説明

衝撃吸収ロープの把持具及びそれを使用した衝撃吸収方法

【課題】安価な部材で、衝撃吸収効果を安定的に得ることができるようにする。
【解決手段】押圧板1はバネ鋼板製であって、衝撃吸収ロープ2を嵌合可能な溝3を有するとともに、当該溝3と交差する方向であって、溝3の窪みとは反対側に突出する凸部4が、溝3の左右に形成されている。この押圧板1・1二枚を、一方の押圧板1の溝3に、他方の押圧板1の凸部4を合わせて、互いに嵌め合わせ、ボルト6・ナット7によって一体に固定して把持具Aとする。溝3に嵌め込んだロープ2は、バネ力によって掴み、摩擦力を生じさせ、落石などの衝撃エネルギーを吸収し、減衰する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は落石などの衝撃を吸収するための衝撃吸収ロープの把持具と、その把持具を使用して衝撃を吸収する吸収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
斜面の落石、雪崩、崩落土砂等を受け、その衝撃を吸収する衝撃吸収柵が開発されている。
このような衝撃吸収柵において落石などの衝撃エネルギーを吸収する手段として、把持した衝撃吸収ロープが衝撃によって引っ張られたときに、その把持した部分の摩擦力によって抵抗し、エネルギーを減衰・吸収するものである。
【0003】
衝撃を吸収するのは、衝撃吸収ロープの両端部だけでなく、縦横に交差して張り巡らせた吸収ロープの交差部分にも、ロープの把持具を取付けていた。
このような交差部分のロープ把持具として、特開2003−301418号公報に記載されているようなものが開発されている。
同公報に記載された把持具は、鋳物製で製造した板材を重ね合わせ、板材に設けた溝に衝撃ロープを嵌め入れるものである。
衝撃ロープ同士が擦れ合わないように、交差するロープの間に挟み、その二本のロープを更に左右から挟み込むように二枚の板材を重ね、合計三枚の板材によって把持具とするものである。
【0004】
前記したような把持具は、鋳物製であるため重く、また三枚の板材から成るために高価である。
また、鋳物製であるため、ロープを把持する力を調整することが極めて難しく、把持具のエネルギー吸収性能を安定させることが困難であった。
【特許文献1】特開2003−301418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、衝撃吸収ロープ把持具を軽量、且つ安価なものとすることと、エネルギー吸収性能を安定させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる衝撃吸収ロープの把持具は、
衝撃吸収ロープを嵌合可能な溝を有するとともに、
当該溝と交差する方向であって、溝の窪みとは反対側に突出する凸部が、溝の左右に形成されたバネ鋼板から成る押圧板二枚を、
一方の押圧板の溝に、他方の押圧板の凸部を合わせて、互いに嵌め合わせ、
当該二枚の押圧板を締め付け部材によって一体に固定可能としてなる。
また、他の衝撃吸収ロープの把持具は、二枚の押圧板の溝に嵌められた交差する二本の衝撃吸収ロープの間には、クリアランスが形成されているものである。
【0007】
また、本発明にかかる衝撃吸収方法は、
衝撃吸収ロープを嵌合可能な溝を有するとともに、
当該溝と交差する方向であって、溝の窪みとは反対側に突出する凸部が形成されたバネ鋼板から成る押圧板二枚から成る衝撃吸収ロープの把持具に、
二枚の押圧板の各溝に、交差する二本の衝撃吸収ロープを一本づつ通し、
一方の押圧板の溝に、他方の押圧板の凸部を嵌め合わせて前記衝撃吸収ロープを押え、
当該二枚の押圧板を締め付け部材によって一体に固定し、
衝撃吸収ロープに作用した引張エネルギーを、衝撃吸収ロープを把持する把持具とロープとの摩擦力により吸収するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以上の構成よりなるから、少なくとも以下のうちいずれか一つの効果を達成するものである。
<a>把持具は、バネ鋼板製の二枚の押圧板から成るものであり、軽量で取扱いが容易である。
<b>押圧板には、他方の押圧板の溝に嵌めることが可能な凸部を設けたため、凸部が他方の押圧板の溝に嵌め込んだロープを押えて、ロープ同士が擦れ合うようなことがない。よって、二本のロープの間に板材を挟む必要がなく、二枚の押圧板によって把持具を構成できる。
<c>二枚の押圧板は、同じ形状のものを使用すればよく、単一の商品を製造すればよく、製造コストを安価にできる。
<d>二枚の押圧板から成るものであって、部品点数が少なく、安価となる。
<e>バネ鋼板により押圧板を形成しているため、溝に嵌める衝撃吸収ロープは、そのバネ弾性によって挟むため、ロープに対して摩擦力を与え易く、エネルギー吸収性能を安定させることができる。
<f>一方の押圧板の溝に他方の押圧板の凸部を嵌め、交差したロープの間にはクリアランスが形成され、両者が接触して擦れて破断するようなことがない。
【実施例】
【0009】
以下、図に示す実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。
<1> 押圧板
押圧板1は、バネ鋼板によって形成されている。
押圧板1はほぼ正方形状に形成されており、その左右中間部に、後に述べる衝撃吸収ロープ2を嵌め合わせることが可能な溝3が、一辺から一辺まで連続して形成されている。
溝3の幅は、衝撃吸収ロープ2の直径より若干小さくなっている。
溝3の左右には、溝3と交差する方向であって、溝3の窪みとは反対側に突出する凸部4が形成されている。
実施例では、溝3と凸部4は直角を成し、凸部4は、溝3を跨いで、溝3の左右に連続して形成されている。
凸部4の幅は、溝3の幅と同じか、それより若干小さい。
押圧板1の四隅には、ボルト通し孔5がそれぞれ形成されている。
【0010】
<2> 把持具
把持具Aは、上記した押圧板1二枚を組み合わせて形成する。
押圧板1・1を、その溝3・3の窪み側を向き合わせ、且つ、溝3・3が互いに直交するようにする。
一方の押圧板1の溝3の中に、他方の押圧板1の凸部4を嵌め合わせるようにし、二枚の押圧板1・1を一体化する。
四隅のボルト通し孔5に、ボルト6を通し、ナット7によって固定する。
【0011】
<3> 使用状態
斜面の山肌に沿って、落石等を受け止めるための衝撃吸収ロープ2が、縦横に配設されている。
衝撃吸収ロープ2の下には、金網8が配設されている。
縦横に配設された衝撃吸収ロープ2の交差部分に、把持具Aを取り付ける。
二枚の押圧板1のうち、一方の押圧板1の溝3に縦の衝撃吸収ロープ2を嵌め、他方の押圧板1の溝3に横の衝撃吸収ロープ2を嵌める。
この状態で二枚の押圧板1の一方の溝3に、他方の押圧板1の凸部4を嵌めるようにして、互いに嵌め合わせる。
衝撃吸収ロープ2・2は、凸部4・4によって互いに離隔する方向に押されているため、二本の衝撃吸収ロープ2・2の間には、若干のクリアランスcが形成される。
ボルト通し孔5にボルト6を通し、ナット7によって一体に固定する。
【0012】
<4> 衝撃吸収作用
押圧板1の溝3の幅は、衝撃吸収ロープ2の直径よりも小さい。
従って、押圧板1のバネ鋼板のバネ力によって、衝撃吸収ロープ2を押圧して掴むこととなる。
落石が衝撃吸収ロープ2に衝突した場合、落石の衝撃を受け、衝撃吸収ロープ2が落石によって引っ張られる。
押圧板1がバネ力によってロープ2を押圧しているため、引っ張られて押圧力に抗してロープ2が溝3内を移動したとき、ロープ2と溝3との間に大きな摩擦力が生じる。
この摩擦力と衝撃エネルギーとが相殺するようにエネルギーを吸収し、衝撃力が減衰する。
バネ力によってエネルギーを吸収するため、吸収性能を安定的に得ることができる。
縦横の衝撃吸収ロープ2の間には、クリアランスcが形成されているため、ロープ2・2同士が接触して擦れるようなことがない。




























【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】把持具の斜視図
【図2】組み合わせる前の状態の側面図
【図3】把持具により衝撃吸収ロープを把持した状態の側面図
【図4】把持具の一方側面
【図5】把持具の裏面
【図6】把持具を使用した状態の説明図
【符号の説明】
【0014】
A:把持具
1:押圧板
2:衝撃吸収ロープ
3:溝
4:凸部
5:ボルト通し孔
6:ボルト
7:ナット
8:金網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃吸収ロープを嵌合可能な溝を有するとともに、
当該溝と交差する方向であって、溝の窪みとは反対側に突出する凸部が、溝の左右に形成されたバネ鋼板から成る押圧板二枚を、
一方の押圧板の溝に、他方の押圧板の凸部を合わせて、互いに嵌め合わせ、
当該二枚の押圧板を締め付け部材によって一体に固定可能としてなる
衝撃吸収ロープの把持具。
【請求項2】
二枚の押圧板の溝に嵌められた交差する二本の衝撃吸収ロープの間には、クリアランスが形成されていることを特徴とする
請求項1記載の衝撃吸収ロープの把持具。
【請求項3】
衝撃吸収ロープを嵌合可能な溝を有するとともに、
当該溝と交差する方向であって、溝の窪みとは反対側に突出する凸部が、溝の左右に形成されたバネ鋼板から成る押圧板二枚から成る衝撃吸収ロープの把持具に、
二枚の押圧板の各溝に、交差する二本の衝撃吸収ロープを一本づつ通し、
一方の押圧板の溝に、他方の押圧板の凸部を嵌め合わせて前記衝撃吸収ロープを押え、
当該二枚の押圧板を締め付け部材によって一体に固定し、
衝撃吸収ロープに作用した引張エネルギーを、衝撃吸収ロープを把持する把持具とロープとの摩擦力により吸収する
衝撃吸収方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−209598(P2009−209598A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54579(P2008−54579)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(596183125)株式会社シビル (13)
【Fターム(参考)】