説明

表皮一体発泡成形ヘッドレスト及びその製造方法

【課題】 手間を掛けずに、表皮の開口部に蛇行や凹凸等の外観不良が発生することを防止し、製品の外観商品性を向上させることができる表皮一体発泡成形ヘッドレスト及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 表皮部材を袋状に形成してなる表皮2と、表皮2の内部に発泡合成樹脂9aを注入して一体発泡させたクッション材9と、表皮2から外部へ延出するヘッドレストステー8と、を備えた表皮一体発泡成形ヘッドレスト1において、袋状の表皮2は、表裏を反転させるための開口部6を有し、開口部6は、袋状の表皮2の内側空間内へ入り込むように対向して背面部材23,24の一対の端部23a,24aが折り曲げられて形成されると共に、端部23aには係合部23bが形成され、端部24aには被係合部24bが形成され、係合部23bと被係合部24bが係合されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドレスト及びその製造方法に係り、特に、袋状に形成した表皮内に発泡合成樹脂を注入して、クッション材を一体発泡させて形成される表皮一体発泡成形ヘッドレスト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表皮一体発泡ヘッドレストは、複数の表皮部材を縫製して袋状の表皮を形成し、その表皮を成形型の型内に組み付けて、発泡合成樹脂を樹脂注入ノズルから表皮の内部に充填し、発泡合成樹脂を表皮と一体発泡させて、クッション材と表皮を一体に形成している。
【0003】
表皮の開口部から発泡合成樹脂が外部へ漏れることを防止するために、開口部は、表皮の端部(封止代)が各々内側へ折り返され、これらを当接させるように形成されている。
しかしながら、ヘッドレストの形状の影響により、開口部が開いた状態となり、開口部の端部の折り曲げ方向が安定せず、製品の開口部付近の外観不良が発生するおそれがあった。つまり、開口部に蛇行が生じたり、浮きや凹凸等が生じたりするおそれがあった。
【0004】
上記外観不良の発生を防止するために、端部に樹脂板、ボード、ウレタン等の形状保持部材を縫着して、端部の形状を保持するようにしたり、樹脂クリップで開口部を固定したりしていた。
【0005】
また、端部を開口した状態で端部に沿ってミシン糸を一周縫着し、端部を外方に引っ張ってテンションを加え、テンションを加えることにより開口部を密閉させ、この状態で内部に注入した発泡合成樹脂を表皮と一体発泡させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−14707号公報(第2−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記外観不良の発生を防止するために、他の形状保持部材や樹脂クリップを用いる方法では、端部に他の部材を縫着したり、固定したりする必要があり、部品点数が増加し、手間が掛かるという問題があった。
【0007】
また、特許文献1の技術では、端部にミシン糸を一周縫着し、さらに、発泡合成樹脂と表皮とを一体発泡させるときに、開口部にテンションを加える必要があり、製造に手間が掛かるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、手間を掛けずに、表皮の開口部に蛇行や凹凸等の外観不良が発生することを防止し、製品の外観商品性を向上させることができる表皮一体発泡成形ヘッドレスト及び該ヘッドレストの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、本発明によれば、表皮部材を袋状に形成してなる表皮と、該表皮の内部に発泡合成樹脂を注入して一体発泡させたクッション材と、前記表皮から外部へ延出するヘッドレストステーと、を備えた表皮一体発泡成形ヘッドレストにおいて、前記袋状の表皮は、表裏を反転させるための開口部を有し、該開口部は、前記袋状の表皮の内側空間内へ入り込むように対向して前記表皮部材の一対の端部が折り曲げられて形成されると共に、該表皮部材の一対の端部の一方には、係合部が形成され、他方には被係合部が形成され、前記係合部と前記被係合部が係合されてなることにより解決される。
【0010】
このように、本発明では、表皮の開口部を構成する内側に折り返された一対の端部に、それぞれ係合部と、この係合部と係合する被係合部が形成され、係合部と被係合部が係合された状態で、クッション材が表皮の内部に配設されている。
【0011】
このように、本発明では、開口部が係合部と被係合部の係合により閉じた状態に保持されるため、製造時に開口部から発泡合成樹脂が外部へ漏れ出たり、開口部に蛇行や凹凸等の外観不良が発生したりすることを防ぐことができ、製品の開口部付近の外観が良好となる。
【0012】
また、具体的には、前記係合部および前記被係合部は、前記表皮部材の一対の端部にそれぞれ切り込みを入れて形成することができる。このように、各端部に切り込みを入れて係合部および被係合部を形成するので、形成処理が簡単である。また、他の構成部材を用いないので、部品点数が増加することもない。
【0013】
また、前記係合部は、前記表皮部材の一対の端部の一方に、該端部の端部辺から2箇所に切り込みを入れて形成され、前記被係合部は、前記表皮部材の一対の端部の他方に、該端部の端部辺から離間した位置に、該端部辺に沿って前記係合部を挿入可能な切り込みを入れることによって形成することができる。
【0014】
このように、一方の端部には、端部辺から2箇所に切り込みを入れることによって、挿入部を形成し、他方の端部には、端部辺に沿って切り込みを入れることによって、被挿入部を形成することができる。そして、この挿入部を被挿入部に挿入することによって、端部どうしを密着させ、開口部を閉じた状態に保持することができる。
【0015】
また、上記課題は、本発明によれば、表皮部材から袋状の表皮を形成し、該表皮を成形型に配設し、該表皮の内部に発泡合成樹脂を注入してクッション材を一体発泡させて形成される表皮一体発泡成形ヘッドレストの製造方法において、前記袋状の表皮の内側空間内へ入り込むように対向して前記表皮部材の一対の端部を折り曲げて前記袋状の表皮の表裏を反転させるための開口部を形成し、前記表皮部材の一対の端部の一方には係合部を形成し、他方には被係合部を形成し、前記係合部と前記被係合部を係合させ、前記表皮の内部に発泡合成樹脂を注入することによって解決される。
【0016】
このように、本発明では、表皮の開口部を構成する内側に折り返された一対の端部に、それぞれ係合部と、この係合部と係合する被係合部が形成され、係合部と被係合部とを係合させて、開口部を閉じた状態にした後、前記表皮の内部に発泡合成樹脂を注入している。
【0017】
このように、本発明では、係合部と被係合部を設けて互いに係合させることにより、開口部を閉じた状態に保持するので、開口部から発泡合成樹脂が外部へ漏れることが防止されると共に、開口部に蛇行や凹凸等の外観不良が発生することを防ぐことができ、製品の開口部付近の外観を良好にすることができる。
【0018】
また、具体的には、前記係合部および前記被係合部は、前記表皮部材の一対の端部にそれぞれ切り込みを入れて形成することができる。
【0019】
また、前記係合部は、前記表皮部材の一対の端部の一方に、該端部の端部辺から2箇所に切り込みを入れて形成され、前記被係合部は、前記表皮部材の一対の端部の他方に、該端部の端部辺から離間した位置に、該端部辺に沿って前記係合部を挿入可能な切り込みを入れることによって形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の表皮一体発泡成形ヘッドレストは、表皮の端部の一方には係合部が形成され、他方には被係合部が形成され、係合部と被係合部が係合されてなるものであり、これにより、開口部を閉じた状態に保持して製造することができる。
【0021】
したがって、本発明の表皮一体発泡成形ヘッドレスト及びその製造方法では、手間を掛けずに、表皮の開口部に蛇行や凹凸等の外観不良が発生することを防止し、製品の外観商品性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材,配置等は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
【0023】
図1〜図9は、本発明の実施例に係るものであり、図1はヘッドレストの説明図、図2は背面部材の説明図、図3,図4は表皮の説明図、図5〜図7は端部処理の工程を示す説明図、図8,図9は樹脂注入工程を示す説明図である。図10,図11は、本発明の他の実施例に係るヘッドレストの表皮の説明図である。
【0024】
本実施の形態は、図1に示すような、車両シート用のヘッドレスト1に適用した例である。ヘッドレスト1は、ファブリック等の表皮単材を裁断し、これらを袋状に縫製した表皮2と、ヘッドレストステー8と、クッション材9とを備えている。
【0025】
表皮2は、メイン部材21と、背面部材22,23,24と、サイド部材25,26とを所定形状に裁断し、メイン部材21と、背面部材22,23,24と、サイド部材25,26のうち一部の端部(封止代)23a,24a(図2等参照)を除いて端部側をそれぞれ縫着して、袋状に形成したものである。
【0026】
そして、背面部材23,24の突き合わされた一対の端部23a,24aは、袋状の表皮2の内部空間へ入り込むように対向して折り曲げられて開口部6が形成されている。図1に示すように、開口部6は、背面部材23,24の間に開口を形成するものであって、サイド部材25,26の間の中央部に形成されている。なお、本例では、開口部6がサイド部材25,26の間の中央部に形成されているが、これに限らず、どちらか一方に近い位置に形成されていてもよい。
【0027】
本例のヘッドレストステー8は、金属棒材ないしパイプ材を軸曲げ形成したものであり、図1に示すように、コの字状の基枠部8aと、基枠部8aの両端部から延出する支柱部8b,8cとを備えている。基枠部8aは、ヘッドレスト1の内部に埋設され、ヘッドレスト1に対して水平方向に延出し、支柱部8b,8cを連結している。支柱部8b,8cは、背面部材23に形成された挿入孔23cから挿入され、背面部材3aを貫通して外部に露出している。メイン部材2aは、乗員の頭部と当接する部分である。
【0028】
なお、本例では、基枠部8aが支柱部8b,8cの端部から下方へ所定の長さだけ延出し、延出した端部同士を連結するように形成されているが、これに限らず、支柱部8b,8cの端部同士を直接連結するように形成してもよい。
【0029】
次に、本発明のヘッドレスト1の製造方法について説明する。
まず、表皮単材を裁断して、メイン部材21と、背面部材22,23,24と、サイド部材25,26を形成する。
【0030】
図2に示すように、背面部材23,24は、端部23a,24aが突出するように裁断されている。端部23a,24aは、上述のようにヘッドレスト1の背面側中央部に位置する開口部6を形成するためのものである。そして、本実施の形態では、端部23aの長さ方向に離間する2箇所に左右対称に切り込みを入れて、係合部(挿入部)23bを形成している。係合部23bは、外側が広がるような向きの切り込み、すなわち、ハの字型の切り込みが入れられて形成されている。
【0031】
また、端部24aには、端部辺から所定の距離だけシフトした位置に、端部辺と略平行に切り込みが入れられて、被係合部(被挿入部)24bが形成されている。本例の場合、被係合部24bは、端部24aの幅方向(ヘッドレスト1の左右方向)の中央部に、端部24aの半分程度の長さの切り込みが入れられて形成されている。被係合部24bの幅は、係合部23bの切り込み終端間の距離(係合部23bの狭い側の幅)よりも広くなるように設定されている。
【0032】
また、本例の場合、被係合部24bの端部辺からのシフト量は、端部24aの長さ(図中、上下方向)の半分程度であり、端部24aの長さよりも短く形成されている。このシフト量は、端部23aの端部辺から、係合部23bを形成するための切り込みの終端までの距離と同じか、短く設定されている。
【0033】
このように、係合部23b,被係合部24bを形成することにより、被係合部24bの切り込みに係合部23bを通過させて、端部23a,24aを係合させることができる。
なお、本例では、係合部23b,被係合部24bは、開口部6の中央部に形成されているが、必ずしも開口部6の中央部に形成しなくてもよい。また、本例では、係合部23bを形成するのに、ハの字型の切り込みを入れているが、これに限らず、端部辺と略垂直な2本の切り込みを入れてもよい。
【0034】
次に、メイン部材21と、背面部材22,23,24と、サイド部材25,26の端部を重合して、縫着し、図3,図4に示すように、袋状の表皮2を形成する。図4は、図3を他の方向から見たものである。このとき、端部23a,24aの端部辺同士は左右の端部を除いて縫着せず、内部へ連通する開口部6を形成する。
【0035】
図3,図4では、表皮2は、裏返された状態となっている。端部23a,24aは、部材の剛性によって外部へ突出している。図中、符号7は、各部材を縫着した縫合線である。符号7aは、開口部6付近において、背面部材23,24を縫着した縫合線である。
【0036】
そして、裏返し状態の表皮2を、表面が露出するように開口部6を通して表裏を反転させると共に、端部23a,24aを袋状の表皮2の内部へ押し込む。表面が露出するように表皮2をひっくり返すと、縫合線7,7aは表皮2の内部へ隠れ、外部からは見えなくなる。
【0037】
この状態で、表皮2にヘッドレストステー8を取り付ける。ヘッドレストステー8の取り付けは、まず、背面部材22に開口された挿入孔23cの一方に、支柱部8b(又は支柱部8c)の端部を挿入し、支柱部8b(又は支柱部8c)と基枠部8aを表皮2の内部に押し込む。表皮2の内部に押し込むと同時に、表皮2の内部に押し込んだ支柱部8b(又は支柱部8c)の端部を他方の挿入孔23cから引き出す。このようにして、ヘッドレストステー8を表皮2に取り付けることができる。
【0038】
次に、図5〜図7に示すように、係合部23bを被係合部24bに係合させる。図5〜図7は、理解の容易のため、表皮2の内側から開口部6付近を見た様子を示している。
まず、図5に示すように、背面部材23,24を引っ張って、開口部6を広げる。
【0039】
そして、図6に示すように、係合部23bの一方の端を被係合部24bに挿入する。さらに、図7に示すように、係合部23bの他方の端を被係合部24bに挿入する。これにより、係合部23bが被係合部24bに係合され、端部23aと端部24aとが、密着した状態となり、開口部6が閉じた状態となる。
【0040】
係合部23bを被係合部24bに係合させた状態で、図8に示すような成形型10に、表皮2を組み付ける。
成形型10は、ヘッドレスト1の外形形状に相応するキャビティ空間を有する型本体11と、型本体の開口面を閉塞可能な蓋型12とを外枠とし、ヘッドレストステー8を支柱部8b,8cで位置決め保持する不図示のクランプ治具を蓋型12の板面上に備えている。
【0041】
蓋型12は、蓋型本体12aと、スライド板13a,13bを有しており、スライド板13a,13bは、型本体11の中央付近で開閉するよう近接・離間可能に枠部材14で支持されている。
【0042】
また、スライド板13a,13bの離間時に、先端縁が端部23aの係合部23bと、端部24aの被係合部24bとの間に割り込んで、係合部23bと被係合部24bとの係合で狭められた開口部6を、表皮2の開放口として拡開保持する掛止め板15a,15bが、型本体11に対して下降乃至は離反し、且つ、スライド板13a,13bと同じ方向に近接,離間動するよう備え付けられている。
【0043】
この成形型10を用いては、まず、ヘッドレストステー8を取り付けた表皮2を型本体11のキャビティ空間に組み付けた後、ヘッドレストステー8の支柱部8b,8cを蓋型本体12aの切欠孔(不図示)より外方に突出させて、蓋型12を閉める。
【0044】
このとき、上述のように、端部23aと端部24aは、係合部23bと被係合部24bとの係合によって密着し、これにより、開口部6は閉じた状態に保持されている。
【0045】
次に、図8に示すように、スライド板13a,13bを離間させ、掛止め板15a,15bを下降並びに離間動させて、先端縁を端部23aの係合部23bと、端部24aの被係合部24bとの間に割り込ませ、係合部23bと被係合部24bとの係合で狭められた開口部6を拡開保持する。
【0046】
この状態で、図9(A)に示すように、樹脂注入ノズル18のノズル先端を表皮2の開口部6に向けて下降させ、表皮2の内部に発泡ウレタン等の発泡合成樹脂9aを注入する。
【0047】
発泡合成樹脂9aを表皮2の内部に所定量充填した後、図9(B)に示すように、樹脂注入ノズル18並びに掛止め板15a,15bを成形型10から上方に退却させると共に、スライド板13a,13bを近接動させて成形型10を型締めする。型締めすると、端部23aの係合部23bと端部24aの被係合部24bとが当接して、開口部6が直線的に閉じた状態となる。
【0048】
表皮2の内部に充填した発泡合成樹脂9aを樹脂発泡させると、クッション材9と表皮2とを一体に成形したヘッドレスト1が製造される。
このようにして得られるヘッドレスト1は、開口部6が直線的に閉じて、蛇行や凹凸等が発生せず、外観が良好となる。
【0049】
従来のように、端部23a,24aに係合部および被係合部を設けない場合は、ヘッドレスト1の形状の影響により、成形型10にセットしたときに、開口部が開いてしまう。ヘッドレスト1の形状の影響とは、例えば、開口部6の長さ方向の両側付近が曲面状に形成されている場合や、開口部6が長い場合等である。
【0050】
このため、従来の表皮では、内部に発泡合成樹脂を注入して、発泡させたときに、開口部から発泡合成樹脂が漏れやすくなる。また、従来の表皮では、開口部が直線的に閉じた状態とならないので、開口部に蛇行が生じたり、凹凸が生じたりして、外観が不良となるおそれがあった。
【0051】
これに対し、本例の表皮2では、上述のように端部23a,24aに係合部23b,被係合部24bを設け、これらを係合させるように構成したので、成形型10内にセットされたときに、ヘッドレストの形状の影響で端部23a,24aが撓んでいても、端部23a,24aを互いに当接した状態に保持することができる。これにより、開口部6は、平面視で直線的に閉じた状態に保持される。
【0052】
開口部6が直線的に閉じた状態に保持されるので、本例のヘッドレスト1の製造方法においては、樹脂注入時に、開口部6から発泡合成樹脂が漏れ出たり、製品の開口部6付近が蛇行したり、凹凸が生じたりする不具合が発生せず、良好な外観を有するヘッドレスト1を製造することができる。
【0053】
また、本例のヘッドレスト1の製造方法では、開口部6付近の外観を良好とするために、端部23a,24aに切り込みを入れて、係合部23b,被係合部24bを設け、これらを係合させる構成である。そして、係合部23b,被係合部24bは、背面部材23,24の裁断時に切り込みを入れることにより形成することができ、工数がほとんど増加することがなく、手間が掛からない。また、別部材を使用する構成ではないので、部品点数の増加や工数の増加が発生せず、安価に製造することができる。
【0054】
なお、上記実施の形態では、端部23aに係合部23b、端部24aに被係合部24bをそれぞれ設けたが、これに限らず、端部23aに端部辺と略平行な切り込みを入れて被係合部を設け、端部24aにハの字型の切り込みを入れて係合部を設けてもよい。
また、被係合部24bは、直線的な切り込みを入れることによって形成されているが、係合部23bを係合できれば、例えば、端部辺に沿ってV字型やコの字型に切り込みを入れて被係合部24bを形成してもよい。
【0055】
また、図10,図11に示すような係合部,被係合部を形成してもよい。
図10(A)では、端部23aに左右2箇所ずつの切り込みを入れて、左右にそれぞれ係合部としての挿入部32a,32bを形成している。また、端部24aには、端部辺と略平行な切り込みを2箇所入れて、被係合部としての被挿入部31a,31bを形成している。
【0056】
この例では、挿入部32a,32bの終端と端部辺との距離は、被挿入部31a,31bと端部辺との距離よりも大きく設定される。また、被挿入部31a,31bの幅は、挿入部32a,32bの切り込みの幅よりも大きく設定される。また、被挿入部31a,31bは、挿入部32a,32bを挿入することができるように、それぞれに対応した位置に形成されている。
【0057】
図10(B)は、同図(A)の挿入部32a,32bを、被挿入部31a,31bにそれぞれ挿入した状態を示したものである。このように、挿入部32a,32bを、被挿入部31a,31bに挿入することによって、端部23a,24aを密着させて、開口部6を閉じた状態にすることができる。
【0058】
また、図10(C)では、端部23aに左右対称な形状の鉤状の切り込みを入れて、挿入部34aを形成している。また、端部24aには、端部辺と略平行な切り込みを中央部に入れて、被挿入部33aを形成している。被挿入部33aの幅は、挿入部34aの左右の切り込みの終端間の距離よりも大きく設定され、被挿入部33aは、挿入部34aを挿入できるような幅および位置に形成されている。
【0059】
図10(D)は、同図(C)の挿入部34aを、被挿入部33aに挿入した状態を示したものである。このように、挿入部34aを、被挿入部33aに挿入することによって、端部23a,24aを密着させて、開口部6を閉じた状態にすることができる。
【0060】
また、図11(A)では、端部23aに2箇所の切り込みを入れて挿入部36a,36bを形成している。端部23aに設けられた2箇所の切り込みは、端部辺に向かって拡開するように設けられている。端部24aには、挿入部36a,36bをそれぞれ挿入するための被挿入部35a,35bが設けられている。
【0061】
被挿入部35a,35bは、端部24aの端部辺側が狭く、端部辺から内側へ向けて拡開するように2箇所に切り込みを入れて形成されている。これらの挿入部36a,36b、被挿入部35a,35bは、端部23a,24aを重ね合わせたときに、終端部分が重なるような位置に形成され、被挿入部35a,35bは、挿入部36a,36bを挿入できるような長さおよび位置に形成されている。
【0062】
図11(B)では、同図(A)の挿入部36a,36bを、被挿入部35a,35bに挿入した状態を示したものである。このように、挿入部36a,36bを、被挿入部35a,35bに挿入することによって、端部23a,24aを密着させて、開口部6を閉じた状態にすることができる。
【0063】
また、上記実施の形態では、表皮単材を裁断するときに、背面部材23,24に同時に切り込みを入れて、係合部23b,被係合部24bを形成していたが、これに限らず、背面部材23,24等を縫着した後に、端部23a,24aに切り込みを入れて、係合部23b,被係合部24bを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施例に係るヘッドレストの説明図である。
【図2】本発明の実施例に係るヘッドレストの背面部材の説明図である。
【図3】本発明の実施例に係るヘッドレストの表皮の説明図である。
【図4】本発明の実施例に係るヘッドレストの表皮の説明図である。
【図5】本発明の実施例に係るヘッドレストの端部処理の工程を示す説明図である。
【図6】本発明の実施例に係るヘッドレストの端部処理の工程を示す説明図である。
【図7】本発明の実施例に係るヘッドレストの端部処理の工程を示す説明図である。
【図8】本発明の実施例に係るヘッドレストの樹脂注入工程を示す説明図である。
【図9】本発明の実施例に係るヘッドレストの樹脂注入工程を示す説明図である。
【図10】本発明の他の実施例に係るヘッドレストの表皮の説明図である。
【図11】本発明の他の実施例に係るヘッドレストの表皮の説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1 ヘッドレスト
2 表皮
2a メイン部材
3a 背面部材
6 開口部
7,7a 縫合線
8 ヘッドレストステー
8a 基枠部
8b,8c 支柱部
9 クッション材
9a 発泡合成樹脂
10 成形型
11 型本体
12 蓋型
12a 蓋型本体
13a,13b スライド板
14 枠部材
15a,15b 掛止め板
18 樹脂注入ノズル
21 メイン部材
22,23,24 背面部材
25,26 サイド部材
23a,24a 端部
23b 係合部
23c 挿入孔
24b 被係合部
31a,31b 被挿入部
32a,32b 挿入部
33a 被挿入部
34a 挿入部
35a,35b 被挿入部
36a,36b 挿入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮部材を袋状に形成してなる表皮と、該表皮の内部に発泡合成樹脂を注入して一体発泡させたクッション材と、前記表皮から外部へ延出するヘッドレストステーと、を備えた表皮一体発泡成形ヘッドレストにおいて、
前記袋状の表皮は、表裏を反転させるための開口部を有し、
該開口部は、前記袋状の表皮の内側空間内へ入り込むように対向して前記表皮部材の一対の端部が折り曲げられて形成されると共に、該表皮部材の一対の端部の一方には、係合部が形成され、他方には被係合部が形成され、前記係合部と前記被係合部が係合されてなることを特徴とする表皮一体発泡成形ヘッドレスト。
【請求項2】
前記係合部および前記被係合部は、前記表皮部材の一対の端部にそれぞれ切り込みを入れて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の表皮一体発泡成形ヘッドレスト。
【請求項3】
前記係合部は、前記表皮部材の一対の端部の一方に、該端部の端部辺から2箇所に切り込みを入れて形成され、
前記被係合部は、前記表皮部材の一対の端部の他方に、該端部の端部辺から離間した位置に、該端部辺に沿って前記係合部を挿入可能な切り込みを入れることによって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の表皮一体発泡成形ヘッドレスト。
【請求項4】
表皮部材から袋状の表皮を形成し、該表皮を成形型に配設し、該表皮の内部に発泡合成樹脂を注入してクッション材を一体発泡させて形成される表皮一体発泡成形ヘッドレストの製造方法において、
前記袋状の表皮の内側空間内へ入り込むように対向して前記表皮部材の一対の端部を折り曲げて前記袋状の表皮の表裏を反転させるための開口部を形成し、前記表皮部材の一対の端部の一方には係合部を形成し、他方には被係合部を形成し、前記係合部と前記被係合部を係合させ、前記表皮の内部に発泡合成樹脂を注入することを特徴とする表皮一体発泡成形ヘッドレストの製造方法。
【請求項5】
前記係合部および前記被係合部は、前記表皮部材の一対の端部にそれぞれ切り込みを入れて形成されることを特徴とする請求項4に記載の表皮一体発泡成形ヘッドレストの製造方法。
【請求項6】
前記係合部は、前記表皮部材の一対の端部の一方に、該端部の端部辺から2箇所に切り込みを入れて形成され、
前記被係合部は、前記表皮部材の一対の端部の他方に、該端部の端部辺から離間した位置に、該端部辺に沿って前記係合部を挿入可能な切り込みを入れることによって形成されることを特徴とする請求項4に記載の表皮一体発泡成形ヘッドレストの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−6523(P2006−6523A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186282(P2004−186282)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】