説明

蛍光性化合物、蛍光性重合体およびコーティング剤

【課題】耐溶剤性および耐熱性がともに優れた皮膜を形成可能な蛍光性重合体およびコーティング剤を提供する。
【解決手段】本発明の蛍光性化合物は、所定の構造を有する蛍光性化合物である。本発明の蛍光性重合体は、上記蛍光性化合物を重合させてなり、蛍光性化合物を構成単位として0.1質量%以上10質量%以下の量の割合で含むことを特徴とする。本発明のコーティング剤は上記蛍光性重合体とフッ素系溶媒とを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光性化合物、蛍光性重合体およびコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
オイルバリア用、樹脂・油脂の這い上がり防止用、絶縁保護・防湿コーティング用、低摩擦・摺動用および離型用などの種々の用途に用いられるコーティング剤としては、撥水性および撥油性を有するフッ素系ポリマーが、従来から使用されている。
【0003】
一般に、フッ素系ポリマーは、透明性が高く、しかもコーティング剤として用いられるときには塗布膜厚が薄いため、所望のコート皮膜が所定部位に形成されたか否かを確認することが困難である。この問題を解決すべく、コーティング剤にアントラキノン系の着色剤またはクマリン系の蛍光剤を含有させる技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【0004】
しかし、上述のような着色剤を含むコーティング剤を用いた場合、コート皮膜の着色は必ずしも十分とはいえず、膜厚が薄い場合や、被コート物(コート皮膜が形成された基材)が小さい場合には、所定部位にコート皮膜が形成されたか否かを確認することが困難であった。
【0005】
また、紫外線照射により発光するクマリン系の蛍光剤を含むコーティング剤を用いた場合、常温でのコート直後に紫外線照射すればコート皮膜が発光するので、コート皮膜の有無を容易に確認することができる。ところが、コート皮膜を硬化、乾燥する際に100℃以上に加熱すると蛍光剤が昇華反応を起こして気化分解するため、加熱後には紫外線照射してもコート皮膜は発光しなくなり、その有無を確認することができないという不都合があった。
【0006】
上記コーティング剤と比較して耐熱性に優れる皮膜を形成可能なコーティング剤としては、パーフルオロ基を有する蛍光剤と、パーフルオロ基を有するフッ素系ポリマーとを含むものが特許文献2に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−27242号公報
【特許文献2】特開2008−169352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載のコーティング剤を用いてコート皮膜を形成すると、100℃以上の高温条件で乾燥した場合でも、コート皮膜が発光するので、所定部位にコート皮膜が形成された否かの確認が可能である。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載のコーティング剤を用いてコート皮膜を形成した場合、有機溶剤にさらされる環境下でコート皮膜に含まれる蛍光剤が溶出して、視認性が低下することがあった。
【0010】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、耐溶剤性および耐熱性がともに優れた皮膜を形成可能な蛍光性重合体およびコーティング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意研究を重ねた結果、一般式(1)で表わされる化合物および下記一般式(2)で表わされる蛍光性化合物から選ばれる蛍光性化合物を重合させて得られる蛍光性重合体を用いると、耐溶剤性および耐熱性に優れたコート皮膜を形成可能であるという知見を得た。本発明はかかる新規な知見に基づいてなされたものである。
【0012】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表わされる蛍光性化合物である。
【化1】

【0013】
[式中、RおよびRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示し、RおよびRは互いに結合して環構造を形成していてもよく、窒素原子が結合しているベンゼン環とともに環構造を形成していてもよい。Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であるとともに重合性官能基を有する基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基であるとともに重合性官能基を有する基、重合性官能基を含む置換基を有する炭素数6〜30のアリール基、もしくは、重合性官能基を含む置換基を有する炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。Xは酸素原子、硫黄原子、−NH−または−NR−を示す(Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)。Yは、酸素原子、硫黄原子、−NH−または−NR−を示す(Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)。]
【0014】
また、本発明は、下記一般式(2)で表わされる蛍光性化合物である。
【0015】
【化2】

【0016】
[式中、RおよびRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示し、RおよびRは互いに結合して環構造を形成していてもよく、窒素原子が結合しているベンゼン環とともに環構造を形成していてもよい。Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であるとともに重合性官能基を有する基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基であるとともに重合性官能基を有する基、重合性官能基を含む置換基を有する炭素数6〜30のアリール基、もしくは、重合性官能基を含む置換基を有する炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。Xは酸素原子、硫黄原子、−NH−または−NR−を示す(Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)。Yは、酸素原子、硫黄原子、−NH−または−NR−を示す(Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)。]
【0017】
また、本発明は、上記一般式(1)に記載の蛍光性化合物および上記一般式(2)で表わされる蛍光性化合物から選ばれる一種以上の蛍光性化合物を重合させてなる蛍光性重合体であって、前記蛍光性化合物を構成単位として0.1質量%以上10質量%以下の量の割合で含むことを特徴とする蛍光性重合体である。 また、本発明は、蛍光性重合体と、フッ素系溶媒とを含有することを特徴とするコーティング剤である。
【0018】
本発明によれば、本発明の蛍光性重合体は、一般式(1)で表わされる蛍光性化合物および一般式(2)で表わされる蛍光性化合物を重合させてなり、一般式(1)および一般式(2)で表わされる蛍光性化合物から選ばれる蛍光性化合物を構成単位として含むので、耐溶剤性および耐熱性がともに優れた皮膜を形成することが可能である。
【0019】
また、本発明の蛍光性重合体は、構成単位として蛍光性化合物を、ごく少量しか含まないため、優れた撥水・撥油性を有するという特長も有する。
【0020】
ところで、従来の蛍光剤を添加したコーティング剤では、蛍光剤の濃度を高くしすぎると、形成されたコート皮膜が蛍光発光しなくなることがある(濃度消光)が、本発明の蛍光性重合体を用いたコーティング剤では、濃度消光が起こりにくい。これは本発明の蛍光性重合体は構造的に積み重なりにくいからではないかと考えられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、耐溶剤性および耐熱性がともに優れた皮膜を形成可能な蛍光性重合体およびコーティング剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体的に説明する。まず蛍光性化合物について説明する。
(蛍光性化合物)
本発明の蛍光性化合物は、下記一般式(1)で表わされる蛍光性化合物、または下記一般式(2)で表される蛍光性化合物である。
【0023】
【化3】

【0024】
一般式(1)および一般式(2)において、RおよびRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示し、RおよびRは互いに結合して環構造を形成していてもよく、窒素原子が結合しているベンゼン環とともに環構造を形成していてもよい。
【0025】
炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。また、アルキル基は、部分的にフッ素化されたフッ素含有アルキル基であってもよい。フッ素含有アルキル基としては、例えば、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロブチル基、ヘキサフルオロブチル基などが挙げられる。
【0026】
炭素数7〜30のアリールアルキル基の例としては、ベンジル基、フェネチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルイソプロピル基、2−フェニルイソプロピル基、フェニル−t−ブチル基、α−ナフチルメチル基、1−α−ナフチルエチル基、2−α−ナフチルエチル基、1−α−ナフチルイソプロピル基、2−α−ナフチルイソプロピル基、β−ナフチルメチル基、1−β−ナフチルエチル基、2−β−ナフチルエチル基、1−β−ナフチルイソプロピル基、2−β−ナフチルイソプロピル基、1−ピロリルメチル基、2−(1−ピロリル)エチル基、p−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、o−メチルベンジル基、p−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、o−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、m−ブロモベンジル基、o−ブロモベンジル基、p−ヨードベンジル基、m−ヨードベンジル基、o−ヨードベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、m−ヒドロキシベンジル基、o−ヒドロキシベンジル基、p−アミノベンジル基、m−アミノベンジル基、o−アミノベンジル基、p−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−シアノベンジル基、m−シアノベンジル基、o−シアノベンジル基、1−ヒドロキシ−2−フェニルイソプロピル基、1−クロロ−2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。また、アリールアルキル基は、部分的にフッ素化されたフッ素含有アリールアルキル基であってもよい。フッ素含有アリールアルキル基としては、例えば、1−フェニルジフルオロエチル基、α−ナフチルトリフルオロメチル基、p−トリフルオロメチルベンジル基などが挙げられる。
【0027】
アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基などが挙げられる。
【0028】
炭素数5〜20のヘテロアリール基の例としては、1−アザ−インドリジン−2−イル基、1−アザ−インドリジン−3−イル基、1−アザ−インドリジン−5−イル基、1−アザ−インドリジン−6−イル基、1−アザ−インドリジン−7−イル基、1−アザ−インドリジン−8−イル基、2−アザ−インドリジン−1−イル基、2−アザ−インドリジン−3−イル基、2−アザ−インドリジン−5−イル基、2−アザ−インドリジン−6−イル基、2−アザ−インドリジン−7−イル基、2−アザ−インドリジン−8−イル基、6−アザ−インドリジン−1−イル基、6−アザ−インドリジン−2−イル基、6−アザ−インドリジン−3−イル基、6−アザ−インドリジン−5−イル基、6−アザ−インドリジン−7−イル基、6−アザ−インドリジン−8−イル基、7−アザ−インドリジン−1−イル基、7−アザ−インドリジン−2−イル基、7−アザ−インドリジン−3−イル基、7−アザ−インドリジン−5−イル基、7−アザ−インドリジン−6−イル基、7−アザ−インドリジン−7−イル基、7−アザ−インドリジン−8−イル基、8−アザ−インドリジン−1−イル基、8−アザ−インドリジン−2−イル基、8−アザ−インドリジン−3−イル基、8−アザ−インドリジン−5−イル基、8−アザ−インドリジン−6−イル基、8−アザ−インドリジン−7−イル基、1−インドリジニル基、2−インドリジニル基、3−インドリジニル基、5−インドリジニル基、6−インドリジニル基、7−インドリジニル基、8−インドリジニル基、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナンスロリン−2−イル基、1,7−フェナンスロリン−3−イル基、1,7−フェナンスロリン−4−イル基、1,7−フェナンスロリン−5−イル基、1,7−フェナンスロリン−6−イル基、1,7−フェナンスロリン−8−イル基、1,7−フェナンスロリン−9−イル基、1,7−フェナンスロリン−10−イル基、1,8−フェナンスロリン−2−イル基、1,8−フェナンスロリン−3−イル基、1,8−フェナンスロリン−4−イル基、1,8−フェナンスロリン−5−イル基、1,8−フェナンスロリン−6−イル基、1,8−フェナンスロリン−7−イル基、1,8−フェナンスロリン−9−イル基、1,8−フェナンスロリン−10−イル基、1,9−フェナンスロリン−2−イル基、1,9−フェナンスロリン−3−イル基、1,9−フェナンスロリン−4−イル基、1,9−フェナンスロリン−5−イル基、1,9−フェナンスロリン−6−イル基、1,9−フェナンスロリン−7−イル基、1,9−フェナンスロリン−8−イル基、1,9−フェナンスロリン−10−イル基、1,10−フェナンスロリン−2−イル基、1,10−フェナンスロリン−3−イル基、1,10−フェナンスロリン−4−イル基、1,10−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−1−イル基、2,9−フェナンスロリン−3−イル基、2,9−フェナンスロリン−4−イル基、2,9−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−6−イル基、2,9−フェナンスロリン−7−イル基、2,9−フェナンスロリン−8−イル基、2,9−フェナンスロリン−10−イル基、2,8−フェナンスロリン−1−イル基、2,8−フェナンスロリン−3−イル基、2,8−フェナンスロリン−4−イル基、2,8−フェナンスロリン−5−イル基、2,8−フェナンスロリン−6−イル基、2,8−フェナンスロリン−7−イル基、2,8−フェナンスロリン−9−イル基、2,8−フェナンスロリン−10−イル基、2,7−フェナンスロリン−1−イル基、2,7−フェナンスロリン−3−イル基、2,7−フェナンスロリン−4−イル基、2,7−フェナンスロリン−5−イル基、2,7−フェナンスロリン−6−イル基、2,7−フェナンスロリン−8−イル基、2,7−フェナンスロリン−9−イル基、2,7−フェナンスロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、10−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、10−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル1−インドリル基、4−t−ブチル1−インドリル基、2−t−ブチル3−インドリル基、4−t−ブチル3−インドリル基等が挙げられる。
【0029】
上述した各基(アルキル基、アリールアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基)は、置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、スルホキシル基、スルホンアミド基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基などが挙げられる。
【0030】
置換基としての、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の例としては、上述で例示したものと同様のものが挙げられる。ハロゲン原子の例としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アルコキシル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、フッ素を含有するものであってもよい。アルコキシル基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、各種ブトキシ基、各種ペントキシ基、各種ヘキソキシ基、各種オクトキシ基、各種デシロキシ基、シクロペンチロキシ基、シクロヘキシロキシ基、ベンジロキシ基、フェネチルオキシ基などや、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、トリフルオロプロポキシ基、O−CH(CH)CF、O−CH−Cなどのフッ素含有アルコキシル基が挙げられる。スルホンアミド基は、置換スルホンアミド又は無置換スルホンアミドのいずれでもあってもよく、アミド基は、置換アミド又は無置換アミドのいずれでもあってもよく、これらはフッ素を含むものであってもよい。これらのアルコキシル基、スルホンアミド基、アミド基の置換基としては、前記RとRと同様のものが挙げられる。さらに、アルコキシカルボニル基におけるアルコキシル基の例としては、前記と同様のものが挙げられる。また、エステル基はCOOCHなどのアルキルエステルに加えて、COOCH13で示されるフッ素含有エステル基であってもよい。
【0031】
とRとが、たがいに結合して、RとRが結合している窒素原子と一緒になって形成してなる環構造としては、例えば、1−ピロリジニル基、ピペリジノ基、モルホリノ基などが挙げられる。
【0032】
また、RとRが、RとR窒素原子が結合しているベンゼン環と共に形成してなる環構造としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
【0033】
【化4】

【0034】
とRとしては、有機溶剤への溶解性が高いという観点から、炭素数4〜10のアルキル基や炭素数4〜10のフッ素含有アルキル基が好ましい。フッ素溶媒への溶解性が高いという観点から、炭素数4〜10のフッ素含有アルキル基がさらに好ましい。
【0035】
一般式(1)および(2)において、Rは、重合性官能基を含む基である。具体的には、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であるとともに重合性官能基を有する基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基であるとともに重合性官能基を有する基、重合性官能基を含む置換基を有する炭素数6〜30のアリール基、もしくは、重合性官能基を含む置換基を有する炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。
【0036】
ここで、重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基などの重合性不飽和結合を有する基や、エポキシ基等があげられる。
【0037】
の置換基を有していてもよいアルキル基であるとともに重合性官能基を有する基としては、置換基およびアルキル基の少なくとも一方が重合性官能基を有するものであればよい。Rが置換基を有していてもよいアルキル基である場合、アルキル基部分の炭素数の合計が1〜20であればよく、このようなアルキル基としては、上記RとRで例示したアルキル基に加えて、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基、各種ノナデシル基、各種エイコシル基などの炭素数11〜20のものや、これらが部分的にフッ素化されたフッ素含有アルキル基(例えば、C1021など)があげられる。これらは、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。
【0038】
の置換基を有していてもよいアリールアルキル基であるとともに重合性官能基を有する基としては、置換基およびアリールアルキル基の少なくとも一方が重合性官能基を有するものであればよい。Rが置換基を有していてもよいアリールアルキル基である場合、アリールアルキル基部分の炭素数の合計が7〜30であればよく、このようなアリールアルキル基部分の具体例としては、上記RとRで例示したものと同様のものがあげられる。
【0039】
のアルキル基の置換基やアリールアルキル基の置換基としては、上記RとRで例示したものと同様のものや、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基などの重合性不飽和結合を有する基や、エポキシ基等の重合性官能基を含むものなどが挙げられる。
【0040】
の重合性官能基を含む置換基を有するアリール基のアリール基としては、上記RとRで例示したアリール基と同様のものがあげられ、アリール基の置換基には、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、またはエポキシ基等の重合性官能基が含まれる。
【0041】
の重合性官能基を含む置換基を有するヘテロアリール基のヘテロアリール基としては、上記RとRで例示したヘテロアリール基と同様のものがあげられ、ヘテロアリール基の置換基には、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基またはエポキシ基等の重合性官能基が含まれる。
【0042】
としては、重合性官能基を含む置換基を有する炭素数6〜30のアリール基が好ましい。
【0043】
一般式(1)および(2)において、Xは酸素原子、硫黄原子、−NH−または−NR−を示す。ここでRは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。
【0044】
のアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の例としては、それぞれ、上記R及びRで挙げたものと同様の例が挙げられ、それらの置換基も同様のものが挙げられる。
【0045】
一般式(1)および(2)において、Yは酸素原子、硫黄原子、−NH−または−NR−を示す。ここで、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。
【0046】
のアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の例としては、それぞれ、前記R及びRで挙げたものと同様の例が挙げられ、それらの置換基も同様のものが挙げられる。
【0047】
X、Yとしては、合成が容易で蛍光発光性、有機溶媒に対する溶解性、耐熱、耐光性にも優れているという点から、酸素原子が好ましい。
【0048】
なお本発明には、以下の一般式(1B)および(2B)に示す蛍光性化合物(Xがないもの)を含んでいてもよい。
【0049】
【化5】

【0050】
本発明には、以下の一般式(1C)および(2C)に示す蛍光性化合物を含んでいてもよい。
【0051】
【化6】

【0052】
一般式(1B)、一般式(2B)、一般式(1C)および一般式(2C)中、RおよびRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示し、RおよびRは互いに結合して環構造を形成していてもよく、窒素原子が結合しているベンゼン環とともに環構造を形成していてもよい。
【0053】
一般式(1B)、一般式(2B)、一般式(1C)および一般式(2C)中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であるとともに重合性官能基を有する基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基であるとともに重合性官能基を有する基、重合性官能基を含む置換基を有する炭素数6〜30のアリール基、もしくは、重合性官能基を含む置換基を有する炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。
【0054】
一般式(1B)、一般式(2B)、一般式(1C)および一般式(2C)中、Yは、酸素原子、硫黄原子、−NH−または−NR−(Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)を示す。
【0055】
一般式(1C)および一般式(2C)中、Xは酸素原子、硫黄原子、−NH−または−NR−(Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)を示す。
【0056】
一般式(1B)、一般式(2B)、一般式(1C)および一般式(2C)中の、R1、R2、R3およびYの具体例は一般式(1)および(2)と同様であり、一般式(1C)および一般式(2C)中のXの具体例は一般式(1)および(2)と同様である。
【0057】
次に、本発明の蛍光性化合物の製造方法について説明する。
一般式(1)および(2)の化合物において、Xが酸素原子である場合、例えば以下の方法により、ベンゾフラノ−1,2−ナフトキノン系誘導体を合成する。
【0058】
【化7】

【0059】
(式中、Mはアルカリ金属原子、R及びRは上記と同じである。
反応式(A)で示されるように、実質上化学量論的量の1,2−ナフトキノン−4−スルホン酸アルカリ金属塩(a)とm−置換フェノール(b)を、酢酸などの適当な溶媒中において、塩化銅などの触媒の存在下に、0〜80℃程度の温度で反応させることにより、一般式(c)で表されるベンゾフラノ−1,2−ナフトキノン骨格を有し、Xが酸素原子である化合物が得られる。この際、一般式(c´)で表される化合物が副生する。
【0060】
なお、上記反応においては、1,2−ナフトキノン−4−スルホン酸アルカリ金属塩(a)に代えて1,2−ナフトキノンを用いてもよい。また、塩化銅に代えて塩化ニッケルや酢酸亜鉛を触媒として用いてもよい。
【0061】
次に、反応式(B)に示されるように、一般式(c)で表される化合物とp−安息香酸アルデヒドと酢酸などの適当な溶媒中において、酢酸アンモニウムと50〜100℃程度の温度で反応させることにより、一般式(d)で表される化合物および一般式(d´)で表される化合物が混合物(混合物Aとする)として得られる。
【0062】
【化8】

【0063】
次に、反応式(C)に示されるように、混合物Aと、2−-ヒドロキシエチルメタクリレート等の、分子内に重合性官能基を有し、且つ混合物Aと反応可能な、水酸基やアミノ基、イソシアネート基等を有する化合物を、テトラヒドロフラン(THF)等の適当な溶媒中で反応させることにより、一般式(1)で表わされる蛍光性化合物および一般式(2)で表わされる蛍光性化合物の混合物Bが得られる。反応式(C)中、EDC−HClとは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド塩酸塩を意味し、DMAPとは4−ジメチルアミノピリジンを意味する。
【0064】
【化9】

【0065】
(蛍光性重合体)
次に本発明の蛍光性化合物を構成単位として含む蛍光性重合体について説明する。
本発明の蛍光性重合体は、上記一般式(1)に記載の蛍光性化合物および上記一般式(2)で表わされる蛍光性化合物から選ばれる一種以上の蛍光性化合物を構成単位として、蛍光性重合体の質量に対して0.1質量%以上10質量%以下の割合で含む。
【0066】
また、本発明の蛍光性重合体は、蛍光性化合物以外の化合物を構成単位(他の構成単位とする)として蛍光性重合体の質量に対して90質量%以上99.9質量%以下の割合で含む。
【0067】
他の構成単位として含まれる化合物としては、アクリル酸エステルおよびメタアクリル酸エステルなどのアクリレート系化合物や、スチレンやビニルベンゼンなどのビニル基を含有する芳香族化合物等があげられる。これらのうち、アクリレート系化合物が好ましい。
【0068】
アクリレート系化合物としては、具体的には炭素数が1〜18のアルキル基を有するアクリレート(アクリル酸エステル)や、炭素数が1〜18のアルキル基を有するメタクリレート(メタクリル酸エステル)があげられる。以下の記載において「(メタ)アクリレート」とはメタアクリレートとメタクリレートを一括して表記したものを意味する。
【0069】
アクリレート系化合物としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、およびイソボルニル(メタ)アクリレートなどの環状(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、部分的にフッ素化されたフッ素含有アルキル基を有する(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートなどがあげられ、これらは一種または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、具体的には、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘプチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルメチル(メタ)アクリレート等があげられる。
【0071】
撥水撥油性能が優れているとの観点から、本発明では、アクリレート系化合物のうち、少なくとも10質量%以上がパーフルオロアルキルアクリレートおよびパーフルオロアルキルメタクリレートから選ばれるパーフルオロ基含有アクリレートであるのが好ましい。
【0072】
本発明の蛍光性重合体は、構成単位として含まれる化合物(蛍光性化合物など)を重合させることにより得られる。
【0073】
本発明の蛍光性重合体の分子量は特に限定されないが、分子量Mw5000〜150000(ここで、MwとはGPC(溶媒;テトラヒドロフラン)を用い、ポリスチレン換算した場合の重量平均分子量)のポリマーが好ましく、特に8000〜70000が好ましい。この範囲よりも分子量が小さいと、コーティング剤として用いた場合に形成される皮膜が脆くなる傾向にあり、一方この範囲よりも分子量が大きいと溶媒への溶解性が低下する傾向にあるからである。
【0074】
本発明の蛍光性重合体は、単独で、または二種以上を併用して、主にコーティング剤として用いることができるが、それ以外に有機蛍光性色素として、様々な用途、例えば各種表示機器における蛍光変換膜用、色素レーザ用、調光用、エネルギー変換用、高密度光記録用、表示用、分子認識のための蛍光センサ用などに用いることもできる。
【0075】
(コーティング剤)
次に本発明のコーティング剤について説明する。本発明のコーティング剤は、上述した本発明の蛍光性重合体と、フッ素系溶媒とを含有してなる。
【0076】
本発明のコーティング剤に含まれるフッ素系溶媒としては、パーフルオロカーボン(PFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、パーフルオロポリエーテル(PFPE)、ハイドロフルオロポリエーテル(HFPE)等があげられる。
【0077】
本発明のコーティング剤は、フッ素系溶媒に、本発明の蛍光性重合体を添加し溶解することにより得られる。コーティング剤を調製する際には、蛍光性重合体を、コート皮膜の有無が確認できる程度、すなわち、充分な視認性を確保できる程度添加する。
【0078】
従来のコーティング剤(フッ素系ポリマーに従来の蛍光剤を添加してなるもの)において、充分な視認性確保のため、コーティング剤全体に対して蛍光剤を500wt ppm以上添加する必要があり、コーティング剤中のフッ素系ポリマー含有量が少ない場合(例えばフッ素系ポリマー含有量が1000wt ppm:0.1重量%)には、乾燥皮膜中の蛍光剤濃度が高くなるため、形成されたコート皮膜の皮膜特性が劣化する問題があった。
【0079】
しかし、本発明において、蛍光性重合体の添加量を、蛍光性重合体中に構成単位として含まれる蛍光性化合物の濃度が、コーティング剤の全量に対して2.5wt ppm以上となるように設定すると、コーティング剤が塗布されたか否かの確認が可能であり、構成単位として含まれる蛍光性化合物の濃度が5wt ppm以上となるように設定すると、充分な視認性が確保されることから、従来の蛍光剤を用いた場合よりも、コーティング剤中の蛍光性化合物の量を低くすることができる。
【0080】
ところで、従来の蛍光剤を添加したコーティング剤では、蛍光剤の濃度を高くしすぎると、形成されたコート皮膜が蛍光発光しなくなることがある(濃度消光)が、本発明の蛍光性重合体を用いたコーティング剤では、蛍光性重合体の濃度を高くしても濃度消光が起こりにくい。これは本発明の蛍光性重合体は構造的に積み重なりにくいからではないかと考えられる。
【0081】
本発明のコーティング剤には、実用性を向上させるために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、フィラー等各種添加剤を添加することも可能である。
本発明のコーティング剤の被コート物へのコーティング方法は、特に限定されず、ディップ(Dip)、刷毛塗り、スプレー、ディスペンス等、周知の塗布方法を用いることができる。
【0082】
本発明のコーティング剤は、幅広い用途、例えば、電子基板の防湿コーティング剤や、塩水・電解液・腐食性ガス等から基材を保護する耐薬品保護コーティング剤、マイクロモーターの軸受けに用いる潤滑オイルの拡散を防止するオイルバリア剤、HDDモーターの流体軸受けに用いる潤滑オイルの拡散を防止するオイルバリア剤、サインペン・ボールペン等のインクの漏れを防止する漏れ防止剤、コネクタ・電子部品等の汚れ防止剤、絶縁樹脂の這い上がり防止剤、MFコンデンサのリード封止樹脂の付着防止剤、金属部品の防錆剤、DVD・CD等のガイドレール用のドライ潤滑剤、表面反射防止コート剤、防水スプレー原液に使用することができる。
【0083】
<実施例>
以下、本発明を実施例にて、より詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において使用される蛍光剤を以下の手順で合成した。
1.蛍光性重合体の合成
(1)オキサゾール系蛍光化合物Aの合成
1,2−ナフトキノン−4−スルホン酸ナトリウム(1.0g、3.84×10−3mol)とN,N−ジブチル−3−アミノフェノール(1.02g、4.16×10−3mol)と酢酸亜鉛(0.10g、3.84×10−3 mol)に、ジメチルスルホキシド(DMSO)を30ml加え、60℃で5時間撹拌した。反応終了後, 反応溶液を蒸留水400mlに注ぎ沈殿物をろ別した。ろ物から生成物(1)をジクロロメタンで抽出、ジクロロメタン抽出液を減圧濃縮し, シリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン/酢酸エチル=10/1]を用いて分離精製し、ベンゾフラノ−1,2−ナフトキノン誘導体の緑色結晶を 収率約30%で得た。
【0084】
次に、ベンゾフラノ−1,2−ナフトキノン誘導体(4.0g、1.06×10−2mol)とp−安息香酸アルデヒド(1.92g、1.28×10−2mol)を酢酸30mlに溶解させ、これに酢酸アンモニウム(16.44g、2.14×10−1mol)を加え90 ℃で2時間反応させた。反応終了後、反応溶液を200mlの蒸留水に注ぎ沈殿物をろ別した。ろ物をジクロロメタンで洗い不純物を溶解させて取り除き、黄色粉末結晶のオキサゾール系蛍光化合物Aを租収率90%で得た。オキサゾール系蛍光化合物Aは、下記式(3)に表わされる化合物および下記式(4)で表わされる化合物の混合物である。
【0085】
【化10】

【0086】
(2)蛍光性化合物(B)の合成
1000mlの3つ口セパラブルフラスコに、テトラヒドロフラン(THF)600ml、(1)で得られたオキサゾール系蛍光化合物Aを8612mg、4−ジメチルアミノピリジンを342.1mg、および2−ヒドロキシエチルメタクリレートを4424.8mgを投入し10分間攪拌した。
【0087】
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を7668.0mg、徐々に反応液に添加し、22時間撹拌した。撹拌後の反応液を、0.5質量%の塩酸で洗浄後、飽和NaHCO水溶液および飽和NaCl水溶液でそれぞれ洗浄した後、有機層に無水NaSOを加えて12時間乾燥させた。
【0088】
乾燥後の溶液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、蛍光性化合物Bの明橙色結晶を7000mg得た(収率64.7%)
蛍光性化合物Bは下記式(1A)で表わされる化合物と下記式(2A)で表わされる化合物の混合物である。
【0089】
【化11】

【0090】
(3)蛍光性重合体の合成
(実施例1)
冷却管を備えた、3つ口セパラブルフラスコにTHFを100.0g、蛍光性官能基含有モノマーBを400mg、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートを99.6g、及び2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリルを0.25g加えて攪拌し、70℃の湯浴で5時間保持し重合させた。反応液から溶媒を除去した後、得られた重合体をトルエン100gで4回洗浄し、真空乾燥することで、実施例1の蛍光性重合体を80g得た(収率80%)。
【0091】
(実施例2)
蛍光性官能基含有モノマーBの量を200mgとし、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートの量を99.8gとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の蛍光性重合体を80g得た(収率80%)。
【0092】
(実施例3)
蛍光性官能基含有モノマーBの量を100mgとし、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートの量を99.9gとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の蛍光性重合体を72.3g得た(収率72.3%)。
【0093】
(実施例4)
蛍光性官能基含有モノマーBの量を1000mgとし、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートの量を99.0gとしたこと以外は実施例1と同様にして実施例4の蛍光性重合体を82g得た(収率82%)。
【0094】
(実施例5)
蛍光性官能基含有モノマーBの量を50mgとし、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートの量を99.95gとしたこと以外は実施例1と同様にして実施例5の蛍光性重合体Eを80g得た(収率80%)。
【0095】
(比較例1)
蛍光性官能基含有モノマーBの量を0mgとし、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートの量を100gとしたこと以外は実施例1と同様にして比較例1のフッ素系ポリマーを80g得た(収率80%)。
【0096】
2.試験例1:コート皮膜の視認性の評価試験(基材の色の影響)
(1)コーティング剤の調製
(コーティング剤A−1)
実施例1で得られた蛍光性重合体Aを0.5質量部、HFE99.5質量部に溶解し、コーティング剤A−1とした。
【0097】
(コーティング剤C−1)
比較例1で得られたフッ素系ポリマーを0.5質量部、HFE99.5質量部に溶解してフッ素系ポリマー液B−1とした。このフッ素系ポリマー液B−1 99.9gに、下記式(5)の化合物および下記式(6)の化合物の混合物である蛍光剤混合物Cを10mg添加して溶解しコーティング剤C−1とした。
【0098】
【0099】
【化12】

【0100】
(コーティング剤D−1)
比較例1で得られたフッ素系ポリマーを0.5質量部、HFE99.5質量部に溶解してフッ素系ポリマー液B−1とした。このフッ素系ポリマー液B−1 99.9gに、オキサゾール系蛍光剤(シンロイヒ社製、商品名 ロイヒマーカー108M)を100mg添加して分散させ、コーティング剤D−1とした。
【0101】
(2)コート皮膜の形成
A−1、C−1、D−1の各コーティング剤をそれぞれ容器にいれ、各コーティング剤中に下記の各種基材を、それぞれ漬け、その後、基材をコーティング剤から引き上げて室温で乾燥させた(1回ディップコート)。これにより、各基材表面に約0.1μm厚のコート皮膜が形成された。
【0102】
使用した基材は、ステンレス板(SUS板、長さ40mm×幅15mm、厚さ0.5mm)、ガラス板(長さ76mm×幅26mm、厚さ1mm)、黒色の樹脂板(PET製、長さ40mm×幅15mm、厚さ0.5mm)、灰色の樹脂板(PET製、長さ40mm×幅15mm、厚さ0.5mm)、白色の樹脂板(PET製、長さ40mm×幅15mm、厚さ0.5mm)である。
【0103】
(3)コート皮膜の視認性の評価方法
各基材のコート皮膜形成部分にブラックライト(波長365nm)を照射してコート皮膜の発色を目視にて観察した。
評価基準は、以下の通りである。
◎;発色が明確に観察される(発色によってコート皮膜の存在が明確に確認できる(視認性が高い))。
○;発色が観察される。
△;発色が若干観察される。
×;発色が全く観察されない。
コート皮膜の視認性の評価結果を表1に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
(4)結果と考察
A−1の本発明のコーティング剤及びC−1のコーティング剤を用いた場合には、形成されたコート皮膜が全ての基材において黄色く発色して、はっきりと観察されるため、コート皮膜の存在を容易に確認することが出来た(視認性が高かった)。D−1のコーティング剤を用いた場合には、基材によってコート皮膜の存在を確認できなかった。
以上より、本発明のコーティング剤は、基材色を選ばず使用できるということがわかった。
【0106】
3.試験例2:加熱がコート皮膜の視認性に与える影響(耐熱性)
ステンレス板(SUS製、長さ20mm×幅20mm、厚さ0.5mm)にマスキングテープを用い、巾1mmの隙間を作成し、この隙間に、試験例1で調整したA−1、C−1、D−1の各コーティング剤を、それぞれスポイトを用いて1滴滴下し、室温で乾燥させた後、マスキングテープを剥がした。これにより、基材表面に巾1mmのコート皮膜が形成された。
【0107】
コート皮膜が形成されたステンレス板を150℃で1時間乾燥させ、コート皮膜形成部分にブラックライト(波長365nm)を照射してコート皮膜の発色を目視にて観察した。表2に150℃で乾燥後の視認性を評価して示すとともに、発色の様子を撮影した写真を示した。評価基準は試験例1と同様である。
【0108】
【表2】

【0109】
A−1の本発明のコーティング剤及びC−1のコーティング剤を用いた場合には、加熱後もコート皮膜が明確に視認できたが、D−1のコーティング剤を使用した場合では、加熱後には発色が全く確認できなかった。このことから、本発明のコーティング剤は耐熱性に優れているということがわかった。
【0110】
4.試験例3:溶剤がコート皮膜の視認性に与える影響(耐溶剤性)>
試験例1で調製したA−1、C−1、D−1の各コーティング剤をそれぞれ別の容器にいれ、乾燥したガラス板を漬けた後、ガラス板をコーティング剤から引き上げて乾燥させた。それぞれのガラス板上には、約0.1μm厚のコート皮膜が形成された。
【0111】
コート皮膜が形成されたガラス板を常温で、各有機溶剤(イソプロピルアルコール(IPA)、エタノール、メタノール、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、アセトン)にそれぞれ1時間浸漬した後、溶剤から取り出して乾燥させ、コート皮膜形成部分にブラックライト(波長365nm)を照射してコート皮膜の発色を目視にて観察した。
試験例1のコート皮膜の視認性の評価方法と同様の評価基準によって評価した結果を表3に示す。
【0112】
【表3】

【0113】
A−1のコーティング剤を用いた場合には、全ての溶剤においてほとんど発色の変化が見られなかった。また、A−1のコーティング剤に含まれるフッ素系重合体と同様の骨格を有する蛍光剤を含むC−1のコーティング剤と比較しても、A−1のコーティング剤は、より高い耐溶剤性を示した。これは、A−1のコーティング剤の蛍光成分が、樹脂骨格に組み込まれており、溶剤に溶出しにくいことに起因すると考えられる。
【0114】
D−1のコーティング剤を用いた場合には、溶剤に浸漬することにより視認性が低下した。この結果から、D−1のコーティング剤を用いた皮膜から蛍光剤が、各溶剤に溶出して視認性が低下したことがわかった。
【0115】
5.試験例4:蛍光性化合物の濃度の検討
1.で作製した実施例1〜実施例5の蛍光性重合体を用いて、蛍光性化合物の濃度の相違するコーティング剤を調製し、充分な視認性の得られる蛍光剤の濃度について検討した。
【0116】
比較のために、上記式(5)の化合物および上記式(6)の化合物の混合物である蛍光剤混合物Cを用いたコーティング剤、およびオキサゾール系蛍光剤(シンロイヒ社製、商品名 ロイヒマーカー108M)を用いたコーティング剤についても濃度の相違するコーティング剤を調製し、十分な視認性の得られる蛍光剤の濃度を検討した。
【0117】
(1)コーティング剤の調製
実施例2〜5の蛍光性重合体0.5質量部をHFE99.6質量部に溶解してコーティング剤A−2、A−3、A−4、A−5を調製した。
【0118】
比較例1で得られたフッ素系ポリマーを0.5質量部、HFE99.5質量部に溶解して得られたフッ素系ポリマー液B−1 99.9995gに、蛍光剤混合物Cを0.5mg添加して溶解しコーティング剤C−2を調製した。
【0119】
比較例1で得られたフッ素系ポリマーを0.5質量部、HFE99.5質量部に溶解して得られたフッ素系ポリマー液B−1 99.99gに、オキサゾール系蛍光剤(シンロイヒ社製、商品名 ロイヒマーカー108M)を10mg添加して分散させコーティング剤D−2を調製した。
【0120】
(2)コート皮膜の形成
試験例1で調製したA−1、C−1、D−1のコーティング剤、(1)で調製したA−2、A−3、A−4、A−5、C−2、D−2の各コーティング剤をそれぞれ容器にいれ、各種基材を、それぞれ漬け、その後、基材をコーティング剤から引き上げて乾燥させ(1回ディップコート)、各基材表面に約0.1μm厚のコート皮膜を形成した。
【0121】
使用した基材は、ステンレス板(SUS板、長さ40mm×幅15mm、厚さ0.5mm)、ガラス板(長さ76mm×幅26mm、厚さ1mm)、鋼線(SUS304製、直径1mm)、樹脂板(PET製、透明色、長さ40mm×幅15mm、厚さ0.5mm)、プリント配線板(JISZ3197の6.8(1)に規定するくし形電極基板2形、長さ50mm×幅50mm、厚さ1.6mm)である。
【0122】
(3)コート皮膜の視認性の評価方法
各コート皮膜を上記試験例1のコート皮膜の視認性の評価方法と同様の評価基準によって評価し、その結果を表3に示した。表3中、コーティング剤A−1〜A−5については蛍光性化合物の濃度を示し、コーティング剤C−1、C−2、D−1、D−2については蛍光剤濃度を併せて示した。
【0123】
【表4】

【0124】
(4)結果と考察
本発明のコーティング剤のうち、A−1、A−2、A−3、A−4の各コーティング剤を用いた場合には、全ての基材においてコート皮膜の発色が明確に観察された。A−5のコーティング剤では、A−1〜A−4のコーティング剤を用いた場合よりは劣るものの、全ての基材においてコート皮膜の発色が確認された。
【0125】
C−1のコーティング剤を用いた場合には、良好な発色が観察されるが、蛍光剤濃度の低いC−2のコーティング剤では視認性が大幅に低下した。
【0126】
D−1のコーティング剤を用いた場合には、発色は観察できるが、基材によって若干発色が確認しにくいものがあった。D−1と同じ蛍光剤を用いているがその濃度の低いD−2のコーティング剤を用いた場合には、視認性が大幅に低下し、基材によっては発色が全く確認できないものもあった。
【0127】
この結果から、本発明の蛍光性重合体を含むコーティング剤は、従来の蛍光剤を用いた場合よりも、コーティング剤中の蛍光性化合物の量を低くすることができるということがわかった。
【0128】
<まとめ>
本発明のコーティング剤は、使用される基材色を選ばず、かつ耐熱性に優れている。また本発明のコーティング剤は耐溶剤性にも優れていることから、有機溶剤に接触する環境下で使用される基材にも好適である。さらに、本発明によれば、蛍光性化合物の量を従来のものよりも顕著に少なくすることができるので、撥水・撥油性などの皮膜特性を低下させずに視認性に優れた皮膜を形成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされる蛍光性化合物。
【化1】

[式中、RおよびRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示し、RおよびRは互いに結合して環構造を形成していてもよく、窒素原子が結合しているベンゼン環とともに環構造を形成していてもよい。Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であるとともに重合性官能基を有する基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基であるとともに重合性官能基を有する基、重合性官能基を含む置換基を有する炭素数6〜30のアリール基、もしくは、重合性官能基を含む置換基を有する炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。Xは酸素原子、硫黄原子、−NH−または−NR−を示す(Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)。Yは、酸素原子、硫黄原子、−NH−または−NR−を示す(Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)。]
【請求項2】
下記一般式(2)で表わされる蛍光性化合物。
【化2】

[式中、RおよびRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示し、RおよびRは互いに結合して環構造を形成していてもよく、窒素原子が結合しているベンゼン環とともに環構造を形成していてもよい。Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であるとともに重合性官能基を有する基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基であるとともに重合性官能基を有する基、重合性官能基を含む置換基を有する炭素数6〜30のアリール基、もしくは、重合性官能基を含む置換基を有する炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。Xは酸素原子、硫黄原子、−NH−または−NR−を示す(Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)。Yは、酸素原子、硫黄原子、−NH−または−NR−を示す(Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)。]
【請求項3】
前記Rは重合性官能基を含む置換基を有する炭素数6〜30のアリール基であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光性化合物。
【請求項4】
下記一般式(1)に記載の蛍光性化合物および下記一般式(2)で表わされる蛍光性化合物から選ばれる一種以上の蛍光性化合物を重合させてなる蛍光性重合体であって、
前記蛍光性化合物を構成単位として0.1質量%以上10質量%以下の量の割合で含むことを特徴とする蛍光性重合体。
【化3】

[式中、RおよびRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示し、RおよびRは互いに結合して環構造を形成していてもよく、窒素原子が結合しているベンゼン環とともに環構造を形成していてもよい。Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であるとともに重合性官能基を有する基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基であるとともに重合性官能基を有する基、重合性官能基を含む置換基を有する炭素数6〜30のアリール基、もしくは、重合性官能基を含む置換基を有する炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。Xは酸素原子、硫黄原子、−NH−または−NR−を示す(Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)。Yは、酸素原子、硫黄原子、−NH−または−NR−を示す(Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)。]
【請求項5】
前記Rは重合性官能基を含む置換基を有する炭素数6〜30のアリール基であることを特徴とする請求項4に記載の蛍光性重合体。
【請求項6】
前記蛍光性化合物と、メタアクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルから選ばれるアクリレート系化合物とを重合させてなり、
前記アクリレート系化合物を構成単位として、90質量%以上99.9質量%以下の割合で含むことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の蛍光性重合体。
【請求項7】
前記アクリルレート系化合物のうち、少なくとも10質量%以上がパーフルオロアルキルアクリレートおよびパーフルオロアルキルメタクリレートから選ばれるパーフルオロ基含有化合物であることを特徴とする請求項6に記載の蛍光性重合体。
【請求項8】
請求項5ないし請求項7のいずれか一項に記載の蛍光性重合体と、フッ素系溶媒とを含有することを特徴とするコーティング剤。

【公開番号】特開2012−180451(P2012−180451A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44262(P2011−44262)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(591074091)株式会社野田スクリーン (17)
【Fターム(参考)】