説明

衝突回避装置

【課題】本発明は、運転者が意図しない進路変更において、対象物を回避し、当該対象物との衝突を未然に防止することのできる衝突回避装置を提供する。
【解決手段】ドライバによりステアリングが操作され(S10)、ドライバによりウインカーレバーが操作されないと(S12)、自車両の進路予測を行い(S14)、自車両の走行している走行レーンが認識不可能な場合(S16)、或いは自車両の走行している走行レーンが認識可能であってもドライバのステアリング操作により走行レーンを逸脱する虞がない場合(S24)に自車両の進路上に衝突対象物があれば(S18)、スピーカより警報を発声し(S20)、更に衝突対象との衝突を回避するように操舵アシスト及びブレーキ操作アシストを作動する(S22)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突回避装置に係り、詳しくは、運転者の意図しない操作時の衝突回避制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の安全性向上のために歩行者や自転車或いは他車両等の対象物との衝突回避技術が開発されている。例えば、特許文献1の衝突回避装置は、ナビゲーションシステムや各種センサから自車両の前方と横方向の道路形状と自車両の進行情報(自車両の位置、進行方向と走行レーン等)を取得し、当該取得結果に基づいて安全確保領域を計算する。そして、車両に設置されたレーダ及びカメラにより他車両や歩行者を検出し、他車両等が安全確保領域に進入している、或いは進入すると予測される場合に、速度及びハンドルを制御して自車両の回避行動を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−242544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の衝突回避装置では、自車両の進行方向を方向指示器及びハンドル操舵角センサより取得するようにしている。
しかしながら、自車の進行方向を方向指示器より取得すると、例えば運転者の居眠りや脇見運転により運転者が方向指示器を操作しないで走行レーンを変更した場合、即ち、運転者が意図しないで走行レーンが変更した場合に、変更した先の走行レーンに歩行者や自転車或いは他車両等の対象物がいたとしても安全確保領域に入らず、衝突回避機能を発揮できない虞がある。
【0005】
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、運転者が意図しない進路変更において、対象物を回避し、当該対象物との衝突を未然に防止することのできる衝突回避装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1の衝突回避装置では、車両の周囲の対象物を検出する対象物検出手段と、前記車両の運転者の進路変更意思を検出する意思検出手段と、前記運転者の進路変更操作を検出する操作検出手段と、前記車両の位置を検出する位置検出手段と、前記車両の衝突を回避する衝突回避手段と、前記操作検出手段と前記位置検出手段との検出結果に基づき前記車両の進路を判定する進路判定手段と、前記意思検出手段により前記運転者の進路変更意思があることが検出されず、且つ前記進路判定手段により判定された前記車両の進路が走行車線を逸脱すると推定された場合に前記運転者に警告するレーン逸脱警告手段と、前記意思検出手段により前記運転者の進路変更意思があることが検出されず、且つ前記進路判定手段により判定された前記車両の進路が走行車線を逸脱しないと推定された場合には、前記車両の進路方向に前記対象物が存在すると前記衝突回避手段を作動させる衝突回避制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の衝突回避装置では、請求項1において、前記衝突回避制御手段は、前記意思検出手段により前記運転者の進路変更意思があることが検出されず、且つ前記位置検出手段により前記車両の位置を検出できない場合に前記車両の進路方向に前記対象物が存在すると前記衝突回避手段を作動させることを特徴とする。
また、請求項3の衝突回避装置では、請求項1或いは2において、前記衝突回避手段は、前記運転者に警報を発する警報手段であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4の衝突回避装置では、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記衝突回避手段は、前記車両のハンドル操作を自動的に行うハンドル操作手段であることを特徴とする。
また、請求項5の衝突回避装置では、請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記衝突回避手段は、前記車両の制動を行う制動手段であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、レーン逸脱警告手段により車両の進路が走行車線を逸脱すると推定された場合に運転者に警告されるので、車両の走行車線から逸脱を防止することができる。これにより、走行車線の外側の対象物に対しての衝突を防止することができる。 また、運転者によって進路変更操作がされて運転者の進路変更意思が検出されないような運転者の意図しない進路変更が行われた場合、例えば運転者の居眠りや脇見運転中にハンドル操作が行われた場合に、自車両の進路方向に歩行者、自転車及び他車両等の対象物が存在すると当該対象物との衝突を回避するように衝突回避手段が作動する。
【0010】
従って、運転者が意図しない進路変更を行った場合のようにレーン逸脱警告手段では対象物を回避することが困難である場合であっても、当該対象物との衝突を未然に防止することができる。
また、請求項2の発明によれば、位置検出手段により車両の位置が検出できずレーン逸脱警告手段の作動が不能となるような場合でも、車両の進路方向に存在する対象物との衝突を未然に防止することができる。
【0011】
また、請求項3の発明によれば、衝突回避手段を運転者に警報を発する警報手段としており、自車両の運転者に対して、歩行者、自転車及び他車両等の対象物との衝突前に警報を発することができるので、運転者によって自車両を操作することで自車両と対象物との衝突を未然に防止することができる。
また、請求項4の発明によれば、衝突回避手段を車両のハンドル操作を行うハンドル操作手段としており、例えば、運転者が対象物に気が付かないような場合でも運転者のハンドル操作によらずにハンドル操作手段にてハンドル操作を自動的に行い、自動的に車両が対象物を回避するように操作することができるので、自車両と対象物との衝突を未然に確実に防止することができる。
【0012】
また、請求項5の発明によれば、衝突回避手段を車両の制動を行う制動手段としており、例えば、運転者が対象物に気が付かないような場合でも自車両の制動を行うことができるので、自車両と対象物との衝突を未然に更に確実に防止することができる。また、仮に対象物と衝突することになっても自車両の車速を減速することができるので、対象物の被害を最小限にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る衝突回避装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る衝突回避装置の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る衝突回避装置のブロック図である。
図1に示すように、本発明に係る衝突回避装置1は、蛇角センサ(操作検出手段)2と、ウインカースイッチ(意思検出手段)3と、ナビゲーションシステム(位置検出手段)4と、ミリ波レーダ(対象物検出手段)5と、CCDカメラ(位置検出手段)6と、スピーカ(警報手段)7と、操舵アシスト(ハンドル操作手段)8と、ブレーキ操作アシスト(制動手段)9と電子コントロールユニット(以下ECUという)(進路判定手段、衝突回避制御手段)10とで構成されている。
【0015】
蛇角センサ2は、図示しない車両のステアリングの操作量である蛇角を検出する。また、蛇角センサ2は、検出される蛇角の変化を検出することでステアリング操作の有無を検出する。
ウインカースイッチ3は、ドライバが右左折時に車両の旋回方向を周囲に知らせる車外の設けられたウインカーランプの作動を切り換えるスイッチである。当該ウインカースイッチ3は、ドライバが車内の運転席近傍に設けられる図示しないウインカーレバーを作動させることにより切り換えられる。
【0016】
ナビゲーションシステム4は、地図情報を有し、車両に搭載された図示しないGPS(Global Positioning System)からの位置情報と地図情報とにより自車両の位置を検出する。
ミリ波レーダ5は、車両の前方に設けられ、車両前方向に存在する歩行者、自転車及び他車両等の衝突対象物を検出する。
【0017】
CCDカメラ6は、車両の前方を撮影するための撮像装置である。CCDカメラ6は、車両前方の物体のみならず、走行レーンの側端、つまり車線を区分する道路上の車線側縁である白線や黄色線をも精度良く撮影可能である。
スピーカ7は、車両に搭載された音響機器のスピーカを共用してもよく、ドライバに警報を音声で伝達可能なものであればよい。
【0018】
操舵アシスト8は、ドライバのステアリング操作を補助するものである。操舵アシスト8は、車両の図示しないステアリングシャフトに付設され、ECU10からの制御信号によりステアリングシャフトに任意の回転トルクを加えることが可能な図示しない操舵アクチュエータである。
ブレーキ操作アシスト9は、ドライバのブレーキペダル操作を補助するものである。ブレーキ操作アシスト9は、図示しないマスターシリンダと車両の図示しない各ホイールのホイールシリンダとの間に配され、ECU10からの制御信号により各ホイールシリンダに供給される油圧を任意に増減圧させることが可能な図示しないブレーキアクチュエータである。
【0019】
ECU10は、車両の総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)及び中央演算処理装置(CPU)等を含んで構成される。そして、ECU10は、上記蛇角センサ2、ウインカースイッチ3、ナビゲーションシステム4、ミリ波レーダ5、CCDカメラ6、スピーカ7、操舵アシスト8及びブレーキ操作アシスト9等の各種装置や各種センサ類と電気的に接続されている。ECU10は、蛇角センサ2、ウインカースイッチ3、ナビゲーションシステム4、ミリ波レーダ5及びCCDカメラ6等の各種センサ類からの各情報に基づき、ドライバに音で警報を行うスピーカ7やハンドル操作を補助する操舵アシスト8やブレーキ操作を補助するブレーキ操作アシスト9を作動制御して、対象物と自車とが衝突しないように回避するように制御する機能を有する。
【0020】
次に、衝突回避装置の制御要領について説明する。
図2は、本発明に係る衝突回避装置の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図2に示すように、本ルーチンは、ドライバによりステアリングが操作されることで開始され(ステップS10)、ステップS12に進む。
ステップS12では、ドライバによりウインカーが操作されたか否かを判別する。即ち、ドライバのウインカー操作の有無によりドライバが意図してステアリング操作を行ったのか否かを判別する。判別結果が真(Yes)でドライバによりウインカーが操作された、即ち、ドライバが意図してステアリング操作を行ったとして、本ルーチンをリターンする。判別結果が偽(No)でドライバによりウインカーが操作されていない、即ち、ドライバが意図してステアリング操作を行っていないとして、ステップS14に進む。
【0021】
ステップS14では、蛇角センサ2の検出結果に基づいて自車両の進路を予測する。そして、ステップS16に進む。
ステップS16では、ナビゲーションシステム4及びCCDカメラ6の検出結果に基づいて、自車が走行している走行レーンが認識可能か、否かを判別する。詳しくは、ナビゲーションシステム4による自車両の位置情報及びCCDカメラ6による道路上の白線の有無より自車両が走行している走行レーンを認識可能か、否かを判別する。判別結果が真(Yes)で自車が走行している走行レーンが認識可能であれば、ステップS24に進む。判別結果が偽(No)で自車が走行している走行レーンが認識不可であれば、ステップS18に進む。
【0022】
ステップS18では、ミリ波レーダ5の検出結果に基づき、自車両の進路上に歩行者、自転車及び他車両等の衝突対象物があるか、否かを判別する。判別結果が真(Yes)で自車両の進路上に衝突対象物があれば、ステップS20に進む。判別結果が偽(No)で自車両の進路上に衝突対象物がなければ、衝突の可能性無しとして本ルーチンをリターンする。
【0023】
ステップS20では、自車両の進路上に衝突対象物があることをスピーカ7よりドライバへ警報を発する。そして、ステップS22に進む。
ステップS22では、衝突対象物との衝突を回避するように、操舵アシスト8及びブレーキ操作アシストを作動させる。そして、本ルーチンをリターンする。
ステップS24では、ステップS14で予測した自車両の予測進路に基づいて、自車両が走行レーンを逸脱するか、否かを判別する。判別結果が真(Yes)で自車両が走行レーンを逸脱すると判別されれば、ステップS26に進む。判別結果が偽(No)で自車両が走行レーンを逸脱しないと判別されれば、ステップS18へ戻る。
【0024】
ステップS26では、自車両が走行レーンを逸脱する可能性があるとして、ドライバに走行レーンを逸脱する可能性があることをスピーカ7から警報を発する走行レーン逸脱警報を行う。そして、本ルーチンをリターンする。(なお、ステップS24及びS26の処理が本願発明のレーン逸脱警告手段に該当する。)
このように、本発明に係る衝突回避装置では、ドライバによりステアリングが操作され、ドライバによりウインカーレバーが操作されないと、自車両の進路予測を行う。そして、自車両の走行している走行レーンが認識可能である場合には、車両が逸脱する虞があるか否かを判定し、車両が逸脱する虞がある場合には警報を発する。
【0025】
更に、本実施形態では、車両の走行レーンが認識不可能な場合、或いは自車両の走行している走行レーンが認識可能であっても、ドライバのステアリング操作により走行レーンを逸脱する虞がない場合に自車両の進路上に衝突対象物があれば、スピーカ7より警報を発声し、更に衝突対象との衝突を回避するように操舵アシスト8及びブレーキ操作アシスト9を作動するようにしている。
【0026】
このことから、ドライバの居眠りや脇見運転といったドライバが意図しない進路変更において、走行レーンを認識不可能な歩道と車道との境界のない道路上、或いは、走行レーンを認識可能な道路の走行レーン上にある歩行者、自転車及び他車両との衝突を回避することができる。
従って、ドライバが意図しない進路変更を行ったとしても歩行者、自転車及び他車両の衝突対象物を回避し、当該衝突対象物との衝突を未然に防止することができる。
【0027】
また、衝突対象物の回避時にブレーキ操作アシスト9を作動させており、自車両の車速が減速しているので、たとえ衝突対象物と衝突したとしても衝突対象物の被害を最小限に抑えることができる。
以上で発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の形態は上記実施形態に限定されるものではない。
【0028】
例えば、上記実施形態では、衝突対象物との衝突を回避するためにスピーカ7からの警報の発声と、操舵アシスト8及びブレーキ操作アシスト9の作動とを行うようにしているが、これに限定されるものではなく、スピーカ7からの警報の発声のみ、或いは操舵アシスト8及びブレーキ操作アシスト9の作動のみを行うようにしてもよい。この場合、制御機器を減らすことができるので、衝突回避装置の付加によるコスト増を抑制することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 衝突回避装置
2 蛇角センサ(操作検出手段)
3 ウインカースイッチ(意思検出手段)
4 ナビゲーションシステム(位置検出手段)
5 ミリ波レーダ(対象物検出手段)
6 CCDカメラ(位置検出手段)
7 スピーカ(警報手段)
8 操舵アシスト(ハンドル操作手段)
9 ブレーキ操作アシスト(制動手段)
10 ECU(進路判定手段、衝突回避制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲の対象物を検出する対象物検出手段と、
前記車両の運転者の進路変更意思を検出する意思検出手段と、
前記運転者の進路変更操作を検出する操作検出手段と、
前記車両の位置を検出する位置検出手段と、
前記車両の衝突を回避する衝突回避手段と、
前記操作検出手段と前記位置検出手段との検出結果に基づき前記車両の進路を判定する進路判定手段と、
前記意思検出手段により前記運転者の進路変更意思があることが検出されず、且つ前記進路判定手段により判定された前記車両の進路が走行車線を逸脱すると推定された場合に前記運転者に警告するレーン逸脱警告手段と、
前記意思検出手段により前記運転者の進路変更意思があることが検出されず、且つ前記進路判定手段により判定された前記車両の進路が走行車線を逸脱しないと推定された場合には、前記車両の進路方向に前記対象物が存在すると前記衝突回避手段を作動させる衝突回避制御手段と、
を備えることを特徴とする衝突回避装置。
【請求項2】
前記衝突回避制御手段は、前記意思検出手段により前記運転者の進路変更意思があることが検出されず、且つ前記位置検出手段により前記車両の位置を検出できない場合に前記車両の進路方向に前記対象物が存在すると前記衝突回避手段を作動させることを特徴とする、請求項1に記載の衝突回避装置。
【請求項3】
前記衝突回避手段は、前記運転者に警報を発する警報手段であることを特徴とする、請求項1或いは2に記載の衝突回避装置。
【請求項4】
前記衝突回避手段は、前記車両が前記対象物を回避するように前記車両のハンドル操作を自動的に行うハンドル操作手段であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の衝突回避装置。
【請求項5】
前記衝突回避手段は、前記車両の制動を行う制動手段であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の衝突回避装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−221463(P2012−221463A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90112(P2011−90112)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】