1017:Eu,Mn、ZnSiO:Mn、(Zn,A)SiO:Mn(Aはアルカリ土金属)、MgAlxOy:Mn(x=1〜10の整数、y=1〜30の整数)、LaMgAlxOy:Tb(x=1〜14の整数、y=8〜47の整数)、ReBO:Tb(Reは、Sc、Y、La、Ce、及びGdからなる群から少なくとも一つ以上選択される希土類元素である。)、及び(Y,Gd)BO:Tbからなる群より1種以上選択して使用することができる。
【0027】
前記青色蛍光体としては、Sr(POCl:Eu2+、ZnS:Ag,Cl、CaMgSi:Eu、CaWO:Pb、及びYSiO:Euからなる群より1種以上選択して使用することができる。
【0028】
本発明において蛍光体をシラン化合物で表面処理する段階は、蛍光体を溶媒に分散させた後、これにシラン化合物を加えて反応させてから、ろ過、洗浄及び乾燥する段階を含む。前記蛍光体及び溶媒の混合液にシラン化合物を反応させるとき、触媒としてトリエチルアミンなどを使用することができ、反応温度を常温〜100℃にし、反応時間を30分〜12時間にして反応させることができる。前記ろ過、洗浄及び乾燥段階を経た結果、図4に示すように、二重結合を有するシラン化合物が蛍光体の表面に結合する。
【0029】
(2)高分子コーティング段階
次いで、前段階で表面処理された蛍光体、モノマー及び重合開始剤を混合した後、蛍光体の表面からモノマーを重合させて蛍光体の表面に高分子膜を形成する。
【0030】
シラン化合物が結合した蛍光体に、蛍光体の表面に高分子膜を形成させるモノマー及び重合開始剤を注入して重合を開始すると、前記シラン化合物のアルケニル基からモノマーが重合して高分子コーティングを形成するようになる。図4は、高分子コーティング段階で、シラン化合物のビニル基がスチレンモノマーと重合して高分子膜を形成することが示されている。
【0031】
本発明で使用可能なモノマーは、スチレン、プロピレン、ビニルクロライド、イソブチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、2―ビニルピリジン、及びイソプレンからなる群より選択される1種以上を含むが、必ずしもこれらに制限されることはない。
【0032】
本発明で使用可能な重合開始剤は、過硫酸カリウム、過酸化水素、クミルハイドロパーオキシド、ジ―t―ブチルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシドからなる群より選択される1種以上を含むが、必ずしもこれらに制限されることはない。
【0033】
本発明で使用される高分子膜を形成する高分子重合方法は、特別に制限されないが、一例として、シラン化合物で表面処理された蛍光体を前記モノマーと混合して乳化重合または懸濁重合することができる。
【0034】
本発明の他の様相は、前記蛍光体の流動特性の制御方法によって得られる流動特性が向上した蛍光体に関する。
【0035】
図5は、本発明の蛍光体の一例の化学構造を示す。図5に示す蛍光体は、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)で、これにシラン化合物が表面処理され、スチレンモノマーを重合させてポリスチレン高分子膜を形成した例である。
【0036】
前記蛍光体は、高分子封止材内で密度の小さい高分子がコーティングされることで蛍光体の密度が減少し、減少した沈殿速度を有し、前記蛍光体の表面が疎水性を示して高分子封止材内での微小乱流の発生を抑制させることができる。
【0037】
従来の酸化物形態の蛍光体は、空気中の水分子と接触すると、蛍光体の表面にヒドロキシ基が付着して蛍光体の表面が親水性を示すようになり、水とよく混合する。その結果、疎水性を示す高分子封止材との間の物性差によって、微小乱流が発生するようになる。本発明では、このような問題を解決するために、上記のようにシラン系化合物を用いて蛍光体の表面を疎水性に表面改質した。
【0038】
一般的に、蛍光体の沈降速度vは、蛍光体の密度差△ρに比例する。従来の蛍光体は、高分子封止材内で蛍光体の大きさが増加すると、沈降速度の増加によって流動が不安定になり、図2の座標(色座標のx軸及びy軸)に示すように、蛍光体が所望の区域Eに全て入らず、広い散布を有するという問題点がある。その反面、本発明の蛍光体は、密度の小さい高分子でコーティングして全体の密度が減少し、結果として沈降速度が減少するので、高分子封止材内で安定的な流動特性を示す(数1及び図7を参照)。
【0039】
【数1】

【0040】
前記式で、vは沈降速度、△ρは密度差、dは直径、△μは粘度差をそれぞれ示す。
【0041】
本発明の更に他の様相は、前記流動特性が向上した蛍光体と高分子封止材とが混合された蛍光体ペーストに関係する。
【0042】
前記高分子封止材は、アクリル、エポキシ、ポリイミド、シリコーン、シリコーン―エポキシハイブリッド樹脂、ポリジメチルシロキサン樹脂(PDMS)、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂からなる群より選択されるが、必ずしもこれらに制限されることはない。
【0043】
前記蛍光体ペーストは、本発明の流動特性が向上した蛍光体を高分子封止材と混合した後、これらをボールミリングなどのブレンディング過程を通して充分に混合することで製造される。
【0044】
前記蛍光体ペーストには、物性を害しない範囲内で、分散剤以外にも、可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤、平滑剤、除泡剤などの添加剤が添加される。これらの全ては、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が商業的に入手可能な程度に知られている。
【0045】
本発明の蛍光体ペーストは、発光ダイオードなどの発光素子の製造時に用いられる。例えば、リードフレームに配置された発光ダイオードの周囲を、蛍光体を分散させた高分子封止材で取り囲み、高分子封止材、ワイヤー及びリードフレームを密封樹脂で密封して製作することができる。
【0046】
本発明の蛍光体を用いて製造される発光素子は、ペーパー・シン光源、液晶ディスプレイのバックライト、自動車のドームライト及び照明用光源への用途展開が可能である。本発明の高分子がコーティングされた蛍光体を用いて製造される発光素子は、LEDチップ上に同一量の蛍光体がローディングされるので、色座標の移動などの不良が減少してLED製造工程で高い収率を得ることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の好適な具現例を例示した実施例に基づいて本発明を一層詳細に説明するが、これら実施例は、説明のためのものに過ぎなく、本発明の保護範囲を制限するものと解してはならない。
【0048】
(実施例1)
<1.シラン処理>
トルエン25mLに、蛍光体として市販されるYAG粉末(Cerium―doped Yttrium aluminium garnet、YAl12(Nemoto Blue、Japan))5gを加えて強く攪拌した。この蛍光体/トルエン溶液にアリルトリメトキシシラン(R、R、RはOCH、RはCH=CHCH−)を2mL加え、60℃で12時間の間反応させた。反応の終了後、1μmのろ紙を用いてろ過し、ろ過しながらトルエンで3回以上洗浄した。このようにして得られたシラン処理された蛍光体を、100℃の乾燥オーブンで4時間以上乾燥した。
【0049】
<2.高分子コーティング>
シラン処理した蛍光体5gとスチレンモノマー5mLとを混合して強く攪拌した後、この蛍光体/スチレンモノマー混合物に蒸溜水50mLをゆっくり滴下し、エマルジョン状態になるまで強く攪拌しながら温度を70℃にまでゆっくり上げた。70℃で過硫酸カリウム(K)0.08gを加えた後、12時間以上還流しながら反応させた。反応の完了後、1μmのろ紙を用いてろ過し、ろ過しながらトルエンで3回以上洗浄した。このようにして得られた高分子コーティングされた蛍光体を、100℃の乾燥オーブンで4時間以上乾燥した。
【0050】
(比較例1)
本発明の方法による蛍光体の流動特性の制御方法の効果を比較するために、市販の蛍光体YAG粉末を準備した。
【0051】
(比較例2)
シラン化合物を用いて蛍光体の表面を処理した後に高分子コーティングを行わないことを除けば、実施例1と同様に実施して蛍光体を得た。
【0052】
(実験例1:疎水性測定)
実施例及び比較例1〜2で得られた蛍光体の疎水性を、水接触角測定装置によって接触角を測定することで評価し、その結果を図6に示す。図6は上下二つの図からなり、上の図は比較例1を示し、下の図は実施例1を示す。
【0053】
図6によると、高分子コーティングされていない蛍光体(bare phosphor)が水によく混合される一方、高分子コーティングされた蛍光体(polystyrene−coated phosphor)は、水と接触したときに非常に大きい接触角を有することを確認した。本発明の高分子コーティングされた蛍光体は、蛍光体の表面を疎水性に表面改質することで、蛍光体と高分子封止材との間の表面物性差によって発生する微小乱流を防止することができる。
【0054】
(実験例2:せん断速度による粘度変化評価)
前記高分子コーティングされた蛍光体5gをPDMS 20gと混合した後、ジルコニアボール(直径5mm)5gを混合容器に入れて混合させた。高分子コーティングされた蛍光体と封止材であるPDMSとが充分に混合されるように、4時間以上ボールミリングした。混合物の上部のみを選択的に取り出した後、せん断速度を増加させながら粘度の変化を観察し、その結果を図7のグラフに示す。図7には、蛍光体ペースト製造時及び8時間経過後にせん断速度を測定した結果を示す。
【0055】
図7を通して確認されるように、比較例1及び2の蛍光体を用いて製造した蛍光体ペーストの場合、時間の増加によって粘度が持続的に減少する。このように時間の増加によって蛍光体とPDMS封止材との混合物の粘度が減少する原因は、蛍光体の沈降によってペースト混合物の上部に蛍光体がほとんど存在しないためである。これと対照的に、本発明の蛍光体を使用した実施例1の場合、時間の増加によっても蛍光体とPDMS封止材との混合物の粘度がほぼ一定であることを確認した。その結果、本発明の蛍光体がポリジメチルシロキサン樹脂などの高分子封止材システムに使用される場合、高分子コーティングによって蛍光体の沈降が防止され、蛍光体が均一に混合されて分散性が著しく向上したことを確認することができる。
【0056】
以上、本発明の好適な実施例を例に挙げて説明してきたが、本発明の技術思想の範囲内で多様な変形及び修正が可能であることは、当業者にとって自明であるので、このような変形及び修正も、添付の特許請求の範囲に含まれるものとして理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】蛍光体をLEDチップに分配する装置を示す概略斜視図である。
【図2】蛍光体と高分子封止材とが混合されたペーストを、図1の装置を用いて分配したときに得られる散布度を示すグラフである。
【図3】本発明の一具現例の蛍光体の流動特性の制御方法を説明するための模式図である。
【図4】本発明の一実施例の方法によって蛍光体の表面をシラン化合物で処理した後、スチレンモノマーを加えて重合させる各段階の化学反応を示す図である。
【図5】図4の反応によって得られた、高分子がコーティングされた蛍光体の化学構造を示す概略図である。
【図6】実施例及び比較例1の疎水性を測定したデータである。
【図7】実施例及び比較例1及び2によって製造された蛍光体の時間による粘度変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重結合を含むシラン化合物で蛍光体の表面を表面処理する段階と、
前段階で表面処理された蛍光体、モノマー及び重合開始剤を混合した後、前記蛍光体の表面から前記モノマーを重合させて前記蛍光体の表面に高分子膜を形成する段階と、
を含むことを特徴とする蛍光体の流動特性の制御方法。
【請求項2】
前記シラン化合物は、一つ以上のアルコキシ基と一つ以上のアルケニル基を含むシラン化合物であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体の流動特性の制御方法。
【請求項3】
前記シラン化合物は、下記の式1で示されることを特徴とする請求項2に記載の蛍光体の流動特性の制御方法。
【化1】

ただし、式中、Rは、炭素数1〜6のアルコキシ基で、
、R及びRは、それぞれ独立に水素、炭素数1〜20の線状、分枝状または環状アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜20のアルケニル基であり、R、R及びRのうち少なくとも一つは、炭素数2〜20のアルケニル基である。
【請求項4】
前記シラン化合物は、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリプロポキシシラン、アリルトリブトキシシラン、アリルトリペンチルオキシシラン、アリルトリヘキシルオキシシラン、アリルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、1―ブテニルトリメトキシシラン及びスチリルトリメトキシシランからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の蛍光体の流動特性の制御方法。
【請求項5】
前記モノマーは、スチレン、プロピレン、ビニルクロライド、イソブチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、2―ビニルピリジン、及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体の流動特性の制御方法。
【請求項6】
前記蛍光体は、無機蛍光体または有機蛍光体であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体の流動特性の制御方法。
【請求項7】
前記無機蛍光体は、YAl12:Ce、(Y,Gd)BO:Eu、Y(V,P)O:Eu、(Y,Gd)O:Eu、LaS:Eu3+、BaMgAl1017:Eu,Mn、ZnSiO:Mn、(Zn,A)SiO:Mn(Aはアルカリ土金属)、MgAlxOy:Mn(x=1〜10の整数、y=1〜30の整数)、LaMgAlxOy:Tb(x=1〜14の整数、y=8〜47の整数)、ReBO:Tb(Reは、Sc、Y、La、Ce、及びGdからなる群より少なくとも一つ以上選択される希土類元素である。)、(Y,Gd)BO:Tb、Sr(POCl:Eu2+、ZnS:Ag,Cl、CaMgSi:Eu、CaWO:Pb、及びYSiO:Euからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載の蛍光体の流動特性の制御方法。
【請求項8】
前記蛍光体の表面処理段階は、前記蛍光体を溶媒に分散させた後、前記シラン化合物を加えてろ過、洗浄及び乾燥する段階であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体の流動特性の制御方法。
【請求項9】
前記開始剤は、過硫酸カリウム、過酸化水素、クミルハイドロパーオキシド、ジ―t―ブチルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、アセチルパーオキシド、及びベンゾイルパーオキシドからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体の流動特性の制御方法。
【請求項10】
前記高分子膜形成段階は、シラン化合物で表面処理された蛍光体を前記モノマーと混合して乳化重合または懸濁重合させる段階であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体の流動特性の制御方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のうち何れか1項によって得られる流動特性が向上した蛍光体。
【請求項12】
前記蛍光体は、高分子膜で被覆されていない蛍光体と比較して、高分子封止材内で沈殿速度が減少してなることを特徴とする請求項11に記載の蛍光体。
【請求項13】
前記蛍光体は、表面が疎水性を示し、高分子封止材内での微小乱流の発生を抑制させることを特徴とする請求項11に記載の蛍光体。
【請求項14】
前記蛍光体は、高分子膜で被覆されていない蛍光体と比較して、密度が減少してなることを特徴とする請求項11に記載の蛍光体。
【請求項15】
請求項11ないし14のうち何れか1項の蛍光体と、高分子封止材とを含む蛍光体ペースト。
【請求項16】
前記高分子封止材が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン―エポキシハイブリッド樹脂、ポリジメチルシロキサン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノ樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項15に記載の蛍光体ペースト。
【請求項17】
請求項15の蛍光体ペーストによって製造される発光ダイオード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−111112(P2008−111112A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257741(P2007−257741)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】