表皮材付き製品の製造方法
【課題】基材の表面に表皮材を接着して成る表皮材付き製品の製造方法であって、表皮材を、基材の端末部の裏面に自動的に巻き込んで接着できる方法を提案する。
【解決手段】型10上に基材2をセットし、その基材2の表面に表皮材3を接着した後、可動体4を下方に移動させて、表皮材3の表面を空気圧で加圧して、その表皮材3を基材2の端末部20の裏面に巻き込んで、当該表皮材3を基材2の裏面に接着する。
【解決手段】型10上に基材2をセットし、その基材2の表面に表皮材3を接着した後、可動体4を下方に移動させて、表皮材3の表面を空気圧で加圧して、その表皮材3を基材2の端末部20の裏面に巻き込んで、当該表皮材3を基材2の裏面に接着する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂製の表皮材を基材の表面に接着して表皮材付き製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材の表面に、熱可塑性樹脂より成る装飾用の表皮材を貼着して成る表皮材付き製品は各種の技術分野において広く利用されている。例えば、車室内に取り付けられる各種の内装材、自動車のサイドドアの下方の車体部分の外面に固定されるサイドマッドガードや車体に固定されるバンパなどの自動車の外装材、エンジンルームの上部開口を覆うフード、車体後部に配置されるバックドア、電化製品の外装材、或いは建造物の室内に設けられる内装材などがその代表例である。かかる表皮材付き製品は、その表皮材が基材の端末部の裏面に巻き込まれて接着されている。このように基材の最も外側の末端を表皮材によって覆い隠すことによって、表皮材付き製品の見栄えを向上させることができる(特許文献1参照)。
【0003】
従来は、表皮材付き製品の製造時に、手作業によって表皮材を基材の端末部の裏面に巻き込んで接着するのが普通であった。ところが、この方法によると、表皮材を巻き込む作業に従事する作業員が必要となり、表皮材付き製品の製造時の省力化の妨げとなる。
【0004】
そこで、圧空成形法によって表皮材を基材の表面に密着させて接着させると同時に、その表皮材を基材の端末部の裏面に巻き込んで接着する方法が考えられる。この方法によれば、表皮材を基材端末部の裏面に自動的に巻き込んで接着することができる。ところが、この方法によると、表皮材を基材の表面に圧空成形して接着するのと同時に、表皮材を基材端末部の裏面に圧空成形して接着するので、基材端末部の裏面に巻き込まれた表皮材の部分にしわや折れが発生し、完成した表皮材付き製品の品質が低下するおそれがある。
【0005】
また、押圧部材によって表皮材を基材端末部の裏面に押し込んで接着する方法も考えられるが、この方法によると、表皮材を基材端末部の裏面に機械的に押し込むだけであるため、表皮材を基材の裏面に正しく密着させることが難しい。このため、この場合も完成した表皮材付き製品の品質が低下するおそれを免れない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−79791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述した従来の欠点を除去し、高品質な表皮材付き製品を製造することのできる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、基材を型にセットしたとき、該基材の端末部と型との間に型・基材間空間が区画されるように形成された型を用い、該型に前記基材をセットした後、加熱軟化させた熱可塑性樹脂製の表皮材を前記基材上にセットして、該表皮材と基材との間の内側空間の圧力と該表皮材を境として前記内側空間とは反対側の外側空間の圧力との差によって、該表皮材が前記基材の端末部よりも外方にはみ出た状態に、当該表皮材を、前記基材の表面に密着させて該基材表面に接着し、次いで前記型・基材間空間を外部に対して開放して、該型・基材間空間内の圧力と、前記表皮材を境として該型・基材間空間とは反対側の外側空間の圧力との差によって、前記表皮材を、前記基材の端末部の裏面に巻き込んで、該表皮材を当該裏面に密着させて接着し、次いで前記型に設けられた電熱線を加熱することによって、前記基材に接着されていない表皮材部分を切断除去し、その切断後に表皮材が接着された基材を前記型から離脱することを特徴とする表皮材付き製品の製造方法を提案する(請求項1)。
【0009】
また、上記請求項1に記載の表皮材付き製品の製造方法において、前記型・基材間空間と前記型内の中空室とを連通する吸引孔を通して、該型・基材間空間内の空気を吸引することにより、前記型・基材間空間の圧力を低下させて、前記表皮材を前記基材の端末部の裏面に巻き込むように構成すると有利である(請求項2)。
【0010】
さらに、上記請求項1又は2に記載の表皮材付き製品の製造方法において、前記型に隣接して設けられた上下動可能な可動体を最上方位置に停止させて、該可動体と、前記型と、前記基材の端末部とによって、前記型・基材間空間を区画し、当該可動体を下方に移動させることにより、前記型・基材間空間を外部に対して開放するように構成すると有利である(請求項3)。
【0011】
また、上記請求項1又は2に記載の表皮材付き製品の製造方法において、前記型として、上下動可能な型を用い、該型を最下方位置に停止させて、当該型と、該型に隣接して位置する固定体と、前記基材の端末部とによって、前記型・基材間空間を区画し、前記型を上方に移動させることにより、前記型・基材間空間を外部に対して開放するように構成すると有利である(請求項4)。
【0012】
さらに、上記請求項1又は2に記載の表皮材付き製品の製造方法において、前記型に対して最も離れた離間位置と、該型に対して最も接近した近接位置との間を水平方向に移動可能な可動体を、前記離間位置に停止させて、該可動体と、前記型と、前記基材の端末部とによって、前記型・基材間空間を区画し、当該可動体を前記近接位置に移動させることにより、前記型・基材間空間を外部に対して開放するように構成すると有利である(請求項5)。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱可塑性樹脂製の表皮材を基材の表面に密着させて接着した後に、基材の端末部と型との間に区画された型・基材間空間を外部に対して開放し、空気圧によって表皮材を基材の端末部の裏面に巻き込んで接着するので、基材の端末部の裏面に巻き込まれた表皮材の部分にしわや折れが発生することはなく、高品質な表皮材付き製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】表皮材付き製品の部分断面斜視図である。
【図2】表皮材付き製品の製造方法を説明する部分断面図である。
【図3】表皮材付き製品の製造方法を説明する部分断面図である。
【図4】表皮材付き製品の製造方法を説明する部分断面図である。
【図5】表皮材付き製品の製造方法を説明する部分断面図である。
【図6】表皮材付き製品の製造方法を説明する部分断面図である。
【図7】表皮材付き製品の製造方法を説明する部分断面図である。
【図8】表皮材付き製品の製造方法を説明する部分断面図である。
【図9】表皮材付き製品の製造方法を説明する部分断面図である。
【図10】図2乃至図9に示した表皮材支持体とは異なる表皮材支持体の例を示す断面図である。
【図11】表皮材付き製品の他の製造方法を示す部分断面図である。
【図12】表皮材付き製品のさらに他の製造方法を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に従って詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る方法によって製造された表皮材付き製品の一例を示す部分断面斜視図である。この表皮材付き製品1は、例えば、自動車の外装材、車室内に配置される内装材、電化製品の外装材、建造物の室内に設けられる内装材などとして用いられるものである。図1に示した表皮材付き製品1は、基材2と、その基材2の表面に貼着された装飾用の表皮材3とから成る。基材2は、例えば樹脂、金属又は木材などの比較的剛性の大きな板材より成り、表皮材3は、基材2よりも軟質で該基材2よりも薄い可撓性材料により構成されている。図示した例では、表皮材3は薄いフィルムより成り、基材2はフィルムよりも剛性が高く、厚さが2乃至3mm程度の熱可塑性樹脂製の板材により構成されている。
【0017】
表皮材3の周縁部22は、基材2の端末部20の裏面に巻き込まれて、その裏面に接着されている。ここにいう端末部20は、基材2の最も外側の末端21と、その近傍の基材部分とを含めたものである。かかる基材2の端末部20の裏面に表皮材3の周縁部22を接着することにより、基材2の末端21を表皮材3によって覆い隠すことができ、これによって表皮材付き製品1の見栄えを向上させることができる。
【0018】
図1に示した表皮材付き製品1は、図2乃至図9に示した製造装置によって次のようにして製造される。
【0019】
図2乃至図9に示した製造装置は、上下に昇降可能な上側ケース5と、その上側ケース5の上壁に固定されたヒータ6と、不動に固定支持された下側ケース7と、その下側ケース7の底壁上に昇降装置8を介して支持されたテーブル9と、そのテーブル9に配置された型10と、その型10のまわりに隣接して設けられた可動体4と、その可動体4のまわりに設けられた表皮材支持体13とを有し、表皮材支持体13は、多数のプレート13Aにより構成されている。かかる表皮材支持体13と可動体4は、型10及びテーブル9に対して、それぞれ後述するように上下動可能に支持されている。図2に示した状態では、可動体4と表皮材支持体13は、型10とテーブル9に対して、最も上方の位置で停止しており、このとき、可動体4の上面は、テーブル9の上面よりも上方に位置していると共に、表皮材支持体13の複数のプレート13Aは、その頂部が三角形状をなしてテーブル9の上面よりも上方に突出している。
【0020】
型10の内部は中空に形成され、その内部の中空室11は、当該中空室11の排気口12を介して、下側ケース7の内部に連通している。さらに、型10には、複数の吸引孔15が形成され、その各吸引孔15は型10の外部に開放されていると共に、型10の内部の中空室11に連通している。
【0021】
図2に示したように、上側ケース5を上昇させた状態で、型10の表面に基材2をセットする。この基材2は、前述のように、例えばポリプロピレン又はその他の熱可塑性樹脂より成り、図示していない射出成形機によって、既に型10の表面の形態にほぼ沿った形状に成形されている。このように基材2を型10にセットすると、その基材2の末端21が最上方位置を占めた可動体4の上面に載り、これによってその可動体4の上面と型10の側面の一部と基材2の端末部20の裏面とによって空間S1が区画され、その空間S1の下部が可動体4によって閉鎖されている。かかる空間を、型・基材間空間S1と称することにする。前述のように型10に形成された吸引孔15は、この型・基材間空間S1に開口している。
【0022】
上述のように、本例の表皮材付き製品の製造方法を実施する製造装置においては、基材2を型10にセットしたとき、その基材2の端末部20と型10との間に型・基材間空間S1が区画されるように形成された型10が用いられる。上述のように、図2乃至図9に示した実施形態においては、型10に隣接して設けられた上下動可能な可動体4を、テーブル9ないしは型10に対する最上方位置に停止させて、その可動体4と、型10と、基材2の端末部20とによって、型・基材間空間S1が区画形成されるように構成されている。
【0023】
次に、図2に示すように、上側ケース5と下側ケース7の間に、図示していないクランプによって保持された薄いフィルムより成る熱可塑性樹脂製の表皮材3を配置する。その際、基材2の表面と該基材2の端末部20の裏面とに、予め接着剤が塗布されている。表皮材3の下面に接着剤を塗布し、或いは基材2と表皮材3の両者に接着剤を塗布しておくことも可能である。
【0024】
引き続き、上側ケース5を下降させて、図3に示すように上側ケース5と下側ケース7とによって表皮材3を挟持する。この状態で、図4に矢印A,Bで示すように、上側ケース5に形成された給排口16と、下側ケース7に形成された排気口17を通して、各ケース5,7の内部の空気を吸引し、両ケース5,7内の圧力を下げて真空状態にする。このように、下側ケース7内の空気を吸引することによって、型10の内部の中空室11の空気も、排気口12を通して吸引され、これによって、吸引孔15を介して中空室11に連通した型・基材間空間S1内の空気も吸引され、その型・基材間空間S1の圧力が下げられる。
【0025】
次いで、図5に示すように、両ケース5,7の内部の空気を吸引し続けながら、ヒータ6を作動させて、表皮材3を加熱し、該表皮材3を軟化させる。しかる後、両ケース5,7の内部の空気を吸引し続けながら、図6に示すように、昇降装置8を作動させて、テーブル9とそのテーブルに配置された型10と可動体4と表皮材支持体13を共に上昇させ、加熱軟化した熱可塑性樹脂製の表皮材3を基材2の上にセットする。このとき、上側ケース5と下側ケース7の内部の空気が既に排出されているので、図6に示した状態での表皮材3と基材2との間の内側空間S2内の圧力も低くなっている。
【0026】
次に、下側ケース7の空気を吸引しながら、上側ケース5内からの空気の吸引を停止し、その代わりに、図6に矢印Cで示したように、給排口16を通して、上側ケース5の内部に圧縮空気を送り込む。これにより、表皮材3よりも外側の空間S3の圧力の方が、表皮材3と基材2との間の内側空間S2の圧力よりも高くなり、その圧力差によって、加熱軟化された表皮材2が、図7に示したように、基材2の表面に密着し、その基材2の表面に塗布された接着剤によって、当該表皮材3が基材2の表面に接着される。このとき、図7に示すように、表皮材3は、基材2の端末部20よりも外方(図の例では下方)にはみ出た状態で、可動体4の外周面と表皮材支持体13の上面にも密着する。
【0027】
上述した表皮材3よりも外側の空間S3とは、図6から明らかなように、基材2上にセットされた表皮材3を境として、前述の内側空間S2とは反対側の外側空間S3を意味する。
【0028】
上述のように、本例の表皮材付き製品の製造方法は、型10に基材2をセットした後、加熱軟化させた熱可塑性樹脂製の表皮材3を基材2上にセットして、その表皮材3と基材2との間の内側空間S2の圧力と、該表皮材3を境として内側空間S2とは反対側の外側空間S3の圧力との差によって、表皮材が基材2の端末部20よりも外方にはみ出た状態に、表皮材3を基材2の表面に密着させて、該表皮材3を基材2の表面の形態に沿った形に成形すると共に、当該表皮材3を基材2の表面に接着剤によって接着するように構成されている。
【0029】
次に、上側ケース5内に圧縮空気を供給し続け、かつ下側ケース7内の空気を吸引し続けながら、図8に示したように、それ自体の公知のアクチュエータ(図示せず)を作動させて、可動体4と表皮材支持体13を、テーブル9と型10に対してそれぞれ下方に移動させる。このように、可動体4を型10に対して下方に移動させることにより、それまで可動体4により下部が密閉されていた型・基材間空間S1が外部に対して開放される。このとき、上側ケース5内には、圧縮空気が供給され続けているので、型・基材間空間S1の圧力よりも、表皮材3を境として、その型・基材間空間S1とは反対の外側空間S3の圧力の方が高い。このため、図8に示したように、表皮材3は、基材2の端末部20の裏面に巻き込まれ、その裏面に密着して、接着剤によって当該裏面に接着される。表皮材3を、基材2の端末部20の裏面の形態に圧空成形して、その裏面に接着するのである。
【0030】
上述のように、本例の表皮材付き製品の製造方法は、型・基材間空間S1を外部に対して開放して、その型・基材間空間S1内の圧力と、表皮材3を境として、該型・基材間空間S1とは反対側の外側空間S3の圧力の差によって、表皮材3を、基材2の端末部20の裏面に巻き込んで、その表皮材3を基材2の裏面に密着させて接着するように構成されている。
【0031】
その際、本例の製造方法においては、外側空間S3に圧縮空気を送り込んで、その外側空間S3の圧力を高めるだけでなく、前述のように、型・基材間空間S1と型10内の中空室11とを連通する吸引孔15を通して、型・基材間空間S1内の空気を吸引することにより、該型・基材間空間S1の圧力を低下させて、表皮材3を基材2の端末部20の裏面に巻き込むので、表皮材3を基材2の裏面の形態に真空成形することができる。これにより、表皮材3を基材2の裏面に強く密着させて接着することができ、当該裏面に接着された表皮材3の部分にしわや折れが発生することを確実に防止することができる。
【0032】
ところで、上述のように可動体4を型10に対して下方に移動させて、型・基材間空間S1を開放して、表皮材3を基材2の端末部20の裏面に巻き込むとき、図7に示したように三角形状に突出していた表皮材支持体13の複数のプレート13Aを、図8に示したように、その複数のプレート13Aの頂部が平坦となるように、型10に対して下方に移動させる。これにより、図7に示したように表皮材支持体13の上面に支持されていた表皮材3の部分が、図8に示したように、基材2の端末部20に引き上げられる。このため、表皮材3が過度に伸ばされることはなく、当該裏面に巻き込まれた表皮材の部分の厚さが過度に薄くなる不具合を阻止できる。
【0033】
次いで、図8に示したように、型10に設けられた例えばニクロム線より成る電熱線18に電流を流して、その電熱線18を加熱する。この電熱線18は、図8から判るように、基材2が型10にセットされた状態で、その基材2の端末部20の裏面に沿って、型10の全周に亘って延びていて、その電熱線18の一部が外部に露出している。かかる電熱線18を加熱することによって、表皮材3を溶融させて切断し、基材2に接着されていない表皮材部分24を切断除去し、その表皮材部分24を、基材2から分離する。その際、基材2に接着されていない表皮材の部分を全て切断除去してもよいし、図1及び図9に示すように、基材2の裏面に接着していない極く一部の表皮材部分25を基材2の側に残しておいても差支えない。
【0034】
次いで、上側ケース5への圧縮空気の供給と、下側ケース7からの空気の吸引動作を停止した後、図9に示したように、上側ケース5を上昇させ、表皮材3の切断後に表皮材3が接着された基材2を型10から離脱する。このようにして、図1に示した表皮材付き製品1が完成する。
【0035】
上述のように、本例の製造方法によれば、表皮材3を基材2の端末部20の裏面に自動的に巻き込んで接着できるので、製品製造時の省力化を達成できる。しかも押圧部材によって表皮材を基材2の裏面に押し付けるのではなく、空気圧を利用して表皮材3を基材端末部20の裏面に押圧するので、その表皮材3をその裏面に確実に密着させて接着することができ、完成した製品の品質を高めることができる。
【0036】
また、上述した製造方法は、熱可塑性樹脂製の表皮材3を基材2の表面に密着させて接着した後に、基材2の端末部20と型10との間に区画された型・基材間空間S1を外部に対して開放して、空気圧によって表皮材3を基材2の端末部20の裏面に巻き込んで接着するように構成されているので、基材2の端末部20の裏面に巻き込まれた表皮材3の部分にしわや折れが発生することはなく、高品質な表皮材付き製品を製造することができる。
【0037】
また、図7及び図8に示した製造装置においては、複数のプレート13Aより成る表皮材支持体13が用いられているが、図10の(a)に示したように、テーブル9に対して不動に固定された基部13Bと、その基部13Bに対して上下動可能に支持された可動プレート13Cとから成る表皮材支持体13を用い、図6に示したところと同様に、可動体4が最上方位置を占めているとき、図10の(a)に示すように、可動プレート13Cを上方に突出させておき、図8と同様に可動体4を下降させたとき、図10の(b)に示すように、可動プレート13Cを下方に下げることによって、型・基材間空間S1が開放されたとき、表皮材3が過度に伸ばされる不具合を阻止することもできる。
【0038】
上述のように、図2乃至図9に示した製造装置を用いた製造方法は、型10に隣接して設けられた上下動可能な可動体4を最上方位置に停止させて、該可動体4と、型10と、基材2の端末部20とによって、型・基材間空間S1を区画し、その可動体4を下方に移動させることにより、型・基材間空間S1を外部に対して開放するように構成されている。
【0039】
これに対し、図11の(a),(b)は、図2乃至図9に示した製造装置とは異なる製造装置によって表皮材付き製品を製造する方法を示す断面図である。図11に示した製造装置においては、型10が上下動可能にテーブル9に支持され、しかも図2乃至図9に示した可動体4の代わりに、型10に隣接して位置する固定体104が設けられている。この固定体104は、型10のまわりに配置されていて、テーブル9上に固定配置されている。図11に示した製造装置には、図2乃至図9に示した表皮材支持体13は設けられていない。図11の(a)は型10が最下方位置を占めた状態を示し、図11の(b)は、型10が最上方位置に上昇した状態を示している。
【0040】
図11に示した製造装置によって表皮材付き製品を製造するには、先ず、図11の(a)に示したように型10を最下方位置に停止させて、先に図2を参照して説明したところと全く同様にして、その型10の表面に既に成形されている基材2をセットする。このとき、図11の(a)から明らかなように、基材2の末端21が固定体104の上面に載る。このため、型10と、その型10に隣接して位置する固定体104と、基材2の端末部20の裏面とによって型・基材間空間S1が区画される。
【0041】
上述のように基材2を型10にセットした後、先に図3乃至図7に関連して説明したところと全く同様にして、加熱軟化させた熱可塑性樹脂製の表皮材3を基材2の表面に密着させて接着する。次いで、図11の(b)に示したように、図示していないアクチュエータを作動させて、型10を上方に移動させる。これにより、それまで固定体104によって下部が密閉されていた型・基材間空間S1が外部に対して開放される。これによって、先に説明ところと全く同様にして、表皮材3を基材2の端末部20の裏面に巻き込み、その表皮材3を、基材2の裏面に密着させて接着剤を介して接着することができる。その後も、先に説明した実施形態と全く同じく、型10に設けられた電熱線18を加熱して表皮材3を切断し、基材2に接着されていない表皮材部分24を切断除去し、表皮材3が接着された基材2を型10から離脱する。
【0042】
上述のように、図11に示した製造装置による製造方法は、型として、上下動可能な型10を用い、該型10を最下方位置に停止させて、当該型10と、該型10に隣接して位置する固定体104と、基材2の端末部20とによって、型・基材間空間S1を区画し、型10を上方に移動させることにより、型・基材間空間S1を外部に対して開放するように構成されている。
【0043】
図11の(a),(b)に示した製造装置にも、図2乃至図10に示した表皮材支持体13と同様な表皮材支持体を設けることができる。
【0044】
図12の(a),(b)は、さらに他の製造装置によって表皮材付き製品を製造する方法を示す断面図である。ここに示した製造装置は、テーブル9上に固定配置された型10と、テーブル9上に水平方向に移動可能に支持された可動体204,204を有している。この可動体204,204は、図12の(a)に示したように型10に対して最も離れた離間位置と、図12の(b)に示したように型10に対して最も接近した近接位置との間を水平方向に移動可能に支持されている。図12に示した製造装置には、図2乃至図10に示した表皮材支持体13は設けられていないが、図12に示した装置にも、表皮材支持体を設けることができる。
【0045】
図12に示した製造装置によって表皮材付き製品を製造するには、先ず、可動体204,204を図12の(a)に示したように離間位置に停止させておき、先に図2を参照して説明したところと全く同様にして、型10の表面に基材2をセットする。このとき、図12の(a)から明らかなように、基材2の末端21が可動体204,204の上面に載置され、その可動体204,204と型10と、基材2の端末部20の裏面とによって型・基材間空間S1が区画される。
【0046】
上述のように基材2を型10にセットした後、先に図3乃至図7に関連して説明したところと全く同様にして、加熱軟化させた熱可塑性樹脂製の表皮材3を基材2の表面に密着させて接着する。次いで、図12の(b)に示したように、図示していないアクチュエータを作動させて、可動体204,204を互いに接近させて、これらを図12の(b)に示した近接位置に移動させる。これにより、それまで密閉されていた型・基材間空間S1が外部に対して開放される。これにより、先に図8を参照して説明したところと全く同様にして、表皮材3を基材2の端末部20の裏面に巻き込むことにより、その表皮材3を基材2の裏面に密着させて接着することができる。あとは、図2乃至図9に示した実施形態と全く同じく、型10に設けられた電熱線18を加熱して表皮材3を切断し、基材2に接着されていない表皮材部分24を基材2の側から切断除去し、表皮材3が接着された基材2を型10から離脱する。
【0047】
上述のように、図12に示した製造装置による製造方法は、型10に対して最も離れた離間位置と、該型10に対して最も接近した近接位置との間を水平方向に移動可能な可動体204,204を、離間位置に停止させて、該可動体204,204と、型10と、基材2の端末部20とによって、型・基材間空間S1を区画し、当該可動体204,204を近接位置に移動させることにより、型・基材間空間S1を外部に対して開放するように構成されている。
【0048】
図10乃至図12には、図2乃至図9に示した各部分と同一ないしは対応する部分に対して、図2乃至図9に付した符号と同じ符号を付してある。
【0049】
図10乃至図12に示した製造方法によっても、図2乃至図9に示した方法により製造された製品と全く同様な高品質な表皮材付き製品1(図1)を製造でき、図2乃至図9に示した方法と同一、ないしは同様な効果を奏することができる。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されず、各種改変して構成できるものである。
【符号の説明】
【0051】
1 表皮材付き製品
2 基材
3 表皮材
4 可動体
10 型
11 中空室
15 吸引孔
18 電熱線
20 端末部
24 表皮材部分
104 固定体
204 可動体
S1 型・基材間空間
S2 内側空間
S3 外側空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂製の表皮材を基材の表面に接着して表皮材付き製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材の表面に、熱可塑性樹脂より成る装飾用の表皮材を貼着して成る表皮材付き製品は各種の技術分野において広く利用されている。例えば、車室内に取り付けられる各種の内装材、自動車のサイドドアの下方の車体部分の外面に固定されるサイドマッドガードや車体に固定されるバンパなどの自動車の外装材、エンジンルームの上部開口を覆うフード、車体後部に配置されるバックドア、電化製品の外装材、或いは建造物の室内に設けられる内装材などがその代表例である。かかる表皮材付き製品は、その表皮材が基材の端末部の裏面に巻き込まれて接着されている。このように基材の最も外側の末端を表皮材によって覆い隠すことによって、表皮材付き製品の見栄えを向上させることができる(特許文献1参照)。
【0003】
従来は、表皮材付き製品の製造時に、手作業によって表皮材を基材の端末部の裏面に巻き込んで接着するのが普通であった。ところが、この方法によると、表皮材を巻き込む作業に従事する作業員が必要となり、表皮材付き製品の製造時の省力化の妨げとなる。
【0004】
そこで、圧空成形法によって表皮材を基材の表面に密着させて接着させると同時に、その表皮材を基材の端末部の裏面に巻き込んで接着する方法が考えられる。この方法によれば、表皮材を基材端末部の裏面に自動的に巻き込んで接着することができる。ところが、この方法によると、表皮材を基材の表面に圧空成形して接着するのと同時に、表皮材を基材端末部の裏面に圧空成形して接着するので、基材端末部の裏面に巻き込まれた表皮材の部分にしわや折れが発生し、完成した表皮材付き製品の品質が低下するおそれがある。
【0005】
また、押圧部材によって表皮材を基材端末部の裏面に押し込んで接着する方法も考えられるが、この方法によると、表皮材を基材端末部の裏面に機械的に押し込むだけであるため、表皮材を基材の裏面に正しく密着させることが難しい。このため、この場合も完成した表皮材付き製品の品質が低下するおそれを免れない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−79791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述した従来の欠点を除去し、高品質な表皮材付き製品を製造することのできる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、基材を型にセットしたとき、該基材の端末部と型との間に型・基材間空間が区画されるように形成された型を用い、該型に前記基材をセットした後、加熱軟化させた熱可塑性樹脂製の表皮材を前記基材上にセットして、該表皮材と基材との間の内側空間の圧力と該表皮材を境として前記内側空間とは反対側の外側空間の圧力との差によって、該表皮材が前記基材の端末部よりも外方にはみ出た状態に、当該表皮材を、前記基材の表面に密着させて該基材表面に接着し、次いで前記型・基材間空間を外部に対して開放して、該型・基材間空間内の圧力と、前記表皮材を境として該型・基材間空間とは反対側の外側空間の圧力との差によって、前記表皮材を、前記基材の端末部の裏面に巻き込んで、該表皮材を当該裏面に密着させて接着し、次いで前記型に設けられた電熱線を加熱することによって、前記基材に接着されていない表皮材部分を切断除去し、その切断後に表皮材が接着された基材を前記型から離脱することを特徴とする表皮材付き製品の製造方法を提案する(請求項1)。
【0009】
また、上記請求項1に記載の表皮材付き製品の製造方法において、前記型・基材間空間と前記型内の中空室とを連通する吸引孔を通して、該型・基材間空間内の空気を吸引することにより、前記型・基材間空間の圧力を低下させて、前記表皮材を前記基材の端末部の裏面に巻き込むように構成すると有利である(請求項2)。
【0010】
さらに、上記請求項1又は2に記載の表皮材付き製品の製造方法において、前記型に隣接して設けられた上下動可能な可動体を最上方位置に停止させて、該可動体と、前記型と、前記基材の端末部とによって、前記型・基材間空間を区画し、当該可動体を下方に移動させることにより、前記型・基材間空間を外部に対して開放するように構成すると有利である(請求項3)。
【0011】
また、上記請求項1又は2に記載の表皮材付き製品の製造方法において、前記型として、上下動可能な型を用い、該型を最下方位置に停止させて、当該型と、該型に隣接して位置する固定体と、前記基材の端末部とによって、前記型・基材間空間を区画し、前記型を上方に移動させることにより、前記型・基材間空間を外部に対して開放するように構成すると有利である(請求項4)。
【0012】
さらに、上記請求項1又は2に記載の表皮材付き製品の製造方法において、前記型に対して最も離れた離間位置と、該型に対して最も接近した近接位置との間を水平方向に移動可能な可動体を、前記離間位置に停止させて、該可動体と、前記型と、前記基材の端末部とによって、前記型・基材間空間を区画し、当該可動体を前記近接位置に移動させることにより、前記型・基材間空間を外部に対して開放するように構成すると有利である(請求項5)。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱可塑性樹脂製の表皮材を基材の表面に密着させて接着した後に、基材の端末部と型との間に区画された型・基材間空間を外部に対して開放し、空気圧によって表皮材を基材の端末部の裏面に巻き込んで接着するので、基材の端末部の裏面に巻き込まれた表皮材の部分にしわや折れが発生することはなく、高品質な表皮材付き製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】表皮材付き製品の部分断面斜視図である。
【図2】表皮材付き製品の製造方法を説明する部分断面図である。
【図3】表皮材付き製品の製造方法を説明する部分断面図である。
【図4】表皮材付き製品の製造方法を説明する部分断面図である。
【図5】表皮材付き製品の製造方法を説明する部分断面図である。
【図6】表皮材付き製品の製造方法を説明する部分断面図である。
【図7】表皮材付き製品の製造方法を説明する部分断面図である。
【図8】表皮材付き製品の製造方法を説明する部分断面図である。
【図9】表皮材付き製品の製造方法を説明する部分断面図である。
【図10】図2乃至図9に示した表皮材支持体とは異なる表皮材支持体の例を示す断面図である。
【図11】表皮材付き製品の他の製造方法を示す部分断面図である。
【図12】表皮材付き製品のさらに他の製造方法を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に従って詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る方法によって製造された表皮材付き製品の一例を示す部分断面斜視図である。この表皮材付き製品1は、例えば、自動車の外装材、車室内に配置される内装材、電化製品の外装材、建造物の室内に設けられる内装材などとして用いられるものである。図1に示した表皮材付き製品1は、基材2と、その基材2の表面に貼着された装飾用の表皮材3とから成る。基材2は、例えば樹脂、金属又は木材などの比較的剛性の大きな板材より成り、表皮材3は、基材2よりも軟質で該基材2よりも薄い可撓性材料により構成されている。図示した例では、表皮材3は薄いフィルムより成り、基材2はフィルムよりも剛性が高く、厚さが2乃至3mm程度の熱可塑性樹脂製の板材により構成されている。
【0017】
表皮材3の周縁部22は、基材2の端末部20の裏面に巻き込まれて、その裏面に接着されている。ここにいう端末部20は、基材2の最も外側の末端21と、その近傍の基材部分とを含めたものである。かかる基材2の端末部20の裏面に表皮材3の周縁部22を接着することにより、基材2の末端21を表皮材3によって覆い隠すことができ、これによって表皮材付き製品1の見栄えを向上させることができる。
【0018】
図1に示した表皮材付き製品1は、図2乃至図9に示した製造装置によって次のようにして製造される。
【0019】
図2乃至図9に示した製造装置は、上下に昇降可能な上側ケース5と、その上側ケース5の上壁に固定されたヒータ6と、不動に固定支持された下側ケース7と、その下側ケース7の底壁上に昇降装置8を介して支持されたテーブル9と、そのテーブル9に配置された型10と、その型10のまわりに隣接して設けられた可動体4と、その可動体4のまわりに設けられた表皮材支持体13とを有し、表皮材支持体13は、多数のプレート13Aにより構成されている。かかる表皮材支持体13と可動体4は、型10及びテーブル9に対して、それぞれ後述するように上下動可能に支持されている。図2に示した状態では、可動体4と表皮材支持体13は、型10とテーブル9に対して、最も上方の位置で停止しており、このとき、可動体4の上面は、テーブル9の上面よりも上方に位置していると共に、表皮材支持体13の複数のプレート13Aは、その頂部が三角形状をなしてテーブル9の上面よりも上方に突出している。
【0020】
型10の内部は中空に形成され、その内部の中空室11は、当該中空室11の排気口12を介して、下側ケース7の内部に連通している。さらに、型10には、複数の吸引孔15が形成され、その各吸引孔15は型10の外部に開放されていると共に、型10の内部の中空室11に連通している。
【0021】
図2に示したように、上側ケース5を上昇させた状態で、型10の表面に基材2をセットする。この基材2は、前述のように、例えばポリプロピレン又はその他の熱可塑性樹脂より成り、図示していない射出成形機によって、既に型10の表面の形態にほぼ沿った形状に成形されている。このように基材2を型10にセットすると、その基材2の末端21が最上方位置を占めた可動体4の上面に載り、これによってその可動体4の上面と型10の側面の一部と基材2の端末部20の裏面とによって空間S1が区画され、その空間S1の下部が可動体4によって閉鎖されている。かかる空間を、型・基材間空間S1と称することにする。前述のように型10に形成された吸引孔15は、この型・基材間空間S1に開口している。
【0022】
上述のように、本例の表皮材付き製品の製造方法を実施する製造装置においては、基材2を型10にセットしたとき、その基材2の端末部20と型10との間に型・基材間空間S1が区画されるように形成された型10が用いられる。上述のように、図2乃至図9に示した実施形態においては、型10に隣接して設けられた上下動可能な可動体4を、テーブル9ないしは型10に対する最上方位置に停止させて、その可動体4と、型10と、基材2の端末部20とによって、型・基材間空間S1が区画形成されるように構成されている。
【0023】
次に、図2に示すように、上側ケース5と下側ケース7の間に、図示していないクランプによって保持された薄いフィルムより成る熱可塑性樹脂製の表皮材3を配置する。その際、基材2の表面と該基材2の端末部20の裏面とに、予め接着剤が塗布されている。表皮材3の下面に接着剤を塗布し、或いは基材2と表皮材3の両者に接着剤を塗布しておくことも可能である。
【0024】
引き続き、上側ケース5を下降させて、図3に示すように上側ケース5と下側ケース7とによって表皮材3を挟持する。この状態で、図4に矢印A,Bで示すように、上側ケース5に形成された給排口16と、下側ケース7に形成された排気口17を通して、各ケース5,7の内部の空気を吸引し、両ケース5,7内の圧力を下げて真空状態にする。このように、下側ケース7内の空気を吸引することによって、型10の内部の中空室11の空気も、排気口12を通して吸引され、これによって、吸引孔15を介して中空室11に連通した型・基材間空間S1内の空気も吸引され、その型・基材間空間S1の圧力が下げられる。
【0025】
次いで、図5に示すように、両ケース5,7の内部の空気を吸引し続けながら、ヒータ6を作動させて、表皮材3を加熱し、該表皮材3を軟化させる。しかる後、両ケース5,7の内部の空気を吸引し続けながら、図6に示すように、昇降装置8を作動させて、テーブル9とそのテーブルに配置された型10と可動体4と表皮材支持体13を共に上昇させ、加熱軟化した熱可塑性樹脂製の表皮材3を基材2の上にセットする。このとき、上側ケース5と下側ケース7の内部の空気が既に排出されているので、図6に示した状態での表皮材3と基材2との間の内側空間S2内の圧力も低くなっている。
【0026】
次に、下側ケース7の空気を吸引しながら、上側ケース5内からの空気の吸引を停止し、その代わりに、図6に矢印Cで示したように、給排口16を通して、上側ケース5の内部に圧縮空気を送り込む。これにより、表皮材3よりも外側の空間S3の圧力の方が、表皮材3と基材2との間の内側空間S2の圧力よりも高くなり、その圧力差によって、加熱軟化された表皮材2が、図7に示したように、基材2の表面に密着し、その基材2の表面に塗布された接着剤によって、当該表皮材3が基材2の表面に接着される。このとき、図7に示すように、表皮材3は、基材2の端末部20よりも外方(図の例では下方)にはみ出た状態で、可動体4の外周面と表皮材支持体13の上面にも密着する。
【0027】
上述した表皮材3よりも外側の空間S3とは、図6から明らかなように、基材2上にセットされた表皮材3を境として、前述の内側空間S2とは反対側の外側空間S3を意味する。
【0028】
上述のように、本例の表皮材付き製品の製造方法は、型10に基材2をセットした後、加熱軟化させた熱可塑性樹脂製の表皮材3を基材2上にセットして、その表皮材3と基材2との間の内側空間S2の圧力と、該表皮材3を境として内側空間S2とは反対側の外側空間S3の圧力との差によって、表皮材が基材2の端末部20よりも外方にはみ出た状態に、表皮材3を基材2の表面に密着させて、該表皮材3を基材2の表面の形態に沿った形に成形すると共に、当該表皮材3を基材2の表面に接着剤によって接着するように構成されている。
【0029】
次に、上側ケース5内に圧縮空気を供給し続け、かつ下側ケース7内の空気を吸引し続けながら、図8に示したように、それ自体の公知のアクチュエータ(図示せず)を作動させて、可動体4と表皮材支持体13を、テーブル9と型10に対してそれぞれ下方に移動させる。このように、可動体4を型10に対して下方に移動させることにより、それまで可動体4により下部が密閉されていた型・基材間空間S1が外部に対して開放される。このとき、上側ケース5内には、圧縮空気が供給され続けているので、型・基材間空間S1の圧力よりも、表皮材3を境として、その型・基材間空間S1とは反対の外側空間S3の圧力の方が高い。このため、図8に示したように、表皮材3は、基材2の端末部20の裏面に巻き込まれ、その裏面に密着して、接着剤によって当該裏面に接着される。表皮材3を、基材2の端末部20の裏面の形態に圧空成形して、その裏面に接着するのである。
【0030】
上述のように、本例の表皮材付き製品の製造方法は、型・基材間空間S1を外部に対して開放して、その型・基材間空間S1内の圧力と、表皮材3を境として、該型・基材間空間S1とは反対側の外側空間S3の圧力の差によって、表皮材3を、基材2の端末部20の裏面に巻き込んで、その表皮材3を基材2の裏面に密着させて接着するように構成されている。
【0031】
その際、本例の製造方法においては、外側空間S3に圧縮空気を送り込んで、その外側空間S3の圧力を高めるだけでなく、前述のように、型・基材間空間S1と型10内の中空室11とを連通する吸引孔15を通して、型・基材間空間S1内の空気を吸引することにより、該型・基材間空間S1の圧力を低下させて、表皮材3を基材2の端末部20の裏面に巻き込むので、表皮材3を基材2の裏面の形態に真空成形することができる。これにより、表皮材3を基材2の裏面に強く密着させて接着することができ、当該裏面に接着された表皮材3の部分にしわや折れが発生することを確実に防止することができる。
【0032】
ところで、上述のように可動体4を型10に対して下方に移動させて、型・基材間空間S1を開放して、表皮材3を基材2の端末部20の裏面に巻き込むとき、図7に示したように三角形状に突出していた表皮材支持体13の複数のプレート13Aを、図8に示したように、その複数のプレート13Aの頂部が平坦となるように、型10に対して下方に移動させる。これにより、図7に示したように表皮材支持体13の上面に支持されていた表皮材3の部分が、図8に示したように、基材2の端末部20に引き上げられる。このため、表皮材3が過度に伸ばされることはなく、当該裏面に巻き込まれた表皮材の部分の厚さが過度に薄くなる不具合を阻止できる。
【0033】
次いで、図8に示したように、型10に設けられた例えばニクロム線より成る電熱線18に電流を流して、その電熱線18を加熱する。この電熱線18は、図8から判るように、基材2が型10にセットされた状態で、その基材2の端末部20の裏面に沿って、型10の全周に亘って延びていて、その電熱線18の一部が外部に露出している。かかる電熱線18を加熱することによって、表皮材3を溶融させて切断し、基材2に接着されていない表皮材部分24を切断除去し、その表皮材部分24を、基材2から分離する。その際、基材2に接着されていない表皮材の部分を全て切断除去してもよいし、図1及び図9に示すように、基材2の裏面に接着していない極く一部の表皮材部分25を基材2の側に残しておいても差支えない。
【0034】
次いで、上側ケース5への圧縮空気の供給と、下側ケース7からの空気の吸引動作を停止した後、図9に示したように、上側ケース5を上昇させ、表皮材3の切断後に表皮材3が接着された基材2を型10から離脱する。このようにして、図1に示した表皮材付き製品1が完成する。
【0035】
上述のように、本例の製造方法によれば、表皮材3を基材2の端末部20の裏面に自動的に巻き込んで接着できるので、製品製造時の省力化を達成できる。しかも押圧部材によって表皮材を基材2の裏面に押し付けるのではなく、空気圧を利用して表皮材3を基材端末部20の裏面に押圧するので、その表皮材3をその裏面に確実に密着させて接着することができ、完成した製品の品質を高めることができる。
【0036】
また、上述した製造方法は、熱可塑性樹脂製の表皮材3を基材2の表面に密着させて接着した後に、基材2の端末部20と型10との間に区画された型・基材間空間S1を外部に対して開放して、空気圧によって表皮材3を基材2の端末部20の裏面に巻き込んで接着するように構成されているので、基材2の端末部20の裏面に巻き込まれた表皮材3の部分にしわや折れが発生することはなく、高品質な表皮材付き製品を製造することができる。
【0037】
また、図7及び図8に示した製造装置においては、複数のプレート13Aより成る表皮材支持体13が用いられているが、図10の(a)に示したように、テーブル9に対して不動に固定された基部13Bと、その基部13Bに対して上下動可能に支持された可動プレート13Cとから成る表皮材支持体13を用い、図6に示したところと同様に、可動体4が最上方位置を占めているとき、図10の(a)に示すように、可動プレート13Cを上方に突出させておき、図8と同様に可動体4を下降させたとき、図10の(b)に示すように、可動プレート13Cを下方に下げることによって、型・基材間空間S1が開放されたとき、表皮材3が過度に伸ばされる不具合を阻止することもできる。
【0038】
上述のように、図2乃至図9に示した製造装置を用いた製造方法は、型10に隣接して設けられた上下動可能な可動体4を最上方位置に停止させて、該可動体4と、型10と、基材2の端末部20とによって、型・基材間空間S1を区画し、その可動体4を下方に移動させることにより、型・基材間空間S1を外部に対して開放するように構成されている。
【0039】
これに対し、図11の(a),(b)は、図2乃至図9に示した製造装置とは異なる製造装置によって表皮材付き製品を製造する方法を示す断面図である。図11に示した製造装置においては、型10が上下動可能にテーブル9に支持され、しかも図2乃至図9に示した可動体4の代わりに、型10に隣接して位置する固定体104が設けられている。この固定体104は、型10のまわりに配置されていて、テーブル9上に固定配置されている。図11に示した製造装置には、図2乃至図9に示した表皮材支持体13は設けられていない。図11の(a)は型10が最下方位置を占めた状態を示し、図11の(b)は、型10が最上方位置に上昇した状態を示している。
【0040】
図11に示した製造装置によって表皮材付き製品を製造するには、先ず、図11の(a)に示したように型10を最下方位置に停止させて、先に図2を参照して説明したところと全く同様にして、その型10の表面に既に成形されている基材2をセットする。このとき、図11の(a)から明らかなように、基材2の末端21が固定体104の上面に載る。このため、型10と、その型10に隣接して位置する固定体104と、基材2の端末部20の裏面とによって型・基材間空間S1が区画される。
【0041】
上述のように基材2を型10にセットした後、先に図3乃至図7に関連して説明したところと全く同様にして、加熱軟化させた熱可塑性樹脂製の表皮材3を基材2の表面に密着させて接着する。次いで、図11の(b)に示したように、図示していないアクチュエータを作動させて、型10を上方に移動させる。これにより、それまで固定体104によって下部が密閉されていた型・基材間空間S1が外部に対して開放される。これによって、先に説明ところと全く同様にして、表皮材3を基材2の端末部20の裏面に巻き込み、その表皮材3を、基材2の裏面に密着させて接着剤を介して接着することができる。その後も、先に説明した実施形態と全く同じく、型10に設けられた電熱線18を加熱して表皮材3を切断し、基材2に接着されていない表皮材部分24を切断除去し、表皮材3が接着された基材2を型10から離脱する。
【0042】
上述のように、図11に示した製造装置による製造方法は、型として、上下動可能な型10を用い、該型10を最下方位置に停止させて、当該型10と、該型10に隣接して位置する固定体104と、基材2の端末部20とによって、型・基材間空間S1を区画し、型10を上方に移動させることにより、型・基材間空間S1を外部に対して開放するように構成されている。
【0043】
図11の(a),(b)に示した製造装置にも、図2乃至図10に示した表皮材支持体13と同様な表皮材支持体を設けることができる。
【0044】
図12の(a),(b)は、さらに他の製造装置によって表皮材付き製品を製造する方法を示す断面図である。ここに示した製造装置は、テーブル9上に固定配置された型10と、テーブル9上に水平方向に移動可能に支持された可動体204,204を有している。この可動体204,204は、図12の(a)に示したように型10に対して最も離れた離間位置と、図12の(b)に示したように型10に対して最も接近した近接位置との間を水平方向に移動可能に支持されている。図12に示した製造装置には、図2乃至図10に示した表皮材支持体13は設けられていないが、図12に示した装置にも、表皮材支持体を設けることができる。
【0045】
図12に示した製造装置によって表皮材付き製品を製造するには、先ず、可動体204,204を図12の(a)に示したように離間位置に停止させておき、先に図2を参照して説明したところと全く同様にして、型10の表面に基材2をセットする。このとき、図12の(a)から明らかなように、基材2の末端21が可動体204,204の上面に載置され、その可動体204,204と型10と、基材2の端末部20の裏面とによって型・基材間空間S1が区画される。
【0046】
上述のように基材2を型10にセットした後、先に図3乃至図7に関連して説明したところと全く同様にして、加熱軟化させた熱可塑性樹脂製の表皮材3を基材2の表面に密着させて接着する。次いで、図12の(b)に示したように、図示していないアクチュエータを作動させて、可動体204,204を互いに接近させて、これらを図12の(b)に示した近接位置に移動させる。これにより、それまで密閉されていた型・基材間空間S1が外部に対して開放される。これにより、先に図8を参照して説明したところと全く同様にして、表皮材3を基材2の端末部20の裏面に巻き込むことにより、その表皮材3を基材2の裏面に密着させて接着することができる。あとは、図2乃至図9に示した実施形態と全く同じく、型10に設けられた電熱線18を加熱して表皮材3を切断し、基材2に接着されていない表皮材部分24を基材2の側から切断除去し、表皮材3が接着された基材2を型10から離脱する。
【0047】
上述のように、図12に示した製造装置による製造方法は、型10に対して最も離れた離間位置と、該型10に対して最も接近した近接位置との間を水平方向に移動可能な可動体204,204を、離間位置に停止させて、該可動体204,204と、型10と、基材2の端末部20とによって、型・基材間空間S1を区画し、当該可動体204,204を近接位置に移動させることにより、型・基材間空間S1を外部に対して開放するように構成されている。
【0048】
図10乃至図12には、図2乃至図9に示した各部分と同一ないしは対応する部分に対して、図2乃至図9に付した符号と同じ符号を付してある。
【0049】
図10乃至図12に示した製造方法によっても、図2乃至図9に示した方法により製造された製品と全く同様な高品質な表皮材付き製品1(図1)を製造でき、図2乃至図9に示した方法と同一、ないしは同様な効果を奏することができる。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されず、各種改変して構成できるものである。
【符号の説明】
【0051】
1 表皮材付き製品
2 基材
3 表皮材
4 可動体
10 型
11 中空室
15 吸引孔
18 電熱線
20 端末部
24 表皮材部分
104 固定体
204 可動体
S1 型・基材間空間
S2 内側空間
S3 外側空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を型にセットしたとき、該基材の端末部と型との間に型・基材間空間が区画されるように形成された型を用い、該型に前記基材をセットした後、加熱軟化させた熱可塑性樹脂製の表皮材を前記基材上にセットして、該表皮材と基材との間の内側空間の圧力と該表皮材を境として前記内側空間とは反対側の外側空間の圧力との差によって、該表皮材が前記基材の端末部よりも外方にはみ出た状態に、当該表皮材を、前記基材の表面に密着させて該基材表面に接着し、次いで前記型・基材間空間を外部に対して開放して、該型・基材間空間内の圧力と、前記表皮材を境として該型・基材間空間とは反対側の外側空間の圧力との差によって、前記表皮材を、前記基材の端末部の裏面に巻き込んで、該表皮材を当該裏面に密着させて接着し、次いで前記型に設けられた電熱線を加熱することによって、前記基材に接着されていない表皮材部分を切断除去し、その切断後に表皮材が接着された基材を前記型から離脱することを特徴とする表皮材付き製品の製造方法。
【請求項2】
前記型・基材間空間と前記型内の中空室とを連通する吸引孔を通して、該型・基材間空間内の空気を吸引することにより、前記型・基材間空間の圧力を低下させて、前記表皮材を前記基材の端末部の裏面に巻き込む請求項1に記載の表皮材付き製品の製造方法。
【請求項3】
前記型に隣接して設けられた上下動可能な可動体を最上方位置に停止させて、該可動体と、前記型と、前記基材の端末部とによって、前記型・基材間空間を区画し、当該可動体を下方に移動させることにより、前記型・基材間空間を外部に対して開放する請求項1又は2に記載の表皮材付き製品の製造方法。
【請求項4】
前記型として、上下動可能な型を用い、該型を最下方位置に停止させて、当該型と、該型に隣接して位置する固定体と、前記基材の端末部とによって、前記型・基材間空間を区画し、前記型を上方に移動させることにより、前記型・基材間空間を外部に対して開放する請求項1又は2に記載の表皮材付き製品の製造方法。
【請求項5】
前記型に対して最も離れた離間位置と、該型に対して最も接近した近接位置との間を水平方向に移動可能な可動体を、前記離間位置に停止させて、該可動体と、前記型と、前記基材の端末部とによって、前記型・基材間空間を区画し、当該可動体を前記近接位置に移動させることにより、前記型・基材間空間を外部に対して開放する請求項1又は2に記載の表皮材付き製品の製造方法。
【請求項1】
基材を型にセットしたとき、該基材の端末部と型との間に型・基材間空間が区画されるように形成された型を用い、該型に前記基材をセットした後、加熱軟化させた熱可塑性樹脂製の表皮材を前記基材上にセットして、該表皮材と基材との間の内側空間の圧力と該表皮材を境として前記内側空間とは反対側の外側空間の圧力との差によって、該表皮材が前記基材の端末部よりも外方にはみ出た状態に、当該表皮材を、前記基材の表面に密着させて該基材表面に接着し、次いで前記型・基材間空間を外部に対して開放して、該型・基材間空間内の圧力と、前記表皮材を境として該型・基材間空間とは反対側の外側空間の圧力との差によって、前記表皮材を、前記基材の端末部の裏面に巻き込んで、該表皮材を当該裏面に密着させて接着し、次いで前記型に設けられた電熱線を加熱することによって、前記基材に接着されていない表皮材部分を切断除去し、その切断後に表皮材が接着された基材を前記型から離脱することを特徴とする表皮材付き製品の製造方法。
【請求項2】
前記型・基材間空間と前記型内の中空室とを連通する吸引孔を通して、該型・基材間空間内の空気を吸引することにより、前記型・基材間空間の圧力を低下させて、前記表皮材を前記基材の端末部の裏面に巻き込む請求項1に記載の表皮材付き製品の製造方法。
【請求項3】
前記型に隣接して設けられた上下動可能な可動体を最上方位置に停止させて、該可動体と、前記型と、前記基材の端末部とによって、前記型・基材間空間を区画し、当該可動体を下方に移動させることにより、前記型・基材間空間を外部に対して開放する請求項1又は2に記載の表皮材付き製品の製造方法。
【請求項4】
前記型として、上下動可能な型を用い、該型を最下方位置に停止させて、当該型と、該型に隣接して位置する固定体と、前記基材の端末部とによって、前記型・基材間空間を区画し、前記型を上方に移動させることにより、前記型・基材間空間を外部に対して開放する請求項1又は2に記載の表皮材付き製品の製造方法。
【請求項5】
前記型に対して最も離れた離間位置と、該型に対して最も接近した近接位置との間を水平方向に移動可能な可動体を、前記離間位置に停止させて、該可動体と、前記型と、前記基材の端末部とによって、前記型・基材間空間を区画し、当該可動体を前記近接位置に移動させることにより、前記型・基材間空間を外部に対して開放する請求項1又は2に記載の表皮材付き製品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−218231(P2012−218231A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84234(P2011−84234)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】
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