説明

血中測定のための方法及び装置

容器内の血液を囲む光プローブ構成が提示される。光プローブは、容器が半透明医療用チューブ等である場合の変動を克服するように配置されたLED及び光検出器を備える。複数の光検出器からの信号を平均してヘマトクリット測定時の結果をさらに向上させるために、信号処理アルゴリズムも用いられる。透析器または輸液チューブに大きな変更を加えずに、ヘマトクリット測定機能を透析システムに付加することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学的手段による様々な血液組成の測定に関する。血液が−好ましくは−近赤外または赤外光で照射される。光散乱及び光の減衰が測定され、ヘマトクリットのような血液組成を計算するために、容器壁の光学的変化、流量等に対する新規な補整が用いられる。本発明により、大きな変更を加えることなく、透析システムにヘマトクリット測定の機能を追加することが可能となる。この機能を追加することにより血液容積測定がいつでもできるようになる。
【背景技術】
【0002】
ヘマトクリットは血液中の赤血球(RBC)の密度である。ヘマトクリット値の測定は患者の状態の評価に非常に重要である。確立されたヘマトクリット測定法は被験者(患者)からの血液抜取りによる方法である。例えば患者の透析処置の間に、光学的または超音波手段によってヘマトクリットを光学的に測定する様々な方法が試みられてきた。これらの状況においては、ヘマトクリットレベルだけでなく、このパラメータの比変化も極めて重要である。最適化されているが、それでも安全な透析処置を提供するためには、処置の間、ヘマトクリットまたは比血液容積の変化を監視する必要がある。輸液チューブと一体型の専用キュベットを使わずにヘマトクリットを測定できる製品は、これまでのところ、ヘマトクリットまたは比血液容積変化の監視の試みからは全く生まれていない。したがって、これまでのところ用いられている方法では、輸液チューブに使い捨てキュベットを装着しなければならないことから、透析処置毎の費用が大きくなっていた。本明細書に提示される発明は、いかなる特別なキュベットも必要とせず、代わりに、処置毎の費用を大きくすることなく、市販されている標準透析輸液チューブであれば、どれであっても、直接に、ヘマトクリットを測定または比血液容積変化を監視できる可能性を提供する。
【0003】
ヘマトクリットは医療診断の早いうちから様々な方法で測定されてきた。連続測定は透析処置中に特に有用である。透析プロセス中、血流から液体が抜き取られる。この結果、このプロセス中にヘマトクリットが増加する。良好な透析処置品質の保証のため、ヘマトクリット値は患者の血流からの流体の抜取り率に関する肝要な情報を医療管理者に提供するので、ヘマトクリット値は監視されるべきである。
【0004】
血中のヘマトクリットの光学測定の分野では様々な技法が提示されてきた。いくつかの技法は、RBCが血管、キュベット等の中の血液を通過している光に及ぼす散乱効果を利用する。オッペンハイマー(Oppenheimer)は散乱度を測定して血液組成を導出する方法を特許文献1に提示している。
【0005】
その他の特許文献として、キュベット内の血液の散乱効果を説明する、カーカー(Karkar)の特許文献2がある。クリヴィツキー(Krivitski)等の特許文献3は、1つの発光ダイオード及び1つのセンサを用いる測定器を説明している。ワイリー(Wylie)等の特許文献4は、RBCが光に与える散乱効果を用いるヘマトクリット測定法の別の説明である。しかし、既知の方法及び装置では満足な精度が得られない。
【特許文献1】米国特許第5601080号明細書
【特許文献2】米国特許第4745279号明細書
【特許文献3】米国特許第6493567号明細書
【特許文献4】米国特許第6064474号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高精度で、光学的に直接にヘマトクリットを測定するかまたは比血液容積変化を監視する手段を提供する
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、本発明によれば、血液中に光を放射し、次いで互いに対向して配置された2つの検出器を用いて測定を実行することによって解決される。
【0008】
本発明によれば、従来技術の問題を克服する新しい光プローブ構成を含む手法により、血液特性を、例えば、吸光度、屈折等のような光学変化として測定するための新しい方法及び新規な装置が提示される。本発明は、透析における輸液チューブのような透明チューブに極めて容易に適用できるクランプの形状をとることさえもできる。新しいプローブにより、厚さ及び形状が変わる透明輸液チューブを通して測定するという事実にもかかわらず、ヘマトクリット値を技術上例を見ない精度で得ることが可能になる。
【0009】
本発明の実用的な実施形態において、血液は透明チューブを流過しながら測定される。例えばレーザからの光ビームがチューブに垂直に向けられ、互いに対向する、光ビームに垂直な2つのセンサが光を捕らえ、センサ信号が評価に用いられる。光源及びセンサは同じ平面におくことができるが、センサ平面は光ビームに対し、例えばチューブに沿って、若干オフセットさせることもできる。精度を向上させるために、チューブに沿い、上流側または下流側のいずれかにオフセットされた複数のセンサ対の使用を考えることもできる。それぞれの対に第3のセンサを追加することもでき、この第3のセンサは光源に近づけて配置される。
【0010】
この解決策では、有利なことに、センサの光源に対するオフセットを大きくして、2つのセンサの受光区画が光ビームと交差しないようにできる。オフセットを大きくするとともに比変化に対する感度は高くなるが、一方で、オフセットが小さいほど、より正確な絶対ヘマトクリット測定値が得られるであろう。したがって、透析中に、絶対値を確実に得るために一組のセンサを用い、次いでレベルの監視及び制御のためにオフセットをより大きくして配置された一組のセンサを用いることが可能である。
【0011】
別の好ましい発展形態は、特許請求の範囲及び以下の本発明の好ましい実施形態の説明から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明者等は、ヘマトクリット値の評価に際し、発光ダイオード(LED)及び光検出器の以下の配置を用いることで極めて良好な結果を得た。得られたヘマトクリット値は研究所の基準値に対して非常によい相関を示す(図6)。
【0013】
4個のLEDが、図1に示されるように、血液のための、チューブのような容器を囲んで好ましくは互いに直角をなす態様で−ただしこれには限定されずに−配置される。光検出器は、同様に図2にしたがって互いに直角をなしていることが好ましいが、図3に示されるようにLED囲繞区画から長さ方向に距離をおく態様で配置される。別の実施形態においては、第2の光検出器囲繞区画が取り付けられる。この配置は図4に示される。
【0014】
LEDと光検出器の構成は、最善の理解のため、LEDと光検出器の群と見なされるべきである。例えば、LED5aと光検出器6bは1つの群である。別の群はLED5b並びに光検出器6a及び6cとすることができる。直接透過光が得られるようにLED及び光検出器が位置合せされてはいないことに注意されたい。本発明では、従来技術の場合に多く見られるような、直接透過光の利用はなされていない。
【0015】
1つまたは複数の光検出器からなる群から検出される光サンプルは、いかなる一瞬においても採取できる。別のサンプルを、第2のサンプルとして同じかまたは別の群から採取できる。第1のサンプルがLED5a並びに光検出器6b及び6dからなる第1の群から採取され、第2のサンプルがLED5b並びに光検出器6a及び6cからなる第2の群から採取され、第3のサンプルがLED5c並びに光検出器6b及び6dからなる第3の群から採取され、最後に、第4のサンプルがLED5d並びに光検出器6a及び6cからなる第4の群から採取されることが好ましい。これらの4つの順次に収集されて信号処理されたサンプルから第1の結果が導かれる。処理には、測定される血液組成の検出をさらに向上させるための、検出器からの信号に対する増幅率変化を含めることができ、これらの信号の間の相関係数も含めることができる。結果は、ヘマトクリットなどの血液組成に対する第1の結果となる。この処理において、容器内のフローパターンの断面の変化から生じる誤差が低減される。さらに、平均することで容器壁が測定値に与える効果を低減することができる。これは、容器が透析システムの体外回路である場合に極めて有益である。開示される本発明の主要な利点の1つは、透析体外回路の、すなわち、回路のいわゆる輸液チューブの、壁を通してヘマトクリットを測定する新しい可能性にある。特別なキュベットまたは専用の代用血管の配置が必要ではないことが極めて有利である。本プロセスにより、体外回路への専用チューブの取付けさえも不必要になる。この特徴は、健康管理者にとってかなりの費用節約となる。輸液チューブへの本明細書に開示されるプローブの取付けには、プローブが透析システムの通常の機能を妨げないという利点もある。これは、ヘマトクリット測定の装備がなされていないどのような既存の透析システムであっても、ヘマトクリット測定を行えるシステムにグレードアップできるという極めて有益な可能性を提供する。引き続いて、血液容積変化を計算して表示することができる。
【0016】
本発明の一実施形態においては、2つの検出器アレイが用いられる。チューブのような容器内の血流の下流側(または上流側)に、第2の検出器アレイが取り付けられる。これは図4に示される。この“2次”検出器をプロセスに含めることにより、数学的信号処理で結果をさらに向上させることができる。
【0017】
本発明の別の実施形態においては、第2の検出器アレイを含む、第2のLED及び光検出器の構成が取り付けられる。これは図5に示される。この実施形態において、LEDは別々の波長で発光する。これにより、技術上既知のヘモグロビン飽和度のような、血液組成のさらなる計算のための限定されたスペクトル解析が可能になる。この第2のアレイから導かれる結果は、信号処理において、上述した第1のアレイから導かれる値と有益に組み合わせることができる。そのような処理により、血液組成から全てのパラメータを出力するだけでなく、第1のアレイからの信号の信号処理への入力に飽和値を影響させることも可能になる。これは、第1のアレイからの第1の処理による血液組成の第1の結果に血液飽和度が影響し得るから、有益である。
【0018】
図面及び上述の説明では、透明血液輸送チューブが、LED及びセンサが配置される2つの基本的にV字型の壁の間に挟まれて示されている。別の実施形態においては、チューブ壁がLED及びセンサのある場所で基本的に平坦になるようにチューブを挟んで整形するために、ブロックにつけられたV字型溝を用いることができる。
【0019】
また別の実施形態においては、チューブに向かうコリメータとしてはたらく、さらに小さい開口をもつ小さな孔にセンサを配置することができる。
【0020】
本発明の測定法方及び装置が従来技術よりずっと優れている理由は今のところ明らかではないが、1つの理由はセンサと光源の間のオフセットであるかもしれない。光の経路において血液量により散乱され、センサの受光区画に入射して受光区画からセンサに入る光だけが記録されるであろう。言い換えれば、少なくとも2回散乱された光だけがセンサに届くであろう。互いに直角に光源及びセンサを配置することにより、センサからの信号がヘマトクリット値の関数になるように、チューブ断面の大部分にある血球が寄与する機会を有することになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】血液9用のチューブなどの容器8を嵌め込むのに適する2つの半割部品2及び3からなる枠にある孔4に発光ダイオード5を収めている、光プローブ構成1の断面である
【図2】血液9用のチューブなどの容器8を嵌め込むのに適する2つの半割部品2及び3からなる枠にある孔4に光検出器6を収めている、光プローブ構成1の断面である
【図3】光プローブ構成1上の光検出器6及び発光ダイオード5のアレイの配置を示す。本図は、図1及び図2にしたがうアレイを、発光ダイオードに対しては“A−A”で示され、光検出器に対しては“B−B”で示される位置に配するという案である
【図4】光検出器7の第2のアレイの配置を示す
【図5】さらに発光ダイオード11及び光検出器10の実施形態をもつ光プローブ構成1を示す
【図6】得られたヘマトクリット値を、認定された臨床研究所において実施された測定値に照らして下す
【符号の説明】
【0022】
1 光プローブ構成
2,3 半割部品
4 孔
5 発光ダイオード
6 光検出器
8 容器
9 血液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液中の血球密度を測定する方法において、検査されるべきスペースに光ビームを向ける工程を有してなり、1つまたは複数のセンサが、前記空間の容積内で前記センサの受光区画が光源からの前記光ビームと交差しないように配置されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
互いに対向する2つのセンサを用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光ビーム及び前記受光区画が互いに直角をなしていることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
血液中の血球密度を測定するためのセンサ装置において、容器またはチューブ、前記容器またはチューブに面する光ビーム源及び同じく前記容器またはチューブに面する1つまたは複数のセンサを備え、前記センサの受光区画が前記容器またはチューブ内で前記光ビーム源の光ビームと交差しないように配置されていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項5】
前記光ビーム源及び前記センサのそれぞれの位置が前記容器またはチューブの長さ方向に間隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項4に記載のセンサ装置。
【請求項6】
2つのセンサが、それぞれの検知方向を前記光ビームに対して直角にして配置されていることを特徴とする請求項4または5に記載のセンサ装置。
【請求項7】
容器内の血液を囲む光プローブ構成において、前記光プローブ構成が少なくとも2組の光源及び光検出器を備え、それぞれの組が1つの光源及び少なくとも1つの光検出器を有し、それぞれの組がそれぞれの組の前記光源と前記少なくとも1つの光検出器との間で好ましい角度で血液を徹照するように配置され、前記角度が、血液組成の検出のために、前記光源から前記光検出器への直接光を防ぐに少なくとも十分であることを特徴とする光プローブ構成。
【請求項8】
それぞれが光源及び2個または3個の光検出器からなる組を4組備え、光検出器が隣の組に組み込まれている検出器を表し得ることを特徴とする請求項7に記載の光プローブ構成。
【請求項9】
前記光源が、細長い容器を、前記容器の周を囲む1つの位置において、囲繞するようなアレイとして配置され、前記光検出器が長さ方向で異なる周位置において前記容器を囲繞するように配置されていることを特徴とする請求項7または8に記載の光プローブ構成。
【請求項10】
光検出器の第2のアレイが前記容器の周を囲む長さ方向で第3の位置に配置され、前記光検出器が前記第3の周位置において前記容器を囲繞するように配置されていることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の光プローブ構成。
【請求項11】
血液組成を検出するために、前記光検出器からの信号を増幅し、前記光検出器からの前記信号に信号処理アルゴリズムを使用する手段を含むことを特徴とする請求項4から10のいずれか1項に記載の光検出器からの信号を処理するための方法。
【請求項12】
ヘマトクリットを検出するために、前記光検出器からの信号を増幅し、前記光検出器からの前記信号に信号処理アルゴリズムを使用する手段を含むことを特徴とする請求項8に記載の光検出器からの信号を処理する方法。
【請求項13】
前記信号処理手段が前記信号処理にかかわる全ての光検出器からの信号の多変量解析を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
光検出器の第3のアレイが前記容器の周を囲む長さ方向で第4の位置に配置され、前記光検出器が前記第4の周位置において前記容器を囲繞するように配置され、発光ダイオードの第2のアレイが前記容器の周を囲む長さ方向で第5の位置に配置され、前記発光ダイオードが前記第5の周位置において前記容器を囲繞するように配置されていることを特徴とする請求項4から10のいずれか1項に記載の光検出器またはプローブ構成。
【請求項15】
血液組成を検出するために、前記光検出器からの信号を増幅し、前記光検出器からの前記信号に信号処理アルゴリズムを使用する手段を含むことを特徴とする請求項14に記載の光検出器からの信号を処理する方法。
【請求項16】
ヘマトクリットを検出するために、前記光検出器からの信号を増幅し、前記光検出器からの前記信号に信号処理アルゴリズムを使用する手段を含むことを特徴とする請求項15に記載の光検出器からの信号を処理する方法。
【請求項17】
血液中の酸素飽和度を検出するために、前記光検出器からの信号を増幅し、前記光検出器からの前記信号に信号処理アルゴリズムを使用する手段を含むことを特徴とする請求項4から10のいずれかに記載の光検出器からの信号を処理する方法。
【請求項18】
時間ドメインで信号が処理される信号処理を含むことを特徴とする請求項1から3,11から13または15から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
血液からヘマトクリット値を計算するためのシステムを備え、データをディスプレイに表示し、及び/またはデータを別のアプリケーションに転送することを特徴とする請求項4から10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
血液からヘマトクリット値及び酸素飽和値を計算するためのシステムを備え、データをディスプレイに表示し、及び/またはデータを別のアプリケーションに転送することを特徴とする請求項4から10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
血液中の血球密度を測定する方法において、検査されるべきスペースに光ビームを向ける工程を有してなり、互いに対向する2つのセンサが用いられることを特徴とする方法。
【請求項22】
前記光ビーム及びセンサ“ビーム”が互いに直角をなすことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記測定が、チューブに方形の断面が与えられ、光源及びセンサが平坦表面に配置されるように、V字型のくぼみをもつホルダに挟持された、前記チューブ内で行われることを特徴とする請求項4から10または19から20のいずれか1項に記載のプローブまたは検出器構成。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−510902(P2006−510902A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562209(P2004−562209)
【出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【国際出願番号】PCT/SE2003/002013
【国際公開番号】WO2004/057313
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(505095154)オプトキュー アーベー (1)
【氏名又は名称原語表記】OPTOQ AB
【Fターム(参考)】