説明

衣料用液体洗浄剤組成物

【課題】洗濯乾燥後の被洗物の吸水性に優れ、pHの保存安定性が良好な衣料用液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、一般式(1)で表される非イオン界面活性剤(A)と、酸化防止剤(B)と、多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、多価カルボン酸塩およびヒドロキシカルボン酸塩の群から選択される少なくとも1種(C)とを含有し、かつアニオン界面活性剤および/またはカチオン界面活性剤(D)の含有量が0〜0.5質量%未満であることを特徴とする衣料用液体洗浄剤組成物である。
[化1]


[式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基であり;−X−は−O−または−COO−であり、−X−が−O−のとき、Rの炭素数は10〜20であり、かつRは水素原子であり、−X−が−COO−のとき、Rの炭素数は7〜13であり、かつRはメチル基またはエチル基であり;nは10〜20の数である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄剤組成物としては、従来、その形態が粉末状のものや液体状のものが使用されている。なかでも、水中での溶け残りの懸念がないことや、洗浄対象物(被洗物)に対して直接塗布することが可能である等の理由から、近年では世界的に液体洗浄剤組成物の使用の割合が高まってきている。
これまでに液体洗浄剤組成物については種々検討されており、衣料用液体洗浄剤組成物等の多くの組成物が開示されている。たとえば、特定の非イオン界面活性剤、特定の陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤および水を含有する酸性液体洗浄剤組成物が提案されている(特許文献1参照)。
また、アニオン界面活性剤およびノニオン性界面活性剤と、テルペン系炭化水素と、有機酸およびその塩と、アルコール系溶剤とを含有し、pHが3〜6に調整された弱酸性液体洗剤組成物が提案されている(特許文献2参照)。
また、主な洗浄成分として非イオン界面活性剤が配合された衣料用液体洗浄剤組成物も提案されている。
【特許文献1】特開2005−97432号公報
【特許文献2】特開2003−138300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、被洗物のなかでも綿、麻などの吸水性の良好な繊維製品は、洗濯の繰り返しによって、該繊維製品が本来有する吸水性が損なわれやすいという問題がある。
これは、洗濯の際、衣料用液体洗浄剤組成物中に含まれるアニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤が繊維製品に残留することに起因すると考えられる。
上記の特許文献1〜2に記載の組成物を使用して洗濯した場合、洗濯乾燥後の被洗物の吸水性は充分に満足できるものではない。これは、たとえば特許文献1の実施例に記載の液体洗浄剤組成物にはカチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤(漂白活性化剤)とが合計で0.5質量%以上、特許文献2の実施例に記載の弱酸性液体洗剤組成物にはアニオン界面活性剤が30質量%以上それぞれ配合されており、洗濯乾燥後、それらの成分が繊維製品に残留するためと考えられる。
また、主な洗浄成分として非イオン界面活性剤が配合された衣料用液体洗浄剤組成物においては、従来、たとえば洗浄力の向上のためにアニオン界面活性剤が併用されたり、利便性の向上の観点から、柔軟性付与のためにカチオン界面活性剤が添加された組成物等が提案されている。しかしながら、それらの組成物を使用して洗濯した場合、洗濯乾燥後の被洗物の吸水性については充分に満足できるものではない。
【0004】
一方、主な洗浄成分として非イオン界面活性剤が配合された衣料用液体洗浄剤組成物においては、経時に伴う該組成物のpH変化を抑制する(pHの保存安定性が良好である)ことが、液安定性(たとえば、非イオン界面活性剤の安定配合など)の点から重要である。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、洗濯乾燥後の被洗物の吸水性に優れ、pHの保存安定性が良好な衣料用液体洗浄剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明においては、下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤(A)と、酸化防止剤(B)と、多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、多価カルボン酸塩およびヒドロキシカルボン酸塩の群から選択される少なくとも1種(C)とを含有し、かつアニオン界面活性剤および/またはカチオン界面活性剤(D)の含有量が0〜0.5質量%未満であることを特徴とする衣料用液体洗浄剤組成物を提案する。
【0007】
【化1】

[式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基であり;−X−は−O−または−COO−であり、−X−が−O−のとき、Rの炭素数は10〜20であり、かつRは水素原子であり、−X−が−COO−のとき、Rの炭素数は7〜13であり、かつRはメチル基またはエチル基であり;nはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、10〜20の数である。]
【0008】
また、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物においては、フトモモ科Melaleuca(メラレウカ)属植物、バラ科Rosa(ローザ)属植物、シソ科Mosla(モスラ)属植物およびショウガ科Amomum(アモマム)属植物の群から選択される少なくとも1種の植物抽出物(E)をさらに含有することが好ましい。
また、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物においては、25℃でのpHが3〜10であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗濯乾燥後の被洗物の吸水性に優れ、pHの保存安定性が良好な衣料用液体洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、前記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤(A)(以下、(A)成分という。)と、酸化防止剤(B)(以下、(B)成分という。)と、多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、多価カルボン酸塩およびヒドロキシカルボン酸塩の群から選択される少なくとも1種(C)(以下、(C)成分という。)とを含有し、かつアニオン界面活性剤および/またはカチオン界面活性剤(D)(以下、(D)成分という。)の含有量が0〜0.5質量%未満のものである。
また、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、好ましくは、特定の植物抽出物(E)(以下、(E)成分という。)をさらに含有する。
また、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、好ましくは、25℃でのpHが3〜10である。
【0011】
<(A)成分>
本発明において、(A)成分は、前記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤である。該(A)成分を含有することにより、たとえば皮脂汚れ等に対する洗浄効果を有する衣料用液体洗浄剤組成物が得られる。
また、洗濯乾燥後の被洗物の吸水性の向上に寄与する。かかる理由としては定かではないが、(A)成分は、後述の(D)成分や(A)成分以外の非イオン界面活性剤に比べて、洗濯後、被洗物に残存しにくいためと推測される。
【0012】
前記一般式(1)中、Rは、直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基、または直鎖もしくは分岐鎖状のアルケニル基であり、直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。
−X−は、−O−または−COO−である。
−X−が−O−のときは、前記一般式(1)で表される(A)成分はアルコールエトキシレートである。このとき、Rの炭素数は10〜20であり、好ましくは10〜16である。
−X−が−COO−のときは、前記一般式(1)で表される(A)成分は脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤である。このとき、Rの炭素数は7〜13であり、好ましくは11〜13であり、より好ましくは11である。
前記一般式(1)において、Rの炭素数は、−X−が−O−のときは炭素数10以上、または−X−が−COO−のときは炭素数7以上であると、洗浄剤組成物としての洗浄力が向上する。
一方、Rの炭素数は、−X−が−O−のときは炭素数20以下、または−X−が−COO−のときは炭素数13以下であると、洗浄剤組成物の性状の制御がさらに容易となる。たとえば衣料用液体洗浄剤組成物の粘度上昇等が抑制され、良好な液性が得られやすい。
前記一般式(1)中、Rは、−X−が−O−のときは水素原子である。−X−が−COO−のとき、Rは、メチル基またはエチル基であり、好ましくはメチル基である。
【0013】
式(1)中、nは、エチレンオキサイドの平均付加モル数を示す。
nは10〜20の数であり、好ましくは12〜18である。該範囲であると洗浄力がより向上する。また、衣料用液体洗浄剤組成物の液安定性(例えば、低温での経時安定性等)が向上する。
【0014】
エチレンオキサイドの付加モル数分布は、エチレンオキサイドを付加する際の反応方法により異なるが、該付加モル数分布は広いものであってもよいし、狭いものであってもよい。たとえば、一般的な水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ触媒を用いて酸化エチレンを疎水基原料に付加させた分布の比較的広いものでもよいし、特公平6−15038号公報に記載のAl3+、Ga3+、In3+、Tl3+、Co3+、Sc3+、La3+、Mn2+等の金属イオンを添加した酸化マグネシウム等の特定のアルコキシル化触媒を用いて酸化エチレンを疎水基原料に付加させた分布の狭いものでもよい。
【0015】
本発明において、(A)成分は、すなわち、アルコールエトキシレートまたは脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤は、いずれかを単独もしくは2種以上を混合して用いてもよいし、両方を混合して用いてもよい。
(A)成分の含有量は、衣料用液体洗浄剤組成物中、15〜45質量%であることが好ましく、より好ましくは25〜45質量%である。該範囲の下限値以上であることにより皮脂汚れ等に対する洗浄力が向上する。一方、上限値以下であれば、被洗物への残存量が低減して吸水性がより向上する。また、液体洗浄剤組成物の粘度上昇等が抑制されて使用性が向上する。また、経時(低温)安定性も向上する。
【0016】
<(B)成分>
本発明において、(B)成分は酸化防止剤である。該(B)成分を含有することにより、前記(A)成分をより安定に配合することができる。また、本発明の効果の向上に寄与する。
【0017】
(B)成分としては、特に限定されるものではなく、通常、液体洗浄剤組成物に使用可能な酸化防止剤を用いることができる。なかでも、ラジカル反応の連鎖を断ち切るラジカル捕捉剤が好ましい。そのなかでも、(B)成分を含有することにより得られる前記効果が良好なことから、フェノール系酸化防止剤が好ましく、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等のモノフェノール系酸化防止剤;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール等のビスフェノール系酸化防止剤;dl−α−トコフェロール等の高分子型フェノール系酸化防止剤がより好ましく、モノフェノール系酸化防止剤、高分子型フェノール系酸化防止剤がさらに好ましい。
モノフェノール系酸化防止剤のなかでは、ジブチルヒドロキシトルエンが特に好ましい。高分子型フェノール系酸化防止剤のなかでは、dl−α−トコフェロールが特に好ましい。
【0018】
(B)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。
(B)成分の含有量は、衣料用液体洗浄剤組成物中、0.01〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.02〜3質量%である。該範囲の下限値以上であることにより、(B)成分を含有することによる効果が得られやすくなる。一方、上限値以下であることにより、(B)成分を含有することによる効果が充分に得られ、経済的にも有利となる。
【0019】
<(C)成分>
本発明において、(C)成分は、多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、多価カルボン酸塩およびヒドロキシカルボン酸塩の群から選択される少なくとも1種である。該(C)成分を含有することにより、衣料用液体洗浄剤組成物のpHの保存安定性が向上する。また、前記(A)成分をより安定に配合することができる。
【0020】
(C)成分としては、pH変化を抑える緩衝効果を有するものが好適なものとして挙げられる。多価カルボン酸としては、コハク酸、マレイン酸、フマル酸等が好ましいものとして挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸等が好ましいものとして挙げられる。
なかでもpH緩衝の効果が良好なことから、クエン酸、リンゴ酸がより好ましく、クエン酸が特に好ましい。
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。なかでもアルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0021】
(C)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。
(C)成分の含有量は、衣料用液体洗浄剤組成物中、0.05〜3質量%であることが好ましく、好ましくは0.1〜1.5質量%である。該範囲の下限値以上であることにより、衣料用液体洗浄剤組成物のpHの経時に伴う変化を抑制する効果(pHの保存安定性)が向上する。一方、上限値以下であることにより、経時に伴うpH変化を抑制する効果が充分に得られ、経済的にも有利となる。
【0022】
<(D)成分>
本発明において、(D)成分は、アニオン界面活性剤および/またはカチオン界面活性剤である。該(D)成分の含有量は、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物中、0〜0.5質量%未満である。該範囲であることにより、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、洗濯乾燥後の被洗物の吸水性に優れる。
【0023】
(D)成分において、アニオン界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、通常、衣料用液体洗浄剤組成物に用いられるものとして従来公知のものを用いることができる。
たとえば、石けん、非石けん系アニオン界面活性剤が挙げられ、非石けん系アニオン界面活性剤が好ましい。非石けん系アニオン界面活性剤として具体的には、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、アルカンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等が挙げられる。
α−オレフィンスルホン酸塩としては、アルキル基の炭素数が、好ましくは14〜18であり、より好ましくは14である。
α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩としては、脂肪酸の炭素数が、好ましくは8〜18であり、より好ましくは12〜16である。
アルカンスルホン酸塩としては、好ましくは2級アルカンスルホン酸塩である。アルキル基の炭素数は、好ましくは10〜21であり、より好ましくは10〜14である。
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、アルキル基の炭素数が、好ましくは8〜16であり、より好ましくは10〜14である。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、アルキル基の炭素数が、好ましくは10〜20であり、より好ましくは10〜16である。また、エチレンオキシドの平均付加モル数は、好ましくは0.5〜8である。
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。なかでも、ナトリウム塩が好ましい。
上記のなかでも、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩がより好ましく、アルキル基の炭素数10〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0024】
(D)成分において、カチオン界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、通常、衣料用液体洗浄剤組成物に用いられるものとして従来公知のものを用いることができる。
たとえば、アミン塩型カチオン界面活性剤、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤が挙げられ、なかでも下記一般式(2)で表される第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤が好ましい。
ここで、「アミン塩型」とは、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩を包含する。
【0025】
【化2】

[式中、R〜Rのうち、2つ以上はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基であり;それ以外は炭素数8〜22の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基である。Zはハロゲンイオンまたはアルキル硫酸イオンである。]
【0026】
前記一般式(2)中、R〜Rのうち、2つ以上はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基であり、それ以外は炭素数8〜22の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基である。
前記一般式(2)で表される(D)成分のなかで好適なものとしては、たとえば、R〜Rが、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、Rが炭素数8〜22の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基または炭素数8〜22の直鎖もしくは分岐鎖状のアルケニル基である化合物(D−1)(以下、(D−1)成分という。);RおよびRが、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、RおよびRが、それぞれ独立して炭素数8〜22の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基または炭素数8〜22の直鎖もしくは分岐鎖状のアルケニル基である化合物(D−2)(以下、(D−2)成分という。)が挙げられる。
【0027】
前記(D−1)成分において、R〜Rは、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、それぞれメチル基であることがより好ましく、いずれもメチル基であることが特に好ましい。
のアルキル基またはアルケニル基において、炭素数は8〜22であり、10〜22であることが好ましく、16〜18であることがより好ましい。また、Rは、直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基であることが好ましく、直鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
【0028】
前記(D−2)成分において、RおよびRは、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、それぞれメチル基であることがより好ましく、いずれもメチル基であることが特に好ましい。
およびRのアルキル基またはアルケニル基において、炭素数は8〜22であり、8〜12であることが好ましく、8〜10であることがより好ましい。また、RおよびRは、それぞれ直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基であることが好ましく、それぞれ直鎖状のアルキル基であることがより好ましく、いずれも直鎖状のアルキル基であることが特に好ましい。
【0029】
は、ハロゲンイオンまたはアルキル硫酸イオンである。
ハロゲンイオンを構成するZとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
アルキル硫酸イオンを構成するZとしては、炭素数1〜3のアルキル基を有するものが好ましい。
なかでも、Zは、ハロゲンイオンであることが好ましい。
【0030】
カチオン界面活性剤の好ましいものとして具体的には、塩化アルキル(好ましくは炭素数16〜18)トリメチルアンモニウム(たとえば、商品名「アーカードT−800」、ライオンアクゾ製など)等の(D−1)成分;
塩化ジデシルジメチルアンモニウム(たとえば、商品名「アーカード210」、ライオンアクゾ製など)等の(D−2)成分などが例示できる。
【0031】
(D)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。
(D)成分の含有量は、衣料用液体洗浄剤組成物中、0〜0.5質量%未満であり、0〜0.2質量%であることが好ましい。本発明において、(D)成分は少ないほど好ましく、含まないこと(0質量%)が特に好ましい。該範囲であることにより、洗濯乾燥後の被洗物の吸水性が向上する。
【0032】
<(E)成分>
本発明において、(E)成分は、フトモモ科Melaleuca(メラレウカ)属植物、バラ科Rosa(ローザ)属植物、シソ科Mosla(モスラ)属植物およびショウガ科Amomum(アモマム)属植物の群から選択される少なくとも1種の植物抽出物である。
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物においては、該(E)成分をさらに含有することが好ましい。該(E)成分を含有することにより、消臭効果が顕著に得られる。
【0033】
フトモモ科Melaleuca(メラレウカ)属に属する植物としては、たとえばメラレウカ・アルテルニフォリア(Melaleuca alternifolia)、メラレウカ・クゥインクェネルウィア(M.quinquenervia)等が挙げられる。
バラ科Rosa(ローザ)属に属する植物としては、たとえばローザ・ダマスクローズ(Rosa damascena)、ローザ・ガリカ(R.gallica)、ハマナス(R.rugosa)等が挙げられる。
シソ科Mosla(モスラ)属に属する植物としては、たとえばヤマジソ(Mosla japonica)、ホソバヤマジソ(M.chinensis)、イヌコウジュ(M.scabra)等が挙げられる。
ショウガ科Amomum(アモマム)属に属する植物としては、たとえばアモマム・クサンティオイデス(Amomum xanthioides)、アモマム・ツァオコ(A.tsao−ko)、アモマム・キネンセ(A.chinense)等が挙げられる。
【0034】
上記の植物の用部は、特に限定されるものではなく、なかでも地上部を用いることが好ましい。本発明においては、フトモモ科Melaleuca(メラレウカ)属植物は葉部、バラ科Rosa(ローザ)属植物は花部、シソ科Mosla(モスラ)属植物は果実部、ショウガ科Amomum(アモマム)属植物は果実部をそれぞれ用いることが特に好ましい。
【0035】
植物抽出物は、植物を直接そのまま、あるいは乾燥したものを、適当な大きさに切断したり、粉砕加工したりしたものから抽出処理を行うことによって液体状のもの(抽出液)として得ることができる。
上記植物抽出物を得るために用いることができる溶媒としては、たとえばメタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、酢酸エチル、アセトン、モノテルペン類などの一般に用いられる有機溶媒;グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;水などが挙げられる。なかでも、エタノール、水、1,3−ブチレングリコール、モノテルペン類、またはそれらの混合溶剤が好ましく、エタノールが特に好ましい。
上記溶媒は、1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
本発明においては、抽出用溶媒が使用上無害なものであれば、抽出液をそのまま衣料用液体洗浄剤組成物の製造に用いることができる。また、抽出液を適当な溶媒で希釈した希釈液を衣料用液体洗浄剤組成物の製造に用いてもよい。あるいは抽出液を濃縮して濃縮エキスとしたもの、凍結乾燥などにより乾燥粉末としたもの、ペースト状に調製したもの等を用いることもできる。
【0036】
抽出処理は、冷浸、温浸、加熱環流、パーコレーション法などの常法によって行うことができる。本発明においては、溶媒抽出によって得られた植物抽出物の他に、水蒸気蒸留、炭酸ガスを超臨界状態にして行う超臨界抽出等、通常工業的に用いられている方法によって得られた植物抽出物も同様に利用でき、なかでも水蒸気蒸留が特に好ましい抽出方法として挙げられる。なお、超臨界抽出では、抽出助剤としてヘキサン、エタノールなどを用いることもできる。
また、植物抽出物は精製してもよい。かかる植物抽出物の精製は、植物抽出物を活性炭処理、液液分配、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーなどで行うことができる。
なお、上述の植物抽出物を得るための条件、たとえば抽出温度、抽出pH等については特に制限されるものではない。
【0037】
また、植物抽出物としては、上述の抽出処理の方法を用いて抽出された市販製品も好適に利用できる。
植物抽出物の市販製品として好適なものとしては、たとえばフトモモ科Melaleuca(メラレウカ)属植物抽出物としてはティーツリーオイル、バラ科Rosa(ローザ)属植物抽出物としてはローズオイル、シソ科Mosla(モスラ)属植物抽出物としてはヤマジソオイル等が利用できる。
また、ショウガ科Amomum(アモマム)属植物抽出物としては、縮砂が好ましい。
【0038】
(E)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。
(E)成分の含有量は、衣料用液体洗浄剤組成物中、固形分換算で0.005〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3〜3質量%である。該範囲の下限値以上であることにより、消臭効果が得られやすくなる。一方、上限値以下であることにより、他の成分とのバランスをとることができる。
【0039】
<任意成分>
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物には、前記(A)〜(E)成分以外に必要に応じて、その他の任意成分を配合することができる。
具体的には、たとえばハイドロトロープ剤として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール系溶剤やエタノールなどのアルコール等が挙げられる。なかでも、液安定性がより向上することから、重量平均分子量400〜5000(好ましくは1000程度)のポリエチレングリコールが好ましい。また、液安定性と防腐力とがより向上することから、エタノールも好ましい。
ハイドロトロープ剤は、1種または2種以上混合して用いることができる。
ハイドロトロープ剤の含有量は、衣料用液体洗浄剤組成物中、0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0040】
また、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、前記(A)成分以外の非イオン界面活性剤および/または両性界面活性剤を配合することができる。
前記(A)成分以外の非イオン界面活性剤としては、たとえば炭素数8〜18のアルキル基を有し、グルコースユニットの平均付加モル数1〜10のアルキルポリグルコシド;炭素数8〜18のアルキル基を有し、グリセリンユニットの平均付加モル数1〜3のアルキルグリセリンエーテル;炭素数10〜20の脂肪酸ジエタノールアミド;炭素数10〜18のアルキル基を有し、エチレンオキシドの平均付加モル数1〜30のポリオキシエチレンアルカノエート等が挙げられる。
上記の非イオン界面活性剤は、1種または2種以上混合して用いることができる。
これらの(A)成分以外の非イオン界面活性剤の含有量は、衣料用液体洗浄剤組成物中、好ましくは0〜10質量%である。
【0041】
両性界面活性剤としては、たとえばN−アルキルもしくはアルケニルアミノ酸またはその塩、ベタイン等が挙げられ、N−アルキルもしくはアルケニルアミノ酸またはその塩が好ましい。
N−アルキルもしくはアルケニルアミノ酸は、窒素原子にアルキル基またはアルケニル基が結合し、さらに、1つまたは2つの「−R−COOH」(式中、Rは2価の炭化水素基を示し、好ましくはアルキレン基であり、特に炭素数1〜2であることが好ましい。)で表される基が結合した構造を有する。「−R−COOH」が1つ結合した化合物においては、窒素原子に、さらに水素原子が結合している。「−R−COOH」が1つのものをモノ体、2つのものをジ体という。本発明においては、これらモノ体、ジ体のいずれも用いることができる。
N−アルキルもしくはアルケニルアミノ酸において、アルキル基、アルケニル基の炭素数は10〜20であることが好ましく、これらは直鎖状でも分岐鎖状であってもよい。
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩であることが好ましく、ナトリウム塩であることがより好ましい。
N−アルキルもしくはアルケニルアミノ酸またはその塩としては、アルキルもしくはアルケニルアミノプロピオン酸またはその塩が好ましく、ラウリルアミノプロピオン酸またはそのナトリウム塩がより好ましい。
市販品としては、たとえばラウリルアミノプロピオン酸Na(一方社油脂工業(株)製)等が挙げられる。これは、モノ体とジ体の90質量%:10質量%の混合物である。
【0042】
ベタインとしては、アルキルベタイン、カルボベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン、アミドスルホベタイン、イミダゾリニウムベタイン、ホスホベタイン等が挙げられる。具体的には、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等の脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、ラウリルジメチルベタイン等のアルキルジメチルベタイン等が挙げられる。なかでも、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタインが好ましく、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルベタインが特に好ましい。
市販品としては、ラウリン酸アミドプロピルベタイン(商品名「ソフタゾリン LPB」、川研ファインケミカル(株)製)、ラウリルジメチルベタイン(商品名「アンヒトール24B」、花王(株)製)等が挙げられる。
上記の両性界面活性剤は、1種または2種以上混合して用いることができる。
これらの両性界面活性剤の含有量は、衣料用液体洗浄剤組成物中、好ましくは0〜3質量%である。
【0043】
また、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、金属イオン捕捉剤を配合することができる。
金属イオン捕捉剤としては、たとえばクエン酸;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸等の有機ホスホン酸誘導体;ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸等のアミノポリ酢酸類;ジカルボキシメチルグルタミン酸等の有機酸類、ポリアクリル酸等の高分子キレート剤等が挙げられる。なかでも、衣料用液体洗浄剤組成物の保存安定性の向上効果が良好な点から、有機ホスホン酸誘導体が好ましく、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸がより好ましい。
金属イオン捕捉剤は、1種または2種以上混合して用いることができる。
金属イオン捕捉剤の含有量は、衣料用液体洗浄剤組成物中、0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0044】
また、本発明の液体洗浄剤組成物には、アルカリ剤を配合することができる。
アルカリ剤としては、たとえばアルカノールアミン等が挙げられ、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
アルカリ剤は、1種または2種以上混合して用いることができる。
これらアルカリ剤の含有量は、衣料用液体洗浄剤組成物中、好ましくは0.5〜15質量%である。
【0045】
また、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物には、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸塩およびアルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれる1種以上を配合することができる。
アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩において、アルキル基(置換基)の数は1〜3であることが好ましく、より好ましくは1〜2である。該アルキル基としては、炭素数が1〜3であることが好ましく、より好ましくはメチル基、イソプロピル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。なかでもナトリウム塩、モノエタールアミン塩、ジエタノールアミン塩が好ましい。
なかでも、好適なものとして下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0046】
【化3】

[式中、X”、Y”、Z”は、それぞれ独立して水素原子、Cn”2n”+1(n”は1〜3の整数である。)または(CHCHであり;Mは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、NHまたはアルカノールアミン類を示す。]
【0047】
前記一般式(3)中、X”、Y”、Z”は、それぞれ独立して水素原子、Cn”2n”+1(n”は1〜3の整数である。)または(CHCHであり、好ましくはCH、(CHCHであり、より好ましくはCHである。
Mは、水素原子;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属原子;NH;またはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類を示し、好ましくはナトリウム、モノエタールアミン、ジエタノールアミンである。
【0048】
具体的な化合物の例としては、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ベンゼンスルホン酸カリウム塩、ベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、ベンゼンスルホン酸マグネシウム塩、ベンゼンスルホン酸カルシウム塩、ベンゼンスルホン酸モノエタノールアミン塩、ベンゼンスルホン酸ジエタノールアミン塩、ベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン塩、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ナトリウム塩、p−トルエンスルホン酸カリウム塩、p−トルエンスルホン酸アンモニウム塩、p−トルエンスルホン酸マグネシウム塩、p−トルエンスルホン酸カルシウム塩、p−トルエンスルホン酸モノエタノールアミン塩、p−トルエンスルホン酸ジエタノールアミン塩、p−トルエンスルホン酸トリエタノールアミン塩、o−またはm−またはp−キシレンスルホン酸、o−またはm−またはp−キシレンスルホン酸ナトリウム塩、o−またはm−またはp−キシレンスルホン酸カリウム塩、o−またはm−またはp−キシレンスルホン酸アンモニウム塩、o−またはm−またはp−キシレンスルホン酸マグネシウム塩、o−またはm−またはp−キシレンスルホン酸カルシウム塩、o−またはm−またはp−キシレンスルホン酸モノエタノールアミン塩、o−またはm−またはp−キシレンスルホン酸ジエタノールアミン塩、o−またはm−またはp−キシレンスルホン酸トリエタノールアミン塩、キュメンスルホン酸、キュメンスルホン酸ナトリウム塩、キュメンスルホン酸カリウム塩、キュメンスルホン酸アンモニウム塩、キュメンスルホン酸マグネシウム塩、キュメンスルホン酸カルシウム塩、キュメンスルホン酸モノエタノールアミン塩、キュメンスルホン酸ジエタノールアミン塩、キュメンスルホン酸トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
なかでもp−トルエンスルホン酸、m−キシレンスルホン酸、キュメンスルホン酸もしくはこれらのモノエタノールアミン塩が好ましく、p−トルエンスルホン酸、キュメンスルホン酸、m−キシレンスルホン酸がより好ましい。
これらは、1種または2種以上混合して用いることができる。
これらの含有量は、衣料用液体洗浄剤組成物中、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.5〜10質量%である。この範囲にあると、衣料用液体洗浄剤組成物の液表面において、該衣料用液体洗浄剤組成物がゲル化することにより形成される皮膜の生成抑制効果が向上する。
【0049】
さらに、本発明にかかる衣料用液体洗浄剤組成物は、再汚染防止を目的としてポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース等の再汚染防止剤を0〜2質量%;洗浄力向上を目的としてリパーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ等の酵素を0〜1質量%;酵素安定化を目的としてホウ酸、ホウ砂、蟻酸またはその塩、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等のカルシウム塩類を0〜3質量%;風合い向上を目的としてジメチルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等のシリコーンを0〜5質量%;白色衣料の白度向上を目的としてジスチリルビフェニル型等の蛍光増白剤を0〜1質量%;液体洗浄剤組成物の着色を目的として酸性染料等の色素を0.0001〜0.001質量%;液安定性や防腐性を目的として安息香酸ナトリウム、ケーソンCG(商品名)等の防腐剤を0.001〜1質量%等を配合することができる。
また、芳香のための香料としては、特開2002−146399号公報に記載の香料成分、溶剤および安定化剤を含有する香料組成物等が挙げられ、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物中に0.01〜1質量%を配合することができる。
【0050】
さらに、pH調整剤として塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられる。
pH調整剤は、1種または2種以上混合して用いることができる。
【0051】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物においては、25℃でのpHが3〜10であることが好ましく、pHが3〜6であることがより好ましい。該pHが前記範囲であることにより、天然繊維から合成繊維まで幅広い繊維製品の洗濯に使用することができる。さらに、該pHが弱酸性から中性の範囲であることにより、より幅広い繊維製品の洗濯に適した液体洗浄剤組成物となる。
本発明において、衣料用液体洗浄剤組成物(25℃に調温)のpHは、pHメーター(製品名:HM−30G、東亜ディーケーケー(株)製)等により測定される値を示す。
【0052】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、好適には水を溶剤として、常法に基づいて製造することができる。
使用方法は、通常の使用方法、すなわち本発明の衣料用液体洗浄剤組成物(本発明品)を、洗濯時に洗濯物と一緒に水に投入する方法、泥汚れや皮脂汚れに本発明品を直接塗布する方法、本発明品を予め水に溶かして衣類を浸漬する方法等が挙げられる。また、本発明品を洗濯物に塗布後、適宜放置し、その後、通常の洗濯液を用いて通常の洗濯を行う方法も好ましい。
【0053】
本発明によれば、洗濯乾燥後の被洗物の吸水性に優れ、pHの保存安定性が良好な衣料用液体洗浄剤組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、洗濯乾燥後の被洗物の吸水性とpHの保存安定性とともに、消臭効果にも優れた衣料用液体洗浄剤組成物を提供することができる。
また、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、経時による酸化劣化を受けにくく、洗浄力が良好なものである。
また、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物によれば、洗濯の繰り返しによっても、被洗物が本来有する吸水性が維持されやすいものである。
また、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、天然繊維から合成繊維まで幅広い繊維製品の洗濯に使用することができる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、「%」は特に断りがない限り「質量%」を示す。
【0055】
≪衣料用液体洗浄剤組成物の製造:実施例1〜5,比較例1〜3≫
表1に示す組成の衣料用液体洗浄剤組成物を、常法に準じて、以下のように製造した。
まず、(A)成分とポリエチレングリコールとを50℃以下で撹拌、溶解した後、40℃以下まで冷却した。その後の工程は、すべて室温〜40℃の間で行った。
次に、予め調製しておいた(B)成分とエタノールとの混合溶液を加え、撹拌した。次いで、全体量(全体量を100質量部とする。)が90質量部になる様に精製水を加えた後、香料を加え撹拌した。
その後、(C)成分、(D)成分、(E)成分、その他の任意成分を加え、撹拌した後、pHを調整し、残りの精製水を加えて衣料用液体洗浄剤組成物を製造した。
pHの調整は、衣料用液体洗浄剤組成物の製造直後の25℃でのpHが、表1に示すpHとなるように、pH調整剤(水酸化ナトリウムまたは硫酸)を適宜添加することにより行った。
なお、表1中の配合量の単位は質量%であり、純分換算量を示す。また、総量が100質量%となるように水量を調整した。下記に、表中に示した成分について説明する。
【0056】
<表中に示した成分の説明>
・(A)成分
A−1:アルコールエトキシレート、Cn’2n’+1O(EO)15H(n’=12の化合物と、n’=14の化合物との質量比で71/29の混合物);合成品。
(A−1の合成方法)
P&G製のC12,14アルコール(炭素数12のアルコールと炭素数14のアルコールとの質量比で71/29の混合物;商品名:CO−1214、分岐率*1 0質量%)224.4g、30質量%NaOH水溶液2.0gを、耐圧型反応容器中に採取し、容器内を窒素置換した。
次に、温度100℃、圧力2.0kPa以下で30分間脱水してから、温度を160℃まで昇温した。アルコ−ルを撹拌しながら酸化エチレン(ガス状)759.5gを、吹き込み管を使って、反応温度が180℃を超えないように添加速度を調整しながらアルコ−ルの液中に徐々に加えた。
酸化エチレンの添加終了後、温度180℃、圧力0.3MPa以下で30分間熟成した後、温度180℃、圧力6.0kPa以下で10分間未反応の酸化エチレンを留去した。
次に、温度を100℃以下まで冷却した後、反応物の1質量%水溶液のpHが約7になるように、p−トルエンスルホン酸(70質量%)を加えて中和し、A−1を得た。
*1分岐率:分岐率とは、原料アルコール中、全体のアルコールのモル数に対する、分岐アルキル基をもつアルコールのモル数の割合を示す。
【0057】
A−2:アルコールエトキシレート、Cn’2n’+1O(EO)15H(n’=12の化合物と、n’=13の化合物との質量比で55/45の混合物);合成品。
(A−2の合成方法)
A−1の合成方法において、Safol製の「Safol23アルコ−ル」(商品名;炭素数12のアルコールと炭素数13のアルコールとの質量比で55/45の混合物、分岐率*1 50質量%)224.4gと、酸化エチレン(ガス状)763.4gとを用いた以外は、A−1の合成方法と同様の方法により合成した。
【0058】
A−3:脂肪酸メチルエステルエトキシレート、C1123CO(OC15OCH、ナロー率 65質量%;合成品。
(A−3の合成方法)
特開2000−144179号公報に記載の合成方法に準じて製造した(なお、A−3は特開2000−144179号公報に記載のサンプルDに対応するものである。)。
ただし、ここで「ナロー率」とは、エチレンオキサイドの付加モル数が異なるエチレンオキサイド付加体の分布の割合を示し、下記の数式(S)で表されるものを示す。
【0059】
【数1】

[式中、nmaxは全体のエチレンオキサイド付加体中に最も多く存在するエチレンオキサイド付加体のエチレンオキサイドの付加モル数を示す。iはエチレンオキサイドの付加モル数を示す。Yiは全体のエチレンオキサイド付加体中に存在するエチレンオキサイドの付加モル数がiであるエチレンオキサイド付加体の割合(質量%)を示す。]
【0060】
・(B)成分
B−1:ジブチルヒドロキシトルエン、Degussa社製、商品名「K−NOX BHT」。
B−2:dl−α−トコフェロール、純正化学製、商品名「DL−α−Tocopherol」、試薬。
【0061】
・(C)成分
C−1:クエン酸3ナトリウム2水塩、マイルス社(米国)製、商品名「クエン酸ソーダ」。
C−2:リンゴ酸、ロッシュ社製、商品名「DL−リンゴ酸」。
【0062】
・(D)成分
D−1:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(アルキル基の炭素数10〜14)、ライオン(株)製。
D−2:塩化ジデシルジメチルアンモニウム、ライオンアクゾ社製、商品名「アーカード210」。
D−3:塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ライオンアクゾ社製、商品名「アーカードT−800」。
【0063】
・(E)成分
E−1:フトモモ科Melaleuca(メラレウカ)属植物(ティーツリーオイル)。
E−2:バラ科Rosa(ローザ)属植物(ローズオイル)。
E−3:シソ科Mosla(モスラ)属植物(ヤマジソオイル)。
E−4:ショウガ科Amomum(アモマム)属植物(縮砂)。
(E−1〜E−3の調製方法)
フトモモ科メラレウカ属植物(M.alternifolia:ティーツリー)葉部、バラ科ローザ属植物(R.damascena:ローズ)花部、シソ科モスラ属植物(M.japonica:ヤマジソ)地上部をそれぞれ乾燥し、各乾燥物1kgを、水蒸気蒸留することにより、それぞれの植物抽出物を得た。
(E−4の調製方法)
ショウガ科アモマム属植物(A.xanthioides:縮砂)地上部および種子を乾燥、粉砕して粗末とし、各粗末10gを70質量%エタノールに浸漬し、室温で5日間抽出した。その後、残渣をろ別して得られた抽出液を減圧濃縮し、植物抽出物を得た。
【0064】
・任意成分
エタノール:NEDO製、商品名「95vol%合成エタノール」。
ポリエチレングリコール:日本油脂(株)製、商品名「PEG#1000」、重量平均分子量1000。
アルキルアミノ酸:ラウリルアミノプロピオン酸Na、一方社油脂工業(株)。
HEDP:1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ALBRITE&WILSON製、商品名「BRIQUEST ADPA−A」。
モノエタノールアミン:(株)日本触媒製。
p−トルエンスルホン酸:協和発酵工業(株)製。
香料:特開2002−146399号公報の表11〜18に記載の香料組成物。
硫酸:東邦亜鉛(株)製。
水酸化ナトリウム:鶴見曹達(株)製。
【0065】
≪評価≫
得られた衣料用液体洗浄剤組成物について、以下に示す方法及び評価基準によって評価を行い、その結果を表1に併記した。
【0066】
<吸水性の評価>
(洗浄処理方法)
二層式洗濯機(三菱電機(株)製、品番:CW−30A1−H1)の槽内に、水(15℃、4°DH)30Lを入れ、各例の衣料用液体洗浄剤組成物の濃度が0.066質量%になるように加えた。
次いで、市販の木綿タオル10枚を槽内に入れ、10分間洗浄し、1分間脱水した。その後、1分間流水すすぎ、1分間脱水をした後、室内で風乾後、20℃、50%RHの恒温恒湿室で24時間放置した。
(吸水性の判定方法)
前記洗浄処理後の木綿タオルから、2.5cm×20cmの大きさに切り出した布片を5本用意した。次に、該布片を垂直に吊るし、該布片の下端側1cmまでを、縦8cm×横28cm×高さ3cmのステンレスの水槽に溜めた水道水に浸し、該布片の下端から水道水を、毛管現象を利用して上昇させた。そして、該布片の下端を水道水に接触させた時点から10分後の吸水高さ(mm)を測定し、下記基準に基づいて洗濯乾燥後の布片の吸水性の評価を行った。
ただし、吸水高さが高いほど、吸水性が良好であることを意味する(JIS L1907、バイレック法に準拠)。
(吸水高さの評価基準)
◎:140mm以上。
○:120mm以上140mm未満。
△:100mm以上120mm未満。
×:100mm未満。
【0067】
<pHの保存安定性の評価>
各例の衣料用液体洗浄剤組成物について、50℃下で1ヶ月保存前後のpHをそれぞれ測定し、下記評価基準に基づいてpHの保存安定性を評価した。
◎:保存前のpHと保存後のpHとの差が0.2未満であった。
○:保存前のpHと保存後のpHとの差が0.2以上0.4未満であった。
×:保存前のpHと保存後のpHとの差が0.4以上であった。
【0068】
<消臭効果の評価>
各例の衣料用液体洗浄剤組成物により、下記洗濯方法に従って繊維類を洗濯、乾燥した後、繊維類の臭いを嗅ぎ、下記評価基準に基づいて悪臭の消臭効果を評価した。
(洗濯方法)
家庭で半年間使用した手拭きタオルを、さらに台所で約3日間使用した後、半裁して試験布とした(ただし、該試験布は、下記評価基準で5レベルの強烈な臭いの手拭きタオルである。)。
該試験布を、浴比合わせのための他の衣料3kg分とともに全自動洗濯機(松下電器製、品番:NA−F70SD1)に入れ、温度約20℃の硬度約3゜DHの水道水を注水し、おまかせコースで洗濯を行った。
各例の衣料用液体洗浄剤組成物の投入量は、前記全自動洗濯機の洗剤量表示に従った。なお、浴比合わせの3kg分の衣料には、新品の綿100%の肌シャツ(BVD製)を用い、次の洗濯処理、すなわち全自動洗濯機(松下電器産業(株)製、品番:NA−F70SD1)に、市販合成洗剤トップ(ライオン(株)製)を投入し、温度約20℃の硬度約3゜DHの水道水を注水して、おまかせコースで洗濯を3回行ったものを用いた。
(乾燥方法)
上記の洗濯終了後、室温(約25℃)、湿度90%RHの室内で干して、5時間乾燥を行った。
(評価基準)
上記の洗濯、乾燥方法でそれぞれ処理した手拭きタオルに対し、6名のパネラーによる臭いの官能評価を行い、下記評価基準に基づいて点数化した。
5点:強烈な臭い。
4点:強い臭い。
3点:楽に感知できる臭い。
2点:何のにおいかわかる弱い臭い。
1点:かすかに感じられる臭い。
0点:臭わない。
官能評価の結果、6名の平均点を算出して3点未満(△、○、◎)であれば消臭効果が良好であると判定した。
◎:0点以上1点未満。
○:1点以上2点未満。
△:2点以上3点未満。
×:3点以上。
【0069】
【表1】

【0070】
表1の結果から、本発明にかかる実施例1〜5は、比較例1〜3に比べて洗濯乾燥後の被洗物の吸水性に優れ、pHの保存安定性が良好であることが確認できた。
また、(E)成分を含有する実施例3〜5は、洗濯乾燥後の被洗物の吸水性と、pHの保存安定性に加え、消臭効果も良好であることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤(A)と、酸化防止剤(B)と、多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、多価カルボン酸塩およびヒドロキシカルボン酸塩の群から選択される少なくとも1種(C)とを含有し、かつアニオン界面活性剤および/またはカチオン界面活性剤(D)の含有量が0〜0.5質量%未満であることを特徴とする衣料用液体洗浄剤組成物。
【化1】

[式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基であり;−X−は−O−または−COO−であり、−X−が−O−のとき、Rの炭素数は10〜20であり、かつRは水素原子であり、−X−が−COO−のとき、Rの炭素数は7〜13であり、かつRはメチル基またはエチル基であり;nはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、10〜20の数である。]
【請求項2】
フトモモ科Melaleuca(メラレウカ)属植物、バラ科Rosa(ローザ)属植物、シソ科Mosla(モスラ)属植物およびショウガ科Amomum(アモマム)属植物の群から選択される少なくとも1種の植物抽出物(E)をさらに含有する請求項1記載の衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
25℃でのpHが3〜10である請求項1または2に記載の衣料用液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2008−24753(P2008−24753A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195795(P2006−195795)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】