説明

血管運動症状を予防および治療するためのノルエピネフリン再取り込み修飾因子(モジュレーター)の利用

【解決手段】 本発明は、紅潮など、とりわけ体温調節の機能障害によって引き起こされる血管運動症状の予防および治療において、ノルエピネフリンレベルを調節する化合物とその化合物の組成物の利用に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連文献の相互参照
この出願書類では、2002年10月15日に出願された米国出願番号第60/418,591号の利益を主張し、そこに開示されたすべての内容はこの参照により組み込まれている。
【0002】
本発明は、とりわけ血管運動症状(VMS)の予防および治療において、ノルエピネフリンレベルを調節する化合物とその化合物の組成物の利用に関するものである。
【背景技術】
【0003】
紅潮(Hot flush)や寝汗とされる血管運動症状(VMS)は、更年期(閉経期)に関連して最も多くみられる症状であり、自然閉経または手術により誘導された閉経後、全女性の60%〜80%に生じる。VMSは、性ステロイドの減少に対する中枢神経系(CNS)の適応反応である可能性が高い。今日まで、VMSに対する最も効果的な治療は、エストロゲンおよび/または一部のプロゲスチンなどのホルモンを基本とした治療である。ホルモン療法はVMSの軽減に非常に有効であるが、すべての女性に適している訳ではない。VMSは性ステロイドレベルの変動によって引き起こされ、男女双方で混乱および障害をきたす可能性があることは、十分認識されている。紅潮は最大30分続き、その頻度は1週間に数回から1日に数回まで異なる可能性がある。前記の患者は紅潮を突然の熱感として経験し、これは顔面から胸部および背部、そして身体の残りの部分へと急速に拡散する。通常は突然の多量の発汗を伴う。それらは1時間に数回生じることがあり、夜間に生じることも多い。夜間に生じる紅潮と突然の多量発汗は睡眠不足を引き起こす可能性がある。緊張感、疲労感、過敏性、不眠症、うつ病、記憶障害、頭痛、不安、神経質や集中不足など、観察される心理学的および情動性の症状は、紅潮と夜間の発汗に続く睡眠不足によって引き起こされると考えられる(Kramer et al.,In:Murphy et al.,3rd Int’l Symposium on Recent Advances in Urological Cancer Diagnosis and Treatment−Proceedings,Paris,France:SCI:3〜7(1992))。
【0004】
紅潮は、1)乳癌生存者の多くがタモキシフェンを投与され、その最も有病率の高い副作用が紅潮である、2)乳癌の治療を受けた女性の多くで、化学療法のため早発性閉経が生じる、3)乳癌の既往がある女性は、乳癌が再発する可能性があるという懸念から、通常エストロゲン療法を否定してきた、などいくつかの理由で、乳癌治療を行った女性で重症度がさらに高いと考えられる(Loprinzi,C.L.,et al,Lancet,2000,356(9247):2059〜2063)。
【0005】
男性もステロイドホルモン(アンドロゲン)を消退(withdrawal)後に紅潮を経験する。これは加齢に伴いアンドロゲンが低下した場合に当てはまり(Katovich,et al.,Proceedings of the Society for Experimental Biology & Medicine,1990,193(2):129〜35)、極端な例では前立腺癌の治療に伴い、ホルモンが欠乏した場合にも当てはまる(Berendsen,et al.European Journal of Pharmacology,2001,419(1):47〜54)。これらの患者の1/3までが、非常に不快で不自由をきたすほど重度な、持続性の頻回症状を経験する。
【0006】
これらの症状の正確なメカニズムは分かっていないが、一般に、体温調節と血管運動活動を調節する正常な恒常性のメカニズムに障害があることを示していると考えられる(Kronenberg et al.,"Thermoregulatory Physiology of Menopausal Hot Flashes:A Review," Can.J.Physiol.Pharmacol.,1987,65:1312〜1324)。
【0007】
エストロゲン治療(エストロゲン補充療法など)が前記の症状を軽減するという事実は、これらの症状とエストロゲンの欠乏との間に関連性があることを証明している。例えば、人生における更年期は上述したとおり、広範な他の急性症状と関連しており、これらの症状は通常、エストロゲン反応性である。
【0008】
VMSはホルモン療法(経口、経皮、または移植)によって通常治療されるが、患者によってはエストロゲン投与に忍容性を示すことができない(Berendsen,Maturitas,2000,36(3):155〜164,Fink et al.,Nature,1996,383(6598):306)。さらに、ホルモン補充療法は、通常ホルモンに感受性のある癌(乳癌または前立腺癌など)に罹患しているか、そのリスクがある女性または男性には推奨されない。従って、非ホルモン療法(フルオキセチン、パロキセチン[SRIs]、クロニジンなど)が臨床的に評価されている。国際特許第WO9944601号は、フルオキセチンを投与することで、ヒト女性における紅潮を軽減する方法を公開している。ステロイド、αアドレナリンアゴニスト、β遮断薬など、他の選択肢も紅潮の治療について研究されており、成果の度合いは様々であった(Waldinger et al.,Maturitas,2000,36(3):165〜168)。
【0009】
α−アドレナリン受容体が体温調節機能障害に関与していることが報告された(Freedman et al.,Fertility & Sterility,2000,74(1):20〜3)。これらの受容体はシナプス前後の両方にあり、中枢神経系および末梢神経系の抑制に関与している。アドレナリンα2受容体には4種類の異なるサブタイプがあり、すなわちα2A、α2B、α2C、およびα2Dである(Mackinnon et al.,TIPS,1994,15:119;French,Pharmacol.Ther.,1995,68:175)。非選択的αアドレナリン受容体アンタゴニストのヨヒンビンが紅潮を誘導し、αアドレナリン受容体アゴニストのクロニジンが前記ヨヒンビンの作用を軽減することが報告された(Katovich,et al.,Proceedings of the Society for Experimental Biology & Medicine,1990,193(2):129〜35,Freedman et al.,Fertility & Sterility,2000,74(1):20〜3)。クロニジンは紅潮の治療に利用されてきた。しかし、そのような治療を利用することは、ここに示し、関連分野で既知の紅潮を軽減するために必要な高用量によって引き起こされる、多数の好ましくない副作用を伴う。
【0010】
体温調節の複雑で多面的な性質と、体温調節の恒常性維持におけるCNSとPNSの相互作用を考えると、血管運動症状を標的とするため、複数の治療とアプローチが開発される可能性がある。本発明は、前記ノルアドレナリン系を調節することで、NEの活性を回復させる新しい方法に焦点を当てる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、例えば閉経前、閉経前後、閉経後の女性、および自然に、化学的に、または外科的に更年期となった男性が経験する、とりわけ、例えば体温調節機能障害によって引き起こされる血管運動症状(VMS)を予防および治療するため、ノルエピネフリンレベルを調節する化合物とその化合物を含む組成物を対象としている。いくつかの観点において、本発明は、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤を単独で、またはノルエピネフリン系を調節するセロトニン再取り込み阻害剤との併用での、化合物および組成物の利用方法に関するものである。別の観点では、本発明は、単一化合物、または化合物の組み合わせとして、アドレナリン作動性α2受容体アンタゴニスト活性との組み合わせにおいて、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤活性を有する化合物およびその化合物の組成物の利用方法に関するものである。さらに他の実施形態では、本発明は、二重NRI/SRI活性を有する化合物およびその化合物の組成物の利用方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1実施形態では、本発明は血管運動症状の治療または予防を必要とする対象者において、血管運動症状を治療または予防する方法を対象としており、
前記対象者に、少なくとも1種類のノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類の治療上有効な量を有する組成物を投与する工程を有するものである。
【0013】
好適な実施形態では、前記化合物は、SERT:NETが約1,000:1未満の選択比を有する。他の好適な実施形態では、前記化合物は、SERT:NETが約2:1以上、より好ましくは約5:1以上、さらに好ましくは約10:1以上の選択比を有するものである。
【0014】
他の好適な実施形態では、本発明は、前記組成物がさらに少なくとも1種類のセロトニン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類の治療上有効な量を有する方法を対象としている。特定の好適な実施形態では、前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤および前記セロトニン再取り込み阻害剤が併用で投与されるものである。
【0015】
さらに他の好適な実施形態では、本発明は、前記組成物がさらに少なくとも1種類のアドレナリンα2受容体アンタゴニストまたはその薬学的に許容可能な塩類の治療上有効な量を有する方法を対象としている。特定の好適な実施形態では、前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤および前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストが同時に、もしくは併用で投与されるものである。特定の好適な実施形態では、前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストがアドレナリンα2A受容体、アドレナリンα2B受容体、アドレナリンα2C受容体、またはアドレナリンα2D受容体に対して選択的であるものである。
【0016】
さらに他の実施形態では、本発明は、血管運動症状の治療または予防を必要とする対象者において、血管運動症状を治療または予防する方法を対象としており、
前記対象者に、少なくとも1種類の二重NRI/SRI化合物またはその薬学的に許容可能な塩類の治療上有効な量を投与する工程を有し、ここで前記量は約37.5mg/日未満である。
【0017】
他の実施形態では、本発明は薬学的組成物を対象としており、これは、
a.少なくとも1種類のノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類と、
b.少なくとも1種類のセロトニン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類と、
c.少なくとも1種類の薬学的に許容可能な担体と
を有するものである。
【0018】
他の実施形態では、本発明は薬学的組成物を対象としており、これは、
a.少なくとも1種類のノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類と、
b.少なくとも1種類のアドレナリンα2受容体アンタゴニストまたはその薬学的に許容可能な塩類と、
c.少なくとも1種類の薬学的に許容可能な担体と
を有するものである。
【0019】
特定の好適な実施形態では、前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤およびアドレナリンα2受容体アンタゴニストは、単一化合物である。他の好適な実施形態では、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤およびアドレナリンα2受容体アンタゴニストは、2若しくはそれ以上の化合物の組み合わせである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、例えば閉経前、閉経前後、閉経後の女性、および自然に、化学的に、または外科的に更年期となった男性が経験する、とりわけ、例えば体温調節機能障害によって引き起こされる血管運動症状(VMS)を予防および治療するため、ノルエピネフリンレベルを調節する化合物とその化合物を含む組成物を対象としている。いくつかの観点において、本発明は、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤を単独で、またはノルエピネフリン系を調節するセロトニン再取り込み阻害剤との併用での、化合物および組成物の利用方法に関するものである。別の観点では、本発明は、単一化合物、または化合物の組み合わせとして、アドレナリン作動性α2受容体アンタゴニスト活性との組み合わせにおいて、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤活性を有する化合物およびその化合物の組成物の利用方法に関するものである。
【0021】
説明された本発明は、血管運動不安定および/または機能障害の治療、軽減、抑制および/または予防の分野における大きな突破口を示していると考えられる。
【0022】
エストロゲンレベルが低いかエストロゲンが欠乏している場合、NEおよび5−HTの正常なレベルは変化し、神経伝達物質レベルの変化によって前記体温調節中枢の感度が変化すると考えられる。この変化した化学物質レベルは熱感または反応として前記体温調節中枢で翻訳されると考えられ、視床下部が下降自律神経経路を活性化し、血管拡張と発汗を介して熱放散を行うと考えられる(紅潮)(図1)。従って、エストロゲン欠乏により、ノルエピネフリン活性が変化すると考えられる。
【0023】
脳幹の神経細胞体(周核体)で合成されたノルエピネフリンは、前記視床下部および脳幹の神経末端で放出される。前記視床下部では、NEは体温調節中枢にあるニューロンの活性を調節する。前記脳幹では、NEはセロトニン作動性ニューロン(5−HT)を神経支配し、アドレナリン作動性α1シナプス後受容体およびアドレナリン作動性α2シナプス後受容体に作用することで、前記セロトニン作動系の活性を刺激する。これに応じて5−HTニューロンも前記体温調節中枢の活性を調節し、NEニューロンにフィードバックする。このフィードバックの連結により、5−HTは5−HT2a受容体を介して作用することで、NEニューロンの活性を抑制する。シナプス間隙のノルエピネフリンもNEニューロンにあるNEトランスポーター(NET)によって取り込まれる。前記トランスポーターはNEを再利用し、複数の神経伝達に利用できるようにする(図2)。
【0024】
本発明は、ノルエピネフリンの活性低下を回復させる方法により、血管運動症状の治療を提供する。前記視床下部または前記脳幹におけるノルエピネフリンの活性は、(i)前記NEトランスポーターの活性を遮断する、(ii)アンタゴニストによりシナプス前アドレナリン作動性α2受容体の活性を遮断する、または(iii)5−HT2aアンタゴニストによりNEニューロンに対する5−HTの活性を遮断することで、上昇させることができる。
【0025】
1つの実施形態では、抗うつ効果を得るために一般的に使用される用量よりも低い低用量でNRI化合物を使用し、正常な体温調節恒常性を維持するための治療が改善されることが発見された。さらに、驚くべきことに、SRI化合物と併用した場合、NRI化合物により、効果の用量関連性が明確に定義される、報告された副作用が減少する、相乗効果により治療を優れたものにする、そのため治療指数が改善するなどの利益が得られる。例えば、高用量のNRIsまたはNRI/SRI化合物のみでは、嘔吐、悪心、発汗、紅潮を誘発する可能性がある(Janowsky,et al.,Journal of Clinical Psychiatry,1984,45(10 Pt 2):3〜9)。本発明は、高用量のNRIのみを用いた場合に引き起こされる副作用なしで、血管運動症状の治療または予防を提供する。
【0026】
ある実施形態では、本発明は、血管運動症状の治療または予防を必要とする対象者において、血管運動症状を治療または予防する方法を対象としており、
前記対象者に、少なくとも1種類のノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類の治療上有効な量を有する組成物を投与する工程を有する。
【0027】
好適な実施形態では、前記化合物は、SERT:NETが約1,000:1未満の選択比を有する。他の好適な実施形態では、前記化合物は、SERT:NETが約2:1以上、より好ましくは約5:1以上、さらに好ましくは約10:1以上の選択比を有するものである。
【0028】
他の好適な実施形態では、本発明は、前記組成物がさらに少なくとも1種類のセロトニン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類の治療上有効な量を有する方法に関する。特定の好適な実施形態では、前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤および前記セロトニン再取り込み阻害剤は、併用で投与される。低用量の既知のNRI化合物であるデシプラミンは、ナロキソン誘導性紅潮に対し、溶媒を投与されたラットと比べてTSTを50%減少させることができた。
【0029】
SRIの例には、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、フルボキサミン、それらの組み合わせ、およびその薬学的に許容可能な塩類を含むが、これだけに限られない。
【0030】
NRIの例には、マプロチリン、レボキセチン、ノルプラミン、デシプラミン、ニソキセチン、アトモキセチン、アモキサピン、ドキセピン、ロフェプラミン、アミトリプチリン、1−[1−(3−フルオロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロフェキサノール、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロフェキサノール、1−[2−(4−メチル−1−ピペラジニル)−1−[3−(トリフルオロメチル)−フェニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(4−メトキシフェニル)−2−[4−メチル−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−[4−(3−クロロフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−メトキシフェニル)−2−[4−フェニルメチル]−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[2−(3−クロロフェニル)1−ピペラジニル]−1−[3−メトキシフェニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[2−[4−(6−クロロ−2−ピラジニル)−1−ピペラジニル]−1−[3−メトキシフェニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[2−[4−(フェニルメチル)]−1−ピペラジニル]−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−メトキシフェニル)−2−[4−[3−(トリフルオロメチル)−フェニル]−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(4−フルオロフェニル)−2−[4−(フェニルメチル)−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−メトキシフェニル)−2−[4−[3−(トリフルオロメチル)−フェニル]−1−ピペラジニル]エチル]シクロペンタノール、1−[1−(4−フルオロフェニル)−2−[4−(フェニルメチル)−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[2−(ジメチルアミノ)−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−フルオロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(ジメチルアミノ)エチル]シクロヘキサノール、1−[2−ジメチルアミノ]−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−ピペラジン−1−イル−エチル]−シクロヘキサノール、それらの組み合わせ、およびそれらの薬学的に許容可能な塩類を含むが、これに限定されない。好ましいNRIsは、デシプラミン、および1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノールであり、特に1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノールの純粋なRおよびS鏡像異性体を含むがこれに限定されない。ジメチルアミン誘導体は、例えばUS−A−4,535,186に記載されたように合成することができ、そこに開示された全体の内容は、この参照により組み込まれている。ピペラジン誘導体は、例えばUS−A−4,826,844に記載されたように合成することができ、そこに開示された全体の内容は、この参照により組み込まれている。
【0031】
別の実施形態では、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)活性とセロトニン再取り込み阻害剤(SRI)活性を有する二重作用の化合物は、正常な体温維持に重要な役割を果たしている。SRI化合物のみでは紅潮を軽減しなかった。驚くべきことに、NRI化合物であるデシプラミンは、SRI化合物と同時投与すると、ナロキソン誘導性紅潮を有意に軽減した。それに応じ、セロトニン再取り込み阻害剤存在下で、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤の効果が有意に上増進された。
【0032】
さらに他の実施形態では、本発明は、血管運動症状の治療または予防を必要とする対象者において、血管運動症状を治療または予防する方法を対象としており、
前記対象者に少なくとも1つの二重NRI/SRI化合物またはその薬学的に許容可能な塩類の治療上有効な量を投与する工程を有し、
前記量は、約37.5mg/日未満、好ましくは約30mg/日未満、さらに好ましくは約25mg/日未満、またさらに好ましくは約20mg/日未満、約15mg/日未満、約10mg/日、および約5mg/日未満である。驚くべきことに、これらの治療上有効な量は、血管運動症状の軽減を達成するために先行技術で用いられた値よりも低い。
【0033】
二重NRI/SRI化合物の例は、ベンラファクシン、O−デスメチル−ベンラファクシン(DVS−233またはODV)、ミルナシプラン、デュロキセチン、その組み合わせ、およびその薬学的に許容可能な塩類である。従って、ベンラファクシン、デュロキセチン、またはミルナシプランなど、前述のNRIまたはSRIのあらゆる組み合わせ、または二重NRI/SRI活性を有する成分(二重作用化合物)は、正常な体温調節恒常性を維持するために、報告されている副作用なしに使用することができる。
【0034】
さらに別の実施形態では、ベンラファクシンは、アドレナリン作動性α2受容体アンタゴニストであるアチパメゾールで誘導される、ナロキソン依存性紅潮の亢進を軽減することができた。これらの結果は、アドレナリン作動性α2受容体を介して、ベンラファクシンがノルエピネフリンのシグナリングを亢進するメカニズムの可能性を示した。
【0035】
NRIとSRIの組み合わせは、血管運動症状を治療する上で、SRI単独で使用するよりもさらにいくつか利点を有する。SRI単独では嘔吐、悪心、性機能障害を誘導する(Annals of Oncology,2000,11:17〜22)。SRI活性とNRI活性の組み合わせは、SRIの有効量を減少し、SRIの副作用を軽減するとともに、薬物作用の発現を早くする。例えば、増量したNRIと10mg/kg用量のSRIを同時に投与した場合、紅潮は10mg/kgの投与と比べ、デシプラミン3mg/kgの投与で100%軽減された(図4)。
【0036】
さらに他の好適な実施形態では、本発明は、前記組成物がさらに少なくとも1種類のアドレナリンα2受容体アンタゴニストまたはその薬学的に許容可能な塩類の治療上有効な量を有する方法に向けられている。特定の好適な実施形態では、前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤および前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストは、同時に、もしくは併用で投与される。特定の好適な実施形態では、前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストは、アドレナリンα2A受容体、アドレナリンα2B受容体、アドレナリンα2C受容体、またはアドレナリンα2D受容体に対して選択的である。
【0037】
アドレナリンα2受容体アンタゴニストは紅潮を誘導することが知られている。驚くべきことに、アドレナリンα2受容体アンタゴニストはNRI化合物と同時投与されると、紅潮を軽減した。1つの実施形態では、NRIがアドレナリンα2受容体アンタゴニストと同時投与された場合、ナロキソン誘導性紅潮の軽減が50%以上向上された。従って、アドレナリンα2受容体アンタゴニストと組み合わせで投与された場合に、NRIの効果が増強されたことを証明している。紅潮に対する効果を変化させずに副作用を遮断するためには、前記用量レベルを、投与されたアドレナリンα2受容体アンタゴニストの用量によって調節する必要があると考えられる。本分野の当業者は、必要以上の実験を行わずにそのような用量を決定する方法を理解している。
【0038】
アドレナリンα2受容体アンタゴニストの例には、アチパメゾール、2−[2−(4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル)エチル]−4,4−ジメチル−1,3−(2H,4H)−イソキノリンジオンジヒドロクロライド(ARC239 ジヒドロクロライド)、2−[(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)メチル]−2,3−ジヒドロ−1−メチル−1H−イソインドールマレイン酸塩(BRL44408 マレイン酸塩)、BRL48962、BRL41992、SKF104856、SKF104078、MK912、2−(2−エチル−2,3−ジヒドロ−2−ベンゾフラニル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール塩酸塩(エファロキサン塩酸塩)、2−(1,4−ベンゾジオキサン−2−イル)−2−イミダゾリン塩酸塩(イダゾキサン塩酸塩)、2−(1−エチル−2−インダゾイル)メチル−1,4−ベンゾジオキサン塩酸塩(イミロキサン塩酸塩)、17α−ヒドロキシ−20α−ヨヒンバン−16β−カルボン酸、メチルエステル塩酸塩(ロオルシン塩酸塩)、(8αR,12αS,13αS)−5,8,8α,9,10,11,12,12α,13,13α−デヒドロ(dechydro)−3−メトキシ−12−(エチルスルホニル)−6H−イソキノ[2,1−Y][1,6]ナフチリジン塩酸塩(RS79948塩酸塩)、2−(2,3−ジヒドロ−2−メトキシ−1,4−ベンゾジオキシン−2−イル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール塩酸塩(RX821002塩酸塩)、8−[(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−2−イル)メチル]−1−フェニル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−4−オン(スピロキサトリン)、17α−ヒドロキシヨヒンバン−16α−カルボン酸メチルエステル塩酸塩(ヨヒンビン塩酸塩)、それらの組み合わせ、またそれらの薬学的に許容可能な塩類を含むが、これだけに限られない。これらの化合物のいくつかは、Tocris Cookson Inc.(エリスヴィル、ミズーリー州)から入手できる。
【0039】
特定の好適な実施形態では、前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストは、アドレナリンα2A受容体、アドレナリンα2B受容体、アドレナリンα2C受容体、またはアドレナリンα2D受容体に対して選択的である。BRL44408およびBRL48962は選択的アドレナリンα2A受容体アンタゴニストとして知られている。イミロキサンは選択的アドレナリンα2A受容体アンタゴニストとして知られている。ロオルシンおよびMK912は選択的アドレナリンα2A受容体アンタゴニストとして知られている。
【0040】
他の実施形態では、本発明は、薬学的組成物を対象としており、
a.少なくとも1種類のノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類と、
b.少なくとも1種類のセロトニン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類と、
c.少なくとも1種類の薬学的に許容可能な担体と
を有するものである。
一般に、前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類は、前記薬学的組成物の総重量に基づき、約0.1重量%〜約90重量%のレベルで存在し、セロトニン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類は、前記薬学的組成物の総重量に基づき、約0.1重量%〜約90重量%のレベルで存在する。好ましくは、前記薬学的組成物の総重量に基づき、前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類は、少なくとも約1重量%のレベルで存在し、前記セロトニン再取り込み阻害剤は、少なくとも約1重量%のレベルで存在する。より好ましくは、前記薬学的組成物の総重量に基づき、前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類は、少なくとも約5重量%のレベルで存在し、前記セロトニン再取り込み阻害剤は少なくとも重量約5%のレベルで存在する。さらに好ましくは、前記薬学的組成物の総重量に基づき、前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類は、少なくとも約10重量%のレベルで存在し、前記セロトニン再取り込み阻害剤は、少なくとも約10重量%のレベルで存在する。また、さらに好ましくは、前記薬学的組成物の総重量に基づき、前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類は、少なくともは約25重量%のレベルで存在し、前記セロトニン再取り込み阻害剤は、少なくとも約25重量%のレベルで存在する。
【0041】
他の実施例では、本発明は薬学的組成物を対象としており、
a.少なくとも1種類のノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類と、
b.少なくとも1種類のアドレナリンα2受容体アンタゴニストまたはその薬学的に許容可能な塩類と、
c.少なくとも1種類の薬学的に許容可能な担体と
を有する。
一般に、前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類は、前記薬学的組成物の総重量に基づき、重量約0.1%から重量約90%のレベルで存在し、アドレナリンα2受容体アンタゴニストまたはその薬学的に許容可能な塩類は、前記薬学的組成物の総重量に基づき、重量約0.1%から重量約90%のレベルで存在する。好ましくは、前記薬学的組成物の総重量に基づき、前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類は少なくとも重量約1%のレベルで存在し、前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストは少なくとも重量約1%のレベルで存在する。より好ましくは、前記薬学的組成物の総重量に基づき、前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類は少なくとも重量約5%のレベルで存在し、前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストは少なくとも重量約5%のレベルで存在する。さらに好ましくは、前記薬学的組成物の総重量に基づき、前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類は少なくとも重量約10%のレベルで存在し、前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストは少なくとも重量約10%のレベルで存在する。またさらに好ましくは、前記薬学的組成物の総重量に基づき、前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類は少なくとも重量約25%のレベルで存在し、前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストは少なくとも重量約25%のレベルで存在する。
【0042】
特定の好適な実施形態では、前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤およびアドレナリンα2受容体アンタゴニストは、単一化合物である。他の好適な実施形態では、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤およびアドレナリンα2受容体アンタゴニストは、2若しくはそれ以上の化合物の組み合わせである。
【0043】
そのような組成物は、Remingtons Pharmaceutical Sciences,17th edition,ed.Alfonoso R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA(1985)で報告されているような、薬学的に許容可能な手順に沿って調整される。薬学的に許容可能な担体とは、製剤中の他の成分と適合し、生物学的に許容される担体である。
【0044】
本発明の化合物は、そのまま、若しくは従来の薬剤担体と合わせて、経口または非経口投与されることが可能である。適切な固体担体とは、香料添加剤、潤滑剤、可溶化剤、懸濁剤、賦形剤、流動促進剤、圧縮補助剤、結合剤、または錠剤粉砕試薬、またはカプセル物質などとしても作用することができる、1若しくはそれ以上の物質を含むことができる。散剤では、前記担体は細かく粉砕された固体であり、細かく粉砕された活性成分との混合物となっている。錠剤では、活性成分を必要な圧縮性を有する担体と適当な割合で混合し、望みの形とサイズに固める。前記散剤と錠剤には最大99%の活性成分を含んでいることが望ましい。適切な固体担体には、例えばリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、でんぷん、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシルメチル・セルロース・ナトリウム、ポリビニルピロリジン、低融点ワックス、およびイオン交換樹脂などがある。
【0045】
液体担体は、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤の調整に使用される。本発明の活性成分は、水、有機溶媒、その両方の混合物、または薬学的に許容可能な油または脂肪など、薬学的に許容可能な液体担体に溶解または懸濁され得る。前記液体担体には、例えば可溶化剤、乳化剤、緩衝液、防腐剤、甘味料、香料添加剤、懸濁剤、増粘剤、着色料、粘性調節剤、安定剤、あるいは浸透圧調節剤など、他の適切な医薬添加物を含むことができる。経口および非経口投与に用いる適切な液体担体の例としては、水(例えば、セルロース誘導体、好ましくはカルボキシルメチル・セルロース・ナトリウム溶液など、上記の添加剤を含む)、アルコール(一価アルコール、グリコールなどの多価アルコールを含む)、それらの誘導体、油(ヤシ油やラッカセイ油など)を含む。非経口投与に対しては、前記担体はオレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルなど、油状のエステルとすることもできる。無菌液体担体は、非経口投与に対して、無菌液状組成物として用いられる。
【0046】
無菌の水溶液または懸濁液の液体薬学的組成物は、例えば筋肉内、腹腔内、皮下注射として投与されることが可能である。無菌溶液は静脈内投与されることも可能である。経口投与は液体または固体の組成物とすることができる。
【0047】
前記薬学的組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、坐剤などの単位剤形であることが望ましい。このような剤形では、前記組成物は適切な量の活性成分を含む単位量に分けられ、前記単位剤形は、例えば分包した散剤、バイアル、アンプル剤、前充填シリンジ、あるいは液体を含む小袋などとして包装されてもよい。前記単位剤形は、例えば、カプセル剤または錠剤のみであってもよく、若しくはそのような組成物の適当数を包装に入れることもできる。
【0048】
以下の記述は、本明細書中の用語と略語を十分理解するために提供される。
【0049】
本明細書および請求項で使用される、「a」、「an」および「the」の単数形は、特に文脈で明らかに示されていない限り、複数も言及することを含む。従って、例えば、「あるアンタゴニスト」(「an antagonist」)は複数のそのようなアンタゴニストを含み、「ある化合物」(「a compound」)については1もしくはそれ以上の化合物および当業者に知られているそれに同等なものを言及する。
【0050】
「血管運動症状」、「血管運動不安定症状」、および「血管運動障害」という語句は、これに限定されるものではないが、紅潮(のぼせ)、不眠症、睡眠障害、気分障害、興奮性、過度の発汗、寝汗、倦怠感、およびとりわけ体温調節障害に起因するそれに同種のものを含む。
【0051】
「紅潮」という用語は、「当業者には認識された(art−recognized)」の用語であり、対象者において通常発汗を伴っており、一般的に突然の皮膚の紅潮から成る体温の一過性の障害を指している。「紅潮」という用語は、血管運動症状、血管運動不安定、血管運動機能不全、寝汗、血管運動障害、紅潮と同じ意味で使われてもよい。
【0052】
本明細書で使用される「ノルエピネフリン再取り込み阻害活性を有する化合物」という語句は、中枢神経系、末梢神経系、および/もしくは末梢系を通じてノルエピネフリン(NE)の再取り込みを阻害することによって、NE値を変化させる化合物を指し、EC50値あるいはヒト輸送体に対するNE取り込み固有結合%で測定されるSERT:NET活性の選択比率が少なくともおよそ1:1である化合物を指す。好ましくは、前記SERT:NETの選択比率がおよそ1000:1を超えない。好ましくは、前記SERT:NETの選択比率はおよそ2:1より大きい。より好ましくは、前記SERT:NETの選択比率はおよそ5:1より大きい。さらに好ましくは、前記SERT:NETの選択比率はおよそ10:1より大きい。別の好ましい実施形態において、SERT:NETの比率はおよそ10:1〜およそ500:1未満であり、好ましくはおよそ300:1未満である。
【0053】
本明細書で使用される「セロトニン再取り込み阻害活性を有する化合物」という語句は、中枢神経系、末梢神経系、および/もしくは末梢系を通じてセロトニンの再取り込みを阻害することによって、セロトニン値を高める化合物を指す。
【0054】
本明細書で使用される「NRI/SRI二重活性を有する化合物」という語句は、セロトニン再取り込み阻害剤およびノルエピネフリン再取り込み阻害剤として二重活性を有する単一化合物を指す。本明細書で使用する二重活性を有する化合物は、二重作用化合物である。
【0055】
明細書中の省略形は下記のような測定単位、技術、性質、あるいは化合物に相当する。「分(min)」は分(minutes)、「時間(h)」は時間(hour(s))、「μL」はマイクロリットル、「mL」はミリリットル、「mM」はミリモル濃度、「M」はモル濃度、「mmole」はミリモル、「cm」はセンチメートル、「SEM」は標準誤差、「IU」は国際単位を指す。「Δ℃」およびΔTSTは、ナロキソンによる紅潮を誘発する前にTSTを基準にして15分間規格化された尾の皮膚温度変化を指す。「ED50値」は、観察状況あるいは効果が50%軽減する投与量を指す(50%は最大指標)。
「尾部皮膚温度(Tail skin temperature)」はTSTと略する。
「ノルエピネフリン輸送体(Norepinephrine transporter)」はNETと略する。
「ヒトノルエピネフリン輸送体(Human norepinephrine transporter)」はhNETと略する。
「セロトニン輸送体(Serotonin transporter)」はSERTと略する。
「ヒトセロトニン輸送体(Human serotonin transporter)」はhSERTと略する。
「ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(Norepinephrine reuptake inhibitor)」はNRIと略する。
「選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(Selective norepinephrine reuptake inhibitor)」はSNRIと略する。
「セロトニン再取り込み阻害剤(Serotonin reuptake inhibitor)」はSRIと略する。
「選択的セロトニン再取り込み阻害剤(Selective serotonin reuptake inhibitor)」はSSRIと略する。
「ノルエピネフリン(Norepinephrine)」はNEと略する。
「セロトニン(Serotonin)」は5−HTと略する。
「皮下(Subcutaneous)」はscと略する。
「腹腔(Intraperitoneal)」はipと略する。
「経口(Oral)」はpoと略する。
【0056】
本開示の文脈では、多数の用語が使用される。本明細書で使用する「治療(treatment,treating)」は予防的、治癒的、および緩和的治療を含む。
【0057】
「治療的有効量」は、好ましい効果を達成するために、ある用量を必要期間投与するときの効果的な量を指す。特に、「治療的有効量」は、血管運動症状に悩む対象者において、有効性ステロイドの欠如の一部またはすべてを補うために、ノルエピネフリン値を増加させる化合物あるいは化合物の組成物の量を指す。ホルモン値の変化は本発明に必要とされる化合物の量に影響を及ぼす。例えば、閉経前状態は、閉経期前後の状態より高いホルモン値であるため、必要な化合物の値が低いと考えられる。
【0058】
本発明の成分の治療的有効量は、選択された特定の化合物、成分あるいは組成物、投与経路、患者個々の望ましい反応を誘導する成分の活性(単独あるいは1もしくはそれ以上の薬剤の組み合わせ)のみならず、軽減される病状や状態の重症度、ホルモン値、年齢、性別、患者の体重、患者の状態、治療した病理状態の重症度、特定の患者の同時投薬あるいは特別な食事療法などの因子、および当業者に認知されるその他の因子などによって異なり、最終的には担当医の裁量による適切な投与量によって、治療的有効量は異なる。用法・用量は治療効果の改善を提供するように調節してもよい。治療的有効量は、治療上有益な効果があらゆる毒性あるいは有害な効力を上回るような量である。
【0059】
好ましくは、本発明の化合物は、1回の投与量で一時的に紅潮の回数が治療開始前に比べて減少するように投与される。そのような治療は、治療開始前の紅潮の重症度と比較して、まだあるすべての紅潮の全体的な重症度あるいは強度分布を減少させるのに有益でもある。
【0060】
例えば、頻発する紅潮を経験する患者に対して、NRI活性を有する化合物、あるいはSRI活性とNRI活性を有する化合物の組み合わせを投与してもよく、好ましくは、1回の投与量がおよそ0.1mg/日〜およそ200mg/日であり、より好ましくは、およそ1mg/日〜およそ100mg/日であり、最も好ましくはおよそ1mg/日〜50mg/日であり、紅潮の回数および/もしくは紅潮の重症度、あるいはそのような紅潮を軽減、あるいは実質的に取り除くのに十分な期間、投与してもよい。
【0061】
さらに、NRI活性を有する化合物は、アドレナリンα2受容体アンタゴニスト活性を有する化合物と共に同時投与することが可能であり、好ましくは、およそ0.1mg/day〜およそ300mg/dayの投与量であり、より好ましくは、およそ1mg/day〜200mg/dayであり、最も好ましくは、およそ1mg/day〜100mg/dayであり、紅潮の回数および/もしくは紅潮の重症度、あるいはそのような紅潮を軽減および/もしくは実質的に除去するのに十分な期間、投与することが可能である。
【0062】
「成分」、「化合物の組成物」、「化合物」、「薬物」、あるいは「薬理学的活性物質」、「活性物質」あるいは「薬剤」という用語は、1つの化合物、複数の化合物、あるいは対象者(ヒトあるいは動物)に投与した場合、部分的および全身の作用による所望の薬理学的および生理的効果を誘発する合成物質を指すために、本明細書では同義的に使用される。本明細書の成分は、NRI活性単独、あるいはNRI活性とSRI活性との組み合わせを含んでもよい。本発明の成分は、実質的にSRI活性がないものを含んでもよく、あるいはSRI活性がない場合は、本質的にNRI活性を示してもよい。さらに、本発明の化合物は、NRI活性との組み合わせとアドレナリンα2受容体アンタゴニスト活性との組み合わせを含んでもよい。
【0063】
「成分」、「薬物」、あるいは「薬理学的活性物質」、「活性物質」、「薬剤」という用語は、生物(ヒトあるいは動物)に投与した場合、部分的および全身の作用による所望の薬理学的および生理的効果を誘発する1つの化合物、複数の化合物、あるいは合成物質を指すために、本明細書では同義的に使用される。本明細書の成分は、ノルエピネフリン再取り込み阻害活性、あるいはセロトニン再取り込み阻害活性とノルエピネフリン再取り込み阻害活性の組み合わせを含んでもよい。さらに、本明細書の成分は、ノルエピネフリン再取り込み阻害活性とアドレナリンα2受容体アンタゴニスト活性との組み合わせを含んでもよい。
【0064】
「調節」という用語は、例えば、受容体結合あるいはシグナル伝達活性などの生物学的活性あるいは工程の機能特性を増進あるいは阻害するいずれかの能力を指す。そのような増進あるいは阻害は、シグナル伝達経路の活性化のような特別な事象の発生に付随してもよく、および/もしくは特定の細胞型にのみに明らかであってもよい。調節物質は、抗体、小分子、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、あるいは蛋白質、好ましくは小分子またはペプチドなど、任意の化合物を含むように意図されている。
【0065】
本明細書で使用される「阻害剤」という用語は、セロトニン再取り込み活性、あるいはノルエピネフリン再取り込み活性など、特定の働きを阻害、抑制、抑圧、あるいは軽減する任意の薬剤を指す。
【0066】
「阻害剤」という用語は、例えば抗体、小分子、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、あるいはプロテイン、好ましくは小分子またはペプチドなど、任意の化合物を含むことが意図されており、前記任意の化合物は、部分的、全面的、競合的、および/もしくは抑制的に、哺乳類への影響、好ましくはヒトノルエピネフリン再取り込み、あるいはセロトニン再取り込みとノルエピネフリン再取り込みの両方への影響を示し、従って、前記任意の化合物は、内因性ノルエピネフリン再取り込み、あるいはセロトニン再取り込みとノルエピネフリン再取り込みの両方の生物学的影響の一部あるいはすべてを軽減または遮断、好ましくは軽減することを示す。
【0067】
本発明の範囲内において、NRIs、SRIs、NRI/SRIs、およびアドレナリンα2受容体アンタゴニストは、薬剤として許容される塩類の形態に調整されてもよい。本明細書で使用される「薬剤として許容される塩類」とは薬剤として許容される非毒性の酸から調整される塩類を指し、無機塩類、および有機塩類を含む。適切な非毒性塩類は、例えば酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、琥珀酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、および同種のものなどの無機酸および有機酸を含む。特に好ましいのは、塩酸、臭酸、リン酸、および硫酸であって、最も好ましいのは塩酸塩である。
【0068】
本明細書で使用される「投与」とは、本発明の化合物あるいは組成物の直接的な投与、あるいは、体内で同等量の活性化合物あるいは物質を形成するプロドラッグ、誘導体、あるいは類似体の投与を意味する。
【0069】
本発明は、NRIs、SRIs、NRI/SRIs、およびアドレナリンα2受容体アンタゴニストのプロドラッグを含む。本明細書で使用される「プロドラッグ」とは、生体内で代謝手段(加水分解など)によって、NRIs、SRIs、NRI/SRIs、およびアドレナリンα2受容体アンタゴニストに変換可能な化合物を意味する。例えば、Bundgaard,(ed.),Design of Prodrugs,Elsevier(1985);Widder,et al(ed.),Methods in Enzymology,vol.4,Academic Press(1985);Krogsgaard−Larsen,et al.,(ed).Design and Application of Prodrugs,Textbook of Drug Design and Development,Chapter5,113〜191(1991),Bundgaard,et al.,Journal of Drug Deliver Reviews,8:1〜38(1992),Bundgaard,J.of Pharmaceutical Siences,77:285 et seq.(1988);およびHiguchi and Stella(eds.)Prodrugs as Novel Drug Delivery Systems,American Chemical Society(1975)において考察されているように、プロドラッグの様々な形態が当技術分野で知られている。
【0070】
本発明の範囲内において、NRIs、SRIs、NRI/SRIs、およびアドレナリンα2受容体アンタゴニストは、有機酸および無機化合物の塩類を含む薬剤として許容される塩類の形態に調整されてもよい。NRIsの酸添加塩類が好ましい。
【0071】
さらに、本発明の化合物は、例えば水、エタノール、および同種のものを有する薬剤として許容される溶媒と共に、溶媒和および非溶媒和の形態で存在してもよい。一般的に、本発明の目的において、溶媒和の形態は非溶媒和の形態と同等であると見なされる。
【0072】
本発明に従って使用される薬学的組成物は、薬剤として許容される担体と共に、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、セロトニン再取り込み阻害剤とノルエピネフリン再取り込み阻害剤、あるいは薬剤として許容されるその塩類を含む。前記組成物は、1もしくはそれ以上の薬剤として許容される担体と共に、有効成分として、1もしくはそれ以上のノルエピネフリン再取り込み阻害剤、またはセロトニン再取り込み阻害剤およびノルエピネフリン再取り込み阻害剤の各々を1つあるいはそれ以上含む。
【0073】
本発明に従って使用される薬学的組成物は、薬剤として許容される担体と共に、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、アドレナリンα2受容体アンタゴニストとノルエピネフリン再取り込み阻害剤、あるいは薬剤として許容されるその塩類を含む。前記組成物は、1つあるいはそれ以上の薬剤として許容される担体と共に、有効成分として、1つあるいはそれ以上のノルエピネフリン再取り込み阻害剤、またはアドレナリンα2受容体アンタゴニストとノルエピネフリン再取り込み阻害剤の各々を1つあるいはそれ以上含む。
【0074】
本発明化合物の中にはキラル中心を含むものがあってもよく、そのような化合物は立体異性体(すなわち鏡像異性体)の形態で存在しても良い。本発明は、そのような立体異性体、およびラセミ混合物を含む任意のそれらの混合物をすべてを含む。実質的に純粋な立体異性体と立体異性体とのラセミ混合物は、本発明の範囲内である。本明細書で使用される「実質的に純粋」という用語は、望ましい立体異性体が他の可能な立体異性体と比較して、少なくともおよそ90モル%、より好ましくは少なくともおよそ95モル%、最も好ましくは少なくともおよそ98モル%で存在していることを指す。好ましい鏡像異性体は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、およびキラル塩の形成と再結晶、あるいは本明細書に記載した方法による調整を含む当業者に知られている任意の方法によって、ラセミ混合物から単離されたものであってよい。例えばJacques,et al.,Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley Interscience,New York,1981);Wilen,S.H.,et al.,Tetrahedron 33:2725(1977);Eliel,E.L,Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw−Hill, NY,1962);Wilen,S.H.Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268(E.L.Eliel,Ed.,University of Notre Dame Press,Notre Dame,IN 1972)を参照。
【0075】
本発明に従って使用される薬学的組成物は、薬剤として許容される担体と共に、NRI単独、アドレナリンα2受容体アンタゴニストを少なくとも1つ伴ったNRI/SRIあるいはNRI、または薬剤として許容されるその塩類を含む。前記組成物は、有効成分として、1あるいはそれ以上の薬剤として許容される担体と共に、NRI(s)を1もしくはそれ以上、NRIおよびSRIの各々を1もしくはそれ以上、NRI/SRI(s)を1もしくはそれ以上、またはNRIおよびアドレナリンα2受容体アンタゴニストの各々を1もしくはそれ以上含む。
【0076】
「併用治療」という用語は、例えば紅潮、発汗、体温調節が関連した状態あるいは疾患、またはその他など、本明細書で記載した治療的状態、または疾患を処置するために、2もしくはそれ以上の治療薬または化合物を投与することを指す。そのような投与は、例えば、NRI/アドレナリンα2受容体アンタゴニスト活性を有する化合物を1回で、あるいはNRI、SRI、またはアドレナリンα2受容体アンタゴニスト活性それぞれに対して別々の複数の化合物というように、これらの治療薬または化合物を同時に混合投与[T1]することを含む。さらに、そのような投与は、それぞれの種類の治療薬を共に使用することも含む。いずれにしても、治療計画は、本明細書に記載した状態や疾患の治療において、複合薬の有益な効果を提供する。
【0077】
投与経路は任意の経路であってもよく、そのような経路は、活性ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、あるいはセロトニン再取り込み阻害剤とノルエピネフリン再取り込み阻害剤を、適切、あるいは望ましい場所へ効果的に輸送し、例えば経口、経鼻、経肺、経皮など、受動的あるいはイオン泳動的な輸送、あるいは例えば直腸、蓄積、皮下、静脈内、尿道内、筋肉内、鼻腔内、点眼剤、軟膏などの非経口などの任意の経路である。さらに、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤とセロトニン再取り込み阻害剤の投与は併用あるいは同時投与であってもよい。
【0078】
「対象者」あるいは「患者」は、組成物および/若しくは本発明の方法で治療可能なヒトを含む動物を指す。「対象者」は、1つの性を指し示していない限り男女両方を指す。従って、「患者」という用語は、例えばヒトなど、血管運動障害の治療あるいは予防によって利益を得る任意の哺乳類を含み、特に哺乳類が女性であれば、閉経前、閉経期前後、閉経後の期間にある。さらに、患者という用語は、ヒトを含むメスの動物を含み、さらにヒトの中では閉経を経験した高齢女性のみならず、子宮摘出を経験した女性、あるいは例えば副腎皮質ステロイドの長期投与を経験した女性など、何らかの理由でエストロゲンの生成が抑制された女性、クッシング症候群に罹患した女性、あるいは性腺発育生涯のある女性などを含む。しかしながら、「患者」という用語は女性に限ることを意図するものではない。
【0079】
「早発閉経」、または「人為的閉経」という用語は、40歳以前に生じる可能性がある未知の卵巣不全を指す。卵巣不全は、喫煙、高い標高での生活、または貧弱な栄養状態などに関連している可能性がある。人為的閉経は、卵巣摘除術、化学療法、骨盤の放射線療法、または卵巣血液供給を低下させるあらゆる工程に起因しても良い。
【0080】
[閉経前」という用語は閉経の前を意味しており、「閉経期前後」という用語は月経閉止期間を意味しており、「閉経後」という用語は閉経の後を意味する。「卵巣摘出」は1つあるいは2つの卵巣を取り除くことであり、Merchenthaler et al.,Maturitas,1998,30(3):307〜316に従って行うことができる。
【0081】
「副作用」は、薬剤あるいは手法が使用される目的以外の結果を示し、特に組織あるいは臓器系において投与による効果以外の薬剤によって引き起こされる悪影響を指す。例えば、「副作用」という用語は、NRIsあるいはNRI/SRI化合物を単独で大量投与した場合に起こる例えば嘔吐、悪心、発汗および紅潮などの状態を指す(Janowsky,et al.,Journal of Clinical Psychiatry,1984,45(10Pt2):3〜9)。
【0082】
実施例
本発明はさらに以下の例によって定義され、この中では、他に記載されていない限り、すべての割合およびパーセンテージが重量によって示され、温度は摂氏である。これらの例は本発明の好適な実施例を示しているが、説明のためのみに示されていることは理解されることとする。前記の議論とこれらの例から、当業者は本発明の重要な特徴を確認でき、その精神と範囲から離れずに、様々な使用と条件に適合させるように、本発明に様々な変更および修正を加えることができる。
【0083】
一般的な方法
試薬:ベンラファクシンおよびO−デスメチル−ベンラファクシン(DVS−233またはODV)はUS−A−4,535,186に記載されているとおりに調整される。デシプラミンは、US−A−3,454,554に記載されているとおりに調整される。レボキセチンは、米国特許公開番号第2002/0107249号に記載されているとおりに調整される。1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール(ラセミ体)、R−1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール、S−1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(ジメチルアミノ)エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−クロロ−フェニル)−2−ピペラジン−1−イル−エチル]−シクロヘキサノール、および1−[2−(ジメチルアミノ)−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)エチル]シクロヘキサノールは、US−A4,826,844(ピペラジン誘導体)またはUS−A−4,535,186(ジメチルアミノ誘導体)に記載されているとおりに調整される。以下の試薬:フルオキセチン(Sigma、セントルイス、ミズーリー州)、モルヒネアルカロイドペレット(Murty Pharmaceuticals、レキシントン、ケンタッキー州)、アチパメゾール(Pfizer、ニューヨーク、ニューヨーク州)、ケタミン(Phoenix Pharmaceuticals、ベルモント、カリフォルニア州)、およびナロキソン(Research Biochemicals International、セントルイス、ミズーリー州)は、市販の試薬を購入した。
【0084】
投与:すべての投与量はmg/kgに基づいて調整した。化合物は滅菌水、0.25% Tween/メチルセルロース、または2.0% Tween/メチルセルロースに溶解され、皮下(sc)または腹腔内(ip)に注入し以下の投与量で使用した、ベンラファクシン(1、8、10、20、40mg/kg)、ODV(1、10、30、60mg/kg)、フルオキセチン(10、20、60mg/kg)、デシプラミン(0.01、1.0、10、30mg/kg)、レボキセチン(0.01、1.0、10、30、60mg/kg)、R−1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール(30mg/kg、ip)、R−1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール(30mg/kg、ip)、S−1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール(30mg/kg、ip)、1−[1−(3−クロロ−フェニル)−2−ピペラジン−1−イル−エチル]−シクロヘキサノール(30mg/kg、ip)、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(ジメチルアミノ)エチル]シクロヘキサノール(30mg/kg、sc)、1−[2−(ジメチルアミノ)−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)エチル]シクロヘキサノール(30mg/kg、sc)、およびアチパメゾール(1mg/kg)。ケタミン(Ketaject,Phoenix Pharmaceuticals、ベルモント、カリフォルニア州)は、軽度の鎮静作用はあるが、尾部皮膚温度の変化を引き起こさないと測定された投与量(40mg/kg)で後肢に筋肉内注射した。
【0085】
動物:卵巣摘出SD(Sprague−Dawley)ラット(180〜220g)を市販の製造販売元(Taconic、ジャーマンタウン、ニューヨーク州)から入手し、25℃に維持された部屋で、12時間の明/暗サイクル下で1匹ずつ飼育した。動物は、標準ラット食餌と水を自由に与えた。
【0086】
モルヒネ依存性モデル:卵巣摘出ラットには、ストレス反応を最小限にするために、溶媒を8〜9日間、1日1回注入し、実験日に化合物を投与した。投与4日目に、背側肩甲部に2個の徐放性モルヒネペレット(1ペレット当たり75mg)を皮下移植し、モルヒネ依存性を誘発した。このモデルは、エストロゲン処理により可逆的な、確立されたモルヒネ依存性のナロキソン誘導紅潮の系列(paradigm)に基づいている(Katovich et al.,Proceedings of the Society for Experimental Biology & Medicine,1990,193(2):129〜35)。移植後4〜6日目、TSTの一時的な上昇を引き起こすオピオイドアンタゴニスト(ナロキソン)により、モルヒネ禁断を誘導した。標準的な実験では、ナロキソン注入前40〜60分に、ラットにテスト化合物の最終投与量を投与した。ラットはケタミンで穏やかに鎮静化し、MacLabデータ収集システムに接続したサーミスタを尾の付け根にテープで固定した。尾部皮膚温度を35分間連続的にモニターし、基準温度を確立した。その後、ナロキソンを皮下に投与し、さらに35〜60分間TSTを測定した(合計記録時間70〜95分)。
【0087】
遠隔測定モデル:このモデルは、日周TSTパターンのエストロゲン制御に関する以前に報告された手順(Berendsen et al,2001)を修正したものである。24時間で、無傷サイクルのラットは、活動(暗)期にTSTが低下し、不活動(明)期にはTSTが上昇したままである。OVXラットは、全24時間にわたりTSTが上昇しており、通常の活動(暗)期のTSTの低下は消失し、従って、前記活動期のTST低下を回復させる化合物の能力を検討した。体温と身体活動の送信機(PhysioTel TA10TA−F40,Data Sciences International)は背側肩甲部に皮下移植され、体温プローブの先端は尻 尾の付け根から2.5cm超えたところで皮下に差し込んだ。7日間の回復期間後、残りの研究に対して、継続的にTSTの数値を記録した。尾部皮膚温度の数値を、各動物から5分おきに、10秒間のサンプリング周期で得られた値として集めた。試験の前日、12時間の活動(暗)期に記録された体温数値を平均することで、平均の基準TST値を各動物について計算した。これらの研究では、暗サイクルの開始約1時間前に動物に投与を行った。
【0088】
統計分析:モルヒネ依存性ラットにおいて、ナロキソンで誘導されるTSTの変化を分析するため、「処置」と「時間」について、反復測定二元配置分散分析(two factor repeated measure ANOVA)を用い、すべてのデータを分析した。前記モデルは、治療群間で反応に有意差があるか否かを検定するように適合されている。ナロキソンの投与は時間ゼロとして指定し、データを5分間隔で分析した。最初の3回の数値を平均化し、基準TSTスコアとして用いた。すべてのデータをΔTSTとして分析した(各時点でのTST−基準)。各時点での治療群間の多重比較(LSD p値)を分析に用いた。紅潮の軽減効果は、TSTの最大変化が観察される時点である、ナロキソン投与後15分でのピーク反応時間における、統計学的な差を評価することで決定した。カスタマイズされたSAS−excel(SAS Institute、カリー、ノースカロライナ州)アプリケーションが利用され、4パラメーターのロジスティックモデルを適用して、ED50値を決定した。ロジスティックな投与量の変換は、ΔTSTで行った。最大の紅潮(ナロキソン投与後15分でのΔTST)を分析に利用し、最小値はゼロに固定した。ED50値は、ナロキソン誘導性紅潮の50%を軽減するテスト化合物の投与量として報告する。生体計測部門(Biometrics Department;Wyeth Research、カレッジビル、ペンシルバニア州)の統計専門家によってカスタマイズされたJMPアプリケーションが開発された。
【0089】
遠隔測定モデルにおける正常なTSTの低下を回復する化合物の能力の評価は、記録時間の5分毎に得られた12の温度数値を平均することで、動物ごとに計算された1時間ごとのTST値を用いて分析された。前記遠隔測定モデルのΔTSTを分析するため、反復測定二元配置分散分析(two factor repeated measure ANOVA)を実施した。分析に用いられたモデルは、ΔTST=GRP(グループ)+HR(時間)+GRPHR+基準(BASELINE)であった。従って、報告された最小二乗平均は、2群が同一の基準値を有するものとした予想平均値としている。1時間毎のGRPHRサンプルの事後再検定(post−hoc)は、各時間のグループ間の差のt検定である。慎重にするため、p値が0.025未満でない限り、結果は有意とみなさなかった。すべての分析はSAS PROC MIXED(SAS、カリー、ノースカロライナ州)を用いて行われた。
【実施例1】
【0090】
血管運動不安定前臨床モデルにおける血管運動不安定を軽減するNRIsの効果
以下の例外:ラットに溶媒(滅菌水)あるいはデシプラミンを皮下に注射し、デシプラミンは米国特許公開番号第2002/0107249号に記載されているように調整してもよく、滅菌水に溶解し、ナロキソン1時間前に0.1、1.0、10、および30mg/kgで投与した、ことを除いては、モルヒネ依存ラットモデル条件下で一般的方法のセクションで記載したような方法を用いた(図3A)。最大紅潮時(ナロキソン投与後15分、Δ℃、平均+SEM)、デシプラミンは用量依存的にナロキソン誘導性紅潮を軽減した。
【0091】
ラットに溶媒(滅菌水)またはデシプラミン(滅菌水に溶解し、10mg/kgで投与した)を皮下注射した(図3B)。OVX誘導による体温調節不全の遠隔モデルにおける経時的なTSTの変化(Δ℃、平均+SEM)によって、デシプラミンが活動期全体にわたり、TSTを有意に低下させることが実証された(図3B)。結果を分析すると、血管運動不安定モデルラットにおいて、デシプラミンを10mg/kgおよび30mg/kg投与すると、それぞれナロキソン誘導性紅潮を90.4%および96.7%軽減できることが示された。さらに、NRI化合物は、OVX誘導体温調節機能障害の遠隔モデルで示された通り、正常な体温調節を回復するために使用可能である。
【0092】
以下の例外:ラットに溶媒(滅菌水)またはレボキセチンを皮下注射した。レボキセチンはUS−A−4,229,449に記載されているように調整してもよく、滅菌水に溶解し、ナロキソン投与1時間前に0.01、1.0、10、30および60mg/kgで投与した、ことを除いては、モルヒネ依存ラットモデル条件下で一般的方法のセクションで記載したような方法を用いた(図3C)。最大紅潮時(ナロキソン投与後15分、Δ℃、平均+SEM)において、レボキセチンは用量依存的にナロキソン誘導性紅潮を軽減した。
【0093】
以下の例外:ラットに溶媒(滅菌水)、レボキセチン(米国特許公開番号第2002/0107249A1号に記載されているように調整し、滅菌水に溶解し、0.01、1.0、10、30、60mg/kgで投与した)、あるいは1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール(US−A−4,826,844に記載されているように調整し、滅菌水に溶解し、7.5、15、30mg/kgで投与した)を皮下注射した、ことを除いては、モルヒネ依存ラットモデル条件下で一般的方法のセクションで記載したような方法を用いた。モルヒネ依存ラットモデルにおける経時的なTSTの変化(Δ℃、平均)は、レボキセチン(図3D)および1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール(図3E)がいずれもナロキソン誘導性紅潮を用量依存的に軽減することを示している。これらの結果は、NRIsによるNE値の増加が、血管運動不安定を軽減する可能性があることを示している。
【0094】
以下の例外:ラットに溶媒(0.25%ツイーン/メチルセルロース)、または1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(ジメチルアミノ)エチル]シクロヘキサノール(WY−781)、および1−[2−(ジメチルアミノ)−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)エチル]シクロヘキサノール(WY−867)(これらはUS−A−4,535,186に従って調整し、0.25%ツイーン/メチルセルロースに溶解し、ナロキソン投与1時間前に30mg/kg投与した)を腹腔内注射した、ことを除いては、モルヒネ依存ラットモデル条件下で一般的方法のセクションで記載したような方法を用いた(図3F)。最大紅潮時(ナロキソン投与後15分、Δ℃、平均+SEM)、いずれの化合物も用量依存的にナロキソン誘導性紅潮を軽減した。
【実施例2】
【0095】
血管運動不安定の軽減に対するNRIおよびSRIの組み合わせ効果
下記の例外:溶媒(滅菌水)、デシプラミン(US−A−3,454,554に記載されているように調整し、滅菌水に溶解し、0.1、1.0、10mg/kgで投与した)、またはフルオキセチン(Sigma、10、30、60mg/kgで滅菌水に溶解した)、もしくは10mg/kg投与のフルオキセチンと上記に記載したデシプラミンの増加用量との組み合わせを、ナロキソン投与1時間前にラットの皮下に注射した、ことを除いては、モルヒネ依存ラットモデル条件下で一般的方法のセクションで記載したような方法を用いた。
【0096】
最大紅潮時(ナロキソン投与後15分、Δ℃、平均+SEM)、デシプラミンはMDモデルのナロキソン誘導性紅潮を用量依存的に軽減するが、推定線は高低差の少ない勾配であった(実線、図4)。前記推定線の高低差の少ない勾配は、複数の部位に相互作用を有する典型的な化合物である。従って、NEと5−HT系との間に相互作用があるかどうかを決定するために、ナロキソン誘導性紅潮を軽減しなかったフルオキセチンの投与量を使用した。10mg/kgのフルオキセチンの存在下、デシプラミンの用量反応曲線の推定線の勾配は、単一部位の活性を示す自然なS字型曲線に移行した。これらのデータは、飽和濃度のフルオキセチンの存在下では、デプラミンはNE系のみを介して作用していることを示している。デシプラミン(1mg/kg)のED50値は、フルオキセチンの存在下でも変化しなかったが、最大効果用量は左に移行した。この結果は、NRI化合物(デシプラミン、10mg/kg)がナロキソン誘導性紅潮を軽減し、セロトニン再取り込み阻害剤(SRI)であるフルオキセチン(10mg/kg)を同時投与した場合に、この軽減が有意に増強されることを示した。従って、NRIとSRI化合物の同時投与(例えばデシプラミン+フルオキセチン)は、紅潮の治療により有効であった。
【実施例3】
【0097】
血管運動不安定の軽減に対する二重作用NRI/SRI活性化合物の効果
以下の例外:溶媒(滅菌水)、ベンラファクシン(滅菌水に溶解し、1.0、10、20、40mg/kgで投与した)、またはDVS−233(滅菌水に溶解し、1.0、10、30、60mg/kgで投与した)を、ナロキソン1時間前にラットの皮下に注射した、ことを除いては、モルヒネ依存ラットモデル条件下で一般的方法のセクションで記載したような方法を用いた。ベンラファクシンとDVS−233は、US−A−4,535,186に記載されているように合成した。最大紅潮時(ナロキソン投与後15分、Δ℃、平均+SEM)、ベンラファクシンはナロキソン誘導性紅潮を用量依存的に(ED50値=15+7mg/kg)軽減した(図5A)。最大紅潮時(ナロキソン投与後15分、Δ℃、平均+SEM)、DVS−233はナロキソン誘導性紅潮を用量依存的に(ED50値=30+3mg/kg)軽減した(図5B)。
【0098】
図5Cおよび図5Dの方法は、遠隔モデルの一般的方法のセクションで記載してある。溶媒(滅菌水)、ベンラファクシン(滅菌水に溶解し、15mg/kgで投与した)、またはDVS−233(滅菌水に溶解し、60mg/kgで投与した)を、ラットの皮下に注射した。遠隔モデルにおける経時的なTSTの変化(Δ℃、平均+SEM)によって、ベンラファクシンが有意に且つ一時的に、活動期のTSTを低下することが実証された(図5C)。遠隔モデルにおける経時的なTSTの変化(Δ℃、平均+SEM)によって、DVS−233が有意に且つ一時的に、活動期のTSTを低下することが立証された(図5D)。これらの結果によって、二重作用SRI/NRIであるベンラファクシンとDVS−233が、血管運動不安定を効果的に軽減したことが示された。これらの結果によって、二重作用化合物がNRI成分を介してNE系を調節することによって、血管運動不安定を軽減することが示された。
【0099】
以下の例外:溶媒(滅菌水)、ベンラファクシンのR−鏡像異性体(R−ベンラファクシン、US−A−4,535,186に記載されているように合成し、滅菌水に溶解し、0.3、1.0、10、30mg/kgで投与した)、ベンラファクシンのS−鏡像異性体(S−ベンラファクシン、US−A−4,535,186に記載されているように合成し、滅菌水に溶解し、1.0、10、30、60mg/kgで投与した)、O−デスメチルベンラファクシンのR−鏡像異性体(R−ODV、US−A−4,535,186に記載されているように合成し、滅菌水に溶解し、1.0、10、30、60mg/kgで投与した)、ODVのS−鏡像異性体(S−ODV、US−A−4,535,186に記載されているように合成し、滅菌水に溶解し、1.0、10、30、60mg/kgで投与した)、またはパロキセチン(US−A−4,535,186に記載されているように合成し、滅菌水に溶解し、0.5、5.0、15、30mg/kgで投与した)を、ナロキソン投与1時間前にラットの皮下に注射した、ことを除いては、モルヒネ依存ラットモデル条件下で一般的方法のセクションで記載したような方法を用いた。最大紅潮時(ナロキソン投与後15分、Δ℃、平均+SEM)、R−ベンラファクシンはナロキソン誘導性紅潮を用量依存的に(ED50値=8.3+3mg/kg)軽減した(図5E)。最大紅潮時(ナロキソン投与後15分、Δ℃、平均+SEM)、S−ベンラファクシンはナロキソン誘導性紅潮を用量依存的に(ED50値=10.9+3mg/kg)軽減した(図5F)。最大紅潮時(ナロキソン投与後15分、Δ℃、平均+SEM)、R−ODVはナロキソン誘導性紅潮を用量依存的に(ED50値=14.4+13mg/kg)軽減した(図5G)。最大紅潮時(ナロキソン投与後15分、Δ℃、平均+SEM)、S−ODVはナロキソン誘発による紅潮を用量依存的に(ED50値=13.3+8mg/kg)軽減した(図5H)。最大紅潮時(ナロキソン投与後15分、Δ℃、平均+SEM)、パロキセチンはナロキソン誘導性紅潮を用量依存的に(ED50値=22.3+11mg/kg)軽減した(図5J)。R−ベンラファクシン、S−ベンラファクシン、R−ODV、S−ODV、およびパロキセチンに用いた投与量は、NE系、あるいはNE輸送系に対するそれらの活性に基づいて選択した。この結果は、二重作用SRI/NRI活性を有するR−ベンラファクシン、S−ベンラファクシン、R−ODV、S−ODVおよびパロキセチン全てが、紅潮を効果的に軽減することを示している。この結果は、二重活性化合物がNE/5−HTバランスを向上しNE伝達を向上することにより、血管運動不安定を軽減することを示している。
【実施例4】
【0100】
アドレナリンα2アンタゴニストで誘導される血管運動不安定に対するデシプラミンの効果
以下の例外:溶媒(滅菌水)、アチパメゾールHCl(選択的アドレナリンα2受容体アンタゴニスト)(Pfizer,ニューヨーク,ニューヨーク州、滅菌水に溶解し、0.3mg/kg投与した)、デシプラミン(滅菌水に溶解し、1mg/kg投与した)、またはアチパメゾールとデシプラミンの組み合わせを、ラットの皮下に注射した、ことを除いては、モルヒネ依存ラットモデル条件下で一般的方法のセクションで記載したような方法を用いた。アチパメゾールはナロキソン注射の55分前に投与し、デシプラミンはナロキソンの40分前に投与した(図6)。
【0101】
ナロキソン投与後のTSTの変化(Δ℃、平均)より、アチパメゾール単独では溶媒処置ラットと比べて有意な差がないことが示された(図6)。デシプラミンは単独でナロキソン誘導性紅潮を約50%軽減したが、アチパメゾールとの組み合わせでは相加効果が見られた。アチパメゾールとデシプラミンの組み合わせで認められた相加効果によって、アドレナリンα2受容体が血管運動不安定に関与していることが推測された。さらに、これらのデータは、デシプラミンの効果はアドレナリンα2受容体アンタゴニストと組み合わせて投与したときに増強されることを示しておいた。
【実施例5】
【0102】
ヒトモノアミン取り込み輸送体の機能的取り込み活性
細胞株と培養試薬
ヒトhNETを安定に形質移入したMDCK−Net6細胞は、Pacholczyk,T.,R.D.Blakely,and S.G.Amara,Nature,1991,350(6316):350〜4に記載されているように、高グルコースDMEM(Gibco,Cat.No.11995)、10%FBS(透析、加熱不活性化、US Bio−Technologies,Lot.FBD1129HI)、および500μg/mlのG418(Gibco,Cat.No.10131)を含む増殖培地で培養した。細胞は300,000/T75フラスコに播種し、細胞は1週間で2回分裂した。JAR細胞株(ヒト胎盤絨毛癌)はATCC(Cat.No.HTB−144)から購入した。前記細胞は、RPMI1640(Gibco,Cat.No.72400)、10%FBS(Irvine,Cat.No.3000)、1%ピルビン酸ナトリウム(Gibco,Cat.No.1136)、および0.25%のグルコースを含む増殖培地で培養した。細胞は250,000/T75フラスコで播種し、前記細胞は1週間に2回分裂した。全てのアッセイにおいて、細胞はWallac 96穴無菌プレート(PerkinElmer,Cat.No.3983498)に播種した。
【0103】
ノルエピネフリン(NE)取り込みアッセイ
1日目、増殖培地に1ウェルあたり3,000細胞(3,000cells/well)で細胞を播種し、細胞インキュベーター(37℃、5%CO)で培養した。2日目、増殖培地を0.2mg/mlのアスコルビン酸と10μMのパーギリンを含むアッセイ緩衝液(25mM HEPES、120mM NaCl、5mM KCl、2.5mM CaCl、1.2mM MgSO、2mg/ml グルコース(pH7.4、37℃))に置換した。細胞と200μlのアッセイ緩衝液を含むプレートを、化合物を添加する前に、37℃で10分間平衡化した。デシプラミンの原液はDMSO(10mM)で調整し、最終濃度1μMになるように、細胞を含む3組のウェルに添加した。これらのウェルからのデータは、非特異的NE取り込み(最小NE取り込み)を定義にするために使用した。テスト化合物はDMSO(10mM)で調整し、テストの範囲(1〜10,000nM)に準じてアッセイ緩衝液で希釈した。25μlのアッセイ緩衝液(最大NE取り込み)またはテスト化合物を、アッセイ緩衝液200μl中に細胞を含んだ3組のウェルに直接添加した。アッセイ緩衝液中の細胞は、37℃で20分間インキュベートした。NE取り込みを開始するために、アッセイ緩衝液で希釈した[3H]NE(最終アッセイ濃度120nM)を各ウェルに25μlずつ加え、このプレートを5分間(37℃)でインキュベートした。プレートの上清をデカントすることで、反応を停止した。遊離放射性リガンドを除去するために、細胞が入った前記プレートを200μlのアッセイ緩衝液(37℃)で2回洗浄した。次に前記プレートを逆にして2分間放置し乾燥させた後、再度逆にしてさらに10分間空気乾燥した。前記細胞を25μlの0.25N NaOH溶液(4℃)に溶解し、振盪台に置き、5分間激しく振盪した。細胞溶解後、各ウェルに75μlのシンチレーションカクテルを加え、プレートをフィルムテープで密閉した。前記プレートを振盪台に戻して、最低10分間激しく振盪し、有機溶液と水溶液が十分に分離したことを確認した。前記プレートはWallac Microbetaカウンター(PerkinElmer)で計測し、未処理のcpmデータを収集した。
【0104】
セロトニン(5−HT)取り込みアッセイ
JAR細胞株を用いた5−HT機能的再取り込みの方法は、以前の文献報告である、Prasad,P.D.,et al.,Placenta,1996,17(4):201〜7を用いて修正した。1日目、細胞を増殖培地(10%FBS含有RPMI1640)を含む96穴プレートに1ウェルあたり15,000細胞(15,000cells/well)で播種し、細胞インキュベータ(37℃、5%CO)で培養した。2日目、細胞をスタウロスポリン(40nM)で刺激し、5−HT輸送体の発現を増強させた。3日目、アッセイ2時間前に細胞を細胞インキュベータから取り出し室温に保存し、増殖培地を周囲酸素濃度に平衡化した。その後、前記増殖培地を0.2mg/mlのアスコルビン酸と10μMのパーギリンを含む200μlのアッセイ緩衝液(25nM HEPES、120mM NaCl、5mM KCl、2.5mM CaCl、1.2mM MgSO、2mg/ml グルコース(pH7.4、37℃))に置換した。パロキセチンの原液(AHR−4389−1)を、DMSO(10mM)で調整し、最終濃度1μMになるように、細胞を含む3組のウェルに添加した。これらのウェルからのデータは、非特異的5−HT取り込み(最小5−HT取り込み)を定義するために使用した。テスト化合物は、DMSO(10mM)で調整し、テストの範囲(1〜1,000nM)に準じてアッセイ緩衝液で希釈した。25μlのアッセイ緩衝液(最大5−HT取り込み)またはテスト化合物を、アッセイ緩衝液200μl中に細胞を含んだ3組のウェルに直接添加した。前記細胞は化合物と共に10分間(37℃)インキュベートした。反応を開始するために、アッセイ緩衝液で希釈した[3H]ヒドロキシトリプタミンクレアチニン硫酸塩を、最終試験濃度が15nMになるように、25μlずつ各ウェルに添加した。前記細胞は反応混合物と共に37℃で5分間インキュベートした。5−HT取り込み反応は、アッセイ緩衝液をデカントすることで停止した。遊離放射性リガンドを除去するために、細胞を200μlアッセイ緩衝液(37℃)で2回洗浄した。プレートを逆にして2分間放置して乾燥した後、再度逆にしてさらに10分間空気乾燥した。その後、前記細胞を25μlの0.25N NaOH(4℃)に溶解し、振盪台に置き、5分間激しく振盪した。細胞溶解後、各ウェルに75μlのシンチレーションカクテルを加え、プレートをフィルムテープで密閉し、最低10分間振盪台に置いた。前記プレートはWallac Microbetaカウンター(PerkinElmer)で計測し、未処理のcpmデータを収集した。
【0105】
結果の評価
各試験に対して、Wallac Microbetaカウンターから収集したcpm値のデータ・ストリームを、マイクロソフトエクセル統計アプリケーションプログラムにダウンロードした。1μMにおける特異的NE取り込み率(%SB)の判定を、式。[NE再取り込みの%SB(%SB)=[(1−(対照ウェルの平均cpm−薬剤ウェルの各cpm)/(対照ウェルの平均cpm−非特異的ウェルの平均cpm))×100]を適用したマイクロソフトエクセルのスプレッドシートを用いて算出した。EC50値の計算は、Wyeth Biometrics Departmentによって作成された両側変換ロジスティック用量応答プログラム(transformed−both−sides logistic dose response program)を用いて行った。前記統計プログラムは、最大の結合または取り込みを示すウェルの平均cpm値(アッセイ緩衝液)と、最小の結合または取り込みを示すウェルの平均cpm値((1μMデシプラミン(hNET)または1μMパロキセチン(hSERT))とを用いた。EC50値の評価は、対数スケールで計算し、線は最大および最小mp結合値または取り込み値のの間で適合させた。全ての図形データの表示は、前記最大および最小の結合値または取り込み値を基準にし、各データポイントを平均パーセントに標準化して作成した。多重試験で報告されたEC50値は、各試験の未処理データを貯蔵(pooling)し、貯蔵されたデータを1つの試験として分析することによって算出した。結果は表1に示した。
【0106】
【表1】

【0107】
本明細書において、分子量などの物理的性質、あるいは化学式などの化学的性質を示すために幅記載が用いられた場合、本明細書中の具体的な実施例の範囲にあるすべての組み合わせおよびサブコンビネーションが含まれることを意図している。
【0108】
本明細書で引用または記載された各特許、出願特許、および刊行物で開示されたすべての内容は、この参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
当業者は、多くの変更や修正が本発明の好ましい実施例に対してなされ、それらの変更や修正は発明の本質から逸脱することなくなされることを理解するであろう。従って、添付された請求の範囲は本発明の要旨および範囲内に含まれるような等価的変化をすべて含むことを目的とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0110】
本発明は、本出願書類の一部を形成する以下の詳細な説明と添付の図面によって、より完全に理解されるものである。
【図1】図1は、ノルエピネフリン/セロトニン仲介性体温調節に対するエストロゲン作用の概略である。
【図2】図2は、ノルエピネフリンとセロトニンとの相互作用およびそれぞれの受容体(5−HT2a、αおよびα−アドレナリン作動性)の概略図である。
【図3A】図3A〜3Fは、実施例1に例示するとおり、血管運動不安定を軽減するNRIの効果に関するグラフ表示である。図3Aは、デシプラミンに対する紅潮のモルヒネ依存性ラットモデル(MDモデル)の用量反応を示している。
【図3B】図3A〜3Fは、実施例1に例示するとおり、血管運動不安定を軽減するNRIの効果に関するグラフ表示である。図3Bは、OVX誘導性体温調節機能障害の遠隔測定モデル(遠隔測定モデル)におけるデシプラミン10mg/kgの皮下投与を示している。
【図3C】図3A〜3Fは、実施例1に例示するとおり、血管運動不安定を軽減するNRIの効果に関するグラフ表示である。図3Cは、MDモデルにおけるレボキセチンの用量反応を示している。
【図3D】図3A〜3Fは、実施例1に例示するとおり、血管運動不安定を軽減するNRIの効果に関するグラフ表示である。図3Dは、様々な用量のレボキセチンに関する、MDモデルにおける経時的なTST変化を示している。
【図3E】図3A〜3Fは、実施例1に例示するとおり、血管運動不安定を軽減するNRIの効果に関するグラフ表示である。図3Eは、様々な用量の1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール(824)に関する、MDモデルにおける経時的なTST変化を示している。
【図3F】図3A〜3Fは、実施例1に例示するとおり、血管運動不安定を軽減するNRIの効果に関するグラフ表示である。図3Fは、溶媒、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(ジメチルアミノ)エチル]シクロヘキサノール(WY−781)、および1−[2−(ジメチルアミノ)−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)エチル]シクロヘキサノール(WY−867)に関する最大の紅潮を示している。
【図4】図4は、紅潮のモルヒネ依存性ラットモデルにおける、SRI(フルオキセチン10mg/kg)との組み合わせにおけるNRI(デシプラミン)の用量反応性を示している(例2を参照)。
【図5A】図5A、5B、5E、5F、5G、5H、および5Jは、それぞれMDモデルにおけるベンラファクシン、DVS−233/ODV、R−ベンラファクシン、S−ベンラファクシン、R−ODV、S−ODV、およびパロキセチンの用量反応を示している。
【図5B】図5A、5B、5E、5F、5G、5H、および5Jは、それぞれMDモデルにおけるベンラファクシン、DVS−233/ODV、R−ベンラファクシン、S−ベンラファクシン、R−ODV、S−ODV、およびパロキセチンの用量反応を示している。
【図5C】図5Cおよび5Dは、遠隔測定モデルにおけるベンラファクシン(15mg/kg、皮下)およびDVS−233(60mg/kg、皮下)を示している(は溶媒を用いた対照と比較してp<0.05であることを示す)(例3を参照)。
【図5D】図5Cおよび5Dは、遠隔測定モデルにおけるベンラファクシン(15mg/kg、皮下)およびDVS−233(60mg/kg、皮下)を示している(は溶媒を用いた対照と比較してp<0.05であることを示す)(例3を参照)。
【図5E】図5A、5B、5E、5F、5G、5H、および5Jは、それぞれMDモデルにおけるベンラファクシン、DVS−233/ODV、R−ベンラファクシン、S−ベンラファクシン、R−ODV、S−ODV、およびパロキセチンの用量反応を示している。
【図5F】図5A、5B、5E、5F、5G、5H、および5Jは、それぞれMDモデルにおけるベンラファクシン、DVS−233/ODV、R−ベンラファクシン、S−ベンラファクシン、R−ODV、S−ODV、およびパロキセチンの用量反応を示している。
【図5G】図5A、5B、5E、5F、5G、5H、および5Jは、それぞれMDモデルにおけるベンラファクシン、DVS−233/ODV、R−ベンラファクシン、S−ベンラファクシン、R−ODV、S−ODV、およびパロキセチンの用量反応を示している。
【図5H】図5A、5B、5E、5F、5G、5H、および5Jは、それぞれMDモデルにおけるベンラファクシン、DVS−233/ODV、R−ベンラファクシン、S−ベンラファクシン、R−ODV、S−ODV、およびパロキセチンの用量反応を示している。
【図5J】図5A、5B、5E、5F、5G、5H、および5Jは、それぞれMDモデルにおけるベンラファクシン、DVS−233/ODV、R−ベンラファクシン、S−ベンラファクシン、R−ODV、S−ODV、およびパロキセチンの用量反応を示している。
【図6】図6は、MDモデルにおけるナロキソン誘導性紅潮に対し、デシプラミンとの組み合わせにおけるα2−アドレナリンアンタゴニスト(アチパメゾール)の相加効果を示している(例4を参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管運動症状の治療または予防を必要とする対象者における血管運動症状を治療または予防するための方法であって、
前記対象者に対して、少なくとも1つのノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類の治療上有効な量を含む化合物を投与する工程を有する、方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、前記化合物は、約1,000:1未満のSERT:NETの選択比を有するものである。
【請求項3】
請求項1の方法において、前記化合物は、約2:1より大きいSERT:NETの選択比を有するものである。
【請求項4】
請求項1の方法において、前記化合物は、約5:1より大きいSERT:NETの選択比を有するものである。
【請求項5】
請求項1の方法において、前記化合物は、約10:1より大きいSERT:NETの選択比を有するものである。
【請求項6】
請求項1の方法において、
前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤は、マプロチリン、レボキセチン、ノルプラミン、デシプラミン、ニソキセチン、アトモキセチン、アモキサピン、ドキセピン、ロフェプラミン、アミトリプチリン、1−[1−(3−フルオロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[2−(4−メチル−1−ピペラジニル)−1−[3−(トリフルオロメチル)−フェニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(4−メトキシフェニル)−2−[4−メチル−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−[4−(3−クロロフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−メトキシフェニル)−2−[4−フェニルメチル]−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[2−(3−クロロフェニル)1−ピペラジニル]−1−[3−メトキシフェニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[2−[4−(6−クロロ−2−ピラジニル)−1−ピペラジニル]−1−[3−メトキシフェニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[2−[4−(フェニルメチル)]−1−ピペラジニル]−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−メトキシフェニル)−2−[4−[3−(トリフルオロメチル)−フェニル]−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(4−フルオロフェニル)−2−[4−(フェニルメチル)−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−メトキシフェニル)−2−[4−[3−(トリフルオロメチル)−フェニル]−1−ピペラジニル]エチル]シクロペンタノール、1−[1−(4−フルオロフェニル)−2−[4−フェニルメチル]−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[2−(ジメチルアミノ)−1−3−トリフルオロメチルフェニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−フルオロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(ジメチルアミノ)エチル]シクロヘキサノール、1−[2−ジメチルアミノ]−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−ピペラジン−1−イル−エチル]シクロヘキサノール、その組み合わせ、およびその薬学的に許容可能な塩類からなる群から選択されるものである。
【請求項7】
請求項6の方法において、
前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤は、デシプラミン、またはその薬学的に許容可能な塩類である。
【請求項8】
請求項6の方法において、
前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤は、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール、またはその薬学的に許容可能な塩類である。
【請求項9】
請求項8の方法において、
前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤は、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノールの純粋な鏡像異性体である。
【請求項10】
請求項1の方法において、
前記化合物はさらに、少なくとも1つのセロトニン再取り込み阻害剤または薬学的に許容可能なその塩類の治療上有効な量を含むものである。
【請求項11】
請求項10の方法において、
前記セロトニン再取り込み阻害剤は、フルオキセチン、パロキセチン、フルボキサミン、その組み合わせ、およびそれらの薬学的に許容可能な塩類からなる群から選択されるものである。
【請求項12】
請求項10の方法において、
前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤とセロトニン再取り込み阻害剤とは、併用で投与されるものである。
【請求項13】
請求項1の方法において、
前記化合物はさらに、少なくとも1つのアドレナリンα2受容体アンタゴニストまたはその薬学的に許容可能な塩類の治療上有効な量を含むものである。
【請求項14】
請求項13の方法において、
前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤とアドレナリンα2受容体アンタゴニストとは、併用で投与されるものである。
【請求項15】
請求項13の方法において、
前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤と前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストとは、同時に投与されるものである。
【請求項16】
請求項13の方法において、
前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤および前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストは、単一化合物である。
【請求項17】
請求項13の方法において、
アドレナリンα2受容体アンタゴニストは、アチパメゾール、2−[2−(4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル)エチル]−4,4−ジメチル−1,3−(2H,4H)−イソキノリンジオンジヒドロクロライド(ARC239 ジヒドロクロライド)、2−[(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)メチル]−2,3−ジヒドロ−1−メチル−1H−イソインドールマレイン酸塩(BRL44408 マレイン酸塩)、BRL48962、BRL41992、SKF104856、SKF104078、MK912、2−(2−エチル−2,3−ジヒドロ−2−ベンゾフラニル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール塩酸塩(エファロキサン塩酸塩)、2−(1,4−ベンゾジオキサン−2−イル)−2−イミダゾリン塩酸塩(イダゾキサン塩酸塩)、2−(1−エチル−2−インダゾイル)メチル−1,4−ベンゾジオキサン塩酸塩(イミロキサン塩酸塩)、17α−ヒドロキシ−20α−ヨヒンバン−16β−カルボン酸、メチルエステル塩酸塩(ロオルシン塩酸塩)、(8αR,12αS,13αS)−5,8,8α,9,10,11,12,12α,13,13α−デヒドロ(dechydro)−3−メトキシ−12−(エチルスルホニル)−6H−イソキノ[2,1−Y][1,6]ナフチリジン塩酸塩(RS79948塩酸塩)、2−(2,3−ジヒドロ−2−メトキシ−1,4−ベンゾジオキシン−2−イル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール塩酸塩(RX821002塩酸塩)、8−[(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−2−イル)メチル]−1−フェニル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−4−オン(スピロキサトリン)、17α−ヒドロキシヨヒンバン−16α−カルボン酸メチルエステル塩酸塩(ヨヒンビン塩酸塩)、その組み合わせ、およびそれらの薬学的に許容可能な塩類からなる群から選択される化合物である。
【請求項18】
請求項13の方法において、
前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストは、アドレナリンα2A受容体に対して選択的である。
【請求項19】
請求項13の方法において、
前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストは、アドレナリンα2B受容体に対して選択的である。
【請求項20】
請求項13の方法において、
前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストは、アドレナリンα2C受容体に対して選択的である。
【請求項21】
請求項13の方法において、
前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストは、アドレナリンα2D受容体に対して選択的である。
【請求項22】
請求項1の方法において、
前記薬学的に許容可能な塩類は、酸付加塩である。
【請求項23】
請求項1の方法において、
前記血管運動症状は、紅潮である。
【請求項24】
請求項1の方法において、前記対象者はヒトである。
【請求項25】
請求項24の方法において、前記ヒトは女性である。
【請求項26】
請求項25の方法において、前記女性は閉経前である。
【請求項27】
請求項25の方法において、前記女性は閉経期前後である。
【請求項28】
請求項25の方法において、前記女性は閉経後である。
【請求項29】
請求項24の方法において、ヒトは男性である。
【請求項30】
請求項29の方法において、前記男性は生まれつき、化学的、あるいは外科的に男性更年期である。
【請求項31】
薬学的組成物であって、
a.少なくとも1つのノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類と、
b.少なくとも1つのセロトニン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類と、
c.少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体と
を有する薬学的組成物。
【請求項32】
請求項31の薬学的組成物において、
前記薬学的に許容可能な塩類は、酸付加塩である。
【請求項33】
請求項31の薬学的組成物において、
前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤は、マプロチリン、レボキセチン、ノルプラミン、デシプラミン、ニソキセチン、アトモキセチン、アモキサピン、ドキセピン、ロフェプラミン、アミトリプチリン、1−[1−(3−フルオロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[2−(4−メチル−1−ピペラジニル)−1−[3−(トリフルオロメチル)−フェニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(4−メトキシフェニル)−2−[4−メチル−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−[4−(3−クロロフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−メトキシフェニル)−2−[4−フェニルメチル]−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[2−(3−クロロフェニル)−1−ピペラジニル]−1−[3−メトキシフェニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[2−[4−(6−クロロ−2−ピラジニル)−1−ピペラジニル]−1−[3−メトキシフェニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[2−[4−(フェニルメチル)]−1−ピペラジニル]−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−メトキシフェニル)−2−[4−[3−(トリフルオロメチル)−フェニル]−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(4−フルオロフェニル)−2−[4−(フェニルメチル)−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−メトキシフェニル)−2−[4−[3−(トリフルオロメチル)−フェニル]−1−ピペラジニル]エチル]シクロへペンタノール、1−[1−(4−フルオロフェニル)−2−[4−(フェニルメチル)−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[2−(ジメチルアミノ)−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−フルオロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(ジメチルアミノ)エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(ジメチルアミノ)エチル]シクロヘキサノール、1−[2−ジメチルアミノ]−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−ピペラジン−1−イル−エチル]シクロヘキサノール、その組み合わせ、およびそれらの薬学的に許容可能な塩類とからなる群から選択されるものである。
【請求項34】
請求項31の薬学的組成物において、
前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤は、デシプラミンである。
【請求項35】
請求項31の薬学的組成物において、
前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤は、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノールである。
【請求項36】
請求項35の薬学的組成物において、
前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤は、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノールの純粋な鏡像異性体である。
【請求項37】
請求項31の薬学的組成物において、
前記セロトニン再取り込み阻害剤は、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、フルボキサミン、その組み合わせ、およびそれらの薬学的に許容可能な塩類からなる群から選択されるものである。
【請求項38】
薬学的組成物であって、
a.少なくとも1つのノルエピネフリン再取り込み阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩類と、
b.少なくとも1つのアドレナリンα2受容体アンタゴニストまたはその薬学的に許容可能なその塩類と、
c.少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体と
を有する薬学的組成物。
【請求項39】
請求項38の薬学的組成物において、
前記薬学的に許容可能な塩類は、酸付加塩である。
【請求項40】
請求項38の薬学的組成物において、
前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤は、マプロチリン、レボキセチン、ノルプラミン、デシプラミン、ニソキセチン、アトモキセチン、アモキサピン、ドキセピン、ロフェプラミン、アミトリプチリン、1−[1−(3−フルオロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[2−(4−メチル−1−ピペラジニル)−1−[3−(トリフルオロメチル)−フェニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(4−メトキシフェニル)−2−[4−メチル−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−[4−(3−クロロフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−メトキシフェニル)−2−[4−フェニルメチル]−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[2−(3−クロロフェニル)1−ピペラジニル]−1−[3−メトキシフェニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[2−[4−(6−クロロ−2−ピラジニル)−1−ピペラジニル]−1−[3−メトキシフェニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[2−[4−(フェニルメチル)]−1−ピペラジニル]−1−[3−トリフルオロメチル]フェニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−メトキシフェニル)−2−[4−[3−(トリフルオロメチル)−フェニル]−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[(41――フルオロフェニル)−2−[4−(フェニルメチル)−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−メトキシフェニル)−2−[4−[3−(トリフルオロメチル)−フェニル]−1−ピペラジニル]エチル]シクロペンタノール、1−[1−(4−フルオロフェニル)−2−[4−(フェニルメチル)−1−ピペラジニル]エチル]シクロヘキサノール、1−[2−(ジメチルアミノ)−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−フルオロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(ジメチルアミノ)エチル]シクロヘキサノール、1−[2−ジメチルアミノ]−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)エチル]シクロヘキサノール、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−ピペラジン−1−イル−エチル]−シクロヘキサノール、その組み合わせ、およびそれらの薬学的に許容可能な塩類からなる群から選択されるものである。
【請求項41】
請求項40の薬学的組成物において、
前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤は、デシプラミンである。
【請求項42】
請求項40の薬学的組成物において、
前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤は、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノールである。
【請求項43】
請求項42の薬学的組成物において、
前記前記ノルエピネフリン再取り込み阻害剤は、1−[1−(3−クロロフェニル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)エチル]シクロヘキサノールの純粋な鏡像異性体である。
【請求項44】
請求項38の薬学的組成物において、
前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストは、アチパメゾール、2−[2−(4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル)エチル]−4,4−ジメチル−1,3−(2H,4H)−イソキノリンジオンジヒドロクロライド(ARC239 ジヒドロクロライド)、2−[(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)メチル]−2,3−ジヒドロ−1−メチル−1H−イソインドールマレイン酸塩(BRL44408 マレイン酸塩)、BRL48962、BRL41992、SKF104856、SKF104078、MK912、2−(2−エチル−2,3−ジヒドロ−2−ベンゾフラニル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール塩酸塩(エファロキサン塩酸塩)、2−(1,4−ベンゾジオキサン−2−イル)−2−イミダゾリン塩酸塩(イダゾキサン塩酸塩)、2−(1−エチル−2−インダゾイル)メチル−1,4−ベンゾジオキサン塩酸塩(イミロキサン塩酸塩)、17α−ヒドロキシ−20α−ヨヒンバン−16β−カルボン酸、メチルエステル塩酸塩(ロオルシン塩酸塩)、(8αR,12αS,13αS)−5,8,8α,9,10,11,12,12α,13,13α−デヒドロ(dechydro)−3−メトキシ−12−(エチルスルホニル)−6H−イソキノ[2,1−Y][1,6]ナフチリジン塩酸塩(RS79948塩酸塩)、2−(2,3−ジヒドロ−2−メトキシ−1,4−ベンゾジオキシン−2−イル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール塩酸塩(RX821002塩酸塩)、8−[(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−2−イル)メチル]−1−フェニル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−4−オン(スピロキサトリン)、17α−ヒドロキシヨヒンバン−16α−カルボン酸メチルエステル塩酸塩(ヨヒンビン塩酸塩)、その組み合わせ、およびそれらの薬学的に許容可能な塩類からなる群から選択される化合物である。
【請求項45】
請求項38の薬学的組成物において、
前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストは、アドレナリンα2A受容体に対して選択的である。
【請求項46】
請求項38の薬学的組成物において、
前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストは、アドレナリンα2B受容体に対して選択的である。
【請求項47】
請求項38の薬学的組成物において、
前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストは、アドレナリンα2C受容体に対して選択的である。
【請求項48】
請求項38の薬学的組成物において、
前記アドレナリンα2受容体アンタゴニストは、アドレナリンα2D受容体に対して選択的である。
【請求項49】
ヒトにおける血管運動症状を予防または治療する薬剤を製造するための、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤の使用方法。
【請求項50】
ヒトにおける血管運動症状を予防または治療する薬剤を製造するための、セロトニン再取り込み阻害剤との組み合わせにおけるノルエピネフリン再取り込み阻害剤の使用方法。
【請求項51】
ヒトにおける血管運動症状を予防または治療する薬剤を製造するための、アドレナリンα2受容体アンタゴニストとの組み合わせにおけるノルエピネフリン再取り込み阻害剤の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図5J】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−506372(P2006−506372A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545349(P2004−545349)
【出願日】平成15年10月15日(2003.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2003/032759
【国際公開番号】WO2004/035058
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】