説明

蛍光染料用の接着剤の製造方法およびその使用方法

【課題】基材に蛍光層を接着させるための蛍光染料用接着剤、その製造法及びその使用法を提供すること。
【解決手段】ガラス組成物を含む、または該ガラス組成物で構成されている、基材への蛍光層の接着のための蛍光染料用接着剤である。また、ガラス組成物が燐酸塩ガラス、硼酸塩ガラス、硫燐酸塩ガラスおよび硼素含有量の高い硼珪酸塩ガラスから選択されていることを特徴とする接着剤である。さらに、ガラス組成物が珪酸塩を含んでいないことを特徴とする接着剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に蛍光層を接着させるための蛍光染料用接着剤、その製造方法およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市販されている蛍光灯は、通例、筒状のガラスカバーまたは平坦外装部(FFL)を有している。このガラスカバーまたはガラス管、あるいは蛍光層の塗布された、例えば下方ガラスプレートと上方ガラスプレートとがあって、両ガラスプレートがガラス用または合成物質用のハンダでハンダ付けされている平坦外装部がガス放電の反応空間を形成している。蛍光灯のタイプとしては、例えばコンパクトな筒状蛍光灯(CFL)、冷陰極蛍光灯(CCFL)、外部電極付きガス放電灯(EEFL)および平坦型FFL(フラット蛍光灯)など様々なものがある。しかし、市場に定着しているのは、高圧タイプと低圧タイプの実質上2種のガス放電灯である。蛍光灯は、通例、水銀蒸気放電か希ガス放電に依っている。蛍光灯は、照明として一般に使用されるようになっており、そのサイズ、形態および性能は多くの種類がある。
【0003】
ガス放電灯における光の生成は、放電器内でのガスのイオン化に依拠している。ガスはその際導電性になっている。そこに装入された固形、液状または気状の物質
– 多くの場合では水銀(Hg)および/またはヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)および/またはキセノン(Xe)– が灯管内に突き出た2つの電極間での放電によって励起され、殆どはUV領域および可視領域に属する光が衝撃的に放射される。ガス貫通下での放電によって放電作用を促進させるため、電極は、ガス放電空間の外側にも、例えばガラス管またはガラス基材の外側にも設置することができる(いわゆるEEFL)。
【0004】
蛍光灯は管の内側に、例えばY、Eu、La、CeおよびTbの酸化物から構成される蛍光層を有している。ガラス管の内側に蛍光層を塗布するには、先ずこれらの酸化物をペースト状に捏ね回す。粘度調整には、通例どおり、例えばニトロセルロースなどのビヒクルを使用する。蛍光染料のガラスへの十分な接着性を保証するために、ペーストには一種または数種の接着剤が添加されるが、これも通常行われていることである。
【0005】
蛍光灯に蛍光層を形成する場合、先ずは、例えばニトロセルロースなど使用したビヒクルをいわゆる「ベーキング」工程で焙成する。最終的には、接着剤と蛍光粉末をより高温でガラス表面に焼結させる。
【0006】
接着剤としては、これ迄は、例えばCBB(Calcium-Barium-Borat=硼酸カルシウム/バリウム)および/またはCPP(Calciumpyrophosphat=ピロ燐酸カルシウム)が使用されている。接着剤は一連の特性を備えていなければならない。接着剤は、蛍光灯のカバー材とも、それと同時に使用蛍光染料とも相容性がなければならない。すなわち、これらの材料とは反応してはならないし、これらに悪影響を及ぼしてもならない。蛍光灯の面と蛍光染料間に十分な接着が達成されねばならない。さらに、接着剤は、蛍光灯内を支配する条件のもとで、その使用により光の生成を損いかねない不利な作用を惹き起こしてはならない。最終的には、接着剤は上記の不活性特性を持つことのほかに、コスト的に有利に製造または購入できなければならない。
【0007】
ところが、公知の接着剤はベーキング工程で高温が必要であるという欠点を持っている。この高温加工により、温度の上昇と共に蛍光染料の効率が低下し、それと共に蛍光染料の所期の特性が喪失する結果になる。
【0008】
しかも従来では、接着剤および蛍光染料をガラス管などのガラス基材に十分に堅固に接着させるには、非常に高い温度への加熱が必要であるとの前提があった。
【0009】
したがって、本発明の課題は、現状技術の欠点を回避すること、および高い接着力を持つだけでなく、当分野の接着剤に課される要求を満たし、加えて蛍光染料の所期特性に不利益をもたらさない、特に蛍光染料の効率を損わない新しい改良型の接着剤を提供することにある。そのほか、使用するガラス組成物は鉛不含のものでなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の課題は、本発明に基づき、すなわち、ガラス組成物を含む、またはガラス組成物で構成される基材に蛍光層を接着させるための蛍光染料用接着剤を使用することにより解決される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚いたことに、本発明に基づく蛍光染料用接着剤を使用すれば、非常な高温にまで加熱する必要のないことが見出された。蛍光層と基材間で堅固な接着または堅固な結合を達成したい場合、本発明によれば、接着剤の加工温度VAより明かに低い加熱温度で既に十分である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ガラスとしては、燐酸塩ガラス、硼酸塩ガラス、硫燐酸塩ガラスまたは硼素含有量の高い硼珪酸塩ガラスからの系列で、鉛不含のものが好ましい。さらに、珪酸塩不含であるのが好ましい。しかし、より高い熔融温度またはより良好な化学的安定性の達成には、ガラスにSiO2を、好ましくは30重量%、より好ましくは20重量%、特に好ましくは10重量%までの濃度で、最も好ましくは5重量%未満の濃度で添加することもできる。
【0013】
接着剤としての使用には非晶質のガラスが特に好ましい。公知の結晶性材質と比較すると、その特性上それぞれの要求に非常に良く適合させることができるからである。それが当てはまるのは、例えば基材の熱膨張係数(CTE)、ガラス転移点(Tg)および粘度である。
【0014】
接着剤とて使用するのは本発明に基づくガラス組成物であるが、好ましくは<10μm、より好ましくは<5μm、特に好ましくは<2μmおよび最も好ましくは<1μmの粒径を持つ、好ましくはガラス粉末状のものである。特に好ましい実施形態の1つでは、接着剤の粒径は蛍光染料の粒径の約1/8〜約1/12、特に約1/10に設定されている。一例として染料粒径が7μmとすれば(蛍光染料の粒径としての典型例)、例えば接着剤/蛍光染料の粒径比が1/10とすれば、接着剤の粒径は0.7μmとなる。
【0015】
本発明に基づく、接着剤としてのガラス粉末の場合、そのガラス転移点Tgは、好ましくは<500℃、より好ましくは<450℃または<400℃、特に好ましくは<350℃または<300℃とする。本発明に基づくガラス系接着剤は、(想定粘度104dPasとして)通例、好ましくは<900℃または<800℃、より好ましくは<750℃または<700℃、特に好ましくは<650℃またはさらに<600℃の加工温度VAを有しているものとする。加工温度とは定義付けされたガラス温度(粘度104dPasのときの温度)であり、然るべき(流動)特性の調整によって、接着剤の十分な接着性を達成するための加工が可能である温度を言う。本発明に基づく接着剤のガラス転移点Tgは、常にその加工温度VAよりも低い位置にある。
【0016】
本発明によれば、驚いたことに、加工の際本来守らなければならない接着剤の加工温度VAを、それより明かに低いレベルに下げることが可能である。そのように、接着剤の設定加工温度VAは、例えば、少なくとも約50℃、さらに、少なくとも約100℃または約150℃、より好ましくは少なくとも約200℃、さらに好ましくは少なくとも約250℃、一層好ましくは少なくとも約300℃、特別好ましくは少なくとも約350℃、あるいはそれにも増して少なくとも約400℃引き下げることができる。特に好ましい実施形態では、加工温度VAは、少なくとも約450℃、より好ましくは少なくとも約500℃、さらに好ましくは約550℃、あるいはそれにも増して少なくとも約600℃引き下げることができ、それにも拘わらず本発明に基づく接着剤の加工(焼結/ベーキング/熔融)は達成され、しかも十分な接着が実現される。これを例で具体的に説明するため、本発明に基づく接着剤用ガラス組成物の加工温度VAを650℃と想定する。すなわち、650℃の温度では接着剤の粘度は104dPasとなり、それにより、最適加工温度が与えられることになる。本発明によれば、この温度を明かに引き下げることができる。蛍光層に十分な接着性を付与するには接着剤に焼結、ベーキングまたは熔融が要求されるが、本発明に基づく接着剤の場合、それに対して例えば450℃の温度で十分であり全く問題ないだろう。本例では、このように、加工温度VAを200℃下回ることになるが、それでも十分な接着が得られよう。
【0017】
したがって、特に好ましい実施形態による場合、本発明に基づく接着剤の焼結温度またはベーキング温度、すなわち実際に適用される加工(焼結/熔融)温度は、<700℃、好ましくは<650℃または<600℃、特に好ましくは<550℃または<500℃で既に十分である。極めて好ましい実施形態では当該温度は<450℃または<400℃とする。さらに、<350℃または<300℃の温度も適用可能である。この場合、焼結温度またはベーキング温度は本発明に基づく方法では最高温度となる。
【0018】
このように、明かに低い温度を適用することができるので、蛍光染料の熱負荷を最小限に抑えることができ、その特性を損うことはない。
【0019】
当業者であれば、その知識に基づき、記述された好ましいガラス組成物から成分選択をして、成分全体の合計が100重量%になるように、然るべきガラス組成物を構成し得るのは自明のことである。
【0020】
本発明に基づく蛍光染料用接着剤は、好ましくは、下記組成領域からのガラス組成物を有している、またはそれらから構成されているものとする。
硫燐酸塩ガラス用成分

酸化物 重量%
15〜60
SO5〜40
0〜20
Al3 0〜10
SiO0〜10
LiO 0〜25
NaO 0〜15
O 0〜20
CaO 0〜25
MgO 0〜15
SrO 0〜15
BaO 0〜15
ZnO 0〜40
0〜30

【0021】
このガラスのSiO2含量は、選択幅を持たせて、好ましくは30重量%まで、より好ましくは20重量%まで、特に好ましくは10重量%まで、さらに好ましくは5重量%未満とすることができる。
【0022】
これらの硫燐酸塩ガラスはアルカリを含んでいてもよいが、好ましくは含まないものとする。好ましい実施形態の1つでは、水銀とナトリウムとの反応を回避するために、特にナトリウムを不含としている。この反応はいわゆる「ブラックニング」を惹き起こし、延いては照明強度の低下を来たす。
【0023】
特に好ましい実施形態の1つでは、いわゆるブラックニングの抑制のため、ガラスにイットリウム(例えばY2O3として)を含ませてある。

燐酸塩ガラス用成分

酸化物 重量%
36〜80
SO0〜40
0〜1
Al0〜10
SiO0〜10
LiO 0〜25
NaO 0〜15
O 0〜20
CaO 0〜20
MgO 0〜20
SrO 0〜15
BaO 0〜15
ZnO 0〜40
0〜30

【0024】
このガラスのSiO2含量は、選択幅を持たせて、好ましくは30重量%まで、より好ましくは20重量%まで、特に好ましくは10重量%まで、さらに好ましくは5重量%未満とすることができる。
【0025】
これらの燐酸塩ガラスはアルカリを含んでいてもよいが、この種ガラスの場合も好ましくは含まないものとする。好ましい実施形態の1つでは、水銀とナトリウムとの反応、いわゆる「ブラックニング」を回避するために、特にナトリウム不含としている。
【0026】
特に好ましい実施形態の1つでは、いわゆるブラックニングの抑制のため、ガラスにイットリウム(例えばY2O3として)を含ませてある。

硼酸塩ガラス用成分

酸化物 重量%
13〜80
SO0〜20
6〜80
Al0〜20
SiO0〜10
CaO 0〜25
MgO 0〜15
SrO 0〜15
BaO 0〜15
ZnO 0〜40
LiO 0〜25
NaO 0〜10
O 0〜30
0〜30

【0027】
このガラスのSiO2含量は、選択幅を持たせて、好ましくは30重量%まで、より好ましくは20重量%まで、特に好ましくは10重量%まで、さらに好ましくは5重量%未満とすることができる。
【0028】
特に好ましい実施形態の1つでは、いわゆるブラックニングの抑制のため、ガラスにイットリウム(例えばY2O3として)を含ませてある。
【0029】
このガラス組成の場合では、B2O3とP2O5との合計が60重量%を越えるのが特に好ましい。
【0030】
これらの硼酸塩ガラスはアルカリを含んでいてもよいが、この種ガラスの場合も好ましくは含まないものとする。好ましい実施形態の1つでは、「ブラックニング」を回避するために、特にナトリウム不含としている。

高硼素含有量の硼珪酸塩ガラス成分

酸化物 重量%
SiO55〜69
20〜35
Al0〜10
ΣLiO+NaO+KO 0〜25
CaO 0〜25
MgO 0〜15
SrO 0〜15
BaO 0〜15
ZnO 0〜25
LiO 0〜25
NaO 0〜10
O 0〜20
0〜25

【0031】
特に好ましい実施形態の1つでは、いわゆるブラックニングの抑制のため、ガラスにイットリウム(例えばY2O3として)を含ませてある。
【0032】
これらの硼酸塩ガラスはアルカリを含んでいてもよいが、この種ガラスの場合も好ましくは含まないものとする。好ましい実施形態の1つでは、「ブラックニング」を回避するために、特にナトリウム不含としている。
【0033】
上記のように、本発明によれば、基材の少なくとも1つの面に少なくとも部分的には平坦な蛍光層が塗布される。本発明では、この蛍光層には特別な制限はない。使用される蛍光層は当業者に知られているものである。公知の蛍光材がいずれも使用できる。以下にモデル例を挙げておく。

冷陰極蛍光灯(CCFL)の燐混合物

混合物 赤 緑 青
1 Y:Eu aPO:Ce,Tb (SrCaBaMg)
(POCl:Eu
2 Y:Eu MgAl1119:Ce,Tb BaMgAl1627:Eu

蛍光層は面の一部または全面に形成することができる。
【0034】
蛍光層の製造は、当業者間で公知のいずれの方法でも行うことができる。蛍光層の構築は、例えば蛍光染料を含む溶液またはペーストのスプレーまたは塗布、回転コーティング、ドクターコーティング、ローラコーティングなどの公知のコーティング法、スクリーン印捺、浸漬または蛍光箔の付与によって行うことができる。管ガラスの場合は、通常、スラッジを減圧下で管内に吸引させる。
【0035】
本発明に従って基材上に蛍光層を構成するには、好ましくは、先ず第1に、例えば粉末状の蛍光染料と本発明に基づく接着剤から成る混合物を、必要に応じて一種または数種の添加剤の使用下で生成する。スラッジ状またはペースト状の当混合物は撹拌するのが好ましい。特に好ましい実施形態の1つでは、ガラス粉末状の接着剤が使用される。その場合、接着剤と蛍光染料の粒径比は、特に好ましくは約1/8〜約1/12とするが、なかでも約1/10が選択される。粘度の調整にはビヒクルを添加することができる。ビヒクルとして好ましいのはニトロセルロースである。次にペーストを基材、それも特に蛍光灯の一部に塗布し、温度処理過程にかける。
【0036】
温度処理は連続的に、または段階的に、特に1段階または2段階で行うことができる。
【0037】
温度処理は、例えば、
(1)ビヒクル焙成下の温度処理および
(2)第(1)段階で得られた混合物の温度処理
の2段階で行うのが好ましい。その場合第(2)段階の温度は第(1)段階の温度より高く設定する。第(2)段階では本方法での最も高い温度(最高温度)が適用される。
【0038】
特に好ましい実施形態では、温度処理は1段階で行うこともできる。その場合では、温度勾配の調整下で最高温度(本方法での最も高い温度)に到達するまで連続的に昇温する。この方法では、低い温度領域でビヒクル(例えばニトロセルロース)が焙成され、続いて、所期の接着力を得るため接着剤が加工される。
【0039】
このように、先ず初めに使用ビヒクルを焙成させる。続いて、接着剤および蛍光染料を含むペーストまたはスラッジを昇温下で基材表面と焼結させる。
【0040】
温度処理は、好ましくは<900℃、より好ましくは<800℃、特に好ましくは<750℃、さらに好ましくは<700℃、それ以上に好ましくは<650℃、最も好ましくは<600℃で行う。温度処理の温度は、既に説明したとおり、接着剤の加工温度VAより明かに低く設定するのが特別好ましい。特に好ましい処理例では、接着剤の焼結/熔融処理には<500℃、より好ましくは<450℃または<400℃、特に好ましくは<350℃または<300℃に設定される。上記の温度は、段階的昇温の場合では特に上記第(2)段階を対象として、あるいは連続的昇温の場合では記載された領域での最終温度として設定され、選択された作業方法においてそれぞれ最高温度を示している。
【0041】
本発明に基づく接着剤は、蛍光層が基材へ付与されるのであれば、あらゆるケースに使用の対象とされる。好ましい基材は、ガラスを含む、またはガラスで構成される材質であり、特に好ましいのは、蛍光灯の一部を構成する基材、特に蛍光灯のガラス管またはガラスカバーである。この場合蛍光灯の種類には全く制限がない。公知の形態のものはいずれも使用することができる。
【0042】
蛍光灯は、主に照明用として、例えば携帯電話およびコンピュータ用モニタなどのディスプレーおよびLCD画像面等の、特に電子表示装置の背面照明に適しており、液晶表示装置(LCD)および背面照明表示装置(「非自己発光装置」または非自己照明ディスプレー)の光源として使用される。
【0043】
本発明に基づく接着剤は、特にLCD-TFTディスプレーなど平坦画像面の背面照明(いわゆるバックライト)用の超小型蛍光灯に使用されるのがとりわけ好ましい。これらの用途に用いられるこの種照明灯はサイズが非常に小さく、それに応じて照明灯用ガラスの厚さも極めて薄いものである。カバーガラスは、例えば筒状にすることができるが、その場合筒状カバーガラスの直径は、好ましくは<1.0cm、特に好ましくは<0.8cm、さらに好ましくは<0.7cm、最も好ましくは<0.5cmとする。筒状カバーガラスの壁厚は、好ましくは<1mm、特に<0.7mmとする。照明具のカバーガラスは、別な選択肢として厚さ<1cmの平坦ガラスにすることができる。好ましいディスプレーおよび画像面はいわゆるフラットディスプレー、特に、フラット・バックライト装置のようなフラットガラスTVである。
【0044】
蛍光灯の構造は、本発明では特に制限はないが、本発明による場合超小型化されたバックライトランプを使用するのが好ましい。この種のバックライトランプは、例えば引き伸ばされた筒状ガラスから製造することができる。照明灯は、好ましくは全体的に透明で、カバーガラスの形態をしている中央部と、金属または合金線の取付によって然るべき接続部を設けることのできる2つの端部に分けることができる。金属または金属線は、焼戻し段階でカバーガラスと融合させることが可能である。金属または合金線は電極引込み線および/または電極である。この電極引込み線はタングステン系またはモリブデン系の金属かまたはコバール合金である。カバーガラスの熱線膨張率(CTE)は、電極引込み線の熱線膨張率(CTE)にできる限り一致しているのが好ましいので、引込み線の領域では無応力にするか、または定義付けおよび照準設定された応力しか現われないようにする。
【0045】
特に好ましいバックライトランプはEEFL(external electrode fluorescent lamp=外部電極型蛍光灯)である。EEFLバックライトの場合連結は電場によって行われるので、この種のEEFLは電極引込み線のない照明灯であり、無電極のガス放電灯である。すなわち、引込み線を持たず、ただ、外部に、つまり管外に電極があるだけである。
【0046】
しかし、原則的には内部接触も可能である。その場合ではプラズマの点火は内部に設置されている電極を通じて行うことができる。この種の点火は代替テクノロジーの1つである。このようなシステムはCCFLシステム(cold-cathode fluorescent lamp=冷陰極蛍光灯)と言われる。
【0047】
本発明の枠内では、蛍光灯のガラスも同様に特別な制限はない。蛍光灯のカバーガラスには、硼珪酸塩系ガラスの使用が特に好ましい。硼珪酸塩ガラスは、主成分としてSiO2およびB2O3を、その他の成分として、例えばLi2O、Na2O、K2O、CaO、MgO、SrOおよびBaOなどの酸化アルカリおよび/または酸化アルカリ土塁を含んでいる。詳細はDE 20 2005 004 487 U1に記載されており、その開示内容の全体を本明細書に引用し関連付けることにする。
【0048】
蛍光灯カバーガラスの透光率は、波長約254nm〜313nmの範囲では、例えば、好ましくは<20%、より好ましくは<10%、特に好ましくは<10%とする。
【0049】
本発明の長所は、次のように多面的である。
【0050】
本発明によれば、基材への蛍光層の接着性を改良させることのできる接着剤が得られる。基材は材質および形態に関して任意に選択可能であるが、基材としては、ガラスを含む、またはガラスから成るものを選択するのが好ましい。好ましい実施形態の1つでは、基材は蛍光灯ガラス管の内面と同材質で構成されている。
【0051】
本発明に基づく接着剤は、ガラス組成物として完全に不活性であり、基材構成素材とも蛍光染料とも、あるいは場合によっては存在する添加物とも反応しない。蛍光層の構成において接着剤と下地、つまり基材との結合に過剰な高温を必要としないことから、蛍光染料を、その特性を損うことなく、基材に付与することができる。蛍光層と基材間で十分に堅固な接着または結合を達成するためには、驚いたことに、通例では、接着剤の加工温度VAより明かに低い温度への加熱で既に十分である。
【0052】
以上のほか、本発明に基づく接着剤は、例えば粉末形態として容易に取り扱うことができ、コスト的に有利に得ることもできる。接着剤はそのガラス組成を変更することにより、使用基材の材質にその都度適合させることができる。ガラスは非晶質材料であり、この用途の接着剤として特に適している。その特性は、結晶質の公知の接着剤と比較してそれぞれの要求に非常に良く適合させ得るからである。それに該当するのは、例えば熱膨張係数(CTE)、ガラス転移点(Tg)および基材および蛍光染料の粘度である。
【0053】
以下では、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
【実施例】
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス組成物を含む、または該ガラス組成物で構成されている、基材への蛍光層の接着のための蛍光染料用接着剤。
【請求項2】
前記ガラス組成物が燐酸塩ガラス、硼酸塩ガラス、硫燐酸塩ガラスおよび硼素含有量の高い硼珪酸塩ガラスから選択されていることを特徴とする、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記ガラス組成物が珪酸塩を含んでいないことを特徴とする、請求項1または2に記載の接着剤。
【請求項4】
前記ガラス組成物が、30重量%までの珪酸塩、好ましくは20重量%までの珪酸塩、より好ましくは10重量%までの珪酸塩、特に好ましくは5重量%未満の珪酸塩を含んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載の接着剤。
【請求項5】
前記ガラス組成物が、<10μm、好ましくは<5μm、特に好ましくは<2μm、さらに好ましくは<1μmの粒径を持つガラス粉末状であることを特徴とする、請求項1から請求項4の少なくとも1項に記載の接着剤。
【請求項6】
前記ガラス組成物が、<500℃、好ましくは<400℃、特に好ましくは<350℃、さらに好ましくは<300℃のガラス転移点Tgを有していることを特徴とする、請求項1から請求項5の少なくとも1項に記載の接着剤。
【請求項7】
前記ガラス組成物が、前記蛍光染料の粒径の約1/8〜約1/12、特に約1/10の粒径を有していることを特徴とする、請求項1から請求項6の少なくとも1項に記載の接着剤。
【請求項8】
前記ガラス組成物が硫燐酸塩ガラスであって、下記組成物、すなわち

酸化物 重量%
15〜60
SO5〜40
0〜20
Al3 0〜10
SiO0〜10
LiO 0〜25
NaO 0〜15
O 0〜20
CaO 0〜25
MgO 0〜15
SrO 0〜15
BaO 0〜15
ZnO 0〜40
0〜30

からの組成物のうちの1つを有していることを特徴とする、前記請求項1から請求項7の少なくとも1項に記載の接着剤。
【請求項9】
前記ガラス組成物が燐酸塩ガラスであって、下記組成物、すなわち、必要に応じてSiO含量が好ましくは30重量%まで、より好ましくは20重量%まで、特に好ましくは10重量%まで、さらに好ましくは5重量%未満として、

酸化物 重量%
36〜80
SO0〜40
0〜1
Al0〜10
SiO0〜10
LiO 0〜25
NaO 0〜15
O 0〜20
CaO 0〜20
MgO 0〜20
SrO 0〜15
BaO 0〜15
ZnO 0〜40
0〜30

からの組成物のうちの1つを有していることを特徴とする、前記請求項1から請求項7の少なくとも1項に記載の接着剤。
【請求項10】
前記ガラス組成物が硼酸塩ガラスであって、下記組成物、すなわち、必要に応じてSiO含量が好ましくは30重量%まで、より好ましくは20重量%まで、特に好ましくは10重量%まで、さらに好ましくは5重量%未満として、

酸化物 重量%
13〜80
SO0〜20
6〜80
Al0〜20
SiO0〜10
CaO 0〜25
MgO 0〜15
SrO 0〜15
BaO 0〜15
ZnO 0〜40
LiO 0〜25
NaO 0〜10
O 0〜30
0〜30

からの組成物のうちの1つを有していることを特徴とする、前記請求項1から請求項7の少なくとも1項に記載の接着剤。
【請求項11】
前記ガラス組成物において、BとPのわが60重量%を超えていることを特徴とする、請求項10に記載の接着剤。
【請求項12】
前記ガラス組成物が硼酸含有量の高い硼珪酸塩ガラスであって、下記組成物、すなわち、

酸化物 重量%
SiO55〜69
20〜35
Al0〜10
ΣLiO+NaO+KO 0〜25
CaO 0〜25
MgO 0〜15
SrO 0〜15
BaO 0〜15
ZnO 0〜25
LiO 0〜25
NaO 0〜10
O 0〜20
0〜25

からの組成物のうちの一つを有していることを特徴とする、前記請求項1から請求項7の少なくとも1項に記載の接着剤。
【請求項13】
前記ガラス組成物がアルカリ分を含んでいないことを特徴とする、請求項1から請求項12の少なくとも1項に記載の接着剤。
【請求項14】
前記ガラス組成物がナトリウムを含んでいないことを特徴とする、請求項1から請求項13の少なくとも1項に記載の接着剤。
【請求項15】
前記基材がガラスを含んでいるか、またはガラスで構成されていることを特徴とする、請求項1から請求項14の少なくとも1項に記載の接着剤。
【請求項16】
前記基材が照明灯の一部であることを特徴とする、請求項1から請求項15の少なくとも1項に記載の接着剤。
【請求項17】
前記照明灯が蛍光灯であることを特徴とする、請求項1から請求項16の少なくとも1項に記載の接着剤。
【請求項18】
前記蛍光灯がEEFL又はCCFLから選択されたものであることを特徴とする、請求項17に記載の接着剤。
【請求項19】
前記蛍光灯が、その直径が<1.0cm及び/又はその壁敦が<1mmである筒状カバーガラスを有していることを特徴とする、前記請求項17または18のうちの少なくとも1項に記載の接着剤。
【請求項20】
前記蛍光灯の前記カバーガラスに、厚さ<1cmの平坦ガラスが含まれることを特徴とする、前記請求項17から請求項19の少なくとも1項に記載の接着剤。
【請求項21】
前記蛍光灯が超小型化された蛍光灯、特にバックライトランプであることを特徴とする、前記請求項17から請求項20の少なくとも1項に記載の接着剤。
【請求項22】
下記の作業段階、すなわち、
‐請求項1から請求項21の1項に記載の蛍光染料、接着剤及び必要に応じて1種又は数種の添加物を含む混合物の基材への付与
‐該混合物に対する温度処理の実施
という段階を経る基材での蛍光層の形成方法。
【請求項23】
前記混合物がペースト状またはスラッジ状で使用されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記混合物に添加物としてビヒクルが投入されることを特徴とする、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記温度処理が、下記の2段階、すなわち、
(1)前記ビヒクルの焙成下での温度処理および
(2)第(1)段階で得られた前記混合物の温度処理(但し、台(2)段階での温度(焼結また羽部ーキングの温度)は第(1)段階よりも高く設定する)
を含むことを特徴とする請求項22から請求項24の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項26】
前記第(2)段階での温度(焼結またはベーキングの温度)が該方法の最高温度であることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記温度処理が1段階で行われ、予め定義付けされた最高温度への到達まで連続的に昇温されることを特徴とする、請求項22から請求項24の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項28】
前記の温度処理過程で先ずはビヒクルが焙成され、続いて接着剤の熔融および/または焼結および/またはベーキングにより蛍光層の接着が達成されることを特徴とする、請求項22から請求項27の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項29】
該方法の前記最高温度が、前記接着剤の前記加工温度VAを、少なくとも約50℃、好ましくは少なくとも約100℃、より好ましくは約150℃、さらに好ましくは少なくとも約200℃、特に好ましくは少なくとも約250℃、最も好ましくは少なくとも約300℃下回るように設定されることを特徴とする、請求項26または27のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項30】
該方法の前記最高温度が、前記接着剤の前記加工温度VAを、少なくとも約350℃、好ましくは少なくとも約400℃、より好ましくは約450℃、さらに好ましくは少なくとも約500℃、特に好ましくは少なくとも約550℃、最も好ましくは少なくとも約600℃下回るように設定されることを特徴とする、請求項26または27のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項31】
前記温度処理としては、<700℃、より好ましくは<650℃または<600℃、特に好ましくは<550℃または<500℃の焼結温度またはベーキング温度(最高温度)で既に十分であることを特徴とする、請求項22から請求項30の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項32】
前記温度処理としては、<450℃または<400℃、より好ましくは<350℃、特に好ましくは<300℃の焼結温度またはベーキング温度(最高温度)で既に十分であることを特徴とする、請求項22から請求項30の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項33】
蛍光層と該蛍光層を前記蛍光灯のガラスに接着させるための、請求項1から請求項21の少なくとも1項に記載の接着剤とを含む蛍光灯。
【請求項34】
請求項1から請求項21の1項に記載された接着剤により概表面に接着させた傾向層を保有する基材。
【請求項35】
前記基材が蛍光灯のガラスカバーであることを特徴とする、請求項34に記載の基材。
【請求項36】
蛍光層を蛍光灯の面に接着させるための、請求項1から請求項21の少なくとも1項に記載された接着剤の使用。

【公開番号】特開2008−297194(P2008−297194A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128205(P2008−128205)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】