説明

衛星試験装置

【課題】 衛星組立後の地上試験や、衛星運用時の動作試験の際に、衛星内部でのコンポーネントの接続確認と、各コンポーネントの動作確認を効率的に行う。
【解決手段】 従コンポーネントのテスト動作処理部から主コンポーネントのテスト動作処理部と地上試験装置に対してテスト用のテレメトリを送信し、主コンポーネントで中継されたテスト用のテレメトリと、従コンポーネントから直接送信されたテスト用のテレメトリとの一致比較を行うことによって、コンポーネントの接続状態や動作状態の健全性を確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外部から人工衛星の動作確認を行う試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工衛星の試験の自動化や効率化、および試験時間の短縮を図るために、地上試験装置と衛星内部コンポーネントの間をデータバスで接続することによって、各コンポーネントの地上試験を行っていた。
【0003】
【特許文献1】特開2000−95200号公報(第8段落〜第14段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の衛星試験装置では、外部試験装置の制御によって各コンポーネントを個別に試験していたので、各コンポーネントとデータバスの接続有無や短絡有無の確認、コンポーネント同士での信号授受の動作状況を確認することができなかった。
【0005】
また、各コンポーネントには、設計時点から動作の健全性を確認するテスト機能が備わっていない。衛星の実運用中は、衛星から送信されるテレメトリデータのみを通じて、衛星の全体動作の健全性を確認することしかできないのである。このため、衛星内部の各コンポーネントの動作確認を詳細に行うことが極めて困難であった。
【0006】
この発明は係る課題を解決するためになされたものであって、衛星組立後の地上試験や、衛星運用時の動作試験の際、不具合発生の原因究明時に、衛星内部でのテレメトリバスとコンポーネントの接続確認と、各コンポーネント間での信号授受の動作確認を行うことを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による衛星試験装置は、衛星に配設されたテレメトリバスに対しテレメトリを送信する複数のコンポーネントに搭載され、テストデータをテレメトリとして送信するテスト動作処理部と、上記テスト動作処理部の主従関係を設定し、主従関係の設定されたテスト動作処理部に対してテスト動作を実行させるとともに、上記テレメトリバスを通じて上記各テスト動作処理部から送信されるテストデータを受信する外部試験装置とを備え、上記テスト動作処理部はテスト動作の実行開始に応じて、自己が主となるテスト動作処理部である場合に上記テレメトリバスを通じて従となるテスト動作処理部からテストデータを受信するとともに、上記テレメトリバスを通じて受信したテストデータを外部試験装置に送信し、自己が従となるテスト動作処理部である場合に上記テレメトリバスを通じて主となるテスト動作処理部に対しテストデータを送信するとともに、上記テレメトリバスを通じて送信したテストデータを外部試験装置に送信し、上記外部試験装置は、主となるテスト動作処理部から送信されたテストデータと従となるテスト動作処理部から送信されたテストデータとを比較し、比較結果に基づいて上記各コンポーネントの動作状態の健全性を確認するものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、衛星の組立後の地上試験時や、衛星打ち上げ後の実運用時に、テレメトリバスの接続確認と、各コンポーネント間での信号伝送状況の動作確認を行うことができるので、衛星の性能試験を行う場合に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による試験装置の構成図である。
図において、衛星1はデータケーブル100を通じて、外部に設けられた地上試験装置2に接続されている。データケーブル100はテレメトリ(TLM)伝送用のテレメトリケーブル101と、コマンド(CMD)伝送用のコマンドケーブル102を備えている。地上試験装置2は受信したテレメトリを記録する記録部60と、試験の制御や記録部60の記録データに基づいて比較処理などを行う制御部61を備えている。
【0010】
衛星1は内部にトランスポンダ3と複数のコンポーネント6を搭載している。図の例では、3つのコンポーネント6a、6b、6cを搭載した例を示している。地上試験装置2はデータケーブル100を介してトランスポンダ3に接続される。トランスポンダ3はデータバス4を通じてコンポーネント6a、コンポーネント6b、およびコンポーネント6cに接続される。データバス4は、各コンポーネントから送信されるテレメトリを伝送するテレメトリバスとして機能する。
また、トランスポンダ3は、データバス5を通じてコンポーネント6a、コンポーネント6b、およびコンポーネント6cに接続される。データバス5は、各コンポーネントにコマンドを送信するコマンドバスとして機能する。
【0011】
コンポーネント6aは信号ケーブル7を通じてコンポーネント6bに接続されている。コンポーネント6bは信号ケーブル8を通じてコンポーネント6cに接続されている。信号ケーブル7、8は各コンポーネント間でアナログ信号を伝送する。
【0012】
コンポーネント6a、コンポーネント6b、コンポーネント6cは、それぞれテスト動作処理部10、テスト動作処理部11、テスト動作処理部12を備えている。各テスト動作処理部には、各コンポーネントを制御して、試験用のテレメトリを出力する試験制御用のプログラムが格納されている。
【0013】
図2は、コンポーネント6aとコンポーネント6bの詳細構成を示す図である。コンポーネント6aは、ミッション回路20と、テスト動作処理部10と、テレメトリ送信部21と、テレメトリ受信部23と、アナログ信号受信部24を備えている。
コンポーネント6bは、ミッション回路31と、テスト動作処理部11と、テレメトリ送信部34と、電源モニタ35と、テレメトリ受信部36を備えている。
ミッション回路20、31は、コンポーネント6a、6bが、衛星稼動後の通常運用時に、それぞれ実行処理するためのミッションプログラムを格納している。各ミッションプログラムは、データバス5を通じて入力されるコマンドに基づいて、信号処理した結果を、データバス4を通じてテレメトリとして出力する。ここでは、その詳細な説明を割愛する。
【0014】
テスト動作処理部10は、テストモード制御部41と、テストデータレジスタ42と、テレメトリデータ生成部43を備えている。
テスト動作処理部11は、テストモード制御部51と、テストデータレジスタ52と、テレメトリデータ生成部53を備えている。
各テストモード制御部には、試験制御用のプログラムが格納されている。
なお、テレメトリデータ生成部は、各コンポーネントのミッション回路に通常組み込まれている、テレメトリデータ生成プログラムやテレメトリデータ生成回路を用いて良いことは言うまでもない。また、テストモード制御部やテストデータレジスタについても、各コンポーネントに元々組み込まれているFPGA(Field Programmable Gate Array)やMPU(Micro Processing Unit)やEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)などを用いても良いことは言うまでもない。
【0015】
テレメトリ送信部34はOR回路32と送信回路33を備えている。テレメトリ送信部21はテレメトリ送信部34と同様の回路構成のため詳細図示と説明を省く。
テストデータレジスタ42およびテストデータレジスタ52は、書換え可能な不揮発メモリで構成される。
【0016】
次に、この実施の形態による衛星試験装置の動作について説明する。図3は、衛星試験装置の動作を示すフローチャートである。
地上試験装置2の制御部61は、衛星1の機能試験の実行処理を起動する。これによって、衛星内部の各コンポーネント6の機能試験が開始される(ステップS101)。この際、試験開始時刻が記録される。
【0017】
機能試験の開始に伴ない、地上試験装置2は、各コンポーネント6に対して主従関係を設定する(ステップS102)。
図2の例では、コンポーネント6aが主コンポーネント、コンポーネント6bが従コンポーネントに設定された例を示している。
【0018】
次に、地上試験装置2は、主コンポーネントに設定したコンポーネント6aに対して、試験動作の開始を指示する試験開始指令を送信する。試験開始指令はデータケーブル100を通じてトランスポンダ3に送信され、データバス5を介して、コンポーネント6aのテストモード制御部41とミッション回路20にて受信される。
コンポーネント6aは地上試験装置2から試験開始指令を受けると、ミッション回路20にてプログラム処理が実行されている場合、そのプログラム処理を即座に停止させる。ミッション回路20の停止が正常に完了すると、ミッション回路20からテストモード制御部41に停止完了通知が送信される。また、テストモード制御部41は試験開始指令を受信すると試験処理のプログラムを起動して、コンポーネント6aはテストモードに移行する(ステップS103)。
なお、テストモード開始後、テストモード終了時にはテストモード開始信号を再度送信することで、テストモードは解除される。・・・トグルスイッチのようにテストモード開始信号を使用し、テストの開始/終了は、コンポーネント6a、6b、6cにて実行される。
【0019】
テストモード制御部41は、試験開始の起動とともに、テレメトリデータ生成部43に対して、正常に起動したことを通知する起動完了通知データの生成を指示する。テレメトリデータ生成部43は起動完了通知データのテレメトリを生成し、テレメトリ送信部21に生成したテレメトリデータを送信する。
このテレメトリデータは、図5に示すように、識別符号、データ領域、テストフラグから構成された固定長のデータである。テレメトリデータの最終ビットはテストフラグの値が設定される。テレメトリデータ生成部43は、起動完了を示す情報として、例えばテストフラグに“1”を設定する。
テレメトリ送信部21はデータバス4を通じて、起動完了通知データを含むテレメトリをトランスポンダ3に送信する。トランスポンダ3はテレメトリ送信部21の送信データを中継して、地上試験装置2の制御部61にテレメトリを送信する。
制御部61は受信したテレメトリを解析し、テストモード制御部41が正常に起動したことを確認すると、コンポーネント6aの機能試験の実行を開始する。
なお、この正常に起動が確認されることによって、コンポーネント6aとトランスポンダ3との間で、データバスに接続異常がないことが確認できる。
【0020】
地上試験装置2の制御部61は、トランスポンダ3およびデータバス5を通じて、コンポーネント6aのテストデータレジスタ42に対して事前にテストデータを送信する。テストデータレジスタ42は、テストデータとして、例えば、H=“1”、L=“0“、などの符号データが格納される。
【0021】
次に、テストモード制御部41は、従コンポーネントに設定されたコンポーネント6bのミッション回路31およびテストモード制御部51に対し、データバス5を通じて、試験動作の開始を指示する試験開始指令を送信する。
コンポーネント6bはコンポーネント6aから試験開始指令を受けると、ミッション回路31にてプログラム処理が実行されている場合、そのプログラム処理を即座に停止させる。ミッション回路31の停止が正常に完了すると、ミッション回路31からテストモード制御部51に完了通知が送信される。また、テストモード制御部51は試験開始指令を受信すると試験処理のプログラムを起動して、コンポーネント6bはテストモードに移行する(ステップS104)。
【0022】
コンポーネント6bのテストモード制御部51は、試験開始の起動とともに、テレメトリデータ生成部53に対して、正常に起動したことを通知する起動完了通知データの生成を指示する。テレメトリデータ生成部53は起動完了通知データのテレメトリを生成し、テレメトリ送信部34に生成したテレメトリデータを送信する。テレメトリ送信部34はデータバス4を通じて、起動完了通知データを含むテレメトリをコンポーネント6aのテレメトリ受信部23に送信する。
このテレメトリデータは、図5に示すように、識別符号領域、データ領域、およびテストフラグ領域の、各領域から構成された固定長のデータである。テレメトリデータの最終ビットはテストフラグの値が設定される。テレメトリデータ生成部53は、起動完了を示す情報として、例えばテストフラグに“1”を設定する。
【0023】
テストモード制御部41は、テレメトリ受信部23にて受信したテレメトリの最終ビットを解析し、テストフラグに“1”が設定されており、テストモード制御部51が正常に起動したことを確認すると、コンポーネント6aとコンポーネント6b間の機能試験の実行を開始する。
【0024】
次に、テストモード制御部41は、データバス5を通じて、テストデータレジスタ42に格納された符号データをテストモード制御部51に送信する。テストモード制御部51は、受信した符号データをテストデータレジスタ52に格納される(ステップS105)。テストデータレジスタ52には、例えば、H=“1”、L=“0“、などの符号データが格納される。
【0025】
テストモード制御部51は、テストデータレジスタ52にテストデータが格納された後、テレメトリデータ生成部53に対してテストデータを含むテレメトリデータの生成を指示する。テレメトリデータ生成部43は、テストデータレジスタ42の格納データを読出して、例えば、”1010“のような符号配列をデータ領域に含んだ、テレメトリデータを生成する(S106)。テレメトリデータの識別符号を示す領域には、上位の所定ビットにコンポーネント6bを識別するための符号(例えばb)が設定される。テレメトリデータのテストフラグには、”1“が設定される。
【0026】
次いで、テストモード制御部51は、予め決められた所定の周期で、テレメトリデータ生成部53で生成されたテレメトリデータを、テレメトリ送信部34に出力する。テストモード制御部51は、例えばT秒間隔で、符号配列”1010“を所定ビット長のデータ領域に含んだ、テレメトリデータを出力する。
【0027】
テレメトリ送信部34は、OR回路32によって、ミッション回路31から出力されるテレメトリデータと、テストモード制御部51から出力されるテレメトリデータの和信号を出力する。実際には、テストモード時にはミッション回路31の動作が停止しているので、テレメトリ送信部34はテストモード制御部51から出力されるテレメトリデータのみを出力する。
すなわち、コンポーネント6bのテストモード制御部51から出力されるテレメトリデータは、データバス4を通じて、テレメトリ送信部34の送信回路33からテレメトリ受信部23に出力される。
【0028】
コンポーネント6aのテストモード制御部41は、テレメトリ受信部23で受信されたテレメトリデータを、テレメトリ送信部21に送出する。この際、テレメトリデータ生成部43は、テレメトリデータの識別符号を、コンポーネント6bから送信されコンポーネント6aで中継されたデータであることを示す識別符号(例えばba)に書き換える。すなわち、テレメトリデータの識別符号の領域には、上位ビットにコンポーネント6bであることを示す情報、下位ビットにコンポーネント6aであることを示す情報が設定される。テレメトリデータのテストフラグには、”1“が設定されている。
テレメトリ送信部21は、テレメトリ受信部23で受信したテレメトリデータ(データA)を、データバス4を介してトランスポンダ3に送信する。(ステップS107)
【0029】
また、コンポーネント6bのテレメトリ送信部34は、データバス4を通じて、OR回路32から出力されるテレメトリデータ(データB)を、直接トランスポンダ3に送信する。(ステップS107)
【0030】
さらに、コンポーネント6aのテストモード制御部41は、テレメトリ受信部23にてコンポーネント6bからのテレメトリを受信すると、テレメトリデータ生成部43を動作させる。テレメトリデータ生成部43は、テストデータレジスタ42の格納データを読出して、テレメトリデータを生成する。
テレメトリデータ生成部48は、テストデータレジスタ42の格納データから、例えば、”1010“のような符号配列を、所定ビット長のデータ領域に含んだテレメトリデータを生成する。また、テレメトリデータの識別符号の領域には、上位ビットにコンポーネント6aを識別するための符号(例えばa)が設定され、テレメトリデータのテストフラグには、”1“が設定される。
コンポーネント6aのテストモード制御部41は、テレメトリデータ生成部48の生成したテレメトリデータを、テレメトリ送信部21に送出する。テレメトリ送信部21はデータバス4を介して、テレメトリデータ(データC)をトランスポンダ3に送信する(ステップS108)。
【0031】
トランスポンダ3は、コンポーネント6aから受信したテレメトリデータ(データA)を地上試験装置2に送信する。地上試験装置2は、受信したデータAを記録部60に、記録時間とともに記録する。
また、トランスポンダ3は、コンポーネント6bから受信したテレメトリデータ(データB)を地上試験装置2に送信する。地上試験装置2は、受信したデータBを記録部60に、記録時間とともに記録する。
さらに、トランスポンダ3は、コンポーネント6aから受信したテレメトリデータ(データC)を地上試験装置2に送信する。地上試験装置2は、受信したデータCを記録部60に、記録時間とともに記録する。
なお、各データは識別符号に基づいて識別が行われる。また、記録時間とテストフラグいに基づいて、各コンポーネントから送信された試験用のテレメトリデータであることが確認できる。
【0032】
地上試験装置2の制御部61は、記録部60に記録されたデータAとデータB、およびデータAとデータCを比較する比較部を構成する。
データAは、コンポーネント6bで生成されてコンポーネント6aを中継されたテレメトリデータである。データBは、コンポーネント6bからコンポーネント6aを介さずに直接送信されたテレメトリデータである。また、データCは、コンポーネント6bと同一のテストデータに基づいて生成され、コンポーネント6aから送信されたテレメトリデータである。
従って、コンポーネント6aとコンポーネント6bの動作に異常がなく、コンポーネント6aとコンポーネント6b間のデータバスの接続状態や通信状態などに異常がなければ、各テレメトリデータのデータ領域に含まれる符号配列は、同じ配列のデータとなる。
【0033】
制御部61は、データAのデータ領域と、データBのデータ領域に含まれる符号配列を比較する。比較の結果、両データの符号配列が一致していた場合には、コンポーネント6aとコンポーネント6b間のデータバスの接続状態や、通信状態に異常がないと判断する。
また、制御部61は、データBのデータ領域と、データCのデータ領域に含まれる符号配列を比較する。比較の結果、両データの符号配列が一致していた場合には、各コンポーネントで処理される論理信号に異常がなく、コンポーネント6aとコンポーネント6bの動作状態に異常がないと判断する。
【0034】
一方、比較部61による比較の結果、データAのデータ領域の符号と、データBのデータ領域の符号とが、不一致であった場合には、コンポーネント6aとコンポーネント6b間のデータバスの接続状態や通信状態に異常があると判断する。
また、比較部61による比較の結果、データBのデータ領域の符号と、データCのデータ領域の符号とが、不一致であった場合には、コンポーネント6aとコンポーネント6bの動作状態に異常があると判断する。
【0035】
地上試験装置2は、比較部61が異常を検出すると、即座に別の組合せのコンポーネント6について主従関係を設定し、再度試験を実行する。例えば、コンポーネント6aを主とし、コンポーネント6cを従として試験を実行する。
【0036】
この組替え試験の結果、コンポーネント6aのテレメトリデータと、コンポーネント6cのテレメトリデータにおける、各データ領域の符号が一致した場合には、コンポーネント6aとコンポーネント6cの動作状態、データバスの接続状態、及び通信状態が正常であると判断する。
このようにして、コンポーネント6bに何らかの異常が発生していることを特定することができるので、以後の試験では、コンポーネント6b以外を対象として試験を実施する。
【0037】
地上試験装置2は、比較部61が比較処理を完了すると、コンポーネント6aのテストモードを終了させる。次いで、コンポーネント6について別の主従関係を設定して、試験を続行する(ステップS110)。例えば、コンポーネント6bを主とし、コンポーネント6cを従として、ステップS103に戻って試験を行う。
全てのコンポーネント6について試験が実行された後、地上試験装置2は試験の実行を停止する。
また、この試験の実行停止に伴なって、先に実行処理を停止していた各コンポーネント6のミッション回路について、その実行処理を再開させる。
【0038】
なお、コンポーネント6aとコンポーネント6bとの通信確認試験を、周期的に実施しても良い。例えば、コンポーネント6bが、事前に設定された周期で、コンポーネント6aや地上試験装置2に対して、定期的に試験用のテレメトリ(データA、データB)を送信するようにしても良い。
【0039】
また、この実施の形態によれば、コンポーネント6bのアナログ信号の状態を確認することもできる。
図2において、例えば、コンポーネント6bの電源モニタ35が、電源のオンオフ状態をモニタする。電源モニタ35は、電源オンの場合に“1”、電源オフの場合に“0”を出力する。アナログ信号受信部24は、コンポーネント6aとコンポーネント6bの間を接続する信号ケーブル7を通じて、電源モニタ35の出力を受信する。
【0040】
テストモード制御部41は、テレメトリデータ生成部43に対して、電源モニタ35の出力結果を送信するテレメトリを生成するよう、指示する。これによって、コンポーネント6aは、電源モニタ35の出力結果を、テレメトリデータに載せて、地上試験装置2に送信することができる。
この際、例えば、テストフラグを16ビットのデータで構成して、XX11が電源オン、XX01が電源オフを示すように、テレメトリデータを生成すれば良い。最下位ビットは上述したテストモードの有無を示す符号、中位ビットは電源のオンオフを示す符号である。また、最上位2ビットは、電源モニタを行ったコンポーネントを識別する符号で、各コンポーネントの信号ケーブルの接続時に、事前にコンポーネントに対応した識別符号を設定しておく。
【0041】
地上試験装置2は、コンポーネント6aから送信されるテレメトリデータに基づいて、コンポーネント6bの電源がオンの状態にあるのか、オフの状態にあるのかを確認することができる。
勿論、この電源モニタ試験は、試験の実行有無を地上試験装置2で制御することなく、各コンポーネントの起動時や電源オン/オフ時に、各コンポーネントが自律的に試験を実行するようにしても良いことは、言うまでもない。
【0042】
なお、以上の説明では、地上試験装置2とトランスポンダ3との間を、データケーブル100で接続した例について説明した。しかしながら、この実施の形態ではこのような試験形態に限られることはない。
例えば、宇宙空間の所望の軌道に衛星を投入した後、衛星を実運用している間に、各コンポーネントの機能試験を実施しても良い。この場合、地上試験装置を、衛星と通信を行う地上局に接続して試験を行い、衛星に搭載されたトランスポンダと地上局との間を、データケーブル100の代わりに衛星通信回線で接続する。そして、衛星が所定のミッションの実行を休止している合間に、衛星通信回線を通じて各コンポーネントの機能試験を実施すれば良い。
【0043】
以上により、この実施の形態による衛星試験装置は、衛星に搭載された各コンポーネントに、テレメトリを制御する試験制御プログラムを設けることによって、コンポーネントから出力されるテレメトリを用いて、コンポーネント間の接続確認や、各コンポーネントの動作確認を行うことができるので、次の(1)、(2)のような効果がある。
(1)衛星組立後であっても、コンポーネント間の接続状況、断線有無、短絡有無などのデータラインの健全性を容易に確認することができ、データラインの不具合を未然に防止できる。
(2)コンポーネントに不具合が生じた際に、信号断線、動作不良の生じたコンポーネントを特定することができるので、不具合解析や回路の健全性の確認を効率的に実施できる。
なお、この試験装置は、元来コンポーネントに接続されたデータバスを用いて、コンポーネント内に試験用のプログラムやレジスタを常駐させるだけで設置できるので、新たに試験用の試験用の特別なコネクタやケーブルを設ける必要がなく、設置が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この実施の形態1による衛星試験装置の構成を示す図である。
【図2】この実施の形態1によるコンポーネントの構成を示す図である。
【図3】この実施の形態1による試験動作を示すフローチャートである。
【図4】この実施の形態1によるテレメトリのデータ構造例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 衛星、2 地上試験装置、6 コンポーネント、10〜12 テスト動作処理部、21、34 テレメトリ送信部、41、51 テストモード制御部、42、52 テストデータレジスタ、43、53 テレメトリデータ生成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星に搭載され、テレメトリを伝送するテレメトリバスと、
衛星に搭載され、上記テレメトリバスにテレメトリを送信するテレメトリ送信部を有する複数のコンポーネントと、
各コンポーネントに搭載され、上記テレメトリ送信部に対しテストデータをテレメトリとして送信させるテスト動作処理部と、
上記テスト動作処理部の主従関係を設定し、主従関係の設定された上記各テスト動作処理部に対してテスト動作を実行させるとともに、上記テレメトリバスを通じて上記各テスト動作処理部から送信されるテストデータを受信する外部試験装置とを備え、
上記テスト動作処理部はテスト動作の実行開始に応じて、自己が主となるテスト動作処理部である場合に、上記テレメトリバスを通じて従となるテスト動作処理部からテストデータを受信するとともに、上記テレメトリバスを通じて受信したテストデータを外部試験装置に送信し、自己が従となるテスト動作処理部である場合に上記テレメトリバスを通じて主となるテスト動作処理部に対しテストデータを送信するとともに、上記テレメトリバスを通じて送信したテストデータを外部試験装置に送信し、
上記外部試験装置は、主となるテスト動作処理部から送信されたテストデータと従となるテスト動作処理部から送信されたテストデータとを比較し、比較結果に基づいて上記各コンポーネントの動作状態を確認することを特徴とする衛星試験装置。
【請求項2】
衛星に配設されたテレメトリバスに対しテレメトリを送信する複数のコンポーネントに搭載され、テストデータをテレメトリとして送信するテスト動作処理部と、上記テスト動作処理部の主従関係を設定し、主従関係の設定されたテスト動作処理部に対してテスト動作を実行させるとともに、上記テレメトリバスを通じて上記各テスト動作処理部から送信されるテストデータを受信する外部試験装置とを備え、
上記テスト動作処理部はテスト動作の実行開始に応じて、自己が主となるテスト動作処理部である場合に上記テレメトリバスを通じて従となるテスト動作処理部からテストデータを受信するとともに、上記テレメトリバスを通じて受信したテストデータを外部試験装置に送信し、自己が従となるテスト動作処理部である場合に上記テレメトリバスを通じて主となるテスト動作処理部に対しテストデータを送信するとともに、上記テレメトリバスを通じて送信したテストデータを外部試験装置に送信し、
上記外部試験装置は、主となるテスト動作処理部から送信されたテストデータと従となるテスト動作処理部から送信されたテストデータとを比較し、比較結果に基づいて上記各コンポーネントの動作状態を確認することを特徴とする衛星試験装置。
【請求項3】
上記テスト動作処理部は、テストデータを格納するテストデータレジスタと、テストデータレジスタに格納されたテストデータからテレメトリデータを生成するテレメトリデータ生成部と、自己が従となるテスト動作処理部に設定された場合に、テレメトリデータ生成部で生成したテストデータを主となるテスト動作処理部に送信するとともに上記外部試験装置に送信し、自己が主となるテスト動作処理部に設定された場合に、従となるテスト動作処理部から受信したテレメトリデータを、上記外部試験装置に送信する制御部とを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の衛星試験装置。
【請求項4】
上記テスト動作処理部は、テストデータを格納するテストデータレジスタと、テストデータレジスタに格納されたテストデータからテレメトリデータを生成するテレメトリデータ生成部と、自己が従となるテスト動作処理部に設定された場合に、主となるテストデータレジスタに格納されたテストデータを受信してテストデータレジスタに格納し、テレメトリデータ生成部で生成したテストデータを主となるテスト動作処理部に送信するとともに上記外部試験装置に送信し、自己が主となるテスト動作処理部に設定された場合に、テストデータレジスタに格納されたテストデータから生成したテレメトリデータと従となるテスト動作処理部から受信したテレメトリデータとを上記外部試験装置に送信する制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の衛星試験装置。
【請求項5】
上記テスト動作処理部は、対応するコンポーネントから送信されるテレメトリデータの所定領域にテストデータをビットデータとして付与し、上記データバスに当該テストデータを付与したテレメトリデータを出力することを特徴とした請求項1または請求項2に記載の衛星試験装置。
【請求項6】
上記テレメトリデータ生成部は、テスト動作開始後、予め設定された周期でテストデータを含むテレメトリデータを生成することを特徴とする請求項3記載の衛星試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−256376(P2006−256376A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73344(P2005−73344)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】