説明

血液分析装置及び血液分析方法

【課題】遠心操作により血球血漿分離、血漿、較正液の搬送を行うことができ、較正液をセンサから確実に排出し高精度の分析を可能にする。血球血漿分離時の強い遠心力によるセンサ損傷を防止する。
【解決手段】基板の下端側に血球血漿分離部、上端側には血球血漿分離部と連通するセンサ部、センサ部下方に較正液溜め、上方に較正液廃液溜めを配設する。第1の遠心軸を血球血漿分離部の血球分画収容部より上方で血漿分画収容部上端よりも下方に位置させ、第2の遠心軸をセンサ部の内部または近接した位置にする。較正液の搬送・排出はセンサ部から離れた第1の遠心軸を中心に低回転で遠心することにより、センサに印加される遠心力を小さくできる。血球分離のための高回転の遠心操作では、第2の遠心軸を中心に遠心することによりセンサ部に印加される遠心力を小さくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石英板や高分子樹脂板などの絶縁材基板に作製した超小型の溝流路によって構成された血液分析装置に関する。特に、当該基板上の溝流路に微量(数μL以下)の血液を導入して遠心分離を行い、血球成分と血漿成分に分離した後に当該血漿成分中の種々の化学物質濃度を測定する際に、分析センサの較正液や血液等の液体の搬送を遠心力により行うための流路と基板構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の健康診断や疾病状態の診断は、患者から数ccの多量の血液を採取し、その分析に大規模な自動血液分析装置で得た測定値より行われてきた。通常、このような自動分析装置は、病院などの医療機関に設置されており、規模が大きく、また、その操作は専門の資格を有するものに限られるものであった。
【0003】
しかし、近年、極度に進歩した半導体装置作製に用いられる微細加工技術を応用し、たかだか数mmから数cm四方の基板上に種々のセンサなどの分析装置を配置して、そこに被験者の血液などの体液を導き、被験者の健康状態を瞬時に把握することができる新しいデバイスの開発とその実用化の気運が高まってきている。このような安価なデバイスの出現により、来たるべき高齢化社会において高齢者の日々の健康管理を在宅で可能にすることなどで増加の一途を辿る健康保険給付金の圧縮を図れる。また救急医療の現場においては被験者の感染症(肝炎、後天性免疫不全症など)の有無などを、本デバイスを用いて迅速に判断できれば適切な対応ができるなど、種々の社会的な効果が期待されるために非常に注目されつつある技術分野である。このように従来の自動分析装置に代わって、血液分析を各家庭で自らの手で実施することを目指した小型簡便な血液分析方法ならびに血液分析装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−258868号公報
【0005】
図1は、特許文献1に記載されたマイクロモジュール化された血液分析装置の一例を示す。符号101は血液分析装置の下側基板であり、下側基板上にエッチングにより形成した微細な溝流路(マイクロキャピラリ)102が設けられている。この下側基板101の上には、略同一サイズの上側基板(不図示)が張り合わされ、溝流路102を外部から密閉している。
【0006】
流路102には、最上流部から最下流部にかけて、血液採取手段103,血漿分離手段104,分析手段105,移動手段106が順次設けられている。流路最前部の血液採取手段103には、中空の採血針103aが取り付けられ、この針103aを体内に刺して基板内への血液の取り入れ口とする。分離手段104は、流路102の途中を湾曲させたもので例えばU字形状のマイクロキャピラリからなる。採取した血液をこのU字形状のマイクロキャピラリに導いた後、本基板を遠心分離器により一定方向に加速度を加えることによって、U字部最下部に血球成分を沈殿させ、上清として血漿を分離する。分析手段105は、血液中のpH値、酸素、二酸化炭素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、グルコース、乳酸などの各濃度を測定するためのセンサである。
【0007】
流路最下流部に位置する移動手段106は、マイクロキャピラリ中で血液を電気浸透流により移動させるものであり、電極107、108と、その間をつなぐ流路部分109からなる。この電極間に電圧印加して生じる電気浸透流により流路内に予め満たしておいた緩衝液を流路下流側に移動させ、生じる吸引力によって流路102最前部の採取手段103から基板内に血液を取り入れる。また、遠心分離により得られた血漿を分析手段105に導く。
【0008】
110は分析手段から情報を取り出すための出力手段であり、電極などから構成される。111は、以上の採取手段、血漿分離手段、分析手段、移動手段、出力手段を必要に応じて制御するための制御手段である。
【0009】
採取手段103より採取された血液は、分離手段104にて血漿と血球成分に分離され、この血漿を分析手段105に導き、そこで血漿中のpH値、酸素、二酸化炭素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、グルコース、尿素窒素、クレアチニン、乳酸などの各濃度を測定する。各手段間の血液の移動は、電気泳動や電気浸透などの現象を用いたものなどポンプ能力を有する移動手段106により行う。なお、図1では流路102の下流域は5つに分岐し、このそれぞれに分析手段105,移動手段106が設けられている。
【0010】
このような血液分析装置の基板には石英などのガラス材料が用いられることが多かったが、装置を大量にまた低コストで製作するのにより適し、また使い捨ての際の廃棄を考慮して近年樹脂素材が用いられるようになってきている。
【0011】
図1に示した従来の血液分析装置では、血液試料を装置内に導入するときに電気浸透ポンプ106のような移動手段が必要である。導入した血液を基板ごと遠心分離して血漿を得た後は、この血漿を分析手段105に移動させるため電気浸透ポンプ106を再度作動させることが必要となる。また、分析手段が特に電気化学的原理に基づき構成されるセンサである場合には、このセンサを予め較正液を用いて較正する必要がある。すなわち、血漿をセンサに導く前にこのセンサを較正液に浸してセンサの較正を行い、較正後の較正液を分析手段から排出しなければならない。このような較正液の移送にもポンプなどの移動手段が必要となる。
【0012】
移動手段は、図1のように同一基板内に設けた電気浸透ポンプや、あるいは基板外の設置した負圧ポンプなどを用いることが考えられ、これらの移動手段により血液や血漿、および較正液などを圧送または吸引して移動させることになる。このとき所望の液体を血液分析装置内の所望の位置まで移動させるためには移動手段の吸引力等を的確に制御する必要がある。このためには、液体の位置センサを新たに血液分析装置内またはその外部に設置しなければならず、これらの制御機構や位置センサを付加するために装置が高価になるという問題があった。
【0013】
分析手段が電気化学的原理に基づき構成されるセンサである場合には、既知濃度の被検成分を含有する較正液(標準液)でセンサを較正した後、この較正液を分析手段から排出しなければならない。しかし、較正液を排出しても、分析手段や流路手段の表面には、表面の濡れ性に応じて若干較正液が残留する。前述したように今対象としている血液分析装置は数マイクロリットル程度の微量血液中に存在する種々の化学物質の濃度を分析するために、流路手段などの装置を構成する手段のサイズは小さくなっている。一般に物体の大きさが小さくなるとその表面積(S)と体積(V)の比S/Vは大きくなり、これは表面の効果が顕著に現れてくることを意味している。従って、流路手段や分析手段表面に残留する較正液の量が僅かであっても、導入される血漿量が少ない分析装置では、測定される化学物質濃度に変動を及ぼすという問題があった。このためには較正後の較正液を確実に分析手段より排出してから血漿を分析手段へと導入することが必要である。
【0014】
本発明者らは、このような事情に鑑み、遠心操作により流路内で血漿分離を行う血液分析装置であって、ポンプなどを用いることなく装置内で血液、血漿、較正液の搬送を行うことができ、さらに較正液をセンサ部分から確実に排出することにより高精度の分析を可能にする血液分析装置を提案している(例えば、特許文献2参照))。
【0015】
【特許文献2】特願2003−040481
【0016】
図2は、特許文献2(未公開)に記載された血液分析装置の一例を示す。符号201は流路が形成された上側基板であり、202にはセンサ電極203やセンサ信号を外部に取り出す電極端子204が形成された下側基板である。上側基板201には採血針205が取り付けられ、採取された血液は案内流路206を介して血液溜め207に吸引・圧送口208から外部ポンプ(不図示)によって移動させる。流路209と流路210はこの上側基板201の側壁の設けられた開口孔211、212にそれぞれ接続されているが、血液を吸引するときは血液分析基板を取り付けるホルダー(不図示)によって開口孔211、212は閉じられる。同様に、較正液溜め213は、吸引・圧送口208か注入された較正液を収容する。
【0017】
この既提案の血液分析装置基板の動作の一例を次に述べる。まず、第1の遠心力中心軸214を中心として血液分析装置基板を遠心すると、較正液溜め213中の較正液は、案内流路215、216を経由して、複数のセンサ203を収容した複数のセンサ溝217に搬入される。センサ203の較正後、血液分析装置基板を時計方向に90度回して遠心機に載置する。すなわち、図2上の左側に位置する第2の遠心力中心軸218を中心として基板を遠心すると、センサ溝217を満たしている較正液は案内流路216、219を経由して較正液廃液溜め220に収容される。
【0018】
この後、血液分析装置基板を反時計方向に90度回し戻して遠心機に載置する。すなわち、第1の遠心力中心軸214を中心として基板を遠心すると、血液溜め207から血液が案内流路221を経由してセンサ溝217に搬送される。この状態で遠心力を掛け続けると、血液中の血球成分は重力の印加される方向、即ちセンサ溝217の下方に分画され、血漿成分はセンサ溝217の上方に上清として分離される。その領域にセンサ群203が配置されているので、血液中のpH値、酸素、二酸化炭素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、グルコース、乳酸などの各濃度が各センサに接続した複数の電極端子204を介して外部の計測器によって測定される。
【0019】
この既提案の血液分析装置は異なる2方向への遠心操作を可能にしたものであり、第1の遠心方向への遠心操作により較正液溜め内の較正液をセンサ部へ搬送し、センサ較正後には、第2の遠心方向に遠心することにより、センサ部から較正液を確実に排出できるようにしたものである。較正液排出後は、第1の遠心方向に遠心することにより、血液溜め内の血液をセンサ部に搬送すると共に、血球と血漿に分離することができる。
【0020】
然るに、これらの利点を有しながらも、遠心力を用いる故に短時間に血液分析を行うためには無視できない問題が判明した。
【0021】
血液分析装置チップによる測定時間は極力短いことが大切であることは云うまでも無い。この血液分析装置においては、遠心中心軸からチップ中心までの距離は5cmであり、通常、較正液の注入や排出に要する時間は3000rpm以下の低遠心力のもとでも一秒程度である。しかし、血液中の血球と血漿を数秒〜数分で分離するには血球分離領域において少なくとも4000rpm以上の遠心力を必要とする。図10は、このときの回転数(rpm)と加速度(G)の関係を示したもので、3000rpmでは500Gの重力加速度、4000rpmでは1000Gの重力加速度を印加したことに相当する。
【0022】
血球・血漿分離時の遠心操作によって、センサの出力が低下することが判明した。例えば、較正液(137mMナトリウムイオン含有)をナトリウムイオンセンサで測定したときの出力電圧を見ると、図3に示すように遠心回転数(rpm)により影響を受けていた。回転数3000rpm程度までは、センサ出力は約200mVの安定した値を示すが、それ以上の回転数では、センサ出力が減少傾向を示すと共に、値の分散が増大した。本測定では、1000rpmまでは約200mVの安定した値を示すセンサを各回転実験に対して用意して置き、それを用いた。特に示さないがカリウムイオン測定でも同傾向が見出された。
【0023】
ナトリウムイオン濃度測定センサでは、ナトリウムイオンを捕獲するイオン感応膜のBis(12-crown-4)と、その感応膜中に血漿中のアニオン(陰イオン)が侵入することを防止する役目を果たすアニオン排除剤をPVC(ポリ塩化ビニル)に混ぜ、これをカーボン電極上に固定化してセンサとしている。その際、ナトリウムイオンが感応膜中に取り込み易くするため、大量の可塑剤をPVCに混ぜる。センサ1個当たりの重量から、7000rpm時の遠心力を見積もると、センサにかかる力はピコニュートン程度である。しかし、この高回転数でのセンサ出力の低下の原因は、このイオン感応膜などを含有した可塑剤入りPVC膜が、強い遠心力によってカーボン電極上で変形し、PVC膜の一部がカーボン電極から剥れ、水が浸入したためではないかと推察している。膜の組成を変えて膜を硬化し膜のカーボン電極への固定化を強化することも考えられるが、膜を硬化することは本来の電気化学的センサの特性を失うことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、遠心操作により血漿分離を行う血液分析装置であって、ポンプなどを用いることなく装置内で血漿、較正液の搬送を行うことができ、較正液をセンサ部分から確実に排出し、さらに血漿分離時の遠心操作によってセンサが損傷を受けることが無くより高精度の分析を可能にする血液分析装置を提供することを第1の目的とする。
【0025】
また本発明は、遠心操作により血漿分離を行う血液分析装置を使用する際に、遠心操作だけで装置内で血漿、較正液の搬送を行うことができ、較正液をセンサ部分から確実に排出すると共に、血漿分離時の遠心操作によってセンサが損傷を受けることが無くより高精度の分析を可能にする血液分析方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明によれば、第1の目的は、遠心により全血試料の血漿分離を行い、血液液性成分中の被検成分を分析する血液分析装置において:
(a) 基板の下端側に配設された血球・血漿分離部であって、遠心力を作用させたときに血球分画を沈澱させて収容する血球分画収容部と、血球分画収容部の上方に位置して血漿を収容する血漿分画収容部とを備えた血球・血漿分離部と;
(b) 基板の上端側に配設されたセンサ部であって、被検成分を分析するセンサを収容したセンサ溝を有するセンサ部と;
(c) 血球・血漿分離部とセンサ部とを連通する血漿案内流路と;
(d) 血球・血漿分離部に全血試料を導入する血液導入口と;
(e) センサを較正する較正液を収容する較正液溜めと;
(f) センサ較正後の較正液を収容する較正液廃液溜めと;
(g) 較正液溜めとセンサ溝とを連通する較正液導入流路と;
(h) センサ溝と較正液廃液溜めとを連通する較正液排出流路とを備え;
【0027】
血球分画収容部よりも上方で血漿分画収容部上端よりも下方に位置する第1の遠心軸を中心に遠心可能とされる一方;血球・血漿分離部よりもセンサ部の内部または近接した位置にある第2の遠心軸を中心に遠心可能とされ;前記較正液溜めは前記センサ部の下方であって前記第1の遠心軸の上方に位置し、前記較正液廃液溜めは前記センサ部の上方に位置することを特徴とする血液分析装置、により達成される。
【0028】
すなわち、本発明の血液分析装置は、異なる2つの遠心軸を中心に遠心可能としたものであり、較正液の搬送・廃液はセンサ部から離れた第1の遠心軸を中心にして、遠心半径は大きくなるものの低回転で遠心することにより、センサに印加される重力加速度を小さくできるようにしたものである。一方血球分離のための大きな重力加速度を与える遠心操作では、センサ部に印加される重力加速度が小さくなるように、このときの遠心軸(第2の遠心軸)をセンサ部の内部または近接位置にすることにより、血球・血漿分離部に大きな重力加速度かかかる遠心でも、センサ部には大きな重力加速度が印加されないようにした。これによりセンサに過大な遠心力がかかって損傷することを防止できる。
【0029】
ここで血球・血漿分離部をU字状流路で形成し、その最下端の湾曲部に血球分画収容部を設け、その上部を血漿分画収容部とするのが好ましい態様である。血球分画収容部はU字状流路最下端から下方に突出するようにして設けてもよく、その場合には、その容積をU字状流路に導入される全血試料中の血球分画量よりも大とするのが好ましい。血液導入口は、血漿分画収容部よりも上方でU字状流路側壁に設けることが出来る。
【0030】
また、U字状流路には、U字状流路最下端までに全血試料が円滑に導入するようにするため空気抜き流路を設けるのが好ましく、この空気抜き流路がU字状流路最下端と連通しているのがもっとも好ましい態様である。
【0031】
センサ部に複数のセンサ溝を設けて、各センサ溝に異なる被検成分を分析するための複数のセンサを収容してもよい。この場合、センサ溝を円周上に配置して、その中心を第2の遠心軸とすれば、すなわち第2の遠心軸を中心に放射状に配列すれば、第2の遠心軸を中心にした遠心操作により血球・血漿分離を行う際にはセンサと遠心中心との距離が最も短くなりセンサに負荷される重力加速度を最小にすることができる。
【0032】
血液導入口には、既に採血された血液を収納した採血機構を血液導入口に取付可能としてもよい。血漿導入口や血球・血漿分離部を親水化処理しておくことにより血液試料の導入、血漿の搬送を円滑に行うことができる。同様に、血漿案内流路、センサ溝、さらに較正液溜め、較正液廃液溜め、較正液導入流路及び較正液排出流路をそれぞれ親水化処理しておけば、較正液搬送、血漿の搬送より円滑になる。
【0033】
本発明の第2の目的は、以下のステップからなる血液分析方法:
(1) 基板の下端側に配設された血球・血漿分離部であって、遠心力を作用させたときに血球分画を沈澱させて収容する血球分画収容部と、血球分画収容部の上方に位置して血漿を収容する血漿分画収容部とを備えた血球・血漿分離部と;基板の上端側に配設され被検成分を分析するセンサを収容したセンサ溝を有するセンサ部と;血球・血漿分離部とセンサ部とを連通する血漿案内流路と;血球・血漿分離部に全血試料を導入する血液導入口と;センサを較正する較正液を収容する較正液溜めと;センサ較正後の較正液を収容する較正液廃液溜めと;較正液溜めとセンサ溝とを連通する較正液導入流路と;センサ溝と較正液廃液溜めとを連通する較正液排出流路とを備えた血液分析装置を用意し;
(2) 血球分画収容部よりも上方にあり血漿分画収容部上端よりも下方に位置する第1の遠心中心軸を中心に血液分析装置を遠心して、較正液溜め内の較正液をセンサ溝に導入し;
(3) 前記センサの較正を行い;
(4) 前記第1の遠心軸を中心に血液分析装置を遠心して、センサ溝内の較正液を較正液溜めに排出し;
(5) 前記血球・血漿分離部に全血試料を導入して、血球・血漿分離部よりもセンサ部に近い位置にある第2の遠心軸を中心にして血液分析装置を遠心することにより、血球・血漿分離部内で血球・血漿分離を行わせて血球分画を血球分画収容部に沈澱させ;
(6) 前記第1の遠心中心軸を中心にして血液分析装置を遠心することにより、血漿分画収容部内で分画された血漿をセンサ溝に搬送し;
(7) センサ溝内の血漿中の液性成分の分析をセンサにより行う;
により達成される。
【0034】
第1の遠心軸を中心にする遠心を行うステップ(2)の較正液導入工程、ステップ(4)の較正液排出工程及びステップ(6)の血漿搬送工程では、センサに印加される重力加速度が500G以下であることが好ましい。また、第1の遠心軸を中心にする遠心を行うステップ(5)の血球・血漿分離工程では、血漿分離部に印加される重力加速度が1000G以上にする一方、センサに印加される重力加速度を500G以下にすることが好ましい。
【0035】
なお、血液分析装置の血漿分画収容部に空気抜き流路を設けてある場合には、ステップ(6)の血漿搬送工程では、遠心操作を行わずに、この空気抜き流路から外気を加圧導入して血漿をセンサ部に搬送するようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図4は本発明の一実施態様による血液分析装置の平面模式図である。符号10は図上縦長に形成した血液分析装置の基板であり、流路形成された基板とセンサ電極や配線を形成したに基板とを重ね合わせたものであり、図では内部流路構造を示す。上下基板は例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネート(PC)などの樹脂で作られる。基板10内部には、その下端側にU字状流路からなる血球・血漿分離部12が配設され、その最下端の湾曲部には、血球分画収容部としての血球溜め14が設けられる。血球溜め14の上部は遠心時に血漿が上清として分画される血漿分画収容部16となる。15は血球溜め(血球分画収容部)14内に沈澱した血球が、基板取扱時に、逆流するのを防止するための逆流止めである。図4は血球・血漿分離操作後の状態を示し、血球溜め14内の黒く塗り潰した部分は分画された血球を示す。血漿分画収容部の斜線部は分画された血漿を示す。
【0037】
U字状流路12側壁には血漿分画収容部16より上部に全血試料を導入する血液導入口18が設けられ、ここに採血血液を収納した採血機構20が装着可能となっている。採血機構20はステンレス無痛針22と、その補強用ステンレス管24,採血後の血液を収納する一次血液溜め26とが一体に成形され、センサ較正作業を終えた基板10の血液導入口16に挿入される。28はU字状流路最下端と連通する空気抜き流路であり、血液導入口20から全血試料が導入されるのを円滑にする。
【0038】
第1の遠心軸C1は、血球分画収容部14の上方であって、血漿分画収容部16上端よりも下方に位置する。この遠心軸C1より上方にある血漿分画が遠心操作により、後述のセンサ部30に搬送される。従って、この第1の遠心軸C1の位置は搬送する血漿分画量に応じて定められる。
【0039】
センサ部30は基板10上端側に配設され、第2の遠心軸C2を中心に放射状に配設された複数のセンサ溝32を有する。各センサ溝32内にはそれぞれセンサ34が収容され、その各センサの出力はそれぞれの配線36を介して基板外部に露出した各電極端子38に導かれる。センサ34は、例えば銀/塩化銀、カーボンなどの電極、および銀/塩化銀の参照電極から構成されている。配線36(一部のみ図示)は例えば銀含有カーボン製であり、外部電極38は例えば銀製である。これらの銀/塩化銀、カーボン電極、銀/塩化銀の参照電極、銀含有カーボン配線、銀電極などは例えばスクリーン印刷で形成される。
【0040】
40はU字状流路12の上部を集合してセンサ部30に連通する血漿案内流路であり、血球・血漿分離操作後に血漿分画収容部16に分画された血漿をセンサ部30に搬送する。42はセンサを較正するための較正液を収容した較正液溜めであり、センサ部30とは較正液導入流路44により連通されている。較正液溜め42はセンサ部30よりも下方に位置し、第1の遠心軸C1よりも上方に位置する。従って、第1の遠心軸C1を中心に基板10を遠心すると較正液溜め42内の較正液はセンサ部30に搬送される。
【0041】
センサ部30の上方には較正液廃液溜め46が設けられ、センサ部30とは較正液排出流路48(後述するキャピラリバルブ)を介して連通している。なお図4では、較正液廃液溜め46がセンサ部30を囲むように配設されているが、少なくともセンサ部30よりも上方部分の容積が、ここに排出される較正液量よりも大きい容積であればよい。なお、50,52は空気抜き流路である。
【0042】
本実施態様では、センサ部30内のセンサ溝32を放射状に配列したが、図5に示すように、第2の遠心軸C2を中心にセンサ溝32Aを横に並べてセンサ部30Aを形成してもよい。また図6に示すようにセンサ部30Bの外壁を矩形上にして、その内部にセンサ溝32Bを放射状に配列してもよい。図4,5,6では、第2の遠心軸C2をセンサ部30,30A,30Bの内部に配置したが、これはセンサに印加される重力加速度ができるだけ小さくするのに便宜な配置であるからである。第2の遠心軸C2は、必ずしもセンサ部30内部にを配置しなくても、センサ部30に近接した位置であれば、センサに印加される重力加速度を小さくすることができる。
【0043】
この血液分析装置の使用方法を図7A〜7Cにより説明する。まず血液分析の前にセンサの較正を行う。図7Aに示すように、血液分析装置の基板10を回転器60の上に直径方向に設けられた案内溝62の中に入れ上方に載置して、回転器60の回転軸C0の位置に基板10の第1の遠心軸C1が一致するように固定する。この状態で基板10を遠心すると、較正液溜め42内の較正液がセンサ部30に搬送される。その際、センサ部30内の空気は空気抜き流路52から排気される。このときの遠心の回転数は、較正液がキャピラリバルブ48を通過してしまわない程度の回転数で行う。遠心を止めて、回転器60の上で各センサの較正が行われる。
【0044】
センサの較正を行った後にセンサ溝32の較正液を排出する。センサ較正後、基板10の位置をそのままにして、再度回転器60を回転し基板10を遠心し、センサ部30内の較正液を較正液廃液溜め46に排出する。この遠心操作により、センサ上を覆っている較正液を除去することができ、残留較正液による分析値の誤差が生じることが無くなる。なお、この較正液排出工程では、較正液がキャピラリバルブ48を通過するように、先に行った較正液搬送工程での遠心よりも高回転で行う。但し、その場合でもセンサが遠心力により損傷しない程度の重力加速度とするのが好ましく、センサ部30に印加される遠心力は500G以下とすることが好ましい。
【0045】
次に、全血試料の導入と血球・血漿分離を遠心操作により行う。基板10の血液導入口18に採血機構20を挿入し、この状態の基板10を案内溝62内で下方に移動し、第2の遠心軸C2が回転器60の回転軸C0の位置に一致するように固定する(図7B)。この状態で基板10を遠心すると、全血試料がU字状流路12内に搬送され、さらに血漿と血球に分離される。血球分画は血球溜め14に、血漿分画は、U字状流路12の上部(血漿分画収容部16)に上清として分画される。このときの遠心操作は、血球を完全に分離するために行うためのものであり、U字状流路最下部に1000G以上の遠心力が印加されるようにするのが好ましい。
【0046】
血球分離後、基板10を再度案内溝62内の上方に移動し、第1の遠心軸C1が回転器60の回転軸C0の位置に一致するように固定する(図7C)。この状態で基板10を遠心すると、図7Cに示された遠心軸C0,C1より上方にある血漿は、遠心力によりセンサ部30に搬送される。血球溜め14は遠心軸C0,C1より下方にあり、ここに分画された血球がセンサ部30に移行することはない。このときの遠心操作は、センサが損傷しない程度の重力加速度とするのが好ましく、センサ部30に印加される遠心力は500G以下とすることが好ましい。最後に、血漿中の各被検成分を各センサにより計測する。
【0047】
本実施態様の重要な点は、較正液の導入工程で用いる遠心軸と、較正液の排出工程で用い遠心軸が、いずれも第1の遠心軸C1である点である(図7A)。較正液を較正液溜め42からセンサ部30に導入する場合には、センサ部30に搬送された較正液がさらに較正液廃液溜めに移行しないようにしなければならない。すなわち、較正液導入工程で用いる比較的弱い遠心力と較正液導入流路44の流路径とキャピラリバルブ(較正液排出流路)48の流路径を見積り、さらに較正後の較正液をキャピラリバルブ48を介して較正液廃液溜め46に搬送させる比較的強い遠心力の見積もりが必要である。
【0048】
キャピラリバルブに関しては、Nam-Trung Nguyen とSteven T. Wereleyの著作による「Fundamentals and Applications of Microfludics」(発行所:Artech House (Boston・London) 2002)の315ページに述べられている。図8に示すように、細管に溶液が遠心中心から半径R1と半径R2の間に存在し、溶液が細管から吐出する時の溶液の細管に対する接触角をθ、表面張力をγ、細管の半径をR、溶液の密度をρとすると、遠心力によって溶液が細管から突出しようとする最小の回転数fmの間には以下の関係にある。
【0049】
fm2 ≧ γcosθ/R・ρ・π2・(R2−R1)(R2+R1)
図9に示すように、第1遠心軸C1と第2遠心軸C2の距離を5cmとし、較正液溜め42から流路を経てセンサを収容する溝までの流路(すなわち較正液導入流路44)の流路長(R2−R1)を1cmとし、第1の遠心軸C1から較正液溜め42のセンサ部30側端部までの距離(R1)を3.5cmとする。25℃の水の表面張力(γ)は72×10-3[N/m]であり、基板10の材料としてポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた場合、水との接触角θは80度である。水の密度(ρ)は1×103[kg/m3]である。これらの値を用いると、最小回転数(fm)を100rpmとしても、較正液排出流路44の直径(2R)は約3μm以上で十分である。すなわち、較正導入流路は流路長1cmの場合、直径を3μm以上とすれば、第1遠心軸C1を中心とする100rpmの遠心により、較正液溜め42からセンサ部30への較正液搬送が可能である。
【0050】
一方、キャピラリバルブ48の流路長(R2−R1)を0.5cm、直径(2R)を100μm程度に形成すれば、fmが約1000rpm以上の時にセンサ部(センサ溝)の較正液は廃液溜め46に流れ込む。ここでセンサに印加される重力加速度は、センサまでの遠心半径が約5.5cmであるので、図10から約60Gである。実際、このような流路寸法で製作した血液分析装置基板では較正液と血漿の流れが共に正常に動作した。
【0051】
この血液分析基板の利点は、センサが第2遠心軸C2から約5mm程度離れて放射上の位置に配置されている点である。第1の遠心軸C1からの距離約5cmに較べ1/10の距離である。第1遠心軸C1を中心にして遠心した場合に較べ、第2遠心軸C2を中心に遠心した場合には、1/10程度の遠心力しか受けない。従って、図7Bに示す血球分離工程での遠心操作で、第2遠心軸を中心に7000rpmで遠心しても、センサにはいかなる損傷が見られなかった。
【0052】
また、血漿搬送工程では、図7Cに示すように、血球溜め14は遠心軸C0(第1の遠心軸C1)を挟んで血漿案内流路40の反対側に位置し、血球が血漿案内流路40に逆流することなく血漿のみをセンサ部に搬送することができた。なお、本実施態様では、血球分離後の血漿搬送のため基板10を図7Aの位置から図7Cの位置に移動したが、血球分離後、空気抜き流路28の空気抜き孔28aから空気を入れて加圧すれば、血漿を血漿案内流路40、センサ部30に搬送することができる(図4参照)。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明の血液分析装置は異なる2つの遠心軸を中心に遠心可能としたものであり、較正液のセンサ溝への搬入、及びその排出、血球分離と血漿のセンサ部への導入をポンプを一切使わずに遠心力で行うことが可能である。従来のような負圧ポンプを使用する必要が無くなり、安価・簡便な血液分析装置を実現できる。較正液の搬送・廃液はセンサ部から離れた第1の遠心軸を中心にして低回転で遠心することにより、センサに印加される重力加速度を小さくできる。一方血球分離のための大きな重力加速度を与える遠心操作では、第2の遠心軸を中心に遠心することによりセンサ部に印加される重力加速度が小さくできる。従って、多層で異種成分からなるセンサが、血球分離時の強い遠心力によって損傷を受けることがなくなり、より高精度な分析が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】従来のマイクロモジュール化された血液分析装置の一例を示す概念図である。
【図2】発明者らが提案した血液分析装置(未公知)の全体斜視図である。
【図3】較正液(137mMナトリウムイオン含有)をナトリウムイオンセンサで測定したときの出力電圧が遠心回転数(rpm)により変化するのを示す図である。
【図4】本発明の一実施態様による血液分析装置の模式平面図である。
【図5】センサ溝の他の配設例を示す模式図である。
【図6】センサ溝のさらに他の配設例を示す模式図である。
【図7A】本発明の血液分析方法の一実施態様において、較正液導入工程、較正液排出工程における回転器上の血液分析装置の状態の示す図である。
【図7B】同じく、血球・血漿分離工程における回転器上の血液分析装置の状態の示す図である。
【図7C】同じく、血漿搬送工程における回転器上の血液分析装置の状態の示す図である。
【図8】細管から溶液が遠心力で吐出する時の回転数を求めるためのパラメータを示す図である。
【図9】本発明の血液分析装置において、遠心力による較正液を導入するための回転数と、キャピラリバルブを介して較正液を排出するための回転数を算出するための諸パラメータを示す図である。
【図10】半径50mmの回転体を回転したときに生じる重力加速度(G)と回転数(rpm)との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
10 血液分析装置(基板)
12 U字状流路(血球・血漿分離部)
14 血球溜め(血球分画収容部)
16 血漿分画収容部
18 血液導入口
20 採血機構
28 空気抜き流路
30、30A、30B センサ部
32、32A、32B センサ溝
34 センサ
36 配線
38 外部電極端子
40 血漿案内流路
42 較正液溜め
44 較正液導入流路
46 較正液廃液溜め
48 キャピラリバルブ(較正液排出流路)
50、52 空気逃がし用流路
60 回転器
62 基板案内溝
C0 回転器の回転中心軸
C1 第1の遠心軸(遠心力中心)
C2 第2の遠心軸(遠心力中心)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心により全血試料の血漿分離を行い、血液液性成分中の被検成分を分析する血液分析装置において:
(a) 基板の下端側に配設された血球・血漿分離部であって、遠心力を作用させたときに血球分画を沈澱させて収容する血球分画収容部と、血球分画収容部の上方に位置して血漿を収容する血漿分画収容部とを備えた血球・血漿分離部と;
(b) 基板の上端側に配設されたセンサ部であって、被検成分を分析するセンサを収容したセンサ溝を有するセンサ部と;
(c) 血球・血漿分離部とセンサ部とを連通する血漿案内流路と;
(d) 血球・血漿分離部に全血試料を導入する血液導入口と;
(e) センサを較正する較正液を収容する較正液溜めと;
(f) センサ較正後の較正液を収容する較正液廃液溜めと;
(g) 較正液溜めとセンサ溝とを連通する較正液導入流路と;
(h) センサ溝と較正液廃液溜めとを連通する較正液排出流路と:
を備え;
血球分画収容部よりも上方あり、血漿分画収容部上端よりも下方に位置する第1の遠心軸を中心に遠心可能とされる一方;
血球・血漿分離部よりもセンサ部の内部または近接した位置にある第2の遠心軸を中心に遠心可能とされ;
前記較正液溜めは前記センサ部の下方であって前記第1の遠心軸の上方に位置し、前記較正液廃液溜めは前記センサ部の上方に位置することを特徴とする血液分析装置。
【請求項2】
前記血球・血漿分離部はU字状流路で形成され、U字状流路下端の湾曲部に前記血球分画収容部が設けられ、その上部が血漿分画収容部とされていることを特徴とする請求項1の血液分析装置。
【請求項3】
前記血球分画収容部は、U字状流路最下部から下方に突出して形成され、その容積がU字状流路に導入される全血試料中の血球分画量よりも大であることを特徴とする請求項2の血液分析装置。
【請求項4】
前記血液導入口が、血漿分画収容部よりも上方で前記U字状流路の側壁に設けられていることを特徴とする請求項2の血液分析装置。
【請求項5】
前記U字状流路には、これと連通する空気抜き流路が設けられていることを特徴とする請求項2の血液分析装置。
【請求項6】
前記センサ部は、それぞれ異なる被検成分を分析するセンサを収容した複数のセンサ溝を有することを特徴とする請求項1〜5の血液分析装置。
【請求項7】
前記複数のセンサ溝は、前記第2の遠心軸を中心にした円周上に配置されていることを特徴とする請求項6の血液分析装置。
【請求項8】
血漿導入口と血球・血漿分離部と血漿案内流路とセンサ溝とが、それぞれ親水化処理されていることを特徴とする請求項1〜7の血液分析装置。
【請求項9】
較正液溜めと較正液廃液溜めと較正液導入流路と較正液排出流路とが、それぞれ親水化処理されていることを特徴とする請求項8の血液分析装置。
【請求項10】
前記較正液排出流路がキャピラリバルブであることを特徴とする請求項1〜9の血液分析装置。
【請求項11】
前記センサは電気化学的センサであることを特徴とする請求項1〜10の血液分析装置。
【請求項12】
前記血液導入口には、採血された血液を収納した採血機構を取付可能とされていることを特徴とする請求項1〜11の血液分析装置。
【請求項13】
以下のステップからなる血液分析方法:
(1) 基板の下端側に配設された血球・血漿分離部であって、遠心力を作用させたときに血球分画を沈澱させて収容する血球分画収容部と、血球分画収容部の上方に位置して血漿を収容する血漿分画収容部とを備えた血球・血漿分離部と;基板の上端側に配設され被検成分を分析するセンサを収容したセンサ溝を有するセンサ部と;血球・血漿分離部とセンサ部とを連通する血漿案内流路と;血球・血漿分離部に全血試料を導入する血液導入口と;センサを較正する較正液を収容する較正液溜めと;センサ較正後の較正液を収容する較正液廃液溜めと;較正液溜めとセンサ溝とを連通する較正液導入流路と;センサ溝と較正液廃液溜めとを連通する較正液排出流路とを備えた血液分析装置を用意し;
(2) 血球分画収容部よりも上方にあり血漿分画収容部上端よりも下方に位置する第1の遠心中心軸を中心に血液分析装置を遠心して、較正液溜め内の較正液をセンサ溝に導入し;
(3) 前記センサの較正を行い;
(4) 前期第1の遠心軸を中心に血液分析装置を遠心して、センサ溝内の較正液を較正液溜めに排出し;
(5) 前記血球・血漿分離部に全血試料を導入して、血球・血漿分離部よりもセンサ部に近い位置にある第2の遠心軸を中心にして血液分析装置を遠心することにより、血球・血漿分離部内で血球・血漿分離を行わせて血球分画を血球分画収容部に沈澱させ;
(6) 前記第1の遠心軸を中心にして血液分析装置を遠心することにより、血漿分画収容部内で分画された血漿をセンサ溝に搬送し;
(7) センサ溝内の血漿中の液性成分の分析をセンサにより行う。
【請求項14】
ステップ(2)、(4)、(6)において行う遠心で前記センサに印加される重力加速度は500G以下であることを特徴とする請求項13の血液分析方法。
【請求項15】
ステップ(5)において行う遠心で血球・血漿分離部に印加される重力加速度は1000G以上であり、前記センサに印加される重力加速度は500G以下であることを特徴とする請求項13の血液分析方法。
【請求項16】
以下のステップからなる血液分析方法:
(1) 基板の下端側に配設された血球・血漿分離部であって、遠心力を作用させたときに血球分画を沈澱させて収容する血球分画収容部と、血球分画収容部の上方に位置して血漿を収容する血漿分画収容部と、この血漿分画収容部と連通する空気抜き流路とを備えた血球・血漿分離部と;基板の上端側に配設され被検成分を分析するセンサを収容したセンサ溝を有するセンサ部と;血球・血漿分離部とセンサ部とを連通する血漿案内流路と;血球・血漿分離部に全血試料を導入する血液導入口と;センサを較正する較正液を収容する較正液溜めと;センサ較正後の較正液を収容する較正液廃液溜めと;較正液溜めとセンサ溝とを連通する較正液導入流路と;センサ溝と較正液廃液溜めとを連通する較正液排出流路とを備えた血液分析装置を用意し;
(2) 血球分画収容部よりも上方にあり血漿分画収容部上端よりも下方に位置する第1の遠心中心軸を中心に血液分析装置を遠心して、較正液溜め内の較正液をセンサ溝に導入し;
(3) 前記センサの較正を行い;
(4) 前期第1の遠心軸を中心に血液分析装置を遠心して、センサ溝内の較正液を較正液溜めに排出し;
(5) 前記血球・血漿分離部に全血試料を導入して、血球・血漿分離部よりもセンサ部に近い位置にある第2の遠心軸を中心にして血液分析装置を遠心することにより、血球・血漿分離部内で血球・血漿分離を行わせて血球分画を血球分画収容部に沈澱させ;
(6) 前記空気抜き流路から外気を加圧導入することにより、血漿分画収容部内に分画された血漿をセンサ溝に搬送し;
(7) センサ溝内の血漿中の液性成分の分析をセンサにより行う。
【請求項17】
ステップ(2)、(4)において行う遠心で前記センサに印加される重力加速度は500G以下であることを特徴とする請求項16の血液分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−52949(P2006−52949A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232638(P2004−232638)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】