血漿分離リザーバ
本発明は、計量プロセスにおいて経時的に一定である体積流量を生じさせるマイクロフルイディック装置に関する。種々の溶解プロセス又は反応プロセスにおいて、試薬の確実な溶解を保証し或いは反応が起こるようにするために利用可能な指定された所与の体積流量又は質量流量の流体を提供することが肝要である。流体、特に血液からの粒子の分離がメンブレンを介して行われるマイクロフルイディック装置では、メンブレンを通る体積流量は、連続的に減少する。計量中、一定の体積流量を達成するためには、まず最初に、リザーバを第1のチャネルから満たし、次に、流体停止部を開くことによりリザーバの内容物を計量プロセスに送るのが良い。リザーバを空にすることは、1秒当たり0.05マイクロリットル〜1秒当たり10マイクロリットルの一定体積流量で行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量プロセスにおいて経時的に変わらない又は一定である体積流量を生じさせるマイクロフルイディック装置に関する。本発明は、血漿分離に用いられるマイクロフルイディック装置に利用できる。
【背景技術】
【0002】
流体、例えば血液から成る粒子の分離にあたり、例えば、分離されるべき媒体、この場合血液がフィルタ内に送り込まれる。流体及び小さな成分は、フィルタを通って流れ、装置内のチャネルを通って運び去られる。流体の特定の性質を検出するため、流体を試薬に接触させ、試薬は、化学的又は物理的に検出可能な相互作用、例えば検出反応の場合、流体の染色を生じさせる。
【0003】
これら種々の湿式化学的、生化学的又は診断学的分析の場合、流体をチャンバ又はリザーバ内で指定された期間にわたり試薬と混合し、それによりこれら試薬を溶解させると共に/或いは試薬と反応させることが必要である。
【0004】
さらに、この種の種々の溶解又は反応プロセスでは、試薬の確実な溶解を保証し或いは反応が起こるようにするために指定された所与の体積流量又は質量流量の流体を利用することが肝要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば流体の流れが必要とされる流体の流れよりも少ない場合、マイクロフルイディック分析装置内に入っている乾燥状態の特に粉末状の物質の成分が集まって塊となり又は付着物としてくっつく恐れがある。これにより、検出反応の結果が歪められる場合がある。
【0006】
この技術背景を考慮して、本発明の少なくとも好ましい実施形態の目的は、検査領域において所与の期間にわたり検査されるべき所与の量の流体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好ましい実施形態は又、所与の体積流量の流体が所定の期間にわたり一様に生じるようにするマイクロフルイディック装置を提供するものである。
【0008】
本発明は、請求項1の特徴を有するマイクロフルイディック装置に関する。
【0009】
本発明のマイクロフルイディック装置により、経時的に一定である体積流量の流体を提供することができる。この目的のため、本装置は、分離手段、特に血液を濾過する手段を有すると共に分離された流体を受け入れてこれを運び去る第1のチャネルを有する。
【0010】
第1のチャネルは、停止手段、特に流体停止部又は毛管停止部に隣接して端部領域に設けられており、流体停止部又は毛管停止部は、所与の期間にわたり第1のチャネル内の流体の流れを止めることができる。第1のチャネルに隣接すると共に流体停止部に隣接して上流側において第2のチャネルが第1のチャネルから枝分かれしている。第2のチャネルは、リザーバへの連結部を形成する。
【0011】
本発明のマイクロフルイディック装置の停止手段又は流体停止部は、好ましくは、例えば欧州特許出願公開第1441131(A3)号明細書から知られている毛管停止部である。
【0012】
流体停止部は、好ましくは、流体運搬要素の幾何学的形状が流体停止部のところで例えば段部の形成によって急変するという特定の設計上の特徴を有する。流体停止部は又、流体運搬要素の濡れ特性の突然の変化により、例えば、或る特定の領域が親水性又は疎水性材料で覆われている結果として形成されても良い。
【0013】
分離手段は、好ましくは、メンブレン又はフィルタである。
【0014】
例えばマイクロフルイディック装置を分析器で動作させるため、所与の量の流体が装置の入口開口部内に送り込まれる。これは、例えば、20マイクロリットルの量の1滴の血液であるのが良い。入口開口部内には、供給された媒体が流れ込むメンブレン又はフィルタが設けられるのが良い。流体の流れは、特に、フィルタ又はメンブレンの細孔及び毛管を通って垂直流れ方向に運ばれる。このように「垂直方向」と言った場合、これは、流れが特にプレート形マイクロフルイディック計量器具の基質平面に実質的に垂直であることを意味している。流れは、本質的に厚さの方向にメンブレンを通過する。
【0015】
メンブレン又はフィルタは、好ましくは、入口開口部とメンブレン/フィルタの下に配置された入口チャンバとの間で垂直方向に配置される。メンブレン又はフィルタは、その細孔又は毛管の毛管作用により液体を吸収することができ、そして細孔又は毛管よりもサイズの大きな大形粒子を保持することができる。
【0016】
細孔は、保持した粒子の凝集によって部分的に閉塞状態になり、その結果、貫流に有効な流れの断面は、分離プロセスが進むと、絶えず減少するようになる。
【0017】
これにより、マイクロフルイディック装置内における流体の体積流れの流量が減少する。例えば、40マイクロリットルの量の血液が追加された場合、流量が当初1秒当たり0.3マイクロリットルである場合、この値は、常時減少し、その結果、20秒後には、1秒当たり0.1マイクロリットルしかフィルタ又はメンブレンを通過して入口チャンバに隣接したチャネル内に流入することができないようになる。
【0018】
入口チャンバは、流体の流れにより溶解される試薬を収容しているのが良い。同様に、メンブレンには、試薬、例えば血液が凝固するのを阻止する試薬を吸い込ませ又は含浸させるのが良い。流体が加えられると、分離は、このようにして処理されたメンブレンで起こると同時に、第1の試薬が溶解され、この第1の試薬は、生物学的及び/又は化学的及び/又は物理的性質、特に流体の粘度に影響を及ぼす。
【0019】
入口チャンバ内には第2の試薬を沈積させるのが良く、第2の試薬は、流体中に検出反応を生じさせる。これは、例えば光学的な色の変化であるのが良い。
【0020】
メンブレン又はフィルタが高い固有の毛管作用を有するので、体積流量が隣接の入口チャンバ内に垂直方向に流下するのを助ける手段が設けられるのが良い。この目的のため、入口チャンバは、1本又は2本以上のピラー又はポストを有するのが良く、これらピラー又はポストは、垂直方向に延びる1つ又は2つ以上の切欠きを有するのが有利である。
【0021】
ピラー又はポストは、メンブレンがピラー又はポストに載るよう配置される。ピラー又はポストの高さは、入口チャンバの深さに一致するのが良く、入口チャンバの深さは、好ましくは、10ミクロン〜1000ミクロンであり、特に50ミクロン〜500ミクロンであるのが有利である。
【0022】
ピラー又はポストの切欠きは、接触すべきメンブレンと流体接触関係にあり、これらの毛管作用により、流体をメンブレンからチャンバのベースに導き出し、その結果、チャンバが湿潤される(ぬれる)ようになる。代替的に又は追加的にメンブレンは、形状が凸状であっても良く、この凸の高さは、チャンバの深さに一致し、その結果、メンブレンは、チャンバのベースの凸の頂点に当たるようになる。
【0023】
メンブレンの頂点がチャンバベースと鋭角をなすので、メンブレンの湿潤中、個々に高い毛管力が生じ、その結果、分離された流体は、メンブレンとチャンバのベースとの間の隙間を通ってチャンバ内に運び去られるようになる。
【0024】
チャンバは、少なくとも部分的にトレンチよって包囲されるのが良く、トレンチは、チャンバの深さよりも深く、トレンチは、入口チャンバ内の空気をトレンチ上の流入流体によって置き換えることができるよう空気ベントを有するのが有利である。トレンチは、好ましくは、幅が100〜1000ミクロン、深さが200〜1000ミクロンである。入口チャンバの容積は、好ましくは、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、20、50、100、200、500又は1000マイクロリットルであり、他方、指定された値を互いに加えることによって得られるチャンバ容積を選択することも可能である。
【0025】
流体を入口チャンバから運び出して1つ又は2つ以上の流体チャネル中に運び込むため、チャネルは、連結領域において入口チャンバに向かって漏斗の形状をなして広がっているのが良い。先ず最初に、チャネルの幅は、漏斗の細い部分内で広がり、次に、チャンバに向かって円錐状に増大する。漏斗の拡大円錐形部分内には、漏斗内への流体の運搬を助けることができる構造要素、例えば上述のポスト又はピラーが設けられるのが良い。
【0026】
流体運搬は、例えば構造要素と漏斗壁との間に隙間が形成され、毛管力が隙間を通って流体に作用することによって助長される。ピラー壁又はポスト壁と漏斗壁との間の距離、即ち、隙間の幅は、5ミクロン〜500ミクロンであるのが良い。
【0027】
上述のトレンチは、流体の流れがトレンチ段部を越えて流れることができないので流体停止部となる。トレンチは、入口チャンバの漏斗状出口領域とは別に、入口チャンバを完全に包囲するのが良く、その結果、空気は、入口チャンバから一様に押し退けられることができるようになる。
【0028】
互いに隣接して位置するチャンバ出口漏斗とトレンチの端部との間の領域では、トレンチ内への流体の望ましくない流出が生じる恐れがある。したがって、漏斗壁からトレンチへの特に垂直な流れを阻止するようトレンチの端部を広げ又は拡大させるべきであることが想定される。
【0029】
入口チャンバに隣接して位置する第1のチャネルにより運搬される流体は、上述した流体停止部まで流れる。第2のチャネルが第1のチャネルから枝分かれしており、この第2のチャネルは、リザーバを第1のチャネルに結合する。
【0030】
入口チャンバから流出した流体は、流体停止部に達すると、リザーバ内に流れ、そしてこれを所与のレベルまで、50%〜100%のレベルまで満たすことができるのが有利である。このレベルに達すると、流体停止部は、閉鎖されるのが良く、リザーバからの流体は、第2のチャネル及び流体停止部を連続的に通って入口チャネル内に流れるのが良い。出口チャネルは、下流側で流体停止部に連結されるのが良い。
【0031】
中間リザーバにより、経時的に一定の流体の体積流量を達成することができる。開始媒体の分離中、時間が経過するにつれて体積流量が大幅に減少するので、リザーバは、体積流量のこの減少分を補償するのに役立つ。リザーバ又は中間貯蔵手段は、分離された流体で満杯になる。指定された量の流体がリザーバによって取り込まれ、リザーバは、0.1マイクロリットル、0.2マイクロリットル、0.5マイクロリットル、1マイクロリットル、2マイクロリットル、5マイクロリットル、10マイクロリットル、20マイクロリットル、50マイクロリットル、100マイクロリットル、200マイクロリットル、500マイクロリットル、1000マイクロリットル又はこれらの分数又は倍数の容量を有するのが良い。
【0032】
幾つかに量の流体、例えば血液の1滴である場合、0.5マイクロリットル〜10マイクロリットルのリザーバ容積が提供されるのが良い。
【0033】
チャネルが収容することができる量よりも多い量の流体を収容するため、リザーバは、第1のチャネルよりも深いものであるのが良く、これは、供給チャネル又はフィードチャネルとも呼ばれる。特に、リザーバの深さは、第1のチャネルの深さの1.2〜5倍であるのが良い。
【0034】
第1のチャネルからリザーバへの供給手段となる第2のチャネルは、リザーバの入口領域で広がり又は拡大しているのが良い。第2のチャネルの深さは、枝分かれ箇所において第1のチャネルの深さに一致しているのが良い。リザーバへの円錐形に広がった連結領域において段部又はテラスを設けるのが良い。変形例として、リザーバの入口又は連結領域の深さは、傾斜路のように増大していても良く、その結果、第2のチャネル内に流れる流体は、傾斜路又は段部に沿ってリザーバの底部に流れ、そして深いリザーバ内部を満たすようになる。
【0035】
リザーバ内への流体の一様な流れを保証すると共に気泡の形成又は混入を阻止するため、リザーバは、側方がトレンチによって境界付けられるのが良い。
【0036】
リザーバの幾何学的形状は、流体の流れのフロントがトレンチに対して90°未満の角度をなすようなものであるのが良く、その結果、流体フロントは、充填中、トレンチのエッジに沿って進むようになる。しかしながら、変形例として、90°の流入角度も又許容できる。
【0037】
リザーバの出口、即ち、全体の充填が行なわれる場合に最後に満たされるリザーバの領域では、第3のチャネル、いわゆるトリガチャネルが枝分かれするのが良い。トリガチャネルは、リザーバ出口と流体停止部の両方に結合される。トリガチャネルは、リザーバと比較して高い毛管作用の小さな断面を有するのが良い。トリガチャネルは、流体停止部とリザーバ出口との流体結合を可能にし、リザーバから運ばれる流体がチャネルを経て流体停止部内に流れる。
【0038】
流体停止部は、隆起したベースを有する漏斗半部又はタブ又は桶形状を有するのが良い。漏斗半部又はタブの深さは、最も深い箇所で100〜500ミクロンであるのが良い。
【0039】
深い部分の頂部のところで、第1のチャネルは、流体停止部の底部の上方で壁内に開口するのが良い。トリガチャネルは、流体停止部の平坦な隆起区分内に開口するのが良く、その深さは、5ミクロン〜100ミクロン、特に30ミクロン〜70ミクロンであるのが良い。
【0040】
流体停止部の平坦な領域は、デルタの形状をしているのが良く、デルタは、深さ方向において傾斜路である。傾斜路は、流体停止部の深い領域をトリガチャネルの口に連結する。
【0041】
流体停止部は、トリガチャネルによって満たされるのが良い。流体停止部のチャンバ内の流体レベルが第1のチャネルの高さに達するやいなや、流体停止部は、橋渡しされ、リザーバ内に溜められている流体は、第2のチャネル及び出口チャネルを通って流れ去る。
【0042】
リザーバを反応チャンバとして用いることも可能である。このために、例えば混入及び/又は乾燥により試薬をリザーバチャンバ内に沈積させるのが良い。リザーバが満たされている間及び次の滞留時間中、化学的又は生物学的反応が、例えば触媒の使用又は光及び/又は熱の供給によって助長された状態でリザーバ内で起こることができる。
【0043】
リザーバ内における流体の滞留時間は、充填速度及びトリガチャネル中の流体の流れの流量によって決定されるのが良い。リザーバ内における滞留時間又は反応時間は、5秒〜200秒である。
【0044】
トリガチャネル中に流入した流体がここに留まるので、チャネルの高い毛管作用により、トリガチャネルの容積は、リザーバの容積の5%を超えてはならない。
【0045】
リザーバは又、試薬を溶解させるために経時的に一定の体積流量を生じさせる機能を有するのが良い。試薬を流体停止部の下流側でチャネル又は貯蔵チャンバ内に沈積させる。特に粉末形態の試薬により、物質、特に粉末の流れによる流体中の確実な溶解を保証する体積流量を生じさせることが必要である場合が多い。
【0046】
特に、これら粉末状物質では、くっつきが生じる場合があり、それにより、試薬が溶解プロセスを開始させて塊をばらばらにする必要がある。この溶解プロセスは、十分に多量の流体が運搬されることによってのみ達成可能であり、1秒当たり0.1マイクロリットル〜10マイクロリットルの重量が物質、流体の量及び材料の量に基づいて定められる。
【0047】
毛管停止部の幾何学的形態の代わりに且つ/或いはこれに加えて、毛管停止部は、チャネルの疎水性区分によって形成されても良い。このために、第1のチャネルの一部は、疎水性被膜を備えるのが良く、又は、チャネルシステムを親水化する手立てが設けられている場合、チャネルの一区分をこの親水化から排除するのが良い。
【0048】
第1のチャネルを通って流れる水性液の流体インターフェイスは、チャネルの湿潤性がこの時点で急減するので、疎水性領域に進むことがないようになる。疎水性領域は、小さな流体粒子が物理的にくっつくことができる粗い表面を有するのが良い。粒子の付着により、この領域の湿潤性が向上し、その結果、元々疎水性であった領域は、指定された期間内に湿潤され、流体は、停止箇所を越えて流れることができるようになる。
【0049】
また、この湿潤化は化学反応によって、例えばチャネルの疎水性区分を流体成分が結合する試薬で更に被覆することによって引き起こされ又は助長されるのが良く、その結果、湿潤具合は、連続的に増大する。連続湿潤が起こる期間内において、上述した形式のリザーバを満たすのが良い。
【0050】
毛管停止部に打ち勝った後、リザーバ内に中間的に貯蔵されていた量の流体は、次の分析、診断又は試験手順に利用できる。リザーバは、確実に充填したり空にすることが保証されるよう幾何学的に設計されているのが良い。この目的のため、リザーバチャンバは、形態が実質的に球形、漏斗形又は三角形であり、断面が入口領域から広がり又は拡大していることが有利である。この場合、リザーバを満たすと、流体インターフェイスは、連続的に広がる。リザーバは、好ましくは、流体の伝搬フロントに関してその端部が非対称の形状を有する。リザーバの端部は、リザーバを完全に満たしたときに、最後に満たされるリザーバの領域を意味している。これは、特に、側方通気トレンチに隣接して位置する領域である。これにより、インターフェイスの伝搬方向、即ち、流体フロントの流れ方向は、リザーバの充填中、端部領域の方向に、特に、出口チャネル又はトリガチャネルの方向に変わる。その間、リザーバは、完全に満たされ、リザーバ内に存在する空気は、側方トレンチを経て押し退けられるのが有利である。
【0051】
空にする際、プロセスを逆にする。リザーバの流入及び流出領域中のメニスカスの幅の減少は、空にするのを助ける。というのは、インターフェイスが短くなることにより、短くなっている間のエネルギーの放出によって補助圧縮力が及ぼされるからである。
【0052】
次に、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を具体的に説明するが、これは例示であるに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】リザーバ及び流体停止部を備えたマイクロフルイディック装置を示す図である。
【図2】本発明のリザーバの一実施形態の断面図である。
【図3】通気トレンチを備えたリザーバを示す図である。
【図4】バイパストリガ手段を備えたリザーバを示す図である。
【図5】毛管停止部の断面図である。
【図6】リザーバを用いた分析領域中の体積流量を示す図(曲線B(リザーバなし)、曲線A)である。
【図7】隣接のトレンチを備えたマイクロフルイディック装置の入口領域を示す図である。
【図8】入口領域の断面図である。
【図9】流体運搬構造を備えた試薬貯蔵部を示す図である。
【図10】垂直流入方式の分析チャンバを示す図である。
【図11】毛管停止部への連結領域を示す図である。
【図12】三角形リザーバ内における流体フロントの伝搬又は進行状態を示す図である。
【図13】トリガチャネルに設けられた異形部分を有する三角形リザーバ内における流体フロントの伝搬又は進行状態を示す図である。
【図14a】フィードチャネルへの入口領域を示す図である。
【図14b】フィードチャネルへの入口領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
マイクロフルイディック装置(1)は、粒子を分離する器具(3)を備えた入口チャンバ(2)を有する。微孔質メンブレン(3)が、例えば、分離器具又はフィルタとして用いられている。
【0055】
メンブレン材料は、例えばガラス繊維メンブレン、セルロース系メンブレン、ニトロセルロースメンブレン、ナイロンメンブレン又は合成ポリマー材料のような材料の中から選択されるが、材料の混合物を用いても良い。
【0056】
図8は、入口開口部を備えた蓋(21)によって覆われている入口チャンバ(2)を示している。蓋(21)は、基質キャリヤ(7)に固定されている。蓋(21)とキャリヤ(7)との連結は、接着又は結合又は溶接によって得られ、他方、両面接着フィルムも又、連結層として用いることができるのが有利である。
【0057】
有機プラスチック、特に例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、ポリカーボネート及び無機物質、例えばガラス、石英及びセラミックも又、蓋及び基質キャリヤの材料として使用できる。
【0058】
メンブレン(3)は、好ましくは、蓋(21)に設けられている凹部内に固定される。メンブレン(3)は、機能的に、粒子を含む液体、特に血液を濾過するために用いられる。この分離プロセス中、層状流れの流体がメンブレン(3)を通って垂直に流れる。メンブレン(3)は、試薬、例えば、メンブレンファブリックに乾燥付着させた被膜を備えるのが良い。濾過中、特定の量の流体(20)が入口開口部(26)内に送り込まれる。
【0059】
流体(20)は、メンブレン(3)によって吸い込まれ、分離された量の流体がメンブレン(3)を通って流れ、メンブレン(3)は、図8に概略的に示されているように、特に、入口チャンバ(2)のベースと接触状態にあるのが有利である。貫流プロセス中、メンブレン(3)からの試薬が流体中に溶けると共に/或いは試薬が流体中に溶けない場合であっても、液体の流れと一緒に運ばれるのが有利である。
【0060】
その結果、化学的及び/又は生物学的反応プロセス及び/又は物理的輸送プロセス、例えば流体成分のイオン交換又はメンブレン3への結合又は吸着が開始される。
【0061】
メンブレン(3)と入口チャンバ(2)のベースとの接触は、ベースの方向におけるメンブレン(3)の曲げ又は凸形状に起因して生じる。その結果、接触領域におけるベースとメンブレンとのなす僅かな角度が形成されてこの箇所で大きな毛管力が生じ、その結果、流体は、メンブレン(3)から吸い出されて接触隙間中に吸い込まれ、この湿潤の結果、チャンバ(2)を満たすようになる。
【0062】
メンブレン(3)を通る流体の垂直流れを開始させるため、補助手段として、図7に示されているように構造要素(14)に入口チャンバ(2)に設けられた垂直切欠き(15)を提供することも又想定できる。構造要素(14)は、ポスト(柱)であり、ポストの先端部は、第1のチャネル(4)の口領域内に延び、このポストの外面には、多くの垂直切欠き(15)が設けられている。
【0063】
入口チャンバ(2)は、好ましくは円形である。チャンバ(2)は、その側部がトレンチ又は溝(8)によって境界付けられ、トレンチ(8)は、チャンバのベースの高さ位置から200ミクロン〜3ミクロン、特に300〜600ミクロンの深さまで延びている。2つの通気チャネル(9)がトレンチ(8)から枝分かれしており、これら通気チャネルは、マイクロフルイディック装置(1)の外縁に結合されている。変形例として、トレンチ(8)は、1つのベント又は3つ以上のベントを有しても良い。
【0064】
メンブレン(3)は、少なくとも部分的に構造要素(14)に取り付けられ、その結果、メンブレン(3)によって吸い込まれた流体は、幾何学的に垂直切欠き(15)に接触する。切欠き(15)は、その鋭角の開口角度により高い毛管力を発揮するので、流体は、メンブレン(3)から吸い出されて切欠き(15)の毛管隙間中に吸い込まれ、そして、切欠き(15)に沿って入口チャンバ(2)のベースに向かって垂直に流れ、流体は、ここでベースを湿潤させる。
【0065】
入口チャンバ(2)と流体をチャンバ(2)から装置(1)の流体チャネルシステム内に移送する第1のチャネル(4)との間の移行領域(18)は、三角形、デルタ形又は漏斗形の形態のものである。メンブレン(3)からチャンバ(2)内に直接的に且つ/或いは構造要素(14)によって移送された流体は、移行領域(18)を経てフィードチャネル(4)内に流れる。
【0066】
流体の均一な泡なし流入流れは、構造要素(14)がフィードチャネル(4)の三角形入口区分内に突き出てフィードチャネル(4)に対して2つの入口チャネル区分を形成している結果として、構造要素(14)によって助長される。
【0067】
トレンチ(8)は、フィードチャネル(4)の口又は移行領域(58)内で途切れているので、トレンチ(8)の端部領域において、通気トレンチ(8)内への流体の偶発的な放出が生じる恐れが増大する。
【0068】
これを抑制するため、トレンチの端部(16)は、広く又は大きく作られている。
【0069】
図7に示されているように、トレンチの端部(16)は、円形の形態に広げられ又は拡大されている。ただし、他の形状、例えば楕円形も又、採用可能である。移行部は、これらの端部のところが極めて丸くされているべきであるのが有利である。というのは、縁は、上述したようにトレンチ(8)内の偶発的な垂直流れを開始させる場合のある垂直切欠きとして働くからである。広げられた又は拡大された区分の平均直径は、この箇所でのバリヤ効果を増大させるようトレンチの幅の少なくとも1.5〜10倍であることが必要である。
【0070】
図14aに概略的に示されているように、フィードチャネル(4)への移行領域(18)も又、半円形又は蹄鉄形であっても良く、構造要素(14)は、これに適合する形状のものである。移行領域(18)では、メンブレン(3)のアタッチメント(42)が第1のチャネル(4)の入口開口部と実質的に直角に交差する。図14bに概略的に示されているように、入口開口部(26)内に導入された所与の量の流体(20)、特に1滴の流体がメンブレン(3)によって吸い込まれる。濾過された流体、試験流体とメンブレン(3)内に付着している試薬の複合体及び/又は濾過された流体結晶は、次に、第1のチャネル(4)の方向に流れる。特に、メンブレン(3)は、先端部の領域の大きな毛管力の結果としてベース領域の湿潤を助ける鋭角の毛管隙間が形成されるよう少なくとも部分的に入口開口部(26)の下でベース上に載っているのが有利である。頂角、即ち、ベース平面とメンブレン表面とのなす開口角は、1°、2°、3°、5°、10°、15°、20°、25°、30°、35°、40°、45°又は指定された角度の部分角度であるのが有利である。メンブレン(3)のアタッチメント(42)の実現は、蓋要素(21)に設けられている凹部(41)内で行なわれ、メンブレンは、接着、積層、溶接又は他の手段によって凹部(41)内に固定される。図14bに示されているように、メンブレン(3)の下の領域は、当初、均一に湿潤される。凹部の領域では、均一の3次元湿潤は、断面の拡大及び/又はアタッチメント(42)の湿潤特性の変更により止まるようになることが起こり得る。この場合、流体の2次元流れが生じ、流量が減少した状態でベース及びチャンバ及び/又はチャネルの壁の部分湿潤が生じる。可能な流量を達成するため、流体を運搬する構造(4,5,6,12)の均一の3次元湿潤は、再び確立されるのが有利である。この目的のため、入口開口部(26)の下流側に1つ又は2つ以上の垂直流れ運搬構造要素(15)、特に切欠きが設けられている。垂直流体運搬構造要素により、図14bに概略的に示されているように底部と頂部との間に垂直流れが生じ、3次元湿潤が達成される。構造要素(15)は、ベースと頂部との間に一様に延びる切欠き及び/又はピラーであるのが良く、これら構造要素は、高い毛管作用の垂直毛管隙間が形成されるよう互いに対して配置されている。特に好ましくは、垂直切欠き(15)は、アタッチメントの下流側で構造要素の外面に設けられている。代替的に又は追加的に、切欠き(15)又はこの種の垂直運搬要素(15)を移行領域(18)の壁面に設けることも可能である。また、構造要素及び/又は基質キャリヤを親水性材料で作ると共に/或いは流体運搬構造の表面に親水性被膜を被着させることが可能であるのが有利である。
【0071】
流体又は流体混合物は、移行領域から、以下フィードチャネル(4)ともいう第1のチャネル(4)内に流入する。フィードチャネル(4)を通って運び去られた流体は、図1で理解できるように流体停止部(10)まで流れる。流体停止部(10)は、好ましくは、流体がリザーバ(6)を満たすことができるよう流体のための時間制約型停止領域として具体化される。
【0072】
メンブレン(3)を用いた濾過中、メンブレン(3)を通る体積流量は、メンブレンの細孔及びチャネルが閉塞状態になるので濾過中、減少する。流量が連続的に減少した状態におけるフィードチャネル(4)内のフィルタ流量の時間関数は、図4の曲線Aから推定できる。メンブレンへの20μl流体の追加後における開始時における流体体積流量が依然として1秒当たり〜0.2マイクロリットルである場合、この値は、約30秒後に、1秒当たり0.05〜0.02マイクロリットルまで減少する。しかしながら、分解プロセスでは、例えば検出反応に必要な物質の確実な溶解を保証するためには、通常、特定の体積流量が必要である。
【0073】
図10は、マイクロフルイディック装置(1)の分析領域の断面図である。フィードチャネル(4)に流体結合されている出口チャネル(17)内には、切欠き(15)を備えた構造要素(14)の端部が配置されている。構造要素(14)、この場合ピラーは、蓋(21)に設けられている垂直貫流開口部(22)内に付き出ている。貫流開口部(22)は、環状に外側領域中の試薬物質(23)で満たされる。また、変形例として、貫流開口部に所定の充填レベルまで試薬物質を充填しても良い。また、変形例として、試薬を壁に環状の形態で付着させても良く且つ/或いは分析チャンバ(25)の天井に円板の形態で付着させても良く且つ/或いは第2のチャネル内に沈積させても良い。
【0074】
図9は、貫流開口部(22)の平面図であり、試薬(23)が貫流開口部内に入れられ、ピラー(14)が試薬(23)中に浸漬されている。ピラー(14)の切欠き(15)は、垂直流れを生じさせ、又、この垂直流れにより、流れが重力の方向とは逆の方向に生じることができる。ピラーの壁は、これ又垂直流れを助ける試薬(23)の物質の入った毛管隙間を包囲している。試薬は、好ましくは、多孔質コンシステンシーを有し、したがって、垂直方向上方に流れる流体は、試薬物質をぬらし、これに染み込み、そしてこれを体積流量の流体中に溶かすようになる。
【0075】
溶解状態の流体は、図10に示されているように分析チャンバ(25)内に流れる。流体と試薬の混合物は、チャンバ(25)を満たす。次に流体/試薬混合物の性質を検出器(24)の使用により求めることができる。試薬を溶解させるのに必要な流体の最小限の体積流量は、1秒当たり0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.1、0.2、1、2、5、10、20、50、100マイクロリットル又はこれらの倍数又は分数である。滴状追加により血漿の性質を検出する分析システムでは、1秒当たり0.01〜0.05マイクロリットルの流体の体積流量が用いられる。
【0076】
図1の実施形態1では、リザーバ(6)を先ず最初に分離された流体で満たす必要があり、次に、リザーバ(6)を一定の体積流量で空にすることが想定されるのが有利である。リザーバ(6)を所定量の流体で満たすため、流体停止部(10)が第1のチャネル(4)又はフィードチャネル(4)の輸送経路に沿って配置されている。
【0077】
流体停止部(10)は、流体が指定された期間で又はリザーバ(6)を完全に充填する充填時間で前に流れるのを阻止する。リザーバ(6)は、第2のチャネル(5)を用いて充填され、第2のチャネル(5)は、リザーバのチャンバに向かって広がっている。第2のチャネル(5)は、第1のチャネル(4)から枝分かれしており、この枝分かれは、流体停止部(10)の上流側で起こる。変形例として、第2のチャネル(5)は、第1のチャネル(4)を流体停止部(図11)に結合する領域で終端しても良く、或いは、別の実施形態(図示せず)では、第2のチャネルも又枝分かれさせても良く、一方の枝チャネルは、第1のチャネル(4)に連結され結合され、第2の枝チャネルは、流体停止部(10)に結合される。流体停止部(10)に関するリザーバ(6)への第2のチャネル(5)又は流入チャネルのこれら構成に共通の特徴は、短い流路がリザーバ(6)と流体停止部(10)との間に作られていることである。
【0078】
リザーバ(6)は、反応チャンバとしても使用できる。この目的のため、試薬、例えば粉末又は乾燥試験物質をリザーバ(6)内に沈積させるのが良い。
【0079】
リザーバチャンバ(6)の容積は、チャンバが追加される流体の量の50%以上を収容することができるようなものである。可能な限り最も大きなリザーバ容積を提供するために、チャンバ(6)の深さが図2に示されているようにリザーバチャネル(5)又は第2のチャネル(5)から始まって、図1のA‐A線断面に沿って増大することが想定されるのが有利である。リザーバ(6)の深さは、段階的に増大するのが良く又は傾斜路状の幾何学的形状で増大しても良い。深さの変化は又、リザーバ(6)の部分領域、特に第2のチャネル(5)の口のところでのリザーバ(6)への入口領域に限定されても良い。
【0080】
リザーバは、血液の液滴のために用いられる場合、0.1マイクロリットル〜1000マイクロリットル又は1マイクロリットル〜10マイクロリットルの容積を有するのが有利である。リザーバ(6)の容積は、リザーバが反応チャンバとして用いられる場合、所望量の反応混合物に対応する。
【0081】
流体は、毛管力又は外部流体圧力の結果としてリザーバチャンバ(6)を満たす。例えば、遠心分離又は外部静圧によって外部圧力が及ぼされる。リザーバ(6)のチャンバは、流体の一様な分布を生じさせるよう構造要素(14)を有するのが良い。リザーバの深さは、好ましくは、5ミクロン〜1000ミクロン、特に好ましくは100ミクロン〜400ミクロンである。
【0082】
流体停止部(10)は、いわゆる時間バリヤ、即ち時間ゲートとして構成されるのが良く、停止時間中、リザーバは、少なくとも部分的に満たされる。反応プロセスでは、反応は、停止時間中に起こる。例えば、チャネルの疎水性区分によって時間ゲートが作られる。疎水性区分中の流体の停止は、水溶液が疎水性チャネル区分を濡らすことができず、これを通り越すことができないということに基づいている。
【0083】
プラスチック材料、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、PTFE又はシリコーンが疎水性表面を形成する。また、疎水性表面は、被膜、特にナノコーティングを用いて達成できる。さらに、表面のナノ構造化も又、特に、UVレーザによる照射によって実施でき、それにより、レーザ切断によって作られた表面には規定された湿潤特性を備えた構造が与えられる。流体停止部(10)は、その表面に疎水性領域と親水性領域の両方を有するのが有利である。
【0084】
上述した材料のうちの1つから成る基質(7)では、チャネルの疎水性区分を得るために、チャンバ及びチャネルの構造(2;8;9;4;5;6)が基質中に形成される。この場合、フィードチャネル(4)の側壁及びベースは、疎水性である。蓋(21)には親水性材料が用いられ、したがって、チャネルの頂部は、親水性である。変形例として、チャネル及びチャンバは、被覆、例えば吹き付けによって疎水性又は親水性にされても良い。
【0085】
時間ゲートは、流体からの成分を疎水性表面に被着させることにより親水性に作られる。
【0086】
流体停止部(10)の親水化をリザーバ(6)の充填プロセスと組み合わせるのが良い。このために、親水化試薬(23)がリザーバ(6)内に設けられ、これら試薬は、流入流体によって溶解されて拡散により流体停止部(10)中に流れる。流体停止部(10)の停止時間は、親水化物質の量又は濃度で決まる。
【0087】
流体停止部(10)がいったん除かれると、リザーバ(6)のチャンバの内容物は、出口チャネル(17)内に自由に流れることができる。
【0088】
リザーバ(6)は、チャンバの少なくとも一方の側部がトレンチ(8)によって境界付けられ、トレンチ(8)は、図3に示されているように通気チャネル(9)に結合されているのが有利である。これにより、リザーバ(6)を空気がトレンチ(8)及びベント(9)を経て押し退けられているときに連続的に充填できる。図4の別の実施形態では、リザーバ(6)は、実質的に三角形の表面を備えた状態で提供され、入口チャネル又は第2のチャネル(5)と幾何学的に反対側の表面の側部は、トレンチ(8)によって境界付けられる。
【0089】
チャネル(5)に隣接して位置する表面の側部は、壁を有し、壁の経路は、図4に示されているように曲率を有する。
【0090】
リザーバ(6)を満たしているとき、流体は、チャンバ(6)内で伝搬する。矢印で示されたフロントの流れ方向(11)は、そのチャンバの幾何学的形状によって定められ、流体の表面張力は、インターフェイスの長さを最小限に抑える。
【0091】
図12は、第2のチャネル(5)によって流体が供給される実質的に三角形のリザーバ(6)を示している。リザーバ(6)を満たすと、インターフェイスは、流れ方向(R1,R2)に沿ってリザーバ内に動く。流入領域に隣接して位置するリザーバ(6)の側面が互いに90°未満の角度をなすと共にトレンチが流入領域と反対側の側面に隣接して設けられていることにより、リザーバは、完全に満たされるようになる。
【0092】
充填中、流体/ガスインターフェイスは、先ず最初に、トレンチ(8)の縁に達するまで方向R1に動く。リザーバ(6)内に入っているガス、特に空気は、トレンチ(8)及びベント(9)を経て外方に押しやられる。流体フロントが引き続き進行すると、トレンチの縁は、今や、以下に説明するように追加のインターフェイスを形成する。
【0093】
リザーバ(6)内のインターフェイスの部分領域、即ち、リザーバ(6)内の流体フロントは、今や、その流れ方向を変える。リザーバ(6)の側面及びトレンチは、リザーバの充填が実質的に完了すると、流体の流れ方向が枝チャネル(12)又はトリガチャネル(12)の入口領域の方向に向くよう互いに対して配置されている。
【0094】
図13は、本発明のリザーバ(6)の変形実施形態を示している。この実施形態においても、リザーバ(6)の完全充填は、流体フロントの流れ方向(R1,R2)が充填中、変わることによって達成される。図13に示されている実施形態では、これは、リザーバに設けられている凹み(45)によって達成され、それにより、インターフェイスは、トレンチ(8)と強調して回転する。図13に概略的に示されているように、流体フロントは、先ず最初に、漏斗形リザーバ(6)内に実質的に垂直方向に移動し、次に、凹み(45)により、フロントは、リザーバ(6)内で変向する。
【0095】
リザーバが完全に充填されたときに最後に充填される領域に隣接して、トリガチャネル(12)がリザーバ(6)から枝分かれしてリザーバ(6)のための出口チャネル(17)を形成し、流体停止部(10)に流体結合される。リザーバの底部よりも特に2〜10倍深いので、トレンチ(8)を湿潤させることはできず、その結果、インターフェイスの一端は、トレンチの縁のところで停止し、次に、トリガチャネル(12)に向かって移動するようになる。リザーバ(6)のこの幾何学的形態により、リザーバ(6)は、気泡なしの状態で充填される。
【0096】
実施形態の流体停止部(10)は、毛管停止部(10)である。フィードチャネル(4)又は第1のチャネル(4)、トリガチャネル(12)及び出口チャネル(17)は、毛管停止部(10)に連結されている。毛管停止部(10)の動作は、チャネルの断面の急増に基づいている。毛管停止部(10)は、図4のB‐B線矢視断面で図5に示されている。
【0097】
毛管停止部は、その深さが変化している。毛管停止部(10)の最も深い部分では、フィードチャネル(4)は、基質キャリヤ(7)の頂部で停止部(10)内に開口している。図5から理解できるように、半径円形チャネル(4)、毛管停止部(10)のチャネル入口(13)の段部又は縁部は、トレンチの縁部のように働く。チャネル(4)の縁部の距離が毛管停止部(10)の深さと比較して大きいので、フィールドチャネル(4)で運ばれる流体は、停止部(10)の容積部を湿潤することができない。しかしながら、湿潤がトリガチャネル(12)を通って起こる結果として、毛管停止部(10)に打ち勝つことができる。
【0098】
トリガチャネル(12)によってリザーバ(6)を通って運ばれる流体は、流体停止部(10)の端部領域内に運び込まれ、この端部領域は、その深さがトリガチャネル(12)の深さに一致している。トリガチャネル(12)内の水性液は、流体停止部(10)の端部領域を湿潤させて図5に示されている傾斜路に沿って流体停止部(10)内に流れ込み、そしてこの流体停止部を満たすことができる。トリガチャネル(12)から毛管停止部(10)内への流体の流れを助けるため、構造要素(14)、例えばピラー又はポストを5〜50ミクロンの間隔を置くと共に10〜300ミクロンの高さに且つ10〜200ミクロンの直径で毛管停止部の傾斜面、底面及び側面に設けるのが良い。また、一実施形態では、壁とベースの間並びに壁及びベースに切欠き、テラス、段部又は鋭利な衝撃エッジを用いることが可能であるのが有利である。
【0099】
毛管停止部(10)中のトリガチャネル(12)を通って流れている流体フロントがフィードチャネル(4)のベースの高さに達すると、フィードチャネル(4)中の液体は、停止部(10)内の液体と合流する。次に、毛管停止部(10)が除かれ、流体は、出口チャネル(17)を通って流れ去る。トリガチャネル(12)は、リザーバ(6)よりも高い毛管作用を発揮する。これにより、トリガチャネル(12)及び毛管停止部(10)が充填されるようになる。
【0100】
トリガチャネル(12)は、100〜200ミクロンの深さ及び20〜300ミクロンの幅を有する。トリガチャネルは、断面が実質的に長方形であり、特にタブ形若しくは半円形であり、或いは、形状がほぼ三角形である。トリガチャネル(12)の高い毛管作用のために、毛管停止部(10)の充填後、チャネル(12)内に依然として幾分かの流体が存在する。
【0101】
流体チャネル(12)のチャネル容積は、流体のこの失われる量に鑑みて、リザーバ容積の5%未満、特に1%未満であることが必要である。10マイクロリットルのリザーバ容積サイズでは、バイパス(12)の容積は、0.5マイクロリットル未満、特に0.1マイクロリットル未満であるべきである。
【0102】
毛管停止部は、200〜2000ミクロンの長さ及び10〜500ミクロンの深さを有する。
【0103】
傾斜路が毛管停止部(10)に設けられていると共に段部がフィードチャネル(4)のところに設けられているので、毛管停止部(10)中の深さは、広い範囲にわたって変化している。最大深さ、即ち、フィードチャネル(4)の入口の下のベースの深さは、200〜500ミクロンである。これにより、少なくとも100ミクロン〜500ミクロンの段差がフィードチャネル(4)の底部と毛管停止部(10)の底部との間に形成されるようになる。
【0104】
毛管停止部(10)の深さが出口チャネル(17)の深さを上回っているので、残留量の流体が毛管停止部(10)内に残る。毛管停止部に続く流体構造の毛管作用に応じて、即ち、次の流体運搬構造の毛管力がかかる流体運搬構造を空にする程ではない場合、毛管停止部(10)は又、完全満杯状態のままである場合がある。流体のこの失われる量を減少させるため、毛管停止部(10)の容積は、リザーバ容積の10%未満、特に2%未満であることが必要である。
【0105】
リザーバ(6)の容積が10マイクロリットルである場合、毛管停止部の容積は、1マイクロリットル未満、特に0.2マイクロリットル未満であることが必要である。毛管停止部に打ち勝った後に毛管停止部が多くとも50%まで空にするので、上述の例では、0.5マイクロリットル、好ましくは特に0.1マイクロリットルの流体が、毛管停止部(10)内の失われる量として残る。
【0106】
毛管停止部(10)をトリガチャネル(12)からの流体によって短絡させ又はこれに打ち勝つやいなや、リザーバ(6)内の流体又は血漿は、供給チャネル(5)、毛管停止部(10)及び出口チャネル(17)を経て流れ去る。流体は、次に、物質又は試薬チャンバ及び/又は試薬沈積物中に流れ又はこれを通って流れ、この中に沈積している化学物質を溶解させる。特定の溶解プロセスの場合、規定されると共に実質的に一定の体積流量の流体を提供することが必要である。図6は、図4の毛管停止部(10)の橋渡し後における出口チャネル(17)中の体積流量を曲線Bで示している。特定の期間にわたり実質的に一定体積流量の流体又は血漿が生じることは明らかである。
【0107】
図6の例示の曲線Aでは、時刻t=0での20マイクロリットルの血液の追加後、入口チャンバから出る体積流量は、30秒後に、この時点では1秒当たり0.1マイクロリットルを超えていた体積流量から1秒当たり約0.05マイクロリットルに減少したことは明らかである。曲線Aは、フィードチャネル(5)中の流量を測定することによって得られている。
【0108】
容積が5マイクロリットルのリザーバ(6)は、約40〜60秒後に満杯である。さらにほぼ5〜30秒後、毛管停止部(10)は、満杯であり、短絡される。
【0109】
次に、流体の流れは、曲線Bに示されているように出口チャネル(17)内で始まる。これは、曲線Aの体積流量の2〜50倍の場合がある。というのは、体積流量は、濾過プロセスによって妨げられることがないからである。曲線Bによれば、リザーバ(6)を空にした後の体積流量は、1秒当たり約0.5マイクロリットルであり、経時的に僅かに減少する。チャネル(17)内のこの流出流れは、リザーバ(6)及びフィードチャネル(4)から送られる。
【0110】
リザーバ内に入っている量で決まる期間後、この場合、約10秒後、リザーバ(6)は、再び完全に空になり、その結果、出口チャネル(17)中の体積流量は、入口チャンバ(2)及びフィードチャネル(4)から供給される供給流れまで減少するようになる。
【0111】
リザーバ(6)を5秒〜100秒の期間をかけて満たした後における出口チャネル(17)及び/又は次の物質貯蔵部及び/又は次の反応チャンバ内の体積流量は、1秒当たり0.05マイクロリットルから1秒当たり最高10マイクロリットルまでの一定の値を取るのが有利である。
【0112】
1滴の血液を用いる場合、即ち、濾過されるべき量が5マイクロリットルから20マイクロリットルである場合、リザーバを空にしている間における濾過血漿の体積流量は、1秒当たり0.1マイクロリットルから1秒当たり最高2マイクロリットルまでの一定の体積流量で5秒から30秒を超える期間にわたり生じるべきである。
【0113】
体積流量に関する一定の値という表現は、指定された時間間隔における分量の値の変換が30%以下であることを意味している。
【符号の説明】
【0114】
1 マイクロフルイディック装置
2 入口チャンバ
3 メンブレン
4 第1のチャネル
5 第2のチャネル
6 リザーバ
7 基質キャリヤ
8 トレンチ
9 通気部
10 流体停止部
11 流れ方向
12 トリガチャネル
13 チャネル入口
14 構造要素
15 垂直流体要素
16 トレンチの拡大端部
17 出口チャネル
18 移行領域
20 流体
21 蓋
22 垂直貫流開口部
23 試薬
24 検出器
25 分析チャンバ
26 入口開口部
41 凹部
42 アタッチメント
45 凹み
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量プロセスにおいて経時的に変わらない又は一定である体積流量を生じさせるマイクロフルイディック装置に関する。本発明は、血漿分離に用いられるマイクロフルイディック装置に利用できる。
【背景技術】
【0002】
流体、例えば血液から成る粒子の分離にあたり、例えば、分離されるべき媒体、この場合血液がフィルタ内に送り込まれる。流体及び小さな成分は、フィルタを通って流れ、装置内のチャネルを通って運び去られる。流体の特定の性質を検出するため、流体を試薬に接触させ、試薬は、化学的又は物理的に検出可能な相互作用、例えば検出反応の場合、流体の染色を生じさせる。
【0003】
これら種々の湿式化学的、生化学的又は診断学的分析の場合、流体をチャンバ又はリザーバ内で指定された期間にわたり試薬と混合し、それによりこれら試薬を溶解させると共に/或いは試薬と反応させることが必要である。
【0004】
さらに、この種の種々の溶解又は反応プロセスでは、試薬の確実な溶解を保証し或いは反応が起こるようにするために指定された所与の体積流量又は質量流量の流体を利用することが肝要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば流体の流れが必要とされる流体の流れよりも少ない場合、マイクロフルイディック分析装置内に入っている乾燥状態の特に粉末状の物質の成分が集まって塊となり又は付着物としてくっつく恐れがある。これにより、検出反応の結果が歪められる場合がある。
【0006】
この技術背景を考慮して、本発明の少なくとも好ましい実施形態の目的は、検査領域において所与の期間にわたり検査されるべき所与の量の流体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好ましい実施形態は又、所与の体積流量の流体が所定の期間にわたり一様に生じるようにするマイクロフルイディック装置を提供するものである。
【0008】
本発明は、請求項1の特徴を有するマイクロフルイディック装置に関する。
【0009】
本発明のマイクロフルイディック装置により、経時的に一定である体積流量の流体を提供することができる。この目的のため、本装置は、分離手段、特に血液を濾過する手段を有すると共に分離された流体を受け入れてこれを運び去る第1のチャネルを有する。
【0010】
第1のチャネルは、停止手段、特に流体停止部又は毛管停止部に隣接して端部領域に設けられており、流体停止部又は毛管停止部は、所与の期間にわたり第1のチャネル内の流体の流れを止めることができる。第1のチャネルに隣接すると共に流体停止部に隣接して上流側において第2のチャネルが第1のチャネルから枝分かれしている。第2のチャネルは、リザーバへの連結部を形成する。
【0011】
本発明のマイクロフルイディック装置の停止手段又は流体停止部は、好ましくは、例えば欧州特許出願公開第1441131(A3)号明細書から知られている毛管停止部である。
【0012】
流体停止部は、好ましくは、流体運搬要素の幾何学的形状が流体停止部のところで例えば段部の形成によって急変するという特定の設計上の特徴を有する。流体停止部は又、流体運搬要素の濡れ特性の突然の変化により、例えば、或る特定の領域が親水性又は疎水性材料で覆われている結果として形成されても良い。
【0013】
分離手段は、好ましくは、メンブレン又はフィルタである。
【0014】
例えばマイクロフルイディック装置を分析器で動作させるため、所与の量の流体が装置の入口開口部内に送り込まれる。これは、例えば、20マイクロリットルの量の1滴の血液であるのが良い。入口開口部内には、供給された媒体が流れ込むメンブレン又はフィルタが設けられるのが良い。流体の流れは、特に、フィルタ又はメンブレンの細孔及び毛管を通って垂直流れ方向に運ばれる。このように「垂直方向」と言った場合、これは、流れが特にプレート形マイクロフルイディック計量器具の基質平面に実質的に垂直であることを意味している。流れは、本質的に厚さの方向にメンブレンを通過する。
【0015】
メンブレン又はフィルタは、好ましくは、入口開口部とメンブレン/フィルタの下に配置された入口チャンバとの間で垂直方向に配置される。メンブレン又はフィルタは、その細孔又は毛管の毛管作用により液体を吸収することができ、そして細孔又は毛管よりもサイズの大きな大形粒子を保持することができる。
【0016】
細孔は、保持した粒子の凝集によって部分的に閉塞状態になり、その結果、貫流に有効な流れの断面は、分離プロセスが進むと、絶えず減少するようになる。
【0017】
これにより、マイクロフルイディック装置内における流体の体積流れの流量が減少する。例えば、40マイクロリットルの量の血液が追加された場合、流量が当初1秒当たり0.3マイクロリットルである場合、この値は、常時減少し、その結果、20秒後には、1秒当たり0.1マイクロリットルしかフィルタ又はメンブレンを通過して入口チャンバに隣接したチャネル内に流入することができないようになる。
【0018】
入口チャンバは、流体の流れにより溶解される試薬を収容しているのが良い。同様に、メンブレンには、試薬、例えば血液が凝固するのを阻止する試薬を吸い込ませ又は含浸させるのが良い。流体が加えられると、分離は、このようにして処理されたメンブレンで起こると同時に、第1の試薬が溶解され、この第1の試薬は、生物学的及び/又は化学的及び/又は物理的性質、特に流体の粘度に影響を及ぼす。
【0019】
入口チャンバ内には第2の試薬を沈積させるのが良く、第2の試薬は、流体中に検出反応を生じさせる。これは、例えば光学的な色の変化であるのが良い。
【0020】
メンブレン又はフィルタが高い固有の毛管作用を有するので、体積流量が隣接の入口チャンバ内に垂直方向に流下するのを助ける手段が設けられるのが良い。この目的のため、入口チャンバは、1本又は2本以上のピラー又はポストを有するのが良く、これらピラー又はポストは、垂直方向に延びる1つ又は2つ以上の切欠きを有するのが有利である。
【0021】
ピラー又はポストは、メンブレンがピラー又はポストに載るよう配置される。ピラー又はポストの高さは、入口チャンバの深さに一致するのが良く、入口チャンバの深さは、好ましくは、10ミクロン〜1000ミクロンであり、特に50ミクロン〜500ミクロンであるのが有利である。
【0022】
ピラー又はポストの切欠きは、接触すべきメンブレンと流体接触関係にあり、これらの毛管作用により、流体をメンブレンからチャンバのベースに導き出し、その結果、チャンバが湿潤される(ぬれる)ようになる。代替的に又は追加的にメンブレンは、形状が凸状であっても良く、この凸の高さは、チャンバの深さに一致し、その結果、メンブレンは、チャンバのベースの凸の頂点に当たるようになる。
【0023】
メンブレンの頂点がチャンバベースと鋭角をなすので、メンブレンの湿潤中、個々に高い毛管力が生じ、その結果、分離された流体は、メンブレンとチャンバのベースとの間の隙間を通ってチャンバ内に運び去られるようになる。
【0024】
チャンバは、少なくとも部分的にトレンチよって包囲されるのが良く、トレンチは、チャンバの深さよりも深く、トレンチは、入口チャンバ内の空気をトレンチ上の流入流体によって置き換えることができるよう空気ベントを有するのが有利である。トレンチは、好ましくは、幅が100〜1000ミクロン、深さが200〜1000ミクロンである。入口チャンバの容積は、好ましくは、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、20、50、100、200、500又は1000マイクロリットルであり、他方、指定された値を互いに加えることによって得られるチャンバ容積を選択することも可能である。
【0025】
流体を入口チャンバから運び出して1つ又は2つ以上の流体チャネル中に運び込むため、チャネルは、連結領域において入口チャンバに向かって漏斗の形状をなして広がっているのが良い。先ず最初に、チャネルの幅は、漏斗の細い部分内で広がり、次に、チャンバに向かって円錐状に増大する。漏斗の拡大円錐形部分内には、漏斗内への流体の運搬を助けることができる構造要素、例えば上述のポスト又はピラーが設けられるのが良い。
【0026】
流体運搬は、例えば構造要素と漏斗壁との間に隙間が形成され、毛管力が隙間を通って流体に作用することによって助長される。ピラー壁又はポスト壁と漏斗壁との間の距離、即ち、隙間の幅は、5ミクロン〜500ミクロンであるのが良い。
【0027】
上述のトレンチは、流体の流れがトレンチ段部を越えて流れることができないので流体停止部となる。トレンチは、入口チャンバの漏斗状出口領域とは別に、入口チャンバを完全に包囲するのが良く、その結果、空気は、入口チャンバから一様に押し退けられることができるようになる。
【0028】
互いに隣接して位置するチャンバ出口漏斗とトレンチの端部との間の領域では、トレンチ内への流体の望ましくない流出が生じる恐れがある。したがって、漏斗壁からトレンチへの特に垂直な流れを阻止するようトレンチの端部を広げ又は拡大させるべきであることが想定される。
【0029】
入口チャンバに隣接して位置する第1のチャネルにより運搬される流体は、上述した流体停止部まで流れる。第2のチャネルが第1のチャネルから枝分かれしており、この第2のチャネルは、リザーバを第1のチャネルに結合する。
【0030】
入口チャンバから流出した流体は、流体停止部に達すると、リザーバ内に流れ、そしてこれを所与のレベルまで、50%〜100%のレベルまで満たすことができるのが有利である。このレベルに達すると、流体停止部は、閉鎖されるのが良く、リザーバからの流体は、第2のチャネル及び流体停止部を連続的に通って入口チャネル内に流れるのが良い。出口チャネルは、下流側で流体停止部に連結されるのが良い。
【0031】
中間リザーバにより、経時的に一定の流体の体積流量を達成することができる。開始媒体の分離中、時間が経過するにつれて体積流量が大幅に減少するので、リザーバは、体積流量のこの減少分を補償するのに役立つ。リザーバ又は中間貯蔵手段は、分離された流体で満杯になる。指定された量の流体がリザーバによって取り込まれ、リザーバは、0.1マイクロリットル、0.2マイクロリットル、0.5マイクロリットル、1マイクロリットル、2マイクロリットル、5マイクロリットル、10マイクロリットル、20マイクロリットル、50マイクロリットル、100マイクロリットル、200マイクロリットル、500マイクロリットル、1000マイクロリットル又はこれらの分数又は倍数の容量を有するのが良い。
【0032】
幾つかに量の流体、例えば血液の1滴である場合、0.5マイクロリットル〜10マイクロリットルのリザーバ容積が提供されるのが良い。
【0033】
チャネルが収容することができる量よりも多い量の流体を収容するため、リザーバは、第1のチャネルよりも深いものであるのが良く、これは、供給チャネル又はフィードチャネルとも呼ばれる。特に、リザーバの深さは、第1のチャネルの深さの1.2〜5倍であるのが良い。
【0034】
第1のチャネルからリザーバへの供給手段となる第2のチャネルは、リザーバの入口領域で広がり又は拡大しているのが良い。第2のチャネルの深さは、枝分かれ箇所において第1のチャネルの深さに一致しているのが良い。リザーバへの円錐形に広がった連結領域において段部又はテラスを設けるのが良い。変形例として、リザーバの入口又は連結領域の深さは、傾斜路のように増大していても良く、その結果、第2のチャネル内に流れる流体は、傾斜路又は段部に沿ってリザーバの底部に流れ、そして深いリザーバ内部を満たすようになる。
【0035】
リザーバ内への流体の一様な流れを保証すると共に気泡の形成又は混入を阻止するため、リザーバは、側方がトレンチによって境界付けられるのが良い。
【0036】
リザーバの幾何学的形状は、流体の流れのフロントがトレンチに対して90°未満の角度をなすようなものであるのが良く、その結果、流体フロントは、充填中、トレンチのエッジに沿って進むようになる。しかしながら、変形例として、90°の流入角度も又許容できる。
【0037】
リザーバの出口、即ち、全体の充填が行なわれる場合に最後に満たされるリザーバの領域では、第3のチャネル、いわゆるトリガチャネルが枝分かれするのが良い。トリガチャネルは、リザーバ出口と流体停止部の両方に結合される。トリガチャネルは、リザーバと比較して高い毛管作用の小さな断面を有するのが良い。トリガチャネルは、流体停止部とリザーバ出口との流体結合を可能にし、リザーバから運ばれる流体がチャネルを経て流体停止部内に流れる。
【0038】
流体停止部は、隆起したベースを有する漏斗半部又はタブ又は桶形状を有するのが良い。漏斗半部又はタブの深さは、最も深い箇所で100〜500ミクロンであるのが良い。
【0039】
深い部分の頂部のところで、第1のチャネルは、流体停止部の底部の上方で壁内に開口するのが良い。トリガチャネルは、流体停止部の平坦な隆起区分内に開口するのが良く、その深さは、5ミクロン〜100ミクロン、特に30ミクロン〜70ミクロンであるのが良い。
【0040】
流体停止部の平坦な領域は、デルタの形状をしているのが良く、デルタは、深さ方向において傾斜路である。傾斜路は、流体停止部の深い領域をトリガチャネルの口に連結する。
【0041】
流体停止部は、トリガチャネルによって満たされるのが良い。流体停止部のチャンバ内の流体レベルが第1のチャネルの高さに達するやいなや、流体停止部は、橋渡しされ、リザーバ内に溜められている流体は、第2のチャネル及び出口チャネルを通って流れ去る。
【0042】
リザーバを反応チャンバとして用いることも可能である。このために、例えば混入及び/又は乾燥により試薬をリザーバチャンバ内に沈積させるのが良い。リザーバが満たされている間及び次の滞留時間中、化学的又は生物学的反応が、例えば触媒の使用又は光及び/又は熱の供給によって助長された状態でリザーバ内で起こることができる。
【0043】
リザーバ内における流体の滞留時間は、充填速度及びトリガチャネル中の流体の流れの流量によって決定されるのが良い。リザーバ内における滞留時間又は反応時間は、5秒〜200秒である。
【0044】
トリガチャネル中に流入した流体がここに留まるので、チャネルの高い毛管作用により、トリガチャネルの容積は、リザーバの容積の5%を超えてはならない。
【0045】
リザーバは又、試薬を溶解させるために経時的に一定の体積流量を生じさせる機能を有するのが良い。試薬を流体停止部の下流側でチャネル又は貯蔵チャンバ内に沈積させる。特に粉末形態の試薬により、物質、特に粉末の流れによる流体中の確実な溶解を保証する体積流量を生じさせることが必要である場合が多い。
【0046】
特に、これら粉末状物質では、くっつきが生じる場合があり、それにより、試薬が溶解プロセスを開始させて塊をばらばらにする必要がある。この溶解プロセスは、十分に多量の流体が運搬されることによってのみ達成可能であり、1秒当たり0.1マイクロリットル〜10マイクロリットルの重量が物質、流体の量及び材料の量に基づいて定められる。
【0047】
毛管停止部の幾何学的形態の代わりに且つ/或いはこれに加えて、毛管停止部は、チャネルの疎水性区分によって形成されても良い。このために、第1のチャネルの一部は、疎水性被膜を備えるのが良く、又は、チャネルシステムを親水化する手立てが設けられている場合、チャネルの一区分をこの親水化から排除するのが良い。
【0048】
第1のチャネルを通って流れる水性液の流体インターフェイスは、チャネルの湿潤性がこの時点で急減するので、疎水性領域に進むことがないようになる。疎水性領域は、小さな流体粒子が物理的にくっつくことができる粗い表面を有するのが良い。粒子の付着により、この領域の湿潤性が向上し、その結果、元々疎水性であった領域は、指定された期間内に湿潤され、流体は、停止箇所を越えて流れることができるようになる。
【0049】
また、この湿潤化は化学反応によって、例えばチャネルの疎水性区分を流体成分が結合する試薬で更に被覆することによって引き起こされ又は助長されるのが良く、その結果、湿潤具合は、連続的に増大する。連続湿潤が起こる期間内において、上述した形式のリザーバを満たすのが良い。
【0050】
毛管停止部に打ち勝った後、リザーバ内に中間的に貯蔵されていた量の流体は、次の分析、診断又は試験手順に利用できる。リザーバは、確実に充填したり空にすることが保証されるよう幾何学的に設計されているのが良い。この目的のため、リザーバチャンバは、形態が実質的に球形、漏斗形又は三角形であり、断面が入口領域から広がり又は拡大していることが有利である。この場合、リザーバを満たすと、流体インターフェイスは、連続的に広がる。リザーバは、好ましくは、流体の伝搬フロントに関してその端部が非対称の形状を有する。リザーバの端部は、リザーバを完全に満たしたときに、最後に満たされるリザーバの領域を意味している。これは、特に、側方通気トレンチに隣接して位置する領域である。これにより、インターフェイスの伝搬方向、即ち、流体フロントの流れ方向は、リザーバの充填中、端部領域の方向に、特に、出口チャネル又はトリガチャネルの方向に変わる。その間、リザーバは、完全に満たされ、リザーバ内に存在する空気は、側方トレンチを経て押し退けられるのが有利である。
【0051】
空にする際、プロセスを逆にする。リザーバの流入及び流出領域中のメニスカスの幅の減少は、空にするのを助ける。というのは、インターフェイスが短くなることにより、短くなっている間のエネルギーの放出によって補助圧縮力が及ぼされるからである。
【0052】
次に、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を具体的に説明するが、これは例示であるに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】リザーバ及び流体停止部を備えたマイクロフルイディック装置を示す図である。
【図2】本発明のリザーバの一実施形態の断面図である。
【図3】通気トレンチを備えたリザーバを示す図である。
【図4】バイパストリガ手段を備えたリザーバを示す図である。
【図5】毛管停止部の断面図である。
【図6】リザーバを用いた分析領域中の体積流量を示す図(曲線B(リザーバなし)、曲線A)である。
【図7】隣接のトレンチを備えたマイクロフルイディック装置の入口領域を示す図である。
【図8】入口領域の断面図である。
【図9】流体運搬構造を備えた試薬貯蔵部を示す図である。
【図10】垂直流入方式の分析チャンバを示す図である。
【図11】毛管停止部への連結領域を示す図である。
【図12】三角形リザーバ内における流体フロントの伝搬又は進行状態を示す図である。
【図13】トリガチャネルに設けられた異形部分を有する三角形リザーバ内における流体フロントの伝搬又は進行状態を示す図である。
【図14a】フィードチャネルへの入口領域を示す図である。
【図14b】フィードチャネルへの入口領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
マイクロフルイディック装置(1)は、粒子を分離する器具(3)を備えた入口チャンバ(2)を有する。微孔質メンブレン(3)が、例えば、分離器具又はフィルタとして用いられている。
【0055】
メンブレン材料は、例えばガラス繊維メンブレン、セルロース系メンブレン、ニトロセルロースメンブレン、ナイロンメンブレン又は合成ポリマー材料のような材料の中から選択されるが、材料の混合物を用いても良い。
【0056】
図8は、入口開口部を備えた蓋(21)によって覆われている入口チャンバ(2)を示している。蓋(21)は、基質キャリヤ(7)に固定されている。蓋(21)とキャリヤ(7)との連結は、接着又は結合又は溶接によって得られ、他方、両面接着フィルムも又、連結層として用いることができるのが有利である。
【0057】
有機プラスチック、特に例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、ポリカーボネート及び無機物質、例えばガラス、石英及びセラミックも又、蓋及び基質キャリヤの材料として使用できる。
【0058】
メンブレン(3)は、好ましくは、蓋(21)に設けられている凹部内に固定される。メンブレン(3)は、機能的に、粒子を含む液体、特に血液を濾過するために用いられる。この分離プロセス中、層状流れの流体がメンブレン(3)を通って垂直に流れる。メンブレン(3)は、試薬、例えば、メンブレンファブリックに乾燥付着させた被膜を備えるのが良い。濾過中、特定の量の流体(20)が入口開口部(26)内に送り込まれる。
【0059】
流体(20)は、メンブレン(3)によって吸い込まれ、分離された量の流体がメンブレン(3)を通って流れ、メンブレン(3)は、図8に概略的に示されているように、特に、入口チャンバ(2)のベースと接触状態にあるのが有利である。貫流プロセス中、メンブレン(3)からの試薬が流体中に溶けると共に/或いは試薬が流体中に溶けない場合であっても、液体の流れと一緒に運ばれるのが有利である。
【0060】
その結果、化学的及び/又は生物学的反応プロセス及び/又は物理的輸送プロセス、例えば流体成分のイオン交換又はメンブレン3への結合又は吸着が開始される。
【0061】
メンブレン(3)と入口チャンバ(2)のベースとの接触は、ベースの方向におけるメンブレン(3)の曲げ又は凸形状に起因して生じる。その結果、接触領域におけるベースとメンブレンとのなす僅かな角度が形成されてこの箇所で大きな毛管力が生じ、その結果、流体は、メンブレン(3)から吸い出されて接触隙間中に吸い込まれ、この湿潤の結果、チャンバ(2)を満たすようになる。
【0062】
メンブレン(3)を通る流体の垂直流れを開始させるため、補助手段として、図7に示されているように構造要素(14)に入口チャンバ(2)に設けられた垂直切欠き(15)を提供することも又想定できる。構造要素(14)は、ポスト(柱)であり、ポストの先端部は、第1のチャネル(4)の口領域内に延び、このポストの外面には、多くの垂直切欠き(15)が設けられている。
【0063】
入口チャンバ(2)は、好ましくは円形である。チャンバ(2)は、その側部がトレンチ又は溝(8)によって境界付けられ、トレンチ(8)は、チャンバのベースの高さ位置から200ミクロン〜3ミクロン、特に300〜600ミクロンの深さまで延びている。2つの通気チャネル(9)がトレンチ(8)から枝分かれしており、これら通気チャネルは、マイクロフルイディック装置(1)の外縁に結合されている。変形例として、トレンチ(8)は、1つのベント又は3つ以上のベントを有しても良い。
【0064】
メンブレン(3)は、少なくとも部分的に構造要素(14)に取り付けられ、その結果、メンブレン(3)によって吸い込まれた流体は、幾何学的に垂直切欠き(15)に接触する。切欠き(15)は、その鋭角の開口角度により高い毛管力を発揮するので、流体は、メンブレン(3)から吸い出されて切欠き(15)の毛管隙間中に吸い込まれ、そして、切欠き(15)に沿って入口チャンバ(2)のベースに向かって垂直に流れ、流体は、ここでベースを湿潤させる。
【0065】
入口チャンバ(2)と流体をチャンバ(2)から装置(1)の流体チャネルシステム内に移送する第1のチャネル(4)との間の移行領域(18)は、三角形、デルタ形又は漏斗形の形態のものである。メンブレン(3)からチャンバ(2)内に直接的に且つ/或いは構造要素(14)によって移送された流体は、移行領域(18)を経てフィードチャネル(4)内に流れる。
【0066】
流体の均一な泡なし流入流れは、構造要素(14)がフィードチャネル(4)の三角形入口区分内に突き出てフィードチャネル(4)に対して2つの入口チャネル区分を形成している結果として、構造要素(14)によって助長される。
【0067】
トレンチ(8)は、フィードチャネル(4)の口又は移行領域(58)内で途切れているので、トレンチ(8)の端部領域において、通気トレンチ(8)内への流体の偶発的な放出が生じる恐れが増大する。
【0068】
これを抑制するため、トレンチの端部(16)は、広く又は大きく作られている。
【0069】
図7に示されているように、トレンチの端部(16)は、円形の形態に広げられ又は拡大されている。ただし、他の形状、例えば楕円形も又、採用可能である。移行部は、これらの端部のところが極めて丸くされているべきであるのが有利である。というのは、縁は、上述したようにトレンチ(8)内の偶発的な垂直流れを開始させる場合のある垂直切欠きとして働くからである。広げられた又は拡大された区分の平均直径は、この箇所でのバリヤ効果を増大させるようトレンチの幅の少なくとも1.5〜10倍であることが必要である。
【0070】
図14aに概略的に示されているように、フィードチャネル(4)への移行領域(18)も又、半円形又は蹄鉄形であっても良く、構造要素(14)は、これに適合する形状のものである。移行領域(18)では、メンブレン(3)のアタッチメント(42)が第1のチャネル(4)の入口開口部と実質的に直角に交差する。図14bに概略的に示されているように、入口開口部(26)内に導入された所与の量の流体(20)、特に1滴の流体がメンブレン(3)によって吸い込まれる。濾過された流体、試験流体とメンブレン(3)内に付着している試薬の複合体及び/又は濾過された流体結晶は、次に、第1のチャネル(4)の方向に流れる。特に、メンブレン(3)は、先端部の領域の大きな毛管力の結果としてベース領域の湿潤を助ける鋭角の毛管隙間が形成されるよう少なくとも部分的に入口開口部(26)の下でベース上に載っているのが有利である。頂角、即ち、ベース平面とメンブレン表面とのなす開口角は、1°、2°、3°、5°、10°、15°、20°、25°、30°、35°、40°、45°又は指定された角度の部分角度であるのが有利である。メンブレン(3)のアタッチメント(42)の実現は、蓋要素(21)に設けられている凹部(41)内で行なわれ、メンブレンは、接着、積層、溶接又は他の手段によって凹部(41)内に固定される。図14bに示されているように、メンブレン(3)の下の領域は、当初、均一に湿潤される。凹部の領域では、均一の3次元湿潤は、断面の拡大及び/又はアタッチメント(42)の湿潤特性の変更により止まるようになることが起こり得る。この場合、流体の2次元流れが生じ、流量が減少した状態でベース及びチャンバ及び/又はチャネルの壁の部分湿潤が生じる。可能な流量を達成するため、流体を運搬する構造(4,5,6,12)の均一の3次元湿潤は、再び確立されるのが有利である。この目的のため、入口開口部(26)の下流側に1つ又は2つ以上の垂直流れ運搬構造要素(15)、特に切欠きが設けられている。垂直流体運搬構造要素により、図14bに概略的に示されているように底部と頂部との間に垂直流れが生じ、3次元湿潤が達成される。構造要素(15)は、ベースと頂部との間に一様に延びる切欠き及び/又はピラーであるのが良く、これら構造要素は、高い毛管作用の垂直毛管隙間が形成されるよう互いに対して配置されている。特に好ましくは、垂直切欠き(15)は、アタッチメントの下流側で構造要素の外面に設けられている。代替的に又は追加的に、切欠き(15)又はこの種の垂直運搬要素(15)を移行領域(18)の壁面に設けることも可能である。また、構造要素及び/又は基質キャリヤを親水性材料で作ると共に/或いは流体運搬構造の表面に親水性被膜を被着させることが可能であるのが有利である。
【0071】
流体又は流体混合物は、移行領域から、以下フィードチャネル(4)ともいう第1のチャネル(4)内に流入する。フィードチャネル(4)を通って運び去られた流体は、図1で理解できるように流体停止部(10)まで流れる。流体停止部(10)は、好ましくは、流体がリザーバ(6)を満たすことができるよう流体のための時間制約型停止領域として具体化される。
【0072】
メンブレン(3)を用いた濾過中、メンブレン(3)を通る体積流量は、メンブレンの細孔及びチャネルが閉塞状態になるので濾過中、減少する。流量が連続的に減少した状態におけるフィードチャネル(4)内のフィルタ流量の時間関数は、図4の曲線Aから推定できる。メンブレンへの20μl流体の追加後における開始時における流体体積流量が依然として1秒当たり〜0.2マイクロリットルである場合、この値は、約30秒後に、1秒当たり0.05〜0.02マイクロリットルまで減少する。しかしながら、分解プロセスでは、例えば検出反応に必要な物質の確実な溶解を保証するためには、通常、特定の体積流量が必要である。
【0073】
図10は、マイクロフルイディック装置(1)の分析領域の断面図である。フィードチャネル(4)に流体結合されている出口チャネル(17)内には、切欠き(15)を備えた構造要素(14)の端部が配置されている。構造要素(14)、この場合ピラーは、蓋(21)に設けられている垂直貫流開口部(22)内に付き出ている。貫流開口部(22)は、環状に外側領域中の試薬物質(23)で満たされる。また、変形例として、貫流開口部に所定の充填レベルまで試薬物質を充填しても良い。また、変形例として、試薬を壁に環状の形態で付着させても良く且つ/或いは分析チャンバ(25)の天井に円板の形態で付着させても良く且つ/或いは第2のチャネル内に沈積させても良い。
【0074】
図9は、貫流開口部(22)の平面図であり、試薬(23)が貫流開口部内に入れられ、ピラー(14)が試薬(23)中に浸漬されている。ピラー(14)の切欠き(15)は、垂直流れを生じさせ、又、この垂直流れにより、流れが重力の方向とは逆の方向に生じることができる。ピラーの壁は、これ又垂直流れを助ける試薬(23)の物質の入った毛管隙間を包囲している。試薬は、好ましくは、多孔質コンシステンシーを有し、したがって、垂直方向上方に流れる流体は、試薬物質をぬらし、これに染み込み、そしてこれを体積流量の流体中に溶かすようになる。
【0075】
溶解状態の流体は、図10に示されているように分析チャンバ(25)内に流れる。流体と試薬の混合物は、チャンバ(25)を満たす。次に流体/試薬混合物の性質を検出器(24)の使用により求めることができる。試薬を溶解させるのに必要な流体の最小限の体積流量は、1秒当たり0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.1、0.2、1、2、5、10、20、50、100マイクロリットル又はこれらの倍数又は分数である。滴状追加により血漿の性質を検出する分析システムでは、1秒当たり0.01〜0.05マイクロリットルの流体の体積流量が用いられる。
【0076】
図1の実施形態1では、リザーバ(6)を先ず最初に分離された流体で満たす必要があり、次に、リザーバ(6)を一定の体積流量で空にすることが想定されるのが有利である。リザーバ(6)を所定量の流体で満たすため、流体停止部(10)が第1のチャネル(4)又はフィードチャネル(4)の輸送経路に沿って配置されている。
【0077】
流体停止部(10)は、流体が指定された期間で又はリザーバ(6)を完全に充填する充填時間で前に流れるのを阻止する。リザーバ(6)は、第2のチャネル(5)を用いて充填され、第2のチャネル(5)は、リザーバのチャンバに向かって広がっている。第2のチャネル(5)は、第1のチャネル(4)から枝分かれしており、この枝分かれは、流体停止部(10)の上流側で起こる。変形例として、第2のチャネル(5)は、第1のチャネル(4)を流体停止部(図11)に結合する領域で終端しても良く、或いは、別の実施形態(図示せず)では、第2のチャネルも又枝分かれさせても良く、一方の枝チャネルは、第1のチャネル(4)に連結され結合され、第2の枝チャネルは、流体停止部(10)に結合される。流体停止部(10)に関するリザーバ(6)への第2のチャネル(5)又は流入チャネルのこれら構成に共通の特徴は、短い流路がリザーバ(6)と流体停止部(10)との間に作られていることである。
【0078】
リザーバ(6)は、反応チャンバとしても使用できる。この目的のため、試薬、例えば粉末又は乾燥試験物質をリザーバ(6)内に沈積させるのが良い。
【0079】
リザーバチャンバ(6)の容積は、チャンバが追加される流体の量の50%以上を収容することができるようなものである。可能な限り最も大きなリザーバ容積を提供するために、チャンバ(6)の深さが図2に示されているようにリザーバチャネル(5)又は第2のチャネル(5)から始まって、図1のA‐A線断面に沿って増大することが想定されるのが有利である。リザーバ(6)の深さは、段階的に増大するのが良く又は傾斜路状の幾何学的形状で増大しても良い。深さの変化は又、リザーバ(6)の部分領域、特に第2のチャネル(5)の口のところでのリザーバ(6)への入口領域に限定されても良い。
【0080】
リザーバは、血液の液滴のために用いられる場合、0.1マイクロリットル〜1000マイクロリットル又は1マイクロリットル〜10マイクロリットルの容積を有するのが有利である。リザーバ(6)の容積は、リザーバが反応チャンバとして用いられる場合、所望量の反応混合物に対応する。
【0081】
流体は、毛管力又は外部流体圧力の結果としてリザーバチャンバ(6)を満たす。例えば、遠心分離又は外部静圧によって外部圧力が及ぼされる。リザーバ(6)のチャンバは、流体の一様な分布を生じさせるよう構造要素(14)を有するのが良い。リザーバの深さは、好ましくは、5ミクロン〜1000ミクロン、特に好ましくは100ミクロン〜400ミクロンである。
【0082】
流体停止部(10)は、いわゆる時間バリヤ、即ち時間ゲートとして構成されるのが良く、停止時間中、リザーバは、少なくとも部分的に満たされる。反応プロセスでは、反応は、停止時間中に起こる。例えば、チャネルの疎水性区分によって時間ゲートが作られる。疎水性区分中の流体の停止は、水溶液が疎水性チャネル区分を濡らすことができず、これを通り越すことができないということに基づいている。
【0083】
プラスチック材料、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、PTFE又はシリコーンが疎水性表面を形成する。また、疎水性表面は、被膜、特にナノコーティングを用いて達成できる。さらに、表面のナノ構造化も又、特に、UVレーザによる照射によって実施でき、それにより、レーザ切断によって作られた表面には規定された湿潤特性を備えた構造が与えられる。流体停止部(10)は、その表面に疎水性領域と親水性領域の両方を有するのが有利である。
【0084】
上述した材料のうちの1つから成る基質(7)では、チャネルの疎水性区分を得るために、チャンバ及びチャネルの構造(2;8;9;4;5;6)が基質中に形成される。この場合、フィードチャネル(4)の側壁及びベースは、疎水性である。蓋(21)には親水性材料が用いられ、したがって、チャネルの頂部は、親水性である。変形例として、チャネル及びチャンバは、被覆、例えば吹き付けによって疎水性又は親水性にされても良い。
【0085】
時間ゲートは、流体からの成分を疎水性表面に被着させることにより親水性に作られる。
【0086】
流体停止部(10)の親水化をリザーバ(6)の充填プロセスと組み合わせるのが良い。このために、親水化試薬(23)がリザーバ(6)内に設けられ、これら試薬は、流入流体によって溶解されて拡散により流体停止部(10)中に流れる。流体停止部(10)の停止時間は、親水化物質の量又は濃度で決まる。
【0087】
流体停止部(10)がいったん除かれると、リザーバ(6)のチャンバの内容物は、出口チャネル(17)内に自由に流れることができる。
【0088】
リザーバ(6)は、チャンバの少なくとも一方の側部がトレンチ(8)によって境界付けられ、トレンチ(8)は、図3に示されているように通気チャネル(9)に結合されているのが有利である。これにより、リザーバ(6)を空気がトレンチ(8)及びベント(9)を経て押し退けられているときに連続的に充填できる。図4の別の実施形態では、リザーバ(6)は、実質的に三角形の表面を備えた状態で提供され、入口チャネル又は第2のチャネル(5)と幾何学的に反対側の表面の側部は、トレンチ(8)によって境界付けられる。
【0089】
チャネル(5)に隣接して位置する表面の側部は、壁を有し、壁の経路は、図4に示されているように曲率を有する。
【0090】
リザーバ(6)を満たしているとき、流体は、チャンバ(6)内で伝搬する。矢印で示されたフロントの流れ方向(11)は、そのチャンバの幾何学的形状によって定められ、流体の表面張力は、インターフェイスの長さを最小限に抑える。
【0091】
図12は、第2のチャネル(5)によって流体が供給される実質的に三角形のリザーバ(6)を示している。リザーバ(6)を満たすと、インターフェイスは、流れ方向(R1,R2)に沿ってリザーバ内に動く。流入領域に隣接して位置するリザーバ(6)の側面が互いに90°未満の角度をなすと共にトレンチが流入領域と反対側の側面に隣接して設けられていることにより、リザーバは、完全に満たされるようになる。
【0092】
充填中、流体/ガスインターフェイスは、先ず最初に、トレンチ(8)の縁に達するまで方向R1に動く。リザーバ(6)内に入っているガス、特に空気は、トレンチ(8)及びベント(9)を経て外方に押しやられる。流体フロントが引き続き進行すると、トレンチの縁は、今や、以下に説明するように追加のインターフェイスを形成する。
【0093】
リザーバ(6)内のインターフェイスの部分領域、即ち、リザーバ(6)内の流体フロントは、今や、その流れ方向を変える。リザーバ(6)の側面及びトレンチは、リザーバの充填が実質的に完了すると、流体の流れ方向が枝チャネル(12)又はトリガチャネル(12)の入口領域の方向に向くよう互いに対して配置されている。
【0094】
図13は、本発明のリザーバ(6)の変形実施形態を示している。この実施形態においても、リザーバ(6)の完全充填は、流体フロントの流れ方向(R1,R2)が充填中、変わることによって達成される。図13に示されている実施形態では、これは、リザーバに設けられている凹み(45)によって達成され、それにより、インターフェイスは、トレンチ(8)と強調して回転する。図13に概略的に示されているように、流体フロントは、先ず最初に、漏斗形リザーバ(6)内に実質的に垂直方向に移動し、次に、凹み(45)により、フロントは、リザーバ(6)内で変向する。
【0095】
リザーバが完全に充填されたときに最後に充填される領域に隣接して、トリガチャネル(12)がリザーバ(6)から枝分かれしてリザーバ(6)のための出口チャネル(17)を形成し、流体停止部(10)に流体結合される。リザーバの底部よりも特に2〜10倍深いので、トレンチ(8)を湿潤させることはできず、その結果、インターフェイスの一端は、トレンチの縁のところで停止し、次に、トリガチャネル(12)に向かって移動するようになる。リザーバ(6)のこの幾何学的形態により、リザーバ(6)は、気泡なしの状態で充填される。
【0096】
実施形態の流体停止部(10)は、毛管停止部(10)である。フィードチャネル(4)又は第1のチャネル(4)、トリガチャネル(12)及び出口チャネル(17)は、毛管停止部(10)に連結されている。毛管停止部(10)の動作は、チャネルの断面の急増に基づいている。毛管停止部(10)は、図4のB‐B線矢視断面で図5に示されている。
【0097】
毛管停止部は、その深さが変化している。毛管停止部(10)の最も深い部分では、フィードチャネル(4)は、基質キャリヤ(7)の頂部で停止部(10)内に開口している。図5から理解できるように、半径円形チャネル(4)、毛管停止部(10)のチャネル入口(13)の段部又は縁部は、トレンチの縁部のように働く。チャネル(4)の縁部の距離が毛管停止部(10)の深さと比較して大きいので、フィールドチャネル(4)で運ばれる流体は、停止部(10)の容積部を湿潤することができない。しかしながら、湿潤がトリガチャネル(12)を通って起こる結果として、毛管停止部(10)に打ち勝つことができる。
【0098】
トリガチャネル(12)によってリザーバ(6)を通って運ばれる流体は、流体停止部(10)の端部領域内に運び込まれ、この端部領域は、その深さがトリガチャネル(12)の深さに一致している。トリガチャネル(12)内の水性液は、流体停止部(10)の端部領域を湿潤させて図5に示されている傾斜路に沿って流体停止部(10)内に流れ込み、そしてこの流体停止部を満たすことができる。トリガチャネル(12)から毛管停止部(10)内への流体の流れを助けるため、構造要素(14)、例えばピラー又はポストを5〜50ミクロンの間隔を置くと共に10〜300ミクロンの高さに且つ10〜200ミクロンの直径で毛管停止部の傾斜面、底面及び側面に設けるのが良い。また、一実施形態では、壁とベースの間並びに壁及びベースに切欠き、テラス、段部又は鋭利な衝撃エッジを用いることが可能であるのが有利である。
【0099】
毛管停止部(10)中のトリガチャネル(12)を通って流れている流体フロントがフィードチャネル(4)のベースの高さに達すると、フィードチャネル(4)中の液体は、停止部(10)内の液体と合流する。次に、毛管停止部(10)が除かれ、流体は、出口チャネル(17)を通って流れ去る。トリガチャネル(12)は、リザーバ(6)よりも高い毛管作用を発揮する。これにより、トリガチャネル(12)及び毛管停止部(10)が充填されるようになる。
【0100】
トリガチャネル(12)は、100〜200ミクロンの深さ及び20〜300ミクロンの幅を有する。トリガチャネルは、断面が実質的に長方形であり、特にタブ形若しくは半円形であり、或いは、形状がほぼ三角形である。トリガチャネル(12)の高い毛管作用のために、毛管停止部(10)の充填後、チャネル(12)内に依然として幾分かの流体が存在する。
【0101】
流体チャネル(12)のチャネル容積は、流体のこの失われる量に鑑みて、リザーバ容積の5%未満、特に1%未満であることが必要である。10マイクロリットルのリザーバ容積サイズでは、バイパス(12)の容積は、0.5マイクロリットル未満、特に0.1マイクロリットル未満であるべきである。
【0102】
毛管停止部は、200〜2000ミクロンの長さ及び10〜500ミクロンの深さを有する。
【0103】
傾斜路が毛管停止部(10)に設けられていると共に段部がフィードチャネル(4)のところに設けられているので、毛管停止部(10)中の深さは、広い範囲にわたって変化している。最大深さ、即ち、フィードチャネル(4)の入口の下のベースの深さは、200〜500ミクロンである。これにより、少なくとも100ミクロン〜500ミクロンの段差がフィードチャネル(4)の底部と毛管停止部(10)の底部との間に形成されるようになる。
【0104】
毛管停止部(10)の深さが出口チャネル(17)の深さを上回っているので、残留量の流体が毛管停止部(10)内に残る。毛管停止部に続く流体構造の毛管作用に応じて、即ち、次の流体運搬構造の毛管力がかかる流体運搬構造を空にする程ではない場合、毛管停止部(10)は又、完全満杯状態のままである場合がある。流体のこの失われる量を減少させるため、毛管停止部(10)の容積は、リザーバ容積の10%未満、特に2%未満であることが必要である。
【0105】
リザーバ(6)の容積が10マイクロリットルである場合、毛管停止部の容積は、1マイクロリットル未満、特に0.2マイクロリットル未満であることが必要である。毛管停止部に打ち勝った後に毛管停止部が多くとも50%まで空にするので、上述の例では、0.5マイクロリットル、好ましくは特に0.1マイクロリットルの流体が、毛管停止部(10)内の失われる量として残る。
【0106】
毛管停止部(10)をトリガチャネル(12)からの流体によって短絡させ又はこれに打ち勝つやいなや、リザーバ(6)内の流体又は血漿は、供給チャネル(5)、毛管停止部(10)及び出口チャネル(17)を経て流れ去る。流体は、次に、物質又は試薬チャンバ及び/又は試薬沈積物中に流れ又はこれを通って流れ、この中に沈積している化学物質を溶解させる。特定の溶解プロセスの場合、規定されると共に実質的に一定の体積流量の流体を提供することが必要である。図6は、図4の毛管停止部(10)の橋渡し後における出口チャネル(17)中の体積流量を曲線Bで示している。特定の期間にわたり実質的に一定体積流量の流体又は血漿が生じることは明らかである。
【0107】
図6の例示の曲線Aでは、時刻t=0での20マイクロリットルの血液の追加後、入口チャンバから出る体積流量は、30秒後に、この時点では1秒当たり0.1マイクロリットルを超えていた体積流量から1秒当たり約0.05マイクロリットルに減少したことは明らかである。曲線Aは、フィードチャネル(5)中の流量を測定することによって得られている。
【0108】
容積が5マイクロリットルのリザーバ(6)は、約40〜60秒後に満杯である。さらにほぼ5〜30秒後、毛管停止部(10)は、満杯であり、短絡される。
【0109】
次に、流体の流れは、曲線Bに示されているように出口チャネル(17)内で始まる。これは、曲線Aの体積流量の2〜50倍の場合がある。というのは、体積流量は、濾過プロセスによって妨げられることがないからである。曲線Bによれば、リザーバ(6)を空にした後の体積流量は、1秒当たり約0.5マイクロリットルであり、経時的に僅かに減少する。チャネル(17)内のこの流出流れは、リザーバ(6)及びフィードチャネル(4)から送られる。
【0110】
リザーバ内に入っている量で決まる期間後、この場合、約10秒後、リザーバ(6)は、再び完全に空になり、その結果、出口チャネル(17)中の体積流量は、入口チャンバ(2)及びフィードチャネル(4)から供給される供給流れまで減少するようになる。
【0111】
リザーバ(6)を5秒〜100秒の期間をかけて満たした後における出口チャネル(17)及び/又は次の物質貯蔵部及び/又は次の反応チャンバ内の体積流量は、1秒当たり0.05マイクロリットルから1秒当たり最高10マイクロリットルまでの一定の値を取るのが有利である。
【0112】
1滴の血液を用いる場合、即ち、濾過されるべき量が5マイクロリットルから20マイクロリットルである場合、リザーバを空にしている間における濾過血漿の体積流量は、1秒当たり0.1マイクロリットルから1秒当たり最高2マイクロリットルまでの一定の体積流量で5秒から30秒を超える期間にわたり生じるべきである。
【0113】
体積流量に関する一定の値という表現は、指定された時間間隔における分量の値の変換が30%以下であることを意味している。
【符号の説明】
【0114】
1 マイクロフルイディック装置
2 入口チャンバ
3 メンブレン
4 第1のチャネル
5 第2のチャネル
6 リザーバ
7 基質キャリヤ
8 トレンチ
9 通気部
10 流体停止部
11 流れ方向
12 トリガチャネル
13 チャネル入口
14 構造要素
15 垂直流体要素
16 トレンチの拡大端部
17 出口チャネル
18 移行領域
20 流体
21 蓋
22 垂直貫流開口部
23 試薬
24 検出器
25 分析チャンバ
26 入口開口部
41 凹部
42 アタッチメント
45 凹み
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経時的に一定の体積流量を生じさせるマイクロフルイディック装置(1)であって、
粒子を流体血漿から分離する器具(3)と、前記分離後に前記流体を運び去る第1のチャネル(4)とを有し、前記第1のチャネル(4)は、流体停止部(10)内に開口し、前記流体停止部(10)は、前記流体の流れを間欠的に停止させるよう構成され、前記流体停止部(10)の上流側で且つこれに隣接して、第2のチャネル(5)が前記第1のチャネル(4)から枝分かれし、前記第2のチャネル(5)は、リザーバ(6)への連結部を形成している、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記リザーバ(6)は、チャンバであり、該チャンバの入口断面は、前記第2のチャネル(5)の断面とほぼ同じであり、前記チャンバの前記断面は、前記入口断面の少なくとも5倍まで広がっている、
請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記リザーバチャンバ(6)は、0.1〜50マイクロリットル、特に0.5〜5マイクロリットルの容積を有する、
請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記リザーバ(6)の深さは、前記第1のチャンバ(4)の深さの1.2〜5倍である、
請求項1記載の装置。
【請求項5】
段部が前記リザーバ(6)の入口領域に形成され、互いに異なる段部深さによってテラスが形成されている、
請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記リザーバ(6)の入口領域に傾斜路が設けられている、
請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記リザーバは、側方がトレンチ(8)により境界付けられている、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記トレンチ(8)は、前記リザーバ(6)のためのベント(9)を形成している、
請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記リザーバ(6)内における前記流体の流れ方向の前記トレンチの1つの縁とのなす角度は、前記リザーバ(6)の充填中、前記流体インターフェイスが前記トレンチの前記縁に沿って進行するよう70°未満である、
請求項7又は8記載の装置。
【請求項10】
第3のチャネル(12)、特にトリガチャネル(12)が前記リザーバ(6)から見て下流側で枝分かれしており、前記チャネル(12)は、前記リザーバ(6)と前記流体停止部(10)との間に流体結合部を形成している、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記トリガチャネル(12)は、前記トリガチャネル(12)の毛管作用効果が比較のうえで大きいように前記リザーバ(6)よりも小さな断面を有する、
請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記トリガチャネル(12)のチャネル容積は、前記リザーバ容積の多くとも5%、特に0.02〜0.2マイクロリットルである、
請求項10記載の装置。
【請求項13】
前記流体停止部(10)は、前記チャネル又は前記チャンバ内に設けられていて、疎水性材料から成る領域によって形成され、前記疎水性材料の湿潤により、前記流体停止部(10)は、化学的及び/又は物理的反応器によって親水性になり、その結果、前記流体停止部(16)は、所与の時間遅延後に前記反応によって除かれるように構成されている、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記流体停止部(10)の表面は、粗く、その結果、流体成分は、前記表面に物理的に付着することができ、その結果、親水性湿潤が起こることができるように構成されている、
請求項13記載の装置。
【請求項15】
親水化が、前記流体停止部(10)中の基質又はリガンドへの流体成分の化学的結合によって起こることができる、
請求項13記載の装置。
【請求項16】
前記第1のチャネル(4)の口領域における前記流体停止部(10)の深さは、毛管停止部(10)が形成されるよう前記チャネルの深さよりも大きい、
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記毛管停止部(10)の深さは、前記第1のチャネル(4)の深さの少なくとも2倍である、
請求項16記載の装置。
【請求項18】
前記毛管停止部(10)の深さは、0.1〜1ミリメートル、特に0.2ミリメートル〜0.5ミリメートルである、
請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記トリガチャネル(12)に隣接した領域における前記毛管停止部(10)の深さは、前記トリガチャネル(12)の深さに一致し、前記毛管停止部(10)の深さは、前記第1のチャネル(4)の前記口領域まで連続して増大している、
請求項16記載の装置。
【請求項20】
血漿分離装置であって、入口チャンバ(2)と、前記チャンバ(2)を入口開口部から分離するよう配置されたメンブレン(3)とを有し、前記入口チャンバ(2)は、少なくとも部分的にトレンチ(8)によって包囲され、チャネル(4)が前記チャンバに流体結合されている、装置において、前記チャンバ(2)と前記チャネル(4)との流体結合は、漏斗形要素(13)によって形成されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項21】
前記漏斗形要素(13)の円錐形領域に構造要素(14)が設けられ、該構造要素は、前記漏斗形要素(13)中への流体の運搬を助けるよう構成されている、
請求項20記載の装置。
【請求項22】
前記構造要素(14)は、ピラー又はポストであり、複数本のピラー又はポストが互いに1ミクロン〜1000ミクロン、好ましくは20ミクロン〜200ミクロンの間隔を置いて配置されている、
請求項21記載の装置。
【請求項23】
前記構造要素(14)の一部は、前記チャンバ内に延びている、
請求項21記載の装置。
【請求項24】
前記構造要素(14)は、切欠き(15)を有する、
請求項20ないし23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
血漿分離装置であって、入口チャンバ(2)と、前記チャンバ(2)を入口開口部から分離するメンブレン(3)とを有し、前記入口チャンバは、少なくとも部分的にトレンチ(8)により包囲され、チャネル(4)が前記チャンバに流体結合されている、装置において、前記トレンチの一端部(16)は、前記トレンチの前記一端部(16)の毛管バリヤ作用効果が増大するよう拡大した断面を有する、
ことを特徴とする装置。
【請求項26】
前記トレンチ(8)は、通気チャネル(9)に結合されている、
請求項25記載の装置。
【請求項27】
前記トレンチ(8)は、100ミクロン〜1000ミクロンの幅及び200ミクロン〜1000ミクロンの深さを有する、
請求項25又は26記載の装置。
【請求項28】
流体を計量する方法であって、流体がマイクロフルイディック装置(1)の入口開口部(2)内に送り込まれ、粒子又は分子化合物がメンブレン要素(3)によって前記流体から分離され、前記流体がチャネル(5)を経て流体リザーバ(6)内に流入して少なくとも部分的に前記チャネルを満たす方法において、
前記リザーバ(6)を空にすることは、一定の体積流量が1秒当たり0.05マイクロリットルから1秒当たり10マイクロリットルまでの値を持つ状態で行なわれる、
ことを特徴とする方法。
【請求項29】
前記一定の体積流量は、5秒〜10秒の期間にわたり維持される、
請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記リザーバ(6)は、50パーセント〜100パーセントのレベルまで充填される、
請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記装置中の流体の流れは、前記リザーバ(6)内の所与の充填レベルに達するまで毛管停止部(10)によって止められる、
請求項28又は30記載の方法。
【請求項32】
所与の充填レベルに達した後、前記流体は、前記リザーバ(6)から流出してチャネル(12)内に流入し、そして前記チャネル(12)を通って流れて毛管停止部(10)を満たし、それにより前記毛管停止部を開く、
請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記流体のフロントのインターフェイスは、前記リザーバ(6)の充填中、連続的に広がり、前記リザーバの充填中、前記流体フロントの流れ方向は、出口チャネル(12)の方向に変わり、前記リザーバ(6)を空にしている間、前記インターフェイスは、サイズが連続的に減少する、
請求項28又は29記載の方法。
【請求項34】
前記メンブレン要素(3)を通る流量は、濾過中、常時減少し、前記流体の導入後の1秒〜30秒の期間にわたり、前記メンブレン(3)を通る体積流量は、元の体積流量と比較して50%以上減少する、
請求項28又は29記載の方法。
【請求項35】
前記流体は、チャンバ(23)内にあけられ、該チャンバ(23)は、前記流体の垂直案内を可能にする構造を有し、前記流体の流れは、重力の方向とは逆に流れることができる、
請求項28又は29記載の方法。
【請求項36】
前記流れ経路内に設けられた試薬が前記リザーバ(6)から流出している前記流体によって溶かされる、
請求項28又は29記載の方法。
【請求項1】
経時的に一定の体積流量を生じさせるマイクロフルイディック装置(1)であって、
粒子を流体血漿から分離する器具(3)と、前記分離後に前記流体を運び去る第1のチャネル(4)とを有し、前記第1のチャネル(4)は、流体停止部(10)内に開口し、前記流体停止部(10)は、前記流体の流れを間欠的に停止させるよう構成され、前記流体停止部(10)の上流側で且つこれに隣接して、第2のチャネル(5)が前記第1のチャネル(4)から枝分かれし、前記第2のチャネル(5)は、リザーバ(6)への連結部を形成している、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記リザーバ(6)は、チャンバであり、該チャンバの入口断面は、前記第2のチャネル(5)の断面とほぼ同じであり、前記チャンバの前記断面は、前記入口断面の少なくとも5倍まで広がっている、
請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記リザーバチャンバ(6)は、0.1〜50マイクロリットル、特に0.5〜5マイクロリットルの容積を有する、
請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記リザーバ(6)の深さは、前記第1のチャンバ(4)の深さの1.2〜5倍である、
請求項1記載の装置。
【請求項5】
段部が前記リザーバ(6)の入口領域に形成され、互いに異なる段部深さによってテラスが形成されている、
請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記リザーバ(6)の入口領域に傾斜路が設けられている、
請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記リザーバは、側方がトレンチ(8)により境界付けられている、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記トレンチ(8)は、前記リザーバ(6)のためのベント(9)を形成している、
請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記リザーバ(6)内における前記流体の流れ方向の前記トレンチの1つの縁とのなす角度は、前記リザーバ(6)の充填中、前記流体インターフェイスが前記トレンチの前記縁に沿って進行するよう70°未満である、
請求項7又は8記載の装置。
【請求項10】
第3のチャネル(12)、特にトリガチャネル(12)が前記リザーバ(6)から見て下流側で枝分かれしており、前記チャネル(12)は、前記リザーバ(6)と前記流体停止部(10)との間に流体結合部を形成している、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記トリガチャネル(12)は、前記トリガチャネル(12)の毛管作用効果が比較のうえで大きいように前記リザーバ(6)よりも小さな断面を有する、
請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記トリガチャネル(12)のチャネル容積は、前記リザーバ容積の多くとも5%、特に0.02〜0.2マイクロリットルである、
請求項10記載の装置。
【請求項13】
前記流体停止部(10)は、前記チャネル又は前記チャンバ内に設けられていて、疎水性材料から成る領域によって形成され、前記疎水性材料の湿潤により、前記流体停止部(10)は、化学的及び/又は物理的反応器によって親水性になり、その結果、前記流体停止部(16)は、所与の時間遅延後に前記反応によって除かれるように構成されている、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記流体停止部(10)の表面は、粗く、その結果、流体成分は、前記表面に物理的に付着することができ、その結果、親水性湿潤が起こることができるように構成されている、
請求項13記載の装置。
【請求項15】
親水化が、前記流体停止部(10)中の基質又はリガンドへの流体成分の化学的結合によって起こることができる、
請求項13記載の装置。
【請求項16】
前記第1のチャネル(4)の口領域における前記流体停止部(10)の深さは、毛管停止部(10)が形成されるよう前記チャネルの深さよりも大きい、
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記毛管停止部(10)の深さは、前記第1のチャネル(4)の深さの少なくとも2倍である、
請求項16記載の装置。
【請求項18】
前記毛管停止部(10)の深さは、0.1〜1ミリメートル、特に0.2ミリメートル〜0.5ミリメートルである、
請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記トリガチャネル(12)に隣接した領域における前記毛管停止部(10)の深さは、前記トリガチャネル(12)の深さに一致し、前記毛管停止部(10)の深さは、前記第1のチャネル(4)の前記口領域まで連続して増大している、
請求項16記載の装置。
【請求項20】
血漿分離装置であって、入口チャンバ(2)と、前記チャンバ(2)を入口開口部から分離するよう配置されたメンブレン(3)とを有し、前記入口チャンバ(2)は、少なくとも部分的にトレンチ(8)によって包囲され、チャネル(4)が前記チャンバに流体結合されている、装置において、前記チャンバ(2)と前記チャネル(4)との流体結合は、漏斗形要素(13)によって形成されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項21】
前記漏斗形要素(13)の円錐形領域に構造要素(14)が設けられ、該構造要素は、前記漏斗形要素(13)中への流体の運搬を助けるよう構成されている、
請求項20記載の装置。
【請求項22】
前記構造要素(14)は、ピラー又はポストであり、複数本のピラー又はポストが互いに1ミクロン〜1000ミクロン、好ましくは20ミクロン〜200ミクロンの間隔を置いて配置されている、
請求項21記載の装置。
【請求項23】
前記構造要素(14)の一部は、前記チャンバ内に延びている、
請求項21記載の装置。
【請求項24】
前記構造要素(14)は、切欠き(15)を有する、
請求項20ないし23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
血漿分離装置であって、入口チャンバ(2)と、前記チャンバ(2)を入口開口部から分離するメンブレン(3)とを有し、前記入口チャンバは、少なくとも部分的にトレンチ(8)により包囲され、チャネル(4)が前記チャンバに流体結合されている、装置において、前記トレンチの一端部(16)は、前記トレンチの前記一端部(16)の毛管バリヤ作用効果が増大するよう拡大した断面を有する、
ことを特徴とする装置。
【請求項26】
前記トレンチ(8)は、通気チャネル(9)に結合されている、
請求項25記載の装置。
【請求項27】
前記トレンチ(8)は、100ミクロン〜1000ミクロンの幅及び200ミクロン〜1000ミクロンの深さを有する、
請求項25又は26記載の装置。
【請求項28】
流体を計量する方法であって、流体がマイクロフルイディック装置(1)の入口開口部(2)内に送り込まれ、粒子又は分子化合物がメンブレン要素(3)によって前記流体から分離され、前記流体がチャネル(5)を経て流体リザーバ(6)内に流入して少なくとも部分的に前記チャネルを満たす方法において、
前記リザーバ(6)を空にすることは、一定の体積流量が1秒当たり0.05マイクロリットルから1秒当たり10マイクロリットルまでの値を持つ状態で行なわれる、
ことを特徴とする方法。
【請求項29】
前記一定の体積流量は、5秒〜10秒の期間にわたり維持される、
請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記リザーバ(6)は、50パーセント〜100パーセントのレベルまで充填される、
請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記装置中の流体の流れは、前記リザーバ(6)内の所与の充填レベルに達するまで毛管停止部(10)によって止められる、
請求項28又は30記載の方法。
【請求項32】
所与の充填レベルに達した後、前記流体は、前記リザーバ(6)から流出してチャネル(12)内に流入し、そして前記チャネル(12)を通って流れて毛管停止部(10)を満たし、それにより前記毛管停止部を開く、
請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記流体のフロントのインターフェイスは、前記リザーバ(6)の充填中、連続的に広がり、前記リザーバの充填中、前記流体フロントの流れ方向は、出口チャネル(12)の方向に変わり、前記リザーバ(6)を空にしている間、前記インターフェイスは、サイズが連続的に減少する、
請求項28又は29記載の方法。
【請求項34】
前記メンブレン要素(3)を通る流量は、濾過中、常時減少し、前記流体の導入後の1秒〜30秒の期間にわたり、前記メンブレン(3)を通る体積流量は、元の体積流量と比較して50%以上減少する、
請求項28又は29記載の方法。
【請求項35】
前記流体は、チャンバ(23)内にあけられ、該チャンバ(23)は、前記流体の垂直案内を可能にする構造を有し、前記流体の流れは、重力の方向とは逆に流れることができる、
請求項28又は29記載の方法。
【請求項36】
前記流れ経路内に設けられた試薬が前記リザーバ(6)から流出している前記流体によって溶かされる、
請求項28又は29記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14a】
【図14b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14a】
【図14b】
【公表番号】特表2012−532327(P2012−532327A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518854(P2012−518854)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058019
【国際公開番号】WO2011/003689
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(503277020)ベーリンガー インゲルハイム マイクロパーツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (17)
【氏名又は名称原語表記】Boehringer Ingelheim microParts GmbH
【住所又は居所原語表記】Hauert 7,D−44227 Dortmund,Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058019
【国際公開番号】WO2011/003689
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(503277020)ベーリンガー インゲルハイム マイクロパーツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (17)
【氏名又は名称原語表記】Boehringer Ingelheim microParts GmbH
【住所又は居所原語表記】Hauert 7,D−44227 Dortmund,Germany
【Fターム(参考)】
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