説明

血管予形成デバイスおよび関連する方法

本発明は、生物活性物質を、それを必要とする対象に提供するための埋め込み可能なデバイスを提供し、このデバイスは、生物活性物質を産生可能な1種または複数の細胞をカプセル化している生体適合性の半透性ポーチと接触している、微小血管構造体を備える。本発明は、この埋め込み可能なデバイスを使用して、対象における疾患を治療または予防する方法も提供する。本発明は、対象の糖尿病を治療または予防する特別の方法も提供し、この方法は、治療有効量のインスリンを産生可能な1種または複数の細胞をカプセル化している生体適合性の半透性ポーチと接触している微小血管構造体を備えた免疫隔離デバイスを対象に埋め込む段階を含む。改変された組織を含む組織に血管を形成させる、および血管を再形成させる方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、その全体を本明細書に参照により組み込む、2005年6月2日出願の米国特許仮出願第60/686,706号による優先権を主張する。
【0002】
本発明の開示は、血管予形成構造体(prevascularized construct)の使用による、細胞に基づく療法の効能を向上させるためのデバイスおよび方法一般に関しており、埋め込まれた細胞の生存能および機能を顕著に延長させる、デバイスおよび免疫隔離(immunoisolation)デバイスを含む。
【背景技術】
【0003】
糖尿病は、インスリンの産生、インスリンの作用またはその両方の欠陥の結果生ずる血中グルコースの高レベルにより特徴づけられる一群の疾患である。現在のところ、米国で約2,080万人すなわち米国人口の約7%が糖尿病であって、しかもこの疾患の発生数は上昇しつつあると推定されている。
【0004】
糖尿病の主なタイプには、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病および糖尿病前症が含まれる。他の型の糖尿病も、特殊な遺伝的条件、外科手術、薬剤、栄養失調、感染、および他の病気の結果として起こり得る。これらの「他の」型の糖尿病は、糖尿病と診断された全症例の約1〜5%を占める。
【0005】
1型糖尿病は、インスリン依存性糖尿病(IDDM)または若年発症糖尿病とも称せられ、体の免疫系がインスリンを産生する膵臓β細胞を破壊した場合に生じる。1型糖尿病は、診断された全症例の約5〜10%を占める。2型糖尿病は、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)または成人発症糖尿病とも称せられ、相対的インスリン不足と組み合わさったインスリン抵抗性の結果として生ずる。2型糖尿病は、診断された全症例の約90%に相当する。それは主として45歳以上の人々を冒し、肥満および坐位の生活様式と関連がある。
【0006】
1型または2型糖尿病と診断された患者は、心臓血管疾患、高血圧、脳卒中、四肢切断、網膜症、神経障害、腎症、歯周病を含む他の深刻な合併症、妊娠中の合併症ならびに糖尿病性ケトアシドーシスおよび高浸透圧性昏睡を含む他の合併症を発症する有意に増大した危険性を有する。
【0007】
妊娠糖尿病は全妊婦の約4%を冒し、グルコース不耐性の形態から生ずる。妊娠糖尿病になった女性は、その後の5〜10年以内に他の形態のこの疾患を発する可能性が20〜50%ある。糖尿病前症(pre-diabete)は、正常よりも高いが2型糖尿病と診断するほどには未だ高くない血中グルコースレベルにより特徴づけられる。糖尿病前症の人々は空腹時高血糖もしくは耐糖能異常またはその両方を有する。4,100万人の米国人が糖尿病前症の状態に罹っており、その結果2型糖尿病、心疾患および脳卒中を発症する増大した危険性にあると推定されている。
【0008】
1型糖尿病の患者は、生存するために注射またはポンプによりインスリンを送達しなければならない。2型糖尿病の一部の人は、その初期段階では、膵臓インスリンを増加させるか、または肝臓、筋肉もしくは腸に作用する薬剤と食事制限および運動との組合せによりこの疾患を管理することができる。しかしながら、これらの努力にも拘わらず、2型糖尿病の全患者の40%は、最終的にはインスリンの注射が必要になる。したがって、1型および2型糖尿病の両方の最も有望な治療は、β島移植により、損傷した膵臓β細胞を完全に機能するβ細胞で置き換えることであるかもしれない。
【0009】
膵島移植によるβ細胞置換療法は、臨床試験段階に達している。しかし、その療法に関連する大きな限界が依然として存在する。すなわち、細胞の生存能を支える血液供給の不足によるβ細胞の生存能および機能の減少である。膵臓全器官の同種異系移植は1年で80%を超える移植片生存期待値を有するが、その一方、大きい手術後罹患率の危険性および慢性的免疫抑制の危険性がこの手法の限界となっている。β細胞移植は、全器官移植に適しない器官から膵島を単離して維持することができること、罹患率および死亡率の減少、および最後にβ細胞を免疫隔離して免疫抑制剤の使用を回避する可能性を含む、全器官移植にまさる幾つかの利点を提供する。β細胞移植片の臨床的使用に対する重大な障壁は、移植された細胞の生存能、したがって機能を維持するための宿主由来の血液供給の不足であった(De Vos P.ら、「Efficacy of a prevascularized expanded polytetrafluoroethylene solid support system as a transplantation site for pancreatic islets.」、Transplantation 63: 824〜830頁、1997年; Risbud M.V.およびBhonde R.R.、「Islet immunoisolation: experience with biopolymers.」、J Biomater Sci Polym Ed 12: 1243〜1252頁、2001年; Vajkoczy P.ら、「Angiogenesis and vascularization of murine pancreatic islet isografts.」、Transplantation 60:123〜127頁、1995年)。生体材料埋め込みおよび埋め込み周囲の治癒反応の分野において、無血管性の線維性莢膜の発生が、血管恒常性、血管新生および血管退行の最も適切な例を提供する。(Auerbach R.ら、「Angiogenesis assays: a critical overview.」、Clin Chem 49: 32〜40頁、2003年; Djonov V.ら、「Vascular remodeling by intussusceptive angiogenesis.」、Cell Tissue Res 2003年; Folkman J. 「Anti-angiogenesis: new concept for therapy of solid tumors.」、Am Surg 175: 409〜416頁、1972年; Folkman J.、「Tumor angiogenesis.」、Adv Cancer Res 19: 331〜358頁、1974年; Hoying J.B.ら、「Heterogeneity in Angiogenesis.」、「Genetics of Angiogenesis」、Hoying J.B.編、BIOS Scientific Publishers Ltd. 2003年、191〜203頁; Ingber D.E.、「Mechanical signaling and the cellular response to extracellular matrix in angiogenesis and cardiovascular physiology.」、Circ Res 91:877〜887頁、2002年; Kale S.ら、「Microarray analysis of in vitro pericyte differentiation reveals an angiogenic program of gene expression.」、FASEB J 19: 270〜271頁、2005年; Pierce S.およびSkalak T.C.、「Microvascular remodeling: a complex continuum spanning angiogenesis to arteriogenesis.」、Microcirculation 10: 99〜111頁、2003年; Rifkin D.B.ら、「The involvement of proteases and protease inhibitors in neovascularization.」、Acta Biol Med Ger 40: 1259〜1263頁、1981年; Wahlberg E.、「Angiogenesis and arteriogenesis in limb ischemia.」、J Vasc Surg 38: 198〜203頁、2003年)。現在の細胞置換技法に関連する問題を考慮すると、細胞生存能および機能を延長させることにより細胞療法の効能を大きく改善する細胞置換療法の使用に関するデバイスおよび方法に対する必要性が存在する。
【0010】
本発明の発明者らは、これらの重大な問題に取り組む新規な技法を確立した。具体的には、本発明者らは、血管予形成組織で改変された構造体を生成させるための、細胞に基づく新規な療法を開発した(Shepherd B.R.ら、「Rapid perfusion and network remodeling in a microvascular construct after implantation.」、Arterioscler Thromb Vasc Biol 24: 898〜904頁、2004年)。参照により全体を本明細書に組み込む米国特許第7,029,838号および米国特許第7,052,829号において、すでに本発明者らは、改変された組織構造体に血管を形成させるために、または移植後に損傷したもしくは傷害された組織もしくは器官に血管を再生させるために使用することができる、血管を形成させた構造体を、作製するための材料および方法を記載している。本発明者らは、広範な血管形成を助ける新世代の生体材料も開発した(Kidd K.R.ら、「Angiogenesis and neovascularization associated with extracellular matrix-modified porous implants.」、Journal of Biomedical Materials Research 2: 366〜377頁、2002年; Kidd K.R.ら、「Angiogenesis and neovascularization associated with extracellular matrix-modified porous implants.」、J Biomed Mater Res 59: 366〜377頁、2002年; Kidd K.R.およびWilliams S.K.、「Laminin-5-enriched extracellular matrix accelerates angiogenesis and neovascularization in association with ePTFE.」、JBiomed Mater Res A 69: 294〜304頁、2004年)。細胞と材料構造体とを組み合わせたこのものは、血管予形成デバイス(Prevascularized Divice)もしくは構造体または血管予形成免疫隔離デバイス(PVID)と命名され、in vitroで細胞の生存能および機能を顕著に延長させるように機能し、また、対象に移植されたβ島細胞の長期間の機能を特に提供する。これらの構造体は、患者自身の脂肪由来の微小血管内皮細胞から構成することができるめ形成された微小循環となり、免疫抑制剤の使用が避けられる(Williams S.K.、「Endothelial cell transplantation.」、Cell Transplant 4: 401〜410頁、1995年)。本発明の他の利点は、次の開示により開示され、および/または明らかになるであろう。
【特許文献1】米国特許第7,029,838号
【特許文献2】米国特許第7,052,829号
【特許文献3】米国特許第4,963,489号
【特許文献4】米国特許第3,949,073号
【特許文献5】米国特許第5,709,854号
【特許文献6】米国特許第6,224,893号
【特許文献7】米国特許第5,559,022号
【特許文献8】米国特許第5,672,346号
【特許文献9】米国特許第5,827,735号
【特許文献10】米国特許第5,516,681号
【特許文献11】米国特許第5,266,480号
【特許文献12】米国特許第5,510,254号
【特許文献13】米国特許第5,512,475号
【特許文献14】米国特許第5,516,680号
【特許文献15】米国特許第5,518,915号
【特許文献16】米国特許第5,541,107号
【特許文献17】米国特許第5,578,485号
【特許文献18】米国特許第5,624,840号
【特許文献19】米国特許第5,763,267号
【特許文献20】米国特許第5,785,964号
【特許文献21】米国特許第5,792,603号
【特許文献22】米国特許第5,842,477号
【特許文献23】米国特許第5,858,721号
【特許文献24】米国特許第5,863,531号
【特許文献25】米国特許第5,902,741号
【特許文献26】米国特許第5,962,325号
【特許文献27】米国特許第6,022,743号
【特許文献28】米国特許第6,060,306号
【特許文献29】米国特許第6,121,042号
【特許文献30】米国特許第6,218,182号
【非特許文献1】De Vos P.ら、「Efficacy of a prevascularized expanded polytetrafluoroethylene solid support system as a transplantation site for pancreatic islets.」、Transplantation 63: 824〜830頁、1997年
【非特許文献2】Risbud M.V.およびBhonde R.R.、「Islet immunoisolation: experience with biopolymers.」、J Biomater Sci Polym Ed 12: 1243〜1252頁、2001年
【非特許文献3】Vajkoczy P.ら、「Angiogenesis and vascularization of murine pancreatic islet isografts.」、Transplantation 60:123〜127頁、1995年
【非特許文献4】Auerbach R.ら、「Angiogenesis assays: a critical overview.」、Clin Chem 49: 32〜40頁、2003年
【非特許文献5】Djonov V.ら、「Vascular remodeling by intussusceptive angiogenesis.」、Cell Tissue Res 2003年
【非特許文献6】Folkman J.、「Anti-angiogenesis: new concept for therapy of solid tumors.」、Am Surg 175: 409〜416頁、1972年
【非特許文献7】Folkman J.、「Tumor angiogenesis.」、Adv Cancer Res 19: 331〜358頁、1974年
【非特許文献8】Hoying J.B.ら、「Heterogeneity in Angiogenesis.」、「Genetics of Angiogenesis」、Hoying J.B.編、BIOS Scientific Publishers Ltd. 2003年、191〜203頁
【非特許文献9】Ingber D.E.、「Mechanical signaling and the cellular response to extracellular matrix in angiogenesis and cardiovascular physiology.」、Circ Res 91:877〜887頁、2002年
【非特許文献10】Kale S.ら、「Microarray analysis of in vitro pericyte differentiation reveals an angiogenic program of gene expression.」、FASEB J 19: 270〜271頁、2005年
【非特許文献11】Pierce S.およびSkalak T.C.、「Microvascular remodeling: a complex continuum spanning angiogenesis to arteriogenesis.」、Microcirculation 10: 99〜111頁、2003年
【非特許文献12】Rifkin D.B.ら、「The involvement of proteases and protease inhibitors in neovascularization.」、Acta Biol Med Ger 40: 1259〜1263頁、1981年
【非特許文献13】Wahlberg E.、「Angiogenesis and arteriogenesis in limb ischemia.」、J Vasc Surg 38: 198〜203頁、2003年
【非特許文献14】Shepherd B.R.ら、「Rapid perfusion and network remodeling in a microvascular construct after implantation.」、Arterioscler Thromb Vasc Biol 24: 898〜904頁、2004年
【非特許文献15】Kidd K.R.ら、「Angiogenesis and neovascularization associated with extracelIular matrix-modified porous implants.」、Journal of Biomedical Materials Research 2: 366〜377頁、2002年
【非特許文献16】Kidd K.R.ら、「Angiogenesis and neovascularization associated with extracellular matrix-modified porous implants.」、J Biomed Mater Res 59: 366〜377頁、2002年
【非特許文献17】Kidd K.R.およびWilliams S.K.、「Laminin-5-enriched extracellular matrix accelerates angiogenesis and neovascularization in association with ePTFE.」、JBiomed Mater Res A 69: 294〜304頁、2004年
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【非特許文献19】「Principles of Tissue Engineering、第2版」、Lanza, LangerおよびVacanti編、Academic Press、2000年
【非特許文献20】「Methods of Tissue Engineering」、AtalaおよびLanza編、Academic Press、2001年
【非特許文献21】「Animal Cell Culture」、Masters編、Oxford University Press、2000年
【非特許文献22】Knappら、Plastic and Reconstr. Surg. 60:389〜405頁、1977年
【非特許文献23】Fagien、Plastic and Reconstr. Surg. 105:362〜73頁および2526〜28頁、2000年
【非特許文献24】Kleinら、J. Dermatol. Surg. Oncol. 10:519〜22頁、1984年
【非特許文献25】Klein、J. Amer. Acad. Dermatol. 9:224〜28頁、1983年
【非特許文献26】Watsonら、Cutis 31:543〜46頁、1983年
【非特許文献27】Klein、Dermatol. Cain. 19:491〜508頁、2001年
【非特許文献28】Klein、Pedriat. Dent. 21:449〜50頁、1999年
【非特許文献29】Skorman、J. Foot Surg. 26:511〜5頁、1987年
【非特許文献30】Burgess、Facial Plast. Surg. 8:176〜82頁、1992年
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【非特許文献42】「Handbook of Biodegradable Polymers」、Domb、Kost、およびDomb編、1997年、Harwood Academic Publishers、オーストラリア
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【非特許文献53】Beaucageら、「Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry」、John Wiley & Sons、New York、N.Y.、2000年 (2002年3月までの補巻を含む)
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【非特許文献56】「Molecular Biology Protocols」 (ウェブサイトhighveld.comを参照されたい)
【非特許文献57】「Protocol Online」 (protocol-online.net)
【非特許文献58】「Embryonic Stem Cells, Methods and Protocols」、Turksen編、Humana Press、2002年
【非特許文献59】Weismanら、「Annu. Rev. Cell. Dev. Biol.」、17:387〜403頁
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【非特許文献63】Prockop、Science、276:71〜74頁、1997年
【非特許文献64】Theiseら、Hepatology、31:235〜40頁、2000年
【非特許文献65】「Current Protocols in Cell Biology」、Bonifacinoら編、John Wiley & Sons、2000年、(2002年3月までの更新を含む)
【非特許文献66】Freshney、「Culture of Animal Cells A Manual of Basic Techniques, 4th ed.」、Wiley Liss, John Wiley & Sons、2000年
【非特許文献67】「Basic Cell Culture: A Practical Approach」、Davis編、Oxford University Press、2002年
【非特許文献68】「Animal Cell Culture: A Practical Approach」、Masters編、2000年
【非特許文献69】Atkinsら、J. of Heart and Lung Transplantation、1999年12月、1173〜80頁
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【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、血管予形成構造体もしくはデバイス、および/または血管予形成免疫隔離デバイスが、移植された細胞の生存能および機能を顕著に延長することにより、対象において細胞を用いる療法を改善することができるという発見に基づく。具体的には、本発明者らは、合成デバイスまたは合成免疫隔離デバイスと移植された微小循環とを組み合わせて使用するハイブリッド系により、移植された細胞がより長く機能することが可能になり、その結果その治療効能が増大することを見出した。それに加えて、この改良されたデバイスは、免疫抑制剤の必要性とそれに随伴する好ましくない副作用を排除する。この発見は、糖尿病を含むが、それに限定されない、1つまたは複数の特定の生物活性物質の不十分なレベルに特徴づけられる疾患および障害の治療および予防に、広範な関わり合いを有する。
【0012】
したがって、本発明は、生物活性物質を対象に提供するための埋め込み可能なデバイスを提供し、このデバイスは、生物活性物質を産生可能な細胞または組織をカプセル化している生体適合性の半透性ポーチと接触している微小血管構造体を備える。本発明は、微小血管構造体の血管が対象にとって同系である微小血管構造体を包含する。埋め込まれた細胞または組織は、対象に同種異系または同系であってよい。一実施形態において、埋め込まれた細胞または組織は、インスリンを分泌または産生する。好ましい実施形態においては、埋め込まれた細胞はインスリン産生β島細胞である。
【0013】
本発明のポーチは、分解性、生体吸収性または非分解性、生体適合性の任意のポリマーで構成することができる。好ましい実施形態において、ポーチは延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含む。他の好ましい実施形態において、ポーチはポリエチレンテレフタレート(PET)を含む。本発明のさらなる実施形態において、デバイスは、酸素およびグルコースを含むがこれらに限定されない少なくとも1つの生物学的物質ならびに栄養剤を通過させて、より大きい液性免疫分子および免疫細胞の通過を阻止する、半透性または選択透過性材料を含む免疫隔離デバイスである。
【0014】
当業者は、本発明の対象が、両生類、鳥類、魚類、哺乳類および有袋類を含む任意の動物であってよいが、哺乳類(例えば、ヒト、家庭内動物例えば、ネコ、イヌ、サル、マウス、およびラットなど、または商業用動物例えば、ウシ、ウマもしくはブタなど)が好ましいことを認識するであろう。それに加えて、本発明の対象は、胎児、胚、幼児および成人を含む任意の年齢のものであってよい。本発明の好ましい実施形態において、対象はヒトである。
【0015】
本発明は、対象の疾患または障害を治療または予防する方法も提供し、この方法は、治療有効量の生物活性物質を産生可能な1種または複数の細胞をカプセル化している生体適合性の半透性ポーチと接触している微小血管構造体を備えたデバイスを対象に埋め込む段階を含む。微小血管構造体の血管は対象にとって同系であってよく、埋め込まれた細胞または組織は対象にとって同種異型または同系であってよい。本発明の一実施形態において、障害は糖尿病であり、埋め込まれた細胞または組織はインスリンを分泌または産生する。好ましい実施形態において、障害は1型糖尿病または2型糖尿病であり、埋め込まれた細胞はβ島細胞などのインスリン分泌細胞である。
【0016】
本発明の方法で使用されるポーチは、分解性、生体吸収性または非分解性、生体適合性の任意のポリマーで構成されてよい。好ましい実施形態において、ポーチは延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)またはポリエチレンテレフタレート(PET)を含む。さらなる実施形態において、デバイスは、ポーチが、酸素およびグルコースを含むがこれらに限定されない少なくとも1つの生物学的物質ならびに栄養剤を通過させて、より大きい液性免疫分子および免疫細胞の通過を阻止する、半透性または選択透過性材料を含む免疫隔離デバイスである。
【0017】
対象の糖尿病を治療または予防する方法も特に提供され、この方法は、治療有効量のインスリンを産生可能な1種または複数の細胞をカプセル化している生体適合性の半透性ポーチと接触している微小血管構造体を備えたデバイスを対象に埋め込む段階を含む。好ましい実施形態において、糖尿病は1型糖尿病または2型糖尿病であり、インスリン分泌細胞はβ島細胞である。
【0018】
それに加えて、本発明は、対象において改変された組織に血管を形成させる方法を提供し、この方法は、新たに単離された自己由来内皮細胞ペレットから再懸濁された細胞を含む少なくとも1つの血管予形成構造体と、改変された組織とを組み合わせる段階と、次にその改変された組織を移植する段階と、それによりin vivoで改変された組織に血管を形成させる段階とを含む。一実施形態において、前記組み合わせる段階は、少なくとも1つの血管予形成構造体を改変された組織に付着させる段階を含む。付着させる段階は、縫合、ステープリング、接着またはそれらの組合せを含むことができる。血管予形成構造体は、血管組織から得られた少なくとも1つの細胞ペレットに由来する細胞を含むことができる。血管組織は、皮膚、骨格筋、心筋、心臓の心耳、肺、腸間膜、または脂肪組織であってよい。好ましい実施形態において、血管内皮ペレットはヒトから得られる。
【0019】
本発明の改変された組織は、心臓組織、肺組織、心筋組織、横紋筋組織、肝臓組織、膵臓組織、軟骨、骨、心膜、腹膜、腎臓、平滑筋、皮膚、粘膜組織、小腸、および大腸からなる群から選択することができる。改変された組織は、例えば、注射器、針、カニューレ、カテーテル、チューブまたは顕微針を使用して対象に注入することができる。
【0020】
新たに単離された自己内皮細胞ペレットから再懸濁された細胞を含む少なくとも1つの血管予形成構造体を、組織または器官に注入して、それによりin vivoで組織または器官に血管を再形成させることにより、それを必要とする対象の組織または器官に血管を再形成させる方法も提供される。上ですでに述べたように、血管組織は、皮膚、骨格筋、心筋、心臓の心耳、肺、腸間膜、または脂肪組織を含むことができる。それに加えて、脂肪組織は、大網脂肪、腹膜前脂肪、腎周囲脂肪、心膜脂肪、皮下脂肪、乳房脂肪、または精巣上体脂肪を含むことができる。本発明の一態様において、脂肪組織は、脂肪吸引、腹壁形成、またはそれらの組合せにより得られる。
【0021】
さらに、血管再形成を必要とする器官には、限定はされないが、心臓、肺、心筋、横紋筋、肝臓、膵臓、腎臓、皮膚、脳、眼、膀胱、気管、横隔膜、卵巣、輸卵管、子宮、小腸、または大腸が含まれてよい。他の実施形態において、血管予形成構造体は、少なくとも1つの関連細胞を含み、その細胞は、限定はされないが、ニューロン、心筋細胞、軟骨細胞、膵腺房細胞、ランゲルハンス島、骨細胞、肝細胞、クッパー細胞、線維芽細胞、筋細胞、筋芽細胞、衛星細胞、脂肪細胞、前脂肪細胞、胆管上皮細胞、プルキンエ細胞、またはペースメーカー細胞であってよい。さらに他の実施形態において、血管予形成構造体は、サイトカイン、ケモカイン、抗生物質、薬剤、鎮痛剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。
【0022】
血管組織から得られた少なくとも1つの内皮細胞ペレットに由来する細胞で、多孔質の生体材料表面を処理することにより、対象の組織または器官に血管を再形成させる方法も提供され、その方法では、細胞が材料表面に沈着していて、対象に直接埋め込まれる。
【0023】
ある実施形態において、上記の工程は、組織改変された器官または組織内で機能性血管系を、埋め込みに先立って確立する組織構築法に導入することができた。培養で形成された毛細管床および埋め込み後に存在する生じた血管系の特性解析は、培養血管が、特別の組織の要求に合致することが求められるタイプの血管系に分化または変化する可能性を有することを示す。このことが意味することは、実験室で形成されたこの基礎になる「土台」の微小血管系を変化させて、微小血管床に、構築される組織のタイプに合致する新しい性質を付与することが可能かもしれないということである。例えば、改変された心筋は比較的高い毛細血管密度を有し、一方、肝オルガノイドの血管系は典型的な洞様血管様特性を示す。本明細書で開示する血管予形成法は、改変された組織内に血管網を導入し、それを関心のある特定の組織に合致するように改変し、そのようにして組織改変における重大な障碍を克服する大きい可能性を有する。
【0024】
心筋梗塞後などの慢性虚血性疾患または末梢血管疾患に罹っている組織において、影響されている組織領域に隣接する血管系が虚血帯域中に拡張することは、これらの組織が回復し得る1つの機構を提供する。血管予形成構造体の埋め込みは、影響の及ぶ領域の血管再形成に刺激および核として作用する。その際、埋め込み体は、血管増殖の核として作用し、それまでの無血管または「乏血管」帯域内に新しい血管網を急速に確立する。本発明者らは、改変された血管の存在は周辺組織の完全性を保存するという確証を有している。これらの血管予形成構造体の挿入は、障害された組織の急速な再灌流を供給するだけでなく、これらの組織の再構築および修復を支援するであろう。幹細胞、前駆細胞または関連細胞を血管予形成構造体に導入することにより、損傷された組織を再構築、修復し、かつ/または再増殖性にするために有用な細胞が供給される。ある実施形態において、少なくとも1つの組織または少なくとも1つの器官の再血管形成を刺激または誘導する方法が提供される。ある実施形態において、組織または器官は、虚血性であるか、および/または無血管もしくは乏血管性の、例えば、限定はされないが、心筋梗塞後、末梢血管疾患もしくは脳血管障害(脳卒中)などの慢性虚血性疾患の帯域もしくは領域を有していてもよい。
【0025】
現今の遺伝子治療戦略は、患者の細胞に導入される所望の遺伝子および体全体に分配される治療タンパク質(組換え遺伝子により産生される)を得ることに成功することの困難に苦しんでいる。遺伝子送達においてこれらの血管予形成構造体を使用することは、1)組織構造体中に含まれる遺伝子操作された細胞が血流に容易に到達できる手段(血流との分子交換は毛細血管で最もよく起こる)と、2)それ自体遺伝子操作を受け易く、治療遺伝子生成物の供給源としての役割を果たす培養血管要素とを提供する。血管予形成構造体は、この問題を解決する有望な手段を提供する。
【0026】
ある実施形態において、遺伝子操作された細胞を含む血管予形成構造体が開示されている。そのような血管予形成構造体は、本発明の血管新生および血管再形成方法において有用である。
【0027】
本発明の意図および機能ならびにその利点は、付随の図面への参照のある以下の詳細な説明を参照して、さらに十分に理解されるであろう。
本開示の多くの態様は、本開示の原理をより明確に例示する以下の図面を参照して、よりよく理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する単数形「a」「an」および「the」は、文中で明確に断らない限り、複数の言及も含む。本明細書で言及した全ての出版物、特許出願、特許、および他の引用文献は、参照によりそれらの全体を本明細書に組み込む。また、本明細書で使用した項目見出しは、単に編成上の目的のためのもので、記載した主題事項を限定すると解釈されるべきではない。本出願中で挙げた全ての引用文献は、何らかの目的のために特定して導入されたものである。
【0029】
本発明は、血管予形成免疫隔離デバイスを含む血管予形成デバイスまたは構造体が、埋め込まれた細胞の生存能および機能を顕著に延長することにより、対象における細胞療法の効能を改善することができるという発見に基づく。重要なことは、本発明の構造体またはデバイスの使用が、免疫抑制剤使用の必要性およびそれらに伴う好ましくない副作用を排除するということである。これらの発見は、1つまたは複数の特定の生物活性物質の不十分なレベルに特徴づけられる、糖尿病を含むがこれに限定されない、疾患および障害の治療および予防に、広範な関わり合いを有する。
【0030】
一態様において、本発明は、生物活性物質を対象に供給するための埋め込み可能なデバイスを提案し、このデバイスは、生物活性物質を産生可能な細胞または組織をカプセル化している生体適合性の半透性ポーチと接触している微小血管構造体を備える。本発明は、微小血管構造体の血管が対象にとって同系である微小血管構造体を包含する。埋め込まれた細胞または組織は、対象にとって同種異系または同系であってよい。一実施形態において、埋め込まれた細胞または組織は、インスリンを分泌または産生する。好ましい実施形態においては、埋め込まれた細胞はインスリン産生β島細胞である。
【0031】
本発明の状況では、「生物活性物質」という用語は、対象中で生物学的に有益な効果を及ぼし得る任意の物質を指す。したがって、生物活性物質は、血流からの特別の溶質の除去などの、代謝能力もしくは機能を備える、任意の生物学的に活性な分子、生成物または溶質、あるいは、限定するものではない例として、例えば酵素、栄養素、ホルモン、神経伝達物質、神経調節物質または生物学的応答調節物質などの生物学的に活性な分子もしくは物質を包含する。
【0032】
本発明のポーチは、任意の分解性、生体吸収性または非分解性で生体適合性のポリマーにより構成することができる。好ましい実施形態において、ポーチは延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含む。他の好ましい実施形態において、ポーチはポリエチレンテレフタレート(PET)を含む。本発明のさらなる実施形態において、デバイスは、ポーチが酸素およびグルコースを含むがこれらに限定されない少なくとも1つの生物学的物質ならびに栄養剤を通過させて、より大きい液性免疫分子および免疫細胞の通過を阻止する、半透性または選択透過性材料を含む免疫隔離デバイスである。
【0033】
当業者は、本発明の対象が、両生類、鳥類、魚類、哺乳類および有袋類を含む任意の動物であってよいが、哺乳類(例えば、ヒト、家庭内動物例えば、ネコ、イヌ、サル、マウス、およびラットなど、または商業用動物例えば、ウシ、ウマもしくはブタなど)が好ましいことを認識するであろう。それに加えて、本発明の対象は、胎児、胚、幼児および成人を含む任意の年齢のものであってよい。本発明の好ましい実施形態において、対象はヒトである。
【0034】
本発明は、対象の疾患または障害を治療または予防する方法も提供し、この方法は、治療有効量の生物活性物質を産生可能な1種または複数の細胞をカプセル化している生体適合性の半透性ポーチと接触している微小血管構造体を備えたデバイスを対象に埋め込む段階を含む。微小血管構造体の血管は対象にとって同系であってよく、埋め込まれた細胞または組織は対象にとって同種異型または同系であってよい。本発明の一実施形態において、障害は糖尿病であり、埋め込まれた細胞または組織はインスリンを分泌または産生する。好ましい実施形態において、障害は1型糖尿病または2型糖尿病であり、埋め込まれた細胞はβ島細胞などのインスリン分泌細胞である。
【0035】
対象の改変された組織に血管を再形成させる方法も提供され、この方法は、新たに単離された自己内皮細胞ペレットから再懸濁された細胞を含む少なくとも1つの血管予形成構造体を改変された組織と組み合わせる段階と、次に改変された組織を埋め込む段階と、それにより改変された組織にin vivoで血管を形成させる段階とを含む。例えば図3は、血管内皮ペレットで処理された生体材料周囲に形成された微小循環を示す。本発明の文脈で、組み合わせる段階は、少なくとも1つの血管予形成構造体を改変された組織に付着させる段階を含むことができる。例えば図5および図6は、膵島細胞が患者自身の血管細胞間に位置して、すなわち「サンドイッチされて」いるか、あるいは、膵島細胞が多孔質生体材料間に「サンドイッチ」され、膵島/生体材料構造体が患者自身の血管細胞間にさらにサンドイッチされていてもよい血管形成「サンドイッチ」構造体を示す。
【0036】
「付着させる」という用語は、縫合、ステープリング、接着もしくは当業者に知られた他の方法またはそれらの任意の組合せを含むことができる。血管予形成構造体は、血管組織から得られた少なくとも1つの内皮細胞ペレットに由来する細胞を含むことができる。血管組織は、皮膚、骨格筋、心筋、心臓の心耳、肺、腸間膜、または脂肪組織であってよい。好ましい実施形態において、血管内皮ペレットはヒトから得られる。
【0037】
本発明の改変された組織は、心臓組織、肺組織、心筋組織、横紋筋組織、肝臓組織、膵臓組織、軟骨、骨、心膜、腹膜、腎臓、平滑筋、皮膚、粘膜組織、小腸、および大腸からなる群から選択することができる。改変された組織は、例えば、注射器、針、カニューレ、カテーテル、チューブまたは顕微針を使用して対象に注入することができる。
【0038】
新たに単離された自己由来内皮細胞ペレットから再懸濁された細胞を含む少なくとも1つの血管予形成構造体を組織または器官に注入して、それによりin vivoで組織または器官に血管を再形成させることにより、それを必要とする対象の組織または器官に血管を再形成させる方法も提供される。上ですでに述べたように、血管組織は、皮膚、骨格筋、心筋、心臓の心耳、肺、腸間膜、または脂肪組織を含むことができる。それに加えて、脂肪組織は、大網脂肪、腹膜前脂肪、腎周囲脂肪、心膜脂肪、皮下脂肪、乳房脂肪、または精巣上体脂肪を含むことができる。本発明の一態様において、脂肪組織は、脂肪吸引、腹壁形成、またはそれらの組合せにより得られる。
【0039】
さらに、血管再形成を必要とする器官には、限定はされないが、心臓、肺、心筋、横紋筋、肝臓、膵臓、腎臓、皮膚、脳、眼、膀胱、気管、横隔膜、卵巣、輸卵管、子宮、小腸、または大腸が含まれてよい。他の実施形態において、血管予形成構造体は、少なくとも1つの関連細胞を含み、その細胞は、限定はされないが、ニューロン、心筋細胞、軟骨細胞、膵腺房細胞、ランゲルハンス島、骨細胞、肝細胞、クッパー細胞、線維芽細胞、筋細胞、筋芽細胞、衛星細胞、脂肪細胞、前脂肪細胞、胆管上皮細胞、プルキンエ細胞、またはペースメーカー細胞であってよい。さらに他の実施形態において、血管予形成構造体は、サイトカイン、ケモカイン、抗生物質、薬剤、鎮痛剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。
【0040】
血管組織から得られた少なくとも1つの内皮細胞ペレットに由来する細胞で、多孔質の生体材料表面を処理することにより、対象の組織または器官に血管を再形成させる方法も提供され、その方法では、細胞が材料表面に沈着していて、対象に直接埋め込まれる。
【0041】
本明細書では「3次元培養基」という用語が広い意味で使用され、生体適合性マトリックス、または足場材料等を含む組成物を指す。3次元培養基は25℃で液体、ゲル、半固体、または固体であってよい。3次元培養基は、生分解性または非生分解性であってよい。代表的な3次元培養基材料には、コラーゲン、フィブリン、キトサン、MATRIGEL、ポリエチレングリコール、化学的架橋性または光架橋性デキストランを含むデキストラン等を含むポリマーおよびヒドロゲルが挙げられる。ある実施形態において、3次元培養基は同種異系成分、自己由来成分、または同種異系成分と自己由来成分との両方を含む。ある実施形態において、3次元培養基は合成または半合成材料を含む。ある実施形態において、3次元培養基はフィブリン由来の足場材料などの枠組または支持体を含む。「足場材料」という用語も、本明細書では広い意味で使用される。したがって、足場材料は、限定はされないが例えば、網目、格子、スポンジ、泡沫など種々の3次元枠組を含む。
【0042】
本明細書で使用される「改変された組織」、「改変された組織構造体」または「組織改変構造体」という用語は、組織工学技法を使用して全体または部分が作製された組織または器官を意味する。これらの技法の説明は、とりわけ、「Principles of Tissue Engineering、第2版」、Lanza, LangerおよびVacanti編、Academic Press、2000年(この後「Lanzaら」と記す); 「Methods of Tissue Engineering」、AtalaおよびLanza編、Academic Press、2001年(この後「Atalaら」と記す)、Animal Cell Culture; Masters編、Oxford University Press、2000年(この後「Masters」と記す)、特に第6章; ならびに米国特許第4,963,489号および関連米国特許に見出すことができる。
【0043】
本明細書で使用される「微小血管フラグメント」という用語は、少なくとも1つの動脈、細動脈、毛細血管、細静脈、または静脈の少なくとも一部またはセグメントを含む、血管組織のセグメントまたは断片を指す。通常、微小血管は、1層または2層以上の壁細胞、例えば平滑筋細胞または周皮細胞などにより取り囲まれている管内に整列している内皮細胞を含んでおり、基底膜タンパク質などの細胞外マトリックス成分をさらに含むことができる。ある実施形態において、微小血管フラグメントは、例えば、限定はされないが、皮膚、骨格筋、心筋、心臓の心耳、肺、腸管膜、または脂肪組織などの血管組織から得ることができる。ある実施形態において、脂肪組織微小血管フラグメントは、例えば、限定はされないが、皮下脂肪、腎周囲脂肪、心膜脂肪、大網脂肪、乳房脂肪、精巣上体脂肪、腹膜前脂肪等から得られる。当業者は、他の脂肪沈着物または任意の血管に富む組織または器官、例えば、限定はされないが、皮膚、骨格筋または心筋を含む筋肉、肺、および腸管膜が、本発明において使用するための微小血管フラグメントの供給源として役立ち得ることを認識するであろう。ある実施形態において、微小血管フラグメントは、脂肪吸引または腹壁形成により捕集した脂肪組織から得ることができる。捕集工程中に超音波プローブを使用しないで脂肪吸引法により捕集された脂肪組織は特に有用である。
【0044】
本発明の状況で使用される「内皮細胞ペレット」という用語は、内皮細胞の塊、例えば、当業者に周知の任意の細胞ペレット形成法に従って調製された血管内皮細胞などを指す。ある実施形態において、典型的には、微小血管は、1層または2層以上の壁細胞、例えば平滑筋細胞または周皮細胞などにより取り囲まれている管内に整列している内皮細胞を含んでおり、基底膜タンパク質などの細胞外マトリックス成分をさらに含むことができる。ある実施形態において、内皮細胞ペレットは、血管組織、例えば、限定はされないが、皮膚、骨格筋、心筋、心臓の心耳、肺、腸管膜、または脂肪組織などの血管組織から得られる。ある実施形態において、脂肪組織内皮細胞ペレットは、例えば、限定はされないが、皮下脂肪、腎周囲脂肪、心膜脂肪、大網脂肪、乳房脂肪、精巣上体脂肪、腹膜前脂肪等から得られる。当業者は、他の脂肪沈着物または任意の血管に富む組織または器官、例えば、限定はされないが、皮膚、骨格筋または心筋を含む筋肉、肺、および腸管膜が、本発明において使用するための内皮細胞ペレットの供給源として役立ち得ることを認識するであろう。ある実施形態において、内皮細胞ペレットは、脂肪吸引または腹壁形成により捕集した脂肪組織から得ることができる。捕集工程中に超音波プローブを使用しないで脂肪吸引法により捕集された脂肪組織は特に有用である。
【0045】
本明細書で使用される「血管を形成させる」、「血管形成させる」、または「血管形成」という用語は、器官または組織、特に改変された組織に、機能性の、または実質的に機能性の血管網を供給することを指す。機能性の、または実質的に機能性の血管網は、組織または器官の栄養要求、酸素要求、および老廃物排除の必要の一部または全部に応ずるように、組織または器官を灌流するかまたは灌流することができるものである。血管組織は微小血管などの血管要素に富む天然の組織、例えば、脂肪組織であるが、これに限定はされない。
【0046】
本明細書で使用される「血管を再形成させる」、「血管再形成させる」、「血管新生」、または「血管再形成」という用語は、通常、疾患、先天的欠陥、もしくは傷害による無血管もしくは乏血管帯を有する組織または器官において、現存血管網を修正するかまたは新しい機能性もしくは実質的に機能性の血管網を確立することを意味する。それに加えて、ある種の化学療法剤、例えば、限定はされないが、5-フルオロウラシル(5-FU)などの局所適用も虚血性または無血管帯を生じさせ得る。そのような無血管または乏血管組織または器官は、しばしば全体的にまたは部分的に機能不全性であるか、または機能が制限されて、血管再形成が必要になることがある。そのような組織または器官に血管を再形成させることにより、回復されたまたは強化された機能をもたらすことができる。
【0047】
本明細書で使用する「ポリマー」という用語は、広い意味で使用され、広範囲の生体適合性ポリマー、例えば、限定はされないが、ホモポリマー、コポリマー、ブロックポリマー、架橋性または架橋ポリマー、光開始ポリマー、化学開始ポリマー、生分解性ポリマー、非生分解性ポリマーなどを含むことを意図している。他の実施形態において、血管予形成構造体は、重合していないポリマーマトリックスを含み、組織、器官または改変された組織と液体または半液体状態で、例えば、注入により組み合わされることが可能になっている。ある実施形態において、液体マトリックスを含む血管予形成構造体は、「in vitro」で重合または実質的に重合することができる。ある実施形態において、血管予形成構造体は、注入に先立って重合または実質的に重合される。そのような注入可能な組成物は、Knappら、Plastic and Reconstr. Surg. 60:389〜405頁、1977年; Fagien、Plastic and Reconstr. Surg. 105:362〜73頁および2526〜28頁、2000年; Kleinら、J. Dermatol. Surg. Oncol. 10:519〜22頁、1984年; Klein、J. Amer. Acad. Dermatol. 9:224〜28頁、1983年; Watsonら、Cutis 31:543〜46頁、1983年; Klein、Dermatol. Clin. 19:491〜508頁、2001年; Klein、Pedriat. Dent. 21:449〜50頁、1999年; Skorman、J. Foot Surg. 26:511〜5頁、1987年; Burgess、Facial Plast. Surg. 8:176〜82頁、1992年; Laudeら、J. Biomech. Eng. 122:231〜35頁、2000年; Freyら、J. Urol. 154:812〜15頁、1995年; Rosenblattら、Biomaterials 15:985〜95頁、1994年; Griffeyら、J. Biomed. Mater. Res. 58:10〜15頁、2001年; Stenburgら、Scfand. J. Urol. Nephrol. 33:355〜61頁、1999年; Sclafaniら、Facial Plast. Surg. 16:29〜34頁、2000年; Spira ら、Clin. Plast. Surg. 20:181〜88頁、1993年; Ellisら、Facial Plast. Surg. Clin. North Amer. 9:405〜11頁、2001年; Alsterら、Plastic Reconstr. Surg. 105:2515〜28頁、2000年;ならびに米国特許第3,949,073号および第5,709,854号を含むが、これらに限定されない当技術分野で知られた従来の材料および方法を使用して調製することができる。
【0048】
ある実施形態において、重合した、または重合していないマトリックスは、収縮したまたは収縮していないコラーゲンゲルを含むコラーゲン、例えば、フィブリン、アルギン酸塩、アガロース、ゼラチン、ヒアルロン酸塩、ポリエチレングリコール(PEG)、化学架橋、光架橋もしくはその両方に適したデキストランを含むデキストラン、アルブミン、ポリアクリルアミド、ポリグリコール酸、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ(n-ビニル-2-ピロリドン)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、親水性ポリウレタン、アクリル誘導体、またはポリエチレンオキシドおよびポリエチレンオキシドコポリマーなどのプルロニック類などを含むがこれらに限定はされないヒドロゲルを含む。ある実施形態において、フィブリンおよびコラーゲンは、目的の受容者に関して自己由来または同種異系である。当業者は、マトリックスが、例えば、限定はされないが、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、シリコーンなどの非分解性材料、またはポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、PLA、もしくはPGA(Middletonら、Biomaterials 21:2335〜2346頁、2000年; Middletonら、Medical Plastics and Biomaterials, 1998年3月/4月、30〜37頁; 「Handbook of Biodegradable Polymers」、Domb、Kost、およびDomb編、1997年、Harwood Academic Publishers、オーストラリア; Rogalla、Minim. Invasive Surg. Nurs. 11:67〜69頁、1997年; Klein、Facial Plast. Surg. Clin. North Amer. 9:205〜18頁、2001年; Kleinら、J. Dermatol. Surg. Oncol, 11:337〜39頁、1985年; Freyら、J. Urol. 154:812〜15頁、1995年; Petersら、J. Biomed. Mater. Res. 43:422〜27頁、1998年; およびKuijpersら、J. Biomed. Mater. Res. 51:136〜45頁、2000年も参照されたい)などの選択的分解性材料を含むことができるということを認識するであろう。
【0049】
I. 血管予形成構造体
「血管予形成構造体」または「改変された微小血管網」という用語は、典型的には、マトリックス、足場材料(scaffold)、ゲル、または液体を含むが、これらに限定はされない3次元培養基中で、血管に富む組織から単離された内皮細胞ペレットに由来する少なくとも1つの微小血管フラグメントまたは細胞を含む組成物を指す。ある実施形態において、血管予形成構造体は、3次元マトリックスおよび微小血管フラグメントを含む。ある実施形態において、マトリックスは、予め形成された枠組み、例えば、限定はされないが、フィブリンの足場材料を含む。ある実施形態において、3次元培養基は重合した、実質的に重合した、または重合していないマトリックスを含む。
【0050】
ある実施形態において、血管予形成構造体は、内皮細胞ペレットに由来する微小血管フラグメントまたは細胞と、重合していないコラーゲン、アガロース、ゼラチン、または他の重合していないポリマーマトリックスなどの液体3次元培養基とを組み合わせることにより調製される。他の実施形態において、内皮細胞ペレットに由来する微小血管フラグメントまたは細胞は、固体または半固体の3次元培養基環境、例えば、限定はされないが、枠組み、足場材料、中空繊維フィルター等の上または中に播種され、植えられ、または振りかけられる。
【0051】
血管予形成構造体は、「培養微小血管構造体」または「新たに単離した微小血管構造体」として分類することができる。培養微小血管構造体は、通常、埋め込む前にインキュベートされる。例えば、37℃および5%CO2の加湿インキュベーター中であるが、これに限定はされない。通常、そのような微小血管構造体は1時間から30日の期間インキュベートされるが、それより短いまたは長い所望の期間インキュベートされることもできる。当業者は、「培養(された)」という用語が、温度制御インキュベーターなどの従来のインキュベーション法の使用を意味しても、またはしなくてもよいことを理解するであろう。あるいは、血管予形成構造体は、使用前にインキュベーションを殆んど、または全くしない新たに単離した微小血管構造体を含むことができる。当業者は、新たに単離した微小血管構造体はインキュベートされてもよいが、その必要はないことを理解するであろう。ある実施形態において、新たに単離した微小血管構造体は、微小血管導入後に「インキュベート」された、例えば、限定はされないが、構造体が重合することを可能にする3次元培養基中で、血管内皮細胞ペレットに由来する微小血管フラグメントまたは細胞を含む。他の実施形態において、新たに単離した微小血管構造体は、注入による埋め込みに適するように、液体3次元培養基を含む(米国特許第5,709,854号および第6,224,893号を参照されたい)。そのような液体構造体は、in vitroの適当な条件で重合することができるが、その必要はない。
【0052】
当業者は、後で重合またはゲル化することが可能な、重合していない液体3次元培養基を含む血管予形成構造体が、種々の形状を取り得ることを理解するであろう。したがって、ある実施形態において、重合した構造体の最終的サイズと形状は、構造体が重合される容器のサイズと形状に、一部依存する。例えば、限定はされないが、円筒状またはチューブ状の構造体は、円錐チューブを使用して作製することができ、円板形構造体は、マルチウェルプレートを使用して作製することができ、平板状構造体は、平らな表面、例えば、ペトリ皿、逆さにしたマルチウェルプレートの蓋、または平底皿を使用して作製することができる。それに加えて、ある実施形態において、重合した血管予形成構造体は、所望のサイズまたは形状に切断または縁取りすることができる。このように、血管予形成構造体は、使用前または使用中に、事実上任意のサイズおよび形状で作製することができる。
【0053】
ある実施形態において、血管予形成構造体は、自己由来のまたは実質的に自己由来の3次元培養基中で、内皮細胞ペレットに由来する自己由来微小血管フラグメントまたは細胞を含む。ある実施形態において、血管予形成構造体は、足場材料、例えば、限定はされないが、フィブリン由来の足場材料(例えば、Nicosiaら、Lab. Invest. 63:115〜22頁、1990年を参照されたい)ならびに、例えば、限定はされないが、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、塩化ビニルなどのビニール、シリコーン、PLGA、PTFE、ePTFE、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリ乳酸、およびポリグリコール酸などの人工的な、FDA承認の合成生体適合性ポリマーを含む足場材料などを含む3次元培養基中で微小血管フラグメントを含む。作製および使用のプロトコルを含む、代表的な生体適合性ポリマー、足場材料、および他のマトリックス材料の議論は、とりわけ、Atalaら、特に42〜76章、Lanzaら、特に第21および22章、および「Handbook of Biodegradable Polymers」、Domb、KostおよびDomb編、1997年、Harwood Academic Publishers、オーストラリアに見出すことができる。
【0054】
ある実施形態において、血管予形成構造体は、目的のヒトまたは動物の受容者に関して自己由来または同種異系である微小血管フラグメントを含む。ある実施形態において、血管予形成構造体は、少なくとも1つのサイトカイン、少なくとも1つのケモカイン、抗菌剤などの少なくとも1つの抗生物質、少なくとも1つの薬剤、少なくとも1つの鎮痛剤、少なくとも1つの抗炎症剤、少なくとも1つの免疫抑制剤、またはそれらの種々の組合せをさらに含む。ある実施形態において、少なくとも1つのサイトカイン、少なくとも1つの抗生物質、少なくとも1つの薬剤、少なくとも1つの鎮痛剤、少なくとも1つの抗炎症剤、少なくとも1つの免疫抑制剤、またはそれらの種々の組合せは、当技術分野で一般に、例えば、限定はされないが、Richardsonら、Nat. Biotechnol. 19:1029〜34頁、2001年で知られているような放出制御製剤を構成する。
【0055】
代表的なサイトカインには、アンジオゲニン、血管内皮増殖因子(VEGF-165を含むが、これに限定されないVEGF)、インターロイキン、線維芽細胞増殖因子、例えば、限定はされないが、FGF-1およびFGF-2など、肝細胞増殖因子(HGF)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)、エンドセリン類(ET-1、ET-2およびET-3など)、インスリン様増殖因子(IGF-1)、アンジオポエチン(Ang-1、Ang-2、Ang-3/4など)、アンジオポエチン様タンパク質(ANGPTL-1、ANGPTL-2、ANGPTL-3、ANGPTL-4など)、PDGF-AA、PDGF-BBおよびPDGF-ABを含むがこれらに限定されない血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、ECGSを含む内皮細胞増殖因子(ECGF)、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD-ECGF)、胎盤増殖因子(PLGF)等が含まれる。組換えサイトカインを含むサイトカイン、およびケモカインは、多数の供給源、例えばR & D Systems (ミネソタ州Minneapolis所在)、Endogen (ワシントン州Woburn所在)、およびSigma (ミズーリ州St. Louis所在)から、通常、市販されている。当業者は、特定の血管予形成構造体中に導入するためのケモカインおよびサイトカインの選択が、血管形成または血管再形成の目的の組織または器官に一部依存するであろうということを理解するであろう。
【0056】
ある実施形態において、血管予形成構造体は、少なくとも1つの遺伝子操作された細胞をさらに含む。ある実施形態において、少なくとも1つの遺伝子操作された細胞を含む血管予形成構造体は、当技術分野で知られた技法により誘導された少なくとも1つの遺伝子操作された細胞内の遺伝子変化に基づいて、少なくとも1つの遺伝子操作された細胞によりコードされる少なくとも1つの遺伝子生成物を恒常的に発現するかまたは誘導的に発現するであろう。代表的な遺伝子操作技法の説明は、とりわけ、Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」 (2002年3月までの補巻を含む)、John Wiley & Sons、New York、N.Y.、1989年; Sambrookら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」増補第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989年; SambrookおよびRussell、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」増補第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、2001年; Beaucageら、「Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry」、John Wiley & Sons、New York、N.Y.、2000年 (2002年3月までの補巻を含む); 「Short Protocols in Molecular Biology」増補第4版、Ausbel、Brentおよび Moore編、John Wiley & Sons、New York、N.Y.、1999年; Davisら、「Basic Methods in Molecular Biology」、McGraw Hill Professional Publishing、1995年; 「Molecular Biology Protocols」 (ウェブサイトhighveld.comを参照されたい)、および「Protocol Online」 (protocol-online.net)に見出すことができる。本発明の遺伝子操作された細胞を遺伝子的に改良する目的の代表的な遺伝子生成物には、プラスミノーゲン活性化因子、可溶性CD4、第VIII因子、第IX因子、フォンビルブラント因子、ウロキナーゼ、ヒルジン、α-、β-、γ-インターフェロンを含むインターフェロン、腫瘍壊死因子、インターロイキン類、造血成長因子、抗体類、グルコセレブロシダーゼ、アデノシンデアミナーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、ヒト成長ホルモン、インスリン、エリスロポエチン、VEGF、アンジオポエチン、肝細胞増殖因子、PLGF等が含まれる。
【0057】
ある実施形態において、血管予形成構造体は、適当な間質細胞、幹細胞、関連細胞、またはそれらの組合せをさらに含む。本明細書で使用する「幹細胞」という用語は、広い意味で使用され、伝統的な幹細胞、前駆細胞、前前駆細胞(preprogenitor cells)、貯蔵細胞等を含む。代表的幹細胞には、胚幹細胞、成人幹細胞、多能性幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、筋肉幹細胞、筋前駆体幹細胞、内皮前駆細胞、骨髄幹細胞、軟骨形成幹細胞、リンパ球系幹細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、中枢神経系幹細胞、末梢神経系幹細胞等が含まれる。単離および培養する方法を含む幹細胞の説明は、とりわけ、「Embryonic Stem Cells, Methods and Protocols」、Turksen編、Humana Press、2002年; Weismanら、「Annu. Rev. Cell. Dev. Biol.」、17:387〜403頁; Pittingerら、Science、284:143〜47頁、1999年; 「Animal Cell Culture」、Masters編、Oxford University Press、2000年; Jacksonら、PNAS 96 (Shepherd BRら、「Rapid perfusion and network remodeling in a microvascular construct after implantation.」、Arterioscler Thronb Vasc Biol 24: 898〜904頁、2004年):14482〜86頁、1999年; Zukら、Tissue Engineering、7:211〜228頁、2001年(「Zukら」)ならびに米国特許第5,559,022号、第5,672,346 号および第5,827,735号に見出すことができる。単離方法を含む間質細胞の説明は、とりわけ、Prockop、Science、276:71〜74頁、1997年; Theiseら、Hepatology、31:235〜40頁、2000年; 「Current Protocols in Cell Biology」、Bonifacinoら編、John Wiley & Sons、2000年、(2002年3月までの更新を含む); および米国特許第4,963,489号に見出すことができる。当業者は、血管予形成構造体中に封入するために選択される幹細胞および/または間質細胞は、通常、その構造体の意図される用途に適したものであることを理解するであろう。
【0058】
本明細書で使用する「関連細胞」という用語は、血管予形成構造体の意図される用途に基づいて、その構造体中に導入されるのに適した細胞を指す。例えば、損傷した肝臓の修復、再構成、または再増殖のために適した関連細胞には、肝細胞、胆管上皮細胞、クッパー細胞、線維芽細胞等が含まれるが、これらに限定はされない。血管予形成構造体中に導入するための代表的関連細胞には、ニューロン、心筋細胞、筋細胞、軟骨細胞、膵腺房細胞、ランゲルハンス島、骨細胞、肝細胞、クッパー細胞、線維芽細胞、筋細胞、筋芽細胞、衛星細胞、内皮細胞、脂肪細胞、前脂肪細胞、胆管上皮細胞等が含まれる。これらのタイプの細胞は、当技術分野で知られている従来技法により単離し培養することができる。代表的技法は、とりわけ、Atalaら、特に第9〜32章; Freshney、「Culture of Animal Cells A Manual of Basic Techniques」第4版、Wiley Liss、John Wiley & Sons、2000年; 「Basic Cell Culture: A Practical Approach」、Davis編、Oxford University Press、2002年; 「Animal Cell Culture: A Practical Approach」、Masters編、2000年; ならびに米国特許第5,516,681号および第5,559,022号に見出すことができる。
【0059】
当業者は、そのような間質細胞、幹細胞、および/または関連細胞を、血管予形成構造体中に、作製中または作成後に導入することができることを理解するであろう。例として、限定するものではないが、微小血管フラグメント、幹細胞、関連細胞、および/または間質細胞を、コラーゲン、またはフィブリンなどの液体3次元培養基中で組み合わせること、あるいは幹細胞、関連細胞、および/または間質細胞を血管予形成構造体の中または上に播種することまたは植えることを実現することができる。血管予形成構造体中への導入に適当な幹細胞、間質細胞、および関連細胞の組合せには、損傷した膵臓に血管を再形成させるための血管予形成構造体におけるランゲルハンス島および/または膵腺房細胞;損傷した肝臓に血管を再形成させるための血管予形成構造体における肝細胞、肝前駆細胞、クッパー細胞、内皮細胞、内皮幹細胞、肝線維芽細胞、および/または肝貯蔵細胞が含まれる。例えば、限定はされないが、損傷したもしくは疾患の肝臓に血管を再形成させ、修復し、再構築するための血管予形成構造体に適当な幹細胞または間質細胞には、肝貯蔵細胞、例えば、限定はされないが、肝線維芽細胞、胚幹細胞、肝幹細胞などの肝前駆細胞が含まれてよく;損傷したまたは虚血性の心臓に血管を再形成させるためには、心筋細胞、プルキンエ細胞、ペースメーカー細胞、筋芽細胞、間葉幹細胞、衛星細胞および/または骨髄幹細胞が含まれてよく(Atkinsら、J. of Heart and Lung Transplantation、1999年12月、1173〜80頁; Tomitaら、Cardiovascular Research Institute, American Heart Association、1999年、92〜101頁; Sakaiら、Cardiovascular Research Institute, American Heart Association、1999年、108〜14頁を参照されたい)、以下同様である。
【0060】
II. 改変された組織および細胞に血管を形成させる方法
ある実施形態において、少なくとも1つの血管予形成構造体と改変された組織とを組み合わせて血管を形成させて改変された組織を作製する段階を含む、改変された組織に血管を形成させる方法が提供される。ある実施形態において、改変された組織に血管を形成させるための血管予形成構造体は、少なくとも1つの間質細胞、幹細胞、関連細胞または遺伝子操作された細胞をさらに含む。ある実施形態において、改変された組織に血管を形成させるための血管予形成構造体は、少なくとも1つのサイトカイン、ケモカイン、抗生物質、薬剤、鎮痛剤、または抗炎症剤等を含む。改変された組織を作製する方法は、当技術分野において周知である。そのような技法の説明は、とりわけ、Atalaら; Lanzaら; Masters; ならびに米国特許第4,963,489号、第5,266,480号、第5,510,254号、第5,512,475号、第5,516,680号、第5,516,681号、第5,518,915号、第5,541,107号、第5,578,485号、第5,624,840号、第5,763,267号、第5,785,964号、第5,792,603号、第5,842,477号、第5,858,721号、第5,863,531号、第5,902,741号、第5,962,325号、第6,022,743号、第6,060,306号、第6,121,042号、および第6,218,182号に見出すことができる。
【0061】
改変された組織に血管を形成させるある方法によれば、「組み合わせる」という用語は、少なくとも1つの血管予形成構造体を、改変された組織の任意の表面上、内部、その層間に、またはそれに隣接して置くこと、または埋め込む段階を含む。例えば、図6および図7は、膵島細胞が患者自身の血管細胞間に位置して、すなわち「サンドイッチされて」いるか、あるいは、膵島細胞が多孔質生体材料間に「サンドイッチ」され、その膵島/生体材料構造体が患者自身の血管細胞間にさらにサンドイッチされていてもよい血管形成「サンドイッチ」構造体を示す。ある実施形態において、組み合わせる段階は、改変された組織を血管予形成構造体で被覆する段階を含む。例えば、制限されることはないが、改変された組織が液体血管予形成構造体中に浸漬され、または液体血管予形成構造体が改変された組織上に注がれるかもしくは噴霧される。ある実施形態において、改変された組織を被覆する、そのような液体血管予形成構造体が重合される。ある実施形態において、そのような被覆された改変された組織がインキュベートされた後に、受容者のヒトまたは動物に埋め込まれる。ある実施形態において、血管予形成構造体は、改変された組織と注入により組み合わされる。
【0062】
本明細書で使用する「注入する」、「注入」という用語、またはその変形は、典型的には、孔または外部開口を備えたチューブまたは構造体を通して、物質を放出または吐出する任意の手段を指すものとする。そのようなチューブもしくは構造体は、柔軟性であっても柔軟性でなくてもよく、または少なくとも1つの柔軟性部分と少なくとも1つの柔軟性でない部分とを含むことができる。代表的注入手段には、針付きまたは無針注射器、カニューレ、カテーテル、柔軟性チューブ等が含まれる。血管予形成構造体の送達は、顕微針などの組織を透過性にするデバイスの使用により達成することもできる。標準ゲージの皮下注射針での伝統的な注入と対照的に、顕微針(通常、曲率半径で規定され、約1μm)または顕微針アレイは、顕微鏡的孔を開けて皮膚または内皮細胞層を透過性にする。その結果、これらの孔は、材料送達の導管としてはたらき、血管予形成構造体の血管、組織、または器官への付着または送達を強化することができる。したがって、当業者は、少なくとも1つの血管予形成構造体が組織もしくは器官の上もしくは中に吐出され得る穿孔または外部開口を備えた任意の構造体、または改変された組織を含む組織もしくは/および器官の表面を透過性にできる任意の構造体が、本発明の意図の範囲内であることを理解するであろう。ある実施形態において、そのような注入された構造体は、注入後in vitroで重合する。ある実施形態において、そのような注入された血管予形成構造体は、少なくとも1つの培養された微小血管、少なくとも1つの新たに単離された微小血管または両方を含む。
【0063】
ある実施形態において、少なくとも1つの血管予形成構造体を改変された組織と組み合わせる段階は、当技術分野で知られている技法を使用して、少なくとも1つの血管予形成構造体を少なくとも1つの改変された組織に付着させる段階を含む。代表的な付着手段には、例えば、外科手術用ステープルでの縫合、外科手術用接着剤などの糊剤または接着材、細胞外マトリックスなどとの生化学的相互作用、光活性化接着剤、フィブリン接着剤、アクリル系接着剤等が含まれる。
【0064】
ある実施形態において、組み合わせる段階は、少なくとも1つの血管予形成構造体を改変された組織の層間に入れて、その結果少なくとも1つの血管予形成構造体の少なくとも1つの表面が少なくとも1つの改変された組織の少なくとも1つの表面に隣接するかまたは接触する段階を含む。ある実施形態において、組み合わせる段階は、少なくとも1つの血管予形成構造体を改変された組織の中に、例えば、限定はされないが、設計されたポケット、穿孔、または裂け目等の中に挿入するかまたは埋め込む段階を含む。ある実施形態において、血管予形成構造体は、改変された組織の切り込みの中に挿入される。ある実施形態において、組み合わせる段階は、少なくとも1つの血管予形成構造体を、少なくとも1つの改変された組織の周囲に巻きつけるかまたは内部に包み込んで、その結果血管予形成構造体が改変された組織を封入するかもしくは実質的に封入するか、または改変された組織により封入されるかもしくは実質的に封入される段階を含む。ある実施形態において、組み合わせる段階は、組織改変工程中に、少なくとも1つの血管予形成構造体を改変された組織中に形成させるかまたは挿入する段階を含む。ある実施形態において、組み合わせる段階は、少なくとも1つの血管予形成構造体を、バイオリアクター中などで、組織改変工程中に増殖している改変された組織の上または中で培養する段階を含む。ある実施形態において、少なくとも1つの血管予形成構造体は、組織改変工程中に隣接する組織または器官により封入されるかまたは実質的に封入される。
【0065】
ある実施形態において、組み合わされた改変された組織および少なくとも1つの血管予形成構造体が、例えば、バイオリアクターまたは加湿されたインキュベーター中で、インキュベートされた後、受容者の動物またはヒトにin vivoの埋込みをされる。ある実施形態において、組み合わせる段階は、少なくとも1つの血管予形成構造体を含む少なくとも1つの改変された組織を、追加のインキュベーションは殆んどまたは全くなしに、受容者の動物またはヒトの中に直接埋め込む段階を含む。
【0066】
ある実施形態において、埋め込まれた血管予形成構造体は、改変された組織に血管を形成させるための核生成部位として役立つ。ある実施形態において、血管予形成構造体に由来する適当な間質細胞、幹細胞、および/または関連細胞は、受容者の動物またはヒトの内部における改変された組織の形成を支援するであろう。遺伝子操作された細胞を含む構造体は、血流により全身的に分配され、または局所的微小環境に送達されて、修復または創傷治癒等を誘起する組換え生成物を生成させることができる。
【0067】
III. 損傷または傷害された組織または器官に血管を再形成させる方法
ある実施形態において、損傷もしくは傷害された組織または器官、すなわち、血管再形成および修復もしくは再構築の必要な組織または器官に血管を再形成させる方法が提供される。ある実施形態において、組織または器官に血管を再形成させるための血管予形成構造体は、少なくとも1つの適当な間質細胞、幹細胞、関連細胞または遺伝子操作された細胞をさらに含む。ある実施形態において、組織または器官に血管を再形成させるための血管予形成構造体は、少なくとも1つのサイトカイン、ケモカイン、抗生物質、薬剤、鎮痛剤、または抗炎症剤等を含む。ある実施形態においては、血管予形成構造体は、ひとたびin vivoに埋め込まれると機能性血管床を発達させ、周囲の機能性血管系と吻合して、損傷された組織または器官を灌流するかまたは灌流可能になるであろう。
【0068】
組織または器官に血管を再形成させるためのある方法により、少なくとも1つの血管予形成構造体が、組織または器官と組み合わされて、血管が再形成された組織または器官が生成される。組織または器官に血管を再形成させるためのある方法によれば、「組み合わせる」という用語は、少なくとも1つの血管予形成構造体を、組織または器官の、任意の表面上に、内部に、層間に、またはそれに隣接して、置くかまたは埋め込む段階を含む。ある実施形態において、血管予形成構造体は、注入により組織または器官に埋め込まれる。ある実施形態において、そのような注入された構造体は、埋め込み後in vitroで重合するであろう。ある実施形態において、そのような注入された血管予形成構造体は、少なくとも1つの培養された微小血管構造体、少なくとも1つの新たに単離された微小血管構造体、または両方を含む。ある実施形態において、組み合わせる段階は、少なくとも1つの血管予形成構造体を、血管再形成の必要な少なくとも1つの組織または器官に、上で述べたような、当技術分野で知られている技法を使用して、付着させる段階を含む。
【0069】
当業者は、ある組織または器官が、線維組織、結合組織、または脂肪組織等の層に覆われるかまたはそれを含むこと、およびこの層を除去せずに下位組織または器官に、血管を再形成させ得ることを理解している。そのような層は、天然に生ずるものでもよく(漿膜層、粘膜、または線維性莢膜など)、疾患、欠損、傷害、または生化学的欠乏に起因する線維症、壊死、または虚血から起こるものでもよい。典型的には、血管予形成構造体の微小血管フラグメントは、そのような層に侵入して下位組織または器官の血管系と吻合して、組織または器官に血管を再形成させることができる。したがって、血管予形成構造体を血管再形成の必要な組織または器官と組み合わせる段階は、そのような層の上または中に血管予形成構造体を置く段階を含む。例えば、脳組織に血管を再形成させるために髄膜、心筋に血管を再形成させるために心外膜、大腸の諸部分に血管を再形成させるために腹膜および/または漿膜、眼に血管を再形成させるために結膜および/または結膜下、気管に血管を再形成させるために気管表面、口腔に血管を再形成させるために頬粘膜、肺に血管を再形成させるために胸膜および/もしくは漿膜表面、横隔膜に血管を再形成させるために胸膜および/もしくは腹膜表面、糖尿病性潰瘍などの非治癒性皮膚潰瘍に血管を再形成させるために皮膚、心膜に血管を再形成させるために心膜表面に、等々に、血管予形成構造体を置くことであるが、これらに限定はされない。
【0070】
ある実施形態において、血管予形成構造体は、動物またはヒトの内部の組織または器官と組み合わされたとき、機能性血管床を発達させ、周囲の機能性血管系と吻合して、損傷した組織または器官を灌流するであろう。ある実施形態において、埋め込まれた血管予形成構造体は、損傷した組織または器官に血管を再形成させるための核生成部位として役立つ。ある実施形態において、血管予形成構造体に由来する適当な幹細胞、間質細胞、および/または関連細胞は、損傷した組織または器官の再構築および修復を支援するであろう。遺伝子操作された細胞を含む該構造体は、組換え生成物を生成することができて、その生成物は血流により全身的に分配されて、または局所的微小環境に送達されて修復、または創傷治癒等を誘起する。
【0071】
上で述べた本発明は、実施例を参照して、よりよく理解することができる。以下の実施例は、例示目的のみを意図しており、本発明の範囲をどのようにも限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0072】
概要
免疫抑制剤の使用を避ける膵島細胞移植の医学的技法は、依然として糖尿病性高血糖を治すための主たる目標である。これらの実験は、予め形成された微小循環を使用して構成された新規の免疫隔離デバイスを評価するものである。この血管予形成構造体を使用して、in vivoで膵島細胞生存能を維持する能力を探索する。探索する細胞移植法は、ヒトの手術室との適合性を有しており、これらの前臨床的研究を、糖尿病治療のためのヒトの臨床の場に移行させる可能性を評価する。
【0073】
PVIDの評価
いかなるデバイスまたは組織の埋め込みにも、安定な血管系を補充し確立するために必要な時間に基づく初期障害の危険性がある。本発明者らは、埋め込んだときに、成熟した有効な灌流回路に急速に発達することのできる適応性の微小血管系を予形成させる方法を開発した。免疫隔離構造体の血管予形成が、埋め込みに続く構造体周囲の安定な微小循環の形成を促進することを示すために、この系を使用して、膵島移植とともに使用するデバイスに血管予形成させる。
【0074】
血管予形成構造体は、埋め込み後の長期の膵島機能を支持する能力も評価する。具体的には、免疫隔離デバイス周囲の微小循環の促進された形成が、膵島細胞機能を伸長するであろうことを示すために、免疫隔離デバイス中に入れられた膵島に栄養を供給するPVIDの能力を評価する。
【0075】
免疫隔離デバイスおよび微小循環
同種異系膵島細胞移植における決定的に重要な要求は、この同種異系移植材料を免疫系認識およびそれに続く破壊から隔離することである。免疫応答問題に対する解決を提供する可能性のある種々の免疫隔離デバイスが開発途上にある(Berney T.および Ricordi C.、「Immunoisolation of cells and tissues for transplantation.」、Cell Transplantation 8: 577〜579頁、1999年)。選択的透過性を有する合成移植片の使用が、免疫隔離デバイスの開発に関して報告されている。Braukerは、血管形成応答を刺激する特別設計のポリマーが製造できて、その結果、免疫隔離デバイスとして商品価値のあるポリマーができることを報告した(Brauker J.H.ら、「Neovascularization of synthetic membranes directed by membrane microarchitecture.」、Journal of Biomedical Materials Research 29: 1517〜1524頁、1995年)。これらのデバイスの外部表面上に機能性微小循環を形成させて維持する能力は、それらの最終的な生物学的成功にとって最優先事項である。なぜならば、それらが内部組織に栄養を供給し、合成された細胞生成物を除去して、細胞性免疫応答に対する障壁を維持しなければならないからである。本発明者らは、高血糖を克服するために埋め込まれた膵島を使用する最新の取り組みにおける重要な弱点を直接解決する。本発明者らの戦略は、存在する新規な技法を統合して、膵島移植に独特に適応させ、長期間の生存能および機能を有する移植膵島を構成することを包含する。取り組むべき最も重要な問題は、これらの埋め込まれた免疫隔離デバイスと協働する安定な微小循環の形成である。
【0076】
微小血管ホメオスタシス
最も成熟した組織の中では、微小循環は、新しい血管の密度が増加も減少もしていない平衡すなわちホメオスタシスに達している。毛細管内皮は、灌流されている組織の機能に特異的な形態学的特徴を示す。例えば、膵島を灌流する毛細管は、それらの膜に開窓を示し、肝内皮は、急速な細胞交換を可能にする細胞間の間隙を示し、脳内皮は、血液脳関門を確実にする細胞間の密着結合を示す。血管増殖におけるこのホメオスタシスは、多くの細胞型および代謝因子により制御されている。この均衡は変更させることができて、新血管発生すなわち一般的に血管新生と称せられる過程の刺激、および血管退化もしくは退行の刺激の両方の結果を生ずる。創傷治癒は一例で、その場合、微小血管ホメオスタシスすなわち「血管恒常性」が乱されてしばしば血管新生期になる。創傷治癒の一時性事象は、「血管退行」期をしばしば含み、例えば、限られた数の毛細管を主として含む肉芽組織を生ずる。
【0077】
生体材料埋め込みおよび移植片周囲治癒応答の分野において、血管の線維性莢膜の発生は、血管恒常性、血管新生および血管退行の要素の最も適切な例を提供する(Auerbach R.ら、「Angiogenesis assays: a critical overview.」、Clin Chem 49: 32〜40頁、2003年; Djonov V.ら、「Vascular remodeling by intussusceptive angiogenesis.」、Cell Tissue Res、2003年; Folkman J.、「Anti-angiogenesis: new concept for therapy of solid tumors.」、Am Surg 175: 409〜416頁、1972年; Folkman J.、「Tumor angiogenesis.」、Adv Cancer Res 19: 331〜358頁、1974年; Hoying J.B.ら、「Heterogeneity in Angiogenesis.」、「Genetics of Angiogenesis」、Hoying J.B.編、BIOS Scientific Publishers Ltd.、2003年、191〜203頁; Ingber D.E.、「Mechanical signaling and the cellular response to extracellular matrix in angiogenesis and cardiovascular physiology.」、Circ Res 91: 877〜887頁、2002年; Kale S.ら、「Microarray analysis of in vitro pericyte differentiation reveals an angiogenic program of gene expression.」、FASEB J 19: 270〜271頁、2005年; Pierce S.およびSkalak T.C.、「Microvascular remodeling: a complex continuum spanning angiogenesis to arteriogenesis.」、Microcirculation 10: 99〜111頁、2003年; Rifkin D.B.ら、「The involvement of proteases and protease inhibitors in neovascularization.」、Acta Biol Med Ger 40: 1259〜1263頁、1981年; Wahlberg E.、「Angiogenesis and arteriogenesis in limb ischemia.」、J Vasc Surg 38: 198〜203頁、2003年)。このホメオスタシスが、埋め込まれた材料およびデバイスと協働する成熟した十分に機能性の微小循環の発生に向かって変化するであろう。
【0078】
発生中の微小循環形成(血管形成)および現存する血管系からの微小循環形成(血管新生)の根底にある機構は、多くの研究者により真剣に評価されているところである(Ashley RAら、「Erythropoietin stimulates vasculogenesis in neonatal rat mesenteric microvascular endothelial cells.」、Pediatr Res 51: 472〜478頁、2002年; Flamme Iら、「Vascular endothelial growth factor (VEGF) and VEGF receptor 2 (flk-1) are expressed during vasculogenesis and vascular differentiation in the quail embryo.」、Dev Biol 169: 699〜712頁、1995年; Risau WおよびFlamme I.、「Vasculogenesis.」、[総説] [引用文献122件]、Annual Review of Cell & Developmental Biology 11: 73〜91頁、1995年; Shalaby F.ら、「Failure of blood-island formation and vasculogenesis in Flk-l-deficient mice.」、Nature 376: 62〜66頁、1995年)。血管新生過程の制御が、病状進行を変化させることに使用できるかどうかを決定するために、血管発生過程を評価する研究に加えて、癌および虚血性心疾患などの病理学的状態が、真剣に評価されている。これらの研究中に、血管新生を制御する多くの共通の経路が解明されており、それらは、増殖因子とそれらの受容体(例えば、VEGF、FGF)、メタロプテアーゼ、および細胞外マトリックスタンパク質に関係づけて一般的に分類することができる。ePTFEを主とする免疫隔離デバイスと組み合わされた微小血管系の形成が促進されて、移植された膵島への正常な栄養の流れの急速な回復が提供される。
【0079】
組織灌流のための血管予形成構造体
微小血管構造体は、3次元コラーゲンゲル中に懸濁されて培養された、単離された完全な微小血管要素(例えば、細動脈、毛細管、細静脈)からなる3-D血管新生系に基づいている。これらの血管要素はin vivoに似た様式で増殖して、最終的にはコラーゲンゲルのスペースを満たす微小血管の精巧な集合を形成する。生ずる新しい微小血管(新生血管)は開存性の管構造体を保持し、関連する壁細胞を維持して、周囲のコラーゲンマトリックスを再構築する。この培養系内の血管フラグメントは、共培養される細胞および外因性増殖因子の存在に応答性である。重要なこととして、この系に包埋された微小血管フラグメントは、多数の血管の「芽」を最初に構成することにより、同じin vivoの血管新生段階を行う。本発明のin vitro系における血管新生は、培養確立第4日までに始まり、動的で、新芽は形成して1日以内に退行する。培養第11日までに、フラグメントは、24.8±6.8ミクロン(n=39)の平均直径を有する伸展した単純な新生血管の集合を形成するまでに増殖した。これらの新生血管は、開存性管腔および低密度でα-アクチン陽性の血管周囲細胞を有する。培養内皮細胞とは異なり、微小血管構造体の血管フラグメントは、血管新生の確かな特徴である、現存する血管に由来する新しい血管を形成する。
【0080】
本発明者らは、現存する血管系と相互作用して機能性の微小血管床を形成するこの微小血管構造体の能力を、構造体を免疫機能低下(SCID)マウスに埋め込むことにより評価した。構造体は皮下に入れ、背筋系と直接接触させた。移植片の肉眼的検査で、本発明者らは、微小血管構造体と連絡しているが、無血管性コラーゲンゲルの対照とは連絡していない、血液が充満した表在性の血管を観察した。外移植された微小血管構造体の組織学的検査所見により、血管中の血液および構造体の血管網中の不均質な血管の存在が明らかであった。本発明者らは、小動脈、細動脈、毛細管、細静脈および静脈を含む、成熟した機能性の血管床中に共通して見られるあらゆる種類の血管のタイプを観察した。インク灌流による吻合の検査により(図1)、構造体中の血管は、埋め込み後早くも1日で、宿主の血管系と連続している(したがって血液を運搬できる)ことが明らかになった。灌流能力のある血管(開存性で宿主血管系と連続している)の数は、次の2日で急速に増加し、移植微小循環は、完全な全厚皮膚移植で観察されるものと非常に類似していた。
【0081】
PVID構造体および評価
本発明者らは、ePTFE免疫隔離デバイスおよび上記の単離脂肪由来の微小血管内皮細胞系を使用して、PVIDを構築する実行可能性を確立した。図2および図4は、成熟した微小循環の形成を促進するための、合成非分解性ePTFE膜と微小血管構造体とを使用するハイブリッド系を例示している。
【0082】
研究計画および方法
本発明者らは、非分解性免疫隔離デバイスと、自己由来微小血管からなる微小血管構造体とを使用するハイブリッド2成分設計で構成される血管予形成構造体を評価した。いかなるデバイスまたは組織の埋込みにも、安定な血管系を補充し確立するために必要な時間に基づく初期障害の危険性がある。埋め込んだときに、成熟した有効な灌流回路に急速に発達することのできる適応性の微小血管系を予形成させる方法が開発された。血液供給の確立を促進してβ-島機能を保存するために、β-島構造体に、埋め込みに先立って、この系を使用して、血管を予形成する。
【0083】
微小血管単離および培養
ラットの微小血管フラグメント(MF)を、先に記載された方法を改良使用して単離する(Hoying J.B.ら、「Angiogenic potential of microvessel fragments established in three-dimensional collagen gels.」、In Vitro Cell Dev Biol Anim 32: 409〜419頁、1996年; Williams SKおよびJarrell BE.、「Cells derived from omental fat tissue and used for seeding vascular prostheses are not endothelial in origin.」、J Vasc Surg 15: 457〜459頁、1992年; Williams SKら、「Origin of endothelial cells that line expanded polytetrafluoroethylene vascular grafts sodded with cells from microvascularized fat.」、J Vasc Surg 19: 594〜604頁、1994年; Williams SK.ら、「Liposuction-derived human fat used for vascular graft sodding contains endothelial cells and not mesothelial cells as the major cell type.」、Journal of Vascular Surgery 19: 916〜923頁、1994年)。無菌条件下に捕集した脂肪組織を0.1%BSA-PBS中で洗浄し、鋏で細かく切り刻んで、2mg/mlコラゲナーゼ+2mg/ml BSA(実質的に脂肪酸を含まない)を含むPBS中37℃で8分間激しく振り混ぜて消化した。懸濁液を無菌の孔径500μmのナイロン網に通して濾過し、組織屑および大きい血管片を除去した。微小血管フラグメントは、残る懸濁液の濾過により孔径30μmのナイロン網上に捕集し、網の表面を0.1% BSA-PBSで激しく洗い流して回収した。使用するコラゲナーゼのタイプおよびロット番号は
、微小血管構造体を維持しながらフラグメント収量を最適化するように予め選別されるであろう。微小血管フラグメントは、DMEM(最終1×)で調製し、1M NaOHでpHを中性にした氷冷3mg/mlラット尾部I型コラーゲン(BD BioSciences、マサチューセッツ州Bedford所在)溶液中に懸濁する(12,000〜15,000 MF/ml)。MF/コラーゲン懸濁液は、48ウェルのプレートの個々のウェルに入れ(0.25ml/ウェル)、コラーゲンを重合させるために37℃のインキュベーター中に20分間置くこととする。
【0084】
内皮ペレット調製
精巣上体脂肪を雄ラットから単離して、37°Fでコラゲナーゼを使用して消化した。脂肪が消化されれば、スラリーを遠心分離し、脂肪細胞の浮遊する「ケーク」および内皮細胞を含むペレットを生じさせた。ペレットを緩衝液と可溶化したコラーゲンの混合物に再懸濁させた。次に、懸濁させた細胞を、一端に多孔性ePTFEシートを備えた容器の中に入れた。この容器は、BEEMカプセルとして知られているプラスチックデバイスを使用して作製される。緩衝液を含む注射器を容器の反対側の端に付けて、注射器のプランジャーを進めることにより容器の内容積を加圧した。その結果、血管ペレットから細胞がePTFEの表面に沈着した。3日後に、ePTFEサンプル上でMTT代謝アッセイを実施した。ePTFEの表面は、急速に暗紫色に変色し、生存細胞の存在を示した。
【0085】
細胞カプセル化系および埋め込み
予備的研究中に、ePTFE材料を使用して細胞カプセル化デバイスを作製した。これらのデバイスの例を図2および4に例示する。デバイスの機能はマウスモデルを使用して評価する。マウスは麻酔して、皮下組織中にデバイスを埋め込むように準備する。デバイスは適当な組織部位中に埋め込まれる。皮膚は金属クリップで閉じる。デバイス機能は、埋め込みの1および4週間後の細胞生存率による。この手法の1つの可能性ある利点は、観察されるように、失われた細胞機能を置き換える同種異系移植および異種移植の送達である。例えば、糖尿病、免疫不全疾患および肝疾患においてである。
【0086】
血管密度および不均質性
微小血管/材料移植周囲の血管構築および不均質性を評価するためには、生体内蛍光イメージングおよび組織学的検査を使用する。染色組織切片(H & Eまたは免疫染色)の分析で、組織内の血管要素の定量的測定ができる。この分析で、所与の領域の毛細管、細動脈および細静脈の数および関係する存在が決定される。新たに形成された微小循環における細胞の起源は、宿主を提供者の細胞と区別するラットおよびマウスの特異的マーカーを使用して評価される。
【0087】
灌流能力
免疫隔離デバイス周囲に形成される微小循環の機能を評価するために、3つの別の技法が使用される。すなわち、インク灌流法、微小血管造影法およびミクロスフェア流動測定法である。インク灌流法および微小血管造影法は、宿主血管系と連続していて、開存性で血液を運搬できる連続した血管セグメントの確認を可能にする。ミクロスフェアを使用する灌流指数で、新たに形成された微小循環における血流が定量的に評価される。
【0088】
移植後の長期膵島機能を支持する血管予形成構造体の機能評価
膵島の単離およびデバイス中への接種。ラットから生存する膵島を単離する標準的手順が開発されている(Calafiore R.ら、「Grafts of microencapsulated pancreatic islet cells for the therapy of diabetes mellitus in nonimmunosuppressed animals.」、Biotechnol Appl Biochem 39: 156〜164頁、2004年; Chaikof EL.、「Engineering and material considerations in islet cell transplantation.」、Annu Rev Biomed Eng 1: 103〜127頁、1999年; De Vos P.ら、「Efficacy of a prevascularized expanded polytetrafluoroethylene solid support system as a transplantation site for pancreatic islets.」、Transplantation 63: 824〜830頁、1997年)。これらの膵島は、目標1で開発されたPVIDで評価される。PVIDは調製されてSCIDマウスの皮下部位に埋め込まれる。内部の区画に届くシリコーンチューブを、皮膚切開を通して外部に出す。チューブの端は熱で封じて汚染を抑えるために包帯で覆う。デバイスへの膵島接種は、デバイス埋め込みの1、3、7および14日後に実施する。このとき、シリコーンチューブの外部露出端を隔離して、膵島の接種ができるように切断する。新たに単離された膵島をデバイスの内部空間中にゆっくりと注入し、シリコーンチューブを熱で封じ、チューブを皮下に入れる。
【0089】
膵島機能の評価
膵島を含むPVIDを、SCIDマウスに埋め込みの3,7、21および60日後に外移する(図7)。外植のときに、PVIDおよび周囲の組織を2つのセグメントに分離する。1つのセグメントを、PVID内部の細胞生存率を評価するための組織学的検査および膵島によるインスリン産生の免疫細胞化学検査のために処理する。第2のサンプルは、インスリンのウェスターンブロット分析にかける。
【0090】
これらの実験で、血管予形成免疫隔離デバイスを創出する能力が立証され、引き続いてこのデバイスの機能をin vivoモデルで試験する。本発明者らは、異種移植モデル(すなわちマウスにラット細胞)を使用しているので、細胞移植を評価するのにSCIDマウスモデルを使用する。この技法のヒトでの使用においては、患者自身の脂肪組織をPVID構築のための微小血管フラグメントの供給源として使用することができ、したがって免疫抑制は必要でない。
【0091】
明確にする目的で、代表的実施形態を示して詳細に説明したが、記載した本発明に対する形式もしくは細部における種々の変化、改変または他の変更が、添付の請求項の本発明の真の範囲から逸脱せずになされ得ることは、この開示を読むことから、当業者には明らかであろう。例えば、構造体、デバイスおよび方法のための具体的な寸法および材料が記載されているが、寸法、または、デバイスを構成する具体的材料の変更は、本発明の概念を損なわないであろうということが認識されるべきである。したがって、全てのそのような変化、改変、および変更は、本開示の範囲内と見られるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】微小血管構造体の血管再形成を示す図である。墨は移植された血管の開存性を示す。
【図2】合成免疫隔離デバイス(PVID)と移植された微小循環とを使用するハイブリッド系を例示する図である。矢印は微小血管構造体と接触している免疫隔離デバイスを示す。
【図3】血管内皮ペレットで処理された生体材料周囲に形成された微小循環を示す図である。
【図4】血管予形成免疫隔離デバイス(PVID)を示す図である。矢印は、カプセル化された細胞、半多孔質生体材料、および半多孔質生体材料と接触している血管内皮ペレットに由来する細胞を示す。
【図5】膵島細胞(顕微鏡写真で緑色に染色)が患者自身の血管細胞(顕微鏡写真で赤色に染色)間に位置して、すなわち「サンドイッチされて」いる血管形成構造体(サンドイッチ移植片)を示す図である。
【図6】膵島細胞(顕微鏡写真で緑色に染色)が多孔質生体材料(ePTFE)間に位置し、すなわち「サンドイッチ」され、かつ膵島/ePTFE構造体が患者自身の血管細胞間にさらに位置して、すなわち「サンドイッチされて」いる血管形成構造体(サンドイッチ移植片)を示す図である。
【図7】対照膵臓中および第7、14、および28日のサンドイッチ移植片中のインスリン染色を示す図である。これらの像は、検出可能な量のインスリンが全時点で存在したことを示す。それに加えて、インスリン産生が、完全な膵島と同様に部分的に解離した膵島でも見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性物質を、それを必要とする対象に提供する埋め込み可能なデバイスであって、生物活性物質を産生可能な1種または複数の細胞をカプセル化している生体適合性の半透性ポーチと接触している微小血管構造体を備えたデバイス。
【請求項2】
免疫隔離デバイスである請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
微小血管構造体の血管が対象にとって同系である請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
1種または複数の細胞が対象にとって同種異系である請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
1種または複数の細胞が対象にとって同系である請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
ポーチがポリマーを含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
ポリマーが延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)である請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
ポリマーがポリエチレンテレフタレート(PET)である請求項6に記載のデバイス。
【請求項9】
1種または複数の細胞がインスリン分泌細胞である請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
インスリン分泌細胞がβ島細胞である請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
治療または予防を必要としている対象の障害を治療または予防する方法であって、疾患または障害が対象における生物活性物質の不十分なレベルにより特徴づけられ、治療有効量の生物活性物質を産生可能な1種または複数の細胞をカプセル化している生体適合性の半透性ポーチと接触している微小血管構造体を備えたデバイスを対象に埋め込む段階を含む方法。
【請求項12】
デバイスが免疫隔離デバイスである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
微小血管構造体の血管が対象にとって同系である請求項11に記載の方法。
【請求項14】
1種または複数の細胞が対象にとって同種異系である請求項11に記載の方法。
【請求項15】
1種または複数の細胞が対象にとって同系である請求項11に記載の方法。
【請求項16】
ポーチがポリマーを含む請求項11に記載の方法。
【請求項17】
ポリマーが延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ポリマーがポリエチレンテレフタレート(PET)であるである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
疾患が糖尿病である請求項11に記載の方法。
【請求項20】
糖尿病が1型糖尿病である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
糖尿病が2型糖尿病である請求項19に記載の方法。
【請求項22】
1種または複数の細胞がインスリン分泌細胞である請求項11に記載の方法。
【請求項23】
インスリン分泌細胞がβ島細胞である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
対象の糖尿病を治療または予防する方法であって、治療有効量のインスリンを産生可能な1種または複数の細胞をカプセル化している生体適合性の半透性ポーチと接触している微小血管構造体を備えたデバイスを対象に埋め込む段階を含む方法。
【請求項25】
デバイスが免疫隔離デバイスである請求項24に記載の方法。
【請求項26】
微小血管構造体の血管が対象にとって同系である請求項24に記載の方法。
【請求項27】
1種または複数の細胞が対象にとって同種異系である請求項24に記載の方法。
【請求項28】
1種または複数の細胞が対象にとって同系である請求項24に記載の方法。
【請求項29】
ポーチがポリマーを含む請求項24に記載の方法。
【請求項30】
ポリマーがポリテトラフルオロエチレン(PTF)である請求項24に記載の方法。
【請求項31】
ポリマーがポリエチレンテレフタレート(PET)である請求項24に記載の方法。
【請求項32】
糖尿病が1型糖尿病である請求項24に記載の方法。
【請求項33】
糖尿病が2型糖尿病である請求項24に記載の方法。
【請求項34】
インスリン産生細胞がβ島細胞である請求項24に記載の方法。
【請求項35】
対象の改変された組織に血管を形成させる方法であって、(a)新たに単離された自己由来内皮細胞ペレットから再懸濁された細胞を含む少なくとも1つの血管予形成構造体と、改変された組織とを組み合わせる段階と、(b)改変された組織を埋め込み、それにより改変された組織にin vivoで血管を形成させる段階とを含む方法。
【請求項36】
組み合わせる段階が、少なくとも1つの血管予形成構造体を改変された組織に付着させる段階を含む請求項35に記載の方法。
【請求項37】
付着させる段階が、縫合、ステープリング、接着、またはそれらの組合せを含む請求項35に記載の方法。
【請求項38】
少なくとも1つの血管予形成構造体が、血管組織から得られた少なくとも1つの内皮細胞ペレットに由来する細胞を含む請求項35に記載の方法。
【請求項39】
血管組織が、皮膚、骨格筋、心筋、心臓の心耳、肺、腸管膜、または脂肪組織である請求項35に記載の方法。
【請求項40】
改変された組織が、心臓組織、肺組織、心筋組織、横紋筋組織、肝臓組織、膵臓組織、軟骨、骨、心膜、腹膜、腎臓、平滑筋、皮膚、粘膜組織、小腸、および大腸からなる群から選択される請求項35に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも1つの血管内皮ペレットがヒトから得られる請求項38に記載の方法。
【請求項42】
埋め込む段階が対象に改変された組織を注入する段階を含む請求項35に記載の方法。
【請求項43】
注入する段階が、少なくとも1つの注射器、注射針、カニューレ、カテーテル、チューブまたは顕微針を使用する段階を含む請求項42に記載の方法。
【請求項44】
血管再形成を必要とする対象の組織または器官に血管を再形成させる方法であって、新たに単離された自己由来の内皮細胞ペレットから再懸濁された細胞を含む少なくとも1つの血管予形成構造体を、組織または器官に注入する段階と、それによりin vivoで組織または器官に血管を再形成させる段階とを含む方法。
【請求項45】
注入する段階が少なくとも1つの注射器、注射針、カニューレ、カテーテル、チューブまたは顕微針を使用する段階を含む請求項44に記載の方法。
【請求項46】
血管予形成構造体が、血管組織から得られた少なくとも1つ内皮細胞ペレットに由来する細胞を少なくとも含む請求項44に記載の方法。
【請求項47】
血管組織が、皮膚、骨格筋、心筋、心臓の心耳、肺、腸管膜、または脂肪組織からなる群から選択される請求項46に記載の方法。
【請求項48】
脂肪組織が、大網脂肪、腹膜前脂肪、腎周囲脂肪、心膜脂肪、皮下脂肪、乳房脂肪、または精巣上体脂肪からなる群から選択される請求項47に記載の方法。
【請求項49】
脂肪組織の少なくとも幾つかが、脂肪吸引、腹壁形成、またはそれらの組合せにより得られる請求項47に記載の方法。
【請求項50】
血管再形成を必要とする組織または器官が、心臓、肺、心筋、横紋筋、肝臓、膵臓、腎臓、皮膚、脳、眼、膀胱、気管、横隔膜、卵巣、輸卵管、子宮、小腸、または大腸からなる群から選択される請求項44に記載の方法。
【請求項51】
少なくとも1つの血管予形成構造体が少なくとも1つの関連細胞をさらに含む請求項44に記載の方法。
【請求項52】
少なくとも1つの関連細胞が、少なくとも1つのニューロン、心筋細胞、軟骨細胞、膵腺房細胞、ランゲルハンス島、骨細胞、肝細胞、クッパー細胞、線維芽細胞、筋細胞、筋芽細胞、衛星細胞、脂肪細胞、前脂肪細胞、胆管上皮細胞、プルキンエ細胞、またはペースメーカー細胞からなる群から選択される請求項51に記載の方法。
【請求項53】
少なくとも1つの血管予形成構造体が、サイトカイン、ケモカイン、抗生物質、薬剤、鎮痛剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、またはそれらの組合せからなる群から選択される請求項51に記載の方法。
【請求項54】
血管再形成を必要とする対象の組織または器官に血管を再形成させる方法であって、血管組織から得られた少なくとも1つの内皮細胞ペレットに由来する細胞で、多孔質の生体材料表面を処理する段階を含み、細胞が材料表面に沈着し、対象に直接埋め込まれる方法。
【請求項55】
血管組織が、皮膚、骨格筋、心筋、心臓の心耳、肺、腸管膜、または脂肪組織からなる群から選択される請求項54に記載の方法。
【請求項56】
脂肪組織が、大網脂肪、腹膜前脂肪、腎周囲脂肪、心膜脂肪、皮下脂肪、乳房脂肪、または精巣上体脂肪からなる群から選択される請求項55に記載の方法。
【請求項57】
脂肪組織の少なくとも一部が、脂肪吸引、腹壁形成、またはそれらの組合せにより得られる請求項55に記載の方法。
【請求項58】
血管再形成を必要とする組織または器官が、心臓、肺、心筋、横紋筋、肝臓、膵臓、腎臓、皮膚、脳、眼、膀胱、気管、横隔膜、卵巣、輸卵管、子宮、小腸、または大腸からなる群から選択される請求項54に記載の方法。
【請求項59】
少なくとも1つの血管形成構造体が少なくとも1つの関連細胞をさらに含む請求項54に記載の方法。
【請求項60】
少なくとも1つの関連細胞が、ニューロン、心筋細胞、軟骨細胞、膵腺房細胞、ランゲルハンス島、骨細胞、肝細胞、クッパー細胞、線維芽細胞、筋細胞、筋芽細胞、衛星細胞、脂肪細胞、前脂肪細胞、胆管上皮細胞、プルキンエ細胞、またはペースメーカー細胞からなる群から選択される請求項59に記載の方法。
【請求項61】
少なくとも1つの血管予形成構造体が、サイトカイン、ケモカイン、抗生物質、薬剤、鎮痛剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される請求項54に記載の方法。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−541953(P2008−541953A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514921(P2008−514921)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/021542
【国際公開番号】WO2006/130851
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(507396448)アリゾナ・ボード・オブ・リージェンツ・オン・ビハーフ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・アリゾナ (3)
【Fターム(参考)】