説明

蛍光体材料製造用の硫化物焼結体スパッタリングターゲットおよびその製造方法

【課題】 発光特性のばらつきが小さい均一な薄膜の成膜により、高品質および高輝度の発光層を備える無機EL素子を製造可能とし、さらに、加工時やスパッタリング時に、割れが生じにくい、チオアルミネートを成分とするBaAl24系のスパッタリングターゲットを提供する。
【解決手段】 硫化バリウム粉末、モル比S/Alが1.40〜1.50である硫化アルミニウム粉末、および、硫化ユーロピウム粉末を混合した原料粉末を用いて、焼成温度を1000〜1050℃として不活性雰囲気中で焼成し、得られた仮焼粉を、800〜1000℃の温度のホットプレス法で成形および焼成する。スパッタリングターゲット中のモル比S/(Ba+Eu)は3.6〜4.0であり、かつ、曲げ強度は60MPa以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機EL素子用の蛍光体材料を製造する際に用いられる硫化物焼結体スパッタリングターゲットおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鮮明な表示が可能なフラットパネルディスプレイとして、薄膜の発光層を備える無機EL素子が盛んに研究されている。特に、赤色のZnS:Mnや緑色のZnS:Tbの硫化物蛍光体を用いた薄膜の発光層を備える無機EL素子は、信頼性および耐環境性に優れており、モノクロディスプレイとしては、レジの表示、自動車のメーター表示やコンピュータのモニタなどに広く用いられている。しかし、発光輝度、効率および色純度が十分な青色の蛍光体材料がなく、フルカラーの無機ELディスプレイを実用化するには至らなかった。
【0003】
これらの問題を解決するため、特開平8−134440号公報や「High-Luminance Blue-Emitting BaAl2S4:Eu Thin-Film Electroluminescent Devices」(Noboru Miura et al., Jpn. J. Appl. Phys. Vol.38,(1999)pp.L1291-L1292)に述べられているとおり、BaAl24:Euなどのチオアルミネート、またはSrGa24:Ceなどのチオガレートのように、高特性な青色の蛍光体材料が開発されている。特に、BaAl24:Euは、発光輝度および色純度が極めて良好なため、この青色の蛍光体材料のみを用いて薄膜の発光層を形成し、色変換フィルタを用いて赤色および緑色を得るフルカラー方式も提案されている。
【0004】
BaAl24:Euを用いた無機EL素子を製造するために必要な薄膜の成膜には、一般的には蒸着法が用いられる。例えば、BaS:EuとAl23のペレットへ、交互に電子ビームをパルス状に照射する方法である。それぞれのペレットに照射する電子ビームの時間および割合を変えることで、性能の高い薄膜の発光層を得ることができる。
【0005】
一方、工業化にあたっては、均一に成膜でき、かつ、生産性の高いスパッタリング法による成膜が適切である。「One-Target Sputter-Deposition of Blue-Emitting Ba-Al-S:Eu Phosphors」(Alexander Kosyachkov, Electroluminescence2004,Tronto,pp140-141,Sept.2004)では、金属アルミプレート中にBaS:Eu粉末を適量埋め込んだスパッタリングターゲットを用い、スパッタ装置内に硫化水素を流しながら成膜する方法が提案されている。
【0006】
しかし、このスパッタリングターゲットの作製には、金属アルミプレートに微細な穴を多数空け、この穴にBaS:Eu粉末を埋め込んでいく必要があるので、スパッタリングターゲットの作製に手間がかかり、また、成膜された薄膜の発光層の組成に、面内の分布が生じて、製造される無機EL素子の特性が均一にならないという問題があった。
【0007】
そのため、チオアルミネートを成分とする多元系のスパッタリングターゲットを作製し、得られたスパッタリングターゲットを用いて成膜を行うことが、最も望ましいと考えられた。しかし、成膜個所やバッチによって、製造される無機EL素子の特性にばらつきが生じやすいという問題があった。
【0008】
例えば、「高周波スパッタリング法によるBaAl2S4:Eu薄膜の作製」(柳田清一郎,南雲健介,三浦登,松本皓永,中野鐐太郎、発光型/非発光型ディスプレイ合同研究会 予稿集、2005年1月)に、成膜装置内に硫化水素を流さずに、BaAl24:Euを成分とする多元系のスパッタリングターゲットを用いて、成膜する方法が示されている。
【0009】
しかし、この方法では、成膜後に850℃の高温でアニール処理を行っても、その結晶化が容易ではない。すなわち、BaAl24:Euでは、化学量論比ではモル比S/Baが4であるのに対して、スパッタリングで成膜された薄膜の発光層では、モル比S/Baが3と小さくなっており、かかる発光層中における硫黄の大幅な欠損により、発光特性にばらつきが生じてしまうという問題があった。
【0010】
さらに、このような硫黄の欠損が発生した多元系のスパッタリングターゲットは、表面を研磨加工している最中やスパッタリング時に、スパッタリングターゲットが割れやすいという問題もあった。
【0011】
【特許文献1】特開平8−134440号公報
【0012】
【非特許文献1】「High-Luminance Blue-Emitting BaAl2S4:Eu Thin-Film Electroluminescent Devices」Noboru Miura et al., Jpn. J. Appl. Phys. Vol.38,(1999)pp.L1291-L1292
【0013】
【非特許文献2】「One-Target Sputter-Deposition of Blue-Emitting Ba-Al-S:Eu Phosphors」Alexander Kosyachkov, Electroluminescence2004,Tronto,pp140-141,Sept.2004
【0014】
【非特許文献3】「高周波スパッタリング法によるBaAl2S4:Eu薄膜の作製」(柳田清一郎,南雲健介,三浦登,松本皓永,中野鐐太郎、発光型/非発光型ディスプレイ合同研究会 予稿集、2005年1月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、発光特性のばらつきが小さい均一な薄膜を成膜することを可能とし、かつ、加工時やスパッタリング時に割れが生じにくい、チオアルミネートを成分とするBaAl24系の硫化物焼結体スパッタリングターゲットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の蛍光体材料製造用の硫化物焼結体スパッタリングターゲットの製造方法は、硫化バリウム粉末、モル比S/Alが1.40〜1.50である硫化アルミニウム粉末、および、硫化ユーロピウム粉末を混合して原料粉末とし、該原料粉末を1000〜1050℃の焼成温度で、かつ、不活性雰囲気中で焼成し、得られた仮焼粉を800〜1000℃の温度で、ホットプレス法により成形および焼成することにより、組成式がBaAl24:Euである硫化物焼結体を得ることに特徴がある。
【0017】
この方法により得られた硫化物焼結体スパッタリングターゲットは、組成式がBaAl24:Euであり、組成中のモル比S/(Ba+Eu)が3.6〜4.0であり、かつ、曲げ強度が60MPa以上であるという特徴を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の硫化物焼結体スパッタリングターゲットは、色のむらがなく均一で、曲げ強度が大幅に向上して、さらに、曲げ強度のばらつきも少ない。よって、加工時やスパッタリング時に、割れが生じにくく、このスパッタリングターゲットを用いて成膜された薄膜の発光層の特性も向上させることができる。
【0019】
したがって、かかる硫化物焼結体スパッタリングターゲットを用いることで、高品質および高輝度の発光層を備えた無機EL素子用の薄膜を製造することができ、かつ、製品の歩留まりの向上により、フルカラーの無機ELディスプレイをより安価に製造することが可能となるため、工業的な価値が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明者は、原料および化合物の硫黄濃度、焼結温度、焼結密度などをさらに詳細に調べた結果、本発明の製造方法でスパッタリングターゲットを作製すれば、色の分布、蛍光特性および曲げ強度に、分布が少ないものが得られることを見出し、本発明に至った。
【0021】
本発明では、Al23粉末に含まれる硫黄濃度を予め測定しておき、硫黄とアルミニウムのモル比S/Alが、1.50≧S/Al≧1.40であるAl23粉末を原料として用いる。該Al23粉末と、BaS、およびEuSの各粉末を混合して原料粉末を得て、該原料粉末をホットプレスせずに焼成する。
【0022】
この焼成は、仮焼粉としてBaAl24:Euを得ることが目的であって、スパッタリングターゲットの成形が目的ではない。そのため、焼成温度は1000〜1050℃とする。
【0023】
1050℃以上で焼成すると、未反応のBaSが昇華し易くなり、仮焼紛の組成がずれる不具合が生じる。また、1000℃未満では固相反応が進みにくい。焼成中は、主にAl23から硫黄がわずかに抜けるが、Al23原料中に含まれる硫黄濃度が高いために、生成された仮焼粉のBaAl24:Euでは、組成中のモル比S/(Ba+Eu)として、4.0≧S/(Ba+Eu)≧3.6を確保できる。
【0024】
次に、得られた仮焼粉を用いて、再度、焼成を行う。この焼成は、硫化物焼結体の成形が目的であり、ホットプレス法を用いる。
【0025】
本発明者は、1050℃で焼成した仮焼粉を用いて、ホットプレス法を用いて成形した場合における、ホットプレスト時の温度に対するスパッタリングターゲットの硫黄濃度および焼結密度を調査した。これによれば、ホットプレス時の温度が高くなるにしたがって、徐々に硫黄濃度が減少するが、硫黄の減少はごく非常にわずかであることが判明した。これは、Al23の状態では、硫黄は抜けやすいが、BaAl24:Euの化合物となっていれば、硫黄の減少が大幅に抑制されるためであると思われる。
【0026】
一方、焼結密度は、ホットプレス時の温度が高くなるにつれて増大するが、1000℃以上ではほぼ一定であった。したがって、1000℃以上の高温でホットプレス法を用いて成形することは、いたずらにBaAl24:Eu中の硫黄濃度を減少させるだけであり、好ましくない。
【0027】
ホットプレス法を用いた焼成は、所望の焼結密度、硬度および形状を確保するために行うものであるから、ホットプレス時の温度は800〜1000℃として、特に好ましくは、900〜1000℃とする。
【0028】
Al23およびBaSは酸素や水と反応し、酸化物や水酸化物を形成しやすいため、秤量、混合はもとより、仮焼粉の生成時もN2のような活性の低いガスかArのような不活性ガス雰囲気で行う必要がある。
【0029】
BaAl24:Euも同様である。仮焼粉の焼成およびホットプレスは30分から1時間程度でよく、これ以上の時間を要しても、いたずらに硫黄の減少を招くだけである。
【0030】
ホットプレスにより得られた硫化物焼結体を所定形状に加工することにより、本発明の硫化物焼結体スパッタリングターゲットが得られる。
【0031】
本発明の方法により得られた、組成式がBaAl24:Euである硫化物焼結体スパッタリングターゲットは、組成中のモル比S/(Ba+Eu)として、4.0≧S/(Ba+Eu)≧3.6となるスパッタリングターゲット中の硫黄濃度が確保されており、さらに、スパッタリングターゲット中の硫黄濃度分布や焼結状態のばらつきも、極めて少ないという特性を有する。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
BaS粉末(高純度化学社製、99.9%試薬)、EuS粉末(高純度化学社製、99.9%試薬)、および、モル比S/Al=1.43であるAl23粉末(高純度化学社製、98%試薬)を出発原料とし、モル比でBaS:EuS:Al23=0.95:0.05:1となるように秤量した各粉末を混合した後、この原料粉末をアルゴン雰囲気中、1035℃で、1時間、加熱して、焼成を行った。
【0033】
得られた仮焼物を粉末に粉砕して、得られた仮焼粉についてX線回折測定を行った結果、単相のバリウムチオアルミネートが生成されていることが確認された。また、得られた化合物をICP発光分析した結果、モル比S/(Ba+Eu)が3.90であることがわかった。
【0034】
さらに、得られた仮焼物を粉砕し、ふるいにかけ、粒度をそろえた後、この仮焼粉を、アルゴン雰囲気中、980℃で、1時間、ホットプレスした。このときのホットプレスの圧力は、350kg/cm2である。得られた焼結体を加工して、直径3インチ(76.2mm)、厚み3mmのスパッタリングターゲットとした。
【0035】
得られたスパッタリングターゲットは、色むらのない灰色を呈していた。
【0036】
得られたスパッタリングターゲットをICP発光分析した結果、モル比S/(Ba+Eu)が3.70であることがわかった。
【0037】
また、得られたスパッタリングターゲットから、曲げ強度試験用サンプルA〜Jを作製し、3点曲げ法(JIS規格 R1601)により、それぞれの曲げ強度を測定した。その測定結果を、表3に示す。曲げ強度は、62.5MPaから84.3MPaの範囲にあり、平均は73.5MPaであったことから、曲げ強度が大幅に向上し、また、ばらつきの少ないことが理解される。
【0038】
さらに、得られたスパッタリングターゲットの焼結密度をアルキメデス法により測定したところ、3.22g/cm3であった。
【0039】
得られたスパッタリングターゲットの一部を粉砕し、270mesh(目開き57μm)の粉末にし、粉末測定用ホルダーに充填して、励起光波長350nmでフォトルミネッセンスを測定した。
【0040】
その結果、従来の製造方法で作製した後述する比較例1のスパッタリングターゲットと比較して、2.7倍の強度を持つフォトルミネッセンスが観測された。
【0041】
原料の組成、製造条件およびスパッタリングターゲットの特性について、表1に示す。
【0042】
(実施例2)
BaS粉末(高純度化学社製、99.9%試薬)、EuS粉末(高純度化学社製、99.9%試薬)、および、モル比S/Al=1.42であるAl23粉末(高純度化学社製、98%試薬)を出発原料とし、モル比でBaS:EuS:Al23=0.95:0.05:1となるように秤量した各粉末を混合した後、この原料粉末をアルゴン雰囲気中、1000℃で、30分、加熱して、成形を行った。
【0043】
得られた仮焼物を粉末に粉砕して、得られた仮焼粉について、X線回折測定を行った結果、単相のバリウムチオアルミネートが生成されていることが確認された。また、得られた化合物をICP発光分析した結果、モル比S/(Ba+Eu)が3.81であることがわかった。
【0044】
さらに、得られた仮焼物を粉砕し、ふるいにかけ、粒度をそろえた後、この仮焼粉をアルゴン雰囲気中、950℃で、30分、ホットプレスした。このときのホットプレスの圧力は、350kg/cm2である。得られた焼結体を加工して、直径3インチ(76.2mm)、厚み3mmのスパッタリングターゲットとした。
【0045】
得られたスパッタリングターゲットは、色むらのない灰色を呈していた。
【0046】
得られたスパッタリングターゲットをICP発光分析した結果、モル比S/(Ba+Eu)が3.60であることがわかった。
【0047】
また、実施例1と同様に曲げ強度を測定したところ、曲げ強度の平均は66.2MPaであった。
【0048】
また、得られたスパッタリングターゲットの密度は、3.01g/cm3であり、結晶構造から計算される理論的な密度に対し、90%以上の密度が確保できた。
【0049】
原料の組成、製造条件およびスパッタリングターゲットの特性について、表1に示す。
【0050】
(比較例1)
BaS粉末(高純度化学社製、99.9%試薬)、EuS粉末(高純度化学社製、99.9%試薬)、および、モル比S/Al=1.43であるAl23粉末(高純度化学社製、98%試薬)を出発原料とし、モル比でBaS:EuS:Al23=0.95:0.05:1となるように秤量した各粉末を混合した後、この原料粉末を、アルゴン雰囲気中、1050℃、1時間、ホットプレスした。このときのホットプレスの圧力は、350kg/cm2である。得られた焼結体を加工して、直径3インチ(76.2mm)、厚み3mmのスパッタリングターゲットを得た。
【0051】
得られたスパッタリングターゲットは、変色した部分が見られていた。
【0052】
得られたスパッタリングターゲットを分析した結果、モル比S/(Ba+Eu)が3.56であることがわかった。
【0053】
本比較例で得られたスパッタリングターゲットは、仮焼工程を経ないために、硫黄の抜けが大きく組成がずれ、変色した部分が生じた。
【0054】
また、実施例1と同様に曲げ強度を測定したところ、曲げ強度の平均は34.5MPaであった。
【0055】
また、得られたスパッタリングターゲットの密度は、3.11g/cm3であった。但し、得られたスパッタリングターゲットはもろく強度が不十分であった。
【0056】
原料の組成、製造条件およびスパッタリングターゲットの特性について、表1に示す。
【0057】
(比較例2)
BaS粉末(高純度化学社製、99.9%試薬)、EuS粉末(高純度化学社製、99.9%試薬)、および、モル比S/Al=1.33であるAl23粉末(高純度化学社製、98%試薬)を出発原料とし、モル比でBaS:EuS:Al23=0.95:0.05:1となるように秤量した粉末原料を混合した後、アルゴン雰囲気中、1050℃、1時間、ホットプレスした。このときのホットプレスの圧力は、350kg/cm2である。スパッタリングターゲットは、直径3インチ(76.2mm)、厚み3mmとした。
【0058】
得られたスパッタリングターゲットは、灰色に近い色を呈している部分と、やや黒く変色している部分とがあった。それぞれの部分に、波長350nmの励起光を照射し、蛍光を測定した結果、やや黒く変色している部分は、灰色に近い色を呈している部分に較べ、70%以下の強度しか示さなかった。
【0059】
得られたスパッタリングターゲットを分析した結果、モル比S/(Ba+Eu)が3.44であることがわかった。
【0060】
また、得られたスパッタリングターゲットから、曲げ強度試験用サンプル1〜12を作製し、それぞれ曲げ強度を測定した。
【0061】
測定結果を、表2に示す。曲げ強度は、5.5MPaから45.1MPaであり、平均は22.3MPaであり、曲げ強度が大きくばらついていた。
【0062】
また、得られたスパッタリングターゲットの密度は、3.25g/cm3であった。
【0063】
原料の組成、製造条件およびスパッタリングターゲットの特性について、表1に示す。
【0064】
「成膜評価」
実施例1で得られたスパッタリングターゲット、および比較例1で得られたスパッタリングターゲットを用い、基板温度150℃、硫化水素10%を含むアルゴン雰囲気中で、高周波スパッタリングによって、膜厚650nmの発光層を形成した。実施例1で得られたスパッタリングターゲットを用いて5回の成膜を行った。また、比較例1で得られたスパッタリングターゲットを用いて5回の成膜を行った。さらに、得られた薄膜をアルゴン雰囲気、900℃で、2分、アニール処理した。
【0065】
得られた薄膜の発光層のフォトルミネッセンスを、基板面内4箇所で測定した。
【0066】
比較例1で得られたスパッタリングターゲットを用いて得られた薄膜の発光層は、面内およびバッチ間で、発光強度のばらつきが58%と大きかった。一方、本発明の製造方法を行った実施例1で得られたスパッタリングターゲットを用いて得られた薄膜の発光層は、面内およびバッチ間で、発光強度のばらつきが24%と小さかった。また、比較例1で得られたスパッタリングターゲットを用いて得られた薄膜の発光層よりも、発光強度が平均で36%大きく、優れた発光特性を有していた。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化バリウム粉末、モル比S/Alが1.40〜1.50である硫化アルミニウム粉末、および、硫化ユーロピウム粉末を混合して原料粉末とし、該原料粉末を1000〜1050℃の焼成温度で、かつ、不活性雰囲気中で焼成し、得られた仮焼粉を800〜1000℃の温度で、ホットプレス法により成形および焼成することにより、組成式がBaAl24:Euである硫化物焼結体を得ることを特徴とする蛍光体材料製造用の硫化物焼結体スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項2】
組成式がBaAl24:Euであり、組成中のモル比S/(Ba+Eu)が3.6〜4.0であり、かつ、曲げ強度が60MPa以上であることを特徴とする蛍光体材料製造用の硫化物焼結体スパッタリングターゲット。

【公開番号】特開2006−336039(P2006−336039A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159034(P2005−159034)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】